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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】自動分析システム
(51)【国際特許分類】
   G01N 35/00 20060101AFI20240913BHJP
   G01N 35/02 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
G01N35/00 F
G01N35/00 E
G01N35/02 G
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2021574504
(86)(22)【出願日】2020-12-10
(86)【国際出願番号】 JP2020046110
(87)【国際公開番号】W WO2021153028
(87)【国際公開日】2021-08-05
【審査請求日】2023-09-27
(31)【優先権主張番号】P 2020013416
(32)【優先日】2020-01-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】矢野 茂
(72)【発明者】
【氏名】今井 健太
(72)【発明者】
【氏名】為實 秀人
(72)【発明者】
【氏名】千田 早織
【審査官】佐野 浩樹
(56)【参考文献】
【文献】特開平10-339732(JP,A)
【文献】特開2015-135282(JP,A)
【文献】特開2008-209338(JP,A)
【文献】国際公開第2011/093442(WO,A1)
【文献】特開2010-121936(JP,A)
【文献】特開2009-008558(JP,A)
【文献】特表2007-502412(JP,A)
【文献】特開2008-281453(JP,A)
【文献】特開2009-150859(JP,A)
【文献】特開平09-033539(JP,A)
【文献】特開2016-148571(JP,A)
【文献】特開2020-204610(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N35/00 -37/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複数の分析装置と、前記分析装置が接続される搬送部と、前記搬送部を操作して前記分析装置へ試料を搬送する操作部と、を備えた自動分析システムであって、
複数の前記分析装置へ供給可能な精度管理試料を保管する共通の保管庫を有し、
前記操作部は、複数の前記分析装置ごとに予め登録されたルールに従って、前記保管庫を操作して、前記精度管理試料を前記分析装置へ自動で搬送し、
前記分析装置での測定が終了した前記精度管理試料は、前記搬送部によって前記保管庫へ戻され、前記保管庫は、精度管理の結果が出た後に、一時保管していた前記精度管理試料を廃棄するか保管庫外の収納部へ搬送する自動分析システム。
【請求項2】
請求項1に記載の自動分析システムにおいて、
前記分析装置が、精度管理のトリガとなる情報を、前記操作部に対して通知すると、
前記操作部は、前記精度管理試料を取り出すよう前記保管庫へ指示し、
前記搬送部は、前記精度管理試料を前記分析装置へ搬送する自動分析システム。
【請求項3】
請求項1に記載の自動分析システムにおいて、
前記ルールは、精度管理に用いる試料種類、精度管理を実施する時間間隔、精度管理を実施する条件となる一般試料の測定回数、のうち少なくとも1つを含む自動分析システム。
【請求項4】
請求項1に記載の自動分析システムにおいて、
前記保管庫は、前記精度管理試料の最大保管時間、前記精度管理試料の最大使用時間、前記精度管理試料の最大使用回数、のいずれも超えていない場合、戻された前記精度管理試料を保管する自動分析システム。
【請求項5】
請求項1に記載の自動分析システムにおいて、
前記精度管理試料を分注する分注部を有し、
前記分注部で分注された複数の分注試料が、異なる前記分析装置へ搬送される自動分析システム。
【請求項6】
請求項1に記載の自動分析システムにおいて、
前記精度管理試料を分注する分注部を有し、
前記分注部で分注された分注試料は、前記分析装置へ搬送され、
分注元の精度管理試料は、前記保管庫へ搬送され、所定条件を満たす場合、前記保管庫で保管される自動分析システム。
【請求項7】
請求項1に記載の自動分析システムにおいて、
複数の前記保管庫を有し、
各保管庫が、複数の前記分析装置へ前記精度管理試料を供給する自動分析システム。
【請求項8】
請求項5に記載の自動分析システムにおいて、
前記分析装置での測定が完了すると、前記搬送部は、前記分析装置から前記保管庫へ前記分注試料を戻し、前記保管庫は、所定条件を満たす場合に前記分注試料を保管する自動分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分析装置が複数台接続された自動分析システムに関する。
【背景技術】
【0002】
自動分析装置は、血液や尿などの試料に含まれる特定の成分に特異的に反応する試薬を添加・反応させ、反応液の吸光度や発光量などを測定することにより定性・定量分析を行う。
【0003】
このような自動分析装置においては、分析結果の信頼性を担保するために、検量線を得るための検量線校正操作であるキャリブレーションや、その検量線が適正であることを確認するための精度管理などを必要に応じて実施している。しかし、その方法や用いる試料(校正試料、精度管理試料)の種類は非常に多く、取扱や管理が煩雑である。
【0004】
また、精度管理試料の取扱や管理に関しては、以下の技術が知られている。例えば、特許文献1には、機能モジュールを複数台接続した自動分析装置において、精度管理試料を格納する保冷部を各モジュールに設け、必要に応じて精度管理試料を各モジュールで使用することが記載されている。また、特許文献2には、予め設定された時間に精度管理試料が使用可能となるよう調製処理を実施するとともに、調製後の精度管理試料を保管する保管部を設ける自動分析装置が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-57617号公報
【文献】特開2015-135282号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
上記特許文献1,2など従来の自動分析システムでは、各モジュールへの精度管理試料の投入は、あくまでオペレータが行っており、精度管理に要する全体の作業時間が長くなってしまっていた。特に、精度管理の種類によっては大量の精度管理試料が必要となる場合があり、大量の精度管理試料を各モジュールで保管したりオペレータが投入したりするのは困難であった。
【0007】
本発明の目的は、大量の精度管理試料が必要な場合であっても、精度管理に要する時間を抑制した自動分析システムを提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記目的を達成するために、本発明は、複数の分析装置と、前記分析装置が接続される搬送部と、前記搬送部を操作して前記分析装置へ試料を搬送する操作部と、を備えた自動分析システムであって、複数の前記分析装置へ供給可能な精度管理試料を保管する共通の保管庫を有し、前記操作部は、複数の前記分析装置ごとに予め登録されたルールに従って、前記保管庫を操作して、前記精度管理試料を自動で前記分析装置へ搬送するものである。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、大量の精度管理試料が必要な場合であっても、精度管理に要する時間を抑制した自動分析システムを提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】実施形態に係る自動分析システムの全体構成を示す概略図。
図2】実施形態に係る保管庫の構成を示す平面図。
図3】実施例1に係る自動分析システムにおける動作を示すフロー図。
図4】精度管理試料の保管条件に関するテーブルを示した図。
図5】精度管理試料の保管の可否を判断するステップを示したフロー図。
図6】実施例2に係る自動分析システムにおける動作を示すフロー図。
【発明を実施するための形態】
【0011】
図1は、本発明の実施形態に係る自動分析システムの全体構成を示す概略図である。本形態に係る自動分析システムは、図1に示すように、投入部110と、搬送部120と、遠心部140と、開栓部150と、子検体容器生成部160と、分注部170と、閉栓部180と、収納部130と、複数の分析装置190と、操作部101と、保管庫210と、を備えている。
【0012】
ここで、投入部110は、血液や尿などの試料(検体)が収容された試料容器200(試験管)を自動分析システム内に投入するためのユニットである。投入部110内には、試料認識部121と、栓体検知部122と、キャリア認識部125と、が設置されている。試料認識部121は、試料容器200に付されたバーコードを読み取り、搬送される試料を特定するものである。栓体検知部122は、試料容器200を撮像し、撮像した画像を解析して、試料容器200の種類や栓体の有無や種類を特定するものである。キャリア認識部125は、試料容器200を保持するキャリアに付加されたID情報を読み取るものであり、このキャリア認識部125に相当するキャリア認識部135、・・・、175、185、215が、自動分析システム内の各部にそれぞれ設けられている。
【0013】
次に、搬送部120は、投入部110から投入された試料容器200や分注部170において分注された試料容器(子容器)を、遠心部140、分注部170及び分析装置190等の各部へ搬送する機構である。遠心部140は、投入された試料容器200に対して遠心分離を行い、試料を血清成分と血餅成分に分離させるためのユニットである。開栓部150は、投入された試料容器200から栓体を開栓するためのユニットである。子検体容器生成部160は、投入された試料容器200に収容された試料を次の分注部170において分注するために必要な準備、例えば、新たな試料容器(子容器)を準備するとともに、準備した試料容器200にバーコードラベル等を貼り付けるためのユニットである。分注部170は、後述する分析装置190で分析するために、遠心分離された血清成分を別の空の試料容器(子容器)に小分けするためのユニットである。閉栓部180は、処理の済んだ試料容器200や子容器を閉栓するためのユニットである。収納部130は、閉栓部180で閉栓された試料容器200や子容器を収納するためのユニットである。
【0014】
分析装置190は、自動分析システム内の各部で処理された試料の搬送先であり、試料の成分の訂正・定量分析を行うためのユニットである。この分析装置190は、試料分注機構191と、試薬分注機構192と、試薬ディスク193と、反応ディスク194と、検出機構195と、搬送部120の一部を構成する搬送ライン196と、を有している。
【0015】
ここで、試料分注機構191は、試料容器200内の試料の吸引・吐出を行う。試薬ディスク193は、試料の成分分析に必要な試薬を保管する。なお、試薬分注機構192は、試薬の吸引・吐出を行う。また、検出機構195は、反応ディスク194の反応セル内の混合物の光学的性質を測定し、測定したデータを操作部101に送信する。
【0016】
操作部101は、CPU(Central Processing Unit)等のプロセッサ、記憶装置、通信装置、入力装置及び表示装置などから構成される。この操作部101は、自動分析システム内の各部の動作を制御し、分析装置190での測定データの解析を行う。特に、自動分析システム内の各部の動作の制御は、具体的には、例えば、図6に示すように、操作部101が、前述の投入部110、搬送部120、遠心部140などの前処理部と保管庫210に関する動作をさせるための指示を行う機能をも持つよう構成してもよいし、また、分析装置190の台数が多くなる場合などに、分析装置190用と、前処理部用と、別々に設置された複数の操作部101によってそれぞれを制御するよう、構成してもよい。
【0017】
保管庫210は、分析に必要な試薬のための保冷庫とは別に、調製後の精度管理試料やプール血清(以下、「精度管理試料」と称する)を冷蔵保存するためのユニットである。
【0018】
本実施形態に係る自動分析システムでは、各分析装置190での分析結果の精度を一定以上に保つために、精度管理が行われる。ここで、各分析装置190には、どのような条件のときに精度管理を実行するのかについて、予めルールが登録されている。このルールとしては、例えば、2時間経過ごとに精度管理を実施する、などといった、精度管理を実施する時間間隔に関する取り決めが考えられる。また、他のルールとしては、例えば、一般試料を100本測定するごとに精度管理を実施する、などといった、精度管理を実施する条件となる一般試料の測定回数に関する取り決めも考えられる。さらに、精度管理に用いられる試料の種類が複数ある場合には、精度管理試料の種類を特定する情報も、このルールに含まれる。なお、予め登録されるルールは、必ずしも分析装置190ごとに同一であるとは限らず、異なるように設定しても良い。
【0019】
また、本実施形態に係る自動分析システムは、複数の分析装置190が接続されており、測定対象となる一般試料が多い場合には、各分析装置190が同一のテストを実行する。このとき、各分析装置190は通常ほぼ同時に測定処理を開始するため、精度管理が必要となるタイミングもほぼ同時となる可能性がある。このため、従来のように、オペレータが各自動分析装置に精度管理試料を個別に投入する場合、ほぼ同時に多数の精度管理試料を投入するのは困難であり、精度管理に要する時間が長くなってしまう。しかし、本実施形態では、操作部101が、複数の分析装置190ごとに予め登録されたルールに従って、保管庫210を操作して、精度管理試料を所定の分析装置へ自動で搬送するため、精度管理に要する時間を抑制できる。
【0020】
ここで、本実施形態の保管庫210は、複数の分析装置190へ供給可能な精度管理試料を保管する共通の保管庫となっている。図2は、本実施形態の保管庫210の構成を示す平面図である。本実施形態の保管庫210は、図2に示すように、大量の試料容器200をセットできる精度管理試料用トレイ210Aと、使用できなくなった精度管理試料を試料容器200ごと廃棄するための廃棄ボックス210Bと、を有する。なお、保管庫210に保管する試料容器200には、内部の精度管理試料が識別できるよう、一次元バーコードや、識別コードを記録したRFIDタグなどを有している。
【0021】
仮に、それぞれの分析装置190に個々の保管庫を設ける場合、各分析装置190に大きな保管庫を配置するスペースは確保し難いため、保管できる精度管理試料の数は必然的に制限される。これに対し、本実施形態の保管庫210は、複数の分析装置190に供給可能な精度管理試料を1か所で効率的に保管できる。特に、精度管理の種類によっては、1つの分析装置190でも大量の精度管理試料が必要な場合があるが、本実施形態のように専用の保管庫210で大量の精度管理試料を備えておけば、対応できる。
【0022】
さらに多数の精度管理試料の投入が必要となる場合は、保管庫210を複数設け、各保管庫210が、それぞれ複数の分析装置190に対して、精度管理試料を供給するようにしても良い。これにより、大きな保管庫210がなくても、複数の保管庫210を組み合わせることで、一定数の精度管理試料を保管できる。また、1つの保管庫210から多数の分析装置190へ同時に精度管理試料を搬送する場合は、保管庫210の下流の搬送部120が渋滞してしまい搬送困難となる可能性がある。しかし、複数の保管庫210が、他の保管庫210の搬送経路と重ならないように、各保管庫210からそれぞれの分析装置190へ精度管理試料を搬送すれば、搬送部120の渋滞が緩和され、精度管理に要する時間を抑制できる。
【0023】
次に、本実施形態に係る自動分析システムの動作について説明する。
【実施例1】
【0024】
図3は、実施例1に係る自動分析システムにおける動作を示すフロー図である。まず、オペレータは、試料容器200に精度管理試料を充填し、保管庫210の精度管理試料用トレイ210Aに試料容器200をセットする。なお、セットすべき、精度管理試料の本数や設置位置は、操作部101によって予め登録されており、オペレータは、その登録内容に従って作業を行う。
【0025】
そして、各分析装置190は、自身に予め登録されたルールに基づき、精度管理のトリガとなる情報を、精度管理試料依頼情報として、操作部101に対して通知する(ステップS101)。このとき、操作部101は、最初の精度管理依頼情報を受信してから10分間、他の分析装置190からも同種類の精度管理依頼情報を受信できるよう待機し、1つの精度管理試料を複数の分析装置190の精度管理に使用できるか判断する。なお、操作部101が複数の分析装置190から精度管理の依頼を待機する依頼待機時間は、操作部101で精度管理の種類毎に設定可能である(図4参照)。
【0026】
依頼待機時間が経過すると、操作部101は、分析装置190からの精度管理依頼情報に基づき、対象の精度管理試料の充填された試料容器200を取り出すよう、保管庫210へ指示する(ステップS102)。これを受けて、保管庫210は、対象の試料容器200を取り出し、搬送部120が、依頼を通知した分析装置190に対して試料容器200(精度管理試料)を搬送する(ステップS103)。そして、分析装置190が、搬送された精度管理試料の測定を行う。
【0027】
なお、操作部101が他の分析装置190からも同種類の依頼を受けていた場合には、1つの分析装置190での精度管理に使用された精度管理試料が、搬送部120によって他の分析装置190へも順次搬送され、他の分析装置190での測定にも使用される。したがって、それぞれの分析装置190へ個別に精度管理試料を投入する必要がない。ここで、従来の自動分析システムでは、同じ種類の精度管理であっても、各分析装置へ個別にオペレータが精度管理試料を投入しなければならず、本実施例によればオペレータの作業を省力化できる。
【0028】
そして、分析装置190での測定が終了すると、搬送部120は、分析装置190から保管庫210へ精度管理試料を戻す(ステップS104)。精度管理試料が保管庫210に到着すると、保管庫210は操作部101に対して精度管理試料が到着したことを通知する(ステップS105)。
【0029】
次に、操作部101は、保管庫210に戻ってきた精度管理試料について、予め登録されたテーブルを参照し、各パラメータが条件を満足しているかを確認して、全ての条件を満足していた場合、保管庫210内で保管するよう保管庫210に指示を出す(ステップS106)。なお、操作部101は、精度管理試料の残容量についても確認し、残容量が少ない場合には、保管庫210に対して、精度管理試料を廃棄ボックス210Bに廃棄する等の指示を出す。
【0030】
ここで、操作部101は、精度管理試料ごとに、保管庫210に最初に設置されてからの経過時間(保管時間)、保管庫210から取り出された回数(使用回数)、保管庫210から取り出していた時間(使用時間)、などの各パラメータをカウントしている。なお、1つの精度管理試料が保管庫210を出てから戻るまでに、複数の分析装置190で測定に使用された場合は、複数回とカウントする。
【0031】
図4は、精度管理試料の保管条件に関するテーブルを示した図である。このテーブルには、精度管理試料の種類ごとに、最大保管時間、最大使用時間お及び最大使用回数などが登録されている。最大保管時間は、当該精度管理試料を保管庫210で保管可能な時間の上限を示している。最大使用時間は、当該精度管理試料が常温環境下に存在しても品質を担保できる時間の上限値を示している。当該精度管理試料の1回の使用で常温環境下に存在する時間がほぼ一定の場合には、最大使用時間の代わりに、最大使用回数を用いても良い。例えば、精度管理試料が保管庫210から搬出されて、複数の分析装置190を経由して保管庫210に戻るまでの時間が5分の場合、最大使用時間20分は最大使用回数4回に相当する。なお、最大使用回数は、精度管理試料の測定に伴ってコンタミのリスクが増加することを考慮して、最大使用時間とは別に設定しても良い。
【0032】
図5は、精度管理試料の保管の可否を判断するステップを示したフロー図である。図5に示すように、操作部101は、保管庫210に戻ってきた精度管理試料について、それまでに保管庫210で冷蔵保存してきた時間と、最大保管時間と、を比較し(ステップS201)、最大保管時間を超えている場合は、精度管理試料を収納部130へ搬送するよう、保管庫210へ指示する(ステップS205)。操作部101は、精度管理試料を収納部130へ搬送する代わりに、精度管理試料を廃棄ボックス210Bへ廃棄するよう、保管庫210へ指示しても良い。なお、精度管理試料を保管庫210から収納部130へ搬送する場合には、搬送部120が用いられる。
【0033】
最大保管時間内の場合、操作部101は、カウントしていた使用時間と、最大使用時間と、を比較し(ステップS202)、最大使用時間を超えている場合は、精度管理試料を収納部130へ搬送するか廃棄ボックス210Bで廃棄するよう、保管庫210へ指示する(ステップS205)。
【0034】
最大使用時間内の場合、操作部101は、カウントしていた使用回数と、最大使用回数と、を比較し(ステップS203)、最大使用回数を超えている場合は、精度管理試料を収納部130へ搬送するか廃棄ボックス210Bで廃棄するよう、保管庫210へ指示する(ステップS205)。最大使用回数内の場合、操作部101は、精度管理試料を保管するよう保管庫210へ指示する(ステップS204)。
【0035】
このように、本実施例では、精度管理試料の最大保管時間、精度管理試料の最大使用時間、精度管理試料の最大使用回数、のうち少なくとも1つが超えている場合、精度管理試料を保管しないようにしたので、精度管理の精度を一定以上に保証することが可能となっている。
【0036】
なお、本実施例の自動分析システムでは、分析装置190から精度管理試料依頼が通知されない場合であっても、操作部101は、所定時間の確認間隔ごとに、最大保管時間を超過した精度管理試料がないかチェックすることで、精度管理試料の品質を担保している。チェックの結果、最大保管時間を超過した精度管理試料があった場合、保管庫210は、当該精度管理試料を収納部130へ搬送するか廃棄ボックス210Bへ廃棄する。
【0037】
ここで、従来の自動分析システムでは、各分析装置での測定が終了した精度管理試料は、各分析装置の収納部にて常温で放置されるため、放置期間が長くなって劣化した精度管理試料は、オペレータが廃棄して新しい精度管理試料を投入し直さなければならなかった。しかし、本実施例によれば、分析装置190での測定が終了した精度管理試料は、保管庫210に戻って冷蔵保存されるので、常温環境中に存在する時間が少なく、繰り返し測定に使用することが可能となっている。また、本実施例では、保管庫210に戻ってきた精度管理試料をすべて保管するのではなく、所定条件を満たす場合にのみ保管するようにしたので、精度管理試料の品質も担保できる。
【0038】
なお、本実施例では、分析装置190が、自身の所持するルールに従って、所定のタイミングで精度管理依頼情報を操作部101へ通知したが、各分析装置190のルールを予め操作部101に集約し、分析装置190からの通知によらず、操作部101が保管庫210に対して精度管理試料の搬送指示を出しても良い。
【実施例2】
【0039】
実施例1のように、1つの精度管理試料を異なる分析装置190へ順次搬送する場合、搬送部120が渋滞していると、1台目の分析装置190で測定が完了した精度管理試料を、2台目以降の分析装置190へ搬送するまでに時間を要する可能性がある。そこで、実施例2では、実施例1と異なり、分注部170で精度管理試料を別の空の試料容器200に分注し、分注された複数の分注試料を異なる分析装置190へ個別に搬送するようにした。
【0040】
図6は、実施例2に係る自動分析システムにおける動作を示すフロー図である。まず、実施例1と同様に、各分析装置190は、自身に予め登録されたルールに基づき、精度管理試料依頼情報を操作部101へ通知する(ステップS301)。次に、操作部101は、対象の精度管理試料を取り出すよう、保管庫210へ指示する(ステップS302)。これを受けて、保管庫210は、対象の精度管理試料を取り出し、搬送部120が、分注部170へ当該精度管理試料を搬送する(ステップS303)。
【0041】
そして、分注部170において、搬送された精度管理試料の入った試料容器とは別の空の試料容器200に対して、当該精度管理試料を分注する。なお、各空の試料容器200には、子検体容器生成部160でバーコードラベルが貼り付けられる。このバーコードラベルには、分注された精度管理試料であることを示す情報や、分注元の精度管理試料の情報などが、一次元バーコードとして記録されている。また、このバーコードラベルには、精度管理試料であることをオペレータが特定できる属性情報が文字などで記録されている。
【0042】
その後、分注元の精度管理試料は、搬送部120によって保管庫210へ搬送される(ステップS304)。分注元の精度管理試料が保管庫210に到着すると、保管庫210は操作部101に対して精度管理試料が到着したことを通知する(ステップS306)。次に、操作部101は、分注元の精度管理試料について、予め登録されたテーブルを参照し、各パラメータが条件を満足している場合、保管庫210内で保管するよう保管庫210に指示を出す(ステップS307)。
【0043】
一方、分注試料は、搬送部120によって、精度管理依頼情報を送信した分析装置190へ搬送される(ステップS305)。当該分析装置190での測定が終了すると、搬送部120は、分析装置190から保管庫210へ分注試料を戻す(ステップS308)。なお、分注試料についても、複数の分析装置190へ順次搬送し、それぞれの分析装置190で測定に使用しても良い。分注試料が保管庫210に到着すると、保管庫210は操作部101に対して分注試料が到着したことを通知する(ステップS309)。次に、操作部101は、分注試料について、予め登録されたテーブルを参照し、各パラメータが条件を満足している場合、保管庫210内で保管するよう保管庫210に指示を出す(ステップS310)。
【0044】
本実施例によれば、複数の分析装置190がほぼ同時に精度管理依頼情報を操作部101に通知した場合であっても、精度管理試料を分注部170で分注し、分注試料を各分析装置190へ搬送できるので、搬送部120の渋滞による精度管理の所要時間増加を抑制できる。また、元の精度管理試料だけでなく、分注試料についても、所定条件を満たす場合のみに保管庫210で保管するようにしたので、精度管理の精度も担保できる。
【0045】
なお、分注試料は、通常、対象の分析装置190で使用する量だけ生成されるため、保管庫210に戻ってきても、残容量が足りずに、廃棄ボックス210Bで廃棄されるか、収納部130へ搬送されることになる。しかし、分析装置190での精度管理試料の測定が完了し、測定データが出るまでは、分注試料を保管庫210で一時保管するのが望ましい。その理由としては、精度管理の結果が不適切であった場合、精度管理試料が悪かったのか、分析装置190が悪かったのか、判断するためである。そこで、保管庫210に戻ってきた、分注試料を含む精度管理試料は、廃棄等する場合であっても、保管庫210で一時保管され、操作部101は、精度管理の結果が出るまで待機する。分析装置190が精度管理の結果が出たことを操作部101に通知する(ステップS311)と、操作部101は、一時保管していた精度管理試料を廃棄等するよう保管庫210へ指示し、保管庫210が精度管理試料を収納部130へ搬送するか廃棄ボックス210Bで廃棄する。
【0046】
また、上述の実施例1,2は本発明を分かりやすく説明するために詳細に説明したものであり、必ずしも説明した全ての構成を備えるものに限定されるものではない。また、ある実施例の構成の一部を他の実施例の構成に置き換えることも可能であり、また、ある実施例の構成に他の実施例の構成を加えることも可能である。また、各実施例の構成の一部について、他の構成の追加・削除・置換をすることも可能である。
【符号の説明】
【0047】
101:操作部110:投入部120:搬送部121:試料認識部122:栓体検知部125,135,175,185,215:キャリア認識部130:収納部140:遠心部150:開栓部160:子検体容器生成部170:分注部180:閉栓部190:分析装置191:試料分注機構192:試薬分注機構193:試薬ディスク194:反応ディスク195:検出機構196:搬送ライン200:試料容器210:保管庫210A:精度管理試料用トレイ210B:廃棄ボックス
図1
図2
図3
図4
図5
図6