(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】欠陥検査方法及び欠陥検査装置
(51)【国際特許分類】
G01N 21/892 20060101AFI20240913BHJP
G01N 21/88 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
G01N21/892 A
G01N21/88 H
(21)【出願番号】P 2021011283
(22)【出願日】2021-01-27
【審査請求日】2023-11-15
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】小林 信次
(72)【発明者】
【氏名】松田 俊介
【審査官】小野寺 麻美子
(56)【参考文献】
【文献】特表2010-534351(JP,A)
【文献】特開2012-233886(JP,A)
【文献】特開2016-212274(JP,A)
【文献】特開2020-160422(JP,A)
【文献】特開2005-009919(JP,A)
【文献】特開2015-225041(JP,A)
【文献】特開2013-050381(JP,A)
【文献】特開2018-013438(JP,A)
【文献】米国特許第05666199(US,A)
【文献】韓国公開特許第10-2014-0111484(KR,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 21/84 - G01N 21/958
G01M 11/00
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
直線偏光板を有する光学フィルムを被検査物とする、前記直線偏光板の欠陥検査方法であって、
前記光学フィルムは、
剥離フィルムと、前記直線偏光板と、プロテクトフィルムと、をこの順に有し、
前記直線偏光板と前記剥離フィルムとの間に、λ/4位相差層をさらに有し、
前記欠陥検査方法は、
光軸に沿って、第1偏光子を有する第1フィルタ、
λ/4位相差板、第1位相差補償板、前記光学フィルム、第2位相差補償板、及び第2偏光子を有する第2フィルタ、をこの順で、かつ、前記光学フィルムを、前記剥離フィルム側の表面が前記第1位相差補償板に対向する向きで配置する配置工程と、
前記第1フィルタ側及び前記第2フィルタ側のいずれか一方から、前記光軸に沿って光を入射し、他方から出射される光を検出する検出工程と、
前記検出工程での検出結果に基づいて、前記光学フィルムの欠陥を判断する判断工程と、を有し、
前記配置工程において、
下記の条件a及び条件b:
(a)前記第1偏光子の吸収軸と前記直線偏光板の吸収軸とのなす角度が90°±5°の範囲内である;
(b)前記第2偏光子の吸収軸と前記直線偏光板の吸収軸とのなす角度が90°±30°の範囲内である、
を満たすように配置し、
前記検出工程において、
前記第1位相差補償板は前記剥離フィルムが有する複屈折を補償し、前記第2位相差補償板は前記プロテクトフィルムが有する複屈折を補償する、欠陥検査方法。
【請求項2】
前記剥離フィルムは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる、請求項1に記載の欠陥検査方法。
【請求項3】
前記プロテクトフィルムは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる、請求項1又は2に記載の欠陥検査方法。
【請求項4】
前記直線偏光板は、重合性液晶化合物の硬化物を含む偏光子を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の欠陥検査方法。
【請求項5】
直線偏光板を有する光学フィルムを被検査物とする、前記直線偏光板の欠陥検査装置であって、
前記光学フィルムは、
剥離フィルムと、前記直線偏光板と、プロテクトフィルムと、をこの順に有し、
前記直線偏光板と前記剥離フィルムとの間に、λ/4位相差層をさらに有し、
前記欠陥検査装置は、
光軸に沿って、第1偏光子を有する第1フィルタ、
λ/4位相差板、前記剥離フィルムが有する複屈折を補償可能な第1位相差補償板、前記プロテクトフィルムが有する複屈折を補償可能な第2位相差補償板、及び第2偏光子を有する第2フィルタ、をこの順に有し、さらに、前記第1フィルタ側又は前記第2フィルタ側から前記光軸に沿って光を照射可能な光源を有し、
前記光学フィルムが前記剥離フィルム側の表面が前記第1位相差補償板に対向する向きで配置される配置工程の後に欠陥検査が行われ、
前記配置工程において、
下記の条件a及び条件b:
(a)前記第1偏光子の吸収軸と前記直線偏光板の吸収軸とのなす角度が90°±5°の範囲内である;
(b)前記第2偏光子の吸収軸と前記直線偏光板の吸収軸とのなす角度が90°±30°の範囲内である、
を満たすように配置される、欠陥検査装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学フィルムを被検査物とする直線偏光板の欠陥検査方法及び欠陥検査装置に関する。
【背景技術】
【0002】
液晶表示装置や有機EL表示装置等の表示装置に用いられる偏光板は、一般的に偏光子が2枚の保護フィルムに挟まれて構成されている。偏光板は、表示装置に貼合するために一方の保護フィルムには粘着剤層が積層され、他方の保護フィルムには、流通時に当該保護フィルムの表面等に傷等が生じることを防止するためのプロテクトフィルムが積層されることがある。粘着剤層には、通常、剥離フィルムが積層される。偏光子の具体例としては、一軸延伸されたポリビニルアルコール系(PVA系)樹脂フィルムにヨウ素や二色性染料等の二色性色素が吸着配向したPVA系偏光フィルムや、重合性液晶化合物の重合体と二色性色素とを含む液晶硬化層からなる偏光子(以下、「液晶偏光子」ともいう)等が挙げられる。液晶偏光子は、通常、重合性液晶化合物を含む組成物を基材フィルム上に塗布して硬化させることにより形成され、薄い偏光子を製造できる利点がある。このようなPVA系偏光フィルムや液晶偏光子は後述のように、特定の振動面の直線偏光を通過する作用を有するものであり、「直線偏光子」と呼ばれる。また、この直線偏光子の片面又は両面に保護フィルムを有するものは、一般に「直線偏光板」と呼ばれる。
【0003】
偏光板や偏光子にはその製造段階で欠陥が生じることがある。例えば、偏光子と保護フィルムとの間に異物が混入したり、気泡が残ったりする欠陥が生じることがある。また、液晶偏光子は、製造時の塗布ムラにより、偏光板の光学特性にムラが生じることがある。
【0004】
そこで、偏光板を表示装置に組み込む前の段階で、偏光板の欠陥を検出するための検査が行われる。この欠陥の検査は、特開平9-229817号公報(特許文献1)に示されているように、被検査物である偏光板と光源との間に偏光フィルタを設けたうえで、この偏光板又は偏光フィルタを平面方向に回転させ、これらのそれぞれの偏光軸方向を特定の関係とする。偏光軸方向同士が互いに直交する場合(すなわちクロスニコルを構成する配置の場合)、偏光フィルタを通過した直線偏光は偏光板を透過しない。しかしながら、偏光板に欠陥が存在すると、当該箇所では直線偏光が透過してしまうので、その光が検出されることで欠陥の存在が判明する。
【0005】
一方、偏光板と偏光フィルタとの偏光軸方向同士が平行である場合、偏光フィルタを通過した直線偏光は偏光板を透過する。しかしながら、偏光板に欠陥が存在すると、当該箇所では直線偏光が遮断されるので、その光が検出されないことで欠陥の存在が判明する。偏光板を透過してきた光を検査者が目視により検出するか、あるいはCCDカメラと画像処理装置とを組み合わせた画像解析処理値により自動的に検出することで、偏光板の欠陥の有無の検査を行うことができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
特許文献1に記載の方法によると、異物や気泡の混入のように、光学特性において周囲との違いが大きい局所的な欠陥の検出はできるものの、光学特性のムラを検出することは難しかった。
【0008】
また、プロテクトフィルム及び剥離フィルムが積層されている状態では、プロテクトフィルム及び剥離フィルムの複屈折の影響により偏光板の欠陥を検出することが難しかった。
【0009】
本発明は、直線偏光板にプロテクトフィルムと剥離フィルムとが積層されている光学フィルムを被検査物とする場合において、直線偏光板の光学特性のムラを検出することができる欠陥検査方法及び欠陥検査装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下に示す欠陥検査方法及び欠陥検査装置を提供する。
〔1〕 直線偏光板を有する光学フィルムを被検査物とする、前記直線偏光板の欠陥検査方法であって、
前記光学フィルムは、
剥離フィルムと、前記直線偏光板と、プロテクトフィルムと、をこの順に有し、
前記欠陥検査方法は、
光軸に沿って、第1偏光子を有する第1フィルタ、第1位相差補償板、前記光学フィルム、第2位相差補償板、及び第2偏光子を有する第2フィルタ、をこの順で、かつ、前記光学フィルムを、前記剥離フィルム側の表面が前記第1位相差補償板に対向する向きで配置する配置工程と、
前記第1フィルタ側及び前記第2フィルタ側のいずれか一方から、前記光軸に沿って光を入射し、他方から出射される光を検出する検出工程と、
前記検出工程での検出結果に基づいて、前記光学フィルムの欠陥を判断する判断工程と、を有し、
前記配置工程において、
下記の条件a及び条件b:
(a)前記第1偏光子の吸収軸と前記直線偏光板の吸収軸とのなす角度が90°±5°の範囲内である;
(b)前記第2偏光子の吸収軸と前記直線偏光板の吸収軸とのなす角度が90°±30°の範囲内である、
を満たすように配置し、
前記検出工程において、
前記第1位相差補償板は前記剥離フィルムが有する複屈折を補償し、前記第2位相差補償板は前記プロテクトフィルムが有する複屈折を補償する、欠陥検査方法。
〔2〕 前記剥離フィルムは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる、〔1〕に記載の欠陥検査方法。
〔3〕 前記プロテクトフィルムは、ポリエチレンテレフタレート系樹脂からなる、〔1〕又は〔2〕に記載の欠陥検査方法。
〔4〕 前記直線偏光板は、重合性液晶化合物の硬化物を含む偏光子を有する、〔1〕~〔3〕のいずれか1項に記載の欠陥検査方法。
〔5〕 前記光学フィルムは、前記直線偏光板と前記剥離フィルムとの間に、λ/4位相差層をさらに有し、
前記配置工程において、前記第1フィルタと前記第1位相差補償板との間に、λ/4位相差板が配置される、〔1〕~〔4〕のいずれか1項に記載の欠陥検査方法。
【0011】
〔6〕 直線偏光板を有する光学フィルムを被検査物とする、前記直線偏光板の欠陥検査装置であって、
前記光学フィルムは、
剥離フィルムと、前記直線偏光板と、プロテクトフィルムと、をこの順に有し、
前記欠陥検査装置は、
光軸に沿って、第1偏光子を有する第1フィルタ、前記剥離フィルムが有する複屈折を補償可能な第1位相差補償板、前記プロテクトフィルムが有する複屈折を補償可能な第2位相差補償板、及び第2偏光子を有する第2フィルタ、をこの順に有し、さらに、前記第1フィルタ側又は前記第2フィルタ側から前記光軸に沿って光を照射可能な光源を有し、
前記光学フィルムが前記剥離フィルム側の表面が前記第1位相差補償板に対向する向きで配置される配置工程の後に欠陥検査が行われ、
前記配置工程において、
下記の条件a及び条件b:
(a)前記第1偏光子の吸収軸と前記直線偏光板の吸収軸とのなす角度が90°±5°の範囲内である;
(b)前記第2偏光子の吸収軸と前記直線偏光板の吸収軸とのなす角度が90°±30°の範囲内である、
を満たすように配置される、欠陥検査装置。
【発明の効果】
【0012】
本発明の欠陥検査方法及び欠陥検査装置によれば、直線偏光板の両面のそれぞれにプロテクトフィルムと剥離フィルムとが積層されている光学フィルムを被検査物とする場合において、前記直線偏光板の光学特性のムラを検出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0013】
【
図1】本実施形態の被検査物の一例である光学フィルムを模式的に示す断面図である。
【
図3】光学フィルムにおける欠陥領域の一例を示す図である。
【
図4】第1応用例における被検査物の一例である光学フィルムを模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0014】
本発明は、直線偏光板を有する光学フィルムを被検査物とする、前記直線偏光板の欠陥検査方法及び欠陥検査装置に関する。本発明の欠陥検査方法及び欠陥検査装置における被検査物として、剥離フィルムと、直線偏光板と、プロテクトフィルムと、をこの順に有する光学フィルムが挙げられる。
【0015】
光学フィルムを被検査物とする本発明に係る欠陥検査方法は、
光軸に沿って、第1偏光子を有する第1フィルタ、第1位相差補償板、前記光学フィルム、第2位相差補償板、及び第2偏光子を有する第2フィルタ、をこの順で、かつ、前記光学フィルムを、前記剥離フィルム側の表面が前記第1位相差補償板に対向する向きで配置する配置工程と、
前記第1フィルタ側及び前記第2フィルタ側のいずれか一方から、前記光軸に沿って光を入射し、他方から出射される光を検出する検出工程と、
前記検出工程での検出結果に基づいて、前記光学フィルムの欠陥を判断する判断工程と、を有し、
前記配置工程において、
下記の条件a及び条件b:
(a)前記第1偏光子の吸収軸と前記直線偏光板の吸収軸とのなす角度が90°±5°の範囲内である;
(b)前記第2偏光子の吸収軸と前記直線偏光板の吸収軸とのなす角度が90°±30°の範囲内である、
を満たすように配置する。
前記検出工程において、
前記第1位相差補償板は前記剥離フィルムが有する複屈折を補償し、前記第2位相差補償板は前記プロテクトフィルムが有する複屈折を補償する。
【0016】
本発明に係る欠陥検査装置は、上記の欠陥検査方法に用いることができ、
光軸に沿って、第1偏光子を有する第1フィルタ、前記剥離フィルムが有する複屈折を補償可能な第1位相差補償板、前記プロテクトフィルムが有する複屈折を補償可能な第2位相差補償板、及び第2偏光子を有する第2フィルタ、をこの順に有し、さらに、前記第1フィルタ側又は前記第2フィルタ側から前記光軸に沿って光を照射可能な光源を有し、
前記光学フィルムが前記剥離フィルム側の表面が前記第1位相差補償板に対向する向きで配置される配置工程の後に欠陥検査が行われ、
前記配置工程において、
下記の条件a及び条件b:
(a)前記第1偏光子の吸収軸と前記直線偏光板の吸収軸とのなす角度が90°±5°の範囲内である;
(b)前記第2偏光子の吸収軸と前記直線偏光板の吸収軸とのなす角度が90°±30°の範囲内である、
を満たすように配置される。
【0017】
以下、本発明の欠陥検査装置及び欠陥検査方法の実施形態について図面を参照しながら説明する。同一の要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。図面の寸法比率は、説明のものと必ずしも一致していない。
【0018】
本発明の一実施形態の欠陥検査装置及び欠陥検査方法について説明する。
【0019】
[光学フィルム]
本実施形態の被検査物である光学フィルムについて説明する。
図1は、光学フィルムの一例である光学フィルム100を模式的に示す断面図である。光学フィルム100の層構造は、
図1に示すように、プロテクトフィルム141/直線偏光板110〔第1の保護フィルム111/接着剤層114/偏光子112/接着剤層114/第2の保護フィルム113〕/粘着剤層132/剥離フィルム133である。
【0020】
(偏光子)
偏光子112は、その吸収軸に平行な振動面をもつ直線偏光を吸収し、吸収軸に直交する(透過軸と平行な)振動面をもつ直線偏光を透過する性質を有する吸収型の偏光子であることができる。代表的な偏光子としては、重合性液晶化合物の硬化物を含む液晶偏光子、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させた偏光フィルム、等が挙げられる。
【0021】
液晶偏光子の典型的な製造方法を簡単に説明する。まず、適当な支持体を準備する。次いで、当該支持体の表面上に配向膜を形成する。続いて、配向膜上に、重合性液晶化合物と二色性色素とを含む液状組成物を含む液状組成物を塗工し乾燥することで、配向膜上に重合性液晶化合物を含む塗工層を形成する。その後、塗工層を光照射により重合・硬化させて、液晶偏光子が支持体上に得られる。かかる支持体として、透明樹脂フィルムを用いれば、当該透明樹脂フィルムを保護フィルムとする偏光子を製造することができる。
【0022】
液晶偏光子としては例えば、特開2016-170368号公報に記載されるものであってもよい。二色性色素としては、波長380~800nmの範囲内に吸収を有するものを用いることができ、有機染料を用いることが好ましい。二色性色素として、例えば、アゾ化合物が挙げられる。液晶化合物は、配向したままの状態で重合することができる液晶化合物であり、分子内に重合性基を有することができる。また、WO2011/024891に記載されるように、液晶性を有する二色性色素から偏光子を形成してもよい。なお、重合後(液晶硬化層からなる偏光子の形成後)は、液晶化合物はもはや液晶性を示す必要はない。
【0023】
液晶偏光子の厚みは、例えば、0.2μm~10μmである。液晶偏光子は、製造工程における液状組成物の塗布ムラにより光学特性にムラを生じさせることがある。本実施形態の欠陥検査方法及び欠陥検査装置による欠陥検査では、このような光学特性のムラも検出することができる。
【0024】
続いて、PVA系偏光フィルムについて簡単に説明する。PVA系偏光フィルムは、例えば、PVA系樹脂フィルムを一軸延伸する工程;PVA系樹脂フィルムを二色性色素で染色することにより二色性色素を吸着させる工程(染色処理);二色性色素が吸着されたPVA系樹脂フィルムをホウ酸水溶液等の架橋液で処理する工程(架橋処理);及び、架橋液による処理後に水洗する工程(洗浄処理)を含む方法等によって製造できる。
【0025】
PVA系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂をケン化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルの他、酢酸ビニルと共重合可能な他の単量体との共重合体等が挙げられる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体の例は、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、及びアンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等を含む。
【0026】
本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルから選択される少なくとも一方を意味する。「(メタ)アクリロイル」、「(メタ)アクリレート」等においても同様である。
【0027】
PVA系樹脂のケン化度は通常、85~100mol%であり、98mol%以上が好ましい。PVA系樹脂は変性されていてもよく、例えば、アルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール又はポリビニルアセタール等を用いることもできる。PVA系樹脂の平均重合度は通常、1000~10000であり、1500~5000が好ましい。PVA系樹脂の平均重合度は、JIS K 6726に準拠して求めることができる。
【0028】
このようなPVA系樹脂を製膜したものが、偏光子製造用の原反フィルム(PVA系樹脂フィルム)として用いられる。PVA系樹脂を製膜する方法は、特に限定されるものではなく、公知の方法が採用される。PVA系樹脂フィルムの厚みは特に制限されないが、偏光フィルムの厚みを15μm以下とするためには、5~35μmのものを用いることが好ましい。より好ましくは、20μm以下である。かかるPVA系樹脂フィルムの厚みは、最終的に得られるPVA系偏光フィルムが所望の厚みとなるようにして選択することができる。
【0029】
PVA系樹脂フィルムの一軸延伸は、二色性色素による染色処理前に行っても、当該染色処理と同時に行っても、染色処理の後に行ってもよい。一軸延伸を染色処理の後で行う場合、かかる一軸延伸は、架橋処理の前に行っても、架橋処理中に行ってもよい。また、これらの複数の処理の段階で一軸延伸を複数回に分けて行ってもよい。
【0030】
一軸延伸にあたっては、長尺状のPVA系樹脂フィルムを用いる場合には例えば、このPVA系樹脂フィルムをロールに掛け渡し、当該ロールの周速を異ならせることにより、ロール間で一軸に延伸してもよいし、熱ロールを用いて一軸に延伸してもよい。また一軸延伸は、大気中で延伸を行う乾式延伸であってもよいし、溶剤や水を用いてPVA系樹脂フィルムを膨潤させた状態で延伸を行う湿式延伸であってもよい。延伸倍率は通常、3~8倍である。複数回の一軸延伸により、PVA系樹脂フィルムを延伸する場合には、元長に比しての延伸倍率が通常、3~8倍になるようにする。なお、この延伸倍率も、最終的に得られるPVA系偏光フィルムが所望の厚みとなるようにして選択することができる。
【0031】
PVA系樹脂フィルムを二色性色素で染色する方法(染色処理)としては、典型的には、かかるPVA系樹脂フィルムを、二色性色素を含有した水溶液に浸漬する方法が採用される。二色性色素としては、ヨウ素や二色性有機染料が用いられる。なお、PVA系樹脂フィルムは、染色処理の前に水への浸漬処理を施しておくことが好ましい。
【0032】
二色性色素による染色処理後の架橋処理としては通常、染色されたPVA系樹脂フィルムをホウ酸含有水溶液に浸漬する方法などが採用される。二色性色素としてヨウ素を用いる場合、このホウ酸含有水溶液は、ヨウ化カリウムを含有することが好ましい。
【0033】
かくして、PVA系偏光フィルムが得られる。PVA系偏光フィルムの厚みも液晶偏光子と同様に、より薄膜であると好ましく、好ましくは15μm以下であり、より好ましくは13μm以下であり、さらに好ましくは10μm以下であり、特に好ましくは8μm以下である。偏光フィルムの厚みは、通常2μm以上であり、3μm以上であることが好ましい。
【0034】
直線偏光子は、単独で直線偏光板とすることもできるし、上述のとおり、一般的には、直線偏光子の片面又は両面に保護フィルムを貼合した構成で直線偏光板とすることができる。本明細書において、直線偏光板の吸収軸は偏光子112の吸収軸に一致するものとする。
【0035】
(保護フィルム)
偏光子112の片面又は両面に積層される保護フィルム(例えば、第1の保護フィルム111、第2の保護フィルム113)は、熱可塑性樹脂から形成されたフィルムが用いられる。
【0036】
このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう);(メタ)アクリル樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの混合物を挙げることができる。偏光子の両面に保護フィルムが積層されている場合、二つの保護フィルムの樹脂組成は同一であってもよいし、異なっていてもよい。
【0037】
保護フィルムの厚みは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、保護フィルムの厚みは、通常100μm以下である。この保護フィルムの厚みもより薄膜であると好ましく、例えば、70μm以下であってもよく、50μm以下であることがさらに好ましく、30μm以下であることがより好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。
【0038】
保護フィルムは、直線偏光板の構成要素として偏光子112とともに表示装置に貼合されるものであるので、位相差値の厳密な管理等が要求される。保護フィルムとしては、典型的には、位相差値が極めて小さいものが用いられる。
【0039】
(接着剤層)
接着剤層(例えば、接着剤層114、124)は、接着剤中の硬化性成分を硬化させることによって形成することができる。接着剤層を形成するための接着剤としては、感圧型接着剤(粘着剤)以外の接着剤であって、例えば、ポリビニルアルコール系接着剤等の水系接着剤、紫外線硬化型接着剤等の活性エネルギー線硬化型接着剤が挙げられる。接着剤層の厚みは、接着剤の種類に応じて選定されるが、例えば0.05μm以上であり、0.1μm以上であってもよく、0.5μm以上であってもよく、1μm以上であってもよく、3μm以上であってもよく、通常20μm以下であり、15μm以下であってもよく、10μm以下であってもよく、8μm以下であってもよい。
【0040】
(プロテクトフィルム)
プロテクトフィルム141は、直線偏光板110に対して剥離可能に設けられ、直線偏光板の表面を被覆保護するために用いられる。プロテクトフィルムとしては、樹脂を用いて形成された基材フィルムと、その上に積層される粘着剤層とで構成されたものを挙げることができる。
【0041】
プロテクトフィルムは、光学フィルムを、表示装置や他の光学部材に貼合した後に、それが有する粘着剤層ごと剥離されるものであり、通常は、剥がされたプロテクトフィルムは廃棄される。したがって、保護フィルムとは異なり、位相差値の厳密な管理が要求されることはない。本実施形態の欠陥検査方法は、このように位相差値の厳密な管理が要求されることがないプロテクトフィルムを備える光学フィルムを被検査物とする場合であっても、かかるプロテクトフィルムの位相差による影響を排除して直線偏光板の欠陥を検出することができる。
【0042】
プロテクトフィルムは通常、樹脂製であり、かかるプロテクトフィルムをなす樹脂としては、特に特定されないが、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET系樹脂)、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアレート系樹脂等を挙げることができ、この中でも、PET系樹脂が好ましく用いられる。PET系樹脂からなるフィルムは、プロテクトフィルムとして汎用であり、且つ安価であるという利点がある。一方、安価なPET系樹脂フィルムは、上記のとおり、位相差値の厳密な管理が要求されることはない。そのため、例えば、製品ロットごとに位相差値にバラツキがある。また、同一のPET系樹脂フィルムであっても、面内の位相差値(面内位相差値)や配向軸のバラツキがあることもある。
【0043】
本明細書において、プロテクトフィルムの波長550nmでの面内位相差値Re(550)の求め方を示しておく。プロテクトフィルム全体の中心が、中心となるように40mm×40mmの大きさの片を分取(長尺フィルムから、適当な切断具を用いて分取する等)する。この片のRe(550)を3回測定し、Re(550)の平均値を求める。片のRe(550)は、位相差測定装置KORBRA-WPR(王子計測機器株式会社製)を用い、測定温度室温(25℃程度)で測定することができる。
【0044】
プロテクトフィルム141の面内位相差値Re(550)は、例えば、1000nm~2500nmである。これは、プロテクトフィルム141の任意の片のいずれについても、上記した面内位相差値Re(550)が、1000nm~2500nmであることを意味する。プロテクトフィルム141において、通常、測定時の片によって、面内位相差値Re(550)は異なる。
【0045】
(剥離フィルム)
剥離フィルム133は、粘着剤層132に対して剥離可能に設けられ、粘着剤層132の表面を被覆保護するために用いられる。剥離フィルムとしては、樹脂を用いて形成された基材フィルムに離型処理が施されたフィルムを挙げることができる。基材フィルムに施される離型処理としては、公知の離型処理を行えばよいが、フッ素化合物やシリコーン化合物等の離型剤を基材フィルムにコーティングする方法が好ましい。
【0046】
剥離フィルム133は、表示装置に貼合するときに、粘着剤層132から剥離されるものであり、通常は、剥がされた剥離フィルムは廃棄される。したがって、保護フィルムとは異なり、位相差値の厳密な管理が要求されることはない。
【0047】
基材フィルムをなす樹脂としては、特に限定されないが、例えば、ポリエチレンテレフタレート系樹脂(PET系樹脂)、ポリブチレンテレフタレート系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアレート系樹脂等を挙げることができ、この中でも、PET系樹脂が好ましく用いられる。PET系樹脂からなるフィルムは、剥離フィルムとして汎用であり、且つ安価であるという利点がある。一方、安価なPET系樹脂フィルムは、上記のとおり、位相差値の厳密な管理が要求されることはない。そのため、例えば、製品ロットごとに位相差値にバラツキがあることがある。また、同一のPET系樹脂フィルムであっても、面内に位相差値(面内位相差値)や配向軸のバラツキがあることもある。このような安価なPET系樹脂フィルムを剥離フィルムとして貼合した光学フィルムであっても、本実施形態の検査方法により、その欠陥の有無を精度よく検出することができる。剥離フィルムにおける配向軸のバラツキは、特に限定されることはなく、例えば135°以下であるものを用いることができる。剥離フィルム133は、通常、製造工程中において剥がされて廃棄されるので、プロテクトフィルムと同様に位相差値の厳密な管理が要求されることはない。
【0048】
本明細書において、剥離フィルムの波長550nmでの面内位相差値Re(550)の求め方は、プロテクトフィルムの波長550nmでの面内位相差値Re(550)の求め方と同じである。剥離フィルム133の面内位相差値Re(550)は、例えば、1000nm~2500nmである。
【0049】
[欠陥検査装置及び欠陥検査方法]
図2は、本実施形態に係る欠陥検査装置の模式図である。
図2に示されるとおり、欠陥検査装置1は、光学フィルム100を被検査物として、光学フィルム100が有する直線偏光板110の欠陥を検出する。欠陥検査装置1により検出することができる直線偏光板110の欠陥として、直線偏光板110の光学特性のムラ、局所欠陥、等が挙げられる。直線偏光板110において、偏光子112が液晶偏光子である場合には、製造工程における塗布ムラに起因する光学特性のムラを有することがある。また、直線偏光板110の製造工程で気泡や異物が混入したり、凹凸が生じたりすると、局所欠陥となる。
【0050】
欠陥検査装置1は、光軸9に沿って、第1偏光子を有する第1フィルタ3と、第1位相差補償板4と、第2位相差補償板7と、第2偏光子を有する第2フィルタ5と、がこの順で配置されている。欠陥検査装置1は、第1フィルタ3側又は第2フィルタ5側から光軸9に沿って光を照射可能な光源2を有する。
図2では、光源2は、第1フィルタ3側から光を照射可能な位置に配置されている。以下では、光源2は、第1フィルタ3側から光を照射する形態について詳細に説明するが、光源2が第2フィルタ5側から光を照射する形態についても同様に欠陥を検出することができる。欠陥検査装置1は、光源2から照射された光が各部材を透過した後に入射する位置に配置されている検出部6を有する。
【0051】
光源2は、無偏光であり、光学フィルム100の組成および性質に影響を与えない光を出力できれば限定されない。光源2は、例えば、メタルハライドランプ、ハロゲン伝送ライト、蛍光灯などである。
【0052】
検出部6では、検出光を肉眼にて検出(観察)することにより欠陥を判断してもよく、検出光を撮像して撮像画像に基づいて欠陥を判断してもよい。撮像手段としては、CCDカメラ等が挙げられる。以下では、断らない限り、検出光を肉眼にて検出する形態を説明する。他の実施形態においても同様である。
【0053】
欠陥検査装置1において、まずは配置工程が行われる。配置工程では、被検査物の光学フィルム100を、第1位相差補償板4と第2位相差補償板7の間で、かつ剥離フィルム133側の表面が第位相差補償板4に対向する向きで配置する。配置工程では、下記の条件a,bを満たすように、第1フィルタ3、光学フィルム100、及び第2フィルタ5の配置角度が調整される。
(a)第1フィルタ3の第1偏光子の吸収軸と直線偏光板110の吸収軸とのなす角度θ1が90°±5°の範囲内である。
(b)第2フィルタ5の第2偏光子の吸収軸と直線偏光板110の吸収軸とのなす角度θ2が90°±30°の範囲内である。
【0054】
以下、直線偏光板110の吸収軸を「吸収軸PA0」、第1フィルタ3の第1偏光子の吸収軸を「吸収軸PA1」、第2フィルタ5の第2偏光子の吸収軸を「吸収軸PA2」とも称する。
【0055】
上記配置工程において、角度θ1及び角度θ2は、上記条件を満たす範囲内で視野が最も暗くなるように調整されることが好ましい。かかる調整は、配置工程後であっても、第1フィルタ3、第1位相差補償板4、光学フィルム100、第2位相差補償板7、及び第2フィルタ5の配置角度を適宜調整することによって行うことができる。欠陥検査装置1は、第1フィルタ3、第1位相差補償板4、光学フィルム1、第2位相差補償板7、及び第2フィルタ5を、光軸9に垂直な方向に回転させることを可能とする可動装置(不図示)を備えていてもよい。
【0056】
欠陥検査装置1において、配置工程後に検出工程が行われる。検出工程では、光源2から光が出射されて、光軸9に沿って、第1フィルタ3、第1位相差補償板4、光学フィルム100、第2位相差補償板7、及び第2フィルタ5の順に光が透過し、検出部6に到達する。検出部6では、到達した光の検出結果に基づいて、直線偏光板110における欠陥について判断する判断工程が行われる。
【0057】
第1フィルタ3では、光源2から照射された無偏光の光から特定の偏光方向の光(以下、「第1偏光光」とも称する。)のみが透過される。第1偏光光と直交する偏光方向の光を「第2偏光光」とも称する。
【0058】
第1位相差補償板4では、後段で透過する剥離フィルム133の複屈折による位相差をキャンセルする位相差が予め付与される。光学フィルム100に入射した光は、剥離フィルム133の透過による位相差の影響がキャンセルされた状態で直線偏光板110に入射する。先に透過した第1フィルタ3の吸収軸PA1と直線偏光板110の吸収軸PA0とのなす角度θ1が、上記の条件aを満たすことから、直線偏光板110に入射した第1偏光光は欠陥がない領域ではほぼ吸収される。
【0059】
ただし、直線偏光板110は、吸収軸が吸収軸PA0と一致しない欠陥領域を有する場合がある。
図3は、直線偏光板110において、欠陥領域Bの一例を示し、欠陥領域Bにおける吸収軸を両端矢印で示す。欠陥領域Bでは、吸収軸PA0とは一致しない吸収軸(以下、「吸収軸PA3」と称する)を有する。欠陥領域Bにおける欠陥が光学特性のムラである場合、欠陥領域Bにおける吸収軸PA3として、
図3に示すように吸収軸PA0とのなす角度が連続的に変化している状態を想定することができる。直線偏光板110において、吸収軸PA0を有する領域を正常領域Aとする。
【0060】
吸収軸PA0と一致しない吸収軸PA3を有する欠陥領域Bでは、第1偏光光を透過させる。直線偏光板110を透過する光、直線偏光板110の欠陥領域Bの吸収軸に対応した方向の偏光光である。直線偏光板110の欠陥領域の吸収軸の方向が一方向でない場合、ここを透過する光は複数方向の偏光光を含む。以下、これらをまとめて第3偏光光とし、第3偏光光に含まれる複数の偏光光の一部を、第1偏光光とのなす角度が小さい順に、第3a偏光光、第3b偏光光、第3c偏光光、・・・、と称する。
【0061】
直線偏光板110を出射した第3偏光光は、プロテクトフィルム141の複屈折による位相差の影響が第2位相差補償板7にてキャンセルされた状態で第2フィルタ5に入射する。第2フィルタ5は、第3偏光光について偏光方向に応じて光を吸収して出射するフィルタリング機能を有する。第2フィルタ5で吸収される光の割合は、第3a偏光光、第3b偏光光、第3c偏光光、・・・の順に小さくなる。
【0062】
本発明者等では、第1フィルタと光学フィルムを透過した光の偏光度が実質的に低くなっていることに着目した。このような光を、さらに第2フィルタを通すことにより第1偏光光の領域と第3偏光光の領域とのコントラスト比を上げることができ検出感度を大きく上昇させることができることを見出した。
【0063】
以上のように、直線偏光板110における光の透過特性は、正常領域Aと欠陥領域Bとで異なり、また第2フィルタ5における光の透過特性は、欠陥領域Bにおける吸収軸方向に応じて異なる。検出部6ではこれらの透過特性を反映した光を検出するため、直交偏光板110における欠陥の有無、欠陥領域Bにおける吸収軸方向のムラの有無、を検出することができる。直線偏光板110における吸収軸方向のムラは、光学特性のムラに対応する。
【0064】
欠陥検査装置1では、第1フィルタ3と第2フィルタ5を有することにより、直線偏光板110の光学特性のムラを効率的に検出することができる。そのため、上記欠陥検査方法を含んだ光学フィルム100の製造方法では、欠陥を含まない製品としての光学フィルム100を効率的に生産できる。
【0065】
<第1フィルタ、第2フィルタ>
第1フィルタ3は第1偏光子を有し、第2フィルタ5は第2偏光子を有する。第1偏光子及び第2偏光子は、上述の偏光子112と同様に、その吸収軸に平行な振動面をもつ直線偏光を吸収し、吸収軸に直交する(透過軸と平行な)振動面をもつ直線偏光を透過する性質を有する吸収型の偏光子であることができる。代表的な偏光子として、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素を吸着配向させた偏光フィルムが挙げられる。偏光フィルムの詳細な説明は、上述の偏光子112における偏光フィルムの説明が適用される。第1偏光子及び第2偏光子は、無欠陥のものである。
【0066】
<第1位相差補償板、第2位相差補償板>
第1位相差補償板4及び第2位相差補償板7(以下、これらをまとめて「位相差補償板」とも称する。)の形状としては、剥離フィルム133又はプロテクトフィルム141の光の複屈折を補償することができるものであれば特に限定されないが、PET系樹脂からなる剥離フィルム133及びプロテクトフィルム141は、面内の位相差値や遅相軸のばらつきが大きいため、検査時に位相差値が調整可能な形状をしていることが好ましい。その形状としては、
図2に示されているとおり、その厚さが一様ではなく、薄い部分と厚い部分を有するように厚さが連続的に変化しているものが挙げられる。厚さが連続的に変化していることから、その厚さに応じて位相差値も連続的に変化している。この位相差補償板4は、厚さが最も薄い部分を起点として、所定の角度で厚さが広がっており、断面視で「楔(くさび)」の形状をなしている。このような楔形をなしている位相差補償板は、被検査物の検査領域内でずらしたり回転させたりすることで、簡便に剥離フィルム133又はプロテクトフィルム141による光の複屈折を補償することが可能となる。
【0067】
位相差補償板の大きさは、一辺の長さが1cm~30cmの範囲にある長方形又は正方形であることが好ましい。
【0068】
位相差補償板としては、石英や方解石などの複屈折性を示す鉱物などの無機材料や、シクロオレフィン系樹脂からなるフィルムを用いることができる。このような波長分散特性がフラットな材料を用いることが特に好ましい。また、楔形への加工のしやすさやその後の取り扱いの点から、石英などの鉱物を用いることが好ましい。
【0069】
石英などの鉱物を用いる場合には、波長分散特性をよりフラットにするために、さらに位相差フィルムを用いてもよい。石英などの鉱物からなる位相差板の遅相軸に位相差フィルムの遅相軸を直交に配置する場合には正分散性の位相差フィルムを、石英などの鉱物からなる位相差補償板の遅相軸に位相差フィルムの遅相軸を平行に配置する場合には逆分散性の位相差フィルムを用いることが好ましい。このような位相差フィルムを用いる場合は、石英の表面に当該位相差フィルムを貼合する。
【0070】
逆分散性の位相差フィルムとしては、例えば、帝人社製の商品名「ピュアエースWR-S」、「ピュアエースWR-W」、「ピュアエースWR-M」、日東電工社製の商品名「NRF」が挙げられる。正分散性の位相差フィルムとしては、例えば、ポリカーボネート系樹脂からなるフィルムや、ポリプロピレン系樹脂からなるフィルムが挙げられる。
【0071】
上記のシクロオレフィン系樹脂としては、例えば、シクロペンタジエンとオレフィン類からディールス・アルダー反応によって得られるノルボルネンまたはその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂、ジシクロペンタジエンとオレフィン類またはメタクリル酸エステル類からディールス・アルダー反応によって得られるテトラシクロドデセンまたはその誘導体をモノマーとして開環メタセシス重合を行い、それに続く水添よって得られる樹脂、ノルボルネン、テトラシクロドデセン、それらの誘導体類、またはその他の環状オレフィンモノマーを2種以上用いて同様に開環メタセシス共重合を行い、それに続く水添によって得られる樹脂、前記のノルボルネン、テトラシクロドデセン、またはそれらの誘導体に、ビニル基を有する芳香族化合物等を付加共重合させて得られる樹脂等が挙げられる。
【0072】
シクロオレフィン系樹脂は、市販品を容易に入手することが可能である。この市販品としては例えば、各々商品名で、Topas(Topas Advanced Polymers GmbH製)、アートン(JSR株式会社製)、ゼオノア、ゼオネックス(以上、日本ゼオン株式会社製)、およびアペル(三井化学株式会社製)等が挙げられる。
【0073】
第1位相差補償板4の位相差値としては、剥離フィルム133のRe(550)より500~600nm大きい領域(以下、「広補償領域」と呼ぶ場合がある。)を有するものを用いることが好ましい。第2位相差補償板7の位相差値としては、プロテクトフィルム141のRe(550)より500~600nm大きい領域(以下、「広補償領域」と呼ぶ場合がある。)を有するものを用いることが好ましい。このように約1波長分ずらした領域を有する位相差補償板4を用いることで、可視光の透過スペクトルをより広い波長範囲でPET系樹脂フィルムと合わせることができ、位相差補償が可能となる。
【0074】
位相差補償板は、断面視が楔形となっている位相差補償板を二枚用意し、これらを位相差値が連続的に増す向きを互いに逆向きにして重ね合わした状態として使用してもよい。この場合、位相差補償板の位相差値としては、二枚の合計値を差し、上記「広補償領域」も二枚の合計値を基準とする。楔形の位相差補償板を二枚用いることで、剥離フィルム133又はプロテクトフィルム141の光の複屈折を広範囲で補償することができるため、検査領域を拡大することができ検査を効率よく行うことができる。
【0075】
より詳細には、二枚の位相差補償板の少なくとも一方を、その厚さが変化する方向にずらすことによって、位相差補償板全体としての位相差を変化させることができる。その変化の程度は、厚さが増す向きを互いに逆向きとされて配置されていることによって、位相差補償板が一枚である場合に比べて緩やかである。これによれば、二枚の位相差補償板を用いる欠陥検査装置では、位相差補償板が一枚である欠陥検査装置に比べて、剥離フィルム133又はプロテクトフィルム141が有する複屈折をキャンセルできる領域が一層広くなる。また、用いる位相差補償板を三枚、四枚等としても同様に検査を行うことができる。また、位相差補償板を複数枚準備し、都度、剥離フィルム133又はプロテクトフィルム141が有する複屈折をキャンセルするために最適な位相差補償板を光軸9上に配置して用いてもよい。
【0076】
欠陥検査装置1は、被検査物である光学フィルム100について、検査したい領域をあらかじめ特定したうえでその一帯を検査する方法に用いてもよく、光源2や第1位相差補償板4及び第2位相差補償板7を走査することによって、光学フィルム100をより広範囲に亘って検査することができる。このとき、必要に応じて検出部6も併せて移動させる。
【0077】
また、検査の視野をさらに広げる方法として、第2位相差補償板と第2フィルタとの間にλ/2位相差層を配置することも有効な手段である。この場合、光学フィルム100の偏光子の吸収軸と第2フィルタの偏光子の吸収軸は平行に配置し、λ/2位相差層の遅相軸と第2フィルタの偏光子との吸収軸のなす角度が略45°となるように配置する。
【0078】
<第1応用例>
第1応用例は、被検査物である光学フィルムが、さらにλ/4位相差層を有し、直線円偏光板とλ/4位相差層との組み合わせにより構成される円偏光板の欠陥を検査する場合について、本実施形態の好適な応用例を説明する。
【0079】
本応用例の被検査物である光学フィルムについて説明する。
図4は、光学フィルムの一例である光学フィルム200を模式的に示す断面図である。光学フィルム200の層構造は、
図4に示すように、プロテクトフィルム141/直線偏光板110〔第1の保護フィルム111/接着剤層114/偏光子112/接着剤層114/第2の保護フィルム113〕/粘着剤層131/位相差体120〔第1位相差層121/接着剤層124/第2位相差層122〕/粘着剤層132/剥離フィルム133である。
図1に示す光学フィルム100の層構造における構成要素と同じ構成要素には同じ符号を付して説明を省略する。接着剤層124には接着剤層114の説明が適用され、粘着剤層131には粘着剤層132の説明が適用されるので、これらの説明は省略する。
【0080】
光学フィルム200は、位相差体120として、透過光に1/4波長分の位相差を付与するλ/4位相差層を含み、さらに、透過光に1/2波長分の位相差を付与するλ/2位相差層、ポジティブAプレート、およびポジティブCプレートを含んでいてもよい。
図4に示す光学フィルム200の位相差体120は、第1位相差層121と第2位相差層122を含む。第1位相差層121と第2位相差層122の組合せとして、λ/2位相差層とλ/4位相差層の組合わせ、λ/4位相差層とポジティブC層の組合せ等が挙げられる。
【0081】
位相差層は、光学異方性を示す光学フィルムであることができる。光学異方性を示す光学フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリビニリデンフルオライド/ポリメチルメタクリレート、アセチルセルロース、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリ塩化ビニルなどからなる高分子フィルムを1.01~6倍程度に延伸することにより得られる延伸フィルムなどが挙げられる。延伸フィルムの中でも、アセチルセルロース、ポリエステル、ポリカーボネートフィルムやシクロオレフィン系樹脂フィルムを一軸延伸または二軸延伸した高分子フィルムであることが好ましい。また、位相差層は、重合性液晶化合物を基材に塗布・配向によって光学異方性を発現させた、重合性液晶化合物の硬化物からなる位相差層であってもよい。
【0082】
延伸フィルムとしては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリビニリデンフルオライド/ポリメチルメタクリレート、アセチルセルロース、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリ塩化ビニル等で形成されたフィルムを1.01~6倍程度に延伸することにより得られる延伸フィルムが挙げられる。
【0083】
重合性液晶化合物の硬化物層を形成するための重合性液晶化合物としては、棒状液晶化合物、円盤状液晶化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。上記硬化物層は、重合性液晶化合物と溶剤、必要に応じて各種添加剤を含む位相差層形成用組成物を、配向膜上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を固化(硬化)させることによって、重合性液晶化合物の硬化物層を形成することができる。あるいは、基材層上に位相差層形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を基材層とともに延伸することによって硬化物層を形成してもよい。位相差層形成用組成物は、上記した重合性液晶化合物及び溶剤の他に、重合開始剤、反応性添加剤、レベリング剤、重合禁止剤等を含んでいてもよい。液晶化合物、溶剤、重合開始剤、反応性添加剤、レベリング剤、重合禁止剤等は、公知のものを適宜用いることができる。
【0084】
図2に示す欠陥検査装置1において、被検査物が光学フィルム100に代えて光学フィルム200であり、欠陥検査を行う対象が円偏光板である場合は、配置工程において、第1フィルタ3と第1位相差補償板4との間にλ/4位相差板が配置される。かかるλ/4位相差板により、後段で透過する光学フィルム200のλ/4位相差層の位相差をキャンセルする位相差が予め付与される。光学フィルム200に入射した光は、λ/4位相差層の透過による位相差の影響がキャンセルされた状態で直線偏光板110に入射する。第1フィルタ3として、第1偏光子よりも光学フィルム200側にλ/4位相差板を備えるように構成されているもの用いてもよい。
【0085】
なお、検査対象が光学フィルム200の場合に限って(すなわち円偏光板の場合に限って)、第1フィルタの有する第1偏光子の吸収軸、光学フィルム200の有する偏光子の吸収軸、第1フィルタの有するλ/4位相差層の遅相軸、及び光学フィルム200の有するλ/4位相差層の遅相軸をいずれも平行となるように配置してもクロスニコルの状態を得ることができる。
【0086】
第1応用例で欠陥検査装置1により検出することができる円偏光板の欠陥として、被検査物が光学フィルム100である場合と同様に、直線偏光板110の光学特性のムラ、局所欠陥、等が挙げられる。また、第1応用例において、光源2を第2フィルタ5側から入射するように配置した場合には、上述の欠陥に加えて、位相差体120における欠陥も検出することができる。直線偏光板110の欠陥のみを検出することを目的とする場合には、光源2を第1フィルタ3側から入射するように配置して用いることが好ましい。かかる配置により、直線偏光板110の欠陥をより精度よく検出することができる。
【符号の説明】
【0087】
1 欠陥検査装置、2 光源、3 第1フィルタ、4 第1位相差補償板、5 第2フィルタ、6 検出部、7 第2位相差補償板、100,200 光学フィルム、111 第1の保護フィルム、112 偏光子、113 第2の保護フィルム、114,124 接着剤層、131,132 粘着剤層、133 剥離フィルム、141 プロテクトフィルム、120 位相差体、121 第1位相差層、122 第2位相差層。