IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ 住友精化株式会社の特許一覧

特許7554749吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を向上させる方法、及び吸水性樹脂粒子を製造する方法
<>
  • 特許-吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を向上させる方法、及び吸水性樹脂粒子を製造する方法 図1
  • 特許-吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を向上させる方法、及び吸水性樹脂粒子を製造する方法 図2
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を向上させる方法、及び吸水性樹脂粒子を製造する方法
(51)【国際特許分類】
   C08J 3/12 20060101AFI20240912BHJP
   A61F 13/15 20060101ALI20240912BHJP
   B01J 20/26 20060101ALI20240912BHJP
   B01J 20/30 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
C08J3/12 Z CEY
A61F13/15 320
B01J20/26 D
B01J20/30
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2021530648
(86)(22)【出願日】2020-07-01
(86)【国際出願番号】 JP2020025847
(87)【国際公開番号】W WO2021006152
(87)【国際公開日】2021-01-14
【審査請求日】2023-06-23
(31)【優先権主張番号】P 2019126334
(32)【優先日】2019-07-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000195661
【氏名又は名称】住友精化株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100140578
【弁理士】
【氏名又は名称】沖田 英樹
(72)【発明者】
【氏名】西田 萌
【審査官】深谷 陽子
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-094379(JP,A)
【文献】特開2005-015995(JP,A)
【文献】特開2006-168324(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 3/00- 3/28、 99/00
A61F 13/15、 13/53
B01J 20/00- 20/28、 20/30- 20/34
C08K 3/00- 13/08
C08L 1/00-101/14
B29B 9/16
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
容器内に収容された、複数の吸水性樹脂粒子を含む粉体を振とうすることによって前記吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を大きくする工程を含み、前記荷重下吸水量が、前記吸水性樹脂粒子からなる粉体に4.14kPaの圧力が加わる荷重下で測定される荷重下吸水量である、吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を向上させる方法。
【請求項2】
前記容器内に収容された前記粉体の量が、100%未満の理論充填率に相当し、
前記理論充填率が、下記式:
理論充填率[%]={(X[g]/D[g/mL])/V[mL]}×100
によって計算される値であり、Xが前記粉体の質量、Dが前記粉体の固めかさ密度、Vが前記容器の最大容積である、
請求項1に記載の方法。
【請求項3】
振とうされる間に前記粉体が受ける加速度の最大値が0.050~4.0Gである、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
前記容器内に収容された前記粉体を振とうする時間が合計で10分以上である、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか一項に記載の方法によって吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を向上させる工程を含み、前記荷重下吸水量が、前記吸水性樹脂粒子からなる粉体に4.14kPaの圧力が加わる荷重下で測定される荷重下吸水量である、吸水性樹脂粒子を製造する方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を向上させる方法、及び吸水性樹脂粒子を製造する方法に関する。
【背景技術】
【0002】
吸水性樹脂粒子は、衛生材料等の分野において広く用いられている。吸水性樹脂粒子には、荷重下又は加圧下でも大きな吸水量を維持することが求められることがある(例えば、特許文献1、2)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-212301号公報
【文献】特開2011-231255号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の一側面は、吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を容易に向上させることができる方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明の一側面は、容器内に収容された、複数の吸水性樹脂粒子を含む粉体を振とうする工程を含む、吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を向上させる方法に関する。
【0006】
本発明の別の一側面は、上記方法によって吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を向上させる工程を含む、吸水性樹脂粒子を製造する方法に関する。
【発明の効果】
【0007】
本発明の一側面によれば、吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を容易に向上させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】吸水性樹脂粒子を含む粉体を振とうする工程の一実施形態を示す模式図である。
図2】吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を測定する方法を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、本発明のいくつかの実施形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0010】
本明細書において「(メタ)アクリル」はアクリル及びメタクリルの両方を意味する。「アクリレート」及び「メタクリレート」も同様に「(メタ)アクリレート」と表記する。他の類似の用語も同様である。「(ポリ)」とは、「ポリ」の接頭語がある場合及びない場合の双方を意味するものとする。本明細書に段階的に記載されている数値範囲において、ある段階の数値範囲の上限値又は下限値は、他の段階の数値範囲の上限値又は下限値と任意に組み合わせることができる。本明細書に記載されている数値範囲において、その数値範囲の上限値又は下限値は、実施例に示されている値に置き換えてもよい。「水溶性」とは、25℃において水に5質量%以上の溶解性を示すことをいう。本明細書に例示する材料は、1種単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。「生理食塩水」とは、0.9質量%塩化ナトリウム水溶液をいう。
【0011】
図1は、複数の吸水性樹脂粒子を含む粉体を振とうする工程の一実施形態を示す模式図である。図1の方法では、容器3に収容された粉体1が振とうされる。容器3は支持体5上に配置されており、支持体5が振動することによって、容器3内の粉体1を振とうすることができる。振とうによって、より大きな荷重下吸水量を示す吸水性樹脂粒子が得られる。粉体1は、典型的には、実質的に吸水性樹脂粒子のみから構成されるが、その他の粒子が粉体1に含まれていてもよい。粉体1の全量に対する吸水性樹脂粒子の割合は、80~100質量%、90~100質量%、又は95~100質量%であってもよい。
【0012】
容器3は、袋状の本体部3Aと、本体部3Aの一端に設けられた蓋部3Bとを有する。本体部3Aは、特に限定されず、例えば木箱、段ボール箱、プラスチック袋、又は布袋であってもよい。容器の本体部としてのプラスチック袋のような柔軟性の袋が、より硬性の外箱(例えば段ボール箱)の内部に装着されていてもよい。蓋部3Bは開閉可能な構造を有していればよい。蓋部3Bが閉じた状態、すなわち本体部3Aに粉体1が封入された状態で、粉体1を振とうしてもよい。粉体1が収容された容器3を運搬しながら、粉体1を振とうしてもよい。
【0013】
粉体1が容器3を完全に充填してもよいし、図示されるように、粉体1の量が容器3の最大容量よりもある程度少なくてもよい。例えば、100%未満の理論充填率に相当する量の粉体1が容器3内に収容されてもよい。ここでの理論充填率は、下記式:
理論充填率[%]={(X[g]/D[g/mL])/V[mL]}×100
によって計算される値である。式中、Xは粉体1の質量、Dは粉体1の固めかさ密度、Vは容器3の最大容積である。粉体1の量が100%未満の理論充填率に相当する量であると、より大きな荷重下吸水量を示す吸水性樹脂粒子が得られ易い傾向がある。同様の観点から、粉体1の量が95%以下、又は90%以下の理論充填率に相当する量であってもよい。効率性の観点から、粉体1の量が50%以上、60%以上、又は65%以上の理論充填率に相当する量であってもよい。
【0014】
吸水性樹脂粒子を含む粉体の固めかさ密度は、後述の実施例において説明される方法によって測定される。容器の最大容積Vは、粉体を収容可能な部分(図1の例では本体部3A)の最大容積である。容器の仕様書等に最大容量の記載があれば、その数値を便宜的に容器の最大容積Vとみなしてもよい。容器を完全に充填する水の体積を実測することで最大容積Vを求めてもよい。容器を構成する部材の大きさ及び形状から算出される容積の計算値を、容器の最大容積Vとみなすこともできる。容器が開閉可能な開口を有する場合、最大容積Vは、開口を閉じた状態での最大容積である。容器の本体部がプラスチック袋又は布袋のような柔軟性の袋である場合、容積が最大になるまで本体部(袋)が拡がった状態での容積の計算値が、容器の最大容積Vとみなされる。また、柔軟性の袋が硬性の外箱の内部に装着されている場合、外箱の内容積が容器の最大容積Vとみなされる。図1の容器3の場合、本体部3Aは、底面Sを有する直方体状の形状を有しており、底面Sの面積及び高さHから、容器3の最大容積Vを計算することができる。
【0015】
吸水性樹脂粒子を含む粉体が振とうのために収容される容器の最大容積は、特に制限されないが、例えば10mL~2000Lであってもよい。振とうされる吸水性樹脂粒子の総質量は、特に制限されないが、例えば10g~2000kgであってもよい。
【0016】
振とうされる間に粉体が受ける加速度の最大値が、0.050~4.0Gであってもよい。加速度がこの範囲内にあると、荷重下吸水量がより顕著に向上する傾向がある。同様の観点から、加速度の最大値は、0.10~3.0G、0.30~2.5G、0.5~2.5G又は1.0G~2.5Gであってもよい。加速度の最大値は、振とうのための振動の振幅及び周波数に基づいて計算することができる。
【0017】
吸水性樹脂粒子を含む粉体を振とうする時間(振とう時間)は、吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量が向上する長さであればよいが、例えば10分以上、20分以上又は30分以上であってもよく、24時間以下であってもよい。容器内に収容された粉体を、連続的に振とうし続ける必要はなく、途中で振とうを1回以上停止しながら、粉体を断続的に振とうしてもよい。吸水性樹脂粒子を含む粉体を断続的に振とうする場合、振とう時間の合計が上記範囲であればよい。
【0018】
振とう後の吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量は、例えば15~30g/gであってもよい。振とう前の吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量に対する、振とう後の吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量の割合が、103%以上、105%以上、又は110%以上であってもよく、150%以下であってもよい。ここでの荷重下吸水量は、後述の実施例に記載の方法によって測定される値である。
【0019】
吸水性樹脂粒子は、特に限定されないが、エチレン性不飽和単量体を単量体単位として含む重合体を含む粒子であってもよい。エチレン性不飽和単量体は、水溶性の単量体であってもよく、その例としては、(メタ)アクリル酸及びその塩、2-(メタ)アクリルアミド-2-メチルプロパンスルホン酸及びその塩、(メタ)アクリルアミド、N,N-ジメチル(メタ)アクリルアミド、2-ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、N-メチロール(メタ)アクリルアミド、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノエチル(メタ)アクリレート、N,N-ジエチルアミノプロピル(メタ)アクリレート、並びにジエチルアミノプロピル(メタ)アクリルアミドが挙げられる。エチレン性不飽和単量体は、単独で用いられてもよく、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。エチレン性不飽和単量体がカルボキシル基、アミノ基等の官能基を有する場合、それらは重合体を架橋させる官能基として機能し得る。吸水性樹脂粒子は、(メタ)アクリル酸又は(メタ)アクリル酸の塩のうち少なくとも一方を単量体単位として含む重合体を含む粒子であってもよい。
【0020】
吸水性樹脂粒子を構成する重合体は、架橋重合体であってもよい。この場合、重合体は、自己架橋、架橋剤との反応による架橋、又はこれらの両方によって架橋されていてもよい。吸水性樹脂粒子が、少なくともその表層部分の重合体を架橋剤で架橋することによって表面架橋されていてもよい。表面架橋された吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量は、振とうによってより大きく向上し得る。表面架橋のための架橋剤を表面架橋剤ということがある。
【0021】
架橋剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、トリメチロールプロパン、グリセリン、ポリオキシエチレングリコール、ポリオキシプロピレングリコール、ポリグリセリン等のポリオール;(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールジグリシジルエーテル、及び(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル等の2個以上のエポキシ基を有する化合物;エピクロルヒドリン、エピブロムヒドリン、及びα-メチルエピクロルヒドリン等のハロエポキシ化合物;2,4-トリレンジイソシアネート、及びヘキサメチレンジイソシアネート等の2個以上のイソシアネート基を有する化合物;1,2-エチレンビスオキサゾリン等のオキサゾリン化合物;エチレンカーボネート等のカーボネート化合物;並びに、ビス[N,N-ジ(β-ヒドロキシエチル)]アジプアミド等のヒドロキシアルキルアミド化合物が挙げられる。架橋剤が、(ポリ)エチレングリコールジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリンジグリシジルエーテル、(ポリ)グリセリントリグリシジルエーテル、(ポリ)プロピレングリコールポリグリシジルエーテル、及びポリグリセロールポリグリシジルエーテル等のポリグリシジル化合物を含んでいてもよい。これらの架橋剤は、単独で用いられてもよいし、2種以上を組み合わせて用いられてもよい。
【0022】
吸水性樹脂粒子は、エチレン性不飽和単量体の重合体に加えて、各種の追加の成分を含んでいてもよい。追加の成分の例としては、ゲル安定剤、金属キレート剤、及び流動性向上剤(滑剤)が挙げられる。追加の成分は、重合体を含む重合体粒子の内部、重合体粒子の表面上、又はそれらの両方に配置され得る。追加の成分は、流動性向上剤(滑剤)であってもよい。流動性向上剤は、無機粒子を含んでいてもよい。無機粒子としては、例えば、非晶質シリカ等のシリカ粒子が挙げられる。
【0023】
吸水性樹脂粒子の形状は、特に限定されず、例えば略球状、破砕状又は顆粒状であってもよく、これらの形状を有する一次粒子が凝集した粒子が形成されていてもよい。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は、250~850μm、300~700μm、又は、300~600μmであってよい。
【0024】
吸水性樹脂粒子は、例えば、エチレン性不飽和単量体を含む単量体を重合することを含む方法によって、エチレン性不飽和単量体を単量体単位として含む重合体を含む吸水性樹脂粒子を得る工程と、上述の実施形態に係る方法によって吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を向上させる工程とを含む方法によって、製造することができる。単量体の重合方法は、例えば、逆相懸濁重合法、水溶液重合法、バルク重合法、及び沈殿重合法から選択され得る。吸水性樹脂粒子の良好な吸水特性の確保、及び、重合反応の容易な制御の観点から、逆相懸濁重合法又は水溶液重合法を採用してもよい。重合中又は重合後の架橋反応、粉砕による粒子形成、乾燥等の工程は、必要により通常の方法によって実施することができる。重合及び乾燥後の粒子と表面架橋剤との反応によって、表面架橋された吸水性樹脂粒子を得ることができる。
【0025】
荷重下吸水量が向上した吸水性樹脂粒子を用いて、おむつ等の各種の吸収性物品を製造することができる。
【実施例
【0026】
以下、実施例を挙げて本発明についてさらに具体的に説明する。ただし、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0027】
1.測定方法
1-1.吸水性樹脂粒子からなる粉体の固めかさ密度
粉体特性評価装置(ホソカワミクロン株式会社製、型番:PT-X)を用いて、吸水性樹脂粒子からなる粉体の固めかさ密度を以下の手順で測定した。固めかさ密度の測定は室温(25℃±2℃)、湿度50%±10%の条件で行った。
カップ状の容器(容積100mL、内径約50mm、高さ約50mm)の空状態での質量W0を測定した。次に、容器の上部に、円筒状のキャップ(内径約51mm、高さ約51mm)を取り付けた。キャップの上方開口部から、100gの粉体を、装置附属のスコップによって容器に入れた。続いて、容器をタッピングリフトバー(タッピング装置)に載せ、ストローク18mmの180回のタッピングによって、容器内の粉体に衝撃を加えた。その後、キャップを外してから、容器の上方開口部から盛り上がった部分の粉体を、ブレードで擦り切ることにより除去した。続いて、粉体を含む容器の質量W1を測定した。質量W0及び質量W1に基づき、下記式より固めかさ密度を求めた。固めかさ密度を計3回測定し、その平均値を吸水性樹脂粒子からなる粉体の固めかさ密度D[g/mL]として記録した。
固めかさ密度[g/mL]=(W1[g]-W0[g])/100[mL]
【0028】
1-2.理論充填率
吸水性樹脂粒子からなる粉体をチャック付きポリエチレン袋に入れたときの理論充填率を、下記式により求めた。
理論充填率[%]={(X[g]/D[g/mL])/V[mL]}×100
式中、Xは粉体の質量、Dは粉体の固めかさ密度、Vはポリエチレン袋の容量である。ポリエチレン袋にチャックを閉じた状態で充填可能な最大量の純水の体積を測定し、これをポリエチレン袋の最大容積とみなした。
【0029】
1-3.荷重下吸水量(荷重:4.14kPa)
荷重下吸水量の測定は室温(25℃±2℃)、湿度50%±10%の条件で行った。図2は、荷重下吸水量を測定する方法を示す模式図である。内径12cmのシャーレ17内にガラスフィルター19(直径9cm、厚み7mm、規格:ISO4793、P-250)を置いた。続いてシャーレ17に生理食塩水20をガラスフィルター19の高さまで入れた。質量X[g]の吸水性樹脂粒子からなる粉体1を、端部に255メッシュのボルティングクロス(ナイロンメッシュ)13を装着したシリンダー11(内径2.0cm:外径3.0cm:高さ5.0cm)内に均一に入れた。ここでのXは、0.1000±0.0005gとした。シリンダー内の粉体1の上に、粉体1に4.14kPaの圧力が加わる質量を有する円筒状の重り15を置いた。重り15はシリンダー内径よりわずかに小さい外径を有しており、シリンダ内を上下方向にスムーズに動ける。この状態で全体の質量W1[g](粉体1、シリンダー11、ボルティングクロス13及び重り15の合計質量)を測定した。粉体1及び重り15が収容されたシリンダー11を、シャーレ17内のガラスフィルター19上に置き、1時間かけて粉体1を生理食塩水20で膨潤させた。膨潤後の粉体1、シリンダー11、ボルティングクロス13及び重り15の合計質量W2[g]を測定した。吸水性樹脂粒子からなる粉体の乾燥滅量A[%]も後述の方法により別途測定した。下式により荷重下吸水量を算出した。
荷重下吸水量[g/g]=(W2-W1)/{X×(100-A)/100}
荷重下吸水量を5回測定し、得られた測定値の平均値を、吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量として記録した。この方法によれば、荷重下吸水量は、乾燥減量の変化による測定値への影響を除去して測定される。そのため、乾燥減量が増加又は減少する場合においても荷重下吸水量の数値を比較することができる。
【0030】
1-4.乾燥減量
吸水性樹脂粒子からなる粉体2.0gを、あらかじめ恒量(W3(g))としたアルミホイールケース(8号)にとり、その質量W4(g)を精秤した。精秤された粉体を、内温を105℃に設定した熱風乾燥機(ADVANTEC社製、型式:FV-320)で2時間乾燥させた。粉体をデシケーター中で放冷した後、その質量W5(g)を乾燥質量として測定した。以下の式から、吸水性樹脂粒子の乾燥減量を算出した。
乾燥減量(質量%)=[{(W4-W3)-(W5-W3)}/(W4-W3)]×100
【0031】
2.吸水性樹脂粒子
実施例1
住友精化株式会社製のアクアキープSA60SXII(商品名、ポリアクリル酸ナトリウムを含む粒子)を、実施例1の吸水性樹脂粒子として準備した。
【0032】
実施例2
還流冷却器、滴下ロート、窒素ガス導入管、及び、攪拌機として、翼径5cmの4枚傾斜パドル翼を2段で有する攪拌翼を備えた内径11cm、2L容の丸底円筒型セパラブルフラスコを準備した。このフラスコに、n-ヘプタン293g、及び分散剤として無水マレイン酸変性エチレン・プロピレン共重合体(三井化学株式会社製、ハイワックス1105A)0.736gを混合した。セパラブルフラスコ内の混合物を攪拌機で攪拌しつつ、80℃まで昇温することにより、分散剤をn-ヘプタンに溶解させた。形成された溶液を50℃まで冷却した。
【0033】
内容積300mLのビーカーに、水溶性エチレン性不飽和単量体として80.5質量%のアクリル酸水溶液92.0g(1.03モル)を入れ、外部より冷却しつつ、20.9質量%の水酸化ナトリウム水溶液147.7gをビーカー内に滴下することにより、75モル%の中和を行った。その後、増粘剤としてヒドロキシルエチルセルロース0.092g(住友精化株式会社、HEC AW-15F)と、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.092g(0.339ミリモル)及び過硫酸カリウム0.018g(0.067ミリモル)と、内部架橋剤としてのエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0046g(0.026ミリモル)とを加えて溶解することにより、第1段目の水性液を調製した。
【0034】
第1段目の水性液を、上記セパラブルフラスコ内の分散剤を含むn-ヘプタン溶液に添加し、形成された反応液を10分間攪拌した。そこに、n-ヘプタン6.62gに界面活性剤であるショ糖ステアリン酸エステル(三菱化学フーズ株式会社、リョートーシュガーエステルS-370、HLB:3)0.736gが溶解した界面活性剤溶液を更に加え、攪拌機の回転数を550rpmとして反応液を攪拌しながら系内を窒素で十分に置換した。その後、セパラブルフラスコを70℃の水浴に浸漬して反応液を昇温し、60分間重合反応を進行させることにより、第1段目の重合スラリー液を得た。
【0035】
別の内容積500mLのビーカーに、濃度80.5質量%のアクリル酸水溶液128.8g(1.44モル)を入れた。そこに、外部より冷却しつつ、濃度27質量%の水酸化ナトリウム水溶液159.0gを滴下して、75モル%のアクリル酸を中和した。中和後のアクリル酸水溶液ビーカーに、ラジカル重合開始剤として2,2’-アゾビス(2-アミジノプロパン)2塩酸塩0.129g(0.476ミリモル)及び過硫酸カリウム0.026g(0.096ミリモル)と、内部架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル0.0116g(0.067ミリモル)とを加えてこれらを溶解することにより、第2段目の水性液を調製した。
【0036】
攪拌機の回転数を1000rpmとして攪拌しながら、上記のセパラブルフラスコ内の第1段目の重合スラリー液を25℃に冷却し、そこに第2段目の水性液の全量を加えた。セパラブルフラスコ内を窒素で30分間置換した後、再度、セパラブルフラスコを70℃の水浴に浸漬して反応液を昇温し、60分の第2段目の重合反応により、含水ゲル状重合体を得た。
【0037】
第2段目の重合後の含水ゲル状重合体に、45質量%のジエチレントリアミン5酢酸5ナトリウム水溶液0.589gを攪拌下で添加した。その後、セパラブルフラスコを125℃に設定した油浴に浸漬し、n-ヘプタンと水との共沸蒸留により216.7gの水を系外へ抜き出した。次いで、セパラブルフラスコに表面架橋剤としてエチレングリコールジグリシジルエーテル(0.507ミリモル)を含む濃度2質量%の水溶液4.42gを添加し、温度を83℃で2時間保持した。
【0038】
その後、125℃での乾燥によりn-ヘプタンを除去することによって、重合体粒子(乾燥品)を得た。この重合体粒子を目開き850μmの篩に通過させてから、重合体粒子の質量に対して0.2質量%の非晶質シリカ(オリエンタルシリカズコーポレーション、トクシールNP-S)を重合体粒子と混合することにより、非晶質シリカを含む吸水性樹脂粒子を229.0g得た。吸水性樹脂粒子の中位粒子径は348μmであった。
【0039】
実施例3
大王製紙株式会社製のおむつ「GOO.Nパンツ まっさらさら通気 男の子用 Lサイズ」(2019年購入)の吸収体から採取した吸水性樹脂粒子(不定形破砕状)を、実施例3の吸水性樹脂粒子として用いた。吸収体中の吸水性樹脂粒子はパルプと混合されていたため、エアー噴射によってパルプを出来るだけ取り除いた。
【0040】
3.振とう試験
試験1
各吸水性樹脂粒子からなる粉体を、チャック付のポリエチレン袋(チャック内側のサイズ:70mm×50mm、厚さ0.04mm、容量35mL)に充填した。充填される粉体の量を、100%、90%、80%、70%又は60%の理論充填率に相当する量とした。
粉体が充填されたポリエチレン袋を、目開き850μmのJIS標準篩の上に載せた。次いでその標準篩を、振動強度を7に設定した電磁振動式ふるい振とう機オクタゴン200(endecotts社製)を用いて30分間、垂直運動を含む振動を与えることにより、粉体を30分間振とうした。振動強度7の場合、粉体が受ける加速度の計算値は最大で2.2Gである。振とう後の吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を測定した。比較のため、振とう前の吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量も測定した。
表1は、各吸水性樹脂粒子からなる粉体の固めかさ密度、及び各理論充填率に相当する粉体(吸水性樹脂粒子)の量を示す。
【0041】
【表1】
【0042】
表2に荷重下吸水量の測定結果が示される。括弧内の数値は乾燥減量である。いずれの吸水性樹脂粒子の場合も、振とうによって荷重下吸水量が向上することが確認された。
【0043】
【表2】
【0044】
試験2
振とう時間を300分に変更したこと以外は試験1と同様にして、理論充填率90%でポリエチレン袋に充填された実施例1~3の吸水性樹脂粒子の粉体を振とうした。実施例2の吸水性樹脂粒子については、2時間の振とう、1時間の静置、2時間の振とう、1時間の静置、及び1時間の振とうの順に振とうと静置を繰り返し、合計で300分振とうする断続的な振とう試験も行った。振とう後の吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を測定した。表3に、試験1の結果の一部とともに評価結果が示される。括弧内の数値は乾燥減量である。
【0045】
【表3】
【0046】
試験3
ふるい振とう機の振動強度を1、3又は10に変更したこと以外は試験1と同様にして、理論充填率90%でポリエチレン袋に充填された実施例2の吸水性樹脂粒子からなる粉体を振とうした。振とう後の吸水性樹脂粒子の荷重下吸水量を測定した。表4に、試験1の結果の一部とともに評価結果が示される。括弧内の数値は乾燥減量である。表4には各振動強度の場合に粉体が受ける加速度の計算値(最大値)も示される。
【0047】
【表4】
【符号の説明】
【0048】
1…吸水性樹脂粒子を含む粉体、3…容器、5…支持体。
図1
図2