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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】真空ポンプ装置
(51)【国際特許分類】
   F04C 29/04 20060101AFI20240917BHJP
   F04C 25/02 20060101ALI20240917BHJP
   F04C 29/00 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
F04C29/04 C
F04C25/02 A
F04C29/00 S
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2021054585
(22)【出願日】2021-03-29
(65)【公開番号】P2022151996
(43)【公開日】2022-10-12
【審査請求日】2023-10-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000000239
【氏名又は名称】株式会社荏原製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100118500
【弁理士】
【氏名又は名称】廣澤 哲也
(74)【代理人】
【氏名又は名称】渡邉 勇
(74)【代理人】
【識別番号】100174089
【弁理士】
【氏名又は名称】郷戸 学
(74)【代理人】
【識別番号】100186749
【弁理士】
【氏名又は名称】金沢 充博
(72)【発明者】
【氏名】張 韋
(72)【発明者】
【氏名】伊東 一磨
(72)【発明者】
【氏名】木本 一記
(72)【発明者】
【氏名】荒井 秀夫
(72)【発明者】
【氏名】田中 貴大
【審査官】丹治 和幸
(56)【参考文献】
【文献】特開2009-092042(JP,A)
【文献】特開2004-293434(JP,A)
【文献】実開平07-038688(JP,U)
【文献】特開2007-262906(JP,A)
【文献】実開昭53-081401(JP,U)
【文献】国際公開第2020/255300(WO,A1)
【文献】特開2008-069666(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
F04C 23/00-29/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ロータ室を内部に有するポンプケーシングと、
前記ロータ室内に配置されたポンプロータと、
前記ポンプロータが固定された回転軸と、
前記回転軸に連結された電動機と、
前記ロータ室の端面を形成するサイドカバーと、
前記回転軸の軸方向において、前記サイドカバーの外側に位置するハウジング構造体を備え、
前記サイドカバーは、前記ロータ室の端面を形成する内側壁部と、前記回転軸の軸方向において前記内側壁部よりも外側に位置する外側壁部と、前記内側壁部と前記外側壁部との間に位置するくびれ部を有し、
前記内側壁部、前記外側壁部、および前記くびれ部は、一体成形物であり、
前記くびれ部は、前記内側壁部および前記外側壁部の断面積よりも小さい断面積を有し、かつ前記ポンプケーシング、前記内側壁部、および前記外側壁部の外周長さよりも短い外周長さを有する、真空ポンプ装置。
【請求項2】
前記真空ポンプ装置は、前記サイドカバー内に配置されたヒータをさらに備えている、請求項1に記載の真空ポンプ装置。
【請求項3】
前記ヒータは、前記サイドカバーに着脱可能に取り付けられている、請求項2に記載の真空ポンプ装置。
【請求項4】
前記サイドカバーは、孔を有するヒータハウジングを有しており、
前記孔は、前記サイドカバーの外面で開口しており、
前記ヒータは前記孔内に配置されており、
前記ヒータハウジングおよび前記ヒータは、前記くびれ部の外周側に位置している、請求項3に記載の真空ポンプ装置。
【請求項5】
前記孔は直線的に延びており、前記ヒータは棒状ヒータである、請求項4に記載の真空ポンプ装置。
【請求項6】
前記ヒータを前記ヒータハウジングに着脱可能に固定する固定機構をさらに備えている、請求項4または5に記載の真空ポンプ装置。
【請求項7】
前記ヒータハウジングは前記内側壁部に接続されている、請求項4乃至6のいずれか一項に記載の真空ポンプ装置。
【請求項8】
前記ヒータハウジングの少なくとも一部は、前記外側壁部から離れている、請求項7に記載の真空ポンプ装置。
【請求項9】
前記ハウジング構造体内に設けられた冷却流路と、
前記冷却流路に接続された流路弁と、
前記電動機、前記サイドカバー、および前記ハウジング構造体のうちのいずれかに取り付けられた温度センサと、
前記温度センサによって測定された温度がしきい値を上回ったときに前記流路弁を開き、前記温度が前記しきい値を下回ったときに前記流路弁を閉じる弁制御部をさらに備えている、請求項1乃至8のいずれか一項に記載の真空ポンプ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、真空ポンプ装置に関し、特に半導体デバイス、液晶、LED、太陽電池等の製造に使用されるプロセスガスを排気する用途に好適に使用される真空ポンプ装置に関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイス、液晶パネル、LED、太陽電池等を製造する製造プロセスにおいては、プロセスガスをプロセスチャンバ内に導入してエッチング処理やCVD処理等の各種処理を行っている。プロセスチャンバに導入されたプロセスガスは、真空ポンプ装置によって排気される。一般に、高い清浄度が必要とされるこれらの製造プロセスに使用される真空ポンプ装置は、気体の流路内にオイルを使用しない、いわゆるドライ真空ポンプ装置である。このようなドライ真空ポンプ装置の代表例として、ロータ室内に配置された一対のポンプロータを互いに反対方向に回転させて、気体を移送する容積式真空ポンプ装置がある。
【0003】
プロセスガスは、昇華温度の高い副生成物を含むことがある。真空ポンプ装置のロータ室内の温度が低いと、副生成物はロータ室内で固体化し、ポンプロータや、ポンプケーシングの内面に堆積することがある。固体化した副生成物は、ポンプロータの回転を阻害し、ポンプロータの速度低下や、最悪の場合には真空ポンプ装置の運転停止を引き起こしてしまう。そこで、副生成物の固体化を防止するために、ポンプケーシングの外面にヒータを取り付けてロータ室を加熱することが行われている。
【0004】
一方で、ポンプロータを駆動する電動機や、ポンプロータの回転軸に固定されているギヤは冷却する必要がある。そこで、上述した真空ポンプ装置は、通常、電動機およびギヤを冷却するための冷却システムを備えている。冷却システムは、例えば、電動機を収容するモータハウジング内に設けられた冷却管、およびギヤを収容するギヤハウジング内に設けられた冷却管に冷却液を流通させることで、電動機およびギヤを冷却するように構成されている。このような冷却システムにより、電動機およびギヤの過熱を防ぎ、真空ポンプ装置の安定した運転を達成することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-35290号公報
【文献】特開2012-251470号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、ヒータにより加熱されたポンプケーシングの熱は、温度の低いモータハウジングおよびギヤハウジングに伝わりやすい。そのような熱伝導の結果として、ポンプケーシング内のロータ室の温度が低下することがある。特に、ロータ室の端面は、温度の低いモータハウジングまたはギヤハウジングに近い位置にあるため、ロータ室の端面の温度は低下しやすい。結果として、プロセスガスに含まれる副生成物がロータ室内で固体化するおそれがある。対応策の1つとして、高出力のヒータを用いることが考えられるが、そのようなヒータはより多くの電力を必要とし、真空ポンプ装置の省エネ運転を達成することができない。
【0007】
そこで、本発明は、熱伝導によるポンプケーシングの温度低下を防止し、ロータ室の内部を高い温度に維持することができる真空ポンプ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0008】
一態様では、ロータ室を内部に有するポンプケーシングと、前記ロータ室内に配置されたポンプロータと、前記ポンプロータが固定された回転軸と、前記回転軸に連結された電動機と、前記ロータ室の端面を形成するサイドカバーと、前記回転軸の軸方向において、前記サイドカバーの外側に位置するハウジング構造体を備え、前記サイドカバーは、前記ロータ室の端面を形成する内側壁部と、前記回転軸の軸方向において前記内側壁部よりも外側に位置する外側壁部と、前記内側壁部と前記外側壁部との間に位置するくびれ部を有し、前記内側壁部、前記外側壁部、および前記くびれ部は、一体成形物であり、前記くびれ部は、前記内側壁部および前記外側壁部の断面積よりも小さい断面積を有する、真空ポンプ装置が提供される。
【0009】
一態様では、前記真空ポンプ装置は、前記サイドカバー内に配置されたヒータをさらに備えている。
一態様では、前記ヒータは、前記サイドカバーに着脱可能に取り付けられている。
一態様では、前記サイドカバーは、孔を有するヒータハウジングを有しており、前記孔は、前記サイドカバーの外面で開口しており、前記ヒータは前記孔内に配置されている。
一態様では、前記孔は直線的に延びており、前記ヒータは棒状ヒータである。
一態様では、前記真空ポンプ装置は、前記ヒータを前記ヒータハウジングに着脱可能に固定する固定機構をさらに備えている。
一態様では、前記ヒータハウジングは前記内側壁部に接続されている。
一態様では、前記ヒータハウジングの少なくとも一部は、前記外側壁部から離れている。
一態様では、前記真空ポンプ装置は、前記ハウジング構造体内に設けられた冷却流路と、前記冷却流路に接続された流路弁と、前記電動機、前記サイドカバー、および前記ハウジング構造体のうちのいずれかに取り付けられた温度センサと、前記温度センサによって測定された温度がしきい値を上回ったときに前記流路弁を開き、前記温度が前記しきい値を下回ったときに前記流路弁を閉じる弁制御部をさらに備えている。
【発明の効果】
【0010】
断面積の小さいくびれ部を備えたサイドカバーは、ポンプケーシングからハウジング構造体への熱伝導を低下させることができる。したがって、ロータ室の内部を高い温度に維持することができる。また、軸受への伝熱を減らして、軸受が耐熱温度を超えないようにすることができる。
また、ヒータは、サイドカバー自体を加熱することができるので、サイドカバーによって端面が形成されるロータ室内を高温にすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0011】
図1】真空ポンプ装置の一実施形態を示す断面図である。
図2】サイドカバーの側面図である。
図3図2の矢印Aで示す方向から見た図である。
図4図2に示すサイドカバーの斜視図である。
図5】真空ポンプ装置の他の実施形態を示す断面図である。
図6図5に示すサイドカバーの側面図である。
図7図6の矢印Bで示す方向から見た図である。
図8図6に示すサイドカバーの斜視図である。
図9】真空ポンプ装置のさらに他の実施形態を示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0012】
以下、本発明の実施形態について図面を参照して説明する。
図1は、真空ポンプ装置の一実施形態を示す断面図である。以下に説明する実施形態の真空ポンプ装置は、容積式真空ポンプ装置である。特に、図1に示す真空ポンプ装置は、気体の流路内にオイルを使用しない、いわゆるドライ真空ポンプ装置である。ドライ真空ポンプ装置は、気化したオイルが上流側に流れることがないので、高い清浄度が必要とされる半導体デバイスの製造装置に好適に使用することができる。
【0013】
図1に示すように、真空ポンプ装置は、ロータ室1を内部に有するポンプケーシング2と、ロータ室1内に配置されたポンプロータ5と、ポンプロータ5が固定された回転軸7と、回転軸7に連結された電動機8を備えている。ポンプロータ5と回転軸7は、一体構造物であってもよい。図1では1つのポンプロータ5および1つの回転軸7のみが描かれているが、一対のポンプロータ5がロータ室1内に配置されており、一対の回転軸7にそれぞれ固定されている。電動機8は一対の回転軸7のうちの一方に連結されている。一実施形態では、電動機8は、一対の電動機8が、一対の回転軸7にそれぞれ連結されていてもよい。
【0014】
本実施形態のポンプロータ5は、ルーツ型ポンプロータであるが、ポンプロータ5のタイプは本実施形態に限定されない。一実施形態では、ポンプロータ5は、スクリュー型ポンプロータであってもよい。さらに、本実施形態のポンプロータ5は、単段ポンプロータであるが、一実施形態では、ポンプロータ5は、多段ポンプロータであってもよい。
【0015】
真空ポンプ装置は、回転軸7の軸方向において、ポンプケーシング2の外側に位置するサイドカバー10A,10Bをさらに備えている。サイドカバー10A,10Bは、ポンプケーシング2の両側に設けられており、ポンプケーシング2に接続されている。本実施形態では、サイドカバー10A,10Bは、図示しないねじによりポンプケーシング2の端面に固定される。
【0016】
ロータ室1は、ポンプケーシング2の内面と、サイドカバー10A,10Bの内面により形成されている。ポンプケーシング2は吸気口2aと排気口2bを有している。吸気口2aは、移送すべき気体で満たされたチャンバ(図示せず)に連結されている。一例では、吸気口2aは、半導体デバイスの製造装置のプロセスチャンバに連結され、真空ポンプ装置は、プロセスチャンバに導入されたプロセスガスを排気する用途に使用される。
【0017】
真空ポンプ装置は、回転軸7の軸方向において、サイドカバー10A,10Bの外側に位置するハウジング構造体としてのモータハウジング14およびギヤハウジング16をさらに備えている。サイドカバー10Aは、ポンプケーシング2とモータハウジング14との間に位置し、サイドカバー10Bは、ポンプケーシング2とギヤハウジング16との間に位置している。
【0018】
回転軸7は、サイドカバー10Aに保持された軸受17と、サイドカバー10Bに保持された軸受18により回転可能に支持されている。モータハウジング14は、その内部に電動機8のモータロータ8Aおよびモータステータ8Bを収容している。モータハウジング14およびギヤハウジング16は、ハウジング構造体の例であって、ハウジング構造体は本実施形態に限定されない。例えば、ハウジング構造体は、軸受を保持する軸受ハウジングであってもよい。
【0019】
ギヤハウジング16の内部には、互いに噛み合う一対のギヤ20が配置されている。なお、図1では1つのギヤ20のみが描かれている。電動機8は、図示しないモータドライバによって回転し、電動機8が連結された一方の回転軸7は、ギヤ20を介して、電動機8が連結されていない他方の回転軸7を反対方向に回転させる。
【0020】
一実施形態では、一対の回転軸7にそれぞれ連結された一対の電動機8が設けられてもよい。一対の電動機8は、図示しないモータドライバによって同期して反対方向に回転し、一対の回転軸7および一対のポンプロータ5を同期して反対方向に回転させる。この場合のギヤ20の役割としては、突発的な外的要因によるポンプロータ5の同期回転の脱調を防ぐことにある。
【0021】
電動機8によってポンプロータ5が回転すると、気体は吸気口2aからポンプケーシング2内に吸い込まれる。気体は、回転するポンプロータ5によって吸気口2aから排気口2bに移送される。
【0022】
モータハウジング14内には、冷却流路21が設けられている。同様に、ギヤハウジング16内には冷却流路22が設けられている。冷却流路21はモータハウジング14の周壁の全体を延び、冷却流路22はギヤハウジング16の周壁の全体を延びている。冷却流路21および冷却流路22は、図示しない冷却液供給源に連結されている。冷却液は、冷却液供給源から冷却流路21および冷却流路22に供給される。冷却流路21を流れる冷却液は、モータハウジング14を冷却し、これによりモータハウジング14内に配置された電動機8および軸受17を冷却することができる。冷却流路22を流れる冷却液は、ギヤハウジング16を冷却し、これによりギヤハウジング16内に配置されたギヤ20および軸受18を冷却することができる。
【0023】
真空ポンプ装置が取り扱うプロセスガスには、温度の低下に伴って固体化する副生成物を含むものがある。真空ポンプ装置の運転中は、プロセスガスはポンプロータ5により吸気口2aから排気口2bに移送される過程で圧縮される。したがって、プロセスガスの圧縮熱によりロータ室1の内部は高温となる。サイドカバー10Aは、ポンプケーシング2からモータハウジング14への伝熱を低減させ、サイドカバー10Bは、ポンプケーシング2からギヤハウジング16への伝熱を低減させるように構成されている。したがって、サイドカバー10A,10Bは、ロータ室1内を高温に維持することができる。特に、冷却流路21,22を流れる冷却液でモータハウジング14およびギヤハウジング16を冷却しつつ、サイドカバー10A,10Bはロータ室1内を高温に維持することができる。
【0024】
本実施形態では、ロータ室1を形成するポンプケーシング2およびサイドカバー10A,10Bは鋳鉄から構成されている。一実施形態では、サイドカバー10A,10Bは鋳鉄よりも低い熱伝導率を有する材料から構成されてもよい。
【0025】
サイドカバー10A,10Bは、基本的に同じ構成を有しているので、以下、サイドカバー10Aについて説明する。図2は、サイドカバー10Aの側面図であり、図3図2の矢印Aで示す方向から見た図であり、図4は、図2に示すサイドカバー10Aの斜視図である。サイドカバー10Aは、回転軸7が貫通する通孔27を有している。通孔27はロータ室1に連通している。
【0026】
サイドカバー10Aは、ロータ室1の端面31aを形成する内側壁部31と、回転軸7の軸方向において内側壁部31よりも外側に位置する外側壁部32と、内側壁部31と外側壁部32との間に位置するくびれ部33を有している。内側壁部31は、ポンプケーシング2(図1参照)に連結され、外側壁部32は、モータハウジング14に連結される。外側壁部32は、軸受17が収容される窪み部32aを有している。外側壁部32とモータハウジング14との間に断熱材が配置されてもよい。
【0027】
内側壁部31、外側壁部32、およびくびれ部33は、一体成形物である。本実施形態では、内側壁部31、外側壁部32、およびくびれ部33は、一体的に成形された鋳物である。このようにサイドカバー10Aは一体成形物を含むので、複数の部材を別々に作成し、これらを組み立てる必要がない。結果として製造コストが低減できる。
【0028】
くびれ部33は、内側壁部31および外側壁部32の外周長さよりも短い外周長さを有している。すなわち、くびれ部33は、内側壁部31および外側壁部32の断面積よりも小さい断面積を有する。内側壁部31、外側壁部32、およびくびれ部33は、同じ材料から構成されているが、くびれ部33の断面積は内側壁部31および外側壁部32の断面積よりも小さいので、内側壁部31からくびれ部33を通って外側壁部32へ熱が伝わりにくい。説明を省略するが、サイドカバー10Bも基本的に同じ構成を有している。このようなくびれ部33を有するサイドカバー10A,10Bは、高い断熱性能を有するので、ロータ室1内を高温に維持することができる。さらに、冷却流路21および冷却流路22を流れる冷却液によるポンプケーシング2の冷却を防止することができる。
【0029】
図5は、真空ポンプ装置の他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図1乃至図4を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図5に示す真空ポンプ装置は、サイドカバー10A,10B内にそれぞれ配置されたヒータ40A,40Bをさらに備えている。ヒータ40A,40Bは、サイドカバー10A,10Bに着脱可能に取り付けられている。
【0030】
サイドカバー10A,10Bは基本的に同じ構成を有し、ヒータ40A,40Bは基本的に同じ構成を有しているので、以下、サイドカバー10Aおよびヒータ40Aについて説明する。図6は、図5に示すサイドカバー10Aの側面図であり、図7図6の矢印Bで示す方向から見た図であり、図8は、図6に示すサイドカバー10Aの斜視図である。サイドカバー10Aは、孔35aをそれぞれ有する2つのヒータハウジング35を有している。2つのヒータハウジング35、内側壁部31、外側壁部32、およびくびれ部33は、一体成形物である。各孔35aは、サイドカバー10Aの外面(より具体的には、ヒータハウジング35の外面)で開口しており、ヒータ40Aは孔35a内に配置されている。本実施形態では、2つのヒータ40Aが、回転軸7(図5参照)を挟むように配置されている。一実施形態では、1つのヒータ40Aのみが設けられてもよく、あるいは3つ以上のヒータ40Aが設けられてもよい。
【0031】
孔35aは直線的に延びており、ヒータ40Aも直線的に延びる棒状ヒータである。ヒータ40Aは、孔35a内に挿入された状態で、固定機構としてのねじ45によりサイドカバー10Aに固定される。より具体的には、ヒータハウジング35は孔35aに連通するねじ穴46を有しており、ねじ45をねじ穴46にねじ込むと、ねじ45の先端は孔35a内のヒータ40Aをヒータハウジング35に押し付ける。これにより、ヒータ40Aの位置が固定される。ねじ45を緩めると、ヒータ40Aを孔35aから取り出すことができる。孔35aはサイドカバー10Aの外面で開口しているので、真空ポンプ装置を分解することなく、ヒータ40Aをサイドカバー10Aから取り出すことができる。したがって、ヒータ40Aが故障した場合は、ヒータ40Aを新たなヒータに簡単に交換することができる。
【0032】
ヒータ40Aから発せられた熱は、ヒータハウジング35および内側壁部31を通じてロータ室1(図5参照)に伝達され、ロータ室1を加熱することができる。特に、ヒータハウジング35と内側壁部31は一体的に構成されているので、ヒータ40Aから内側壁部31への熱伝導効率が向上する。
【0033】
図8に示すように、ヒータハウジング35の少なくとも一部は、外側壁部32から離れている。図示しないが、ヒータハウジング35の全部は、外側壁部32から離れてもよい。このような構成により、ヒータ40Aから発せられた熱は外側壁部32に伝わりにくい。したがって、ヒータ40Aは、ロータ室1を加熱しつつ、外側壁部32に接続されたハウジング構造体であるモータハウジング14(図5参照)の加熱を防止することができる。
【0034】
図5に示すように、サイドカバー10B内にもヒータ40Bが配置されている。図6乃至図8を参照した説明は、サイドカバー10Bおよびその内部に配置されたヒータ40Bにも適用できるので、それらの重複する説明を省略する。
【0035】
図9は、真空ポンプ装置の他の実施形態を示す断面図である。特に説明しない本実施形態の構成は、図1乃至図4を参照して説明した実施形態と同じであるので、その重複する説明を省略する。図9に示す真空ポンプ装置は、ハウジング構造体であるモータハウジング14およびギヤハウジング16内にそれぞれ設けられた冷却流路21,22と、冷却流路に接続された流路弁51,52と、電動機8に取り付けられた温度センサ55と、サイドカバー10Bに取り付けられた温度センサ56と、温度センサ55,56によって測定された温度に基づいて流路弁51,52の動作を制御する弁制御部60をさらに備えている。本実施形態では、温度センサ55は、電動機8のモータステータ8Bに取り付けられており、温度センサ56は、ギヤハウジング16に接続された外側壁部32(図2乃至図4参照)に取り付けられている。弁制御部60は、少なくとも1つのコンピュータから構成されている。
【0036】
温度センサ55,56および流路弁51,52は、弁制御部60に電気的に接続されている。電動機8に取り付けられた温度センサ55は、電動機8の温度を測定し、その測定値を弁制御部60に送信する。弁制御部60は、電動機8の温度が所定のしきい値を上回ったときに流路弁51を開き、電動機8の温度がしきい値を下回ったときに流路弁51を閉じるように構成されている。同様に、サイドカバー10Bに取り付けられた温度センサ56は、サイドカバー10Bの温度を測定し、その測定値を弁制御部60に送信する。弁制御部60は、サイドカバー10Bの温度が所定のしきい値を上回ったときに流路弁52を開き、サイドカバー10Bの温度がしきい値を下回ったときに流路弁52を閉じるように構成されている。
【0037】
本実施形態によれば、電動機8の温度がしきい値を超えたときのみ、冷却液がモータハウジング14内の冷却流路21を流れるので、冷却液によるサイドカバー10Aの過度な冷却を防止することができる。同様に、サイドカバー10Bの温度がしきい値を超えたときのみ、冷却液がギヤハウジング16内の冷却流路22を流れるので、冷却液によるサイドカバー10Bの過度な冷却を防止することができる。
【0038】
一実施形態では、温度センサ55は、電動機8に代えて、モータハウジング14またはサイドカバー10Aの外側壁部32(図2乃至図4参照)に取り付けられてもよい。この場合も、弁制御部60は、温度センサ55によって測定された温度が所定のしきい値を上回ったときに流路弁51を開き、温度センサ55によって測定された温度がしきい値を下回ったときに流路弁51を閉じるように構成される。一実施形態では、温度センサ56は、サイドカバー10Bに代えて、ギヤハウジング16に取り付けられてもよい。弁制御部60は、温度センサ56によって測定された温度が所定のしきい値を上回ったときに流路弁52を開き、温度センサ56によって測定された温度がしきい値を下回ったときに流路弁52を閉じるように構成される。これらの実施形態でも、冷却液によるサイドカバー10A,10Bの過度な冷却を防止することができる。
【0039】
図9に示す実施形態は、図5乃至図8を参照して説明した実施形態と組み合わせてもよい。
【0040】
上述した実施形態は、本発明が属する技術分野における通常の知識を有する者が本発明を実施できることを目的として記載されたものである。上記実施形態の種々の変形例は、当業者であれば当然になしうることであり、本発明の技術的思想は他の実施形態にも適用しうる。したがって、本発明は、記載された実施形態に限定されることはなく、特許請求の範囲によって定義される技術的思想に従った最も広い範囲に解釈されるものである。
【符号の説明】
【0041】
1 ロータ室
2 ポンプケーシング
2a 吸気口
2b 排気口
5 ポンプロータ
7 回転軸
8 電動機
10A,10B サイドカバー
14 モータハウジング
16 ギヤハウジング
17,18 軸受
20 ギヤ
21,22 冷却流路
31 内側壁部
32 外側壁部
33 くびれ部
35 ヒータハウジング
35a 孔
40A,40B ヒータ
45 ねじ
46 ねじ穴
51,52 流路弁
55,56 温度センサ
60 弁制御部
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9