(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-11
(45)【発行日】2024-09-20
(54)【発明の名称】アンモニア冷却システムおよびアンモニア冷却方法
(51)【国際特許分類】
B63B 25/16 20060101AFI20240912BHJP
B63H 21/38 20060101ALI20240912BHJP
F25B 19/00 20060101ALI20240912BHJP
F25B 1/00 20060101ALI20240912BHJP
【FI】
B63B25/16 G
B63H21/38 C
B63B25/16 A
F25B19/00 A
F25B1/00 396R
(21)【出願番号】P 2022143374
(22)【出願日】2022-09-09
【審査請求日】2024-01-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000005902
【氏名又は名称】株式会社三井E&S
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 聡一郎
(72)【発明者】
【氏名】小菅 靖雄
【審査官】宇佐美 琴
(56)【参考文献】
【文献】登録実用新案第3234399(JP,U)
【文献】特開2011-196607(JP,A)
【文献】国際公開第2020/050404(WO,A1)
【文献】特開平06-341598(JP,A)
【文献】特表2021-517878(JP,A)
【文献】特開2023-124764(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2016/0215930(US,A1)
【文献】韓国登録特許第10-2335454(KR,B1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B63B 25/16
B63H 21/38
F25B 1/00,19/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
燃料又は貨物として、液化アンモニアを搭載する船舶に接続される、余剰アンモニアの冷却システムであって、
前記冷却システムは、第1減圧部と熱交換部を備え、
前記第1減圧部は、前記船舶の有する主機関部の燃料として供給される、燃料アンモニアの一部を減圧し、
前記熱交換部は、減圧された前記燃料アンモニアを冷媒として、前記余剰アンモニアを冷却する、
アンモニア冷却システム。
【請求項2】
前記アンモニア冷却システムは、第2減圧部をさらに備え、
前記第2減圧部は、前記熱交換部の前段で前記余剰アンモニアを減圧する、
請求項
1に記載のアンモニア冷却システム。
【請求項3】
前記アンモニア冷却システムは、第3減圧部をさらに備え、
前記第3減圧部は、前記熱交換部の後段で、前記熱交換部で冷却された余剰アンモニアをさらに減圧する、
請求項
2に記載のアンモニア冷却システム。
【請求項4】
燃料又は貨物として、液化アンモニアを搭載する船舶における余剰アンモニアの冷却方法であって、
前記冷却方法は、第1減圧ステップと熱交換ステップを備え、
前記第1減圧ステップは、前記船舶の有する主機関部の燃料として供給される、燃料アンモニアの一部を減圧し、
前記熱交換ステップは、減圧された前記燃料アンモニアを冷媒として、前記余剰アンモニアを冷却する、
アンモニア冷却方法。
【請求項5】
前記アンモニア冷却方法は、第2減圧ステップをさらに備え、
前記第2減圧ステップは、前記熱交換ステップの前段で、前記余剰アンモニアを減圧する、
請求項
4に記載のアンモニア冷却方法。
【請求項6】
前記アンモニア冷却方法は、第3減圧ステップをさらに備え、
前記第3減圧ステップは、前記熱交換ステップの後段で、前記熱交換ステップで冷却された余剰アンモニアをさらに減圧する、
請求項
5に記載のアンモニア冷却方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、アンモニア冷却システムおよびアンモニア冷却方法に関する。
【背景技術】
【0002】
船舶は、重油や天然ガス等の化石燃料をエンジンの燃料として利用しているが、昨今のカーボンニュートラルの潮流から、水素やアンモニア等のカーボンレスなエネルギー源を燃料とする船舶の開発が進められている。その中でも、高い体積エネルギー密度と、貯蔵および輸送の容易性から、船舶の燃料として液化アンモニアが有力視されている。
【0003】
しかし、アンモニアは有毒物質であるためそのまま大気へ放出することができず、また、アンモニアは化石燃料に比べ高価であるため、燃料等用途のアンモニアのうち余剰分を回収して再利用することが検討されている。
【0004】
特許文献1には、メインエンジンからリターンされる気体状態のアンモニアを、海水を利用して冷却する船舶用燃料供給システムが開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、海水は海域や季節等によって海水温が変動するため、海水を冷熱源として利用した場合、余剰アンモニアを安定的に冷却することができない。また、液化アンモニアを貯蔵するタンクの冷熱を活用する手段では、特にエンジン起動時において、低温の液化アンモニアの燃料利用における事前の昇温プロセスへ活用するため、温度調整のタイムラグが生じ得る。
【0007】
上記事情に鑑み、本発明は、燃料又は貨物として液化アンモニアを搭載する船舶において、余剰アンモニアを安定的に冷却し得るアンモニア冷却システムおよびアンモニア冷却方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明の第1の観点は、燃料又は貨物として、液化アンモニアを搭載する船舶に接続される、余剰アンモニアの冷却システムであって、
前記冷却システムは、第1減圧部と熱交換部を備え、
前記第1減圧部は、前記船舶の有する主機関部の燃料として供給される、燃料アンモニアの一部を減圧し、
前記熱交換部は、減圧された前記燃料アンモニアを冷媒として、前記余剰アンモニアを冷却する、
アンモニア冷却システムである。
【0009】
また、本発明の第2の観点は、燃料又は貨物として、液化アンモニアを搭載する船舶における余剰アンモニアの冷却方法であって、
前記冷却方法は、第1減圧ステップと熱交換ステップを備え、
前記第1減圧ステップは、前記船舶の有する主機関部の燃料として供給される、燃料アンモニアの一部を減圧し、
前記熱交換ステップは、減圧された前記燃料アンモニアを冷媒として、前記余剰アンモニアを冷却する、
アンモニア冷却方法である。
【0010】
本発明のアンモニア冷却システムおよびアンモニア冷却方法によれば、燃料又は貨物として液化アンモニアを搭載する船舶において、余剰アンモニアを安定的に冷却し得るアンモニア冷却システムおよびアンモニア冷却方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について、図を参照しながら詳細に説明する。以下に示す実施形態中で示した各種特徴事項は、互いに組み合わせ可能である。
【0013】
図1は、アンモニア冷却システム1の全体図を示す。アンモニア冷却システム1は、主として、減圧部11と、熱交換部21を備える。減圧部11は、熱交換部21で冷媒として用いられる液化アンモニアを、熱交換部21に供給される前段で所定の圧力まで調整する。熱交換部21は、減圧部11にて圧力を調整した液化アンモニアを冷媒として、当該液化アンモニアの気化熱を利用して余剰アンモニアを冷却する。そして、冷媒として利用された液化アンモニアは、アンモニアガスおよび気化しなかった液化アンモニアとして熱交換部21から排出される。
【0014】
減圧部11は、圧力調整器といった減圧弁を採用することができるが、これに限られない。減圧部11で液化アンモニアを所定の圧力に調整するにあたって、目的とする圧力である操作圧力は、冷却対象である余剰アンモニアの状態、流量、圧力、および温度等により適宜設定される。
【0015】
熱交換部21は、多管式熱交換器、プレート式熱交換器、スパイラル式熱交換器等を採用することが考えられるが、これに限られず、
図2や
図3に示すような、分散器具として内部に螺旋板や入口にミキサー等が設けられ、横向きに複数本のチューブラを保持した多段型反応器を採用することもできる。
【0016】
<第1の実施形態>
上述の通り、海水を利用したアンモニアの冷却システムは知られているが、海水の温度は船舶の航行区域によって変動するため、安定した冷却能が得られない場合がある。
また、燃料又は貨物として、液化アンモニアを搭載する船舶においては、液化アンモニアタンクの冷熱を利用する手段が考えられるが、特にエンジン起動時において、低温の液化アンモニアの燃料利用における事前の昇温プロセスへ活用するため、温度調整のタイムラグが生じ得る。
【0017】
そこで、液化アンモニアの気化熱を利用したアンモニア冷却システム1が考えられる。利用する液化アンモニアの温度は、タンク内に貯蔵されているものであるため変動が少なく冷媒として安定しており、また、液化アンモニアの気化熱を利用する場合、海水を利用する場合に比べ高い冷却能を有するため、熱交換部11をコンパクトにすることが可能となる。
【0018】
図4は、アンモニアを燃料とする推進機関(以下、主機関という。)を搭載した船舶における、アンモニア冷却システム1の構成図を示す。
【0019】
燃料タンク31に貯留される、主として主機関35の燃料として利用される液化アンモニアは、1次タンク32に一部貯留され、高圧ポンプ33を介して主機関35へ供給される。
【0020】
1次タンクから供給された液化アンモニアは高圧ポンプ33において昇圧され、その圧力は、4.0MPaから12.0MPaであり、より好ましくは6.0MPaから10.0MPaである。
【0021】
主機関35に供給された燃料アンモニアのうち、燃料として利用されなかった一部の液化アンモニアが、余剰アンモニアとして、後段に設けられた熱交換部21へ供給される。
【0022】
前述の高圧ポンプ33で圧力調整された液化アンモニアの一部は、減圧部11で所定の圧力へ調整された後、冷媒として熱交換部21へ供給される。高圧ポンプ33の種類は特に限定されないが、アンモニア漏洩防止の観点から、好ましくはキャンドモーターポンプが採用され、当該ポンプのモータ冷却用として利用した高圧液化アンモニアの一部を有効活用することができる。ここで、モータ冷却用として利用した高圧液化アンモニアの圧力は、1.0MPaから3.5MPaであり、より好ましくは、1.5MPaから3.0MPaである。なお、他の種類の高圧ポンプにおいても、圧力調整または流量調整のために燃料として供給されなかった高圧液化アンモニアの一部を有効活用することができる。
【0023】
また、減圧部11における液化アンモニアの圧力は、0.1MPaから1.0MPaであり、より好ましくは0.4MPaから0.6MPaである。
【0024】
熱交換部21へ供給された余剰アンモニアは、冷媒として熱交換部21へ供給された液化アンモニアの気化熱を利用して冷却され、液体状態で燃料タンク31または1次タンク32へ供給される。そして、冷媒として利用された液化アンモニアは、熱交換部21を介して、一部がアンモニアガスとなる。このとき、アンモニアガスは後段に設けられた再液化装置36にて液化させることで、再度燃料等として利用することが可能となる。また、熱交換部21で気化しなかった、冷媒として利用された液化アンモニアの残液は、高圧ポンプ34を介して、所定の圧力で1次タンク32へ供給される。
【0025】
<その他の実施形態>
図5に示すように、余剰アンモニアの排出源である主機関と熱交換部21との間に、減圧部12がさらに設けられても良い。
【0026】
冷却対象である余剰アンモニアを、熱交換部21へ供給される前段で所定圧力に調整することで、熱交換部21の設計圧力を下げ、装置のコンパクト化とコストダウンが可能となる。
【0027】
また
図6に示すように、熱交換部21と燃料タンク31との間に、減圧部13がさらに設けられても良い。
【0028】
主機関35で燃料として利用されなかった余剰アンモニアは、主機関における燃焼熱により供給前の温度よりも高温となる。そのため、減圧部12において、当該余剰アンモニアを一定以上減圧した場合、余剰アンモニアは気液混合状態となり、熱交換部21における冷熱源が大量に必要となる。そこで、減圧部12において、余剰アンモニアが液体状態を維持できる圧力まで調整し、熱交換部21を経過後、減圧部13でさらに圧力を調整することで、減圧部13から燃料タンク31までの配管に要求される耐圧性能が緩和され、当該配管のコストダウンが可能となる。
【0029】
また、本発明の別の観点は、アンモニア冷却方法であって、上記アンモニア冷却システムの各ステップは、上記アンモニア冷却システムの実行により行われる。
【0030】
本実施形態の方法では、燃料又は貨物として液化アンモニアを搭載する船舶において、海水を冷媒として利用した場合に比べ、余剰アンモニアを安定的に、かつ、高い冷却能をもって冷却することができる。
【0031】
なお、上述の実施形態は例として示したものであり、発明の範囲を限定することは意図しておらず、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。当該実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
【符号の説明】
【0032】
1、2、3 アンモニア冷却システム
11、12、13 減圧部
21 熱交換部
31 燃料タンク
32 1次タンク
33、34 高圧ポンプ
35 主機関
36 再液化装置