(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】ウェーハチャック、温度制御システム及び温度制御方法
(51)【国際特許分類】
H01L 21/66 20060101AFI20240913BHJP
G01N 25/00 20060101ALI20240913BHJP
H01L 21/02 20060101ALI20240913BHJP
H01L 21/683 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H01L21/66 B
G01N25/00 P
H01L21/02 Z
H01L21/66 H
H01L21/68 N
(21)【出願番号】P 2023076050
(22)【出願日】2023-05-02
【審査請求日】2024-07-12
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000151494
【氏名又は名称】株式会社東京精密
(74)【代理人】
【識別番号】100140992
【氏名又は名称】松浦 憲政
(74)【代理人】
【識別番号】100170069
【氏名又は名称】大原 一樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128635
【氏名又は名称】松村 潔
(74)【代理人】
【識別番号】100083116
【氏名又は名称】松浦 憲三
(72)【発明者】
【氏名】高橋 武孝
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-212199(JP,A)
【文献】特開2002-170775(JP,A)
【文献】特開平03-196206(JP,A)
【文献】特開2005-340291(JP,A)
【文献】特開2005-337750(JP,A)
【文献】特開2019-066286(JP,A)
【文献】特開昭62-096831(JP,A)
【文献】特開昭60-213834(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0136436(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
H01L 21/02-21/48
H01L 21/67-21/687
G01R 31/26-31/3193
G01N 25/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ウェーハを保持する保持面を有するウェーハチャックであって、
前記ウェーハチャックを加熱又は冷却する加熱冷却部と、
前記ウェーハチャックに配置された少なくとも1つの温度センサと、
前記ウェーハチャックに配置され、複数の熱電対を直列に接続して、且つ互いに隣接する前記熱電対の接続部分が、前記保持面から第1深さ位置と、前記第1深さ位置よりも深い第2深さ位置と、に交互に配置されている熱流センサと、
を備え、
前記温度センサが、前記ウェーハチャックにおける前記ウェーハの発熱部分に対応した部分を対応部分とした場合に、前記対応部分での前記第2深さ位置の温度である基準温度の測定に用いられ、
前記熱流センサは、前記熱電対毎に設けられた複数の測温点を有し、前記ウェーハチャックを平面視した場合に、前記複数の測温点が前記ウェーハチャックの全体にわたって配置され
ており、前記対応部分での前記第1深さ位置と前記第2深さ位置との上下温度差の測定に用いられる、ウェーハチャック。
【請求項2】
複数の前記温度センサが分散して配置されている請求項1に記載のウェーハチャック。
【請求項3】
請求項1に記載の前記ウェーハチャックと、
前記温度センサの検出結果と前記熱流センサの検出結果とに基づいて、
前記対応部分又は前記発熱部分の温度を制御温度
として算出する温度制御部と、
を備える温度制御システム。
【請求項4】
前記温度制御部が、
前記温度センサの検出結果に基づいて、
前記基準温度を検出する処理と、
前記熱流センサの検出結果に基づいて、
前記上下温度差を算出する処理と、
前記基準温度と前記上下温度差とに基づいて、前記対応部分の温度である発熱部測温点の温度を前記制御温度として算出する処理と、
を実行する請求項3に記載の温度制御システム。
【請求項5】
前記温度制御部が、
前記温度センサの検出結果に基づいて、
前記基準温度を検出する処理と、
前記熱流センサの検出結果に基づいて、
前記上下温度差を算出する処理と、
前記基準温度と、前記上下温度差と、前記ウェーハ及び前記ウェーハチャックの物性値及び寸法を含むデータと、に基づいて、
前記発熱部分の温度であるデバイス温度を前記制御温度として算出する処理と、
を実行する請求項3に記載の温度制御システム。
【請求項6】
前記ウェーハチャックには、複数の前記温度センサが分散して配置され、
前記温度制御部が、複数の前記温度センサがそれぞれ検出した温度から、最も低い温度、平均もしくは中央値を前記基準温度として検出する請求項4又は5に記載の温度制御システム。
【請求項7】
請求項1に記載の前記ウェーハチャックの温度を制御する温度制御方法において、
少なくとも1つの前記温度センサが前記ウェーハチャックの
前記基準温度を検出する基準温度検出ステップと、
前記熱流センサが、前記保持面に保持された前記ウェーハの部分的な発熱により生じた熱流を検出する熱流検出ステップと、
前記熱流検出ステップの検出結果に基づいて前記上下温度差を算出して、前記基準温度検出ステップで検出した前記基準温度と、前記上下温度差とに基づいて
前記対応部分又は前記発熱部分の温度を制御温度
として算出する温度制御ステップと、
を含む温度制御方法。
【請求項8】
前記温度制御ステップが、
前記基準温度と前記上下温度差とに基づいて、前記対応部分の温度である発熱部測温点の温度を前記制御温度として算出する処理
を含む請求項7に記載の温度制御方法。
【請求項9】
前記温度制御ステップが、
前記基準温度と、前記上下温度差と、前記ウェーハ及び前記ウェーハチャックの物性値及び寸法を含むデータと、に基づいて、
前記発熱部分の温度であるデバイス温度を前記制御温度として算出する処理
を含む請求項7に記載の温度制御方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ウェーハチャック、温度制御システム及び温度制御方法に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体製造工程では、半導体ウェーハに各種の処理を施して、半導体デバイスをそれぞれ有する複数のチップ(ダイ)を形成する。各チップは電気的特性が検査され、その後ダイサで分断された後、リードフレーム等に固定されて組み立てられる。電気的特性の検査は、プローバとテスタで構成されるウェーハテストシステムにより行われる。プローバは、ウェーハをウェーハチャックに固定し、各チップの電極パッドにプローブを接触させる。テスタは、プローブに接続される端子から、電源及び各種の試験信号を供給し、チップの電極に出力される信号を解析して、検査対象のチップの半導体デバイスが正常に動作するかを確認する。
【0003】
プローバでは、電気的特性の検査時の温度を設定された温度にし、且つ一定に維持する必要がある。そのため、ウェーハチャックは、検査対象のチップの半導体デバイス(測定デバイス)の発熱に対して、その温度や発熱量を検知するために、測温抵抗体や熱電対式温度センサ等の温度センサを設置し、温度センサの検出結果に基づいてウェーハチャックの温度制御が行われる。
【0004】
例えば、特許文献1に開示されたプローバは、ウェーハチャック(プローバチャック)に複数の温度センサを配設し、複数の温度センサの中から検査対象となる測定デバイスに最も近い温度センサの検出結果に基づいてウェーハチャックの温度制御を行っている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、特許文献1に開示されたプローバにおいて、測定デバイスの発熱部分に対応するウェーハチャックの温度を正確に測定するためには、ウェーハチャックに設置する温度センサの数を多くする必要がある。しかしながら、ウェーハチャック内部の構造的な制限から、その設置数や設置位置に制限があり、多くの温度センサを理想的な位置に組み込むことが困難である。また、多くの温度センサを設置した場合、温度センサの信号線のセットは温度センサの数だけ必要になり、その配線処理が非常に困難となる。
【0007】
特に、測定デバイスが、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、APU(Accelerated Processing Unit)等のSoC(System On Chip)系のデバイスである場合には、メモリデバイスと比べて、局部的に熱密度の大きい発熱となる。そのため、多くの温度センサをウェーハチャックに設置できない場合、測定デバイスの発熱に対してウェーハチャックの温度を適切に制御することが困難となる。
【0008】
本発明は、このような事情に鑑みてなされたもので、設置する温度センサの数を多くすることなくウェーハの発熱部分に対応するウェーハチャックの温度測定が可能なウェーハチャックと、ウェーハチャックの温度を適切に制御することができる温度制御システム及び温度制御方法と、を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の目的を達成するためのウェーハチャックは、ウェーハを保持する保持面を有するウェーハチャックであって、ウェーハチャックを加熱又は冷却する加熱冷却部と、ウェーハチャックに配置された少なくとも1つの温度センサと、ウェーハチャックに配置され、複数の熱電対を直列に接続して、且つ互いに隣接する熱電対の接続部分が、保持面から第1深さ位置と、第1深さ位置よりも深い第2深さ位置と、に交互に配置されている熱流センサと、を備え、熱流センサは、熱電対毎に設けられた複数の測温点を有し、ウェーハチャックを平面視した場合に、複数の測温点がウェーハチャックの全体にわたって配置される。
【0010】
このウェーハチャックによれば、設置する温度センサの数を多くすることなくウェーハの発熱部分に対応するウェーハチャックの温度測定が可能になる。
【0011】
本発明の他の態様に係るウェーハチャックにおいて、複数の温度センサが分散して配置されている。これにより、検査対象のウェーハにおける測定デバイスが発熱した場合に、その発熱による影響を受けない部分におけるウェーハチャックの温度を、複数の温度センサのうちの少なくとも1つで検出することができる。
【0012】
本発明の目的を達成するための温度制御システムは、上述のウェーハチャックと、温度センサの検出結果と熱流センサの検出結果とに基づいて制御温度を算出する温度制御部と、を備える。
【0013】
この温度制御システムによれば、ウェーハチャックに配設する温度センサの数を多くすることなく、ウェーハチャックの温度を適切に制御することができる。
【0014】
本発明の他の態様に係る温度制御システムにおいて、温度制御部が、ウェーハチャックにおけるウェーハの発熱部分に対応した部分を対応部分とした場合に、温度センサの検出結果に基づいて、対応部分での第2深さ位置の温度である基準温度を検出する処理と、熱流センサの検出結果に基づいて、対応部分での第1深さ位置と第2深さ位置との上下温度差を算出する処理と、基準温度と上下温度差とに基づいて、対応部分の温度である発熱部測温点の温度を算出する処理と、発熱部測温点の温度を制御温度として加熱冷却部を制御する処理と、を実行する。これにより、ウェーハチャックに配設する温度センサの数を多くすることなく、ウェーハチャックの温度を適切に制御することができる。
【0015】
本発明の他の態様に係る温度制御システムにおいて、温度制御部が、ウェーハチャックにおけるウェーハの発熱部分に対応した部分を対応部分とした場合に、温度センサの検出結果に基づいて、対応部分での第2深さ位置の温度である基準温度を検出する処理と、熱流センサの検出結果に基づいて、対応部分での第1深さ位置と第2深さ位置との上下温度差を算出する処理と、基準温度と、上下温度差と、ウェーハ及びウェーハチャックの物性値及び寸法を含むデータと、に基づいて、ウェーハの発熱部分の温度であるデバイス温度を算出する処理と、デバイス温度を制御温度として加熱冷却部を制御する処理と、を実行する。これにより、ウェーハチャックに配設する温度センサの数を多くすることなく、ウェーハチャックの温度を適切に制御することができる。
【0016】
本発明の他の態様に係る温度制御システムにおいて、ウェーハチャックには、複数の温度センサが分散して配置され、温度制御部が、複数の温度センサがそれぞれ検出した温度から、最も低い温度、平均もしくは中央値を基準温度として検出する。
【0017】
本発明の目的を達成するための温度制御方法は、上述のウェーハチャックの温度を制御する温度制御方法において、少なくとも1つの温度センサがウェーハチャックの基準温度を検出する基準温度検出ステップと、熱流センサが、保持面に保持されたウェーハの部分的な発熱により生じた熱流を検出する熱流検出ステップと、温度センサの検出結果と、熱流センサの検出結果とに基づいて制御温度を算出する温度制御ステップと、を含む。
【0018】
本発明の他の態様に係る温度制御方法において、基準温度検出ステップでは、ウェーハチャックにおけるウェーハの発熱部分に対応した対応部分での第2深さ位置の温度を基準温度として検出し、温度制御ステップが、熱流検出ステップの検出結果に基づいて、対応部分での第1深さ位置と第2深さ位置との上下温度差を算出する処理と、基準温度と上下温度差とに基づいて、対応部分の温度である発熱部測温点の温度を前記制御温度として算出する処理と、を含む。
【0019】
本発明の他の態様に係る温度制御方法において、基準温度検出ステップでは、ウェーハチャックにおけるウェーハの発熱部分に対応した対応部分での第2深さ位置の温度を基準温度として検出し、温度制御ステップが、熱流検出ステップの検出結果に基づいて、対応部分での第1深さ位置と第2深さ位置との上下温度差を算出する処理と、基準温度と、上下温度差と、ウェーハ及びウェーハチャックの物性値及び寸法を含むデータと、に基づいて、ウェーハの発熱部分の温度であるデバイス温度を前記制御温度として算出する処理と、を含む。
【発明の効果】
【0020】
本発明によれば、設置する温度センサの数を多くすることなくウェーハの発熱部分に対応するウェーハチャックの温度測定が可能になる。また、ウェーハチャックの温度を適切に制御することができる。
【図面の簡単な説明】
【0021】
【
図1】ウェーハテストシステムの全体構成を示した概略図である。
【
図2】第1実施形態の温度制御システムの概略構成図である。
【
図3】ウェーハチャックの内部構造を示す概略平面図及び拡大断面図である。
【
図4】第1実施形態における温度制御装置の構成を示した機能ブロック図である。
【
図5】熱流センサから得られる発熱部分の面積の計算例の概念図である。
【
図6】第1実施形態の温度制御システムにおける温度制御方法の一例を示したフローチャートである。
【
図7】熱流センサが2つのセンサ体で構成される場合の構成例を示した図である。
【
図8】第1変形例に係る温度制御システムの概略構成図である。
【
図9】第2変形例に係る温度制御システムの概略構成図である。
【
図10】第2実施形態における温度制御装置の構成を示した機能ブロック図である。
【
図11】デバイス温度の算出方法を説明するための説明図である。
【発明を実施するための形態】
【0022】
以下、添付図面に従って本発明の好ましい実施の形態について説明する。
【0023】
<ウェーハテストシステム>
図1は、ウェーハテストシステム1の全体構成を示した概略図である。なお、以下では、ウェーハチャック18に平行な面をXY平面とするXYZ直交座標系を用いて説明する。
【0024】
図1に示すウェーハテストシステム1は、ウェーハW上の各チップの電極にプローブ25を接触させるプローバ10と、プローブ25に電気的に接続され、電気的検査のために各チップに電流や電圧を印加し特性を測定するテスタ30とを備える。
【0025】
プローバ10は、基台11と、その上に設けられた移動ベース12と、Y軸移動台13と、X軸移動台14と、Z軸移動回転部15と、ウェーハチャック18と、ウェーハアライメントカメラ19と、支柱20及び21と、ヘッドステージ22と、ヘッドステージ22に取り付けられるプローブカード24とを有する。
【0026】
プローブカード24には、プローブ25が設けられる。なお、プローブ25の位置を検出する針位置合わせカメラや、プローブをクリーニングするクリーニング機構などが設けられるが、ここでは省略している。
【0027】
移動ベース12と、Y軸移動台13と、X軸移動台14と、Z軸移動回転部15とは、ウェーハチャック18を3軸方向に移動し及びZ軸周りに回転する移動回転機構を構成する。移動回転機構については広く知られているので、ここでは説明を省略する。
【0028】
ウェーハチャック18は、複数のチップが形成されたウェーハWを真空吸着により保持する。ウェーハチャック18の上面にはウェーハWを保持する保持面18Aが設けられる。
【0029】
ウェーハチャック18の内部には、チップを高温状態(例えば、最高で150℃)、又は低温状態(例えば最低で-40℃)で電気的特性検査が行えるように、加熱冷却源としての加熱冷却部40が設けられる。加熱冷却部40は、ウェーハチャック18を加熱又は冷却する。加熱冷却部40としては、適宜の加熱器及び又は冷却器を適用することができる。加熱冷却部40としては、例えば、ヒータと冷却板とを組み合わせたもの、ペルチェ素子と冷却板とを組み合わせたもの、面ヒータの加熱層と冷却流体の通路を設けた冷却層との二重層構造にしたもの、熱伝導体内に加熱ヒータを巻き付けた冷却管を埋設した一層構造のなど、様々のものを適用することができる。加熱冷却部40は本発明の加熱冷却部の一例である。
【0030】
ウェーハチャック18は、Z軸移動回転部15の上に取り付けられる。ウェーハチャック18は、上述した移動回転機構により3軸方向(X軸、Y軸、Z軸方向)に移動可能であり、且つZ軸周りの回転方向(θ方向)に回転可能である。
【0031】
ウェーハWが保持されるウェーハチャック18の上方には、プローブカード24が配置される。プローブカード24は、プローバ10の筺体の天板を構成するヘッドステージ22の開口部(プローブカード取付部)に着脱自在に装着される。
【0032】
プローブカード24は、検査するチップの電極配置に応じて配置されたプローブ25を有し、検査するチップに応じて交換される。
【0033】
テスタ30は、テスタ本体31と、テスタ本体31に設けられたコンタクトリング32とを備えている。プローブカード24には、各プローブ25に接続される電極が設けられる。コンタクトリング32は、この電極に接触するように配置されたスプリングプローブを有する。テスタ本体31は、図示していない支持機構により、プローバ10に対して保持される。
【0034】
制御装置90は、制御プログラムを実行することで機能を発揮し、プローバ10全体の動作を制御する。例えば、制御装置90は、上述した移動回転機構(移動ベース12、Y軸移動台13、X軸移動台14、及びZ軸移動回転部15)の移動制御を行う。また、制御装置90は、テスタ30や加熱冷却部40の動作を制御する。なお、制御装置90には、後述する温度制御装置100(
図2参照)が含まれる。
【0035】
<温度制御システム>
次に、本実施形態のプローバ10に組み込まれている温度制御システムについて説明する。なお、温度制御システムは、本発明における温度制御システムの一例である。
【0036】
(第1実施形態)
図2は、第1実施形態の温度制御システム50の概略構成図である。
図3は、ウェーハチャック18の内部構造を示す概略平面図である。
【0037】
図2に示すように、第1実施形態の温度制御システム50は、ウェーハチャック18と、温度制御装置100と、複数の温度センサ52と、熱流センサ54と、冷却板42と、ヒータ44と、から構成されている。冷却板42及びヒータ44は、上述した加熱冷却部40の構成要素である。
【0038】
ウェーハチャック18は、チャックトップ吸着板28を備えている。チャックトップ吸着板28は、ウェーハチャック18の上側(ウェーハWが配置される側)の部分を構成する。チャックトップ吸着板28は、ウェーハチャック18の保持面18Aに相当するチャックトップ表面28Aと、チャックトップ表面28A(保持面18A)の反対側のチャックトップ裏面28Bと、を有している。チャックトップ吸着板28の内部には冷却板42が配置される。ヒータ44は、チャックトップ吸着板28の下側(ウェーハWが配置される側とは反対側)であって、チャックトップ裏面28Bと接する位置に配置される。
【0039】
冷却板42には冷却装置92が接続されており、温度制御装置100の制御の下、冷却装置92から冷却板42に冷却液が供給される。ヒータ44にはヒータ電源94が接続されており、温度制御装置100の制御の下、ヒータ電源94からヒータ44にヒータ電力が供給される。
【0040】
複数の温度センサ52は、ウェーハチャック18(チャックトップ吸着板28)の内部に設けられる。各温度センサ52は、例えば、測温抵抗体(RTD:Resistance temperature Detector)、熱電対(TC:ThermoCouple)等で構成される。
【0041】
複数の温度センサ52は、後述するウェーハチャック18の基準温度Trefを検出するために、ウェーハチャック18(チャックトップ吸着板28)の平面視(Z方向視)において均等に分散配置されている(
図3参照)。本実施形態では、一例として、
図3に示すように、5つの温度センサ52がチャックトップ吸着板28の内部に設けられる。具体的には、5つの温度センサ52のうち、1つの温度センサ52がウェーハチャック18の中心部に配置され、残りの4つの温度センサ52がウェーハチャック18の外周部において周方向に沿って均等に配置されている。各温度センサ52は、ウェーハチャック18の基準温度Trefを検出することができれば、ウェーハチャック18の平面視において不均等に分散配置されていてもよい。
【0042】
なお、「分散配置」とは、複数の温度センサ52が互いに所定の間隔を空けて配置されることであり、検査対象のウェーハWにおける測定デバイスが発熱した場合に、その発熱による影響を受けない部分におけるウェーハチャック18の温度(上述の基準温度Trefに相当)を、複数の温度センサ52のうち少なくとも1つの温度センサ52が検出することができるような配置形態をいう。すなわち、ウェーハWにおける測定デバイスの数にあわせて複数の温度センサ52が密接して配置されるのではなく、少なくとも1つの温度センサ52がウェーハチャック18の基準温度Trefを検出できるように複数の温度センサ52が互いの距離を離して配置された状態という。
【0043】
熱流センサ54は、温度センサ52と共に、ウェーハチャック18(チャックトップ吸着板28)の内部に設けられる。熱流センサ54は、測定デバイスの発熱量を熱流(熱流束:単位時間当たりに単位面積を流れる熱量)として検知するものである。なお、「熱流センサ」は「熱流束センサ」とも称される。
【0044】
図2及び
図3に示すように、熱流センサ54は、複数(測温点数個分)の熱電対56を直列に接続して構成されたものである。熱流センサ54の両端部には、熱流センサ54で検知された熱流(熱流束)を示す出力信号(電圧信号)(以下、「センサ信号」という。)を出力するための出力配線部80を備えている。出力配線部80は温度制御装置100に接続されており、熱流センサ54から出力されたセンサ信号が温度制御装置100に入力されるように構成されている。
【0045】
各熱電対56は、互いに種類の異なる金属56A及び56Bを接合して構成されており、金属56Aと金属56Bとの接続部分となる測温点60を有している。すなわち、熱流センサ54は、熱電対56毎にそれぞれ測温点60を備えている。各測温点60は、チャックトップ吸着板28の内部において上方位置(チャックトップ表面28A側となる位置)にそれぞれ配置され、且つ、ウェーハチャック18の平面視(Z方向視)においてウェーハチャック18の全体にわたって密に配置される。なお、「密に配置」とは、ウェーハチャック18の平面視において、ウェーハWにおいて部分的に発生する測定デバイスの発熱量を検知できるように、複数の測温点60の配置密度が少なくとも複数の温度センサ52の配置密度よりも高い状態で配置されている配置形態をいう。また、複数の測温点60は、ウェーハWにおいて部分的に発生する測定デバイスの発熱量を検知する観点から、ウェーハチャック18の平面視においてウェーハチャック18の全体にわたって均等且つ密に配置されていることが好ましいが、これに限らず、必ずしも複数の測温点60が均等に配置されていなくてもよい。
【0046】
また、熱流センサ54は、直列に接続された隣接する熱電対56同士の接続部分(すなわち、隣接する熱電対56同士のうち、一方の熱電対56の金属56Aと、他方の熱電対56の金属56Bとの接続部分)となる基準接点62を有している。すなわち、熱流センサ54は複数の基準接点62を備えている。各基準接点62は、チャックトップ吸着板28の下側となるチャックトップ裏面28Bにそれぞれ所定位置に配置される。なお、本実施形態では、一例として、各基準接点62は、ウェーハチャック18の平面視(Z方向視)において直列に接続された隣接する熱電対56同士の中間位置にそれぞれ配置される。
【0047】
ここで、ウェーハチャック18に対する熱流センサ54の具体的な取り付け形態の一例について説明する。
図3の拡大図に示すように、ウェーハチャック18を構成するチャックトップ吸着板28には、各測温点60にそれぞれ対応する位置に熱電対収容溝34が設けられている。各熱電対収容溝34は、チャックトップ吸着板28のチャックトップ裏面28Bに開口した有底の細長い溝である。各熱電対収容溝34には、それぞれ、熱電対56を構成する金属56A及び56Bの先端側部分(測温点60側の部分)が収容されている。そして、各熱電対収容溝34の底部(チャックトップ表面28A側;
図3において上側)において、それぞれ対応する熱電対56を構成する金属56A及び56Bの先端側部分が接続されることで測温点60を構成している。
【0048】
また、熱電対56を構成する金属56A及び56Bの基端側部分は、各熱電対収容溝34の外部であるチャックトップ裏面28Bに沿って配置されており、それぞれ、直列に接続された隣接する他の熱電対56の金属56A又は56Bの基端側部分と接続されることで基準接点62を構成している。
【0049】
このようにウェーハチャック18(チャックトップ吸着板28)に対して複数の熱電対収容溝34を設けた形態によれば、直列に接続された複数の熱電対56をウェーハチャック18に対して効率的且つ容易に組み込むことが可能となる。なお、本実施形態では、好ましい態様の1つとして、ウェーハチャック18に対して複数の熱電対収容溝34を設けた形態を示したが、熱流センサ54における複数の測温点60を、ウェーハチャック18の平面視においてウェーハチャック18の全体にわたって密に配置することが可能であれば、ウェーハチャック18に対する熱流センサ54の取り付け形態は特に限定されるものではない。
【0050】
図4は、温度制御装置100の構成を示した機能ブロック図である。温度制御装置100は、各種のプロセッサ(Processor)及びメモリ等から構成された演算回路を備える。各種のプロセッサには、CPU(Central Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、ASIC(Application Specific Integrated Circuit)、及びプログラマブル論理デバイス[例えばSPLD(Simple Programmable Logic Devices)、CPLD(Complex Programmable Logic Device)、及びFPGA(Field Programmable Gate Arrays)]等が含まれる。なお、温度制御装置100の各種機能は、1つのプロセッサにより実現されてもよいし、同種または異種の複数のプロセッサで実現されてもよい。
【0051】
温度制御装置100は、不図示の制御プログラムを実行することで、基準温度検出部102、温度差検出部104、及び温度制御部106として機能する。
【0052】
基準温度検出部102は、複数の温度センサ52と接続され、各温度センサ52でそれぞれ検出されたウェーハチャック18の温度を取得する。基準温度検出部102は、各温度センサ52でそれぞれ検出された温度から、最も低い温度、平均もしくは中央値等を、ウェーハチャック18の基準温度Trefとして検出(選択)する。そして、基準温度検出部102において検出された基準温度Trefは温度制御部106に入力される。基準温度検出部102は、本発明の基準温度検出部の一例である。
【0053】
なお、「基準温度Tref」とは、検査対象のウェーハWにおける測定デバイスが発熱した場合に、その発熱による影響を受けない部分におけるウェーハチャック18の温度のことを指すものである。本実施形態では、複数の温度センサ52のうち、ウェーハWにおいて部分的に発熱した測定デバイスから最も離れた位置における温度センサ52が、測定デバイスの発熱による影響が最も小さく、最も低い温度を検出するものとなることから、各温度センサ52でそれぞれ検出された温度の中から最も低い温度を基準温度Trefとして選択するようにしているが、デバイスの発熱によるウェーハチャック18の温度上昇を検出したほうが、温度制御に対するウェーハチャック18の温度追従性が優れる場合があり、各温度センサ52でそれぞれ検出された温度の平均もしくは中央値等を、ウェーハチャック18の基準温度Trefとする方法もある。
【0054】
また、基準温度検出部102において検出された基準温度Trefは、ウェーハチャック18において測定デバイスの発熱による影響を受けにくい部分であるチャックトップ吸着板28のチャックトップ裏面28B(すなわち、熱流センサ54における複数の基準接点62が配置される位置)における温度と実質的に等しい温度とみなすことが可能であることから、後述する発熱部測温点の上下温度差ΔTdから発熱部測温点の温度Tを求めるための基準温度として用いられる。なお、「発熱部測温点」とは、熱流センサ54を構成する複数の測温点60のうちウェーハWの発熱部分に対応した位置における測温点60を指すものとする。
【0055】
温度差検出部104は、熱流センサ54と接続され、熱流センサ54から出力されたセンサ信号を取得する。温度差検出部104は、熱流センサ54から出力されたセンサ信号から起電力(熱起電力)を抽出し、その起電力をもとに発熱部測温点の上下温度差ΔTdを算出する。
【0056】
温度制御部106は、基準温度検出部102から基準温度Trefを取得すると共に、温度差検出部104から発熱部測温点の上下温度差ΔTdを取得する。そして、温度制御部106は、基準温度Tref及び発熱部測温点の上下温度差ΔTdに基づいて、発熱部測温点の温度Tを算出する。さらに温度制御部106は、算出した発熱部測温点の温度Tを制御温度(PV値)とし、この制御温度が予め設定された目標温度(例えば検査温度)となるように加熱冷却部40の制御を行う。温度制御部106は本発明の温度制御部の一例である。
【0057】
<温度制御の原理について>
次に、本実施形態における温度制御の原理について詳しく説明する。
【0058】
本実施形態における熱流センサ54では、ウェーハWにおける測定デバイスの発熱により、熱流センサ54に対してウェーハチャック18の厚さ方向(Z方向)に熱流が通過した場合に、熱流センサ54の表側と裏側との温度差が生じる。すなわち、熱流センサ54に対してウェーハチャック18の厚さ方向に熱流が通過すると、ウェーハチャック18の一方側(チャックトップ表面28A側)と他方側(チャックトップ裏面28B側)とで温度差が生じる。これにより、ゼーベック効果によって、ウェーハチャック18の一方側と他方側とにおいて起電力が発生する。そして、熱流センサ54では、熱流センサ54の表側と裏側の間の流れる熱流に基づいて生じる起電力(熱起電力)をセンサ信号として出力する。
【0059】
本実施形態における熱流センサ54は、上記のような構成であるため、熱流センサ54が出力したセンサ信号、すなわち、熱流センサ54の起電力に基づいて、熱流センサ54の表側と裏側と間の温度差を算出することができる。
【0060】
なお、熱流センサ54の起電力をV、熱流センサ54を通過する熱流をqとした場合、q=α・V(αはセンサ定数)の関係がある。また、熱流センサ54の表側と裏側との温度差をΔTとした場合、熱流センサ54を通過する熱流qは、熱流センサ54の温度差ΔTに比例する。したがって、熱流センサ54の起電力Vと熱流センサ54の温度差ΔTの間には相関関係があるため、これらの関係を示すデータ(起電力‐温度差変換データ)を予め実験的又は設計的に求めておくことにより、熱流センサ54の起電力から温度差ΔTを求めることができる。
【0061】
ここで、熱流センサ54の起電力から求められる温度差をΔT[℃]とし、熱流センサ54を通過する熱量をQ[W]とし、熱流センサ54の面積をS[m2]とし、熱流センサ54の熱流距離(熱流センサ54の表側と裏側の距離)をLj[m]とし、熱流センサ54が埋め込まれている材料の熱伝導率をk[W/mK]とした場合、熱流センサ54を通過する熱量Qは、以下の式(1)から求められる。
【0062】
【0063】
また、発熱部の熱量をQd[W]とし、発熱部面積をSd[m2]とした場合、発熱部の熱量Qdは、以下の式(2)に示すとおりとなる。
【0064】
【0065】
すなわち、発熱部の熱量Qdは、熱流センサ54を通過する熱量Qに対して、熱流センサ54の面積Sに対する発熱部面積Sdの面積比(Sd/S)を乗じた値となる。さらに熱流センサ54を通過する熱量Qを式(1)に示した関係式を用いて置き換えると、発熱部の熱量Qdは、熱流センサ54の起電力から求められる温度差ΔTで表すことが可能となる。
【0066】
さらに、発熱部測温点の上下温度差をΔTd[℃]とした場合、発熱部測温点の上下温度差ΔTdは、以下の式(3)に示すとおりとなる。
【0067】
【0068】
すなわち、発熱部測温点の上下温度差ΔTdは、発熱部の熱量Qdと熱流距離Ljに比例し、発熱部面積Sdに反比例する関係にある。さらに発熱部の熱量Qdを式(2)に示した関係式を用いて置き換えると、発熱部測温点の上下温度差ΔTdは、熱流センサ54の起電力から求めた温度差ΔTに対して、上記面積比の逆比(すなわち、発熱部面積Sdに対する熱流センサ54の面積Sの面積比)を乗じた値となる。
【0069】
このように発熱部測温点の上下温度差ΔTdは、熱流センサ54の起電力から求めた温度差ΔTを発熱部面積Sdで換算した温度差となるので、発熱部測温点の温度をT[℃]とした場合、以下の式(4)に示すとおり、発熱部測温点の温度Tは、基準温度Tref(複数の温度センサ52が検出した温度の中から最も低い温度)に、発熱部測温点の上下温度差ΔTdを加算した値となる。
【0070】
【0071】
なお、基準温度Trefは、発熱部測温点の上下温度差ΔTdの基準となる部分(すなわち、熱流センサ54の裏側(チャックトップ裏面28B)における基準温度のことである。ウェーハWにおいて部分的に発熱した測定デバイスから最も離れた位置における温度センサ52は最も低い温度を検出するため、この温度センサ52が検出した温度は、熱流センサ54の裏側(チャックトップ裏面28B)における温度に実質的に等しいものとみなすことができる。したがって、上記の式(4)に示すとおり、基準温度検出部102が検出した基準温度Trefに、発熱部測温点の上下温度差ΔTdを加算することで、発熱部測温点の温度Tを求めることが可能である。
【0072】
<発熱部分の温度の計算例の概念について>
図5は、熱流センサ54から得られる発熱部分の面積の計算例の概念図である。なお、以下に説明する計算例は、一例として、次に示す条件を前提としたものである。
・熱流センサ54の熱流距離:Lj=0.01[m]
・熱流センサ54が埋め込まれている材料の熱伝導率:k=180[W/mK]
【0073】
[発熱部が1箇所の場合]
図5の5Aは、ウェーハWにおける発熱部分HPが1箇所である場合において熱流センサ54の起電力から求められる温度差ΔTの一例を示したものである。なお、発熱部分HPの熱量をQd=100[W]とし、発熱部面積をSd=0.000625[m
2](25mm×25mm)とする。
【0074】
図5の5Aに示した例では、熱流センサ54の起電力は0.353[mV]となり、この起電力から求められる温度差はΔT=8.89[℃]となっている。
【0075】
一方、式(3)における一番左側の関係式を利用して、発熱部分HPの熱量Qdから実際の上下温度差ΔTdを求めると、以下の式(5)に示すとおりとなる。なお、この場合における発熱部測温点の上下温度差ΔTdは、熱流センサ54を通過する熱流の向きに依存して符号が決まる。
【0076】
【0077】
図5の5Aに示した例の場合には、熱流センサ54の起電力から求められる温度差ΔTは、発熱部分HPの熱量Qdから求めた上下温度差ΔTdの絶対値と等しくなる(すなわち、ΔT=|ΔTd|)。
【0078】
[発熱部が2箇所の場合]
図5の5Bは、ウェーハWにおける発熱部分HPが2箇所である場合(
図5の5Aの発熱部分HPの発熱面積に対して2倍の発熱面積である場合)において熱流センサ54の起電力から求められる温度差ΔTの一例を示したものである。なお、発熱部分HPの熱量をQd=200[W]とし、発熱部面積をSd=0.00125[m
2](25mm×50mm)とする。
【0079】
図5の5Bに示した例では、熱流センサ54の起電力は0.706[mV]となり、この起電力Vから求められる温度差はΔT=17.78[℃]となっている。
【0080】
一方、式(3)における一番左側の関係式を利用して、発熱部分HPの熱量Qdから発熱部測温点の上下温度差ΔTdを求めると、以下の式(6)のとおりとなる。なお、この場合における発熱部測温点の上下温度差ΔTdは、熱流センサ54を通過する熱流の向きに依存して符号が決まる。
【0081】
【0082】
図5の5Bに示した例では、ウェーハWにおける発熱部分HPの発熱面積が、
図5の5Aに示した例の場合に比べて2倍となっているため、発熱部分HPの発熱面積に比例して熱流センサ54の起電力も2倍に増加する。そのため、温度差の絶対値比較で、熱流センサ54の起電力から求められる温度差ΔTは、発熱部分HPの熱量Qdから求められる発熱部測温点の上下温度差ΔTdの2倍となる。
【0083】
このようにウェーハWにおける発熱部分HPの面積の変化に応じて熱流センサ54の起電力が変化し、その変化に応じて起電力から求められる温度差ΔTも変化する。すなわち、熱流センサ54の起電力から求められる温度差ΔTは、発熱部分HPの面積の変化に応じて変化する見かけ上の温度差であり、実際の温度差とずれている。そのため本実施形態では、発熱部測温点の上下温度差ΔTdを、熱流センサ54の起電力から求められる温度差ΔTを発熱部面積Sdで換算した値とすることで、発熱部測温点における実際の温度差に略等しい温度差を求めるようにしている。
【0084】
<実際の制御温度の求め方について>
次に、本実施形態の温度制御装置100において行われる実際の制御温度(発熱測温点の上下温度差ΔTd)の求め方について説明する。
【0085】
本実施形態における温度制御の原理については既述のとおりであるが、実際の熱流センサ54の出力値(起電力)は、熱流センサ54を構成する熱電対56の数とその実装密度(すなわち、熱電対56一対当たりの面積)によって決まる。そのため、本実施形態では、上述した式(1)から式(3)において、熱流センサ54が埋め込まれている面積Sを、熱電対56一対当たりの面積Ssとして計算することにより、発熱部測温点の上下温度差ΔTdを求めるようにしている。なお、以下に説明する発熱部測温点の上下温度差ΔTdの計算例は、一例として、次に示す条件を前提としたものである。
・熱流センサが埋め込まれている面積(φ300mm):Sd=0.070875[m2]
・熱流センサの測温点数:Ns=114[点]
・熱電対1対当たりの面積:Ss=SD÷Ns=0.070875÷114=0.000622[m2]=S
【0086】
[発熱箇所が1箇所の場合]
図5の5Aに示した例において、発熱部面積をSd=0.000625[m
2](25mm×25mm)とした場合、熱流センサ54の起電力は0.353[mV]となり、この起電力から求められる温度差はΔT=8.89[℃]となる。そして、発熱部測温点の上下温度差ΔTdは、以下の式(7)に示すとおり、熱流センサ54の起電力から求められる温度差ΔTを発熱部面積Sdで換算することで求められる。
【0087】
【0088】
[発熱箇所が2箇所の場合]
図5の5Bに示した例において、発熱部面積をSd=0.00125[m
2](25mm×50mm)とした場合、熱流センサ54の起電力は0.706[mV]となり、この起電力から求められる温度差はΔT=17.78[℃]となる。そして、発熱部測温点の上下温度差ΔTdは、以下の式(8)に示すとおり、熱流センサ54の起電力から求められる温度差ΔTを発熱部面積Sdで換算することで求められる。
【0089】
【0090】
このように本実施形態の温度制御装置100では、発熱部分HPの面積が変化した場合でも、熱流センサ54の起電力から求められる温度差ΔT(見かけ上の温度差)から発熱部測温点の上下温度差ΔTd(実際の温度差)を算出することができる。そして、基準温度検出部102が検出した基準温度Tref(熱流センサ54の裏側の温度に実質的に相当する温度)に、発熱部測温点の上下温度差ΔTdを加算した値を発熱部測温点の温度Tとし、この温度Tを制御温度(PV値)として加熱冷却部40を制御することで、ウェーハWにおける測定デバイスの発熱状態に応じて、ウェーハチャック18を適切に温度制御することが可能となる。
【0091】
<温度制御方法>
次に、第1実施形態の温度制御システム50における温度制御方法について説明する。
図6は、第1実施形態の温度制御システム50における温度制御方法の一例を示したフローチャートである。
【0092】
まず、ウェーハWがウェーハチャック18に保持され、ウェーハWとプローブカード24とのアライメントが行われた後、ウェーハWの電気的特性検査が開始される。そして、ウェーハWの電気的特性検査の開始から終了までの間、
図6に示したフローチャートが実行される。
【0093】
図6に示したフローチャートが開始されると、まず始めに、設定温度決定ステップ(ステップS10)が行われる。設定温度決定ステップでは、温度制御部106がウェーハチャック18の設定温度を決定する。ウェーハチャック18の設定温度は、温度制御部106がウェーハチャック18に対する温度制御を実行する際の目標温度(例えば検査温度)である。なお、ウェーハチャック18の設定温度は必ずしも検査温度である必要はなく、例えば検査温度に基づいて設定される温度であってもよい。
【0094】
設定温度決定ステップが行われた後、基準温度検出ステップ(ステップS12)と上下温度差検出ステップ(ステップS14)とが並列的に行われる。基準温度検出ステップと上下温度差検出ステップとは必ずしも同じタイミング(同時刻)に実行される必要はないが、この後に行われる制御温度決定ステップ(ステップS16)において両方のステップにおける検出結果をもとに制御温度が決定されることから、基準温度検出ステップと上下温度差検出ステップとが同じタイミングで実行されることが好ましい。
【0095】
基準温度検出ステップ(ステップS12)では、複数の温度センサ52で検出された温度がそれぞれ基準温度検出部102に入力される。基準温度検出部102は、各温度センサ52で検出された温度の中から最も低い温度を、ウェーハチャック18の基準温度Trefとして検出(選択)する。ウェーハチャック18の基準温度Trefは、後述する発熱部測温点の上下温度差ΔTdから発熱部測温点の温度Tを求める際に基準となる温度であり、熱流センサ54の裏側(チャックトップ吸着板28のチャックトップ裏面28B)における温度と実質的に等しい温度とみなしうる温度である。基準温度検出ステップで検出された基準温度Trefは、温度制御部106に入力される。
【0096】
上下温度差検出ステップ(ステップS14)では、熱流センサ54によりウェーハチャック18に保持されたウェーハWの部分的な発熱により生じた熱流を検出し、熱流センサ54から出力されたセンサ信号(起電力)が温度差検出部104に入力される。温度差検出部104は、熱流センサ54の起電力から熱流センサ54における表側と裏側との温度差ΔTを求める。そして、温度差検出部104は、発熱部測温点の上下温度差ΔTdとして、熱流センサ54の起電力から求めた温度差ΔTを発熱部面積Sdで換算した値を算出する。なお、発熱部面積Sdは、メモリ部(不図示)に記憶された検査情報(測定デバイスの面積を含む)を参照することで取得される。また、発熱部測温点の上下温度差ΔTdの算出方法については上述したとおりであるので、ここでは詳細な説明を省略する。
【0097】
基準温度検出ステップと上下温度差検出ステップとが行われた後、温度制御ステップ(ステップS16)が行われる。温度制御ステップでは、温度制御部106が、基準温度検出部102から入力された基準温度Trefと、温度差検出部104から入力された発熱部測温点の上下温度差ΔTdとに基づいて、発熱部測温点の温度Tを算出する。具体的には、発熱部測温点の温度Tは、基準温度Trefに上下温度差ΔTdを加算した値として求められる(すなわち、T=Tref+ΔTd)。
【0098】
温度制御部106は、このようにして算出した発熱部測温点の温度Tを制御温度(PV値)とし、制御温度である発熱部測温点の温度Tが、設定温度決定ステップにおいて決定したウェーハチャック18の設定温度に近づくように加熱冷却部40を制御する。例えば、発熱部測温点の温度Tが設定温度よりも低い場合には、温度制御部106の制御に従って、ヒータ電源94からヒータ電力がヒータ44に供給され、ヒータ44がウェーハチャック18を加熱する。また、発熱部測温点の温度Tが設定温度より高い場合には、温度制御部106の制御に従って、冷却装置92から冷却液が冷却板42に供給され、冷却板42がウェーハチャック18を冷却する。これにより、ウェーハWの測定デバイスの発熱状態に応じて、ウェーハチャック18の温度(発熱部測温点の温度T)が設定温度に近づくように、ウェーハチャック18に対する温度制御(加熱冷却制御)が行われる。
【0099】
このようにして温度制御ステップが行われた後、判定ステップ(ステップS18)が行われる。判定ステップでは、温度制御部106が、ウェーハWの電気的特性検査が終了したか否かを判定する。判定ステップにおいて、温度制御部106が、ウェーハWの電気的特性検査が終了していないと判定した場合(No判定の場合)には、ステップS12からステップS18までの処理を繰り返し実行する。一方、温度制御部106が、ウェーハWの電気的特性検査が終了したと判定した場合(Yes判定の場合)には、温度制御部106による制御を終了する。以上により、本フローチャートは終了となる。
【0100】
このように本実施形態の温度制御システム50は、複数の温度センサ52と、複数の熱電対56を直列に接続して配置(ウェーハチャック18の全体にわたって複数の測温点60を密に配置)した熱流センサ54との両方をウェーハチャック18の内部にそれぞれ組み込み、複数の温度センサ52の検出結果と熱流センサ54の検出結果とに基づいて発熱部測温点の温度T(ウェーハWの発熱部分に対応するウェーハチャック18の温度)を算出し、この温度Tが予め設定した設定温度となるようにウェーハチャック18に対する温度制御(加熱冷却制御)が行われる。これにより、ウェーハチャック18に設置される温度センサ52の数を多くすることなく、ウェーハチャック18の温度を適切に制御することが可能となる。
【0101】
なお、本実施形態において、好ましい態様の1つとして、ウェーハチャック18(チャックトップ吸着板28)に5つの温度センサ52を配置した形態を示したが、ウェーハチャック18に配置される温度センサ52の数は、ウェーハWにおける測定デバイスの数よりも十分に少なく、且つ、ウェーハチャック18の基準温度Trefを検出することができるような数であれば特に限定されず、例えば、温度センサ52を2~4つ配置する形態、又は、6つ以上配置する形態なども採用し得る。また、ウェーハチャック18の基準温度Trefを検出することができれば、温度センサ52を1つ配置する形態であってもよい。すなわち、ウェーハチャック18の基準温度Trefを検出できるように、少なくとも1つの温度センサ52がウェーハチャック18に配置されていればよい。
【0102】
また、本実施形態では、好ましい態様として、熱流センサ54が1つのセンサ体(複数の熱電対56が直列に接続された一体物)で構成される場合を示したが、これに限らず、熱流センサ54が複数のセンサ体で構成されていてもよい。
【0103】
図7は、熱流センサ54が2つのセンサ体で構成される場合の構成例を示した図であって、ウェーハチャック18の内部構造を示した概略平面図である。なお、
図7では、一例として、熱流センサ54が2つのセンサ体で構成される場合の構成例を示したが、3つ以上のセンサ体で構成されてもよいことはいうまでもない。
【0104】
図7に示した構成例では、熱流センサ54が2つのセンサ体54A、54Bで構成される。具体的には、ウェーハチャック18の平面視(Z方向視)において、ウェーハチャック18の一方側(
図7の左側)の領域にセンサ体54Aが配置され、且つ、ウェーハチャック18の他方側(
図7の右側)の領域にセンサ体54Bが配置される。
【0105】
2つのセンサ体54A、54Bは、上述した本実施形態の熱流センサ54の構成と基本的に同様の構成であり、それぞれ、複数の熱電対56を直列に接続して構成され、且つ、複数の測温点60が各々の配置領域の全体にわたって密に配置されている。
【0106】
また、2つのセンサ体54A、54Bの両端部には、それぞれのセンサ信号を温度制御装置100に出力するための出力配線部80A、80Bを備えている。各出力配線部80A、80Bは温度制御装置100に接続されており、各センサ体54A、54Bから出力されたセンサ信号は温度制御装置100に入力されるように構成されている。
【0107】
温度制御装置100は、2つのセンサ体54A、54Bのうち測定デバイスが存在する領域に配置されたセンサ体から出力されたセンサ信号(起電力)をもとに発熱部測温点の上下温度差ΔTdを求める。なお、発熱部測温点の上下温度差ΔTdの算出方法については、本実施形態と基本的に同様であるため、詳細な説明を省略する。
【0108】
また、本実施形態では、加熱冷却部40として、チャックトップ吸着板28の内部に冷却板42を配置し、且つ、チャックトップ吸着板28の下側(ウェーハWが配置される側とは反対側)にヒータ44を配置した構成を示したが、これに限らず、例えば、後述する他の構成例を採用することもできる。
【0109】
図8は、第1変形例に係る温度制御システム50Aの概略構成図である。なお、上記第1実施形態と共通する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0110】
図8に示すように、第1変形例に係る温度制御システム50Aは、冷却板42と、ペルチェ素子46と、を備えている。冷却板42及びペルチェ素子46は加熱冷却部40の構成要素であり、ウェーハチャック18の内部に設けられる。具体的には、ペルチェ素子46は、チャックトップ吸着板28の裏面側(チャックトップ裏面28B)に接した状態で配置される。冷却板42は、ペルチェ素子46を挟んでチャックトップ吸着板28とは反対側の位置に配置される。換言すれば、チャックトップ吸着板28と冷却板42との間にペルチェ素子46が配置される。
【0111】
ペルチェ素子46にはペルチェ電源96が接続されており、温度制御装置100の制御の下、ペルチェ電源96からペルチェ素子46にペルチェ電力が供給される。また、冷却板42には冷却装置92が接続されており、温度制御装置100の制御の下、冷却装置92から冷却板42に冷却液が供給される。
【0112】
第1変形例によれば、ペルチェ素子46での加熱と冷却板42での冷却とを組み合せた制御を実現することにより、第1実施形態と同様に、ウェーハチャック18に対する温度制御を行うことができる。なお、ペルチェ素子46での冷却を更に組み合わせて制御を行うようにしてもよい。
【0113】
図9は、第2変形例に係る温度制御システム50Bの概略構成図である。なお、上記第1実施形態と共通する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0114】
図9に示すように、第2変形例に係る温度制御システム50Bは、ウェーハチャック18の内部に冷却板42及びヒータ44を備える点では第1実施形態と共通しているが、冷却板42とヒータ44との配置形態が第1実施形態とは異なる。具体的には、ヒータ44は、チャックトップ吸着板28の裏面側(チャックトップ裏面28B)に接した状態で配置される。冷却板42は、ヒータ44を挟んでチャックトップ吸着板28とは反対側の位置に配置される。
【0115】
第2変形例においても、ヒータ44での加熱と冷却板42での冷却とを組み合せた制御を実現することにより、第1実施形態と同様に、ウェーハチャック18に対する温度制御を行うことができる。
【0116】
(第2実施形態)
次に、第2実施形態の温度制御システム50について説明する。上記第1実施形態では、複数の温度センサ52の検出結果と熱流センサ54の検出結果とに基づいて、発熱部測温点の温度T(ウェーハWの発熱部分に対応するウェーハチャック18の温度)を算出し、算出した発熱部測温点の温度Tに基づいてウェーハチャック18に対する温度制御を行う。これに対し、第2実施形態では、複数の温度センサ52の検出結果と、熱流センサ54の検出結果と、発熱部測温点から発熱部分まで物性値や寸法等に係る情報とに基づいて、ウェーハWの発熱部分の温度に相当するデバイス温度を算出し、算出したデバイス温度に基づいてウェーハチャック18に対する温度制御を行う。
【0117】
なお、第2実施形態は、ウェーハチャック18に対する温度制御を行う際の制御温度がデバイス温度である点を除けば、上記第1実施形態と基本的に同じ構成である。以下では、上記第1実施形態と共通する部分には同一の符号を付して、その説明を省略する。
【0118】
図10は、第2実施形態の温度制御装置100Aのブロック図である。
図10に示すように、第2実施形態の温度制御装置100Aは、デバイス温度算出機能を有する温度制御部106Aを備えている。
【0119】
温度制御部106Aには、上記第1実施形態と同様に、基準温度検出部102で検出された基準温度Trefと、温度差検出部104で検出された発熱部測温点の上下温度差ΔTdとがそれぞれ入力される。また、メモリ部(不図示)には、デバイス温度を算出するためのデバイス温度算出条件データとして、発熱部測温点から発熱部分まで(すなわち、ウェーハチャック18及びウェーハW)の物性値や寸法等に係る情報が予め登録されており、温度制御部106Aはメモリ部からデバイス温度算出条件データを取得することが可能となっている。
【0120】
温度制御部106Aは、基準温度検出部102から取得した基準温度Trefと、温度差検出部104から取得した発熱部測温点の上下温度差ΔTdと、メモリ部から取得したデバイス温度算出条件データとに基づき、ウェーハWの発熱部分の温度(デバイス温度)を算出する。そして、温度制御部106Aは、このデバイス温度を制御温度とし、予め設定された設定温度(例えば検査温度)にデバイス温度が近づくように、ウェーハチャック18に対する温度制御(加熱冷却制御)を実行する。
【0121】
ここで、第2実施形態において行われるデバイス温度の算出方法について説明する。
図11は、デバイス温度の算出方法を説明するための説明図である。なお、メモリ部には、デバイス温度算出条件データとして、ウェーハWの熱伝導率Kw、熱流センサ54が埋め込まれている材料の熱伝導率Kj、熱流センサ54の測温点60とウェーハチャック18の保持面18Aとの距離Lc、ウェーハWの裏面と発熱部分HPとの距離Lwなどが予め登録されている。
【0122】
図11に示すように、熱流センサ54の測温点60とウェーハチャック18の保持面18Aとの間の温度差をΔTcとし、ウェーハWの裏面と発熱部分HPとの間の温度差をΔTwとし、ウェーハWの発熱部分HPの温度(デバイス温度)をTwとした場合、デバイス温度Twは、以下の式(9)に示すとおり求めることができる。
【0123】
【0124】
なお、基準温度Tref及び発熱部測温点の上下温度差ΔTdは、それぞれ、基準温度検出部102、温度差検出部104において第1実施形態と同様にして検出される。
【0125】
発熱部分HPの熱量をQd[W]とした場合、熱流センサ54の測温点60とウェーハチャック18の保持面18Aとの温度差ΔTc、及び、ウェーハWの裏面と発熱部分HPとの間の温度差ΔTwは、それぞれ、以下の式(10)、(11)により求められる。なお、Sdは、ウェーハWの発熱部分HPの面積(発熱部面積)である。
【0126】
【0127】
【0128】
発熱部分HPの熱量Qdは、上記式(3)における一番左側の関係式を利用して求めることができる。すなわち、発熱部分HPの熱量Qdは、発熱部測温点の上下温度差ΔTd(すなわち、熱流センサ54の起電力から求めた温度差ΔTを発熱部面積Sdで換算した値)を用いて、以下の式(12)に示すとおり求めることができる。なお、Ljは、熱流センサ54の熱流距離(熱流センサ54の表側と裏側の距離)である。
【0129】
【0130】
したがって、式(9)から式(12)を利用することで、デバイス温度Twを算出することができる。
【0131】
(デバイス温度の計算例)
次に、デバイス温度Twの計算例について説明する。なお、ここで説明するデバイス温度Twの計算例は、一例として、次に示す条件を前提としたものである。
・ウェーハチャック18の基準温度:Tref=100[℃]
・熱流センサ54の熱流距離:Lj=0.01[m]
・熱流センサ54の測温点60とウェーハチャック18の保持面18Aとの距離:Lc=0.005[m]
・ウェーハWの裏面と発熱部分HPとの距離:Lw=0.0005[m]
・熱流センサ54が埋め込まれている材料の熱伝導率Kj=180[W/mK]
・ウェーハWの材料の熱伝導率:Kw=160[W/mK]
・発熱部面積:Sd=0.000625[m2]
・熱流センサ54の起電力Vから求められる温度差:ΔT=8.89[℃]
・熱流センサの測温点数:Ns=114[点]
・熱電対1対当たりの面積:Ss=SD÷Ns=0.070875÷114=0.000622[m2]=S
【0132】
なお、発熱部面積Sd、熱流センサ54の起電力Vから求められる温度差ΔT、熱流センサ54の測温点数Ns、及び熱電対1対当たりの面積Ssについては、第1実施形態において示した計算例における条件と同様である。
【0133】
デバイス温度Twを算出するための各温度差は、次のようにして求められる。まず、発熱部測温点の上下温度差ΔTdは、第1実施形態の計算例と同様に、以下の式(13)に示すとおり、8.847[℃]となる。
【0134】
【0135】
また、熱流センサ54の測温点60とウェーハチャック18の保持面18Aとの温度差ΔTcは、以下の式(14)に示すとおり、4.42[℃]となる。
【0136】
【0137】
また、ウェーハWの裏面と発熱部分HPとの間の温度差ΔTwは、以下の式(15)に示すとおり、0.50[℃]となる。
【0138】
【0139】
したがって、デバイス温度Twは、以下の式(16)に示すとおり、113.77[℃]となる。
【0140】
【0141】
第2実施形態における温度制御部106Aは、上述したデバイス温度の算出方法に従って、デバイス温度Twの算出を行う。そして、温度制御部106Aは、算出したデバイス温度を制御温度として、予め設定された設定温度(例えば検査温度)にデバイス温度が近づくように、ウェーハチャック18に対する温度制御を実行する。
【0142】
したがって、第2実施形態の温度制御システム50によれば、複数の温度センサ52の検出結果と、熱流センサ54の検出結果と、デバイス温度算出条件データ(発熱部測温点から発熱部分まで物性値や寸法等に係る情報)とに基づいて、ウェーハWの発熱部分であるデバイス温度を算出し、算出したデバイス温度に基づいてウェーハチャック18に対する温度制御を行うので、所望の検査温度で測定デバイスの電気的特性検査をより高精度に行うことが可能となる。
【0143】
以上、本発明に係る温度制御システム及び温度制御方法について詳細に説明したが、本発明は、本発明の要旨を逸脱しない範囲において、いくつかの改良又は変形を行ってもよいのはもちろんである。
【符号の説明】
【0144】
1・・・ウェーハテストシステム、10・・・プローバ、18…ウェーハチャック、24・・・プローブカード、25・・・プローブ、28・・・チャックトップ吸着板、34・・・熱電対収容溝、40・・・加熱冷却部、42・・・冷却板、44・・・ヒータ、46・・・ペルチェ素子、50、50A、50B・・・温度制御システム、52・・・温度センサ、54・・・熱流センサ、56・・・熱電対、60・・・測温点、62・・・基準接点、90・・・制御装置、92・・・冷却装置、94・・・ヒータ電源、96・・・ペルチェ電源、100・・・温度制御装置、100A・・・温度制御装置、102・・・基準温度検出部、104・・・温度差検出部、106・・・温度制御部、106A・・・温度制御部、HP・・・発熱部分、W・・・ウェーハ
【要約】
【課題】設置する温度センサの数を多くすることなく温度が測定可能なウェーハチャックと、ウェーハチャックの温度を適切に制御することができる温度制御システム及び温度制御方法と、を提供する。
【解決手段】ウェーハチャック18を加熱又は冷却する加熱冷却部40と、ウェーハチャック18に配置された少なくとも1つの温度センサ52と、ウェーハチャック18に配置され、複数の熱電対56を直列に接続して、且つ互いに隣接する熱電対56の接続部分が、保持面18Aから第1深さ位置と、第1深さ位置よりも深い第2深さ位置と、に交互に配置されている熱流センサ54と、を備え、熱流センサ54は、熱電対56毎に設けられた複数の測温点60を有し、ウェーハチャック18を平面視した場合に、複数の測温点60がウェーハチャック18の全体にわたって配置される。
【選択図】
図3