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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】元素分析装置
(51)【国際特許分類】
   G01N 1/22 20060101AFI20240917BHJP
   G01N 31/12 20060101ALI20240917BHJP
   G01N 25/00 20060101ALI20240917BHJP
   F27B 14/14 20060101ALI20240917BHJP
   G01N 25/18 20060101ALI20240917BHJP
   F27B 14/06 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
G01N1/22 R
G01N31/12 B
G01N25/00 K
F27B14/14
G01N25/18 K
F27B14/06
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2022505878
(86)(22)【出願日】2021-02-18
(86)【国際出願番号】 JP2021006092
(87)【国際公開番号】W WO2021182058
(87)【国際公開日】2021-09-16
【審査請求日】2023-12-21
(31)【優先権主張番号】P 2020042044
(32)【優先日】2020-03-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(72)【発明者】
【氏名】井上 貴仁
(72)【発明者】
【氏名】内原 博
【審査官】北条 弥作子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2017/099120(WO,A1)
【文献】実開平05-033056(JP,U)
【文献】特開2010-008229(JP,A)
【文献】特開2010-008233(JP,A)
【文献】実開平07-038963(JP,U)
【文献】実開平02-095863(JP,U)
【文献】特開2012-047737(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2012/0213244(US,A1)
【文献】米国特許第4234541(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 1/22
G01N 31/12
G01N 25/00
F27B 14/14
G01N 25/18
F27B 14/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
るつぼに入れられた試料が加熱され、当該試料から試料ガスを発生させる加熱炉を備えた元素分析装置であって、
前記加熱炉が、
第1電極と、
前記第1電極との間で前記るつぼを挟持する炉閉位置と、前記炉閉位置から所定距離離間した炉開位置との間を移動可能に構成された第2電極と、
前記第2電極を前記炉閉位置と前記炉開位置との間で移動させる駆動機構と、
前記加熱炉内に開口し、ダストを吸入する吸塵口を具備する吸塵流路と、
前記吸塵流路上において前記加熱炉側に接続された吸入ポートと、前記吸塵流路上において排出側に接続された吐出ポートと、作動流体が供給される駆動ポートと、を具備するエジェクタと、を備え、
前記駆動機構が、前記第2電極を前記炉閉位置から前記炉開位置に移動させる場合に、前記エジェクタの前記駆動ポートに作動流体が流入するように構成されたことを特徴とする元素分析装置。
【請求項2】
前記駆動機構が、作動流体が流入又は流出する第1ポートを具備し、当該第1ポートから作動流体が流入した場合にピストンロッドが引き込まれて前記第2電極が前記炉開位置側へ移動するように構成された流体圧シリンダであり、
前記第1ポートから前記流体圧シリンダ内に作動流体が流入する場合に、前記駆動ポートから前記エジェクタ内にも作動流体が流入するように構成された請求項1記載の元素分析装置。
【請求項3】
作動流体の供給源と前記第1ポートとの間を接続する第1供給ラインと、
前記第1供給ラインから分岐し、前記駆動ポートに接続された駆動ラインと、をさらに備えた請求項2記載の元素分析装置。
【請求項4】
前記流体圧シリンダが、作動流体が流入又は流出する第2ポートを具備し、当該第2ポートから作動流体が流入した場合に前記ピストンロッドが押し出されて前記第2電極が前記炉閉位置側へ移動するように構成された請求項2又は3記載の元素分析装置。
【請求項5】
前記流体圧シリンダがエアシリンダであり、作動流体が圧縮空気である請求項2乃至4いずれかに記載の元素分析装置。
【請求項6】
前記吸塵流路が内部に形成され、前記第2電極を支持する支持体をさらに備え、
前記流体圧シリンダの前記ピストンロッドが前記支持体に接続された請求項2乃至5いずれかに記載の元素分析装置。
【請求項7】
前記吸塵流路が、前記支持体の表面に開口する複数の吸塵ポートを具備する請求項6記載の元素分析装置。
【請求項8】
前記第2電極が前記炉開位置にある場合に、前記第1電極と前記第2電極との間に移動して、前記第1電極又は前記第2電極からダストを落とすように構成された清掃機構をさらに備え、
前記清掃機構が前記第1電極又は前記第2電極から落としたダストが、前記吸塵流路を介して前記加熱炉内から回収されるように構成された請求項1乃至7いずれかに記載の元素分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、試料を加熱して生成される試料ガスに基づいて、試料中に含まれる元素を分析する元素分析装置に関するものである。
【背景技術】
【0002】
試料中に含まれる例えば窒素(N)、水素(H)、酸素(O)等の元素を定量するために元素分析装置が用いられる。このような元素分析装置は、試料を収容した黒鉛るつぼを加熱炉内において上部電極と下部電極との間に挟持し、当該るつぼに直接電流を流して、るつぼ及び試料を加熱する。加熱により発生した試料ガスとキャリガスからなる混合ガスは、ダストフィルタに通過させてすす等のダストが濾過される。濾過された後の混合ガスに含まれる各種成分の濃度は、NDIR(Non Dispersive Infrared:非分散型赤外線ガス分析計)やTCD(Thermal Conductivity Detector熱伝導度検出器)等からなる分析機構によって測定される。
【0003】
ところで、加熱炉内のるつぼを交換したり、加熱炉内のメンテナンスを行ったりするために下部電極を下方に移動させて加熱炉を開放すると、上部電極や下部電極に付着しているダストが散らされて加熱炉内等が汚れてしまうことがある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-32264号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本発明は上述したような問題に鑑みてなされたものであり、簡単な機構によって加熱炉が開放された場合に加熱炉内が吸引されて、ダストが散らされないようにできる元素分析装置を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
すなわち、本発明に係る元素分析装置は、るつぼに入れられた試料が加熱され、当該試料から試料ガスを発生させる加熱炉を備えた元素分析装置であって、前記加熱炉が、第1電極と、前記第1電極との間で前記るつぼを挟持する炉閉位置と、前記炉閉位置から所定距離離間した炉開位置との間を移動可能に構成された第2電極と、前記第2電極を前記炉閉位置と前記炉開位置との間で移動させる駆動機構と、前記加熱炉内に開口し、ダストを吸入する吸塵口を具備する吸塵流路と、前記吸塵流路上において前記加熱炉側に接続された吸入ポートと、前記吸塵流路上において排出側に接続された吐出ポートと、作動流体が供給される駆動ポートと、を具備するエジェクタと、を備え、前記駆動機構が、前記第2電極を前記炉閉位置から前記炉開位置に移動させる場合に、前記エジェクタの前記駆動ポートに作動流体が流入するように構成されたことを特徴とする。
【0007】
このようなものであれば、前記第2電極が前記炉閉位置から前記炉開位置へ移動するのに合わせて前記エジェクタに吸引作用を発揮させることができる。
【0008】
したがって、前記加熱炉が開放されるのに伴って散らされるダストは、前記エジェクタの吸引作用によって前記加熱炉内の前記吸塵口から前記吸塵流路を介して回収できる。
【0009】
しかも、エジェクタの特性として供給される作動流体の流量に対して数倍の流量を吸引できるので、前記加熱炉内を強力に吸引してダストをほぼ完全に吸引することも可能となる。
【0010】
前記エジェクタに吸引作用を発揮させるための作動流体によって前記駆動機構を動作させるようにして装置全体の構成を簡素なものにするには、前記駆動機構が、作動流体が流入又は流出する第1ポートを具備し、当該第1ポートから作動流体が流入した場合にピストンロッドが引き込まれて前記第2電極が前記炉開位置側へ移動するように構成された流体圧シリンダであり、前記第1ポートから前記流体圧シリンダ内に作動流体が流入する場合に、前記駆動ポートから前記エジェクタ内にも作動流体が流入するように構成されたものであればよい。
【0011】
前記流体圧シリンダを動作させて前記第2電極を前記炉開位置側へ移動させる場合に、切換弁等を制御しなくても前記エジェクタに対して自動的に作動流体が同時に供給されるようにして、前記加熱炉の開放動作と前記エジェクタによる吸引動作を連動させられるようにするには、作動流体の供給源と前記第1ポートとの間を接続する第1供給ラインと、前記第1供給ラインから分岐し、前記駆動ポートに接続された駆動ラインと、をさらに備えたものであればよい。
【0012】
前記第2電極を前記炉閉位置に移動させた場合に、前記第1電極と前記第2電極との間で前記るつぼが十分な力で挟持できるようにするには、前記流体圧シリンダが、作動流体が流入又は流出する第2ポートを具備し、当該第2ポートから作動流体が流入した場合に前記ピストンロッドが押し出されて前記第2電極が前記炉閉位置側へ移動するように構成されたものであればよい。
【0013】
前記作動流体を前記元素分析装置が用いられるような環境で用意しやすいものにし、使い捨てできるようにして、前記エジェクタによる吸引力を大きくできるようにするには、前記流体圧シリンダがエアシリンダであり、作動流体が圧縮空気であればよい。
【0014】
前記吸塵流路が内部に形成され、前記第2電極を支持する支持体をさらに備え、前記流体圧シリンダの前記ピストンロッドが前記支持体に接続されたものが挙げられる。
【0015】
前記加熱炉内から偏りなくダストを吸引できるようにするには、前記吸塵流路が、前記支持体の表面に開口する複数の吸塵ポートを具備するものであればよい。
【0016】
前記加熱炉が開放された後で前記第1電極又は前記第2電極に付着しているダストを清掃するための具体的な構成例としては、前記第2電極が前記炉開位置にある場合に、前記第1電極と前記第2電極との間に移動して、前記第1電極又は前記第2電極からダストを落とすように構成された清掃機構をさらに備え、前記清掃機構が前記第1電極又は前記第2電極から落としたダストが、前記吸塵流路を介して前記加熱炉内から回収されるように構成されたものが挙げられる。
【発明の効果】
【0017】
このように本発明に係る元素分析装置であれば、前記第2電極が前記炉開位置に移動する場合には、前記エジェクタに作動流体が供給されて吸引作用を発揮するように構成されているので、前記加熱炉が開放されるのに伴って散るダストを前記吸塵流路により回収できる。このような簡素な構成により、前記加熱炉が開放中にダストで汚されてしまうのを防ぐことができる。
【図面の簡単な説明】
【0018】
図1】本発明の一実施形態における元素分析装置の全体構成を示す模式図。
図2】同実施形態における加熱炉及びその周辺の構造を示す模式図。
図3】同実施形態における下部電極(第2電極)の周辺の構造を示す模式的斜視図。
図4】同実施形態におけるエジェクタの構成を示す模式的断面図。
図5】本発明の別の実施形態における加熱炉及びその周辺の構造を示す模式図。
図6】本発明のさらに別の実施形態における加熱炉及びその周辺の構造を示す模式図。
【符号の説明】
【0019】
100・・・元素分析装置
1 ・・・供給源
2 ・・・精製器
3 ・・・加熱炉
31 ・・・上部電極(第1電極)
32 ・・・下部電極(第2電極)
33 ・・・支持体
34 ・・・エアシリンダ
35 ・・・ピストンロッド
36 ・・・シリンダ
37 ・・・エジェクタ
DL ・・・吸塵流路
DP ・・・吸塵口
4 ・・・ダストフィルタ
41 ・・・メンブレンフィルタ
42 ・・・フィルタホルダ
5 ・・・CO検出部
6 ・・・酸化器
7 ・・・CO検出部
8 ・・・HO検出部
9 ・・・除去機構
10 ・・・マスフローコントローラ
11 ・・・N検出部(熱伝導度分析部)
【発明を実施するための形態】
【0020】
本発明の一実施形態に係る元素分析装置100について各図を参照しながら説明する。図1に本実施形態の元素分析装置100の概略を示す。元素分析装置100は、黒鉛るつぼMP内に収容された例えば金属試料やセラミックス試料等(以下、単に試料という)を加熱溶解し、その際に発生する試料ガスを分析することにより、当該試料内に含まれている元素の量を測定するものである。第1実施形態では試料中に含まれているO(酸素)、H(水素)、N(窒素)が測定対象となる。
【0021】
具体的には図1に示すように、元素分析装置100は、るつぼMPに収容された試料が加熱される加熱炉3と、加熱炉3に対してキャリアガスを導入する導入流路L1と、加熱炉3からキャリアガスと試料ガスの混合ガスが導出される導出流路L2と、を備えている。より具体的には、元素分析装置100は、加熱炉3と、導入流路L1又は導出流路L2に設けられた各機器と、各機器の制御や測定された濃度等の演算処理を司る制御演算機構COMによって構成されている。制御演算機構COMは例えばCPU、メモリ、A/Dコンバータ、D/Aコンバータ、各種入出力手段を備えたいわゆるコンピュータであって、メモリに格納されているプログラムが実行され、各種機器が協業することにより後述する測定値算出部C1、モード設定器C2としての機能を発揮する。また、制御演算機構COMは後述する、例えばCO検出部5、CO検出部7、HO検出部8、N検出部11の出力に基づいて試料中に含まれる各種元素の濃度を表示する表示部(図示しない)としての機能も発揮する。
【0022】
各部について詳述する。
【0023】
導入流路L1の基端にはキャリアガスの供給源1であるガスボンベが接続されている。第1実施形態では供給源1からHe(ヘリウム)が導入流路L1内に供給される。また、導入流路L1上にはキャリアガスに含まれる微小量の炭化水素を除去し、キャリアガスの純度を上昇させる精製器2が設けられている。
【0024】
精製器2はキャリアガス中に含まれる炭化水素を物理的に吸着し、キャリアガス自体は実質的に吸着しない特性を有する材料で形成されている。なお、精製器2を形成する材料はキャリアガス又は炭化水素とは化学的には反応しない。すなわち、この精製器2は例えばガスクロマトグラフにおいても用いられるものであり、この精製器2を形成する材料として例えばゼオライト系モレキュラーシーブを用いることができる。また、精製器2を形成する材料としてはシリカゲルや活性炭、アスカライト等であっても構わない。この精製器2は例えば加熱することにより吸着されている分子を脱着し、その吸着能を再生できる。また、精製器2の下流側には炭化水素又は炭化水素が化学変化した物質は流れないので、導入流路L1において精製器2と加熱炉3との間には例えばCOやHOを除去するための試薬などは設けられていない。なお、精製器2と加熱炉3との間には図示しない調圧弁が設けられており、加熱炉3内におけるキャリアガスの圧力が所定値で一定に保たれるようにしてある。
【0025】
加熱炉3は、試料を収容した黒鉛るつぼMPを一対の電極である第1電極と第2電極により挟持し、当該るつぼMPに直接電流を流して、るつぼMP及び試料を加熱するように構成されている。具体的には図2等に示されるように加熱炉3は、内部空間が形成された円筒状の第1電極である上部電極31と、内部空間内に挿入されて、るつぼMPを上部電極31との間に挟持する円柱状の第2電極である下部電極32とを備えている。
【0026】
上部電極31には導入流路L1から供給されるキャリアガスを内部空間に供給するための貫通穴が上下方向に形成されている。また、試料から生成された試料ガスとキャリアガスの混合ガスは、上部電極31の側面に形成された貫通穴を介して導出流路L2に流れ出す。
【0027】
また、下部電極32は図2に示すように駆動機構に相当する直動流体圧シリンダであるエアシリンダ34によって上下方向に進退するように構成されている。すなわち、具体的にはるつぼMP内の試料が加熱される場合には、エアシリンダ34によって下部電極32は上方に移動し、上部電極31の内部空間内に挿入される。この状態では、るつぼMPは上部電極31と下部電極32との間に挟持される。また、下部電極32は、側面に外周側に突出するように設けられたシール部により上部電極31の下側開口を気密に閉塞する。この結果、試料が加熱されることにより発生する試料ガスとキャリアガスとが混合された混合ガスは上部電極31の側面側から導出流路L2へと流れ出す。
【0028】
言い換えると下部電極32は、図2(a)に示すように上部電極31との間でるつぼを挟持する炉閉位置と、図2(b)に示すように炉閉位置から所定距離離間した炉開位置との間を移動可能に構成されている。本実施形態では炉開位置に対して炉閉位置は下方に配置されている。炉閉位置では内部で発生する試料ガスが外部へ漏洩しないように、加熱炉3は図示しない扉が閉じられる。一方、炉開位置ではるつぼMPの交換、あるいは、加熱炉3内の清掃やメンテナンスのために図示しない扉が開放される。
【0029】
下部電極32が炉開位置に移動し、加熱炉3が開放される際には、加熱炉3内が自動的に吸引されて、上部電極31及び下部電極32等に付着しているすす等のダストが回収されるように構成されている。
【0030】
以下では加熱炉3における吸引動作に関連する構成について詳述する。
【0031】
下部電極32は、概略扁平直方体状に形成された底面部を有する支持体33によって支持されている。この支持体33の外側にエアシリンダ34のピストンロッド35が接続されており、エアシリンダ34で支持体33を上下方向に移動させることにより、下部電極32は炉閉位置と炉開位置との間で移動する。
【0032】
エアシリンダ34には、作動流体である圧縮空気が流入又は流出する第1ポートSP1及び第2ポートSP2がシリンダ36の側面に開口している。第1ポートSP1に対して圧縮空気が流入する場合には、ピストンロッド35がシリンダ36内に引き込まれる。第2ポートSP2に対して圧縮空気が流入する場合にはピストンロッド35がシリンダ36の外側に押し出される。すなわち、シリンダ36内ではピストンロッド35によって第1ポートSP1に連通した第1室と、第2ポートSP2に連通した第2室とが区成されており、圧縮空気の流出入により第1室及び第2室の圧力差を変更することで、ピストンロッド35の押出量が制御される。本実施形態では圧縮空気の供給源と第1ポートSP1との間は、第1供給ラインSL1で接続されており、供給源と第2ポートSP2との間は第2供給ラインSL2で接続されている。供給源から第1ポートSP1又は第2ポートSP2のいずれに圧縮空気を供給するかや、供給する圧縮空気の量は、供給源が具備する圧縮空気制御機構により制御される。なお、圧縮空気制御機構は例えばモード設定器C2から入力される加熱炉3の炉開指令、又は、炉閉指令に応じた予め定められた動作を行うように構成されている。
【0033】
また、支持体33の底面部の炉内側表面には図3に示すようにダストを吸入するための吸塵口DPが複数開口している。具体的には、支持体33の底面部の中央に下部電極32が支持されており、四隅にそれぞれ吸塵口DPが開口している。加えて、支持体33の内部には、図2に示すように前述した吸塵口DPを具備する吸塵流路DLが形成されている。
【0034】
本実施形態では支持体33内に形成された吸塵流路DLにおいて加熱炉3の内部側と吸入ポートVPが接続されるようにエジェクタ37が設けられている。また、エジェクタ37の駆動ポートAPと第1供給ラインSL1との間は、第1供給ラインSL1から分岐する駆動ラインALで接続されている。すなわち、圧縮空気の供給源からエアシリンダ34の第1ポートSP1に圧縮空気が供給されると、並行してエジェクタ37の駆動ポートAPに対しても圧縮空気が供給されるように構成されている。加えて、エジェクタ37の吐出ポートEPは、吸塵流路DLにおいて例えばダストボックス等がある排気側に接続される。
【0035】
ここで、本実施形態のエジェクタ37について詳述すると、図4に示すようにエジェクタ37は概略円筒形状をなすものであり、一方の端面に吸入ポートVPが形成され、他方の端面に吐出ポートEPが形成されている。また、エジェクタ37の側面には作動流体である圧縮空気が流入する駆動ポートAPが形成されている。駆動ポートAPはエジェクタ37の内部に形成された図示しないノズルと連通しており、圧縮空気がノズルを通過することで生じる空気の減圧によって、図4(a)に示すように吸入ポートVPから気体が吸入される。また、駆動ポートAPから流入する圧縮空気と、吸入ポートVPから吸入された気体は、混合された状態で吐出ポートEPから外部へと吐出される。ここで、駆動ポートAPから流入する圧縮空気の流量に対して、吐出ポートEPから吐出される流量は例えば3~4倍程度となる。すなわち、吸入ポートVPから吸入される気体の流量は、駆動ポートAPへ流入する圧縮空気の2~3倍程度となる。このようにエジェクタ37は、駆動ポートAPに圧縮空気を流入させることにより、吸入ポートVPに吸引力を発生させ、吸塵口DPから加熱炉3内のダストを吸引する。
【0036】
次に導出流路L2上に設けられている各機器について説明する。
【0037】
図1に示すように導出流路L2上には、加熱炉3から導出された混合ガスが流入するダストフィルタ4と、ダストフィルタ4を通過した混合ガス中から1又は複数の所定成分を検出する分析機構AMと、が設けられている。本実施形態では分析機構AMは、CO検出部5、酸化器6、CO検出部7、HO検出部8、除去機構9、マスフローコントローラ10、熱伝導度分析部であるN検出部11からなり、各機器が導出流路L3において上流側からこの順番で並べて設けられている。
【0038】
各部について詳述する。
【0039】
ダストフィルタ4は、混合ガスに含まれているすすなどのダストを濾し取り、除塵するものである。
【0040】
CO検出部5は、ダストフィルタ4を通過した混合ガスに含まれるCO(一酸化炭素)を検出し、その濃度を測定するものであり、NDIR(非分散型赤外線ガス分析計)で構成されている。このCO検出部5は、その測定精度から試料内部に含まれている酸素が高濃度の場合に有効に動作する。具体的には150ppm以上のCOを測定対象とするのが好ましい。
【0041】
酸化器6は、CO検出部5を通過した混合ガスに含まれるCOやCOを酸化するとともに、HをHO(水)に酸化して水蒸気を生成するものである。この酸化器6として第1実施形態では酸化銅が用いられており、その温度は周囲に設けられた発熱抵抗体により450℃以下の温度に保たれている。
【0042】
CO検出部7は、酸化器6を通過した混合ガス中のCOを検出して、その濃度を測定するNDIRである。このCO検出部7は、測定精度の観点から試料に含まれる酸素が低濃度(例えば150ppm未満)の場合に有効に動作する。
【0043】
O検出部8は、CO検出部7を通過した混合ガス中のHOを検出して、その濃度を測定するNDIRである。なお、酸化器6からHO検出部8に至るまでの流路は混合ガスの温度が100℃以上に保たれて、HOが水蒸気の状態を保つように構成されている。このようにして、結露による測定誤差がHO検出部8において発生しないようにしている。
【0044】
除去機構9は、混合ガス中に含まれているCO及びHOを吸着して除去するものである。この除去機構9は吸着剤によって構成されており、例えば前述した導入流路L1に設けられた精製器2と同じものが用いられる。したがって、除去機構9を構成する吸着剤としては例えばゼオライト系モレキュラーシーブを用いることができる。また、除去機構9を形成する材料としてはシリカゲルや活性炭、アスカライト等であっても構わない。この精製器2は例えば加熱することにより吸着されている分子を脱着し、その吸着能を再生できる。除去機構9自体でCO及びHOが物理的に吸着されるので、除去機構9の下流側には炭化水素又は炭化水素が化学変化した物質は流れない。このため、導出流路L2上にはCOやHOと化学的に反応して除去する試薬などは設けられていない。
【0045】
マスフローコントローラ10は、流量センサ、制御バルブ、流量制御器(それぞれ図示しない)が1つのパッケージとなった流量制御デバイスである。このマスフローコントローラ10は、下流側にあるN検出部11には設定流量で一定に保たれた混合ガスを供給する。すなわち、除去機構9においてCO及びHOが除去されることにより混合ガスに圧力変動が生じてもマスフローコントオーラは自動的にその変動を反映してN検出部11に供給される混合ガスの流量を一定に保つ。このため、除去機構9によって混合ガスに圧力の変動が生じても、N検出部11における混合ガスの圧力を測定に適した値に保つことができる。また、マスフローコントローラ10は低差圧タイプのものであり、加熱炉3内の圧力を60kPaに保つことができるように60kPaよりも低い圧力で動作するように構成されている。
【0046】
検出部11は、TCD(熱伝導度検出器)であり、混合ガスの熱伝導度の変化と、供給されている混合ガスの流量から混合ガスに含まれている所定成分であるNの濃度を測定する。すなわち、N検出部11に供給される混合ガスはほぼキャリアガスとNだけで構成されているので、混合ガス中に含まれるNの濃度は測定される熱伝導度の変化に対応した値となる。また、第1実施形態ではN検出部11の下流側には流量計は設けられておらず、N検出部11の下流側は導出流路L2の排気口に直結されている。
【0047】
このように構成された元素分析装置100の分析フローについて図1を参照しながら説明する。
【0048】
加熱炉3内において試料を収容したるつぼMPに直接電流を流してつぼMPを通電加熱する。この加熱時には導入流路L1からキャリアガスを加熱炉3内が60kPa以下で保たれるように供給し続ける。加熱炉3内において熱分解還元により生じる試料ガスはキャリアガスにより導出流路L2に導出される。
【0049】
加熱炉3から導出されたキャリアガスと試料ガスからなる混合ガスはダストフィルタ4を通った後CO検出部5に導かれる。ここで、CO検出部5に導入される試料ガスに含まれている可能性のある成分はCO、H、Nである。CO検出部5においてCOの濃度が測定される。
【0050】
次にCO検出部5を通過した混合ガスは、酸化器6に導かれる。ここで、混合ガスに含まれるCOはCOに酸化され、HはHOに酸化される。したがって、酸化器6を通過した試料ガスに含まれている可能性のある成分はCO、HO、Nである。
【0051】
酸化器6を通過した混合ガスはCO検出部7に導かれる。このCO検出部7によって混合ガスに含まれるCOの濃度が測定される。
【0052】
CO検出部7を通過した混合ガスはHO検出部8に導かれ、混合ガス中に含まれるHOの濃度が測定される。
【0053】
O検出部8を通過した混合ガスは除去機構9に導かれる。除去機構9においてはCO、HOが吸着除去されるので、除去機構9を通過した試料ガスに含まれている可能性のある成分はNのみとなる。
【0054】
除去機構9を通過した混合ガスはマスフローコントローラ10によって設定流量で一定の流量に保たれた状態でN検出部11に導かれる。N検出部11ではNの濃度が測定される。
【0055】
各検出部で得られた各成分の濃度を示す測定信号は測定値算出部C1に対して入力される。測定値算出部C1は各測定信号に基づき、試料に含まれているO,H,Nの濃度を算出する。なお、測定値算出部C1は、試料に含まれる酸素濃度を算出する際に試料内部の酸素濃度が所定の閾値(150ppm)以上の場合にはCO検出部5で得られた酸素濃度を出力値とし、閾値未満の場合にはCO検出部7で得られた酸素濃度を出力値とする。
【0056】
このように構成された元素分析装置100であれば、図2(b)に示すように下部電極32を炉開位置に移動させるためにエアシリンダ34の第1ポートSP1に圧縮空気を供給すると、エジェクタ37の駆動ポートAPにも圧縮空気が供給される。したがって、例えば掃除機等を別途動作させなくても、加熱炉3を開放しながら同時に加熱炉3内のダストを吸塵口DPから吸引できる。このため、開放動作に伴って加熱炉3内がダストで汚れてしまうのを防ぐことができる。また、従来のように吸塵流路に掃除機を設ける場合、ポンプを加熱炉から離れた位置に配置しなくてはならず、当該吸塵流路における圧損が大きくなってしまうため、効率よく加熱炉3内のダストを効率よく吸引するのが難しかった。これに対して本実施形態の元素分析装置100であれば、ポンプに対して小型のエジェクタ37を吸塵流路DLに設けているので、エジェクタ37を加熱炉3のすぐそばに配置して圧損を生じにくくできる。この結果、ダストの吸引効率を従来よりも高くできる。
【0057】
また、吸塵流路DL上にエジェクタ37を設けるとともに、エアシリンダ34を動作させるための第1供給ラインSL1とエジェクタ37の駆動ポートAPとの間を駆動ラインALで接続するだけで加熱炉3の開放動作に連動させて加熱炉3内を吸引できる。したがって、開閉動作と加熱炉3内の吸引を連動させるために高度な制御機器を用いる必要がない。また、エアシリンダ34を動作させるための動力源とエジェクタ37を動作させるための動力源とを共通化できるので、簡素な構成で加熱炉3内のダストを回収できる。
【0058】
加えて、エジェクタ37を用いているので、駆動ポートAPに供給する圧縮空気の流量をそれほど大きくしなくても、加熱炉3内にダストを吸引するのに十分な吸引力を発揮させることができる。
【0059】
本発明のその他の実施形態について説明する。
【0060】
図5に示すように下部電極32が炉開位置にある場合に、上部電極31と下部電極32との間に移動して、上部電極31又は下部電極32からダストを落とすように構成された清掃機構38をさらに備えたものであってもよい。この清掃機構38は、加熱炉3内に配置された状態において上部電極31と接触する上部ブラシ38Aと、下部電極32と接触する下部ブラシ38Bと、上部ブラシ38A及び下部ブラシ38Bを回転させるアクチュエータ38Cと、上部電極31又は下部電極32から落とされたダストを受け、各吸塵口DPと連通するように配置されるダスト収容器38Dと、を備えている。このような清掃機構38であれば、上部電極31又は下部電極32から落としたダストが、周辺を汚すことなく、速やかに吸塵流路DLを介して回収されるようにできる。
【0061】
また、エジェクタ37については前記実施形態において説明したものに限られない。例えば図6(a)に示すように概略円筒状のエジェクタ37の側面に吸入ポートVPが形成され、一方の端面に駆動ポートAPが形成され、他方の端面にノズルNZと連通する吐出ポートEPが形成されたものであってもよい。このようなエジェクタ37を用いる場合には図6(b)に示すように吸塵流路DLに対して加熱炉3側と連通するようにエジェクタ37の側面に形成された吸入ポートVPを接続し、一方の端面に形成された駆動ポートAPに作動流体である圧縮空気が流入するように第1供給ラインSL1から分岐する駆動ラインALを接続すればよい。
【0062】
さらに、エジェクタの駆動ポートに接続される駆動ラインは第1供給ラインから分岐しているものに限られず、圧縮空気の供給源と直接接続されているものであってもよい。このような構成の場合には、流体圧シリンダの第1ポートに対して作動流体を供給するのに同期させて、エジェクタの駆動ポートに対して作動流体が供給されるように供給源を構成すればよい。
【0063】
エアシリンダは、前記実施形態のように2つのポートを具備する複動型のものに限られず、単動型のものであっても構わない。すなわち、エアシリンダが第1ポートのみを具備しており、内部に設けられたばねの反発力によってエアシリンダの一方の動作が行われるようにしてもよい。本発明を適用するのであれば、第1ポートから圧縮空気を供給する場合には、ピストンロッドが引き込まれて、下部電極が炉開位置に移動するようにし、ばねの反発力によってピストンロッドが押し出されて下部電極が押し出されるように構成すればよい。
【0064】
下部電極を動作させるためのアクチュエータは、エアシリンダに限られるものではなく、水や油等のその他の作動流体を用いた水圧シリンダ、油圧シリンダ等の流体圧シリンダであっても構わない。また、第2電極である下部電極を駆動するのは流体圧シリンダに限られず、例えばリニアモータやサーボモータとボールねじからなる駆動機構等であってもかまわない。このような場合にはモータの動作により第2電極が炉閉位置から炉開位置に移動する場合に、エジェクタの駆動ポートに作動流体が連動して流入するように制御系を構成すればよい。吸塵流路については支持体内に形成された物に限られず、各種パイプやホースで形成されたものであっても構わない。また、実施形態において第1電極は上部電極であり、第2電極は下部電極であったが、この関係は逆であってもよい。また、第2電極の移動方向は上下方向に限られず、例えば水平方向であってもよい。すなわち、炉閉位置と炉開位置が上下方向に離間した物に限られず、水平方向やその他の方向に設定されたものであっても構わない。第2電極を水平方向に動かす場合には、実施形態において示した各電極の形状とは異なる形状であってもよい。
【0065】
前述した実施形態において、精製器は加熱された酸化銅/還元銅で構成し、導入流路において精製器と加熱炉との間にその下流側には脱CO/HO剤を設けてもよい。また、除去機構についても吸着でCO及びHOを除去するものに限られず、試薬により化学的な反応によってCO及びHOを除去するものであってもよい。
【0066】
元素分析装置は、元素としてO(酸素)、H(水素)、N(窒素)が測定対象となるものに限られない。すなわち、分析機構がH(水素)だけを測定対象とするものであってもよい。より具体的には、元素分析装置は、キャリアガスとしてArを用いるものであり、導出流路上には、ダストフィルタ、酸化器、除去機構、分離カラム、マスフローコントローラ、熱伝導度分析部であるH検出部が上流側からこの順番で並べて設けられているものであってもよい。また、このような実施形態では、酸化器は常温酸化剤であればよいし、除去機構はCOのみを吸着剤によって除去するものであればよい。
【0067】
分析機構は前述した実施形態に限られるものではない。例えばマスフローコントローラの代わりにニードルバルブを設けておき、一定開度で保つようにしてもよい。また、分析機構は複数の成分を検出するものであってもよいし、単一の成分を検出するものであってもよい。
【0068】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や、各実施形態の一部同士の組み合わせを行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0069】
本発明であれば、簡単な機構によって加熱炉が開放された場合に加熱炉内が吸引されて、ダストが散らされないようにできる元素分析装置を提供できる。
図1
図2
図3
図4
図5
図6