(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】不織布、及び、吸収性物品
(51)【国際特許分類】
A61F 13/537 20060101AFI20240917BHJP
D04H 1/4391 20120101ALI20240917BHJP
D04H 1/64 20120101ALI20240917BHJP
【FI】
A61F13/537 210
D04H1/4391
D04H1/64
(21)【出願番号】P 2021567761
(86)(22)【出願日】2020-12-28
(86)【国際出願番号】 JP2020049114
(87)【国際公開番号】W WO2021132714
(87)【国際公開日】2021-07-01
【審査請求日】2023-10-19
(31)【優先権主張番号】P 2019238366
(32)【優先日】2019-12-27
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000115108
【氏名又は名称】ユニ・チャーム株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000176
【氏名又は名称】弁理士法人一色国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】山口 正史
(72)【発明者】
【氏名】合田 裕樹
【審査官】嘉村 泰光
(56)【参考文献】
【文献】特開平11-081116(JP,A)
【文献】国際公開第97/048846(WO,A1)
【文献】特開2008-264084(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61F 13/53
D04H 1/4391
D04H 1/64
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
吸収性物品に用いられる不織布であって、
複数の顕在捲縮繊維を含み、
1本又は複数本の前記顕在捲縮繊維で形成され、表面から視認可能な円弧部を、複数有し、
前記顕在捲縮繊維の平均繊維長をLとし、前記円弧部上の三つの点を通る円の平均周長をSとしたとき、
S≦2×L
を満たすことを特徴とする不織布。
【請求項2】
請求項1に記載の不織布であって、
S≦L
をさらに満たすことを特徴とする不織布。
【請求項3】
請求項1又は2に記載の不織布であって、
前記顕在捲縮繊維同士が、接着剤により接合されている、
ことを特徴とする不織布。
【請求項4】
請求項3に記載の不織布であって、
前記円弧部の少なくとも一部は、前記接着剤により互いに接合された複数の前記顕在捲縮繊維により構成されている、
ことを特徴とする不織布。
【請求項5】
請求項1から4のいずれか1項に記載の不織布であって、
前記顕在捲縮繊維の繊度が30デニール未満である、
ことを特徴とする不織布。
【請求項6】
請求項1から5のいずれか1項に記載の不織布であって、
前記顕在捲縮繊維の含有量が80重量%よりも大きい、
ことを特徴とする不織布。
【請求項7】
請求項1から6のいずれか1項に記載の不織布であって、
繊維密度が0.065g/cm
3よりも小さい、
ことを特徴とする不織布。
【請求項8】
請求項1から7のいずれか1項に記載の不織布であって、
前記円の平均半径は、前記不織布の厚さよりも小さい、
ことを特徴とする不織布。
【請求項9】
請求項1から8のいずれか1項に記載の不織布であって、
前記表面において、複数の前記円で囲まれる円領域の合計面積よりも、前記円領域以外の領域の面積の方が広い、
ことを特徴とする不織布。
【請求項10】
請求項1から9のいずれか1項に記載の不織布であって、
前記吸収性物品は、
液体を吸収する吸収体と、
前記吸収体よりも肌側に設けられ、厚さ方向に貫通する孔を複数有するシート部材と、
を備えており、
前記シート部材と前記吸収体との間に配置されている、
ことを特徴とする不織布。
【請求項11】
請求項10に記載の不織布であって、
複数の前記円のうちの或る円は、前記シート部材の或る孔と少なくとも一部が重なっており、
別の円は、前記シート部材の前記孔と重なっていない、
ことを特徴とする不織布。
【請求項12】
液体を吸収する吸収体と、前記吸収体よりも肌側に設けられた不織布と、を備えた吸収性物品であって、
前記不織布は、
複数の顕在捲縮繊維を含み、
1本又は複数本の前記顕在捲縮繊維で形成され、表面から視認可能な円弧部を、複数有し、
前記顕在捲縮繊維の平均繊維長をLとし、前記円弧部上の三つの点を通る円の平均周長をSとしたとき、
S≦2×L
を満たすことを特徴とする吸収性物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、不織布、及び、吸収性物品に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、吸収性物品として生理用ナプキンや使い捨ておむつが使用されている。吸収性物品において着用者等の肌が当たる側(吸収体よりも肌側)には、液透過性シート(トップシート、セカンドシート等)が設けられている。液透過性シートには、高い液透過性が求められており、不織布が好適とされている。
【0003】
このような不織布として、例えば特許文献1には、螺旋状(コイル状)の捲縮繊維を含んだものが開示されている。捲縮繊維としては、熱によって螺旋状を発現する潜在捲縮繊維や最初から螺旋状を有する顕在捲縮繊維が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、潜在捲縮繊維を用いる場合、熱処理によって繊維を捲縮させるため、収縮度合を制御することが難しく、大きい螺旋捲縮の形状の状態で留めることが難しい。このため、高粘度液体(軟便等)の透過のための低密度部を意図的に形成することが困難であった。
【0006】
本発明は、上記のような問題に鑑みてなされたものであって、高粘度の液体を透過させやすくすることを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
上記目的を達成するための主たる発明は、吸収性物品に用いられる不織布であって、複数の顕在捲縮繊維を含み、1本又は複数本の前記顕在捲縮繊維で形成され、表面から視認可能な円弧部を、複数有し、前記顕在捲縮繊維の平均繊維長をLとし、前記円弧部上の三つの点を通る円の平均周長をSとしたとき、S≦2×Lを満たすことを特徴とする不織布である。
【0008】
本発明の他の特徴については、本明細書及び添付図面の記載により明らかにする。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、高粘度の液体を透過させやすくすることができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
【
図1】本実施形態の不織布10の概略斜視図である。
【
図2】顕在捲縮繊維11の形状(螺旋形状)についての説明図である。
【
図3】繊維長と捲縮数の関係の評価結果を示す図である。
【
図7】実施例1、実施例2、及び比較例のシート表面の比較図である。
【
図9】繊維長の違いによるシート化時の状態の評価結果を示す図である。
【
図10】おむつ1を腹側から見た概略斜視図である。
【
図11】展開且つ伸長状態であるおむつ1の平面図である。
【
図13】吸収性本体50のトップシート51とセカンドシート52と吸収体53を分離して示した概略斜視図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本明細書及び添付図面の記載により、少なくとも以下の事項が明らかとなる。
【0012】
吸収性物品に用いられる不織布であって、複数の顕在捲縮繊維を含み、1本又は複数本の前記顕在捲縮繊維で形成され、表面から視認可能な円弧部を、複数有し、前記顕在捲縮繊維の平均繊維長をLとし、前記円弧部上の三つの点を通る円の平均周長をSとしたとき、S≦2×Lを満たすことを特徴とする不織布である。
【0013】
このような不織布によれば、円の半周以上の円弧が形成されることになり、円弧の形を維持しやすい。これにより、顕在捲縮繊維に起因した低密度部が形成されるので、高粘度の液体(軟便等)を透過させやすくすることができる。
【0014】
かかる不織布であって、S≦Lをさらに満たすことが望ましい。
【0015】
このような不織布によれば、円が形成されることで、形状をより維持しやすくなる。
【0016】
かかる不織布であって、前記顕在捲縮繊維同士が、接着剤により接合されていることが望ましい。
【0017】
このような不織布によれば、接着剤によって複数本の繊維が絡まりやすい。これにより円の縁部を形成しやすい。
【0018】
かかる不織布であって、前記円弧部の少なくとも一部は、前記接着剤により互いに接合された複数の前記顕在捲縮繊維により構成されていることが望ましい。
【0019】
このような不織布によれば、円の縁部をよりしっかり形成することができる。
【0020】
かかる不織布であって、前記顕在捲縮繊維の繊度が30デニール未満であることが望ましい。
【0021】
このような不織布によれば、ほどよい地合いを実現できる(繊度が大きすぎると本数が少なくなり地合いが取れなくなる)。
【0022】
かかる不織布であって、前記顕在捲縮繊維の含有量が80重量%よりも大きいことが望ましい。
【0023】
このような不織布によれば、液透過性及びクッション性を高めることができる。
【0024】
かかる不織布であって、繊維密度が0.065g/cm3よりも小さいであることが望ましい。
【0025】
このような不織布によれば、液透過性を高めることができる。
【0026】
かかる不織布であって、前記円の平均半径は、前記不織布の厚さよりも小さいことが望ましい。
【0027】
このような不織布によれば、厚さ方向において、円の半周以上の円弧部を形成できる(半径が不織布の厚さ以上の場合、厚さ方向に半周以上の円弧部を形成できない)。
【0028】
かかる不織布であって、前記表面において、複数の前記円で囲まれる円領域の合計面積よりも、前記円領域以外の領域の面積の方が広いことが望ましい。
【0029】
このような不織布によれば、適度な透過性にすることができる(すかすかになり過ぎないようにできる)。
【0030】
かかる不織布であって、前記吸収性物品は、液体を吸収する吸収体と、前記吸収体よりも肌側に設けられ、厚さ方向に貫通する孔を複数有するシート部材と、を備えており、前記シート部材と前記吸収体との間に配置されていることが望ましい。
【0031】
このような不織布によれば、シート部材から吸収体へ高粘度の液体の一部を移行させることができる。
【0032】
かかる不織布であって、複数の前記円のうちの或る円は、前記シート部材の或る孔と少なくとも一部が重なっており、別の円は、前記シート部材の前記孔と重なっていないことが望ましい。
【0033】
このような不織布によれば、重なっている部位があることにより高粘度の液体を吸収体へ移行させやすくなり、また、重ならない部位があることにより不織布からシート部材への逆戻りを抑制できる。
【0034】
また、液体を吸収する吸収体と、前記吸収体よりも肌側に設けられた不織布と、を備えた吸収性物品であって、前記不織布は、複数の顕在捲縮繊維を含み、1本又は複数本の前記顕在捲縮繊維で形成され、表面から視認可能な円弧部を、複数有し、前記顕在捲縮繊維の平均繊維長をLとし、前記円弧部上の三つの点を通る円の平均周長をSとしたとき、S≦2×Lを満たすことを特徴とする吸収性物品である。
【0035】
このような吸収性物品によれば、高粘度の液体(軟便等)を吸収体へと透過させやすくすることができる。
【0036】
===実施形態===
<<不織布について>>
図1は、本実施形態の不織布10の概略斜視図である。
【0037】
本実施形態の不織布10は、おむつや生理用ナプキンなどの吸収性物品に用いられる不織布であり、特に、吸収性物品のセカンドシート(トップシートと吸収体との間に配置されるシート)に好適である。
【0038】
このような吸収性物品では、液体の透過性が良いことが要求される。特に、おむつの場合、粘度の高い液体(軟便等)を透過させることが要求されることがある。そこで、本実施形態の不織布10は、構成繊維として複数の捲縮繊維を含んでおり、後述するように、高い液透過性とクッション性を備えている。
【0039】
捲縮繊維とは捲縮形状(ジグザグ状、Ω状、螺旋状など)を有する繊維であり、本実施形態では、螺旋状の螺旋捲縮繊維を用いている。また、螺旋捲縮繊維として、潜在型の螺旋捲縮繊維(以下、潜在捲縮繊維ともいう)と、顕在型の螺旋捲縮繊維(以下、顕在捲縮繊維ともいう)が知られている。潜在捲縮繊維は、加熱することにより捲縮して螺旋形状を発現する繊維であり、螺旋形状の発現を制御することが難しい。このため、潜在捲縮繊維で不織布を形成すると、一様な密度の構造となりやすく(低密度部ができにくく)、高粘度の液体を透過させることが出来ないおそれがある。
【0040】
そこで本実施形態の不織布10では、捲縮繊維として、最初から螺旋状を有する顕在捲縮繊維11を用いている。すなわち、本実施形態の不織布10は、複数の顕在捲縮繊維11を含んでいる。本実施形態では、顕在捲縮繊維11として、単一成分(例えばポリエステル)で構成された繊維を用いている。また、不織布10は、1本又は複数本の顕在捲縮繊維11で形成され、表面から視認可能な円弧部(
図2に示す円弧部12)を、複数有している。
【0041】
図2は、顕在捲縮繊維11の形状(螺旋形状)についての説明図である。ここでは、1本の繊維(顕在捲縮繊維11)について示している。図において、顕在捲縮繊維11の繊維長をLとし、円弧部12の三つの点を通る円13の周長をSとする。
【0042】
図に示すように、S>2×Lの場合、円弧部12は円13の半周未満の円弧となっており、円弧の形状を維持しにくい。また、高粘度の液体(軟便等)を透過させるための低密度部が形成されにくい。
【0043】
そこで、本実施形態では、S≦2×Lを満たすようにしている。この場合、顕在捲縮繊維11によって円13の半周以上の円弧部12が形成されることになり、円弧部12の形状を維持しやすい。これにより、不織布10には、顕在捲縮繊維11に起因した低密度部が形成されやすくなり、高粘度の液体(軟便等)を透過させやすくすることができる。
【0044】
さらに、S≦Lを満たす場合、円弧部12が少なくとも円形状になって円13が形成される。これにより、螺旋状の形状をより維持しやすくなる。ただし、以下に説明するエアレイド法で形成された顕在捲縮繊維11の場合は、Sが小さすぎると、円13が小さくなって液透過性が悪化するため、S>L/4あるいはS>L/5であることが好ましい。また、以下に記載のカード機によって形成された顕在捲縮繊維11の場合はS>L/17であることが好ましい。
【0045】
なお、
図2では、円弧部12(円13)が1本の顕在捲縮繊維11で形成されているが、不織布10において、円弧部12(円13)が複数本の顕在捲縮繊維11で形成されていてもよい。
【0046】
不織布10の製法としては、顕在捲縮繊維11を含む短繊維をエアレイドで積層してウェブを形成し、液体バインダー(接着剤に相当)で繊維同士を接合し、乾燥させてシート化する方法が挙げられる。なお、エアレイドには限られず、例えば、カード機でウェブを形成してもよい。この場合、エアレイドよりも地合いが良好になるため、より長い繊維長のものを使用可能である。ただし、カード機に対して、エアレイドの方が工程中で螺旋捲縮形状が維持されやすい。よって、エアレイドでウェブを形成する方がより好ましい。
【0047】
本実施形態では上述したように液体バインダーで繊維を接合している。換言すると、顕在捲縮繊維11同士が液体バインダーで接合されている。これにより、複数本の顕在捲縮繊維11が絡まりやすいので、円13の縁部を形成しやすい。
【0048】
液体バインダーとしては、アクリル酸エステル共重合体、エチレン・酢酸ビニル共重合体、ポリビニルアルコール(PVA)、スチレン・ブタジエン(SBR)等のエマルジョンバインダーを用いることができる。
【0049】
さらに、上記のエマルジョンバインダー中に、ジルコニウムやゼオライト等の無機イオン交換体に銀イオンを担持させた無機系抗菌剤や、ジルコニウムやシリカ等の無機質に水酸基(-OH)やアミノ基(-NH2)を付加させた平均粒径0.1~5μmの無機系消臭剤を均一分散させた調整液を繊維に塗布することにより、伸縮性及び嵩回復性に加え、抗菌性や消臭性を有する親水性不織布を得ることができる。また、これには限られず、他の機能剤(軟便改質剤など)を塗布してもよい。
【0050】
また、円弧部12の少なくとも一部が、液体バインダー(接着剤)により接合された複数の顕在捲縮繊維11により構成されていることが好ましい。これにより、円13の縁部をよりしっかり形成することができる。
【0051】
また、顕在捲縮繊維11の平均繊維長は、5~15mmであることが好ましい(後述の実施例1参照)。なお、ここでの繊維長は、繊維を引き延ばした状態における繊維長さである。繊維長が5mmより短いと捲縮状態における円13が小さくなって液透過性が低下する。また繊維長が15mmよりも長いと繊維同士が絡まりやすくなりエアレイドが困難になる(地合いが取れなくなる)。平均繊維長が5~15mmであることにより、適度な大きさの円弧部12(円13)を形成でき、ほどよい地合いを実現できる。ただし、カード機でウェブを製造する場合、地合いが良好になるので上記の繊維長よりも長くても良い。具体的には、カード機を用いる場合の平均繊維長は、25~76mmであることが好ましく、35~51mmであることがより好ましい。この場合もS≦2×Lを満たすようにすればよい。なお、この場合、S>L/25程度でもよい。
【0052】
また、顕在捲縮繊維11の繊度が大きすぎると本数が少なくなり地合いが取れなくなる(不均一になる)ため、顕在捲縮繊維11の繊度は、30デニール(33.6dtex)未満が好ましい。更に好ましくは、3.6~8.9デニール(4~10dtex)が良い。これにより、ほどよい地合いを実現できる。
【0053】
また、不織布10における顕在捲縮繊維11の含有量は80重量%よりも大きいことが好ましい。ここでいう含量量とは、不織布10における繊維全体の中での顕在捲縮繊維11の割合を意味する。本実施形態の不織布10を構成する繊維としては顕在捲縮繊維11のみが用いられており、不織布10には他に接着剤も含まれているものの、繊維だけを見ると、顕在捲縮繊維11の割合が100重量%である。なお、顕在捲縮繊維11のみに限らず、他の繊維が含まれていてもよいが、その場合においても、顕在捲縮繊維11が80重量%よりも大きい割合で含まれていることが好ましい。これにより、液透過性及びクッション性を高めることができる。
【0054】
また、不織布10の繊維密度は0.065g/cm3よりも小さいことが好ましい。これにより、液透過性を高めることができる。
【0055】
また、円13の半径が不織布10の厚さ以上の場合、厚さ方向に円13の半周以上の円弧部12を形成できないため、円13の平均半径は、不織布10の厚さよりも小さいことが好ましい。これにより、厚さ方向において、円13の半周以上の円弧部12を形成することができ、クッション性を向上させることができる。なお、不織布10の厚さは、シート(不織布)を70℃の熱風乾燥機に10分入れて十分に嵩回復をした後、厚み計(大栄科学精器製作所製,THICKNESS GAUGE UF-60)を用いて測定を行うことができる。また、厚さ方向に形成される円弧の半径は、電子顕微鏡の画像で視認可能な部分(半円以上)とする。不織布10の厚さと円13の平均半径の値については、後述する。
【0056】
<<実施例>>
以下、本発明の内容について実施例により具体的に説明する。
【0057】
<繊維形状の評価>
サンプル:シート化前の顕在捲縮繊維(繊維長5mm~20mmはジェットオープナーで開繊後、繊維長51mmはカード機による開繊後)
材質 :ポリエチレンテレフタレート(PET)
繊維長:5mm、10mm、15mm、20mm、51mm(カット品の平均値)
評価項目:捲縮数、捲縮半径
測定機器:キーエンス製 VHX-7100
【0058】
上記サンプルについて、形成されている円弧部分の中心角が180度以上になるか否かを判定し、180度以上になるもの(S≦2×L)をOK(○)とし、180度未満のもの(S>2×L)をNG(×)とした(
図2参照)。なお、中心角は、測定機器(VHX-7100)の計測モード(円弧)で円弧両端を含む計3点を選択して自動計測させ、180度以上か否かを判定した。さらに判定でOK(○)となった繊維の繊維形状(捲縮数、捲縮半径)を評価した。
【0059】
(捲縮数)
図3は、繊維長と捲縮数の関係の評価結果を示す図である。図では参考に一般繊維についても示している。捲縮数としては、測定機器で測定された実測値と、1インチ当たりに換算した値とを示している。なお、
図3に示す捲縮数は、任意の繊維30本について、上記判定でOKとなった捲縮部の数の平均値である。
図3に示すように、繊維長が長いほど、捲縮数(実測値)が大きくなっている。ただし、1インチ当たりの捲縮数は、繊維長にかかわらずほぼ同じ値(約6個)となっている。
【0060】
(捲縮半径)
図4は、捲縮半径の評価結果を示す図である。ここでは上記の判定でOKの円弧部12によって形成される円13(円弧部12の三つの点を通る円)の半径を求めた。捲縮半径は、測定機器(VHX-7100)の計測モード(半径)で円弧上の3点を指定することで自動計測した。
なお、
図4に示す捲縮半径は、
図3と同様に、任意の繊維30本について、上記判定でOKとなった捲縮部全ての半径の平均値である。捲縮半径は、1インチ当たりの捲縮数と同様に、繊維長にかかわらず、ほぼ同じ値(約0.9~1mm)となっている。
【0061】
<シート化時の状態評価>
実施例1は、次の通り作成した。上記顕在捲縮繊維のうち、繊維長5mmのものをエアレイド法でフォーミングし、35gsmの繊維ウェブを得た。続いて得られた繊維ウェブをバインダー用のアクリル系エマルジョンに含浸、水切り後に150℃の乾燥機を通過させることで、繊維同士が接着剤で結合されたシートを得た。得られたシートの平均坪量は50g/cm2であった。
また実施例2は、次の通り作成した。上記顕在捲縮繊維のうち、繊維長51mmのものをカード法でフォーミングし、35gsmの繊維ウェブを得た。続いて得られた繊維ウェブをバインダー用のアクリル系エマルジョンに含浸、水切り後に150℃の乾燥機を通過させることで、繊維同士が接着剤で結合されたシートを得た。得られたシートの平均坪量は50g/cm2であった。
また比較例として、機械捲縮のみの一般的な繊維(螺旋捲縮でない繊維)を用いたシート(不織布)も観察した。比較例は次の通り作成した。繊維長5mmで太さが8.7TであるPE/PET(S/C)繊維をエアレイド法でフォーミングし、145℃の乾燥機を通過させることで、繊維の鞘側のPE同士が熱融着されたシートを得た。得られたシートの平均坪量は50g/cm2であった。
【0062】
図5は、シートの表面の観察結果を示す図である。また
図6はシートの断面の観察結果を示す図である。なお、
図5、
図6では、電子顕微鏡(日立テクノロジーズ社製のFLEX SEM1000)を用いて、倍率30倍で観察を行った。また、
図7は、実施例1、実施例2、及び比較例のシート表面の比較図である。
図7では、実施例1、実施例2、及び比較例について、それぞれ、3枚(No1、No2、No3)のシートの観察を行った結果を示している。また、
図8は、
図7の実施例1(No1)の拡大図である。
図8では、顕在捲縮繊維によって形成された円13を図示している。なお、
図7、
図8では、デジタルマイクロスコープ(キーエンス社製のVHX-7100)を用いて観察を行った。
【0063】
図8に示すように、実施例1の表面には、1本又は複数本の顕在捲縮繊維によって複数の円13が形成されている。これらの円13で囲まれた円領域Rは、繊維の密度が低い低密度部となっている。これに対し、比較例では実施例1のような円が形成されておらず、ほぼ均等に繊維が配置されている(
図5、
図7参照)。このように、実施例1では比較例よりも低密度の部位(円領域R)が多く形成されており、比較例よりも高粘度の液体を透過させやすい。また、
図6に示すように、実施例1及び2では、厚さ方向にも円弧が形成されていることにより、比較例よりも厚みが大きくなっており、クッション性が向上している。
【0064】
また、
図8に示す円13の半径は、測定機器(VHX-7100)の計測モード(半径)で円弧上の3点を指定することで自動計測した。この際、複数の螺旋捲縮繊維が束のように絡まって一つの円弧部を形成しているような場合は、束になっている部分の中央部分で3点を指定して半径を計測した。その結果、
図8に示す複数の円13の平均半径は0.73mmであり、円13の平均周長は4.58mmであった。顕在捲縮繊維の繊維長が5mmであるので、S≦2×Lを満たしている。ここで、平均周長とは、顕在捲縮繊維による円弧部が10個以上視認される領域(
図8では長辺約16mm、短辺約12mmの矩形領域)で、10個以上の円13を抽出し、その各円13の周長を平均することによって求められるものである。なお、上記の平均周長は、抽出した円13の平均半径で形成される円の周長と等しくなる(平均半径から平均周長を求めることができる)。
【0065】
また実施例1のNo2、No3についてもそれぞれ、同様に複数の円13(円領域R)が形成されており(図示省略)、No2における円13の平均半径は0.82mm、No3における円13の平均半径は0.83mmであった。No2における円13の平均周長は5.02mm、No3における円13の平均周長は5.21mmであるので、ともに、S≦2×Lを満たしている。また、実施例2のNo1、No2、No3についてもそれぞれ、同様に複数の円が形成されており(図示省略)、No1、No2、No3における円の平均半径は、それぞれ、0.87mm、0.89mm、0.95mmであった。そして、実施例2のNo1、No2、No3における円の平均周長は、それぞれ、5.54mm、5.57mm、5.94mmであり、各々がS≦2×Lを満たしている。
【0066】
また、上述の方法により、不織布10の厚さを厚み計でそれぞれ測定した場合、実施例1(繊維長5mm)では1.65mm、実施例2(繊維長51mm)では2.76mm、比較例(非螺旋伸縮繊維)では、0.76mmの厚さであった。顕在捲縮繊維による円弧部が形成される実施例1及び実施例2においては、上述の複数の円の各平均半径が何れも不織布の厚さよりも小さい値である。
【0067】
なお、
図8に示すシート表面において、複数の円13で囲まれる円領域Rの合計面積よりも、円領域R以外の面積の方が大きいことが好ましい。これにより、適度な液透過性にすることができる(逆の場合、すかすかになり過ぎて、液体を透過させ過ぎるおそれがある)。
【0068】
図9は、繊維長の違いによるシート化時の状態の評価結果を示す図である。ここでは、エアレイド法で形成された、繊維長が5mm、10mm、15mm、20mmの顕在捲縮繊維を用いて、それぞれ、シートを3枚作成し(No1,No2,No3)、シート表面の観察を行った。
【0069】
図9において、繊維長が5mmより長くても、シート化した際に螺旋形状は維持されており(すなわち顕在捲縮繊維によって複数の円が形成されており)、液透過性の向上を図ることができる。なお、繊維長が長くなると、繊維同士が絡まって地合いが取れなくなる傾向がある。このため、エアレイド法で形成された螺旋捲縮繊維の場合、繊維長は5~15mmが好ましい。
【0070】
一方で、カード機により開繊してウェブを作製する場合、カード機のワイヤーに繊維を引っ掛けてほぐしながら均一な繊維ウェブを形成するため、ある程度繊維長が長い方がワイヤーに引っ掛かり易い。そして、ワイヤー上でのウェブの受け渡しを繰り返すことで繊維の方向性を整え、繊維同士が均一な地合いになっていく。それゆえ、カード機により形成された螺旋捲縮繊維の場合は、繊維長は25~64mmが好ましい。
【0071】
<<吸収性物品について>>
以下では、本実施形態の不織布10をパンツ型使い捨ておむつ1(以下、単に「おむつ1」とも呼ぶ)に適用した場合を例に挙げて説明する。ただし、これに限定されず、例えば、他の型のおむつ、生理用ナプキン、おりものシート、尿取りパッド等のその他の吸収性物品に対しても適用可能である。
【0072】
図10は、おむつ1を腹側から見た概略斜視図である。
図11は、展開且つ伸長状態であるおむつ1の平面図である。
図12は、
図11中のA-A概略断面図である。なお、
図11における「伸長状態」とは、製品(おむつ1)を皺なく伸長させた状態、具体的には、おむつ1を構成する各部材(例えば、後述する前身頃部30等)の寸法がその部材単体の寸法と一致又はそれに近い長さになるまで伸長した状態のことを言う。また、
図13は、吸収性本体50のトップシート51とセカンドシート52と吸収体53を分離して示した概略斜視図である。
【0073】
おむつ1は、
図10のパンツ型状態において、互いに直交する三方向として上下方向と左右方向(幅方向ともいう)と前後方向とを有している。そして、以下では、上下方向において、着用者の胴側となる側を「上側」とし、着用者の股下となる側を「下側」とする。前後方向において、着用者の腹側となる側を「前側」とし、着用者の背側となる側を「後側」とする。また、左右方向において、おむつ1を前側から見た時の右側を「右側」とし、左側を「左側」とする。
【0074】
一方、
図11、
図12の展開状態においては、おむつ1は、互いに直交する三方向として長手方向と左右方向と厚さ方向とを有している。なお、展開状態における上記の左右方向(幅方向)は、パンツ型状態(
図10)における上記の左右方向と同じ方向である。また、展開状態の長手方向は、パンツ型状態の上下方向に沿った方向である。また、
図12に示すように、上下方向(長手方向)及び左右方向と直交する「厚さ方向」のうち、着用対象者(着用者)の肌と当接する側を「肌側」とし、その反対側を「非肌側」とする。
【0075】
本実施形態のおむつ1は、股下外装部20と、前身頃部30と、後身頃部40と、吸収性本体50と、を有する。なお、股下外装部20、前身頃部30、及び、後身頃部40は、外装部材に相当し、吸収性本体50に接合されている。そして、これらの外装部材により、
図11に示すように、腹側胴回り部1A、股間部1B、及び、背側胴回り部1Cが構成されている。なお、本実施形態のおむつ1では外装部材が3部材(股下外装部20、前身頃部30、後身頃部40)で構成されているが、これに限らない。例えば、股下外装部20、前身頃部30、及び、後身頃部40が1つの部材であってもよい。また、股下外装部20を有さない構成としてもよい。
【0076】
股下外装部20は、おむつ1の着用時に着用者の股下に位置する部位(股間部1Bの一部を構成する部位)である。股下外装部20はスパンボンド不織布等によって形成されている。
【0077】
前身頃部30は、おむつ1の着用時に着用者の腹側胴回りに位置する部位(主に腹側胴回り部1Aを構成する部位)である。前身頃部30は、厚さ方向に重ねられた腹側内層シート31と、腹側外層シート33を有する。
図12に示すように、腹側内層シート31は厚さ方向の肌側に配置され、腹側外層シート33は厚さ方向の非肌側に配置されている。腹側外層シート33の上端部は腹側内層シート31の上端部よりも上側に突出しており、当該突出した部分は前身頃部30の上端30euの位置にて厚さ方向の肌側の下方に折り返され、折り返し部33fを形成している。前身頃部30の上端30euが折り返し部33fによって覆われることにより、おむつ1の着用時において前身頃部30の上端エッジ(すなわち胴回り開口BH)が着用者の肌に食い込みにくくなり、腹側胴回り部1Aにおける不快感を生じにくくすることができる。
【0078】
また、腹側内層シート31と腹側外層シート33の厚さ方向の間には、糸ゴム等の弾性部材が設けられている。本実施形態では、
図11及び
図12に示すように、前身頃部30の左右方向の右側端部と左側端部との間の領域に、複数の腹側胴回り弾性部材34が設けられている。複数の腹側胴回り弾性部材34は、上下方向に間隔を空けて、且つ、所定の伸長倍率で横方向に伸長された状態で腹側内層シート31と腹側外層シート33との間に挟まれて接合されている。このように設けられた腹側胴回り弾性部材34によって、おむつ1の前身頃部30に幅方向の伸縮性が付与される。
【0079】
また、前身頃部30の胴回り開口BHの縁に沿った領域には複数のウエスト弾性部材35が同様に上下方向に間隔を空けて設けられている。
【0080】
後身頃部40は、おむつ1の着用時に着用者の背側胴回りに位置する部位(主に背側胴回り部1Cを構成する部位)である。後身頃部40の構造は、前身頃部30と略同様である。すなわち、後身頃部40は、厚さ方向に重ねられた背側内層シート41と背側外層シート43を有している。背側外層シート43の上端部は背側内層シート41の上端部よりも上側に突出しており、当該突出した部分は後身頃部40の上端40euの位置にて厚さ方向の肌側の下方に折り返され、折り返し部43fを形成している。これにより、おむつ1の着用時において後身頃部40の上端エッジ(胴回り開口BH)が着用者の肌に食い込みにくくなり、背側胴回り部1Cにおける不快感を生じにくくすることができる。
【0081】
また、
図11及び
図12に示すように、後身頃部40の左右方向の右側端部と左側端部との間の領域に、複数の背側胴回り弾性部材44が設けられている。複数の背側胴回り弾性部材44は、上下方向に間隔を空けて、且つ、所定の伸長倍率で左右方向に伸長された状態で背側内層シート41と背側外層シート43との間に挟まれて接合されている。この背側胴回り弾性部材44によって、おむつ1の後身頃部40に幅方向の伸縮性が付与される。また、後身頃部40の胴回り開口BHの縁に沿った領域には複数のウエスト弾性部材45が同様に上下方向に間隔を空けて設けられている。なお、上下方向に隣接する背側胴回り弾性部材44の間隔、及び、ウエスト弾性部材45の間隔は、それぞれ、腹側胴回り弾性部材34の間隔、及び、ウエスト弾性部材35の間隔と同じである。
【0082】
また、
図11に示すように、前身頃部30及び後身頃部40の一対の脚回り開口HLの縁に沿った領域にも例えば糸ゴム等の脚回り弾性部材36、46がそれぞれ複数設けられている。複数の脚回り弾性部材36、46は、腹側内層シート31と腹側外層シート33の間、及び、背側内層シート41と背側外層シート43の間に、伸長した状態で取り付けられている。そのため、前身頃部30及び後身頃部40は着用者の脚回りにフィットする。
【0083】
吸収性本体50は、尿等の排泄物を吸収する機能を有し、
図11に示すように平面視略長方形をなし、その長手方向をおむつ1の上下方向に沿わせつつ左右方向の中央に配置されている。吸収性本体50の詳細については後述する。
【0084】
そして、
図11の展開状態に各部材を配置(接合)した後、吸収性本体50の長手方向(上下方向)の所定位置CLを折り位置として同吸収性本体50が二つ折りされるとともに、この二つ折りの状態において互いに対向する前身頃部30及び後身頃部40が腹側サイド接合部30es及び背側サイド接合部40esにて溶着等で接合される。これにより、前身頃部30及び後身頃部40が環状に繋がって、
図1に示すような胴回り開口BH及び一対の脚回り開口LH,LHが形成されたパンツ型状態のおむつ1となる。
【0085】
<吸収性本体50について>
吸収性本体50は、前述したように、尿等の排泄物(液体)を吸収する機能を有している。本実施形態のおむつ1において、吸収性本体50は、
図12に示すように、厚さ方向の肌側(着用者に接する側)から順に、少なくとも一部が液透過性のトップシート51と、液透過性のセカンドシート52(不織布10)と、吸収体53と、液不透過性のバックシート54を有している。
【0086】
トップシート51(シート部材に相当)は、例えば不織布であり、厚さ方向に貫通する孔51aが複数形成されている。このようにトップシート51が不織布である場合、レーヨン等のセルロース繊維、合成樹脂繊維等から形成されたスパンレース不織布、前記合成樹脂繊維で形成されたエアスルー不織布等を用いることができる。本実施形態のトップシート51は、セカンドシート52の顕在捲縮繊維11よりも繊度の小さい繊維で形成されている。なお、不織布には限られず、多数の液透過孔が形成された樹脂フィルム、多数の網目を有するネット状シートなどでもよい。樹脂フィルムやネット状シートの素材としては、ポリプロピレン(PP)、ポリエチレン(PE)、ポリエチレンテレフタレート(PET)等が挙げられる。
【0087】
なお、トップシート51が、ポリプロピレン、ポリエチレン等の熱可塑性樹脂繊維によって構成される場合、孔51aの形成は、例えば、加熱されたピン部材(不図示)等を使用して行うことが可能である。具体的には、複数のピン部材が配置された上型と、複数の穴が配置された下型とからなる上下一対の金型を使用して、シートに貫通孔を形成できる。すなわち、上型の各ピン部材が、下型の各穴に差し込まれることにより、上型及び下型に挟まれたシート(ここではトップシート51)に貫通孔(孔51a)が形成される。
【0088】
トップシート51に形成される孔51aの孔径及び配置は、それぞれ、上型のピン部材の太さ及び配置によって調整可能である。また、孔51aの配列は千鳥状、格子状、波状など、特に限定されない。また、本実施形態において孔51aの形状は丸(円)型であるが、これには限られず、例えば楕円型、四角型等でもよい。
【0089】
バックシート54は、液不透過性のシートであり、吸収体53に吸収された液体(排泄物等)が外へ漏れ出すのを防止できる材料が使用される。また、透湿性素材とすることにより、装着時のムレを低減させることができ、装着時における不快感を低減させることが可能となる。
【0090】
このような材料としては、例えば、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)等を主体とした液不透過性フィルム、通気性フィルム、スパンボンド等の不織布の片面に液不透過性フィルムをラミネートした複合シート等が挙げられる。好ましくは、疎水性の不織布、不透水性のプラスチッククフィルム、不織布と不透水性プラスチックフィルムとのラミネートシート等を用いることができる。また、耐水性の高いメルトブローン不織布を強度の強いスパンボンド不織布で挟んだSMS不織布でも良い。
【0091】
吸収体53は、排泄物(液体)を吸収して内部に保持する機能を有する部材である。吸収体53は、嵩高であり、型崩れし難く、化学的刺激が少ないものであることが好ましい。例えば、フラッフ状パルプもしくはエアレイド不織布と高吸収ポリマーとからなる吸収体材料を例示できる。
【0092】
フラッフ状パルプとしては、例えば、化学パルプ、セルロース繊維、レーヨン、アセテート等の人工セルロース繊維を例示できる。エアレイド不織布としては、例えば、パルプと合成繊維とを熱融着させたもの又はバインダーで固着させたものを例示できる。高吸収ポリマー(SAP)としては、例えば、デンプン系、アクリル酸系、アミノ酸系の粒子状又は繊維状のポリマーを例示できる。
【0093】
吸収体53の形状及び構造は必要に応じて変えることができるが、吸収体53の全吸収量は、吸収性物品としての設計挿入量及び所望の用途に対応させる必要がある。また、吸収体53のサイズや吸収能力等は用途に対応して変動される。
【0094】
なお、本実施形態の吸収体53は、2層構造であり、上層コア53aと、上層コア53aよりも厚さ方向の非肌側に配置された下層コア53bと、を有して構成されている。ただし、これには限られず、吸収体53が1層構造で構成されていてもよい。また、吸収体53がティッシュ等の液透過性シートで被覆されていてもよい。
【0095】
また、
図13に示すように、トップシート51と吸収体53との間(すなわち、吸収体53よりも肌側)には、本実施形態の不織布10で構成されたセカンドシート52が設けられている。セカンドシート52は、トップシート51との密度勾配による吸収性の向上、排泄物の逆戻り防止、クッション性の向上等の役割を果たすためのシートである。本実施形態のセカンドシート52(不織布10)は、顕在捲縮繊維11によって形成される低密度部があることにより、高粘度の液体の一部をトップシート51から吸収体53へと移行させやすい。
【0096】
図13において、トップシート51には複数の孔51aが複数設けられており、セカンドシート52には、1本又は複数本の顕在捲縮繊維11によって形成される円13が複数設けられている。本実施形態において、孔51aと円13はほぼ同じ大きさである。また、トップシート51の孔51aは所定の配列(パターン)で形成されているのに対し、セカンドシート52の円13は、ランダムに形成されている。このため、孔51aと円13が互いに重なる部位と、互いに重ならない部位が存在する。換言すると、セカンドシート52の複数の円13のうちの或る円13は、トップシート51の或る孔51aと少なくとも一部が重なっており、別の円13は、トップシート51の孔51aと重なっていない。このように、円13と孔51aが互いに重なっている部位があることにより高粘度の液体を吸収体53へ移行させやすくなる。また、重ならない部位があることによりセカンドシート52からトップシート51への逆戻りを抑制できる。
【0097】
以上説明したように、本実施形態の不織布10は軟便等の高粘度の液体を透過させやすいので、おむつ1のセカンドシート52に適用することにより、高粘度の液体の一部を、トップシート51から吸収体53へ移行させやすくすることができる。
【0098】
===その他の実施の形態===
以上、本発明の実施形態について説明したが、上記の実施形態は、本発明の理解を容易にするためのものであり、本発明を限定して解釈するためのものではない。また、本発明は、その趣旨を逸脱することなく、変更や改良され得るとともに、本発明にはその等価物が含まれるのはいうまでもない。例えば、以下に示すような変形が可能である。
【0099】
前述の実施形態の不織布10では、顕在捲縮繊維11が単一成分(例えばPET)で形成されていたが、これには限られず、例えば、2成分の素材で形成されていてもよい。
【0100】
前述の実施形態のおむつ1は、吸収体53よりも肌側に2枚のシート(トップシート51及びセカンドシート52)を備えており、セカンドシート52に不織布10を用いていたがこれに限られない。例えば、吸収体53よりも肌側が1枚のシートのみであってもよい。この場合、当該シートに不織布10を用いても良い。
【符号の説明】
【0101】
1 パンツ型使い捨ておむつ(吸収性物品)
1A 腹側胴回り部
1B 股間部
1C 背側胴回り部
10 不織布
11 顕在捲縮繊維
12 円弧部
13 円
20 股下外装部
30 前身頃部
30es 腹側サイド接合部
30eu 上端
31 腹側内層シート
33 腹側外層シート
33f 折り返し部
34 腹側胴回り弾性部材
35 ウエスト弾性部材
36 脚回り弾性部材
40 後身頃部
40es 背側サイド接合部
40eu 上端
41 背側内層シート
43 背側外層シート
43f 折り返し部
44 背側胴回り弾性部材
45 ウエスト弾性部材
46 脚回り弾性部材
50 吸収性本体
51 トップシート(シート部材)
51a 孔
52 セカンドシート(不織布)
53 吸収体
53a 上層コア
53b 下層コア
54 バックシート
BH 胴回り開口
LH 脚回り開口