(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】プランジャおよびプランジャの製造方法
(51)【国際特許分類】
A61M 5/315 20060101AFI20240912BHJP
【FI】
A61M5/315 514
A61M5/315 512
(21)【出願番号】P 2021500403
(86)(22)【出願日】2019-07-09
(86)【国際出願番号】 EP2019068349
(87)【国際公開番号】W WO2020011762
(87)【国際公開日】2020-01-16
【審査請求日】2022-07-06
(32)【優先日】2018-07-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】514099673
【氏名又は名称】エフ・ホフマン-ラ・ロシュ・アクチェンゲゼルシャフト
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】ガイロ, マキシム
(72)【発明者】
【氏名】ドワイヤー, アラン
(72)【発明者】
【氏名】ローノワ, パスカル
(72)【発明者】
【氏名】マクドネル, ジュリアン
(72)【発明者】
【氏名】コノートン, エオイン
(72)【発明者】
【氏名】トゥーチャー, マーク ディグビー
(72)【発明者】
【氏名】リドリー, ジョナサン ポール
【審査官】川島 徹
(56)【参考文献】
【文献】特表2014-514057(JP,A)
【文献】国際公開第2017/123835(WO,A1)
【文献】実開平01-172843(JP,U)
【文献】国際公開第01/097885(WO,A1)
【文献】特開2012-135664(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61M 5/315
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
医療用送達デバイスのプランジャ(1;10)であって、
遠位端(22;220)および近位端(21)を有するロッド要素(2;20)と、
前記遠位端(22;220)において前記ロッド要素(2;20)に取り付けられたストッパ(3;30)とを備え、
前記ロッド要素(2;20)が第1の形状嵌め構造(24;240)を有し、前記ストッパ(3;30)が第2の形状嵌め構造(31;310)を有し、
前記ロッド要素(2;20)の前記第1の形状嵌め構造(24;240)と前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)とが相互に係合することによって、前記ストッパ(3;30)が前記ロッド要素(2;20)にロックされ、
前記ストッパ(3;30)が、内側半径方向ストッパ面(321;3210)および外側半径方向ストッパ面(322;3220)を画定するリング部(32;320)を備え、
前記ロッド要素(2;20)が、前記ストッパ(3;30)の前記内側半径方向ストッパ面(321;3210)に本質的に対応する外側半径方向ロッド面(281;2810)を含むリング受入部分(28;280)を有し、
前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)が、シャフト部分(3111;31110)およびアーム部分(3112;31120)を含むアンカ部(311;3110)
と、前記ストッパ(3;30)の前記リング部(32;320)の前記内側半径方向ストッパ面(321;3210)から本質的に半径方向に延びる周方向突出部(312;3120)と、を有し
、
前記ロッド要素(2;20)の前記第1の形状嵌め構造(24;240)が、アームソケット(241;2410)
と、前記ロッド要素(2;20)の前記リング受入部分(28;280)の前記外側半径方向ロッド面(281;2810)内に本質的に半径方向に延びる周方向溝(242;2420)と、を有し
、
前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)の前記アーム部分(3112;31120)が、前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)の前記シャフト部分(3111;31110)から半径方向
外側に
向けて突出し
、
前記ロッド要素(2;20)の前記第1の形状嵌め構造(24;240)の前記アームソケット(241;2410)が、これに対応して半径方向に配向され
、
前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)の前記アーム部分(3112;31120)が、前記ロッド要素(2;20)の前記第1の形状嵌め構造(24;240)の前記アームソケット(241;2410)内に配置さ
れ、
前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)の前記周方向突出部(312;3120)が、前記ロッド要素(2;20)の前記第1の形状嵌め構造(24;240)の前記周方向溝(242;2420)内に配置される、プランジャ。
【請求項2】
前記ロッド要素(2;20)の前記第1の形状嵌め構造(24;240)がキャビティ構造(24;240)であり、前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)が突起構造(31;310)であり、前記ストッパ(3;30)の前記突起構造(31;310)が前記ロッド要素(2;20)の前記キャビティ構造(24;240)内に配置されることによって、前記ストッパ(3;30)が前記ロッド要素(2;20)にロックされる、請求項1に記載のプランジャ(1;10)。
【請求項3】
前記ロッド要素(2;20)がロッド材料から作られ、前記ストッパ(3;30)がストッパ材料から作られ、前記ロッド材料が前記ストッパ材料よりも剛性が高く弾性が低い、請求項1に記載のプランジャ(1;10)。
【請求項4】
前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)における前記アンカ部(311;3110)の前記シャフト部分(3111;31110)が、本質的に軸方向に延びる、請求項1から3のいずれか一項に記載のプランジャ(1;10)。
【請求項5】
前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)における前記アンカ部(311;3110)の前記シャフト部分(3111;31110)が、前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)における前記アンカ部(311;3110)の前記シャフト部分(3111;31110)の変形を防ぐように構成された、少なくとも1つの横方向安定要素(3113;31130)を備える、請求項1から4のいずれか一項に記載のプランジャ(1;10)。
【請求項6】
前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)における前記アンカ部(311;3110)の前記シャフト部分(3111;31110)の前記横方向安定要素(3113;31130)が、軸方向に沿って前記ストッパ(3;30)の近位端に向かってテーパ状になった壁部分(3113;31130)を備える、請求項5に記載のプランジャ(1;10)。
【請求項7】
前記ロッド要素(2;20)が凹部(27;270)を備え、前記凹部(27;270)内に、前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)における前記アンカ部(311;3110)の前記シャフト部分(3111;31110)が配置される、請求項1から6のいずれか一項に記載のプランジャ(1;10)。
【請求項8】
前記ストッパ(3;30)の前記リング部(32;320)が、前記外側半径方向ストッパ面(322;3220)から本質的に半径方向に延び、かつ前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)の前記周方向突出部(312;3120)に対して本質的に半径方向に位置合わせされた周方向隆起(34;340)を備える、請求項
1から7のいずれか一項に記載のプランジャ(1;10)。
【請求項9】
前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)が、前記ストッパ(3;30)の前記リング部(32;320)の前記内側半径方向ストッパ面(321;3210)から本質的に半径方向に延びる第2の周方向突出部(313;3130)を有し、
前記ロッド要素(2;20)の前記第1の形状嵌め構造(24;240)が、前記ロッド要素(2;20)の前記リング受入部分(28;280)の前記外側半径方向ロッド面(281;2810)内に本質的に半径方向に延びる第2の周方向溝(243;2430)を有し、
前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)の前記第2の周方向突出部(313;3130)が、前記ロッド要素(2;20)の前記第1の形状嵌め構造(24;240)の前記第2の周方向溝(243;2430)内に配置される、請求項
1から8
のいずれか一項に記載のプランジャ(1;10)。
【請求項10】
前記ストッパ(3;30)の前記リング部(32;320)が、前記外側半径方向ストッパ面(322;3220)から本質的に半径方向に延び、かつ前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)の前記第2の周方向突出部(313;3130)に対して本質的に半径方向に位置合わせされた第2の周方向隆起(35;350)を備える、請求項
9に記載のプランジャ(1;10)。
【請求項11】
前記ストッパ(3;30)が円錐形遠位端部(33;330)を有する、請求項1から
10のいずれか一項に記載のプランジャ(1;10)。
【請求項12】
医療用送達デバイスであって、
用量チャンバと、
前記用量チャンバ内に配置された液体薬剤物質と、
前記
医療用送達デバイスから前記
液体薬剤物質を供給するために前記用量チャンバに結合されたオリフィスと、
前記用量チャンバを閉じる、請求項1から
11のいずれか一項に記載のプランジャ(1;10)とを備える、医療用送達デバイス。
【請求項13】
請求項1から
11のいずれか一項に記載のプランジャ(1;10)の製造方法であって、
遠位端(22;220)、近位端(21)、および第1の形状嵌め構造を有する前記プランジャ(1;10)のロッド要素(2;20)を得ることと、
ストッパ(3;30)が第2の形状嵌め構造(31;310)を備え、前記ストッパ(3;30)の前記第2の形状嵌め構造(31;310)と前記ロッド要素(2;20)の前記第1の形状嵌め構造(24;240)とが相互に係合することによって、前記ストッパ(3;30)が前記ロッド要素(2;20)にロックされるように、前記プランジャ(1;10)の前記ストッパ(3;30)を前記ロッド要素(2;20)の前記遠位端(22;220)上に成形することと
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、独立請求項1のプリアンブルによるプランジャに関し、より詳細には、プランジャの製造方法に関する。遠位端および近位端を有するロッド要素と、遠位端においてロッド要素に取り付けられたストッパとを有するそのようなプランジャを、シリンジ、自動注射器、投薬デバイス、複合投薬(自動)注射装置などの様々な異なる医療用送達デバイスにおいて使用することができる。
【背景技術】
【0002】
液体または他の流体を容器から送達することは、多くの医療用途または医薬用途において必要とされ、複数の異なるやり方で行われている。特に液体を比較的正確に供給することが必須である場合、特定のデバイスが一般的に使用される。例えば、液体医薬物質は、ガラスまたはプラスチックのバイアルに入れられることが多く、このバイアルは、セプタムもしくはゴムプラグおよびその周りに締め付けられたキャップまたは別の同様のシールカバーによって閉じられる。従来、医薬物質をバイアルから送達するために、シリンジが使用されている。これにより、シリンジの針がセプタムまたはカバーを貫通し、医薬物質が針を通してシリンジに引き込まれる。医薬物質は、シリンジに移送されると、適切な方式で送達される。例えば、医薬物質を、例えば皮下注射または筋肉注射することができ、あるいは経口投与することができ、または液滴として、例えば患者の眼もしくは鼻に供給することができる。
【0003】
シリンジを用いて液体をバイアルまたは容器から送達することは、通常、比較的難しい。典型的には、医師または看護師などの教育を受けた人が関与する必要がある。特に、10マイクロリットルから約1ミリリットルまでの範囲のような比較的少量を伴うときなど、送達される液体の用量が比較的正確でなければならない場合、患者は、典型的には、シリンジまたは同様のデバイスを使用するときに自分自身で送達を行うことができない。すなわち、自己投与はユーザにとって困難であり得る。しかしながら、患者の労力および治療のコストを大幅に低減することができるため、液体または薬物の自己投与は多くの治療用途において有益である。
【0004】
この状況を改善するために、比較的正確な量の液体をより簡便に送達することを可能にするデバイスが使用されている。例えば、患者自身によって投与することのできる事前充填済みシリンジで薬物を提供することが知られている。しかしながら、そのような事前充填済みシリンジは複数の理由で好ましくないことが多い。例えば、事前充填済みシリンジの製造は、製造の点でバイアルと比較すると比較的複雑で高価である。また、シリンジは、異なる用途および患者に適した複数の可能な用量を備えていなければならないため、製造が比較的面倒になる。送達デバイスの他の例は、糖尿病の治療においてしばしば使用される注射ペンである。
【0005】
所定の用量の液体を患者に自動的に注射するように設計された、さらなる医療用送達デバイスが、WO2017/102742A1に記載されている。このデバイスは、バイアル座部と、投薬部材を含む投薬機構と、投与前に送達すべき液体の量を定義するためのロッド要素とを有する。ロッド要素またはプランジャは、ステムとステムの遠位端に位置するストッパとを有する。投薬部材は、チャンバ本体と、チャンバ本体に連結された針とを有する。ロッド要素および用量部材を長手方向軸の周りで互いに対して回転させることにより、ロッド部材はチャンバ本体に対して並進移動する。これにより、用量部材のチャンバ本体における針とストッパとの間に、用量チャンバが作成される。針は、座部内に位置決めされたバイアルに連結されて、液体が、バイアルから針を介して用量チャンバに引き込まれるようになっている。したがって、前記回転により、投薬すべき液体の量をデバイスのユーザが調節することができる。
【0006】
公知の医療用送達デバイスにおいて、プランジャは、典型的には、ロッドと、ロッドの遠位端に位置するストッパとを備える。これにより、多くの場合、ストッパはロッドに連結され、または取り付けられて、プランジャ全体を一体として動作させることができるようになっている。例えば、接着剤を使用すること、ストッパをロッドにスナップ留めすること、ロッドをストッパにねじ留めすることなどによって、ストッパをロッドに連結することが知られている。ストッパは、送達すべき液体を含むチャンバにぴったりと嵌入しなければならないため、一方において、ある程度、弾性でなければならない。そのために、ストッパは、チャンバ壁に押し付けられて変形することができるように、軟質で可撓性であることが好ましい。特に、ストッパが可撓性であるほど、チャンバをストッパによってぴったりと閉じることができる。
【0007】
他方において、ストッパをチャンバに対して移動させるときに、摩擦力および押圧力がストッパに作用すると、ストッパが変形して、締まりおよび投薬精度が損なわれることがある。液体をチャンバに引き込むためにプランジャを使用すると、このような力によってストッパがさらにロッドから引き離され、適切なプランジャ機能が保証されなくなることがある。さらに、前述したように、並進移動に加えて、ストッパとチャンバとの回転移動を伴うことがあるため、ストッパにさらに応力がかかり、ストッパが変形する。したがって、そのような損傷を最小限にするために、ストッパは、ロッドに十分に連結することができるように、比較的強く、または堅くすべきである。ストッパの特性に対するこのような必要性は、締まりに対する必要性と矛盾することがあり、典型的には、必要とされる特性のうちのいずれかに欠点を有して妥協するようになっている。
【0008】
したがって、チャンバ内に配置されたときに十分な締まりをもたらすと共に、使用時に十分な投薬精度をもたらすことを可能にする、ロッド要素に連結されたストッパを有するプランジャが必要である。
【発明の概要】
【0009】
本発明によれば、この必要性は、独立請求項1の特徴によって定義されるプランジャによって、かつ独立請求項14の特徴によって定義される方法によって解決される。好ましい実施形態は、独立請求項の主題である。
【0010】
一態様において、本発明は、遠位端および近位端を有するロッド要素と、遠位端においてロッド要素に取り付けられたストッパとを備える、医療用送達デバイスのプランジャである。ロッド要素は第1の形状嵌め構造を有し、ストッパは第2の形状嵌め構造を有する。ロッド要素の第1の形状嵌め構造とストッパの第2の形状嵌め構造とが相互に係合することによって、ストッパがロッド要素にロックされる。
【0011】
医療用送達デバイスは、典型的には、液体薬剤物質を適切な形態で送達するように構成された装置であってよい。特に、医療用送達デバイスは、シリンジなどの注射装置、薬剤物質を投与するための自動注射器、投薬デバイス、または複合投薬(自動)注射装置であってよい。
【0012】
ロッド要素に関する「遠位端」という用語は、物質を送達するためにプランジャを前進させるときに物質の方を向くロッド要素の側に関連する。特に、プランジャは、典型的には、医療用送達デバイスに実装されるとき、典型的には液体物質をデバイスから押し出すために並進移動する。多くの場合、医療用送達デバイスは針を備え、注射によって物質が針を通して患者に送達される。類似して、「近位端」という用語は、遠位端から離れた方を向くロッド要素の側に関連する。したがって、典型的には、遠位端と近位端とは互いに反対である。
【0013】
本明細書で使用されるとき、「薬剤」という用語は、一般的に医薬品有効成分(API)とも呼ばれる治療効果のある薬品と、複数のそのような治療効果のある物質の組合せとに関連する。この用語は、液体の形態で患者に投与される必要がある、例えば造影剤(例えば、MRI造影剤)、トレーサ(例えば、PETトレーサ)、およびホルモンなどの診断用薬またはイメージング剤も網羅している。
【0014】
本明細書で使用されるとき、「薬剤物質」という用語は、患者への投与に適した形態で配合または再構成される前述した薬剤に関連する。例えば、薬剤の他に、薬剤物質は、添加剤および/または他の補助成分を追加的に含んでもよい。本発明の文脈における特に好ましい薬剤物質は、薬剤溶液であり、特に、経口投与、注射、または点滴のための溶液である。
【0015】
本明細書で使用されるとき、「薬剤製品」という用語は、薬剤物質または複数の薬剤物質を含む完成した最終製品に関連する。特に、薬剤製品は、適切な用量および/または投与のための適切な形態で薬剤物質を有する製品を使用する準備ができている可能性がある。例えば、医療用送達デバイス、注射装置、または事前充填済みシリンジが、薬剤製品であってよい。
【0016】
第1の形状嵌め構造および第2の形状嵌め構造に関して使用されるとき、「相互に係合する」という用語は、これらの構造が互いに係合することに関連する。これにより、一方の構造の要素を、他方の構造の要素または部分内に配置することができる。
【0017】
本明細書で使用されるとき、「形状嵌め」という用語は、一般に、噛み合う2つの部品間の連結に関連する。特に、噛み合うために、一方の部品の要素が他方の部品の要素の進路をふさぎ、これらの要素が互いに通り過ぎることができないようになっている。ロッド要素およびストッパに関し、ロックされているとき、第1の形状嵌め構造および第2の形状嵌め構造は、特にプランジャの軸に沿って互いの進路をふさいで相互に係合するようになっている。
【0018】
これにより、形状嵌め構造は、係合のために互いの内部に位置する、接合する雄部および雌部を備えることができる。好ましい実施形態について以下でより詳細に説明するように、第1の形状嵌め構造および第2の形状嵌め構造は、1つまたは複数の突出部または突起および対応する凹部を有することができる。突出部または突起は、係合すると、凹部内に位置する。
【0019】
ロッド要素およびストッパが第1の形状嵌め構造および第2の形状嵌め構造を備えることにより、ストッパを、プランジャ全体が一体であるようにロッド要素にしっかりと固着することができる。特に、これらの構造により、ストッパを実質的に変形させることなく、医療用送達デバイス内のプランジャの動作において誘発される力に抵抗するために十分に強力な締まり嵌めまたは形状嵌め連結をもたらすことが可能になる。これにより、形状嵌め連結は、しっかりと固定するのに既に十分であり得、または摩擦嵌めなどによってさらに支持することができる。しかしながら、形状嵌め連結により、ロッド要素とストッパとの連結をもたらすことが可能になり、これは、単なる摩擦嵌めよりも本質的に強力で、接着剤を使用するよりも組立てが本質的に簡単である。これにより、ストッパを製造するために比較的可撓性の材料を使用することが可能になり、それにもかかわらず、使用時に伴う力に対する十分な抵抗をもたらすことができる。
【0020】
前述したように、第1の形状嵌め構造および第2の形状嵌め構造は、雄部と雌部とを備えることができる。これにより、ロッド要素の第1の形状嵌め構造がキャビティ構造であり、ストッパの第2の形状嵌め構造が突起構造であり、ストッパの突起構造がロッド要素のキャビティ構造内に配置されることによって、ストッパがロッド要素にロックされることが好ましい。したがって、ストッパの第1の形状嵌め構造とロッド要素の第2の形状嵌め構造とは、ストッパの突起構造がロッド要素のキャビティ構造内に配置されることによって係合する。
【0021】
ロッド要素に関して使用されるとき、「キャビティ構造」という用語は、1つまたは複数のへこみ、穴、凹部、くぼみ、チャネル、チャンバ、これらの任意の組合せなどに関連し得る。同様に、ストッパに関して使用されるとき、「突起構造」という用語は、キャビティ構造に対応する、1つまたは複数の突起物、隆起、棒、これらの任意の組合せなどに関連し得る。
【0022】
ロッド要素はロッド材料から作られ、ストッパはストッパ材料から作られ、ロッド材料はストッパ材料よりも剛性が高く弾性が低いことが好ましい。例えば、ロッド材料は、比較的剛性のプラスチック材料であるアクリロニトリルブタジエンスチレン(ABS)であってよい。ストッパ材料は、比較的軟質かつ弾性のプラスチック材料である熱可塑性エラストマー(TPE)であってよい。そのような異なる材料をロッド要素およびストッパに使用することによって、医療用送達デバイスにおける適切な適用および締まりを可能にするプランジャの有利な構成を実現することができる。
【0023】
ストッパの第2の形状嵌め構造が、好ましくは軸方向に延びるシャフト部分およびアーム部分を含むアンカ部を有し、ロッド要素の第1の形状嵌め構造がアームソケットを有し、ストッパの第2の形状嵌め構造のアーム部分が、ストッパの第2の形状嵌め構造のシャフト部分から半径方向に突出し、ロッド要素の第1の形状嵌め構造のアームソケットが、これに対応して半径方向に配向され、ストッパの第2の形状嵌め構造のアーム部分が、ロッド要素の第1の形状嵌め構造のアームソケット内に配置されることが好ましい。
【0024】
本明細書で使用されるとき、「軸方向に」、「軸」などの用語は、ロッド要素の遠位端および近位端を通って長手方向に延びるプランジャの軸に関連する。軸は、薬剤物質を送達デバイスから送達する、または送達デバイスに引き込むためにプランジャを移動させる方向を定義することができる。特に、軸は、ロッド要素全体およびストッパを通って延びるプランジャの中心にあってよい。本明細書で使用されるとき、「半径方向」という用語は、軸に対して垂直な方向、またはそれ以外で傾斜した方向に関連し得る。したがって、半径方向に突出することは、軸から離れてある角度で、特に直角に延びることに関連し得る。
【0025】
ストッパのアンカ部およびロッド要素の対応する構造により、比較的大きい形状嵌め力をもたらすと共に、起こり得るストッパの変形を低減させることが可能になる。このようにして、プランジャを損傷または破壊することなくストッパを取り外すことができないような方式で、ストッパをロッド要素に連結することが可能になる。特に、アンカ部のアーム部分が半径方向に延び、対応するアームソケットに受け入れられることによって、ロッド要素に対するストッパの本質的にいかなる軸方向の移動および変形をも阻止することが可能になる。
【0026】
有利な実施形態において、ストッパのアンカ部は、1つまたは複数のアーム部分を有し、ロッド要素は、これに対応して1つまたは複数のアームソケットを有する。例えば、2つのアーム部分と2つのアームソケットとを設けることができる。アーム部分およびアームソケットは、プランジャの軸に向かって半径方向にテーパ状になっていてよい。言い換えると、アーム部分およびアームソケットの寸法は、軸から半径方向に増加していてよい。このようにして、アーム部分のいかなる半径方向の移動をも阻止することができる。
【0027】
ストッパの第2の形状嵌め構造におけるアンカ部のシャフト部分は、ストッパの中心に位置することができる。シャフト部分は、ストッパまたはプランジャの軸に沿って延びることができる。シャフト部分が、ストッパの第2の形状嵌め構造におけるアンカ部のシャフト部分の変形を防ぐまたは低減させるように構成された、少なくとも1つの横方向安定要素を備えることが好ましい。安定要素は、特に、シャフト部分の半径方向の変形および軸方向の変形を防ぐことができる。
【0028】
これにより、ストッパの第2の形状嵌め構造におけるアンカ部のシャフト部分の横方向安定要素が、軸方向に沿ってストッパの近位端に向かってテーパ状になった壁部分を有することが好ましい。ストッパの近位端を、アンカ部のアーム部分によって形成することができる。アンカ部が複数のそのような壁部分を備えることが有利である。壁部分により、軸方向および半径方向の変形に関してストッパの安定性を効率的にもたらすことが可能になる。また、そのような壁部分を含むアンカ部を、比較的効率的なやり方で製造することができる。
【0029】
ロッド要素が凹部を備え、この凹部内に、ストッパの第2の形状嵌め構造におけるアンカ部のシャフト部分が配置されることが好ましい。そのような凹部は、特に、プランジャの軸に沿って中心に延びていてよい。シャフト部分がテーパ状の壁部分を有する実施形態において、凹部は、これに対応して、円錐状に形成されていてよい。
【0030】
ストッパが、内側半径方向ストッパ面および外側半径方向ストッパ面を画定するリング部を備え、ロッド要素が、ストッパの内側半径方向ストッパ面に対応する外側半径方向ロッド面を含むリング受入部分を有し、ストッパの第2の形状嵌め構造が、ストッパのリング部の内側半径方向ストッパ面から半径方向に延びる周方向突出部を有し、ロッド要素の第1の形状嵌め構造が、ロッド要素のリング受入部分の外側半径方向ロッド面内に半径方向に延びる周方向溝を有し、ストッパの第2の形状嵌め構造の周方向突出部が、ロッド要素の第1の形状嵌め構造の周方向溝内に配置されることが好ましい。
【0031】
突出部および溝に関して使用されるとき、「周方向」という用語は、プランジャの軸の周りにおける、内面または外面に沿った配置に関連し得る。これにより、この用語は、全周に沿って延びる配置に限定されるのではなく、例えば、中断する実施形態も含む。しかしながら、突出部および溝の両方が、軸の周り全体に、すなわち全周に沿って延びることが有利である。
【0032】
ストッパの遠位端側と共に、リング部は、ロッド要素のリング受入部分に置かれるスリーブ状のキャップを形成することができる。このようにして、ストッパは、ロッド要素の遠位端を閉じ込めることができる。これにより、内側半径方向ストッパ面は、外側半径方向ロッド面に隣接し、これに寄りかかる。周方向の突出部および溝を用いることにより、ストッパをロッド要素に形状嵌めさせて、特に軸方向の移動を防ぐことができる。
【0033】
これにより、ストッパのリング部が、外側半径方向ストッパ面から半径方向に延び、かつストッパの第2の形状嵌め構造の周方向突出部に対して半径方向に位置合わせされた周方向隆起を備えることが好ましい。したがって、隆起は、デバイスの軸に対して直角に延びることができる。この隆起を、プランジャが配置されている医療用送達デバイスのストッパとチャンバとの間の締まりをもたらすために使用することができる。特に、隆起をチャンバの壁に押し付けることにより、わずかに変形させて、締まりを確実にすることができる。隆起が突出部に半径方向に位置合わせされる、すなわち、隆起が本質的に突出部と一直線であるため、比較的大量の弾性材料を隆起の圧縮のために使用することができる。具体的には、ストッパが医療用送達デバイスのチャンバ内にあるときに、隆起自体、リング部、および突出部の材料を圧縮されるように使用することができる。このようにして、ストッパをチャンバにぴったりと嵌入することができるように、十分な弾性をもたらすことができる。
【0034】
ストッパの第2の形状嵌め構造が、ストッパのリング部の内側半径方向ストッパ面から半径方向に延びる第2の周方向突出部を有し、ロッド要素の第1の形状嵌め構造が、ロッド要素のリング受入部分の外側半径方向ロッド面内に半径方向に延びる第2の周方向溝を有し、ストッパの第2の形状嵌め構造の第2の周方向突出部が、ロッド要素の第1の形状嵌め構造の第2の周方向溝内に配置されることが好ましい。
【0035】
周方向突出部と第2の周方向突出部とは、特に、互いに軸方向に離間していてよい。同様に、周方向溝と第2の周方向溝とも、これに対応して、互いに軸方向に離間していてよい。そのような第2の突出部および溝により、ストッパをロッド要素に追加形状嵌めまたは二重形状嵌めすることが可能になる。このようにして、ストッパを、ロッド要素にさらに固定することができる。
【0036】
これにより、ストッパのリング部が、外側半径方向ストッパ面から半径方向に延び、かつストッパの第2の形状嵌め構造の第2の周方向突出部に対して半径方向に位置合わせされた第2の周方向隆起を備えることが好ましい。そのような第2の隆起は、前述した第1の隆起に加えて、締まりをもたらすことができる。さらに、第2の隆起により、ストッパが医療用送達デバイスのチャンバ内で移動するときに、ストッパ、および特にその外面のまっすぐな位置合わせを確実にする、または維持することが可能になる。これにより、ストッパをロッド要素上で安定させ、ストッパの変形を防ぐことを助けることができる。
【0037】
ストッパが、先端で終端し得る円錐形遠位端部を有することが好ましい。リング部を備えているとき、リング部は遠位端部から突出することができる。そのような円錐形端部により、液体を効率的に押すこと、および伴う圧力を最小の変形で受けることが可能になる。
【0038】
別の態様において、本発明は、前述したプランジャの製造方法である。方法は、遠位端、近位端、および第1の形状嵌め構造を有するプランジャのロッド要素を得ることを含む。方法は、ストッパが第2の形状嵌め構造を備え、ストッパの第2の形状嵌め構造とロッド要素の第1の形状嵌め構造とが相互に係合することによって、ストッパがロッド要素にロックされるように、プランジャのストッパをロッド要素の遠位端上に成形することをさらに含む。
【0039】
ストッパを製造するためのそのようなオーバモールドプロセスによって、ストッパのすべての要素または特徴を効率的に生じさせることができる。このようにして、本発明およびその好ましい実施形態によるプランジャに関する前述した効果および利点を、効率的かつ的確に実装することができる。
【0040】
例示的な実施形態を用いて、添付図面を参照しながら、本発明によるプランジャおよびその製造方法について本明細書で以下により詳細に説明する。
【図面の簡単な説明】
【0041】
【
図1】本発明によるプランジャの第1の実施形態の斜視図である。
【
図5】本発明によるプランジャの第2の実施形態の詳細の断面図である。
【
図6】
図5の詳細を90°回転させた断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0042】
以下の記載において、ある用語は利便性の理由で使用されており、本発明を限定するようには意図されていない。「右」、「左」、「上」、「下」、「~の下」、および「~の上方」という用語は、図における方向を指す。専門用語は、明確に言及されている用語と、同様の意味を伴うそれらの派生語および用語とを含む。また、「~の下」、「~の下方」、「下方」、「~の上方」、「上方」、「近位」、「遠位」などの空間的に相対的な用語は、図において示されているように、1つの要素または特徴の別の要素または特徴に対する関係を記載するために使用され得る。これらの空間的に相対的な用語は、図に示されている位置および配向に加えて、使用または動作においてデバイスの異なる位置および配向を包囲するように意図されている。例えば、図におけるデバイスがひっくり返される場合、他の要素または特徴の「下方」または「下」として記載された要素が、他の要素または特徴の「上方」または「上」となる。したがって、例示の用語「下方」は、上方および下方の位置と配向との両方を網羅することができる。デバイスは、それ以外に配向されてもよく(90度または他の配向で回転されてもよく)、本明細書で使用される空間的に相対的な記述語は、それに応じて解釈される。同様に、様々な軸に沿った、または様々な軸の周りの移動の記載は、様々な特別なデバイスの位置および配向を含む。
【0043】
様々な態様および例示的な実施形態の図および記載におけるくり返しを避けるために、多くの特徴が多くの態様および実施形態に共通することを理解すべきである。記載または図からの態様の省略は、態様が、その態様を組み込んでいる実施形態から失われていることを示していない。代わりに、態様は、明確性のために、かつ冗長な記載を避けるために、省略されている可能性がある。この文脈において、以下のことは、この記載の他の部分にも当てはまる。図面を明確にするために、記載の直接的に関連する部分において説明されていない参照符号を図が含む場合、先の記載の部分または後の記載の部分が参照される。さらに、明瞭性の理由で、図面において、必ずしも部品のすべての特徴に参照符号が付されていない場合、同じ部品を示す他の図面が参照される。2つ以上の図における同様の数字は、同じ要素または同様の要素を表す。
【0044】
図1は、本発明によるプランジャ1の第1の実施形態の斜視上面図である。プランジャ1は、ロッド要素としてのロッド2とストッパ3とを備える。ロッド2は、本質的にステム状であり、下近位端21および上遠位端22を有する。ロッド2は、使用時にロッド2を送るために力を受ける押板23を、近位端21に備える。ストッパ3は、遠位端22においてロッド2に取り付けられる。
【0045】
図2において、プランジャ1は、ストッパ3の遠位端側部33を向けるように、上から見下ろした状態で示される。遠位端側部33は、中心に先端331を有する。ストッパ3および押板23は円形の外周を有する。
【0046】
図3は、プランジャ1の断面図である。これにより、プランジャの軸11が、
図3において鉛直に延びていることが見て取れる。軸11に沿って、ロッド2は、縦ストラット26と、それに垂直な横ストラット25とを備える。縦ストラット25および横ストラット26の配置により、適切な強度または堅牢性をもたらし、製造時に適切な成形を確実にする。ロッド2は、比較的剛性のプラスチック材料であるABSから作られる。ストッパ3は、比較的軟質かつ弾性のプラスチック材料であるTPEから作られる。
【0047】
図4において、ストッパ3がロッド2に取り付けられているプランジャ1の部分をより詳細に示す。ストッパ3は、リング部32またはカラーを備え、ロッド2は、遠位端側22近くに、リング部32に対応する円筒形リング受入部分28を有する。リング部32は、内側ストッパ面321および外側ストッパ面322を有する。リング受入部分28は、内側ストッパ面321に隣接する外側ロッド面281を有する。凹部27がロッド2の中心に形成され、この凹部27は、ロッド2の遠位端側22の開いた上端から下方にテーパ状になっている。
【0048】
ロッド2は、2つのアームソケット241、第1の周方向溝242、および第2の周方向溝243を有する、第1の形状嵌め構造としてのキャビティ構造24を備える。第1の溝242および第2の溝243は、リング受入部分28の周りの外側半径方向ロッド面281内に半径方向に延びる。第1の溝242および第2の溝243は、第1の溝242が第2の溝243よりも遠位端側22に近くなるように、互いに軸方向に離間している。アームソケット241は、第2の溝243の下方にあり、軸11から互いに対して一列に半径方向に延び、すなわち軸11から左右に延びる。左側アームソケット241は横方向に開き、右側アームソケット241は横方向に閉じている。
【0049】
ストッパ3は、アンカ部311、第1の周方向突出部312、および第2の周方向突出部313を含む、第2の形状嵌め構造としての突起構造31を備える。アンカ部311は、遠位端側33および2つのアーム部分3112で終端する鉛直シャフト部分3111を有する。アーム部分3112の各々は、シャフト部分3111から半径方向に、それぞれ左右に突出して、アームソケット241の一方に入る。アンカ部311のシャフト部分3111は、軸11の周りに配置され、かつ軸11に沿って下方にテーパ状になった、安定要素としての複数の壁部分3113を有する。
【0050】
ストッパ3の突起構造31の第1の周方向突出部312および第2の周方向突出部313は、リング部32の内側半径方向ストッパ面321から軸11に向かって半径方向に延びる。第1の周方向突出部312および第2の周方向突出部313は、第1の周方向突出部312が第2の周方向突出部313よりもストッパ3の軸方向端側33に近くなるように、互いに軸方向に離間している。突起構造31の第1の周方向突出部312は、キャビティ構造24の第1の周方向溝242内に配置され、第2の周方向突出部313は、第2の周方向溝243内に配置される。
【0051】
したがって、ストッパ3は、ロッド2のキャビティ構造24とストッパ3の突起構造31とが相互に係合することによって、ロッド2にロックされる。特に、ストッパ3の第1の突起312、第2の突起313、およびアーム部分3112がロッド2の第1の溝242、第2の溝243、およびアームソケット241内にそれぞれ配置されることによって、形状嵌めまたは締まり嵌め連結がもたらされる。このようにして、ストッパ3は、ロッド2にしっかりと固定され、さらに壁部分3112によって支持され、医療用送達デバイスのチャンバ内でプランジャ1を並進移動または回転させるときに、ストッパ3に作用する摩擦力によるロッド2上のストッパ3の変形が最小限になる。
【0052】
ストッパ3のリング部32は、第1の周方向隆起34および第2の周方向隆起35をさらに備える。第1の周方向隆起34および第2の周方向隆起35の両方が、外側半径方向ストッパ面322から半径方向に延び、軸11に対して直角に延びる。第1の周方向隆起34は、第1の周方向突出部312に対して半径方向に位置合わせされ、第2の周方向隆起35は、第2の周方向突出部313に対して半径方向に位置合わせされる。このようにして、隆起34、35の領域に、比較的多くのストッパ材料が設けられ、プランジャ1が使用される医療用送達デバイスのチャンバにストッパ3が接触する場合に、ストッパ3の比較的良好な可撓性または圧縮性が可能になる。これにより、比較的強い締まりを実現することができ、ストッパ3の位置ずれまたは傾きを防ぐことができる。
【0053】
図5および
図6は、本発明による、軸110を有するプランジャ10の第2の実施形態の一部分の断面図である。これにより、プランジャ10は、
図1~
図4に示すプランジャ1に非常に類似している。特に、プランジャ10は、ロッド要素としてのロッド20を備え、ロッド20は、外側ロッド面2810を有する、遠位端側220近くの円筒形リング受入部分280と、開いた上端から下方にテーパ状になっている中心凹部270と、2つのアームソケット2410、第1の周方向溝2420、および第2の周方向溝2430を有する、第1の形状嵌め構造としてのキャビティ構造240とを有する。プランジャ10は、ストッパ30をさらに備え、ストッパ30は、内側ストッパ面3210および外側ストッパ面3220を有するリング部320と、鉛直シャフト部分31110および2つの水平アーム部分31120を含むアンカ部3110、第1の周方向突出部3120、および第2の周方向突出部3130を有する、第2の形状嵌め構造としての突起構造310と、安定要素としての複数の壁部分31130と、第1の周方向隆起340と、第2の周方向隆起35と、先端3310を含む端側部330とを有する。
【0054】
プランジャ10の特徴の大部分は、プランジャ1のそれぞれの特徴と同じ目的のためのものであり、同じように機能するが、以下の特徴は異なる。
【0055】
ロッド20のキャビティ構造240の両アームソケット2410は、横方向に開いている。アームソケット2410は、開いた横方向端部から軸110に向かってテーパ状になっている。これに対応して、ストッパ30の突起構造310におけるアンカ部3110のアーム部分31120は、軸110に向かって半径方向にテーパ状になっており、それぞれのアームソケット2410の開いた端部まで半径方向に延びている。このようにして、ストッパ30をさらに横方向に保持し固定することができる。
【0056】
ロッド20は、下端部に、プランジャ10が共に使用される医療用送達デバイスの他の要素に連結するための雌コネクタ構造を備える。
【0057】
プランジャ1、10の両実施形態は、本発明による方法の実施形態によって有利に製造することができる。これにより、プランジャ1、10のロッド2、20が、例えば、射出成形プロセスにおいて得られる。その後、プランジャ1、10のストッパ3、30が、ロッド2、20の遠位端22、220上に成形されて、ストッパ3、30が突起構造31、310を備え、ストッパ3、30の突起構造31、310とロッド2、20のキャビティ構造24、240とが相互に係合することによって、ストッパ3、30がロッド要素2、20にロックされるようになっている。
【0058】
本発明の態様および実施形態を例示するこの記載および添付図面は、保護された発明を定義する特許請求の範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。言い換えると、本発明は、図面および前述の記載において詳細に図示および記載されているが、このような図示および記載は、図示または例示として考慮されるものであり、制限的に考慮されるものではない。様々な機械的、組成的、構造的、電気的、および動作的な変更を、この記載および特許請求の範囲の精神および範囲から逸脱することなく行うことができる。一部の例では、周知の回路、構造、および技術は、本発明を曖昧にしないために詳細に示されていない。したがって、当業者が以下の特許請求の範囲の範囲および精神内において変更および修正を行うことができることが、理解されよう。特に、本発明は、前述および後述の異なる実施形態からの特徴の任意の組合せを含むさらなる実施形態を包含する。
【0059】
本開示は、前述または後述されていない可能性があるが、個々に図に示されたすべてのさらなる特徴も包含する。また、図および記載に描写されている実施形態の単一の代替およびその特徴の単一の代替は、本発明の主題から、または開示されている主題から放棄され得る。本開示は、特許請求の範囲または例示の実施形態において定義された特徴からなる主題と、前記特徴を備える主題とを含む。
【0060】
さらに、特許請求の範囲において、「備える」という語は他の要素またはステップを排除せず、「1つ(a、an)」という不定冠詞は複数を排除しない。単一のユニットまたはステップは、特許請求の範囲で述べられるいくつかの特徴の機能を果たすことができる。ある対策が互いに異なる従属請求項において述べられているという単なる事実は、これらの対策の組合せを有利になるように使用することができないことを指し示しているのではない。属性または値に関する「本質的に」、「約」、「おおよそ」などの用語は、特に、属性または値をそれぞれ正確に定義してもいる。所与の数値または数値範囲の文脈における「約」という用語は、例えば、所与の値または範囲の20%以内、10%以内、5%以内、または2%以内である値または範囲を指す。結合または連結されるとして記載される構成要素は、電気的または機械的に直接的に結合されてもよく、または、1つもしくは複数の中間構成要素を介して間接的に結合されてもよい。特許請求の範囲における参照符号はいずれも、範囲を限定するものとして解釈されるべきではない。