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特許7554674発光素子用組成物及びそれを用いた発光素子の製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】発光素子用組成物及びそれを用いた発光素子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   H10K 71/12 20230101AFI20240912BHJP
   C08G 61/12 20060101ALI20240912BHJP
   H10K 50/11 20230101ALI20240912BHJP
   H10K 50/14 20230101ALI20240912BHJP
   H10K 85/00 20230101ALI20240912BHJP
【FI】
H10K71/12
C08G61/12
H10K50/11
H10K50/14
H10K85/00
【請求項の数】 4
(21)【出願番号】P 2021000717
(22)【出願日】2021-01-06
(65)【公開番号】P2021118173
(43)【公開日】2021-08-10
【審査請求日】2023-10-10
(31)【優先権主張番号】P 2020009110
(32)【優先日】2020-01-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000796
【氏名又は名称】弁理士法人三枝国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】安達 龍彦
(72)【発明者】
【氏名】川田 武史
(72)【発明者】
【氏名】廣井 結希
【審査官】藤岡 善行
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-246206(JP,A)
【文献】特開2008-56909(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H10K 50/00 - 99/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
高分子化合物と溶媒とを含む発光素子用組成物の製造方法であって、
溶媒を準備する準備工程と、
前記準備工程で準備した溶媒と高分子化合物とを含む発光素子用組成物中で、会合体を形成し、且つ、式(M-1)及び式(M-2)を満たすように、前記高分子化合物を選別する選別工程と、
前記準備工程で準備した溶媒と、前記選別工程で選別した高分子化合物と、を混合して、発光素子用組成物を製造する組成物製造工程と、
を含む、製造方法。
1.0<Mw1/Mw0≦2.0 (M-1)
1.22≦T1 (M-2)
[式中、
Mw1は、前記会合体の前記溶媒中の静的光散乱法により測定した重量平均モル質量を表す。
Mw0は、前記高分子化合物のテトラヒドロフラン中の静的光散乱法により測定した重量平均分子量を表す。
T1は、重テトラヒドロフラン中において、前記高分子化合物に含まれる全構成単位について、核磁気共鳴分光法を用いて縦緩和時間を算出した際、最も小さい縦緩和時間を有する構成単位の縦緩和時間[秒]を表す。]
【請求項2】
高分子化合物と溶媒とを含む発光素子用組成物の製造方法であって、
高分子化合物を準備する準備工程と、
前記準備工程で準備した高分子化合物と溶媒とを含む発光素子用組成物中で、会合体を形成し、且つ、式(M-1)及び式(M-2)を満たすように、前記溶媒を選別する選別工程と、
前記準備工程で準備した高分子化合物と、前記選別工程で選別した溶媒と、を混合して、発光素子用組成物を製造する組成物製造工程と、
を含む、製造方法。
1.0<Mw1/Mw0≦2.0 (M-1)
1.22≦T1 (M-2)
[式中、
Mw1は、前記会合体の前記溶媒中の静的光散乱法により測定した重量平均モル質量を表す。
Mw0は、前記高分子化合物のテトラヒドロフラン中の静的光散乱法により測定した重量平均分子量を表す。
T1は、重テトラヒドロフラン中において、前記高分子化合物に含まれる全構成単位について、核磁気共鳴分光法を用いて縦緩和時間を算出した際、最も小さい縦緩和時間を有する構成単位の縦緩和時間[秒]を表す。]
【請求項3】
発光素子用組成物を濾過する工程を更に含む、請求項又はに記載の発光素子用組成物の製造方法。
【請求項4】
陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に設けられた有機層とを有する発光素子の製造方法であり、前記有機層が、請求項3に記載の製造方法により製造された発光素子用組成物を用いて、湿式法により形成される、発光素子の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、発光素子用組成物及びそれを用いた発光素子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
有機エレクトロルミネッセンス素子等の発光素子は、ディスプレイ及び照明の用途に好適に使用することが可能である。発光素子の有機層を形成する方法としては、製造工程の簡略化及び製造コストが低減できるので、湿式法が有利である。
湿式法には、塗布ムラ及びインクジェットノズルの目詰まりを防止するため、通常、濾過した液状組成物が用いられる。例えば、特許文献1には、孔径0.03μm~0.10μmのフィルターを用いて加圧濾過した液状組成物が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2013-026164号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
しかし、本発明者の検討によれば、上記液状組成物の濾過性が必ずしも十分ではないことが明らかとなった。具体的には、発光素子用組成物に含まれる高分子化合物が会合体を形成することにより、その濾過時にフィルターの目詰まりが生じ濾過性が低下することが判明した。
そこで、本発明は、濾過性が優れる発光素子用組成物を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明者らは、発光素子用組成物に含まれる高分子化合物の会合体形成、及び発光素子用組成物の濾過性に着目し、上記課題を解決するために鋭意検討を行った結果、該会合体の重量平均モル質量と高分子化合物の重量平均分子量とが特定の関係を満たすこと、及び/又は、高分子化合物に含まれる構成単位が特定の縦緩和時間を満たすことにより、濾過性の優れる発光素子用組成物となることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0006】
即ち、本発明は、以下の[1]~[16]を提供する。
【0007】
[1]
高分子化合物と溶媒とを含む発光素子用組成物であって、
前記高分子化合物は、前記発光素子用組成物中で会合体を形成する高分子化合物であり、
前記高分子化合物が式(M-1)及び式(M-2)のうち、少なくとも1つを満たす、発光素子用組成物。
1.0<Mw1/Mw0≦2.0 (M-1)
1.22≦T1 (M-2)
[式中、
Mw1は、前記会合体の前記溶媒中の静的光散乱法により測定した重量平均モル質量を表す。
Mw0は、前記高分子化合物のテトラヒドロフラン中の静的光散乱法により測定した重量平均分子量を表す。
T1は、重テトラヒドロフラン中において、前記高分子化合物に含まれる全構成単位について、核磁気共鳴分光法を用いて縦緩和時間を算出した際、最も小さい縦緩和時間を有する構成単位の縦緩和時間[秒]を表す。]
[2]
前記高分子化合物が、式(Y)で表される構成単位、式(X)で表される構成単位及び式(Z)で表される構成単位のうちの少なくとも1種を含む、[1]に記載の発光素子用組成物。
【0008】
[式中、ArY1は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。]
【0009】
[式中、
1及びa2は、それぞれ独立に、0以上の整数を表す。
ArX1及びArX3は、それぞれ独立に、アリーレン基又は2価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX2及びArX4は、それぞれ独立に、アリーレン基、2価の複素環基、又は、アリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。ArX2及びArX4が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
X1、RX2及びRX3は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。RX2及びRX3が複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0010】
[式中、ArZ1は、2価の複素環基、又は、アリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
[3]
前記高分子化合物が、前記式(Y)で表される構成単位として、式(Y-1)及び/又は式(Y-2)で表される構成単位(即ち、式(Y-1)で表される構成単位、式(Y-2)で表される構成単位、又は、式(Y-1)で表される構成単位と式(Y-2)で表される構成単位との両方)を含む、[2]に記載の発光素子用組成物。
【0011】
[式中、ArY2は、ベンゼン又は2個以上のベンゼンが縮合した芳香族炭化水素から、環を構成する炭素原子に直接結合する2個の水素原子を取り除いてなる2価の基を表し、該基は置換基を有していてもよい。]
【0012】
[式中、ArY3は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。但し、ArY3は、環を構成するsp3炭素原子の数が1以上である。]
[4]
前記高分子化合物が前記式(M-2)を満たし、かつ、前記最も小さい縦緩和時間を有する構成単位が式(Y)で表される構成単位である、[1]に記載の発光素子用組成物。
【0013】
[式中、ArY1は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。]
[5]
前記式(Y)で表される構成単位が、式(Y-1)及び/又は式(Y-2)で表される構成単位(即ち、式(Y-1)で表される構成単位、式(Y-2)で表される構成単位、又は、式(Y-1)で表される構成単位と式(Y-2)で表される構成単位との両方)である、[4]に記載の発光素子用組成物。
【0014】
[式中、ArY2は、ベンゼン又は2個以上のベンゼンが縮合した芳香族炭化水素から、環を構成する炭素原子に直接結合する2個の水素原子を取り除いてなる2価の基を表し、該基は置換基を有していてもよい。]
【0015】
[式中、ArY3は、置換基を有していてもよいアリーレン基を表す。但し、ArY3は、環を構成するsp3炭素原子の数が1以上である。]
[6]
前記高分子化合物が前記式(M-1)を満たし、
前記重量平均分子量が、1.0×10以下である、[1]~[5]のいずれかに記載の発光素子用組成物。
[7]
前記高分子化合物が前記式(M-1)及び前記式(M-2)を満たす、[1]~[6]のいずれかに記載の発光素子用組成物。
[8]
前記溶媒が、芳香族炭化水素溶媒及び芳香族エーテル溶媒のうちの少なくとも1種を含む、[1]~[7]のいずれかに記載の発光素子用組成物。
[9]
前記溶媒が、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、メチルアニソール、ジメチルアニソール、エチルアニソール、ブチルフェニルエーテル、ブチルアニソール、ペンチルアニソール、ヘキシルアニソール、ヘプチルアニソール、オクチルアニソール及びフェノキシトルエンのうちの少なくとも1種を含む、[1]~[8]のいずれかに記載の発光素子用組成物。
[10]
前記高分子化合物の含有量が、前記高分子化合物と前記溶媒との合計の含有量を100質量部とした場合、0.1~10質量部である、[1]~[9]のいずれかに記載の発光素子用組成物。
[11]
正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料、発光材料及び酸化防止剤からなる群より選ばれる少なくとも1種を更に含有する、[1]~[10]のいずれかに記載の発光素子用組成物。
[12]
陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に設けられた有機層とを有する発光素子の製造方法であり、前記有機層が、[1]~[11]のいずれかに記載の組成物を用いて湿式法により形成される、発光素子の製造方法。
[13]
高分子化合物と溶媒とを含む発光素子用組成物の製造方法であって、
溶媒を準備する準備工程と、
前記準備工程で準備した溶媒と高分子化合物とを含む発光素子用組成物中で、会合体を形成し、且つ、前記式(M-1)及び前記式(M-2)のうち、少なくとも1つを満たすように、前記高分子化合物を選別する選別工程と、
前記準備工程で準備した溶媒と、前記選別工程で選別した高分子化合物と、を混合して、発光素子用組成物を製造する組成物製造工程と、
を含む、製造方法。
[14]
高分子化合物と溶媒とを含む発光素子用組成物の製造方法であって、
高分子化合物を準備する準備工程と、
前記準備工程で準備した高分子化合物と溶媒とを含む発光素子用組成物中で、会合体を形成し、且つ、前記式(M-1)及び前記式(M-2)のうち、少なくとも1つを満たすように、前記溶媒を選別する選別工程と、
前記準備工程で準備した高分子化合物と、前記選別工程で選別した溶媒と、を混合して、発光素子用組成物を製造する組成物製造工程と、
を含む、製造方法。
[15]
発光素子用組成物を濾過する工程を更に含む、[13]又は[14]に記載の発光素子用組成物の製造方法。
[16]
陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に設けられた有機層とを有する発光素子の製造方法であり、前記有機層が、[13]~[15]のいずれかに記載の製造方法により製造された発光素子用組成物を用いて、湿式法により形成される、発光素子の製造方法。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、濾過性が優れる発光素子用組成物等を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の好適な実施形態について詳細に説明する。
【0018】
1.共通する用語の説明
本明細書で共通して用いられる用語は、特記しない限り、以下の意味である。
【0019】
Meはメチル基、Etはエチル基、Buはブチル基、i-Prはイソプロピル基、t-Buはtert-ブチル基を表す。
【0020】
水素原子は、重水素原子であっても、軽水素原子であってもよい。
【0021】
金属錯体を表す式中、中心金属との結合を表す実線は、共有結合又は配位結合を意味する。
【0022】
「高分子化合物」とは、分子量分布を有し、テトラヒドロフラン中の静的光散乱法により測定した重量平均分子量が1×103~1×108である重合体を意味する。
【0023】
「低分子化合物」とは、分子量分布を有さず、分子量が1×104以下の化合物を意味する。
【0024】
「構成単位」とは、高分子化合物中に1個以上存在する単位を意味する。高分子化合物中に2個以上存在する構成単位は、一般的に、「繰り返し単位」と呼ばれる。
【0025】
「アルキル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。分岐のアルキル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。 アルキル基は、置換基を有していてもよく、該置換基を有していてもよいアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、2-ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ペンチル基、イソアミル基、2-エチルブチル基、ヘキシル基、ヘプチル基、オクチル基、2-エチルヘキシル基、3-プロピルヘプチル基、デシル基、3,7-ジメチルオクチル基、2-エチルオクチル基、2-ヘキシルデシル基、ドデシル基、及び、これらの基における水素原子が、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子等で置換された基(例えば、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、パーフルオロブチル基、パーフルオロヘキシル基、パーフルオロオクチル基、3-フェニルプロピル基、3-(4-メチルフェニル)プロピル基、3-(3,5-ジ-ヘキシルフェニル)プロピル基、6-エチルオキシヘキシル基)が挙げられる。
「シクロアルキル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~50であり、好ましくは3~30であり、より好ましくは4~20である。
シクロアルキル基は、置換基を有していてもよく、該置換基を有していてもよいシクロアルキル基としては、例えば、シクロヘキシル基、シクロヘキシルメチル基、シクロヘキシルエチル基が挙げられる。
【0026】
「アリール基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた残りの原子団を意味する。アリール基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~20であり、より好ましくは6~10である。
アリール基は、置換基を有していてもよく、該置換基を有していてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基、1-アントラセニル基、2-アントラセニル基、9-アントラセニル基、1-ピレニル基、2-ピレニル基、4-ピレニル基、2-フルオレニル基、3-フルオレニル基、4-フルオレニル基、2-フェニルフェニル基、3-フェニルフェニル基、4-フェニルフェニル基、及び、これらの基における水素原子が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
【0027】
「アルコキシ基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常1~40であり、好ましくは4~10である。分岐のアルコキシ基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
アルコキシ基は、置換基を有していてもよく、該置換基を有していてもよいアルコキシ基としては、例えば、メトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、tert-ブチルオキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、ヘプチルオキシ基、オクチルオキシ基、2-エチルヘキシルオキシ基、ノニルオキシ基、デシルオキシ基、3,7-ジメチルオクチルオキシ基、ラウリルオキシ基、及び、これらの基における水素原子が、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
「シクロアルコキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~40であり、好ましくは4~10である。
シクロアルコキシ基は、置換基を有していてもよく、該置換基を有していてもよいシクロアルコキシ基としては、例えば、シクロヘキシルオキシ基が挙げられる。
【0028】
「アリールオキシ基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常6~60であり、好ましくは6~48である。
アリールオキシ基は、置換基を有していてもよく、該置換基を有していてもよいアリールオキシ基としては、例えば、フェノキシ基、1-ナフチルオキシ基、2-ナフチルオキシ基、1-アントラセニルオキシ基、9-アントラセニルオキシ基、1-ピレニルオキシ基、及び、これらの基における水素原子が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、フッ素原子等で置換された基が挙げられる。
【0029】
「p価の複素環基」(pは、1以上の整数を表す。)とは、複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団を意味する。p価の複素環基の中でも、芳香族複素環式化合物から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうちp個の水素原子を除いた残りの原子団である「p価の芳香族複素環基」が好ましい。
「芳香族複素環式化合物」は、オキサジアゾール、チアジアゾール、チアゾール、オキサゾール、チオフェン、ピロール、ホスホール、フラン、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、トリアジン、ピリダジン、キノリン、イソキノリン、カルバゾール、ジベンゾホスホール等の複素環自体が芳香族性を示す化合物、及び、フェノキサジン、フェノチアジン、ジベンゾボロール、ジベンゾシロール、ベンゾピラン等の複素環自体は芳香族性を示さなくとも、複素環に芳香環が縮環されている化合物を意味する。
【0030】
1価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、2~60であり、好ましくは4~20である。
1価の複素環基は、置換基を有していてもよく、該置換基を有していてもよい1価の複素環基としては、例えば、チエニル基、ピロリル基、フリル基、ピリジル基、ピペリジニル基、キノリニル基、イソキノリニル基、ピリミジニル基、トリアジニル基、及び、これらの基における水素原子が、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基等で置換された基が挙げられる。
【0031】
「ハロゲン原子」とは、フッ素原子、塩素原子、臭素原子又はヨウ素原子を示す。
【0032】
「アミノ基」は、置換基を有していてもよく、置換アミノ基が好ましい。アミノ基が有する置換基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基が好ましい。
置換アミノ基としては、例えば、ジアルキルアミノ基、ジシクロアルキルアミノ基及びジアリールアミノ基が挙げられる。
置換アミノ基としては、例えば、ジメチルアミノ基、ジエチルアミノ基、ジフェニルアミノ基、ビス(4-メチルフェニル)アミノ基、ビス(4-tert-ブチルフェニル)アミノ基、ビス(3,5-ジ-tert-ブチルフェニル)アミノ基が挙げられる。
【0033】
「アルケニル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。直鎖のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常2~30であり、好ましくは3~20である。分岐のアルケニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは4~20である。
「シクロアルケニル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常3~30であり、好ましくは4~20である。
アルケニル基及びシクロアルケニル基は、置換基を有していてもよく、該置換基を有していてもよいアルケニル基及びシクロアルケニル基としては、例えば、ビニル基、1-プロペニル基、2-プロペニル基、2-ブテニル基、3-ブテニル基、3-ペンテニル基、4-ペンテニル基、1-ヘキセニル基、5-ヘキセニル基、7-オクテニル基、及び、これらの基が置換基を有する基が挙げられる。
【0034】
「アルキニル基」は、直鎖及び分岐のいずれでもよい。アルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含めないで、通常2~20であり、好ましくは3~20である。分岐のアルキニル基の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含めないで、通常4~30であり、好ましくは4~20である。
「シクロアルキニル基」の炭素原子数は、置換基の炭素原子を含めないで、通常4~30であり、好ましくは4~20である。
アルキニル基及びシクロアルキニル基は、置換基を有していてもよく、該置換基を有していてもよいアルキニル基及びシクロアルキニル基としては、例えば、エチニル基、1-プロピニル基、2-プロピニル基、2-ブチニル基、3-ブチニル基、3-ペンチニル基、4-ペンチニル基、1-ヘキシニル基、5-ヘキシニル基、及び、これらの基が置換基を有する基が挙げられる。
【0035】
「アリーレン基」は、芳香族炭化水素から環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子2個を除いた残りの原子団を意味する。アリーレン基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、6~60であり、好ましくは6~30であり、より好ましくは6~18である。
アリーレン基は、置換基を有していてもよく、該置換基を有していてもよいアリーレン基としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、ナフタセンジイル基、フルオレンジイル基、ピレンジイル基、ペリレンジイル基、クリセンジイル基、ジベンゾシクロへプタンジイル基、及び、これらの基が置換基を有する基が挙げられ、好ましくは、式(A-1)~式(A-24)で表される基である。アリーレン基は、これらの基が複数結合した基を含む。
【0036】
【0037】
【0038】
【0039】
【0040】
[式中、R及びRaは、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又は置換アミノ基を表す。複数存在するR及びRaは、各々、同一でも異なっていてもよく、Ra同士は互いに結合して、それぞれが結合する原子と共に環を形成していてもよい。当該環は置換基を有していてもよい。]
【0041】
2価の複素環基の炭素原子数は、置換基の炭素原子数を含めないで、通常、2~60であり、好ましくは3~20であり、より好ましくは4~15である。
2価の複素環基は、置換基を有していてもよく、該置換基を有していてもよい2価の複素環基としては、例えば、ピリジン、ジアザベンゼン、トリアジン、アザナフタレン、ジアザナフタレン、カルバゾール、ジベンゾフラン、ジベンゾチオフェン、ジベンゾシロール、フェノキサジン、フェノチアジン、アクリジン、ジヒドロアクリジン、フラン、チオフェン、アゾール、ジアゾール、トリアゾールから、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合している水素原子のうち2個の水素原子を除いた2価の基が挙げられ、好ましくは、式(AA-1)~式(AA-34)で表される基である。2価の複素環基は、これらの基が複数結合した基を含む。
【0042】
【0043】
【0044】
【0045】
【0046】
【0047】
【0048】
[式中、R及びRaは、前記と同じ意味を表す。]
【0049】
「架橋基」とは、加熱、紫外線照射、近紫外線照射、可視光照射、赤外線照射、ラジカル反応等に供することにより、新たな結合を生成することが可能な基であり、好ましくは、式(B-1)-式(B-17)のいずれかで表される基である。これらの基は、置換基を有していてもよい。
【0050】
【0051】
「置換基」としては、例えば、ハロゲン原子、シアノ基、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリールオキシ基、アミノ基、置換アミノ基、アルケニル基、シクロアルケニル基、アルキニル基及びシクロアルキニル基が挙げられる。置換基は、架橋基であってもよい。なお、置換基が複数存在する場合、それらは互いに結合して、それぞれが結合する原子とともに環を形成していてもよい。
【0052】
2.高分子化合物
本実施形態の発光素子用組成物に含まれる高分子化合物(以下、「本実施形態の高分子化合物」ともいう。)は、本実施形態の発光素子用組成物中で会合体を形成する高分子化合物である。
本実施形態の高分子化合物は、式(M-1)及び式(M-2)のうちの少なくとも1つを満たす高分子化合物であり、本実施形態の発光素子用組成物の濾過性が優れるので、式(M-1)及び式(M-2)を満たすことが好ましい。
【0053】
本実施形態の高分子化合物の重量平均分子量は、実施例に記載の条件で静的光散乱法により測定した値である。高分子化合物の重量平均分子量は、通常、5.0×103~1.0×108であり、好ましくは1.0×104~1.0×106であり、より好ましくは5.0×104~5.0×105であり、更に好ましくは8.0×104~1.0×105である。
【0054】
本実施形態の組成物における会合体の重量平均モル質量は、実施例に記載の条件で静的光散乱法により測定した値である。会合体の重量平均モル質量は、通常、5.0×103~1.0×108であり、好ましくは1.0×104~1.0×106であり、より好ましくは5.0×104~5.0×105であり、更に好ましくは8.0×104~1.5×105であり、特に好ましくは1.0×105~1.4×105である。
【0055】
本実施形態の高分子化合物は、正孔輸送性が優れるので、式(X)で表される構成単位を含むことが好ましい。本実施形態の高分子化合物は、電荷輸送性が優れるので、式(Y)で表される構成単位を含むことが好ましい。本実施形態の高分子化合物は、電荷輸送性が優れるので、式(Z)で表される構成単位を含むことが好ましい。
本実施形態の高分子化合物は、本実施形態の発光素子用組成物の濾過性が優れるので、式(Y)で表される構成単位、式(X)で表される構成単位及び式(Z)で表される構成単位のうちの少なくとも1種を含む高分子化合物であることが好ましく、式(Y)で表される構成単位を含む高分子化合物であることがより好ましく、式(Y)で表される構成単位と、式(X)で表される構成単位及び式(Z)で表される構成単位のうちの少なくとも1種とを含む高分子化合物であることが更に好ましく、式(Y)で表される構成単位と、式(X)で表される構成単位と、式(Z)で表される構成単位とを含む高分子化合物であることが特に好ましい。
本実施形態の高分子化合物には、式(X)で表される構成単位、式(Y)で表される構成単位及び式(Z)で表される構成単位が、それぞれ、1種のみ含まれていてもよいし、2種以上含まれていてもよい。
本実施形態の高分子化合物には、式(Y)で表される構成単位が、1種以上30種以下含まれることが好ましく、2種以上20種以下含まれることがより好ましく、3種以上10種以下含まれることが更に好ましい。
本実施形態の高分子化合物には、式(X)で表される構成単位が、1種以上10種以下含まれることが好ましく、1種以上5種以下含まれることがより好ましく、1種以上3種以下含まれることが更に好ましい。
本実施形態の高分子化合物には、式(Z)で表される構成単位が、1種以上10種以下含まれることが好ましく、1種以上5種以下含まれることがより好ましく、1種以上3種以下含まれることが更に好ましい。
【0056】
[式(X)で表される構成単位]
は、好ましくは2以下であり、より好ましくは1である。
は、好ましくは2以下であり、より好ましくは0である。
【0057】
X1~RX3は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基又は1価の複素環基であり、更に好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
X1~RX3におけるアリール基は、好ましくは、ベンゼン環、ナフタレン環、フェナントレン環、ジヒドロフェナントレン環又はフルオレン環から、環を構成する炭素原子に直接結合する水素原子1個を除いた基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。 RX1~RX3における1価の複素環基は、好ましくは、ピリジン環、ジアザベンゼン環、トリアジン環、アザナフタレン環、ジアザナフタレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環又はジヒドロアクリジン環から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合する水素原子1個を除いた基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0058】
ArX1~ArX4におけるアリーレン基は、好ましくは、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、ピレンジイル基、フルオレンジイル基又はジベンゾシクロへプタンジイル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX1~ArX4における2価の複素環基は、好ましくは、ピリジン環、ジアザベンゼン環、トリアジン環、アザナフタレン環、ジアザナフタレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環又はジヒドロアクリジン環から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合する水素原子2個を除いた基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0059】
ArX1~ArX4で表されるアリーレン基は、式(A-1)~式(A-14)又は式(A-19)~式(A-23)で表される基であり、より好ましくは式(A-1)~式(A-3)、式(A-7)~式(A-9)又は式(A-19)~式(A-21)で表される基である。
ArX1~ArX4で表される2価の複素環基は、好ましくは式(AA-1)~式(AA-15)又は式(AA-18)~式(AA-22)で表される基である。
【0060】
ArX2及びArX4で表されるアリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基における、アリーレン基及び2価の複素環基の好ましい範囲は、それぞれ、ArX1~ArX4で表されるアリーレン基及び2価の複素環基の好ましい範囲と同じである。
【0061】
ArX2及びArX4で表されるアリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基としては、例えば、下記式で表される基が挙げられ、これらは置換基を有していてもよい。
【0062】
[式中、RXXは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0063】
XXは、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArX1~ArX4は、好ましくは、置換基を有していてもよいアリーレン基である。
【0064】
ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有してもよい置換基としては、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又は置換アミノ基であり、より好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有してもよい置換基におけるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい例は、それぞれ、RX1~RX3におけるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい例と同様である。
ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有してもよい置換基における置換アミノ基において、アミノ基が有する置換基としては、アリール基又は1価の複素環基が好ましく、アリール基がより好ましく、これらの基は更に置換基を有していてもよい。アミノ基が有する置換基におけるアリール基の例及び好ましい例は、RX1~RX3におけるアリール基の例及び好ましい例と同様である。アミノ基が有する置換基における1価の複素環基の例及び好ましい例は、RX1~RX3における1価の複素環基の例及び好ましい例と同様である。
【0065】
ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有してもよい置換基が更に有していてもよい置換基としては、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又は置換アミノ基であり、より好ましくはアルキル基又はシクロアルキル基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよいが、更に置換基を有さないことが好ましい。
ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい例は、それぞれ、ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有していてもよい置換基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい例と同様である。
【0066】
式(X)で表される構成単位としては、好ましくは式(X-1)~式(X-7)で表される構成単位である。
【0067】
【0068】
【0069】
【0070】
[式中、RX4及びRX5は、それぞれ独立に、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基、アリールオキシ基、ハロゲン原子、1価の複素環基又はシアノ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRX4は、同一でも異なっていてもよい。複数存在するRX5は、同一でも異なっていてもよく、隣接するRX5同士は互いに結合して、それぞれが結合する炭素原子と共に環を形成していてもよい。]
【0071】
x4及びRx5は、好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又は置換アミノ基であり、より好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
x4及びRx5におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい例は、それぞれ、ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有していてもよい置換基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい例と同様である。
x4及びRx5で表される基が有していてもよい置換基の例及び好ましい例は、ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有してもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例及び好ましい例と同様である。
【0072】
式(X)で表される構成単位としては、例えば、式(X1-1)~式(X1-37)で表される構成単位が挙げられ、好ましくは、式(X1-1)~式(X1-19)で表される構成単位である。
【0073】
【0074】
【0075】
【0076】
【0077】
【0078】
【0079】
【0080】
【0081】
【0082】
【0083】
【0084】

【0085】
【0086】
【0087】
【0088】
【0089】
本実施形態の高分子化合物に含まれる式(X)で表される構成単位の含有量は、正孔輸送性が優れるので、本実施形態の高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは0.01モル%~50モル%であり、より好ましくは0.02モル%~30モル%であり、更に好ましくは0.05モル%~10モル%であり、特に好ましくは0.1モル%~5モル%である。
本実施形態の高分子化合物に含まれる式(X)で表される構成単位の含有量は、本実施形態の発光素子用組成物の濾過性が優れるので、本実施形態の高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは0.01モル%~20モル%であり、より好ましくは0.02モル%~10モル%であり、更に好ましくは0.05モル%~5モル%であり、特に好ましくは0.1モル%~3モル%である。
【0090】
[式(Y)で表される構成単位]
ArY1で表されるアリーレン基は、好ましくは、フェニレン基、ナフタレンジイル基、アントラセンジイル基、ナフタセンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、ピレンジイル基、フルオレンジイル基又はジベンゾシクロへプタンジイル基であり、より好ましくは、式(A-1)~式(A-14)又は式(A-19)~式(A-24)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
ArY1で表される基が有していてもよい置換基は、好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又は置換アミノ基であり、より好ましくは、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、これらの基は更に置換基を有していてもよい。
ArY1で表される基が有していてもよい置換基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい例は、それぞれ、ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有していてもよい置換基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい例と同様である。
ArY1で表される基が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例及び好ましい例は、ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例及び好ましい例と同様である。
【0091】
本実施形態の発光素子用組成物の濾過性が優れるので、式(Y)で表される構成単位は、好ましくは式(Y-1)で表される構成単位及び/又は式(Y-2)で表される構成単位である。
【0092】
ArY2における、2個以上のベンゼンが縮合した芳香族炭化水素は、好ましくは、2個以上10個以下(好ましくは、2個以上5個以下)のベンゼンのみが縮合した芳香族炭化水素であり、より好ましくは、ナフタレン、アントラセン、ナフタセン、フェナントレン、ピレン、クリセン又はペリレンであり、更に好ましくは、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン又はピレンである。
ArY2は、好ましくは、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン又はピレンから、環を構成する炭素原子に直接結合する2個の水素原子を取り除いてなる2価の基であり、より好ましくは、式(A-1)~式(A-6)、式(A-11)~式(A-14)、式(A-19)又は式(A-20)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0093】
ArY3におけるアリーレン基において、環を構成するsp3炭素原子の数は、好ましくは1以上10以下であり、より好ましくは1以上5以下であり、更に好ましくは1以上3以下である。
ArY3におけるアリーレン基は、好ましくは、フルオレン、ジヒドロフェナントレン又はジヒドロジベンゾシクロへプテンから、環を構成する炭素原子に直接結合する2個の水素原子を取り除いてなる2価の基であり、より好ましくは、式(A-7)~式(A-9)又は式(A-21)~式(A-23)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0094】
式(Y-1)で表される構成単位は、本実施形態の発光素子用組成物の濾過性が優れるので、好ましくは式(Y’-1)で表される構成単位である。
式(Y-2)で表される構成単位は、本実施形態の発光素子用組成物の濾過性が優れるので、好ましくは式(Y’-2)で表される構成単位である。
[式中、ArY4は、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン又はピレンから、環を構成する炭素原子に直接結合する2個の水素原子を取り除いてなる2価の基であり、該基は、置換基を有していてもよい。]
[式中、ArY5は、フルオレン、ジヒドロフェナントレン又はジヒドロジベンゾシクロへプテンから、環を構成する炭素原子に直接結合する2個の水素原子を取り除いてなる2価の基であり、該基は、置換基を有していてもよい。]
【0095】
ArY2~ArY5で表される基が有していてもよい置換基は、それぞれ、前記ArY1で表される基が有していてもよい置換基の例及び好ましい例と同様である。
【0096】
ArY4で表される基として、好ましくは、式(A-1)~式(A-6)、式(A-11)~式(A-14)、式(A-19)又は式(A-20)で表される基であり、より好ましくは、式(A-1)、式(A-2)、式(A-6)、式(A-11)、式(A-14)又は式(A-19)で表される基である。
【0097】
ArY5で表される基として、好ましくは、式(A-7)~式(A-9)又は式(A-21)~式(A-23)で表される基であり、より好ましくは、式(A-7)、式(A-9)又は式(A-22)で表される基である。
【0098】
式(Y)で表される構成単位としては、例えば、式(Y-11)~式(Y-91)で表される構成単位が挙げられる。
【0099】
【0100】
【0101】
【0102】
【0103】
【0104】
【0105】
【0106】
【0107】
【0108】
【0109】
【0110】
【0111】
【0112】
【0113】
【0114】
【0115】
【0116】
【0117】
【0118】
【0119】
【0120】
【0121】
【0122】
本実施形態の高分子化合物に含まれる式(Y)で表される構成単位の含有量は、本実施形態の発光素子用組成物の濾過性が優れるので、本実施形態の高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは1モル%~100モル%であり、より好ましくは30モル%~99モル%であり、更に好ましくは50モル%~99モル%であり、特に好ましくは70モル%~98モル%であり、とりわけ好ましくは90モル%~98モル%である。
本実施形態の高分子化合物に含まれる式(Y-1)で表される構成単位の含有量は、本実施形態の発光素子用組成物の濾過性が優れるので、本実施形態の高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは1モル%~70モル%であり、より好ましく5モル%~40モル%であり、更に好ましくは10モル%~30モル%である。
本実施形態の高分子化合物に含まれる式(Y-2)で表される構成単位の含有量は、本実施形態の発光素子用組成物の濾過性が優れるので、本実施形態の高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは1モル%~99モル%であり、より好ましく30モル%~95モル%であり、更に好ましくは50モル%~90モル%であり、特に好ましくは65モル%~80モル%である。
【0123】
式(Y)で表される構成単位は、式(Y-1)で表される構成単位及び式(Y-2)で表される構成単位を含むことが好ましい。その場合、式(Y-1)で表される構成単位と式(Y-2)で表される構成単位とのモル比率は、好ましくは1:99~99:1であり、より好ましくは5:95~90:10であり、更に好ましくは10:90~50:50であり、特に好ましくは15:85~20:80であり、とりわけ好ましくは20:80~30:70である。
【0124】
[式(Z)で表される構成単位]
ArZ1で表される2価の複素環基は、好ましくは、ピリジン環、ジアザベンゼン環、トリアジン環、アザナフタレン環、ジアザナフタレン環、カルバゾール環、ジベンゾフラン環、ジベンゾチオフェン環、フェノキサジン環、フェノチアジン環又はジヒドロアクリジン環から、環を構成する炭素原子又はヘテロ原子に直接結合する水素原子2個を除いた基であり、より好ましくは、式(AA-1)~式(AA-4)、式(AA-10)~式(AA-15)又は式(AA-18)~式(AA-22)で表される基であり、更に好ましくは、式(AA-4)、式(AA-10)、式(AA-11)又は式(AA-18)~式(AA-21)で表される基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
【0125】
ArZ1で表されるアリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基におけるアリーレン基の例及び好ましい範囲は、ArY1で表されるアリーレン基の例及び好ましい範囲と同様である。
ArZ1で表されるアリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基における2価の複素環基の例及び好ましい範囲は、ArZ1で表される2価の複素環基の例及び好ましい範囲と同様である。
【0126】
ArZ1で表されるアリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基としては、例えば、ArX2及びArX4で表されるアリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基の例が挙げられる。
【0127】
ArZ1で表される基が有してもよい置換基の例及び好ましい範囲は、ArY1で表される基が有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同様である。
【0128】
式(Z)で表される構成単位としては、例えば、式(Z-1)~式(Z-5)で表される構成単位が挙げられ、電子輸送性の観点からは、好ましくは式(Z-1)又は式(Z-2)で表される構成単位であり、正孔輸送性の観点からは、好ましくは式(Z-3)~式(Z-5)で表される構成単位である。
式(Z)で表される構成単位は、本実施形態の発光素子用組成物の濾過性が優れるので、式(Z-3)~式(Z-5)で表される構成単位であることが好ましい。
【0129】
[式中、
Y1は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。複数存在するRY1は、同一でも異なっていてもよい。
Y3は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、1価の複素環基、アルコキシ基、シクロアルコキシ基又は置換アミノ基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0130】
Y1は、好ましくは、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基又はアリール基であり、より好ましくは、水素原子又はアルキル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Y3は、好ましくはアルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基又は1価の複素環基であり、更に好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Y3で表される基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい範囲は、それぞれ、ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有してもよい置換基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい範囲と同じである。
Y3が有してもよい置換基の例及び好ましい範囲は、ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有してもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例及び好ましい範囲と同じである。
【0131】
[式中、
Y1は、前記を同じ意味を表す。
Y4は、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基又は1価の複素環基を表し、これらの基は置換基を有していてもよい。]
【0132】
Y4は、好ましくはアリール基又は1価の複素環基であり、より好ましくはアリール基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。
Y4で表される基におけるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい例は、それぞれ、ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有していてもよい置換基におけるアリール基及び1価の複素環基の例及び好ましい例と同様である。
Y4が有していてもよい置換基の例及び好ましい例は、ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例及び好ましい例と同様である。
【0133】
式(Z)で表される構成単位としては、例えば、式(Z-201)-式(Z-215)で表される2価の複素環基からなる構成単位、式(Z-301)-式(Z-310)で表されるアリーレン基と2価の複素環基とが直接結合した2価の基からなる構成単位が挙げられる。
【0134】
【0135】
【0136】
【0137】
【0138】
【0139】
[式中、
Aは、-O-で表される基又は-S-で表される基を表す。ZAが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
Bは、-CH=で表される基又は-N=で表される基を表す。ZBが複数存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。]
【0140】
Aは、好ましくは-O-で表される基である。
Bは、好ましくは-N=で表される基である。
【0141】
本実施形態の高分子化合物に含まれる式(Z)で表される構成単位の含有量は、本実施形態の高分子化合物の電荷輸送性が優れるので、高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは0.01モル%~50モル%であり、より好ましくは0.05モル%~30モル%であり、更に好ましくは0.1モル%~10モル%であり、特に好ましくは1モル%~5モル%である。
本実施形態の高分子化合物に含まれる式(Y-1)で表される構成単位の含有量は、本実施形態の発光素子用組成物の濾過性が優れるので、本実施形態の高分子化合物に含まれる構成単位の合計量に対して、好ましくは0.01モル%~50モル%であり、より好ましくは0.05モル%~30モル%であり、更に好ましくは0.1モル%~10モル%であり、特に好ましくは1モル%~5モル%であり、とりわけ好ましくは2モル%~3モル%である。
【0142】
本実施形態の高分子化合物としては、例えば、表1に示す高分子化合物P-1~P-7が挙げられる。ここで、「その他の構成単位」とは、式(Y)、式(X)及び式(Z)で表される構成単位以外の構成単位を意味する。
【表1】
[表中、p、q、r及びsは、各構成単位のモル比率を表す。p+q+r+s=100であり、かつ、70≦p+q+r≦100である。]
【0143】
高分子化合物P-1~P-7における、式(Y)、式(X)及び式(Z)で表される構成単位の例及び好ましい範囲は、上述のとおりである。
【0144】
本実施形態の高分子化合物の末端基は、重合活性基がそのまま残っていると、本実施形態の高分子化合物を発光素子の作製に用いた場合に発光特性や輝度寿命が低下する可能性があるので、好ましくは安定な基であり、より好ましくはアリール基、1価の複素環基又は置換アミノ基であり、更に好ましくはアリール基であり、特に好ましくはフェニル基であり、これらの基は置換基を有していてもよい。末端基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい例は、それぞれ、ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有していてもよい置換基におけるアリール基、1価の複素環基及び置換アミノ基の例及び好ましい例と同様である。末端基におけるアリール基及び1価の複素環基が有していてもよい置換基の例及び好ましい例は、ArX1~ArX4及びRX1~RX3で表される基が有していてもよい置換基が更に有していてもよい置換基の例及び好ましい例と同様である。
【0145】
本実施形態の高分子化合物は、ブロック共重合体、ランダム共重合体、交互共重合体、グラフト共重合体のいずれであってもよいし、その他の態様であってもよいが、複数種の原料モノマーを共重合してなる共重合体であることが好ましい。
【0146】
<高分子化合物の製造方法>
本実施形態の高分子化合物は、ケミカルレビュー(Chem. Rev.),第109巻,897-1091頁(2009年)等に記載の公知の重合方法を用いて製造することができ、例えば、Suzuki反応、Yamamoto反応、Buchwald反応、Stille反応、Negishi反応及びKumada反応等の遷移金属触媒を用いるカップリング反応による重合方法を用いて製造することができる。
【0147】
前記重合方法において、単量体を仕込む方法としては、単量体全量を反応系に一括して仕込む方法、単量体の一部を仕込んで反応させた後、残りの単量体を一括、連続又は分割して仕込む方法、単量体を連続又は分割して仕込む方法等が挙げられる。
【0148】
遷移金属触媒としては、パラジウム触媒、ニッケル触媒等が挙げられる。
【0149】
重合反応の後処理は、公知の方法、例えば、分液により水溶性不純物を除去する方法、メタノール等の低級アルコールに重合反応後の反応液を加えて、析出させた沈殿を濾過した後、乾燥させる方法等を単独、又は組み合わせて行う。高分子化合物の純度が低い場合、例えば、晶析、再沈殿、ソックスレー抽出器による連続抽出、カラムクロマトグラフィー等の通常の方法にて精製することができる。
【0150】
本実施形態の高分子化合物の具体例として、下記に示す構成単位を有するものが挙げられる。
【表2】
【表3】
【表4】
【表5】
【表6】
【表7】
【表8】
【表9】
【表10】
【表11】
【表12】
【表13】
【表14】
【表15】
【表16】
【表17】
【0151】
3.発光素子用組成物
本実施形態の発光素子用組成物は、本実施形態の高分子化合物と溶媒とを含む発光素子用組成物である。本実施形態の発光素子用組成物において、高分子化合物及び溶媒は、それぞれ、一種単独で用いても二種以上を併用してもよい。
【0152】
本実施形態の発光素子用組成物において、高分子化合物の含有量は、高分子化合物と溶媒との合計の含有量を100質量部とした場合、本実施形態の発光素子用組成物の濾過性が優れるので、好ましくは、0.1質量部~10質量部であり、より好ましくは、0.2質量部~7質量部であり、更に好ましくは0.3質量部~5質量部である。
【0153】
<粘度>
本実施形態の発光素子用組成物の粘度は、湿式法の種類によって調整すればよいが、インクジェット印刷法等の溶液が吐出装置を経由する印刷法に適用する場合には、吐出時の目づまりと飛行曲がりが起こりづらいので、23℃において、好ましくは1mPa・s~50mPa・sであり、より好ましくは1mPa・s~20mPa・sであり、更に好ましくは1mPa・s~10mPa・sであり、特に好ましくは2mPa・s~8mPa・sである。
【0154】
<発光素子用組成物の調製方法>
本実施形態の発光素子用組成物は、例えば、高分子化合物及び溶媒を混合することにより調製できる。また、本実施形態の発光素子用組成物は、例えば、高分子化合物、溶媒及び必要に応じてその他の成分(例えば、後述の<組成物中の他の成分>の項で記載した成分)を混合することにより調製できる。各成分の混合順は限定されることはなく、高分子化合物は、予め溶媒の一部と混合した後に、残りの成分を、所定の濃度となるように混合することにより、発光素子用組成物を調製してもよい。
【0155】
<会合数の算出>
本実施形態の発光素子用組成物に含まれる高分子化合物は、組成物中で会合している。組成物中で高分子化合物が会合していることは静的光散乱測定から見積もられる会合数により確認できる。会合数は、組成物中で高分子鎖が会合している平均数を表している。会合数は、組成物の静的光散乱測定から得られる会合体の重量平均モル質量(Mw1)を、高分子化合物を溶解したテトラヒドロフラン溶液の静的光散乱測定から得られる重量平均分子量(Mw0)で割り付けた値である。会合数が1よりも大きければ、組成物中で高分子化合物が会合していると判断できる(即ち、1.0<Mw1/Mw0を満たせば、組成物中で高分子化合物が会合していると判断できる)。また、会合数が小さいほど会合体の大きさが小さくなるので、フィルターの孔を通過しやすくなる。本実施形態の発光素子用組成物は、濾過性が優れるので、1.0<Mw1/Mw0≦2.0を満たすことが好ましく、1.1≦Mw1/Mw0≦1.8を満たすことがより好ましく、1.2≦Mw1/Mw0≦1.5を満たすことが更に好ましい。
【0156】
<縦緩和時間の算出>
本実施形態の発光素子用組成物において、高分子化合物の会合の強さは、核磁気共鳴装置による縦緩和時間測定で確認できる。縦緩和時間測定は組成物中での高分子化合物の運動性を評価する手法であり、高分子鎖同士が強く会合する場合に運動性が低下するので、縦緩和時間が短くなる。会合体がフィルターの孔を通過する際にせん断応力がかかるので、会合の強さが弱いほど会合が解離し、フィルターの孔を通過しやすくなる。本実施形態の発光素子用組成物は濾過性が優れるので、T1は、好ましくは1.22秒以上であり、より好ましくは1.23秒以上であり、更に好ましくは1.24秒以上である。また、T1は、100秒以下であってもよく、50秒以下であってもよく、10秒以下であってもよく、5秒以下であってもよく、2秒以下であってもよい。
【0157】
本実施形態の発光素子用組成物に含有される溶媒(以下、「本実施形態の溶媒」ともいう。)は、本実施形態の高分子化合物を溶解及び/又は分散させるものであることが好ましく、本実施形態の高分子化合物を溶解させるものであることがより好ましい。
【0158】
本実施形態の溶媒としては、例えば、塩素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、芳香族エーテル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、脂肪族エーテル溶媒、アルコール溶媒、ケトン溶媒、アミド溶媒、エステル溶媒及びカーボネート溶媒が挙げられ、本実施形態の発光素子用組成物の濾過性が優れるので、好ましくは、塩素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、芳香族エーテル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、脂肪族エーテル溶媒、ケトン溶媒、アミド溶媒又はエステル溶媒であり、より好ましくは、芳香族炭化水素溶媒、芳香族エーテル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、脂肪族エーテル溶媒、ケトン溶媒又はエステル溶媒であり、更に好ましくは、芳香族炭化水素溶媒、芳香族エーテル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒又は脂肪族エーテル溶媒であり、特に好ましくは芳香族炭化水素溶媒又は芳香族エーテル溶媒である。
【0159】
本実施形態の溶媒は、1種単独で用いても、2種以上を混合して用いてもよい。
本実施形態の溶媒を2種以上用いる場合、本実施形態の溶媒のうち、少なくとも1種は、好ましくは、塩素溶媒、芳香族炭化水素溶媒、芳香族エーテル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、脂肪族エーテル溶媒、ケトン溶媒、アミド溶媒又はエステル溶媒であり、より好ましくは、芳香族炭化水素溶媒、芳香族エーテル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、脂肪族エーテル溶媒、ケトン溶媒又はエステル溶媒であり、更に好ましくは、芳香族炭化水素溶媒、芳香族エーテル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒又は脂肪族エーテル溶媒であり、特に好ましくは芳香族炭化水素溶媒又は芳香族エーテル溶媒である。
【0160】
本実施形態の溶媒を2種以上用いる場合、本実施形態の溶媒のうち、少なくとも2種の組み合わせは、好ましくは、芳香族炭化水素溶媒及び芳香族エーテル溶媒のうちの1種と、芳香族炭化水素溶媒、芳香族エーテル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、脂肪族エーテル溶媒、ケトン溶媒、アミド溶媒及びエステル溶媒のうちの1種との組み合わせであり、より好ましくは、芳香族炭化水素溶媒及び芳香族エーテル溶媒のうちの1種と、芳香族炭化水素溶媒、芳香族エーテル溶媒、脂肪族炭化水素溶媒、脂肪族エーテル溶媒、ケトン溶媒及びエステル溶媒のうちの1種との組み合わせであり、更に好ましくは、芳香族炭化水素溶媒2種の組み合わせ、芳香族エーテル溶媒2種の組み合わせ、又は、芳香族炭化水素溶媒と芳香族エーテル溶媒との組み合わせであり、特に好ましくは芳香族炭化水素溶媒と芳香族エーテル溶媒との組み合わせである。
【0161】
塩素溶媒としては、例えば、ジクロロエタン、トリクロロエタン、クロロベンゼン及びジクロロベンゼンが挙げられる。
芳香族炭化水素溶媒としては、例えば、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、トリメチルベンゼン、テトラメチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、シクロペンチルベンゼン、メチルシクロペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、メチルシクロヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、シクロヘプチルベンゼン、メチルシクロヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、トリデシルベンゼン、テトラデシルベンゼン及びテトラリンが挙げられる。
芳香族エーテル溶媒としては、例えば、アニソール、ジメトキベンゼン、トリメトキシベンゼン、エトキシベンゼン、プロポキシベンゼン、ブトキシベンゼン、メチルプロポキシベンゼン、ブトキシベンゼン、メトキシトルエン、エトキシトルエン、メトキシナフタレン、エトキシナフタレン及びフェノキシトルエンが挙げられる。
脂肪族炭化水素溶媒としては、例えば、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、ペンタン、ヘキサン、へプタン、オクタン、ノナン、デカン、ドデカン及びビシクロヘキシルが挙げられる。
脂肪族エーテル溶媒としては、例えば、ジイソプロピルエーテル、メチルブチルエーテル、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサン、エチレングリコールジメチルエーテル、エチレングリコールジエチルエーテル、ジエチレングリコールジメチルエーテル及びトリエチレングリコールジメチルエーテルが挙げられる。
アルコール溶媒としては、例えば、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、シクロペンタノール、ヘキサノール、シクロヘキサノール、ヘプタノール、オクタノール、ベンジルアルコール、フェニルエタノール、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、プロパンジオール及びグリセリンが挙げられる。
ケトン溶媒としては、例えば、アセトン、メチルエチルケトン、メチルブチルケトン、ジブチルケトン、シクロヘキサノン、メチルシクロヘキサノン、ヘキサノン、オクタノン、ノナノン、フェニルアセトン、アセチルアセトン、アセトニルアセトン、アセトフェノン、メチルナフチルケトン及びイソホロンが挙げられる。
アミド溶媒としては、例えば、N-メチルピロリドン、N-エチルピロリドン、N,N-ジメチルアセトアミド、N,N-ジメチルホルムアミド及び1,3-ジメチル-2-イミダゾリジノンが挙げられる。
エステル溶媒としては、例えば、酢酸ブチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ペンチル、プロピオン酸エチル、酪酸エチル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、エチル-3-エトキシピロピオネート、3-メトキシブチルアセテート、3-メチル-3-メトキシブチルアセテート、蟻酸プロピル、乳酸プロピル、フェニル酢酸エチル、安息香酸エチル、β-プロピオラクトン、γ-ブチロラクトン、及び、δ-バレロラクトンが挙げられる。
カーボネート溶媒としては、例えば、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、エチレンカーボネート、及び、プロピレンカーボネートが挙げられる。
【0162】
本実施形態の溶媒は、好ましくは、トルエン、キシレン、トリメチルベンゼン、エチルベンゼン、ジエチルベンゼン、エチルメチルベンゼン、プロピルベンゼン、ブチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、テトラメチルオクチルベンゼン、ペンタメチルヘプチルベンゼン、ヘキサメチルヘキシルベンゼン、ジプロピルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、アニソール、エチルフェニルエーテル、メチルアニソール、ジメチルアニソール、エチルアニソール、ブチルフェニルエーテル、ブチルアニソール、ペンチルアニソール、ヘキシルアニソール、ヘプチルアニソール、オクチルアニソール、1-メトキシナフタレン、ジフェニルエーテル又はフェノキシトルエンであり、より好ましくは、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、テトラメチルオクチルベンゼン、ペンタメチルヘプチルベンゼン、ヘキサメチルヘキシルベンゼン、メチルアニソール、ジメチルアニソール、エチルアニソール、ブチルフェニルエーテル、ブチルアニソール、ペンチルアニソール、ヘキシルアニソール、ヘプチルアニソール、オクチルアニソール又はフェノキシトルエンであり、更に好ましくは、ヘプチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、デシルベンゼン、ウンデシルベンゼン、ドデシルベンゼン、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール、2,5―ジメチルアニソール、2-エチルアニソール、4-エチルアニソール又は3-フェノキシトルエンであり、特に好ましくは、へプチルベンゼン、オクチルベンゼン、ノニルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、デシルベンゼン、2-メチルアニソール、3-メチルアニソール、4-メチルアニソール又は3-フェノキシトルエンである。
【0163】
<組成比>
本実施形態の発光素子用組成物において、高分子化合物の含有量は、溶媒の含有量を100質量部とした場合、通常、0.1質量部~10.0質量部であり、インクジェット印刷法での吐出性が優れるので、好ましくは0.2質量部~7.0質量部であり、より好ましくは0.3質量部~5.0質量部である。
【0164】
本実施形態の発光素子用組成物は、湿式法を用いた発光素子の作製に好適である。
湿式法としては、例えば、スピンコート法、キャスティング法、マイクログラビアコート法、グラビアコート法、バーコート法、ロールコート法、ワイヤーバーコート法、ディップコート法、スプレーコート法、スクリーン印刷法、フレキソ印刷法、オフセット印刷法、インクジェット印刷法、キャピラリ-コート法及びノズルコート法が挙げられる。
【0165】
<組成物中の他の成分>
本実施形態の発光素子用組成物は、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料、発光材料及び酸化防止剤からなる群から選ばれる少なくとも一種を更に含んでいてもよい。
【0166】
[正孔輸送材料]
正孔輸送材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類され、高分子化合物が好ましく、架橋基を有する高分子化合物がより好ましい。
【0167】
高分子化合物としては、例えば、ポリビニルカルバゾール及びその誘導体;側鎖又は主鎖に芳香族アミン構造を有するポリアリーレン及びその誘導体が挙げられる。高分子化合物は、電子受容性部位が結合された化合物でもよい。電子受容性部位としては、例えば、フラーレン、テトラフルオロテトラシアノキノジメタン、テトラシアノエチレン、トリニトロフルオレノン等が挙げられ、好ましくはフラーレンである。
【0168】
本実施形態の発光素子用組成物には、正孔輸送材料が、1種単独で含有されていてもよく、2種以上含有されていてもよい。
【0169】
[電子輸送材料]
電子輸送材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。電子輸送材料は、架橋基を有していてもよい。
【0170】
低分子化合物としては、例えば、8-ヒドロキシキノリンを配位子とする金属錯体、オキサジアゾール、アントラキノジメタン、ベンゾキノン、ナフトキノン、アントラキノン、テトラシアノアントラキノジメタン、フルオレノン、ジフェニルジシアノエチレン、及び、ジフェノキノン、並びに、これらの誘導体が挙げられる。
【0171】
高分子化合物としては、例えば、ポリフェニレン、ポリフルオレン、及び、これらの誘導体が挙げられる。高分子化合物は、金属でドープされていてもよい。
【0172】
本実施形態の発光素子用組成物には、電子輸送材料が、1種単独で含有されていてもよく、2種以上含有されていてもよい。
【0173】
[正孔注入材料及び電子注入材料]
正孔注入材料及び電子注入材料は、各々、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。正孔注入材料及び電子注入材料は、架橋基を有していてもよい。
【0174】
低分子化合物としては、例えば、銅フタロシアニン等の金属フタロシアニン;カーボン;モリブデン、タングステン等の金属酸化物;フッ化リチウム、フッ化ナトリウム、フッ化セシウム、フッ化カリウム等の金属フッ化物が挙げられる。
【0175】
高分子化合物としては、例えば、ポリアニリン、ポリチオフェン、ポリピロール、ポリフェニレンビニレン、ポリチエニレンビニレン、ポリキノリン、及び、ポリキノキサリン、並びに、これらの誘導体;芳香族アミン構造を主鎖又は側鎖に含む重合体等の導電性高分子が挙げられる。
【0176】
本実施形態の発光素子用組成物には、正孔注入材料及び電子注入材料が、各々、1種単独で含有されていてもよく、2種以上含有されていてもよい。
【0177】
[イオンドープ]
正孔注入材料又は電子注入材料が導電性高分子を含む場合、導電性高分子の電気伝導度は、好ましくは、1×10-5S/cm~1×103S/cmである。導電性高分子の電気伝導度をかかる範囲とするために、導電性高分子に適量のイオンをドープすることができる。
【0178】
ドープするイオンの種類は、正孔注入材料であればアニオン、電子注入材料であればカチオンである。アニオンとしては、例えば、ポリスチレンスルホン酸イオン、アルキルベンゼンスルホン酸イオン、樟脳スルホン酸イオンが挙げられる。カチオンとしては、例えば、リチウムイオン、ナトリウムイオン、カリウムイオン、テトラブチルアンモニウムイオンが挙げられる。
【0179】
ドープするイオンは、一種のみでも二種以上でもよい。
【0180】
[発光材料]
発光材料は、低分子化合物と高分子化合物とに分類される。発光材料は、架橋基を有していてもよい。
【0181】
低分子化合物としては、例えば、ナフタレン及びその誘導体、アントラセン及びその誘導体、ペリレン及びその誘導体、並びに、イリジウム、白金又はユーロピウムを中心金属とする三重項発光錯体が挙げられる。
【0182】
高分子化合物としては、例えば、フェニレン基、ナフタレンジイル基、フルオレンジイル基、フェナントレンジイル基、ジヒドロフェナントレンジイル基、式(X)で表される基、カルバゾールジイル基、フェノキサジンジイル基、フェノチアジンジイル基、アントラセンジイル基、ピレンジイル基等を含む高分子化合物が挙げられる。
【0183】
発光材料は、低分子化合物及び高分子化合物を含んでいてもよい。
【0184】
三重項発光錯体としては、例えば、以下に示す金属錯体が挙げられる。
【0185】
【0186】
【0187】
【0188】
【0189】
【0190】
【0191】
本実施形態の発光素子用組成物には、その他の発光材料が、1種単独で含有されていてもよく、2種以上含有されていてもよい。
【0192】
[酸化防止剤]
酸化防止剤は、本発明の高分子化合物と同じ溶媒に可溶であり、発光及び電荷輸送を阻害しない化合物であればよく、例えば、フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤が挙げられる。
【0193】
本実施形態の発光素子用組成物には、酸化防止剤が、1種単独で含有されていてもよく、2種以上含有されていてもよい。
【0194】
4.膜(有機層)
膜は、本実施形態の発光素子用組成物中に含まれる高分子化合物を含有するものである。膜は、発光素子における有機層として好適に用いることができ、特に、発光素子における、正孔注入層、正孔輸送層又は発光層として好適に用いることができる。
膜は、本実施形態の発光素子用組成物を用いて、例えば、湿式法により作製することができる。
膜の厚さは、通常、1nm~10μmである。
【0195】
5.発光素子
本実施形態の発光素子用組成物は、発光素子の製造に有用である。本実施形態の発光素子は、例えば、陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に設けられた膜(有機層)とを有する発光素子の製造方法であり、前記有機層が、本実施形態の発光素子用組成物を用いて湿式法により形成される、発光素子の製造方法により、製造することができる。
【0196】
[層構成]
本実施形態の高分子化合物を含有する層は、通常、発光層、正孔輸送層、正孔注入層、電子輸送層、電子注入層の1種以上の層であり、好ましくは、発光層、正孔輸送層又は正孔注入層であり、より好ましくは発光層である。これらの層は、各々、発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料を含有する。これらの層は、各々、発光材料、正孔輸送材料、正孔注入材料、電子輸送材料、電子注入材料を、上述した本実施形態の溶媒に溶解させた組成物(インク)を調製して用い、湿式法を用いて形成することができる。
【0197】
本実施形態の発光素子は、陽極と陰極の間に発光層を有する。本実施形態の発光素子は、正孔注入性及び正孔輸送性の観点からは、陽極と発光層との間に、正孔注入層及び正孔輸送層の少なくとも1層を有することが好ましく、電子注入性及び電子輸送性の観点からは、陰極と発光層の間に、電子注入層及び電子輸送層の少なくとも1層を有することが好ましい。
正孔輸送層、電子輸送層、発光層、正孔注入層、及び、電子注入層の材料としては、本発明の高分子化合物の他、各々、上述した正孔輸送材料、電子輸送材料、発光材料、正孔注入材料、及び、電子注入材料が挙げられる。
【0198】
正孔輸送層の材料、電子輸送層の材料、及び、発光層の材料は、発光素子の作製において、各々、正孔輸送層、電子輸送層、及び、発光層に隣接する層の形成時に使用される溶媒に溶解する場合、該溶媒に該材料が溶解することを回避するために、該材料が架橋基を有することが好ましい。架橋基を有する材料を用いて各層を形成した後、該架橋基を架橋させることにより、該層を不溶化させることができる。
【0199】
本実施形態の発光素子において、発光層、正孔輸送層、電子輸送層、正孔注入層、電子注入層等の各層の形成方法としては、低分子化合物を用いる場合、例えば、粉末からの真空蒸着法、溶液又は溶融状態からの成膜による方法が挙げられ、高分子化合物を用いる場合、例えば、溶液又は溶融状態からの成膜による方法が挙げられる。
【0200】
積層する層の順番、数、及び、厚さは、発光効率及び素子寿命を勘案して調整すればよい。
【0201】
[基板/電極]
発光素子における基板は、電極を形成することができ、かつ、有機層を形成する際に化学的に変化しない基板であればよく、例えば、ガラス、プラスチック、シリコン等の材料からなる基板である。不透明な基板の場合には、基板から最も遠くにある電極が透明又は半透明であることが好ましい。
【0202】
陽極の材料としては、例えば、導電性の金属酸化物、半透明の金属が挙げられ、好ましくは、酸化インジウム、酸化亜鉛、酸化スズ;インジウム・スズ・オキサイド(ITO)、インジウム・亜鉛・オキサイド等の導電性化合物;銀とパラジウムと銅との複合体(APC);NESA、金、白金、銀、銅である。
【0203】
陰極の材料としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム、ルビジウム、セシウム、ベリリウム、マグネシウム、カルシウム、ストロンチウム、バリウム、アルミニウム、亜鉛、インジウム等の金属;それらのうち2種以上の合金;それらのうち1種以上と、銀、銅、マンガン、チタン、コバルト、ニッケル、タングステン、錫のうち1種以上との合金;並びに、グラファイト及びグラファイト層間化合物が挙げられる。合金としては、例えば、マグネシウム-銀合金、マグネシウム-インジウム合金、マグネシウム-アルミニウム合金、インジウム-銀合金、リチウム-アルミニウム合金、リチウム-マグネシウム合金、リチウム-インジウム合金、カルシウム-アルミニウム合金が挙げられる。
陽極及び陰極は、各々、2層以上の積層構造としてもよい。
【0204】
[用途]
本実施形態の発光素子の製造方法により得られた発光素子は、ディスプレイ、照明等の用途に好適である。
【0205】
以上、本発明の好適な実施形態について説明したが、本発明はこれに限定されるものではない。
【0206】
例えば、本発明の一側面は、上述の発光素子用組成物の製造方法に関するものであってもよい。本態様の発光素子用組成物の製造方法により得られる発光素子用組成物としては、例えば、上述の「3.発光素子用組成物」の項で説明した発光素子用組成物が挙げられる。
【0207】
一態様において、発光素子用組成物の製造方法は、
(1)溶媒を準備する準備工程と、
(2)前記準備工程で準備した溶媒と高分子化合物とを含む発光素子用組成物中で、会合体を形成し、且つ、式(M-1)及び式(M-2)のうち、少なくとも1つを満たすように、前記高分子化合物を選別する選別工程と、
(3)前記準備工程で準備した溶媒と、前記選別工程で選別した高分子化合物と、を混合して、発光素子用組成物を製造する組成物製造工程と、
を含む、発光素子用組成物の製造方法(以下、「製造方法(1)」ともいう。)であってもよい。
【0208】
製造方法(1)は、発光素子用組成物中で高分子化合物が会合していることを確認する会合確認工程を更に含んでいてもよい。この会合確認工程は、製造方法(1)において、例えば、選別工程に含まれていてもよい。なお、発光素子用組成物中で高分子化合物が会合していることは、例えば、上述の<会合数の算出>の項で説明した方法で確認できる。
【0209】
製造方法(1)は、Mw1を求める工程を更に含んでいてもよい。このMw1を求める工程は、製造方法(1)において、例えば、選別工程に含まれていてもよい。なお、Mw1は、例えば、上述の<会合数の算出>の項で説明した方法で求めることができる。
【0210】
製造方法(1)は、Mw0を求める工程を更に含んでいてもよい。このMw0を求める工程は、製造方法(1)において、例えば、選別工程に含まれていてもよい。なお、Mw0は、例えば、上述の<会合数の算出>の項で説明した方法で求めることができる。
【0211】
製造方法(1)は、Mw1及びMw0をそれぞれ求めて、Mw1/Mw0を算出する工程を更に含んでいてもよい。このMw1/Mw0を算出する工程は、製造方法(1)において、例えば、選別工程に含まれていてもよい。なお、Mw1/Mw0は、例えば、上述の<会合数の算出>の項で説明した方法で求めることができる。
【0212】
製造方法(1)は、T1を求める工程を更に含んでいてもよい。このT1を求める工程は、製造方法(1)において、例えば、選別工程に含まれていてもよい。なお、T1は、例えば、上述の<縦緩和時間の算出>の項で説明した方法で求めることができる。
【0213】
製造方法(1)の組成物製造工程において、溶媒及び高分子化合物を混合する方法は特に限定されない。また、製造方法(1)の組成物製造工程において、高分子化合物、溶媒及び必要に応じてその他の成分(例えば、<組成物中の他の成分>の項で記載した成分)を混合してもよい。なお、製造方法(1)の組成物製造工程において、混合する方法としては、例えば、<発光素子用組成物の調製方法>の項で説明した方法が挙げられる。
【0214】
他の一態様において、発光素子用組成物の製造方法は、
(4)高分子化合物を準備する準備工程と、
(5)前記準備工程で準備した高分子化合物と溶媒とを含む発光素子用組成物中で、会合体を形成し、且つ、式(M-1)及び式(M-2)のうち、少なくとも1つを満たすように、前記溶媒を選別する選別工程と、
(6)前記準備工程で準備した高分子化合物と、前記選別工程で選別した溶媒と、を混合して、発光素子用組成物を製造する組成物製造工程と、
を含む、発光素子用組成物の製造方法(以下、「製造方法(2)」ともいう。)であってもよい。
【0215】
製造方法(2)は、発光素子用組成物中で高分子化合物が会合していることを確認する会合確認工程を更に含んでいてもよい。この会合確認工程は、製造方法(2)において、例えば、選別工程に含まれていてもよい。なお、発光素子用組成物中で高分子化合物が会合していることは、例えば、上述の<会合数の算出>の項で説明した方法で確認できる。
【0216】
製造方法(2)は、Mw1を求める工程を更に含んでいてもよい。このMw1を求める工程は、製造方法(2)において、例えば、選別工程に含まれていてもよい。なお、Mw1は、例えば、上述の<会合数の算出>の項で説明した方法で求めることができる。
【0217】
製造方法(2)は、Mw0を求める工程を更に含んでいてもよい。このMw0を求める工程は、製造方法(2)において、例えば、選別工程又は準備工程に含まれていてもよい。なお、Mw0は、例えば、上述の<会合数の算出>の項で説明した方法で求めることができる。
【0218】
製造方法(2)は、Mw1及びMw0をそれぞれ求めて、Mw1/Mw0を算出する工程を更に含んでいてもよい。このMw1/Mw0を算出する工程は、製造方法(2)において、例えば、選別工程に含まれていてもよい。なお、Mw1/Mw0は、例えば、上述の<会合数の算出>の項で説明した方法で求めることができる。
【0219】
製造方法(2)は、T1を求める工程を更に含んでいてもよい。このT1を求める工程は、製造方法(2)において、例えば、選別工程又は準備工程に含まれていてもよい。なお、T1は、例えば、上述の<縦緩和時間の算出>の項で説明した方法で求めることができる。
【0220】
製造方法(2)の組成物製造工程において、溶媒及び高分子化合物を混合する方法は特に限定されない。また、製造方法(2)の組成物製造工程において、高分子化合物、溶媒及び必要に応じてその他の成分(例えば、<組成物中の他の成分>の項で記載した成分)を混合してもよい。なお、製造方法(2)の組成物製造工程において、混合する方法としては、例えば、<発光素子用組成物の調製方法>の項で説明した方法が挙げられる。
【0221】
製造方法(1)及び製造方法(2)は、塗布ムラ及びインクジェットノズルの目詰まり等を防止できるので、発光素子用組成物を濾過する工程を更に含むことが好ましい。製造方法(1)において、発光素子用組成物を濾過する工程は、組成物製造工程後に実施することが好ましい。製造方法(2)において、発光素子用組成物を濾過する工程は、組成物製造工程後に実施することが好ましい。
【0222】
発光素子用組成物を濾過する工程は、発光素子用組成物をフィルターを用いて濾過する工程を含むことが好ましい。発光素子用組成物を濾過する工程において、フィルター
としては、例えば、メンブレンフィルター(例えば、孔径0.01~1μm程度)が挙げられる。また、発光素子用組成物を濾過する工程において、発光素子用組成物の濾過は、例えば、加圧濾過(例えば、濾過圧力10~100kPa程度)を行ってもよい。また、発光素子用組成物を濾過する工程において、発光素子用組成物の濾過は、例えば、不活性ガス(窒素ガス等)雰囲気下で行ってもよい。
【0223】
本発明の他の一側面は、発光素子の製造方法に関するものであってもよい。この発光素子の製造方法は、陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に設けられた有機層とを有する発光素子の製造方法であり、前記有機層が、上述の製造方法(例えば、製造方法(1)及び製造方法(2))により製造された発光素子用組成物を用いて、湿式法により形成される、発光素子の製造方法であってもよい。
【0224】
この態様において、有機層の形成方法としては、例えば、上述の「4.膜(有機層)」の項で説明した方法を用いて形成することができる。また、本態様の発光素子の製造方法では、上述の「5.発光素子」の項で説明した製造方法を用いてもよい。また、本態様の発光素子の製造方法により得られる発光素子としては、例えば、上述の「5.発光素子」の項で説明した発光素子が挙げられる。
【実施例
【0225】
以下、実施例によって本発明を更に詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
【0226】
<実施例1>
(高分子化合物の合成)
特表2006-511659号公報記載の合成法と同様の合成法を用いて、高分子化合物P1を合成した。高分子化合物P1の構成単位とそのモル比率を表18に示す。
(組成物の調製)
シクロヘキシルベンゼン51質量部、4-メチルアニソール21質量部、及び、デシルベンゼン28質量部を混合して混合溶媒Qを調製し、混合溶媒Qに高分子化合物P1を溶解させて、組成物Q1を20ml調製した。組成物Q1において、高分子化合物P1と混合溶媒Qとの合計の含有量を100質量部とした場合、高分子化合物P1の含有量は1.0質量部であった。
【0227】
(濾過性評価)
組成物Q1の濾過性評価は、下記のフィルター及び装置を用いて、下記条件で測定した。通液は最大4時間行い、16mL以上通液した時点又は5分以上通液が認められない時点で測定を終了した。組成物Q1の通液量を表18に示す。
・フィルター:アドバンテック東洋株式会社製メンブレンフィルター(フィルター外径:13mm,孔径:0.05μm,材料:ポリテトラフルオロエチレン)
・濾過装置:ステンレス製フィルターホルダー(有効濾過面積0.8cm2)および圧力調整用のレギュレーターを備えたステンレス製耐圧容器
・濾過圧力:40kPa(窒素ガスを用いて加圧した。)
【0228】
(重量平均モル質量測定、重量平均分子量測定及び会合数算出)
組成物Q1における、重量平均モル質量(Mw1)は、組成物Q1を、下記条件を用いて、静的光散乱法により測定した。組成物Q1における、重量平均分子量は、テトラヒドロフラン5.0gに、50mgの高分子化合物P1を溶解させて組成物を調製し、この組成物を、下記条件を用いて、静的光散乱法により測定した。これらの測定結果から、組成物Q1における、会合数を算出した。結果を表18に示す。
・光散乱装置: Malvern社製 Nano-ZS型光散乱装置
・波長: 633nm
・温度: 25℃
【0229】
(縦緩和時間測定)
組成物Q1において、重テトラヒドロフラン0.75mLに、5mgの高分子化合物P1を溶解した組成物を調製し、この組成物を、核磁気共鳴分光装置を用いて、下記条件で、縦緩和時間(T1)を測定した。
・核磁気共鳴分光装置: Bruker社製AVANCE600型NMR装置
・観測核: 1H (共鳴周波数600.1337060MHz)
・測定法: 反転回復法
・τ: 0.1s,0.3s,0.5s,1s,2s,3s,4s,5s,7s,30s・温度:22℃
【0230】
組成物Q1において、縦緩和時間の解析には、ソフトウエア「Top Spin3.5.6」(Bruker社製)を用い、下記式を用いてフィッティングを行い、各ピークの縦緩和時間を算出した。算出した縦緩和時間のうち、縦緩和時間が最も小さい値を表18に示す。
I[t]=I[0](1-2*A*exp(-τ/T1))
【0231】
<実施例2~5及び比較例1>
(高分子化合物の合成)
特表2006-511659号公報記載の合成法と同様の合成法を用いて、高分子化合物P2~P5及びCP1を合成した。高分子化合物P2~P5及びCP1の構成単位とそのモル比率を表18に示す。
(組成物の調製)
実施例1の(組成物の調製)における「高分子化合物P1」に代えて、「高分子化合物P2~P5又はCP1」を用いた以外は、同様にして、組成物Q2~Q5及びCQ1を調製した。
(濾過性評価)
実施例1の(濾過性評価)における「組成物Q1」に代えて、「組成物Q2~Q5又はCQ1」を用いた以外は、同様にして、組成物Q2~Q5及びCQ1の濾過性を評価した。組成物Q2~Q5及びCQ1の通液量を表18に示す。
(重量平均モル質量測定、重量平均分子量測定及び会合数算出)
実施例1の(重量平均モル質量測定、重量平均分子量測定及び会合数算出)における「組成物Q1」に代えて、「組成物Q2~Q5又はCQ1」を用い、更に、「高分子化合物P1」に代えて、「高分子化合物P2~P5又はCP1」を用いた以外は、同様にして、組成物Q2~Q5及びCQ1における、重量平均モル質量の測定、重量平均分子量の測定及び会合数の算出を行った。結果を表18に示す。
(縦緩和時間測定)
実施例1の(縦緩和時間測定)における「高分子化合物P1」に代えて、「高分子化合物P2~P5又はCP1」を用いた以外は、同様にして、組成物Q2~Q5及びCQ1における縦緩和時間を測定した。結果を表18に示す。
【0232】
【表18】

[式中、ArY4は、フェニレン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン又はピレンから、環を構成する炭素原子に直接結合する2個の水素原子を取り除いてなる2価の基であり、該基は、置換基を有していてもよい。]
[式中、ArY5は、フルオレン、ジヒドロフェナントレン又はジヒドロジベンゾシクロへプテンから、環を構成する炭素原子に直接結合する2個の水素原子を取り除いてなる2価の基であり、該基は、置換基を有していてもよい。]
【0233】
実施例1~5で調製した組成物Q1~Q5は、比較例1で調製した組成物CQ1よりも通液量が多いことから、濾過性が優れていると認められる。そのため、組成物Q1~Q5は、湿式法により形成された発光素子の製造方法に好適に用いることができる。より詳細には、例えば、陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に設けられた有機層とを有する発光素子において、この有機層を、組成物Q1~Q5を用いて湿式法により形成することにより、発光素子を好適に製造することができる。
【0234】
<実施例6>
(高分子化合物の合成)
特表2006-511659号公報記載の合成法と同様の合成法を用いて、上述の表2~表17に記載の高分子化合物1~383を合成することができる。
(組成物の調製)
実施例1の(組成物の調製)における「高分子化合物P1」に代えて、「高分子化合物1~383」を用いる以外は、同様にして、組成物1~383を調製することができる。(濾過性評価)
実施例1の(濾過性評価)における「組成物Q1」に代えて、「組成物1~383」を用いる以外は、同様にして、組成物1~383の濾過性を評価でき、組成物1~383の通液量を測定することができる。
(重量平均モル質量測定、重量平均分子量測定及び会合数算出)
実施例1の(重量平均モル質量測定、重量平均分子量測定及び会合数算出)における「組成物Q1」に代えて、「組成物1~383」を用い、更に、「高分子化合物P1」に代えて、「高分子化合物1~383」を用いる以外は、同様にして、組成物1~383における、重量平均モル質量の測定、重量平均分子量の測定及び会合数の算出を行うことができる。
(縦緩和時間測定)
実施例1の(縦緩和時間測定)における「高分子化合物P1」に代えて、「高分子化合物1~383」を用いる以外は、同様にして、組成物1~383における、縦緩和時間を測定できる。
実施例6で調製した組成物1~383は、濾過性が優れる。そのため、組成物1~383は、湿式法により形成された発光素子の製造方法に好適に用いることができる。より詳細には、例えば、陽極と、陰極と、前記陽極及び前記陰極の間に設けられた有機層とを有する発光素子において、この有機層を、組成物1~383を用いて湿式法により形成することにより、発光素子を好適に製造することができる。