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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】プラズマ処理装置
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/3065 20060101AFI20240913BHJP
   H01L 21/205 20060101ALI20240913BHJP
   H01L 21/683 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
H01L21/302 101G
H01L21/205
H01L21/68 R
【請求項の数】 3
(21)【出願番号】P 2020068770
(22)【出願日】2020-04-07
(65)【公開番号】P2021166236
(43)【公開日】2021-10-14
【審査請求日】2023-04-07
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(74)【代理人】
【識別番号】100091720
【弁理士】
【氏名又は名称】岩崎 重美
(72)【発明者】
【氏名】中谷 信太郎
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 浩平
【審査官】小▲高▼ 孔頌
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-031956(JP,A)
【文献】特開2011-258614(JP,A)
【文献】特開2012-222233(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/3065
H01L 21/205
H01L 21/683
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
真空容器内部の処理室内に配置され上面に処理対象のウエハが載置される試料台を有し、前記処理室内にプラズマを形成して前記ウエハを処理するプラズマ処理装置であって、
前記試料台が、金属製の基材の上部に配置され円筒形を有した凸部と、この凸部上面に第1の接着を挟んで接合された誘電体製の円板形状の焼結板であってその上に前記ウエハが載せられる焼結板と、前記凸部の側壁を囲んで覆う円筒形の誘電体製の焼結体である円筒カバーと、前記焼結板の外周縁の下面とその下方の前記円筒カバーの上端部との間隙間に充填されたリング状の第2の接着とを備えたプラズマ処理装置。
【請求項2】
前記焼結板の外周縁と前記円筒カバーの上端との間の隙間の高さが前記焼結板と前記基材の凸部の上面との距離より大きくされた請求項1のプラズマ処理装置。
【請求項3】
前記試料台から取り外された前記焼結板に換えた別の焼結板が前記第1及び第2の接着層を挟んで前記試料台に取り付けられる請求項1または2に記載のプラズマ処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空容器内の処理室内に配置されたウエハを処理室内に発生させたプラズマを用いて処理するプラズマ処理装置に関して、処理室内に置かれた処理台の温度を調節してウエハの温度を処理に適した温度に調整しつつこれを処理するプラズマ処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
このようなプラズマ処理装置において、半導体ウエハ等の基板状の試料の表面に形成された複数の処理対象の膜が複数積層されている所謂多層膜を処理する時間を短縮するために、上下に隣り合う膜を同一の処理室内部で且つこれらの膜の各々の処理の間に処理室外にウエハを取り出すことなく処理することが考えられている。また、従来より、より微細な加工を高い精度で行うことが求められており、処理対象の膜をエッチング等の加工処理した結果の形状のウエハの面方向(径方向,周方向)について均一性を高くするために、処理対象の各膜においてその加工に適切なものになるようにウエハの温度を調節することが行われてきた。
【0003】
このような温度の調節する技術としては、たとえば、特開2011-258614号公報(特許文献1)に開示されるように、ウエハが載せられる面を構成する試料載置台の上部をセラミクス製の円板状の焼結体の部材及びこの下方に接着材を介して接続され内部に膜状のヒータを有した誘電体製の膜部材を有し、セラミクス製の円板及びその上面に載せられるウエハの温度を調節しつつエッチング処理する技術が知られていた。特に、本特許文献1では、セラミクス製の円板状の部材はその内部にはウエハをその上面に吸着させる静電気力を形成するために直流電力が供給される電極が内蔵されており、円板状の部材の下面に所定の厚さで膜状のヒータが形成され、円板状部材の接着剤が付された側部分を接着剤を挟んで試料載置台の導電体製の本体の上面に押しつけて接合して試料載置台を構成するものが開示されている。
【0004】
さらに、特開2017-041631号公報(特許文献2)には、複数層の部材が接着材を挟んで接合されて構成された基板支持体の端部において、上層と下層との間の凹まされた箇所に接着材の層を覆うようにエラストマーシリコーンもしくはシリコーンゴム製のエッジシールにより覆うが開示されている。特に、本従来技術では、接着材がシリコーン製のシールで覆われたことにより、接着材がプラズマにより消耗することが抑制され、損傷や粒子汚染が防止できる技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2011-258614号公報
【文献】特開2017-041631号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、上記従来技術では、次の点について十分に考慮されておらず、問題が生じていた。
【0007】
すなわち、ウエハの載置面を構成する焼結板等の板状の部材を試料台本体と接合している接着材の層の外周側の箇所を耐プラズマ性や耐腐食性の別の高い材料でリング状に覆うことで接着層の寿命を長くすることが出来ても、当該別の被覆材料が消耗して焼結板を交換する際に焼結板周囲の試料台を構成する部材が損傷してしまうと、別の被覆材を交換する間隔が試料台の交換の間隔になって、却ってプラズマ処理装置のメンテナンスをする間隔が短縮されてしまい、運転のコストが増大してしまう、いう点については、考慮されていなかった。
【0008】
本発明の目的は、運転コストを低減したプラズマ処理装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記目的は、真空容器内部の処理室内に配置され上面に処理対象のウエハが載置される試料台を有し、前記処理室内にプラズマを形成して前記ウエハを処理するプラズマ処理装置であって、前記試料台が、金属製の基材の上部に配置され円筒形を有した凸部と、この凸部上面に第1の接着材を挟んで接合された誘電体製の円板形状の焼結板であってその上に前記ウエハが載せられる焼結板と、前記凸部の側壁を囲んで覆う円筒形の誘電体製の円筒カバーと、前記焼結板の外周縁と下方の前記誘電体製の円筒カバーとの間の隙間に充填された第2の接着剤とを備えたことにより達成される。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、運転コストを低減したプラズマ処理装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】本発明に係るプラズマ処理装置の全体の構成の概略を模式的に説明する縦断面図である。
図2図1に示す実施例の試料載置台の構成の概略を拡大して示す縦断面図である。
図3図2に示す実施例の試料台及び誘電体カバーの上部外周端縁の部分の構成を拡大して模式的に示す縦断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施の形態を図面を用いて説明する。
【実施例1】
【0013】
本発明の実施例を図ないし図を用いて説明する。
【0014】
図1は、本発明に係るプラズマ処理装置の全体の構成の概略を模式的に説明する縦断面図である。図1において、プラズマ処理装置100は、真空容器101と、その上方の外周に配置されて真空容器101内部に電界又は磁界を供給する電磁場供給手段と、真空容器101下方に配置されて真空容器101内部を排気する排気手段とを備えている。
【0015】
真空容器101内部には、その内側にプラズマが形成される空間であって内側に配置された処理対象の試料が当該プラズマにより処理される処理室103と、処理室103下部に配置されて試料がその上面に載せられて保持される試料載置台107が備えられている。また、真空容器101上方には、電磁場供給手段としてマイクロ波やUHF波等の所定の周波数の電界を形成するマグネトロン等の電波源104と電波を伝播して処理室103内に導く管路である導波管105と、導波管105と接続されこの内部を伝播してきた電波が導入されて内部の空間で共振する共振容器106とが配置されている。
【0016】
さらに、真空容器の上部のソレノイドコイル113が配置されている。ソレノイドコイル113は、円筒形状の真空容器101の上部の外周を囲んで配置され、これに供給された電流により磁場を発生する。本実施例では、ソレノイドコイル113は複数の段数で配置されており、処理室103内側に上下方向の中心軸の周りに等磁場が軸対象で下向きに末広がりとなる形状の磁界が導入される。
【0017】
また、真空容器101の下方には、排気手段であるターボ分子ポンプ等の真空ポンプ102が配置され、真空容器101内部の処理室102下部で試料載置台107の直下方に配置された円形の排気用の開口と連通している。真空容器101内の処理室103は略円筒形状を備え、その下部の中央部であって前記開口の上方には略円筒形状を有してウエハがその上面に載置される試料載置台107が配置されている。
【0018】
本実施例では、処理室103,試料載置台107、開口がそれらの軸が合致するように上下に配置されており、また試料載置台107の外側壁と処理室103の内側壁との間の空間も軸が合致したリング形状となっている。なお、試料載置台107は外側壁から水平方向外側に延在する複数の梁で開口の上方で空間を空けて中空に支持されており、これらの梁は試料載置台107の上下方向の中心軸の周囲に軸対象となるように配置されている。
【0019】
円筒形状の処理室103の上方には、軸を合わせた円筒形状を有する共振容器106内の共振用の空間である共振室106′が配置されている。この共振室106′と処理室103との間は、共振室106′の底面を構成する石英等誘電体製の円板状の窓部材114が配置されて、両者の間を気密に区画している。
【0020】
窓部材114の下方には窓部材114の下面とすき間を空けて並列に石英等誘電体製の円板状のシャワープレート115が配置されており、シャワープレート115の下面が処理室103の天井面を構成している。シャワープレート115は試料載置台107の上面と対向して並列に配置されて、その中央部には処理室103内に上方からウエハ処理用のガスが導入される貫通孔が複数配置されている。上記窓部材114とシャワープレート115との間のすき間は、プラズマ処理装置100が設置されるクリーンルーム等建屋に設置された図示しないガス源から供給される処理用ガスが通流する管路が連通されており、ガス源からの処理用のガスは管路を通り上記すき間に導入されて後、貫通孔を通り下方の試料載置台107方向に処理室103内に流入する。
【0021】
試料載置台107は、内部に導電体製の電極が配置され、この電極が所定の周波数の高周波電力を出力するバイアス電源108と電気的に接続されている。試料載置台107上面の載置面上にウエハが載せられた状態でこのバイアス電源108から供給された高周波電力によりウエハ表面にバイアス電位が形成され試料載置台107上方の処理室103内に形成されるプラズマとの間の電位差により荷電粒子をウエハ上面に誘引する作用を奏する。
【0022】
さらに、試料載置台107には後述の通り、載置面表面またはウエハの温度を調節するヒータが内部に配置され、このヒータには電力を供給するヒータ電極用直流電源109が電気的に接続されている。また、試料載置台107の上部には試料の載置面を構成するAl23やY23等の誘電体の材料から構成された誘電体膜が配置されているが、その内部にはウエハを誘電体膜表面上に静電気力により吸着する静電吸着電極が配置されており、この静電吸着電極に直流電力を供給する静電吸着電極用直流電源110が電気的に接続されている。
【0023】
また、試料載置台107はウエハの処理中にプラズマから熱が伝達されて温度が上昇する。処理中に適切な温度となるように調節するために試料載置台107の内部には冷媒が供給されて通流する冷媒通路が試料載置台107の上下方向の中心軸の周りに同心状またはら旋状に配置されている。この冷媒通路の冷媒の入口,出口と連結された冷媒の管路は冷媒の温度調節を行う温調器111が連結されており、試料載置台107内部の冷媒通路及び外部の管路を通り温調器111に流入した冷媒は所定の温度に調節されて再度管路を介して試料載置台107内部の冷媒通路に供給されて循環する。
【0024】
なお、上記のプラズマ処理装置100の各部は制御部であるコントローラ112と通信手段を介して連結されて、その動作が適切に調節される。コントローラ112は図示しないメモリー等の記憶装置や演算器,通信用コネクター等から構成され、プラズマ処理装置100の複数箇所に配置された検知手段であるセンサからの出力を通信手段を介し受信し、演算器によって算出した指令を上記各部に送信して所期の結果が得られるように動作を調節する。
【0025】
上記の構成を備えた本実施例では、処理室103内にガス源からアルゴン等の不活性ガスが導入されつつ排気手段により排気されることで減圧された状態で、図示しないロボットアーム等の搬送手段により図示しないゲートを通りウエハが試料載置台107上に搬送されてこれに受け渡される。ウエハは試料載置台107の載置面を構成する誘電体膜上に載せられた後、静電吸着電極用直流電源110から誘電体膜内の電極に電力が供給され静電気力が形成されて誘電体膜上に吸着されて保持される。
【0026】
ガス源から上記シャワープレート115の貫通孔を通り処理室103内に処理用ガスが導入されつつ、真空ポンプ102の動作による開口からの排気とのバランスにより、処理室103内部の圧力が所定の範囲に調節される。電波源104で形成されたマイクロ波は導波管105内を伝播して共振容器106に到達し所定の強度の電界が内部の共振室106′で形成される。この電界は窓部材114,シャワープレート115を透過して処理室103内に供給される。
【0027】
ソレノイドコイル113から供給された磁場(磁界)と共振容器106から供給された電界との相互作用により、処理用ガスが励起されてプラズマ化され、処理室103内の試料載置台107上方の空間にプラズマが形成される。バイアス電源108からの高周波電力によって形成されたバイアス電位がウエハ表面にプラズマ中の荷電粒子を誘引して、ウエハ表面の処理対象の膜が生起される物理的,化学的反応によってエッチング等の所期の処理が行われる。
【0028】
本実施例では、プラズマの生成は上記マイクロ波による電界と磁界との相互作用によるECRを用いているが、これに限定されるものではなく、高周波を用いた静電結合手段または誘導結合手段によるプラズマ生成手段を用いても良い。
【0029】
図2は、図1に示す実施例の試料載置台の構成の概略を拡大して示す縦断面図である。本図は、図1において示した試料載置台107の構成をより詳細に示す図である。
【0030】
試料載置台107は、円板形状を備えAlまたはTi等の金属で構成される基材201と、基材201の上面に接合されて配置され、内部にヒータと静電吸着用電極を備えたAl等の誘電体による誘電体膜202を備えて構成されている。基材201は、上部の中央部に上面の高さが周囲より高くされた円筒形の凸部を有して、当該凸部の上面にこれを覆って誘電体カバー202が配置されている。さらに、基材201の凸部の円筒形の側壁の外周を覆ってAlやY等のセラミクスの焼結体から構成された円筒形状を有した側壁カバー211が配置されている。
【0031】
基材201の内部には上記の通り基材201を冷却するための冷媒が内部を流れる冷媒通路である冷媒溝203が基材201の上下方向の中心軸周りに同心状またはら旋状に配置されている。冷媒溝203は冷媒が導入される入口部及び排出される出口部が管路により真空容器101外部の温調器111と連結されており、温調器111が冷媒溝203を通り循環される冷媒の流量(速度)や冷媒の温度をコントローラ112からの指令信号に応じて調節する。
【0032】
Al等の誘電体材料により構成された誘電体カバー202の構成について説明する。誘電体カバー202は大きくわけて5つの層に分けられる。凸部上面を覆う上部の層は、その内部に静電吸着用の電極が配置されウエハの載置面を構成するセラミクス材料の焼結体から構成された円板状の部材が配置され、下方には、円板形状を有する基材201の上面に、膜状のヒータを内部に含む複数の層の誘電体材料の膜が形成されて配置されている。これら上下の層の間は、両者を接着して接合する接着層が配置されている。
【0033】
本実施例では、下方の層の誘電体材料は金属製の基材201の上面との十分な接合の強度を得るために、溶射法により形成されている。また、膜状のヒータも溶射により形成される。
【0034】
本実施例の上方の層を構成する円板状の部材は、AlやY等のセラミクス材料を所定の厚さと径とを有する円板形状に焼成して形成した焼結体である焼結セラミクス板209である。焼結セラミクス板209の内部には、直流電力が供給されて静電気力を生起する膜状の静電吸着用電極膜208が配置されており、焼結セラミクス板209の下面には静電吸着用電極膜208と電気的に接続されたコネクター部が配置され、基材201上に試料載置台107と接合された状態で静電吸着電極用直流電源110と接続される。
【0035】
下方の層を構成する誘電体製の膜は、まず基材201の上にAl等からなる第1の誘電体膜204が溶射によって形成された上に、金属材料が溶射法により所定の形状にヒータ電極膜205として形成される。ヒータ電極膜205は、溶射によって第1の誘電体膜204上に吹き付けられる際に実現を求められるウエハ又は載置面表面での温度の分布に応じた所定の形状となるようにマスクが用られる。ヒータ電極膜205を形成するため溶射される金属としては、W,抵抗率を制御したニッケル-クロム合金やニッケル-アルミ合金、あるいはWに適当な添加金属を混ぜ抵抗率を制御したものなど抵抗率が管理された金属が用いられる。
【0036】
溶射法によって形成されたこれらの膜は、融解または半融解した材料の微小な粒子が膜により覆われる対象の表面上に吹き付けられて表面と衝突した衝撃で変形した粒子が積み重なって積層されたものである。これらの粒子同士は対象の表面に衝突した際に、粒子の表面が融解した状態で接触して接合され融着し、粒子間には微小な空間が形成されている。このため膨張,収縮等変形によって部材の欠損や割れの発生が生じにくく脆性が相対的に低い。また、膜を形成した後の切削等形状の変更が容易となる。
【0037】
本実施例では、マスクの形状に合わせてヒータ電極膜205の材料を溶射した後、製膜されたヒータ電極膜205の膜の厚さを各箇所での単位面積あたりの発熱の量が膜全体で均等となるように削って調節する。これにより、ヒータ電極膜208が配置された領域で発熱量が均一化され、ウエハの周方向,径方向についてその温度の分布の不均一が抑制される。
【0038】
溶射された第1の誘電体膜204及びヒータ電極膜205上に、再びAl等誘電体材料が溶射によって吹き付けられ第2の誘電体膜206が形成される。この後、ヒータ電極膜208の上面と第2の誘電体膜206の上面との距離を、ヒータ電極膜208が配置された領域の全体で均等となるように第2の誘電体膜206上面を削って調節しても良い。
【0039】
これらの溶射による下方の膜の形成の前に予め、上方の膜である焼結セラミクス板209の焼成を別途行う。本実施例では、焼結セラミクス板209内部の静電吸着用電極膜208は、上方から見て円形の中心部とこれを囲むリング状の外周部との2つの領域に配置され、それぞれが静電吸着電極用直流電源110と電気的に接続されて異なる値の電力が静電吸着電極用直流電源110から供給される。
【0040】
焼結セラミクス板209は、厚さ方向についてその上下をセラッミック材料に挟まれた中間部分である内部にW(タングステン)等の金属から構成される静電吸着用電極膜208が包含されて配置されるとともに、静電吸着用電極膜208を内部に包含して配置された状態で円板形状に成形されたセラミクス材が、冷却された状態でその厚さが0.2~0.4mmの範囲内の値なるように焼結の条件が調節されて焼成される。
【0041】
第2の誘電体膜206が所定の形状に成形された後、その上にシリコーン系の接着材207が塗布され、焼結セラミクス板209と下方の層である第1,第2の誘電体膜204,206、ヒータ電極膜205とが、接着材207の層を挟んで押しつけられて接合され、これらが一体に形成される。なお、ヒータ電極膜205および静電吸着用電極膜208にはヒータ電極用直流電源109および静電吸着電極用直流電源110がそれぞれ接続されている。また、基材201にはバイアス電源108が接続されている。なお、本実施例では静電吸着用電極膜208は焼結セラミクス板209の下面に露出するように厚さ方向の最下部に配置されても良い。
【0042】
焼結セラミクス板209は試料載置台107の載置面を構成しており、処理室103内部のプラズマ形成空間に曝されている。このため、処理室103のプラズマ形成空間に処理室103内部の表面の付着物除去のためにプラズマが形成され、載置面上にこれを覆うクリーニング用のウエハを載せない場合には、プラズマからの相互作用を受けて消耗,損傷,汚染が増大する。また、本プラズマ処理装置100において処理した製品用のウエハの枚数が増大するにつれて、ウエハ載置面である焼結セラミクス板209上面は、加熱,冷却の温度差や反応性ガスとの相互作用等によって、損傷や汚染が増大する。
【0043】
このような汚染や損傷の進行は、ウエハの処理の精度や歩留まりを低下させてしまうことから、所定のウエハの処理の枚数や運転の時間が経過した場合、載置面の表面を清浄、正常なものに復帰させることが行われる。本実施例では、このような枚数を処理したり時間が経過したりした焼結セラミクス板209を新しいものに交換するため、焼結セラミクス板209を試料載置台107上部から取り除く。この際、基材201とその上方の誘電体カバー202とを含む試料載置台107の部材を一体のブロックとして処理室103から取り出して、新しい試料載置台107のブロックを交換して取り付ける。取り出された古い、所謂使用後のブロックは、焼結セラミクス板209が接着材207において試料載置台107本体から切り離されて取り除かれる。
【0044】
焼結セラミクス板209が取り除かれた試料載置台107のブロックの上面は、接着材207が表面に一部残っていたり、下層である台に第2の誘電体膜206が露出していたりするので、試料載置台107のブロック側では接着材207または台に第2の誘電体膜206は研磨または切削により削り取られたうえで再度溶射による第2の誘電体膜206及び塗布による接着材207の形成が行われ、別途用意された新しい焼結セラミクス板209と接合される。このようにして再度形成された試料載置台107のブロックは、同様に処理の枚数や時間が経過したり故障や不具合が発生したりして交換の必要が生じたプラズマ処理装置の交換用の試料載置台107として用いられる。
【0045】
さらに、基材201の上部中央の凸部の円筒形の側壁を覆って配置される側壁カバー211も焼結セラミクス板209と同様に、AlやY等のセラミクス材料を所定の厚さと径とを有する円筒形状に焼成して形成した焼結体である。側壁カバー211の内周側壁面は基材201の凸部の側壁の直径より僅かに大きな直径を有している。また、凸部の側壁には、凸部周囲のリング状に凹まされた凹部の上面と同じ誘電体材料の凸部側壁用の被膜により覆われており、側壁カバー211が凸部の周囲に上方からはめ込まれて配置された状態で凸部側壁と内周側壁カバー211のとの間の隙間に上記皮膜が存在している。
【0046】
さらに、円板形状を有した焼結セラミクス板209は円筒形の凸部のものより僅かに大きい直径を有し、中心が円筒形の凸部の中心と合致するように接着材207上に載せられて接合された状態で、外周縁部が凸部の外周縁から外周側に突出した状態となり、所謂オーバーハングした配置となっている。この状態で、焼結セラミクス板209の外周縁部下面と下方に位置する側壁カバー211上端との間には距離が開けられており、これらの間にはプラズマや腐食に対する耐性あるいは熱衝撃に対する強度を十分に備えたや第2の接着層213が、内周側の接着剤207或いは第1,第2の誘電体膜204,206の外周端縁を覆って充填されている。
【0047】
側壁カバー211の下端は凹部の上面を覆う誘電体材料の被膜と接続されており、当該下端から処理室103内のプラズマやガス、生成物等の粒子が内側に進入して第1,第2の誘電体膜204,206や接着材207と相互作用を生起してウエハや処理室103の内側の部材表面が汚染されることが抑制される。また、凸部の外周側のリング状の凹部上には、図示しない石英やAl等のセラミクス製のリング形状を有したサセプタリングが載せられて、側壁カバー211が直接プラズマに曝されて相互作用が生起することが抑制される。
【0048】
基材201には下方から上方に向けて穴が配置されており、その内部に基材201の上面の温度を検知する温度センサ210が配置される。温度センサ210には熱電対や白金測温抵抗体などが用いられる。この温度センサ210が検知した出力が通信手段を介してコントローラ112に受信され、コントローラ112内部の演算器を用いて検出される基材201の温度から、コントローラ112内部或いは通信可能に接続されたハードディスク等の外部の記憶装置に記憶されたプログラムを用いて、載置面である焼結セラミクス板209上面またはこれに載せられたウエハの温度の値またはその分布が推定される。
【0049】
コントローラ112は、予め上記記憶装置内に記憶されたプログラムを用いて、焼結セラミクス板209またはウエハの温度の検出結果に応じヒータ電極用直流電源109が出力すべき電力値を演算して検出し、この値を出力するようになるようにヒータ電極用直流電源109に指令を発信することで、ヒータ電極膜205の発熱の量を調整している。このように本実施例では、検知された試料載置台107の温度は、制御部であるコントローラ112にフィードバックされこれを介してヒータ電極膜205の出力が調節され、加工に最適なウエハの温度またはその分布を実現する。
【0050】
本実施例においては、ウエハ上に形成された処理対象の複数の膜の各処理の間において、ウエハの面方向について、温度の分布(温度プロファイル)を各々の処理に適切なものとなるように変化させる。上方の膜の処理が終了させて温度プロファイルを上方の膜用のものから下方の膜に適した温度プロファイルに変化させている間は、この間に膜の処理を行うと温度の条件が最適でないことから得られる加工後の形状が所期のものから大きくズレてしまうことから、バイアス電源108からのバイアス用電力の供給を停止する等処理を停止している。温度のプロファイルを高速で変化させることは処理の効率を向上する上で重要となる。
【0051】
温度のプロファイルをより速く変化させて所望のものにする上では、ヒータ電極膜205から電極表面までの熱容量を小さくすることが望ましく、本実施例ではこのような高速の温度の変化を実現するために焼結セラミクス板209の厚さを所定の範囲にしている。一方、熱容量を減少させるため焼結セラミクス板209の厚さはできるだけ薄いほうが望ましいが、焼結セラミクス板209に内蔵された静電吸着用電極膜208にウエハを静電吸着するための電圧が印加されるため、焼結セラミクス板209の厚さには絶縁破壊を起こさない下限の厚さがある。
【0052】
発明者らは、検討の結果得られた知見に基づいて、静電吸着によってウエハを固定するのに必要な吸着力を得るために静電吸着用電極膜208に印加される電圧から与えられる焼結セラミクス板209上方に形成される電界と焼結セラミクス板209のセラミクス材料が絶縁破壊を起こさない電界の比較から焼結セラミクス板209の厚さの下限を0.2m mとした。また、上記処理対象の複数の膜間でウエハ温度を変化させるのにかかる時間から必要な性能を満たすことのできる焼結セラミクス板209の厚さの上限を0.4mmとした。
【0053】
さらに、本実施例では、ウエハ面内で必要な温度均一性を達成するため、ヒータ電極膜205を溶射法によって形成し上方から見た膜の各箇所における厚さを調節しヒータ電極膜205の発熱量のウエハまたは試料の載置面の表面方向の分布の均一性を向上している。このようにエリアごとの発熱量を調整することによってウエハの面内の温度の均一性が向上する。
【0054】
さらに、図3を用いて、図2に破線の楕円部に示す試料台107の誘電体カバー202上部の端縁部の構成を拡大して説明する。図3は、図2に示す実施例の試料台及び誘電体カバーの上部外周端縁の部分の構成を拡大して模式的に示す縦断面図である。
【0055】
本図において、誘電体カバー202の外周の端縁部は、上記の通り、焼結セラミクス板209の外周端部と円筒形を有した側壁カバー211とが第2の接着層213により間を接合されて配置されている。これらの部材により、基材201の円筒形の凸部の側壁および上面の外周縁部が覆われている。特に、焼結セラミクス板209および第2の接着層213の外周端は側壁カバー211の外周側壁と上下方向に位置が揃えられており、焼結セラミクス板209と側壁カバー211の直径は、等しいかこれと見做せる程度に近似した値を有している。
【0056】
さらに、第2の接着層213の上下方向の高さは、焼結セラミクス板209の外周縁部下面と側壁カバー211の上端面との間の距離Dと等しくされ、前者が接着材207上に載せられた状態での側壁カバー211との間の隙間に第2の接着層が図上上下方向(高さ方向)の隙間と図上左右方向(半径方向)の隙間とを稠密に埋めるように充填される。本実施例では、第1の接着層である接着材207が距離Dの隙間から側壁カバー211の外周側にはみ出るように余分な量を有して第2の誘電体膜206上に塗布されており、焼結セラミクス板209が取り付けられた状態で、はみ出した接着材207が金属ブラシ等で除去される。接着剤207が隙間から除去された状態で、隙間は高さ方向にD1、径方向にWのリング状の空間として形成されており、当該リング状の空間に第2の接着層を構成する接着材が充填される。
【0057】
本実施例では、高さDは2.0乃至5.0mm内の値にされている。高さDは、基材201と焼結セラミクス板209の裏面との間の、第1,第2の誘電体膜204,206及びヒータ電極捲205および接着材207を挟んだ距離δよりも大きくされている(D>δ)。本実施例の焼結セラミクス板209は、この上に載せられて静電吸着された状態で処理室103内に形成されたプラズマを用いてウエハを処理した枚数の所定の期間内の数が大きくなると、プラズマや反応性の高いガスの反応生成物との相互作用により消耗して寸法や材料の性能が許容される範囲外となってしまう。そして、このような焼結セラミクス板209は試料台107から取り外されて、消耗していない別の焼結セラミクス板209が交換されて試料台107と新たに塗布された接着材207により接合される。
【0058】
この使用済みの焼結セラミクス板209を取り外す際には、消耗した焼結セラミクス板209を第2の接着層213の部分から割って上側に剥がす、あるいは焼結セラミクス板209と接着材207を第2の接着層213と共に、削り取る等の手段が用いられる場合がある。この際に、消耗の小さい側壁カバー211を損傷しないように、距離Dが距離δより大きくされている。なお、本実施例の接着材(第1の接着層)207の厚さは0.05乃至1.0mmにされている。
【0059】
このような構成を備えることにより、第1の接着層である接着材207は基材201の凸部の側壁の下端から誘電体カバー207及び耐プラズマ性の高い材料から構成された第2の接着層213によって覆われている。このため、接着材207や下方の第1,第2の誘電体膜204,206がプラズマに直接的に曝されず消耗や汚染が低減される。さらに、充填された第2の接着層213の厚さ(焼結セラミクス板209と側壁カバー211との隙間の高さ)Dは、焼結セラミクス板209と基材201上面との距離δより大きくされており、焼結セラミクス板209の交換の作業の際の側壁カバー211の損傷が低減される。消耗する焼結セラミクス板209を交換でき、また、消耗が抑えられた側壁カバー211により接着材207や下方の第1,第2の誘電体膜204,206の消耗や変質が低減されプラズマ処理装置100の運転コストが低減される。
【符号の説明】
【0060】
100 プラズマ処理装置
101 真空容器
103 処理室
104 電波源
107 試料載置台
109 ヒータ電極用直流電源
110 静電吸着電極用直流電源
201 基材
202 誘電体カバー
203 冷媒溝
205 ヒータ電極膜
207 接着材
208 静電吸着用電極膜
209 焼結セラミクス板
210 温度センサ。
図1
図2
図3