(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】複合フィルター材
(51)【国際特許分類】
B01D 71/56 20060101AFI20240917BHJP
B01D 69/10 20060101ALI20240917BHJP
B01D 69/12 20060101ALI20240917BHJP
B01D 71/40 20060101ALI20240917BHJP
B01D 71/68 20060101ALI20240917BHJP
C08G 69/00 20060101ALI20240917BHJP
【FI】
B01D71/56
B01D69/10
B01D69/12
B01D71/40
B01D71/68
C08G69/00
(21)【出願番号】P 2022579704
(86)(22)【出願日】2021-06-22
(86)【国際出願番号】 US2021038531
(87)【国際公開番号】W WO2021262750
(87)【国際公開日】2021-12-30
【審査請求日】2023-03-08
(32)【優先日】2020-06-23
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】505307471
【氏名又は名称】インテグリス・インコーポレーテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】チョン, クウォシュン
(72)【発明者】
【氏名】ジェイバー, ジャド エー.
(72)【発明者】
【氏名】ユイ, トニー
(72)【発明者】
【氏名】ウー, メイベル
(72)【発明者】
【氏名】ウー, トンチュー
(72)【発明者】
【氏名】ハムズィク, ジェームス
【審査官】中村 泰三
(56)【参考文献】
【文献】特開昭61-283305(JP,A)
【文献】国際公開第2019/212707(WO,A1)
【文献】特開2008-007902(JP,A)
【文献】特表2019-526431(JP,A)
【文献】特表2008-520403(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01D 69/00-12
B01D 71/26-68
C08G 69/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
複合多孔質フィルター膜を
調製するための方法であって、
a.ポリアミド重合体をギ酸中に溶解させて、ポリアミド溶液を形成することと、
b.多孔質疎水性重合体フィルター材を前記ポリアミド溶液と接触させて、その上にコーティングを形成することによって、ポリアミドでコーティングされた膜を提供することと、
c.前記ポリアミドでコーティングされた膜を、水を含む溶液中に浸すことと、
d.C
1
~C
4
アルコール及び水で、前記ポリアミドでコーティングされた膜をすすぐことと、
e.前記ポリアミドでコーティングされた膜を乾燥させて、前記複合多孔質フィルター膜を得ることと
を含み、
前記複合多孔質フィルター膜は、
i.約30ダイン/cmを超える表面エネルギー;及び
ii.14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間を有する、
方法。
【請求項2】
前記複合多孔質フィルター膜が、約70%~約100%の範囲で、3%単層での粒子保持率を有する、請求項1に記載の
方法。
【請求項3】
前記複合多孔質フィルター膜が、約80%~約100%の範囲で、3%単層での粒子保持率を有する、請求項2に記載の
方法。
【請求項4】
前記複合多孔質フィルター膜が、約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイントを有する、請求項1から3のいずれか一項に記載の
方法。
【請求項5】
前記複合多孔質フィルター膜が、約1と約10μg/cm
2の間のポンソーS色素結合能及び約1と約10μg/cm
2の間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)を有する、請求項1に記載の
方法。
【請求項6】
前記多孔質疎水性重合体フィルター材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオリド及びポリアリールスルホンから選択される、請求項1に記載の
方法。
【請求項7】
前記多孔質疎水性重合体フィルター材が、超高分子量ポリエチレン及びポリ(テトラフルオロエチレン)から選択される、請求項1に記載の
方法。
【請求項8】
表面エネルギーが約30~約100ダイン/cmである、請求項1に記載の
方法。
【請求項9】
前記ポリアミド重合体が、(i)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の共重合体;(ii)ポリカプロラクタムのホモポリマー;(iii)ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の共重合体;及び(iv)テトラメチレンジアミンとアジピン酸の共重合体の少なくとも1つから構成される、請求項1に記載の
方法。
【請求項10】
前記ポリアミド重合体が、約15,000~約42,000ダルトンの数平均分子量を有する、請求項1に記載の
方法。
【請求項11】
前記
複合多孔質フィルター膜が、
(i)約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約50~約150psiのバブルポイント;
(ii)14.2psiで測定された、約6,000~約10,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間;並びに
(iii)約8~約10μg/cm
2のポンソーS色素結合能及び1と100μg/cm
2の間のメチレンブルー色素(MB DBC)結合能
を有する、請求項1に記載の
方法。
【請求項12】
複合多孔質フィルター膜
を調製するための方法であって、
a.親水性ポリアミド重合体をギ酸中に溶解させて、ポリアミド溶液を形成することと、
b.多孔質疎水性重合体フィルター材を前記ポリアミド溶液と接触させて、第1のコーティングとしてポリアミドコーティングを形成することによって、ポリアミドでコーティングされた膜を提供
することと、
c.水、少なくとも1つの架橋剤、少なくとも1つの単量体及び少なくとも1つの光開始剤を含む単量体溶液中に前記ポリアミドでコーティングされた膜を浸すことと、
d.得られた膜を前記単量体溶液から取り出し、紫外線照射を当てて、
前記少なくとも1つの光開始剤の存在下で少なくとも1つの架橋剤と少なくとも1つの単量体とのフリーラジカル反応生成物である第2のコーティング
を前記第1のコーティング上に
形成すること、その後、
e.前記第2のコーティングでコーティングされた
前記ポリアミドでコーティングされた膜を、水及びC
1
~C
4
アルコールから選択される溶媒を含むすすぎ浴中ですすぐことと、
f.前記第2のコーティングでコーティングされた
前記ポリアミドでコーティングされた膜を乾燥させて、前記複合多孔質フィルター膜を得る
ことと、
を含む、方法。
【請求項13】
前記多孔質疎水性重合体フィルター材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオリド及びポリアリールスルホンから選択される、請求項12に記載の
方法。
【請求項14】
表面エネルギーが約30~約85ダイン/cmである、請求項13に記載の
方法。
【請求項15】
前記複合多孔質フィルター膜が、約70%~約100%の範囲で、3%単層での粒子保持率を有する、請求項12に記載の
方法。
【請求項16】
前記複合多孔質フィルター膜が、約80%~約100%の範囲で、3%単層での粒子保持率を有する、請求項15に記載の
方法。
【請求項17】
前記多孔質疎水性重合体フィルター材が、超高分子量ポリエチレン及びポリ(テトラフルオロエチレン)から選択される、請求項12に記載の
方法。
【請求項18】
前記
複合多孔質フィルター膜が、
(i)14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間を有し;
(ii)約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイントを有し;並びに
(iii)約1と約30μg/cm
2の間のポンソーS色素結合能及び約1と約30μg/cm
2の間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)を有する、
請求項12に記載の
方法。
【請求項19】
前記親水性ポリアミド
重合体が、(i)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の共重合体;(ii)ポリカプロラクタムのホモポリマー;(iii)ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の共重合体;及び(iv)テトラメチレンジアミンとアジピン酸の共重合体の少なくとも1つから構成される、請求項12に記載の
方法。
【請求項20】
前記親水性ポリアミド重合体が、約15,000~約42,000ダルトンの数平均分子量を有する、請求項12に記載の
方法。
【請求項21】
前記少なくとも1つの架橋剤が、メチレンビス(アクリルアミド)、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアメタクリレート、ジビニルスルホン、ジビニルベンゼン、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン及びエチレングリコールジビニルエーテルから選択される、請求項12に記載の
方法。
【請求項22】
前記少なくとも1つの単量体が、2-(ジメチルアミノ)エチルヒドロクロリドアクリレート、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、2-アミノエチルメタクリレートヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリレートヒドロクロリド、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートヒドロクロリド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド溶液、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2-アミノエチルメタクリルアミドヒドロクロリド、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミドヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アリルアミンヒドロクロリド、ビニルイミダゾリウムヒドロクロリド、ビニルピリジニウムヒドロクロリド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド及びアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2-エチルアクリル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩、2-プロピルアクリル酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、メタクリル酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸から選択される、請求項12に記載の
方法。
【請求項23】
前記少なくとも1つの単量体が、2-エチルアクリル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩、2-プロピルアクリル酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、メタクリル酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸から選択される、請求項12に記載の
方法。
【請求項24】
前記少なくとも1つの単量体が、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-(ヒドロキシエチル)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N-(3-メトキシプロピル)アクリルアミド、7-[4-(トリフルオロメチル)クマリン]アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、アクリル酸エチル、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4-アセトキシフェネチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1-ビニル-2-ピロリジノン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ビニル4-tert-ブチルベンゾエート及びフェニルビニルスルホンから選択される、請求項12に記載の
方法。
【請求項25】
複合多孔質フィルター膜
を調製するための方法であって、
a.ポリアミド重合体をギ酸中に溶解させて、ポリアミド溶液を形成することと、
b.多孔質疎水性重合体フィルター材を前記ポリアミド溶液と接触させて、その上にコーティングを形成することによって、ポリアミドでコーティングされた膜を提供することと、
c.前記ポリアミドでコーティングされた膜を、水を含む溶液中に浸すことと、
d.C
1
~C
4
アルコール及び水で、前記ポリアミドでコーティングされた膜をすすぐことと、
e.前記ポリアミドでコーティングされた膜を乾燥させて、前記複合多孔質フィルター膜を得ることと
を含み、
前記
複合多孔質フィルター膜は、
約30ダイン/cmを超える表面エネルギー;及び
約70%~約100%の範囲で、3%単層での粒子保持率
を有する、
方法。
【請求項26】
前記複合多孔質フィルター膜が、約80%~約100%の範囲で、3%単層での粒子保持率を有する、請求項25に記載の
方法。
【請求項27】
前記複合多孔質フィルター膜が、約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイントを有する、請求項25に記載の
方法。
【請求項28】
前記複合多孔質フィルター膜が、約1と約10μg/cm
2の間のポンソーS色素結合能及び約1と約10μg/cm
2の間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)を有する、請求項25に記載の
方法。
【請求項29】
前記多孔質疎水性重合体フィルター材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオリド及びポリアリールスルホンから選択される、請求項25に記載の
方法。
【請求項30】
前記多孔質疎水性重合体フィルター材が、超高分子量ポリエチレン及びポリ(テトラフルオロエチレン)から選択される、請求項25に記載の
方法。
【請求項31】
表面エネルギーが約30~約100ダイン/cmである、請求項25に記載の
方法。
【請求項32】
前記ポリアミド重合体が、(i)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の共重合体;(ii)ポリカプロラクタムのホモポリマー;(iii)ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の共重合体;及び(iv)テトラメチレンジアミンとアジピン酸の共重合体の少なくとも1つから構成される、請求項25に記載の
方法。
【請求項33】
前記ポリアミド重合体が、約15,000~約42,000ダルトンの数平均分子量を有する、請求項25に記載の
方法。
【請求項34】
前記
複合多孔質フィルター膜が、
(iv)約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約50~約150psiのバブルポイント;
(v)14.2psiで測定された、約6,000~約10,000秒/500mLのイソプロパノールフロー時間;並びに
(vi)約8~約10μg/cm
2のポンソーS色素結合能及び1と100μg/cm
2の間のメチレンブルー色素(MB DBC)結合能
を有する、請求項25に記載の
方法。
【請求項35】
液体から不純物を除去するための方法であって、
請求項1~34のいずれか一項の方法によって複合多孔質フィルター膜を調製すること;及び
液体を
前記複合
多孔質フィルター膜と接触させることを含む、方法。
【請求項36】
不純物が、1つ又は複数の金属又は半金属イオンから選択される、請求項
35に記載の方法。
【請求項37】
不純物が、リチウム、ホウ素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、銀、カドミウム、スズ、バリウム及び鉛の1つ又は複数のイオンから選択される、請求項
36に記載の方法。
【請求項38】
複合多孔質フィルター膜を備えるフィルター
を調製するための方法であって、
請求項1~34のいずれか一項の方法によって複合多孔質フィルター膜を調製すること;及び
前記複合多孔質フィルター膜を前記フィルターに含めること、
を含む、方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、ポリアミド重合体を含む層でコーティングされた多孔質重合体フィルターを含む複合フィルター材又は膜に関する。
【背景技術】
【0002】
フィルター製品は、有用な流体の流れから望ましくない物質を除去するために使用される、現代産業のなくてはならないツールである。フィルターを使用して処理される有用な流体には、水、液体工業用溶媒及び加工処理用流体、(例えば、半導体製造において)製造又は加工処理のために使用される工業用気体、並びに医療又は医薬用途を有する液体が含まれる。流体から除去される望ましくない物質には、粒子、微生物及び溶解した化学種などの不純物及び夾雑物が含まれる。フィルター用途の具体例としては、半導体及びマイクロ電子デバイス製造のための液体材料との使用が挙げられる。
【0003】
濾過機能を実行するために、フィルターは、フィルター膜を通過する流体から望ましくない物質を除去する役割を果たすフィルター膜を含む。フィルター膜は、必要に応じて、(例えば、螺旋状に)巻いた、平坦、ひだ付き又は円板形状であり得る平坦なシートの形態であり得る。あるいは、フィルター膜は中空糸の形態であり得る。フィルター膜は、濾過されている流体が濾過入口を通って入り、濾過出口を通過する前にフィルター膜を通過する必要があるように、ハウジング内に含有されるか、又はさもなければ支持され得る。
【0004】
フィルター膜は、フィルターの用途、すなわちフィルターによって行われる濾過の種類に基づいて選択することができる平均細孔サイズを有する多孔質構造から構築することができる。典型的な細孔サイズは、約0.001ミクロン~約10ミクロンなど、ミクロン又はサブミクロンの範囲である。約0.001~約0.05ミクロンの平均細孔サイズを有する膜は、限外フィルター膜として分類されることがある。約0.05と10ミクロンの間の細孔サイズを有する膜は、微細孔膜と呼ばれることもある。
【0005】
ミクロン又はサブミクロン範囲の細孔サイズを有するフィルター膜は、ふるい機構若しくは非ふるい機構のいずれか、又はその両方によって流体の流れから望ましくない物質を除去するのに有効であり得る。ふるい機構は、フィルター膜の表面で粒子を機械的に保持することによって液体の流れから粒子を除去する濾過の様式であり、フィルター膜は粒子の移動に機械的に干渉し、粒子をフィルター内に保持するように作用して、フィルターを通る粒子の流れを機械的に妨げる。典型的には、粒子は、フィルターの細孔よりも大きいものであり得る。「非ふるい」濾過機構は、フィルター膜が、フィルター膜を通る流体の流れの中に含有される懸濁した粒子又は溶解した物質を、専ら機械的ではない方法で保持する濾過の様式であり、例えば、専ら機械的ではない方法としては、粒子状物質又は溶解した不純物をフィルター表面に静電的に付着させ、フィルター表面に保持し、流体の流れから除去する静電的な機構が挙げられ、粒子は溶解していてもよく、又はフィルター材の細孔より小さい粒径を有する固体であってもよい。
【0006】
溶解したアニオン又はカチオンなどのイオン性物質を溶液から除去することは、極めて低い濃度のイオン性夾雑物及び粒子がマイクロプロセッサ及びメモリデバイスの品質及び性能に悪影響を及ぼし得るマイクロエレクトロニクス産業などの多くの産業において重要である。低レベルの金属イオン夾雑物を有するポジ型及びネガ型フォトレジストを作製する能力、又は低い10億分の1若しくは1兆分の1レベルの金属イオン夾雑物を有するウェハ洗浄のためのマラゴニ(Maragoni)乾燥において使用されるイソプロピルアルコールを送達する能力は非常に望ましく、半導体製造における汚染防止の必要性のほんの2つの例である。コロイドの化学的性質及び溶液のpHに応じて正又は負に荷電することがあり得るコロイド粒子も処理液を汚染することがあり得、除去する必要がある。溶解したイオン性物質を引き付けるポリマー材料で作られた微細孔フィルター膜によって、非ふるい濾過機構によって溶解したイオン性材料を除去することができる。このような微細孔膜の例は、超高分子量ポリエチレン(「UPE」)、ポリテトラフルオロエチレンなどのような化学的に不活性な低表面エネルギーポリマーから作製される。ナイロンを、高い透過性を示すフィルター膜へと形成することができるために、及びナイロンの優れたふるい及び非ふるい濾過挙動のために、具体的には、ナイロンフィルター膜が半導体加工産業における様々な異なる濾過用途において使用されている。
【発明の概要】
【0007】
マイクロ電子デバイス加工の分野は、マイクロ電子デバイスの性能(例えば、速度及び信頼性)の並行した着実な改善を持続させるために、加工材料及び方法の着実な改善を必要とする。液体材料を濾過するための方法及びシステムを含む製造過程のすべての側面にマイクロ電子デバイス製造を改善する機会が存在する。
【0008】
マイクロ電子デバイス加工においては、処理溶媒、洗浄剤及びその他の加工溶液として、広範囲の異なる種類の液体材料が使用される。大半ではないにしても、これらの材料の多くは、極めて高いレベルの純度で使用される。一例として、マイクロ電子デバイスのフォトリソグラフィー加工において使用される液体材料(例えば、溶媒)は、極めて高い純度のものでなければならない。マイクロ電子デバイス加工において使用される液体の具体例としては、スピンオングラス(SOG)技術、裏面反射防止コーティング(BARC)法、及びフォトリソグラフィーのための処理溶液が挙げられる。これらの液体材料のいくつかは酸性である。マイクロ電子デバイス加工において使用するためにこれらの液体材料を高レベルの純度で提供するために、濾過システムは、液体から様々な夾雑物及び不純物を除去するのに高度に効果的でなければならず、濾過されている液体材料(例えば、酸性材料)の存在下において安定でなければならない(すなわち、夾雑物を分解又は導入しない)。
【0009】
一態様において、複合多孔質フィルター膜は、
その上にコーティングを有する多孔質疎水性重合体フィルター材を含み、前記コーティングはギ酸中に可溶性であるポリアミド重合体であり、前記膜は、
(i)約30ダイン/cmを超える表面エネルギー;
(ii)14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノール流量時間
を有する。
【0010】
本発明者らは、多孔質疎水性重合体フィルター材の表面上に形成されたポリアミドコーティングは多孔質コーティングであり、それによってポリアミドコーティング表面に実質的により大きな表面積を与えると考えている。本明細書に記載されるポリアミドのギ酸溶液をガラス板上に配置し、溶媒をエバポレートさせると、このようにして形成された膜は不透明であり、したがって非多孔質膜ではなく多孔質膜が疎水性表面上に形成されることを示す。したがって、この特徴は、改善された非ふるい濾過性能を提供すると考えられる。
【0011】
第2の態様において、複合多孔質フィルター膜は、第1のコーティングとしてポリアミドコーティングがその上にコーティングされた多孔質疎水性重合体フィルター膜を備え、前記ポリアミドはギ酸中に可溶性であり、それによってポリアミドでコーティングされた膜を提供し、前記膜は、光開始剤の存在下での(i)少なくとも1つの架橋剤と(ii)少なくとも1つの単量体のフリーラジカル反応生成物である第2のコーティングをその上に有する。
【0012】
別の態様において、液体から不純物を除去するための方法であって、液体を本明細書に記載されている複合膜と接触させることを含む、方法が本明細書に開示されている。
【0013】
本開示は、添付の図面に関連して様々な例示的な実施形態の以下の説明を考慮してより完全に理解され得る。
【図面の簡単な説明】
【0014】
【
図1】
図1(概略的であり、必ずしも原寸に比例しない)は、本明細書に記載されるフィルター製品の一例を示す。
【
図2】
図2は、ポリアミドでコーティングされた多孔質フィルター膜の簡略図であり、その上にポリアミドがコーティングされたベース膜(疎水性重合体フィルター膜)を示す。以下に述べるように、ポリアミドコーティングは、図示されているようにベース膜上に必ずしも連続的なコーティングを形成しない。
【
図3】
図3は、20℃でのメタノールと水の混合物の表面張力の図示である。表面張力(20℃でのnM/m)が、水中のメタノール質量(%)に対してプロットされている。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本開示は、様々な変更及び代替形態を受け入れることができるが、それらの詳細は、例として図面に示されており、詳しく記載されるであろう。しかしながら、その意図は本開示の態様を記載された特定の例示的な実施形態に限定することではないことを理解されたい。それとは反対に、その意図は、本開示の精神及び範囲内に入るすべての修正、均等物及び代替物を網羅することである。
【0016】
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、単数形「a」、「an」、及び「the」は、内容が明らかに反対の意味を指示しない限り、複数の指示対象を含む。本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用される場合、「又は」という用語は、一般に、その内容が明らかに反対の意味を指示しない限り、「及び/又は」を含む意味で使用される。
【0017】
「約」という用語は、一般に、記された値と等価である(例えば、同じ機能又は結果を有する)と考えられる数の範囲を指す。多くの事例で、「約」という用語は、最も近い有効数字に丸められた数字を含み得る。
【0018】
端点を使用して表される数値範囲は、その範囲内に包含されるすべての数を含む(例えば、1~5は、1、1.5、2、2.75、3、3.80、4及び5を含む。)。
【0019】
上記のように、第1の態様において、複合多孔質フィルター膜は、
その上にコーティングを有する多孔質疎水性重合体フィルター材を含み、前記コーティングはギ酸中に可溶性であるポリアミド重合体であり、前記膜は、
i.約30ダイン/cmを超える表面エネルギー;及び
ii.14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノール流量時間
を有する。
【0020】
ある実施形態において、表面エネルギーは、約30~約100ダイン/cm、約30~約85ダイン/cm又は約30~約65ダイン/cmである。
【0021】
ある実施形態において、前記膜は、約22℃の温度でHFE7200を使用して測定された場合に、約20~200psiのバブルポイントを有し、並びに/又は前記膜は、約1と約10μg/cm2の間のポンソーS色素結合能及び約1と約10μg/cm2の間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)を有する。ある実施形態において、膜は、約8~約10μg/cm2のポンソーS色素に結合能を有し、他の実施形態において、膜は、約9.2μg/cm2のポンソーS色素結合能を有する。
【0022】
ある実施形態において、イソプロパノールの流量時間は、約6,000~約10,000秒/500mL、他の実施形態において、約8,000秒/500mLである。
【0023】
上記のように、本明細書に記載される複合膜は、様々な流体から不純物を除去するための濾過材として有用である。第1及び第2の態様のある実施形態において、疎水性フィルター材又は膜に適用されたポリアミドコーティングは、疎水性フィルター材又は膜を完全には覆わず又は封入せず、むしろ下部の多孔質疎水性膜上に半連続的又は部分的なコーティングを形成する。同様に、フリーラジカル重合がポリアミドでコーティングされた膜の存在下で行われる第2の態様では、得られた硬化又は架橋されたポリマーコーティングは、ある実施形態において、膜の表面を完全には覆わず又は封入せず、同じく、ポリアミドでコーティングされた多孔質疎水性膜構造上に半連続的又は部分的なコーティングを形成する。
【0024】
ある態様において、下部の疎水性多孔質ポリマーフィルター材料は、ポリマー材料、異なるポリマー材料の混合物、又はポリマー材料及び非ポリマー材料から形成される。フィルターを形成するポリマー材料は、所望の程度の完全性を有するフィルター構造を提供するために、一緒に架橋させることができる。
【0025】
本開示の下部の多孔質フィルター膜を形成するために使用することができるポリマー材料は、ある実施形態においては約40ダイン/cm未満の表面エネルギーを有する疎水性ポリマーである。いくつかの実施形態において、フィルター疎水性ポリマー膜は、ポリオレフィン又はハロゲン化ポリマーを含む。例示的なポリオレフィンとしては、ポリエチレン(PE)、ポリプロピレン(PP)、ポリメチルペンテン(PMP)、ポリブテン(PB)、ポリイソブチレン(PIB)、並びにエチレン、プロピレン及びブチレンのうちの2つ以上の共重合体が挙げられる。さらなる特定の実施形態では、フィルター材料は、超高分子量ポリエチレン(UPE)を含む。UPE膜などのUPEフィルター材料は、典型的には、約1×106ダルトン(Da)を超える、例えば約1×106~9×106Da、又は1.5×106~9×106Daの範囲の分子量(粘度平均分子量)を有する樹脂から形成される。ポリエチレンなどのポリオレフィン重合体間の架橋は、熱又は架橋化学物質、例えば過酸化物(例えば、ジクミルペルオキシド又はジ-tert-ブチルペルオキシド)、シラン(例えば、トリメトキシビニルシラン)又はアゾエステル化合物(例えば、2,2’-アゾ-ビス(2-アセトキシ-プロパン)の使用によって促進することができる。例示的なハロゲン化ポリマーには、ポリテトラフルオロエチレン(PTFE)、ポリクロロトリフルオロエチレン(PCTFE)、フッ素化エチレンポリマー(FEP)、ポリヘキサフルオロプロピレン及びポリビニリデンフルオリド(PVDF)が含まれる。
【0026】
他の態様において、フィルター材料としては、ポリイミド、ポリスルホン、ポリエーテルスルホン、ポリアリールスルホンポリアミド、ポリアクリレート、ポリエステル、ポリアミドイミド、セルロース、セルロースエステル、ポリカーボネート又はこれらの組み合わせから選択されるポリマーが挙げられる。
【0027】
別の実施形態では、下部の疎水性多孔質フィルター膜は、超高分子量ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオリド、ポリアリールスルホンなどから調製されたものなどの市販の疎水性膜から選択することができる。
【0028】
超高分子量ポリエチレンから構成されるものなどの多孔質疎水性フィルター膜から出発する複合膜は、例えば、ギ酸中のポリアミド重合体の溶液で処理される。膜がコーティングされると、膜は、水を含む水溶液を含有する混合容器に移される。次いで、得られた膜は、水性及び低級アルコールの洗浄容器を通過させることを含む1つ以上の洗浄工程に供される。乾燥すると、この過程は第1の局面の複合膜を与える。一実施形態において、洗浄工程は、水を含む2つの連続容器と、水の2つの連続容器の間に低級、例えばC1~C4アルコールを含む容器とを含む。
【0029】
あるいは、上で言及された第2の態様において、超高分子量ポリエチレンから構成されるものなどの多孔質疎水性フィルター膜から出発する複合膜は、例えば、ギ酸中のポリアミド重合体の溶液で処理される。膜がコーティングされると、膜は、以下で「単量体溶液」と呼ばれる、(i)少なくとも1つの架橋剤、(ii)少なくとも1つの単量体、及び(iii)少なくとも1つの光開始剤を含む水溶液を含有する混合容器に移される。次いで、このようにコーティングされた膜は、(i)少なくとも1つの架橋剤及び(ii)少なくとも1つの単量体と、ポリアミドコーティングの表面においてフリーラジカル重合を開始するためにUV光に供され得る。次いで、得られた膜は、水性及び低級アルコールの洗浄容器を通過させることを含む1つ以上の洗浄工程に供される。乾燥すると、この過程は第2の態様の複合膜を与える。
【0030】
ある実施形態において、この第2の態様の複合膜は、以下の特性:
(i)14.2psiで測定された、約150~20,000秒/500mLのイソプロパノール流量時間;
(ii)約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~200psiのバブルポイントを有し;並びに
(iii)約1と30μg/cm2の間のポンソーS色素結合能及び約1と30μg/cm2の間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)を有し、
を有する。
【0031】
ある実施形態において、表面エネルギーは、30ダイン/cm超、約30~100ダイン/cm、又は約30~85ダイン/cm又は約30~65ダイン/cmである。
【0032】
上記で言及される一般に「ナイロン」としても知られているポリアミド重合体は、典型的には、ポリマー骨格中に繰り返しアミド基を含む共重合体及び三元重合体を含むと理解される。一般に、ナイロン及びポリアミド樹脂には、ジアミンとジカルボン酸の共重合体、又はラクタムとアミノ酸とのホモポリマーが含まれる。ある実施形態において、本明細書に記載されるフィルター膜の製造において使用するためのナイロンは、ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の共重合体(ナイロン6、6)、ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の共重合体(ナイロン610)、ポリカプロラクタムのホモポリマー(ナイロン6)及びテトラメチレンジアミンとアジピン酸の共重合体(ナイロン46)を含む。ナイロンポリマーは、約15,000~約42,000(数平均分子量)の範囲内で分子量に関して及び他の特性においてかなり異なる幅広い等級で入手可能である。すべてのこのようなポリアミドは、本明細書で企図されるように、ギ酸に可溶性であるが、一般に水溶液には不溶型である。このようなポリアミドは、ギ酸中の希薄溶液として利用される。一実施形態において、ポリアミドは、ギ酸中で約1~4重量%の濃度で利用される。
【0033】
上記の架橋剤は、任意にアミド官能性を有する、非荷電二官能性(すなわち、2つの炭素-炭素二重結合を有する)ビニル、アクリル又はメタクリル単量体種である。このような架橋剤の非限定的な例には、メチレンビス(アクリルアミド)、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアメタクリレート、ジビニルスルホン、ジビニルベンゼン、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン98%及びエチレングリコールジビニルエーテルが含まれる。
【0034】
本明細書で言及される単量体は、荷電した又は非荷電のビニル、アクリル又はメタクリルの単量体種である。
【0035】
本開示の態様において使用することができる正の電荷を有する単量体の非限定的な例としては、個別での又は以下の2つ以上の組み合わせでの、2-(ジメチルアミノ)エチルヒドロクロリドアクリレート、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、2-アミノエチルメタクリレートヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリレートヒドロクロリド、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートヒドロクロリド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド溶液、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2-アミノエチルメタクリルアミドヒドロクロリド、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミドヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アリルアミンヒドロクロリド、ビニルイミダゾリウムヒドロクロリド、ビニルピリジニウムヒドロクロリド及びビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリドを挙げることができるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、正の電荷を有する単量体は、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド(APTAC)を含む。上に列挙された正電荷を有するいくつかの単量体は、第4級アンモニウム基を含み、天然に荷電しているのに対して、第1級、第2級及び第3級アミンを含むなどの他の正電荷を有する単量体は、酸での処理によって電荷を生成するように調整されることを理解されたい。天然に又は処理によって正に荷電することができる単量体は、多孔質膜上にコーティングを形成するために、重合させ、架橋剤で架橋させることができる。
【0036】
使用することができる負電荷を有する単量体の例としては、個別での又は以下の2つ以上の組み合わせでの、2-エチルアクリル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩、2-プロピルアクリル酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、メタクリル酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸を挙げることができるが、これらに限定されない。特定の実施形態において、負電荷を有する単量体は、スルホン酸部分を含む。上に列挙された負電荷を有するいくつかの単量体は、強酸基を含み、天然に荷電しているのに対して、弱酸を含む他の負電荷を有する単量体は、塩基での処理によって電荷を生成するように調整されることを理解されたい。天然に又は処理によって負に荷電する単量体は、有機溶媒中で負に荷電する多孔質膜上にコーティングを形成するために、重合させ、架橋剤で架橋させることができる。
【0037】
使用することができる中性の単量体の例としては、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-(ヒドロキシエチル)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N-(3-メトキシプロピル)アクリルアミド、7-[4-(トリフルオロメチル)クマリン]アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、アクリル酸エチル、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4-アセトキシフェネチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1-ビニル-2-ピロリジノン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ビニル4-tert-ブチルベンゾエート及びフェニルビニルスルホンを挙げることができるが、これらに限定されない。
【0038】
光開始剤は、一態様において、I型光開始剤として認識されるものから選択される。理論に拘束されることを望むものではないが、I型光開始剤は、照射されると単分子結合開裂を受けてフリーラジカルを生じる。適切な開始剤の例としては、過硫酸ナトリウム及び過硫酸カリウムなどの様々な過硫酸塩、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、Irgacure2959の商標で販売されている(2-ヒドロキシ-4’-(2-ヒドロキシエトキシ)-2-メチルプロピオフェノン)、並びに過酸化ベンゾイルが挙げられる。
【0039】
単量体溶液中の光開始剤の量は、架橋剤と単量体の間での所望のフリーラジカル反応に影響を及ぼすのに十分に高い任意の量(すなわち、濃度)であり得る。単量体溶液中の光開始剤の有用な量の例は、最大1重量パーセント、例えば0.1若しくは0.5から4.5重量パーセント、又は1若しくは2から3若しくは4重量パーセントの範囲であり得る。
【0040】
単量体溶液に対して使用される溶媒の種類は、単量体溶液が有用な量の単量体を溶解し、親水性ポリマーの表面に送達することを可能にするのに有効な任意のものであり得る。単量体溶液のための好ましい溶媒は、水又は有機溶媒を添加した水である。溶媒は、有機溶媒、水、又はその両方を含むことができる。有機溶媒の例としては、アルコール、特に低級アルコール(例えば、C1~C6アルコール)が挙げられ、イソプロパノール、メタノール及びヘキシレングリコールが有用な例である。特定の過程、単量体溶液及び単量体に対して使用される特定の溶媒は、単量体溶液中の単量体の種類及び量、親水性ポリマーの種類並びにその他の要因などの要因に基づくことができる。水及び有機溶媒の両方を含有する溶媒において、有機溶媒は、任意の量で、例えば、90、75、50、40、30、20又は10%重量未満の量で含まれ得る。一例として、有用な溶媒組成物は、水中に1~10重量%のヘキシレングリコールを含有し得る。一態様において、水は脱イオン水である。
【0041】
単量体溶液中の単量体の量は、ある態様において、溶液の重量に基づいて約0.5~5重量%である。単量体溶液中の架橋剤の量は、ある実施形態において、単量体溶液の総重量に基づいて、約0.25~3.0重量%である。ある態様において、利用される単量体及び架橋剤の相対量は、(ポリアミドでコーティングされた疎水性膜への)そのような最終的な架橋された又はフリーラジカル重合されたコーティングの相対的被覆率とともに、全体的な、すなわち得られる膜が約30~85ダイン/cmの表面エネルギーを有するような量である。
【0042】
単量体溶液が、ポリアミドでコーティングされた下部の多孔質疎水性膜上に効果的に曝露又はコーティングされた後、得られた膜は、典型的にはスペクトルの紫外線部分内の電磁放射線に曝露されるか、又は単量体の反応性部分を架橋剤と反応させ、化学的に(共有結合的に)架橋剤に結合させる化学反応を光開始剤に開始させるのに有効な別のエネルギー源に曝露される。
【0043】
本明細書に記載される方法及び物品の様々な例において、本明細書に記載される複合膜は、多孔質フィルター膜に含まれ得る。本明細書で使用される場合、「多孔質フィルター膜」は、膜の一方の表面から膜の反対側の表面まで伸びる多孔質(例えば、微細孔質)の相互接続通路を含有する多孔質固体である。通路は、一般に、濾過されている液体が通らなければならない曲がりくねったトンネル又は経路を提供する。この液体中に含有される、細孔よりも大きい任意の粒子は、これらの粒子を含有する流体が微多孔膜を通過するにつれて、微細孔膜への進入が阻止されるか、又は微細孔膜の細孔内に捕捉される(すなわち、ふるい型濾過機構によって除去される)。細孔よりも小さい粒子も、細孔構造上に捕捉又は吸収され、例えば、非ふるい濾過機構によって除去され得る。液体及び場合によっては低下した量の粒子又は溶解した材料が微細孔膜を通過する。
【0044】
本明細書に記載される例示的な多孔質重合体フィルター膜(その上の表面をコーティングする工程の前又は後のいずれかと考えられる)は、細孔サイズ、バブルポイント及び多孔度を含む物理的特徴によって特徴付けることができる。
【0045】
多孔質重合体フィルター膜は、例えば、本明細書に記載されるように、微細孔フィルター膜又は限外フィルター膜と考えられることもあるサイズ(平均細孔サイズ)の細孔を含む、フィルター膜がフィルター膜として機能するのに有効であることを可能にする任意の細孔サイズを有し得る。有用な又は好ましい多孔質膜の例は、約0.001ミクロン~約1又は2ミクロン、例えば0.01~0.8ミクロンの範囲の平均細孔サイズを有することができ、細孔サイズは、除去されるべき不純物の粒子サイズ又は種類、圧力及び圧力降下の要件、並びにフィルターによって処理されている液体の粘度要件を含む1つ以上の要因に基づいて選択される。限外フィルター膜は、0.001ミクロン~約0.05ミクロンの範囲の平均細孔サイズを有することができる。細孔サイズは、多孔質材料の平均細孔サイズとして報告されることが多く、これは、水銀多孔度測定(MP)、走査電子顕微鏡法(SEM)、液体置換(LLDP)又は原子間力顕微鏡法(AFM)などの公知の技術によって測定することができる。
【0046】
バブルポイントも、多孔質膜の公知の特徴である。バブルポイント試験法により、既知の表面張力を有する液体中に多孔質重合体フィルター膜の試料を浸漬し、既知の表面張力を有する液体で湿潤させ、試料の1つの側にガス圧がかけられる。ガス圧を徐々に増加させる。気体が試料を通って流れる最小の圧力は、バブルポイントと呼ばれる。多孔質材料のバブルポイントを決定するために、多孔質材料の試料を、摂氏20~25度(例えば、摂氏22度)の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200(3Mから入手可能)中に浸漬し、エトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200で湿潤させる。圧縮空気を使用することによって試料の一方の側に気体の圧力を加え、気体の圧力を徐々に増加させる。気体が試料を通って流れる最小の圧力は、バブルポイントと呼ばれる。上述の手順を用いて測定される、本明細書に従って有用な又は好ましい多孔質重合体フィルター膜の有用なバブルポイントの例は、5~200psiの範囲、例えば、20~200psiの範囲であり得る。
【0047】
記載されている多孔質ポリマーフィルター層は、多孔質ポリマーフィルター層が本明細書に記載されるように効果的であることを可能にする任意の多孔度を有し得る。例示的な多孔質ポリマーフィルター層は、比較的高い多孔度、例えば少なくとも60、70又は80%の多孔度を有することができる。本明細書で使用される場合、及び多孔質体の技術分野では、多孔質体の「多孔度」(空隙率と呼ばれることもある)は、多孔質体の総体積のパーセントとしての多孔質体内の空隙(すなわち、「空の」)空間の尺度であり、多孔質体の総体積に対する多孔質体の空隙の体積の割合として計算される。0%の多孔度を有する多孔質体は完全に固体である。
【0048】
記載されている多孔質重合体フィルター膜は、任意の有用な厚さ、例えば5から100ミクロン、例えば10又は20から50又は80ミクロンの範囲の厚さを有するシート又は中空糸の形態であり得る。
【0049】
記載されるフィルター膜は、望ましくない物質(例えば、夾雑物又は不純物)を液体から除去して、工業過程の材料として使用することができる高純度液体を生成するために液体を濾過するのに有用であり得る。フィルター膜は、ふるい機構又は非ふるい機構のいずれかによって、好ましくは組み合わされた非ふるい機構及びふるい機構の両方によって、コーティングされたフィルター膜を通って流される液体から溶解又は懸濁した夾雑物又は不純物を除去するのに有用であり得る。下部の多孔質疎水性フィルター膜自体(本明細書に記載される複合疎水性フィルター膜への変換前)が、効果的なふるい及び非ふるい濾過特性、並びに所望の流れ特性を示し得る。本明細書に記載される複合フィルター膜は、出発物質として利用される下部の疎水性重合体膜と比較して、少なくとも同等のふるい濾過特性、有用な又は同等の(過度に減少しない)流動特性、及び改善された(例えば、実質的に改善された)非ふるい濾過特性を示すことができる。
【0050】
本明細書のフィルター膜は、入力として高純度液体材料を必要とする任意の種類の工業又は生命科学過程において有用であり得る。このような過程の非限定的な例は、マイクロ電子デバイス又は半導体デバイスを作製する過程を含み、その具体例は、半導体フォトリソグラフィーのために使用される液体処理材料(例えば、溶媒又は溶媒含有液体)を濾過する方法である。マイクロ電子デバイス又は半導体デバイスを作製するために使用される処理液又は溶媒中に存在する夾雑物の例には、液体中に溶解した金属イオン、液体中に懸濁した固体粒子状物質、及び液体中に存在するゲル化又は凝固した材料(例えば、フォトリソグラフィー中に生成される)が含まれ得る。
【0051】
記載されているフィルター膜の特定の例は、例えば、半導体フォトリソグラフィーの方法において使用される液体溶媒又は他の処理液を濾過するために、半導体又はマイクロ電子製造用途において使用される又は有用である液体化学物質を精製するために使用することができる。記載されているフィルター膜を使用して濾過することができる溶媒のいくつかの特定の非限定的な例としては、n-ブチルアセテート(nBA)、イソプロピルアルコール(IPA)、2-エトキシエチルアセテート(2EEA)、キシレン、シクロヘキサノン、乳酸エチル、メチルイソブチルカルビノール(MIBC)、メチルイソブチルケトン(MIBK)、酢酸イソアミル、ウンデカン、プロピレングリコールメチルエーテル(PGME)及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(PGMEA)、並びにプロピレングリコールモノメチルエーテル(PGME)及びPGMEA(7:3)の混合溶液が挙げられる。記載される例示的なフィルター膜は、水、アミン又はその両方を含有する溶媒、例えば、NH4OH、水酸化テトラメチルアンモニア(TMAH)などの塩基及び水性塩基並びに任意に水を含有し得る同等の溶液から金属を除去するのに有効であり得る。いくつかの実施形態において、水酸化テトラメチルアンモニウム(TMAH)又はNH4OHから選択される溶媒を含む液体は、本明細書に記載される膜を有するフィルターを通され、溶媒から金属を除去する。いくつかの態様において、溶媒を含有する液体から金属を除去するために、溶媒を含有する液体を膜に通すことは、溶媒を含有する液体中の金属の濃度が低下されることをもたらす。
【0052】
本明細書に記載される複合フィルター膜はまた、フィルター膜の色素結合能力に関して特徴付けることができる。具体的には、荷電した色素を濾過膜の表面に結合させることができる。濾過膜に結合させることができる色素の量は、色素の吸収周波数における膜の測定された吸収読み取り値の差に基づいて、分光法によって定量的に測定することができる。色素結合能力は、負に荷電した色素の使用によって、また、正に荷電した色素の使用によっても評価することができる。
【0053】
第1の態様の複合フィルター膜は、ある実施形態においては、フィルター膜の平方センチメートル当たり少なくとも1マイクログラム(μg/cm2)、例えば1超又は10μg/cm2のメチレンブルー色素に対する色素結合能力を有し得、これに代えて又はこれに加えて、記載されているコーティングされたフィルター膜は、約1~10μg/cm2、例えば、1超~10又は約5μg/cm2であるポンソーS色素に対する色素結合能及び1と10μg/cm2の間のメチレンブルー色素(MB DBC)結合能を有し得る。
【0054】
第2の態様の複合フィルター膜は、ある実施形態においては、フィルター膜の平方センチメートル当たり少なくとも1マイクログラム(μg/cm2)、例えば1、10、100又は500μg/cm2を超えるメチレンブルー色素に対する色素結合能力を有し得、これに代えて又はこれに加えて、記載されているコーティングされたフィルター膜は、少なくとも1μg/cm2、例えば、1、10、100又は500μg/cm2を超えるポンソーS色素に対する色素結合能力を有し得る。
【0055】
さらに、記載されるようなフィルター膜は、フィルター膜を通る液体の流れの流量又は流束によって特徴付けることができる。流量は、フィルター膜がフィルター膜を通る流体の流れを濾過するのに効率的かつ効果的であることを可能にするのに十分に高くなければならない。流量、又は別の考え方をすれば、フィルター膜を通る液体の流れに対する抵抗は、流量又は流量時間に関して測定することができる。本明細書に記載されるフィルター膜は、好ましくは比較的高いバブルポイントと組み合わせて、比較的低い流量時間及び優れた濾過性能(例えば、粒子保持率、色素結合能力、又はその両方によって測定される場合)を有することができる。有用な又は好ましいイソプロパノール流量時間の例は、約20,000秒/500mL未満、例えば約4,000又は2,000秒/500mL未満であり得る。
【0056】
本明細書で報告される膜イソプロパノール(IPA)流量時間は、500mlのイソプロピルアルコール(IPA)流体が14.2psi及び摂氏21度の温度で13.8cm2の有効表面積を有する膜を通過するのに要する時間を測定することによって決定される。
【0057】
ある態様において、本明細書に記載される複合膜は、ポリアミドコーティング及び共に反応される架橋剤/単量体コーティングを含有しない同じフィルター膜の流量時間と概ね等しいか又はそれより長くすることができる。換言すれば、下部の多孔質疎水性フィルター膜から複合膜を作製することは、フィルター膜の流動特性に対して実質的な悪影響を及ぼさず、さらに、フィルター膜の濾過機能、特に、細孔サイズに応じて、例えば、色素結合能力、粒子保持率又はその両方によって測定される、膜の非ふるい濾過機能をなお改善し得る。
【0058】
記載されているフィルター膜は、濾過システムにおいて使用される多層フィルターアセンブリ又はフィルターカートリッジなどのより大きなフィルター構造内に包含されることができる。フィルター膜が液体化学物質からある量の不純物又は夾雑物を除去するように、フィルター膜を液体化学物質の流路に曝露させて液体化学物質の流れの少なくとも一部がフィルター膜を通過するようにさせるために、濾過システムは、例えば多層フィルターアセンブリの一部として又はフィルターカートリッジの一部として、フィルター膜をフィルターハウジング内に配置する。多層フィルターアセンブリ又はフィルターカートリッジの構造は、フィルター入口から複合膜(フィルター層を含む)を通って及びフィルター出口を通って流体を流れさせ、それによってフィルターを通過するときに複合フィルター膜を通過させるためにフィルターアセンブリ又はフィルターカートリッジ内に複合フィルター膜を支持する様々な追加の材料及び構造の1つ又は複数を含み得る。フィルターアセンブリ又はフィルターカートリッジによって支持されたフィルター膜は、任意の有用な形状、例えば、特に、ひだ付き円筒、円筒状パッド、1つ又は複数のひだなし(平坦な)円筒状シート、ひだ付きシートとすることができる。
【0059】
ひだ付き円筒の形態のフィルター膜を含むフィルター構造の一例は、以下の構成部分:コーティングされたひだ付き円筒状フィルター膜の内側開口部において、コーティングされたひだ付き円筒状フィルター膜を支持する剛性又は半剛性コア;フィルター膜の外側において、コーティングされたひだ付き円筒状フィルター膜の外側を支持又は取り囲む剛性又は半剛性ケージ;コーティングされたひだ付き円筒状フィルター膜の2つの対向する端部のそれぞれに位置する任意選択のエンドピース又は「パック」;入口及び出口を含むフィルターハウジングを含むように作製することができ、これらのいずれもがフィルター構造中に含まれ得るが、必要とされない場合があり得る。フィルターハウジングは、任意の有用な所望されるサイズ、形状及び材料のものであり得、好ましくは適切なポリマー材料から作製することができる。
【0060】
詳細な説明及び図面は、必ずしも原寸に比例しておらず、例示的な実施形態を示しており、本明細書に記載される実施形態の範囲を限定することを意図していない。図示された例示的な態様は、例示としてのみ意図されている。反対のことが明確に述べられていない限り、任意の例示的な態様の選択された特徴は、追加の態様に組み込まれ得る。
【0061】
一例として、
図1は、他の任意選択の構成要素とともにひだ付き円筒状構成要素10及びエンドピース22から生成されるフィルター構成要素30を示す。円筒状構成要素10は、本明細書に記載されているように、フィルター膜12を含み、ひだが付いている。エンドピース22は、円筒状フィルター構成要素10の一端に取り付けられる(例えば、「詰められる」)。エンドピース22は、好ましくは溶融加工可能なポリマー材料で作ることができる。ひだ付き円筒状構成要素10の内側開口部24にはコア(図示せず)を配置することができ、ひだ付き円筒状構成要素10の外側周囲にはケージ(図示せず)を配置することができる。ひだ付き円筒状構成要素30の第2の端部に、第2のエンドピース(図示せず)を取り付ける(「詰める」)ことができる。次いで、2つの対向する詰め込まれた端部及び任意選択のコア及びケージを有する得られたひだ付き円筒状構成要素30は、入口と出口を含み、入口に入る流体の全量が出口においてフィルターから出る前に必ず濾過膜12を通過しなければならないように構成されたフィルターハウジング内に配置することができる。
【0062】
「粒子保持率」又は「被覆率」は、流体流の流体経路に配置された膜によって流体流から除去することができる粒子の数の百分率を指す。以下の手順に従って決定された粒子保持率は「粒子保持率試験」と称される。25nmの直径を有する8ppbポリスチレン粒子(Duke Scientific G25Bから入手可能)及び0.5MNaClを含有する、約5のpHを有する0.1%Triton X-100の水性供給溶液を調製する。1%の単層被覆率を達成するのに十分な量の水性供給溶液を7mL/分の一定流量で膜に通過させ、濾液を収集することによって、47mm膜円板の粒子保持率を測定することができる。0.5%、1%、2%、3%、4%又は5%など、異なる単層百分率に対して、粒子保持率を決定することができる。粒子保持率を正確に決定するために、この過程は、膜を通過しない供給流中のポリスチレン粒子の濃度を決定するように較正される。濾液及び供給流中のポリスチレン粒子の濃度は、蛍光分光光度計を使用して濾液の吸収度から計算することができる。次いで、以下の式:
を使用して粒子保持率を計算する。
【0063】
1%の単層被覆率を達成するために必要な粒子の数(#)は、以下の式から計算することができる。
式中
a=有効膜表面積(mm
2)
d
p=粒子の直径(mm)
n=%単層
【0064】
いくつかの実施形態において、本明細書に開示される膜は、約75%~約100%、約75%~約99%、約75%~約95%、約75%~約90%、約80%~約100%、約80%~約99%、約80%~約95%、約80%~約90%、約85%~約100%、約85%~約99%、約85%~約95%、約85%~約90%、約90%~約100%、約90%~約99%、約90%~約95%の範囲並びにこれらの間のすべての範囲及び部分範囲に、1%単層での粒子保持率試験によって決定される粒子保持率を有する。いくつかの実施形態において、本明細書に開示される膜は、約70%~約100%、約70%~約99%、約70%~約95%、約70%~約90%、約75%~約100%、約75%~約99%、約75%~約95%、約75%~約90%、約80%~約100%、約80%~約99%、約80%~約95%、約80%~約90%、約85%~約100%、約85%~約99%、約85%~約95%、約85%~約90%、約90%~約100%、約90%~約99%、約90%~約95%の範囲並びにこれらの間のすべての範囲及び部分範囲に、3%単層での粒子保持率試験によって決定される粒子保持率を有する。
【実施例】
【0065】
多孔度測定バブルポイント
多孔度測定バブルポイント試験法は、空気を押して膜の湿潤した細孔に通すために必要とされる圧力を測定する。バブルポイント試験は、膜の細孔サイズを決定するための周知の方法である。多孔質材料のバブルポイントを決定するために、多孔質材料の試料を、摂氏20~25度(例えば、摂氏22度)の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200(3Mから入手可能)中に浸漬し、エトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200で湿潤させる。圧縮空気を使用することによって試料の一方の側に気体の圧力を加え、気体の圧力を徐々に増加させる。気体が試料を通って流れる最小の圧力は、バブルポイントと呼ばれる。
【0066】
本明細書で使用される場合、表面の「表面エネルギー」(表面自由エネルギー)は、接触の2秒以内に表面を湿潤させる最高の表面張力の液体の表面張力に等しいと考えられ(実施例3、表面エネルギー測定を参照されたい。)(「湿潤液体表面張力」試験又は「標準液体」試験とも呼ばれる。)、一般に、表面の相対的な疎水性/親水性に対応する。ある実施形態において、膜は、実施例3に記載されるように、2秒以内に表面を湿潤させる最高の表面張力の液体の表面張力として測定される、約30ダイン/センチメートルを超える表面エネルギーを有する。
【0067】
実施例1-ナイロン6でコーティングされた非対称5nm UPE膜の調製
3gのナイロン6樹脂を77gの98%ギ酸及び20gのイソプロパノールに溶解することによって、3重量%のナイロン6のコーティング溶液を調製した。非対称5nm UPE膜の47mm円板をコーティング溶液で10秒間湿潤させた。膜円板をナイロン6溶液から取り出し、2枚のポリエチレンシートの間に置いた。テーブル上に平らに置かれたポリエチレンサンドイッチの上にゴムローラーを転がすことによって膜から過剰な溶液を除去した。膜円板をサンドイッチから取り出し、直ちに脱イオン水溶液中に配置し、そこに2分間浸漬させてナイロンを非対称5nm UPE膜に相分離させた。膜円板をDI水溶液から取り出し、直ちに100%メタノール溶液に2分間浸漬した。膜をホルダー中に拘束し、60℃に設定されたオーブン中に10分間配置した。ナイロン6でのコーティング前に、非対称5nm UPE膜は、112psiのHFE平均バブルポイント、4,234秒/500mLのIPA流量時間、55umの厚さ及び0.0ug/cm2のポンソーS色素結合能力を有していた。得られたナイロン6でコーティングされたUPE膜は、114psiのエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200平均バブルポイント、5,264秒/500mLのIPA流量時間、54umの厚さ及び2.5ug/cm2のポンソーS色素結合能力を有していた。
【0068】
実施例2:ナイロン6でコーティングされたUPE膜の保持
非対称の3nm、5nm及び10nmのUPE膜の47mm円板を、実施例1に記載の3重量%ナイロン6溶液でコーティングした。次いで、コーティングされた及びコーティングされていない3nm、5nm及び10nmのUPE膜について、上記の粒子保持率試験を測定した。結果を以下の表1に示す。
表1
【0069】
表から明らかなように、3nm、5nm及び10nmのUPE膜のコーティングは、コーティングされていない3nm、5nm及び10nmのUPE膜と比較して、各単層百分率での粒子保持率を改善した。
【0070】
実施例2-ナイロン6及びUV硬化単量体コーティングでコーティングされた非対称5nm UPE膜の調製
3gのナイロン6樹脂を77gの98%ギ酸及び20gのイソプロパノールに溶解することによって、3重量%のナイロン6のコーティング溶液を調製した。非対称5nm UPE膜の47mm円板をコーティング溶液で10秒間湿潤させた。膜円板をナイロン6溶液から取り出し、2枚のポリエチレンシートの間に置いた。テーブル上に平らに置かれたポリエチレンサンドイッチの上にゴムローラーを転がすことによって膜から過剰な溶液を除去した。膜円板をポリエチレンシートの間から取り出し、直ちに脱イオン水溶液中に配置し、そこに2分間浸漬させてナイロンを非対称5nm UPE膜に相分離させた。膜円板をDI水溶液から取り出し、直ちに0.2%Irgacure2959、0.2%MBAM(N,N’-メチレンビス(アクリルアミド))、0.5%APTAC((3-アクリルアミドプロピル)トリメチルアンモニウムクロリド溶液、Sigma-Aldrichから入手可能)及び5%メタノールを含有する単量体溶液中に浸漬した。膜円板を単量体溶液から取り出し、2枚のポリエチレンシートの間に置いた。テーブル上に平らに置かれたポリエチレンサンドイッチの上にゴムローラーを転がすことによって膜から過剰な溶液を除去した。次いで、200nm~600nmの波長で放射するFusion Systems広帯域UV曝露実験室ユニットを通してアセンブリを運搬する輸送ユニットに、ポリエチレンサンドイッチをテープで留めた。曝露の時間は、アセンブリがUVユニットを通って移動する速さによって制御される。本実施例では、アセンブリは、10フィート/分でUVチャンバを通って移動した。UV曝露後、膜円板をポリエチレンサンドイッチの間から取り出し、直ちに100%メタノール溶液中に2分間配置した。膜をホルダー中に拘束し、60℃に設定されたオーブン中に10分間配置した。ナイロン6でのコーティング前に、非対称5nm UPE膜は、112psiのエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200平均バブルポイント、4,234秒/500mLのIPA流量時間、55umの厚さ及び0.0ug/cm2のポンソーS色素結合能力を有していた。得られたナイロン6でコーティングされた及びUV硬化単量体UPE膜は、114psiのHFE平均バブルポイント、10,278秒/500mLのIPA流量時間、53umの厚さ及び6.5ug/cm2のポンソーS色素結合能力を有していた。
【0071】
実施例3-表面エネルギー測定
液体の表面張力が膜の表面自由エネルギーより小さい場合、液体は多孔質重合体膜を湿潤させる。本開示において、多孔質膜は、膜が一連の不活性な(標準の)液体内の最も高い表面張力の液体と接触して配置されたときに、液体によって濡れ、膜は外圧の付加なしに2秒以内に液体を自発的に毛管作用によって吸い上げる。
【0072】
代表的な例では、一連の不活性な(標準の)液体は、メタノールと水を異なる質量比で混合することによって調製した。得られた液体の表面張力を
図3に示す(Lange’s Handbook of Chemistry 11 edition中に公表されている表面張力データを使用してプロットした)。
【0073】
実施例1に従って調製された膜の47mm円板を、ビーカー中で不活性液体と、一度に1つの液体と接触させて配置した。各液体について、膜が液体を自発的に吸い上げるのに必要な時間量を記録した。30.32mN/mの表面張力を有する58%メタノール及び47.86mN/mの表面張力を有する22%メタノールの液体は、それぞれUPE及びUPEコーティング膜を2秒以内に湿潤させる最も高い表面張力の液体であった。
【0074】
実施例2に従って調製された膜の47mm円板を、ビーカー中で不活性液体と、一度に1つの液体と接触させて配置した。各液体について、膜が液体を自発的に吸い上げるのに必要な時間量を記録した。30.32mN/mの表面張力を有する58%メタノール及び51.83mN/mの表面張力を有する16%メタノールの液体は、それぞれUPE及びUPEコーティング膜を2秒以内に湿潤させる最も高い表面張力の液体であった。
【0075】
実施例4-ナイロン膜、ナイロン6でコーティングされたAsymmetric 5nm UPE膜及びナイロン6及びUV硬化単量体コーティングでコーティングされたAsymmetric 5nm UPE膜によるPGMEA中の金属の低減
本実施例は、ナイロン6又はナイロン6及びUV硬化単量体でコーティングされた5nm非対称UPE膜が、濾過中にPGMEA中の金属を低減させる能力を実証する。金属低減性能は、5nmの細孔サイズのナイロン6膜と比較される。
【0076】
実施例1及び実施例2と同様の方法を用いて、ナイロン6でコーティングされたUPE膜を調製し、47mmの膜切り取り片に切断した。0.35%HCl、続いて脱イオン水で数回洗浄することによって、これらの膜切り取り片を適切な状態に整え、きれいな47mm Filter Assembly(Savillex)に固定した。膜及びフィルターアセンブリにIsopropanol Gigabit(KMG)を流した後、PGMEAを流した。対照試料として、5nmナイロン6膜も調製し、同じ方法を用いて適切な状態に整え、フィルターアセンブリに固定した。13.59ppbの総金属の目標濃度で、適用溶媒PGMEAにCONOSTAN Oil Analysis Standard S-21(SCP Science)を添加した。濾過金属除去効率を決定するために、各フィルターを含有する対応する47mmフィルターアセンブリに、金属を添加した適用溶媒を10mL/分で通し、50、100及び150mLで、きれいなPFAジャーの中に濾液を収集した。ICP-MSを使用して、金属を添加した適用溶媒及び各濾液試料の金属濃度を決定した。表4.1:PGMEA中の金属低減に、結果を表として記載する。結果は、5nmのナイロン6膜が150mL後に全金属を13.59ppbから4.79ppbに低減させることができ、ナイロン6でコーティングされたAsymmetric 5nm UPE膜が150mL後に総金属を13.59ppbから5.43ppbに低減させることができ、ナイロン6及びUV硬化単量体コーティングでコーティングされたAsymmetric 5nm UPE膜が150mL後に全金属を13.59ppbから3.26ppbに低減させることができることを示している。
表4.1:PGMEA中の金属低減
【0077】
結果は、ナイロン6でコーティングされたUPE膜が一般にナイロン6対照膜より優れた金属除去を有し、ナイロン6及びUV硬化単量体でコーティングされたUPE膜がナイロン6対照膜及びナイロン6でコーティングされたUPE膜の双方より優れた金属除去を有することを示す。
【0078】
本開示の態様
第1の態様において、本開示は、複合多孔質フィルター膜であって、
その上にコーティングを有する多孔質疎水性重合体フィルター材を含み、前記コーティングはギ酸中に可溶性であるポリアミド重合体であり、前記膜は、
i.約30ダイン/cmを超える表面エネルギー;及び
ii.14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノール流量時間
を有する、複合多孔質フィルター膜を提供する。
【0079】
第2の態様において、本開示は、複合多孔質フィルター膜であって、
その上にコーティングを有する多孔質疎水性重合体フィルター材を含み、前記コーティングはギ酸中に可溶性であるポリアミド重合体であり、前記膜は、
i.約30ダイン/cmを超える表面エネルギー;及び
ii.約70%~約100%の範囲で、3%単層での粒子保持率
を有する、複合多孔質フィルター膜を提供する。
【0080】
第3の態様において、本開示は、膜が、約80%~約100%の範囲で、3%単層での粒子保持率を有する、第1又は第2の態様のフィルター膜を提供する。
【0081】
第4の態様において、本開示は、前記膜が、約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイントを有する、第1から第3の態様のいずれかに記載のフィルター膜を提供する。
【0082】
第5の態様において、本開示は、前記膜が、約1と約10μg/cm2の間のポンソーS色素結合能及び約1と約10μg/cm2の間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)を有する、第1から第4の態様のいずれかのフィルター膜を提供する。
【0083】
第6の態様において、本開示は、疎水性重合体フィルター材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオリド及びポリアリールスルホンから選択される、第1から第5の態様のいずれかのフィルター膜を提供する。
【0084】
第7の態様において、本開示は、疎水性重合体フィルター材が、超高分子量ポリエチレン及びポリ(テトラフルオロエチレン)から選択される、第1から第6の態様のいずれかのフィルター膜を提供する。
【0085】
第8の態様において、本開示は、表面エネルギーが約30~約100ダイン/cmである、第1から第7の態様のいずれかのフィルター膜を提供する。
【0086】
第9の態様において、本開示は、ポリアミド重合体が、(i)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の共重合体;(ii)ポリカプロラクタムのホモポリマー;(iii)ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の共重合体;及び(iv)テトラメチレンジアミンとアジピン酸の共重合体の少なくとも1つから構成される、第1から第8の態様のいずれか1つのフィルター膜を提供する。
【0087】
第10の態様において、本開示は、ポリアミド重合体が、約15,000~約42,000ダルトンの数平均分子量を有する、第1から第9の態様のいずれかのフィルター膜を提供する。
【0088】
第11の態様において、本開示は、前記膜が、
(i)約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約50~150psiのバブルポイントを有する;
(ii)14.2psiで測定された、約6,000~約10,000秒/500mLのイソプロパノール流量時間;並びに
(iii)約8~約10μg/cm2のポンソーS色素結合能及び1と100μg/cm2の間のメチレンブルー色素(MB DBC)結合能
第1から第10の態様のいずれかのフィルター膜を提供する。
【0089】
第12の態様において、本開示は、第1のコーティングとしてポリアミドコーティングがその上にコーティングされた多孔質疎水性重合体フィルター膜を備える複合多孔質フィルター膜であって、前記ポリアミドはギ酸中に可溶性であり、それによってポリアミドでコーティングされた膜を提供し、前記ポリアミドでコーティングされた膜は、光開始剤の存在下での(i)少なくとも1つの架橋剤と(ii)少なくとも1つの単量体のフリーラジカル反応生成物である第2のコーティングをその上に有する、複合多孔質フィルター膜を提供する。
【0090】
第13の態様において、本開示は、疎水性重合体フィルター材が、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリカーボネート、ポリ(テトラフルオロエチレン)、ポリビニリデンフルオリド及びポリアリールスルホンから選択される、第12の態様の膜を提供する。
【0091】
第14の態様において、本開示は、膜が、約70%~約100%の範囲で又は約80%~約100%の範囲で、3%単層での粒子保持率を有する、第12又は第13の態様の膜を提供する。
【0092】
第15の態様において、本開示は、表面エネルギーが約30~約85ダイン/cmである、第12から第14の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0093】
第16の態様において、本開示は、疎水性重合体フィルター材が、超高分子量ポリエチレン及びポリ(テトラフルオロエチレン)から選択される、第12から第15の態様のいずれかの膜を提供する。
【0094】
第17の態様において、本開示は、前記膜が、
(i)14.2psiで測定された、約150~約20,000秒/500mLのイソプロパノール流量時間を有し;
(ii)約22℃の温度でエトキシ-ノナフルオロブタンHFE7200を使用して測定された場合に、約20~約200psiのバブルポイントを有し;並びに、
(iii)約1と約30μg/cm2の間のポンソーS色素結合能及び約1と約30μg/cm2の間のメチレンブルー色素結合能(MB DBC)を有する、
第12から第17の態様のいずれかの膜を提供する。
【0095】
第18の態様において、本開示は、ポリアミドが、(i)ヘキサメチレンジアミンとアジピン酸の共重合体;(ii)ポリカプロラクタムのホモポリマー;(iii)ヘキサメチレンジアミンとセバシン酸の共重合体;及び(iv)テトラメチレンジアミンとアジピン酸の共重合体の少なくとも1つから構成される、第12から第17の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0096】
第19の態様において、本開示は、ポリアミド重合体が、約15,000~約42,000ダルトンの数平均分子量を有する、第12から第19の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0097】
第20の態様において、本開示は、架橋剤が、メチレンビス(アクリルアミド)、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアメタクリレート、ジビニルスルホン、ジビニルベンゼン、1,3,5-トリアリル-1,3,5-トリアジン-2,4,6(1H,3H,5H)-トリオン及びエチレングリコールジビニルエーテルから選択される、第12から第19の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0098】
第21の態様において、本開示は、単量体が、2-(ジメチルアミノ)エチルヒドロクロリドアクリレート、[2-(アクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、2-アミノエチルメタクリレートヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリレートヒドロクロリド、2-(ジメチルアミノ)エチルメタクリレートヒドロクロリド、[3-(メタクリロイルアミノ)プロピル]トリメチルアンモニウムクロリド溶液、[2-(メタクリロイルオキシ)エチル]トリメチルアンモニウムクロリド、アクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2-アミノエチルメタクリルアミドヒドロクロリド、N-(2-アミノエチル)メタクリルアミドヒドロクロリド、N-(3-アミノプロピル)メタクリルアミドヒドロクロリド、ジアリルジメチルアンモニウムクロリド、アリルアミンヒドロクロリド、ビニルイミダゾリウムヒドロクロリド、ビニルピリジニウムヒドロクロリド、ビニルベンジルトリメチルアンモニウムクロリド及びアクリルアミドプロピルトリメチルアンモニウムクロリド、2-エチルアクリル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩、2-プロピルアクリル酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、メタクリル酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸から選択される、第12~第20の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0099】
第22の態様において、本開示は、単量体が、2-エチルアクリル酸、アクリル酸、2-カルボキシエチルアクリレート、3-スルホプロピルアクリレートカリウム塩、2-プロピルアクリル酸、2-(トリフルオロメチル)アクリル酸、メタクリル酸、2-メチル-2-プロペン-1-スルホン酸ナトリウム塩、モノ-2-(メタクリロイルオキシ)エチルマレエート、3-スルホプロピルメタクリレートカリウム塩、2-アクリルアミド-2-メチル-1-プロパンスルホン酸、3-メタクリルアミドフェニルボロン酸、ビニルスルホン酸及びビニルホスホン酸から選択される、第12から第21の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0100】
第23の態様において、本開示は、単量体が、アクリルアミド、N,N-ジメチルアクリルアミド、N-(ヒドロキシエチル)アクリルアミド、ジアセトンアクリルアミド、N-[トリス(ヒドロキシメチル)メチル]アクリルアミド、N-(イソブトキシメチル)アクリルアミド、N-(3-メトキシプロピル)アクリルアミド、7-[4-(トリフルオロメチル)クマリン]アクリルアミド、N-イソプロピルアクリルアミド、2-(ジメチルアミノ)エチルアクリレート、1,1,1,3,3,3-ヘキサフルオロイソプロピルアクリレート、アクリル酸エチル、2-ヒドロキシエチルアクリレート、アクリル酸ブチル、エチレングリコールメチルエーテルアクリレート、4-ヒドロキシブチルアクリレート、ヒドロキシプロピルアクリレート、4-アセトキシフェネチルアクリレート、ベンジルアクリレート、1-ビニル-2-ピロリジノン、酢酸ビニル、エチルビニルエーテル、ビニル4-tert-ブチルベンゾエート及びフェニルビニルスルホンから選択される、第12から第22の態様のいずれか1つの膜を提供する。
【0101】
第24の態様において、本開示は、第1~第9の態様のいずれか1つの複合多孔質フィルター膜を調製するための方法であって、
a.ポリアミド溶液を形成するために、ポリアミド重合体をギ酸中に溶解させることと、
b.ポリアミドでコーティングされた膜を提供するために、多孔質疎水性重合体フィルター材を前記ポリアミド溶液と接触させることと、
c.前記ポリアミドでコーティングされた膜を、水を含む溶液中に浸漬することと、
d.C1~C4アルコール及び水で、前記ポリアミドでコーティングされた膜をすすぐことと、
e.前記ポリアミドでコーティングされた膜を乾燥させることと
を含む、方法を提供する。
【0102】
第25の態様において、本開示は、第10から第20の態様のいずれか1つの複合多孔質フィルター膜を調製するための方法であって、
a.ポリアミド溶液を形成するために、親水性ポリアミド重合体をギ酸中に溶解させることと、
b.ポリアミドでコーティングされた膜を提供するために、多孔質疎水性重合体フィルター材を前記ポリアミド溶液と接触させることと、
c.水、少なくとも1つの架橋剤、少なくとも1つの単量体及び少なくとも1つの光開始剤を含む単量体溶液中に前記ポリアミドでコーティングされた膜を浸すことと、
d.得られた膜を前記浴から取り出し、紫外線照射を当てることと、その後、
e.水及びC1~C4アルコールから選択される溶媒を含むすすぎ浴中で、前記ポリアミドでコーティングされた膜をすすぐことと、
f.前記複合多孔質フィルター膜を乾燥させることと、
を含む、方法を提供する。
【0103】
第26の態様において、本開示は、液体から不純物を除去するための方法であって、液体を第1~第19の態様のいずれか1つの複合膜と接触させることを含む、方法を提供する。
【0104】
第27の態様において、本開示は、不純物が1つ以上の金属又は半金属イオンから選択される、第26の態様の方法を提供する。
【0105】
第28の態様において、本開示は、不純物が、リチウム、ホウ素、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カリウム、カルシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、鉄、ニッケル、銅、亜鉛、モリブデン、銀、カドミウム、スズ、バリウム及び鉛の1つ以上のイオンから選択される、第27の態様の方法を提供する。
【0106】
第29の態様において、本開示は、第1~第11の態様のいずれか1つの膜を備えるフィルターを提供する。
【0107】
第30の態様において、本開示は、第12~第23の態様のいずれか1つの膜を備えるフィルターを提供する。
【0108】
このように本開示のいくつかの例示的な態様を説明してきたが、当業者は、本明細書に添付された特許請求の範囲の範囲内でさらに他の態様が作製及び使用され得ることを容易に理解するであろう。本文書によってカバーされる本開示の多くの利点は、前述の説明に記載されている。しかしながら、本開示は、多くの点で例示にすぎないことが理解されよう。本開示の範囲を超えることなく、細部に変更を加え得る。本開示の範囲は、当然のことながら、添付の特許請求の範囲が表現されている言語で定義される。