(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】蒸発源及び蒸着装置
(51)【国際特許分類】
C23C 14/24 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
C23C14/24 A
(21)【出願番号】P 2020141762
(22)【出願日】2020-08-25
【審査請求日】2023-08-16
(73)【特許権者】
【識別番号】591065413
【氏名又は名称】キヤノントッキ株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002860
【氏名又は名称】弁理士法人秀和特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】左納 義久
【審査官】神▲崎▼ 賢一
(56)【参考文献】
【文献】特開2014-198863(JP,A)
【文献】特開昭62-031773(JP,A)
【文献】実開平02-024056(JP,U)
【文献】国際公開第2015/136859(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 14/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
成膜材料を収容する容器を出し入れするための開口部を有する坩堝本体と、前記坩堝本体に固定され前記開口部を塞ぐ蓋と、前記坩堝本体と蓋との間の隙間を封止する金属製のガスケットと、を備える坩堝
と、
前記坩堝本体を加熱するための第1ヒータと、
前記ガスケットを加熱するための第2ヒータと、
蒸着時に前記第1ヒータと前記第2ヒータの双方をオンにし、蒸着終了後に前記第1ヒータをオフにした後に前記第2ヒータをオフにする制御装置と、
を備える蒸発源であって、
前記ガスケットの両面は平面により構成され、
前記坩堝本体には、前記開口部に沿って前記ガスケットが配される凹部が設けられ、かつ前記凹部の底面は平面により構成され、
前記蓋又は前記蓋と前記ガスケットとの間に設けられる部材における前記ガスケットが接する面も平面により構成されると共に、
前記ガスケットの材料の線膨張係数は、前記坩堝本体の材料の線膨張係数よりも大きく、
非蒸着時の温度環境下では、前記ガスケットは前記凹部の内側の側面との間に隙間を有する状態で配されており、蒸着時の温度環境下では、前記ガスケットは、熱膨張によって、前記凹部の内側の側面及び底面と前記蓋又は前記蓋と前記ガスケットとの間に設けられる部材に対して密着状態となるように構成されることを特徴とする
蒸発源。
【請求項2】
前記ガスケットを前記凹部の底面に向けて付勢する付勢部材を備えることを特徴とする
請求項1に記載の
蒸発源。
【請求項3】
前記制御装置により前記第2ヒータをオフにするタイミングは、前記坩堝本体の温度が、前記成膜材料が昇華も蒸発もしない温度まで低下していることに基づいて設定されることを特徴とする請求項
1または2に記載の蒸発源。
【請求項4】
チャンバと、
前記チャンバ内に備えられ、かつ前記チャンバ内に設置された基板の蒸着面に蒸着を行う請求項
1から3のいずれか1項に記載の蒸発源と、
を備えることを特徴とする蒸着装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空蒸着を行うために用いられる坩堝,蒸発源及び蒸着装置に関する。
【背景技術】
【0002】
真空蒸着を行う蒸着装置においては、成膜材料(蒸着材料)を蒸発または昇華させるための蒸発源が設けられている。そして、この蒸発源には成膜材料が収容される坩堝が備えられている。
図18を参照して、従来例に係る坩堝について説明する。
図18は従来例に係る坩堝の一部を示す模式的断面図である。坩堝500は、成膜材料を収容する容器を出し入れするための開口部を有する坩堝本体510と、坩堝本体510の開口部を塞ぐ蓋520と、坩堝本体510と蓋520との間の隙間を封止する金属製のガスケット530とを備えている。この従来例に係る坩堝500においては、坩堝本体510と蓋520のそれぞれに、環状突起511,521が設けられており、これらの環状突起511,521をガスケット530に食い込ませる構成が採用されている。このような構成を採用することで、安定した密封性が得られている。
【0003】
しかしながら、上記のような構成の場合、ガスケット530に環状突起511,521が食い込んだ跡が残ってしまう。そのため、数回利用すると、所望の密封性を得ることができなくなり、新品のガスケット530に交換しなければならず、コストが増えるといった課題がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2014-198863号公報
【文献】特許第3747324号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明の目的は、ガスケットの耐久寿命を延ばすことのできる坩堝,蒸発源及び蒸着装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、上記課題を解決するため、
成膜材料を収容する容器を出し入れするための開口部を有する坩堝本体と、前記坩堝本体に固定され前記開口部を塞ぐ蓋と、前記坩堝本体と蓋との間の隙間を封止する金属製のガスケットと、を備える坩堝と、
前記坩堝本体を加熱するための第1ヒータと、
前記ガスケットを加熱するための第2ヒータと、
蒸着時に前記第1ヒータと前記第2ヒータの双方をオンにし、蒸着終了後に前記第1ヒータをオフにした後に前記第2ヒータをオフにする制御装置と、
を備える蒸発源であって、
前記ガスケットの両面は平面により構成され、
前記坩堝本体には、前記開口部に沿って前記ガスケットが配される凹部が設けられ、かつ前記凹部の底面は平面により構成され、
前記蓋又は前記蓋と前記ガスケットとの間に設けられる部材における前記ガスケットが接する面も平面により構成されると共に、
前記ガスケットの材料の線膨張係数は、前記坩堝本体の材料の線膨張係数よりも大きく、
非蒸着時の温度環境下では、前記ガスケットは前記凹部の内側の側面との間に隙間を有する状態で配されており、蒸着時の温度環境下では、前記ガスケットは、熱膨張によって、前記凹部の内側の側面及び底面と前記蓋又は前記蓋と前記ガスケットとの間に設けられる部材に対して密着状態となるように構成されることを特徴とする。
【0007】
本発明によれば、坩堝本体に設けられた凹部の底面、及び蓋又は蓋とガスケットとの間に設けられる部材のうちガスケットが接する面がいずれも平面で構成されるため、従来技術のように、ガスケットに突起の跡が残ることはない。また、蒸着時の温度環境下では、ガスケットが熱膨張して、凹部の内側の側面及び底面と蓋又は蓋とガスケットとの間に設けられる部材に対して密着するため、十分な密封性が得られる。
【発明の効果】
【0008】
以上説明したように、本発明によれば、ガスケットの耐久寿命を延ばすことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図2】本発明の実施例1に係る坩堝の概略構成図である。
【
図3】本発明の実施例1に係るガスケットの概略構成図である。
【
図4】本発明の実施例1に係る坩堝本体の概略構成図である。
【
図5】本発明の実施例1に係る蓋の概略構成図である。
【
図6】本発明の実施例1に係る坩堝の挙動説明図である。
【
図7】本発明の実施例1に係る坩堝の挙動説明図である。
【
図8】本発明の実施例2に係る蒸発源の一部を示す模式的断面図である。
【
図9】本発明の実施例2に係る蒸発源の制御フロー図である。
【
図10】本発明の実施例3に係る蒸発源の一部を示す模式的断面図である。
【
図11】本発明の実施例4に係る蒸発源の一部を示す模式的断面図である。
【
図12】本発明の実施例5に係る蒸発源の一部を示す模式的断面図である。
【
図13】本発明の実施例6に係る坩堝の一部を示す模式的断面図である。
【
図14】本発明の実施例7に係る蒸発源の一部を示す模式的断面図である。
【
図15】本発明の実施例8に係る蒸発源の一部を示す模式的断面図である。
【
図16】本発明の実施例9に係る蒸発源の一部を示す模式的断面図である。
【
図17】本発明の実施例10に係る蒸発源の一部を示す模式的断面図である。
【
図18】従来例に係る坩堝の一部を示す模式的断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下に図面を参照して、この発明を実施するための形態を、実施例に基づいて例示的に詳しく説明する。ただし、この実施例に記載されている構成部品の寸法、材質、形状、その相対配置などは、特定的な記載がない限りは、この発明の範囲をそれらのみに限定する趣旨のものではない。
【0011】
(実施例1)
図1~
図7を参照して、本発明の実施例1に係る坩堝、蒸発源及び蒸着装置について説明する。
【0012】
<蒸着装置>
図1は蒸着装置の概略構成図である。蒸着装置1は、真空ポンプ3によって、内部が真空に近い状態(減圧雰囲気)となるように構成されるチャンバ2と、チャンバ2の内部に配置される蒸発源10とを備えている。蒸発源10は、基板Bに蒸着させる物質の材料(成膜材料、蒸着材料)を加熱させることで、当該材料を蒸発又は昇華させる役割を担っている。この蒸発源10によって蒸発または昇華された物質が、チャンバ2の内部に設置された基板Bの蒸着面(蒸発源10側の表面)に付着されることで、基板Bに薄膜が形成される。
【0013】
そして、蒸発源10は、坩堝100と、坩堝100を加熱する加熱ヒータ200と、加
熱ヒータ200を制御する制御装置300とを備えている。なお、本実施例に係る制御装置300においては、加熱ヒータ200だけでなく、真空ポンプ3など、蒸着装置1全体の動作を制御するように構成されている。
【0014】
<坩堝>
図2は本発明の実施例1に係る坩堝の概略構成図であり、同図(a)は坩堝の平面図であり、同図(b)は同図(a)中のAA断面図である。
図3は本発明の実施例1に係るガスケットの概略構成図であり、同図(a)はガスケットの平面図であり、同図(b)は同図(a)中のBB断面図である。
図4は本発明の実施例1に係る坩堝本体の概略構成図であり、同図(a)は坩堝本体の正面図(ガスケットが配される側から見た図)であり、同図(b)は同図(a)中のCC断面図である。
図5は本発明の実施例1に係る蓋の概略構成図であり、同図(a)は蓋の背面図(ガスケットが密着する側から見た図)であり、同図(b)は同図(a)中のDD断面図である。
【0015】
本実施例に係る坩堝100は、成膜材料120を収容する容器130を出し入れするための開口部111を有する坩堝本体110と、開口部111を塞ぐ蓋140と、坩堝本体110と蓋140との間の隙間を封止する金属製のガスケット150とを備えている。坩堝本体110と蓋140とは固定具160により固定される。なお、固定具160については、ボルトやナットなど各種公知技術を採用し得る。また、坩堝本体110には、蒸発又は昇華する成膜材料120を基板Bに向けて放出させるための放出口112が設けられている。
【0016】
ガスケット150は、中央に開口部151を有する平板状の部材により構成される。つまり、ガスケット150の両面は平面により構成されている。坩堝本体110には、開口部111に沿ってガスケット150が配される凹部113が設けられている。この凹部113の底面(ガスケット150が接する面)は平面により構成されている。また、坩堝本体110には、ネジ軸114が設けられている。そして、本実施例に係る蓋140においても、ガスケット150が配される凹部141が設けられている。この凹部141の底面(ガスケット150が接する面を含む)も平面により構成されている。また、蓋140には、ネジ軸114が挿通される挿通孔142が設けられている。これにより、蓋140は、それぞれの挿通孔142にネジ軸114が挿通されるように坩堝本体110に取り付けられた状態で、固定具160(ナット)によって固定される。なお、本実施例においては、ガスケット150の中央に開口部151を設けているが、この開口部151は設けなくてもよい。
【0017】
<坩堝の挙動>
図6及び
図7は本発明の実施例1に係る坩堝の挙動説明図である。
図6は坩堝本体とガスケットとの関係を坩堝本体の正面側から見た様子を示しており、
図7は坩堝を断面的に見た様子を示している。
図6(a)及び
図7(a)は非蒸着時の温度環境下(室温環境下)の状態を示し、
図6(b)及び
図7(b)は蒸着時の温度環境下の状態を示している。
【0018】
本実施例においては、ガスケット150の材料の線膨張係数が、坩堝本体110の材料の線膨張係数よりも大きく、かつ蓋140の材料の線膨張係数よりも大きくなるように、各部材の材料が選定されている。例えば、ガスケット150の材料をアルミニウムとし、坩堝本体110及び蓋140の材料をチタンとすると好適である。
【0019】
そして、非蒸着時の温度環境下では、ガスケット150は坩堝本体110の凹部113の内側の側面との間に隙間を有する状態で配されるように構成されている(
図6(a)参照)。なお、本実施例においては、非蒸着時の温度環境下では、ガスケット150は蓋140の凹部141の内側の側面との間にも隙間を有する状態で配されるように構成されて
いる。このとき、ガスケット150と凹部113の底面、及びガスケット150と凹部141の底面との間に微小な隙間が形成されるように設定することもできるし(
図7(a)参照)、隙間がないように設定することもできる。
【0020】
蒸着処理がなされる際においては、成膜材料120を蒸発又は昇華させるために、加熱ヒータ200によって坩堝100が加熱され、坩堝100は高温状態となる。このような蒸着時の温度環境下では、ガスケット150は、熱膨張によって、坩堝本体110の凹部113の内側の側面及び底面と蓋140に対して密着状態となる(
図6(b)及び
図7(b)参照)。なお、本実施例においては、蒸着時の温度環境下では、ガスケット150は、熱膨張によって、蓋140の凹部141の内側の側面及び底面に対して密着状態となる(
図7(b)参照)。
【0021】
<本実施例に係る坩堝、蒸発源及び蒸着装置の優れた点>
本実施例によれば、坩堝本体110に設けられた凹部113の底面、及び蓋140のうちガスケット150が接する面がいずれも平面で構成される。そのため、従来技術のように、ガスケット150に突起の跡が残ることはない。従って、ガスケット150の耐久寿命を延ばすことができ、ガスケット150を、従来技術に比べて、より多く使用することができる。これにより、コストも抑制することができる。また、蒸着時の温度環境下では、ガスケット150が熱膨張して、坩堝本体110の凹部113の内側の側面及び底面と蓋140に対して密着するため、十分な密封性が得られる。以上のように、本実施例によれば、蒸着時においては、十分な密封性を得ることができる。
【0022】
(実施例2)
本実施例においては、蒸着処理後の成膜材料の漏れ対策を施した蒸発源の構成を示す。基本的な構成および作用については実施例1と同一なので、同一の構成部分については同一の符号を付して、その説明は適宜省略する。
図8は本発明の実施例2に係る蒸発源の一部を示す模式的断面図であり、実施例1と異なる構成を明示した部分を拡大した断面図である。
図9は本発明の実施例2に係る蒸発源の制御フロー図である。本実施例に係る蒸着装置全体の構成については、実施例1と同様である。
【0023】
坩堝100Aは、実施例1と同様に、坩堝本体110と、容器(不図示)と、蓋140Aと、ガスケット150と、固定具160とを備えている。本実施例に係る蓋140Aにおいては、実施例1とは異なり、凹部141は設けられていない。本実施例においては、蓋140Aにおけるガスケット150との対向面側は平面で構成されている。本実施例においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0024】
そして、本実施例に係る蒸発源10Aにおいては、坩堝100Aを加熱する加熱ヒータとして、坩堝本体110を加熱するための第1ヒータ210と、ガスケット150を加熱するための第2ヒータ220とを備えている。本実施例においては、制御装置300は、蒸着時に第1ヒータ210と第2ヒータ220の双方をオンにし、蒸着終了後に第1ヒータ210をオフにした後に第2ヒータ220をオフにするようにしている。以下、本実施例に係る蒸発源10Aの制御方法について、
図9の制御フローを参照して説明する。
【0025】
制御装置300においては、蒸着処理の開始命令を受けると(S0)、第1ヒータ210(坩堝用ヒータ)をオンにし(S1)、かつ第2ヒータ220(ガスケット用ヒータ)をオンにする(S2)。なお、これらをオンにするタイミングは、順序を逆にしてもよいし、同時にしてもよい。第1ヒータ210と第2ヒータ220がオンにされることで坩堝100Aが加熱され、坩堝内の環境温度が一定以上になることで、成膜材料が蒸発又は昇華して、蒸着処理が行われる。そして、制御装置300は、予め設定されているプログラム処理に基づいて、蒸着を終了するか否かを判断する(S4)。これにより、蒸着が終了
されない間は蒸着処理が続行され(S3)、蒸着終了と判断されると第1ヒータ210はオフにされる(S5)。
【0026】
その後、制御装置300は、第2ヒータ220をオフにするか否かを判断する(S6)。ここで、制御装置300により第2ヒータ220をオフにするタイミングは、坩堝本体110の温度が、成膜材料が昇華も蒸発もしない温度まで低下していることに基づいて設定される。例えば、第1ヒータ210をオフにしてからの経過時間が予め定めた時間に達したか否かを判定し、当該時間を経過したタイミングで第2ヒータ220をオフにするように設定することができる。つまり、坩堝本体110の温度が、第1ヒータ210をオフにしてから成膜材料が昇華も蒸発もしない温度に低下するまでに必要な時間を設定すればよい。なお、この時間については、実験データや経験則等に基づいて設定することができる。また、坩堝本体110の温度を測定するセンサを設けて、当該センサによって測定される温度が、成膜材料が昇華も蒸発もしない温度に低下したタイミングで第2ヒータ220をオフにする制御を採用することもできる。以上のように、制御装置300が、第2ヒータ220をオフにするか否かを判断し(S6)、第2ヒータ220をオフにする(S7)ことで、坩堝100Aの加熱制御が終了する(S8)。
【0027】
以上のように、本実施例に係る蒸発源10Aによれば、第1ヒータ210がオフになってから第2ヒータ220がオフになるまでの間もガスケット150が加熱されて膨張しているため、密封性を得ることができる。そして、制御装置300により第2ヒータ220をオフにするタイミングは、坩堝本体110の温度が、成膜材料が昇華も蒸発もしない温度まで低下していることに基づいて設定される。従って、第1ヒータ210がオフになっても、成膜材料が昇華または蒸発している間は密封機能が発揮される。
【0028】
(実施例3)
図10は本発明の実施例3に係る蒸発源の一部を示す模式的断面図であり、実施例1と異なる構成を明示した部分を拡大した断面図である。本実施例に係る蒸着装置全体の構成については、実施例1と同様である。
【0029】
坩堝100Bは、実施例1と同様に、坩堝本体110と、容器(不図示)と、蓋140Bと、ガスケット150と、固定具160とを備えている。本実施例に係る蓋140Bにおいては、実施例2と同様に、凹部141は設けられていない。本実施例においては、蓋140Bにおけるガスケット150との対向面側は平面で構成されている。
【0030】
また、本実施例に係る蒸発源10Bにおいては、実施例2と同様に、坩堝100Bを加熱する加熱ヒータとして、坩堝本体110を加熱するための第1ヒータ210と、ガスケット150を加熱するための第2ヒータ220とを備えている。そして、本実施例は、蓋140Bとガスケット150との間に、第2ヒータ220が設けられている。第2ヒータ220におけるガスケット150が接する面は平面により構成されている。本実施例は、蒸着時の温度環境下では、ガスケット150は、熱膨張によって、坩堝本体110の凹部113の内側の側面及び底面と第2ヒータ220に対して密着状態となる。本実施例においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。なお、加熱ヒータは、非導電性の金属板にヒータ線が設けられた構成を採用することができる。第2ヒータ220として、このように構成される加熱ヒータを採用することで、ガスケット150は、第2ヒータ220に対して密着した状態となり、安定した密封機能を発揮する。なお、第2ヒータ200におけるガスケット150との密着面は、シール面となるため、平滑度が高くなるように加工処理を施すと好適である。
【0031】
また、本実施例においても、実施例2で説明した制御フローと同様に、制御装置300は、蒸着時に第1ヒータ210と第2ヒータ220の双方をオンにし、蒸着終了後に第1
ヒータ210をオフにした後に第2ヒータ220をオフにするようにしている。本実施例においても、実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0032】
(実施例4)
図11は本発明の実施例4に係る蒸発源の一部を示す模式的断面図であり、実施例1と異なる構成を明示した部分を拡大した断面図である。本実施例に係る蒸着装置全体の構成については、実施例1と同様である。
【0033】
坩堝100Cは、実施例1と同様に、坩堝本体110と、容器(不図示)と、蓋140Cと、ガスケット150と、固定具160とを備えている。本実施例に係る蓋140Cにおいては、実施例2と同様に、凹部141は設けられていない。本実施例においては、蓋140Cにおけるガスケット150との対向面側は平面で構成されている。
【0034】
また、本実施例に係る蒸発源10Cにおいては、実施例2と同様に、坩堝100Cを加熱する加熱ヒータとして、坩堝本体110を加熱するための第1ヒータ210と、ガスケット150を加熱するための第2ヒータ220とを備えている。そして、本実施例は、ガスケット150の開口部151の内側に第2ヒータ220が配されるように、第2ヒータ220は蓋140Cに固定されている。本実施例は、第1,2実施例と同様に、蒸着時の温度環境下では、ガスケット150は、熱膨張によって、坩堝本体110の凹部113の内側の側面及び底面と蓋140Cに対して密着状態となる。本実施例においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0035】
また、本実施例においても、実施例2で説明した制御フローと同様に、制御装置300は、蒸着時に第1ヒータ210と第2ヒータ220の双方をオンにし、蒸着終了後に第1ヒータ210をオフにした後に第2ヒータ220をオフにするようにしている。本実施例においても、実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0036】
(実施例5)
図12は本発明の実施例5に係る蒸発源の一部を示す模式的断面図であり、実施例1と異なる構成を明示した部分を拡大した断面図である。本実施例に係る蒸着装置全体の構成については、実施例1と同様である。
【0037】
坩堝100Dは、実施例1と同様に、坩堝本体110と、容器(不図示)と、蓋140Dと、ガスケット150Dと、固定具160とを備えている。本実施例に係るガスケット150Dにおいては、実施例1とは異なり、開口部151が設けられていない。ただし、本実施例においても、開口部151を設ける構成を採用することは可能である。また、本実施例に係る蓋140Dにおいては、実施例1とは異なり、ガスケット150Dではなく、第2ヒータ220を配置させるための凹部141Dが設けられている。なお、本実施例においては、蓋140Dにおけるガスケット150Dとの密着面(接触面)は平面で構成されている。
【0038】
また、本実施例に係る蒸発源10Dにおいては、実施例2と同様に、坩堝100Dを加熱する加熱ヒータとして、坩堝本体110を加熱するための第1ヒータ210と、ガスケット150Dを加熱するための第2ヒータ220とを備えている。そして、本実施例は、蓋140Dに設けられた凹部141Dの内側に第2ヒータ220が配されるように、第2ヒータ220は蓋140Dに固定されている。本実施例は、第1,2実施例と同様に、蒸着時の温度環境下では、ガスケット150Dは、熱膨張によって、坩堝本体110の凹部113の内側の側面及び底面と蓋140Dに対して密着状態となる。本実施例においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0039】
また、本実施例においても、実施例2で説明した制御フローと同様に、制御装置300は、蒸着時に第1ヒータ210と第2ヒータ220の双方をオンにし、蒸着終了後に第1ヒータ210をオフにした後に第2ヒータ220をオフにするようにしている。本実施例においても、実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0040】
(実施例6)
図13は本発明の実施例6に係る坩堝の一部を示す模式的断面図であり、実施例1と異なる構成を明示した部分を拡大した断面図である。本実施例に係る蒸着装置全体の構成については、実施例1と同様である。
【0041】
本実施例に係る坩堝100Eは、実施例1と同様に、坩堝本体110と、容器(不図示)と、蓋140Eと、ガスケット150と、固定具160とを備えている。本実施例に係る蓋140Eにおいては、実施例2と同様に、凹部141は設けられていない。本実施例においては、蓋140Eにおけるガスケット150との対向面側は平面で構成されている。従って、蓋140Eにおけるガスケット150が接する面が平面であることについては、実施例1と同様である。本実施例においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0042】
そして、本実施例においては、ガスケット150を坩堝本体110の凹部113の底面に向けて付勢する付勢部材としてのスプリング170を備えている。すなわち、固定具160であるナットと蓋140Eとの間に、スプリング170を配した状態で、固定具160が締め付けられている。これにより、ガスケット150は、蓋140Eに押されて、坩堝本体110の凹部113の底面に向けて付勢される。以上のような構成を採用することで、非蒸着時の温度環境下(室温環境下)においても、ガスケット150と坩堝本体110の凹部113の底面との間に隙間が生じてしまうことを抑制することができる。従って、蒸着処理後における成膜材料の漏れを抑制することができる。
【0043】
(実施例7)
図14は本発明の実施例7に係る蒸発源の一部を示す模式的断面図であり、実施例1と異なる構成を明示した部分を拡大した断面図である。本実施例に係る蒸着装置全体の構成については、実施例1と同様である。本実施例に係る蒸発源10Fにおいても、実施例1と同様に、坩堝100Fと、坩堝100Fを加熱する加熱ヒータと、加熱ヒータの動作を制御する制御装置300(
図1参照)とを備えている。
【0044】
坩堝100Fは、実施例1と同様に、坩堝本体110と、容器(不図示)と、蓋140Fと、ガスケット150と、固定具160とを備えている。本実施例に係る蓋140Fにおいては、実施例2と同様に、凹部141は設けられていない。本実施例においては、蓋140Fにおけるガスケット150との対向面側は平面で構成されている。従って、蓋140Fにおけるガスケット150が接する面が平面であることについては、実施例1と同様である。本実施例においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0045】
そして、本実施例においては、実施例6と同様に、ガスケット150を坩堝本体110の凹部113の底面に向けて付勢する付勢部材としてのスプリング170を備えている。本実施例においても、実施例6と同様の効果を得ることができる。
【0046】
また、本実施例に係る蒸発源10Fにおいては、坩堝100Fを加熱する加熱ヒータとして、坩堝本体110を加熱するための第1ヒータ210と、ガスケット150を加熱するための第2ヒータ220とを備えている。本実施例においては、実施例2で説明した制御フローと同様に、制御装置300は、蒸着時に第1ヒータ210と第2ヒータ220の双方をオンにし、蒸着終了後に第1ヒータ210をオフにした後に第2ヒータ220をオ
フにするようにしている。本実施例においても、実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0047】
以上のように、本実施例においては、実施例2の効果に加えて、実施例6の効果も加わるため、蒸着処理後における成膜材料の漏れをより確実に抑制することができる。
【0048】
(実施例8)
図15は本発明の実施例8に係る蒸発源の一部を示す模式的断面図であり、実施例1と異なる構成を明示した部分を拡大した断面図である。本実施例に係る蒸着装置全体の構成については、実施例1と同様である。本実施例に係る蒸発源10Gにおいても、実施例1と同様に、坩堝100Gと、坩堝100Gを加熱する加熱ヒータと、加熱ヒータの動作を制御する制御装置300(
図1参照)とを備えている。
【0049】
坩堝100Gは、実施例1と同様に、坩堝本体110と、容器(不図示)と、蓋140Gと、ガスケット150と、固定具160とを備えている。本実施例に係る蓋140Gにおいては、実施例2と同様に、凹部141は設けられていない。本実施例においては、蓋140Gにおけるガスケット150との対向面側は平面で構成されている。
【0050】
また、本実施例に係る蒸発源10Gにおいては、実施例2と同様に、坩堝100Gを加熱する加熱ヒータとして、坩堝本体110を加熱するための第1ヒータ210と、ガスケット150を加熱するための第2ヒータ220とを備えている。そして、本実施例は、蓋140Gとガスケット150との間に、第2ヒータ220が設けられている。第2ヒータ220におけるガスケット150が接する面は平面により構成されている。本実施例は、蒸着時の温度環境下では、ガスケット150は、熱膨張によって、坩堝本体110の凹部113の内側の側面及び底面と第2ヒータ220に対して密着状態となる。本実施例においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0051】
また、本実施例においても、実施例2で説明した制御フローと同様に、制御装置300は、蒸着時に第1ヒータ210と第2ヒータ220の双方をオンにし、蒸着終了後に第1ヒータ210をオフにした後に第2ヒータ220をオフにするようにしている。本実施例においても、実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0052】
そして、本実施例においては、実施例6,7と同様に、ガスケット150を坩堝本体110の凹部113の底面に向けて付勢する付勢部材としてのスプリング170を備えている。
【0053】
(実施例9)
図16は本発明の実施例9に係る蒸発源の一部を示す模式的断面図であり、実施例1と異なる構成を明示した部分を拡大した断面図である。本実施例に係る蒸着装置全体の構成については、実施例1と同様である。本実施例に係る蒸発源10Hにおいても、実施例1と同様に、坩堝100Hと、坩堝100Hを加熱する加熱ヒータと、加熱ヒータの動作を制御する制御装置300(
図1参照)とを備えている。
【0054】
坩堝100Hは、実施例1と同様に、坩堝本体110と、容器(不図示)と、蓋140Hと、ガスケット150と、固定具160とを備えている。本実施例に係る蓋140Hにおいては、実施例2と同様に、凹部141は設けられていない。本実施例においては、蓋140Hにおけるガスケット150との対向面側は平面で構成されている。
【0055】
また、本実施例に係る蒸発源10Hにおいては、実施例2と同様に、坩堝100Hを加熱する加熱ヒータとして、坩堝本体110を加熱するための第1ヒータ210と、ガスケ
ット150を加熱するための第2ヒータ220とを備えている。そして、本実施例は、ガスケット150の開口部151の内側に第2ヒータ220が配されるように、第2ヒータ220は蓋140Hに固定されている。本実施例は、実施例1,2と同様に、蒸着時の温度環境下では、ガスケット150は、熱膨張によって、坩堝本体110の凹部113の内側の側面及び底面と蓋140Hに対して密着状態となる。本実施例においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0056】
また、本実施例においても、実施例2で説明した制御フローと同様に、制御装置300は、蒸着時に第1ヒータ210と第2ヒータ220の双方をオンにし、蒸着終了後に第1ヒータ210をオフにした後に第2ヒータ220をオフにするようにしている。本実施例においても、実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0057】
そして、本実施例においては、実施例6~8と同様に、ガスケット150を坩堝本体110の凹部113の底面に向けて付勢する付勢部材としてのスプリング170を備えている。
【0058】
(実施例10)
図17は本発明の実施例10に係る蒸発源の一部を示す模式的断面図であり、実施例1と異なる構成を明示した部分を拡大した断面図である。本実施例に係る蒸着装置全体の構成については、実施例1と同様である。本実施例に係る蒸発源10Iにおいても、実施例1と同様に、坩堝100Iと、坩堝100Iを加熱する加熱ヒータと、加熱ヒータの動作を制御する制御装置300(
図1参照)とを備えている。
【0059】
坩堝100Iは、実施例1と同様に、坩堝本体110と、容器(不図示)と、蓋140Iと、ガスケット150Iと、固定具160とを備えている。本実施例に係るガスケット150Iにおいては、実施例1とは異なり、開口部151が設けられていない。ただし、本実施例においても、開口部151を設ける構成を採用することは可能である。また、本実施例に係る蓋140Iにおいては、実施例1とは異なり、ガスケット150Iではなく、第2ヒータ220を配置させるための凹部141Iが設けられている。なお、本実施例においては、蓋140Iにおけるガスケット150との密着面(接触面)は平面で構成されている。
【0060】
また、本実施例に係る蒸発源10Iにおいては、実施例2と同様に、坩堝100Iを加熱する加熱ヒータとして、坩堝本体110を加熱するための第1ヒータ210と、ガスケット150Iを加熱するための第2ヒータ220とを備えている。そして、本実施例は、蓋140Iに設けられた凹部141Iの内側に第2ヒータ220が配されるように、第2ヒータ220は蓋140Iに固定されている。本実施例は、実施例1,2と同様に、蒸着時の温度環境下では、ガスケット150Iは、熱膨張によって、坩堝本体110の凹部113の内側の側面及び底面と蓋140Iに対して密着状態となる。本実施例においても、実施例1と同様の効果を得ることができる。
【0061】
また、本実施例においても、実施例2で説明した制御フローと同様に、制御装置300は、蒸着時に第1ヒータ210と第2ヒータ220の双方をオンにし、蒸着終了後に第1ヒータ210をオフにした後に第2ヒータ220をオフにするようにしている。本実施例においても、実施例2と同様の効果を得ることができる。
【0062】
そして、本実施例においては、実施例6~9と同様に、ガスケット150を坩堝本体110の凹部113の底面に向けて付勢する付勢部材としてのスプリング170を備えている。
【0063】
(その他)
実施例3,8においては、蓋とガスケットとの間に第2ヒータを設けて、ガスケットは、蓋ではなく、第2ヒータに密着する構成を示した。しかしながら、これらの実施例において、第2ヒータに蓋としての機能を兼備させることもできる。これにより、別途、蓋を設ける必要がなくなり、部品点数を削減することができる。第2ヒータとして、非導電性の金属板にヒータ線が設けられた構成を採用することで、蓋としての機能も持たせることができる。また、第2ヒータにおけるガスケットとの接触面(密着面)は、シール面となるため、平滑度が高くなるように加工処理を施すと好適である。
【0064】
ガスケット150、坩堝本体110に設けられる開口部111と凹部113、及び蓋140に設けられる凹部141の形状については、上記各実施例に示された形状に限定されることはない。坩堝本体110に設けられる開口部111と凹部113、及び蓋140に設けられる凹部141の平面形状は、ガスケット150の平面形状と相似形状(寸法はガスケット150よりもやや大きい形状)とすればよい。例えば、上記実施例1においては、ガスケット150における外壁面は平面同士を湾曲面(いわゆるR面)で繋ぐ構成を示したが、
図3中の丸の中に示すように、湾曲面を設けなくてもよい。ガスケット150における開口部151の内壁面についても同様である。このような構成を採用した場合には、坩堝本体110における凹部113の内壁面及び開口部111の内壁面の形状についても同様の形状を採用すればよい(
図4中の丸の中の図を参照)。また、蓋140の凹部141の内壁面の形状についても同様である(
図5中の丸の中の図を参照)。
【符号の説明】
【0065】
1 蒸着装置
2 チャンバ
3 真空ポンプ
10 蒸発源
100 坩堝
110 坩堝本体
111 開口部
112 放出口
113 凹部
114 ネジ軸
120 成膜材料
130 容器
140 蓋
141 凹部
142 挿通孔
150 ガスケット
151 開口部
160 固定具
170 スプリング
200 加熱ヒータ
210 第1ヒータ
220 第2ヒータ
300 制御装置