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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-12
(45)【発行日】2024-09-24
(54)【発明の名称】熱分解装置
(51)【国際特許分類】
   C08J 11/12 20060101AFI20240913BHJP
【FI】
C08J11/12 ZAB
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2024073996
(22)【出願日】2024-04-30
【審査請求日】2024-04-30
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【弁理士】
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【弁理士】
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100124062
【弁理士】
【氏名又は名称】三上 敬史
(74)【代理人】
【識別番号】100176245
【弁理士】
【氏名又は名称】安田 亮輔
(72)【発明者】
【氏名】角谷 英則
(72)【発明者】
【氏名】安富 陽一
(72)【発明者】
【氏名】塚本 昌利
(72)【発明者】
【氏名】江本 雄一
【審査官】高橋 祐介
(56)【参考文献】
【文献】特開2003-321571(JP,A)
【文献】特開2022-184116(JP,A)
【文献】特開平11-209510(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08J 11/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
原料樹脂を受け入れて熱分解する熱分解部と、
前記熱分解部から排出された熱分解ガスを液化する凝縮部と、
前記凝縮部において凝縮された凝縮液を貯蔵する貯蔵部と、を備え、
前記貯蔵部は、並列に又は直列に接続された2つ以上のタンクを有し、
前記タンクの排出側には次工程に係る処理部として、前記凝縮液を精製する精製部及び前記凝縮液を出荷用に充填する充填部が接続されており、
前記貯蔵部、又は前記貯蔵部から前記処理部までの間の二次配管のうちの少なくとも何れかに、前記凝縮液の取り出し口が設けられており、
前記二次配管には、前記貯蔵部からの前記凝縮液の排出先を前記精製部又は前記充填部に切り替える次処理切替手段が設けられている、熱分解装置。
【請求項2】
原料樹脂を受け入れて熱分解する熱分解部と、
前記熱分解部から排出された熱分解ガスを液化する凝縮部と、
前記凝縮部において凝縮された凝縮液を貯蔵する貯蔵部と、を備え、
前記貯蔵部は、並列に又は直列に接続された2つ以上のタンクを有し、前記タンクの排出側には次工程に係る少なくとも一種類の処理部が接続されており、
前記貯蔵部、又は前記貯蔵部から前記処理部までの間の二次配管のうちの少なくとも何れかに、前記凝縮液の取り出し口が設けられており、
前記貯蔵部から前記処理部までの間には、脱水部、吸着部、又は吸収部の何れかが設けられている、熱分解装置。
【請求項3】
原料樹脂を受け入れて熱分解する熱分解部と、
前記熱分解部から排出された熱分解ガスを液化する凝縮部と、
前記凝縮部において凝縮された凝縮液を貯蔵する貯蔵部と、を備え、
前記貯蔵部は、並列に又は直列に接続された2つ以上のタンクを有し、前記タンクの排出側には次工程に係る少なくとも一種類の処理部が接続されており、
前記貯蔵部、又は前記貯蔵部から前記処理部までの間の二次配管のうちの少なくとも何れかに、前記凝縮液の取り出し口が設けられており、
前記熱分解部には、残渣貯蔵部が接続されている、熱分解装置。
【請求項4】
原料樹脂を受け入れて熱分解する熱分解部と、
前記熱分解部から排出された熱分解ガスを液化する凝縮部と、
前記凝縮部において凝縮された凝縮液を貯蔵する貯蔵部と、を備え、
前記貯蔵部は、並列に又は直列に接続された2つ以上のタンクを有し、前記タンクの排出側には次工程に係る少なくとも一種類の処理部が接続されており、
前記貯蔵部、又は前記貯蔵部から前記処理部までの間の二次配管のうちの少なくとも何れかに、前記凝縮液の取り出し口が設けられており、
前記熱分解部と前記凝縮部との間には分縮器が設けられている、熱分解装置。
【請求項5】
前記貯蔵部は、並列に接続された2つ以上のタンクを有し、
前記貯蔵部には、前記凝縮液を前記タンクの何れか一つに導入するためのタンク切替手段が設けられている、請求項1~の何れか一項に記載の熱分解装置。
【請求項6】
前記貯蔵部は、直列に接続された2つ以上のタンクを有し、
前記貯蔵部には、前記凝縮液を下流側のタンクに送液するための送液手段が設けられている、請求項1~の何れか一項に記載の熱分解装置。
【請求項7】
前記タンクの排出側には、前記処理部として、前記凝縮液を貯留する廃液貯留部が接続されており、
前記次処理切替手段は、前記貯蔵部からの前記凝縮液の排出先を前記精製部、前記充填部又は前記廃液貯留部の何れかに切り替える、請求項1に記載の熱分解装置。
【請求項8】
前記貯蔵部は、並列に接続された3つ以上のタンクを有する、請求項1~4の何れか一項に記載の熱分解装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、樹脂の熱分解装置に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、資源価格の高騰、及び環境問題に対する意識の高まりに伴って、ポリ(メタ)アクリル酸エステル等の樹脂成形体を回収してリサイクル(再資源化)する動きが広まっている。一例として、ポリ(メタ)アクリル酸エステルを熱分解(解重合)して得られるモノマーを回収し、このモノマーを用いて新たな成形体を製造する方法が知られている。このような樹脂のリサイクル方法は、ケミカルリサイクルとも呼ばれる。
【0003】
ポリ(メタ)アクリル酸エステルの再生処理においては、300℃から500℃程度の比較的低い温度で加熱がなされることにより、熱分解物であるモノマーが高収率で回収される。この点、ポリ(メタ)アクリル酸エステルは、ケミカルリサイクルによる再生処理に適している。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリ(メタ)アクリル酸エステルを含む樹脂製品を加熱窯内で加熱して得られたガス状の熱分解物を冷却して液化し、次いで液化した熱分解物を蒸留により精製して(メタ)アクリル酸エステルを回収する方法が記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-321571号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
ところで、樹脂の熱分解後、液化した熱分解物(凝縮液、又は回収液)には不純物が含まれ得る。再生処理においては不純物の濃度は低い方が望ましいが、投入される原料によっては不純物の濃度が高くなる可能性もある。そこで、熱分解装置を安定して稼働させつつ、不純物の濃度に応じて凝縮液を適切な工程へと送ることが望まれる。
【0007】
本開示は、熱分解装置を安定して稼働させつつ、不純物の濃度に応じて凝縮液を適切な工程へと送ることができる熱分解装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本開示は、以下のいくつかの態様を提供する。
[1]原料樹脂を受け入れて熱分解する熱分解部と、
前記熱分解部から排出された熱分解ガスを液化する凝縮部と、
前記凝縮部において凝縮された凝縮液を貯蔵する貯蔵部と、を備え、
前記貯蔵部は、並列に又は直列に接続された2つ以上のタンクを有し、前記タンクの排出側には次工程に係る少なくとも一種類の処理部が接続されており、
前記貯蔵部、又は前記貯蔵部から前記処理部までの間の二次配管のうちの少なくとも何れかに、前記凝縮液の取り出し口が設けられている、熱分解装置。
【0009】
[1]の熱分解装置によれば、貯蔵部が2つ以上のタンクを有するので、これらのタンクを使い分けることができる。例えば、1つのタンクに凝縮液が貯留され、その後不純物に関する分析が行われ、分析の結果を待つ間に、別の1つのタンクに凝縮液を貯留できる。分析の際には、取り出し口から凝縮液を取り出すことができるので、不純物の濃度を正確に測定することができる。タンクの使い分けにより、熱分解部を停止させる停止時間は、無いか(無い場合には連続運転が可能となる)、又は短くて済む。よって、熱分解装置を安定して稼働させつつ、分析の結果に示される不純物の濃度に応じて、凝縮液を適切な工程へと送ることができる。
【0010】
[2]前記処理部は、前記凝縮液を精製する精製部、又は前記凝縮液を出荷用に充填する充填部の少なくとも何れかを有する、[1]に記載の熱分解装置。この場合、不純物の濃度に応じて、凝縮液を精製するか、又は凝縮液を出荷用に充填する等といった適切な工程へと送ることができる。
【0011】
[3]前記処理部は、前記凝縮液を精製する精製部、及び前記凝縮液を出荷用に充填する充填部の両方を有し、前記二次配管には、前記貯蔵部からの前記凝縮液の排出先を前記精製部又は前記充填部に切り替える次処理切替手段が設けられている、[2]に記載の熱分解装置。この場合、不純物の濃度に応じて、精製又は充填(出荷)を適宜に選択できる。
【0012】
[4]前記貯蔵部から前記処理部までの間には、脱水部、吸着部、又は吸収部の何れかが設けられている、[1]~[3]の何れか一つに記載の熱分解装置。この場合、貯蔵部からの凝縮液の排出を行いながら(状況によっては上流側の熱分解部を稼働させながら)不純物を除去することができる。
【0013】
[5]前記熱分解部には、残渣貯蔵部が接続されている、[1]~[4]の何れか一つに記載の熱分解装置。この場合、熱分解部で生じた残渣は、熱分解部に滞留することなく残渣貯蔵部に排出されるため、残渣由来の不純物がガス中に混入することを防止しやすい。
【0014】
[6]前記熱分解部と前記凝縮部との間には分縮器が設けられている、[1]~[5]の何れか一つに記載の熱分解装置。この場合、熱分解ガスに含まれる、回収対象物質よりも沸点の高い物質(高沸点不純物とも呼ばれる)を除去することができる。
【0015】
[7]前記貯蔵部は、並列に接続された2つ以上のタンクを有し、前記貯蔵部には、前記凝縮液を前記タンクの何れか一つに導入するためのタンク切替手段が設けられている、[1]~[6]の何れか一つに記載の熱分解装置。この場合、2つのタンクで交互に貯留及び分析を行うことができる。
【0016】
[8]前記貯蔵部は、直列に接続された2つ以上のタンクを有し、前記貯蔵部には、前記凝縮液を下流側のタンクに送液するための送液手段が設けられている、[1]~[6]の何れか一つに記載の熱分解装置。この場合、下流側のタンクを分析専用に用い、上流側のタンクを受入れ及び貯留専用に用いることができる。
【発明の効果】
【0017】
本開示によれば、熱分解装置を安定して稼働させつつ、分析の結果に示される不純物の濃度に応じて、凝縮液を適切な工程へと送ることができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1図1は、本開示の一実施形態に係る熱分解装置のフロー図である。
図2図2(a)は並列バージョンの貯蔵部を、図2(b)は直列バージョンの貯蔵部を示す図である。
図3図3(a)、図3(b)及び図3(c)は、並列バージョンの貯蔵部における運転例を説明するための図である。
図4図4は、図3(a)~図3(c)に対応した図であり、各タンクの利用例を時系列で示す図である。
図5図5(a)、図5(b)及び図5(c)は、直列バージョンの貯蔵部における運転例を説明するための図である。
図6図6は、本開示の他の実施形態に係る熱分解装置のフロー図である。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本開示の実施形態について、図面を参照しながら説明する。なお、図面の説明において同一要素には同一符号を付し、重複する説明は省略する。
【0020】
本開示の一実施形態に係る樹脂の熱分解装置1は、使用済みの樹脂成形体(例えば市場からの回収品等)、又は廃棄された樹脂成形体(例えば工場廃棄物等)を熱分解(解重合)させることによりモノマーを得る装置である。工場等由来に限らず、ポストコンシューマーリサイクルプラスチック(PCR)も熱分解装置1による処理対象にできる。熱分解装置1によって得られたモノマーは、別の装置によって再重合され、再びポリマー(又は再生モノマー)が得られる。熱分解により得られるモノマー、すなわち熱分解モノマーには、いくつかの種類の不純物が含まれ得る。熱分解装置1では、樹脂の熱分解処理を継続しつつ、不純物の濃度を測定することによって熱分解モノマーに対する適切な処理を実現可能である。熱分解装置1は、ケミカルリサイクルモノマーの工程内管理を可能とする。本実施形態の熱分解装置1と、別の再重合装置とによれば、あらゆる樹脂のケミカルリサイクルが可能となっている。本明細書において、「使用済み又は廃棄された樹脂」は、「原料」又は「原料樹脂」と呼ばれる場合がある。
【0021】
熱分解装置1が回収対象とする樹脂の種類は、特に限定されない。熱分解装置1によって、(メタ)アクリル系の樹脂が熱分解されてもよいし、スチレン系の樹脂、ポリカーボネイト、又はポリエチレンテレフタレートが熱分解されてもよい。例えば、樹脂の一つとしてのポリメタクリル酸メチル(PMMA)を熱分解した場合、モノマーであるメタクリル酸メチル(MMA)が得られる。このとき、いくつかの低沸点不純物が含まれる。例えば、不純物として、プロピオン酸メチル、イソ酪酸メチル、及びアクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチル、メタノール、等が考えられる。なお、アクリル酸メチルに関しては、原料由来の影響が大きいと考えられる。
【0022】
ある一種類の樹脂のリサイクルにおいても、不純物の種類は様々である。上記したような典型的な不純物が含まれる場合もあれば、特殊な不純物が含まれる場合もある。不純物は、低沸点不純物である場合もあり、高沸点不純物である場合もある。低沸点不純物とは、回収対象の樹脂(すなわちリサイクル対象樹脂)よりも沸点の低い物質である。高沸点不純物とは、回収対象の樹脂(すなわちリサイクル対象樹脂)よりも沸点の高い物質である。熱分解装置1では、どのような種類の不純物にも対応可能である。
【0023】
熱分解モノマーにおいて許容され得る不純物の種類や量は、樹脂の種類によって変化してもよい(適宜設定されてもよい)し、同じ樹脂でも、リサイクル後の利用目的に応じて変化してもよい(適宜設定されてもよい)。リサイクル後の樹脂の利用形態が異なる場合に、リサイクル樹脂における不純物濃度の要求レベルが異なることはしばしば起こり得る。本実施形態の熱分解装置1は、あらゆる不純物に適用可能であり、またあらゆる濃度レベル(上記要求レベル)に適用可能である。
【0024】
図1を参照して、熱分解装置1の構成について説明する。図1に示されるように、熱分解装置1は、前処理部10、熱分解部20、凝縮部30、貯蔵部40、精製部50、充填部60及び出荷部70を備えている。図1では、バルブ類、計器類、詳細な配管構成などの図示が省略されているが、熱分解装置1の各部においては、後述する各部の機能を実現するための公知の詳細構成が適用されてよい。
【0025】
前処理部10は、熱分解部20への原料樹脂の供給前に、原料樹脂の前処理を行う。前処理としては、例えば、微粉除去プロセス、金属除去プロセス、異樹脂を分別又は選別するプロセス等の従来公知の処理が挙げられる。前処理部10は、例えば、微粉除去などの前処理を行う前処理装置11と、前処理後の原料を前処理部10へと供給する第1フィーダ12とを有する。第1フィーダ12の型式は特に限定されず、公知の装置から選択可能である。
【0026】
熱分解部20は、前処理部10から供給された原料の熱分解を行う。言い換えれば、熱分解部20は原料樹脂を受入れて熱分解する。熱分解部20は、例えば、樹脂受入部21と、第2フィーダ22と、熱分解ガス化装置23とを有する。樹脂受入部21は、樹脂が投入される樹脂投入口であるとも言える。樹脂受入部21は、熱分解ガス化装置23へと原料を供給する原料供給部である。第2フィーダ22の型式は特に限定されず、公知の装置から選択可能である。前処理部10、樹脂受入部21及び第2フィーダ22の何れかに、原料の破砕等の加工を行う装置、原料に含まれる異物を検知する検知器、又は原料の投入量を制御する計量器等が設けられてもよい。
【0027】
熱分解ガス化装置23は、原料樹脂の熱分解を行ってガス状の熱分解物(以下、熱分解ガスともいう)を得る。熱分解ガス化装置23としては、例えば、押出方式の装置が採用されてもよいし、流動床方式の装置が作用されてもよい。熱分解ガス化装置23として、ニーダーが採用されてもよい。熱分解ガス化装置23としては、対象となる原料樹脂を熱分解できる公知の(任意かつ好適な)装置を適用することができる。
【0028】
熱分解ガス化装置23の好適な例としては、二軸同方向回転押出機および二軸異方向回転押出機などの二軸押出機が挙げられる。これらの押出機は、原料の投入口と、シリンダと、シリンダの内部に配置されたスクリューとを備え、投入口から投入された原料を加熱しながら所定の方向に搬送可能な装置である。
【0029】
熱分解ガス化装置23がニーダーである場合の例としては、例えば、米国特許第10301235号明細書に記載の装置が挙げられる。熱分解ガス化装置23が流動床加熱器である場合の例としては、例えば、特開2009-112902号公報に記載の装置が挙げられる。
【0030】
熱分解部20においてポリ(メタ)アクリル酸エステルの熱分解を生じさせる温度は、例えば、300℃~500℃、400℃~500℃、又は450℃~500℃の範囲から選択してもよい。
【0031】
熱分解部20には(具体的には熱分解ガス化装置23には)、例えば、残渣貯蔵部26が接続されている。残渣貯蔵部26は、熱分解ガス化装置23から排出された残渣を貯蔵する。残渣の貯蔵方法は特に制限されず、公知の方法から選択できる。残渣貯蔵部26は、残渣を処分可能な状態に加工する加工器等を備えてもよい。
【0032】
また、熱分解部20と凝縮部30との間に分縮器が設けられてもよい。分縮器は、例えば、熱分解部20で得られるガス状の熱分解物に含まれる高沸点不純物を凝縮(液化)して除去する。熱分解部20の下流側に分縮器を配置することで、これにより、精製部における精製処理の負荷をさらに軽減することができる。分縮器による高沸点不純物の除去は、例えば、熱分解物に回収対象として含まれる物質の沸点以上かつ発火点未満であるとともに、高沸点不純物の沸点未満かつ融点以上の温度にて実施される。すなわち、熱分解物が全体としてガスの状態を保った状態で高沸点不純物が除去される。
【0033】
凝縮部30は、熱分解部20から排出された熱分解ガスを液化する。凝縮部30は、冷却部を含む。凝縮部30は、熱分解部20で得られる熱分解ガスを冷却して液状化し、凝縮液を得る。
【0034】
熱分解ガスを冷却する温度は、回収対象物質の沸点より低い温度であることが好ましい。一例として、熱分解ガスが回収対象としてのメタクリル酸メチル又はアクリル酸メチルを含む場合は、メタクリル酸メチルの沸点である101℃より低い温度、又はアクリル酸メチルの沸点である80℃より低い温度で、熱分解ガスの冷却が実施される。凝縮部30の構成は特に制限されず、コンデンサー等の公知の装置を適用できる。
【0035】
貯蔵部40は、凝縮部30において凝縮された凝縮液を貯蔵する。貯蔵部40は、凝縮部30から供給される液状の熱分解物(凝縮液)を貯留すると共に後段の精製部50へと(又は充填部60へと直接に)供給する。貯蔵部40内の何れかの箇所に、脱水部が設置されてもよい。なお、貯蔵部40が、液状の熱分解物(凝縮液)の貯蔵手段に適用される公知の構成を有してもよい。
【0036】
図1及び図2(a)に示されるように、貯蔵部40は、例えば、並列に接続された2つのタンク41,42を有する。貯蔵部40は、第1タンク41及び第2タンク42と、これらのタンク41,42と凝縮部30の間に設けられた入口側配管43と、これらのタンク41,42と精製部50(次工程に係る処理部)の間に設けられた出口側配管44とを含む。第1タンク41及び第2タンク42のそれぞれは、凝縮液を貯留可能な構成であればよい。第1タンク41及び第2タンク42のそれぞれは、円柱状でもよいし、又は角柱でもよいし球状でもよい。第1タンク41及び第2タンク42は、同程度の貯留容量を有する。
【0037】
凝縮部30の排出部に接続された一次配管P1は、貯蔵部40の範囲外である。また精製部50の流入部に接続された二次配管P2も、貯蔵部40の範囲外である。一次配管P1から入口側配管43へと分岐する点から、出口側配管44が二次配管P2へと合流する点までが、貯蔵部40の範囲内である。
【0038】
図3(a)に示されるように、入口側配管43のうちの第1タンク41への接続部には、入口側第1バルブV1aが設けられ、入口側配管43のうちの第2タンク42への接続部には、入口側第2バルブV2aが設けられている。また出口側配管44のうちの第1タンク41への接続部には、出口側第1バルブV1bが設けられ、出口側配管44のうちの第2タンク42への接続部には、出口側第2バルブV2bが設けられている。各バルブは、手動弁であってもよいし、適宜のアクチュエータを備え、コントローラ(図示せず)によって制御される自動弁であってもよい。これらのバルブは、凝縮液をタンクの何れか一つに導入するためのタンク切替手段である。
【0039】
本実施形態の熱分解装置1では、貯蔵部40、又は貯蔵部40から精製部50までの二次配管P2のうちの少なくとも何れか一箇所に、凝縮液の取り出し口が設けられる。例えば、図2(a)に示されるように、第1タンク41と二次配管P2の間に位置する出口側配管44の一部に、第1取り出し口S1が設けられ、第2タンク42と二次配管P2の間に位置する出口側配管44の別の一部に、第2取り出し口S2が設けられている。この場合、第1取り出し口S1及び第2取り出し口S2は、貯蔵部40の範囲内に設けられている。第1取り出し口S1及び第2取り出し口S2は、それぞれ、例えば手動の採取用バルブを含む。
【0040】
凝縮液の取り出し口は、貯蔵部40内における凝縮液の分析のためのサンプリングを可能にする。取り出し口を通じて取り出された凝縮液は、貯蔵部40内の凝縮液の性状が平均化(均一化)されたものとなっているよう、貯蔵部40には撹拌機又は凝縮液の循環構造が設けられることが望ましい。例えば、各タンクの一箇所に、循環配管の上流端が接続され、各タンクの別の一箇所に、循環配管の下流端が接続され、循環配管上に循環ポンプが設けられることで、当該タンクにおける凝縮液が循環され、攪拌・混合される構成が採用されてもよい。
【0041】
凝縮液の取り出し口は、第1取り出し口S1及び第2取り出し口S2のような位置に限られず、第1タンク41及び第2タンク42に直接設けられてもよい。その場合、凝縮液の取り出し口は、第1タンク41及び第2タンク42の下部(特に、下部側面又は底部など)に設けられてもよい。凝縮液の取り出し口は、二次配管P2に設けられてもよい。3つ以上の取り出し口が設けられてもよい。その場合に、すべての取り出し口が出口側配管44又は二次配管P2に設けられてもよいし、すべての取り出し口がタンクに直接設けられてもよい。あるいは、一部の1つ又は複数の取り出し口が出口側配管44又は二次配管P2に設けられ、他の一部の1つ又は複数の取り出し口がタンクに直接設けられてもよい。
【0042】
第1取り出し口S1及び第2取り出し口S2において、作業者は、適宜のタイミングで(例えば各タンクに凝縮液が所定量貯留され、入口・出口のバルブが閉じられたタイミングで)採取用バルブを開け、内部の凝縮液を採取する。なお、図3以降の図では、各取り出し口の図示が省略されている。
【0043】
図1に戻り、精製部50は、複数の精製塔(第1精製塔51及び第2精製塔52)と、冷却機構53とを有する。図1は、第1精製塔51で低沸点不純物を除去し、第2精製塔52で高沸点不純物を除去する実施形態を示した図である。精製部50は、凝縮液を精製する。第1精製塔51及び第2精製塔52のそれぞれは、凝縮部30で得られる液状の熱分解物(凝縮液)の精製を行う。本明細書において「熱分解物の精製」とは、熱分解物に含まれる成分のうち、回収対象である成分が占める割合を高めることを意味する。
【0044】
第1精製塔51では、凝縮部30で得られる液状の熱分解物(凝縮液)から低沸点不純物が除去される。具体的に、熱分解物を第1精製塔51で精製することにより、低沸点不純物を主に含むガスが第1精製塔51の頂部から導出され、回収対象である成分を多く含む液が第1精製塔51の底部から第2精製塔52に送液される。第1精製塔51の頂部から導出された低沸点不純物を主に含むガスは、冷却機構53で冷却されて液化される。精製効率の観点から、冷却した液の一部を廃棄し(図1の下向き矢印)、残りを第1精製塔51に戻すことが好ましい。
【0045】
第2精製塔52では、第1精製塔51の底部から送液された液から、高沸点不純物が除去される。具体的に、第1精製塔51の底部から送液された液を第2精製塔52で精製することにより、回収対象である成分を主に含むガスが第2精製塔52の頂部から導出され、高沸点不純物を含む液が第2精製塔52の底部に溜まる。第2精製塔52の底部に溜まった液は、公知の方法により破棄することができる。例えば、第2精製塔52の底部に溜まった液を、廃液タンク57に貯蔵した後で廃棄してもよい。第2精製塔52の頂部から導出された回収対象である成分を多く含むガスは、冷却機構53で冷却されて液化され、製品として、充填部60へ送液される。
【0046】
図1に示す実施形態では、第1精製塔51で低沸点不純物を除去し、第2精製塔52で高沸点不純物を除去する形態を示したが、精製部50の構成はこの例に限定されない。第1精製塔51で高沸点不純物を除去し、第2精製塔52で低沸点不純物を除去する形態を採用することができる。その場合は、回収対象である成分を多く含む液が充填部60に貯蔵されるよう、適宜の装置構成を採用すればよい。
【0047】
精製部50(第1精製塔51及び第2精製塔52)に導入される液状の熱分解物は、水を含んでいても水を含んでいなくてもよい。精製部50に導入される液状の熱分解物が水を含む場合、精製部50では水の除去を行っても水の除去を行わなくてもよい。精製部50の構成は特に制限されず、精製塔等の公知の精製装置を適用できる。
【0048】
冷却機構53は、第1精製塔51及び第2精製塔52から導出されるガスを冷却して液状化する。ガスを冷却する温度は、第1精製塔51及び第2精製塔52から導出されるガスに応じて適宜設定すればよいが、主に含まれる成分の沸点より低い温度であることが好ましい。冷却機構53の構成は特に制限されず、コンデンサー等(例えば2重管式、シェル&チューブ式、プレート式、スパイラル式等)の公知の装置を適用できる。
精製モノマー貯蔵タンク57は、上記したように、高沸点不純物を多く含むモノマーを貯蔵及び廃棄するためタンクである。
【0049】
充填部60は、凝縮液を出荷用に充填する。充填部60は、複数の充填ドラム(第1充填ドラム61及び第2充填ドラム62)、又は少なくとも1つの精製モノマー貯蔵タンク(図示せず)を有する。充填部60は、ドラム缶などの充填容器を含んでもよく、それより大きな貯蔵(又は貯留)タンクを含んでもよい。大きな貯蔵タンクが設けられる場合、凝縮液は当該貯蔵タンクから別の小さな容器に充填される。貯蔵タンクの内部に脱水部が配置されていてもよい。充填部60の構成は特に制限されず、公知の装置を適用できる。精製モノマー貯蔵タンクは、充填ドラムより容量の小さいタンクである。この貯蔵タンクの構成は特に制限されず、公知の貯蔵に採用されるタンクを適用できる。
【0050】
出荷部70は、出荷タンク71及び/又は出荷設備72を有する。出荷タンク71に再度製品を充填してもよいし、あるいは出荷設備72により、タンカー、ローリー、コンテナー、ドラム缶などに製品を充填し、そのまま出荷することもできる。
【0051】
熱分解装置1では、精製部50、及び充填部60の両方が、貯蔵部40の次工程に係る処理部として設けられている。二次配管P2には、貯蔵部40からの凝縮液の排出先を精製部50又は充填部60に切り替える次処理切替手段(図示せず)が設けられている。次処理切替手段は、二次配管P2に設置された手動又は自動のバルブを含んでもよい。次処理切替手段により送液ルートが切り替えられ、凝縮液が、精製部50をバイパスして(精製工程を経ずに)充填部60において充填されてもよい。なお、凝縮液が、精製部50を経た後にタンク等(図示せず)に充填されてもよい。
【0052】
また熱分解装置1において、貯蔵部40の次工程に係る処理部として廃液貯留部が設けられてもよい。廃液貯留部は、液状の熱分解物を貯留する。廃液貯留部は、例えば、二次配管P2に接続される。廃液貯留部の構成は特に制限されず、タンク等の公知の装置を適用できる。
【0053】
二次配管P2には、貯蔵部40からの凝縮液の排出先を精製部50又は廃液貯留部に切り替える次処理切替手段(図示せず)が設けられてもよく、貯蔵部40からの凝縮液の排出先を充填部60又は廃液貯留部に切り替える次処理切替手段(図示せず)が設けられてもよい。二次配管P2には、貯蔵部40からの凝縮液の排出先を精製部50、充填部60又は廃液貯留部の何れかに切り替える次処理切替手段(図示せず)が設けられてもよい。
【0054】
また、貯蔵部40から、上記した精製部50、充填部60、又は廃液貯留部までの間に、脱水部、吸着部、又は吸収部の何れかが設けられてもよい。
【0055】
脱水部は、液状の凝縮液に含まれる水を除去する。脱水方法は、特に限定されないが、例えば、液液分離、凍結濃縮分離、蒸留分離、膜分離、吸着分離、吸収分離、超音波霧化分離、クロマトグラフィー等が挙げられる。脱水効率の観点から、脱水方法は、脱水機能を有する物質と、液状の凝縮液とを接触させる方法で行うことが好ましい。脱水機能としては、水を吸着又は吸収する機能が挙げられる。脱水部での処理は、凝縮液が流動している状態で行っても、静止した状態で行ってもよい。脱水効率の観点からは、脱水部での処理は凝縮液が流動している状態で行うことが好ましい。
【0056】
吸着部は、例えば、熱分解ガスを流通させる管と、前記管の内部に配置されて不純物を吸着する吸着剤と、を含む。上記構成により、熱分解部20から凝縮部30及び貯蔵部40への熱分解ガスの移送を継続しながら、不純物の除去を行うことができる。
【0057】
吸着剤の種類は特に制限されず、除去対象の不純物の種類、濃度等に応じて選択できる。吸着剤として具体的には、アルミナ、酸化カルシウム、炭酸カルシウム、酸化鉄、水酸化鉄、炭素、ゼオライト、酸化鉄および/または金属鉄と炭素とからなる複合体、酸化カルシウムと炭素とからなる複合体、酸化鉄および/または金属鉄と炭酸カルシウムおよび/または酸化カルシウムと炭素とからなる複合体などが挙げられる。吸着部における吸着剤又は、1種でも2種以上であってもよい。
【0058】
除去部を通過する熱分解ガスからの不純物の除去効率を高める観点からは、吸着剤は、熱分解ガスとの接触面積が大きいことが好ましい。かかる観点から、吸着剤は粒子状であることが好ましい。
【0059】
吸収部は、例えば、熱分解ガスを流通させる管と、前記管の内部に配置されて不純物を吸収する吸収剤と、を含む。上記構成により、熱分解部20から凝縮部30及び貯蔵部40への熱分解ガスの移送を継続しながら、不純物の除去を行うことができる。
【0060】
吸収剤として具体的には、還元剤と塩基とを含む水溶液が挙げられる。この水溶液と熱分解ガスとを接触させることで、熱分解ガス中の不純物を吸収することができる。塩基は、水酸化ナトリウム、炭酸ナトリウム及び炭酸水素ナトリウム(NaHCO)からなる群から選択することが好ましい。また還元剤は、亜硫酸ナトリウム、過酸化水素、チオ硫酸ナトリウム及び重亜硫酸(又は亜硫酸水素)ナトリウム(NaHSO)からなる群から選択することが好ましい。吸収部における吸収剤又は、1種でも2種以上であってもよい。
【0061】
熱分解装置1の貯蔵部40では、熱分解ガス化装置23を安定して稼働させつつ、凝縮液の分析により、凝縮液中の不純物の濃度が測定される。図3(a)、図3(b)及び図3(c)は、貯蔵部40における運転例を説明するための図である。図4は、図3(a)~図3(c)に対応した図であり、各タンクの利用例を時系列で示す図である。
【0062】
図3(a)に示されるように、入口側第1バルブV1aは開けられ、出口側第1バルブV1bが閉じられた状態で、第1タンク41に凝縮液が貯留される(このとき、入口側第2バルブV2aは閉じられている)。図3(b)に示されるように、第1タンク41に所定量の凝縮液が貯留されると、第1タンク41における液の受入れは停止し、入口側第1バルブV1aが閉じられる。一方、入口側第2バルブV2aが開けられ、第2タンク42に凝縮液が貯留される。図3(b)に示される状態で、第1取り出し口S1(図2(a)参照)より凝縮液が採取され、別室に設置された分析装置(例えば、ガスクロマトグラフ)等による不純物の測定が行われる。
【0063】
分析終了後、図3(c)に示されるように、出口側第1バルブV1bが開けられ、第1タンク41内の凝縮液が排出される。このときの排出先は、不純物の濃度に応じて、精製部50、充填部60、又は廃液貯留部の何れかに決定される。その決定のため、不純物の濃度に関する2段階の閾値が予め決定されていてもよい。一方、第2タンク42に所定量の凝縮液が貯留されると、第2タンク42における液の受入れは停止し、入口側第2バルブV2aが閉じられる。第2取り出し口S2(図2(a)参照)より凝縮液が採取され、別室に設置された分析装置(例えば、ガスクロマトグラフ)等による不純物の測定が行われる。第2タンク42において分析を終えた凝縮液の排出先についても、上記と同様に決定される。
【0064】
その後、両方のタンクを利用した液の受入れ・貯留、分析、及び液の排出が順次行われる。
【0065】
図4に示されるように、例えば、熱分解ガス化装置23の能力(処理速度)と、次工程に係る処理部(例えば、精製部50の第1精製塔51又は第2精製塔52等)の能力(処理速度)により、時系列における各処理(タイムスケジュール)が決まる。図4では、両者の能力が略等しい場合の例について示している。すなわち、第1タンク41(又は第2タンク42)への凝縮液の受入れ・貯留に要する時間と、その所定量の凝縮液を排出する、すなわち次工程に係る処理部での処理に要する時間が、略等しくなっている。分析に要する時間は、受入れ・貯留に要する時間、及び、次工程に係る処理部での処理に要する時間のそれぞれよりも短い。図4に示されるように、分析結果が判明してから凝縮液が排出されるので、何れか一方のタンクで排出がなされ、何れか他方のタンクで分析がなされている場合には、熱分解ガス化装置23(熱分解部20)を停止させる必要がある。或いは、何れか一方のタンクで受入れ・貯留がなされ、何れか他方のタンクで分析がなされている場合には、第1精製塔51又は第2精製塔52(精製部50)を停止させる必要がある。
【0066】
図4に示した例とは異なり、熱分解ガス化装置23の能力(処理速度)が、次工程に係る処理部(例えば、精製部50の第1精製塔51又は第2精製塔52等)の能力(処理速度)よりも大きい場合には、図示は省略されるが、次工程に係る処理部の連続運転は可能となる。その代わり、熱分解ガス化装置23は、1サイクルにつき所定回数停止する必要がある。
【0067】
また熱分解ガス化装置23の能力(処理速度)が、次工程に係る処理部(例えば、精製部50の第1精製塔51又は第2精製塔52等)の能力(処理速度)よりも小さい場合には、図示は省略されるが、熱分解ガス化装置23の連続運転は可能となる。その代わり、次工程に係る処理部は、1サイクルにつき所定回数停止する必要がある。
【0068】
続いて、変形例に係る貯蔵部について説明する。図2(b)は、直列バージョンの貯蔵部40Xを示す図である。図5(a)、図5(b)及び図5(c)は、直列バージョンの貯蔵部40Xにおける運転例を説明するための図である。
【0069】
図2(b)に示されるように、直列に接続された第1タンク41と第2タンク42の間には、これらを接続する連結配管46と、連結配管46における凝縮液の通流を許容又は遮断する手段としての中間バルブ47とが設けられている。図2(b)に示されるように、第1タンク41と第2タンク42が上下方向に並ぶように設けられる場合、中間バルブ47を開けることにより、第1タンク41内の凝縮液が第2タンク42へと送られる。この場合、中間バルブ47は送液手段である。なお、図5を参照しての説明では、第1タンク41と第2タンク42が同じ高さに設けられており、第1タンク41の下部と第2タンク42の上部とを接続する連結配管46に、送液手段としての送液ポンプ48が設けられる場合について説明する。なお、複数のタンクが直列に接続する場合においても、タンクに対する配管の接続位置や、ポンプ又はバルブの設置については特に限定されない。内部の液を自在に送ることができる限りにおいて、あらゆる公知の構成が採用されてよい。
【0070】
図5(a)に示されるように、第1タンク41において凝縮液の受入れが行われるが、第1タンク41から第2タンク42へと、送液ポンプ48によって凝縮液が送られる。第2タンク42において、凝縮液の受入・貯留がなされる。このように、第2タンク42に凝縮液を貯留可能な状態では、凝縮液が、常に第1タンク41を通過する。図5(b)に示されるように、第2タンク42に所定量の凝縮液が貯留されると、第2タンク42における液の受入れは停止し、送液ポンプ48は停止する。連結配管46にバルブが設けられる場合は、バルブも閉じられる。取り出し口S(図2(b)参照)より凝縮液が採取され、別室に設置された分析装置(例えば、ガスクロマトグラフ)等による不純物の測定が行われる。第2タンク42において分析を終えた凝縮液の排出先については、上述した並列バージョンの場合と同様に決定される。
【0071】
図5(b)に示される状態で、第1タンク41において、凝縮液の受入れ・貯留がなされる。第2タンク42における分析及び凝縮液の排出が完了していることを条件として、第1タンク41に所定量の凝縮液が貯留されると、図5(c)に示されるように、第1タンク41から第2タンク42へと送液ポンプ48によって凝縮液が移送される。これ以降、同じ運転(処理)が繰り返される。サンプリング及び分析は、常に第2タンク42において行われる。このような運転を行う場合には、第2タンク42又は二次配管P2に取り出し口Sを設けることが好ましい。
【0072】
上記実施形態の熱分解装置1によれば、貯蔵部40が2つ以上のタンクを有するので、これらのタンクを使い分けることができる。例えば、1つのタンクに凝縮液が貯留され、その後不純物に関する分析が行われ、分析の結果を待つ間に、別の1つのタンクに凝縮液を貯留できる。分析の際には、取り出し口から凝縮液を取り出すことができるので、不純物の濃度を正確に測定することができる。タンクの使い分けにより、熱分解部を停止させる停止時間は、無いか(無い場合には連続運転が可能となる)、又は短くて済む。よって、熱分解ガス化装置23を安定して稼働させつつ、分析の結果に示される不純物の濃度に応じて、凝縮液を適切な工程へと送ることができる。
【0073】
処理部は、凝縮液を精製する精製部、又は凝縮液を出荷用に充填する充填部の少なくとも何れかを有する。これにより、不純物の濃度に応じて、凝縮液を精製するか、又は凝縮液を出荷用に充填する等といった適切な工程へと送ることができる。
【0074】
処理部は、凝縮液を精製する精製部、及び凝縮液を出荷用に充填する充填部の両方を有し、二次配管には、貯蔵部からの凝縮液の排出先を精製部又は充填部に切り替える次処理切替手段が設けられている。これにより、不純物の濃度に応じて、精製又は充填(出荷)を適宜に選択できる。
【0075】
貯蔵部から処理部までの間には、脱水部、吸着部、又は吸収部の何れかが設けられている。これにより、貯蔵部からの凝縮液の排出を行いながら(状況によっては上流側の熱分解部を稼働させながら)不純物を除去することができる。
【0076】
熱分解部には、残渣貯蔵部が接続されている。これにより、熱分解部で生じた残渣は、熱分解部に滞留することなく残渣貯蔵部に排出されるため、残渣由来の不純物がガス中に混入することを防止しやすい。
【0077】
熱分解部と凝縮部との間には分縮器が設けられている。これにより、熱分解ガスに含まれる、回収対象物質よりも沸点の高い物質(高沸点不純物とも呼ばれる)を除去することができる。
【0078】
貯蔵部は、並列に接続された2つ以上のタンクを有し(図2(a)参照)、貯蔵部には、凝縮液をタンクの何れか一つに導入するためのタンク切替手段が設けられている。これにより、2つのタンクで交互に貯留及び分析を行うことができる(図3(a)~図3(c)参照)。
【0079】
貯蔵部は、直列に接続された2つ以上のタンクを有し(図2(b)参照)、貯蔵部には、凝縮液を下流側のタンクに送液するための送液手段が設けられている。これにより、下流側のタンクを分析専用に用い、上流側のタンクを受入れ及び貯留専用に用いることができる(図5(a)~図5(c)参照)。
【0080】
以上、本開示の実施形態について説明したが、本発明は上記実施形態に限られない。例えば、図6に示される熱分解装置1Aのように、貯蔵部40Aが、並列に接続された3つ以上のタンクを有してもよい。この装置においても、第1タンク41、第2タンク42、及び第3タンク45が、受入れ・貯留、分析、及び液の排出を行うことにより、熱分解ガス化装置23を安定して稼働させつつ、分析の結果に示される不純物の濃度に応じて、凝縮液を適切な工程へと送ることができる。
【0081】
貯蔵部40が、直列に接続された3つ以上のタンクを有してもよい。貯蔵部40が、並列に接続された2つ以上のタンクと、当該タンクと直列に接続された1つ以上のタンクを有してもよい。貯蔵部40の複数のタンクが直列に接続される場合、何れのタンクも同程度の貯留容量を有することが好ましいが、次の精製部又は充填部に接続されるタンクとしては、貯蔵部40等に接続される他のタンクよりも大きい貯留容量を有するものが採用されてもよい。
【符号の説明】
【0082】
1,1A…熱分解装置、20…熱分解部、30…凝縮部、40,40A,40X…貯蔵部、50…精製部、60…充填部、S,S1,S2…取り出し口。
【要約】
【課題】熱分解装置を安定して稼働させつつ、不純物の濃度に応じて凝縮液を適切な工程へと送ることができる熱分解装置を提供する。
【解決手段】熱分解装置1は、原料樹脂を熱分解する熱分解部20と、熱分解ガスを液化する凝縮部30と、凝縮液を貯蔵する貯蔵部40と、を備える。貯蔵部40は、並列に又は直列に接続された2つ以上のタンク41,42を有する。タンク41,42の排出側には次工程に係る少なくとも一種類の処理部が接続されている。貯蔵部40、又は貯蔵部40から処理部までの間の二次配管P2のうちの少なくとも何れかに、凝縮液の取り出し口Sが設けられている。
【選択図】図1
図1
図2
図3
図4
図5
図6