(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】脱水機および水洗処理システム
(51)【国際特許分類】
B01D 33/04 20060101AFI20240912BHJP
B01D 33/048 20060101ALI20240912BHJP
B01D 36/04 20060101ALI20240912BHJP
C02F 11/123 20190101ALI20240912BHJP
B05B 1/02 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B01D33/04 A
B01D33/14
B01D36/04
C02F11/123
B05B1/02
(21)【出願番号】P 2020216851
(22)【出願日】2020-12-25
【審査請求日】2023-11-21
(73)【特許権者】
【識別番号】521297587
【氏名又は名称】UBE三菱セメント株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100145012
【氏名又は名称】石坂 泰紀
(72)【発明者】
【氏名】中村 政登
(72)【発明者】
【氏名】中河 久典
(72)【発明者】
【氏名】上野 修
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-055247(JP,A)
【文献】特開昭59-052510(JP,A)
【文献】特開2018-202300(JP,A)
【文献】特開昭58-135797(JP,A)
【文献】実開昭58-119996(JP,U)
【文献】特開昭60-130499(JP,A)
【文献】特開2007-253029(JP,A)
【文献】特開2002-316119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 33/0000-82
B01D 36/00-04
C02F 11/123
C04B 7/36-60
B05B 1/02-10
B08B 3/02
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
濾布上に供給される対象物に係る脱水を行う脱水機であって、
走行経路上の前記濾布に対して、前記濾布上の異物を除去するための洗浄液を供給する洗浄液供給部を有し、
前記洗浄液供給部は、開き角度が60度以上のスプレーパターンを有する1以上のノズルを含み、前記濾布に対して全体的に前記洗浄液を散布
し、
前記走行経路は、上下に重なるように設けられており、
上方の前記走行経路は、前記濾布が斜め上方に進む第1区画と、前記濾布が斜め下方に進む第2区画と、を含み、
前記1以上のノズルは、前記濾布のうち前記対象物が供給される第1面に対して前記洗浄液を散布する第1ノズルと、前記第1面に対して裏面である第2面に対して前記洗浄液を散布する第2ノズルと、を含み、
前記第1ノズルが、前記第1区画及び前記第2区画の一方の区画において、前記第1面に対して前記洗浄液を散布するように配置されており、且つ、前記第2ノズルが、前記第1区画及び前記第2区画の他方の区画において、前記第2面に対して前記洗浄液を散布するように配置されている、脱水機。
【請求項2】
前記第1ノズルが、前記第1区画において前記第1面に対して前記洗浄液を散布するように配置されており、且つ、前記第2ノズルが、前記第2区画において前記第2面に対して前記洗浄液を散布するように配置されている、請求項1に記載の脱水機。
【請求項3】
前記1以上のノズルは、前記濾布の幅方向に沿って並ぶ複数のノズルを含み、
前記複数のノズルのそれぞれが有するスプレーパターンは、円形状又は円環状であり、
前記複数のノズルは、隣り合うノズル同士の間で前記洗浄液の散布領域の一部が重なるように配置されている、請求項1または2に記載の脱水機。
【請求項4】
前記洗浄液供給部から供給された前記洗浄液を回収する洗浄液回収部と、
前記洗浄液回収部で回収した液体を固液分離する固液分離部と、
をさらに有し、
前記固液分離部において分離された液体部分の少なくとも一部を前記洗浄液として利用する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の脱水機。
【請求項5】
クリンカーダストを含む粉体と水とを配合してスラリーを調製する水洗槽と、
前記水洗槽からの前記スラリーと凝集剤とを配合する混和槽と、
前記混和槽からの前記スラリー中の分散体を沈降させて、上澄み液と濃縮物とを形成する沈殿槽と、
前記沈殿槽において形成された前記濃縮物を濾布上に供給することで、前記濃縮物に係る脱水を行う脱水機と、
を有し、
前記脱水機は、走行経路上の前記濾布に対して、前記濾布上の異物を除去するための洗浄液を供給する洗浄液供給部を有し、
前記洗浄液供給部は、開き角度が60度以上のスプレーパターンを有する1以上のノズルを含んで、前記濾布に対して全体的に前記洗浄液を散布し、
前記洗浄液供給部から供給されて前記濾布の洗浄に使用された後の前記洗浄液を、前記水洗槽に返送する返送ラインをさらに有する、水洗処理システム
であって、
前記走行経路は、上下に重なるように設けられており、
上方の前記走行経路は、前記濾布が斜め上方に進む第1区画と、前記濾布が斜め下方に進む第2区画と、を含み、
前記1以上のノズルは、前記濾布のうち前記濃縮物が供給される第1面に対して前記洗浄液を散布する第1ノズルと、前記第1面に対して裏面である第2面に対して前記洗浄液を散布する第2ノズルと、を含み、
前記第1ノズルが、前記第1区画及び前記第2区画の一方の区画において、前記第1面に対して前記洗浄液を散布するように配置されており、且つ、前記第2ノズルが、前記第1区画及び前記第2区画の他方の区画において、前記第2面に対して前記洗浄液を散布するように配置されている、水洗処理システム。
【請求項6】
前記洗浄液は塩酸である、請求項
5に記載の水洗処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、脱水機および水洗処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、汚泥を含む処理水から汚泥を分離除去するために、濾布を用いた脱水機が用いられている。汚泥の脱水に用いられる濾布は汚泥等の付着による目詰まりが懸念される。この点について、特許文献1では、濾布を用いて汚泥を加圧濾過することによって濾過水とスラッジとを分離するフィルタープレスにおいて、洗浄液を用いて濾布を洗浄する構成が開示されている。具体的には、特許文献1には、洗浄液流路を廃液流路に対して連結した状態で洗浄液を供給することで、濾布を洗浄することが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかしながら、特許文献1に記載の方法では、濾布において発生する目詰まりを十分に解消できない可能性があり、改善の余地があった。例えば、直進ノズルなどのノズルで洗浄液を散布した場合、散布する流体の中心部に圧力がかかり、圧力の高いノズル直下の部分だけが洗浄され、濾布の当該部分だけを洗浄液が貫通、通過することで、当該箇所以外の部分の洗浄が不十分となる場合があった。
【0005】
本開示は上記を鑑みてなされたものであり、濾布の目詰まりをより効果的に防ぐことが可能な技術を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
上記目的を達成するため、本開示の一形態に係る脱水機は、濾布上に供給される対象物に係る脱水を行う脱水機であって、走行経路上の前記濾布に対して、前記濾布上の異物を除去するための洗浄液を供給する洗浄液供給部を有し、前記洗浄液供給部は、開き角度が60度以上のスプレーパターンを有する1以上のノズルを含み、前記濾布に対して全体的に前記洗浄液を散布する。
【0007】
上記の脱水機によれば、開き角度が60度以上のスプレーパターンを有する1以上のノズルによって、濾布に対して全体的に洗浄液が散布される。そのため、洗浄液によって濾布全体からの異物の除去を行うことができるため、濾布の目詰まりを効果的に防ぐことができる。
【0008】
前記1以上のノズルは、前記濾布のうち前記対象物が供給される第1面に対して前記洗浄液を散布するノズルと、前記第1面に対して裏面である第2面に対して前記洗浄液を散布するノズルと、を含む態様としてもよい。
【0009】
上記のように、濾布の第1面と第2面との両方に対して洗浄液を散布することで、例えば、濾布の内部に入り込んだ異物についても洗浄液によって除去しやすくなる。そのため、異物による濾布の目詰まりがより効果的に防がれる。
【0010】
少なくとも一部の前記ノズルを上下から挟むように前記走行経路が設けられ、前記濾布の前記走行経路に挟まれたノズルは、上方の前記走行経路に位置する濾布に対して前記洗浄液を散布する態様としてもよい。
【0011】
上記のように、ノズルを上下から挟むように濾布の走行経路が設定されている場合、ノズルが上方の走行経路に位置する濾布に対して洗浄液を散布することで、上方の濾布に対して散布した洗浄液が落下する際に下方の濾布にも散布され得る。そのため、濾布と洗浄液とが接触する機会を増やすことができ、洗浄液による濾布の洗浄効果をさらに高めることができる。
【0012】
少なくとも一部の前記ノズルよりも下方に、上下に複数の走行経路が重なるように設けられ、上方の前記走行経路に位置する濾布の上面に対して前記洗浄液を散布する態様としてもよい。
【0013】
上記のように、ノズルよりも下方に、上下に複数の走行経路が重なるように、濾布の走行経路が設定されている場合、ノズルが上方の走行経路に位置する濾布の上面に対して洗浄液を散布することで、上方の濾布に対して散布した洗浄液が落下する際に下方の濾布にも散布され得る。そのため、濾布と洗浄液とが接触する機会を増やすことができ、洗浄液による濾布の洗浄効果をさらに高めることができる。
【0014】
前記洗浄液供給部から供給された前記洗浄液を回収する洗浄液回収部と、前記洗浄液回収部で回収した液体を固液分離する固液分離部と、をさらに有し、前記固液分離部において分離された液体部分の少なくとも一部を前記洗浄液として利用する態様としてもよい。
【0015】
洗浄液回収部において回収された洗浄液を固液分離部において固液分離し、液体成分の少なくとも一部を洗浄液として利用する構成とすることで、洗浄液を再利用することが可能となり、濾布の洗浄に係るコストを抑制しながら洗浄を効率よく行うことができる。
【0016】
本開示の一形態に係る水洗処理システムは、クリンカーダストを含む粉体と水とを配合してスラリーを調製する水洗槽と、前記水洗槽からの前記スラリーと凝集剤とを配合する混和槽と、前記混和槽からの前記スラリー中の分散体を沈降させて、上澄み液と濃縮物とを形成する沈殿槽と、前記沈殿槽において形成された前記濃縮物を濾布上に供給することで、前記濃縮物に係る脱水を行う脱水機と、を有し、前記脱水機は、走行経路上の前記濾布に対して、前記濾布上の異物を除去するための洗浄液を供給する洗浄液供給部を有し、前記洗浄液供給部は、開き角度が60度以上のスプレーパターンを有する1以上のノズルを含んで、前記濾布に対して全体的に前記洗浄液を散布し、前記洗浄液供給部から供給されて前記濾布の洗浄に使用された後の前記洗浄液を、前記水洗槽に返送する返送ラインをさらに有する。
【0017】
上記の水洗処理システムによれば、脱水機において、開き角度が60度以上のスプレーパターンを有する1以上のノズルによって、濾布に対して全体的に洗浄液が散布される。そのため、洗浄液によって濾布全体からの異物の除去を行うことができるため、濾布の目詰まりを効果的に防ぐことができる。また、脱水機における濾布の洗浄に使用された洗浄液を水洗槽に返送するための返送ラインが設けられる。このような構成とすることで、濾布の洗浄に使用した洗浄液を水洗槽においてスラリーの調製に使用することが可能である。そのため、洗浄液を濾布の洗浄以外にも活用できるため、濾布の洗浄を行いつつシステムとしての運転コストを抑制することができる。
【0018】
前記洗浄液は塩酸である態様としてもよい。上記のように、クリンカーダストを含む粉体を処理する場合、濾布に付着する異物は塩酸によって除去することが可能である。そのため、洗浄液として塩酸を用いることで、濾布の洗浄を適切に行うことができる。
【発明の効果】
【0019】
本開示によれば、濾布の目詰まりをより効果的に防ぐことが可能な技術が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0020】
【
図1】
図1は、一実施形態に係る水洗処理システムの一例を示す構成図である。
【
図2】
図2は、脱水機の概略構成の一例を示す図である。
【
図3】
図3は、脱水機の平面図の一例を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0021】
以下、添付図面を参照して、本開示を実施するための形態を詳細に説明する。なお、図面の説明においては同一要素には同一符号を付し、重複する説明を省略する。
【0022】
[水洗処理システム]
図1は、一実施形態に係る脱水機を含む水洗処理システム1の一例を示す構成図である。
図1において、水洗処理システム1は、貯蔵部10、水洗槽20、混和槽30、沈殿槽40、脱水機70がこの順で接続した構成を備える。
【0023】
水洗処理システム1は、粉体を処理して脱水物を回収するシステムである。処理の対象物の粉体としては、例えば、セメントキルンの排ガスから抽出されたダスト(クリンカーダスト)、または、ゴミ焼却灰が挙げられる。これらの対象物は、水溶性塩素含有化合物を含む粉体である。なお、対象物は水溶性塩素含有化合物を含む粉体に限定されず、種々の粉体を対象とすることができる。
【0024】
貯蔵部10は、対象物の粉体を貯留する機能を有する。貯留される粉体の一部が、ラインL1によって水洗槽20へ供給される。
【0025】
水洗槽20は、貯蔵部10から供給された粉体に対して水を加えてスラリーを調製する機能を有する。水洗槽20は、水供給手段21を有する。水供給手段21による水の供給によって、スラリーの懸濁状態が調製される。水洗槽20は、さらにpH調整剤添加手段22を有していてもよい。pH調整剤を添加することによってスラリーの溶媒である水中に溶解している成分を不溶化させ沈殿が発生させたり、分散体の凝集が促進させたりすることができる。pH調整剤としては、例えば、水酸化ナトリウム等のアルカリ、並びに、硫酸及び塩酸等の酸などであってよい。水洗槽20によって調製されたスラリーがラインL2を介して混和槽30へ送られる。
【0026】
混和槽30は、水洗槽20からのスラリーに対して凝集剤等を添加する機能を有する。混和槽30は、凝集剤添加手段31を有してもよい。凝集剤は、例えば、無機凝集剤、無機高分子凝集剤及び有機高分子凝集剤等を用いることができる。凝集剤添加手段31によって凝集剤を添加することで、スラリーにおける沈殿および凝集体の状態を調整することができる。混和槽30によって調製されたスラリーがラインL3を介して沈殿槽40へ送られる。なお、水洗槽20において調製されるスラリーにおける沈殿及び凝集体の状況によっては、混和槽30は必ずしも介す必要はなく、水洗槽20で調製されたスラリーを直接沈殿槽40に導入してもよい。
【0027】
沈殿槽40は、スラリーにおける沈殿物を沈降分離によって分離し回収する機能を有する。沈殿槽40は、例えば、有底円筒状の外壁部を有する。沈殿槽40の内側には、外壁部と同心となるように設けられた有底円筒状の内壁を有し、その底部は、中心に向かって深くなるような円錐状の形状の底面を有する。沈殿槽40の内部には、底面に沿った形状を有するレーキ41が配置されていてもよい。
【0028】
沈殿槽40においてスラリー中の分散体を沈降させることで、スラリーが上澄み液と濃縮物とに分離される。スラリーの凝集状態は、例えば、沈殿槽40に供給されるスラリーの性状(例えば、pH及び凝集剤の添加量)などによって制御することができる。沈殿槽40がレーキ41を有する場合、沈殿槽40の底部付近で、レーキ41をゆっくりと回転させることによって、スラリー中の沈殿体の濃縮を促進し、濃縮物をより均一な状態とすることができる。
【0029】
沈殿槽40の底部に形成された濃縮物は、沈殿槽40の底部に接続されたラインL4から抜き出される。ラインL4は、切替部60に接続されている。また、沈殿槽40の上部には上澄み液を排出するラインL5が設けられていて、上澄み液を後段の排水処理設備(図示せず)へ供給する。
【0030】
切替部60には、ラインL4のほかに、脱水機70へ接続するラインL6と、沈殿槽40に接続するラインL7と、が設けられる。
【0031】
ラインL4上には測定部50が設けられ、ラインL4中を流れる濃縮物における懸濁物質濃度(SS濃度)が測定部50によって測定される。測定部50による測定の結果、ラインL4中を流れる濃縮物の懸濁物質濃度が所定値(管理者が任意に設定する値)よりも高く、充分な濃縮状態にある場合には、当該濃縮物は、切替部60からラインL6へ流入し、脱水機70へ供給される。一方、ラインL4中を流れる濃縮物の懸濁物質濃度が所定値よりも低い場合には、切替部60からラインL7へ濃縮物が供給され、ラインL7を経て沈殿槽40へ返送される。なお、沈殿槽40よりも上流においてスラリーの性状の調製を適切に行うことが可能である場合、ラインL7および切替部60を省略してもよい。
【0032】
切替部60は、ラインL4中を流れる濃縮物の流路をラインL6(脱水機70へ供給するライン)およびラインL7(沈殿槽40へ返送するライン)のいずれかに切り替えられるものであればよい。切替部60としては、例えば、ストップバルブ、三方弁等を用いることができる。
【0033】
脱水機70は、濾布を用いた加圧脱水によってスラリーの脱水処理を行う機能を有する。脱水機70についての詳細は後述する。脱水機70における加圧脱水の結果得られる脱水物(脱水ケーキという場合もある)は、ラインL8によって脱水機70から排出される。一方、加圧脱水によって脱水物と分離された液体は、ラインL9によって脱水機70から排出される。ラインL9は、固液分離部80へ接続する。
【0034】
固液分離部80は、脱水機70においてスラリーの脱水処理を行った結果得られた液体中から固体(スラリーの凝集物に相当するもの)を除去する機能を有する。固液分離部80では、例えば、フィルターを用いた濾過を行うことによって、固体と液体とを分離する。このうち液体部分の少なくとも一部は、ラインL10によって、水洗槽20へ返送してもよい。固液分離部80によって分離された液体は、pH調整後の液体であるため、水洗槽20内のスラリーと比べてpHが調整された液体である。このような液体を水洗槽20へ返送することで、pH調整剤の添加量を減らすことができる。
【0035】
また、液体部分の少なくとも一部は、ラインL10から分岐して示されているラインL11を経て脱水機70へ返送されてもよい。このとき、返送される液体部分は、後述の脱水機70の濾布71の洗浄における洗浄液として用いられる。
【0036】
また、固液分離部80で分離された固体部分は、例えば、ラインL12を経て脱水機70へ返送する構成としてもよい。
【0037】
なお、固液分離部80は、脱水機70における濾布の洗浄処理時のみ使用する構成としてもよい。濃縮物を加圧脱水する場合、脱水機70からラインL9へ排出される液体には固体成分が含まれないと想定される。このような場合には、ラインL9から排出された液体をそのまま水洗槽20へ返送する構成としてもよい。詳細については後述するが、脱水機70における濾布の洗浄処理時には、ラインL9から排出される液体に固体成分が含まれる可能性がある。このような場合に、固液分離部80にお いて固液分離を行う構成とすることで、水洗槽20への固体成分の返送を防ぐことができる。
【0038】
[脱水機]
図2および
図3を参照しながら、脱水機70について説明する。
図2に示すように脱水機は濾布71と、濾布71を支持するプーリ72a~72hと、加圧ローラ73a,73bと、被処理物供給部74と、脱水物回収部75と、液体回収部76(洗浄液回収部)と、を有する。さらに、脱水機70は、洗浄時に使用する洗浄液供給源81と、洗浄液を供給する洗浄液供給部82,83を有する。洗浄液供給部82,83はそれぞれ複数のノズルを含んで構成される。
【0039】
濾布71は、表面にスラリーの濃縮物を供給した際に、固定成分が表面に残存可能であり且つ液体成分が通過可能な程度の厚さおよび通気性を有する。加圧脱水の対象となるスラリーの特性に応じて、濾布71の材料の種類、厚さ、通気性等が選択され得る。
【0040】
プーリ72a~72hは、濾布71を支持するとともに、濾布71を回転させる機能を有する。プーリ72a~72hの一部(例えば、プーリ72f)は、濾布71を移動させるドライブプーリであり、そのほかのプーリは、ドライブプーリによって移動する濾布71を支持するプーリとして機能する。プーリの配置は、脱水機70の構成等によって適宜変更され得る。なお、
図2に示す脱水機70では、ドライブプーリによって、濾布71が矢印A方向に移動するとする。
【0041】
プーリ72a~72hの配置によって濾布71の環状の走行経路が規定されている。脱水機70の場合、濾布71の走行経路は、側面から脱水機70を見た際に環状の走行経路が形成されている状態であるといえる。すなわち、上方の走行経路では、矢印A方向に濾布が移動すると規定をした場合、下方の走行経路では、矢印Aに対して逆方向に濾布が移動する。平面視において、上方における濾布71の走行経路と下方における濾布71の走行経路とが重なるように設定されている。また、濾布71の幅方向(移動方向に対して直交する方向)主面が水平となるようにプーリ72a~72hが配置されている。なお、プーリ72a~72hは、濾布71が進行方向に沿って傾斜し得るように配置されている場合もある。
【0042】
加圧ローラ73a,73bは、濾布71を挟んだ状態でプーリの一部と対向配置し、濾布71を加圧する機能を有する。
図2に示す例では、加圧ローラ73aはプーリ72aと対向し、加圧ローラ73bはプーリ72dと対向している。この状態で、加圧ローラ73a,73bは、それぞれプーリ72a,72dへ向かう方向に加圧されるため、間に挟まれる濾布71が圧力を受けることになる。
【0043】
被処理物供給部74は、脱水の対象となる被処理物を濾布71上に供給する機能を有する。脱水機70では、プーリ72a,72b間に被処理物供給部74が設けられ、濾布71の上方から、濾布71表面へ向けて被処理物であるスラリーの濃縮物が供給される。なお、濾布71において、被処理物供給部74から被処理物が供給される主面を第1面とし、その裏面側であり、プーリ72a~72hと接触する面を第2面という場合がある。
【0044】
脱水物回収部75は、濾布71表面に供給された被処理物の脱水物を回収する機能を有する。濾布71の回転によって、脱水物は脱水物回収部75へ落下する。脱水物回収部75は、中央が凹んでいるため、落下した脱水物はより凹んでいるほうへ移動する。このように、脱水物回収部75に落下して回収された脱水物は、ラインL8によって脱水機70から排出される。
【0045】
液体回収部76は、濾布71表面に供給された被処理物から分離された液体を回収する機能を有する。濾布71上にスラリーの濃縮物が供給されると、重力によって濃縮物中の液体が落下する。また、加圧脱水によっても濃縮物から液体が分離され落下する。落下した液体は液体回収部76において回収される。液体回収部76は、中央に形成される凹部に向けて壁面が傾斜した形状とされるため、落下した液体は壁面を伝って凹部へ移動する。液体回収部76において回収された液体は、ラインL9によって脱水機70から排出される。
【0046】
上記の脱水機70では、濾布71は、矢印A方向へ回転する。このとき、被処理物供給部74から濾布71の表面へ供給された濃縮物は、濾布71の移動に伴って矢印A方向へ移動する。このとき、プーリ72a~72b間は、進行方向に移動するにつれて濾布71が上方へ向かう所謂上り坂の傾斜となっている。また、プーリ72b~72d間は、進行方向に移動するにつれて濾布71が下方へ向かう所謂下り坂の傾斜となっている。このプーリ72a~72dを移動する間は、重力による濾過が行われることで、濾布71上の濃縮物中の水分が一部落下する。プーリ72a~72dを移動する間に濾布71から落下した液体は、液体回収部76において回収される。また、濾布71は、プーリ72dと加圧ローラ73bによって加圧される。このとき、濾布71上の濃縮物が加圧ローラ73bによる押圧を受けて加圧脱水される。この結果、プーリ72dと加圧ローラ73bとの間を通過した後は、濃縮物が加圧脱水された脱水物が濾布71表面に残存する。濾布71表面の脱水物は、プーリ72dに沿って濾布71が回転する際に、濾布71から分離して落下し、脱水物回収部75に回収される。なお、濾布71と脱水物とを分離するためのスクレイパー等が設けられていてもよい。
【0047】
脱水物が落下した後の濾布71は、スラリーの濃縮物が供給される面が下面になった状態で、プーリ72d,72e,72f,72g,72h,72aの順にプーリを辿って移動し、プーリ72aと加圧ローラ73aとによって挟まれる領域を通った後に、被処理物供給部74の下方に戻る。
【0048】
なお、プーリ72a~72hによって形成される濾布71の移動経路(循環経路)は、プーリ72a,72dに対して上方になる領域と、プーリ72a,72dに対して下方になる領域とを含んでいてもよい。また、平面視において、プーリ72a,72dに対して上方における濾布71の移動経路と、プーリ72a,72dに対して下方における濾布71の移動経路と、は互いに重なるように形成されていてもよい。
【0049】
[脱水機における濾布の洗浄について]
次に、脱水機70における濾布71の洗浄に使用する洗浄液供給源81および洗浄液を供給する洗浄液供給部82,83について説明する。
【0050】
濾布71を洗浄するための構成として、スラリーの濃縮物の加圧脱水を行っていない時間帯に濾布71に対して洗浄液を吐出することで、濾布71に付着したまたは入り込んだ異物(スラリーに由来する固体)を除去する。そのために、洗浄液供給源81から供給される洗浄液が洗浄液供給部82,83から濾布71に対して吐出される。
【0051】
洗浄液供給源81は、洗浄液を貯留する機能を有する。洗浄液としては、酸性の液体を用いることができる。ただし、スラリーの種類等によっても洗浄液として選択すべき液体の種類が異なり得る。例えば、スラリーがセメントキルンの排ガスから抽出されたダストを含んでいる場合には、ダスト由来の異物が濾布71に付着することが想定される。ダストにはカルシウムが多く含まれているため、洗浄液として塩酸を含む液体を用いることによって、カルシウム成分を水溶性の塩化カルシウムとして除去することが可能となる。逆にダスト由来の異物の場合には、洗浄液として硫酸を用いると、硫酸カルシウムが生成され、濾布71およびその他の配管を目詰まりさせる可能性がある。このように付着する異物の種類を考慮して洗浄液を選択することで、洗浄液による洗浄効果を高めることができる。
【0052】
洗浄液供給源81に貯留される洗浄液は配管85を介して洗浄液供給部82,83へ供給される。配管85には、開閉状態を切り替えるバルブ86,87等が設けられてもよい。また、配管85には、固液分離部80からの液体部分を返送するラインL11(
図1参照)が接続されていてもおい。また、ラインL11には、配管85との接続位置よりも前段にバルブ88が設けられていてもよい。
【0053】
図3に示すように、洗浄液供給部82は、洗浄液供給管821と、洗浄液供給管821に対して取り付けられた複数のノズル822とを含んで構成される。洗浄液供給管821は、濾布71の上方であって且つ、加圧ローラ73aとプーリ72bとの間に設けられる。また、洗浄液供給管821は、濾布71の移動方向(矢印A方向)に対して交差する方向(例えば、直交する方向)に延びている。また、洗浄液供給管821には、所定の間隔で複数のノズル822が設けられている。ノズル822は、洗浄液供給管821の下方に取り付けられ得る。ノズル822は、開き角度が60度以上のスプレーパターンを有する。そのため、
図3に示すように、複数のノズル822のそれぞれから散布される洗浄液の散布領域Wは、ノズル822よりも大きくなる。また、隣接するノズル822から散布される洗浄液の散布領域W同士が互いに重なるようにノズル822が配置されていてもよい。複数のノズル822によって、濾布71の幅方向(矢印A方向に対して直交する方向)の全体にわたって洗浄液が散布される構成としておくと、濾布71が矢印A方向に移動することで、濾布71全体について洗浄液を散布することができる。
【0054】
ノズル822の開き角度は、ノズル822の先端形状等によって設定され得る。つまり、ノズル822として開き角度が60度以上のものを採用することによって、ノズル822から洗浄液を広範囲に散布することができる。また、ノズル822は開き角度が60度以上のスプレーパターンであり、且つ、流量分布が均等分布または環状分布である構成を選択することができる。流量分布は、ノズル822からの洗浄液の噴霧高さおよび噴霧圧力によって調整し得る。したがって、濾布71の表面(散布面)に対する流量分布が均等となるように、ノズル822の選択・配置を調整してもよい。一例として、
図3に示す散布領域Wは、ノズル822によるノズルパターンが円形状である状態を示しているが、ノズルパターンが円環状となっていてもよいし、円形とは異なる形状とされていてもよい。複数のノズル822によって、濾布71に対して全体的に(特に、濾布71の進行方向に対して直交する幅方向に沿って全体的に)洗浄液が散布され得る。なお、ノズル822の開き角度は70度以上であってもよく、120度以下であってもよい。開き角度が大きい場合、より洗浄液を広範囲に散布することができるが、開き角度を120度以下とすることで、濾布71に対して洗浄液が疎らに付着することを防ぐことができる。
【0055】
さらに、洗浄液供給管821は、洗浄液供給管821の中心を軸心として回動可能である。その結果、洗浄液供給管821に取り付けられたノズル822についても軸心を中心として回動(回転)可能とすることができ、洗浄液供給管821を回動(回転)させることで、ノズル822による洗浄液の散布方向を変更することもできる。
【0056】
洗浄液供給部83は、濾布71の裏面側(下面側)に配置される。洗浄液供給部83は、洗浄液供給管831と、洗浄液供給管831に対して取り付けられた複数のノズル832,833とを含んで構成される。
【0057】
洗浄液供給管831は、濾布71の下方であって、且つ、プーリ72bとプーリ72cとの間に設けられる。洗浄液供給管831は、濾布71の下方において、濾布71の移動方向(矢印A方向)に対して交差する方向(例えば、直交する方向)に延びている。また、洗浄液供給管831には、所定の間隔で複数のノズル832が設けられている。ノズル832は、ノズル822と同様に開き角度が60度以上とされ、且つ、ノズルパターンも同様とされる。
【0058】
また、洗浄液供給管831には、所定の間隔で複数のノズル833が設けられている。ノズル833は、ノズル832とは別の方向に延びる。ノズル833についても、ノズル832と同様に開き角度が60度以上とされ、且つ、ノズルパターンも同様とされる。そのため、ノズル832,833についても、ノズル822と同様にノズルの口径と比べて広範囲に洗浄液を散布することができる。
【0059】
ノズル832,833は、それぞれ洗浄液供給管831の延在方向に沿って複数設けられ、洗浄液供給管831の中心を軸心として互いに異なる方向に設けられている。また、洗浄液供給管831は、洗浄液供給管831の中心を軸心として回動可能である。その結果、洗浄液供給管831に取り付けられたノズル832,833についても、軸心を中心として回動(回転)可能とすることができる。洗浄液供給管831を回動(回転)させることで、ノズル832,833による洗浄液の散布方向を変更することもできる。そのため、ノズル832,833によって、洗浄液供給管831よりも上方の濾布71および下方の濾布71の両方に対して洗浄液を散布することができる。
【0060】
なお、ノズル822は、
図2に示すように、その下方に、上下に複数の走行経路が重なるように設けられている。また、ノズル832,833については、これらを上下から挟むように濾布の走行経路が設けられている。
【0061】
洗浄液供給部82は、濾布71の上方に設けられるため、開き角度60度以上のノズル822から吐出された洗浄液は、ある程度分散した状態で濾布71上に落下し得る。一例として濾布71の幅が2.7mである場合に、洗浄液供給管821が濾布71から300mm上方に配置され、ノズル822間の間隔を20mmとすることができる。なお、洗浄液供給管821と濾布71との距離は適宜変更可能であってもよい。例えば、洗浄液供給管821は、洗浄液供給管821と濾布71との距離が変更可能となるように駆動可能な支持部材によって支持されていてもよい。また、濾布71に対して洗浄液が十分に散布されるように、ノズル822から吐出される洗浄液の吐出速度等も調整可能であってもよい。さらに、ノズル822による洗浄液の出射方向(中心軸方向)と、濾布71とのなす角も調整可能であってもよい。例えば、
図2に示す例では、傾斜しながら移動する濾布71に対してノズル822の中心軸が垂直に交差するように、ノズル822の先端が傾いた状態を示している。このように、ノズル822からの洗浄液の出射方向を濾布71の表面に対して変更可能としてもよい。
【0062】
一方、洗浄液供給部83は、濾布71の下方に設けられるため、開き角度60度以上のノズル832,833から吐出された洗浄液が濾布71に対して十分分散した状態で、散布されるように、ノズル832,833の位置および傾きが調節されていてもよい。また、濾布71に対して洗浄液が十分に散布されるように、ノズル832,833から吐出される洗浄液の吐出速度等も調整され得る。一例として濾布71の幅が2.7mである場合に、洗浄液供給管831は、それぞれ濾布71から400mm下方に配置され、ノズル832間およびノズル833間の間隔をそれぞれ200mmとすることができる。なお、洗浄液供給管831と濾布71との距離についても適宜変更可能であってもよい。また、ノズル832,833による洗浄液の出射方向(中心軸方向)と、濾布71とのなす角も調整可能であってもよい。
【0063】
なお、各ノズル822,832,833までの配管構成は
図2,3に示す構成に限定されない。例えば、洗浄液供給源81から洗浄液供給部82,83のそれぞれにむけてそれぞれ独立した配管を設けてもよい。この場合、各ノズル822,832,833と濾布71との距離または位置関係に応じて、各ノズル822,832,833からの洗浄液の吐出速度を個別に調整することができる。
【0064】
また、
図3では、洗浄液供給管821,831は、それぞれ一方側のみ配管85と接続された状態を示しているが、例えば、洗浄液供給管それぞれの他方の端部から余剰の洗浄液を洗浄液供給源81へ返送可能な循環経路を形成していてもよい。
【0065】
脱水機70では、洗浄液供給源81および洗浄液供給部82,83を有していることで、加圧脱水後の濾布71を洗浄することが可能である。具体的には、濾布71を矢印A方向に移動させながら、洗浄液供給管821,831のノズル822,832,833を用いて濾布71に対して洗浄液を散布することで、濾布71に付着している異物が除去される。上述のように、異物に対応した洗浄液を選択した場合、例えば洗浄液と異物との化学反応によって異物が溶解しやすい状態となる。また、溶解しない条件であっても、洗浄液が濾布71に散布されることで、洗浄液と共に異物が濾布71から落下しやすい状態となる。濾布71から落下した液体および異物は、液体回収部76において回収される。洗浄液供給管821,831のノズル822,832,833が設けられる位置は、加圧脱水前の濾布71が移動する領域であり、濾布71からの液体が重力により落下する区間と同じである。したがって、この領域で洗浄液と共に落下した異物についても、液体回収部76において回収される。
【0066】
洗浄液供給管821,831のノズル822,832,833から吐出された洗浄液は、プーリ72a~72d間の濾布71に対して散布された後に、下方へ落下する。すなわち、洗浄液供給管821,831のノズル822,832,833から吐出された洗浄液は、プーリ72a~72hによって形成された循環経路のうち、図示上方の経路を移動する濾布71に対して散布される。その後、洗浄液は重力によって下方に落下する。この際に、洗浄液は、例えば、プーリ72a~72hによって形成された循環経路のうち、図示下方の経路を移動する濾布71上に落下し得る。上述のように、平面視において、プーリ72a,72dに対して上方における濾布71の移動経路と、プーリ72a,72dに対して下方における濾布71の移動経路と、は互いに重なるように形成されている場合、上方の濾布71に対して散布された洗浄液が下方へ落下すると、濾布71に対しても散布されることになる。このため、ノズルから吐出された洗浄液は、濾布71に対して互いに異なる位置で2度散布されることになる。
【0067】
なお、液体回収部76において回収された洗浄液をラインL9によって脱水機70から排出し、固液分離部80において分離する構成とすることで、洗浄液と触れた際に固体状態のまま落下した異物についても、洗浄液中から除去することができる。また、洗浄液が塩酸等の酸性液体である場合、固液分離部80において固液分離した後の液体部分について、ラインL10を経て水洗槽20へ返送することで、pH調整剤として利用することができる。水洗槽20において投入すべきpH調整剤の分量に応じて、ラインL10によって返送する洗浄液の分量は調整される。また、固液分離部80において固液分離した後の液体部分は、ラインL11を経て洗浄液の配管85に供給することで、洗浄液として再利用する構成としてもよい。このような構成とした場合、固液分離後の液体部分のみが洗浄液として利用されるため、洗浄液に異物が含まれることによる配管・ノズル等の閉塞のリスクも低減される。なお、水洗槽20または配管85に返送しない洗浄液は、ラインL10とは別のラインを用いて系外に排出する構成としてもよい。
【0068】
[作用]
本実施形態に係る脱水機70によれば、開き角度が60度以上のスプレーパターンを有する1以上のノズル(例えば、ノズル822,832,833)によって、濾布71に対して全体的に洗浄液が散布される。そのため、洗浄液によって濾布71全体からの異物の除去を行うことができるため、濾布の目詰まりを効果的に防ぐことができる。
【0069】
従来から濾布を用いた脱水機では、脱水処理を行った後の濾布の目詰まりを防ぐための検討が行われている。一例としては、濾布へ対象物(スラリー等)を供給する経路を利用いして洗浄液を供給することが検討されている。しかしながら、濾布の一部に対してのみ洗浄液を供給した場合、洗浄状態が濾布上でバラつく可能性がある。濾布はスラリー等を保持できる程度に頑強であり且つ液体透過性が調整されているため、例えば、濾布の一部領域において洗浄によって異物が除去されてしまうと液体透過性が高くなった当該領域のみを液体が通過するようになり、十分な洗浄ができず目詰まりが解消されない可能性がある。また、液体の移動に偏りが生じることで濾布による脱水性能についても偏りが生じる可能性があった。これに対して上記の脱水機70では、濾布71に対して全体的に洗浄液が散布される構成を有するため、上記のような濾布71の洗浄に関する偏り等を抑制することができるため、濾布71の目詰まりを防ぐことができ、濾布71をより長期間利用することが可能となる。
【0070】
また、脱水機70では、ノズル822から濾布71の第1面(濃縮物が供給される面)に対して洗浄液が散布され、ノズル832,833から第2面(第1面に対する裏面)に対して洗浄液が散布される。すなわち、濾布71の両方の主面に対して洗浄液が散布される。このような構成とすることで、例えば、濾布の内部に入り込んだ異物についても洗浄液によって除去しやすくなる。そのため、異物による濾布の目詰まりがより効果的に防がれる。
【0071】
また、脱水機70では、ノズル832,833を上下から挟むように濾布71の走行経路が設けられている。また、濾布71の走行経路に挟まれたノズル832,833は、上方の走行経路に位置する濾布に対して洗浄液を散布している。このような構成とすることで、上方の濾布71に対して散布した洗浄液が落下する際に下方の濾布71にも散布され得る。そのため、濾布71と洗浄液とが接触する機会を増やすことができ、洗浄液による濾布71の洗浄効果をさらに高めることができる。
【0072】
一方、ノズル822は、その下方に、濾布71に係る複数の走行経路が上下に重なるように設けられている。また、ノズル822は、上方の走行経路に位置する濾布71の上面に対して洗浄液を散布する。このような構成とすることで、上方の濾布71に対して散布した洗浄液が落下する際に下方の洗浄液にも散布され得る。そのため、濾布71と洗浄液とが接触する機会を増やすことができ、洗浄液による濾布71の洗浄効果をさらに高めることができる。
【0073】
また、上記の水洗処理システム1では、脱水機70の洗浄液供給部82から供給された洗浄液を回収する洗浄液回収部としての液体回収部76と、液体回収部76で回収した液体を固液分離する固液分離部80と、がさらに設けられる。また、固液分離部80において分離された液体部分の少なくとも一部を洗浄液として利用してもよい。このような構成とすることで、洗浄液を再利用することが可能となり、濾布の洗浄に係るコストを抑制しながら洗浄を効率よく行うことができる。なお、固液分離部80は、脱水機70内に設けられていてもよい。この場合、脱水機70が固液分離部80としての機能を有していることになる。
【0074】
また、上記の水洗処理システム1は、クリンカーダストを含む粉体と水とを配合してスラリーを調製する水洗槽20と、水洗槽20からのスラリーと凝集剤とを配合する混和槽30と、混和槽30からのスラリー中の分散体を沈降させて、上澄み液と濃縮物とを形成する沈殿槽40と、沈殿槽40において形成された濃縮物を濾布71上に供給することで、濃縮物に係る脱水を行う脱水機70と、を有する。ここで、脱水機70は、走行経路上の濾布71に対して、濾布71上の異物を除去するための洗浄液を供給する洗浄液供給部82を有し、洗浄液供給部82は、開き角度が60度以上のスプレーパターンによって濾布71に対して全体的に洗浄液を散布する1以上のノズルを含む。また、洗浄液供給部82から供給されて濾布71の洗浄に使用された後の洗浄液を、水洗槽20に返送する返送ラインとしてもラインL10をさらに有してもよい。上記の水洗処理システム1によれば、脱水機70において、開き角度が60度以上のスプレーパターンを有する1以上のノズルによって、濾布71に対して全体的に洗浄液が散布される。そのため、濾布71の目詰まりを効果的に防ぐことができる。また、脱水機70における濾布の洗浄に使用された洗浄液を水洗槽20に返送するための返送ラインが設けられる。このような構成とすることで、濾布71の洗浄に使用した洗浄液を水洗槽20においてスラリーの調製に使用することが可能である。そのため、洗浄液を濾布の洗浄以外にも活用できるため、濾布の洗浄を行いつつシステムとしての運転コストを抑制することができる。
【0075】
なお、洗浄液は塩酸である態様としてもよい。クリンカーダストを含む粉体を処理する場合、濾布71に付着する異物は塩酸によって除去することが可能である。そのため、洗浄液として塩酸を用いることで、濾布71の洗浄を適切に行うことができる。
【0076】
[変形例]
以上、種々の例示的実施形態について説明してきたが、上述した例示的実施形態に限定されることなく、様々な省略、置換、及び変更がなされてもよい。また、異なる実施形態における要素を組み合わせて他の実施形態を形成することが可能である。
【0077】
例えば、水洗処理システム1における各部の構成は適宜変更することができる。例えば、水洗槽20、混和槽30および沈殿槽40の構成は、処理対象の粉体の種類等に応じて適宜変更することができる。
【0078】
また、脱水機70の構成についても適宜変更することができる。例えば、脱水機70における濾布71の走行経路の設計は適宜変更され得る。また、被処理物供給部74、および、洗浄液供給部82,83の配置についても適宜変更される。また、脱水機70は、所謂一枚濾布型の脱水機に限定されない。上記実施形態で説明した構成は、例えば、フィルタープレス型またはベルトプレス型の脱水機にも適用ができる。
【0079】
洗浄液供給部82,83のノズルの数は、ノズルの特性に応じて適宜変更することができる。また、ノズルの開き角度、ノズルパターンは、複数のノズルそれぞれについて互いに異なっていてもよい。
【0080】
また、ノズル832,833は、それぞれ、濾布71の幅方向(矢印A方向に対して直交する方向)の全体にわたって洗浄液が散布されるように配置されているが(
図3参照)、ノズル832,833のように、同一面に対して洗浄液を散布するノズルが配置される洗浄液供給部が濾布71の移動方向に沿って複数設けられる場合、複数の洗浄液供給部(ノズル)からの洗浄液の散布の結果、濾布71の幅方向(矢印A方向に対して直交する方向)の全体にわたって洗浄液が散布される構成であってもよい。
【符号の説明】
【0081】
1…水洗処理システム、10…貯蔵部、20…水洗槽、21…水供給手段、22…pH調整剤添加手段、30…混和槽、31…凝集剤添加手段、40…沈殿槽、41…レーキ、50…測定部、60…切替部、70…脱水機、71…濾布、72a~72h…プーリ、73a,73b…加圧ローラ、74…被処理物供給部、75…脱水物回収部、76…液体回収部、80…固液分離部、81…洗浄液供給源、82,83…洗浄液供給部、85…配管、822,832,833…ノズル。