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特許7554687Cu-Bi2O3スパッタリングターゲット及びその製造方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】Cu-Bi2O3スパッタリングターゲット及びその製造方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 14/34 20060101AFI20240912BHJP
   C04B 35/01 20060101ALI20240912BHJP
   H10B 53/30 20230101ALI20240912BHJP
【FI】
C23C14/34 A
C04B35/01
H10B53/30
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2021023656
(22)【出願日】2021-02-17
(65)【公開番号】P2022125846
(43)【公開日】2022-08-29
【審査請求日】2023-08-14
(73)【特許権者】
【識別番号】502362758
【氏名又は名称】JX金属株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100173901
【弁理士】
【氏名又は名称】小越 一輝
(74)【代理人】
【氏名又は名称】小越 勇
(72)【発明者】
【氏名】山本 浩由
(72)【発明者】
【氏名】奈良 淳史
【審査官】安齋 美佐子
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-157150(JP,A)
【文献】特開平02-212351(JP,A)
【文献】特開2011-084804(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/00-14/58
C04B 35/01
H10B 53/30
JSTPlus/JST7580/JSTChina(JDreamIII)
CA(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
CuとBiを含むCu-Biスパッタリングターゲットであって、体積抵抗率が1mΩ・cm以下であり、CuとBiの含有比率が、原子比で0.3≦Cu/(Bi+Cu)≦0.8を満たすことを特徴とするCu-Biスパッタリングターゲット。
【請求項2】
ターゲット面内の体積抵抗率の変動係数が15%以内であることを特徴とする請求項1に記載のCu-Biスパッタリングターゲット。
【請求項3】
相対密度が95%以上であることを特徴とする請求項1又は2に記載のCu-Biスパッタリングターゲット。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Cu-Bi23スパッタリングターゲット及びその製造方法に関し、特には誘電体膜の形成に用いることができるCu-Bi23スパッタリングターゲット及びその製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
FeRAM(強誘電体メモリ)などの不揮発性メモリには、コンデンサ記憶素子に誘電体膜が用いられる。その誘電体膜として、酸化ビスマス(Bi23)の膜を用いることが知られており、Bi23膜はスパッタリング法を用いて成膜することができる。ここで、スパッタリング法とは、基板に対向させたスパッタリングターゲットにArイオンを衝突させることで、スパッタリングターゲットを構成する分子や原子などを放出させて、それを基板上に堆積させて、成膜する方法である。
【0003】
Bi23膜は、Bi23スパッタリングターゲットを用いて、成膜することができる。Bi23スパッタリングターゲットは絶縁性であるため、高速成膜が可能な直流(DC)スパッタリングを行うことができない。そのため、RF(高周波)スパッタリングにより成膜することが行われる。また、Bi23スパッタリングターゲットは、熱伝導率が低いため、スパッタリングの間、熱が十分に拡散せずに、スパッタリングターゲットが割れるという問題がある。
【0004】
Bi23を用いたスパッタリングターゲットとして、例えば、以下に記載する先行文献が知られている。特許文献1には、金属Bi-Bi酸化物複合スパッタリングターゲットであって、スパッタリング時における異常放電及びパーティクルの発生を抑制することができたことが記載されている。特許文献2には、Bi23とB23とGeなどの酸化物を焼結して作製したスパッタリングターゲットが開示されている。特許文献3には、金属酸化物Aと、金属Bとを含む複合スパッタリングターゲットであって、金属酸化物Aとして、酸化Biなどが記載されている。その他、特許文献4が知られている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2016-222971号公報
【文献】特開2008-210492号公報
【文献】特開2011-84804号公報
【文献】国際公開第2002/039508号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
Bi23スパッタリングターゲットは、誘電体膜の形成に有用であるが、絶縁性であるため、高速成膜が可能なDC(直流)スパッタリングができず、生産性に劣るという問題がある。本発明は、上記の問題を解決するために提案されたものであって、DCスパッタリングが可能なスパッタリングターゲットを提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、上記課題を解決するために提案されたものであって、その課題を解決できる本発明の一態様は、CuとBi23を含有するCu-Bi23スパッタリングターゲットであって、体積抵抗率が1mΩ・cm以下である、Cu-Bi23スパッタリングターゲットである。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、誘電体膜の形成に適したスパッタリングターゲットであって、体積抵抗率が低いため、DC(直流)スパッタリングとなり、スパッタリングの成膜速度を高めることができる。これにより、生産性を向上させることができるという優れた効果を有する。
【図面の簡単な説明】
【0009】
図1】体積抵抗率の測定箇所を示す模式図である。
図2】実施例1のスパッタリングターゲットのEPMAによる組織写真である。
図3】比較例1のスパッタリングターゲットのEPMAによる組織写真である。
図4】実施例2のスパッタリングターゲットのEPMAによる組織写真である。
図5】実施例4のスパッタリングターゲットのEPMAによる組織写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
酸化ビスマス(Bi23)は、絶縁性であり、誘電体膜として用いることができる反面、DCスパッタリングができないという問題があった。DCスパッタリングが可能となれば、生産性を各段に向上させることができることから、本発明者はこの問題に対して鋭意研究したところ、所定の量のCuを添加するとともに、その製造方法を工夫することによって、誘電体層としての機能を維持しつつ、DCスパッタリングが可能な体積抵抗率の低いスパッタリングターゲットを得ることができるとの知見が得られ、本発明に至った。
【0011】
本発明の実施形態に係るCu-Bi23スパッタリングターゲット(以下、スパッタリングターゲットと称する場合がある。)は、体積抵抗率が1mΩ・cm以下である。スパッタリングターゲットの体積抵抗率(平均値)が1mΩ・cm以下であれば、安定したDCスパッタリングが可能となる。Cuは一般的に導電性材料として知られているが、Bi23にCuを単に添加しただけでは、体積抵抗率を十分に低下させることができない。本実施形態では、製造方法を工夫することにより、Bi23粒子の周囲にCuを凝集させることで導電性のパスを形成し、体積抵抗率を1mΩ・cm以下まで低下させることを実現させたものである。
【0012】
本発明の実施形態に係るCu-Bi23スパッタリングターゲットにおいて、CuとBiの含有比率が原子比でCu/(Cu+Bi)≧0.3を満たすことが好ましい。Cu/(Cu+Bi)が0.3未満であると、場合によって、十分な導電率を確保することが困難となることがある。より好ましくは、Cu/(Cu+Bi)≧0.4であり、さらに好ましくは、Cu/(Cu+Bi)≧0.6である。一方、Cu/(Cu+Bi)が0.8を超えると、場合によっては、誘電体層としての機能を確保することが困難となることがある。したがって、Cu/(Cu+Bi)≦0.8であることが好ましく、より好ましくは、Cu/(Cu+Bi)≦0.7である。
【0013】
本実施形態に係るCu-Bi23スパッタリングターゲットは、ターゲット面内の体積抵抗率の変動係数(標準偏差/平均値×100)が15%以内であることが好ましい。スパッタリングターゲット面内の大部分において低抵抗となっていれば、DCスパッタリングが可能であり、つまり、ターゲット面内を測定して、その平均値が1mΩ・cm以下であれば、抵抗が高い箇所があったとしても、DCスパッタリングが可能であり、本発明の目的を達成することができる。一方で、ターゲット面内において、体積抵抗率のばらつきが大きくなると、スパッタリングの安定性に影響を与えることがあるため、ターゲット面内における体積抵抗率のばらつきを小さくすることが好ましい。より好ましくは10%以内である。
【0014】
本実施形態に係るCu-Bi23スパッタリングターゲットは、相対密度が95%以上であることが好ましく、さらに98%以上であることが好ましい。高密度のスパッタリングターゲットは、異常放電やパーティクルの発生を抑制することができる。なお、本実施形態に係るスパッタリングターゲットは、相対密度が100%を超える場合もある。これは、原料で配合する相と焼結して得られる相とが異なる結果、真密度で使用する理論密度の値と本来の理論密度の値が異なるためである。
【0015】
(スパッタリングターゲットの製造方法)
以下に本発明の実施形態に係るスパッタリングターゲットの製造方法を示す。但し、以下の製造方法やその条件などは、開示した範囲に限定するものではなく、いくらかの省略や変更を行ってもよい。
原料粉末として、銅(Cu)粉末、及び酸化ビスマス(Bi23)粉末を準備する。次に、原料粉末について、ジルコニアビーズを用いて、乾式粉砕を行った後、これらの原料粉末を所望の組成比(体積比)となるように秤量、混合する。混合するCu粉末とBi23粉末の粒径は、それぞれ体積比によって調整する。
本発明においては、スパッタリングターゲットにおいてCu同士の接続が重要であり、Cuの占める体積比が比較的大きい場合には、Cu同士の接続が良好となるため、Cu粉末の粒径がBi23の粒径より大きくとも問題はない。一方、Cuの占める体積比が小さくなるにつれて、Cu同士の接続が低下するため、Cu粉末の粒径をBi23の粒径より小さくなるようにすることが重要となる。
さらにCuの占める体積比が小さくなる場合には、Bi23の粒径も250μmを超えないようにすることが望ましい。このように、Cuの占める体積比が小さくなるにつれて、Cu粉末の粒径をBi23粉末より小さく、また、Bi23の粒径も250μmを超えないようにすることが望ましい。
上述の通り、Bi23粉末とCu粉末との粒径の比率、及び、Bi23粉末の粒径を調整することが重要であり、これにより、焼結体においてBi23粒子の周囲にCuを凝集させて、導電性のパスを形成することが可能となり、低抵抗化を図ることが可能となる。
【0016】
次に、粒子径を調整したBi23粉末とCu粉末とを混合した後、加圧と焼結を同時に行うホットプレス(一軸加圧焼結)により焼結体を得る。ホットプレス条件は、加圧力を200~300kgf/cm2、焼結温度を600℃以上650℃以下、アルゴン雰囲気で焼結することが好ましい。その後、得られた焼結体を切削、研磨などの旋盤加工を行って、スパッタリングターゲットを作製する。
【0017】
スパッタリングターゲット等の各種物性は、以下の測定方法を用いて解析することができる。なお、以下の測定方法は、提示した本実施形態の理解を容易にするために示すものである。他に代替可能な測定方法が存在するが、そのような代替可能な測定方法により、本発明と異なる形態に見せかけることを許容する意図はないことを理解されたい。
(スパッタリングターゲットの組成分析)
装置:SII社製SPS3500DD
方法:ICP-OES(高周波誘導結合プラズマ発光分析法)
なお、スパッタリングターゲットの組成は、ICP-OES(高周波誘導結合プラズマ発光分析法)で測定可能であるが、本実施形態に係るスパッタリングターゲットの組成比(原子比)は、原料の混合比を用いて計算で算出したものと同等と見なして差し支えない。なぜならば、上述するスパッタリングターゲットの製造方法では、組成比に影響を及ぼすような工程はなく、組成比の変化が少ないためである。
【0018】
(スパッタリングターゲットの体積抵抗率)
スパッタリングターゲットの体積抵抗率の測定装置、測定箇所は以下の通りである。
装置:NPS社製 抵抗率測定器 Σ-5+
方式:定電流印加方式
方法:直流4探針法
図1に示す通り、スパッタリングターゲットの表面と裏面について、それぞれ中心部を1箇所、外周付近を90度間隔に4箇所、合計10箇所について体積抵抗率を測定し、その平均値及び標準偏差を求める。
【0019】
(スパッタリングターゲットの相対密度)
相対密度は、以下の式を用いて算出した。
相対密度(%)=(アルキメデス密度)/(真密度)×100
(アルキメデス密度):スパッタリングターゲットから小片を切り出して、その小片から装置(METTLER TOLEDO製 AG204)を用いてアルキメデス密度を測定した。
(真密度):組成分析装置(ICP-OES)を用いて、Cu、Biの原子%を分析し、その原子%からCu重量をa(wt%)、BiのBi23換算重量をb(wt%)と算出し、Cu、Bi23の理論密度をそれぞれdCu、dBi2O3として、真密度(g/cm3)=100/(a/dCu+b/dBi2O3)を計算することができる。
なお、Cuの理論密度dCu=8.92g/cm3、Bi23の理論密度をdBi2O3=8.90g/cm3、とした。
【0020】
(スパッタリングターゲットの結晶相)
X線回折分析装置(リガク社製 Ultima IV)を用いて、スパッタリングターゲットの結晶相を分析した。
【実施例
【0021】
以下、実施例および比較例に基づいて説明する。なお、本実施例はあくまで一例であり、これらの例によって何ら制限されるものではない。すなわち、本発明は特許請求の範囲によってのみ制限されるものであり、本発明に含まれる実施例以外の種々の変形を包含するものである。また、実施例及び比較例におけるスパッタリングターゲットの組成比(原子比)、相対密度は、原料での混合比をもとに算出した。
【0022】
(実施例1)
Bi23原料粉を加熱炉によって750℃で熱処理し、塊を作製した。この塊を解砕し、乾式ボールミルで粉砕を実施して、粒子径D50が86μmの粉末を得た。Cu粉末については、粒子径D50が5μmの粉末を原料粉として用意した。これらの粉末をBi23:Cu=88vol%:12vol%(50mol%:50mol%)となるように秤量した後、混合した。次に、得られた混合粉末を、アルゴン雰囲気下、加圧力:250kgf/cm2、焼結温度:600℃の条件でホットプレスを実施して、Cu-Bi23焼結体を作製した。その後、この焼結体を機械加工して、スパッタリングターゲット形状に仕上げた。
【0023】
実施例1で得られたスパッタリングターゲットについて、EPMA(電子線マイクロアナライザ)で観察した組織写真を図2に示す。図2に示す通り、Bi23粒の周囲にCuが凝集して網目構造となっていることが確認できる。
また、実施例1のスパッタリングターゲットについて、体積抵抗率を測定した結果、体積抵抗率の10箇所平均は84μΩ・cmであり、そのばらつき(標準偏差)は8μΩ・cmであった。また、スパッタリングターゲットの相対密度は98.7%と高密度のものが得られた。以上の結果を表1に示す。
なお、スパッタリングターゲットについてICP(誘導結合プラズマ)発光分光分析装置を用いて成分を分析した結果、原料の仕込み時の比率とほとんど変化がないことを確認した。後述する実施例2~4及び比較例1についても同様である。
【0024】
【表1】
【0025】
(実施例2)
Bi23原料粉を加熱炉によって750℃で熱処理し、塊を作製した。この塊を解砕し、乾式ボールミルで粉砕を実施して、粒子径D50が64μmの粉末を得た。Cu粉末については、粒子径D50が5μmの粉末を原料粉として用意した。これらの粉末をBi23:Cu=69vol%:31vol%(23mol%:77mol%)で秤量した後、混合した。次に、得られた混合粉末をアルゴン雰囲気下、加圧力:250kgf/cm2、焼結温度:600℃の条件で真空ホットプレスを実施して、Cu-Bi23焼結体を作製した。その後、この焼結体を機械加工して、スパッタリングターゲット形状に仕上げた。
【0026】
実施例2で得られたスパッタリングターゲットについて、EPMA(電子線マイクロアナライザ)で観察した組織写真を図3に示す。図3に示す通り、Bi23粒の周囲にCuが凝集して網目構造となっていることが確認できる。
また、実施例2のスパッタリングターゲットについて、体積抵抗率を測定した結果、体積抵抗率の10箇所平均は14μΩ・cmであり、そのばらつき(標準偏差)は1μΩ・cmであった。また、スパッタリングターゲットの相対密度は100.5%と高密度のものが得られた。以上の結果を表1に示す。
【0027】
(実施例3)
粒子径D50が2μmであるBi23粉末と、粒子径D50が107μmであるCu粉末を準備した。これらの粉末をBi23:Cu=59vol%:41vol%(16mol%:84mol%)で秤量した後、混合した。得られた混合粉末をアルゴン雰囲気下、加圧力:250kgf/cm2、焼結温度:600℃の条件でホットプレスを実施して、Cu-Bi23焼結体を作製した。その後、この焼結体を機械加工して、スパッタリングターゲット形状に仕上げた。
【0028】
実施例3で得られたスパッタリングターゲットについて、体積抵抗率を測定した結果、体積抵抗率の10箇所平均は42μΩ・cmであり、そのばらつき(標準偏差)は6μΩ・cmであった。また、スパッタリングターゲットの相対密度は101.6%であった。以上の結果を表1に示す。
【0029】
(実施例4)
粒子径D50が2μmであるBi23粉末と、粒子径D50が107μmであるCu粉末を準備した。これらの粉末をBi23:Cu=49vol%:51vol%(12mol%:88mol%)で秤量した後、混合した。得られた混合粉末をアルゴン雰囲気下、加圧力:250kgf/cm2、焼結温度:600℃の条件でホットプレスを実施して、Cu-Bi23焼結体を作製した。その後、この焼結体を機械加工して、スパッタリングターゲット形状に仕上げた。
【0030】
実施例4で得られたスパッタリングターゲットについて、EPMA(電子線マイクロアナライザ)で観察した組織写真を図5に示す。図5に示す通り、Bi23がCuを覆う形となり、Cuが分離していることが確認できる。比較例2で得られたスパッタリングターゲットの体積抵抗率を測定した結果、体積抵抗率の10箇所平均は14μΩ・cmであり、そのばらつき(標準偏差)は2μΩ・cmであった。また、スパッタリングターゲットの相対密度は102.7%であった。
【0031】
(比較例1)
粒子径D50が2μmであるBi23粉末と、粒子径D50が107μmであるCu粉末を準備した。これらの粉末をBi23:Cu=88vol%:12vol%(50mol%:50mol%)で秤量した後、混合した。次に、得られた混合粉末を、アルゴン雰囲気下、加圧力:250kgf/cm2、焼結温度:600℃の条件でホットプレスを実施して、Cu-Bi23焼結体を作製した。その後、この焼結体を機械加工して、スパッタリングターゲット形状に仕上げた。
【0032】
比較例1で得られたスパッタリングターゲットについて、EPMA(電子線マイクロアナライザ)で観察した組織写真を図4に示す。図4に示す通り、Bi23がCuを覆う形となり、Cuが分離していることが確認できる。比較例1で得られたスパッタリングターゲットについて、体積抵抗率を測定しようとしたが、体積抵抗率が高すぎて測定することができなかった(500KΩ・cm超)。スパッタリングターゲットの相対密度は103.6%であった。以上の結果を表1に示す。
【産業上の利用可能性】
【0033】
本発明の実施形態に係るCu-Bi23スパッタリングターゲットは、体積抵抗率が低く、DCスパッタリングが可能である。さらには、相対密度が高く、スパッタリング時にターゲットに割れやクラックの発生を抑制することができる。そのため、実用的、商業的レベルとして有用である。特にFeRAMなどの不揮発性メモリにおけるコンデンサ記憶素子の誘電体膜の形成用として期待できる。
図1
図2
図3
図4
図5