(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】円偏光板
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2021127576
(22)【出願日】2021-08-03
(62)【分割の表示】P 2020042073の分割
【原出願日】2020-03-11
【審査請求日】2023-01-20
(31)【優先権主張番号】P 2019070460
(32)【優先日】2019-04-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 智之
(72)【発明者】
【氏名】白石 貴志
【審査官】吉川 陽吾
(56)【参考文献】
【文献】特開2004-170907(JP,A)
【文献】特開平08-194116(JP,A)
【文献】特開2019-049758(JP,A)
【文献】特開2009-251288(JP,A)
【文献】特開2014-071380(JP,A)
【文献】特開2018-060150(JP,A)
【文献】特開2017-083820(JP,A)
【文献】特開2019-020648(JP,A)
【文献】特開2022-092281(JP,A)
【文献】特開2009-086452(JP,A)
【文献】特開2001-235626(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
偏光層
を含む偏光板、粘着剤層、及び第1位相差層をこの順に有する円偏光板であって、
さらに、前記第1位相差層の前記粘着剤層とは反対側に、第2位相差層を有し、
前記偏光板の厚みは、2μm以上150μm以下であり、
前記第1位相差層
及び前記第2位相差層は、液晶化合物の硬化層である液晶層であり、
前記偏光層は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向しているものであり、
前記円偏光板は、その面方向における端部に糊欠け部を有し、かつ、方形状、又は、少なくとも一辺に切欠き部を有する方形状を有し、
前記方形状は、一対の長辺及び一対の短辺を有し、
前記偏光層の吸収軸方向は、前記長辺に対して45°±10°の角度をなし、
前記糊欠け部は、
前記一対の長辺の少なくとも一方、及び、前記一対の短辺の少なくとも一方に形成されており、かつ、
前記偏光層及び前記粘着剤層が積層方向に重なっている部分を通る断面において、前記粘着剤層の端部における最内端の位置が、前記偏光層の端部における最外端の位置から3μm以上50μm以下内側に位置するように形成されている、円偏光板。
【請求項2】
偏光層
を含む偏光板、粘着剤層、及び第1位相差層をこの順に有する円偏光板であって、
さらに、前記第1位相差層の前記粘着剤層とは反対側に、第2位相差層を有し、
前記偏光板の厚みは、2μm以上150μm以下であり、
前記第1位相差層
及び前記第2位相差層は、液晶化合物の硬化層である液晶層であり、
前記偏光層は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向しているものであり、
前記円偏光板は、その面方向における端部に糊欠け部を有し、かつ、方形状、又は、少なくとも一辺に切欠き部を有する方形状を有し、
前記方形状は、一対の長辺及び一対の短辺を有し、
前記偏光層の吸収軸方向は、前記長辺に対して0°±10°の角度をなし、
前記糊欠け部は、
前記一対の短辺の少なくとも一方に形成されており、かつ、
前記偏光層及び前記粘着剤層が積層方向に重なっている部分を通る断面において、前記粘着剤層の端部における最内端の位置が、前記偏光層の端部における最外端の位置から3μm以上50μm以下内側に位置するように形成されている、円偏光板。
【請求項3】
偏光層
を含む偏光板、粘着剤層、及び第1位相差層をこの順に有する円偏光板であって、
さらに、前記第1位相差層の前記粘着剤層とは反対側に、第2位相差層を有し、
前記偏光板の厚みは、2μm以上150μm以下であり、
前記第1位相差層
及び前記第2位相差層は、液晶化合物の硬化層である液晶層であり、
前記偏光層は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向しているものであり、
前記円偏光板は、その面方向における端部に糊欠け部を有し、かつ、方形状、又は、少なくとも一辺に切欠き部を有する方形状を有し、
前記方形状は、一対の長辺及び一対の短辺を有し、
前記偏光層の吸収軸方向は、前記短辺に対して0°±10°の角度をなし、
前記糊欠け部は、
前記一対の長辺の少なくとも一方に形成されており、かつ、
前記偏光層及び前記粘着剤層が積層方向に重なっている部分を通る断面において、前記粘着剤層の端部における最内端の位置が、前記偏光層の端部における最外端の位置から3μm以上50μm以下内側に位置するように形成されている、円偏光板。
【請求項4】
前記偏光板は、前記偏光層の片面又は両面に保護層を有する、請求項1~3のいずれか1項に記載の円偏光板。
【請求項5】
前記偏光板は、前記偏光層の両面に保護層を有し、
前記偏光層の前記第1位相差層側の面の前記保護層は、トリアセチルセルロースフィルムであり、
前記偏光層の前記第1位相差層側とは反対側の面の前記保護層は、ノルボルネン系樹脂フィルムである、請求項4に記載の円偏光板。
【請求項6】
前記第2位相差層は、接着層を介して前記第1位相差層上に設けられている、請求項
1~5のいずれかに記載の円偏光板。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、光学積層体に関する。
【背景技術】
【0002】
偏光層や位相差層等は、有機発光ダイオード(OLED)を用いた有機EL表示装置や液晶表示装置を構成する光学部材として広く用いられている。例えば、特許文献1には、偏光子と液晶化合物をコーティングした位相差フィルムとを積層した複合偏光板を、液晶表示装置に用いることが記載されている。
【0003】
特許文献1には、複合偏光板をチップカット等により切断した場合の外周端面(切断面)に存在する凹凸をなくすことで、湿熱条件下においても位相差フィルムの剥がれや浮き等の不具合を抑制できることが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
偏光層と位相差フィルムとを積層した複合偏光板を高温環境下に曝すと、複合偏光板の端部における反射光の色相が変化し、面内の反射光の色相の均一性が悪化することが見出された。
【0006】
本発明は、高温環境下においても面内の反射光の色相の均一性が悪化することを抑制できる光学積層体の提供を目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明は、以下の光学積層体を提供する。
〔1〕 偏光層、粘着剤層、及び第1位相差層をこの順に有する光学積層体であって、
前記光学積層体は、その面方向における端部に糊欠け部を有し、
前記糊欠け部は、前記偏光層及び前記粘着剤層が積層方向に重なっている部分を通る断面において、前記粘着剤層の端部における最内端の位置が、前記偏光層の端部における最外端の位置から3μm以上内側に位置するように形成されている、光学積層体。
〔2〕 前記偏光層は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向しているものである、〔1〕に記載の光学積層体。
〔3〕 前記光学積層体は、方形状、又は、少なくとも一辺に切欠き部を有する方形状を有し、
前記糊欠け部は、前記方形状の少なくとも一辺に形成されている、〔1〕又は〔2〕に記載の光学積層体。
〔4〕 前記方形状は、一対の長辺及び一対の短辺を有し、
前記偏光層の吸収軸方向は、前記長辺に対して45°±10°の角度をなし、
前記糊欠け部は、前記一対の長辺の少なくとも一方、及び、前記一対の短辺の少なくとも一方に形成されている、〔3〕に記載の光学積層体。
〔5〕 前記方形状は、一対の長辺及び一対の短辺を有し、
前記偏光層の吸収軸方向は、前記長辺に対して0°±10°の角度をなし、
前記糊欠け部は、前記一対の短辺の少なくとも一方に形成されている、〔3〕に記載の光学積層体。
〔6〕 前記方形状は、一対の長辺及び一対の短辺を有し、
前記偏光層の吸収軸方向は、前記短辺に対して0°±10°の角度をなし、
前記糊欠け部は、前記一対の長辺の少なくとも一方に形成されている、〔3〕に記載の光学積層体。
〔7〕 前記偏光層の片面又は両面に保護層を有する、〔1〕~〔6〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔8〕 さらに、前記第1位相差層の前記粘着剤層とは反対側に、第2位相差層を有する、〔1〕~〔7〕のいずれかに記載の光学積層体。
〔9〕 前記第2位相差層は、接着層を介して前記第1位相差層上に設けられている、〔8〕に記載の光学積層体。
〔10〕 円偏光板である、〔1〕~〔9〕のいずれかに記載の光学積層体。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、高温環境下においても面内の反射光の色相の均一性が悪化することを抑制した光学積層体を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】本発明の光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。
【
図2】本発明の光学積層体の他の例を模式的に示す断面図である。
【
図3】(a)及び(b)は、実施例における粘着剤層の作製方法を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、図面を参照して、本発明の光学積層体の好ましい実施形態について説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
【0011】
図1は、本実施形態の光学積層体の一例を模式的に示す断面図である。図中、Wは面方向を表す。本実施形態の光学積層体11は、
図1に示すように、偏光板40、粘着剤層31、及び第1位相差層21をこの順に有する。
図1に示す光学積層体11の偏光板40は、第1保護層42(保護層)、偏光層41、及び第2保護層43(保護層)をこの順に有し、光学積層体11では、第1保護層42側に粘着剤層31が設けられている。
【0012】
偏光層41は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、「PVA系樹脂フィルム」ということがある。)に、ヨウ素等の二色性色素が吸着配向しているものであってもよく、PVA系樹脂フィルムは通常、延伸された延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムである。偏光層41は、液晶化合物が硬化した層中で二色性色素が配向しているものであってもよい。第1保護層42及び第2保護層43は、偏光層41を保護するための層である。第1位相差層21は、位相差フィルムであってもよく、液晶化合物を含む液晶層であってもよい。液晶層は、例えば重合性液晶化合物を重合して形成した硬化層であってもよい。第1位相差層21が液晶層である場合、光学積層体11は、第1位相差層21の粘着剤層31とは反対側に、第1位相差層21をなす液晶化合物を配向させるための配向層を有していてもよい。
【0013】
光学積層体11は、その面方向Wにおける端部に糊欠け部5を有する。糊欠け部5は、
図1に示すように、偏光層41及び粘着剤層31が、面方向Wに直交する積層方向に重なっている部分を通る断面において、粘着剤層31の端部における最内端の位置が、偏光層41の端部における最外端の位置から距離L1の長さ分だけ内側に位置するように形成されている。本明細書において、粘着剤層31の端部における最内端の位置とは、粘着剤層31の端部のうち面方向Wにおいて最も内側にある位置をいい、偏光層41の端部における最外端の位置とは、偏光層41の端部のうち面方向Wにおいて最も外側にある位置をいう。
【0014】
糊欠け部5の距離L1は、3μm以上であり、5μm以上であることが好ましく、6μm以上であってもよく、7μm以上であってもよく、8μm以上であってもよい。また、距離L1は、通常、120μm以下であり、100μm以下であってもよく、75μm以下であってもよく、50μm以下であってもよく、25μm以下であってもよい。
【0015】
光学積層体11に含まれる偏光板40は、偏光層41を有する。偏光層41は、高温環境下において収縮することがある。そのため、光学積層体11が高温環境下に曝されると、偏光層41(偏光板40)の収縮により、偏光板40に粘着剤層31を介して積層された第1位相差層21の端部に偏光層41の収縮応力が集中すると考えられる。第1位相差層21の端部に上記した収縮応力が集中すると、第1位相差層21の光弾性の影響により、光学積層体11における端部の反射光の色相と当該端部以外の他の部分の反射光の色相との差が大きくなり、光学積層体11の面内における反射光の色相の均一性が悪化すると推測される。本実施形態では、上記したように光学積層体11の糊欠け部5における距離L1を3μm以上としている。これにより、光学積層体11が高温環境下に曝されたときの偏光層41の収縮応力を分散させやすくなるため、第1位相差層21の端部にかかる収縮応力を低減させることができる。その結果、第1位相差層21の光弾性の影響による、光学積層体11における端部の反射光の色相と当該端部以外の他の部分における反射光の色相との差を小さくできるため、光学積層体11の面内における反射光の色相の均一性が悪化することを抑制できると考えられる。
【0016】
また、光学積層体11における糊欠け部5の距離L1が大きすぎると、偏光板40と第1位相差層21との接着面積が小さくなるため、高温耐久試験時に端部が剥離したり、気泡等の欠陥が生じたりしやすくなる。
【0017】
偏光層41の高温環境下における収縮による影響は、偏光層41が液晶化合物が硬化した層中で二色性色素が配向しているものである場合よりも、PVA系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向している偏光層である場合、特にPVA系樹脂フィルムに二色性色素を染色により吸着させ、次いで延伸して形成された偏光層である場合に顕著になりやすい。そのため、偏光層41としてPVA系樹脂フィルムに二色性色素が吸着配向しているものを用いた場合に、糊欠け部5における距離L1を3μm以上とすることにより、光学積層体11の面内における反射光の色相の均一性が悪化することをより好適に抑制することができる。
【0018】
糊欠け部5の距離L1は、光学積層体11の断面について、レーザー顕微鏡を用いて断面のプロファイルを測定し、このプロファイルに基づいて決定した粘着剤層31の端部における最内端の位置、及び、偏光層41の端部における最外端の位置に基づいて算出することができる。光学積層体11の外形が直線状の辺を有するものであって、当該辺に糊欠け部5が形成されている場合、光学積層体11の断面は、当該辺の糊欠け部5が形成されている位置において、当該辺に対して垂直となる方向に沿って切断したときの断面とする。また、光学積層体11の外形が曲線部分を有するものであって、当該曲線部分に糊欠け部5が形成されている場合、光学積層体11の断面は、糊欠け部5が形成された位置Pにおける光学積層体11の面方向の接線の位置Pを通り、かつ当該接線に対して垂直となる方向に沿って切断したときの断面とする。
【0019】
光学積層体11における糊欠け部5の形状は、特に限定されず、粘着剤層31の端部が、
図1に示すようにテーパー形状を有していてもよく、面方向Wに直交する積層方向に平行であってもよく、鋸歯状、凹凸状、曲線状等に形成されていてもよい。糊欠け部5における粘着剤層31は、
図1に示すように、偏光板40側の表面の端部の位置が、粘着剤層31の第1位相差層21側の表面の端部の位置よりも面方向内側となっており、その形状がテーパー形状であってもよく、これとは逆に、偏光板40側の表面の端部の位置が、粘着剤層31の第1位相差層21側の表面の端部の位置よりも面方向外側となっており、その形状がテーパー形状であってもよい。後者のテーパー形状の場合、高温環境下における偏光層41の収縮応力が分散されやすくなるため、光学積層体11の面内における反射光の色相の均一性が悪化することを抑制しやすいと考えられる。
【0020】
光学積層体11の外形は、面方向(平面視)において方形状、又は、少なくとも一辺に切欠き部を有する方形状とすることができる。本明細書において方形状とは、長方形状又は正方形状をいい、方形状の4つの角のうちの少なくとも1つが角丸であるものを含む。なお、角丸部分を介して連続する2つの辺の境界は、角丸部分の輪郭長さを二等分する位置とする。角丸部分の輪郭長さは、角丸部分を介して連続する2つの辺のそれぞれが有する直線部分の当該角丸部分側に位置する端部の間の長さとする。切欠き部としては、対向する辺に向かって凹となる凹形状が挙げられ、凹形状はU字状やV字状であってもよい。切欠き部は方形状の一辺に形成されていてもよく2以上の辺に形成されていてもよい。切欠き部は、例えばスマートフォン等において、受話口、スピーカー、カメラレンズ、LEDランプ、近接センサ、照度センサ、指紋認証センサ、操作ボタン等のうちの少なくとも1つが設置される領域に設けることができる。
【0021】
光学積層体11が方形状を有する場合、糊欠け部5は、方形状の少なくとも一辺に形成されていることが好ましく、二辺以上に形成されていてもよく、四辺すべてに形成されていてもよい。また、糊欠け部5は、辺の全長に渡って連続的に又は不連続に形成されていてもよく、辺の一部に形成されていてもよい。また、糊欠け部5は、切欠き部の少なくとも一部に形成されていてもよく、切欠き部の全体に形成されていてもよい。
【0022】
光学積層体11は、積層方向に光学積層体11全体を貫通する孔部を有していてもよい。孔部は、円形状であってもよく、楕円形状、四角形状や六角形状等の多角形状であってもよく、多角形状の角の少なくとも1つが角丸であってもよい。孔部の周部分には、糊欠け部5が形成されていてもよい。孔部に形成される糊欠け部は、孔部の周部分の少なくとも一部に形成されていてもよく、孔部の周部分の全体に形成されていてもよい。孔部は、例えばスマートフォン等において、カメラレンズ等が設置される領域に設けることができる。
【0023】
光学積層体11が方形状を有し、この方形状が一対の長辺及び一対の短辺を有する長方形状であり、偏光層41の吸収軸方向が、長辺に対して45°±10°の角度をなしている場合、糊欠け部5は、一対の長辺の少なくとも一方、及び、一対の短辺の少なくとも一方に形成されていることが好ましい。本明細書において上記角度は、吸収軸方向と長辺とがなす角度のうち鋭角の角度をいう。糊欠け部5は、一対の長辺の両方に形成されていてもよく、一対の短辺の両方に形成されていてもよい。光学積層体11の偏光層41は高温環境下に曝されると、その吸収軸方向に収縮しやすいため、吸収軸方向の両端に位置する辺において偏光層41の収縮応力が集中しやすい。そのため、吸収軸方向と長辺とが45°±10°の関係にある光学積層体11では、長辺及び短辺の両方において偏光層41の収縮応力が集中しやすく、第1位相差層21の反射光の色相が変化しやすいと考えられる。上記のように、一対の長辺の少なくとも一方、及び、一対の短辺の少なくとも一方に糊欠け部5を設けることにより、光学積層体11が高温環境下に曝されたときに偏光層41の収縮応力が集中しやすい部分において、当該収縮応力を分散させることができる。これにより、光学積層体11が高温環境下に曝されたときにも面内における反射光の色相の均一性が悪化することを効果的に抑制できると考えられる。偏光層41の吸収軸方向が長辺に対してなす角度は、45°±5°であってもよく、45°±2°であってもよく、45°であってもよい。
【0024】
光学積層体11が方形状を有し、この方形状が一対の長辺及び一対の短辺を有する長方形状であり、偏光層41の吸収軸方向が、長辺に対して0°±10°の角度をなしている場合、糊欠け部5は、一対の短辺の少なくとも一方に形成されていることが好ましい。本明細書において上記角度は、吸収軸方向と長辺とがなす角度のうち鋭角の角度をいう。糊欠け部5は、一対の短辺の両方に形成されていてもよい。吸収軸方向と長辺とが0°±10°の関係にある光学積層体11では、上記した理由により、短辺において偏光層41の収縮応力が集中しやすく、第1位相差層21の反射光の色相が変化しやすいと考えられる。そのため、糊欠け部5を一対の短辺の少なくとも一方に設けることにより、光学積層体11が高温環境下に曝されたときにも面内における反射光の色相の均一性が悪化することを効果的に抑制できると考えられる。偏光層41の吸収軸方向が長辺に対してなす角度は、0°±5°であってもよく、0°±2°であってもよく、0°であってもよい。
【0025】
光学積層体11が方形状を有し、この方形状が一対の長辺及び一対の短辺を有する長方形状であり、偏光層41の吸収軸方向が、短辺に対して0°±10°の角度をなしている場合、糊欠け部5は、一対の長辺の少なくとも一方に形成されていることが好ましい。本明細書において上記角度は、吸収軸方向と短辺とがなす角度のうち鋭角の角度をいう。糊欠け部5は、一対の長辺の両方に形成されていてもよい。吸収軸方向と短辺とが0°±10°の関係にある光学積層体11では、上記した理由により、長辺において偏光層41の収縮応力が集中しやすく、第1位相差層21の反射光の色相が変化しやすいと考えられる。そのため、糊欠け部5を一対の長辺の少なくとも一方に設けることにより、光学積層体11が高温環境下に曝されたときにも面内における反射光の色相の均一性が悪化することを効果的に抑制できると考えられる。偏光層41の吸収軸方向が短辺に対してなす角度は、0°±5°であってもよく、0°±2°であってもよく、0°であってもよい。
【0026】
図1に示す光学積層体11では、第1位相差層21は、Aプレートであってもよく、Cプレートであってもよい。また、
図1に示す光学積層体11では、第1位相差層21を1/4波長板とすることにより、円偏光板とすることができる。
【0027】
図1に示す光学積層体11は、例えば、偏光板40と第1位相差層21とを準備し、偏光板40の第1保護層42側、及び、第1位相差層21上のうちの少なくとも一方に、粘着剤を塗布又は転写し、偏光板40と第1位相差層21とを粘着剤の層を介して貼合することによって製造することができる。第1位相差層21が液晶層である場合は、第1基材層上に剥離可能に第1位相差層21を形成した基材層付き第1位相差層の第1位相差層21と、偏光板40とを粘着剤を介して積層した後、第1基材層を剥離してもよい。
【0028】
光学積層体11における糊欠け部5を形成する方法は、特に限定されないが、例えば、粘着剤層31を形成するための粘着剤層の塗布範囲や転写位置を調整することによって形成することができる。粘着剤層31を転写によって形成する場合には、転写用に準備する、剥離フィルム等の上に形成した粘着剤層に糊欠け部5となる部分を形成しておき、糊欠け部5となる部分が形成された粘着剤層を、偏光板40上又は第1位相差層21上に転写するようにしてもよい。
【0029】
剥離フィルム等の上に形成した粘着剤層に糊欠け部5となる部分を形成するためには、例えば
図3(a)及び(b)に示すように、剥離フィルム62上に粘着剤層61が形成された剥離フィルム付き粘着剤層60を準備し、粘着剤層61側から片刃の切断刃65により、剥離フィルム付き粘着剤層60を切断することによって形成することができる。このようにして剥離フィルム付き粘着剤層60を切断する過程では、片刃の切断刃65の両面のうちの刃が形成されている側の面によって粘着剤層61がテーパー形状に押込むことができ、端部がテーパー形状となった粘着剤層31を形成することができる。
【0030】
(変形例)
本実施形態の光学フィルムは、以下に示す変形例のように変更されてもよく、実施形態及びその変形例の各構造及び各工程を組み合わせて実施することもできる。
【0031】
(変形例1)
上記の実施形態では、偏光層41の両面に第1保護層42及び第2保護層43を有する偏光板40を有する光学積層体11について説明したが、これに限定されない。偏光板は、偏光層41と、第1保護層42及び第2保護層43のいずれか一方とを含むものであってもよい。また、光学積層体11において第1保護層42及び第2保護層43は含まれていなくてもよい。
【0032】
(変形例2)
図1に示す光学積層体11が円偏光板である場合、この円偏光板は、例えば、有機エレクトロルミネッセンス(有機EL)表示装置の反射防止用に用いることができる。この場合、光学積層体11は、有機EL表示装置の光学表示素子の視認側に貼合して用いられる。そのため、光学積層体11は、第1位相差層21の粘着剤層31とは反対側に、光学表示素子に貼合するための光学表示素子用粘着剤層を有していてもよい。
【0033】
(変形例3)
上記の実施形態では、第1位相差層21を含む光学積層体11について説明したが、これに限定されず、例えば
図2に示す光学積層体であってもよい。
図2は、本実施形態の光学積層体の他の例を模式的に示す断面図である。以下では、上記で説明したものと同じ部材については同じ符号を付して、その説明を省略する。
図2に示す光学積層体12は、偏光板40、粘着剤層31、第1位相差層21、接着層35、第2位相差層22をこの順に有するものである。接着層35は、粘着剤を用いて形成された粘着剤層であってもよく、接着剤を用いて形成された接着剤層であってもよい。第2位相差層22は、位相差フィルムであってもよく、重合性液晶化合物等の液晶化合物を含む液晶層であってもよい。第2位相差層22が液晶層である場合、光学積層体12は、第2位相差層22の接着層35と反対側に、第2位相差層22をなす液晶化合物を配向させるための配向層を有していてもよい。
【0034】
光学積層体12では、第1位相差層21を1/2波長板とし、第2位相差層22を1/4波長板とする;第1位相差層21を逆波長分散性の1/4波長板とし、第2位相差層22をポジティブCプレートとする;第1位相差層21をポジティブCプレートとし、第2位相差層22を逆波長分散性の1/4波長板とする等により、円偏光板とすることができる。第1位相差層21と第2位相差層22との組み合わせが1/2波長板及び1/4波長板である場合、偏光層41の吸収軸方向に対して1/2波長板の遅相軸方向は70°~80°とし、1/4波長板の遅相軸方向は10°~20°とすることができる。また、第1位相差層21と第2位相差層22との組み合わせが逆波長分散性の1/4波長板及びポジティブCプレートである場合、偏光層41の吸収軸方向に対して1/4波長板の遅相軸方向は40°~50°とすることができる。円偏光板である光学積層体12を有機EL表示装置の反射防止用に用いる場合等には、
図2に示す光学積層体12は、第2位相差層22の接着層35とは反対側に光学表示素子用粘着剤層を有していてもよい。
【0035】
図2に示す光学積層体12は、例えば、第1位相差層21及び第2位相差層22が接着層35を介して積層された位相差層積層体と、偏光板40とを準備し、偏光板40の第1保護層42側、及び、位相差層積層体の第1位相差層21側のうちの少なくとも一方に、粘着剤を塗布又は転写し、偏光板40と位相差層積層体とを粘着剤を介して貼合することによって形成することができる。第1位相差層21及び第2位相差層22がいずれも液晶層である場合は、例えば次のようにして光学積層体12を得ることができる。まず、第1基材層上に剥離可能に第1位相差層21を形成した基材層付き第1位相差層の第1位相差層21と、第2基材層上に剥離可能に第2位相差層22を形成した基材層付き第2位相差層の第2位相差層22とを、接着層を介して積層して、位相差層積層体を得る。次に、この位相差層積層体から第1基材層を剥離して、第1位相差層21側と偏光板40の第1保護層42側とを粘着剤を介して積層した後、第2基材層を剥離することにより、
図2に示す光学積層体12を得ることができる。
【0036】
以下、上記した実施形態及びその変形例において共通する各事項について詳細に説明する。
【0037】
(偏光層)
偏光層41は、PVA系樹脂フィルムに、ヨウ素等の二色性色素が吸着配向しているものであってもよく、液晶化合物が硬化した層中で二色性色素が配向しているものであってもよい。
【0038】
PVA系樹脂フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂を用いて形成されたフィルムである。ポリビニルアルコール系樹脂とは、ビニルアルコール由来の構成単位を50質量%以上含む樹脂をいう。ポリビニルアルコール系樹脂としては、ポリ酢酸ビニル系樹脂を鹸化したものを用いることができる。ポリ酢酸ビニル系樹脂の鹸化度は、JIS K 6727(1994)に準拠して求めることができ、例えば80.0~100.0モル%の範囲とすることができる。
【0039】
ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニル、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体等を挙げることができる。酢酸ビニルに共重合可能な他の単量体としては、例えば不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類、アンモニウム基を有する(メタ)アクリルアミド類等を挙げることができる。本明細書において、「(メタ)アクリル」とは、アクリル及びメタクリルからなる群より選ばれる少なくとも1種を表す。その他の「(メタ)」を付した用語においても同様である。
【0040】
PVA系樹脂フィルムの一例は、ポリビニルアルコール系樹脂を製膜してなる未延伸フィルムであってもよく、この未延伸フィルムを延伸した延伸フィルムであってもよい。PVA系樹脂フィルムが延伸フィルムである場合、縦一軸延伸された延伸フィルムであることが好ましく、乾式延伸された延伸フィルムであることが好ましい。PVA系樹脂フィルムが延伸フィルムである場合の延伸倍率は、通常は1.1~8倍である。
【0041】
PVA系樹脂フィルムに吸着配向している二色性色素としては、ヨウ素や有機染料等が挙げられる。有機染料としては、例えば、レッドBR、レッドLR、レッドR、ピンクLB、ルビンBL、ボルドーGS、スカイブルーLG、レモンイエロー、ブルーBR、ブルー2R、ネイビーRY、グリーンLG、バイオレットLB、バイオレットB、ブラックH、ブラックB、ブラックGSP、イエロー3G、イエローR、オレンジLR、オレンジ3R、スカーレットGL、スカーレットKGL、コンゴーレッド、ブリリアントバイオレットBK、スプラブルーG、スプラブルーGL、スプラオレンジGL、ダイレクトスカイブルー、ダイレクトファーストオレンジS、ファーストブラック等が挙げられる。二色性色素は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0042】
液晶化合物が硬化した層中で二色性色素が配向している偏光層としては、例えば、重合性液晶化合物中で二色性色素を配向させ、この重合性液晶化合物を重合させた硬化層としたものが挙げられる。このような偏光層は、基材フィルム上に、液晶化合物及び二色性色素を含む偏光層形成用組成物を塗布し、液晶状態を保持したまま液晶化合物を重合して硬化させて形成することができる。このようにして得られた偏光層は、基材フィルムに積層された状態にあり、基材フィルムをそのまま偏光層の保護層として用いてもよい。あるいは、偏光層に対して基材フィルムを剥離可能とした基材フィルム付き偏光層を、第1位相差層に粘着剤層31を介して積層した後に、基材フィルムを剥離してもよい。
【0043】
液晶化合物としては液晶状態を示す性質を有していればよく、特にスメクチック相等の高次の配向状態を有していることが高い偏光性能を発揮することができるため好ましい。また、液晶化合物は、重合性官能基を有していることも好ましい。二色性色素は、液晶化合物とともに配向して二色性を示す色素であって、二色性色素自身が液晶性を有していてもよいし、重合性官能基を有していることもできる。液晶化合物を含む偏光層形成用組成物の中のいずれかの化合物は重合性官能基を有している。
【0044】
液晶化合物を用いた偏光層に用いることができる二色性色素としては、例えば、アクリジン色素、オキサジン色素、シアニン色素、ナフタレン色素、アゾ色素、アントラキノン色素等が挙げられるが、中でもアゾ色素が好ましい。アゾ色素としては、モノアゾ色素、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素、テトラキスアゾ色素、スチルベンアゾ色素等が挙げられ、ビスアゾ色素、トリスアゾ色素がより好ましい。二色性色素は、1種のみを単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0045】
偏光層形成用組成物は、溶剤、光重合開始剤等の重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤、分散剤、レベリング剤、安定剤、界面活性剤、架橋剤、シランカップリング剤等を含むことができる。偏光層形成用組成物に含まれる、重合性液晶化合物、二色性色素、溶剤、重合開始剤、光増感剤、重合禁止剤等については、公知のものを用いることができる。また、重合性液晶化合物は、後述する第1位相差層及び第2位相差層を得るために用いた重合性液晶化合物として例示した化合物と同様のものを用いてもよい。
【0046】
偏光層41の厚みは、通常2~40μmであり、偏光層の薄膜化の観点から、30μm以下であることが好ましく、20μm以下であることがより好ましい。液晶化合物が硬化した層中で二色性色素が配向している偏光層は、PVA系樹脂フィルムにヨウ素等の二色性色素が吸着配向している偏光層に比べて厚みを小さく形成することができる。液晶化合物を用いた偏光層の厚みは、例えば、0.5~5μm、好ましくは1~4μmであってもよい。
【0047】
また、偏光層41の視感度補正単体透過率Tyは、視感度補正偏光度Pyとのバランスを考慮して、40~47%であることが好ましく、41~45%であることがより好ましい。視感度補正偏光度Pyは、99.9%以上であることが好ましく、99.95%以上であることがより好ましい。Ty及びPyは、積分球付き吸光光度計を用いて、得られた透過率、偏光度に対してJIS Z 8701の2度視野(C光源)により視感度補正を行うことによって求めることができる。
【0048】
(偏光板)
偏光板は、偏光層の片面又は両面に、公知の粘着剤層又は接着剤層を介して保護層(第1保護層、第2保護層)を積層したものである。偏光板の厚みは、例えば2μm以上300μm以下とすることができ、10μm以上であってもよく、また、150μm以下であってもよく、120μm以下であってもよく、80μm以下であってもよい。
【0049】
保護層としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、水分遮断性、等方性、延伸性等に優れる熱可塑性樹脂から形成されたフィルムが用いられる。このような熱可塑性樹脂の具体例としては、トリアセチルセルロース等のセルロース樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリカーボネート樹脂;ナイロンや芳香族ポリアミド等のポリアミド樹脂;ポリイミド樹脂;ポリエチレン、ポリプロピレン、エチレン・プロピレン共重合体等のポリオレフィン樹脂;シクロ系及びノルボルネン構造を有する環状ポリオレフィン樹脂(ノルボルネン系樹脂ともいう);(メタ)アクリル樹脂;ポリアリレート樹脂;ポリスチレン樹脂;ポリビニルアルコール樹脂、並びにこれらの混合物を挙げることができる。偏光層の両面に保護層が積層されている場合、二つの保護層の樹脂組成は同一であってもよいし、異なっていてもよい。熱可塑性樹脂から形成されたフィルムは、偏光層との密着性を向上するため、表面処理(例えば、コロナ処理等)が施されていてもよく、プライマー層(下塗り層ともいう)等の薄層が形成されていてもよい。
【0050】
保護層は、例えば上記の熱可塑性樹脂を延伸したものであってもよいし、延伸されていないものであってもよい(以下、「未延伸樹脂」ということがある。)。延伸処理としては、一軸延伸や二軸延伸等が挙げられる。
【0051】
保護層の厚みは、3μm以上であることが好ましく、5μm以上であることがより好ましい。また、保護層の厚みは、50μm以下であることが好ましく、35μm以下であることがより好ましい。なお、上述した上限値及び下限値は、任意に組み合わせることができる。偏光板の厚みが薄くなるほど剛性が小さくなり、偏光層の収縮応力の影響を受けやすくなる。したがって、偏光板が厚みの小さい保護層を有する光学積層体では、その端部において偏光層の収縮応力の影響を受けやすく、高温環境下において面内の反射光の色相の均一性が悪化しやすくなる傾向にある。そのため、このような光学積層体では、上記したように、糊欠け量の距離L1を3μm以上とすることにより、高温環境下においても面内の反射光の色相の均一性が悪化することを効果的に抑制できると考えられる。
【0052】
保護層の偏光層とは反対側の表面は、表面処理層を有していてもよく、例えばハードコート層、反射防止層、スティッキング防止層、アンチグレア層、拡散層等を有していてもよい。表面処理層は、保護層上に積層される別の層であってもよく、保護層表面に表面処理が施されて形成されたものであってもよい。
【0053】
(第1位相差層及び第2位相差層)
第1位相差層及び第2位相差層(以下、両者をまとめて「位相差層」ということがある。)は、位相差フィルムであってもよく、液晶層であってもよい。位相差フィルムは、光学異方性を示すものであればよく、例えば、ポリビニルアルコール、ポリカーボネート、ポリエステル、ポリアリレート、ポリイミド、ポリオレフィン、ポリシクロオレフィン、ポリスチレン、ポリサルホン、ポリエーテルサルホン、ポリビニリデンフルオライド/ポリメチルメタクリレート、アセチルセルロース、エチレン-酢酸ビニル共重合体ケン化物、ポリ塩化ビニル等で形成されたフィルムを1.01~6倍程度に延伸することにより得られる延伸フィルム等が挙げられる。
【0054】
位相差層が液晶層である場合、液晶層をなす液晶化合物の種類は特に限定されず、棒状液晶化合物、円盤状液晶化合物、及びこれらの混合物を用いることができる。液晶層は、液晶化合物と溶剤、必要に応じて各種添加剤を含む液晶層形成用組成物を、配向層上に塗布して塗膜を形成し、この塗膜を固化(硬化)させることによって、液晶化合物の硬化層である液晶層を形成することができる。あるいは、基材層上に液晶層形成用組成物を塗布して塗膜を形成し、この塗膜を基材層とともに延伸することによって液晶層を形成してもよい。液晶層形成用組成物は、上記した液晶化合物及び溶剤の他に、重合開始剤、反応性添加剤、レベリング剤、重合禁止剤等を含んでいてもよい。液晶化合物、溶剤、重合開始剤、反応性添加剤、レベリング剤、重合禁止剤等は、公知のものを適宜用いることができる。
【0055】
液晶層が形成される基材層(第1基材層、第2基材層)としては、樹脂材料で形成されたフィルムであることが好ましい。樹脂材料としては、例えば、透明性、機械的強度、熱安定性、延伸性等に優れる樹脂材料が用いられる。具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン系樹脂;ノルボルネン系ポリマー等の環状ポリオレフィン系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート等のポリエステル系樹脂;(メタ)アクリル酸、ポリ(メタ)アクリル酸メチル等の(メタ)アクリル酸系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロース及びセルロースアセテートプロピオネート等のセルロースエステル系樹脂;ポリビニルアルコール及びポリ酢酸ビニル等のビニルアルコール系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリイミド系樹脂;ポリエーテルケトン系樹脂;ポリフェニレンスルフィド系樹脂;ポリフェニレンオキシド系樹脂、及びこれらの混合物、共重合物等を挙げることができる。これらの樹脂のうち、環状ポリオレフィン系樹脂、ポリエステル系樹脂、セルロースエステル系樹脂及び(メタ)アクリル酸系樹脂のいずれか又はこれらの混合物を用いることが好ましい。
【0056】
基材層は、単層であってもよく、2層以上の多層構造を有していてもよい。多層構造を有する場合、各層をなす樹脂の種類は互いに同じであってもよく異なっていてもよい。基材層の厚みは特に限定されないが、一般には強度や取扱い性等の作業性の点から1~300μmであることが好ましく、10~200μmであることがより好ましく、30~120μmであることがさらに好ましい。
【0057】
上記した配向層は、その上に形成される液晶層に含まれる重合性液晶化合物等の液晶化合物を所望の方向に液晶配向させる、配向規制力を有する。配向層としては、配向性ポリマーで形成された配向性ポリマー層、光配向ポリマーで形成された光配向性ポリマー層、層表面に凹凸パターンや複数のグルブ(溝)を有するグルブ配向層を挙げることができる。配向層の厚みは、通常10~500nmであり、10~200nmであることが好ましい。
【0058】
(粘着剤層)
粘着剤層は、粘着剤を用いて形成された層である。本明細書において粘着剤とは、それ自体を光学フィルムや液晶層等の被着体に張り付けることで接着性を発現するものであり、いわゆる感圧型接着剤と称されるものである。粘着剤としては、従来公知の光学的な透明性に優れる粘着剤を特に制限なく用いることができ、例えば、アクリル系、ウレタン系、シリコーン系、ポリビニルエーテル系等のベースポリマーを有する粘着剤を用いることができる。粘着剤層の厚みは3μm以上であってもよく、5μm以上であってもよく、また、35μm以下であってもよく、30μm以下であってもよい。
【0059】
粘着剤層は、紫外線吸収剤、イオン性化合物等を用いた帯電防止剤、溶媒、架橋触媒、粘着付与樹脂(タッキファイヤー)、可塑剤、軟化剤、染料、顔料、無機フィラー等の添加剤を含んでいてもよい。特に、粘着剤層が紫外線吸収剤を含むことにより、第1位相差層が液晶層である場合に、液晶層に含まれる液晶化合物が、外光等の影響を受けて劣化することを抑制することができる。
【0060】
(接着層)
接着層は、粘着剤層、接着剤を用いて形成された接着剤層、及びこれらの組み合わせによって形成することができ、通常1層であるが、2層以上であってもよい。接着層が2層以上の層からなる場合、各層は互いに同じ材料で形成されていてもよく、異なる材料で形成されていてもよい。粘着剤層は、上記した粘着剤を用いて形成することができる。
【0061】
接着剤層に用いることができる接着剤としては、例えば、水系接着剤、活性エネルギー線硬化型接着剤等、従来公知の接着剤を特に制限なく用いることができる。水系接着剤としては、例えばポリビニルアルコール系樹脂水溶液、水系二液型ウレタン系エマルジョン接着剤等を挙げることができる。活性エネルギー線硬化型接着剤としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射することによって硬化する接着剤であり、例えば重合性化合物及び光重合性開始剤を含むもの、光反応性樹脂を含むもの、バインダー樹脂及び光反応性架橋剤を含むもの等を挙げることができる。上記重合性化合物としては、光硬化性エポキシ系モノマー、光硬化性アクリル系モノマー、光硬化性ウレタン系モノマー等の光重合性モノマーや、これらモノマーに由来するオリゴマー等を挙げることができる。上記光重合開始剤としては、紫外線等の活性エネルギー線を照射して中性ラジカル、アニオンラジカル、カチオンラジカルといった活性種を発生する物質を含むものを挙げることができる。
【実施例】
【0062】
以下、実施例及び比較例を示して本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの例によって限定されるものではない。実施例、比較例中の「%」及び「部」は、特記しない限り、質量%及び質量部である。
【0063】
[偏光板の作製]
第1保護層として、厚み20μmのトリアセチルセルロースフィルムを準備した。第2保護層として、一方の表面にハードコート層が形成された厚み29μmのノルボルネン系樹脂フィルムを準備した。偏光層として、PVA系樹脂フィルムに二色性色素であるヨウ素が吸着配向したものを準備した。偏光層の厚みは8μmであった。
【0064】
また、水100重量部に対し、カルボキシル基変性ポリビニルアルコール〔株式会社クラレから入手した商品名「KL-318」〕を3重量部溶解し、その水溶液に水溶性エポキシ樹脂であるポリアミドエポキシ系添加剤〔田岡化学工業株式会社から入手した商品名「スミレーズレジン(登録商標) 650(30)」、固形分濃度30重量%の水溶液〕を1.5重量部添加して、水系接着剤を調製した。
【0065】
第1保護層にケン化処理を施し、第2保護層のノルボルネン系樹脂フィルム側の表面、及び、偏光層の両面にコロナ処理を施した。偏光層の一方の面に、上記で得た水系接着剤を介して第1保護層を貼合し、偏光層の他方の面に、上記と同じ水系接着剤を介して、第2保護層のハードコート層とは反対側(ノルボルネン系樹脂フィルム側)を貼合し、乾燥処理を行って偏光板を作製した。得られた偏光板を、偏光層の吸収軸が長辺方向に対して45°となるように矩形形状に裁断した。
【0066】
[第1位相差層の作製]
(水平配向層形成用組成物の調製)
下記の成分を混合し、得られた混合物を温度80℃で1時間攪拌することにより、水平配向層形成用組成物を得た。
・光配向性材料(5部)(重量平均分子量:30000):
【化1】
・溶媒(95部):シクロペンタノン
【0067】
(水平配向液晶層形成用組成物の調製)
下記の成分を混合し、固形分濃度が13%となるようにN-メチル-2-ピロリドン(NMP)をさらに添加して、80℃で1時間攪拌することにより、水平配向液晶層形成用組成物を得た。下記の重合性液晶化合物Aは、特開2010-31223号公報に記載の方法で合成し、下記の重合性液晶化合物Bは、特開2009-173893号公報に記載の方法に準じて合成した。
・重合性液晶化合物A(90部):
【化2】
・重合性液晶化合物B(10部):
【化3】
・重合開始剤(6部):
2-ジメチルアミノ-2-ベンジル-1-(4-モルホリノフェニル)ブタン-1-オン(イルガキュア369、BASFジャパン株式会社製)
【0068】
(第1位相差層の作製)
環状オレフィン系樹脂(COP)フィルム(ZF-14-50、日本ゼオン株式会社製)にコロナ処理を実施した。このCOPフィルムのコロナ処理面に、上記で得た水平配向層形成用組成物をバーコーターで塗布し、80℃で1分間乾燥した。この塗布膜に対して、偏光UV照射装置(「SPOT CURE SP-9」、ウシオ電機株式会社製)を用いて、波長313nmにおける積算光量が100mJ/cm2となるように、軸角度45°にて偏光UVを露光して水平配向層を得た。
【0069】
続いて、この水平配向層に、上記で得た水平配向液晶層形成用組成物をバーコーターを用いて塗布し、120℃で1分間乾燥した。塗布膜に対して、高圧水銀ランプ(「ユニキュアVB-15201BY-A」、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより、水平配向液晶層である第1位相差層を形成した。第1位相差層は、逆波長分散性を示す1/4波長板であった。
【0070】
[第2位相差層の作製]
(垂直配向層形成用組成物の準備)
垂直配向層形成用組成物として、サンエバーSE610(日産化学工業株式会社製)を準備した。
【0071】
(垂直配向液晶層形成用組成物の調製)
下記の成分を混合し、固形分濃度が13%となるようにシクロペンタノンをさらに添加して、垂直配向液晶層形成用組成物を得た。
・重合性液晶化合物C(100部):
Paliocolor(登録商標) LC242(BASF社製)
・レベリング剤(0.1部):
F-556(DIC社製)
・重合開始剤(3部):
イルガキュア369(チバスペシャルティケミカルズ社製)
【0072】
(第2位相差層の作製)
環状オレフィン系樹脂(COP)フィルム(ZF-14-50、日本ゼオン株式会社製)にコロナ処理を実施した。このCOPフィルムのコロナ処理面に、上記で得た垂直配向層形成用組成物をバーコーターで塗布し、80℃で1分間乾燥して垂直配向層を得た。続いて、垂直配向層に、上記で得た垂直配向液晶層形成用組成物をバーコーターを用いて塗布し、90℃で120秒間乾燥した。この塗布膜に対して、高圧水銀ランプ(「ユニキュアVB-15201BY-A」、ウシオ電機株式会社製)を用いて、紫外線を照射(窒素雰囲気下、波長365nmにおける積算光量:500mJ/cm2)することにより、垂直配向液晶層である第2位相差層を形成した。第2位相差層は、nx≒ny<nzの関係を満たすポジティブCプレートであった。
【0073】
[位相差層積層体の作製]
上記で作製した第1位相差層のCOPフィルムとは反対側の表面、及び、上記で作製した第2位相差層のCOPフィルムとは反対側の表面にコロナ処理を施した。このコロナ処理面(第1位相差層表面、及び、第2位相層表面)同士を、紫外線硬化型接着剤を介して貼合した後、紫外線を照射して紫外線硬化型接着剤を硬化して、第1位相差層と第2位相差層とが接着剤層を介して積層された位相差層積層体を得た。得られた位相差層積層体を、第1位相差層(1/4波長板)の遅相軸が長辺方向に平行となるように矩形形状に裁断した。
【0074】
[糊欠け部の距離L1の測定]
各実施例及び各比較例で得た光学積層体の第2位相差層側に、剥離フィルム上に設けた厚み20μmのアクリル系粘着剤層を積層して粘着剤層付き光学積層体を得た。この粘着剤層付き光学積層体について、糊欠け部が形成されている辺を確認し、糊欠け部が形成されている位置において、当該辺に対して垂直な方向に沿って粘着剤層付き光学積層体を切断したときの断面について、レーザー顕微鏡を用いてプロファイルを測定した。測定されたプロファイルに基づいて、粘着剤層61の端部における最内端の位置と、偏光層の端部における最外端の位置との間の距離L1を測定した。
【0075】
[高温試験]
各実施例及び各比較例で得た光学積層体の第2位相差層側に、厚み20μmのアクリル系粘着剤層を積層し、このアクリル系粘着剤層をガラス板に貼合して評価用試料とした。得られた評価用試料を、温度80℃のオーブンに200時間置く高温試験を行った。高温試験後の評価用試料を、反射板(Alanod社製、MIRO5 5011GP)上にガラス板が下側となるように置き、分光測色計(CM2600d、コニカミノルタ株式会社)を用いて反射光の色相を測定した。測定は、評価用試料から積分球へ光が入るときの開口部の直径φが1.5mmのマスクを装着して行い、評価用試料の4つの端辺における中央部分の反射光の色相(a*b*)と、評価用試料の中心部分(矩形の対角線の交差部分)の反射光の色相(a*b*)との差の平均値をΔa*b*として算出した。
Δa*b*=(Δa*2+Δb*2)1/2
【0076】
また、高温試験後の評価用試料を反射板(Alanod社製、MIRO5 5011GP)上に置いた後、光学積層体側から目視で反射光の観察を行い、光学積層体の色ムラの状態を確認する視認性の評価を行った。色ムラの状態が、弱く視認される場合をAと評価し、強く視認される場合をBと評価した。
【0077】
〔実施例1〕
図3(a)及び(b)は、実施例における粘着剤層の作製方法を説明するための模式図である。
図3(a)に示すように、剥離フィルム62上に、厚み20μmのアクリル系粘着剤を用いて形成された粘着剤層61を有する剥離フィルム付き粘着剤層60を準備した。粘着剤層61は、紫外線吸収剤を含むものであった。
図3(a)に示すように、粘着剤層61側から、剥離フィルム付き粘着剤層60の積層方向に平行な方向(図中、矢印方向)に沿って、先端部分65aの角度θの切断刃65を切り込ませて、剥離フィルム付き粘着剤層60を矩形形状に裁断した。切断刃65として片刃のものを用いた。切断後の矩形形状の剥離フィルム付き粘着剤層60の切断面は、片刃の切断刃65の両面のうちの刃が形成された面に接触した面であった。
【0078】
得られた矩形形状の剥離フィルム付き粘着剤層60の粘着剤層61を、上記で作製した偏光板の第1保護層側(トリアセチルセルロールフィルム側)に貼合した後、剥離フィルム62を剥離した。上記で作製した位相差層積層体の第1位相差層側のCOPフィルムを剥離して露出した面と、剥離フィルム62を剥離して露出した粘着剤層61の表面とを貼合した後、第2位相差層側のCOPフィルムを剥離して、第2保護層/偏光層/第1保護層/粘着剤層61/第1位相差層/接着剤層/第2位相差層の層構造を有する光学積層体(円偏光板)を得た。なお、光学積層体の作製において、各層を貼合する際には、貼合面にコロナ処理を実施し、貼合の際には、各層の長辺及び短辺を一致させ、偏光層の吸収軸方向は、第1位相差層の遅相軸方向に対して45°となるようにした。
【0079】
得られた光学積層体は、その全周に糊欠け部が形成されていた。光学積層体の各辺の任意の位置における糊欠け部について、上記した手順で距離L1を測定し、その平均値を算出した。また、得られた光学積層体の高温試験を行い、反射光の色相の変化を測定し、色ムラの状態を確認する視認性の評価を行った。これらの結果を表1に示す。なお、各辺における距離L1の測定結果から、本実施例の光学積層体の全周において、糊欠け部の距離L1は表1に示す値と同程度であると認められた。
【0080】
[実施例2及び比較例1]
剥離フィルム付き粘着剤層60(
図3(a))を裁断するために用いる切断刃として、先端部分65aの角度θが実施例1で用いたものよりも小さい切断刃(片刃)を用いて矩形形状の剥離フィルム付き粘着剤層60を得たこと以外は、実施例1と同様にして光学積層体を得た。得られた光学積層体は、その全周に糊欠け部が形成されていた。光学積層体の各辺の任意の位置における糊欠け部について、上記した手順で距離L1を測定し、その平均値を算出した。また、得られた光学積層体の高温試験を行い、反射光の色相の変化を測定し、色ムラの状態を確認する視認性の評価を行った。これらの結果を表1に示す。なお、各辺における距離L1の測定結果から、本実施例の光学積層体の全周において、糊欠け部の距離L1は表1に示す値と同程度であると認められた。
【0081】
【符号の説明】
【0082】
5 糊欠け部、11 光学積層体、12 光学積層体、21 第1位相差層、22 第2位相差層、31 粘着剤層、35 接着層、40 偏光板、41 偏光層、42 第1保護層、43 第2保護層、60 剥離フィルム付き粘着剤層、61 粘着剤層、62 剥離フィルム、65 切断刃、65a 刃先部分。