(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウおよびフレキシブルディスプレイ装置
(51)【国際特許分類】
B32B 27/00 20060101AFI20240918BHJP
B32B 7/022 20190101ALI20240918BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240918BHJP
B32B 27/38 20060101ALI20240918BHJP
C08J 7/046 20200101ALI20240918BHJP
G02B 1/14 20150101ALI20240918BHJP
G02B 5/22 20060101ALI20240918BHJP
G02B 5/30 20060101ALI20240918BHJP
G09F 9/00 20060101ALI20240918BHJP
H10K 59/10 20230101ALI20240918BHJP
H10K 77/10 20230101ALI20240918BHJP
【FI】
B32B27/00 101
B32B7/022
B32B27/30 A
B32B27/38
C08J7/046 Z CFG
G02B1/14
G02B5/22
G02B5/30
G09F9/00 302
H10K59/10
H10K77/10
(21)【出願番号】P 2023518342
(86)(22)【出願日】2021-08-23
(86)【国際出願番号】 KR2021011214
(87)【国際公開番号】W WO2022108053
(87)【国際公開日】2022-05-27
【審査請求日】2023-03-22
(31)【優先権主張番号】10-2020-0155895
(32)【優先日】2020-11-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(31)【優先権主張番号】10-2021-0108808
(32)【優先日】2021-08-18
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】110000877
【氏名又は名称】弁理士法人RYUKA国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】パク、ギエウン
(72)【発明者】
【氏名】リー、ウン ソン
(72)【発明者】
【氏名】リム、スン ジューン
(72)【発明者】
【氏名】リム、ユーン ビン
(72)【発明者】
【氏名】ベク、スンギル
(72)【発明者】
【氏名】キム、セ ジェオン
(72)【発明者】
【氏名】チョ、ミョウンソク
(72)【発明者】
【氏名】チョイ、ヨンキュ
【審査官】石塚 寛和
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-188354(JP,A)
【文献】国際公開第2017/217609(WO,A1)
【文献】特開2017-032993(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B32B 1/00-43/00
C08J 7/04-7/06
G02B 1/14、5/22、5/30
G09F 9/00
H10K 59/10、77/10
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
光透過性基材;
前記光透過性基材の一面上に形成され、200μm以下の厚さを有する第1コーティング層;および
前記第1コーティング層と対向するように前記光透過性基材の他の一面に形成され、異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンを含む第2コーティング層;を含
み、
前記第1コーティング層は、(メタ)アクリレート樹脂またはエポキシ樹脂を含み、
前記(メタ)アクリレート樹脂は、多官能ウレタンアクリレートオリゴマーの(共)重合体を含み、
前記第2コーティング層は、前記異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサン100重量部に対して、弾性重合体を10重量部以上80重量部以下で含み、
前記異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンに対する減衰全反射(ATR)法によって測定されたFT-IRスペクトルにおいて、1010cm
-1
~1070cm
-1
の領域に少なくとも1個のピークを有し、1075cm
-1
~1130cm
-1
の領域に少なくとも1個のピークを有し、
前記1010cm
-1
~1070cm
-1
の領域に現れる少なくとも1個のピークの中で最も強度が大きいピークの強度(I
1
)に対する、前記1075cm
-1
~1130cm
-1
の領域に現れる少なくとも1個のピークの中で最も強度が大きいピークの強度(I
2
)のピーク強度比率(I
2
/I
1
)は、1.2以上2.5以下である、
フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ。
【請求項2】
前記第1コーティング層の中間に8mmの間隔をおいて前記第1コーティング層が対向するように90°の角度に第1コーティング層の内側に畳んだり広げたりを常温で1秒あたり1回の速度で20万回繰り返し行った時、1mm以上のクラックが発生しない、
請求項1に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ。
【請求項3】
10μm~300μmの機能層が前記第1コーティング層と対向するように前記光透過性基材の他の一面に形成された前記第2コーティング層の一面上に形成された直後、
前記第1コーティング層の表面に対して、鉛筆硬度測定器を用いて測定標準JIS K5400により鉛筆の通る経路に押圧が発生しない最大硬度が2B以上である、
請求項1または2に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ。
【請求項4】
前記異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンは、
架橋性官能基が置換されたケージ型ポリシロキサン繰り返し単位および架橋性官能基が置換されたラダー型ポリシロキサン繰り返し単位を含む、
請求項1から
3のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ。
【請求項5】
前記架橋性官能基は、脂環式エポキシ基、および下記の化学式1で表される官能基からなる群より選択されるいずれか1つを含む、
請求項
4に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ:
[化学式1]
【化1】
前記化学式1において、
R
aは、置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニレン基、-R
b-CH=CH-COO-R
c-、-R
d-OCO-CH=CH-R
e-、-R
fOR
g-、-R
hCOOR
i-、または-R
jOCOR
k-であり、
R
b~R
kは、それぞれ独立して、単結合、または置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基である。
【請求項6】
前記第1コーティング層と対向するように前記光透過性基材の他の一面に形成された前記第2コーティング層の一面上に形成される機能層を含み、
前記機能層は、ブラックマトリックスフィルム、偏光フィルム、紫外線遮断用フィルム、離型フィルム、導電性フィルムのいずれか1つである、
請求項1から
5のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ。
【請求項7】
前記光透過性基材の厚さが5μm~100μmであり、
前記第1コーティング層は、厚さが5μm~200μmである、
請求項1から
6のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ。
【請求項8】
前記第2コーティング層は、厚さが5μm~200μmである、
請求項1から
7のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ。
【請求項9】
前記光透過性基材の厚さに対する、前記第1コーティング層の厚さの比率が0.1~2.0である、
請求項1から
8のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ。
【請求項10】
前記第1コーティング層の厚さに対する、前記第2コーティング層の厚さの比率が1.0~10.0である、
請求項1から
9のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ。
【請求項11】
前記光透過性基材は、ポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂およびスルホン系樹脂からなる群より選択された1種以上の樹脂を含む、
請求項1から1
0のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ。
【請求項12】
前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、直径が3mmの円筒形マンドレルに巻いた時、長さ3mm以上のクラックが発生しない、
請求項1から1
1のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ。
【請求項13】
請求項1から1
2のいずれか一項に記載のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウを含むフレキシブルディスプレイ装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
関連出願との相互参照
本出願は、2020年11月19日付の韓国特許出願第10-2020-0155895号および2021年8月18日付の韓国特許出願第10-2021-0108808号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されたすべての内容は本明細書の一部として含まれる。
【0002】
本発明は、フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウおよびフレキシブルディスプレイ装置に関する。
【背景技術】
【0003】
最近、スマートフォン、タブレットPCのようなモバイル機器の発展に伴い、ディスプレイ用基材の薄膜化およびスリム化が要求されている。このようなモバイル機器のディスプレイ用ウィンドウまたは前面板には、機械的特性に優れた素材としてガラスまたは強化ガラスが一般に用いられている。しかし、ガラスは自体の重量によるモバイル装置の高重量化の原因になり、外部衝撃による破損の問題がある。
【0004】
このため、ガラスを代替できる素材としてプラスチック樹脂が研究されている。プラスチック樹脂フィルムは、軽量でありながらも割れる恐れが少なくて、より軽いモバイル機器を追求する傾向に適合する。特に、高硬度および耐摩耗性の特性を有するフィルムを達成するために、支持基材にプラスチック樹脂からなるハードコート層をコーティングするフィルムが提案されている。
【0005】
ハードコート層の表面硬度を向上させる方法として、ハードコート層の厚さを増加させる方法が考えられる。ガラスを代替できる程度の表面硬度を確保するためには、一定のハードコート層の厚さを実現する必要がある。しかし、ハードコート層の厚さを増加させるほど表面硬度は高くなるが、ハードコート層の硬化収縮によってシワやカール(curl)が大きくなると同時に、ハードコート層の亀裂や剥離が生じやすくなるため、実用的な適用は容易ではない。
【0006】
一方、審美的、機能的な理由から、ディスプレイ機器の一部が屈曲していたり、柔軟性があるように曲がったりするディスプレイが最近注目されており、このような傾向は特にスマートフォン、タブレットPCのようなモバイル機器で目立っている。ところが、このような柔軟性のあるディスプレイを保護するためのカバープレートへの使用にガラスは不適であるので、プラスチック樹脂などへの代替が必要である。しかし、このために、ガラスレベルの高硬度を示しながら十分な柔軟性を有するフィルムの製造が容易でない困難がある。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、繰り返しの曲げや折り畳み動作によってもフィルムの損傷がほとんどなく、ベンダブル、フレキシブル、ローラブル、またはフォルダブルモバイル機器、またはディスプレイ機器などに容易に適用できるディスプレイ装置のカバーウィンドウを提供する。
【0008】
また、本発明は、前記カバーウィンドウを含むフレキシブルディスプレイ装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本明細書では、光透過性基材;前記光透過性基材の一面上に形成され、200μm以下の厚さを有する第1コーティング層;および前記第1コーティング層と対向するように前記光透過性基材の他の一面に形成され、異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンを含む第2コーティング層;を含む、フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウを提供する。
【0010】
また、本明細書では、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウを含むフレキシブルディスプレイ装置を提供する。
【0011】
以下、発明の具体的な実施形態によるフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウおよびフレキシブルディスプレイ装置に関してより詳細に説明する。
【0012】
本明細書において、「フレキシブル(flexible)」とは、直径が3mmの円筒形マンドレル(mandrel)に巻いた時に長さ3mm以上のクラック(crack)が発生しない程度の柔軟性を有する状態、例えば、フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウを底と水平となるように置いた後、第1コーティング層の中間部分に折り畳まれる部位の間隔がmmとなるようにし、第1コーティング層の両側を底面に対して90度に畳んだり広げたりを25℃で1秒あたり1回の速度で20万回繰り返し、1cm以上、または1mm以上のクラックが発生せず、実質的にクラックが発生しない状態を意味し、よって、本発明のフレキシブルディスプレイ装置は、ベンダブル(bendable)、フレキシブル(flexible)、ローラブル(rollable)、またはフォルダブル(foldable)ディスプレイ装置を意味することができる。
【0013】
ただし、これは発明の一つの例として提示されるものであり、これによって発明の権利範囲が限定されるものではなく、発明の権利範囲内で実施形態に対する多様な変形が可能であることは当業者に自明である。
【0014】
本明細書において明示的な言及がない限り、専門用語は単に特定の実施例を言及するためのものであり、本発明を限定することを意図しない。
【0015】
本明細書で使用される単数形態は、文言がこれと明確に反対の意味を示さない限り、複数形態も含む。
【0016】
本明細書で使用される「含む」の意味は、特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素および/または成分を具体化し、他の特定の特性、領域、整数、段階、動作、要素、成分および/または群の存在や付加を除外させるわけではない。
【0017】
本明細書において、(メタ)アクリレートは、メタアクリレートおよびアクリレートをすべて含む意味である。
【0018】
本明細書において、重量平均分子量は、GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を意味する。前記GPC法によって測定したポリスチレン換算の重量平均分子量を測定する過程では、通常知られた分析装置と示差屈折検出器(Refractive Index Detector)などの検出器および分析用カラムを用いることができ、通常適用される温度条件、溶媒、flow rateを適用することができる。前記測定条件の具体例を挙げると、Waters2695機器を用いて、評価温度は40℃であり、THF溶媒として使用し、流速は1mL/minの速度で測定した。
【0019】
発明の一実施形態によれば、光透過性基材;前記光透過性基材の一面上に形成され、200μm以下の厚さを有する第1コーティング層;および前記第1コーティング層と対向するように前記光透過性基材の他の一面に形成され、異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンを含む第2コーティング層;を含む、フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウが提供できる。
【0020】
本発明者らは、より薄い厚さを有するフレキシブルディスプレイ装置に適用可能なカバーウィンドウに関する研究を進行させて、200μm以下の厚さを有する第1コーティング層が形成された光透過性基材の他の一面に異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンを含む第2コーティング層を含む積層構造を含むフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウが柔軟性および高硬度の物性バランスを同時に満足するように実現しながら、耐衝撃性および耐押圧性に優れて素子安定性を確保できることを確認して、発明を完成した。
【0021】
より具体的には、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、直径が3mmの円筒形マンドレルに巻いた時に長さ3mm以上のクラックが発生せず、繰り返しの曲げや折り畳み動作によってもフィルムの損傷が実質的に発生しない。これによって、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、これを用いたベンダブル、フレキシブル、ローラブル、またはフォルダブルモバイル機器、またはディスプレイ機器などに容易に適用可能である。
【0022】
前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、強化ガラスなどを代替可能な物性を有することができるため、外部から加えられる圧力や力によって割れないだけでなく、十分に曲がり折り畳まれる程度の特性を有することができる。
【0023】
上述のように、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウの曲げ耐久性および表面硬度などの物性は、前記光透過性基材の一面上に形成され、200μm以下の厚さを有する第1コーティング層;および前記第1コーティング層と対向するように前記光透過性基材の他の一面に形成され、異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンを含む第2コーティング層;を形成することによるのである。
【0024】
具体的には、前記一実施形態によるフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、前記光透過性基材の一面上に形成され、200μm以下の厚さを有する第1コーティング層;および前記第1コーティング層と対向するように前記光透過性基材の他の一面に形成され、異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンを含む第2コーティング層;を含む積層構造を有することによって、粘着層を含まなくてもよい。
【0025】
従来のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウの場合、ディスプレイ装置への適用時、耐衝撃性を確保したり、ディスプレイ装置に設けられた状態での表面硬度や押圧特性の改善のために、一定の厚さの粘着層を形成したり、接着剤または粘着性フィルムなどの粘着層をハードコート層と共に形成したりもしていた。
【0026】
前記実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、従来のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウとは異なって前記粘着層を含まないことによって、より薄い厚さのフレキシブルディスプレイ装置を実現することができ、200μm以下の厚さを有する薄い第1コーティング層を含むにも優れた押圧特性を実現することができ、外部衝撃による損傷を最小化することができる。
【0027】
具体的には、前記実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、200μm以下、10μm以上200μm以下、10μm以上100μm以下、または10μm以上60μm以下の厚さを有する第1コーティング層を含むことができる。
【0028】
上述のように、前記実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウが前記光透過性基材の一面上に形成され、200μm以下の厚さを有する第1コーティング層;および前記第1コーティング層と対向するように前記光透過性基材の他の一面に形成され、異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンを含む第2コーティング層;を含む積層構造を有することによって、200μm以下の厚さを有する薄い第1コーティング層を含むにも優れた押圧特性を実現することができ、外部衝撃による損傷を最小化することができる。
【0029】
一方、前記実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、前記第1コーティング層の中間に8mmの間隔をおいて前記第1コーティング層が対向するように90°の角度に第1コーティング層の内側に畳んだり広げたりを常温で1秒あたり1回の速度で20万回繰り返した時、1mm以上のクラックが発生せず、繰り返しの曲げや折り畳み動作によってもフィルムの損傷がほとんどなく、ベンダブル、フレキシブル、ローラブル、またはフォルダブルモバイル機器、またはディスプレイ機器などのカバーウィンドウに容易に適用可能である。
【0030】
図1は、動的曲げ特性を評価する方法を概略的に示す図である。
【0031】
図1を参照すれば、フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウを底と水平となるように置いた後、第1コーティング層の中間部分に折り畳まれる部位の間隔がmmとなるようにし、第1コーティング層の両側を底面に対して90度に畳んだり広げたりを25℃で1秒あたり1回の速度で20万回繰り返す方式で曲げに対する耐久性を測定できる。この時、折り畳まれる部位の間隔を一定に維持するために、例えば、前記第1コーティング層を直径(R)mmの棒に当たるように置き、第1コーティング層の残りの部分を固定し、棒を中心に第1コーティング層の両側を畳んだり広げたりを繰り返す方法を取ることができる。また、前記折り畳まれる部分は、第1コーティング層の内部でさえあれば特に限定されず、測定の便宜上、折り畳まれる部分を除いた第1コーティング層の残りの両側が対称となるように第1コーティング層の中央部分が折り畳まれるようにする。
【0032】
このような動的曲げ特性評価において、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、20万回の曲げを実施した後にも1cm以上、または1mm以上のクラックが発生せず、実質的にクラックが発生しない。したがって、繰り返し折り畳んだり、巻いたり、曲げるなどの実際の使用状態においてもクラックが発生する恐れが非常に低くて、フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用に好適に適用可能である。
【0033】
一方、前記一実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、前記第1コーティング層と対向するように前記光透過性基材の他の一面に形成された前記第2コーティング層の一面上に形成される10μm~300μmの機能層を含むことができる。
【0034】
前記一実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウにおいて、前記機能層の種類は大きく限定されず、フレキシブルディスプレイ装置に適用可能な機能層を多様に適用可能である。具体的には、前記機能層は、ブラックマトリックスフィルム、偏光フィルム、紫外線遮断用フィルム、離型フィルム、導電性フィルムのいずれか1つであってもよい。
【0035】
前記一実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウにおいて、前記機能層は、10μm~300μm、10μm~100μm、または3μm~30μmの厚さを有することができる。
【0036】
前記機能層の厚さが300μmを超えると、柔軟性が低下してフレキシブルフィルムの形成が難しいことがある。
【0037】
前記一実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、10μm~300μmの機能層が前記第1コーティング層と対向するように前記光透過性基材の他の一面に形成された前記第2コーティング層の一面上に形成された直後、前記第1コーティング層の表面に対して、鉛筆硬度測定器を用いて測定標準JIS K5400により鉛筆の通る経路に押圧が発生しない最大硬度が2B以上、2B以上5H以下、B以上5H以下、またはB以上HB以下であってもよい。
【0038】
前記一実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、10μm~300μmの機能層が前記第1コーティング層と対向するように前記光透過性基材の他の一面に形成された前記第2コーティング層の一面上に形成された直後、前記第1コーティング層の表面に対して、鉛筆硬度測定器を用いて測定標準JIS K5400により鉛筆の通る経路に押圧が発生しない最大硬度が2B以上であることによって、優れた耐押圧性を実現して、繰り返しの曲げや折り畳み動作によってもフィルムの損傷がほとんどなく、素子安定性が実現されて、フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウおよびこれを用いたベンダブル、フレキシブル、ローラブル、またはフォルダブルモバイル機器、またはディスプレイ機器などに容易に適用可能である。
【0039】
具体的には、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウにおいて、前記第2コーティング層は、異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンを含むことができ、より具体的には、前記第2コーティング層は、架橋性官能基が置換された2種以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンを含むことができる。
【0040】
前記第2コーティング層に架橋性官能基が置換された2種以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンが含まれることによって、ケージ形態のポリシロキサン繰り返し単位は硬化密度を高めて高硬度の実現を可能にし、ラダー形態のポリシロキサン繰り返し単位は柔軟な分子構造により硬化膜の柔軟性を向上させることができる。このような原因によって前記一実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウが高い柔軟性および高硬度の物性バランスを示すことができる。
【0041】
ポリシロキサンは、多様な構造を有することができ、例えば、ケージ型ポリシロキサン繰り返し単位、ラダー型ポリシロキサン繰り返し単位、ランダム型ポリシロキサン繰り返し単位の構造を有することができる。
【0042】
前記一実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウが異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンを含むことによって、ケージ型ポリシロキサン繰り返し単位およびラダー型ポリシロキサン繰り返し単位を含むか、ケージ型ポリシロキサン繰り返し単位およびランダム型ポリシロキサン繰り返し単位を含むか、ラダー型ポリシロキサン繰り返し単位およびランダム型ポリシロキサン繰り返し単位、またはケージ型ポリシロキサン繰り返し単位、ラダー型ポリシロキサン繰り返し単位、ランダム型ポリシロキサン繰り返し単位をすべて含むことができる。
【0043】
より具体的には、前記異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンは、架橋性官能基が置換されたケージ型ポリシロキサン繰り返し単位および架橋性官能基が置換されたラダー型ポリシロキサン繰り返し単位を含むことができる。
【0044】
前記実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウにおいて、第2コーティング層がケージ型ポリシロキサン繰り返し単位およびラダー型ポリシロキサン繰り返し単位をすべて含むことによって、ケージ型ポリシロキサン繰り返し単位またはラダー型ポリシロキサン繰り返し単位の1種のポリシロキサン繰り返し単位のみを含む場合と比較して、相対的に分子量が小さいケージ型が硬化密度を高めて硬度を増加させ、線状のラダー型ポリシロキサンが硬化ネットワークの形成時に広く分布して柔軟性および靭性(toughness)を引き上げる効果により、前記一実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウが高い柔軟性および高硬度の物性バランスを示すことができる。
【0045】
また、前記ラダー型ポリシルセスキオキサン繰り返し単位に対する、ケージ型ポリシルセスキオキサン繰り返し単位のモル比は、1.2以上2.5以下、1.2以上2.0以下、1.2以上1.8以下、または1.4以上1.8以下であってもよい。前記モル比が1.2~2.5であることによって、ケージとラダー型がバランスよく組成物を形成可能にし、前記カバーウィンドウが高い柔軟性および高硬度の物性バランスを示すことができる。具体的には、ケージ形態のポリシルセスキオキサン構造は硬化密度を高めて高硬度の実現を可能にし、ラダー形態のポリシルセスキオキサン構造は柔軟な分子構造により硬化膜の柔軟性を向上させることによって、ケージ型ポリシルセスキオキサン繰り返し単位およびラダー型ポリシルセスキオキサン繰り返し単位を前記特定の比率で含むことによって、高い柔軟性および高硬度の物性を同時に実現することができる。
【0046】
前記異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンに対する減衰全反射(ATR;Attenuated Total Reflection)法で測定されたFT-IR(Fourier Transform-Infra Red)スペクトルにおいて、1010cm-1~1070cm-1の領域に少なくとも1個のピークを有し、1075cm-1~1130cm-1の領域に少なくとも1個のピークを有することができる。
【0047】
例えば、前記FT-IRスペクトルにおいて、1010cm-1~1070cm-1、1030cm-1~1065cm-1または1040cm-1~1060cm-1の領域に少なくとも1個のピークを示すことができ、1075cm-1~1130cm-1、1080cm-1~1110cm-1または1090cm-1~1100cm-1の領域に少なくとも1個のピークを示すことができる。
【0048】
ATR法でFT-IRスペクトルにおいて異なる2以上の領域にそれぞれピークを有することによって、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウの第2コーティング層に含まれるポリシロキサンが異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むことができる。
【0049】
具体的には、前記1010cm-1~1070cm-1の領域には、2個以上のピークを示すか、1個のピークのみを示すことができ、前記1010cm-1~1070cm-1の領域に現れるピークは、前記ラダー型ポリシロキサンに関するピークであってもよい。また、前記1075cm-1~1130cm-1の領域には、2個以上のピークを示すか、1個のピークのみを示すことができ、前記1075cm-1~1130cm-1の領域に現れるピークは、前記ケージ型ポリシロキサンに関するピークであってもよい。
【0050】
さらに、前記1010cm-1~1070cm-1の領域に現れる少なくとも1個のピークの中で最も強度が大きいピークの強度(I1)に対する、前記1075cm-1~1130cm-1の領域に現れる少なくとも1個のピークの中で最も強度が大きいピークの強度(I2)のピーク強度比率(I2/I1)は、1.2以上2.5以下、1.2以上2.0以下、1.2以上1.8以下、または1.4以上1.8以下であってもよい。
【0051】
前記ピークの強度(I1)は、前記1010cm-1~1070cm-1の領域に2個以上のピークが現れる場合、最も強度が大きいピークの強度を意味し、1個のピークが現れる場合、当該ピークの強度を意味する。また、前記ピークの強度(I2)は、1075cm-1~1130cm-1の領域に2個以上のピークが現れる場合、最も強度が大きいピークの強度を意味し、1個のピークが現れる場合、当該ピークの強度を意味する。
【0052】
前記ピーク強度比率(I2/I1)は、硬化工程を経る前の未硬化状態または硬化後の固相のポリシロキサンを試料として、ATR法でFT-IRスペクトルで測定できる。
【0053】
前記ピーク強度比率(I2/I1)が1.2~2.5であることによって、ケージとラダー型がバランスよく組成物を形成可能にし、前記カバーウィンドウが高い柔軟性および高硬度の物性バランスを示すことができる。前記ピーク強度比率(I2/I1)が1.2未満であるか、2.5超過である場合、柔軟性に劣り、硬度も低下して、フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウへの使用に十分な物性が実現されないことがある。
【0054】
一方、前記架橋性官能基は、脂環式エポキシ基、および下記の化学式1で表される官能基からなる群より選択されるいずれか1つを含むことができる。
[化学式1]
【化1】
前記化学式1において、R
aは、置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニレン基、-R
b-CH=CH-COO-R
c-、-R
d-OCO-CH=CH-R
e-、-R
fOR
g-、-R
hCOOR
i-、または-R
jOCOR
k-であり、R
b~R
kは、それぞれ独立して、単結合、または置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基である。
【0055】
前記化学式1で表される官能基は、エポキシ基を含み、フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウの高硬度および耐スクラッチ性の物性を向上させるだけでなく、繰り返しの曲げや折り畳み動作によってもフィルムの損傷がほとんどなく、ベンダブル、フレキシブル、ローラブル、またはフォルダブルモバイル機器、またはディスプレイ機器などに容易に適用可能である。
【0056】
例えば、前記化学式1で表される官能基は、Raは、メチレン、エチレン、プロピレン、アリレン、-Rb-CH=CH-COO-Rc-、-Rd-OCO-CH=CH-Re-、-RfORg-、-RhCOORi-、または-RjOCORk-であってもよい。例えば、前記化学式1において、Rb~Rkは、単結合、メチレン、エチレン、プロピレンまたはブチレンであってもよい。例えば、Raは、メチレン、エチレン、または-RfORg-であってもよいし、この時、RfおよびRgは、直接結合、メチレンまたはプロピレンであってもよい。例えば、前記化学式1で表される官能基はこれによって限定するものではないが、グリシドキシ基、グリシドキシエチル基、グリシドキシプロピル基、グリシドキシブチル基などであってもよい。
【0057】
また、前記脂環式エポキシ基はこれによって限定するものではないが、例えば、エポキシシクロヘキシル基、エポキシシクロペンチル基などであってもよい。
【0058】
言い換えれば、前記架橋性官能基が置換されたポリシロキサン繰り返し単位は、T3単位体として(R1SiO3/2)のシルセスキオキサン単位を含むことができる。
【0059】
前記(R
1SiO
3/2)のシルセスキオキサン構成単位において、R
1は、架橋性官能基であってもよい。具体的には、前記R
1は、脂環式エポキシ基、および下記の化学式1で表される官能基からなる群より選択されるいずれか1つであってもよい。
[化学式1]
【化2】
前記化学式1において、R
aは、置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルケニレン基、置換もしくは非置換の炭素数2~20のアルキニレン基、-R
b-CH=CH-COO-R
c-、-R
d-OCO-CH=CH-R
e-、-R
fOR
g-、-R
hCOOR
i-、または-R
jOCOR
k-であり、R
b~R
kは、それぞれ独立して、単結合、または置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基であってもよい。
【0060】
より具体的には、前記化学式1において、Raは、メチレン、エチレン、プロピレン、アリレン、-Rb-CH=CH-COO-Rc-、-Rd-OCO-CH=CH-Re-、-RfORg-、-RhCOORi-、または-RjOCORk-であってもよい。この時、前記Rb~Rkは、それぞれ独立して、単結合であるか、または置換もしくは非置換の炭素数1~6のアルキレン基であってもよいし、より具体的には、単結合であるか、またはメチレン、エチレン、プロピレン、ブチレンなどのような炭素数1~6の直鎖状アルキレン基であってもよい。さらにより具体的には、前記Raは、メチレン、エチレン、または-RfORg-であってもよいし、この時、RfおよびRgは、直接結合であるか、またはメチレン、プロピレンなどのような炭素数1~6の直鎖状アルキレン基であってもよい。
【0061】
硬化物の表面硬度および硬化性改善効果を考慮する時、前記R1は、グリシジル基であるか、またはグリシドキシプロピル基であってもよい。
【0062】
また、前記Raが置換される場合、具体的には、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、ヒドロキシ基、炭素数1~12のアルコキシ基、アミノ基、アクリル基(またはアクリロイル基)、メタクリル基(またはメタクリロイル基)、アクリレート基(またはアクリロイルオキシ基)、メタクリレート基(またはメタクリロイルオキシ基)、ハロゲン基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、アセチル基、ホルミル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホニル基、ウレタン基、エポキシ基、オキセタニル基およびフェニル基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されていてもよいし、より具体的には、メチル、エチルなどの炭素数1~6のアルキル基;アクリル基;メタクリル基;アクリレート基;メタクリレート基;ビニル基;アリル基;エポキシ基;およびオキセタニル基;からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されていてもよい。
【0063】
また、前記ポリシロキサンは、上述した(R1SiO3/2)のシルセスキオキサン単位と共に、T3単位体として(R2SiO3/2)のシルセスキオキサン単位をさらに含むことができる。前記(R2SiO3/2)のシルセスキオキサン単位は、ポリシロキサンの硬化密度を高めてコーティング層の表面硬度特性を向上させることができる。
【0064】
前記(R2SiO3/2)のシルセスキオキサン構成単位において、R2は、具体的には、置換もしくは非置換の炭素数1~12のアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数3~12のシクロアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数6~12のアリール基、置換もしくは非置換の炭素数7~12のアリールアルキル基、置換もしくは非置換の炭素数7~12のアルキルアリール基、エポキシ基、オキセタニル基、アクリレート基、メタクリレート基および水素原子からなる群より選択されるものであってもよい。
【0065】
また、前記R2は、炭素数1~12のアルキル基、炭素数3~12のシクロアルキル基、炭素数2~12のアルケニル基、ヒドロキシ基、炭素数1~12のアルコキシ基、アミノ基、アクリル基、メタクリル基、アクリレート基、メタクリレート基、ハロゲン基、メルカプト基、エーテル基、エステル基、アセチル基、ホルミル基、カルボキシル基、ニトロ基、スルホニル基、ウレタン基、エポキシ基、オキセタニル基およびフェニル基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されていてもよいし、より具体的には、アクリル基、メタクリル基、アクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、アリル基、エポキシ基およびオキセタニル基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換されていてもよい。
【0066】
この中でも、ポリシロキサンの硬化密度を一層高めてコーティング層の表面硬度特性をさらに向上させることができるという点から、前記R2は、より具体的には、アクリル基、メタクリル基、アクリレート基、メタクリレート基、ビニル基、アリル基、エポキシ基およびオキセタニル基からなる群より選択される1種以上の置換基で置換もしくは非置換の、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6のフェニル基であるか;またはエポキシ基;またはオキセタニル基;であってもよい。さらにより具体的には、前記R2は、非置換のフェニル基またはエポキシ基であってもよい。
【0067】
一方、本発明において、「エポキシ基」は、オキシラン環を含む官能基であって、別途の言及がない限り、オキシラン環のみを含む非置換エポキシ基、炭素数6~20、あるいは炭素数6~12の脂環族エポキシ基(例えば、エポキシシクロヘキシル、エポキシシクロペンチルなど);および炭素数3~20、あるいは炭素数3~12の脂肪族エポキシ基(グリシジル基など)を含む。
【0068】
また、本発明において、「オキセタニル基」とは、オキセタン環を含む官能基であって、別途の言及がない限り、オキセタン環のみを含む非置換オキセタニル基、炭素数6~20、あるいは炭素数6~12の脂環族オキセタニル基、および炭素数3~20、あるいは炭素数3~12の脂肪族オキセタニル基を含む。
【0069】
また、前記ポリシロキサンは、(OR)の構成単位を含むことができる。前記構成単位を含むことによって、優れた硬度特性を維持しながらも柔軟性を向上させることができる。前記Rは、具体的には、水素原子であるか、または炭素数1~12のアルキル基であってもよいし、より具体的には、水素原子であるか、またはメチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基などの炭素数1~4の直鎖もしくは分枝状アルキル基であってもよい。
【0070】
前記構成単位を含むポリシロキサンは、各構成単位のシロキサン単量体、具体的には、エポキシアルキル基を有するアルコキシシラン単独、またはエポキシアルキル基を有するアルコキシシランと異種のアルコキシシランとの間の加水分解および縮合反応によって製造できるが、この時、前記アルコキシシランの含有量比の制御により各構成単位のモル比を制御することができる。
【0071】
一方、前記一実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウにおいて、前記第2コーティング層は、弾性重合体を含むことができる。
【0072】
前記弾性重合体が第2コーティング層に含まれることによって、第2コーティング層に高いtoughnessによるストレス抵抗特性を付与して硬化時の収縮を最小化することができ、その結果、反り特性を改善し、同時に屈曲性などの柔軟性を改善させることができる。
【0073】
前記弾性重合体としては、炭素数1~20のアルカンジオール、ポリオレフィンポリオール、ポリエステルポリオール、ポリカプロラクトンポリオール、ポリエーテルポリオールまたはポリカーボネートポリオールなどが挙げられ、これらのいずれか1または2以上の混合物が使用できる。これらの弾性重合体は、ゴムなど通常の弾性重合体と比較して、紫外線照射によって架橋重合可能であり、また、他の物性の低下なく高硬度と柔軟性を実現することができる。この中でも、前記弾性重合体は、ポリカプロラクトンジオール、またはポリカーボネートジオールであってもよいし、特に、前記ポリカプロラクトンジオールは、繰り返し単位内にエステル基とエーテル基が同時に含まれて繰り返されることによって、前記架橋性官能基が置換された2種以上のポリシロキサンとの組み合わせを使用する時、柔軟性と硬度、耐衝撃性の面でより優れた効果を示すことが可能で、より好ましい。
【0074】
また、前記弾性重合体は、数平均分子量(Mn)が500~10,000Da、より具体的には1,000~5,000Daであってもよい。前記数平均分子量の条件を満たす場合、他の成分との相溶性が増加し、硬化物の表面硬度が向上して、硬化物の耐熱性および耐摩耗性がさらに向上できる。
【0075】
前記一実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウにおいて、前記第2コーティング層は、前記異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサン100重量部に対して、前記弾性重合体を10重量部以上80重量部以下、10重量部以上75重量部以下、10重量部以上50重量部以下、または15重量部以上50重量部以下で含むことができる。
【0076】
前記第2コーティング層が前記異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサン100重量部に対して、前記弾性重合体を10重量部以上80重量部以下で含むことによって、前記一実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウが光学特性に優れ、柔軟性および高硬度の物性バランスを実現することができる。
【0077】
前記異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサン100重量部に対して、前記弾性重合体を10重量部未満で含む場合、強固な硬化膜を形成できず、繰り返しの曲げや折り畳み動作に対する耐久性が十分に実現できない技術的問題点が発生しうる。
【0078】
前記異なる構造を有する2以上の繰り返し単位を含むポリシロキサン100重量部に対して、前記弾性重合体を80重量部超過で含む場合、硬化時、柔軟性が減少して部分的未硬化が発生して硬度が低下する問題点が発生しうる。
【0079】
一方、前記第1コーティング層は、(メタ)アクリレート樹脂またはエポキシ樹脂を含むことができる。
【0080】
具体的には、前記エポキシ樹脂は、架橋性官能基が置換された2種以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンを含むことができる。前記架橋性官能基が置換された2種以上の繰り返し単位を含むポリシロキサンに関する内容は、上述した内容をすべて含む。
【0081】
一方、前記ハードコート層は、エポキシ樹脂を含むことによって、強固な硬化膜を形成して繰り返しの曲げや折り畳み動作に対する耐久性を確保できる。ハードコート層にエポキシ樹脂を含まない場合、繰り返しの曲げや折り畳み動作に対する耐久性が低下する技術的問題が発生しうる。
【0082】
前記エポキシ樹脂の種類が大きく限定されないが、ビスフェノール系エポキシ樹脂を含むことができる。
【0083】
例えば、前記エポキシ樹脂は、ビスフェノールA型エポキシ樹脂、ビスフェノールF型エポキシ樹脂、ビスフェノールS型エポキシ樹脂、ビスフェノールA型ノボラックエポキシ樹脂、水素化ビスフェノールA型エポキシ樹脂からなる群より選択される1つ以上を含むことができる。前記エポキシ樹脂がビスフェノール系エポキシ樹脂を含むことによって、シルセスキオキサン分子構造より相対的にまっすぐで硬いため、硬化膜の分子鎖も、強直性に優れ、高いTgおよび低いCTE値を示し、ポリエチレングリコール系エポキシ樹脂などの線状エポキシ樹脂を含む場合より、高温および低温で優れた繰り返しの曲げや折り畳み動作に対する優れた耐久性を実現することができる。
【0084】
より具体的には、前記エポキシ樹脂は、エポキシ当量が120g/eq以上600g/eq以下、120g/eq以上550g/eq以下、150g/eq以上550g/eq以下、155g/eq以上500g/eq以下であってもよい。
【0085】
エポキシ樹脂のエポキシ当量が120g/eq未満の場合、硬化性エポキシ反応基が過剰存在して、硬化反応時、一部未硬化であったり、硬化膜がbrittleになったりするため、低温で繰り返しの曲げや折り畳み動作に対する耐久性に劣ることがあり、エポキシ当量が600g/eqを超える場合、ハードコート層の光学特性が低下する技術的問題点が発生しうる。
【0086】
このような官能基の当量は、エポキシ樹脂の分子量をエポキシ官能基の数で割った値で、H-NMRまたは化学的滴定法で分析することができる。
【0087】
また、前記(メタ)アクリレート樹脂は、単官能または多官能アクリレートモノマー、多官能ウレタンアクリレートオリゴマーからなる群より選択された1種以上の化合物の(共)重合体を含むことができる。
【0088】
前記単官能または多官能アクリレートモノマーとしては、2-エチルヘキシルアクリレート、オクタデシルアクリレート、イソデシルアクリレート、2-フェノキシエチルアクリレート、ラウリルアクリレート、ステアリルアクリレート、ベヘニルアクリレート、トリデシルメタクリレート、ノニルフェノールエトキシレートモノアクリレート、β-カルボキシエチルアクリレート、イソボルニルアクリレート、テトラヒドロフルフリルアクリレート、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、4-ブチルシクロヘキシルアクリレート、ジシクロペンテニルアクリレート、ジシクロペンテニルオキシエチルアクリレート、エトキシエトキシエチルアクリレート、エトキシル化モノアクリレート、1,6-ヘキサンジオールジアクリレート、トリフェニルグリコールジアクリレート、ブタンジオールジアクリレート、1,3-ブチレングリコールジメタクリレート、1,6-ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジアクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、ジプロピレングリコールジアクリレート、エトキシル化ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリメチロールプロパントリアクリレート、トリメチロールプロパントリメタクリレート、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラアクリレート、エトキシル化トリアクリレート、トリス(2-ヒドロキシエチル)イソシアヌレートトリアクリレート、ジペンタエリスリトールペンタクリレート、ジトリメチロールプロパンテトラアクリレート、アルコキシル化テトラアクリレートなどが挙げられ、好ましくは、ペンタエリスリトールトリアクリレート、ペンタエリスリトールトリメタクリレート、ペンタエリスリトールテトラメタクリレート、またはペンタエリスリトールテトラアクリレートなどのようなアクリレートモノマーが挙げられ、これらのいずれか1または2以上の混合物が使用できる。
【0089】
また、前記多官能ウレタンアクリレートオリゴマーは、上述したポリシロキサンとの組み合わせを使用する時、表面硬度改善効果が顕著であり得る。前記ウレタンアクリレートオリゴマーは、官能基の数が6~9個であってもよい。官能基が6個未満であれば、硬度改善効果がわずかであり、9個超過であれば、硬度には優れているが、粘度が上昇しうる。さらに、前記多官能ウレタンアクリレートオリゴマーは、当該分野にて使用されるものを制限なく使用できるが、好ましくは、分子内に1個以上のイソシアネート基を有する化合物と、分子内にヒドロキシ基を1個以上有する(メタ)アクリレート化合物とを反応させて製造されたものが使用できる。
【0090】
追加的に、発明の一実施形態によるフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウにおいて、第1コーティング層も、弾性重合体を含むことができる。このように第1コーティング層にも弾性重合体がさらに含まれる場合、第1コーティング層の硬化時に収縮を最小化して、反り特性および屈曲性をさらに改善させることができる。
【0091】
また、第1コーティング層が弾性重合体をさらに含む場合、第1コーティング層と第2コーティング層に含まれる弾性重合体の含有量は、同一でもよく、異なっていてもよい。光透過性基材と接する下部コーティング層での収縮の最小化による表面硬度特性、反り特性と屈曲性改善効果の優秀さを考慮する時、本発明の一実施形態によるフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、第1コーティング層に比べて第2コーティング層でより高い含有量で弾性重合体を含むことができる。
【0092】
一方、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、上述した特性を実現するために、光学特性に優れ、柔軟性および高硬度の物性バランスを同時に満足するようにし、繰り返しの曲げや折り畳み動作によっても内部構造に発生する損傷を防止できる光透過性基材を含むことが好ましい。
【0093】
前記光透過性基材は、上述した特性を満足するものであれば、その種類が大きく限定されないが、例えば、ガラス基板を用いるか、またはポリエステル系樹脂、セルロース系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂、ポリオレフィン系樹脂、ポリイミド系樹脂、ポリアミドイミド系樹脂、ポリエーテルスルホン系樹脂およびスルホン系樹脂からなる群より選択された1種以上の樹脂を含むことができる。
【0094】
前記光透過性基材は、弾性モジュラスは約4GPa以上、または約5GPa以上、または約5.5GPa、または約6GPa以上、または4GPa~9GPaの弾性モジュラスを有することができる。
【0095】
前記光透過性基材の弾性モジュラスが4GPa未満であれば、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウが十分な硬度を達成できないことがある。また、前記光透過性基材の弾性モジュラスが9GPaを超えると、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウが有する柔軟性および弾性が十分でないことがある。
【0096】
上述のように、通常薄い厚さを有するフィルムまたは光学積層体では柔軟性の確保が可能であるが、高い表面硬度化を確保しながら、繰り返しの曲げや折り畳み動作に対する耐久性の確保が容易ではない。
【0097】
これに対し、前記実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、上述した特徴の光透過性基材と共に高い硬度を有しながらも、繰り返しの曲げや折り畳み動作に対する耐久性が確保できる第1コーティング層および第2コーティング層を含み、上述のような特徴を有することができる。
【0098】
一方、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、以前に知られた他のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウに比べて、薄い厚さ範囲においても、柔軟性および高硬度の物性バランスを同時に満足し、繰り返しの曲げや折り畳み動作によっても内部構造に発生する損傷を防止することができ、高い機械的物性と耐熱性と共に高い透明度などの光学的特性を有することができる。
【0099】
より具体的には、前記光透過性基材は、5μm~100μmの厚さ、または10μm~80μmの厚さ、または20μm~60μmの厚さを有することができる。前記基材の厚さが5μm未満であれば、コーティング層の形成工程時、破断したり、カール(curl)が発生したりする恐れがあり、高硬度を達成しにくいことがある。これに対し、厚さが100μmを超えると、柔軟性が低下してフレキシブルフィルムの形成が難しいことがある。
【0100】
前記第1コーティング層は、200μm以下、10μm以上200μm以下、10μm以上100μm以下、または10μm以上60μm以下の厚さを有することができる。前記第1コーティング層の厚さが過度に大きくなる場合、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウの柔軟性や、繰り返しの曲げや折り畳み動作に対する耐久性などが低下しうる。
【0101】
前記第2コーティング層は、5μm~200μm、または5μm~100μm、または10μm~80μm、または20μm~80μmの厚さを有することができる。前記第2コーティング層の厚さが5μm未満であれば、コーティング層の形成工程時、破断したり、カール(curl)が発生する恐れがあり、高硬度を達成しにくいことがある。これに対し、厚さが100μmを超えると、柔軟性が低下してフレキシブルフィルムの形成が難しいことがある。
【0102】
また、前記一実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、80μm~350μm、80μm~300μm、80μm~250μm、または80μm~210μmの厚さを有することができる。つまり、前記第2コーティング層、光透過性基材、および第1コーティング層を含む積層体の厚さが80μm~350μm、80μm~300μm、80μm~250μm、または80μm~210μmであってもよい。前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウの厚さが80μm未満であれば、コーティング層の形成工程時、破断したり、カール(curl)が発生したりする恐れがあり、高硬度を達成しにくいことがある。これに対し、厚さが350μmを超えると、柔軟性が低下してフレキシブルフィルムの形成が難しいことがある。
【0103】
さらに、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、前記光透過性基材の厚さに対する、前記第1コーティング層の厚さの比率が0.1~2.0であってもよい。
【0104】
具体的には、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、前記光透過性基材の厚さに対する、前記第1コーティング層の厚さの比率が0.1以上、0.2以上であってもよく、2.0以下、1.5以下、1.0以下、または0.5以下であってもよいし、0.1~2.0、0.1~1.5、0.1~1.0、または0.2~1.0、または0.2~0.5であってもよい。前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、前記光透過性基材の厚さに対する、前記第1コーティング層の厚さの比率が0.1~2.0を満足することによって、コーティング層の形成工程時、破断、またはカール(curl)の発生を抑制し、高硬度を達成すると同時に十分な柔軟性を実現して、柔軟性および高硬度の物性バランスを同時に実現することができる。
【0105】
また、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、前記第1コーティング層の厚さに対する、前記第2コーティング層の厚さの比率が1.0~10.0であってもよい。
【0106】
具体的には、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、前記第1コーティング層の厚さに対する、前記第2コーティング層の厚さの比率が1.0以上、2.0以上、4.0以上であってもよく、10.0以下、8.0以下、または6.0以下であってもよいし、2.0~10.0、2.0~8.0、4.0~8.0、または4.0~6.0であってもよい。前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、前記第1コーティング層の厚さに対する、前記第2コーティング層の厚さの比率が1.0~10.0を満足することによって、コーティング層の形成工程時、破断、またはカール(curl)の発生を抑制し、高硬度を達成すると同時に十分な柔軟性を実現して、柔軟性および高硬度の物性バランスを同時に実現することができる。
【0107】
一方、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、前記光透過性基材の一面に前記第1コーティング層形成用コーティング組成物を塗布し光硬化した後、前記光透過性基材の他の一面に前記第2コーティング層形成用コーティング組成物を塗布し光硬化することによって提供できる。
【0108】
前記コーティング組成物を塗布する方法は、本技術の属する技術分野にて使用できるものであれば特に限定されず、例えば、バーコーティング方式、ナイフコーティング方式、ロールコーティング方式、ブレードコーティング方式、ダイコーティング方式、マイクログラビアコーティング方式、コンマコーティング方式、スロットダイコーティング方式、リップコーティング方式、ソリューションキャスティング(solution casting)方式などを利用することができる。
【0109】
前記第1コーティング層の上面または前記光透過性基材または高分子基材と第1コーティング層との間に、プラスチック樹脂フィルム、離型フィルム、導電性フィルム、導電層、液晶層、コーティング層、硬化樹脂層、非導電性フィルム、金属メッシュ層またはパターン化された金属層のような層、膜、またはフィルムなどを1つ以上さらに含むことができる。
【0110】
例えば、基材に導電性を有する帯電防止層を先に形成した後、その上にコーティング層を形成して帯電防止(anti-static)機能を付与したり、コーティング層上に低屈折率層を導入したりして低反射(low reflection)機能を実現することもできる。
【0111】
また、前記層、膜、またはフィルムなどは、単一層、二重層または積層型のいかなる形態でもよい。前記層、膜、またはフィルムなどは、独立した(freestanding)フィルムを接着剤または粘着性フィルムなどを用いてラミネーション(lamination)したり、コーティング、蒸着、スパッタリングしたりなどの方法で前記コーティング層上に積層させることができるが、本発明がこれに限定されるものではない。
【0112】
一方、前記第1コーティング層および第2コーティング層は、光開始剤、有機溶媒、界面活性剤、UV吸収剤、UV安定剤、黄変防止剤、レベリング剤、防汚剤、色値改善のための染料など、本発明の属する技術分野にて通常使用される成分を追加的に含むことができる。また、その含有量は、前記コーティング層の物性を低下させない範囲内で多様に調節可能なため、特に限定はないが、例えば、前記コーティング層100重量部に対して、約0.01~約30重量部含まれる。
【0113】
前記界面活性剤は、1~2官能性のフッ素系アクリレート、フッ素系界面活性剤またはシリコーン系界面活性剤であってもよい。この時、前記界面活性剤は、前記コーティング層内に分散または架橋されている形態で含まれる。
【0114】
また、前記添加剤として、UV吸収剤、またはUV安定剤を含むことができ、前記UV吸収剤としては、ベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、またはトリアジン系化合物などが挙げられ、前記UV安定剤としては、テトラメチルピペリジン(tetramethyl piperidine)などが挙げられる。
【0115】
前記光開始剤としては、1-ヒドロキシ-シクロヘキシル-フェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-1-プロパノン、2-ヒドロキシ-1-[4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル]-2-メチル-1-プロパノン、メチルベンゾイルホルメート、α,α-ジメトキシ-α-フェニルアセトフェノン、2-ベンゾイル-2-(ジメチルアミノ)-1-[4-(4-モルホリニル)フェニル]-1-ブタノン、2-メチル-1-[4-(メチルチオ)フェニル]-2-(4-モルホリニル)-1-プロパノンジフェニル(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-ホスフィンオキシド、またはビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルホスフィンオキシドなどが挙げられるが、これらに限定されない。また、現在市販の商品としては、Irgacure184、Irgacure500、Irgacure651、Irgacure369、Irgacure907、Darocur1173、Darocur MBF、Irgacure819、Darocur TPO、Irgacure907、Esacure KIP 100Fなどが挙げられる。これらの光開始剤は、単独でまたは互いに異なる2種以上を混合して使用することができる。
【0116】
前記有機溶媒としては、メタノール、エタノール、イソプロピルアルコール、ブタノールのようなアルコール系溶媒、2-メトキシエタノール、2-エトキシエタノール、1-メトキシ-2-プロパノールのようなアルコキシアルコール系溶媒、アセトン、メチルエチルケトン、メチルイソブチルケトン、メチルプロピルケトン、シクロヘキサノンのようなケトン系溶媒、プロピレングリコールモノプロピルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、エチレングリコールモノプロピルエーテル、エチレングリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチルグリコールモノエチルエーテル、ジエチルグリコールモノプロピルエーテル、ジエチルグリコールモノブチルエーテル、ジエチレングリコール-2-エチルヘキシルエーテルのようなエーテル系溶媒、ベンゼン、トルエン、キシレンのような芳香族溶媒などを単独でまたは混合して使用することができる。
【0117】
また、発明の他の実施形態によれば、前記一実施形態のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウを含むフレキシブルディスプレイ装置が提供できる。
【0118】
前記フレキシブルディスプレイ装置は、カーブド(curved)、ベンダブル(bendable)、フレキシブル(flexible)、ローラブル(rollable)、またはフォルダブル(foldable)形態の移動通信端末、スマートフォンまたはタブレットPCのタッチパネル、および各種ディスプレイをすべて含む。
【0119】
前記フレキシブルディスプレイ装置の一例として、フレキシブル発光素子ディスプレイ装置が挙げられる。
【0120】
例えば、前記有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイは、前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウが光や画面の出る方向の外角部に位置することができ、電子を提供する陰極(cathode)、電子輸送層(Eletron Transport Layer)、発光層(Emission Layer)、正孔輸送層(Hole Transport Layer)、正孔を提供する陽極(anode)が順次に形成されていてもよい。
【0121】
また、前記有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイは、正孔注入層(HIL、Hole Injection Layer)と電子注入層(EIL、Electron Injection Layer)をさらに含んでもよい。
【0122】
前記有機発光ダイオード(OLED)ディスプレイがフレキシブルディスプレイの役割および作動をするためには、前記高分子フィルムをカバーウィンドウに使用することに加えて、前記陰極および陽極の電極と、各構成成分を所定の弾性を有する材料で使用することができる。
【0123】
前記フレキシブルディスプレイ装置の他の例として、巻取可能ディスプレイ装置(rollable display or foldable display)が挙げられる。
【0124】
前記巻取可能ディスプレイ装置は、適用分野および具体的な形態などに応じて多様な構造を有することができ、例えば、カバープラスチックウィンドウ、タッチパネル、偏光板、バリアフィルム、発光素子(OLED素子など)、透明基板などを含む構造であってもよい。
【発明の効果】
【0125】
本発明によれば、柔軟性および高硬度の物性バランスを同時に満足するように実現しながら、高硬度を示し、特に繰り返しの曲げや折り畳み動作によってもフィルムの損傷がほとんどなく、ベンダブル、フレキシブル、ローラブル、またはフォルダブルモバイル機器、またはディスプレイ機器などに容易に適用できるフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウとフレキシブルディスプレイ装置が提供できる。
【0126】
前記フレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、強化ガラスなどを代替可能な物性を有することができるため、外部から加えられる圧力や力によって割れないだけでなく、十分に曲がり折り畳み可能な程度の特性を有することができ、柔軟性、屈曲性、高硬度、耐擦傷性、高透明度を示し、繰り返し的、持続的な曲げや長時間の折り畳み状態でもフィルムの損傷が少なく、ベンダブル(bendable)、フレキシブル(flexible)、ローラブル(rollable)、またはフォルダブル(foldable)モバイル機器、ディスプレイ機器、各種計器板の前面板、表示部などに有用に適用可能である。
【図面の簡単な説明】
【0127】
【
図1】動的曲げ特性を評価する方法を概略的に示す図である。
【
図2】製造例2のポリシロキサンに対して測定したFT-IRスペクトルを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0128】
発明を下記の実施例でより詳細に説明する。ただし、下記の実施例は本発明を例示するものに過ぎず、本発明の内容が下記の実施例によって限定されるものではない。
【0129】
<製造例>
【0130】
製造例1:ハードコート層形成用組成物の製造
60重量%のウレタンアクリレートオリゴマー(UF-8001G、共栄社)、37重量%のメチルエチルケトン、2.5重量%の光開始剤(I-184、Ciba社)、0.5重量%のレベリング剤(BYK-3570、BYKケミー社)を撹拌機を用いて配合し、フィルタでろ過後、ハードコート層形成用組成物を製造した。
【0131】
製造例2:ポリシロキサンAの製造
1000mL 3-neckフラスコに、シランモノマーの3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS、KBM-403TM、Shinetsu社)、水およびトルエンを入れて混合して撹拌した(GPTMS:水=1mol:3mol)。
【0132】
次に、結果の混合溶液に、塩基性触媒(trimethylammonium hydroxide;TMAH)を前記シランモノマー100重量部に対して1重量部添加し、100℃で2時間反応させて、グリシドキシプロピル変性シリコーン(glycidoxypropyl modified silicone、以下、GP)100モル%を含む下記の組成のポリシロキサンAを製造した。
【0133】
ATR法でFT-IRスペクトルを測定して、前記製造されたポリシロキサン中のラダー型ポリシロキサンに対する、ケージ型ポリシロキサンのTransmittance intensityを測定した結果、1.4となった。実際に測定したFT-IRスペクトルを下記の
図2に示した。
【0134】
比較製造例:ポリシロキサンBの製造
1000mL 3-neckフラスコに、シランモノマーの3-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン(GPTMS、KBM-403TM、Shinetsu社)、水およびトルエンを入れて混合して撹拌した(GPTMS:水=1mol:3mol)。
【0135】
次に、結果の混合溶液に、塩基性触媒(trimethylammonium hydroxide;TMAH)を前記シランモノマー100重量部に対して1重量部添加し、100℃で8時間反応させて、グリシドキシプロピル変性シリコーン(glycidoxypropyl modified silicone、以下、GP)100モル%を含む下記の組成のポリシロキサンBを製造した。
【0136】
ATR法でFT-IRスペクトルを測定して、前記製造されたポリシロキサン中のラダー型ポリシロキサンに対する、ケージ型ポリシロキサンのTransmittance intensityを測定した結果、1.1となった。
【0137】
<実施例および比較例>
【0138】
実施例1
15cmx20cm、厚さ50μmのポリイミドフィルム(ASTM D882により測定した弾性モジュラス値が7.0GPa)の一面に、前記製造例1で製造したハードコート層形成用組成物を塗布し、ランプを用いて紫外線を照射(照射量:1,000mJ/cm2)し光硬化して、10μmの厚さの第1コーティング層を形成した。
【0139】
前記製造例2で製造したポリシロキサンA100g、弾性重合体(ポリカプロラクトンジオール、Mn=500g Da)48g、開始剤のI-250(BASF社)3g、レベリング剤F-477(DIC社)0.6g、および溶媒のメチルエチルケトン5gを混合して、第2コーティング層形成用樹脂組成物を製造した。
【0140】
ポリイミドフィルムの他の一面に前記第2コーティング層形成用樹脂組成物を塗布し、ランプを用いて紫外線を照射(照射量:1,000mJ/cm2)し光硬化して、40μmの厚さの第2コーティング層を形成した。
【0141】
実施例2
弾性重合体を16g使用した第2コーティング層形成用樹脂組成物を用いたことを除き、実施例1と同様の方法でフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用光学積層体を製造した。
【0142】
実施例3
弾性重合体を16g使用した第2コーティング層形成用樹脂組成物で60μmの第2コーティング層を形成して、計120μmの厚さの光学積層体を製造したことを除き、実施例1と同様の方法でフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用光学積層体を製造した。
【0143】
比較例1
第2コーティング層形成用樹脂組成物の製造時、製造例で製造したポリシロキサンAの代わりに比較製造例のポリシロキサンBを用いたことを除き、実施例1と同様の方法でフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用光学積層体を製造した。
【0144】
比較例2
実施例1と同様の方法で第1コーティング層をポリイミドの一面に形成した。
【0145】
前記ポリイミドの他の一面に、常温でラミネーション機器を用いてoptical clear adhesive film(3M社、厚さ:20μm)とCPI(Kolon社、厚さ:20μm)を順次に積層して、機能層を含むフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用光学積層体を製造した。
【0146】
<実験例>
実施例および比較例で製造した光学積層体に対して、次の方法で物性を測定し、その結果を下記表1に示した。
【0147】
1.Dent特性
前記第2コーティング層上に、常温でラミネーション機器を用いてoptical clear adhesive film(3M社、厚さ:20μm)とCPI(Kolon社、厚さ:20μm)を順次に積層して、機能層を含むフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウ用光学積層体を製造した。
【0148】
機能層を貼り合わせた後、光学積層体の第1コーティング層の表面に対して、鉛筆硬度測定器を用いて荷重300g、角度45°に鉛筆を固定させた後、鉛筆硬度別に20mmずつ計5回掻いて肉眼で擦れているか否かを判断し、3回以上表面損傷(1mm以上のクラック)が生じない最大鉛筆硬度を測定した。
【0149】
機能層を貼り合わせた直後の表面損傷(1mm以上のクラック)が生じない最大鉛筆硬度を初期Dent数値と定義し、機能層を貼り合わせ、常温で24時間放置後、表面損傷(1mm以上のクラック)が生じない最大鉛筆硬度を後期Dent数値と定義した。
【0150】
2.動的曲げ特性
図1は、本発明の一実施例による光学積層体に対して、動的曲げ特性を評価する方法を概略的に示す図である。
【0151】
具体的には、前記光学積層体を裁断しかつ、エッジ(edge)部位の微細クラックを最小化するように、80x140mmの大きさにレーザ裁断した。測定装置上にレーザ裁断されたフィルムを載せ、第1コーティング層を内側とし、折り畳まれる部位の間隔(内側の曲率径)が8mmとなるようにして、常温でフィルムの両側を底面に対して90度に畳んだり広げたりを連続動作(フィルムの折り畳まれる速度は25℃で1秒あたり1回)で20万回繰り返し、下記の基準により常温動的曲げ特性を評価した。
【0152】
良好:1mm以上のクラック発生せず
不良:1mm以上のクラック発生
【0153】
3.耐押圧性
光学積層体の第1コーティング層の表面に対して、荷重250gでワコムペンで200回円形で往復した後、ペンの経路上に押圧があるか否かを確認して、中に押圧が観察されなければ「良好」と判定し、押圧が観察されると「不良」と判定した。
【0154】
4.耐スクラッチ性
光学積層体の第1コーティング層の表面に対して、スチールウール(#0000)に荷重500gをかけて、40rpmの速度で1000回往復して、スクラッチ発生の有無を光学顕微鏡で確認した。光学顕微鏡でスクラッチが観察されなければ「良好」と判定し、スクラッチが観察されると、具体的には、1mm以上のスクラッチが1個以上観察されると「不良」と判定した。
【0155】
【0156】
前記表1によれば、実施例1~3のフレキシブルディスプレイ装置のカバーウィンドウは、優れた耐スクラッチ性と良好な動的曲げ特性を有することが確認され、特に前記Dent特性および耐押圧性実験の結果から確認されるように、所定の基材上に形成された状態でも十分な耐衝撃性や押圧防止性能を有することが確認された。
【0157】
これに対し、比較例1および2のカバーウィンドウは、一定レベル以上の耐スクラッチ性を確保しても十分な耐押圧性能(Dent特性)を有することができないことが確認された。