(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】第1及び第2の量の水酸化物を添加するステップを含む、シトラール及びアセトンを含む水性混合物中でプソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを製造する方法
(51)【国際特許分類】
C07C 45/74 20060101AFI20240917BHJP
C07C 49/24 20060101ALI20240917BHJP
C07C 49/203 20060101ALI20240917BHJP
C07C 45/72 20060101ALI20240917BHJP
C07B 61/00 20060101ALN20240917BHJP
【FI】
C07C45/74
C07C49/24
C07C49/203 E
C07C45/72
C07B61/00 300
(21)【出願番号】P 2021525579
(86)(22)【出願日】2019-11-13
(86)【国際出願番号】 EP2019081100
(87)【国際公開番号】W WO2020099452
(87)【国際公開日】2020-05-22
【審査請求日】2022-11-11
(32)【優先日】2018-11-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】110002572
【氏名又は名称】弁理士法人平木国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ニウワウト,ヨシアス ヤコブス
(72)【発明者】
【氏名】ブルンナー,ベルンハルト
(72)【発明者】
【氏名】ライニング,スヴェン
(72)【発明者】
【氏名】ストーク,ティモン
(72)【発明者】
【氏名】カイベル,ビョルン
(72)【発明者】
【氏名】ジップ,アレクサンダー
(72)【発明者】
【氏名】バイ,オリヴァー
【審査官】三須 大樹
(56)【参考文献】
【文献】特開昭57-179132(JP,A)
【文献】米国特許第03840601(US,A)
【文献】特開平01-016739(JP,A)
【文献】特表2006-505597(JP,A)
【文献】特表2007-516250(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C07C
C07B
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを製造する方法であって、
(P1)第1の量の水、アセトン、シトラール及び水酸化物を合わせることによって、第1の濃度のアセトン、シトラール及び水酸化物を含む第1の水性混合物を調製するステップ
であって、第1の水性混合物中の水酸化物の第1の濃度が、第1の水性混合物中に存在する水及びアセトンの合計質量に対して0.0015~0.02質量%の範囲である、ステップと、
(P2)第1の水性混合物の成分を、
プソイドイオノン、ヒドロキシプソイドイオノン及び4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンが形成され、かつ
アセトン、シトラール及び水酸化物が消費される
ようにある反応時間反応させることによって、第2の水性混合物を生成するステップであり、第2の水性混合物が、
- 第1の水性混合物中のその濃度より高い濃度の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン、
- 第1の濃度より低い第2の濃度の、アセトン、シトラール及び水酸化物、並びに
- プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノン
を含む、ステップと、
(P3)追加の量のプソイドイオノンが第3の水性混合物中で形成されるように、第2の水性混合物に第2の量の水酸化物を添加することによって、第3の水性混合物を生成するステップ
であって、ステップ(P2)において第1の水性混合物の成分の反応時間の3分以上後に、ステップ(P3)において第2の量の水酸化物が第2の水性混合物に添加され、且つ第2の水性混合物に添加される第2の量の水酸化物が、第1の水性混合物の第1の量の水酸化物の5質量%~50質量%の範囲である、ステップと
を含み、
アセトン、シトラール及び/又は水酸化物の濃度が、第1の水性混合物が単一の液相を形成し、且つ第2の水性混合物が単一の液相を形成するように選択又は調節される、
方法。
【請求項2】
ステップ(P3)におい
て、
- 第3の水性混合物中に存在する溶解した水酸化物の濃度が、反応時間の最後に第2の水性混合物中に存在する溶解した水酸化物の濃度より高い、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
- 第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンのモル濃度が70ミリモル/l以上の値に到達した場合、
及び/又は
- 第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度が最大値に到達する前に、又は第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度が最大値に到達した場合、
及び/又は
- 第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度がその最大値の≧80%の値を有する場合、
及び/又は
- 第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン:アセトンのモル比が1:45~1:8の範囲の値に到達した場合、
ステップ(P3)において第2の量の水酸化物が第2の水性混合物に添加される、請求項1又は2に記載の方法。
【請求項4】
第1の水性混合物が調製された後、3分以上に、ステップ(P3)において第2の量の水酸化物が第2の水性混合物に添加される、請求項1~3のいずれか一項に記載の方法。
【請求項5】
第1の水性混合物が調製された後、25分未満に、ステップ(P3)において第2の量の水酸化物が第2の水性混合物に添加される、請求項4に記載の方法。
【請求項6】
ステップ(P2)において第1の水性混合物の成分の反応時間の25分未満後に、ステップ(P3)において第2の量の水酸化物が第2の水性混合物に添加される、請求項
1から5のいずれか一項に記載の方法。
【請求項7】
第1の水性混合物、及び/又は第2の水性混合物、及び/又は第3の水性混合物を、機械的に混合する又はかき混ぜる、請求項1から
6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
- 方法の少なくとも一部が連続的に行われる、及び/又は
- 第2の量の水酸化物が、第2の水性混合物に連続的に添加される、
請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
方法の少なくとも一部が連続的に管型反応器中で行われる、請求項
8に記載の方法。
【請求項10】
方法の少なくとも一部が連続的に、栓流挙動に可能な限り近い流動レジメンを示す管型反応器中で行われる、請求項
8又は
9に記載の方法。
【請求項11】
方法の少なくとも一部が不連続的に、バッチ様式又は半バッチ様式で行われる、請求項1から
7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項12】
第2の量の水酸化物が、一括で又は幾つかに分割して、第2の水性混合物に添加される、請求項1から
11のいずれか一項に記載の方法。
【請求項13】
一連のステップ(P2)及び(P3)において反応時間t[(P2)+(P3)]に形成されるプソイドイオノンの総量が、孤立したステップ(P2)において等しい反応時間t[(P2)+(P3)]に形成されるプソイドイオノンの総量より多い、請求項1から
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
方法時間全体が、≧9から≦30分の範囲である、請求項1から
13のいずれか一項に記載の方法。
【請求項15】
- 第1の水性混合物中に存在する第1の量の水酸化物の第1の水性混合物中に存在する第1の量のシトラールに対するモル比が、1.0~30.0ミリモル/モルの範囲である、
及び/又は
- 第1の水性混合物中に存在するアセトンの総量の第1の水性混合物中に存在するシトラールの総量に対するモル比が、24.0:1~65.5:1の範囲である、
請求項1から
14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項16】
第1の水性混合物を調製するために使用される第1の量の水酸化物、及び/又は第2の水性混合物に添加される第2の量の水酸化物が、1種以上の金属水酸化物によって供給される、請求項1から
15のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
第1の水性混合物を調製するために使用される第1の量の水酸化物、及び/又は第2の水性混合物に添加される第2の量の水酸化物が、1種以上の金属水酸化物によって供給され、
1種以上の金属水酸化物が、
- LiOH、NaOH及びKOHを含むアルカリ金属水酸化物、並びに
- Mg(OH)
2、Ca(OH)
2、Sr(OH)
2及びBa(OH)
2を含むアルカリ土類金属水酸化物
からなる群から選択され、
及び/又は
前記1種以上の金属水酸化物が、液相に溶解した1種以上の金属水酸化物を含み、
前記1種以上の金属水酸化物は1種以上の水性金属水酸化物を含む、請求項
16に記載の方法。
【請求項18】
前記1種以上の金属水酸化物は、1種以上の金属水酸化物の水溶液の形態で供給され、
水溶液は、水溶液中に存在する水及び金属水酸化物の合計質量に対して0.3~1.5質量%の範囲の水酸化物イオンの濃度を有する、請求項
16又は
17に記載の方法。
【請求項19】
第1の水性混合物、及び/又は第2の水性混合物、及び/又は第3の水性混合物が、それらの沸点未満で液相を形成する、請求項1から
18のいずれか一項に記載の方法。
【請求項20】
- 第1の水性混合物中及び/又は第2の水性混合物中及び/又は第3の水性混合物中の反応温度は、60~110℃の範囲である、
及び/又は
- 方法の少なくとも一部が150~1000kPaの範囲の圧力で行われる、
及び/又は
- 方法の少なくとも一部が断熱条件下で行われる、
請求項
19に記載の方法。
【請求項21】
アセトン、シトラール及び/又は水酸化物の濃度
が、第3の水性混合物が単一の液相を形成するように選択又は調節される、請求項1から
20のいずれか一項に記載の方法。
【請求項22】
第3の水性混合物中に存在する水酸化物の総量が液相に溶解する、請求項1から
21のいずれか一項に記載の方法。
【請求項23】
第1の水性混合物が、第1の水性混合物中に存在する水及びアセトンの合計質量に対して3~9質量%の範囲の濃度の水を含む、請求項1から
22のいずれか一項に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを製造する方法であって、(i)第1の濃度のアセトン、シトラール及び水酸化物を含む第1の水性混合物を調製するステップと、(ii)第1の水性混合物の成分をある反応時間反応させることによって第2の水性混合物を生成するステップと、(iii)追加の量のプソイドイオノンが第3の水性混合物中で形成されるように、第2の水性混合物に第2の量の水酸化物を添加することによって、第3の水性混合物を生成するステップとを含む方法に関する。本発明は、さらに、プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを製造するための装置、並びにプソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンの製造におけるそれぞれの方法及び前記装置の使用に関する。
【背景技術】
【0002】
プソイドイオノンは、ビタミンA及びE、並びにカロチノイド、例えば天然及び天然相当製品、例えば、香料、香味料、栄養食品又は栄養補助食品に使用するための工業的合成で鍵となる中間体である。
【0003】
文書、蘭国特許第6704541号は、アルカリ縮合剤の存在下でケトンをアルデヒドと反応させることによって液体の可溶性縮合生成物を調製する方法を記載している。
【0004】
文書、欧州特許出願公開第0062291A1号(米国特許第4,431,844A号に対応)は、ポリ不飽和ケトンを製造する、改善された方法を開示している。
【0005】
文書、国際公開第2004/041764 A1号は、プソイドイオノン及びイオノンを製造するための連続法を記載している。
【0006】
文書、国際公開第2005/056508 A1号は、テトラヒドロゲラニルアセトンの製造の方法に関する。
【0007】
文書、米国特許第3,840,601号は、メチルイオノンの調製のための方法に取り組んでいる。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
既存の先行技術に照らすと、公知の方法と比較した場合、プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノン、特にプソイドイオノンをより高い効率で、特により高い収率でプソイドイオノンを製造する方法に対する必要性がなお存在する。さらに、より高い効率でそのような方法を容易にすることができる、改善された装置に対する必要性がなお存在する。
【0009】
したがって、プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノン、特にプソイドイオノンを製造する方法であって、工業的工程として、特に連続法として実行することができ、より高い効率の、特にプソイドイオノンの収率のより高い方法を提供することが本発明の主な目的である。
【0010】
プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを、特に連続作業で製造する装置であって、より高い効率の、特にプソイドイオノンの収率のより高い装置を提供することが本発明の別の目的である。
【課題を解決するための手段】
【0011】
今ここで、第1の視点の下で、プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノン、好ましくはプソイドイオノンを製造する方法であって、
(P1)第1の量の水、アセトン、シトラール及び水酸化物を合わせることによって、第1の濃度のアセトン、シトラール及び水酸化物を含む第1の水性混合物(すなわち水を含む混合物)を調製するステップと、
(P2)第1の水性混合物の成分を、
プソイドイオノン、ヒドロキシプソイドイオノン及び4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンが形成され、かつ
アセトン、シトラール及び水酸化物が消費される
ようにある反応時間反応させることによって、第2の水性混合物(すなわち水を含む混合物)を生成するステップであり、第2の水性混合物が、
- 第1の水性混合物中のその濃度より高い濃度の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン、
- 第1の濃度より低い第2の濃度の、アセトン、シトラール及び水酸化物、並びに
- プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノン
を含む、ステップと、
(P3)追加の量のプソイドイオノンが第3の水性混合物中で形成されるように、第2の水性混合物に第2の量の水酸化物を添加することによって、第3の水性混合物(すなわち水を含む混合物)を生成するステップとを含む方法によって本発明の主な目的及び他の目的を遂行することができることが見いだされた。
【0012】
本発明、並びにそのパラメーター、性質及び要素の好ましい変形形態及び好ましい組み合わせは、添付された特許請求の範囲において規定される。本発明の好ましい態様、詳細、変更及び利点は、また以下の記載及び以下に述べる実施例において規定され、説明される。
【0013】
今ここで、本発明によるプソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを製造する方法は、非常に効率的であり、バッチ式、半バッチ式、特に連続的性能に極めて適していることが見いだされた。驚いたことに、本発明の方法は、当業界で公知の類似の方法と比較した場合、プソイドイオノンのより高い収率をもたらすことが見いだされた。また、本発明の方法は、プソイドイオノンの生成又は製造において、ヒドロキシプソイドイオノンに対してより高い選択率を示すことが見いだされた。プソイドイオノンは、ヒドロキシプソイドイオノンより工業的合成にとってはるかに用途の広い中間生成物であるので、前記のより高い選択率は望ましい。
【0014】
本発明の文脈において、当分野の通常の意味による「プソイドイオノン」は、4種の異性体、(3Z,5Z)-6,10-ジメチル-3,5,9-ウンデカトリエン-2-オン、(3E,5Z)-6,10-ジメチル-3,5,9-ウンデカトリエン-2-オン、(3Z,5E)-6,10-ジメチル-3,5,9-ウンデカトリエン-2-オン及び(3E,5E)-6,10-ジメチル-3,5,9-ウンデカトリエン-2-オンの混合物を意味する。本発明による方法において、前記異性体の4種すべての混合物が通常形成される。前記異性体の4種すべての混合物はしばしば、CAS(登録商標)RN 141-10-6を有する6,10-ジメチル-3,5,9-ウンデカトリエン-2-オンとも称される(この本文に含まれる)。プソイドイオノンの異性体の1つ(すなわち(3E,5E)-6,10-ジメチル-3,5,9-ウンデカトリエン-2-オン)を例として下式Iに示す:
【0015】
【0016】
本発明の文脈において、「ヒドロキシプソイドイオノン」は、それらの異性体を含む、化合物4-ヒドロキシ-6,10-ジメチル-ウンデカ-5,9-ジエン-2-オン及び4-ヒドロキシ-6,10-ジメチル-ウンデカ-6,9-ジエン-2-オンを意味する。本発明による方法において、4種の化合物の混合物、すなわち2種の異性体(5E)-4-ヒドロキシ-6,10-ジメチル-ウンデカ-5,9-ジエン-2-オン及び(5Z)-4-ヒドロキシ-6,10-ジメチル-ウンデカ-5,9-ジエン-2-オン、並びに2種の異性体(6E)-4-ヒドロキシ-6,10-ジメチル-ウンデカ-6,9-ジエン-2-オン及び(6Z)-4-ヒドロキシ-6,10-ジメチル-ウンデカ-6,9-ジエン-2-オンが通常形成される。前記4種の化合物(恐らく(5E)-4-ヒドロキシ-6,10-ジメチル-ウンデカ-5,9-ジエン-2-オン及び/又は(5Z)-4-ヒドロキシ-6,10-ジメチル-ウンデカ-5,9-ジエン-2-オン)の少なくとも一部は、続いて本発明による方法の条件下で少なくとも部分的に再び分解し得る。前記4種の化合物の1つ(すなわち(5E)-4-ヒドロキシ-6,10-ジメチル-ウンデカ-5,9-ジエン-2-オン)を例として下式IIに示す:
【0017】
【0018】
本発明の文脈において、当分野の通常の意味による「シトラール」は、3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール(CAS(登録商標)RN 5392-40-5)としても知られ、シス-トランス異性体、(E)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール(CAS(登録商標)RN 141-27-5)としても知られるゲラニアール、及びまた(Z)-3,7-ジメチルオクタ-2,6-ジエナール(CAS(登録商標)RN 106-26-3)としても知られるネラールの混合物を意味する。2種の別々の異性体、ゲラニアール及びネラールもまたシトラールのように第1の水性混合物中の開始化合物として使用することができるが、それらの使用は主として商業的理由で好ましくない。さらに、独自の実験で、別々の異性体ネラール又はゲラニアール、それぞれの、プソイドイオノン(又はプソイドイオノン異性体)への反応は、シトラールへの別々の異性体の異性化より速く進むことが見いだされた。したがって、本発明の方法で別々の異性体(すなわちネラール又はゲラニアール)を使用することによって、ある異性体に富むプソイドイオノンを生成することは可能であるが、しかしながら、この変形形態でプソイドイオノンの単一の異性体を生成することは可能でない。
【0019】
本発明の文脈において、用語「水酸化物」は、当分野の通常の意味を有し、水酸化物陰イオン「HO-」を表す。本文が単一の用語「水酸化物」に言及する場合、これは前記水酸化物陰イオンを与える何らかの供給源、例えばNaOHのような金属水酸化物から独立した水酸化物陰イオン、又はそのような金属水酸化物の正確な本質を意味する。
【0020】
本発明の文脈において、第1、第2及び/又は第3の水性混合物の定義において使用される、用語「濃度」(特に、成分である、アセトン、シトラール、水酸化物及び/又は4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度)は、この本文において他の方法で明示されない限り、好ましくは、考えられる水性混合物中に存在する水及びアセトンの合計質量に対するある成分の合計質量(特に、成分、アセトン、シトラール、水酸化物及び/又は4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンのモル質量)を指す。
【0021】
上に規定される本発明の方法のステップ(P1)において、上に規定される第1の水性混合物の調製は、本発明による方法の開始条件(すなわち、時間「t=0」の条件)に相当する。
【0022】
上に規定されるステップ(P1)中の第1の水性混合物の調製のために使用されるシトラールは、純粋なシトラール(例えば≧97%の純度を有する)であってもよく、又は、それは、他の方法、又は本発明の方法から再利用されたシトラールであってもよい。独自の実験で、シトラールは-方法性能への著しい悪影響なしで-シトラール及びシトラールに随伴する有機不純物の合計重量に対して≧92重量%、好ましくは≧95重量%の純度を有するものは、ステップ(P1)において使用することができることが見いだされた。シトラールに随伴する有機不純物は、追加の精製ステップによってのみシトラールから分離することができるシトラール以外の有機化合物である。しかしながら、そのような追加の精製ステップは、通常シトラールの消失も招くので好ましくない。
【0023】
上に規定される本発明の方法のステップ(P1)において、4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンは、例えば他の方法、又は本発明の方法からの反応混合物が第1の水性混合物を調製するために使用される事例において、第1の水性混合物中に存在することがあり、又は、4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンが第1の水性混合物中に存在しないこともある。
【0024】
上に規定される本発明の方法のステップ(P2)において、プソイドイオノン、ヒドロキシプソイドイオノン及び4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンが形成され、かつアセトン、シトラール及び水酸化物が消費されるように、アセトン、シトラール及び水酸化物を反応させる。ステップ(P2)において起こる反応は当業界で知られているアルドール縮合型である。4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン(またジアセトンアルコール、CAS(登録商標)RN 123-42-2としても知られる)が、アセトンの自己縮合による競争反応の反応生成物としてステップ(P2)において形成される。別の副反応として、メシチルオキシド(またメチルペンタ-3-エン-2-オン、CAS(登録商標)RN 141-79-7としても知られる)が、ステップ(P2)において4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンからの水の脱離によって形成され得る。当業界で公知のように、さらなる副生成物がその結果として形成され得る。
【0025】
ステップ(P2)での4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの形成によって、その濃度は、先に第1の水性混合物中に存在した4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度に関係なく(及び4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンが第1の水性混合物中に存在しない場合も存在しなかった場合も、上記参照)、いずれにせよ、第1の水性混合物(ステップ(P1))中に存在する(又は存在した)よりも第2の水性混合物(ステップ(P2))中で高い。
【0026】
上に規定される本発明の方法のステップ(P2)において、アセトン及びシトラールは主としてそれらの反応により消費されて反応生成物、プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを形成する。本発明による方法での水酸化物は一般に触媒として機能するが、実際上、また、例えばカニッツァロ反応としての副反応又は競争反応への関与によりステップ(P2)の間に消費されることを観察することができる。ステップ(P2)において消費される水酸化物を補い、好ましくは、第3の水性混合物中で水酸化物の濃度、好ましくは溶解した水酸化物の濃度を増しさえするために(第1の水性混合物中の水酸化物の濃度又は溶解した水酸化物と比較した場合)、第2の量の水酸化物が、本発明の方法による第2の水性混合物に添加される。
【0027】
したがって、ステップ(P3)において、
- 第2の水性混合物に添加される第2の量の水酸化物が、第1の水性混合物中の第1の量の水酸化物の5質量%~50質量%の範囲、好ましくは10質量%~40質量%の範囲である、
及び/又は
- 第3の水性混合物中に存在する溶解した水酸化物の濃度が、反応時間の最後に第2の水性混合物中に存在する溶解した水酸化物の濃度より高い、
本明細書において規定される本発明による方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)が好ましい。
【0028】
例えば、第1の水性混合物中の水酸化物の第1の量が0.1gである場合、第2の水性混合物に添加される第2の量の水酸化物は、好ましくは0.005g~0.05gの範囲、より好ましくは0.01g~0.04gの範囲である。
【0029】
独自の実験から、本発明による方法の条件下で上に規定される量の第2の水性混合物に添加される第2の量の水酸化物は、第1の水性混合物の液相中でよりも、第3の水性混合物の液相中で溶解している又は溶解することができる高濃度の水酸化物をもたらすように見える。独自の実験において、第2の水性混合物に前記第2の量の水酸化物を添加することは、本発明による方法を用いるとプソイドイオノンの増加した収率及びその形成についての選択率の観点で最も有利な結果ヘと導くことが見いだされた。
【0030】
いかなる理論によっても束縛されるものではないないが、現在のところ、ステップ(P2)において形成される4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンは、(第1の水性混合物中の水酸化物の溶解度と比べて)第2の水性混合物及び/又は第3の水性混合物中で水酸化物の溶解度の増加に貢献し、水酸化物の溶解度のこの増加は、主要な生成物(主要な生成物はプソイドイオノンである)の収率及び選択率の観点で、本発明の方法の有益な結果に貢献すると想定される。さらに、第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度が、その最大値に到達したか、その最大値に近い値(特にその最大値の≧80%、好ましくは≧85%の値)に到達した場合、及び、第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度が例えば、逆反応(化学平衡反応において通常生じるような)によって反応の間に再び下落する前に、水酸化物の最高の溶解度(したがって上に説明される最も有益な効果)が達成されることが見いだされた。
【0031】
したがって、第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度がその最大値の≧80%、好ましくは≧85%の値に達した場合、及び/又は第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度がその最大値の≦80%、好ましくは≦85%の値に(再び)下落する前に、第2の水性混合物に第2の量の水酸化物を添加することが好ましい。対応して、第2の量の水酸化物は、第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度がその最大値の≧80%、好ましくは≧85%の値を有する場合、ステップ(P3)において第2の水性混合物に添加される。
【0032】
したがって、
- 第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンのモル濃度が70ミリモル/l以上の値に到達した場合、
及び/又は
- 第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度が最大値に達する前に、又は第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度が最大値に到達した場合、
及び/又は
- 第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度がその最大値の≧80%、好ましくは≧85%の値を有する場合、
及び/又は
- 第1の水性混合物が調製された(すなわちすべての成分、水、アセトン、シトラール及び水酸化物が、ステップ(P1)において合わせられた時)3分以上、好ましくは5分以上後に、及び第1の水性混合物が調製された後、好ましくは25分未満、より好ましくは20分未満、なおより好ましくは15分未満に、
及び/又は
- ステップ(P2)中の第1の水性混合物の成分の反応時間の3分以上後、好ましくは5分以上後に、及びステップ(P2)中での第1の水性混合物の成分の反応時間の好ましくは25分未満後、より好ましくは20分未満後、なおより好ましくは15分未満後に、
及び/又は
- 第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン:アセトンのモル比が、1:45~1:8の範囲の値に到達した場合、
ステップ(P3)において第2の量の水酸化物が第2の水性混合物に添加される、本明細書において規定される本発明による方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)が好ましい。
【0033】
第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンのモル濃度が70ミリモル/l以上の値に達した場合に、第2の量の水酸化物がステップ(P3)中の第2の水性混合物に添加される、本発明による方法の好ましい変形形態において、第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンのモル濃度は、第2の水性混合物中に存在する水及びアセトンの総量に対して4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの合計モル量である。
【0034】
独自の実験で、第2の量の水酸化物がステップ(P3)中の第2の水性混合物に添加される前のステップ(P2)中の第1の水性混合物の成分の反応時間の3分以上、好ましくは5分以上の時間的間隔が、通常、一方で所望の滞留時間(方法効率の理由で可能な限り短く)と他方でステップ(P2)中の良好な転換比率の間で有利な折衷を与えることが見いだされた。また、独自の実験で、第2の量の水酸化物がステップ(P3)中の第2の水性混合物に添加される前の、ステップ(P2)中の第1の水性混合物の成分の反応時間の3分以上、好ましくは5分以上の前記時間的間隔は、通常、第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度がその最大値の≧80%、好ましくは≧85%の値に達した時間的間隔(上に説明されたように)と相関することが見いだされた。
【0035】
本発明の文脈において、第2の水性混合物及びその変形形態における4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度は、好ましくはガスクロマトグラフィーによって、より好ましくは検定されたガスクロマトグラフィー法によって求められる。この目的のために、第2の水性混合物の試料は抜き取られ中和され(好ましくは希釈された含水酢酸を用いて)、次いで、4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度は、当業界で公知である中和された試料で求められる。第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度の最大値又は一般に第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度の変化を経時的に求めるために、試料は時間的間隔で第2の水性混合物から抜き取り、時間の関数として4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンのそれらの濃度について分析することができる。受け取った結果から、基準値は様々な方法条件下の第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度の進行の予測について求めて規格化することができる(例えば検量線として)。
【0036】
本発明の文脈においては、第2の水性混合物及びその変形形態における、4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン:アセトンのモル比は、好ましくはここで上に説明されるガスクロマトグラフィーによって求められる。代替として、第2の水性混合物及びその変形形態における4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン:アセトンのモル比は、一般に当業界で知られているようにH-NMR分光法及び目標化合物に関連する信号の積分によって求められる。両方の方法は、実用的な目的にとって重要な意義を持たない乖離があるが、基本的に同一の結果を与える。
【0037】
本発明による方法の高められた性能のために、第1及び/又は第2の水性混合物中への水酸化物の緊密な混合を(好ましくは第1及び/又は第2の水性混合物中へ水酸化物を投与するそのそれぞれの投与地点又は場所で)、例えば前記水性混合物中の水酸化物のできるだけ良好な溶解及び分布を容易にするために与えることが得策である。
【0038】
したがって、第1の水性混合物及び/又は第2の水性混合物及び/又は第3の水性混合物が、機械的に混合される又はかき混ぜられる、本明細書において規定される本発明による方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)が好ましい。本発明による方法が、方法又は方法時間の少なくとも一部について連続的に行われる場合、混合は、例えば、反応器中所望の位置で静的混合機を統合することにより行うことができる。本発明による方法は、方法又は方法時間の少なくとも一部についてバッチ式又は半バッチ式に行われる場合、混合を、例えば、機械式撹拌機によって行うことができる。
【0039】
本発明の文脈においては、本発明による「方法の一部」は好ましくは、ステップ(P1)、(P2)及び(P3)の個々、又は前記ステップのうちの2つの組み合わせを意味する。
【0040】
独自の実験で、本発明による方法は、生産効率の観点で工業的方法のために最も都合のよい連続的な性能のために特に適切であることが見いだされた。
【0041】
したがって、
- 方法の少なくとも一部、好ましくは方法全体が連続的に(流動様式で)、好ましくは管型反応器中、より好ましくは栓流挙動に可能な限り近い流動様式を示す管型反応器中で行われる、
及び/又は
- 第2の量の水酸化物が第2の水性混合物に連続的に添加される、
本明細書において規定される本発明による方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)が好ましい。
【0042】
方法の少なくとも一部、好ましくは方法全体が管型反応器で連続的に行われる場合、前記管型反応器は、好ましくは栓流挙動に少なくとも近似する挙動を示す。
【0043】
幾つかの事例において、また、方法の少なくとも一部、好ましくは方法全体が、不連続的に、好ましくはバッチ様式又は半バッチ様式で行われる本明細書において規定される本発明による方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)が好ましい。
【0044】
ある事例において、また、第2の量の水酸化物が、一括で又は幾つかに分割して、好ましくは一括で、第2の水性混合物に添加される、本明細書において規定される本発明による方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)が好ましい。本発明による方法のこの変形形態は、方法の連続様式、バッチ様式及び/又は半バッチ様式作業で適用することができる。
【0045】
独自の実験で、プソイドイオノンを形成する平均反応速度、及び反応の結果形成されるプソイドイオノンの総量は、両方とも先行技術の類似の方法でよりも本発明による方法において高く、すなわち、同じ容積及び滞留時間に対して、本発明を利用しない先行技術の類似の方法よりも多くのプソイドイオノンが本発明による方法で形成されることが見いだされた。
【0046】
したがって、一連のステップ(P2)及び(P3)において反応時間t[(P2)+(P3)]に形成されるプソイドイオノンの総量が、孤立したステップ(P2)において等しい反応時間t[(P2)+(P3)]に形成されるプソイドイオノンの総量より多い、本明細書において規定される本発明による方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)が好ましい。
【0047】
上に与えられた定義において、用語「t[(P2)+(P3)]」は、上及び以下に規定されるステップ(P2)及び(P3)を行うのにかかる反応時間を意味する。
【0048】
さらに、方法時間の全体が≧9から≦30分の範囲、好ましくは≧12から≦25分の範囲、より好ましくは>12から≦20分の範囲である、本明細書において規定される本発明による方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)が好ましい。
【0049】
本発明の文脈において、用語「方法時間全体」は、本発明による方法を行うのにかかる総時間、すなわち、ステップ(P1)、(P2)及び(P3)を含む方法を意味する。本発明による方法が連続的に、好ましくは方法時間全体にわたって行われる場合、方法時間の全体は、好ましくは連続式反応器、好ましくは管型反応器中の滞留時間に相当する。本発明による方法がバッチ式又は半バッチ式で、好ましくは方法時間全体にわたって行われる場合、方法時間の全体は、好ましくはバッチ(又は半バッチ)反応器中の(全体)反応時間に相当する。
【0050】
また、
- 第1の水性混合物中の水酸化物の第1の濃度が、第1の水性混合物中に存在する水及びアセトンの合計質量に対して0.0015~0.02質量%、好ましくは0.0015~0.0140質量%の範囲、より好ましくは0.0017~0.0070質量%の範囲、さらにより好ましくは0.0020~0.0065質量%の範囲である、
及び/又は
- 第1の水性混合物中に存在する第1の量の水酸化物の第1の水性混合物中に存在する第1の量のシトラールに対するモル比が、1.0~30.0ミリモル/モルの範囲、好ましくは2.0~20.0ミリモル/モルの範囲、より好ましくは2.0~12.0ミリモル/モルの範囲である、
及び/又は
- 第1の水性混合物中に存在するアセトンの総量の第1の水性混合物中に存在するシトラールの総量に対するモル比が、24.0:1~65.5:1の範囲、好ましくは31.5:1~65.5:1の範囲、より好ましくは35.0:1~60.0:1の範囲、なおより好ましくは37.5:1~50.0:1の範囲である、
本明細書において規定される本発明による方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)が好ましい。
【0051】
本明細書において規定される本発明の方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)の特に好ましい変形形態において、第1の水性混合物中に存在するアセトンの総量の第1の水性混合物中に存在するシトラールの総量に対するモル比は、38.0:1~47.0:1の範囲である。
【0052】
独自の実験で、第1の水性混合物中の水酸化物の前述の濃度又は好ましい濃度は、第1の水性混合物中の水酸化物の完全、又は実質上完全な溶解を可能にし、都合のよい速度及び濃度で第2の水性混合物中に4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンを形成させるのに適していることが見いだされた。本発明の方法の好ましい変形形態において、第1の水性混合物中の水酸化物の第1の濃度は、第1の水性混合物に可溶である水酸化物の最大濃度となるように調節される(すなわち、第1の水性混合物に完全に溶解することができる水酸化物の可能な最大の濃度は、ステップ(P1)において使用される。)。
【0053】
独自の実験でまた、前述の範囲及び好ましい範囲の「第1の水性混合物中に存在する水酸化物の第1の量」:「第1の水性混合物中に存在するシトラールの第1の量」及び「第1の水性混合物中に存在するアセトンの総量」:「第1の水性混合物中に存在するシトラールの総量」の前述の比が、本発明による方法の高められた性能に貢献することが見いだされた。前述の濃度と比の範囲及び好ましい範囲は、好ましくは組み合わせることができる。前述の濃度と比の好ましい範囲を互いに組み合わせた場合、組み合わせは、また本発明の方法の好ましい、又はさらにより好ましい変形形態をもたらす。
【0054】
また、第1の水性混合物を調製するために使用される第1の量の水酸化物(ステップ(P1))及び/又は第2の水性混合物に添加される第2の量の水酸化物(ステップ(P3))が1種以上の金属水酸化物によって供給される場合(各事例において、適宜)、
好ましくは
- 1種以上の金属水酸化物が、
- アルカリ金属水酸化物、好ましくはLiOH、NaOH及びKOH、並びに
- アルカリ土類金属水酸化物、好ましくはMg(OH)2、Ca(OH)2、Sr(OH)2及びBa(OH)2
からなる群から選択され、
より好ましくは、前記1種の金属水酸化物又は前記1種以上の金属水酸化物のうち1種が、アルカリ金属水酸化物、なおより好ましくはLiOH、NaOH及びKOHからなる群から選択され、
最も好ましくは、前記1種の金属水酸化物又は前記1種以上の金属水酸化物のうち1種がNaOHである、
及び/又は(好ましくは「及び」)
- 前記1種以上の金属水酸化物が、液相に溶解した1種以上の金属水酸化物を含み、
好ましくは、前記1種以上の金属水酸化物は1種以上の水性金属水酸化物を含み、
より好ましくは、前記1種以上の金属水酸化物は、1種以上の金属水酸化物の水溶液の形態で供給され、
好ましくは、水溶液は、水溶液中に存在する水及び金属水酸化物の合計質量に対して0.3~1.5質量%の範囲、好ましくは0.35~0.65質量%の範囲、より好ましくは0.4~0.6質量%の範囲の水酸化物イオンの濃度を有する、
本明細書において規定される本発明による方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)が好ましい。
【0055】
上に規定される本発明による方法の変形形態において、液相中に溶解した1種以上の金属水酸化物は、本発明による方法にとって必要とされる又は好ましい量の1種以上の金属水酸化物を溶解するのに適切であり、相溶性であるか、又は方法の性能と干渉しない任意の溶媒又は溶媒の混合物中に溶解することができる。本発明による方法に必要とされるか又は好ましい1種以上の金属水酸化物の量は、好ましくは、溶媒又は溶媒の混合物及び液相中に存在する金属水酸化物の合計質量に対して0.3~1.5質量%の範囲、好ましくは0.35~0.65質量%の範囲、より好ましくは0.4~0.6質量%の範囲の液相中の水酸化物イオンの濃度をもたらす量である。
【0056】
本発明による方法の好ましい変形形態において、1種以上の金属水酸化物は、水、アセトン、1~3炭素原子を含むアルコール及びその混合物からなる群から選択される1種以上の溶媒を含む液相中に溶解した1種以上の金属水酸化物を含む。方法中に既に存在する溶媒又は溶媒の混合物、特に水、アセトン及びその混合物が好ましい。
【0057】
上に規定される本発明による方法の好ましい変形形態において、水性金属水酸化物とは、好ましくは水を含む1種以上の金属水酸化物の溶液を意味する。前記水性金属水酸化物は、好ましくはメタノール、エタノール及びアセトンからなる群から選択される水混和性の溶媒(水に加えて)を含むことができる。水、又は水及びアセトンの混合物中の1種以上の金属水酸化物の溶液である水性金属水酸化物が好ましい。
【0058】
上に規定されるような本発明による方法の変形形態において、1種以上の金属水酸化物は、様々である純度の1種以上の金属水酸化物によって供給されてもよい。≧70質量%、好ましくは≧85質量%、より好ましくは≧90質量%、さらにより好ましくは≧95質量%の純度を有する1種以上の金属水酸化物が好ましい。金属水酸化物中に存在する不純物が方法の性能と親和性があるか又は干渉しない程度まで(例えば、上及び以下に規定されるようにそれらが液体又は水相中に適切に溶解しないという理由で)、低グレード(例えば、純度≦90質量%を有する「工業用グレード」)の純度である金属水酸化物を、本発明の方法において使用することができる。
【0059】
したがって、また、第1の水性混合物を調製するために使用される第1の量の水酸化物(ステップ(P1))及び/又は第2の水性混合物に添加される第2の量の水酸化物(ステップ(P3))が、1種以上の金属水酸化物によって供給され(各事例において、適宜)、
- 1種以上の金属水酸化物が、
- アルカリ金属水酸化物、好ましくはLiOH、NaOH及びKOHからなる群から選択され;
より好ましくは、前記1種の金属水酸化物又は前記1種以上の金属水酸化物のうち1種が、アルカリ金属水酸化物、なおより好ましくはLiOH、NaOH及びKOHからなる群から選択され、
最も好ましくは、前記1種の金属水酸化物又は前記1種以上の金属水酸化物のうち1種はNaOHである、
及び/又は(好ましくは「及び」)
- 1種以上の金属水酸化物が、1種以上の金属水酸化物の水溶液として供給され、
好ましくは、水溶液が、水溶液中に存在する水及び金属水酸化物の合計質量に対して0.3~1.5質量%の範囲、好ましくは0.35~0.65質量%の範囲、より好ましくは0.4~0.6質量%の範囲の水酸化物イオンの濃度を有する、
本明細書において規定される本発明による方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)が好ましい。
【0060】
好ましくは、第2の水性混合物に添加される少なくとも第2の量の水酸化物(ステップ(P3))は、ここで上に規定されるような1種以上の金属水酸化物によって供給される。
【0061】
ここで上に規定される本発明による方法の好ましい変形形態において、好ましくは、1種以上の金属水酸化物の水溶液は、水中の溶液、又は水及びアセトンの混合物中の溶液である。
【0062】
ここで上に規定される本発明による方法の好ましい変形形態において、好ましい金属水酸化物及び水性金属水酸化物の好ましい形態、特に金属水酸化物の水溶液の好ましい形態及び1種以上の金属水酸化物の前記水溶液中の水酸化物イオンの好ましい濃度は、組み合わせて本発明による方法の特に好ましい変形形態をもたらすことができる。
【0063】
本発明の方法の1つの好ましい変形形態において、第2の水性混合物に添加される第2の量の水酸化物(ステップ(P3))は、水性のNaOH溶液、好ましくは水中のNaOHの溶液によって供給され、前記水性NaOH溶液中に存在する水及びNaOHの合計質量に対して好ましくは0.3~1.5質量%の範囲、好ましくは0.35~0.65質量%の範囲、より好ましくは0.4~0.6質量%の範囲の水酸化物イオンの濃度を有する。
【0064】
独自の実験で、第2の量の水酸化物(ステップ(P3))を供給するためにNaOH(特に、上に規定される濃度又は好ましい濃度を有する水性NaOH溶液)が使用される場合、NaOHは、溶解度及び反応性能の観点で特に有利な性質を提供し、その結果、本発明による方法が、生成物収率の観点で、特にプソイドイオノンの収率の特に都合のよい結果をもたらすことが見いだされた。
【0065】
さらに、第2及び/又は第3の水性混合物を適切に混合する又はかき混ぜるために(上に説明されたように)、特に本発明の方法が、方法又は方法時間の少なくとも一部について連続的に行われる場合、1種以上の金属水酸化物の水溶液の形態(上に規定されたように)でできるだけ小さな容器又はパイプ直径で静的混合機に及び/又はスパージャーを用いて及び/又は液体分配器を用いて第2の水性混合物に第2の量の水酸化物を添加(投与)すること(ステップ(P3))が得策である。
【0066】
第1の水性混合物、及び/又は(好ましくは「及び」)第2の水性混合物、及び/又は(好ましくは「及び」)第3の水性混合物が、その沸点未満で液相を形成し、
好ましくは
- 第1の水性混合物中及び/又は第2の水性混合物中及び/又は第3の水性混合物中の反応温度は、60~110℃の範囲、好ましくは70~100℃の範囲、より好ましくは70~90℃の範囲である、
及び/又は
- 方法の少なくとも一部、好ましくは、方法全体は、好ましくは150~1000kPaの範囲、好ましくは150~700kPaの範囲、より好ましくは200~650kPaの範囲、なおより好ましくは250~600kPaの範囲の絶対圧、の圧力で行われる、
及び/又は
- 方法の少なくとも一部、好ましくは、方法全体は断熱条件下で行われる、本明細書において規定される本発明による方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)がまた好ましい。
【0067】
本発明による方法の好ましい変形形態において、第1の水性混合物中及び第2の水性混合物中及び第3の水性混合物中の反応温度は、各事例において、60~110℃の範囲、好ましくは70~100℃の範囲、より好ましくは70~90℃の範囲である。
【0068】
本発明のある変形形態において、第1の水性混合物、及び/又は(好ましくは「及び」)第2の水性混合物、及び/又は(好ましくは「及び」)第3の水性混合物が、それらの沸点未満で液相を形成し、第1の水性混合物中及び/又は第2の水性混合物中及び/又は第3の水性混合物中の反応温度が、72~95℃の範囲、好ましくは72~92℃の範囲である、方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)が好ましい。
【0069】
また、反応条件、好ましくはアセトン、シトラール及び/又は水酸化物の濃度が、第1の水性混合物が単一の液相を形成する、及び/又は第2の水性混合物が単一の液相を形成する、及び/又は第3の水性混合物は単一の液相を形成するように選択又は調節される、本明細書において規定される本発明による方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)が好ましい。本発明の好ましい変形形態において、前記反応条件は、第1の水性混合物、第2の水性混合物及び第3の水性混合物それぞれが単一の液相を形成するように、選択又は調節される。
【0070】
さらに、第3の水性混合物中に存在する水酸化物の総量が液相に溶解する、本明細書において規定される本発明による方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)が好ましい。独自の実験で、プソイドイオノンの収率の観点で本発明の方法の特に良好な結果は、第3の水性混合物中に存在する水酸化物が、第3の水性混合物中になおあるか、又は溶解することができる可能な限りの高濃度で存在する場合、達成されることが見いだされた。
【0071】
第1の水性混合物が、第1の水性混合物中に存在する水及びアセトンの合計質量に対して3~9質量%の範囲、好ましくは4~8質量%の範囲、より好ましくは5~7質量%の範囲の濃度の水を含む、本明細書において規定される本発明による方法(又は上若しくは以下に好ましいものと記載される本発明による方法)が好ましい。
【0072】
本発明によるプソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを製造する方法の好ましい変形形態において、ステップ(P3)において形成されるプソイドイオノンが反応混合物から単離され、及び残存する残余の混合物は-全体又は一部分で-方法に再利用され、第1の水性混合物の調製に使用される。本発明による方法の特に好ましい変形形態において、残存する残余の混合物は、その選択された分画を得るためにさらに精製され、所望される場合、方法に再利用され、第1の水性混合物の調製に使用される。
【0073】
ここでさらに、第2の視点の下で、本発明の1つ以上の目的は、態様A1(以下を参照のこと)による装置によって遂行することができることが見いだされた。本発明は特に、プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを製造するための装置であって、第1の流れ方向に第1の反応槽を通って成分が流れるように配置された、実質上鉛直に配向した第1の反応槽と、第1の反応槽と流体連通状態の、実質上鉛直に配向した第2の反応槽であり、第1の流れ方向と異なる第2の流れ方向で第2の反応槽を通って成分が流れるように配向した、第2の反応槽とを備え、第1の反応槽は、入口を通して第1の水性混合物を含有する第1の成分供給を受け取るように、及び第1の水性混合物の成分をある反応時間反応させることによって第2の水性混合物を生成するように構成され、装置は、第1の反応槽に対して第1の成分供給入口の下流に位置する混合デバイスを備え、前記装置は、第2の水性混合物が形成した場合に、第1の成分供給に第2の成分供給を添加するように構成され、第2の反応槽は、第1の反応槽からの混合デバイスにおいて一体になった第1及び第2の成分供給を受け取り、第1及び第2の水性混合物から第3の水性混合物を生成するように構成される、装置を提案する。
【0074】
好ましくは、混合デバイスは、第1の反応槽の内部で、又は第2の反応槽の内部で、又は第1及び第2の反応槽の間に配置される。
【0075】
上に記載の第1の視点の下の方法の好ましい実施形態、変形形態又は組み合わせは、本明細書において記載の第2の視点の下の装置に準用して当てはまる。同様に、本明細書において記載の第2の視点の下の装置の好ましい実施形態、変形形態又は組み合わせは、第1の視点の下の方法に準用して当てはまる。
【0076】
鉛直配向は、装置が設置されている地面に対して垂直な+/-15°内に配向されるそれぞれの反応槽(複数可)を包含するものと了解される。
【0077】
水溶液は水を含む混合物を包含するものと了解される。
【0078】
本発明は、ある反応時間が第1の反応槽中で経過した後、さらに第1の成分供給に第2の成分供給を添加することにより収率の向上を達成することができるという認識に基づく。これは、特に第1の反応槽にそれの下流端部の方へ混合デバイスを統合することにより達成される。第1の反応槽が上向流槽である場合、混合デバイスは、好ましくは第1の反応槽の天井端部に取り付けられる。第1の反応槽が下向流槽である場合、混合デバイスは、好ましくは第1の反応槽の底端部に取り付けられる。
【0079】
第1の成分供給は、好ましくは第1の濃度のアセトン、シトラール及び水酸化物を含む。特に好ましくは、第1の量の水、アセトン、シトラール及び水酸化物は第1の成分供給中に合わせられる。さらに好ましくは、第1の反応槽における第1の成分供給の成分の反応によって、プソイドイオノン、ヒドロキシプソイドイオノン及び4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンを生成し、アセトン、シトラール及び水酸化物は消費される。第2の水性混合物は、好ましくは、第1の水性混合物中のその濃度より高い濃度の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン、第1の濃度より低い第2の濃度の、アセトン、シトラール及び水酸化物、並びにプソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを含む。さらに好ましくは、第2の成分供給は、追加の量のプソイドイオノンが第3の水性混合物中で形成されるように第2の量の水酸化物を含む。
【0080】
好ましい実施形態において、第1の流れ方向は上向きに配向し、第2の流れ方向は下向きに配向し、又はその逆である。
【0081】
さらなる好ましい実施形態において、混合デバイスは第1の反応槽の出口端に位置する。混合デバイスは、好ましくは入口及び出口を有し、第3の水性混合物が第2の反応槽に直接に流れ込むように出口は位置する。
【0082】
さらなる好ましい実施形態において、第1の成分供給を受け取るための第1の反応槽の入口は、第1の入口であり、第1の反応槽は、混合デバイスから上流に位置する第2の成分供給を受け取るために第2の入口をさらに含む。好ましくは、第2の入口は、第1の反応槽側面に位置し、第1の反応槽の部分で第1の成分供給へ第2の成分供給を導入するように構成され、ここで、それぞれの地点に到達するまでに、第2の水性混合物は反応槽中のその滞留時間により既に形成されている。好ましくは、第2の入口は、混合デバイスの方へ配向した幾つかの出口オリフィスを備える。一般に、「幾つかの」という用語は、1つの要素又は複数の要素を意味するものと了解される。例えば、幾つかの出口オリフィスは、1個以上の出口オリフィス、例えば、1~50の出口オリフィスであってもよい。
【0083】
さらに好ましくは、第2の入口は、混合デバイスの直ぐ上流に、又は混合デバイスの上流の所定距離に位置する。これは、第2の入口が、その出口(又は複数がある場合、その出口の少なくとも1つ)が、混合デバイスの上流に取り付けられるように位置することを意味するものと了解される。所定距離は、好ましくは第1の反応槽の内部で逆流が先行することなく第2の成分供給全体が混合デバイスに引き込まれるように選択される。実用的な目的のためには、混合デバイスの入口から第1の成分供給の流れ方向の50cm以下、特に好ましくは25cm以下の範囲内の距離であれば、確実に、第2の成分供給全体が直接に第1の成分供給に引き込まれ、望ましくない逆流が先行することなく混合デバイスに引き抜かれることが見いだされた。
【0084】
一般に、本発明に関して上流及び下流という用語を使用する場合、上流は、流動の方向の反対、すなわち流れの源の方を意味するものと了解され、一方、下流は、流動の方向、すなわち、流れの目的地の方を意味するものと了解される。
【0085】
さらなる好ましい実施形態において、第1の反応槽は、第2の水性混合物の流動速度を加速するために、その方へ次第に細くなったテーパー部を混合デバイスの入口の上流に、好ましくは第2の入口の直ぐ上流に備える。次第に細くなった断面が混合デバイスの入口の上流に取り付けられ、その方へ次第に細くなっているので、反応槽の内部、特に混合デバイス内の流速を加速する有利な効果がある。増加した流速は、混合デバイスの混合結果を改善し、アセトン及び水酸化物の均質混合物を得る一因となり、それによって混合物からの水酸化物の望まれない偏析を回避する。
【0086】
第1の反応槽は、優先的に、第1の反応器への入口と混合デバイスとの間の第1の成分供給の滞留時間を調和させるように構成されたさらなる混合要素を幾つか-すなわち、1つ又は複数-又は幾つかの充填材を混合デバイスの上流に備える。調和の下で、第1の成分供給のほとんどすべての部分、好ましくはすべての部分が、第1の反応槽の内部で一様な滞留時間を有するものと理解されるはずである。混合要素は、好ましくは第1の成分供給の流れ方向でそれぞれ互いに順に取り付けられる区画に備えられる、いわゆるx型混合要素を備える。隣接した混合要素は、好ましくはオフセット角、好ましくは60°~120°の範囲、さらに好ましくは90°で設置される。混合デバイスの上流の混合要素は、均一な流体の分布及び第1の成分供給内の均一な成分分布を与え、また望ましくない自由対流及び逆混合を最小限にするのに役立つ一因となり、それによって、第1の反応槽中で第1の成分供給が費やす滞留時間を少なくとも近似する栓流挙動に調和させる。栓流は、一般に媒体が、導管の全断面にわたって等速で導管を通って移動することを意味するものと了解されているが、本発明は用語をより広く適用する。本発明の文脈において、栓流挙動は正確な用語で達成される必要はない。その代りに、本文書の全体にわたって指摘されるように、反応槽を通り抜けるすべての媒体の滞留時間が、実質上調和している場合、それは、十分であると考えられ、反応槽直径の部分にわたって流動速度の小さな局所的変動は無視されてもよい。
【0087】
別の実施形態によると、第1の成分供給のための入口は、複数の出発材料から第1の成分供給を生み出すように構成された供給ラインと流体連通状態である。好ましくは、供給ラインは、第1の出発材料供給及び第2の出発材料供給を合わせるように構成された第1の混合機、並びに第1の混合機の下流に位置し、第1の混合機から来る一体になった第1及び第2の出発供給を、第3の出発材料供給と合わせ、第1の成分供給にするように構成された第2の混合機を備える。
【0088】
出発材料供給の1つ、例えば、第1の出発材料供給は好ましくはシトラールを含む。出発材料供給のさらなる1つ、例えば第2の出発材料供給は、好ましくは、アセトンを含み、出発材料供給の別の1つ、例えば、第3の出発材料供給は、好ましくは水酸化物を含む。
【0089】
供給ラインは、さらに好ましくは第3の出発材料供給の温度より高い所定温度に第1及び第2の出発材料供給を加熱するように構成された少なくとも1つの加熱デバイス、好ましくは少なくとも1つの熱交換器を備える。
【0090】
特に好ましい少なくとも1つの加熱デバイスは、第1の、第2及び第3の出発材料供給速度及び第3の出発材料供給の温度の関数として、第1の反応槽に入る前に、第1の成分供給が所定の設定地点温度に達するように第1及び第2の出発材料を加熱するように構成される。
【0091】
少なくとも1つの加熱デバイスは、優先的に、第1及び第2の混合機の間に位置する。
【0092】
さらなる好ましい実施形態によると、第2の反応槽は、対応するカバーを用いて可逆的に開閉されるように構成され、好ましくは緩い充填材料(loose packing material)を含む又はそれからなる充填材を、第2の反応槽へ導入するために寸法取りされた開口部を備える。緩い充填材料は、構造的充填材料と比較して設置するのがより簡単であり、しかも総合的性能の犠牲が全くないか又はほとんどないという利点を持つ。第2の反応槽の内部の充填材料は、第2の反応槽にわたって望まれない層流又は望ましくない自由対流(それは密度変動によって、特に低流動速度で引き起こされ得る)を防止する一因となり、第2の反応槽の内部の材料の全体に均一な分布に貢献する。
【0093】
特に好ましい実施形態において、第1及び第2の反応槽の少なくとも1つは反応管である。好ましくは両方の反応槽は、反応管である。
【0094】
第2の反応槽は、好ましくは輪状槽(ring chamber)として少なくとも部分的に形成される。
【0095】
前述の2つの実施形態は有利には組み合わせることができ、第1の反応槽及び第2の反応槽は、内側管及び外側管を有する1つの共通反応器の一部であり、ここで、第1の反応槽は内側管の容積によって境界が定められ、第2の反応槽は、内側管の容積を引いた外側管の容積によって境界が定められる。好ましくはダブル管型反応器の内側管としての第1の反応槽は、第2の反応槽より小さな全体的断面を有する。これは、やはり第1の反応槽中の第1及び第2の成分供給の流速の増加に寄与し、より良好な混合、及び反応混合物からの水酸化物の低減された偏析につながる。
【0096】
第1の反応槽のまわりの輪状槽の前述の構成のさらなる利点は、輪状槽に囲まれる第1の反応槽の部分は、環境上の影響、例えば、常温から自動的に少なくともある程度断熱されるということである。また、発明の装置の設計は、例えば工業的製作環境で互いに直列に配置され並んでいる2つの反応槽を有するより普通の組み立てと比較して非常に省スペースである。
【0097】
さらなる好ましい実施形態において、反応槽の少なくとも1つ、好ましくは両方の反応槽は、互いに直列に搭載される複数の管状の区画から形成される。これは、保全及び取り外しの目的についてとりわけ有利なモジュール設計を提供する。
【0098】
第2の反応槽は、装置から第3の水性混合物を抜き取るために少なくとも1つの出口を備える。好ましくは、第2の反応槽は、複数のこれらの出口、さらに好ましくは、2、3、4、5、6、7、8又はそれ以上のこれらの出口を備える。複数の出口を有する好ましい実施形態において、これらの出口の少なくとも幾つか、好ましくは、すべては、反応槽の周囲に沿って分布している。特に好ましくは、出口は、反応槽の周囲に沿って均一に分布している。さらに好ましくは、出口は第3の水性混合物の流動経路に関して反応槽の同一の位置に-例えば、反応槽の配向に応じて長さ又は高さ-取り付けられる。
【0099】
装置のさらに好ましい実施形態において、出口は、1つの共通出口供給へ出口を通って流れるそれぞれの部分的な供給を合体させるように構成された下流マニホールドと流体連通状態である。マニホールドは、好ましくは集合管、集合輪、1個以上のY字部品、又は前述のものの幾つか又はすべての組み合わせの少なくとも1つを含む。
【0100】
さらなる代替実施形態において、第2の反応槽は少なくとも1つの、好ましくは複数の流動案内バッフル(flow guiding baffle)を備える。少なくとも1つの流動案内バッフルは、好ましくは縦軸、すなわち第2の反応槽の流動軸に平行に配向している。さらに好ましくは、少なくとも1つの流動案内バッフルは、第2の反応槽の縦の延長(すなわち縦軸の方向の)の少なくとも一部に沿って延在する。好ましい変形形態において、第2の反応器は、2、3、4、5、6、7、8又はそれ以上のバッフルを備える。
【0101】
上に記載の第1の視点の下の方法及び第2の視点の下の装置の好ましい実施形態、変形形態又は組み合わせは、以降に記載の第3の視点の下の方法に準用して当てはまる。同様に、以降に記載される第3の視点の下の方法の好ましい実施形態、変形形態又は組み合わせは、上に記載の第1の視点の下の方法及び第2の視点の下の装置に準用して当てはまる。
【0102】
本発明によると、本発明(又はその好ましい実施形態)の第2の視点の下の装置は、第1及び/又は第3の視点の下の方法を遂行するように構成されその手段を備える。同様に、本発明によると、第1及び/又は第3の視点(又は本明細書において開示されるそれらの好ましい変形形態)の下の方法は、好ましい実施形態において上に記載の第2の視点又はその好ましい実施形態の下の装置の使用により行われる。
【0103】
本発明は、装置に関して第2の視点の下で上に記載されている。第3の視点の下では、本発明はまた、好ましくは上に記載の装置において、プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを製造する方法であって、
- 好ましくは、第1の量の水、アセトン、シトラール及び水酸化物を合わせることによって、好ましくは第1の濃度のアセトン、シトラール及び水酸化物を含む第1の水性混合物を含有する、第1の成分供給を第1の反応槽へ供給するステップと、
- 第1の水性混合物の成分を、好ましくは、プソイドイオノン、ヒドロキシプソイドイオノン及び4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンが形成され、かつアセトン、シトラール及び水酸化物が消費されるようにある反応時間反応させることによって、第2の水性混合物を生成するステップであり、第2の水性混合物が、好ましくは、第1の水性混合物中のその濃度より高い濃度の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン、第1の濃度より低い第2の濃度の、アセトン、シトラール及び水酸化物、並びにプソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを含む、ステップと、
- 特に第2の水性混合物が形成された場合、第1の成分供給へ第2の成分供給、好ましくは第2の量の水酸化物を第1の反応槽の内部で添加するステップと、
- 第2の反応槽に第1及び第2の成分供給を供給し、追加の量のプソイドイオノンが第2の反応槽中の第3の水性混合物中で形成されるように、第2の反応槽中で第2の水性混合物及び第2の成分供給をある反応時間反応させることによって第3の水性混合物を生成するステップと
を含む方法を提案することによって、先に挙げた1つ以上の目的を遂行する。
【0104】
本発明の第1の視点の下で論じられる方法は、本発明の化学的な側面により注目しているが、第3の視点の下の本発明によるプソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを製造する前記さらなる方法は、主として本発明の工学的側面に注目する。第3の視点の下の方法は、第2の視点の下の装置と同一の利点及び長所を想定する。上に論じられた装置の好ましい実施形態は、このように本明細書において論じられる方法の好ましい実施形態であり、その逆も成立する。
【0105】
好ましくは、第3の視点の下の本発明によるプソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを製造する前記方法は、
- 第2の水性混合物に添加される第2の量の水酸化物が、第1の水性混合物中の第1の量の水酸化物の5質量%~50質量%の範囲、好ましくは10質量%~40質量%の範囲である、及び/又は
- 第3の水性混合物中に存在する溶解した水酸化物の濃度が、第2の水性混合物中よりも高い
ように、第1の成分供給の供給速度に対する第2の成分供給の供給速度を制御するステップを含む。
【0106】
さらに好ましくは、第3の視点の下の方法は、第2の成分供給を添加する前に第2の水性混合物の流動速度を加速するステップを含む。
【0107】
さらなる好ましい実施形態において、第3の視点の下の方法は、
- 好ましくはシトラールを含む第1の出発材料供給及び好ましくはアセトンを含む第2の出発材料供給を合わせ、続いて、一体になった第1及び第2の出発供給を、好ましくは水酸化物を含む第3の出発材料供給と合わせ、第1の成分供給にすることにより、第1の成分供給を生み出すステップを含む。
【0108】
本発明の第3の視点の下の方法は、好ましくは、第1の反応槽に入る前に、第1の成分供給が所定の設定地点温度に達するように、好ましくは第1の、第2及び第3の出発材料供給速度及び第3の出発材料供給の温度の関数として第1及び第2の出発材料を加熱することによって第1及び第2の出発材料供給を第3の出発材料供給の温度より高い所定温度に加熱するステップをさらに含む。所定の設定地点温度への制御は、反応器性能の改善に貢献する。
【0109】
さらなる好ましい実施形態において、第3の視点の下の方法は、第2の反応槽に到達する前に、及び/又は第2の成分供給の添加の前に、第1の反応槽において第1の成分供給が所定の滞留時間を好ましくは3分以上、さらに好ましくは5分以上の範囲で有するように第1の成分供給の供給速度を制御するステップを含む。この時間的間隔は、一方の側の所望される短い滞留時間と他方の側の第1の成分供給の良好な転換比率との間の有利な折衷を提供する。
【0110】
なおさらに、第3の視点の下の方法は、優先的に、幾つかの-すなわち、1つ又は複数の-混合要素を備えることによって、第1の反応槽中の第1の成分供給の滞留時間を調和させるステップを含む。
【0111】
投入資源に対して最適化された収率を可能にするために、第3の視点の下の方法は、方法の監視及び制御を企図し、好ましくは以下のステップ:
b1)以下:
- 第1の反応槽の内部で不要に蓄積する水酸化物の量、
- 第1の反応槽に入るシトラールの量、
- 第1の反応槽の出口又は下流でのシトラールの量、
- 第2の反応槽の出口又は下流でのシトラールの量、
- 第2の反応槽の出口又は下流での水の量、
- 第1の反応槽の出口又は下流でのプソイドイオノン又はヒドロキシプソイドイオノンの少なくとも一方の量、
- 第2の反応槽の出口又は下流でのプソイドイオノン又はヒドロキシプソイドイオノンの少なくとも一方の量、
- 第1の又は第2の成分供給の少なくとも一方の反応器供給温度、
- 第1の又は第2の成分供給の少なくとも一方の反応器滞留時間、又は
- 第1の成分供給の供給速度
のうち少なくとも1つを求めるステップと、
b2)b1)で求めた量がそれぞれの所定の閾値範囲から外れたら、
- 第1の成分供給に対する第2の成分供給の供給速度、又は
- 第1の成分供給に対する、水酸化物を含むその出発材料供給、好ましくは第3の出発材料供給の供給速度
のうち少なくとも1つを、b1)で求めた量が閾値範囲の内側へ戻るように増加又は減少させるステップとをさらに含む。
【0112】
前述の量は、好ましくは試料体積内のそれぞれの絶対量の測定によって、又はそれぞれの供給内のそれらの濃度を測定しそれぞれの供給の流速によってそれらの量を計算することによって得られる。
【0113】
第3の視点の下の方法は、好ましくは第2の反応槽中に充填材を供給するステップをさらに含む。充填材は構造的充填材であってもよいが、特に好ましい変形形態は、緩い充填材料からなるか、又は少なくともそれを含む。後者は、設置を容易にし、この文脈において、充填の所望の機能、素通り(streaking)又は望まれない層流の最小化、言いかえれば自由対流、及び第2の反応槽にわたって第3の水性混合物の含有率の全体的な改善された分布を達成する。
【0114】
第3の視点の下の方法は、好ましくは第1の反応槽と第2の反応槽の間の圧力差を、好ましくは混合デバイスの上流及び下流側のそれぞれの場所で求めるステップをさらに含む。第1の反応槽と第2の反応槽の間の圧力差を求めることによって、特に第1の反応槽の出口に位置する混合デバイスの入口側と出口側の間の圧力差を求めることによって混合デバイスが機能しているか、又は例えば目詰りにより機能障害にあるかを作業者は監視することができる。圧力差の監視は最小のデバイスコストで行うことができ、迅速な意思決定及び交換又は修理を可能にする。
【0115】
[実施例]
以下の実施例は、本発明について、その範囲を限定せずに、さらに説明し例証することを意図する。実施例1から3は、実験設備及びバッチ様式で実行し、また連続様式の第1及び第2の視点の下で本発明の方法を行うためのモデル反応としての役目をする。本発明の第2の視点の下の実施形態の1つによる装置及び/又は本発明の第1及び/又は第3の視点の下の好ましい実施形態のうちの1つによる方法を使用して、追加の実験(連続様式において)を行った(図示せず)。そのような追加の実験は、下に論じられる実施例2及び3において得られた有利な結果を裏付けた。
【0116】
[実施例1]プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンの調製(本発明によらない比較の実験)
圧力下で投与(水酸化ナトリウムの水溶液)のために、また圧力下で試料を(反応槽から)抜き取るためにポートを取り付け、磁気撹拌機、油浴、油浴の温度計測及び反応槽の温度計測を装備した50mlのガラス製オートクレーブ(最大圧力荷重1.2MPa)を、以下の実験のために使用した(以下「オートクレーブ」と称す)。
【0117】
5.9%(wt./wt.)の含水率を有する34.18gのアセトン及び2.005gのシトラール(異性体の混合物、ガスクロマトグラフィーで測定した純度97.0%)を室温でオートクレーブに窒素雰囲気下で入れた。結果として得られた混合物を75℃(反応槽;油浴温度:80℃)の温度に加熱し、内圧で激しく撹拌した。次いで、水酸化ナトリウム(140ppmのNaOHと等価、「第1の量の水酸化物」)の1.22%(wt./wt.)の水溶液を0.426g、圧力下での投与のためのポートを通して注射器によって添加し、及び、反応槽からの混合物を用いて注射器を数回パージした(T=0、第1の水性混合物の調製)。
【0118】
水酸化ナトリウムの水溶液の添加の後、反応槽(圧力下の試料抜き取り用のポートを通して)から試料をt=0.25分(すなわち水酸化ナトリウムの水溶液の添加直後に)、その後5分、15分、30分及び60分に抜き取り、いずれの場合も希釈された含水酢酸を用いて直ちに試料を中和した。重量%較正したガスクロマトグラフィーによって中和試料を(i)シトラールの変換率、(ii)プソイドイオノン形成の選択率及び(iii)ヒドロキシプソイドイオノン形成の選択率について分析した。
【0119】
下表1にこれらの分析からの結果を示す。
【0120】
この表において(並びに下記の表2及び3において)、「シトラール変換率[%]」は、それぞれの期間後に変換されていたシトラールの割合(百分率)を意味し、「プソイドイオノン選択率[%]」は、それぞれの期間後にプソイドイオノンに変換されていた、変換されていたシトラールの百分率を意味し(ここで「プソイドイオノン」は上に規定された通りである)、「ヒドロキシプソイドイオノン選択率[%]」は、それぞれの期間後にヒドロキシプソイドイオノンに変換されていた、変換されていたシトラールの百分率を意味する(ここで「ヒドロキシプソイドイオノン」は上に規定された通りである)。
【0121】
「n.d.」は、この場合、データ地点を求めなかったことを意味する。
【0122】
【0123】
[実施例2]プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンの調製(本発明による方法)
実施例1(上記)による実験を遂行したが、追加の量の水酸化物(「第2の量の水酸化物」)を、水酸化ナトリウムの第1の水溶液(「第1の量の水酸化物」)の投与5分後に添加した点は異なる。第2の量の水酸化物として、水酸化ナトリウムの1.2%(wt./wt.)水溶液105mg(35ppmのNaOHと等価)を上に記載の実施例1と類似した方式で注射器によって添加した(「第1の量の水酸化物」の添加を参照のこと)。
【0124】
上の実施例1に記載の方式で反応槽から試料をこの場合も、水酸化ナトリウムの水溶液の前記第1の投与の添加後、t=0.25分(すなわち、水酸化ナトリウムの水溶液の第1の投与の添加後、すなわち「第1の量の水酸化物」の添加の後直ぐに)、及び5分(すなわち、水酸化ナトリウムの水溶液の第2の投与の添加後、すなわち「第2の量の水酸化物」の添加の後直ぐに)、10分、15分、30分及び60分に抜き取った。上記の実施例1に記載のように、やはり直ちに試料を中和しガスクロマトグラフィーで分析した。
【0125】
これらの分析からの結果を下表2に示す。
【0126】
【0127】
上の表2の結果から、本発明による方法は、本発明によらない類似の方法と比較した場合(上記の実施例1を参照)、反応速度の増加(参照、例えば本発明による方法では15分後のシトラール変換率の値は96.3%、表1による比較の方法の94.7%と比較されたし)、主要生成物プソイドイオノンの収率の増加(参照、例えば本発明による方法では15分後のプソイドイオノン形成の選択率の値は86.8%(プソイドイオノンの83.6%の収率に相当)、表1による比較の方法では85.6%(プソイドイオノンの81.1%の収率に相当)と比較されたし)、及びヒドロキシプソイドイオノンの形成についての選択率の有益な減少(参照、例えばそれぞれ本発明による方法では15分後の値は2.2%、表1による比較の方法では2.6%と比較されたし)を示すことがわかる。
【0128】
[実施例3]プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンの調製(本発明による方法)
実施例2(上記)による実験を遂行したが、追加の量の水酸化物(「第2の量の水酸化物」)を、水酸化ナトリウム(「第1の量の水酸化物」)の第1の水溶液の投与10分後に添加した点のみ異なる。水酸化ナトリウムの水溶液の第2の投与の添加後、すなわち「第2の量の水酸化物」の添加後直ぐにt=10分で試料を抜き取った。
【0129】
下表3にこの実施例3からの結果を示す:
【0130】
【0131】
上の表3の結果から、本発明による方法はまた、本発明によらない類似の方法と比較した場合(上記の実施例1を参照)、反応速度の増加(参照、例えば本発明による方法では15分後のシトラール変換率の値は96.5%、表1による比較の方法の94.7%と比較されたし)、主要生成物プソイドイオノンの収率の増加(参照、例えば本発明による方法では15分後のプソイドイオノン形成の選択率の値は85.7%(プソイドイオノンの82.7%の収率に相当)、表1による比較の方法では85.6%(プソイドイオノンの81.1%の収率に相当)と比較されたし)、及びヒドロキシプソイドイオノンの形成についての選択率の有益な減少(参照、例えばそれぞれ本発明による方法では15分後の値は2.2%、表1による比較の方法では2.6%と比較されたし)を示すことがわかる。
【0132】
好ましい実施形態の記載
本発明の好ましい実施形態、特に本発明の第2の視点の下の装置を、添付の図面を参照して以降詳細に記載する。
【図面の簡単な説明】
【0133】
【
図1】好ましい実施形態によるプソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを製造するための装置の模式図である。
【0134】
図1は、上記一般項に記載の本発明によるプソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを製造するための装置1を描く。装置1は、第1の成分供給C
1を生み出す供給ライン3を備える。供給ライン3は、第1の出発材料供給S
1及び第2の出発材料供給S
2を受け取って合わせるように構成された第1の混合機5を備える。第1の出発材料供給S
1は好ましくはシトラールを含み、第2の出発材料供給S
2は好ましくはアセトンを含む。
【0135】
第1の混合機5の下流に、供給ライン3は、合わせた第1及び第2の出発材料供給S1+S2を所定温度へ加熱するように構成された熱交換器7を備える。その下流に、供給ライン3が、第1及び第2の出発材料供給S1+S2を好ましくは水酸化物を含む第3の出発材料供給S3と合わせるように構成された第2の混合機9を備える。第3の出発材料供給S3の温度は、好ましくは熱交換器7の下流の第1及び第2の出発材料供給S1+S2の温度より低い。それとともに、第2の混合機9を出る第1の成分供給C1は、好ましくは所定の設定地点温度を有するように制御することができる。
【0136】
装置1は、好ましい実施形態においてダブル管型反応器である反応器11を備える。反応器11は、入口15及び出口16を有する第1の反応槽13を備える。出口16は、同時に、第1の反応槽13の出口端に配置されてた混合デバイス17の出口部分にある。第1の反応槽13は、反応器11の内側管14によって境界が定められる。
【0137】
反応器11は、反応器11の外側管25及び内側管14によって境界が定められる第2の反応槽23をさらに備え、内側管14及び外側管25が重なる領域において実質上環形状を有する。第1の反応槽13の出口16は、同時に第2の反応槽23への入口である。第2の反応槽23は、反応器11から材料を引き抜くように構成された出口18をさらに備える。ここで示された実施形態において、第2の反応槽はちょうど1つの主要出口18を備えるが、第2の反応槽が少なくとも1つの出口18を備えるように設計され、好ましい実施形態においては、2、3、4、5、6、7、8又はそれ以上の出口18を意味する複数の出口18を備えてもよいことが理解されるものとする。
【0138】
第1の反応槽13の底端部に取り付けられる入口15は、第1の入口であり、反応器11は、混合デバイス17から上流に第2の入口19をさらに備え、第2の入口19は、第2の成分供給C2を受け取って、混合デバイス17へ第2の成分供給C2を分配するように構成される。これを遂行するために、第2の入口19は、混合デバイス17への入口の上流に好ましくは50cm未満の距離H0内に位置する供給管20を備える。供給管20は幾つかの-すなわち、1つ又は複数の-分配出口21を備え、それぞれ、混合デバイス17の方へ配向したオリフィス27を有する。
【0139】
混合デバイス17の上流に、第1の反応槽13は、混合デバイス17に向かって角度αで先細りになったテーパー部26を備え、第1の反応槽13を流れる第1の成分供給C1の流速を増すのに効果的である。
【0140】
図1及び
図2に示される実施形態において、第1の反応槽13は鉛直の上向流カラムであり、第2の反応槽23は実質上環状、鉛直の下向流カラムである。第1の反応槽13中の流速は、反応器11の寸法により第2の反応槽23中の流速より著しく高く、これは
図2でより詳細に示される。第1の入口15の下に、第1の反応槽13は、液体、特に水及び/又は水酸化物を集めるための液溜め28、及び必要があれば第1の反応槽13から速く材料を除去するための排水路30を備える。
【0141】
図2は、装置1の反応器11をより詳細に示す。反応器11の内部で、第1の反応槽13は複数の混合要素29を備え、好ましくは、固定X型混合要素である。混合要素29はカラム高さH
1にわたって分布している。複数の混合要素29から下流に、第1の反応槽31は長さH
2に沿って先細りしている。間の、混合要素29及びテーパー部26、第1の反応槽13及びその内側管14を含む部分は、好ましくは対応する固定手段33、例えば複数のスポークで外側管25と固定される。
【0142】
第1の反応槽13は、穿孔されたカバーシート31を備える。カバーシート31は、槽直径にわたって均一な流動分布を促進するように、すなわち、圧力損失によって、入口管から来る方向の付いた流動(「噴流(jet)」)の崩壊を促進するように構成される。
【0143】
第1の反応槽13は、混合デバイス17の直径D0より大きいが、外側管25の直径D2より小さい直径D1を有し、第2の反応槽23の境界を定める。好ましくは、外側管25の直径D2は、内側管14の直径D1の大きさの1.5x~3.0xである。内側管14の直径D1は、好ましくは混合デバイスの直径D0の3.0x~5.0xの範囲である。
【0144】
カラム高さH1は、好ましくは第1の反応槽の直径D1の関数として規定される。好ましくは比H1/D1は、15:1以上の範囲、さらに好ましくは25:1以上の範囲である。
【0145】
混合デバイス17は流動の方向に長さH3を有している。H3は、好ましくは混合デバイスの直径D0の関数として規定される。好ましくは、比H3/D0は、3:1以上、さらに好ましくは、5:1以上の範囲である。
【0146】
混合デバイス17の出口16の上に、すなわち、第1の反応槽13、第2の反応槽23は、好ましくは高さH4を有する頭頂部室を備える。H4は、好ましくは外側管25の直径D2の関数として規定される。好ましくは比H4/D2は、3:2以上の範囲、さらに好ましくは5:2以上の範囲である。
【0147】
第2の反応槽23は、試料を採取するために少なくとも1つの側面ポート35を備える。さらに、第2の反応槽23は、好ましくは第2の反応槽23の点検のために、及び/又は第2の反応槽23の環状部分へ緩い充填材料を設置するために可逆的に開閉することができる側面開口部39を備える。開口部39はハンドホール又はマンホールであってもよい。
【0148】
反応器11は、充填材料を配置することができる容積の境界を定める第2の反応槽23の環状部分に、例えば、引用符号41によって示される、幾つかの-すなわち、1つ又は複数の-穿孔されたシートを備える。さらに、反応器11は、環状部分の直径にわたって均一な流動分布を促進するように構成された少なくとも1枚のカバーシート37を備える。
【0149】
第2の反応槽の出口端において、出口18の下流に、装置1は、反応器11から引き抜かれた材料の目視検査を可能にする検査ガラス43を備える。さらに、反応器11は、出口供給の材料の温度、圧力及び濃度の少なくとも1つを求めるためにセンサーアセンブリ(sensor assembly)45を備えてもよい。
【0150】
さらに、反応器11は、液溜め28の領域に配置され、湿地(swamp)29の領域の第1の反応槽内の液体レベル及び/又は温度及び/又は水酸化物濃度を求めるように構成されたセンサーアセンブリ47を備えてもよい。排水路ライン30は、水酸化物濃度及び/又は流動パラメーターを求めるように構成されたセンサーアセンブリ49をさらに備えてもよい。
【0151】
可能性として充填材料で充填するための領域内に、第2の反応槽23はまた幾つか-すなわち、1つ又は複数の-温度センサー53を備えてもよい。
【0152】
以下に、本発明の第2の視点の下の装置、及び第3の視点の下のプソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを製造する方法の好ましい態様A1~A15が要約される。
【0153】
態様:
A1.プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを製造するための装置(1)であって、
- 第1の流れ方向に第1の反応槽を通って成分が流れるように配置された、実質上鉛直に配向した第1の反応槽(13)と、
- 第1の反応槽(13)と流体連通状態の、実質上鉛直に配向した第2の反応槽(23)であり、第1の流れ方向と異なる第2の流れ方向に第2の反応槽(23)を通って成分が流れるように配向した、第2の反応槽(23)と
を備え、- 第1の反応槽(13)は、第1の水性混合物を含有する、第1の成分供給(C1)を、入口(15)を通して受け取り、第1の水性混合物の成分をある反応時間反応させることによって第2の水性混合物を生成するように構成され、
- 装置(1)は、第1の反応槽(13)の第1の成分供給入口(15)の下流に位置し、かつ第2の水性混合物が形成された場合に第1の成分供給(C1)に第2の成分供給(C2)を添加するように構成された、混合デバイス(17)を備え、
- 第2の反応槽(23)は、第1の反応槽(13)から混合デバイス(17)で一体になった第1及び第2の成分供給を受け取り、第1及び第2の水性混合物から第3の水性混合物を生成するように構成された、装置(1)。
【0154】
A2.第1の流れ方向が上向きに配向し、第2の流れ方向が下向きに配向し、又はその逆である、態様1に記載の装置(1)。
【0155】
A3.混合デバイス(17)が第1の反応槽(13)の出口端に位置する、態様1又は2に記載の装置(1)。
【0156】
A4.第1の成分供給(C1)を受け取るための、第1の反応槽(13)への入口(15)が第1の入口であり、第1の反応槽(13)は、混合デバイス(17)から上流に位置する第2の成分供給(C2)を受け取るための第2の入口(19)をさらに備え、
好ましくは、第2の入口(19)は、混合デバイス(17)の直ぐ上流に、又は混合デバイス(17)の上流に所定距離で位置し、好ましくは、第1の反応槽(13)の内部で逆流が先行することなく第2の成分供給(C2)全体が混合デバイス(17)に引き込まれるように距離が選択される、態様1から3のいずれか一項に記載の装置(1)。
【0157】
A5.- 第1の反応槽(13)が、混合デバイス(17)の入口の上流に、その方へ次第に細くなったテーパー部(26)を、好ましくは第2の水性混合物の流動速度を加速するために第2の入口の直ぐ上流に備える、
及び/又は
- 第1の反応器への入口(16)と混合デバイス(17)との間の第1の成分供給(C1)の滞留時間を調和させるように構成された幾つかのさらなる混合要素(29)を、第1の反応槽(13)が混合デバイス(17)の上流に備える、
及び/又は
- 第2の反応槽(23)が、対応するカバーを用いて可逆的に開閉されるように構成され、第2の反応槽(23)へ、好ましくは緩い充填材料を含む又はそれからなる充填材を導入するために寸法取りされた開口部(39)を備える、態様1から4のいずれか一項に記載の装置(1)。
【0158】
A6.第1の成分供給(C1)のための入口が、複数の出発材料から第1の成分供給(C1)を生み出すように構成された供給ライン(3)と流体連通状態であり、
好ましくは、供給ライン(3)は第1の混合機(5)及び第2の混合機(9)を備え、第1の混合機(5)は、第1の出発材料供給(S1)と第2の出発材料供給(S2)を合わせるように構成され、第2の混合機(9)は、第1の混合機(5)の下流に位置し、第1の混合機(5)から来る、一体になった第1及び第2の出発供給(S1+S2)を、第3の出発材料供給(S3)と合わせ、第1の成分供給(C1)にするように構成された、態様1から5のいずれか一項に記載の装置(1)。
【0159】
A7.供給ライン(3)が、第3の出発材料供給(S3)の温度より高い所定温度に第1及び第2の出発材料供給(S1、S2)を加熱するように構成された少なくとも1つの加熱デバイス(7)、好ましくは少なくとも1つの熱交換器を備え、
少なくとも1つの加熱デバイスは、好ましくは
- 第1、第2及び第3の出発材料供給速度及び第3の出発材料供給の温度の関数として第1の反応槽(13)に入る前に、第1の成分供給(C1)が所定の設定地点温度に達するように第1及び第2の出発材料を加熱するように構成される、
及び/又は
- 第1及び第2の混合機(5、9)の間に位置する、態様6の装置(1)。
【0160】
A8.第1及び第2の反応槽(13、23)の少なくとも1つが、反応管である、態様1から7のいずれか一項に記載の装置(1)。
【0161】
A9.第2の反応槽(23)が、少なくとも部分的に輪状槽として形成される、態様1から8のいずれか一項に記載の装置(1)。
【0162】
A10.第1の反応槽(13)及び第2の反応槽(23)が、内側管(14)及び外側管(25)を有する1つの共通反応器(11)の一部であり、ここで、第1の反応槽(13)は内側管(14)の容積によって境界が定められ、第2の反応槽(23)は、内側管(14)の容積を差し引いた外側管(25)の容積によって境界が定められる、態様8及び9の装置(1)。
【0163】
A11.プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを、好ましくは先の態様のいずれか1つの装置(1)において製造する方法であって、
- 好ましくは、第1の量の水、アセトン、シトラール及び水酸化物を合わせることによって、好ましくは第1の濃度のアセトン、シトラール及び水酸化物を含む第1の水性混合物を含有する、第1の成分供給(C1)を、入口(15)を通して第1の反応槽(13)へ供給するステップと、
- 第1の水性混合物の成分を、好ましくは、プソイドイオノン、ヒドロキシプソイドイオノン及び4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンが形成され、かつアセトン、シトラール及び水酸化物が消費されるようにある反応時間反応させることによって、第2の水性混合物を生成するステップであり、第2の水性混合物が、好ましくは、第1の水性混合物中のその濃度より高い濃度の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン、第1の濃度より低い第2の濃度の、アセトン、シトラール及び水酸化物、並びにプソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを含む、ステップと、
- 特に第2の水性混合物が形成した場合、第2の成分供給(C2)を、好ましくは第2の量の水酸化物を第1の成分供給入口(15)の下流で第1の成分供給(C1)に添加するステップと、
- 第2の反応槽(23)に第1及び第2の成分供給(C1+C2)を供給し、追加の量のプソイドイオノンが第2の反応槽(23)中の第3の水性混合物中で形成されるように、第2の反応槽(23)中で第2の水性混合物及び第2の成分供給(C2)をある反応時間反応させることによって第3の水性混合物を生成するステップとを含む方法。
【0164】
A12.- 第2の成分供給を添加する前に第2の水性混合物の流動速度を加速するステップ、
及び/又は
- 第1の出発材料供給(S1)と第2の出発材料供給(S2)を合わせ、続いて、一体になった第1及び第2の出発供給を、第3の出発材料供給(S3)と合わせ、第1の成分供給(C1)にすることにより、第1の成分供給(C1)を生み出すステップ、
及び/又は
- 第1の反応槽(13)に入る前に、第1の成分供給(C1)が所定の設定地点温度に達するように、好ましくは第1、第2及び第3の出発材料供給速度並びに第3の出発材料供給の温度の関数として第1及び第2の出発材料を加熱することによって第1及び第2の出発材料供給(S1、S2)を第3の出発材料供給(S3)の温度より高い所定温度に加熱するステップのうちの1つ、幾つか又はすべてを含む、態様11に記載の方法。
【0165】
A13.- 第2の反応槽(23)に到達する前に、第1の反応槽(13)において第1の成分供給(C1)が所定の滞留時間を好ましくは3分以上、さらに好ましくは5分以上の範囲で有するように第1の成分供給(C1)の供給速度を制御するステップ、
及び/又は
- 幾つかの混合要素(29)の用意により第1の反応槽(13)中の第1の成分供給(C1)の滞留時間を調和させるステップ、
及び/又は
- 第2の反応槽(23)中に充填材を供給するステップ、
及び/又は
- 第1の反応槽と第2の反応槽(23)の間の圧力差を、好ましくは混合デバイス(17)の上流及び下流のそれぞれの場所で求めるステップのうちの1つ、幾つか又はすべてをさらに含む、態様11又は12のいずれか一項に記載の方法。
【0166】
A14.b1)以下
- 第1の反応槽(13)の内部で不要に蓄積する水酸化物の量
- 第1の反応槽(13)に入るシトラールの量
- 第1の反応槽(13)の出口又は下流でのシトラールの量、
- 第2の反応槽(23)の出口又は下流でのシトラールの量、
- 第2の反応槽(23)の出口又は下流での水の量、
- 第1の反応槽(13)の出口又は下流でのプソイドイオノン又はヒドロキシプソイドイオノンの少なくとも一方の量、
- 第2の反応槽(23)の出口又は下流でのプソイドイオノン又はヒドロキシプソイドイオノンの少なくとも一方の量
- 第1又は第2の成分供給の少なくとも一方の反応器供給温度、
- 第1又は第2の成分供給の少なくとも一方の反応器滞留時間、又は
- 第1の成分供給(C1)の供給速度
のうち少なくとも1つを求めるステップと、
b2)b1)で求めた量が、それぞれの所定の閾値範囲から外れたら、
- 第1の成分供給(C1)に対する第2の成分供給(C2)の供給速度、又は
- 第1の成分供給(C1)に対する、水酸化物を含むその出発材料供給、好ましくは第3の出発材料供給(S3)の供給速度
のうち少なくとも1つを、b1)で求めた量が閾値範囲の内側へ戻るように増加又は減少させるステップとをさらに含む、態様11から13のいずれか一項に記載の方法。
【0167】
A15.プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを製造するための、態様1から10のいずれか一項に記載のシステムの使用。
(付記)
[付記1]
プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノンを製造する方法であって、
(P1)第1の量の水、アセトン、シトラール及び水酸化物を合わせることによって、第1の濃度のアセトン、シトラール及び水酸化物を含む第1の水性混合物を調製するステップと、(P2)第1の水性混合物の成分を、
プソイドイオノン、ヒドロキシプソイドイオノン及び4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンが形成され、かつ
アセトン、シトラール及び水酸化物が消費される
ようにある反応時間反応させることによって、第2の水性混合物を生成するステップであり、第2の水性混合物が、
- 第1の水性混合物中のその濃度より高い濃度の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン、
- 第1の濃度より低い第2の濃度の、アセトン、シトラール及び水酸化物、並びに
- プソイドイオノン及びヒドロキシプソイドイオノン
を含む、ステップと、
(P3)追加の量のプソイドイオノンが第3の水性混合物中で形成されるように、第2の水性混合物に第2の量の水酸化物を添加することによって、第3の水性混合物を生成するステップと
を含む方法。
[付記2]
ステップ(P3)において、
- 第2の水性混合物に添加される第2の量の水酸化物が、第1の水性混合物の第1の量の水酸化物の5質量%~50質量%の範囲、好ましくは10質量%~40質量%の範囲である、
及び/又は
- 第3の水性混合物中に存在する溶解した水酸化物の濃度が、反応時間の最後に第2の水性混合物中に存在する溶解した水酸化物の濃度より高い、付記1に記載の方法。
[付記3]
- 第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンのモル濃度が70ミリモル/l以上の値に到達した場合、
及び/又は
- 第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度が最大値に到達する前に、又は第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度が最大値に到達した場合、
及び/又は
- 第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オンの濃度がその最大値の≧80%、好ましくは≧85%の値を有する場合、
及び/又は
- 第1の水性混合物が調製された後、3分以上、好ましくは5分以上、かつ第1の水性混合物が調製された後、好ましくは25分未満、より好ましくは20分未満、なおより好ましくは15分未満に、
及び/又は
- ステップ(P2)において第1の水性混合物の成分の反応時間の3分以上後、好ましくは5分以上後、かつステップ(P2)において第1の水性混合物の成分の反応時間の好ましくは25分未満後、より好ましくは20分未満後、なおより好ましくは15分未満後に、
及び/又は
- 第2の水性混合物中の4-ヒドロキシ-4-メチルペンタン-2-オン:アセトンのモル比が1:45~1:8の範囲の値に到達した場合、
ステップ(P3)において第2の量の水酸化物が第2の水性混合物に添加される、付記1又は2に記載の方法。
[付記4]
第1の水性混合物、及び/又は第2の水性混合物、及び/又は第3の水性混合物を、機械的に混合する又はかき混ぜる、付記1から3のいずれか一項に記載の方法。
[付記5]
- 方法の少なくとも一部、好ましくは方法全体が連続的に、好ましくは管型反応器中、より好ましくは栓流挙動に可能な限り近い流動レジメンを示す管型反応器中で行われる、及び/又は
- 第2の量の水酸化物が、第2の水性混合物に連続的に添加される、
付記1から4のいずれか一項に記載の方法。
[付記6]
方法の少なくとも一部、好ましくは方法全体が不連続的に、好ましくはバッチ様式又は半バッチ様式で行われる、付記1から5のいずれか一項、好ましくは付記1から4のいずれか一項に記載の方法。
[付記7]
第2の量の水酸化物が、一括で又は幾つかに分割して、好ましくは一括で、第2の水性混合物に添加される、付記1から6のいずれか一項に記載の方法。
[付記8]
一連のステップ(P2)及び(P3)において反応時間t[(P2)+(P3)]に形成されるプソイドイオノンの総量が、孤立したステップ(P2)において等しい反応時間t[(P2)+(P3)]に形成されるプソイドイオノンの総量より多い、付記1から7のいずれか一項に記載の方法。
[付記9]
方法時間全体が、≧9から≦30分の範囲、好ましくは≧12から≦25分の範囲、より好ましくは>12から≦20分の範囲である、付記1から8のいずれか一項に記載の方法。
[付記10]
- 第1の水性混合物中の水酸化物の第1の濃度が、第1の水性混合物中に存在する水及びアセトンの合計質量に対して0.0015~0.02質量%、好ましくは0.0015~0.0140質量%の範囲、より好ましくは0.0017~0.0070質量%の範囲、さらにより好ましくは0.0020~0.0065質量%の範囲である、
及び/又は
- 第1の水性混合物中に存在する第1の量の水酸化物の第1の水性混合物中に存在する第1の量のシトラールに対するモル比が、1.0~30.0ミリモル/モルの範囲、好ましくは2.0~20.0ミリモル/モルの範囲、より好ましくは2.0~12.0ミリモル/モルの範囲である、
及び/又は
- 第1の水性混合物中に存在するアセトンの総量の第1の水性混合物中に存在するシトラールの総量に対するモル比が、24.0:1~65.5:1の範囲、好ましくは31.5:1~65.5:1の範囲、より好ましくは35.0:1~60.0:1の範囲、なおより好ましくは37.5:1~50.0:1の範囲である、
付記1から9のいずれか一項に記載の方法。
[付記11]
第1の水性混合物を調製するために使用される第1の量の水酸化物、及び/又は第2の水性混合物に添加される第2の量の水酸化物が、1種以上の金属水酸化物によって供給され、
好ましくは
- 1種以上の金属水酸化物が、
- アルカリ金属水酸化物、好ましくはLiOH、NaOH及びKOH、並びに
- アルカリ土類金属水酸化物、好ましくはMg(OH)
2
、Ca(OH)
2
、Sr(OH)
2
及びBa(OH)
2
からなる群から選択され、
より好ましくは、前記1種の金属水酸化物又は前記1種以上の金属水酸化物のうち1種が、アルカリ金属水酸化物、なおより好ましくはLiOH、NaOH及びKOHからなる群から選択され、
最も好ましくは、前記1種の金属水酸化物又は前記1種以上の金属水酸化物のうち少なくとも1種がNaOHである、
及び/又は
- 前記1種以上の金属水酸化物が、液相に溶解した1種以上の金属水酸化物を含み、
好ましくは、前記1種以上の金属水酸化物は1種以上の水性金属水酸化物を含み、
より好ましくは、前記1種以上の金属水酸化物は、1種以上の金属水酸化物の水溶液の形態で供給され、
好ましくは、水溶液は、水溶液中に存在する水及び金属水酸化物の合計質量に対して0.3~1.5質量%の範囲、好ましくは0.35~0.65質量%の範囲、より好ましくは0.4~0.6質量%の範囲の水酸化物イオンの濃度を有する、
付記1から10のいずれか一項に記載の方法。
[付記12]
第1の水性混合物、及び/又は第2の水性混合物、及び/又は第3の水性混合物が、それらの沸点未満で液相を形成し、
好ましくは、
- 第1の水性混合物中及び/又は第2の水性混合物中及び/又は第3の水性混合物中の反応温度は、60~110℃の範囲、好ましくは70~100℃の範囲、より好ましくは70~90℃の範囲である、
及び/又は
- 方法の少なくとも一部、好ましくは方法全体が150~1000kPaの範囲、好ましくは150~700kPaの範囲、より好ましくは200~650kPaの範囲、なおより好ましくは250~600kPaの範囲の圧力で行われる、
及び/又は
- 方法の少なくとも一部、好ましくは方法全体が断熱条件下で行われる、
付記1から11のいずれか一項に記載の方法。
[付記13]
反応条件、好ましくはアセトン、シトラール及び/又は水酸化物の濃度が、第1の水性混合物が単一の液相を形成する、及び/又は第2の水性混合物が単一の液相を形成する、及び/又は第3の水性混合物が単一の液相を形成するように選択又は調節される、付記1から12のいずれか一項に記載の方法。
[付記14]
第3の水性混合物中に存在する水酸化物の総量が液相に溶解する、付記1から13のいずれか一項に記載の方法。
[付記15]
第1の水性混合物が、第1の水性混合物中に存在する水及びアセトンの合計質量に対して3~9質量%の範囲、好ましくは4~8質量%の範囲、より好ましくは5~7質量%の範囲の濃度の水を含む、付記1から14のいずれか一項に記載の方法。