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特許7554748架橋重合体ゲル及びその製造方法、単量体組成物、並びに、架橋重合体粒子の製造方法
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  • 特許-架橋重合体ゲル及びその製造方法、単量体組成物、並びに、架橋重合体粒子の製造方法 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】架橋重合体ゲル及びその製造方法、単量体組成物、並びに、架橋重合体粒子の製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08F 2/38 20060101AFI20240912BHJP
   C08F 2/44 20060101ALI20240912BHJP
   C08F 20/06 20060101ALI20240912BHJP
   C08L 33/02 20060101ALI20240912BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C08F2/38
C08F2/44 B
C08F20/06
C08L33/02
C08K5/07
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021530644
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2020025841
(87)【国際公開番号】W WO2021006148
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2019126349
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(74)【代理人】
【識別番号】100160897
【弁理士】
【氏名又は名称】古下 智也
(72)【発明者】
【氏名】河原 徹
【審査官】中落 臣諭
(56)【参考文献】
【文献】独国特許出願公開第10221203(DE,A1)
【文献】国際公開第2010/140530(WO,A1)
【文献】特開2009-173942(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第02439186(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2004/0110913(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F2/00-301/00
C08L1/00-101/14
C08K3/00-13/08
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリル酸化合物と、ベンズアルデヒドと、を含有する単量体組成物を重合して架橋重合体ゲルを得る工程を備え、
前記ベンズアルデヒドの含有量が前記(メタ)アクリル酸化合物1モルに対して0.0001ミリモル以上であり、
前記架橋重合体ゲルを粗砕、乾燥及び粉砕して得られる架橋重合体粒子の遠心分離機保持容量が60g/g以上である、架橋重合体ゲルの製造方法。
【請求項2】
前記ベンズアルデヒドの含有量が前記(メタ)アクリル酸化合物1モルに対して0.1ミリモル以上である、請求項1に記載の架橋重合体ゲルの製造方法。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の架橋重合体ゲルの製造方法により得られる架橋重合体ゲルを粗砕、乾燥及び粉砕して架橋重合体粒子を得る、架橋重合体粒子の製造方法。
【請求項4】
架橋重合体ゲルを得るための単量体組成物であって、
(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリル酸化合物と、ベンズアルデヒドと、を含有し、
前記ベンズアルデヒドの含有量が前記(メタ)アクリル酸化合物1モルに対して0.0001ミリモル以上であり、
前記架橋重合体ゲルを粗砕、乾燥及び粉砕して得られる架橋重合体粒子の遠心分離機保持容量が60g/g以上である、単量体組成物。
【請求項5】
前記ベンズアルデヒドの含有量が前記(メタ)アクリル酸化合物1モルに対して0.1ミリモル以上である、請求項4に記載の単量体組成物。
【請求項6】
請求項4又は5に記載の単量体組成物に由来する構造単位を有する、架橋重合体ゲル。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、架橋重合体ゲル及びその製造方法、単量体組成物、並びに、架橋重合体粒子の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、水を主成分とする液体(例えば尿)を吸収するための吸収性物品には、吸水性樹脂を含有する吸収体が用いられている(例えば、下記特許文献1参照)。吸水性樹脂は、例えば、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリル酸化合物を重合して架橋重合体ゲルを得た後、架橋重合体ゲルを粗砕、乾燥及び粉砕して得られる架橋重合体粒子を用いて得ることができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開平06-345819号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
水を主成分とする液体が吸収性物品に供された際、吸収性物品の吸収体に液体が充分吸収されなければ、余剰の液体は吸収体物品の表面を流れる等して吸収性物品の外に漏れるといった不具合が生じ得る。そのため、吸収体を構成する吸水性樹脂に対しては、優れた保水量を有することが求められる。そして、優れた保水量を有する架橋重合体粒子を用いることにより、優れた保水量を有する吸水性樹脂が得られやすく、例えば、架橋重合体粒子の遠心分離機保持容量は60g/g以上であることが好ましい。
【0005】
このような遠心分離機保持容量を有する架橋重合体粒子を得るための架橋重合体ゲルに対して粗砕等の加工処理を施すに際しては、加工装置に不具合が生じることを避けることが好ましい。例えば、架橋重合体ゲルの加工しやすさの指標として、架橋重合体ゲルを裁断した際にゲルが容易に裁断されることが好ましい。
【0006】
本発明の一側面は、容易に裁断可能な架橋重合体ゲルの製造方法を提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、容易に裁断可能な架橋重合体ゲルを提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、容易に裁断可能な架橋重合体ゲルを得ることが可能な単量体組成物を提供することを目的とする。本発明の他の一側面は、前記架橋重合体ゲルを用いた架橋重合体粒子の製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明の一側面は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリル酸化合物と、ベンズアルデヒドと、を含有する単量体組成物を重合して架橋重合体ゲルを得る工程を備え、前記架橋重合体ゲルを粗砕、乾燥及び粉砕して得られる架橋重合体粒子の遠心分離機保持容量が60g/g以上である、架橋重合体ゲルの製造方法を提供する。
【0008】
本発明の他の一側面は、架橋重合体ゲルを得るための単量体組成物であって、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリル酸化合物と、ベンズアルデヒドと、を含有し、前記架橋重合体ゲルを粗砕、乾燥及び粉砕して得られる架橋重合体粒子の遠心分離機保持容量が60g/g以上である、単量体組成物を提供する。
【0009】
上述の架橋重合体ゲルの製造方法及び単量体組成物によれば、容易に裁断可能な架橋重合体ゲルを得ることができる。
【0010】
本発明の他の一側面は、上述の架橋重合体ゲルの製造方法により得られる架橋重合体ゲルを粗砕、乾燥及び粉砕して架橋重合体粒子を得る、架橋重合体粒子の製造方法を提供する。
【0011】
本発明の他の一側面は、上述の単量体組成物に由来する構造単位を有する、架橋重合体ゲルを提供する。
【発明の効果】
【0012】
本発明の一側面によれば、容易に裁断可能な架橋重合体ゲルの製造方法を提供することができる。本発明の他の一側面によれば、容易に裁断可能な架橋重合体ゲルを提供することができる。本発明の他の一側面によれば、容易に裁断可能な架橋重合体ゲルを得ることが可能な単量体組成物を提供することができる。本発明の他の一側面によれば、前記架橋重合体ゲルを用いた架橋重合体粒子の製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
図1】吸収性物品の一例を示す断面図である。
図2】裁断試験の試験内容を説明するための図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
以下、本発明の実施形態について詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0015】
本明細書において、「アクリル」及び「メタクリル」を合わせて「(メタ)アクリル」と表記する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。「ポリエチレングリコール」及び「エチレングリコール」を合わせて「(ポリ)エチレングリコール」と表記する。「(ポリ)」を含む他の表現についても同様である。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「水溶性」とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。本明細書に例示する材料は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。組成物中の各成分の含有量は、組成物中に各成分に該当する物質が複数存在する場合、特に断らない限り、組成物中に存在する当該複数の物質の合計量を意味する。「生理食塩水」とは、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液をいう。「(メタ)アクリル酸化合物の含有量」及び「(メタ)アクリル酸化合物の全質量」とは、アクリル酸、アクリル酸塩、メタクリル酸及びメタクリル酸塩の合計量を意味する。「ppm」は質量ppmを意味する。
【0016】
本実施形態に係る架橋重合体ゲル(架橋重合体含水ゲル)の製造方法は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリル酸化合物と、ベンズアルデヒドと、を含有する単量体組成物を重合して架橋重合体ゲルを得る重合工程を備える。本実施形態に係る単量体組成物は、架橋重合体ゲルを得るための単量体組成物であって、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリル酸化合物と、ベンズアルデヒドと、を含有する。本実施形態に係る架橋重合体ゲルの製造方法及び単量体組成物により得られる架橋重合体ゲルを粗砕、乾燥及び粉砕して得られる架橋重合体粒子の遠心分離機保持容量(以下、場合により「CRC」と記載する。)は、60g/g以上である。
【0017】
本実施形態に係る架橋重合体ゲルの製造方法及び単量体組成物によれば、容易に裁断可能な架橋重合体ゲルを得ることができる。このような架橋重合体ゲルでは、ゲルの裁断時に要する力を低減できる。ゲルを容易に裁断可能な効果が得られる原因は明らかではないが、本発明者は下記のように推察している。但し、原因は下記の内容に限定されない。すなわち、架橋重合体粒子のCRCが60g/g以上である場合において、(メタ)アクリル酸化合物を含有する単量体組成物の重合時にベンズアルデヒドが存在することにより重合速度が好適に制御されるため、ゲルの裁断時に要する力が低減される。
【0018】
本実施形態に係る架橋重合体ゲルは、本実施形態に係る架橋重合体ゲルの製造方法及び単量体組成物により得ることができる。本実施形態に係る架橋重合体ゲルは、本実施形態に係る単量体組成物に由来する構造単位を有する。
【0019】
架橋重合体粒子のCRCは、Centrifuge Retention Capacity(遠心分離機保持容量)の略称である。架橋重合体粒子のCRCは、EDANA法(NWSP 241.0.R2(15)、page.769~778)を参考に、後述する実施例に記載の方法によって測定可能であり、具体的には、乾燥状態の0.2gの架橋重合体粒子が収容された不織布バッグを生理食塩水1000gに30分浸漬させた後、遠心分離機を用いて遠心分離を施して水切りを行った際の吸水倍率として得ることができる。架橋重合体粒子のCRCとしては、室温(25±1℃)における測定値を用いることができる。
【0020】
架橋重合体粒子のCRCは、60g/g以上である。架橋重合体粒子のCRCは、65g/g以上、70g/g以上、75g/g以上、78g/g以上、80g/g以上、82g/g以上、84g/g以上、85g/g以上、又は、86g/g以上であってよい。架橋重合体粒子のCRCは、100g/g以下、95g/g以下、90g/g以下、又は、87g/g以下であってよい。これらの観点から、架橋重合体粒子のCRCは、60~100g/gであってよい。60g/g以上のCRCを有する架橋重合体粒子は、架橋重合体ゲルを粗砕、乾燥及び粉砕して得られる架橋重合体粒子であり、必要に応じて粉砕の後に分級を施すことにより得られる架橋重合体粒子であってよく、粒径180~850μmの粒子であってよい。粗砕は、例えば、直径6.4mmの円形の穴を密度40穴/36.30cmで有する排出口を有する粗砕装置を用いて行うことができる。乾燥は、例えば、180℃で30分間行うことができる。粉砕は、例えば、スクリーンの梯形孔1mmの条件で行うことができる。架橋重合体粒子の形状としては、破砕状、顆粒状等が挙げられる。
【0021】
本実施形態に係る架橋重合体ゲル及び架橋重合体粒子は、例えば、本実施形態に係る単量体組成物を重合させて得られる架橋重合体を含むことができる。本実施形態に係る架橋重合体ゲル及び架橋重合体粒子は、ゲル安定剤、金属キレート剤(エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン5酢酸及びその塩(例えばジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム)等)、流動性向上剤(滑剤)などの他成分を更に含んでよい。他成分は、架橋重合体の内部、表面上、又は、これらの両方に配置され得る。
【0022】
架橋重合体ゲル及び架橋重合体粒子は、架橋重合体の表面上に配置された無機粒子を含んでよい。例えば、架橋重合体と無機粒子とを混合することにより、架橋重合体の表面上に無機粒子を配置することができる。無機粒子としては、例えば、非晶質シリカ等のシリカ粒子が挙げられる。
【0023】
本実施形態に係る単量体組成物は、水、有機溶媒等を含有してよい。本実施形態に係る単量体組成物は、単量体水溶液であってよい。単量体組成物の重合方法としては、水溶液重合法、バルク重合法、沈殿重合法等が挙げられる。これらの中では、良好な吸水性能(例えばCRC)が得られやすい観点、及び、重合反応の制御が容易である観点から、水溶液重合法が好ましい。以下においては、重合方法の一例として水溶液重合法を用いた場合について説明する。
【0024】
本実施形態に係る単量体組成物は、(メタ)アクリル酸及びその塩からなる群より選ばれる少なくとも一種の(メタ)アクリル酸化合物と、ベンズアルデヒドと、を含有する。本実施形態に係る単量体組成物は、(メタ)アクリル酸、及び、(メタ)アクリル酸の塩の双方を含有してよい。(メタ)アクリル酸の塩としては、アルカリ金属塩(ナトリウム塩、カリウム塩等)、アルカリ土類金属塩(カルシウム塩等)などが挙げられる。
【0025】
単量体組成物は、(メタ)アクリル酸化合物とは異なるエチレン性不飽和単量体を含有してよい。エチレン性不飽和単量体としては、水溶性エチレン性不飽和単量体を用いることができる。(メタ)アクリル酸化合物とは異なるエチレン性不飽和単量体としては、マレイン酸、無水マレイン酸、フマル酸等のα,β-不飽和カルボン酸、及び、その塩などのカルボン酸系単量体;(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート等の非イオン性単量体;N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミド等のアミノ基含有不飽和単量体、及び、その第4級化物;ビニルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸、2-(メタ)アクリロイルエタンスルホン酸、及び、それらの塩等のスルホン酸系単量体などが挙げられる。
【0026】
酸基を有するエチレン性不飽和単量体(例えば(メタ)アクリル酸)は、酸基が予めアルカリ性中和剤により中和されていてよい。アルカリ性中和剤としては、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム、炭酸水素ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸カリウム等のアルカリ金属塩;アンモニアなどが挙げられる。アルカリ性中和剤は、中和操作を簡便化するために水溶液の状態にして用いてもよい。酸基の中和は、原料であるエチレン性不飽和単量体の重合前に行ってもよく、重合中又は重合後に行ってもよい。
【0027】
アルカリ性中和剤によるエチレン性不飽和単量体の中和度は、浸透圧を高めることで、良好な吸水性能(例えばCRC)が得られやすい観点、及び、余剰のアルカリ性中和剤の存在に起因する不具合を抑制する観点から、10~100モル%、30~90モル%、40~85モル%、又は、50~80モル%が好ましい。「中和度」は、エチレン性不飽和単量体が有する全ての酸基に対する中和度とする。
【0028】
(メタ)アクリル酸化合物の含有量は、単量体組成物の全質量を基準として下記の範囲が好ましい。(メタ)アクリル酸化合物の含有量は、容易に裁断可能なゲルを得やすい観点、及び、CRCを高めやすい観点から、10質量%以上、15質量%以上、20質量%以上、25質量%以上、30質量%以上、又は、35質量%以上が好ましい。(メタ)アクリル酸化合物の含有量は、容易に裁断可能なゲルを得やすい観点、及び、CRCを高めやすい観点から、60質量%以下、55質量%以下、50質量%以下、50質量%未満、45質量%以下、又は、40質量%以下が好ましい。これらの観点から、(メタ)アクリル酸化合物の含有量は、10~60質量%が好ましい。本実施形態に係る架橋重合体粒子において、(メタ)アクリル酸化合物に由来する構造単位の含有量は、架橋重合体粒子の全質量を基準として、(メタ)アクリル酸化合物の含有量に関する上述の各範囲であることが好ましい。
【0029】
(メタ)アクリル酸化合物の含有量は、単量体組成物に含有される単量体の合計量、及び/又は、単量体組成物に含有されるエチレン性不飽和単量体の合計量を基準として下記の範囲が好ましい。(メタ)アクリル酸化合物の含有量は、50モル%以上、70モル%以上、90モル%以上、95モル%以上、97モル%以上、又は、99モル%以上が好ましい。単量体組成物に含有される単量体、及び/又は、単量体組成物に含有されるエチレン性不飽和単量体は、実質的に(メタ)アクリル酸化合物からなる態様(実質的に、単量体組成物に含有される単量体、及び/又は、単量体組成物に含有されるエチレン性不飽和単量体の100モル%が(メタ)アクリル酸化合物である態様)であってもよい。
【0030】
ベンズアルデヒドは、(メタ)アクリル酸化合物中に含まれていてよく、(メタ)アクリル酸化合物とは独立して単量体組成物を構成していてもよい。
【0031】
ベンズアルデヒドの含有量は、(メタ)アクリル酸化合物1モルに対して、0ミリモルを超えており、下記の範囲が好ましい。ベンズアルデヒドの含有量は、容易に裁断可能なゲルを得やすい観点、及び、CRCを高めやすい観点から、0.0001ミリモル以上、0.0003ミリモル以上、0.0005ミリモル以上、0.001ミリモル以上、0.0025ミリモル以上、0.003ミリモル以上、0.003ミリモルを超え、0.005ミリモル以上、0.01ミリモル以上、0.012ミリモル以上、0.02ミリモル以上、0.03ミリモル以上、0.05ミリモル以上、0.06ミリモル以上、0.08ミリモル以上、0.1ミリモル以上、0.1ミリモルを超え、0.2ミリモル以上、0.25ミリモル以上、0.3ミリモル以上、0.3ミリモルを超え、0.32ミリモル以上、0.4ミリモル以上、0.45ミリモル以上、0.5ミリモル以上、0.6ミリモル以上、又は、0.65ミリモル以上が好ましい。ベンズアルデヒドの含有量は、容易に裁断可能なゲルを得やすい観点、CRCを高めやすい観点、及び、未反応の単量体が残存することを抑制しやすい観点から、10ミリモル以下、7ミリモル以下、6ミリモル以下、5ミリモル以下、4ミリモル以下、3ミリモル以下、2.5ミリモル以下、2ミリモル以下、1.5ミリモル以下、1ミリモル以下、1ミリモル未満、0.8ミリモル以下、又は、0.7ミリモル以下が好ましい。これらの観点から、ベンズアルデヒドの含有量は、0ミリモルを超え10ミリモル以下が好ましい。
【0032】
ベンズアルデヒドの含有量は、単量体組成物の全質量を基準として、0ppmを超えており、下記の範囲が好ましい。ベンズアルデヒドの含有量は、容易に裁断可能なゲルを得やすい観点、及び、CRCを高めやすい観点から、0.02ppm以上、0.1ppm以上、0.15ppm以上、0.2ppm以上、0.5ppm以上、1.0ppm以上、1.5ppm以上、2.0ppm以上、5.0ppm以上、7.5ppm以上、12pp以上、12.5ppm以上、20ppm以上、25ppm以上、30ppm以上、35ppm以上、50ppm以上、60ppm以上、62.5ppm以上、75ppm以上、80ppm以上、90ppm以上、100ppm以上、125ppm以上、150ppm以上、175ppm以上、200ppm以上、250ppm以上、300ppm以上、350ppm以上、又は、360ppm以上が好ましい。ベンズアルデヒドの含有量は、容易に裁断可能なゲルを得やすい観点、及び、CRCを高めやすい観点から、3000ppm以下、2000ppm以下、1500ppm以下、1000ppm以下、800ppm以下、600ppm以下、500ppm以下、450ppm以下、又は、400ppm以下が好ましい。これらの観点から、ベンズアルデヒドの含有量は、0ppmを超え3000ppm以下が好ましい。
【0033】
単量体組成物は、重合開始剤を含有してよい。単量体組成物に含まれる単量体の重合は、単量体組成物に重合開始剤を添加し、必要により加熱、光照射等を行うことで開始してよい。重合開始剤としては、光重合開始剤、ラジカル重合開始剤等が挙げられ、水溶性ラジカル重合開始剤が好ましい。重合開始剤は、容易に裁断可能なゲルを得やすい観点、及び、CRCを高めやすい観点から、アゾ系化合物及び過酸化物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0034】
アゾ系化合物としては、2,2’-アゾビス[2-(N-フェニルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-クロロフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(4-ヒドロキシフェニル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-ベンジルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(N-アリルアミジノ)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[N-(2-ヒドロキシエチル)アミジノ]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-メチル-2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(4,5,6,7-テトラヒドロ-1H-1,3-ジアゼピン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(5-ヒドロキシ-3,4,5,6-テトラヒドロピリミジン-2-イル)プロパン]二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、2,2’-アゾビス[2-(2-イミダゾリン-2-イル)プロパン]二硫酸塩二水和物、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物、2,2’-アゾビス[2-メチル-N-(2-ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等が挙げられる。アゾ系化合物は、容易に裁断可能なゲルを得やすい観点、及び、良好な吸水性能(例えばCRC)が得られやすい観点から、2,2’-アゾビス(2-メチルプロピオンアミド)二塩酸塩、2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、2,2’-アゾビス{2-[1-(2-ヒドロキシエチル)-2-イミダゾリン-2-イル]プロパン}二塩酸塩、及び、2,2’-アゾビス[N-(2-カルボキシエチル)-2-メチルプロピオンアミジン]四水和物からなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0035】
過酸化物としては、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過硫酸ナトリウム等の過硫酸塩類;メチルエチルケトンパーオキシド、メチルイソブチルケトンパーオキシド、ジ-t-ブチルパーオキシド、t-ブチルクミルパーオキシド、t-ブチルパーオキシアセテート、t-ブチルパーオキシイソブチレート、t-ブチルパーオキシピバレート等の有機過酸化物類などが挙げられる。過酸化物は、容易に裁断可能なゲルを得やすい観点、及び、良好な吸水性能(例えばCRC)が得られやすい観点から、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、及び、過硫酸ナトリウムからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0036】
重合開始剤の含有量は、(メタ)アクリル酸化合物1モルに対して、下記の範囲が好ましい。重合開始剤の含有量は、容易に裁断可能なゲルを得やすい観点、CRCを高めやすい観点、及び、重合反応時間を短縮する観点から、0.001ミリモル以上、0.003ミリモル以上、0.015ミリモル以上、0.03ミリモル以上、0.06ミリモル以上、0.08ミリモル以上、又は、0.1ミリモル以上が好ましい。重合開始剤の含有量は、容易に裁断可能なゲルを得やすい観点、CRCを高めやすい観点、及び、急激な重合反応を回避しやすい観点から、5ミリモル以下、4ミリモル以下、2ミリモル以下、1ミリモル以下、0.5ミリモル以下、0.3ミリモル以下、0.25ミリモル以下、0.2ミリモル以下、又は、0.15ミリモル以下が好ましい。これらの観点から、重合開始剤の含有量は、0.001~5ミリモルが好ましい。
【0037】
単量体組成物は、還元剤を含有してよい。還元剤としては、亜硫酸ナトリウム、亜硫酸水素ナトリウム、硫酸第1鉄、L-アスコルビン酸等が挙げられる。重合開始剤と還元剤とを併用してよい。
【0038】
単量体組成物は、酸化剤を含有してよい。酸化剤としては、過酸化水素、過ホウ酸ナトリウム、過リン酸及びその塩、過マンガン酸カリウム等が挙げられる。
【0039】
単量体組成物は、内部架橋剤を含有してよい。内部架橋剤を用いることにより、得られる架橋重合体が、その内部架橋構造として、重合反応による自己架橋構造に加え、内部架橋剤による架橋構造を有することができる。
【0040】
内部架橋剤としては、反応性官能基(例えば重合性不飽和基)を2個以上有する化合物等が挙げられる。内部架橋剤としては、(ポリ)エチレングリコール、(ポリ)プロピレングリコール、トリメチロールプロパン、グリセリンポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、(ポリ)グリセリン等のポリオールのジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;上記ポリオールと不飽和酸(マレイン酸、フマル酸等)とを反応させて得られる不飽和ポリエステル類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、グリシジル(メタ)アクリレート等のグリシジル基含有化合物;N,N’-メチレンビス(メタ)アクリルアミド等のビスアクリルアミド類;ポリエポキシドと(メタ)アクリル酸とを反応させて得られるジ又はトリ(メタ)アクリル酸エステル類;ポリイソシアネート(トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)と(メタ)アクリル酸ヒドロキシエチルとを反応させて得られるジ(メタ)アクリル酸カルバミルエステル類;アリル化澱粉;アリル化セルロース;ジアリルフタレート;N,N’,N”-トリアリルイソシアヌレート;ジビニルベンゼン;ペンタエリスリトール;エチレンジアミン;ポリエチレンイミンなどが挙げられる。内部架橋剤は、容易に裁断可能なゲルを得やすい観点、CRCを高めやすい観点、及び、低温での反応性に優れる観点から、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテルからなる群より選ばれる少なくとも一種を含むことが好ましい。
【0041】
内部架橋剤の含有量は、(メタ)アクリル酸化合物1モルに対して下記の範囲が好ましい。内部架橋剤の含有量は、容易に裁断可能なゲルを得やすい観点、及び、良好な吸水性能(例えばCRC)が得られやすい観点から、0.0005ミリモル以上、0.001ミリモル以上、0.002ミリモル以上、0.005ミリモル以上、0.01ミリモル以上、0.015ミリモル以上、0.02ミリモル以上、又は、0.025ミリモル以上が好ましい。内部架橋剤の含有量は、容易に裁断可能なゲルを得やすい観点、及び、良好な吸水性能(例えばCRC)が得られやすい観点から、0.3ミリモル以下、0.25ミリモル以下、0.2ミリモル以下、0.18ミリモル以下、0.18ミリモル未満、0.17ミリモル以下、0.16ミリモル以下、0.15ミリモル以下、0.1ミリモル以下、0.06ミリモル以下、0.06ミリモル未満、0.05ミリモル以下、0.05ミリモル未満、0.04ミリモル以下、又は、0.03ミリモル以下が好ましい。これらの観点から、内部架橋剤の含有量は、0.0005~0.3ミリモルが好ましい。
【0042】
単量体組成物は、必要に応じて、上述の各成分とは異なる成分として、連鎖移動剤、増粘剤、無機フィラー等の添加剤を含有してよい。連鎖移動剤としては、チオール類、チオール酸類、第2級アルコール類、次亜リン酸、亜リン酸、アクロレイン等が挙げられる。増粘剤としては、カルボキシメチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロース、メチルセルロース、ポリエチレングリコール、ポリアクリル酸、ポリアクリル酸中和物、ポリアクリルアミド等が挙げられる。無機フィラーとしては、金属酸化物、セラミック、粘度鉱物等が挙げられる。
【0043】
水溶液重合の重合方式としては、単量体組成物を撹拌しない状態(例えば、静置状態)で重合する静置重合方式;反応装置内で単量体組成物を撹拌しながら重合する撹拌重合方式等が挙げられる。静置重合方式では、重合完了時、反応容器中に存在した単量体組成物と略同じ体積を占める単一のブロック状のゲルが得られる。
【0044】
重合の形態は、回分、半連続、連続等であってよい。例えば、静置重合方式を連続重合にて行う場合、連続重合装置に単量体組成物を連続的に供給しながら重合反応を行い、連続的にゲルを得ることができる。
【0045】
重合温度は、使用する重合開始剤によって異なるが、重合を迅速に進行させ、重合時間を短くすることにより生産性を高めると共に、重合熱を除去して円滑に反応を行いやすい観点から、0~130℃又は10~110℃が好ましい。重合時間は、使用する重合開始剤の種類及び量、反応温度等に応じて適宜設定されるが、1~200分又は5~100分が好ましい。
【0046】
本実施形態に係る架橋重合体粒子の製造方法では、本実施形態に係る架橋重合体ゲルの製造方法により得られる架橋重合体ゲルを粗砕、乾燥及び粉砕して架橋重合体粒子を得る。すなわち、本実施形態に係る架橋重合体粒子の製造方法は、本実施形態に係る架橋重合体ゲルの製造方法により架橋重合体ゲルを得るゲル作製工程と、架橋重合体ゲルを粗砕して粗砕物(ゲル粗砕物)を得るゲル粗砕工程と、粗砕物を乾燥して乾燥物を得る乾燥工程と、乾燥物を粉砕する乾燥物粉砕工程と、を備えてよい。
【0047】
ゲル粗砕工程における粗砕装置としては、例えば、ニーダー(加圧式ニーダー、双腕型ニーダー等)、ミートチョッパー、カッターミル、ファーマミル等を用いることができる。
【0048】
乾燥工程では、粗砕物中の液体成分(水等)を加熱及び/又は送風により除去することで乾燥物(ゲル乾燥物)を得ることができる。乾燥方法は、自然乾燥、加熱乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥等であってよい。乾燥温度は、例えば70~250℃である。
【0049】
粉砕工程における粉砕機としては、ローラーミル(ロールミル)、スタンプミル、ジェットミル、高速回転粉砕機(ハンマーミル、ピンミル、ロータビータミル等)、容器駆動型ミル(回転ミル、振動ミル、遊星ミル等)などが挙げられる。
【0050】
本実施形態に係る架橋重合体粒子の製造方法は、乾燥物粉砕工程の後に、粉砕物(乾燥物の粉砕物)を分級する分級工程を備えてよい。分級工程では、粉砕物を、粒度分布の異なる2つ以上の粒子群に分けることができる。本実施形態に係る架橋重合体粒子の製造方法では、乾燥物粉砕工程と分級工程とを繰り返すことにより複数回の分級工程を行ってよく、後述する追架橋工程後に分級工程を行ってもよい。分級方法としては、スクリーン分級、風力分級等が挙げられる。スクリーン分級としては、振動篩、ロータリシフタ、円筒撹拌篩、ブロワシフタ、ロータップ式振とう器等が挙げられる。スクリーン分級は、スクリーンを振動させることによって、スクリーン上の粒子を、スクリーンの網目を通過する粒子と、通過しない粒子とに分級する方法である。風力分級は、空気の流れを利用して粒子を分級する方法である。
【0051】
本実施形態に係る吸水性樹脂は、ゲル粗砕工程後の重合体を追架橋させることにより得ることができる。追架橋は、ゲル粗砕工程後のいずれかの時期に行えばよく、乾燥工程の前後、粉砕工程の前後、及び、分級工程の前後のいずれにおいて行ってもよい。追架橋は、重合体粒子に対する表面架橋であってよい。追架橋は、例えば、架橋剤(例えば表面架橋剤)を重合体と反応させることにより行うことができる。架橋剤を用いて追架橋を行うことにより、重合体の架橋密度(例えば、重合体粒子の表面近傍の架橋密度)が高まるため、重合体の吸水性能(CRC、荷重下吸水量、吸水速度等)を高めやすい。
【0052】
架橋剤としては、例えば、エチレン性不飽和単量体由来の官能基との反応性を有する官能基(反応性官能基)を2個以上含有する化合物が挙げられる。架橋剤としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール類;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、(ポリ)グリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、α-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;イソシアネート化合物(2,4-トリレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート等)などの、反応性官能基を2個以上有する化合物;3-メチル-3-オキセタンメタノール、3-エチル-3-オキセタンメタノール、3-ブチル-3-オキセタンメタノール、3-メチル-3-オキセタンエタノール、3-エチル-3-オキセタンエタノール、3-ブチル-3-オキセタンエタノール等のオキセタン化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物などが挙げられる。
【0053】
本実施形態に係る吸水性樹脂は、その表面に、ゲル安定剤;金属キレート剤(エチレンジアミン4酢酸及びその塩、ジエチレントリアミン5酢酸及びその塩(例えばジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム)等);流動性向上剤(滑剤)の無機粒子などを含んでよい。例えば、追架橋後の重合体と無機粒子とを混合することにより、重合体の表面上に無機粒子を配置することができる。無機粒子としては、例えば、非晶質シリカ等のシリカ粒子が挙げられる。
【0054】
本実施形態に係る吸水性樹脂は、水を保水可能であり、尿、汗、血液(例えば経血)等の体液を吸液できる。本実施形態に係る吸水性樹脂は、吸収体の構成成分として用いることができる。本実施形態は、例えば、紙おむつ、生理用品等の衛生材料;保水剤、土壌改良剤等の農園芸材料;止水剤、結露防止剤等の工業資材などの分野において用いることができる。
【0055】
本実施形態に係る吸収体は、本実施形態に係る吸水性樹脂(例えば吸水性樹脂粒子)を含有する。本実施形態に係る吸収体は、繊維状物を含有していてもよく、例えば、吸水性樹脂及び繊維状物を含む混合物である。吸収体の構成としては、例えば、吸水性樹脂及び繊維状物が均一混合された構成であってよく、シート状又は層状に形成された繊維状物の間に吸水性樹脂が挟まれた構成であってもよく、その他の構成であってもよい。
【0056】
繊維状物としては、微粉砕された木材パルプ;コットン;コットンリンター;レーヨン;セルロースアセテート等のセルロース系繊維;ポリアミド、ポリエステル、ポリオレフィン等の合成繊維;これらの繊維の混合物などが挙げられる。繊維状物としては、親水性繊維を用いることができる。
【0057】
吸収体の使用前及び使用中における形態保持性を高めるために、繊維状物に接着性バインダーを添加することによって繊維同士を接着させてもよい。接着性バインダーとしては、熱融着性合成繊維、ホットメルト接着剤、接着性エマルジョン等が挙げられる。
【0058】
熱融着性合成繊維としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン-プロピレン共重合体等の全融型バインダー;ポリプロピレンとポリエチレンとのサイドバイサイド又は芯鞘構造からなる非全融型バインダーなどが挙げられる。上述の非全融型バインダーにおいては、ポリエチレン部分のみ熱融着することができる。
【0059】
ホットメルト接着剤としては、例えば、エチレン-酢酸ビニルコポリマー、スチレン-イソプレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-ブタジエン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-ブチレン-スチレンブロックコポリマー、スチレン-エチレン-プロピレン-スチレンブロックコポリマー、アモルファスポリプロピレン等のベースポリマーと、粘着付与剤、可塑剤、酸化防止剤等との混合物が挙げられる。
【0060】
接着性エマルジョンとしては、例えば、メチルメタクリレート、スチレン、アクリロニトリル、2-エチルヘキシルアクリレート、ブチルアクリレート、ブタジエン、エチレン、及び、酢酸ビニルからなる群より選ばれる少なくとも一種の単量体の重合物が挙げられる。
【0061】
本実施形態に係る吸収体は、無機粉末(例えば非晶質シリカ)、消臭剤、抗菌剤、顔料、染料、香料、粘着剤等を含有してもよい。吸水性樹脂が無機粒子を含む場合、吸収体は、吸水性樹脂中の無機粒子とは別に無機粉末を含有してよい。
【0062】
本実施形態に係る吸収体の形状は、例えばシート状であってよい。吸収体の厚さ(例えば、シート状の吸収体の厚さ)は、0.1~20mm又は0.3~15mmであってよい。
【0063】
吸収体における吸水性樹脂の含有量は、充分な吸収特性を得やすい観点から、吸水性樹脂及び繊維状物の合計に対して、2~95質量%、10~80質量%又は20~60質量%であってよい。
【0064】
吸収体における吸水性樹脂の含有量は、充分な吸収特性を得やすい観点から、吸収体1m当たり、100~1000g、150~800g、又は、200~700gが好ましい。吸収体における繊維状物の含有量は、充分な吸収特性を得やすい観点から、吸収体1mあたり、50~800g、100~600g、又は、150~500gが好ましい。
【0065】
本実施形態に係る吸収性物品は、本実施形態に係る吸収体を備える。本実施形態に係る吸収性物品の他の構成部材としては、吸収体を保形すると共に吸収体の構成部材の脱落や流動を防止するコアラップ;吸液対象の液が浸入する側の最外部に配置される液体透過性シート;吸液対象の液が浸入する側とは反対側の最外部に配置される液体不透過性シート等が挙げられる。吸収性物品としては、おむつ(例えば紙おむつ)、トイレトレーニングパンツ、失禁パッド、衛生材料(生理用ナプキン、タンポン等)、汗取りパッド、ペットシート、簡易トイレ用部材、動物排泄物処理材などが挙げられる。
【0066】
図1は、吸収性物品の一例を示す断面図である。図1に示す吸収性物品100は、吸収体10と、コアラップ20a,20bと、液体透過性シート30と、液体不透過性シート40と、を備える。吸収性物品100において、液体不透過性シート40、コアラップ20b、吸収体10、コアラップ20a、及び、液体透過性シート30がこの順に積層している。図1において、部材間に間隙があるように図示されている部分があるが、当該間隙が存在することなく部材間が密着していてよい。
【0067】
吸収体10は、本実施形態に係る吸水性樹脂を含む吸水性樹脂粒子10aと、繊維状物を含む繊維層10bと、を有する。吸水性樹脂粒子10aは、繊維層10b内に分散している。
【0068】
コアラップ20aは、吸収体10に接した状態で吸収体10の一方面側(図1中、吸収体10の上側)に配置されている。コアラップ20bは、吸収体10に接した状態で吸収体10の他方面側(図1中、吸収体10の下側)に配置されている。吸収体10は、コアラップ20aとコアラップ20bとの間に配置されている。コアラップ20a,20bとしては、ティッシュ、不織布、織布、液体透過孔を有する合成樹脂フィルム、網目を有するネット状シート等が挙げられる。コアラップ20a及びコアラップ20bは、例えば、吸収体10と同等の大きさの主面を有している。
【0069】
液体透過性シート30は、吸収対象の液が浸入する側の最外部に配置されている。液体透過性シート30は、コアラップ20aに接した状態でコアラップ20a上に配置されている。液体透過性シート30としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエステル、ポリアミド等の合成樹脂からなる不織布、多孔質シートなどが挙げられる。液体不透過性シート40は、吸収性物品100において液体透過性シート30とは反対側の最外部に配置されている。液体不透過性シート40は、コアラップ20bに接した状態でコアラップ20bの下側に配置されている。液体不透過性シート40としては、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリ塩化ビニル等の合成樹脂からなるシート、これらの合成樹脂と不織布との複合材料からなるシートなどが挙げられる。液体透過性シート30及び液体不透過性シート40は、例えば、吸収体10の主面よりも広い主面を有しており、液体透過性シート30及び液体不透過性シート40の外縁部は、吸収体10及びコアラップ20a,20bの周囲に延在している。
【0070】
吸収体10、コアラップ20a,20b、液体透過性シート30、及び、液体不透過性シート40の大小関係は、特に限定されず、吸収性物品の用途等に応じて適宜調整される。また、コアラップ20a,20bを用いて吸収体10を保形する方法は、特に限定されず、図1に示すように複数のコアラップにより吸収体を包んでよく、1枚のコアラップにより吸収体を包んでもよい。
【0071】
吸収体は、トップシートに接着されていてもよい。吸収体がコアラップにより挟持又は被覆されている場合、少なくともコアラップとトップシートとが接着されていることが好ましく、コアラップとトップシートとが接着されていると共にコアラップと吸収体とが接着されていることがより好ましい。吸収体の接着方法としては、ホットメルト接着剤をトップシートに対して所定間隔で幅方向にストライプ状、スパイラル状等に塗布して接着する方法;デンプン、カルボキシメチルセルロース、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、その他の水溶性高分子等の水溶性バインダーを用いて接着する方法などが挙げられる。また、吸収体が熱融着性合成繊維を含む場合、熱融着性合成繊維の熱融着によって接着する方法を採用してもよい。
【0072】
本実施形態によれば、本実施形態に係る吸水性樹脂、吸収体又は吸収性物品を用いた吸液方法を提供することができる。本実施形態に係る吸液方法は、本実施形態に係る吸水性樹脂、吸収体又は吸収性物品に吸液対象の液を接触させる工程を備える。
【0073】
本実施形態によれば、上述の吸水性樹脂を用いた、吸収体の製造方法を提供することができる。本実施形態に係る吸収体の製造方法は、上述の吸水性樹脂を得る吸水性樹脂製造工程を備える。本実施形態に係る吸収体の製造方法は、吸水性樹脂製造工程の後に、吸水性樹脂と繊維状物とを混合する工程を備えてよい。本実施形態によれば、上述の吸収体の製造方法により得られた吸収体を用いた、吸収性物品の製造方法を提供することができる。本実施形態に係る吸収性物品の製造方法は、上述の吸収体の製造方法により吸収体を得る吸収体製造工程を備える。本実施形態に係る吸収性物品の製造方法は、吸収体製造工程の後に、吸収体と吸収性物品の他の構成部材とを用いて吸収性物品を得る工程を備えてよく、当該工程では、例えば、吸収体と吸収性物品の他の構成部材とを互いに積層することにより吸収性物品を得る。
【0074】
本実施形態によれば、吸液への吸水性樹脂、吸収体及び吸収性物品の応用を提供することができる。本実施形態によれば、架橋重合体ゲルの裁断時に要する力の調整への架橋重合体ゲルの応用を提供することができる。本実施形態によれば、架橋重合体ゲルの裁断時に要する力の調整方法であって、架橋重合体ゲルを得るための単量体組成物におけるベンズアルデヒドの量に基づき、架橋重合体ゲルの裁断時に要する力を調整する方法を提供することができる。
【実施例
【0075】
以下、実施例及び比較例を用いて本発明の内容を更に詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0076】
<ゲルの作製>
(実施例1)
フッ素樹脂コーティングした内面を有するステンレスバット(開口部の外寸法:210mm×170mm、底面の内寸法:170×130mm、高さ:30mm)内の中心部に撹拌子(直径:8mm、長さ:40mm、リングなし)を入れた。アクリル酸ナトリウム部分中和液(重合に用いる単量体、単量体濃度:45質量%、アクリル酸ナトリウムの中和率:75モル%)340.0g、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.0077g(内部架橋剤、0.044ミリモル)、ベンズアルデヒド0.374mg(0.0035ミリモル)、及び、イオン交換水59.0gを加えた後、撹拌子を回転させることにより均一に混合して混合物(アクリル酸ナトリウム部分中和液濃度:38質量%)を得た。その後、ステンレスバットの上部をポリエチレンフィルムでシールすることによりステンレスバット内を密閉した。ステンレスバッド内の前記混合物の温度を25℃に調整後、混合物を窒素置換することにより溶存酸素量を0.1ppm以下に調整した。次いで、300rpmの撹拌下で、2質量%過硫酸カリウム水溶液3.09g(過硫酸カリウム:0.229ミリモル)、及び、0.5質量%L-アスコルビン酸水溶液0.65gを順に滴下することにより単量体水溶液を調製した。0.5質量%L-アスコルビン酸水溶液を滴下して2分後に重合が開始した。重合開始から22分後、得られた生成物を容器に入れたまま75℃の水浴に浸して20分間熟成することによりゲル(重合後ゲル)を得た。ゲルの厚さは1.3cmであった。同様の操作を行って、架橋重合体粒子を作製するためのゲルA、及び、裁断試験を行うためのゲルBの2つのゲルを得た。
【0077】
(実施例2)
ベンズアルデヒドの使用量を1.245mg(0.0117ミリモル)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによりゲルを得た。
【0078】
(実施例3)
ベンズアルデヒドの使用量を2.490mg(0.0234ミリモル)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによりゲルを得た。
【0079】
(実施例4)
ベンズアルデヒドの使用量を87.15mg(0.819ミリモル)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによりゲルを得た。
【0080】
(実施例5)
ベンズアルデヒドの使用量を124.5mg(1.173ミリモル)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによりゲルを得た。
【0081】
(実施例6)
エチレングリコールジグリシジルエーテルの使用量を0.0154g(0.088ミリモル)に変更し、ベンズアルデヒドの使用量を1.245mg(0.0117ミリモル)に変更したこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによりゲルを得た。
【0082】
(実施例7)
フッ素樹脂コーティングした内面を有するステンレスバット(開口部の外寸法:210mm×170mm、底面の内寸法:170×130mm、高さ:30mm)内の中心部に撹拌子(直径:8mm、長さ:40mm、リングなし)を入れた。アクリル酸ナトリウム部分中和液(重合に用いる単量体、単量体濃度:45質量%、アクリル酸ナトリウムの中和率:75モル%)340.0g、エチレングリコールジグリシジルエーテル0.0541g(内部架橋剤、0.311ミリモル)、ベンズアルデヒド1.245mg(0.0117ミリモル)、及び、イオン交換水59.0gを加えた後、撹拌子を回転させることにより均一に混合して混合物(アクリル酸ナトリウム部分中和液濃度:38質量%)を得た。その後、ステンレスバットの上部をポリエチレンフィルムでシールすることによりステンレスバット内を密閉した。ステンレスバッド内の前記混合物の温度を25℃に調整後、混合物を窒素置換することにより溶存酸素量を0.1ppm以下に調整した。次いで、300rpmの撹拌下で、2質量%V-50水溶液3.09g(2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)二塩酸塩、0.228ミリモル、和光純薬工業株式会社製)、0.5質量%L-アスコルビン酸水溶液0.65g、及び、0.35質量%過酸化水素水0.72gを順に滴下することにより単量体水溶液を調製した。0.35質量%過酸化水素水を滴下した直後に重合が開始した。重合開始から12分後、得られた生成物を容器に入れたまま75℃の水浴に浸して20分間熟成することによりゲル(重合後ゲル)を得た。ゲルの厚さは1.3cmであった。同様の操作を行って、架橋重合体粒子を作製するためのゲルA、及び、裁断試験を行うためのゲルBの2つのゲルを得た。
【0083】
(比較例1)
ベンズアルデヒドを用いなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによりゲルを得た。
【0084】
(比較例2)
エチレングリコールジグリシジルエーテルの使用量を0.0154g(0.088ミリモル)に変更し、ベンズアルデヒドを添加しなかったこと以外は実施例1と同様の操作を行うことによりゲルを得た。
【0085】
(比較例3)
ベンズアルデヒドを用いなかったこと以外は実施例7と同様の操作を行うことによりゲルを得た。
【0086】
<架橋重合体粒子の作製>
各実施例・比較例のゲルAを次のように処理して、それぞれの架橋重合体粒子を得た。
ハサミを用いてゲルAから幅2cm、長さ13cm、厚さ1.3cmの直方体状のゲル8本を得た。直方体状のゲルをミートチョッパー(型番:12VR-750SDX、喜連ローヤル株式会社製)に順次投入した。ミートチョッパーの排出口に位置するプレートの穴(円形)の径は6.4mmであり、穴の密度は40穴/36.30cmであった。ミートチョッパーのプレートから粗砕物(粗砕されたゲル)が出てこなくなるまで粗砕を行った。
粗砕物を網の上に広げた後、180℃に設定した熱風乾燥機(型番:FV-320、ADVANTEC社製)で30分間乾燥させることにより乾燥物を得た。
粉砕機(Retsch、ロータビータミル、SR300)を用いて、スクリーンの梯形孔1mmの条件で乾燥物を粉砕した。
粉砕後の粒子を目開き850μmの篩及び180μmの篩で分級することにより、850μmの篩を通過して180μmの篩上に残留した架橋重合体粒子を回収した。
【0087】
<CRC測定>
EDANA法(NWSP 241.0.R2(15)、page.769~778)を参考に架橋重合体粒子のCRCを下記の手順で測定した。
【0088】
60mm×170mmの大きさの不織布(製品名:ヒートパックMWA-18、日本製紙パピリア株式会社製)を長手方向に半分に折ることで60mm×85mmの大きさに調整した。長手方向に延びる両辺のそれぞれにおいて不織布同士をヒートシールで圧着することにより60mm×85mmの不織布バッグを作製した(幅5mmの圧着部を長手方向に沿って両辺に形成した)。不織布バッグの内部に上述の架橋重合体粒子を0.2g収容した。その後、短手方向に延びる残りの一辺をヒートシールで圧着することにより不織布バッグを閉じた。
【0089】
不織布バッグが折り重ならない状態で、ステンレス製バット(240mm×320mm×45mm)に収容された生理食塩水1000g上に不織布バッグを浮かべることにより、不織布バッグの全体を完全に湿らせた。不織布バッグを生理食塩水に投入してから1分後にスパチュラにて不織布バッグを生理食塩水に浸漬することにより、ゲルが収容された不織布バッグを得た。
【0090】
不織布バッグを生理食塩水に投入してから30分後(浮かべた時間1分、及び、浸漬時間29分の合計)に生理食塩水の中から不織布バッグを取り出した。そして、遠心分離機(株式会社コクサン製、型番:H-122)に不織布バッグを入れた。遠心分離機における遠心力が250Gに到達した後、3分間不織布バッグの脱水を行った。脱水後、ゲルの質量を含む不織布バッグの質量Mを秤量した。架橋重合体粒子を収容することなく不織布バッグに対して上述の操作と同様の操作を施し、不織布バッグの質量Mを測定した。下記式に基づきCRCを算出した。Mは、測定に用いた架橋重合体粒子の質量0.2gである。結果を表1に示す。
CRC[g/g] = {(M-M)-M}/M
【0091】
<裁断試験>
各実施例・比較例のゲルBを次のように処理して、それぞれの裁断試験を行った。
【0092】
ハサミを用いてゲルBから幅2cm、長さ13cm、厚さ1.3cmの直方体状の6つの試験片を得た。ゲルBにおいて撹拌子が存在していた領域(ゲルの中央付近)に空隙が形成されやすいことから、当該空隙が形成されていない領域から試験片を得た。
【0093】
EZtest(製品名:EZtest、型番:EZ-SX、株式会社島津製作所製)を用いて裁断試験を行った。ゲルを裁断するために用いるブレード(長尺の裁断刃、カタログ記載名称:45°カット端面t3mm)を、ブレードの先端が鉛直方向の下側に向く状態で容量500N(測定上限を450Nに設定)のロードセルに装着することにより治具を組み上げた。ブレードは、刃先部(先端方向の長さ:3mm、先端方向に向かって狭幅化され、尖った先端を有する刃先部)と、当該刃先部を支持する板状の支持部と、を有している。刃先部を含む裁断刃の長手方向における長さは7cmである。刃先部は支持部の一辺の全体に形成されており、刃先部の基端及び支持部の幅は3mmである。刃先部は、支持部の一方面から先端方向に対して傾斜する第1の刃面と、支持部の他方面から先端方向に対して傾斜する第2の刃面と、を有している。第1の刃面及び第2の刃面は先端方向に対して22.5°ずつ傾斜しており、第1の刃面及び第2の刃面の間の角度(内角)は45°である。刃先部における長手方向に垂直な断面の形状は二等辺三角形である。
【0094】
島津オートグラフ用ソフトウェア トラペジウムX(株式会社島津製作所製)を用いて、EZtestに装着したブレードを操作することにより、下記手順で試験片を裁断した。裁断は、室温(25±1℃)で行った。
【0095】
試験片の2cm×13cmの面が測定台に接すると共に試験片の長手方向がブレードの長手方向と直交する状態で測定台の上に試験片を置いた。ブレードを手動で下げ、ロードセルが荷重0.01Nを感知した時点でブレードを止めた。その後、ブレードを0.01mm上昇させ、その位置を測定開始地点に設定した。
【0096】
測定開始地点からブレードを試験片の表面に対して20mm/minの速度で押し込み(トラペジウムXのプログラム機能により自動で動くように設定した)、ゲルが裁断されたときに治具に負荷される荷重を測定した。図2は、裁断試験の試験内容を説明するための図であり、治具に負荷される荷重の治具の変位に対する依存性を示す荷重変位曲線である。ブレードがゲルに押し込まれるに伴い荷重が増加し、ゲルが裁断された際には荷重が急激に上昇した後に急激に下降してピークが観察され(図2(a)参照)、そのピークトップPの荷重を取得した。試験片が裁断されない場合には、荷重が測定上限の450Nに達する(図2(b)参照)。
【0097】
6つの試験片のそれぞれの裁断時の荷重(ピークトップの荷重)を測定し、荷重の平均値(裁断力)を算出した。裁断試験の結果(荷重の平均値)を表1に示す。実施例及び比較例では、全ての荷重(6つのピークトップの荷重)について450Nに達することがなかった。
【0098】
【表1】
【0099】
表1によれば、架橋重合体粒子のCRCが60g/g以上である場合において、(メタ)アクリル酸化合物とベンズアルデヒドとを含有する単量体組成物を用いることが、容易に裁断可能な架橋重合体ゲルを得ることに有効であることが確認される。
【符号の説明】
【0100】
10…吸収体、10a…吸水性樹脂粒子、10b…繊維層、20a,20b…コアラップ、30…液体透過性シート、40…液体不透過性シート、100…吸収性物品。

図1
図2