(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-13
(45)【発行日】2024-09-25
(54)【発明の名称】走査型プローブ顕微鏡、試料観察加工システムおよび電気特性評価装置
(51)【国際特許分類】
G01Q 80/00 20100101AFI20240917BHJP
G01Q 30/02 20100101ALI20240917BHJP
G01R 31/26 20200101ALI20240917BHJP
【FI】
G01Q80/00 111
G01Q30/02
G01R31/26 J
(21)【出願番号】P 2023508358
(86)(22)【出願日】2021-03-26
(86)【国際出願番号】 JP2021012775
(87)【国際公開番号】W WO2022201478
(87)【国際公開日】2022-09-29
【審査請求日】2023-09-20
(73)【特許権者】
【識別番号】501387839
【氏名又は名称】株式会社日立ハイテク
(74)【代理人】
【識別番号】110000350
【氏名又は名称】ポレール弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】相蘇 亨
(72)【発明者】
【氏名】竹内 秀一
(72)【発明者】
【氏名】鹿倉 良晃
【審査官】福田 裕司
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-201304(JP,A)
【文献】特開2012-242146(JP,A)
【文献】特開2011-064514(JP,A)
【文献】特開2013-114854(JP,A)
【文献】国際公開第2019/155518(WO,A1)
【文献】特開2002-340756(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2006/0270067(US,A1)
【文献】米国特許第6005400(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01Q 80/00
G01Q 30/02
G01R 31/26
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料と探針を相対的に走査するための走査部を有し、前記試料と前記探針を走査することにより前記試料を観察する走査型プローブ顕微鏡であって、
制御部を備え、
前記制御部は、前記走査の結果得られる関心領域を取得したのちに、さらに観察または加工またはその両方を行うための拡大観察加工装置であって、当該走査型プローブ顕微鏡とは別個の前記拡大観察加工装置に関する情報を元に、前記拡大観察加工装置が観察または加工する領域が前記関心領域を内包する領域であり、かつ、当該領域を前記拡大観察加工装置で観察した際の拡大縮小中心に前記関心領域が位置する観察または加工する領域を特定し、前記探針と前記試料を相互作用させることにより、前記観察または加工する領域の外縁の少なくとも一部を示すマーカーを形成するように、制御を行い、
前記マーカーが線で構成される際に、マーカー線の方向、前記マーカー線の長さ、前記マーカー線の太さ、前記マーカー線の重ね書き回数、前記マーカー線の深さもしくは高さ、前記マーカー線の描画速度のいずれか一つ以上の条件を変えることができる、走査型プローブ顕微鏡。
【請求項2】
試料と探針を相対的に走査するための走査部を有し、前記試料と前記探針を走査することにより前記試料を観察する走査型プローブ顕微鏡であって、
制御部を備え、
前記制御部は、前記走査の結果得られる関心領域を取得したのちに、さらに観察または加工またはその両方を行うための拡大観察加工装置であって、当該走査型プローブ顕微鏡とは別個の前記拡大観察加工装置に関する情報を元に、前記拡大観察加工装置が観察または加工する領域が前記関心領域を内包する領域であり、かつ、当該領域を前記拡大観察加工装置で観察した際の拡大縮小中心に前記関心領域が位置する観察または加工する領域を特定し、前記探針と前記試料を相互作用させることにより、前記観察または加工する領域の外縁の少なくとも一部を示すマーカーを形成するように、制御を行い、
前記走査部が圧電素子より構成され、
前記マーカーを形成する際に、空中もしくは前記探針により前記試料にマーカーが形成されないほどの条件において、複数回の走査を行った後に、所定の前記マーカーを形成する、走査型プローブ顕微鏡。
【請求項3】
試料と探針を相対的に走査するための走査部を有し、前記試料と前記探針を走査することにより前記試料を観察する走査型プローブ顕微鏡であって、
制御部を備え、
前記制御部は、前記走査の結果得られる関心領域を取得したのちに、さらに観察または加工またはその両方を行うための拡大観察加工装置であって、当該走査型プローブ顕微鏡とは別個の前記拡大観察加工装置に関する情報を元に、前記拡大観察加工装置が観察または加工する領域が前記関心領域を内包する領域であり、かつ、当該領域を前記拡大観察加工装置で観察した際の拡大縮小中心に前記関心領域が位置する観察または加工する領域を特定し、前記探針と前記試料を相互作用させることにより、前記観察または加工する領域の外縁の少なくとも一部を示すマーカーを形成するように、制御を行い、
モニタ表示部を有し、
前記モニタ表示部は、スキャナ可動範囲表示部とマーキング条件表示部とを含むマーキング設定画面と表示し、
前記マーキング設定画面は、前記拡大観察加工装置のマーカー探索時の視野倍率もしくは視野アスペクト比を入力可能に構成され、
前記視野倍率もしくは前記視野アスペクト比が前記マーキング条件表示部に入力されたことに基づいて、前記スキャナ可動範囲表示部は前記拡大観察加工装置が前記マーカーを探索するときの視野サイズと一致もしくは相似の矩形を表示し、かつ、前記矩形の角部に選択可能なマーキング箇所指定部を表示し、
前記マーキング箇所指定部の選択状態に基づいて、前記マーカーが前記試料に形成される、走査型プローブ顕微鏡。
【請求項4】
請求項1
に記載の走査型プローブ顕微鏡と、
前記関心領域が特定された前記試料をさらに観察または加工またはその両方を行うための拡大観察加工装置と、を備える、試料観察加工システムであって、
前記試料観察加工システムは、前記走査型プローブ顕微鏡により生
成された前記マーカーを用いて、前記走査型プローブ顕微鏡の前記関心領域と前記拡大観察加工装置の観察または加工する領域の角度を合わせるように、前記拡大観察加工装置の視野のいずれか1つ以上の角と、前記マーカーとを一致させたのち、前記拡大観察加工装置の倍率を上昇させ、前記関心領域の観察または加工またはその両方を実行する、試料観察加工システム。
【請求項5】
請求項2又は3に記載の走査型プローブ顕微鏡であって、
前記マーカーが線で構成される際に、マーカー線の方向、前記マーカー線の長さ、前記マーカー線の太さ、前記マーカー線の重ね書き回数、前記マーカー線の深さもしくは高さ、前記マーカー線の描画速度のいずれか一つ以上の条件を変えることができる、走査型プローブ顕微鏡。
【請求項6】
請求項2又は3に記載の走査型プローブ顕微鏡と、
前記関心領域が特定された前記試料をさらに観察または加工またはその両方を行うための拡大観察加工装置と、を備える、試料観察加工システムであって、
前記試料観察加工システムは、前記走査型プローブ顕微鏡により生
成された前記マーカーを用いて、前記走査型プローブ顕微鏡の前記関心領域と前記拡大観察加工装置の観察または加工する領域の角度を合わせるように、前記拡大観察加工装置の視野のいずれか1つ以上の角と、前記マーカーとを一致させたのち、前記拡大観察加工装置の倍率を上昇させ、前記関心領域の観察または加工またはその両方を実行する、試料観察加工システム。
【請求項7】
試料の電気特性を評価する電気特性評価装置であって、
導電性の探針と、
前記試料と前記探針の相対的な位置関係を変更させる駆動部と、
前記探針に接続され、前記試料の電気特性を評価する電気特性評価部と、
前記試料に向けて荷電粒子線を照射する荷電粒子線照射部と、
を備え、
前記探針を前記試料に接触させながら前記荷電粒子線を前記試料に照射することにより前記試料の電気特性を評価し、前記評価の結果に基づき関心領域を特定し、
前記関心領域を内包する領域であり、かつ、当該領域を拡大観察加工装置で観察した際の拡大縮小中心に前記関心領域が位置する、観察または加工する領域を特定し、
前記探針と前記試料を相互作用させることにより、前記観察または加工する領域の外縁の少なくとも一部を示すマーカーを形成する、
電気特性評価装置。
【請求項8】
試料の電気特性を評価する電気特性評価装置であって、
導電性の探針と、
前記試料と前記探針の相対的な位置関係を変更させる駆動部と、
前記探針に接続され、前記試料の電気特性を評価する電気特性評価
部と、
前記試料に向けて荷電粒子線を照射する荷電粒子線照射部と、
を備え、
前記探針は、前記荷電粒子線照射部の視野内において前記試料と接触可能であり、
前記探針を前記試料に接触させながら前記荷電粒子線を前記試料に照射することにより前記試料の電気特性を評価し、前記評価の結果に基づき関心領域を特定し、
前記関心領域を内包する領域であり、かつ、当該領域を拡大観察加工装置で観察した際の拡大縮小中心に前記関心領域が位置する、観察または加工する領域を特定し、
前記探針と前記試料を相互作用させることにより、前記観察または加工する領域の外縁の少なくとも一部を示すマーカーを形成する、
電気特性評価装置。
【請求項9】
請求項
7又は8に記載の電気特性評価装置と、
前記電気特性評価装置により電気特性が評価された前記試料の前記関心領域について観察若しくは加工又はその両方を行うための拡大観察加工装置と、
を備える、試料観察加工システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定した関心領域と同一の視野を、拡大観察加工装置で観察または加工することを目的とし、関心領域の周囲にマーカーを形成する機能を有する、走査型プローブ顕微鏡装置、試料観察加工システムおよび電気特性評価装置に関する。
【背景技術】
【0002】
走査型プローブ顕微鏡(SPM)を用いて測定した関心領域と同一の視野を、別の拡大観察加工装置で観察または加工することを目的として、関心領域の周囲に圧痕やスクラッチ痕などのマーカーを形成する走査型プローブ顕微鏡が用いられてきた。一般に、走査型プローブ顕微鏡を用いて測定した関心領域の周囲にマーカーを形成する際に、関心領域への影響を配慮し、離れた位置にマーカーを形成することが多い。また特許文献1や特許文献2のように、マーカー形成時に専用の探針に交換するため、高精度な電動ステージや特殊なプローブアレイを用いて、探針交換時の位置ずれによるマーカーと関心領域の位置ずれを補正していた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特開2002-139414
【文献】特開2017-201304
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
走査型プローブ顕微鏡を用いて測定した関心領域が狭域の場合、マーカーを目印として、大まかな関心領域の位置は特定できるものの、関心領域の中心位置や視野回転角度を、拡大観察加工装置を用いて精度よく一致させようとすると、関心領域の周囲を拡大観察加工装置の狭域観察しながらアライメントする必要があり、そのアライメント過程で関心領域を変質させてしまう課題があった。ここで、変質とは、電子線ダメージによる試料の関心領域の変形、走査電子顕微鏡(SEM)を用いた観察による関心領域へのカーボンコンタミネーション層の付着、帯電などを総称して表している。
【0005】
その他の課題と新規な特徴は、本明細書の記述および添付図面から明らかになるであろう。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明のうち代表的なものの概要を簡単に説明すれば下記の通りである。
【0007】
本発明の一態様に係る走査型プローブ顕微鏡は、拡大観察加工装置による広域かつ高速の観察でもマーカーの視認性を向上させることを目的とし、関心領域を中心とした周囲に、拡大観察加工装置の観察視野アスペクト比、及び観察角度と一致するようにマーカーを配置する。さらに、そのマーカーは、エッジコントラストを強調するために、一例では、多重線スクラッチ痕によって形成する。
【発明の効果】
【0008】
本発明により、拡大観察加工装置による広域かつ高速の観察でもマーカーの視認性を向上させることができる。これにより、高精度な電動ステージを有しない走査型プローブ顕微鏡と拡大観察加工装置との間であっても、視認性の高いマーカーによって、高精度の電動ステージやプローブアレイによるアライメントの必要なく、拡大観察加工装置の広域観察だけで、容易に関心領域の中心位置と視野角度を特定するができる。その後、拡大観察加工装置の倍率ズームによって関心領域を一度に高倍率で撮像し、拡大観察加工装置による関心領域の変質を最小限に抑えたまま、関心領域の観察または加工またはその両方を行うことができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】
図1は、実施例に係るサンプルスキャン方式走査型プローブ顕微鏡の構成例を示す全体構成図である。
【
図2】
図2は、実施例に係るプローブスキャン方式走査型プローブ顕微鏡の構成例を示す全体構成図である。
【
図3】
図3は、
図1、
図2に示す走査型プローブ顕微鏡から拡大観察加工装置への同一箇所観察または加工までの手順を示すフローチャートである。
【
図4】
図4は、実施例に係る試料観察加工システムの構成例1を説明する図である。
【
図5】
図5は、実施例に係る試料観察加工システムの構成例2を説明する図である。
【
図6】
図6は、実施例に係る試料観察加工システムの構成例3を説明する図である。
【
図7】
図7は、実施例に係るマーカーの配置例を説明する図である。
【
図8】
図8は、実施例に係るマーカーの形状例を説明する図である。
【
図9】
図9は、マーキング用プローブ交換前後の位置ずれ補正を説明する図である。
【
図10】
図10は、実施例に係るマーキング設定画面の構成例1を示す図である。
【
図11】
図11は、実施例に係るマーキング設定画面の構成例2を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、実施例について、図面を用いて説明する。ただし、以下の説明において、同一構成要素には同一符号を付し繰り返しの説明を省略することがある。なお、図面は説明をより明確にするため、実際の態様に比べ、模式的に表される場合があるが、あくまで一例であって、本発明の解釈を限定するものではない。
【実施例】
【0011】
(走査型プローブ顕微鏡の全体構成例)
本実施例では、基本的な実施形態について説明する。
図1は、本実施例のサンプルスキャン方式走査型プローブ顕微鏡(SPM)101の構成図を示す。
【0012】
図1に示される走査型プローブ顕微鏡101は制御部127によってその全体的な動作が制御され、レーザーダイオード106から発せられたレーザー光103を、レーザー側ミラー105を経由してカンチレバー108の背面に照射し、カンチレバー108の表面の先端に取り付けられた探針114を、サンプルスキャナZピエゾ111を駆動することによって試料台110の上に載置された試料109の表面に近接させる。レーザーダイオード106はレーザー制御回路120により駆動され、レーザー光103を発光する。探針114と試料109との間に働く力によってカンチレバー108が反り、ディテクタ側ミラー104を経由してフォトディテクタ102に入射したレーザー光103の入射位置が変化する。その入射位置の変化を、信号増幅回路123によって増幅し、Zフィードバック回路124によって、常に探針114と試料109との間に働く力が微小力で維持されるようにサンプルスキャナZピエゾ111をZ方向(上下方向)に伸縮させ、そのサンプルスキャナZピエゾ111の印加電圧を、信号処理部125にて高さ情報に変換する。その高さ情報は記憶部126に記憶される。
【0013】
また、試料109はXYピエゾ駆動回路122により駆動されるサンプルスキャナXピエゾ112及びサンプルスキャナYピエゾ113によってX方向(左右方向)およびY方向(前後方向)に走査され、サンプルスキャナZピエゾ111の印加電圧と併せて、信号処理部125によって3次元情報に変換される。その3次元情報は、走査型プローブ顕微鏡101を用いて測定した測定視野の画像として、モニタ表示部128に表示される。また、探針114の先端の摩耗を抑える目的で、バイモルフピエゾ駆動回路121からバイモルフピエゾ107に交流信号を印加し、カンチレバー108を振動させながら試料109を走査する方式も用いられる。
【0014】
また、探針114と試料109の相対位置を変えられるように、カンチレバー108もしくは試料台110のどちらか一方を手動もしくは電動で動かすことのできる粗動機構を有している場合もあり、その相対位置はカンチレバー108の直上に配置された光学顕微鏡115を用いて調整される。
【0015】
図2は、本実施例のプローブスキャン方式走査型プローブ顕微鏡201の構成図を示す。プローブスキャン方式走査型プローブ顕微鏡(以下、SPMと省略する場合もある)201は、サンプルスキャン方式走査型プローブ顕微鏡101とは異なり、プローブスキャンZピエゾ211、プローブスキャンXピエゾ212、プローブスキャンYピエゾ213がカンチレバー108側についており、探針114を走査することでデータを取得する。プローブスキャン方式走査型プローブ顕微鏡201の他の構成および機能は、サンプルスキャン方式走査型プローブ顕微鏡101の構成および機能と同一であり、重複する説明は省略する。
【0016】
この場合、レーザーダイオード106、レーザー側ミラー105、ディテクタ側ミラー104、フォトディテクタ102の全てもしくは一部を同時に走査し、レーザー光103をカンチレバー108の走査動作と同期させる方法が用いられる。また試料ステージ214を手動もしくは、試料ステージ駆動回路215によって駆動することが出来る。
【0017】
(フローチャート)
図3は、
図1、
図2に示す走査型プローブ顕微鏡から拡大観察加工装置への同一箇所観察または加工またはその両方を行うまでの手順を示すフローチャートである。
図3のフロー図を参照しながら、本発明の実施方法を説明する。
【0018】
本フローチャートはステップ301により開始される。ステップ302では走査型プローブ顕微鏡(101、または、102)を用いた関心領域の測定を実施する。次に、ステップ303では、走査型プローブ顕微鏡の観察用探針を有する測定用プローブを、マーキング用探針を有するマーキング用プローブへ交換するか否かの判断を行う。ステップ303で、マーキング用プローブへ交換する場合(Yes)はステップ304に移行する。ステップ303で、関心領域を測定した測定用プローブのままマーキングを行う際、つまり、測定用プローブをマーキング用プローブとして併用する場合(No)はステップ306に移行する。
【0019】
マーキングを行う際に、視認性の高いマーキングを行うために、マーキング用プローブに交換する場合がある。その際に、プローブ交換後に探針位置がずれる場合があるため、ステップ305に示すように、光学顕微鏡像もしくは試料表面を走査したデータを比較することで、探針位置ずれを補正する。つまり、走査型プローブ顕微鏡(101、または、102)は、測定用プローブをマーキング用プローブへ交換した際に、測定用プローブの観察用探針とマーキング用プローブのマーキング用探針との位置ずれを補正する手段を有している。
【0020】
次に、
図9を用いて、位置ずれ補正の方法を説明する。
図9は、マーキング用プローブ交換前後の位置ずれ補正を説明する図である。
図9では、光学顕微鏡像を用いた位置ずれ補正の一例を示している。
図9の(a)、(b)、(c)は共に走査型プローブ顕微鏡(101、または、102)のカンチレバー108の直上に付いている光学顕微鏡115の光学顕微鏡像を表している。
図9の(a)は測定用プローブ902を用いて関心領域を測定した直後の光学顕微鏡像を表している。
図9の(b)はマーキング用プローブ903に交換した直後の光学顕微鏡像を表している。
図9の(c)は測定用プローブ探針位置901とマーキング用プローブ探針位置904とを一致させたときの光学顕微鏡像を表している。
【0021】
最初に、
図9の(a)に示すように、測定用プローブ902を用いて関心領域を測定した直後の光学顕微鏡像上で、測定用プローブ探針位置901をマウスなどのポイントティング装置でクリックし、測定用プローブ探針位置901を記憶部126に記憶させる。次に、
図9の(b)に示すように、マーキング用プローブ903に交換した直後の光学顕微鏡像上で、マーキング用プローブ探針位置904をポイントティング装置でクリックし、測定用プローブ探針位置901とマーキング用プローブ探針位置904との間の距離であるマーキング用プローブ探針位置ずれ距離905を計測する。最後に、この距離905を補正するように、つまり、測定用プローブ探針位置901とマーキング用プローブ探針位置904とが一致してこの距離905がほぼゼロとなるように、マーキング用プローブ903と試料109との相対位置を動かす。この方法には、マーキング用プローブ903側と試料109側を動かす場合があり、
図9の(c)では、マーキング用プローブ903側の探針位置904が、記録されていた測定用プローブ探針位置901と重なるようにマーキング用プローブ903側を、矢印で示すように左斜め下側の方向へ移動させる様子を表している。ここで、906は、位置ずれ補正後のマーキング用プローブを表している。
【0022】
次に、
図3のステップ306で、走査型プローブ顕微鏡(101、または、102)を用いて関心領域の周囲にマーキングを行う。マーカー配置例を
図7に示す。
図7は、実施例に係る走査型プローブ顕微鏡(SPM)によるマーカー配置例を説明する図である。
図7に示す各マーカーは、拡大観察加工装置の狭域観察による関心領域の変質を抑制するため、拡大観察加工装置の広域観察の状態を保ったまま、容易に関心領域の位置を特定することを目的として設けられている。以下、
図7の(a)~(j)に示す各マーカーの配置例について説明する。ここで、関心領域の周囲とは、拡大観察加工装置のマーキング探索時の観察視野(703)の領域の外縁に対応する。
【0023】
図7の(i)に示すように、拡大観察加工装置で関心領域702を観察した際の拡大縮小中心に関心領域702が位置するように、あらかじめ指定された拡大観察加工装置のマーキング探索時の観察視野703の領域の外縁の少なくとも一部を示すマーカー705を生成する。このとき、
図7の(i)では、拡大観察加工装置の観察視野703の視野アスペクト比は4:3と想定して図示している。さらに、拡大観察加工装置のマーカー探索時の観察視野703と一致もしくは相似の矩形であって、矩形の少なくとも1つの角部を示すようにカギカッコ型(L字型)マーカー705を生成する。このカギカッコ型マーカー705のように、関心領域702の中心を回転中心とした場合において回転対称ではない位置(非回転対象位置)にマーカーを配置することで、関心領域702と拡大観察加工装置の観察視野703の角度を一致させることができる。
【0024】
拡大観察加工装置のマーカー探索時の観察視野703があらかじめ決まっていなくても、その観察視野703の大きさを明示するために、2つの角部を十字型マーカー701で示すような
図7の(g)(左側の短辺の角部の2点に十字型マーカー701を配置)及び(h)(下側の長辺の角部の2点に十字型マーカー701を配置)の配置や、拡大観察加工装置のマーキング探索時の観察視野703の左側の短辺一辺を示す短辺型マーカー709による
図7の(l)の配置、下側の長辺一辺を示すような長辺型マーカー710による
図7の(k)の配置、左側の短辺一辺と下側の長辺一辺の両方を示す短辺長辺一体型マーカー711による
図7の(j)の配置も有効である。さらに、拡大観察加工装置のマーカー探索時の観察視野703の3つの角部を十字型マーカー701で示す
図7の(a)や、バツ型(X字型)マーカー704で示す
図7の(b)、カギカッコ型マーカー705で示す
図7の(c)でも良い。
【0025】
また、拡大観察加工装置が1:1アスペクト比の観察視野706の場合は
図7の(d)の配置、拡大観察加工装置が16:9アスペクト比の観察視野707の場合は
図7の(e)の配置、拡大観察加工装置が3:4アスペクト比の観察視野708の場合は
図7の(f)の配置と、拡大観察加工装置の観察視野のアスペクト比に応じて、マーキングの配置も任意に設定可能とするのが好ましい。
【0026】
ここで、走査型プローブ顕微鏡101、102は以下のようにまとめるができる。走査型プローブ顕微鏡101、102は、試料109と探針114を相対的に走査するための走査部(例えば、111~113、211~213など)を有し、試料109と探針114を走査することにより試料109を観察する。走査型プローブ顕微鏡101、102は制御部127を備える。制御部127は、走査の結果得られる関心領域702を取得したのちに、さらに観察または加工またはその両方を行うための拡大観察加工装置であって、走査型プローブ顕微鏡101、102とは別個の当該拡大観察加工装置に関する情報(たとえば、観察視野703の視野サイズ、視野アスペクト比、視野倍率、観察角度など)を元に、当該拡大観察加工装置が観察または加工する領域(観察視野703の領域)が関心領域702を内包する領域であり、かつ、当該領域(観察視野703の領域)を当該拡大観察加工装置で観察した際の拡大縮小中心に関心領域702が位置する観察または加工する領域(観察視野703の領域)を特定し、探針114と試料109を相互作用させることにより、観察または加工する領域(観察視野703)の外縁(例えば、角部、短辺、長辺など)の少なくとも一部を示すマーカーを形成するように、制御を行う。
【0027】
拡大観察加工装置の狭域観察による関心領域の変質を抑制し、拡大観察加工装置の広域観察の状態を保ったまま、容易に関心領域の位置を特定することを目的とするため、マーカー自体の拡大観察加工装置にとっての視認性の高さも重要である。
図8は、実施例に係る走査型プローブ顕微鏡により形成されたマーカーの形状例を説明する図である。
図8では、代表例として、バツ型(X字型)マーカー704の形状例を説明するが、他のマーカー(701、705、709、710、711)の形状にも適用可能である。
図8の(a)~(i)を用いて、マーカー形状の一例を説明する。
【0028】
図8の(a)は、走査型プローブ顕微鏡(101、または、102)の探針114のスクラッチ痕によって試料109に形成された1本線マーカー(一線スクラッチ痕)801である。
図8の(a)示す1本線マーカー801で視認性が十分でない場合、
図8の(b)に示すように4本線マーカー802、さらに
図8の(c)に示すように8本線マーカー803のように、線の本数を増やすことで多重線スクラッチ痕を形成し、マーカーの視認性を高めることも選択可能とする。
図8の(d)は、走査型プローブ顕微鏡(101、または、102)の探針114のスクラッチ痕を弱い圧力で試料109に付けた場合の弱触圧マーカー811を示す。
図8の(d)に示すような弱触圧マーカー811では、線自体が細く、本数は多くても、その視認性が十分でない場合も考えられる。このような場合、探針114の試料109に対する走査速度の調整や、
図8の(e)に示すように探針114の試料109に対する押込み量を増やした状態でのスクラッチ痕による強触圧マーカー812も設定可能とする。さらに
図8の(f)に示すように、スクラッチ痕を深くまたは太くするために、探針114により複数回重ねて同じ位置にスクラッチを行い、深いスクラッチ痕を形成する複数回重ね書きマーカー813のように、任意の重ね書き回数(例えば、3回)を設定可能とする。また
図8の(g)に示すように、さらにスクラッチ本数を増やした米型(アスタリスク字型)マーカー821も設定可能とする。また、マーカー自体の大きさについても、
図8の(h)に示す小サイズマーカー831や、
図8の(i)に示す大サイズマーカー832など、状況に応じて任意のサイズに設定可能とする。
【0029】
走査型プローブ顕微鏡(101、または、102)のスキャナ(111~113、または、211~213)が圧電素子で構成されている場合、圧電素子の持つ特性によってマーカー形状に歪みが生じることがある。その場合は、探針114によってマーキングを行う際に、空中もしくは探針114が試料109にマーキングされないほどの条件(探針114により試料109にマーカーが形成されないほどの条件)において、探針114をスキャナ(111~113、または、211~213)により複数回の走査し、探針114の複数回の走査を行った後に、探針114によって試料109に所定のマーキングを実施するのが好ましいい。これにより、マーカー形状の歪みを低減することができる。また、このように、マーカー形状の歪みを低減する設定も可能である。
【0030】
次に、
図10を用いてマーキング設定画面を説明する。
図10は、実施例に係る走査型プローブ顕微鏡(SPM)に設けられたマーキング設定画面の構成例1を示す図である。
図10では、代表例として、観察視野703の3つの角部にマーカーを形成する場合(例えば、
図7の(a)参照)について説明するが、他の配置例(
図7の(g)、(h)、(i)、(l)、(k)、(j))にも適用可能である。
【0031】
ユーザーがSPM(101、または、102)を用いて関心領域を特定し、観察像を取得した後、モニタ表示部128にマーキング設定画面1001を表示する。マーキング設定画面1001は、SPMのスキャナ可動範囲表示部1002とマーキング条件表示部1003とを有している。スキャナ可動範囲表示部1002内にSPMの観察視野1022と関心領域1024が表示され、関心領域1024のスキャナ座標が関心領域位置1012に表示される。
【0032】
ユーザーはマーキング条件表示部1003内で、拡大観察加工装置の種類を選択する。この例では、拡大観察加工装置として、第1走査電子顕微鏡SEM1、第2走査電子顕微鏡SEM2、集束イオンビーム装置FIB1の3つの装置から1つの装置を選択可能に構成されている。
図10では、第1走査電子顕微鏡SEM1が選択された状態(黒丸●印)を表している。特に制限されないが、第1走査電子顕微鏡SEM1は、第2走査電子顕微鏡SEM2と比較して、その観察視野の倍率が同一、高い、または、低い装置とすることができる。
【0033】
拡大観察加工装置の種類を選択すると、あらかじめユーザーが観察視野設定ボタン1004をクリックして登録した、もしくは通信によって取得された拡大観察加工装置(ここでは、選択した第1走査電子顕微鏡SEM1)がマーカーを探索するときの観察視野703と観察視野703のアスペクト比を読み込み、
図7の(a)から
図7の(j)に示すように、観察視野703の視野サイズに合ったマーキング位置(マーカーの配置位置条件)を決定する。ユーザーはマーカー間隔リストボックス1007からマーカーを配置する間隔を選択もしくは数値入力し、マーカー形状リストボックス1005からマーカー形状を選択もしくは数値入力し、マーカーサイズリストボックス1006からマーカーの大きさを選択もしくは数値入力することによって、
図8の(g)から
図8の(i)に示すようなマーカー形状を指定できる。これらの条件をマーキング条件表示部1003内に設定すると、指定したマーキング条件に基づいたマーキング箇所1021、と拡大観察加工装置である第1走査電子顕微鏡SEM1の観察視野1023がスキャナ可動範囲表示部1002内に、例えば点線の矩形で、表示される。ユーザーはスキャナ可動範囲表示部1002を確認した後、マーキング開始ボタンをクリックしてマーキングを開始させる。設定保存ボタンをクリックすると、マーキング条件表示部1003に設定したマーキング条件やスキャナ可動範囲表示部1002の表示画像を、例えば、記憶部126に記憶させることができる。終了ボタンをクリックすると、マーキング設定画面1001の表示が終了する。
【0034】
また、マーキングを開始させる前に、次に説明する各条件をマーキング条件表示部1003内に設定してもよい。ユーザーは、マーカー本数リストボックス1008からマーカー線の本数を選択または数値入力し、
図8の(a)から
図8の(c)に示すようにマーカー線の本数を指定できる。また、ユーザーは、描画押し込み量リストボックス1009からマーカー描画時のカンチレバー108(または、探針114)の押し込み量を選択または数値入力し、描画速度リストボックス1010からマーカー描画速度(カンチレバー108(または、探針114)の移動速度)を選択または数値入力し、重ね書き回数リストボックス1011からマーカーの重ね書き回数を選択または数値入力し、
図8の(d)から
図8の(f)に示すように拡大観察加工装置におけるマーカーの視認性を最適化する条件をマーキング条件表示部1003内に設定することができる。これにより、マーカーの視認性を最適化できるので、マーカーの視認性を向上させることができる。なお、マーキング条件表示部1003にマーカーを形成するための条件設定用のリストボックス1005~1011を設けた構成例を示したが、これに限定されない。マーキング条件表示部1003に、マーカーの視認性を向上させることができるようなマーカー形成条件を入力ないし設定できるようにすれば良い。
【0035】
次に、
図4を用いて、試料観察加工システムの構成例を説明する。
図4は、実施例に係る試料観察加工システムの構成例1を説明する図である。試料観察加工システム400は、
図1又は
図2の走査型プローブ顕微鏡(SPM)と拡大観察加工装置とを含む。
図4では、拡大観察加工装置が走査電子顕微鏡(SEM)である場合の試料観察加工システム400を示している。
【0036】
図4の(a)は、走査型プローブ顕微鏡(SPM)のマーキング用プローブ401を用いて、試料台403の上に設置された試料402の表面において測定した関心領域405の周囲に、3点のマーカー404を形成した直後のSPMの測定視野406を示す(
図3のステップ306)。
【0037】
図3のステップ307において、走査型プローブ顕微鏡(SPM)に設置されている試料を、拡大観察加工装置の観察位置へ移動させるが、その直後の状態を
図4の(b)に示す。走査電子顕微鏡(SEM)のカラム411から照射された入射電子が、SEMの試料ステージ412上に固定された試料413に照射され、照射部付近から発生した二次電子や反射電子が、SEMの検出器414によって検出され、SEMの信号処理部415で処理され、SEMの観察視野416がモニタに表示される。
【0038】
次に
図3のステップ308において、マーカーに合わせて走査電子顕微鏡(SEM)の視野位置及び角度を調整するが、調整後の様子を
図4の(c)に示す。SEMの試料ステージ412の駆動や走査角度調整によって、視野位置及び角度調整後のSEMの観察視野417に示すように、マーカー404が視野角に配置されている。
【0039】
次に
図3のステップ309において、走査電子顕微鏡(SEM)の視野倍率を上昇させて観察視野418を拡大し、
図4の(d)の拡大後のSEMの観察視野418のように、走査型プローブ顕微鏡(SPM)の測定視野406と同程度の大きさで表示させることができる。
【0040】
この後、
図3のステップ310において、関心領域405の観察または加工またはその両方が行われる。さらに別の関心領域が存在する場合(
図3のステップ311でYesの場合)は、
図3のステップ311に示すように、次の関心領域の周囲に設けられたマーカーの位置に走査電子顕微鏡(SEM)の視野位置へ移動し、次の関心領域の観察を繰り返すこともできる。すべての関心領域の観察が終了すると(
図3のステップ311でNoの場合)、
図3のステップ312へ移行し、
図3のフローチャートが終了する。
【0041】
次に、
図5を用いて、試料観察加工システムの他の構成例を説明する。
図5は、実施例に係る試料観察加工システムの構成例2を説明する図である。試料観察加工システム500は、
図1又は
図2の走査型プローブ顕微鏡(SPM)と拡大観察加工装置とを含む。
図5では、拡大観察加工装置が走査電子顕微鏡/集束イオンビーム複合機(FIB-SEM)である場合の試料観察加工システム500を示している。
図5には、走査型プローブ顕微鏡(SPM)から走査電子顕微鏡/集束イオンビーム複合機(FIB-SEM)へ試料を移動し、関心領域における同一箇所の観察または加工またはその両方を行う場合を示す。
【0042】
図5の(a)に示すように、走査型プローブ顕微鏡(SPM)における関心領域405を特定し、関心領域405の周囲に3点のマーカー404を形成する。3点のマーカー404の形成の後、
図5の(b)に示すように、FIB-SEMの試料ステージ512上に3点のマーカー404の形成された試料513を設置する。走査電子顕微鏡(SEM)のカラム511から照射された入射電子が、FIB-SEMの試料ステージ512上に固定された試料513に照射され、照射部付近から発生した二次電子や反射電子が、FIB-SEMの検出器514によって検出され、FIB-SEMの信号処理部515で処理され、FIB-SEMの観察視野516がモニタに表示される。
【0043】
次に、マーカーに合わせて視野位置及び角度の調整後の様子を
図5の(c)に示す。FIB-SEMの試料ステージ512の駆動や走査角度調整によって、視野位置及び角度調整後のFIB-SEMの観察視野518に示すように、マーカー405が視野角に配置されている。次にFIB-SEMの観察視野518を拡大し、
図5の(d)の拡大後のFIB-SEMの観察視野519のように、SPMの測定視野406と同程度の大きさで表示させることができる。その後、集束イオンビーム装置(FIB)のカラム517から照射されたイオンビームによって関心領域405を観察または加工またはその両方を実行することができる。
【0044】
次に、
図6を用いて、試料観察加工システムのさらに他の構成例を説明する。
図6は、実施例に係る試料観察加工システムの構成例3を説明する図である。試料観察加工システム600は、走査型プローブ顕微鏡と拡大観察加工装置とを含む。
図6では、走査型プローブ顕微鏡が走査型プローブ顕微鏡/走査電子顕微鏡(SPM-SEM)複合機とされ、拡大観察加工装置が走査電子顕微鏡/集束イオンビーム(FIB-SEM)複合機とされる場合の試料観察加工システム600を示している。
【0045】
図6に、一つまたは複数の走査型プローブ顕微鏡が荷電粒子線装置(この例では走査電子顕微鏡)内に設置されている走査型プローブ顕微鏡/走査電子顕微鏡(SPM-SEM)複合機から、走査電子顕微鏡/集束イオンビーム(FIB-SEM)複合機へ試料を移動し、関心領域における同一箇所を観察または加工またはその両方を実行する場合を示す。走査型プローブ顕微鏡/走査電子顕微鏡(SPM-SEM)複合機の試料室内には、1本以上の導電性プローブ607と走査型プローブ顕微鏡(SPM)のマーキング用プローブ603が試料402の周辺に配置される。導電性プローブ607は電気測定を目的として設けられている。走査型プローブ顕微鏡/走査電子顕微鏡(SPM-SEM)複合機は、これらプローブ607、603を用いて、試料402を走査したり、ある特定の位置に固定された状態で電流計608や定電圧源609を用いて試料402に形成された微細な半導体素子の電気特性を評価したり、関心領域405の周囲にマーカー404を形成する機能を有する。つまり、走査型プローブ顕微鏡/走査電子顕微鏡(SPM-SEM)複合機は、微小半導体素子特性評価装置を含む。
【0046】
図6の(a)にSPM-SEM複合機の構成図を示す。SPM-SEM複合機の走査電子顕微鏡(SEM)のカラム602から照射された入射電子が、SPM-SEM複合機の試料ステージ604上に固定された試料402に照射され、照射部付近から発生した二次電子や反射電子が、SPM-SEM複合機の検出器605によって検出され、SPM-SEM複合機の信号処理部606で処理され、SPM-SEM複合機の観察視野601がモニタに表示される。SPM-SEM複合機の観察視野601には、関心領域405やマーカー404の位置や、導電性プローブ607やマーキング用プローブ603の動きや固定位置が表示される。試料402の特定された関心領域405の周囲に、SPM-SEM複合機の内部に設置されたマーキング用プローブ603を用いてマーカー404を形成し、次にマーカー404の形成された試料402をFIB-SEM複合機の試料ステージ512に移動させ、関心領域405の観察または加工またはその両方を実行する。
図6の(b)、(c)、(d)は、
図5の(b)、(c)、(d)と同じであるので、重複する説明は省略する。
図6に示すように、試料観察加工システム600を構築することも可能である。
【0047】
走査型プローブ顕微鏡/走査電子顕微鏡(SPM-SEM)複合機についてさらに説明する。先に説明したように、走査型プローブ顕微鏡/走査電子顕微鏡(SPM-SEM)複合機は、試料402の電気特性を評価する電気特性評価装置の機能を内蔵する。導電性プローブ607は導電性の探針と言うことができる。また、走査型プローブ顕微鏡/走査電子顕微鏡(SPM-SEM)複合機には、
図1、2で説明されたように試料402と探針607の相対的な位置関係を変更させる駆動部(111~113、または、211~213)と、探針607に接続され、試料402の電気特性を評価する電気特性評価部(608、609)と、試料402に向けて荷電粒子線を照射する荷電粒子線照射部602と、を備える。
【0048】
走査型プローブ顕微鏡/走査電子顕微鏡(SPM-SEM)複合機は、探針607を試料402に接触させながら荷電粒子線を試料402に照射することにより試料402の電気特性を評価する。あるいは、走査型プローブ顕微鏡/走査電子顕微鏡(SPM-SEM)複合機の探針607は、荷電粒子線照射部602の視野内において試料402と接触可能であり、探針607を試料402に接触させながら荷電粒子線を試料402に照射することにより試料402の電気特性を評価する。例えば、探針607を介して、荷電粒子線の照射により試料402に形成された半導体素子や配線に生じる電流または電圧またはその両方を測定することで試料402の電気特性を評価する。
【0049】
そして、走査型プローブ顕微鏡/走査電子顕微鏡(SPM-SEM)複合機は、電気特性の評価の結果に基づき、試料402の関心領域405を特定する。関心領域405は、例えば、配線の断線部分を含む領域、半導体素子や配線の故障部分を含む領域、試料402の上の異物部分を含む領域、所定の条件を満たす部分または満たさない部分などを含む領域などとすることができる。走査型プローブ顕微鏡/走査電子顕微鏡(SPM-SEM)複合機は、関心領域405を内包する領域であり、かつ、当該領域を拡大観察加工装置(FIB-SEM)で観察した際の拡大縮小中心に関心領域402が位置する、観察または加工する領域を特定し、探針607と試料402を相互作用させることにより、観察または加工する領域の外縁の少なくとも一部を示すマーカー404を形成する。
【0050】
次に、
図11を用いて、マーキング設定画面の変形例を説明する。
図11は、実施例に係るマーキング設定画面の構成例2を示す図である。
図11が
図10と異なる点は、観察視野設定ボタン1004の代わりとして観察視野設定領域1104をマーキング条件表示部1003に設けた点と、マーキング箇所を指定するための選択可能なマーキング箇所指定部1121をスキャナ可動範囲表示部1002内に表示した点と、観察視野設定領域1104で設定した拡大観察加工装置の観察視野1123とマーキング箇所指定部1121とを
図1又は
図2の走査型プローブ顕微鏡(SPM)により得られた画像1110に重畳してスキャナ可動範囲表示部1002内に表示した点である。
図11の他の構成および機能は、
図10の他の構成および機能と同じであるので、重複する説明は省略する。
【0051】
まず、観察視野設定領域1104の構成例を説明する。
図11に示すように、観察視野設定領域1104には、設定方法を選択するために、マニュアル(Manual)とテンプレート(Template)とが選択可能に設けられている。
図11では、テンプレートが選択された状態(黒丸●印)を表している。テンプレートが選択されると、詳細選択領域1105が表示される。詳細選択領域1105には、移動先観察装置で選択した拡大観察加工装置(ここでは、第1走査電子顕微鏡SEM1)の視野倍率に関する選択肢が表示されるように構成されている。この例では、第1走査電子顕微鏡SEM1について、x10kの倍率のテンプレート項目とx5kの倍率のテンプレート項目とが代表例として示されており、x10kの倍率のテンプレート項目が選択されている状態(レ点マーク)を示している。これらのテンプレート項目を選択すると、第1走査電子顕微鏡SEM1の観察視野のアスペクト比に基づいて、スキャナ可動範囲表示部1002内にそのアスペクト比に対した第1走査電子顕微鏡SEM1の観察視野1123が表示される。また、この例では、観察視野1123の4つの角部にはマーキング箇所指定部1121が表示される。このマーキング箇所指定部1121は選択することが可能に構成されている。
図11では、代表例として、3つの角部のマーキング箇所指定部1121が選択状態(レ点マーク)とされている。これにより、例えば、
図7の(a)に示すように、関心領域1024の周囲の3つの角部にマーカーの配置位置を指定できる。条件設定用のリストボックス1005~1011の設定によりマーカー形状などの設定を行う。テンプレート項目の設定と、マーキング箇所指定部1121の選択と、条件設定用のリストボックス1005~1011の設定とを行った後、マーキング開始ボタンをクリックすると、関心領域1024の周囲の3つの角部に視認性の高いマーカーが自動的に形成することができる。
【0052】
テンプレート項目は、倍率のテンプレート項目としたが、観察視野のアスペクト比としても良い。詳細選択領域1105は、前記拡大観察加工装置のマーカー探索時の視野倍率もしくは視野アスペクト比を入力可能に構成すればよい。
【0053】
このように、スキャナ可動範囲表示部1002内に表示された画像1110とマーキング箇所指定部1121と目視で確認しながら、マーカーの配置位置を指定できるので、ユーザーにとって利便性の向上されたインターフェースを提供できる。
【0054】
図11において、スキャナ可動範囲表示部1002内に記載した観察視野1124は、第2走査電子顕微鏡SEM2の観察視野を例示的に示したものである。画像1110は、
図1又は
図2の走査型プローブ顕微鏡(SPM)の光学顕微鏡115で得られた画像とされても良い。
【0055】
マニュアルが選択された場合、たとえば、観察視野の視野倍率の入力、観察視野のアスペクト比の入力などの所定の項目の入力を行ことができるように構成されている。制御部127は、所定の項目に入力された値に基づいて計算を行い、スキャナ可動範囲表示部1002に
図11と同様な表示をさせることができる。
【0056】
なお、マーキング箇所指定部1121はマーカーが形成されるであろう箇所を示し、観察視野1123は第1走査電子顕微鏡SEM1の観察視野とされるであろう観察視野を示していると言い換えることも可能である。
【0057】
また、
図11において、マーキング箇所指定部1121間の辺を選択可能に構成することも可能である。これにより、
図7の(i)、(k)、(j)に示す辺709、710、711のマーカーを視認性の向上させた形状で形成できる。
【0058】
以上、本発明者によってなされた発明を実施例に基づき具体的に説明したが、本発明は、上記実施形態および実施例に限定されるものではなく、種々変更可能であることはいうまでもない。
【符号の説明】
【0059】
101:サンプルスキャン方式走査型プローブ顕微鏡(SPM)、102:フォトディテクタ、103:レーザー光、104:ディテクタ側ミラー、105:レーザー側ミラー、106:レーザーダイオード、107:バイモルフピエゾ、108:カンチレバー、109:試料、110:試料台、111:サンプルスキャナZピエゾ、112:サンプルスキャナXピエゾ、113:サンプルスキャナYピエゾ、114:探針、115:光学顕微鏡、120:レーザー制御回路、121:バイモルフ駆動回路、122:XYピエゾ駆動回路、123:信号増幅回路、124:Zフィードバック回路、125:信号処理部、126:記憶部、127:制御部、128:モニタ表示部、201:プローブスキャン方式走査型プローブ顕微鏡(SPM)、211:プローブスキャナZピエゾ、212:プローブスキャナXピエゾ、213:プローブスキャナYピエゾ、214:試料ステージ、215:試料ステージ駆動回路、401:マーキング用プローブ、402:試料、403:試料台、404:マーカー、405:関心領域、406:測定視野、411:カラム、412:試料ステージ、413:試料、414:検出器、415:信号処理部、416:観察視野、417:視野位置及び角度調整後の観察視野、418:拡大後の観察視野、511:カラム、512:試料ステージ、513:試料、514:検出器、515:信号処理部、516:観察視野、517:カラム、518:アライメント後の観察視野、519:拡大後の観察視野、601:測定視野、602:カラム、603:マーキング用プローブ、604:試料ステージ、605:検出器、606:信号処理部、607:電気測定用プローブ、608:電流計、609:定電圧源、701:十字型マーカー、702:関心領域、703:マーキング探索時の観察視野、704:バツ型(X字型)マーカー、705:カギカッコ型(L字型)マーカー、706:1:1アスペクト比の観察視野、707:16:9アスペクト比の観察視野、708:3:4アスペクト比の観察視野、709:短辺型マーカー、710:長辺型マーカー、711:短辺長辺一体型マーカー、801:1本線マーカー、802:4本線マーカー、803:8本線マーカー、811:弱触圧マーカー、812:強触圧マーカー、813:複数回重ね書きマーカー、821:米型(アスタリスク字型)マーカー、831:小サイズマーカー、832:大サイズマーカー、901:測定用プローブ探針位置、902:測定用プローブ、903:マーキング用プローブ、904:マーキング用プローブ探針位置、905:マーキング用プローブ探針位置ずれ距離、906:位置ずれ補正後マーキング用プローブ、1001:マーキング設定画面、1002:スキャナ可動範囲表示部、1003:マーキング条件表示部、1004:観察視野設定ボタン、1005:マーカー形状リストボックス、1005:マーカー形状リストボックス、1006:マーカーサイズリストボックス、1007:マーカー間隔リストボックス、1008:マーカー本数リストボックス、1009:描画押し込み量リストボックス、1010:描画速度リストボックス、1011:重ね書き回数リストボックス、1012:関心領域位置表示部、1021:マーキング箇所、1022:観察視野、1023:観察視野、1024:関心領域、1110:SPM観察像表示部、1104:観察視野設定領域、1105:詳細選択領域、1121:マーキング箇所指定部、1123:観察視野、1124:観察視野