(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】画像処理装置、画像処理方法、プログラム及びインクジェット印刷装置
(51)【国際特許分類】
B41J 2/01 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
B41J2/01 207
B41J2/01 205
(21)【出願番号】P 2021071045
(22)【出願日】2021-04-20
【審査請求日】2024-01-11
(73)【特許権者】
【識別番号】306037311
【氏名又は名称】富士フイルム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】永島 完司
【審査官】牧 隆志
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-051846(JP,A)
【文献】特開2017-177441(JP,A)
【文献】特開2014-000686(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B41J 2/01
B41J 2/21
B41J 5/30
B41J 29/38、29/393
G06T、G06V
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プロセッサと、
前記プロセッサを用いて実行されるプログラムが記憶される記憶装置と、を備える画像処理装置であって、
前記プロセッサは、前記プログラムの命令を実行して、
読取装置を用いて基材へ印刷された印刷画像を読み取り生成される読取画像における欠陥の位置を表す欠陥位置情報を取得し、
インクジェットヘッドに具備されるノズルの位置と前記印刷画像における画素位置との対応関係に基づき、前記欠陥の位置に対応する複数の不良ノズル候補位置の情報を含む不良ノズル候補位置情報を取得し、
前記複数の不良ノズル候補位置の少なくとも一つについて、予め設定される第一優先順位が高い順に、基準画像における前記不良ノズル候補位置に対応する画素位置に欠陥を発生させたシミュレーション画像を生成し、
前記不良ノズル候補位置のそれぞれに対応する前記シミュレーション画像と前記読取画像とを比較した比較結果に基づき、前記不良ノズル候補位置に対して補正処理が施される補正処理画像を印刷する第二優先順位を設定し、
前記第二優先順位が高い順に、前記不良ノズル候補位置を適用して印刷された前記補正処理画像において、前記欠陥が発生しているか否かを判定し、
前記欠陥が発生していないと判定された前記補正処理画像に適用される前記不良ノズル候補位置を不良ノズル位置として設定する画像処理装置。
【請求項2】
前記プロセッサは、
前記欠陥に対応する前記基準画像における欠陥対応領域を前記基準画像から切り出し、
前記欠陥対応領域について、前記シミュレーション画像を生成する請求項1に記載の画像処理装置。
【請求項3】
前記プロセッサは、
前記欠陥に対応する前記読取画像の欠陥領域を前記読取画像から切り出し、
前記欠陥領域と、前記欠陥対応領域について生成された前記シミュレーション画像とを比較する請求項2に記載の画像処理装置。
【請求項4】
前記プロセッサは、
前記欠陥領域と、前記欠陥対応領域について生成された前記シミュレーション画像との類似度を導出し、
前記類似度が高い順に前記第二優先順位を設定する請求項3に記載の画像処理装置。
【請求項5】
前記プロセッサは、
前記読取装置に適用される読取解像度が印刷解像度以下の場合に、一つの読取素子に対応するノズル数に応じて前記不良ノズル候補位置の数を規定する請求項1から4のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項6】
前記プロセッサは、前記不良ノズル候補位置と前記読取素子の位置との関係に基づく重みに応じて、前記第一優先順位を設定する請求項5に記載の画像処理装置。
【請求項7】
前記プロセッサは、
前記読取素子の読取位置と前記ノズルの印刷位置との位置関係を表す読取位置情報を取得し、
前記読取位置情報が適用され規定される前記不良ノズル候補位置を表す前記不良ノズル候補位置情報を取得する請求項5又は6に記載の画像処理装置。
【請求項8】
前記プロセッサは、
前記欠陥の色に対応する複数の不良ノズル候補色の情報を含む不良ノズル候補色情報を取得し、
複数の前記不良ノズル候補位置と前記不良ノズル候補色との組のそれぞれについて、前記第一優先順位が高い順に、前記基準画像における前記不良ノズル候補位置に対応する画素位置に前記不良ノズル候補色の欠陥を発生させるシミュレーション画像を生成する請求項1から7のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項9】
前記プロセッサは、
前記欠陥の分光特性又は前記欠陥のインク吐出量に基づき、前記第一優先順位を設定する請求項8に記載の画像処理装置。
【請求項10】
前記プロセッサは、
基準画像として、連続階調画像、網点画像、二値ドット画像、多値ドット画像又は印刷画像の読取画像を取得する請求項1から9のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項11】
前記プロセッサは、
前記基材へ印刷されたインクの分光特性、インクドットの広がり特性及び前記読取装置の光学特性の少なくともいずれかを補正する読取特性フィルタを適用して、前記シミュレーション画像を生成する請求項1から10のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項12】
前記プロセッサは、
前記読取画像のサイズ及び解像度に応じて、前記シミュレーション画像のサイズ及び前記シミュレーション画像の解像度を規定する請求項1から11のいずれか一項に記載の画像処理装置。
【請求項13】
コンピュータが、
読取装置を用いて基材へ印刷された印刷画像を読み取り生成される読取画像における欠陥の位置を表す欠陥位置情報を取得し、
インクジェットヘッドに具備されるノズルの位置と前記印刷画像における画素位置との対応関係に基づき、前記欠陥の位置に対応する複数の不良ノズル候補位置の情報を含む不良ノズル候補位置情報を取得し、
前記複数の不良ノズル候補位置の少なくとも一つについて、予め設定される第一優先順が高い順に、基準画像における前記不良ノズル候補位置に対応する画素位置に欠陥を発生させたシミュレーション画像を生成し、
前記不良ノズル候補位置のそれぞれに対応する前記シミュレーション画像と前記読取画像とを比較した比較結果に基づき、前記不良ノズル候補位置に対して補正処理が施される補正処理画像を印刷する第二優先順位を設定し、
前記第二優先順位が高い順に、前記不良ノズル候補位置を適用して印刷された前記補正処理画像において、前記欠陥が発生しているか否かを判定し、
前記欠陥が発生していないと判定された前記補正処理画像に適用される前記不良ノズル候補位置を不良ノズル位置として設定する画像処理方法。
【請求項14】
コンピュータに、
読取装置を用いて基材へ印刷された印刷画像を読み取り生成される読取画像における欠陥の位置を表す欠陥位置情報を取得する機能、
インクジェットヘッドに具備されるノズルの位置と前記印刷画像における画素位置との対応関係に基づき、前記欠陥の位置に対応する複数の不良ノズル候補位置の情報を含む不良ノズル候補位置情報を取得する機能、
前記複数の不良ノズル候補位置の少なくとも一つについて、予め設定される第一優先順が高い順に、基準画像における前記不良ノズル候補位置に対応する画素位置に欠陥を発生させたシミュレーション画像を生成する機能、
前記不良ノズル候補位置のそれぞれに対応する前記シミュレーション画像と前記読取画像とを比較した比較結果に基づき、前記不良ノズル候補位置に対して補正処理が施される補正処理画像を印刷する第二優先順位を設定する機能、
前記第二優先順位が高い順に、前記不良ノズル候補位置を適用して印刷された前記補正処理画像において、前記欠陥が発生しているか否かを判定する機能、及び
前記欠陥が発生していないと判定された前記補正処理画像に適用される前記不良ノズル候補位置を不良ノズル位置として設定する機能を実現させるプログラム。
【請求項15】
インクジェットヘッドと、
プロセッサと、
前記プロセッサを用いて実行されるプログラムが記憶される記憶装置と、を備えるインクジェット印刷装置であって、
前記プロセッサは、前記プログラムの命令を実行して、
読取装置を用いて基材へ印刷された印刷画像を読み取り生成される読取画像における欠陥の位置を表す欠陥位置情報を取得し、
インクジェットヘッドに具備されるノズルの位置と前記印刷画像における画素位置との対応関係に基づき、前記欠陥の位置に対応する複数の不良ノズル候補位置の情報を含む不良ノズル候補位置情報を取得し、
前記複数の不良ノズル候補位置の少なくとも一つについて、予め設定される第一優先順が高い順に、基準画像における前記不良ノズル候補位置に対応する画素位置に欠陥を発生させるシミュレーション画像を生成し、
前記不良ノズル候補位置のそれぞれに対応する前記シミュレーション画像と前記読取画像とを比較した比較結果に基づき、前記不良ノズル候補位置に対して補正処理が施される補正処理画像を印刷する第二優先順位を設定し、
前記第二優先順位が高い順に、前記不良ノズル候補位置を適用して前記補正処理画像を印刷し、
前記印刷された前記補正処理画像において、前記欠陥が発生しているか否かを判定し、
前記欠陥が発生していないと判定された前記補正処理画像に適用される前記不良ノズル候補位置を不良ノズル位置として設定するインクジェット印刷装置。
【請求項16】
透明の基材を搬送する搬送ユニットを備える請求項15に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項17】
前記搬送ユニットは、ロールに巻かれた連続体の基材を前記ロールから引き出して搬送する請求項16に記載のインクジェット印刷装置。
【請求項18】
前記プロセッサは、
前記連続体の基材に対して、印刷画像の間に吐出検査用の画像を印刷せずに複数の画像を連続させる前記インクジェットヘッドの吐出制御を実施する請求項17に記載のインクジェット印刷装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は画像処理装置、画像処理方法、プログラム及びインクジェット印刷装置に関する。
【背景技術】
【0002】
食品等の包装用の袋などに使用されるナイロン及びPET(polyethylene terephthalate)など、全長が数千メートルといった連続フィルムなどの基材へ文字及びイラストなどの画像を次々と印刷する際にインクジェット印刷装置が適用される。印刷がされた基材は、一品分ごとに裁断され、袋加工などの処理が施される。
【0003】
一方、インクジェット印刷装置は、種々の原因に起因して、印刷中にインクを正常に吐出できなくなるなど、吐出状態が良好でない不良ノズルが発生することがある。不良ノズルの発生は、印刷画像にスジ状の欠陥を生じさせ懸念がある。
【0004】
印刷画像におけるスジ状の欠陥を未然に防いだり、印刷画像へスジ状の欠陥が発生した際に速やかにスジ状の欠陥が目立たなくなる補正をしたりするには、印刷中に不良ノズルを検出する必要がある。
【0005】
インクジェット印刷装置では、個々の袋等の一品分の画像が印刷される領域の間の領域へ、各ノズルの吐出状態のチェックに適用されるテストパターンを印刷し、テストパターンを解析して不良ノズルを検出する不良ノズル検出が行われる。
【0006】
また、インクジェット印刷装置では、不良ノズルが不使用ノズルとしてマスクされ、不良ノズルの周辺の正常ノズルを用いて、不良ノズルが印刷すべき領域への印刷が実施され、不良ノズルが印刷すべき領域への印刷を補う吐出補正が実施される。吐出補正では、不良ノズルが使用され、かつ、不良ノズルの周辺の正常ノズルを用いて、不良ノズルが印刷すべき領域への補正印刷が実施される場合があり得る。
【0007】
インクジェット印刷装置は、印刷中において不良ノズルを検出し、吐出補正を実施して、印刷画像におけるスジ状の欠陥の視認性を低下させている。不良ノズルを検出してから吐出補正が行われるまでの期間において印刷がされた印刷画像は不良品として扱われる。
【0008】
ノズルごとの吐出状態をチェックする際に基材へ印刷されるテストパターンは、基材の搬送方向についての長さが10ミリメートルから20ミリメートル程度の領域を占める。一品分の画像の全てについてテストパターンが印刷される場合は、無駄な基材の消費量が増えてしまう。無駄な基材の消費を減らす際にテストパターンの印刷頻度を低くし、例えば、一品分の画像の十個ごとなど、テストパターンが離散的に印刷される場合、基材の裁断において裁断位置が一定の距離間隔にならず、裁断作業がし難くなる。
【0009】
更に、テストパターンの解析結果に基づき検出された不良ノズルと、印刷物のスジ欠陥の発生原因のノズルとは必ずしも一致しない。そうすると、スジ欠陥の発生原因となるノズルの見逃しを防ぐ目的で、テストパターンの解析結果に基づく不良ノズル検出の判断基準を厳しめに設定する場合、不良ノズルを過剰に検出してしまうおそれがある。
【0010】
かかる課題に対して、一品分の画像からスジ欠陥を検出し、スジ欠陥を発生させた不良ノズルを特定し、特定した不良ノズルについて吐出補正を行い、一品分の画像の間にテストパターンを印刷せずに無駄な基材の消費を抑制する、スジ欠陥補正が知られている。
【0011】
特許文献1は、ユーザ画像のスジを検出し、ユーザ画像のスジ情報から不良ノズルを特定し、不良ノズル補正を行いユーザ画像におけるスジを不可視化する不良ノズル補正を実施するインクジェット印刷装置が記載される。
【0012】
同文献に記載の装置は、スジ情報が示すスジの位置から不良のノズルの概略番号を推定する。また、同装置は、スジ情報の画像を色相解析し、解析結果に基づきスジの色相を判断し、スジの色相から不良ノズルが発生しているインク色を推定する。
【0013】
特許文献2は、ノズルの異常に起因する画像の異常を検出し、異常ノズルを不吐化して印刷画像における不吐部分を不可視化するインクジェット印刷装置が記載される。同文献に記載の装置は、異常ノズルを含むノズル群を特定し、特定されたノズル群を不吐化する複数不吐化補正を実施する。更に、同装置は、特定されたノズル群のノズルの中から異常ノズルを特定する処理を行う。
【0014】
具体的には、特定されたノズル群のノズルの中から、異常ノズルでないことが特定されていない一つのノズルを選択し、選択した一つのノズルの不吐化を解除し、かつ、同ノズル群の残余のノズルの不吐化を維持して不吐部分を不可視化する残余不吐補正を行う。印刷画像に異常が無ければ、不吐化が解除されたノズルは異常ノズルでないと判断される。
【0015】
このようにして、順に不吐化を解除するノズルを切り替えて残余不吐補正を行い、印刷画像に異常があれば、不吐化が解除されたノズルが異常ノズルと特定される。
【0016】
特許文献3は、印刷元画像と印刷元画像に基づく印刷物の読取画像とを比較して、印刷物のスジを検出するスジ検出装置が記載される。同文献に記載の装置は、印刷元画像にスジを意図的に付加したスジ付き画像を生成し、スジ付き画像が印刷された印刷物のスジが印刷物として許容できる画像欠陥であるか否かの判定結果を取得し、スジの位置の画像特徴量及び判定結果から印刷元画像のスジの検出条件を検出する。
【0017】
同装置は、印刷元画像へ意図的に付加するスジの強度、長さ及び位置をユーザが設定するスジ付加設定部を備える。同装置は、スジを付加する位置として、過去に吐出異常を発生したノズルの位置及び複数のヘッドモジュールを備えるインクジェットヘッドにおけるヘッドモジュールの連結領域を設定し得る。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0018】
【文献】特許第6576316号公報
【文献】特許第6472058号公報
【文献】特許第6293027号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0019】
しかしながら、印刷画像から検出されるスジの位置に基づく、スジの原因となるノズルを特定する際の精度が重要であるが、スジの原因となるノズルを正確に特定することは困難である。また、スジの原因となるノズルの特定に要する期間が長期化する場合、無駄な基材の消費が増加する懸念がある。
【0020】
特許文献1に記載の発明は、ユーザ画像のスジ情報から不良ノズルの概略番号等を特定しているが、特許文献1には不良ノズルの概略番号等の特定に関する具体的な記載はない。
【0021】
特許文献2に記載の装置は、複数のノズルを含むノズル群をまとめて不吐化し、印刷画像に異常があったノズル群を、異常ノズルを含むノズル群として特定し、異常ノズルを含むノズル群の中から一ノズルずつ不吐化して、異常ノズルを特定している。印刷画像に異常があったノズル群の特定が遅れると、異常ノズルの特定に要する期間の長期化が懸念される。
【0022】
また、同文献に記載の装置は、複数のノズルをまとめて不吐化して不吐出補正をしているので、不吐化されたノズルが密集する結果、異常が無い印刷画像であっても局所的な画質の低下が発生し、無駄な基材の発生原因となり得る。
【0023】
特許文献3に記載の装置は、画像の特徴に応じてスジが許容されるか否かに基づきスジの検出条件を導出するものであり、特許文献3には、スジの発生原因となるノズルの特定に関する記載はない。
【0024】
本発明はこのような事情に鑑みてなされたもので、印刷中に不良ノズルが特定され、印刷中に欠陥の補正が実施され、更に基材の無駄な消費が抑制される、画像処理装置、画像処理方法、プログラム及びインクジェット印刷装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0025】
本開示に係る画像処理装置は、プロセッサと、プロセッサを用いて実行されるプログラムが記憶される記憶装置と、を備える画像処理装置であって、プロセッサは、プログラムの命令を実行して、読取装置を用いて基材へ印刷された印刷画像を読み取り生成される読取画像における欠陥の位置を表す欠陥位置情報を取得し、インクジェットヘッドに具備されるノズルの位置と印刷画像における画素位置との対応関係に基づき、欠陥の位置に対応する複数の不良ノズル候補位置の情報を含む不良ノズル候補位置情報を取得し、複数の不良ノズル候補位置の少なくとも一つについて、予め設定される第一優先順位が高い順に、基準画像における不良ノズル候補位置に対応する画素位置に欠陥を発生させたシミュレーション画像を生成し、不良ノズル候補位置のそれぞれに対応するシミュレーション画像と読取画像とを比較した比較結果に基づき、不良ノズル候補位置に対して補正処理が施される補正処理画像を印刷する第二優先順位を設定し、第二優先順位が高い順に、不良ノズル候補位置を適用して印刷された補正処理画像において、欠陥が発生しているか否かを判定し、欠陥が発生していないと判定された補正処理画像に適用される不良ノズル候補位置を不良ノズル位置として設定する画像処理装置である。
【0026】
本開示に係る画像処理装置によれば、印刷中において、欠陥位置情報に基づき欠陥が発生している可能性がある不良ノズル候補位置を設定し、欠陥を発生させた可能性が高い順に、不良ノズル候補位置について欠陥を発生させた不良ノズルであるか否かが判定される。これにより、印刷中に不良ノズルが特定され、印刷中に欠陥の補正が実施され得る。また、無駄な基材の消費も抑制し得る。
【0027】
欠陥の例として、印刷画像において視認され得る基材の搬送方向と平行となる方向のスジ状のムラが挙げられる。
【0028】
欠陥位置情報は、欠陥の位置及び欠陥の程度が含まれ得る。
【0029】
他の態様に係る画像処理装置は、プロセッサは、欠陥に対応する基準画像における欠陥対応領域を基準画像から切り出し、欠陥対応領域について、シミュレーション画像を生成する。
【0030】
かかる態様によれば、基準画像における欠陥対応領域のシミュレーション画像が生成される。これにより、基準画像の全体のシミュレーション画像を生成する場合と比較して、シミュレーション画像生成の短期間化及びシミュレーション画像生成の負荷低減が実現され得る。
【0031】
他の態様に係る画像処理装置は、プロセッサは、欠陥に対応する読取画像の欠陥領域を読取画像から切り出し、欠陥領域と、欠陥対応領域について生成されたシミュレーション画像とを比較する。
【0032】
かかる態様によれば、シミュレーション画像に合わせて、シミュレーション画像と比較される読取画像の領域が限定される。これにより、比較処理の高精度化及び高速化が実現され得る。
【0033】
欠陥対応領域と欠陥領域とのサイズ及び解像度を一致させる態様が好ましい。ここでいう一致とは、厳密には不一致であるが実質的に一致する場合が含まれる。
【0034】
他の態様に係る画像処理装置は、プロセッサは、欠陥領域と、欠陥対応領域について生成されたシミュレーション画像との類似度を導出し、類似度が高い順に第二優先順位を設定する。
【0035】
かかる態様によれば、スジを発生させた可能性が高い不良ノズル候補位置から順に補正処理画像が生成される。
【0036】
他の態様に係る画像処理装置は、プロセッサは、読取装置に適用される読取解像度が印刷解像度以下の場合に、一つの読取素子に対応するノズル数に応じて不良ノズル候補位置の数を規定する。
【0037】
かかる態様によれば、スジの位置に対応する読取素子の位置に応じて、不良ノズル候補位置を設定し得る。
【0038】
他の態様に係る画像処理装置は、プロセッサは、不良ノズル候補位置と読取素子の位置との関係に基づく重みに応じて、第一優先順位を設定する。
【0039】
かかる態様によれば、スジを発生させた可能性が高い不良ノズル候補位置から順にシミュレーション画像が生成される。
【0040】
他の態様に係る画像処理装置は、プロセッサは、読取素子の読取位置とノズルの印刷位置との位置関係を表す読取位置情報を取得し、読取位置情報が適用され規定される不良ノズル候補位置を表す不良ノズル候補位置情報を取得する。
【0041】
かかる態様によれば、読取素子の読取位置とノズルの印刷位置との対応関係を参照して、不良ノズル候補位置が決められる。
【0042】
他の態様に係る画像処理装置は、プロセッサは、欠陥の色に対応する複数の不良ノズル候補色の情報を含む不良ノズル候補色情報を取得し、複数の不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組のそれぞれについて、第一優先順位が高い順に、基準画像における不良ノズル候補位置に対応する画素位置に不良ノズル候補色の欠陥を発生させるシミュレーション画像を生成する。
【0043】
かかる態様によれば、欠陥を発生させた不良ノズルの色を特定し得る。
【0044】
他の態様に係る画像処理装置は、プロセッサは、欠陥の分光特性又は欠陥のインク吐出量に基づき、第一優先順位を設定する。
【0045】
かかる態様によれば、欠陥の色の特性に応じて、シミュレーション画像が生成される優先順位が設定される。
【0046】
他の態様に係る画像処理装置は、プロセッサは、基準画像として、連続階調画像、網点画像、二値ドット画像、多値ドット画像又は印刷画像の読取画像を取得する。
【0047】
かかる態様によれば、連続階調画像、網点画像、二値ドット画像、多値ドット画像又は印刷画像の読取画像が基準画像に適用される。
【0048】
他の態様に係る画像処理装置は、プロセッサは、基材へ印刷されたインクの分光特性、インクドットの広がり特性及び読取装置の光学特性の少なくともいずれかを補正する読取特性フィルタを適用して、シミュレーション画像を生成する。
【0049】
かかる態様によれば、インクの分光特性、インクドットの広がり及び読取装置のボケ等の光学特性が補正されたシミュレーション画像を生成し得る。
【0050】
他の態様に係る画像処理装置は、プロセッサは、読取画像のサイズ及び解像度に応じて、シミュレーション画像のサイズ及びシミュレーション画像の解像度を規定する。
【0051】
かかる態様によれば、読取画像とシミュレーション画像との比較処理の精度の向上が見込まれる。
【0052】
本開示に係る画像処理方法は、コンピュータが、読取装置を用いて基材へ印刷された印刷画像を読み取り生成される読取画像における欠陥の位置を表す欠陥位置情報を取得し、インクジェットヘッドに具備されるノズルの位置と印刷画像における画素位置との対応関係に基づき、欠陥の位置に対応する複数の不良ノズル候補位置の情報を含む不良ノズル候補位置情報を取得し、複数の不良ノズル候補位置の少なくとも一つについて、予め設定される第一優先順が高い順に、基準画像における不良ノズル候補位置に対応する画素位置に欠陥を発生させたシミュレーション画像を生成し、不良ノズル候補位置のそれぞれに対応するシミュレーション画像と読取画像とを比較した比較結果に基づき、不良ノズル候補位置に対して補正処理が施される補正処理画像を印刷する第二優先順位を設定し、第二優先順位が高い順に、不良ノズル候補位置を適用して印刷された補正処理画像において、欠陥が発生しているか否かを判定し、欠陥が発生していないと判定された補正処理画像に適用される不良ノズル候補位置を不良ノズル位置として設定する画像処理方法である。
【0053】
本開示に係る画像処理方法によれば、本開示に係る画像処理装置と同様の作用効果を得ることが可能である。他の態様に係る画像処理装置の構成要件は、他の態様に係る画像処理方法の構成要件へ適用し得る。
【0054】
本開示に係るプログラムは、コンピュータに、読取装置を用いて基材へ印刷された印刷画像を読み取り生成される読取画像における欠陥の位置を表す欠陥位置情報を取得する機能、インクジェットヘッドに具備されるノズルの位置と印刷画像における画素位置との対応関係に基づき、欠陥の位置に対応する複数の不良ノズル候補位置の情報を含む不良ノズル候補位置情報を取得する機能、複数の不良ノズル候補位置の少なくとも一つについて、予め設定される第一優先順が高い順に、基準画像における不良ノズル候補位置に対応する画素位置に欠陥を発生させたシミュレーション画像を生成する機能、不良ノズル候補位置のそれぞれに対応するシミュレーション画像と読取画像とを比較した比較結果に基づき、不良ノズル候補位置に対して補正処理が施される補正処理画像を印刷する第二優先順位を設定する機能、第二優先順位が高い順に、不良ノズル候補位置を適用して、印刷された補正処理画像において、欠陥が発生しているか否かを判定する機能、及び欠陥が発生していないと判定された補正処理画像に適用される不良ノズル候補位置を不良ノズル位置として設定する機能を実現させるプログラムである。
【0055】
本開示に係るプログラムによれば、本開示に係る画像処理装置と同様の作用効果を得ることが可能である。他の態様に係る画像処理装置の構成要件は、他の態様に係るプログラムの構成要件へ適用し得る。
【0056】
本開示に係るインクジェット印刷装置は、インクジェットヘッドと、プロセッサと、プロセッサを用いて実行されるプログラムが記憶される記憶装置と、を備えるインクジェット印刷装置であって、プロセッサは、プログラムの命令を実行して、読取装置を用いて基材へ印刷された印刷画像を読み取り生成される読取画像における欠陥の位置を表す欠陥位置情報を取得し、インクジェットヘッドに具備されるノズルの位置と印刷画像における画素位置との対応関係に基づき、欠陥の位置に対応する複数の不良ノズル候補位置の情報を含む不良ノズル候補位置情報を取得し、複数の不良ノズル候補位置の少なくとも一つについて、予め設定される第一優先順が高い順に、基準画像における不良ノズル候補位置に対応する画素位置に欠陥を発生させるシミュレーション画像を生成し、不良ノズル候補位置のそれぞれに対応するシミュレーション画像と読取画像とを比較した比較結果に基づき、不良ノズル候補位置に対して補正処理が施される補正処理画像を印刷する第二優先順位を設定し、第二優先順位が高い順に、不良ノズル候補位置を適用して補正処理画像を印刷し、印刷された補正処理画像において、欠陥が発生しているか否かを判定し、欠陥が発生していないと判定された補正処理画像に適用される不良ノズル候補位置を不良ノズル位置として設定するインクジェット印刷装置である。
【0057】
本開示に係るインクジェット印刷装置によれば、本開示に係る画像処理装置と同様の作用効果を得ることが可能である。他の態様に係る画像処理装置の構成要件は、他の態様に係るインクジェット印刷装置の構成要件へ適用し得る。
【0058】
インクジェット印刷装置は、印刷画像を読み取る読取装置を備え得る。
【0059】
他の態様に係るインクジェット印刷装置は、透明の基材を搬送する搬送ユニットを備える。
【0060】
かかる態様によれば、透明の基材が適用される印刷において、印刷を中断させずに欠陥補正を実現し得る。
【0061】
他の態様に係るインクジェット印刷装置は、搬送ユニットは、ロールに巻かれた連続体の基材をロールから引き出して搬送する。
【0062】
かかる態様によれば、連続体の基材が適用される印刷において、印刷を中断させずに印刷における欠陥補正を実現し得る。
【0063】
他の態様に係るインクジェット印刷装置は、プロセッサは、連続体の基材に対して、印刷画像の間に吐出検査用の画像を印刷せずに複数の画像を連続させるインクジェットヘッドの吐出制御を実施する。
【0064】
かかる態様によれば、基材の無駄な消費が抑制される。また、基材を裁断する際に印刷画像のサイズに基づく裁断を実施し得る。
【発明の効果】
【0065】
本発明によれば、印刷中において、欠陥位置情報に基づき欠陥が発生している可能性がある不良ノズル候補位置を設定し、欠陥を発生させた可能性が高い順に、不良ノズル候補位置について欠陥を発生させた不良ノズルであるか否かが判定される。これにより、印刷中に不良ノズルが特定され、印刷中に欠陥の補正が実施され得る。また、無駄な基材の消費も抑制し得る。
【図面の簡単な説明】
【0066】
【
図1】
図1は実施形態に係るインクジェット印刷装置の全体構成図である。
【
図2】
図2は
図1に示すインクジェット印刷装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。
【
図3】
図3は
図2に示す画像処理制御コントローラの機能ブロック図である。
【
図4】
図4は
図2に示すスジ補正制御コントローラの機能ブロック図である。
【
図5】
図5は実施形態に係るインクジェット印刷装置の構成例を示すブロック図である。
【
図6】
図6は実施形態に係るスジ補正方法の手順を示すフローチャートである。
【
図7】
図7は検査画像及び基準画像の模式図である。
【
図8】
図8は印刷解像度と読取解像度との関係を示す模式図である。
【
図9】
図9は不良ノズル候補重み付けテーブルの模式図である。
【
図11】
図11はスジが消えない場合のスジ補正画像の模式図である。
【
図12】
図12はスジが消えた場合のスジ補正画像の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0067】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施形態について詳説する。本明細書では、同一の構成要素には同一の参照符号を付して、重複する説明は適宜省略する。
【0068】
[実施形態に係るインクジェット印刷装置が解決する課題]
インクジェット印刷装置を用いて印刷される画像は、基材搬送方向に沿うスジ欠陥などの画像欠陥が生じ得る。インクジェット印刷装置は、画像欠陥の原因となるノズルの位置及び色を特定する際の精度が重要である。
【0069】
一般に用いられる印刷物の検査装置の撮影解像度は100ドット毎インチから200ドット毎インチ程度である。高解像度の検査装置であっても撮影解像度は600ドット毎インチ程度である。
【0070】
一方、インクジェット印刷装置の印刷解像度は、600ドット毎インチから1200ドット毎インチ程度であり、検査装置の読取解像度はインクジェット印刷装置の印刷解像度よりも低い場合が多い。印刷解像度よりも低い読取解像度が適用される場合、画像欠陥の原因となるノズルの位置の正確な特定は困難である。インクジェット印刷装置は、画像欠陥の原因となるノズルの位置の正確な特定という課題を有している。
【0071】
インクジェット印刷装置は、一般的な印刷において、シアン、マゼンタ、イエロー及びブラックの四色が適用される。食品等の包装用の袋などを印刷する場合、上記の四色に加えてホワイト、オレンジ、グリーン、バイオレット、レッド及びブルーなどの特色が使用され得る。
【0072】
印刷画像は、上記した多数のインクの中から何色かのインクが重ねられる。そうすると、画像欠陥がいずれの色が抜けたことに起因するかの特定が困難である。インクジェット印刷装置は、画像欠陥の原因となる色の特定という課題を有している。
【0073】
[実施形態に係るインクジェット印刷装置の目的]
実施形態に係るインクジェット印刷装置は、ノズルの吐出状態をチェックする吐出検査用のテストパターンを印刷せずに印刷画像の読取画像から画像欠陥を検出し、画像欠陥を補正する際に、印刷解像度よりも低い読取解像度を適用して、画像欠陥の原因となるノズルの位置及び色をより高い精度で特定する。また、より少ない試行回数で画像欠陥の原因となるノズル位置及び色を特定し、無駄な基材の消費を低減化する。
【0074】
[用語の説明]
〔不良ノズル〕
不良ノズルは、吐出状態が悪いノズルである。不良ノズルの例として、吐出不可ノズル、吐出方向精度が悪いノズル及び吐出量精度が悪いノズル等が挙げられる。吐出不可ノズルは不吐出ノズル及び異常ノズル等と称される場合ある。
【0075】
〔不良ノズル候補〕
不良ノズル候補は、不良ノズルの可能性があるノズルである。不良ノズル候補は吐出頻度が相対的に高くなる場合に不良ノズルになるノズルが含まれ得る。
【0076】
〔ILS〕
ILSは、印刷画像を読み取る装置であり、インラインセンサの省略語である。
【0077】
〔ILSの読取位置情報〕
ILSの位置情報とインクジェットヘッドの印刷位置情報とを対応付けた情報であり、ILSの一画素単位、インクジェットヘッドの一ノズル単位で両者を対応付けた情報である。
【0078】
〔元画像データ〕
インクジェットヘッドを用いて印刷された印刷画像の元となる画像データである。元画像データの色情報はRGBが適用される。なお、Rはレッドを表し、Gはグリーンを表し、Bはブルーを表す。
【0079】
〔ドット画像データ〕
インクジェットヘッドに適用されるインク色に合わせて元画像データの色情報を色変換し、階調値の情報をインク色ごとの網点、二値のドット又は多値のドットで表したドット画像を表す画像データである。
【0080】
〔検査画像〕
ILS等の読取装置を用いて印刷画像を読み取り生成される画像である。スジ等の画像欠陥の有無を検査する際に生成される。
【0081】
〔スジ検出〕
後続する印刷画像の印刷中において、先に印刷された印刷画像にスジ状の欠陥が発生しているか否かを検査すること。スジ検出では、検査対象の印刷画像におけるスジの概略位置及びスジの程度を出力する。スジの程度は、スジの目立ちやすさを表す情報及びスジのサイズの情報を含み得る。スジ欠陥には、連続的なスジの他、断続的なスジも含まれる。なお、検出という用語は、検知及び検査との読み替えが可能である。
【0082】
〔シミュレーション画像〕
シミュレーション画像は、検査画像に相当する模擬画像であり、元画像データ又はドット画像データに対して、スジ検出において検出されたスジの位置及びスジの程度の情報を付加し、計算を用いて生成される。シミュレーション画像を生成する際に、基材へ印刷されたインクの分光特性、インクドットの広がり特性、ILSの読取特性及びILSの読取位置情報等を参照し得る。
【0083】
[実施形態に係るインクジェット印刷装置の概要]
以下に説明するインクジェット印刷装置は、スジの原因となる不良ノズルを特定し、不良ノズルに対してマスク処理を施し、スジの視認性を低下させる。インクジェット印刷装置は、不良ノズルを特定する際に、不良ノズルの候補となる複数の不良ノズル候補をスジの位置に基づき設定し、複数の不良ノズル候補のそれぞれについて、元画像データにおいてスジを発生させたシミュレーション画像を生成する。
【0084】
インクジェット印刷装置は、複数の不良ノズル候補のそれぞれに対応するシミュレーション画像のそれぞれと検査画像との比較結果に基づき、複数の不良ノズル候補に対してマスク処理を施した印刷画像を生成する順位を決定する。
【0085】
インクジェット印刷装置は、決められた順位に従い、不良ノズル候補に対してマスク処理を施した印刷画像を生成し、スジが検出されない印刷画像が印刷される際にマスク処理が施された不良ノズル候補を不良ノズルとして特定する。不良ノズルはノズルマスク情報に記憶され、ノズルマスク情報に基づきスジ補正を実施する。
【0086】
マスク処理とは、ノズルを強制的に使用禁止状態にする処理をいう。マスク処理が施されたノズルはインクを吐出することができない状態となる。マスク処理は、不吐化、吐出不能化又は不使用化と言い換えることができる。
【0087】
スジ補正とは、印刷の際に不良ノズルの発生に起因するスジの視認性を低下させる補正である。シングルパス方式の場合、不良ノズル不吐部分はスジとなる。インクジェット印刷装置は、ノズルマスク情報に記憶される不良ノズルに対してマスク処理を施し、不良ノズルの印刷位置に対応するドットの欠落部分を、マスク処理が施されたノズル以外の他の正常なノズルを用いて形成されたドットが補うことにより、欠落部分の視認性を低下させるスジ補正を行う。
【0088】
[実施形態に係るインクジェット印刷装置の全体構成]
図1は実施形態に係るインクジェット印刷装置の全体構成図である。同図に示すインクジェット印刷装置10は、基材搬送ユニット12、基材供給ユニット14、印刷ユニット16及び基材回収ユニット18を備える。
【0089】
インクジェット印刷装置10は、基材搬送ユニット12を用いて搬送される基材Sへ、印刷ユニット16を用いてカラー画像を印刷する。基材Sは、軟包装に用いられる透明の媒体であり、非浸透媒体である。基材Sの例として、ONY(Oriented Nylon)、OPP(Oriented PolyPropylene)及びPETなどが挙げられる。
【0090】
なお、非浸透とは、後述する水性プライマー及び水性インクに対して非浸透性を有することをいう。軟包装とは、包装される物品の形状により変形する材料による包装をいう。透明とは、可視光の透過率が30%以上100%以下であることをいい、好ましくは70%以上100%以下であることをいう。
【0091】
[基材搬送ユニット]
基材搬送ユニット12は、基材Sの搬送方式としてロールトゥロール方式が適用される。基材搬送ユニット12は、基材供給ユニット14から基材Sを引き出し、基材搬送方向に沿って基材Sを搬送し、印刷済みの基材Sを基材回収ユニット18へ搬送する。基材搬送方向とは、基材供給ユニット14から基材回収ユニット18までの搬送経路に基材Sの進行方向をいう。
図1に示す矢印線は基材搬送方向を表す。
【0092】
基材搬送ユニット12は、複数のパスローラ26を備える。複数のパスローラ26は、基材Sの搬送経路において、基材Sを支持する。基材搬送ユニット12は基材Sへ規定のテンションを付与するテンションローラを備える。なお、テンションローラの図示を省略する。
【0093】
基材供給ユニット14は、送出ロール30を備える。送出ロール30は、回転可能に支持されたリールを備える。リールには、画像が印刷される前の基材Sがロール状に巻かれている。なお、リールの図示を省略する。
【0094】
[印刷ユニット]
印刷ユニット16は、プレコートユニット40、ヘッドユニット42、検査ユニット44及び乾燥ユニット46を備える。印刷ユニット16は、複数のパスローラ26が配置される。
【0095】
〔プレコートユニット〕
プレコートユニット40は、印刷前の基材Sに対してプレコート液を塗布する。プレコートユニット40は、基材搬送方向における基材供給ユニット14の下流側の位置へ配置される。プレコートユニット40は、プレコート液が塗布された基材Sを乾燥させるプレコート乾燥ユニットを備え得る。
【0096】
プレコートユニット40は、塗布ローラを用いるローラ塗布方式など、各種の塗布方式を適用し得る。プレコート液の例として、水性プライマーが挙げられる。水性プライマーは、水性インク中の色材成分を凝集、不溶化又は増粘させる成分を含む液体であり、水性カラーインク及び水性ホワイトインクと反応する。
【0097】
〔ヘッドユニット〕
ヘッドユニット42は、カラーインクを用いて、基材Sへカラー画像を印刷する。ヘッドユニット42は、基材搬送方向におけるプレコートユニット40の下流側の位置へ配置される。
【0098】
ヘッドユニット42は、複数のインクジェットヘッド50を備える。ヘッドユニット42は、ブラックインク、シアンインク、マゼンタインク及びイエローインクのそれぞれに対応する、インクジェットヘッド50K、インクジェットヘッド50C、インクジェットヘッド50M及びインクジェットヘッド50Yを備える。
【0099】
ヘッドユニット42は、グリーンインク、オレンジインク、バイオレットインク及びホワイトインクのそれぞれに対応する、インクジェットヘッド50G、インクジェットヘッド50O、インクジェットヘッド50V及びインクジェットヘッド50Wを備える。
【0100】
インクジェットヘッド50C等を区別する必要がない場合、インクジェットヘッド50C等を総称して、又はインクジェットヘッド50C等の任意の一つをインクジェットヘッド50と称する場合がある。
【0101】
インクジェットヘッド50は、基材搬送方向と直交する基材幅方向における基材Sの全長に対応する、長手方向の長さを有するライン型ヘッドを適用し得る。インクジェットヘッド50は、複数のノズルを備える。複数のノズルのノズル配置は、マトリクス配置等の二次元配置を適用し得る。
【0102】
インクジェットヘッド50の吐出方式は、ピエゾ方式及びサーマル方式等を適用し得る。ピエゾ方式は、圧電素子のたわみ変形を利用して、インクを吐出させる方式である。サーマル方式は、ヒータ等を用いてインクを加熱した際のインクの膜沸騰現象を利用して、インクを吐出させる方式である。
【0103】
[検査ユニット]
検査ユニット44は、検査画像を生成し、検査画像を解析し、検査画像の解析結果に基づき印刷画像の画像欠陥の有無を判定する。検査ユニット44は、ヘッドユニット42の基材搬送方向における下流側に位置へ配置される。
【0104】
検査ユニット44は、ILS60及び照明ユニット62を備える。ILS60は、CCDイメージセンサ及びCMOSイメージセンサ等の撮像デバイスを備える。なお、CCDはCharge Coupled Deviceの省略語である。また、CMOSはComplementary Metal Oxide Semiconductorの省略語である。
【0105】
検査ユニット44は、基材搬送経路を挟んで、上側にILS60が配置され、下側に照明ユニット62が配置される。検査ユニット44は、印刷画像が印刷された基材Sの裏面の側から照明光を照射し、ILS60は基材Sを透過した透過光を受光する。検査ユニット44は、ILS60の出力信号から検査画像を表す検査画像の画像データを生成する。
【0106】
〔乾燥ユニット〕
乾燥ユニット46は、印刷画像が印刷された基材Sに対して乾燥処理を施す。乾燥ユニット46は、基材搬送方向における検査ユニット44の下流側の位置へ配置される。乾燥ユニット46は、ヒータを備え得る。乾燥ユニット46は送風ファンを備え得る。
【0107】
[基材回収ユニット]
基材回収ユニット18は、印刷済みの基材Sを回収する。基材回収ユニット18は、基材搬送方向における印刷ユニット16の下流側の位置へ配置される。基材回収ユニット18は、巻取ロール70を備える。巻取ロール70は、回転可能に支持されたリールを備える。リールには、印刷済みの基材Sがロール状に巻かれる。なお、リールの図示を省略する。
【0108】
[インクジェット印刷装置の電気的構成]
図2は
図1に示すインクジェット印刷装置の電気的構成を示す機能ブロック図である。インクジェット印刷装置10は、コンピュータのハードウェアとソフトウェアとを用いて実現される。ソフトウェアはプログラムと同義である。
【0109】
インクジェット印刷装置10は、各種の機能に対応するプログラムを実行して、各種の機能を実現する。
図2に示す各種のコントローラは、インクジェット印刷装置10の各種の機能に対応する。
【0110】
インクジェット印刷装置10は、全体動作制御コントローラ100を備える。全体動作制御コントローラ100は、インクジェット印刷装置10の各コントローラへ指令信号を送信し、各コントローラを統括的に制御する。
【0111】
全体動作制御コントローラ100は、インクジェット印刷装置10に具備される記憶装置120からのデータの読み出し及び記憶装置120へのデータの記憶を制御する。全体動作制御コントローラ100はメモリコントローラとして機能する。
【0112】
インクジェット印刷装置10は、画像処理制御コントローラ102を備える。画像処理制御コントローラ102は、全体動作制御コントローラ100から送信される指令信号に基づき、元画像データ130に対して画像処理を施し、インクジェットヘッド50の動作に必要なデータ等を生成する。
【0113】
インクジェット印刷装置10は、印刷動作制御コントローラ104を備える。印刷動作制御コントローラ104は、全体動作制御コントローラ100から送信される指令信号に基づき、インクジェットヘッド50の吐出制御、基材搬送ユニット12の動作制御、プレコートユニット40の動作制御及び乾燥ユニット46の動作制御を実施する。
【0114】
すなわち、印刷動作制御コントローラ104は、吐出制御コントローラ、基材搬送制御コントローラ、プレコート制御コントローラ及び乾燥制御コントローラとして機能する。
【0115】
インクジェット印刷装置10は、ILS制御コントローラ106を備える。ILS制御コントローラ106は、全体動作制御コントローラ100から送信される指令信号に基づき、検査ユニット44の動作を制御する。
【0116】
ILS制御コントローラ106は、ILS60を用いる印刷画像の読み取り、ILS60から出力される読取データの処理及び読取データの記憶を実施する。ILS制御コントローラ106は、インク分光情報150、インクドットの広がり特性を含むILS読取特性フィルタ152及びILS読取位置情報154が適用される。
【0117】
また、ILS制御コントローラ106は、照明ユニット62の動作を制御する。ILS制御コントローラ106は、検査制御コントローラとして機能する。
【0118】
インクジェット印刷装置10は、スジ補正制御コントローラ108を備える。スジ補正制御コントローラ108は、全体動作制御コントローラ100から送信される指令信号に基づき、スジ補正処理を実施する。
【0119】
インクジェット印刷装置10は、記憶装置120を備える。記憶装置120はインクジェット印刷装置10に適用される各種のデータが記憶される。各種のデータとして、元画像データ130、ドット画像データ132及び検査画像データ134が挙げられる。
【0120】
符号133は基準画像データを示す。基準画像データ133は元画像データ130及びドット画像データ132の少なくともいずれかを表す。基準画像データ133は、スジ等の欠陥が発生してない印刷画像の読取画像データを適用してもよい。
【0121】
記憶装置120はインクジェット印刷装置10の各種の処理の際に参照される各種の情報が記憶される。各種の情報の例として、ムラ補正処理の際に参照されるムラ補正テーブル140、各種の補正処理に適用されるノズルマスク情報142及びスジ補正処理に適用される不良ノズル候補重み付けテーブル144が挙げられる。
【0122】
記憶装置120はインクジェット印刷装置10の各種の処理に適用される各種のパラメータが記憶される。各種のパラメータの例として、インク分光情報150、インクドットの広がり特性を含むILS読取特性フィルタ152及びILS読取位置情報154が挙げられる。
【0123】
[画像処理制御コントローラの構成例]
図3は
図2に示す画像処理制御コントローラの機能ブロック図である。
図3には、画像処理制御コントローラ102の処理に関連する、記憶装置120の一部の構成を図示する。
【0124】
画像処理制御コントローラ102は、色変換処理部160を備える。色変換処理部160は、元画像データ130に適用される色をインク色に変換する。例えば、色変換処理部160はRGBをCMYKへ変換する。なお、Cはシアンを表す。Mはマゼンタを表す。Yはイエローを表す。Kはブラックを表す。
【0125】
元画像データ130は、X方向及びY方向など、互いに直交する二方向に沿って複数の画素が並べられる二次元の連続階調画像である元画像を表す信号である。各画素はRGBの色情報、CMYKの色情報及びCMYKの色情報に対してGOVW等の特色の色情報が付加される色情報を用いて表現される。各画素は、色ごとに8ビット以上の情報量が適用される画素値を有する。画素値は階調値及び濃度値等と称される場合がある。
【0126】
画像処理制御コントローラ102は、分版処理部162を備える。分版処理部162は、インク色に変換された元画像データから、インク色ごとの分版画像データを生成する。
【0127】
画像処理制御コントローラ102は、補正処理部164を備える。補正処理部164は、ガンマ補正、ムラ補正及び不吐補正などの各種の補正を実施する。補正処理部164は、マスク処理が施される不良ノズルの位置及び不良ノズルのインク色が記憶されるノズルマスク情報142及びノズルごとのムラ補正係数が記憶されるムラ補正テーブル140等を参照して、各種の補正処理を実施する。
【0128】
インクジェット印刷装置10は、インクジェットヘッド50のノズルごとの吐出状態に基づき不良ノズルが規定される。不良ノズルは、マスク処理が施され不吐化される。画像処理制御コントローラ102は、不吐化されたノズルに対して、不良ノズルが存在する場合であっても、ムラ補正を実施して印刷画像におけるムラの発生を抑制する。ムラ補正は、元画像データ130に対して実施される方法及びドット画像データ132に対して実施される方法がある。
【0129】
画像処理制御コントローラ102は、ドット画像生成部166を備える。ドット画像生成部166は、ハーフトーン処理を適用して、色ごとの分版画像データから色ごとのドット画像データ132を生成する。
【0130】
ドット画像データ132が表すドット画像は、直交する二方向に沿ってドットが並べられる二次元画像であり、網点画像、二値ドット画像及び多値ドット画像を適用し得る。ドット画像データ132は、印刷に使用されるインクジェットヘッド50の特性、インクの特性及び基材Sの特性に基づき、ドットごとのインク量及びドットごとの位置が規定される。色ごとの各ドットは1ビット以上の情報量が適用される値を有する。
【0131】
インクジェット印刷装置10に適用される各ドットは、2ビットの情報を量が適用される値を有する。例えば、各ドットは、ドットなし、小ドット、中ドット及び大ドットと呼ばれる四種類の値を有する。
【0132】
図2に示す印刷動作制御コントローラ104は、色ごとのドット画像データ132から、インクジェットヘッド50の吐出に適用される駆動電圧を生成し、駆動電圧をインクジェットヘッド50へ供給する。
【0133】
[スジ補正制御コントローラの構成例]
図4は
図2に示すスジ補正制御コントローラの機能ブロック図である。
図4には、スジ補正制御コントローラ108の処理に関連する、記憶装置120の一部の構成を図示する。
【0134】
スジ補正制御コントローラ108は、スジ情報取得部170を備える。スジ情報取得部170は、
図1に示す検査ユニット44を適用して実施される印刷画像の検査において発見されたスジの情報であるスジ情報を取得する。なお、実施形態に記載のスジ情報は読取画像における欠陥の位置を表す欠陥位置情報の一例である。
【0135】
スジ補正制御コントローラ108は、基準画像データ取得部172を備える。基準画像データ取得部172は、スジ情報を取得した印刷画像に対応する基準画像を表す基準画像データ133を取得する。基準画像データ取得部172は、元画像データ130を取得する元画像データ取得部及びドット画像データ132を取得するドット画像データ取得部の少なくともいずれかを備え得る。
【0136】
スジ補正制御コントローラ108は、スジ領域切出部174を備える。スジ領域切出部174は、検査画像データ134を取得し、検査画像データ134からスジの位置の周辺領域であるスジ領域のデータを切り出す。スジの位置の周辺領域は、スジの位置を含む領域であり、スジの位置からの画素数が規定数の領域が適用される。
【0137】
また、スジ領域切出部174は、基準画像データ133から検査画像のスジ領域に対応するスジ対応領域のデータを切り出す。すなわち、スジ領域切出部174は、検査画像データ134からスジ領域のデータを切り出すスジ領域切出部及び基準画像データ133からスジ対応領域のデータを切り出すスジ対応領域切出部を備え得る。
【0138】
なお、実施形態に記載のスジ領域は欠陥領域の一例である。実施形態に記載のスジ対応領域は欠陥対応領域の一例である。
【0139】
スジ補正制御コントローラ108は、不良ノズル候補設定部176を備える。不良ノズル候補設定部176は、検査画像から検出されたスジに基づき、不良ノズルの候補を設定する。不良ノズル候補設定部176は、複数の不良ノズル候補を設定し得る。
【0140】
不良ノズル候補設定部176は、スジの位置に基づき不良ノズル候補位置を設定し、かつ、スジの色に基づき不良ノズル候補色を設定する。不良ノズル候補位置は、ノズル位置を表すノズル番号を適用し得る。色ごとのインクジェットヘッド50を備える場合、不良ノズル候補色は、インクジェットヘッドのインク色に対応する。
【0141】
なお、実施形態に記載の不良ノズル候補設定部176は不良ノズル候補位置の情報を含む不良ノズル候補位置情報を取得する構成要素の一例である。実施形態に記載の不良ノズル候補設定部176は不良ノズル候補色の情報を含む不良ノズル候補色情報を取得する構成要素の一例である。
【0142】
スジ補正制御コントローラ108は、シミュレーション画像生成順位設定部178を備える。シミュレーション画像生成順位設定部178は、複数の不良ノズル候補について、シミュレーション画像を生成する際の優先順位を設定する。
【0143】
シミュレーション画像生成順位設定部178は、不良ノズル候補重み付けテーブル144を参照して、シミュレーション画像を生成する際の優先順位を設定し得る。不良ノズル候補重み付けテーブル144は、不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組ごとのシミュレーション画像を生成する際の優先順位が規定される。
【0144】
なお、実施形態に記載のミュレーション画像を生成する際の優先順位は第一優先順位の一例である。
【0145】
スジ補正制御コントローラ108は、シミュレーション画像生成部180を備える。シミュレーション画像生成部180は、シミュレーション画像の生成順位が高い順に、基準画像のスジ対応領域に対して不良ノズル候補をマスク処理したシミュレーション画像を生成する。
【0146】
スジ補正制御コントローラ108は、スジ補正画像印刷順位設定部182を備える。スジ補正画像印刷順位設定部182は、シミュレーション画像の解析結果に基づき、スジ補正画像を印刷する不良ノズル候補の優先順位を設定する。なお、実施形態に記載のスジ補正画像を印刷する不良ノズル候補の優先順位は第二優先順位の一例である。
【0147】
スジ補正画像は、不良ノズル候補位置及び不良ノズル候補色の組の任意の一組に対して仮のマスク処理が施され、スジ補正処理が施されて印刷される印刷画像である。なお、実施形態に記載のスジ補正画像は補正処理画像の一例である。
【0148】
スジ補正制御コントローラ108は、ノズルマスク決定部184を備える。ノズルマスク決定部184は、スジが消えている印刷画像を印刷した際にマスク処理がされた不良ノズル候補位置及び不良ノズル候補色の組に基づき、不良ノズル位置及び不良ノズル色を特定する。ノズルマスク決定部184において特定された不良ノズル位置及び不良ノズル色は、ノズルマスク情報142に記憶される。
【0149】
記憶装置120は、インク分光情報150、インクドットの広がり特性を含むILS読取特性フィルタ152及びILS読取位置情報154が記憶される。インク分光情報150は、ILS60のインク色に対するR信号、G信号及びB信号の出力バランスを表す情報である。ILS読取特性フィルタ152は、基材Sにおけるインク滴の発色範囲と濃度の分布とを表すインクドットの広がり特性の情報及びILS60の読み取り光学系の結像特性を表すボケの情報が含まれる。
【0150】
ILS読取特性フィルタ152は、ILS60に適用されるボケフィルタである。ILS読取位置情報154はインクジェットヘッド50のノズル位置とILS60の読取素子の位置との関係を表す情報である。インク分光情報150、インクドットの広がり特性を含むILS読取特性フィルタ152及びILS読取位置情報154は、スジ補正を実施する際に、事前に準備される。
【0151】
なお、実施形態に記載のILS読取位置情報154は読取素子の読取位置とノズルの印刷位置との位置関係を表す読取位置情報の一例である。
【0152】
図5は実施形態に係るインクジェット印刷装置の構成例を示すブロック図である。インクジェット印刷装置10の制御装置11は、プロセッサ202、非一時的な有体物であるコンピュータ可読媒体204、通信インターフェース206及び入出力インターフェース208を備える。
【0153】
制御装置11はコンピュータが適用される。コンピュータの形態は、サーバであってもよいし、パーソナルコンピュータであってもよく、ワークステーションであってもよく、また、タブレット端末などであってもよい。
【0154】
プロセッサ202はCPU(Central Processing Unit)を含む。プロセッサ202はGPU(Graphics Processing Unit)を含んでもよい。プロセッサ202は、バス210を介してコンピュータ可読媒体204、通信インターフェース206及び入出力インターフェース208と接続される。入力装置214及びディスプレイ装置216は入出力インターフェース208を介してバス210に接続される。
【0155】
入力装置214は、キーボード、マウス、マルチタッチパネル、その他のポインティングデバイス及び音声入力装置等を適用し得る。入力装置214は、複数のデバイスの任意の組み合わせを適用し得る。
【0156】
ディスプレイ装置216は、液晶ディスプレイ、有機ELディスプレイ及びプロジェクタ等を適用し得る。ディスプレイ装置216は、複数のデバイスの任意の組み合わせを適用し得る。なお、有機ELディスプレイのELは、Electro-Luminescenceの省略語である。
【0157】
コンピュータ可読媒体204は、主記憶装置であるメモリ及び補助記憶装置であるストレージを含む。コンピュータ可読媒体204は、半導体メモリ、ハードディスク装置及びソリッドステートドライブ装置等を適用し得る。コンピュータ可読媒体204は、複数のデバイスの任意の組み合わせを適用し得る。
【0158】
なお、ハードディスク装置は、英語表記のHard Disk Driveの省略語であるHDDと称され得る。ソリッドステートドライブ装置は、英語表記のSolid State Driveの省略語であるSSDと称され得る。
【0159】
制御装置11は、通信インターフェース206を介してネットワークへ接続され、外部装置と通信可能に接続される。ネットワークは、LAN(Local Area Network)等を適用し得る。なお、ネットワークの図示を省略する。
【0160】
コンピュータ可読媒体204は、スジ補正制御プログラム220など、インクジェット印刷装置に適用される複数のプログラムが記憶される。コンピュータ可読媒体204は、各種のデータ及び各種のパラメータ等が記憶される。
【0161】
プロセッサ202は、スジ補正制御プログラム220の命令を実行し、スジ情報取得部170、基準画像データ取得部172、スジ領域切出部174、不良ノズル候補設定部176として機能する。また、プロセッサ202は、シミュレーション画像生成順位設定部178、シミュレーション画像生成部180、スジ補正画像印刷順位設定部182及びノズルマスク決定部184として機能する。
【0162】
制御装置11は、入出力インターフェース208を介して、入力装置214及びディスプレイ装置216が接続される。入力装置214はキーボード及びマウス等の入力デバイスが適用される。ディスプレイ装置216は、制御装置11に適用される各種の情報が表示される。
【0163】
[実施形態に係るスジ補正方法の手順]
図6は実施形態に係るスジ補正方法の手順を示すフローチャートである。
図5に示す制御装置11は、
図6に示す手順に沿って各工程に対応する命令を実行し、スジ補正方法を実現する。なお、実施形態に記載のスジ補正方法は画像処理方法の一例である。
【0164】
〔事前準備〕
スジ補正方法が実施される際に、インク分光情報の取得、インクドットの広がり特性を含む読取画像におけるボケの測定及びILS60の読取位置の調整が実施される。
【0165】
〔インク分光情報の取得〕
図1に示す各色のインクジェットヘッド50から、印刷画像の印刷に適用されるインクを吐出させてカラーパッチを印刷する。ILS60を用いてカラーパッチを読み取り、R信号、G信号及びB信号の出力バランス測定し、
図2に示すインク分光情報150を取得する。
【0166】
〔ILS読取特性フィルタの設定〕
ベタ画像が適用されるパッチであり、インクを吐出させずに形成された白線を含むパッチを印刷し、ILS60を用いて白線を含むパッチを読み取る。ここでいう白線の白はパッチが印刷されるシートの地の色を表す。
【0167】
ILS60に具備される読取画素位置の位相ズレに対して、白線のボケの程度を測定する。ボケの指標は、濃度ステップ画像に対してジョブ中検出パターンを白黒反転させた画像を埋め込み、色ごと、ノズルごと及び濃度ごとの読取値から算出される。ボケの指標値に基づき、ILS60の読取特性フィルタに適用されるボケフィルタであり、インクドットの広がり特性を含むILS60の読み取り光学系の結像特性を表すボケフィルタの係数が規定される。
【0168】
ボケフィルタは、ガウシアンフィルタを適用し得る。ガウシアンフィルタのサイズは、基材Sへ印刷される最大サイズのドットの直径以上となるサイズが適用される。また、ガウシアンフィルタの各要素のピッチは、ガウシアンフィルタが適用される画像の解像度に対応する。ボケフィルタは、
図2に示すILS読取特性フィルタ152として設定される。
【0169】
〔ILSの読取位置調整〕
インクジェットヘッド50に具備されるノズルの位置と、ILS60に具備される読取素子の位置との関係が測定される。測定結果は
図2に示すILS読取位置情報154として記憶される。
【0170】
〔スジ補正方法の手順〕
図6に示すスジ情報取得工程S10では、
図5に示すプロセッサ202は、印刷中に発生したスジの位置及びスジの強度を含むスジ情報を取得する。プロセッサ202は、検査画像からスジを検出し、スジが発生している場合に、スジの位置及びスジの強度を特定し得る。
【0171】
検査画像データ取得工程S12では、プロセッサ202は検査画像データ134を取得する。検査画像データ134は、
図4に示す記憶装置120へ記憶される。
【0172】
スジ領域切出工程S14では、プロセッサ202は検査画像から規定のサイズを有するスジを含むスジ領域を切り出す。スジ領域のサイズは予め規定されるサイズが適用される。なお、スジ領域は符号304を付して
図7に図示する。
【0173】
基準画像データ取得工程S16では、プロセッサ202は基準画像データ133として、元画像データ130又はドット画像データ132を取得する。基準画像データ133は印刷画像の読取画像データを取得してもよい。
【0174】
例えば、複数枚の印刷画像が印刷される際に、一枚目の印刷画像など、インクジェットヘッド50の吐出状態が安定している場合の印刷画像は、高品質を有していると考えられる。高品質の印刷画像の読取画像データは、基準画像データ133として適用し得る。
【0175】
スジ対応領域切出工程S18では、プロセッサ202は検査画像におけるスジ領域に対応する基準画像のスジ対応領域を基準画像から切り出す。スジ対応領域のサイズはスジ領域のサイズに対応する。なお、スジ対応領域は符号324を付して
図7に図示する。
【0176】
なお、検査画像データ取得工程S12及びスジ領域切出工程S14と、基準画像データ取得工程S16及びスジ対応領域切出工程S18との順番を入れ替えてもよいし。それぞれを並行して実施してもよい。
【0177】
不良ノズル候補位置設定工程S20では、プロセッサ202は、不良ノズル候補位置を設定する。すなわち、不良ノズル候補位置設定工程S20では、スジの発生位置の近傍に位置する複数のノズル位置が不良ノズル候補位置として設定される。例えば、複数の不良ノズル候補位置が設定される際に、スジの発生位置と推定される位置との距離が近い順に、予め規定された数の不良ノズル候補位置が設定される。
【0178】
不良ノズル候補色設定工程S22では、プロセッサ202は不良ノズル候補のインク色である不良ノズル候補色を設定する。スジが発生しているインク色が予め特定されている場合は、不良ノズル候補色設定工程S22は省略されてもよい。
【0179】
不良ノズル候補色設定工程S22では、プロセッサ202はスジ発生位置における基準画像と検査画像との差分に基づき、不良ノズル候補色を特定し得る。また、不良ノズル候補色設定工程S22では、プロセッサ202はスジ発生位置におけるインク吐出量に基づき、不良ノズル候補色を特定し得る。
【0180】
複数の不良ノズル候補色が特定される場合、スジを発生させる可能性が高い順に、不良ノズル候補色のそれぞれに優先順位が規定される。なお、不良ノズル候補色の特定の詳細及び優先順位の規定の詳細は後述する。
【0181】
シミュレーション画像生成順位設定工程S24では、プロセッサ202は不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組について重み付けを行い、不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組ごとにシミュレーション画像を生成する順位を規定する。
【0182】
シミュレーション画像生成順位設定工程S24における重み付けは、
図2に示す不良ノズル候補重み付けテーブル144を適用し得る。なお、不良ノズル候補重み付けテーブル144の詳細は後述する。
【0183】
シミュレーション画像生成工程S26では、プロセッサ202はシミュレーション画像生成の順位が高い順に、不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組を一組ずつ選択する。プロセッサ202は、基準画像のスジ対応領域について、選択された不良ノズル候補位置において不良ノズル候補色が吐出されていない状態のシミュレーション画像を生成する。
【0184】
プロセッサ202は、シミュレーション画像を生成する際に、インクドットの広がり及びILS60の読み取りにおける光学系のボケ等の光学特性を補正するILS読取特性フィルタ152を適用し得る。
【0185】
スジ補正画像印刷順位設定工程S28では、プロセッサ202はシミュレーション画像と検査画像におけるスジ領域との類似度を導出する。類似度は、シミュレーション画像と検査画像におけるスジ領域との差分の二乗等を適用し得る。
【0186】
スジ補正画像印刷順位設定工程S28では、プロセッサ202は不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組について、類似度が高い順にスジ補正画像印刷が実施される順位を設定する。
【0187】
ノズルマスク決定工程S30では、プロセッサ202はスジ補正画像印刷の順位が高い順に、不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組み合わせについて、仮のマスク処理を実施し、スジ補正処理を実施して、印刷画像を印刷する。
【0188】
ノズルマスク決定工程S30では、プロセッサ202は仮のマスク処理が施された印刷画像のスジ検出の結果を取得する。仮のマスク処理が施された印刷画像から、検査画像において検出されたスジが消えている場合は、仮のマスク処理を実施した不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組をマスク対象のノズル及びインク色として決定し、ノズルマスクを決定する。
【0189】
一方、仮のマスク処理が施された印刷画像から、検査画像において検出されたスジが消えていない場合は、仮のマスク処理が施される不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組が変更される。仮のマスク処理が施された印刷画像から、検査画像において検出されたスジが消えまで、印刷及びスジ検出が繰り返し実施される。
【0190】
[スジ補正の具体例]
〔スジ情報の取得〕
図7は検査画像及び基準画像の模式図である。同図に示す検査画像300は、スジ検出が実施され、スジ302が検出されている。スジ検出は、印刷中に実施され、印刷中に突発的に発生したスジを検出する。
【0191】
スジ検出は、スジが発生していない基準画像320と、スジ検出の対象画像である検査画像300とを比較し、比較結果に基づきスジを検出する。基準画像320は、元画像、元画像から生成されるドット画像及びスジの非発生が確認された印刷画像の読取画像を適用し得る。
【0192】
なお、検査画像300は
図2に示す検査画像データ134に対応する画像であり、元画像は元画像データ130に対応する画像であり、ドット画像はドット画像データ132に対応する画像である。また、印刷画像は、試し刷りの印刷画像を適用し得る。
【0193】
印刷画像の読み取りに使用されるスキャナは、読取解像度として480ドット毎インチを適用し得る。例えば、
図1に示すILS60の読取解像度は480ドット毎インチを適用し得る。
【0194】
スジ検出の結果として、検査画像300におけるスジ302の位置の情報及びスジ302の程度の情報が生成される。スジ302の位置の情報は、スジ発生位置に対応する概略のノズルの位置が含まれる。スジ発生位置に対応する概略のノズルの位置は、基材幅方向に平行となる実質的なノズルの配列方向におけるノズルの位置であり、複数のノズルの位置が含まれ得る。
【0195】
スジの程度とは、スジの目立ちやすさを表す。スジの程度として、印刷画像における基材搬送方向のスジの長さを適用し得る。スジの程度はスジ強度と称される場合がある。
【0196】
〔スジ領域及びスジ対応領域の切り出し〕
スジ位置及びスジの長さに基づき、検査画像300からスジ領域304が切り出される。また、基準画像320から検査画像300のスジ領域304に対応するスジ対応領域324が切り出される。
【0197】
スジ領域304は、スジ302を含む領域であり、スジ302の近傍の正常画素が含まれる。スジ302の近傍の正常画素の数は、スジ302の上下左右の各方向について、一画素以上とされる。例えば、スジ領域304の画素数は、スジ検出の際の解析に適用される単位画素数の整数倍を適用し得る。
【0198】
一つの検査画像300について、複数のスジ領域304が切り出されてもよい。複数のスジ領域304が連続している場合は、複数のスジ領域304を一つのスジ領域304としてもよい。すなわち、基材搬送方向におけるスジ302の長さに応じて、スジ領域304のサイズを規定し得る。
【0199】
基準画像320にドット画像が適用される場合、印刷画像の各画素とノズル位置との対応関係の情報が必要となる。印刷画像に規定される原点位置とノズル位置との対応関係を表すノズルオフセット量の情報を用いて、印刷画像の各画素とノズル位置との対応関係が導出される。
【0200】
〔不良ノズル候補位置の特定〕
一般に、インクジェット印刷装置に具備される印刷画像の読み取りに適用されるスキャナは、読取解像度が100ドット毎インチから200ドット毎インチ程度であり、高解像度のスキャナであっても、読取解像度は600ドット毎インチ程度である。
【0201】
一方、
図1に示すインクジェット印刷装置10は、印刷解像度を600ドット毎インチから1200ドット毎インチとし得る。すなわち、ILS60の読取解像度は印刷解像度以下であり、検査画像300から実際にスジを発生させたノズル位置を正確に特定することは困難である。
【0202】
図8は印刷解像度と読取解像度との関係を示す模式図である。
図8には、インクジェットヘッド50の印刷解像度が1200ドット毎インチであり、ILS60の読取解像度が480ドット毎インチの場合のノズル51の位置と読取素子61の位置との関係を模式的に示す。
【0203】
図8に示す例では、ILS60の一つの読取素子61には、平均で2.5個のノズル51が対応する。更に、印刷画像を読み取る際のブレを考慮すると、プラスマイナス2ノズルの誤差が生じ得る。すなわち、一つの読取素子61に入るノズル51として、5個のノズル51を特定する必要がある。
【0204】
本実施形態に係るインクジェット印刷装置10では、更に余裕を持たせて、プラスマイナス3ノズルの誤差を想定し、一つの読取素子61に入るノズル51として、7個のノズル51が特定される。この7つのノズルの位置が不良ノズル候補位置である。
図8には、読取素子61Aが読み取る印刷画素に対応するノズル位置の範囲を模式的に図示する。
【0205】
不良ノズル候補位置は、スジを発生させる可能性に応じた重み付けが可能である。例えば、
図8に示す7つの不良ノズル候補位置のうち、7つのノズル位置における中央により近いノズル51Aの位置は実際にスジを発生させた可能性が相対的に高いと考えられる。そこで、中央のノズル位置は相対的に重みが大きくされ、中央から離れるに従い相対的に重みが小さくされ得る。
【0206】
〔不良ノズル候補色の特定〕
ブラック以外の色が適用される位置では、概ね、二色から三色のインクが使用され得る。ブラック及びグレーが適用される位置では、一色から四色のインクが使用され得る。すなわち、不良ノズル候補位置ごとに二色から三色又は一色から四色の不良ノズル候補色がある。不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組は、二色から三色のインクが使用され場合は14組から21組存在し、一色から四色のインクが使用される場合は7組から28組存在する。
【0207】
インク色に関して、例えば、シアンとブルーとの組み合わせ及びマゼンタとレッドとの組み合わせなど、特定の色の組み合わせについて両者の吐出量が同じ程度である場合、検査画像300の画素の色と基準画像320の画素の色との比較に基づく、スジ発生位置のインク色の正確な特定は困難である。
【0208】
本実施形態に係るインクジェット印刷装置10では、不良ノズル候補位置のそれぞれについて、スジの長さの範囲において不良ノズル候補色が特定される。ここでは、不良ノズル候補色の特定の例として第一方法及び第二方法を例示する。
【0209】
《第一方法》
検査画像300のスジ302の位置における色ごとの画素値から、基準画像320のスジ302に対応する位置における色ごとの画素値との差分値の絶対値を導出する。差分が生じる色が、不良ノズル候補色として特定される。
【0210】
差分値の絶対値の導出にあたり、元画像を基準画像320に適用する場合、元画像データ130のRGB値と検査画像データ134のRGB値との対応関係に基づくILS60のキャリブレーションデータが取得され、利用される。
【0211】
差分値の絶対値の導出にあたり、ドット画像を基準画像320に適用する場合、ドット画像データ132のインク色ごとの画素値と検査画像データ134のRGB値との対応関係に基づく、ILS60のキャリブレーションデータが取得され、利用される。
【0212】
更に、差分値の絶対値の導出にあたり、検査画像300及び基準画像320の少なくともいずれか一方の解像度が、他方の解像度に合わせて変換される。また、検査画像300及び基準画像320の少なくともいずれか一方のサイズを、他方のサイズに合わせて変換される。
【0213】
例えば、スジ302の位置において、B値の差分値が相対的に大きく、G値及びR値の差分値が相対的に小さい場合、イエローが不良ノズル候補色となる。また、スジ302の位置において、G値の差分が相対的に大きく、B値及びR値の差分値が相対的に小さい場合、マゼンタが不良ノズル候補色となる。
【0214】
更に、スジ302の位置において、R値の差分値が相対的に大きく、G値及びB値の差分値が相対的に小さい場合、シアンが不良ノズル候補色となる。更にまた、スジ302の位置において、R値及びG値の差分値が相対的に大きく、B値の差分値が相対的に小さい場合、ブルーが不良ノズル候補色となる。
【0215】
また、スジ302の位置において、B値及びR値の差分値が相対的に大きく、G値の差分値が相対的に小さい場合、グリーンが不良ノズル候補色となる。更に、スジ302の位置において、B値及びG値の差分値が相対的に大きく、R値の差分値が相対的に小さい場合、レッドが不良ノズル候補色となる。
【0216】
更にまた、スジ302の位置において、R値、G値及びB値の差分値が相対的に大きい場合、ブラックが不良ノズル候補色となる。レッド、グリーン及びブルー以外の特色は、実際にスジと同等の印刷画像が印刷され、印刷画像の読取画像が取得され、読取画像と基準画像320とが比較され、比較結果から導出されるRGB値の大小関係に基づき、不良ノズル候補色が特定される。
【0217】
第一方法は、検査画像300の分光特性に基づきインク色を特定する方法である。第一方法は、使用される特色が少ない場合及びスジ302の長さが相対的に長いなど、スジ302が相対的に強い場合に適している。
【0218】
特色インクが少ない印刷画像では、シアン等の基本色とホワイト等の特色とを区別する必要性が低く、分光特性が似たインクの区別が不要である。また、スジ302が相対的に強い場合は、検査画像と基準画像との差分に基づく分光特性の違いが判定し易い。
【0219】
《第二方法》
第二方法は、スジ302の位置における各色インクの吐出量に基づき、不良ノズル候補色を特定する方法である。インク吐出量に基づき不良ノズル候補色を特定し得る理由は以下のとおりである。
【0220】
インクジェットヘッドは、インク吐出量が相対的に多い場合、インク吐出量が相対的に少ない場合に比べて吐出異常が発生する可能性が高い。また、インクジェットヘッドは、一定の吐出量以下の場合に、吐出異常が発生したとしても印刷画像のスジが視認され難い。
【0221】
色ごとのインク吐出量は、色ごとのドット画像データ132に基づき、不良ノズル候補位置ごとに、スジ302の長さの範囲で導出されるドットの画素値の合計値が適用される。
【0222】
色ごとのインク吐出量を元画像データ130から導出する場合、元画像データのRGB値がインク色に変換され、インク色ごとの画像データが生成され、スジ302の長さの範囲について、インク色ごとの画素値の合計値が導出される。インク色ごとの画素値の合計値はインク吐出量に対応する。
【0223】
第二方法は、インク吐出量に基づき、不良ノズル候補色を特定する方法である。第二方法は、使用される特色が多い場合及びスジ302の長さが相対的に短いなど、スジ302の強度が相対的に弱い場合に適している。また、第二方法は、スジ302の近くに空間周波数の高周波成分を有する細かい画像が印刷される場合に適している。
【0224】
特色インクが多い印刷画像は、第一方法を適用した場合に、検査画像からスジとなったインクを特定する精度が相対的に低い場合があり得る。また、第一方法を適用した場合に、相対的に弱いスジ302は差分が微差となり、差分の判定が困難となり得る。
【0225】
更に、第一方法は、空間周波数の高周波成分を有する印刷画像の場合、印刷位置のわずかなズレが、検査画像300と基準画像320との差分の誤差の発生原因となり、インク色の特定に精度に影響を与え得る。
【0226】
不良ノズル候補色の特定の際に、第一方法を適用するか又は第二方法適用するかは、印刷画像に適用される色、スジの強度及びスジの近傍における空間周波数の高周波成分の存在等に基づき選択し得る。
【0227】
不良ノズル候補色として、優先順位が規定される複数の色が特定される。不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組み合わせごとに、重み付けに基づく優先順位が規定される。
【0228】
図9は不良ノズル候補重み付けテーブルの模式図である。同図に示す不良ノズル候補重み付けテーブル144における候補位置は、不良ノズル候補位置を表す。また、候補色は、不良ノズル候補色を表す。
【0229】
候補位置の0は、
図8に示す中央のノズル51Aの位置を表す。+1、+2及び+3のそれぞれは、中央のノズル51Aからプラス方向について一ノズル目の位置、二ノズル目の位置及び三ノズル目の位置を表す。また、-1、-2及び-3のそれぞれは、中央のノズル51Aからマイナス方向について一ノズル目の位置、二ノズル目の位置及び三ノズル目の位置を表す。なお、プラス方向及びマイナス方向は、互いに反対となる向きを表し、便宜上規定した名称である。
【0230】
候補色1、候補色2、候補色3及び候補色4は、複数の不良ノズル候補色に便宜上付した名称である。候補色の数値は、不良ノズル候補色を特定する際に規定される不良ノズル候補色の優先順位である。
【0231】
不良ノズル候補重み付けテーブル144は、不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組について、1から28までの優先順位を規定する。優先順位の数値が相対的に小さい場合に、スジを発生させた可能性が高く、優先順位の数値が相対的に大きい場合に、スジを発生させた可能性が低い。
【0232】
〔シミュレーション画像の生成〕
不良ノズル候補の位置及び不良ノズル候補色は、実際にスジを発生させた可能性という観点で重み付けをし、優先順位を決定し得るが、更に精度を上げる工夫が可能である。本実施形態に記載のスジ補正方法では、以下の処理を実施して、不良ノズル候補位置及び不良ノズル候補色の優先順位の精度を向上させ得る。
【0233】
図9に示す不良ノズル候補重み付けテーブル144に基づき、不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組のそれぞれについて、優先順位が高い順にシミュレーション画像を生成する。
【0234】
シミュレーション画像は、シミュレーションを適用して、対象とされる不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組を不吐と仮定した仮の印刷画像を生成する。基準画像320としてドット画像が適用される場合、不良ノズル候補色に対応するインク色のドット画像データ132が適用される。すなわち、ドット画像データ132から切り出されたスジ対応領域324について、スジに対応するドットが消去されたドット画像データが生成される。
【0235】
基準画像320として元画像が適用される場合、元画像データ130のRGB値をCMYK値などのインク色値に変換し、インク色ごとの分版画像データを生成する。不良ノズル候補色に対応するインク色の分版画像データからスジに対応するドットが消去された分版画像データが生成される。
【0236】
スジに対応するドットが消去されたドット画像又は分版画像に対して、ILS読取特性フィルタ152を用いてフィルタ処理が実施され、基材Sに着弾した際のインク広がり及びILS60の光学特性に起因するボケを反映させる。
【0237】
インク色ごとのドット画像データ又はインク色ごとの分版画像データの色値は、インク分光情報150を用いてRGB値に変換される。更に、色変換されたスジ対応領域324の画像データは、検査画像300と同じ解像度に変換され、スジ領域304と同じサイズに変換され、スジ領域304に対応するシミュレーション画像が生成される。
【0238】
図10は類似度算出の模式図である。例えば、シミュレーション画像350は
図9に示す優先順位が1の不良ノズル候補の位置及び不良ノズル候補色の組に対応する。また、シミュレーション画像352は優先順位が2の不良ノズル候補の位置及び不良ノズル候補色の組に対応する。更に、シミュレーション画像354は優先順位が3の不良ノズル候補の位置及び不良ノズル候補色の組に対応する。
【0239】
シミュレーション画像350、シミュレーション画像352及びシミュレーション画像354のそれぞれは、スジ領域304との類似度が導出される。シミュレーション画像350等とスジ領域304とは、同じ解像度であり、かつ、同じサイズであり、更にいずれもRGB形式である。
【0240】
シミュレーション画像350等のサイズは、スジ302が含まれる最小限のサイズが好ましい。本実施形態では、シミュレーション画像350等は、スジ302に対してスジ302の幅方向の両側に二画素を加算し、かつ、スジ302に対してスジ302の長さ方向の両側に一画素を加算したサイズとした。
【0241】
そこで、スジ領域304とシミュレーション画像350等との画素ごと及び色ごとの差分値の二乗が導出され、全ての画素及び全ての色について、差分値の二乗値が合算される。合計値は類似度の指標値に適用される。類似度の値が相対的に小さいほど、類似度が相対的に高い。
【0242】
例えば、シミュレーション画像350は、スジ302の位置351にスジに対応する画像要素が存在しない。同様に、シミュレーション画像352は、スジ302の位置353にスジに対応する画像要素が存在しない。一方、シミュレーション画像354は、スジ302の位置にスジに対応する画像要素356が存在する。
【0243】
シミュレーション画像354の類似度Cは、シミュレーション画像350の類似度A及びシミュレーション画像352の類似度Bよりも小さくなり、類似度が高くなる。このようにして、不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組ごとに、スジ領域304との類似度が導出され、類似度が高い順にスジ補正画像印刷の優先順位が規定される。
【0244】
〔スジ補正画像の印刷〕
不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組について規定された、スジ補正画像印刷の優先順位が高い順に、不良ノズル候補位置及び不良ノズル候補色のノズルを不良ノズルと仮定してマスクがされ、スジ補正画像の印刷が実施される。
【0245】
マスクがされたノズルは印刷に使用されず、マスクがされたノズルの印刷位置は、マスクがされたノズルの両隣のノズルを用いる不吐補正が実施される。これにより、インクを吐出していないノズルがあたかも正常に吐出しているかのように、印刷が実施される。スジ補正画像の印刷は一ページ分の印刷が実施される。
【0246】
〔ノズルマスクの決定〕
不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組ごとのスジ補正画像は、
図1に示す検査ユニット44を用いてスジ検出が実施される。スジ補正画像において、検査画像300のスジ302が消えていない場合はスジ302が消えるまで、スジ補正画像印刷の優先順位が高い順に、不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組を変えて、スジ補正画像の印刷及びスジ検出が実施される。
【0247】
図11はスジが消えない場合のスジ補正画像の模式図である。同図に示すスジ補正画像360はスジ362が発生しており、スジ補正を実施したにもかかわらず、検査画像300におけるスジ302が消えていない。スジ362が発生しているスジ補正画像360が印刷された場合は、不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組を変えて、スジ補正画像の印刷及びスジ検出が実施される。
【0248】
図12はスジが消えた場合のスジ補正画像の模式図である。同図に示すスジ補正画像370はスジ302に対応する位置にスジ372が発生していない。スジが消えたスジ補正画像370が印刷された場合は、スジ補正画像370の印刷の際にマスクされた不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組が、マスク対象のノズル位置及び色とされ、ノズルマスク情報142が更新される。
【0249】
スジ302を発生させたノズルの吐出状態が不安定であり、マスク処理がされたノズルがスジ302を発生させたノズルでない場合であっても、スジ302が消えることがあり得る。かかる場合であっても、スジ302が消えた状態で不良ノズルの探索が終了されるので問題ない。仮に、吐出状態が不安定なノズルが再びスジ302を発生させた場合、上記の手順を適用して不良ノズルの探索が実施される。マスク処理がされたノズルは、不良ノズル候補から除外されるので、不良ノズル候補とはならず、再度の不良ノズルの探索において先の結果と同じになることはない。
【0250】
[実施形態に係るインクジェットヘッド及びスジ補正方法の作用効果]
実施形態に係るインクジェットヘッド及びスジ補正方法は、以下の作用効果を得ることが可能である。
【0251】
〔1〕
スジ302の位置及び色に基づき、複数の不良ノズル候補位置及び不良ノズル候補色が特定され、不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組に対してスジを発生させる可能性の重み付けをして、シミュレーション画像の優先順位が規定される。
【0252】
優先順位が高い順に、基準画像320のスジ対応領域324について、不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組を適用してスジを発生させたシミュレーション画像が生成される。シミュレーション画像とスジ領域304との類似度が算出され、類似度が高い順にスジ補正画像印刷の優先順位が規定される。
【0253】
優先順位が高い順に、不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組をマスク処理の対象としてスジ補正画像が印刷される。スジ補正画像においてスジが消えている場合は、スジ補正画像の印刷に適用された不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組をマスク処理の対象に追加し、ノズルマスク情報が更新される。
【0254】
これにより、基材Sへスジ検出用のテストパターンを印刷せずに、印刷中に不良ノズルの位置及び色を特定でき、不良ノズルの位置及び色に対するスジ補正が可能となる。また、スジ検出用のテストパターンが印刷される基材Sが不要となり、無駄な基材Sの消費が抑制される。
【0255】
〔2〕
一つの読取素子の対応するノズル数に基づき、不良ノズル候補位置の数が規定される。これにより、印刷解像度よりも読取解像度が低い場合であっても、複数の不良ノズル候補位置の中から不良ノズル位置の位置を特定し得る。
【0256】
〔3〕
検査画像データ134におけるスジ302の色ごとの画素値と、基準画像データ133におけるスジ302に対応する位置の色ごとの画素値との差分値に基づき不良ノズル候補色を特定する。かかる方法は、印刷画像に使用されるインク色の数が相対的に少ない場合及びスジ302の長さが相対的に長い場合などスジの程度が相対的に強い場合に有利である。
【0257】
〔4〕
検査画像データ134におけるスジ302のインク吐出量が多い順に、不良ノズル候補色の優先順位が規定される。かかる方法は、印刷画像に使用されるインク色の数が相対的に多い場合、スジ302の長さが相対的に短い場合などスジの程度が相対的に弱い場合及びスジ302の近傍に空間周波数の高周波成分が存在する場合に有利である。
【0258】
〔5〕
スジ補正画像印刷の優先順位を規定する際に、基準画像320の一部であるスジ対応領域324のシミュレーション画像が生成される。これにより、シミュレーション画像を短期間で生成し得る。
【0259】
〔6〕
シミュレーション画像の類似度に基づきスジ補正画像印刷の優先順位が規定される。これにより、スジを発生させた可能性が高い不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組から順にスジ補正画像が印刷され、スジ補正画像の印刷に使用される無駄な基材の消費が抑制される。
【0260】
[シミュレーション画像生成の変形例]
不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組の全てについて、シミュレーション画像の生成及びスジ領域304との類似度の判定の後に、スジ補正画像印刷を実施してもよい。また、不良ノズル候補位置の優先順位が高い順に、いくつかの不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組について、シミュレーション画像の生成及びスジ領域304との類似度の判定をし、スジ補正画像印刷中に、残りの不良ノズル候補位置と不良ノズル候補色との組について、シミュレーション画像の生成及びスジ領域304との類似度の判定をしてもよい。
【0261】
[画像処理装置への適用例]
図1及び
図2に示すインクジェット印刷装置10から、
図4に示すスジ補正制御コントローラ108の機能を実現するコンピュータを分離させて、画像処理装置を構成し得る。画像処理装置は、
図4に示す記憶装置120、
図5に示す入力装置214及びディスプレイ装置216を備えてもよい。
【0262】
[各種の処理部のハードウェア構成]
図5に示すプロセッサ202のハードウェア的な構造例として、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、PLD(Programmable Logic Device)及びASIC(Application Specific Integrated Circuit)が挙げられる。CPUは、プログラムを実行して各種の機能部として作用する汎用的なプロセッサである。GPUは、画像処理に特化したプロセッサである。
【0263】
PLDは、デバイスを製造した後に電気回路の構成を変更可能なプロセッサである。PLDの例として、FPGA(Field Programmable Gate Array)が挙げられる。ASICは、特定の処理を実行させるために専用に設計された専用電気回路を備えるプロセッサである。
【0264】
一つの処理部は、これら各種のプロセッサのうちの一つで構成されていてもよいし、同種又は異種の二つ以上のプロセッサで構成されてもよい。各種のプロセッサの組み合わせの例として、一以上のFPGAと一以上のCPUとの組み合わせ、一以上のFPGAと一以上のGPUとの組み合わせが挙げられる。各種のプロセッサの組み合わせの他の例として、一以上のCPUと一以上のGPUとの組み合わせが挙げられる。
【0265】
一つのプロセッサを用いて、複数の機能部を構成してもよい。一つのプロセッサを用いて、複数の機能部を構成する例として、クライアント又はサーバ等のコンピュータに代表される、SoC(System On Chip)などの一つ以上のCPUとソフトウェアの組合せを適用して一つのプロセッサを構成し、このプロセッサを複数の機能部として作用させる態様が挙げられる。
【0266】
一つのプロセッサを用いて、複数の機能部を構成する他の例として、一つのICチップを用いて、複数の機能部を含むシステム全体の機能を実現するプロセッサを使用する態様が挙げられる。なお、ICはIntegrated Circuitの省略語である。
【0267】
このように、各種の機能部は、ハードウェア的な構造として、上記した各種のプロセッサを一つ以上用いて構成される。更に、上記した各種のプロセッサのハードウェア的な構造は、より具体的には、半導体素子等の回路素子を組み合わせた電気回路(circuitry)である。
【0268】
[基材搬送ユニットの変形例]
基材搬送ユニット12は、
図1に示すローラ搬送方式に限定されない。例えば、ドラム搬送方式、ベルト搬送方式、ニップ搬送方式、チェーン搬送方式、パレット搬送方式など、各種形態を採用することができ、これら方式を適宜組み合わせることができる。
【0269】
[基材について]
画像の印刷に用いられる基材という用語は、用紙、記録用紙、印刷用紙、印刷媒体、印字媒体、被印刷媒体、画像形成媒体、被画像形成媒体、受像媒体及び被吐出媒体など様々な用語で呼ばれるものの総称である。基材の材質や形状等は特に限定されず、シール用紙、樹脂シート、フィルム、布、不織布、その他材質や形状を問わず、様々なシート体を用いることができる。枚葉の基材は、予め規定のサイズに整えられたカット紙に限らず、連続体から随時、規定のサイズに裁断して得られるものであってもよい。
【0270】
画像は広義に解釈するものとし、カラー画像、白黒画像、単一色画像、グラデーション画像、均一濃度及びベタ画像なども含まれ得る。画像は、写真画像に限らず、図柄、文字、記号、線画、モザイクパターン、色の塗り分け模様、及びその他の各種パターンを含む包括的な用語として用いる。画像は、上記の適宜の組み合わせを含み得る。
【0271】
画像の印刷は、画像の形成、記録、印字、描画及びプリントなどの用語の概念を含み得る。
【0272】
以上説明した本発明の実施形態は、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で、適宜構成要件を変更、追加、又は削除することが可能である。本発明は以上説明した実施形態に限定されるものではなく、本発明の技術的思想内で当該分野の通常の知識を有するものにより、多くの変形が可能である。
【符号の説明】
【0273】
10 インクジェット印刷装置
11 制御装置
12 基材搬送ユニット
14 基材供給ユニット
16 印刷ユニット
18 基材回収ユニット
26 パスローラ
30 送出ロール
40 プレコートユニット
42 ヘッドユニット
44 検査ユニット
46 乾燥ユニット
50 インクジェットヘッド
50C インクジェットヘッド
50G インクジェットヘッド
50K インクジェットヘッド
50M インクジェットヘッド
50O インクジェットヘッド
50V インクジェットヘッド
50W インクジェットヘッド
50Y インクジェットヘッド
51 ノズル
51A ノズル
60 ILS
61 読取素子
61A 読取素子
62 照明ユニット
70 巻取ロール
100 全体動作制御コントローラ
102 画像処理制御コントローラ
104 印刷動作制御コントローラ
106 ILS制御コントローラ
108 スジ補正制御コントローラ
120 記憶装置
130 元画像データ
132 ドット画像データ
133 基準画像データ
134 検査画像データ
140 ムラ補正テーブル
142 ノズルマスク情報
144 不良ノズル候補重み付けテーブル
150 インク分光情報
152 ILS読取特性フィルタ
154 ILS読取位置情報
160 色変換処理部
162 分版処理部
164 補正処理部
166 ドット画像生成部
170 スジ情報取得部
172 基準画像データ取得部
174 スジ領域切出部
176 不良ノズル候補設定部
178 シミュレーション画像生成順位設定部
180 シミュレーション画像生成部
182 スジ補正画像印刷順位設定部
184 ノズルマスク決定部
202 プロセッサ
204 コンピュータ可読媒体
206 通信インターフェース
208 入出力インターフェース
210 バス
214 入力装置
216 ディスプレイ装置
220 スジ補正制御プログラム
300 検査画像
302 スジ
304 スジ領域
320 基準画像
324 スジ対応領域
350 シミュレーション画像
351 位置
352 シミュレーション画像
353 位置
354 シミュレーション画像
356 画像要素
360 スジ補正画像
362 スジ
370 スジ補正画像
372 補正されたスジ
S 基材
S10~S30 スジ補正方法の各ステップ