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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】放射源
(51)【国際特許分類】
   G02F 1/365 20060101AFI20240913BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240913BHJP
【FI】
G02F1/365
G03F7/20 501
G03F7/20 521
【請求項の数】 11
(21)【出願番号】P 2022504192
(86)(22)【出願日】2020-07-13
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-09-29
(86)【国際出願番号】 EP2020069760
(87)【国際公開番号】W WO2021013611
(87)【国際公開日】2021-01-28
【審査請求日】2022-03-22
(31)【優先権主張番号】19188036.8
(32)【優先日】2019-07-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】19198105.9
(32)【優先日】2019-09-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】20151889.1
(32)【優先日】2020-01-15
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】504151804
【氏名又は名称】エーエスエムエル ネザーランズ ビー.ブイ.
(74)【代理人】
【識別番号】100105924
【弁理士】
【氏名又は名称】森下 賢樹
(74)【代理人】
【識別番号】100134256
【弁理士】
【氏名又は名称】青木 武司
(72)【発明者】
【氏名】ユーベル、パトリック、セバスチャン
(72)【発明者】
【氏名】バウアーシュミット、セバスチャン、トーマス
(72)【発明者】
【氏名】ニー、ヨンフェン
【審査官】林 祥恵
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2019/0103721(US,A1)
【文献】米国特許第09160137(US,B1)
【文献】特表2018-533042(JP,A)
【文献】特表2013-533506(JP,A)
【文献】中国特許出願公開第103901699(CN,A)
【文献】A. I. ADAMU et al.,“Deep-UV to Mid-IR Supercontinuum Generation driven by Mid-IR Ultrashort Pulses in a Gas-filled Hollow-core Fiber”,Scientific Reports,2019年03月14日,Vol. 9, No. 1,pp.1-9,DOI: 10.1038/S41598-019-39302-2
【文献】M. G. WELCH et al.,“Solitons in Hollow Core Photonic Crystal Fiber: Engineering Nonlinearity and Compressing Pulses”,Journal of Lightwave Technology,2009年06月,Vol. 27, No. 11,pp.1644-1652,DOI: 10.1109/JLT.2009.2019731
【文献】J. C. TRAVERS et al.,“Ultrafast nonlinear optics in gas-filled hollow-core photonic crystal fibers [Invited]”,Journal of the Optical Society of America B,2011年11月30日,Vol. 28, No. 12,pp. A11-A26
【文献】F.GEROME et al.,“High Power Pulse Compression with Soliton Delivery in Hollow-Core Photonic Bandgap Fiber”,LEOS 2007 - IEEE Lasers and Electro-Optics Society Annual Meeting Conference Proceedings,2007年10月,WQ1,pp.550-551,DOI: 10.1109/LEOS.2007.4382524
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
G02F 1/21-1/39
G02B 6/12-6/14
G03F 7/20
IEEE Xplore
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
入力端と、出力端と、中空コアを有する本体を含む中空コア光ファイバと、
前記中空コア内に配置されたガスである作動媒体と、
前記入力端から前記出力端まで前記中空コアによって受け取られ、前記中空コアを通って伝播するパルスポンプ放射を生成するように配置されたパルスポンプ放射源と、
を備え、
前記パルスポンプ放射、前記光ファイバ、および前記作動媒体のパラメータは、前記パルスポンプ放射のスペクトルを変化させて出力放射を形成するために前記パルスポンプ放射のソリトン自己圧縮を可能にするように構成され、さらに、前記光ファイバの前記入力端から前記出力端までの長さは、前記出力端が前記出力放射の時間範囲が最小になる位置と実質的に一致する長さであり、
入力された前記パルスポンプ放射のパルスエネルギーが0.1μJ以上且つ1μJ未満であり、
入力された前記パルスポンプ放射のパルス持続時間が100fsよりも大きく、且つ400fs以下である、放射源。
【請求項2】
入力端と、出力端と、中空コアを有する本体を含む中空コア光ファイバと、
前記中空コア内に配置されたガスである作動媒体と、
前記入力端から前記出力端まで前記中空コアによって受け取られ、前記中空コアを通って伝播するパルスポンプ放射を生成するように配置されたパルスポンプ放射源と、
を備え、
前記パルスポンプ放射、前記光ファイバ、および前記作動媒体のパラメータは、前記パルスポンプ放射のスペクトルを変化させて出力放射を形成するために前記パルスポンプ放射のソリトン自己圧縮を可能にするように構成され、さらに、前記光ファイバの前記入力端から前記出力端までの長さは、前記出力端が前記出力放射のスペクトルの幅が最大になる位置と実質的に一致する長さであり、
入力された前記パルスポンプ放射のパルスエネルギーが0.1μJ以上且つ1μJ未満であり、
入力された前記パルスポンプ放射のパルス持続時間が100fsよりも大きく、且つ400fs以下である、放射源。
【請求項3】
前記光ファイバの長さは、前記出力端が、前記パルスポンプ放射の時間範囲の最初の極小値と実質的に一致する長さである、請求項1または2に記載の放射源。
【請求項4】
入力された前記パルスポンプ放射のソリトン次数が20未満である、請求項1からのいずれかに記載の放射源。
【請求項5】
前記作動媒体が異常分散を生成するように構成される、請求項1からのいずれかに記載の放射源。
【請求項6】
前記中空コア光ファイバは、前記中空コアを取り囲むクラッド部分を備え、前記クラッド部分は、前記中空コアを通して放射を誘導するための複数の反共振要素を備え、任意選択で、前記クラッド部分の複数の反共振要素は、前記中空コアの周りにリング構造で配置される、請求項1からのいずれかに記載の放射源。
【請求項7】
前記複数の反共振要素は、前記反共振要素のそれぞれが他の前記反共振要素のいずれとも接触しないように配置されている、請求項に記載の放射源。
【請求項8】
前記作動媒体は、i)希ガスおよびii)分子ガスのうちの少なくとも1つを含む、請求項1からのいずれかに記載の放射源。
【請求項9】
基板上の構造の関心のあるパラメータを決定するための計測装置であって、
請求項1からのいずれかに記載の放射源と、
広帯域出力放射を使用して前記基板上の前記構造を照明するための照明サブシステムと、
前記構造によって散乱および/または反射された放射の一部を検出するための、および放射の前記一部から関心のある前記パラメータを決定するための検出サブシステムと、
を備える計測装置。
【請求項10】
請求項に記載の計測装置を備えるリソグラフィ装置。
【請求項11】
放射源の動作レジームを選択する方法であって、
前記放射源は、
入力端と、出力端と、中空コアを有する本体を含む中空コア光ファイバと、
前記中空コア内に配置されたガスである作動媒体と、
前記入力端から前記出力端まで前記中空コアによって受け取られ、前記中空コアを通って伝播するパルスポンプ放射を生成するように配置されたパルスポンプ放射源と、
を備え、
当該方法は、
前記パルスポンプ放射のスペクトルを変化させて出力放射を形成するために前記パルスポンプ放射のソリトン自己圧縮を可能にするように、前記パルスポンプ放射、前記光ファイバ、および前記作動媒体のうちの1つまたは複数のパラメータを選択することを備え、
さらに、前記パラメータは、前記光ファイバの前記入力端から前記出力端までの長さが、前記出力端が以下の位置:
前記出力放射の時間範囲が最小になる位置、および/または、
前記出力放射のスペクトルの幅が最大になる位置、
と実質的に一致する長さとなるように選択され、
入力された前記パルスポンプ放射のパルスエネルギーが0.1μJ以上且つ1μJ未満であり、
入力された前記パルスポンプ放射のパルス持続時間が100fsよりも大きく、且つ400fs以下である、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
[関連出願へのクロスリファレンス]
本出願は、その全体が参照により本書に援用される2019年7月24日に出願された欧州出願第19188036.8号および2019年9月18日に出願された欧州出願19198105.9号および2020年1月15日に出願された欧州出願20151889.1号の優先権を主張する。
【0002】
[技術分野]
本発明は、放射源に関する。 放射源は、スーパーコンティニウム光源であってよく、入力放射を受け取り、(広帯域)出力放射を提供するために入力放射の周波数範囲を広げるための装置を含み得る。
【背景技術】
【0003】
リソグラフィ装置は、基板上に所望のパターンを付与するように構築された機械である。リソグラフィ装置は、例えば、集積回路(IC)の製造に使用することができる。リソグラフィ装置は、例えば、パターニングデバイス(例えば、マスク)のパターン(「設計レイアウト」または「設計」とも呼ばれる)を、基板(例えばウェハ)上に設けられた放射感応性材料(レジスト)の層に投影することができる。
【0004】
基板上にパターンを投影するために、リソグラフィ装置は電磁放射を使用することができる。この放射の波長は、基板上に形成できるフィーチャの最小サイズを決定する。現在使用されている代表的な波長は、365nm(i線)、248nm、193nm、13.5nmである。4~20nmの範囲内、例えば6.7nmまたは13.5nmの波長を有する極端紫外線(EUV)放射を使用するリソグラフィ装置を用いて、例えば波長193nmの放射を使用するリソグラフィ装置よりも小さいフィーチャを基板上に形成することができる。
【0005】
低kリソグラフィを使用して、リソグラフィ装置の古典的な解像限界よりも小さい寸法のフィーチャを処理することができる。このようなプロセスでは、解像度の式はCD=k×λ/NAとして表すことができる。ここで、λは使用する放射の波長、NAはリソグラフィ装置の投影光学系の開口数、CDは「限界寸法」(通常、印刷される最小のフィーチャサイズであるが、この場合はハーフピッチ)およびkは経験的な解像度係数である。一般に、kが小さいほど、特定の電気的機能と性能を実現するために回路設計者が計画した形状と寸法に似たパターンを基板に再現することが難しくなる。これらの困難を克服するために、高度な微調整ステップをリソグラフィ投影装置および/または設計レイアウトに適用することができる。これらには、たとえば、NAの最適化、カスタマイズされた照明スキーム、位相シフトパターニングデバイスの使用、設計レイアウトにおける光学近接効果補正(OPC:optical proximity correction、「光学補正およびプロセス補正」とも呼ばれる)などの設計レイアウトのさまざまな最適化、または一般に「解像度向上技術」(RET:resolution enhancement techniques)として定義されている他の方法が含まれるが、これらに限定されない。あるいは、リソグラフィ装置の安定性を制御するための厳しい制御ループを使用して、低kでのパターンの再現を改善することができる。
【0006】
リソグラフィの分野では、リソグラフィ装置内およびリソグラフィ装置の外部の両方で、多くの測定システムを使用することができる。一般に、そのような測定システムは、放射源を使用してターゲットに放射を照射することができ、検出システムは、ターゲットから散乱する入射放射の一部の少なくとも1つの特性を測定するように動作可能である。リソグラフィ装置の外部にある測定システムの例は、検査装置または計測装置であり、これは、リソグラフィ装置によって基板上に以前に投影されたパターンの特性を決定するために使用され得る。そのような外部検査装置は、例えば、スキャトロメータを備え得る。リソグラフィ装置内に提供され得る測定システムの例には、トポグラフィ測定システム(レベルセンサとしても知られている)、レチクルまたはウェハステージの位置を決定するための位置測定システム(例えば、干渉計装置)、およびアライメントマークの位置を決定するためのアライメントセンサが含まれる。これらの測定装置は、電磁放射を使用して測定を実行することができる。
【0007】
異なるタイプの放射を使用して、パターンの異なるタイプの特性を調べることができる。一部の測定システムでは、広帯域放射源を使用する場合がある。そのような広帯域放射源は、スーパーコンティニウム光源であってよく、そしてパルスポンプ放射ビームが放射のスペクトルを広げるために伝播される非線形媒体を有する光ファイバを含み得る。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本明細書で特定されるかどうかにかかわらず、先行技術に関連する1つまたは複数の問題に少なくとも部分的に対処する(広帯域)出力放射を提供するために、入力放射を受け取り、入力放射の周波数範囲を広げるための装置で使用するための代替の装置および方法を提供することが望ましい。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明の第1の態様によれば、中空コアを有する本体を含む中空コア光ファイバと、中空コア内に配置された作動媒体と、入力端から出力端まで中空コアによって受け取られ、中空コアを通って伝播するパルスポンプ放射を生成するように配置されたパルスポンプ放射源と、を備え、パルスポンプ放射、光ファイバ、および作動媒体のパラメータは、パルスポンプ放射のスペクトルを変化させて出力放射を形成するためにパルスポンプ放射のソリトン自己圧縮を可能にするように構成され、さらに、光ファイバの長さは、出力端が出力放射の時間範囲が最小になる位置と実質的に一致する長さである、放射源が提供される。
【0010】
本発明の第2の態様によれば、中空コアを有する本体を含む中空コア光ファイバと、 中空コア内に配置された作動媒体と、入力端から出力端まで中空コアによって受け取られ、中空コアを通って伝播するパルスポンプ放射を生成するように配置されたパルスポンプ放射源と、を備え、パルスポンプ放射、光ファイバ、および作動媒体のパラメータは、パルスポンプ放射のスペクトルを変化させて出力放射を形成するためにパルスポンプ放射のソリトン自己圧縮を可能にするように構成され、さらに、光ファイバの長さは、出力端が出力放射のスペクトルの幅が最大になる位置と実質的に一致する長さである、放射源が提供される。
【0011】
本発明の第1および第2の態様による放射源は、それらが広帯域出力放射ビームを出力端で生成することを可能にするので有利である。これは、計測装置内、たとえばリソグラフィ装置内での使用に役立つ場合がある。
【0012】
いくつかの既知の広帯域放射源は、パルスポンプ放射のスペクトル広がりを生成する構成を使用するが、パルスポンプ放射、光ファイバ、および作動媒体のパラメータは、変調不安定性がスペクトル広がりを生成することを可能にするように構成される。スペクトルの広がりを生成するために変調不安定性が使用される理由はいくつかある。第一に、変調不安定性は、比較的平坦な強度-波長分布を有する広帯域放射を生成することが知られている。このような広帯域放射源は、(比較的平坦なスペクトル強度分布のために)白色光放射源と呼ばれることがある。第二に、変調不安定性は、ポンプの放射源として比較的経済的なレーザ源を使用して達成することができる。
【0013】
他方、ソリトン自己圧縮は、入力ポンプレーザビームから、シフトされた波長を有する出力レーザビームを生成するために使用されるレジームである。たとえば、ソリトン自己圧縮は、異なる(シフトされた)波長を持つ分散波を生成するために使用される。ソリトン自己圧縮レジーム(ソリトン数が比較的少ない)では、放射のパルスが大幅な時間的圧縮を受ける可能性があり、これにはスペクトルの広がりが伴う。最終的に、時間的圧縮は最大レベル(パルス放射の最小時間範囲に対応)に達し、続いて放射の時間的広がりが起こる。この時間的広がりは、高次ソリトンが複数の個別のソリトンに分裂するため、ソリトン分裂と呼ばれる。(高次の)ソリトンは、中空コア光ファイバに沿って伝播するときに、時間的圧縮と時間的広がりの期間の間で振動し得る。時間的な広がりに続いて、他の影響が放射のスペクトルのシフトにつながる可能性がある。たとえば、自己パルス急峻化(ソリトン自己圧縮を伴い、それを支援し得る)は、分散波放射に種をまく可能性のある光ショックにつながり得る。システムのパラメータを調整することにより、特定の望ましい波長を生成することができる。例えば、波長は、特定の分子と相互作用するのに適しているように選択され得、そして前記分子を研究する研究実験において使用され得る。したがって、ソリトン自己圧縮は、第1の波長を有する入力ポンプレーザービームから、第2のシフトされた波長を有する出力放射ビームを生成するための既知のレジームである。
【0014】
本発明の発明者らは、ソリトン自己圧縮中に、時間的広がりの前に(および分散波が形成される前に)、中空コアファイバを伝搬する放射が広帯域放射である(短命の)遷移期間があることを認識した。さらに、本発明者らは、この広帯域放射は短命であるが、出力端がその後のスペクトルの時間的広がり(ソリトン核分裂)とシフトの前にソリトンの自己圧縮が発生した位置と実質的に一致するように光ファイバの長さを選択することによって、この広帯域放射を光ファイバから出力して、特に安定した広帯域放射源を提供することができることを認識した。
【0015】
特に、光ファイバの長さが、パルスポンプ放射の時間的範囲が最小である位置と出力端が実質的に一致するようなものである場合、特に安定した広帯域放射源を提供することができる。本明細書で使用される場合、出力端でのパルスポンプ放射の時間範囲が光ファイバ内で最小である場合、出力端はパルスポンプ放射の時間範囲が最小になる位置と実質的に一致することが理解されよう。すなわち、パルスポンプ放射の時間範囲がまだ増加していない場合(ソリトン分裂のため)、出力端は、パルスポンプ放射の時間範囲が最小になる位置と実質的に一致する。十分に長い中空コア光ファイバの場合、放射が中空コアファイバを通って伝播するときに、ソリトンが時間的圧縮と時間的広がりの期間の間で振動し得ることが理解されよう。時間的圧縮と時間的広がりの各期間の間に、パルスポンプ放射の時間的範囲に極小値が存在し得る。中空コア光ファイバの長さが、出力端が最初の極小値までまたはそれを含む任意の場所に配置されるような長さの場合、出力端は、パルスポンプ放射の時間的範囲が最小になる位置と実質的に一致する。出力端が最初の極小値と実質的に一致する場合、最大のスペクトル広がりが達成され得る。
【0016】
一般に、ソリトン自己圧縮後、パルスポンプ放射のスペクトルの幅が減少する可能性があり、および/またはスペクトルのギャップが発展する可能性がある(例えば、分散波が放出されるとき)。したがって、光ファイバの長さが、出力端がパルスポンプ放射のスペクトルの幅が最大になる位置と実質的に一致するような長さである場合、特に安定した広帯域放射源を提供することができる。ここで使用されるように、パルスポンプ放射のスペクトルの幅(パルスポンプ放射のスペクトル帯域幅と呼ばれることもある)は、パワー密度が最大値の閾値フラクション(threshold fraction)を超えるスペクトルの幅であり得ることが理解されよう。例えば、パルスポンプ放射のスペクトルの幅は、パワー密度が最大値の0.0001を超えるスペクトル(すなわち、40デシベルにまたがるスペクトル)の幅であり得る。たとえば、パルスポンプ放射のスペクトルの幅は、パワー密度が最大値の0.001を超えるスペクトル(つまり、30デシベルにまたがるスペクトル)の幅であり得る。たとえば、パルスポンプ放射のスペクトルの幅は、パワー密度が最大値の0.01を超えるスペクトル(つまり、20デシベルにまたがるスペクトル)の幅であり得る。たとえば、パルスポンプ放射のスペクトルの幅は、パワー密度が最大値の0.1を超えるスペクトル(つまり、10デシベルにまたがるスペクトル)の幅であり得る。あるいは、光ファイバの長さが、出力端が出力放射のスペクトルが実質的に連続している位置と実質的に一致するような長さである場合、特に安定した広帯域放射源を提供することができる。
【0017】
カオス的駆動の変調不安定性システムとは対照的に、そのようなソリトン自己圧縮によって生成される広帯域放射は、ショットごとの変動を有さないであろう。結果として、有利には、安定した出力スペクトルを単一のパルスを使用して生成することができる(変調不安定性システムの出力ビームにある程度の安定性を生み出すために必要とされるいくつかのパルスとは対照的に)。
【0018】
放射が中空コアファイバを通って伝播するとき、ソリトンは、時間的圧縮と時間的広がりの期間の間で振動し得ることが理解されるであろう。時間的圧縮と時間的広がりの各期間の間に、パルスポンプ放射の時間的範囲に極小値が存在し得る。原則として、光ファイバの長さは、出力端が、パルスポンプ放射の最小の時間的範囲のそのような位置と実質的に一致するような長さであり得る。ただし、最も安定した出力スペクトル(たとえば、パルス間の変動に対して)は、出力端がパルスポンプ放射の最小時間範囲の第1の位置と一致するときに提供され得る。
【0019】
光ファイバの長さは、出力端が、パルスポンプ放射の時間的範囲の最初の極小値と実質的に一致するような長さであり得る。パルスポンプ放射の時間的範囲の最初の極小値の位置は、例えば、ファイバのパラメータ(例えば、コアの直径およびファイバの長さ)、作動媒体のパラメータ(たとえば、ガスと圧力のタイプ)、およびパルスポンプ放射のパラメータ(たとえば、パルスエネルギーとパルス持続時間)を含む多くの要因に依存し得る。出力端がパルスポンプ放射の時間範囲の最初の極小値と実質的に一致するために、出力端は、圧縮されたパルスがパルスポンプ放射の時間範囲の最初の極小値の200%によってまだ膨張または分散されていないように、パルスポンプ放射の時間範囲の最初の極小値の十分近くに配置され得る。例えば、出力端は、圧縮されたパルスがパルスポンプ放射の時間範囲の最初の極小値の100%によってまだ拡張または分散されていないように、パルスポンプ放射の時間範囲の最初の極小値の十分近くに配置され得る。例えば、出力端は、圧縮されたパルスがパルスポンプ放射の時間範囲の最初の極小値の50%によってまだ拡張または分散されていないように、パルスポンプ放射の時間範囲の最初の極小値の十分近くに配置され得る。例えば、出力端は、圧縮されたパルスがパルスポンプ放射の時間範囲の最初の極小値の10%によってまだ拡張または分散されていないように、パルスポンプ放射の時間範囲の最初の極小値の十分近くに配置され得る。例えば、出力端は、圧縮されたパルスがパルスポンプ放射の時間範囲の最初の極小値の5%によってまだ拡張または分散されていないように、パルスポンプ放射の時間範囲の最初の極小値の十分近くに配置され得る。
【0020】
入力されたパルスポンプ放射のパルス持続時間は、50fsより大きくてもよい。例えば、入力されたパルスポンプ放射のパルス持続時間は、100fsより大きく、例えば、150fsのオーダーであり得る。
【0021】
入力されたパルスポンプ放射のパルスエネルギーは、1μJ未満であり得る。たとえば、入力されたパルスポンプ放射のパルスエネルギーは0.75μJ未満であり得る。例えば、入力されたパルスポンプ放射のパルスエネルギーは、0.5μJ未満、例えば、0.4μJのオーダーであり得る。
【0022】
入力されたパルスポンプ放射は、任意の所望の波長を有し得る。いくつかの実施形態では、入力されたパルスポンプ放射は、約1μmの波長を有し得る。
【0023】
本発明の第3の態様によれば、中空コアを有する本体を含む中空コア光ファイバと、中空コア内に配置された作動媒体と、入力端から出力端まで中空コアによって受け取られ、中空コアを通って伝播するパルスポンプ放射を生成するように配置されたパルスポンプ放射源と、を備え、パルスポンプ放射、光ファイバ、および作動媒体のパラメータは、パルスポンプ放射のスペクトルを変化させて出力放射を形成するためにパルスポンプ放射のソリトン自己圧縮を可能にするように構成され、さらに、入力されたパルスポンプ放射のパルス持続時間が50fsを超えている、放射源が提供される。
【0024】
例えば、入力されたパルスポンプ放射のパルス持続時間は、100fsより大きく、例えば、150fsのオーダーであり得る。
【0025】
本発明の第4の態様によれば、中空コアを有する本体を含む中空コア光ファイバと、中空コア内に配置された作動媒体と、入力端から出力端まで中空コアによって受け取られ、中空コアを通って伝播するパルスポンプ放射を生成するように配置されたパルスポンプ放射源と、を備え、パルスポンプ放射、光ファイバ、および作動媒体のパラメータは、パルスポンプ放射のスペクトルを変化させて出力放射を形成するためにパルスポンプ放射のソリトン自己圧縮を可能にするように構成され、さらに、入力されたパルスポンプ放射のパルスエネルギーが1μJ未満である、放射源が提供される。
【0026】
例えば、入力されたパルスポンプ放射のパルスエネルギーは、0.75μJ未満であり得る。例えば、入力されたパルスポンプ放射のパルスエネルギーは、0.5μJ未満、例えば、0.4μJのオーダーであり得る。
【0027】
本発明の第3および第4の態様による放射源は、それらが広帯域出力放射ビームを出力端で生成することを可能にするので有利である。これは、計測装置内、たとえばリソグラフィ装置内での使用に役立つ場合がある。
【0028】
本発明の第3および第4の態様による放射源は、変調不安定レジーム下でパルスポンプ放射のスペクトル広がりを生成する既知の広帯域放射源よりも、例えば、パルス間の変動に対してより安定している。
【0029】
入力されたパルスポンプ放射のソリトン次数Nは、スペクトル広がりが変調不安定性によって支配される条件と、スペクトル広がりがソリトン自己圧縮によって支配される条件とを区別するために使用できる便利なパラメータである。スペクトルの広がりは、通常、N>>20の場合、変調不安定性によって支配されるが、スペクトルの広がりは、通常、N<<20の場合のソリトン自己圧縮によって支配される。
【0030】
したがって、ソリトン自己圧縮を使用する構成では、低いソリトン次数Nの入力パルスポンプ放射を生成することが望ましい。さらに、入力パルスポンプ放射のソリトン次数は、入力パルスポンプ放射のパルス持続時間に比例する。したがって、ソリトン自己圧縮が支配的である一般的な従来技術の構成では、典型的には、入力パルスポンプ放射のパルス持続時間は、30fs以下のオーダーに減少する。このような配置を実現するために、通常、高出力フェムト秒ファイバレーザまたはTi:Sapph増幅器がパルスポンプ放射源として使用される。レーザヘッドは比較的かさばり(フェムト秒ファイバレーザヘッドの寸法は、たとえば60×40×20cm)、ほとんどの場合、外部コントローラと冷却器が必要である。さらに、そのようなレーザは比較的費用がかかる。
【0031】
本発明の発明者は、入力パルスポンプ放射のパルスエネルギーを低減することによって、入力パルスポンプ放射のソリトン次数を代替的に低減できることに気づいた。たとえば、他のすべてのパラメータが一定のままである場合、入力パルスポンプ放射のパルスエネルギーをα倍に減らすことにより、同じソリトン次数を、α倍に増加するパルス持続時間を使用して達成できる。パルスエネルギーのこの減少は、増加したパルスエネルギーを使用するように教示されている従来技術の教示とは反対である。当技術分野では、ソリトン自己圧縮を使用する放射源は、典型的には、例えば、放射源のパルスエネルギーを最大化することが望ましい原子または分子分光法などの研究用途に使用される。
【0032】
本発明の第1、第2、第3または第4の態様のいずれにおいても、入力されたパルスポンプ放射のソリトン次数は、20未満であり得る。
【0033】
本発明の第1、第2、第3または第4の態様のいずれかにおいて、作動媒体は、異常分散を生成するように構成され得る。つまり、作動媒体は負の群遅延分散パラメータを有し得る。
【0034】
本発明の第1、第2、第3または第4の態様のいずれかにおいて、中空コア光ファイバは、中空コアを取り囲むクラッド部分を含み得、クラッド部分は、中空コアを通して放射を誘導するための複数の反共振要素を含み得る。複数の反共振要素のそれぞれは、キャピラリを含み得る。
【0035】
クラッド部分の複数の反共振素子は、中空コアの周りにリング構造で配置することができる。
【0036】
反共振要素のそれぞれが他の反共振要素のいずれとも接触しないように、複数の反共振要素を配置することができる。
【0037】
本発明の第1、第2、第3または第4の態様のいずれにおいても、作動媒体は希ガスを含み得る。例えば、作動媒体は、アルゴン、クリプトン、ネオン、ヘリウム、およびキセノンのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0038】
本発明の第1、第2、第3または第4の態様のいずれかにおいて、作動媒体は、分子ガスを含み得る。例えば、作動媒体は、N、O、CHおよびSFのうちの1つまたは複数を含み得る。
【0039】
本発明の第5の態様によれば、基板上の構造の関心のあるパラメータを決定するための計測装置であって、第1、第2、第3、または第4の態様のいずれかの放射源と、広帯域出力放射を使用して基板上の構造を照明するための照明サブシステムと、構造によって散乱および/または反射された放射の一部を検出するための、および放射の一部から関心のあるパラメータを決定するための検出サブシステムと、を備える計測装置が提供される。
【0040】
本発明の第6の態様によれば、本発明の第5の態様による計測装置を含むリソグラフィ装置が提供される。
【0041】
本発明の第7の態様によれば、放射源の動作レジームを選択する方法であって、放射源は、中空コアを有する本体を含む中空コア光ファイバと、中空コア内に配置された作動媒体と、入力端から出力端まで中空コアによって受け取られ、中空コアを通って伝播するパルスポンプ放射を生成するように配置されたパルスポンプ放射源と、を備え、当該方法は、パルスポンプ放射のスペクトルを変化させて出力放射を形成するためにパルスポンプ放射のソリトン自己圧縮を可能にするように、パルスポンプ放射、光ファイバ、および作動媒体のうちの1つまたは複数のパラメータを選択することを備え、さらに、パラメータは、光ファイバの長さが、出力端が以下の位置:出力放射の時間範囲が最小となる位置、および/または、出力放射のスペクトルの幅が最大となる位置、と実質的に一致する長さになるように選択される、方法が提供される。
【0042】
本発明の第8の態様による方法は、本発明の第1、第2、および第3の態様による放射源を設計することができる方法を提供する。
【0043】
本方法の最初のアプリケーションにおいて、光ファイバのパラメータを選択することができる。光ファイバが製造されると、そのパラメータは、例えば測定によって決定され得、そして本方法の第2のアプリケーションへの制約として入力され得る。
【0044】
光ファイバのパラメータを固定することができ、パルスポンプ放射および/または作動媒体のパラメータを選択することができる。これにより、光ファイバのパラメータが固定されている場合(たとえば、光ファイバが製造された後)に、パルスポンプ放射および/または作動媒体の動作パラメータを選択することができる。
【図面の簡単な説明】
【0045】
本発明の実施形態は、添付の概略図を参照して、例としてのみ説明される。
図1】リソグラフィ装置の概略図である。
図2】リソグラフィセルの概略図である。
図3】半導体製造を最適化するための3つの主要技術間の連携を表す、全体的なリソグラフィの概略図である。
図4】スキャトロメータ計測ツールの概略図である。
図5】レベルセンサ計測ツールの概略図である。
図6】アライメントセンサ計測ツールの概略図である。
図7】一実施形態に係る放射源の一部を形成する中空コア光ファイバの、横断面(すなわち、光ファイバの軸に垂直)における概略断面図である。
図8】一実施形態に係る広帯域出力放射を提供するための放射源の概略図である。
図9A】光ファイバの第2の出力端が放射の時間的範囲が最小である位置と一致するときの、図8に示す放射源の中空コア光ファイバ内の放射パルスの時間発展のシミュレーションを示す図である。
図9B】光ファイバの第2の出力端が放射の時間的範囲が最小である位置と一致するときの、図8に示す放射源の中空コア光ファイバ内の放射パルスのスペクトル発展のシミュレーションを示す図である。
図9C図9Aおよび図9Bに示されているシミュレーションと同じパラメータを使用した放射源の出力スペクトルのシミュレーションを示す図である。
図10A】光ファイバの第2の出力端が放射の時間的範囲が最小である位置と一致しないように光ファイバの長さが増加した場合に経験する、図8に示した放射源の中空コア光ファイバ内の放射パルスのスペクトル発展のシミュレーションを示す図である。
図10B図10Aに示したシミュレーションと同じパラメータを使用した放射源の出力スペクトルのシミュレーションを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0046】
本明細書では、「放射線」および「ビーム」という用語は、紫外線(例えば、波長が365、248、193、157または126nm)およびEUV(極端紫外線放射、例えば、約5~100nmの範囲の波長を有する)を含むすべてのタイプの電磁放射線を包含するために使用される。
【0047】
本明細書で使用される「レチクル」、「マスク」または「パターニングデバイス」という用語は、入射放射ビームに基板の目標部分に作成されるべきパターンに対応するパターン化された断面を与えるために使用できる一般的なパターニングデバイスを指すと広く解釈され得る。「ライトバルブ」という用語もこの文脈で使用できる。標準的なマスク(透過型または反射型、バイナリ、位相シフト、ハイブリッドなど)に加えて、他のこのようなパターニングデバイスの例は、プログラマブルミラーアレイおよびプログラマブルLCDアレイを含む。
【0048】
図1は、リソグラフィ装置LAを概略的に示す。このリソグラフィ装置LAは、放射ビームB(例えばUV放射、DUV放射またはEUV放射)を調整するよう構成される照明システム(イルミネータとも呼ばれる)ILと、パターニングデバイス(例えばマスク)MAを支持するよう構築され、特定のパラメータにしたがってパターニングデバイスMAを正確に位置決めするよう構成される第1位置決め装置PMに接続されるマスクサポート(例えばマスクテーブル)Tと;基板(例えばレジストコートされたウェハ)Wを保持するよう構築され、特定のパラメータにしたがって基板サポートを正確に位置決めするよう構成される第2位置決め装置PWに接続される基板サポート(例えばウェハテーブル)WTと;パターニングデバイスMAにより放射ビームBに付与されたパターンを基板Wの(例えば一以上のダイを含む)目標部分Cに投影するよう構成される投影システム(例えば屈折型投影レンズシステム)PSと、を含む。
【0049】
動作中、照明システムILは、例えばビームデリバリシステムBDを介して、放射源SOからビームを受け取る。照明システムILは、放射を方向付け、放射を成形し、および/または放射を制御するための屈折型、反射型、磁気型、電磁気型、静電型、および/または他の形式の光学素子といった各種光学素子またはこれらの任意の組み合わせを含んでもよい。イルミネータILは、パターニングデバイスMAの平面におけるその断面において所望の空間および角度強度分布を有するように放射ビームBを調整するために使用されてもよい。
【0050】
本明細書において使用する「投影システム」PSという用語は、使用する露光放射、および/または液浸液の使用や真空の使用などの他の要因に合わせて適宜、例えば屈折光学システム、反射光学システム、反射屈折光学システム、アナモルフィック光学システム、磁気光学システム、電磁光学システムおよび/または静電光学システム、又はその任意の組合せを含む任意のタイプの投影システムを網羅するものとして広義に解釈されるべきである。本明細書において「投影レンズ」という用語を使用した場合、これはさらに一般的な「投影システム」PSという用語と同義と見なすことができる。
【0051】
リソグラフィ装置LAは、投影システムPSと基板Wの間の隙間を埋めるように、基板の少なくとも一部が比較的高屈折率を有する液体(例えば水)により覆われる形式の装置であってよい。これは、液浸リソグラフィとも呼ばれる。液浸技術の詳細については、米国特許第6952253号に記載されており、これは参照により本明細書に組み込まれる。
【0052】
リソグラフィ装置LAはまた、2つ以上の基板サポートWT(「デュアルステージ」とも呼ばれる)を有するタイプのものであり得る。そのような「多段」機械では、基板サポートWTを並行して使用することができ、および/または基板Wのその後の露光の準備におけるステップを、基板サポートWTの1つに位置する基板W上で実行することができる。他の基板サポートWT上の基板Wは、他の基板W上のパターンを露光するために使用されている。
【0053】
基板サポートWTに加えて、リソグラフィ装置LAは、測定ステージを含み得る。測定ステージは、センサおよび/または洗浄装置を保持するように配置されている。センサは、投影システムPSの特性または放射ビームBの特性を測定するように配置することができる。測定ステージは、複数のセンサを保持することができる。洗浄装置は、リソグラフィ装置の一部、例えば、投影システムPSの一部または液浸液を提供するシステムの一部を洗浄するように構成することができる。基板サポートWTが投影システムPSから離れているとき、測定ステージは投影システムPSの下に移動することができる。
【0054】
動作中、放射ビームBは、マスクサポートTに保持されるパターニングデバイス、例えばマスクMAに入射し、パターニングデバイスMA上に存在するパターン(デザインレイアウト)によりパターン化される。マスクMAの通過後、放射ビームBはビームを基板Wの目標部分Cに合焦させる投影システムPSを通過する。第2位置決め装置PWおよび位置測定システムIFの助けを借りて、放射ビームBの経路内の異なる目標部分Cを集束されアライメントされた位置に位置するように基板サポートWTを正確に移動できる。同様に、第1位置決め装置PMおよび場合により別の位置センサ(図1には明示されていない)は、放射ビームBの経路に対してパターニングデバイスMAを正確に位置決めするために用いることができる。パターニングデバイスMAおよび基板Wは、マスクアライメントマークM1、M2および基板アライメントマークP1、P2を使用して位置合わせすることができる。図示の基板アライメントマークP1、P2は専用の目標部分を占めるが、それらは目標部分の間のスペースに配置されてもよい。基板アライメントマークP1、P2は、これらが目標部分Cの間に配置されるとき、スクライブレーンアライメントマークとして知られている。
【0055】
図2に示されるように、リソグラフィ装置LAは、たまにリソセルまたは(リソ)クラスタとも称され、しばしば基板W上での露光前および露光後プロセスを実行するための装置も含むリソグラフィシセルLCの一部を形成してよい。従来、これらは、例えば基板Wの温度を調整するため、例えばレジスト層の溶剤を調整するために、レジスト層を堆積させるスピンコート装置SC、露光されたレジストを現像する現像装置DE、冷却プレートCH、およびベークプレートBKを含む。基板ハンドラまたはロボットROは、基板Wを入力/出力ポートI/O1,I/O2から取り出し、それらを異なるプロセス装置間で基板を移動させ、リソグラフィ装置LAのローディングベイLBに基板Wを運ぶ。リソセルの装置(しばしば集合的にトラックとも称される)は、通常はトラック制御ユニットTCUの制御下にあり、TCU自体は監視制御システムSCSにより制御され、SCSは例えばリソグラフィ制御ユニットLACUを介してリソグラフィ装置LAを制御してもよい。
【0056】
リソグラフィ装置LAによって露光された基板Wを正確かつ一貫して露光するために、基板を検査して、後続の層間のオーバーレイエラー、線幅、限界寸法(CD)などのパターン構造の特性を測定することが望ましい。この目的のために、検査ツール(図示せず)をリソセルLCに含めることができる。エラーが検出された場合、たとえば、特に同じバッチまたはロットの他の基板Wがまだ露光または処理される前に検査がなされる場合には、後続の基板の露光または基板Wで実行される他の処理ステップを調整することができる。
【0057】
計測装置と呼ばれることもある検査装置は、基板Wの特性、特に、異なる基板Wの特性がどのように変化するか、または同じ基板Wの異なる層に関連する特性が層ごとにどのように変化するかを決定するために使用される。あるいは、検査装置は、基板W上の欠陥を特定するように構成されてもよく、例えば、リソセルLCの一部であってもよく、またはリソグラフィ装置LAに統合されてもよく、または独立型(スタンドアロン)の装置であってもよい。検査装置は、潜像(露光後のレジスト層の画像)、または半潜像(後露光ベークステップPEB後のレジスト層の画像)、または現像されたレジスト画像(レジストの露光部分または非露光部分が除去された画像)、またはエッチングされた画像(エッチングなどのパターン転写ステップ後)の特性を測定することができる。
【0058】
通常、リソグラフィ装置LAでのパターニングプロセスは、基板W上の構造のディメンジョニングおよび配置の高精度を必要とする処理における最も重要なステップの1つである。この高精度を保証するために、図3に概略的に示すように、3つのシステムをいわゆる「全体的な」統制環境で組み合わせることができる。これらのシステムの1つは、計測ツールMT(2番目のシステム)とコンピュータシステムCL(3番目のシステム)に(実質的に)接続されているリソグラフィ装置LAである。そのような「全体的な」環境の鍵は、これら3つのシステム間の連携を最適化してプロセスウィンドウ全体を強化し、リソグラフィ装置LAによって実行されるパターニングがプロセスウィンドウ内にとどまることを保証する厳密な制御ループを提供することである。プロセスウィンドウは、特定の製造プロセスが定義された結果(機能的半導体デバイスなど)を生成する一連のプロセスパラメータ(たとえば、ドーズ、フォーカス、オーバーレイ)、通常、その範囲内でリソグラフィプロセスまたはパターニングプロセスのプロセスパラメーターが変化を許可される、を定義する。
【0059】
コンピュータシステムCLは、パターン化される設計レイアウト(の一部)を使用して、どの解像度向上技術を使用するかを予測し、計算機によるリソグラフィシミュレーションおよび計算を実行して、どのマスクレイアウトおよびリソグラフィ装置設定がパターニングプロセスの最大の全体的なプロセスウィンドウを達成するかを決定することができる(図3において第1スケールSC1の二重矢印で示されている)。通常、解像度向上技術は、リソグラフィ装置LAのパターニングの可能性に一致するように構成される。コンピュータシステムCLはまた、例えば次善の処理によって欠陥が存在するかどうかを予測するために、プロセスウィンドウ内のどこでリソグラフィ装置LAが現在動作しているか(例えば、計測ツールMTからの入力を使用して)を検出するために使用されてもよい(図3において第2スケールSC2の「0」を指す矢印で示されている)。
【0060】
計測ツールMTは、コンピュータシステムCLに入力を提供して、正確なシミュレーションおよび予測を可能にすることができ、リソグラフィ装置LAにフィードバックを提供して、例えばリソグラフィ装置LAの較正状態にいて起こり得るドリフトを特定することができる(図3において第3スケールSC3の複数の矢印で示されている)。次に、リソグラフィ装置および/またはパターン化される基板に関連する1つまたは複数の特性を測定するための異なるタイプの計測ツールMTについて説明する。
【0061】
リソグラフィプロセスでは、例えばプロセス制御および検証のために、作成された構造の測定を頻繁に行うことが望ましい。このような測定を行うためのツールは、通常、計測ツールMTと呼ばれる。そのような測定を行うための様々なタイプの計測ツールMT、走査型電子顕微鏡または様々な形態のスキャトロメータ計測ツールMTが含まれる、が知られている。スキャトロメータは、瞳またはスキャトロメータの対物レンズの瞳との共役面にセンサを有することにより(通常は瞳ベースの測定と呼ばれる測定)、または像平面または像平面との共役面にセンサを有することにより、リソグラフィプロセスのパラメータの測定(この場合、測定は、通常、画像またはフィールドベースの測定と呼ばれる)を可能とする汎用性の高い機器である。このようなスキャトロメータおよび関連する測定技術は、参照により全体が本明細書に組み込まれる、特許出願US20100328655号、US2011102753A1号、US20120044470A号、US20110249244号、US20110026032号またはEP1,628,164A号にさらに記載されている。上述のスキャトロメータは、軟X線からの光および可視から近赤外の波長範囲の光を使用して格子を測定することができる。
【0062】
第1の実施形態では、スキャトロメータMTは、角度分解スキャトロメータである。そのようなスキャトロメータでは、回折格子の特性を再構成または計算するために、測定された信号に再構成法を適用することができる。そのような再構成は、例えば、散乱放射とターゲット構造の数学的モデルとの相互作用をシミュレーションし、シミュレーション結果を測定結果と比較することから生じ得る。数学的モデルのパラメータは、シミュレートされた相互作用が実際のターゲットから観察されたものと同様の回折パターンを生成するまで調整される。
【0063】
第2の実施形態では、スキャトロメータMTは分光スキャトロメータMTである。そのような分光スキャトロメータMTでは、放射源から放出された放射はターゲットに向けられ、ターゲットからの反射または散乱放射は、正反射性の反射放射のスペクトルを測定する(つまり、波長の関数としての強度の測定)スペクトロメータ検出器に向けられる。このデータから、例えば厳密結合波解析と非線形回帰により、またはシミュレーションされたスペクトルのライブラリとの比較により、検出されたスペクトルを生じさせるターゲットの構造またはプロファイルを再構築できる。
【0064】
第3の実施形態では、スキャトロメータMTは、エリプソメトリックスキャトロメータである。エリプソメトリックスキャトロメータは、各偏光状態の散乱放射を測定することにより、リソグラフィプロセスのパラメータを決定することを可能にする。そのような計測装置は、例えば、計測装置の照明セクションに適切な偏光フィルタを使用することにより、(直線、円、または楕円などの)偏光を放出する。計測装置に適した放射源は、偏光放射も提供してもよい。既存のエリプソメトリックスキャトロメータの様々な実施形態は、米国特許出願第11/451,599号、第11/708,678号、第12/256,780号、第12/486,449号、第12/920,968号、第12/922,587号、第13/000,229号、第13/033,135号、第13/533,110号および第13/891,410号に記載されており、その全体が参照により本明細書に組み込まれる。
【0065】
スキャトロメータMTの一実施形態では、スキャトロメータMTは、反射スペクトルおよび/または検出構成の非対称性を測定することにより、2つの正しく位置合わせされていない格子または周期構造のオーバーレイを測定するように構成される。非対称性は、オーバーレイの程度に関連する。2つの(典型的には重なり合う)格子構造は、2つの異なる層(必ずしも連続した層である必要はない)に適用されてもよく、ウェハ上の実質的に同じ位置に形成されてもよい。スキャトロメータは、例えば共同所有の特許出願EP1,628,164Aに記載されるように、非対称性を明確に区別できるよう対称的な検出構成を有することができる。これにより、回折格子のミスアライメントを簡単に測定できる。周期構造の非対称性を介して測定されるターゲットとして周期構造を含む2つの層の間のオーバーレイエラーを測定するためのさらなる例は、国際特許出願公開番号第WO2011/012624号または米国特許出願第US20160161863号に見いだすことができ、これらは参照によりその全体が本明細書に組み込まれる。
【0066】
関心のある他のパラメータは、フォーカスおよびドーズであってもよい。フォーカスおよびドーズは、参照により本書にその全体が組み込まれる米国特許出願US2011-0249244に記載されるように、散乱計によって(または代替的に走査型電子顕微鏡によって)同時に決定されうる。単一の構造が用いられてもよく、それは、フォーカスエネルギーマトリックス(FEM、フォーカス露光マトリックスとも呼ばれる)の各点についてクリティカルディメンジョンおよび側壁角度の測定値の固有の組み合わせを有する。仮にこれらのクリティカルディエンジョンおよび側壁角度の固有の組み合わせが利用可能であれば、フォーカスおよびドーズの値は、これらの測定値から一意に決定されうる。
【0067】
計測ターゲットは、リソグラフィプロセスによって多くの場合レジスト内に形成されるが、例えばエッチングプロセスの後にも形成される、複合格子の集合体であってもよい。典型的に、格子内の構造のピッチおよび線幅は、計測ターゲットから来る回折次数を捕捉可能な測定光学系(特に光学系のNA)に強く依存する。先に示したように、回折された信号は、二つの層の間のシフト(「オーバレイ」とも称される)を決定するために用いられてもよいし、リソグラフィプロセスにより生成される元の格子の少なくとも部分を再構築するために用いられてもよい。この再構築は、リソグラフィプロセスの品質の指針を提供するために用いられてもよく、かつ、リソグラフィプロセスの少なくとも一部を制御するために用いられてもよい。ターゲットは、ターゲット内のデザインレイアウトの機能部分の寸法を模倣するように構成されるより小さなサブセグメンテーション(小区分)を有してもよい。このサブセグメンテーションに起因して、ターゲットは、全体的なプロセスパラメータの測定結果がデザインレイアウトの機能部分に酷似することとなるように、デザインレイアウトの機能部分により類似した振る舞いをするであろう。ターゲットは、アンダーフィルモードまたはオーバーフィルモードで測定されうる。アンダーフィルモードにおいて、測定ビームは、ターゲット全体よりも小さなスポットを生成する。オーバーフィルモードにおいて、測定ビームは、ターゲット全体よりも大きなスポットを生成する。このようなオーバーフィルモードでは、異なるターゲットを同時に測定することが可能であってもよく、したがって異なるプロセスパラメータを同時に決定する。
【0068】
特定のターゲットを用いるリソグラフィパラメータの全体的な測定品質は、このリソグラフィパラメータの測定に用いる測定レシピによって少なくとも部分的に決まる。「基板測定レシピ」の用語は、測定自体の一以上のパラメータを含んでもよいし、測定された一
以上のパターンの一以上のパラメータを含んでもよいし、または両方を含んでもよい。例えば、ある基板測定レシピに用いられる測定が回折ベースの光学測定である場合、測定の一以上のパラメータは、放射の波長、放射の偏光、基板に対する放射の入射角、基板上のパターンに対する放射の向きなどを含んでもよい。測定レシピを選択する基準の一つは、例えば、プロセスの変動に対する一つの測定パラメータの感受性であってもよい。より多くの例は、米国特許出願US2016-0161863号および公開された米国特許出願US2016/0370717に記載されており、その全体が参照により本書に組み込まれる。
【0069】
スキャトロメータSM1などの計測装置が図4に示されている。それは、放射を基板6に投射する広帯域(白色光)放射プロジェクタ2を備える。反射または散乱された放射は、スペクトロメータ検出器4に渡される。これは、鏡面反射放射のスペクトル10を測定する(すなわち、波長λの関数としての強度In1の測定)。このデータから、例えば、厳密結合波解析と非線形回帰によって、または図4の下部に示すようにシミュレートされたスペクトルのライブラリとの比較によって、検出スペクトルを生じさせる構造またはプロファイルが処理ユニットPUによって再構成され得る。一般に、再構成では、構造の一般的な形式は既知であり、いくつかのパラメータは、構造が作成されたプロセスの知識から推測され、スキャトロメトリデータから決定される構造のほんの僅かのパラメータが残る。そのようなスキャトロメータは、法線入射スキャトロメータまたは斜め入射スキャトロメータとして構成することができる。
【0070】
リソグラフィプロセスでは、例えば、プロセス制御および検証のために、作成された構造の測定を頻繁に行うことが望ましい。走査型電子顕微鏡またはスキャトロメータなどの様々な形態の計測装置を含む、そのような測定を行うための様々なツールが知られている。既知のスキャトロメータの例は、多くの場合、アンダーフィルターゲット(単純な格子または異なる層の重なり合う格子の形のターゲットで、格子より小さなスポットを測定ビームが生成するのに十分な大きさのターゲット)またはオーバーフィルターゲット(これにより、照明スポットがターゲットを部分的または完全に含む)などの専用の計測ターゲットの提供に依存している。さらに、計測ツール、たとえば、格子などのアンダーフィルターゲットを照らす角度分解スキャトロメータの使用により、散乱放射とターゲット構造の数学モデルとの相互作用をシミュレートし、シミュレーション結果を測定結果と比較することによって回折格子の特性を計算できる、いわゆる再構成法の使用が可能になる。モデルのパラメーターは、シミュレートされた相互作用が実際のターゲットから観察されたものと同様の回折ターンを生成するまで調整される。
【0071】
スキャトロメータは、スキャトロメータの対物レンズの瞳またはその共役面にセンサを有すること(通常、瞳ベースの測定と呼ばれる測定)によって、または、センサを画像平面または画像平面と共役な平面に配置すること(この場合、測定は通常、画像またはフィールドベースの測定と呼ばれる)によって、リソグラフィプロセスのパラメータの測定を可能にする多用途の機器である。そのようなスキャトロメータおよび関連する測定技術は、参照によりその全体が本明細書に組み込まれる特許出願US20100328655、US2011102753A1、US20120044470A、US20110249244、US20110026032またはEP1,628,164Aにさらに記載されている。前述のスキャトロメータは、軟X線および可視から近赤外の波長範囲の光を使用して、複数の格子からの複数のターゲットを1つの画像で測定できる。
【0072】
リソグラフィ装置内に集積され得るトポグラフィ測定システム、レベルセンサ又は高さセンサは、基板(又はウェハ)の上面のトポグラフィを測定するために配置される。基板のトポグラフィのマップは、高さマップとも称され、基板の高さを基板上の位置の関数として示すこれらの測定から生成され得る。この高さマップはその後、基板上の適正合焦位置でパターニングデバイスの空間像を提供するべく、基板へのパターンの転写の際に基板の位置を補正するために用いられ得る。この文脈において、「高さ」とは、基板に対して概して面外の寸法(Z軸とも称される)を指すことが理解されるであろう。典型的には、レベル又は高さセンサは(自身の光学系に対して)固定された場所で測定を実施し、基板とレベル又は高さセンサの光学系との間の相対移動が基板全体の各場所での高さ測定をもたらす。
【0073】
本技術分野において既知のレベル又は高さセンサLSの一例が図5に概略的に示されている。同図は動作の原理のみを図示している。この例において、レベルセンサは、投影ユニットLSP及び検出ユニットLSDを含む光学系を備えている。投影ユニットLSPは、投影ユニットLSPの投影格子PGRによって付与される放射ビームLSBを提供する放射源LSOを備えている。放射源LSOは、例えば、スーパコンティニューム光源のような狭帯域又は広帯域放射源、偏光又は非偏光レーザビームのような偏光又は非偏光、パルス又は連続であってもよい。放射源LSOは、複数のLEDなど、異なる色又は波長範囲を有する複数の放射源を含んでいてもよい。レベルセンサLSの放射源LSOは、可視放射に限定されず、追加的又は代替的にはUV及び/又はIR放射並びに基板の表面からの反射に適した任意の範囲の波長を包含し得る。
【0074】
投影格子PGRは、周期的に変化する強度を有する放射ビームBE1をもたらす周期構造を備える周期的格子である。周期的に変化する強度を有する放射ビームBE1は、入射基板表面に垂直な軸(Z軸)に対して0度から90度、典型的には70度から80度の入射角ANGをもって、基板W上の測定場所MLOの方に誘導される。測定場所MLOで、パターン形成された放射ビームBE1は、基板Wによって反射され(矢印BE2によって示される)、検出ユニットLSDの方に誘導される。
【0075】
測定場所MLOにおける高さレベルを判定するために、レベルセンサは更に、検出格子DGRと、検出器DETと、検出器DETの出力信号を処理する処理ユニット(図示しない)とを備える検出システムを備えている。検出格子DGRは投影格子PGRと同一であってもよい。検出器DETは、受光した光を示す、例えば、光検出器のように受光した光の強度を示す、又はカメラのように受光した強度の空間的分布を表す、検出器出力信号を生成する。検出器DETは1つ以上の検出器タイプの任意の組み合わせを備えていてもよい。
【0076】
三角測量技術によって、測定場所MLOにおける高さレベルを判定することができる。検出された高さレベルは、典型的には検出器DETによって測定された信号強度に関係しており、その信号強度は、とりわけ投影格子PGRの設計及び(斜め)入射角ANGに応じて決まる周期性を有する。
【0077】
投影ユニットLSP及び/又は検出ユニットLSDは、投影格子PGRと検出格子DGRとの間のパターン形成された放射ビームの経路に沿って、レンズ及び/又はミラーなど、更なる光学素子を含んでいてもよい(図示せず)。
【0078】
一実施形態においては、検出格子DGRは省略されてもよく、検出器DETは検出格子DGRがある位置に設置されてもよい。そのような構成は、投影格子PGRの像のより直接的な検出を提供する。
【0079】
基板Wの表面を効果的にカバーするために、レベルセンサLSは、測定ビームBE1のアレイを基板Wの表面上に投影し、それによってより大きな測定範囲をカバーする測定領域MLO又はスポットのアレイを生成するように構成されていてもよい。
【0080】
一般的なタイプの様々な高さセンサが、例えば、参照により組み込まれる米国特許第7265364号明細書及び米国特許第7646471号明細書に開示されている。可視又は赤外放射の代わりにUV放射を用いた高さセンサが、参照により組み込まれる米国特許出願公開第2010233600A1号明細書に開示されている。参照により組み込まれる国際公開第2016102127A1には、多素子検出器を用いて、検出格子を必要とせずに、格子像の位置を検出及び認識する小型の高さセンサが記載されている。
【0081】
位置測定システムPMSは、基板サポートWTの位置を決定するのに適した任意のタイプのセンサを含み得る。位置測定システムPMSは、マスクサポートMTの位置を決定するのに適した任意のタイプのセンサを含み得る。センサは、干渉計またはエンコーダなどの光学センサであり得る。位置測定システムPMSは、干渉計とエンコーダとの組み合わせシステムを備え得る。センサは、磁気センサ、静電容量センサまたは誘導センサなどの別のタイプのセンサであり得る。位置測定システムPMSは、基準、例えば、計測フレームMFまたは投影システムPSに対する相対的な位置を決定することができる。位置測定システムPMSは、位置を測定することによって、または速度または加速度などの位置の時間微分を測定することによって、基板テーブルWTおよび/またはマスクサポートMTの位置を決定することができる。
【0082】
位置測定システムPMSは、エンコーダシステムを備え得る。エンコーダシステムは、例えば、2006年9月7日に出願された米国特許出願2007/0058173A1から知られており、これは参照により本明細書に組み込まれる。エンコーダシステムは、エンコーダヘッド、格子およびセンサを備える。エンコーダシステムは、一次放射ビームおよび二次放射ビームを受信することができる。一次放射ビームと二次放射ビームの両方が同じ放射ビーム、すなわち元の放射ビームから発生する。一次放射ビームと二次放射ビームの少なくとも一方は、元の放射ビームを回折格子で回折することによって生成される。一次放射ビームと二次放射ビームの両方が元の放射ビームを回折格子で回折することによって生成される場合、一次放射ビームは二次放射ビームとは異なる回折次数を有する必要がある。異なる回折次数は、例えば、+1次、-1次、+2次、および-2次である。エンコーダシステムは、一次放射ビームと二次放射ビームを光学的に結合して、結合放射ビームにする。エンコーダヘッドのセンサは、結合放射ビームの位相または位相差を決定する。センサは、位相または位相差に基づいて信号を生成する。信号は、格子に対するエンコーダヘッドの位置を表している。エンコーダヘッドと格子の1つを基板構造WT上に配置することができる。エンコーダヘッドと格子のもう一方は、計測フレームMFまたはベースフレームBFに配置できる。例えば、複数のエンコーダヘッドが計測フレームMF上に配置され、一方、格子は、基板サポートWTの上面に配置される。別の例では、格子は基板サポートWTの底面に配置され、エンコーダヘッドは基板サポートWTの下に配置される。
【0083】
位置測定システムPMSは、干渉計システムを含み得る。干渉計システムは、例えば、1998年7月13日に出願された米国特許US6,020,964号から知られており、参照により本明細書に組み込まれる。干渉計システムは、ビームスプリッタ、ミラー、基準ミラー、およびセンサを備え得る。放射のビームは、ビームスプリッタによって参照ビームと測定ビームに分割される。測定ビームはミラーに伝播し、ミラーによって反射されてビームスプリッタに戻る。参照ビームは参照ミラーに伝播し、参照ミラーによって反射されてビームスプリッタに戻る。ビームスプリッタでは、測定ビームと参照ビームが結合されて、結合放射ビームになる。結合放射ビームはセンサに入射する。センサは、結合放射ビームの位相または周波数を決定する。センサは、位相または周波数に基づいて信号を生成する。信号はミラーの変位を表している。一実施形態では、ミラーは、基板サポートWTに接続されている。基準ミラーは、計測フレームMFに接続することができる。一実施形態では、測定ビームと参照ビームは、ビームスプリッタの代わりに追加の光学部品によって結合放射ビームに結合される。
【0084】
複合デバイスの製造において、典型的には多くのリソグラフィパターニングステップが実行され、それによって基板上の連続層内に機能的特徴が形成される。したがって、リソグラフィ装置の性能の重要な態様は、付与されたパターンを、以前の層において(同じ装置又は異なるリソグラフィ装置によって)定められたフィーチャに関して正しくまた正確に配置するための能力である。このために、アライメントマークの1つ以上のセットが基板に提供される。各マークは、その位置を、位置センサ、典型的には光学位置センサによって後に測定することが可能な構造である。位置センサは「アライメントセンサ」と呼ばれ、マークは「アライメントマーク」と呼ばれることがある。マークは、計測ターゲットと呼ばれることもある。
【0085】
リソグラフィ装置は、1つまたは複数の(例えば、複数の)アライメントセンサを含むことができ、それによって、基板上に設けられたアライメントマークの位置を正確に測定することができる。アラインメント(または位置)センサは、回折や干渉などの光学現象を使用して、基板上に形成されたアラインメントマークから位置情報を取得し得る。現在のリソグラフィ装置で使用されているアライメントセンサの例は、米国特許6961115号に記載されている自己参照干渉計に基づいている。たとえば、米国特許公開2015261097A1号に開示されているように、位置センサのさまざまな拡張と変更が開発されている。これらすべての公表文献の内容は、参照により本明細書に組み込まれる。
【0086】
マーク又はアライメントマークは、基板上に設けられているか又は基板内に(直接)形成されている層上又は層内に形成された一連のバー(bar)を含み得る。これらのバーは一定の間隔に配置されて格子ラインとして機能するので、マークは、周知の空間周期(ピッチ)を有する回折格子と見なすことができる。マークは、これらの格子ラインの配向に応じて、X軸又はY軸(X軸に対して実質的に垂直に配向されている)に沿った位置の測定を可能とするように設計できる。X軸及びY軸の双方に対して+45度及び/又は-45度に配列されたバーを含むマークは、援用により本願に含まれる米国特許公開2009/195768A号に記載されているような技法を用いて、X及びYを組み合わせた測定を可能とする。
【0087】
アライメントセンサは、各マークを放射スポットで光学的にスキャンして、正弦波のような周期的に変動する信号を得る。この信号の位相を解析して、アライメントセンサに対するマークの位置、従って基板の位置を決定する。アライメントセンサは、リソグラフィ装置の基準フレームに対して固定されている。いわゆる粗マーク及び微細マークを、異なる(粗及び微細)マーク寸法に関連付けて提供することで、アライメントセンサは、周期信号の異なるサイクルを区別すると共に、1サイクル内の正確な位置(位相)を識別することが可能となる。この目的のため、異なるピッチのマークを使用してもよい。
【0088】
また、マークの位置を測定することで、例えばウェーハグリッドの形態でマークが設けられている基板の変形に関する情報も提供できる。基板の変形は、例えば、基板を基板テーブルに静電クランプすること及び/又は基板を放射に露光する際に基板が加熱されることによって生じ得る。
【0089】
図6は、例えば、援用により本願に含まれる米国特許6961116号に記載されているような既知のアライメントセンサASの一実施形態の概略ブロック図である。放射源RSOは、1つ以上の波長の放射ビームRBを提供し、この放射ビームRBは、誘導(diverting)光学系によって、基板W上に位置付けられたマークAMのようなマーク上へ照明スポットSPとして誘導される。この例では、誘導光学系はスポットミラーSM及び対物レンズOLを含む。マークAMを照明する照明スポットSPは、マーク自体の幅よりもわずかに小さい直径とすることができる。
【0090】
マークAMによって回折された放射は、(この例では対物レンズOLを介して)情報保持ビームIBにコリメートされる。「回折される」という用語は、マークからのゼロ次回折(反射と呼ぶことができる)を含むことが意図される。例えば上記の米国特許6961116号に開示されているタイプの自己参照干渉計SRIは、ビームIBをそれ自体と干渉させ、その後ビームは光検出器PDによって受光される。放射源RSOによって2つ以上の波長が生成される場合は、追加の光学系(図示せず)を含ませて別個のビームを提供してもよい。光検出器は単一の要素とするか、又は所望の場合は多くの画素を含むことができる。光検出器はセンサアレイを含み得る。
【0091】
この例ではスポットミラーSMを含む誘導光学系が、マークから反射したゼロ次放射を阻止するよう機能することで、情報保持ビームIBがマークAMからの高次回折放射だけを含むようにしてもよい(これは測定に必須ではないが、信号対雑音比を改善する)。
【0092】
強度信号SIが処理ユニットPUに供給される。ブロックSRIにおける光学処理とユニットPUにおける計算処理の組み合わせによって、基準フレームに対する基板上のX及びYの位置の値が出力される。
【0093】
図示されているタイプの単一測定は、マークの1つのピッチに対応する特定範囲内のマークの位置を固定するだけである。これと関連付けてもっと粗い測定技法を用い
て、このマーク位置を含む正弦波の周期を識別する。マークが作製されている材料やマークの下及び/又は上に提供されている材料とは無関係に、精度の向上及び/又はマークのロバストな検出のため、様々な波長で、粗いレベル及び/又は微細レベルで同一のプロセスを繰り返すことができる。波長は、同時に処理されるように光学的に多重化及び逆多重化すること、及び/又は時分割もしくは周波数分割によって多重化することができる。
【0094】
この例では、アライメントセンサ及びスポットSPは固定状態のままであり、移動するのは基板Wである。従ってアライメントセンサは、基準フレームに堅固かつ高精度に搭載されながら、実質的に基板Wの移動方向と反対の方向にマークAMをスキャンすることができる。基板Wのこの移動は、基板Wが基板サポートに搭載されると共に基板位置決めシステムが基板サポートの移動を制御することによって制御される。基板サポート位置センサ(例えば干渉計)が、基板サポート(図示せず)の位置を測定する。一実施形態では、基板サポート上に1つ以上の(アライメント)マークが設けられている。基板サポート上に設けられたマークの位置を測定することにより、位置センサで決定される基板サポートの位置を較正できる(例えばアライメントシステムが接続されているフレームに対して)。基板上に設けられたアライメントマークの位置を測定することにより、基板サポートに対して基板の位置を決定できる。
【0095】
上記のスキャトロメータ、トポグラフィ測定システム、または位置測定システムなどの計測ツールMTは、測定を実行するために放射源から発生する放射を使用することができる。計測ツールで使用される放射の特性は、実行される可能性のある測定のタイプと品質に影響を与える可能性がある。いくつかの用途では、基板を測定するために複数の放射周波数を使用することが有利な場合がある。たとえば、広帯域放射を使用できる。複数の異なる周波数が、他の周波数との干渉を無しまたは最小限に抑えて、計測ターゲットを伝搬、照射、および散乱させることができる場合がある。したがって、たとえば、異なる周波数を使用して、より多くの計測データを同時に取得することができる。異なる放射周波数はまた、計測ターゲットの異なる特性を調査し、発見することができる可能性がある。ブロードバンド放射は、たとえばレベルセンサ、アライメントマーク測定システム、スキャトロメトリツール、または検査ツールなどの計測システムMTで役立ち得る。広帯域放射源は、スーパーコンティニウム光源であり得る。
【0096】
高品質の広帯域放射、例えば、スーパーコンティニウム放射は、生成するのが難しい場合がある。広帯域放射を生成するための1つの方法は、たとえば非線形の高次効果を利用して、高出力の狭帯域または単一周波数の入力放射を広げることである。入力放射(レーザを使用して生成され得る)は、ポンプ放射と呼ばれる場合がある。あるいは、入力放射はシード放射と呼ばれることもある。効果を広げるための高出力放射を得るために、放射を小さな領域に限定して、強く局所化された高強度放射を達成することができる。これらの領域では、放射は、広帯域出力放射を生成するために、非線形媒体を形成する広がり構造および/または材料と相互作用し得る。高強度放射領域では、適切な非線形媒体を提供することによって放射の広がりを可能にし、および/または改善するために、異なる材料および/または構造を使用することができる。
【0097】
いくつかの実装形態では、図8を参照して以下でさらに説明するように、入力放射を広げるための方法および装置は、入力放射を閉じ込めるため、および入力放射を広げて広帯域放射を出力するためにファイバを使用し得る。ファイバは中空コアファイバであり得、ファイバ内の放射の効果的な誘導および閉じ込めを達成するための内部構造を含み得る。ファイバは、中空コアフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)であり得る。これは、主にファイバの中空コアの内側にある強力な放射閉じ込めに特に適しており、高い放射強度を実現する。ファイバの中空コアは、入力放射を広げるための広がり媒体として機能するガスで満たすことができる。このようなファイバとガスの配置は、スーパーコンティニウム放射源を作成するために使用できる。ファイバへの放射入力は、電磁放射、たとえば、赤外線、可視、UV、および極端UVスペクトルの1つまたは複数の放射であり得る。出力放射は、本明細書では白色光と呼ばれ得る広帯域放射から成るか、またはそれを含み得る。
【0098】
いくつかの実施形態は、光ファイバを含むそのような広帯域放射の新しい設計に関する。光ファイバは、中空コアのフォトニック結晶ファイバ(HC-PCF)である。特に、光ファイバは、放射を閉じ込めるための反共振構造を含むタイプの中空コアのフォトニック結晶ファイバであり得る。反共振構造を含むそのようなファイバは、当技術分野では、反共振ファイバ、管状ファイバ、単リングファイバ、負曲率ファイバ、またはインヒビットカップリングファイバ (inhibited coupling fiber)として知られている。そのようなファイバの様々な異なる設計が当技術分野で知られている。あるいは、光ファイバは、フォトニックバンドギャップファイバ(例えば、カゴメファイバ)であり得る。
【0099】
放射源に使用するための光ファイバの例を図7を参照して説明する。図7は、横断面における光ファイバ100の概略断面図である。
【0100】
光ファイバ100は、光ファイバ100の他の2つの寸法と比較して1つの寸法がより長い細長い本体を含む。このより長さは、軸方向と呼ばれ、光ファイバ100の軸を規定し得る。他の2つの寸法は、横断面と呼ばれる平面を定義する。図7は、この横断面(すなわち、軸に垂直)における光ファイバ100の断面を示しており、これは、x-y平面と表示されている。光ファイバ100の横断面は、ファイバ軸に沿って実質的に一定であり得る。
【0101】
光ファイバ100はある程度の柔軟性を有し、したがって、軸の方向は、一般に、光ファイバ100の長さに沿って均一ではないことが理解されよう。光軸、横断面などの用語は、局所的な光軸、局所的な横断面などを意味すると理解される。さらに、構成要素が円筒形または管状であると説明される場合、これらの用語は、光ファイバ100が曲げられるときに歪んだような形状を包含すると理解されるであろう。
【0102】
光ファイバ100は任意の長さを有することができ、光ファイバ100の長さは用途に依存し得ることが理解されよう。光ファイバ100は、1cmから20mの間の長さを有することができ、例えば、光ファイバ100は、1cmから10mの間の長さを有することができ、または、光ファイバ100は、10cmから100cmの間の長さを有することができる。
【0103】
光ファイバ100は、中空コア102と、中空コア102を取り囲むクラッド部分と、クラッド部分を取り囲み、サポートするサポート部分108と、を備える。光ファイバ100は、中空コア102を有する本体(クラッド部分およびサポート部分108を含む)を備えると見なすことができる。クラッド部分は、中空コア102を通して放射を誘導するための複数の反共振要素を備える。特に、複数の反共振素子は、主に中空コア102の内側に光ファイバ100を通って伝播する放射を閉じ込め、光ファイバ100に沿って放射を導くように配置される。光ファイバ100の中空コア102は、実質的に光ファイバ100の中心領域に配置され得る。光ファイバ100の軸はまた、光ファイバ100の中空コア102の軸を規定し得る。
【0104】
クラッド部分は、光ファイバ100を通って伝播する放射を誘導するための複数の反共振要素を含む。特に、この実施形態では、クラッド部分は、6つの管状キャピラリ104の単一のリングを含む。管状キャピラリ104のそれぞれは、反共振要素として機能する。
【0105】
キャピラリ104は、チューブと呼ばれることもある。キャピラリ104は、断面が円形であってもよく、または別の形状を有していてもよい。各キャピラリ104は、光ファイバ100の中空コア102を少なくとも部分的に規定し、中空コア102をキャピラリキャビティ106から分離する、ほぼ円筒形の壁部分105を備える。壁部分105は、中空コア102を通って伝播する(そして、かすめ入射角で壁部分105に入射する)放射のための反射防止ファブリペロー共振器として機能し得ることが理解されよう。壁部分105の厚さは、中空コア102への反射が概して増強されるのに対してキャピラリキャビティ106への透過が概して抑制されることを確実にするように適切にされ得る。いくつかの実施形態では、キャピラリ壁部分105は、0.01~10.0μmの間の厚さを有し得る。
【0106】
本明細書で使用される場合、クラッド部分という用語は、光ファイバ100を通って伝播する放射を誘導するための光ファイバ100の一部(すなわち、前記放射を中空コア102内に閉じ込めるキャピラリ104)を意味することを意図していることが理解されよう。放射は横モードの形で閉じ込められ、ファイバ軸に沿って伝播する。
【0107】
サポート部分は、一般に管状であり、クラッド部分の6つのキャピラリ104を支持する。6つのキャピラリ104は、内側サポート部分108の場合、内面の周りに均一に分布している。6つのキャピラリ104は、一般に六角形のフォーメイションで配置されていると説明することができる。
【0108】
キャピラリ104は、各キャピラリが他のキャピラリ104のいずれとも接触しないように配置される。キャピラリ104のそれぞれは、内側サポート部分108と接触し、リング構造内の隣接するキャピラリ104から離間している。そのような配置は、光ファイバ100の伝送帯域幅を増加させることができるので(例えば、キャピラリが互いに接触している配置と比較して)有益であり得る。あるいは、いくつかの実施形態では、キャピラリ104のそれぞれは、リング構造内の隣接するキャピラリ104と接触していてもよい。
【0109】
クラッド部分の6つのキャピラリ104は、中空コア102の周りにリング構造で配置されている。キャピラリ104のリング構造の内面は、光ファイバ100の中空コア102を少なくとも部分的に規定している。中空コア102の直径(対向するキャピラリ間の最小寸法として定義され得る、矢印114によって示される)は、10から1000μmの間であり得る。中空コア102の直径114は、中空コア光ファイバ100のモードフィールド直径、衝突損失、分散、モード複数(modal plurality)、および非線形特性に影響を及ぼし得る。
【0110】
この実施形態では、クラッド部分は、キャピラリ104(反共振要素として機能する)の単一のリング配列を含む。したがって、中空コア102の中心から光ファイバ100の外側までの任意の半径方向の線は、1つのキャピラリ104のみを通過する。
【0111】
他の実施形態は、反共振要素の異なる配置で提供され得ることが理解されるであろう。これらは、反共振要素の複数のリングを有する配置、および入れ子になった反共振要素を有する配置を含み得る。さらに、図7に示される実施形態は、6つのキャピラリーのリングを含むが、他の実施形態では、任意の数の反共振要素(例えば、4、5、6、7、8、9、10、11または12のキャピラリ)を含む1つ以上のリングを、クラッド部分に設けることができる。任意選択で、サポート部分108は、クラッド部分を外部応力から少なくとも部分的に隔離するために変形可能な部分を含み得る。
【0112】
図8は、広帯域出力放射を提供するための放射源134を示している。放射源134は、パルスポンプ放射源136と、中空コア102を備えた光ファイバ100(図7に示されるタイプのもの)と、中空コア102内に配置された作動媒体126(例えば、ガス)と、を備える。図8では、放射源134は、図7に示される光ファイバ100を含むが、代替の実施形態では、他のタイプの中空コア光ファイバを使用することができる。
【0113】
パルスポンプ放射源136は、入力放射122を提供するように構成される。光ファイバ100の中空コア102は、パルスポンプ放射源136からの入力放射122を受け取り、それを広げて出力放射124を提供するように構成される。作動媒体126は、広帯域出力放射124を提供するように、受信された入力放射122の周波数範囲を広げることを可能にする。
【0114】
放射源134は、リザーバ128をさらに含む。光ファイバ100は、リザーバ128の内部に配置される。リザーバ128は、ハウジングまたはコンテナと呼ばれることもある。リザーバ128は、作動媒体126を含むように構成される。リザーバ128は、リザーバ128の内部で作動媒体126(ガスであり得る)の組成を制御、調整、および/または監視するための、当技術分野で知られている1つまたは複数の特徴を備え得る。リザーバ128は、第1の透明窓130を含み得る。使用中、光ファイバ100は、第1の透明窓130が光ファイバ100の入力端に近接して配置されるように、リザーバ128の内部に配置される。第1の透明窓130は、リザーバ128の壁の一部を形成することができる。第1の透明窓130は、少なくとも受信された入力放射周波数に対して透明であり得、その結果、受信された入力放射122(またはその少なくとも大部分)が、リザーバ128の内側に配置された光ファイバ100に結合され得る。入力放射122を光ファイバ100に結合するために光学系(図示せず)が提供され得ることが理解されるであろう。
【0115】
リザーバ128は、リザーバ128の壁の一部を形成する第2の透明窓132を備える。使用中、光ファイバ100がリザーバ128の内部に配置されるとき、第2の透明窓132は、出力端に近接して配置される。第2の透明窓132は、少なくとも装置120の広帯域出力放射124の周波数に対して透明であり得る。
【0116】
あるいは、別の実施形態では、光ファイバ100の2つの対向する端部は、異なるリザーバ内に配置され得る。光ファイバ100は、入力放射122を受け取るように構成された第1の端部セクションと、広帯域出力放射124を出力するための第2の端部セクションとを含み得る。第1の端部セクションは、作動媒体126を含む第1のリザーバ内に配置され得る。第2の端部セクションは、第2のリザーバの内部に配置することができ、第2のリザーバはまた、作動媒体126を含み得る。リザーバの機能は、上記の図8に関連して説明した通りであり得る。第1のリザーバは、入力放射122に対して透明であるように構成された第1の透明窓を含み得る。第2のリザーバは、広帯域出力広帯域放射124に対して透明であるように構成された第2の透明窓を含み得る。第1および第2のリザーバはまた、光ファイバ100を部分的にリザーバの内側且つ部分的に外側に配置することを可能にし、その結果、ガスをリザーバの内側に密封することができる、密封可能な開口部を含み得る。光ファイバ100は、リザーバ内に含まれていない中間セクションをさらに含むことができる。2つの別個のガスリザーバを使用するそのような配置は、光ファイバ100が比較的長い(例えば、長さが1mを超える)実施形態にとって特に都合がよい。2つの別個のガスリザーバを使用するそのような構成の場合、2つのリザーバ(2つのリザーバー内のガスの組成を制御、調整、および/または監視するための、当技術分野で知られている1つまたは複数の特徴を含み得る)は、光ファイバ100の中空コア102内に作動媒体126を提供するための装置を提供すると見なすことができる。
【0117】
この文脈において、窓へのその周波数の入射放射の少なくとも50%、75%、85%、90%、95%、または99%が窓を通して透過される場合、窓はその周波数に対して透明であり得る。
【0118】
第1の透明窓130および第2の透明窓132の両方が、リザーバ128の壁内に気密シールを形成することができ、その結果、作動媒体126(ガスであり得る)がリザーバ128内に含まれ得る。ガス126は、リザーバ128の周囲圧力とは異なる圧力でリザーバ128内に含まれ得る。
【0119】
作動媒体126は、希ガスを含み得る。作動媒体126は、アルゴン、クリプトン、ネオン、ヘリウム、およびキセノンのうちの1つまたは複数を含み得る。希ガスの代替または追加として、作動成分は分子ガス(例えば、H、N、O、CH、SF)を含み得る。作動媒体126はまた、アルゴン、クリプトン、ネオン、ヘリウム、キセノン、および分子ガス(例えば、H、N、O、CH、SF)の2つ以上の混合物を含み得る。作動媒体126は、異常分散を生成するように構成され得、任意選択で、入力放射122の波長で異常分散を生成するように構成され得る。すなわち、作動媒体126は、負の群遅延分散パラメータを有し得る。
【0120】
一実施形態では、作動媒体126は、広帯域出力放射124を生成するために、少なくとも入力放射122の受け取り中に中空コア102内に配置され得る。光ファイバ100が広帯域出力放射を生成するための入力放射122を受信していない間、ガス126は、中空コア102から完全にまたは部分的に存在しない可能性があることが理解されよう。
【0121】
周波数を広げるために、高強度の放射が望ましい場合がある。中空コア光ファイバ100を有することの利点は、光ファイバ100を通って伝播する放射の強力な空間的閉じ込めによって高強度の放射を達成し、高い局所的な放射強度を達成できることである。光ファイバ100内の放射強度は、例えば、高い受信入力放射強度のため、および/または光ファイバ100内の放射の強い空間的閉じ込めのために、高くあってよい。中空コア光ファイバの利点は、中実コア光ファイバよりも広い波長範囲の放射を誘導できることであり、特に、中空コア光ファイバは、紫外線と赤外線の両方の範囲の放射を誘導できることである。
【0122】
中空コア光ファイバ100を使用することの利点は、光ファイバ100内に導かれる放射の大部分が中空コア102に閉じ込められることである。したがって、光ファイバ100内の放射の相互作用の大部分は、光ファイバ100の中空コア102の内部に提供される作動媒体126との相互作用である。その結果、放射に対する作動媒体126の広がり効果が増大し得る。
【0123】
受け取られた入力放射122は、電磁放射であり得る。入力放射122は、パルス放射として受け取ることができる。例えば、入力放射122は、超高速パルスを含み得る。
【0124】
入力放射122は、コヒーレント放射であり得る。入力放射122は、コリメートされた放射であり得る。その利点は、入力放射122を光ファイバ100に結合する効率を促進および改善することであり得る。入力放射122は、単一の周波数または狭い範囲の周波数を含み得る。入力放射122は、レーザによって生成され得る。同様に、出力放射124は、コリメートされ得、および/またはコヒーレントであり得る。
【0125】
出力放射124の広帯域範囲は、放射周波数の連続範囲を含む連続範囲であってよい。出力放射124は、スーパーコンティニウム放射を含み得る。連続放射は、多くのアプリケーション、たとえば計測アプリケーションでの使用に役立つ場合があります。たとえば、周波数の連続範囲を使用して、多数の特性を調べることができる。周波数の連続範囲は、例えば、測定された特性の周波数依存性を決定および/または排除するために使用され得る。スーパーコンティニウム出力放射124は、例えば、100nm~4000nmの波長範囲にわたる電磁放射を含み得る。広帯域出力放射124の周波数範囲は、例えば、400nm~900nm、500nm~900nm、または200nm~2000nmであり得る。スーパーコンティニウム出力放射124は、白色光を含み得る。
【0126】
パルスポンプ放射源136によって提供される入力放射122は、パルス状であってよい。入力放射122は、200nmから2μmの間の1つまたは複数の周波数の電磁放射を含み得る。入力放射122は、例えば、1.03μmの波長を有する電磁放射を含み得る。パルス放射122の繰り返し率は、1kHzから100mMのオーダーの大きさであり得る。パルスエネルギーは、0.01μJから100μJ、たとえば0.1μJから100μJ、またはたとえば1~10μJのオーダーの大きさを持ち得る。入力放射122のパルス持続時間は、10fsから10psの間、例えば、300fsであり得る。入力放射122の平均電力は、100mWから数100Wの間であり得る。入力放射122の平均電力は、例えば、20~50Wであり得る。
【0127】
放射源134によって提供される広帯域出力放射124は、少なくとも1Wの平均出力電力を有し得る。平均出力電力は、少なくとも5Wであり得る。平均出力電力は、少なくとも10Wであり得る。広帯域出力放射124は、パルス化された広帯域出力放射124であり得る。広帯域出力放射124は、少なくとも0.01mW/nmの出力放射の全波長帯域におけるパワースペクトル密度を有し得る。広帯域出力放射の全波長帯域のパワースペクトル密度は、少なくとも3mW/nmであり得る。
【0128】
いくつかの実施形態は、中空コア光ファイバ100と、中空コア内に配置された作動媒体126と、入力端110から出力端112まで中空コアによって受け取られ、中空コアを通って伝播するパルスポンプ放射122を生成するように構成されたパルスポンプ放射源136とを備える、図8に示される放射源134の形態の放射源に関する。特に、いくつかの実施形態は、パルスポンプ放射122、光ファイバ100および作動媒体126のパラメータが、パルスポンプ放射122のスペクトルを変化させて出力放射124を形成するために、パルスポンプ放射122のソリトン自己圧縮を可能にするように構成される放射源に関する。
【0129】
いくつかの既知の広帯域放射源は、パルスポンプ放射のスペクトル広がりを生成するが、パルスポンプ放射、光ファイバ、および作動媒体のパラメータは、変調不安定性がスペクトル広がりを生成することを可能にするように構成される。スペクトルの広がりを生成するために変調不安定性が使用される理由はいくつかある。第一に、変調不安定性は、十分な数のパルスが平均化されるという条件で、比較的平坦な強度-波長分布を有する広帯域放射を生成することが知られている。このような広帯域放射源は、(比較的平坦なスペクトル強度分布のために)白色光放射源と呼ばれることがある。第二に、変調不安定性は、ポンプ放射源として比較的経済的なレーザ源を使用して達成することができる。
【0130】
他方、ソリトン自己圧縮のレジームでは、入力パルスは時間領域で圧縮を受け、これはスペクトルの幅の増加を伴う。ソリトンの自己圧縮に続いて、圧縮されたパルスはソリトン分裂を起こし、そこでパルスは複数のソリトンに分裂する。このソリトン分裂は、放射パルスの時間的広がりとスペクトルのシフトをもたらす。
【0131】
いくつかの実施形態では、光ファイバ100の長さは、ソリトン自己圧縮が発生するがソリトン分裂が始まる前の位置と出力端112が実質的に一致するような長さである。これにより、比較的滑らかで、スペクトルに大きなギャップがない、特に安定した広帯域放射源が提供される。
【0132】
いくつかの実施形態では、光ファイバ100の長さは、出力放射124の時間的範囲が第1の閾値よりも小さい位置、または任意選択で、出力放射124の時間的範囲が最小である位置と出力端112が実質的に一致するような長さである。第1の閾値は、十分に広い出力放射スペクトルが得られるように選択することができる。実際には、光ファイバ100の出力端112を離れる圧縮パルスは、バルク材料分散の結果として、第2の透明窓132によって時間的に広げられる。結果として、第2の透明窓132の後の出力放射124のパルスの持続時間は、比較的長くなり得る。
【0133】
いくつかの実施形態では、光ファイバ100の長さは、出力放射124のスペクトルの幅が第2の閾値よりも大きい位置、または任意選択で、出力放射124のスペクトルの幅が最大になる位置と出力端112が実質的に一致するような長さである。第2の閾値は、スペクトルの幅が特定のアプリケーションの帯域幅要件、例えば計測センサの要件、を満たすのに十分大きくなるように選択することができる。
【0134】
いくつかの実施形態では、光ファイバ100の長さは、出力放射124のスペクトルが実質的に連続している位置と出力端112が実質的に一致するような長さである。
【0135】
このような放射源は、ここで論じられるように、安定した広帯域出力放射ビーム124が出力端112で生成されることを可能にするので有利である。そのような安定した広帯域出力放射ビーム124は、計測装置内、例えばリソグラフィ装置内での使用に有用であり得る。
【0136】
(ソリトン数が比較的低い)ソリトン自己圧縮レジームでは、放射のパルスは、スペクトルの広がりを伴う有意な時間的圧縮を受ける可能性がある。最終的に、時間的圧縮は最大レベル(パルス放射の最小時間的範囲に対応)に達し、続いて放射の時間的広がり(ソリトン分裂)が続く。(高次の)ソリトンは、中空コア光ファイバに沿って伝播するときに、時間的圧縮と時間的広がりの期間の間で振動し得る。時間的な広がりに続いて、他の影響が放射のスペクトルのシフトにつながる可能性がある。たとえば、自己パルス急峻化(ソリトン自己圧縮を伴い、それを支援し得る)は、分散波放射に種をまく可能性のある光ショックにつながり得る。システムのパラメータを調整することにより、特定の望ましい波長を生成し得る。例えば、波長は、特定の分子と相互作用するのに適しているように選択され得、そして前記分子を研究する研究実験において使用され得る。したがって、ソリトン自己圧縮は、第1の波長を有する入力ポンプレーザビームから、第2のシフトされた波長を有する出力放射ビームを生成するための既知のレジームである。
【0137】
本発明者らは、ソリトン自己圧縮中、時間的広がりの前(および分散波が形成される前)に、中空コアファイバを伝搬する放射が広帯域放射である(短命の)遷移期間がある(つまり、スペクトル密度スペクトルに大きなギャップがなく、広く比較的平坦なスペクトルを持つ)ことを認識した。さらに、本発明者らは、この広帯域放射は短命であるが、その後のスペクトルの時間的広がりとシフトの前にソリトン自己圧縮が発生した位置と出力端112が実質的に一致するように光ファイバ100の長さを選択することによって、この広帯域放射は、特に安定した広帯域放射源134を提供するように、光ファイバ100から出力することができることを認識した。
【0138】
特に、光ファイバ100の長さが、放射の時間的範囲が最小である位置と出力端112が実質的に一致するようなものである場合、特に安定した広帯域放射源134を提供することができる。
【0139】
一般に、ソリトン自己圧縮後、パルス放射のスペクトルの幅が減少する、および/または、スペクトルのギャップが発展する可能性がある(たとえば、ソリトンが進化し、分散波が放出されるとき)。したがって、光ファイバ100の長さが、放射のスペクトルの幅が最大になる位置と出力端112が実質的に一致するような長さである場合、特に安定で平坦な広帯域放射源を提供することができる。あるいは、光ファイバ100の長さが、放射のスペクトルが実質的に連続している位置と出力端112が実質的に一致するような長さである場合、特に安定で平坦な広帯域放射源を提供することができる。
【0140】
ノイズシード(noise-seeded)変調不安定性システムとは対照的に、このようなソリトン自己圧縮によって生成される広帯域放射には、ショット間の変動が実質的にない。結果として、有利には、安定した出力スペクトルを単一のパルスを使用して生成することができる。対照的に、変調不安定性システムの出力ビームにある程度の安定性をもたらすには、いくつかのパルスが必要になる。
【0141】
放射が中空コア光ファイバ100を通って伝播するとき、ソリトンは、時間的圧縮と時間的広がりの期間の間で振動し得ることが理解されるであろう。時間的圧縮と時間的広がりの各期間の間に、放射の時間的範囲に局所的な最小値が存在する可能性がある。原則として、光ファイバ100の長さは、出力端112が、放射の最小の時間的範囲のそのような位置と実質的に一致するような長さであり得る。しかしながら、最も安定した(例えば、パルス間の変動に対して)そして最も平坦な出力スペクトルは、出力端112が放射の最小の時間範囲の第1の位置と一致するときによって提供され得る。
【0142】
いくつかの実施形態は、ソリトン自己圧縮を利用し、入力パルスポンプ放射122のパルス持続時間が50fsより大きく、任意選択で、入力パルスポンプ放射122のパルス持続時間が400fs以下である放射源に関する。例えば、入力パルスポンプ放射122のパルス持続時間は、100fsより大きく、例えば、150fsのオーダーであり得る。
【0143】
いくつかの実施形態は、ソリトン自己圧縮を利用する放射源であって、入力パルスポンプ放射のパルスエネルギーが1μJ未満であり、任意選択で、入力パルスポンプ放射のパルスエネルギーが0.1μJ以上である放射源に関する。
【0144】
入力パルスポンプ放射122のソリトン次数Nは、スペクトル広がりが変調不安定性によって支配される条件と、スペクトル広がりがソリトン自己圧縮によって支配される条件とを区別するために使用できる便利なパラメータである。入力パルスポンプ放射122のソリトン次数Nは、以下の式で与えられる。
【数1】
ここで、γは非線形位相(または非線形パラメータ)である。Pは、入力パルスポンプ放射122のポンプピークパワーである。τは、入力パルスポンプ放射122のポンプパルス持続時間である。βは、作動媒体126の群速度分散である。
【0145】
スペクトルの広がりは、通常、N>>20の場合、変調不安定性によって支配されるが、スペクトルの広がりは、通常、N<<20の場合、ソリトン自己圧縮によって支配される。
【0146】
したがって、ソリトン自己圧縮を使用する構成では、ソリトン次数Nが低い入力パルスポンプ放射122を生成することが望ましい。さらに、式(1)から分かるように、入力パルスポンプ放射122のソリトン次数は、入力パルスポンプ放射122のパルス持続時間τに比例する。したがって、ソリトン自己圧縮が支配的である通常の従来の構成は、典型的には、入力パルスポンプ放射122のパルス持続時間τが30fs以下のオーダーに減少する。このような構成を実現するために、通常、圧縮された高出力フェムト秒ファイバレーザまたはTi:Sapph増幅器がパルスポンプ放射源136として使用される。Ti:Sapph増幅器は、パルス持続時間τが30fs以下のオーダーのパルス放射を生成できる。高出力のフェムト秒ファイバレーザのパルス持続時間は通常300fsであるため、フェムト秒ファイバレーザを使用する既知のソリトン自己圧縮構成は、このパルス持続時間をたとえば30fsに圧縮するシステムも備えている。パルス持続時間を圧縮するためのそのようなシステムは、例えば、自己位相変調に基づくスペクトル広がりおよびチャープミラーまたは格子を使用する位相圧縮を使用することができる。レーザヘッドは比較的かさばり(フェムト秒ファイバレーザヘッドの寸法は、たとえば60×40×20cm)であり、ほとんどの場合、外部コントローラと水冷器が必要である。さらに、そのようなレーザは比較的費用がかかる。
【0147】
本発明者らは、入力パルスポンプ放射のパルスエネルギーEp(ここで、E=Pτ)を低減することによって、入力パルスポンプ放射のソリトン次数を代替的に低減できることに気づいた。たとえば、他のすべてのパラメータが一定のままである場合、入力パルスポンプ放射のパルスエネルギEをαの係数で減らすことにより、同じソリトン次数を、αの係数で増やすパルス持続時間を使用して達成できる。パルスエネルギーのこの減少は、増加したパルスエネルギーを使用するように教示されている従来技術の教示とは反対である。従来技術では、ソリトン自己圧縮を使用する放射源は、通常、例えば、放射源のパルスエネルギーを最大化することが望ましい原子または分子分光法などの研究用途に使用される。
【0148】
次に、例示的な実施形態を、図9Aから10Bを参照して説明する。
【0149】
図9Aおよび図9Bは、中空コア光ファイバ100内の放射パルスの時間発展およびスペクトル発展のシミュレーションを示している。中空コア光ファイバ100は、32.5μmのコア直径を有し、圧力10barのクリプトンガスの作動媒体126で満たされている。入力パルスポンプ放射122は、150fsのポンプパルス持続時間τ、0.4μJエネルギーのパルスエネルギーE、および1030nmの波長を有する。このパルスエネルギーEは、変調不安定性駆動の広帯域光源で現在使用されているものよりも約1桁低くなっている。この構成により、異常分散レジームでのポンピングが可能になる(1030nmのポンプ波長でβ=-6.3fs/cm)。N=17のソリトン次数は、パルスポンプ放射のスペクトルを変化させて出力放射124を形成するように、パルスポンプ放射122のソリトン自己圧縮を可能にする。
【0150】
光ファイバ100の第1の部分において、放射は、自己位相変調140を受ける。これに続いて、ソリトン自己圧縮142が行われ、放射の時間的範囲は、光ファイバ100の第1の端部112から約110cmの距離で最小である。(図9Aを参照)。図9Bに見られるように、このソリトン自己圧縮は、放射スペクトルの大幅な広がり144を伴う。光ファイバ100の第2の端部114は、放射の時間範囲が最小である位置142と一致する。
【0151】
図9Cは、放射源134の出力スペクトル146を示している。また、入力パルスポンプ放射122のスペクトル148も示されている。500~900nmの帯域で約10dBの平坦性が実現されていることが分かる。出力スペクトル146は単一のショットについて計算されており、滑らかさは小さな摂動に起因することに留意されたい。
【0152】
上記の例示的な実施形態で使用されるパルスは、150fsのパルス持続時間τを有し、これは、ソリトン自己圧縮に使用される典型的なパルス持続時間(>30fs)よりも著しく大きいことに留意されたい。さらに、このようなパルスは、Ti:Sapph増幅器(30fs)と高出力ファイバレーザ(300fs)の間にパルス持続時間を提供する新しいクラスのレーザによって容易に生成でき、近年、ボリュームまたはコストが劇的に減少しました。適切なレーザの例は、フランスで設立された会社であるAmplitude Systems SAによってGojiとして販売されているレーザである。
【0153】
図10Aは、光ファイバの長さが150cmに増加した場合(すなわち、光ファイバ100の第2の端部114が放射の時間範囲が最小になる位置142ともはや一致しない場合)に経験する、中空コア光ファイバ100内の放射パルスのスペクトル発展のシミュレーションを示す。図10Bは、この長さが増加した光ファイバを使用した放射源134の出力スペクトル150を示す。また、入力パルスポンプ放射122のスペクトル148も示されている。
【0154】
ソリトン自己圧縮および関連するスペクトルの広がり144に続いて、放射のスペクトルが多くの変化を受けることが分かる。例えば、分散波152が放出され、放射は、スペクトル圧縮とスペクトル広がりの期間の間で振動する。
【0155】
さらに、図10Bの出力スペクトル150から、光ファイバ100の第2の端部114が、放射の時間範囲が最小である位置142ともはや一致しなくなると、出力スペクトルの平坦性が失われることがはっきりと分かる。スペクトルはもはや滑らかではなく、多数の山と谷がある。
【0156】
いくつかの実施形態によれば、図8に示されるタイプの放射源134の動作レジームを選択する方法も提供される。この方法は、ソリトン自己圧縮が可能となり且つ光ファイバ100の出力端が、放射の時間範囲が最小である位置と実質的に一致するように、パルスポンプ放射122(例えば、ポンプパルス持続時間τおよび/またはパルスエネルギーE)、光ファイバ100(例えば、ジオメトリ、コア直径など)、および作動媒体126(例えば、ガス組成、圧力など)の1つまたは複数のパラメータを選択することを備え得る。
【0157】
本方法の第1のアプリケーションでは、光ファイバ100のパラメータが選択され得る。光ファイバ100が製造されると、そのパラメータは、例えば、測定によって決定され得、そして本方法の第2のアプリケーションへの制約として入力され得る。これにより、光ファイバ100のパラメータが固定されている場合(例えば、光ファイバが製造された後)、パルスポンプ放射122および/または作動媒体126の動作パラメータを選択することができる。
【0158】
上記の放射源134は、基板上の構造の関心のあるパラメータを決定するための計測装置の一部として提供することができる。基板上の構造は、例えば、基板に適用されるリソグラフィパターンであり得る。計測装置は、基板上の構造を照明するための照明サブシステムをさらに含むことができる。計測装置は、構造によって散乱および/または反射された放射の一部を検出するための検出サブシステムをさらに含み得る。検出サブシステムは、構造によって散乱および/または反射された放射の一部から、構造上の関心のあるパラメータをさらに決定することができる。パラメータは、例えば、基板上の構造のオーバーレイ、アラインメント、またはレベリングデータであり得る。
【0159】
上記の計測装置は、計測装置MTの一部を形成することができる。上記の計測装置は、検査装置の一部を形成することができる。上記の計測装置は、リソグラフィ装置LAの内部に含まれ得る。
【0160】
さらなる実施形態は、以下の番号が付けられた項に開示されている。
1.中空コアを有する本体を含む中空コア光ファイバと、
前記中空コア内に配置された作動媒体と、
入力端から出力端まで前記中空コアによって受け取られ、前記中空コアを通って伝播するパルスポンプ放射を生成するように配置されたパルスポンプ放射源と、
を備え、
前記パルスポンプ放射、前記光ファイバ、および前記作動媒体のパラメータは、前記パルスポンプ放射のスペクトルを変化させて出力放射を形成するために前記パルスポンプ放射のソリトン自己圧縮を可能にするように構成され、さらに、前記光ファイバの長さは、前記出力端が前記出力放射の時間範囲が最小になる位置と実質的に一致する長さである、放射源。
2.中空コアを有する本体を含む中空コア光ファイバと、
前記中空コア内に配置された作動媒体と、
入力端から出力端まで前記中空コアによって受け取られ、前記中空コアを通って伝播するパルスポンプ放射を生成するように配置されたパルスポンプ放射源と、
を備え、
前記パルスポンプ放射、前記光ファイバ、および前記作動媒体のパラメータは、前記パルスポンプ放射のスペクトルを変化させて出力放射を形成するために前記パルスポンプ放射のソリトン自己圧縮を可能にするように構成され、さらに、前記光ファイバの長さは、前記出力端が前記出力放射のスペクトルの幅が最大になる位置と実質的に一致する長さである、放射源。
3.前記光ファイバの長さは、前記出力端が、前記パルスポンプ放射の時間範囲の最初の極小値と実質的に一致する長さである、項1または2に記載の放射源。
4.入力された前記パルスポンプ放射のパルス持続時間が50fsよりも大きく、任意選択で、入力された前記パルスポンプ放射のパルス持続時間が400fs以下である、項1から3のいずれかに記載の放射源。
5.入力された前記パルスポンプ放射のパルスエネルギーが1μJ未満であり、任意選択で、入力された前記パルスポンプ放射のパルスエネルギーが0.01μJ以上である、項1から4のいずれかに記載の放射源。
6.中空コアを有する本体を含む中空コア光ファイバと、
前記中空コア内に配置された作動媒体と、
入力端から出力端まで前記中空コアによって受け取られ、前記中空コアを通って伝播するパルスポンプ放射を生成するように配置されたパルスポンプ放射源と、
を備え、
前記パルスポンプ放射、前記光ファイバ、および前記作動媒体のパラメータは、前記パルスポンプ放射のスペクトルを変化させて出力放射を形成するために前記パルスポンプ放射のソリトン自己圧縮を可能にするように構成され、さらに、入力された前記パルスポンプ放射のパルス持続時間が50fsを超えており、任意選択で、入力された前記パルスポンプ放射のパルス持続時間が400fs以下である、放射源。
7.中空コアを有する本体を含む中空コア光ファイバと、
前記中空コア内に配置された作動媒体と、
入力端から出力端まで前記中空コアによって受け取られ、前記中空コアを通って伝播するパルスポンプ放射を生成するように配置されたパルスポンプ放射源と、
を備え、
前記パルスポンプ放射、前記光ファイバ、および前記作動媒体のパラメータは、前記パルスポンプ放射のスペクトルを変化させて出力放射を形成するために前記パルスポンプ放射のソリトン自己圧縮を可能にするように構成され、さらに、入力された前記パルスポンプ放射のパルスエネルギーが1μJ未満であり、任意選択で、入力された前記パルスポンプ放射のパルスエネルギーが0.01μJ以上未満である、放射源。
8.入力された前記パルスポンプ放射のソリトン次数が20未満である、項1から7のいずれかに記載の放射源。
9.前記作動媒体が異常分散を生成するように構成され、前記作動媒体が少なくとも前記パルスポンプ放射の波長で異常分散を生成するように構成される、項1から8のいずれかに記載の放射源。
10.前記中空コア光ファイバは、前記中空コアを取り囲むクラッド部分を備え、前記クラッド部分は、前記中空コアを通して放射を誘導するための複数の反共振要素を備える、項1から9のいずれかに記載の放射源。
11.前記クラッド部分の複数の反共振要素は、前記中空コアの周りにリング構造で配置される、項10に記載の放射源。
12.前記複数の反共振要素は、前記反共振要素のそれぞれが他の前記反共振要素のいずれとも接触しないように配置されている、項10または11に記載の放射源。
13.前記作動媒体は、希ガスを含む、項1から12のいずれかに記載の放射源。
14.前記作動媒体は、分子ガスを含む、項1から13のいずれかに記載の放射源。
15.基板上の構造の関心のあるパラメータを決定するための計測装置であって、
項1から14のいずれかに記載の放射源と、
広帯域出力放射を使用して前記基板上の前記構造を照明するための照明サブシステムと、
前記構造によって散乱および/または反射された放射の一部を検出するための、および放射の前記一部から関心のある前記パラメータを決定するための検出サブシステムと、
を備える計測装置。
16.項15に記載の計測装置を備えるリソグラフィ装置。
17.放射源の動作レジームを選択する方法であって、
前記放射源は、
中空コアを有する本体を含む中空コア光ファイバと、
前記中空コア内に配置された作動媒体と、
入力端から出力端まで前記中空コアによって受け取られ、前記中空コアを通って伝播するパルスポンプ放射を生成するように配置されたパルスポンプ放射源と、
を備え、
当該方法は、
前記パルスポンプ放射のスペクトルを変化させて出力放射を形成するために前記パルスポンプ放射のソリトン自己圧縮を可能にするように、前記パルスポンプ放射、前記光ファイバ、および前記作動媒体のうちの1つまたは複数のパラメータを選択することを備え、
さらに、前記パラメータは、前記光ファイバの長さが、前記出力端が以下の位置:
前記出力放射の時間範囲が第1の閾値よりも小さくなる位置、および/または、
前記出力放射のスペクトルの幅が第2の閾値よりも大きくなる位置、
と実質的に一致する長さとなるように選択される、方法。
18.前記.光ファイバのパラメータが固定され、前記パルスポンプ放射および/または前記作動媒体のパラメータが選択される、項17に記載の方法。
19.前記パラメータは、前記光ファイバの長さが、前記出力端が以下の位置:
前記出力放射の時間範囲が最小となる位置、および/または、
前記出力放射のスペクトルの幅が最大となる位置、
と実質的に一致する長さになるように選択される、項17に記載の方法。
【0161】
本明細書では、ICの製造におけるリソグラフィ装置の使用に特定の言及がなされ得るが、本明細書に記載されるリソグラフィ装置は、他の用途を有し得ることを理解するべきである。他の可能な用途には、統合光学システム、磁区メモリ、フラットパネルディスプレイ、液晶ディスプレイ(LCD)、薄膜磁気ヘッドなどのガイダンスと検出パターンの製造が含まれる。
【0162】
本明細書では、リソグラフィ装置との関連で本発明の実施形態を具体的に参照することができるが、本発明の実施形態は、他の装置で使用することができる。本発明の実施形態は、マスク検査装置、計測装置、またはウェハ(または他の基板)またはマスク(または他のパターニングデバイス)などの物体を測定または処理する任意の装置の一部を形成することができる。これらの装置は、一般にリソグラフィツールと呼ばれることがある。そのようなリソグラフィツールは、真空条件または周囲(非真空)条件を使用することができる。
【0163】
上記では、光学リソグラフィの文脈での本発明の実施形態の使用について具体的に言及してきたが、文脈が許せば、本発明は光学リソグラフィに限定されず、その他のアプリケーション、たとえばインプリントリソグラフィでも使用することができる。
【0164】
「計測装置/ツール/システム」または「検査装置/ツール/システム」に特に言及されているが、これらの用語は、同一または類似のタイプのツール、装置またはシステムを指す場合がある。 例えば、本発明の実施形態を含む検査または計測装置を使用して、基板またはウェハ上の構造の特性を決定することができる。例えば、本発明の実施形態を含む検査装置または計測装置を使用して、基板の欠陥または基板またはウェハ上の構造の欠陥を検出することができる。そのような実施形態では、基板上の構造の関心のある特性は、構造の欠陥、構造の特定の部分の欠如、または基板またはウェハ上の望ましくない構造の存在に関係し得る。
【0165】
本発明の特定の実施形態が上記で説明されたが、本発明は、説明された以外の方法で実施されてもよいことが理解されよう。上記の説明は、限定ではなく例示を意図したものである。したがって、以下に記載される特許請求の範囲から逸脱することなく、記載された本発明に変更を加えることができることが当業者には明らかであろう。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9A
図9B
図9C
図10A
図10B