(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】樹脂改質剤及びその改質剤を含む樹脂組成物
(51)【国際特許分類】
C08L 29/04 20060101AFI20240918BHJP
C08J 5/18 20060101ALI20240918BHJP
B32B 27/30 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C08L29/04 C
C08L29/04 S
C08J5/18 CEX
B32B27/30 102
(21)【出願番号】P 2020005450
(22)【出願日】2020-01-16
【審査請求日】2022-12-16
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000003300
【氏名又は名称】東ソー株式会社
(72)【発明者】
【氏名】川戸 大輔
(72)【発明者】
【氏名】増田 淳
(72)【発明者】
【氏名】幸田 真吾
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】特開平03-026736(JP,A)
【文献】特開2007-284647(JP,A)
【文献】特開2001-049069(JP,A)
【文献】特開2009-173803(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L 29/00-29/14
C08L 101/00-101/16
C08L 77/00-77/12
C08L 67/00-69/00
C08J 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
エチレン含量が75モル%未満のエチレン・ビニルアルコール共重合体100重量部に対して、
エチレン含量が75モル%以上95モル%以下、酢酸ビニル含量が5モル%以上25モル%以下であるエチレン・酢酸ビニル共重合体をケン化して得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物であって、酢酸ビニル成分のケン化度が20重量%以上であり、JIS K6924-1(190℃、2160g荷重の条件下)に基づき測定したメルトマスフローレイトが10g/10分以上であるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物を含有する、エチレン含量が75モル%未満のエチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)用成形助剤を0.1重量部以上5重量部以下含有する樹脂組成物。
【請求項2】
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物のメルトマスフローレイトが40g/10分以上
である請求項1記載の
樹脂組成物。
【請求項3】
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物が、エチレン含量が75モル%以上90モル%以
下、酢酸ビニル含有量10モル%以上25モル%以下であるエチレン・酢酸ビニル共重合
体ケン化物と、エチレン含量が90モル%を超え95モル%以下、酢酸ビニル含量が5モ
ル%以上10モル%未満であるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物の組成物である請求項1または2に記載の
樹脂組成物。
【請求項4】
請求項
1~3のいずれかに記載の樹脂組成物を含有する成形体。
【請求項5】
請求項
1~3のいずれかに記載の樹脂組成物を含有するフィルム。
【請求項6】
請求項
5記載のフィルムを少なくとも1層備える積層体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は樹脂の成形加工性を改善する樹脂改質剤及び該改質剤を配合した樹脂組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
エチレン・ビニルアルコール共重合体(以下、「EVOH」という)、ポリアミドなどの分子中に多くの極性基を含む樹脂は、食品や飲料、医薬品向けの包装材料として用いられている。特に、EVOHは衝撃強度並びに引張強度のような機械的性能、耐溶剤性、耐薬品性、ガスバリア性、保香性及び耐油性に優れるため、種々のガスバリア性フィルム、ガスバリア容器のガスバリア層に使用されている。
【0003】
しかしながら、このような分子中に極性基を多く含む樹脂はポリエチレン、ポリプロピレン等の極性基の含有量が少なく、極性の低いポリオレフィン類と比較して、押出成形時における生産効率が劣る問題がある。
具体的には、EVOHを長時間に渡って押出成形を行った場合、押出機の金属内壁にEVOHが付着し滞留すると、熱劣化しやすくなる。該劣化物が成形体内に含まれることで、成形体にフィッシュアイ、ゲル、スジのような外観不良が生じることから、連続した押出成形ができないという問題があった。このような外観不良は、特に極性基を有する樹脂の中でもEVOHのような透明性を示す樹脂においては顕著となるため、その防止方法が求められていた。
【0004】
これに対し、EVOHに脂肪酸金属塩等の添加剤を配合することが提案されている(例えば特許文献1、2など)。
特許文献1によれば、EVOHに脂肪酸金属塩を添加することで長時間安定した押出成形を行うことが可能とされている。しかし、脂肪酸金属塩が低分子であるため成形体からブリードしやすい。そのため、脂肪酸金属塩の添加量が制限され、十分な効果を得ることができない。
このような背景から、従来より熱安定性に優れ、分子中に極性基を有する樹脂の成形性を改善し、該樹脂の長期滞留を抑制し、フィッシュアイやゲル状物質などの異物低減を可能とする樹脂改質剤が望まれていた。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2002-60496号公報
【文献】国際公開2010/071241号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
本発明は、上記のような状況を鑑みなされたものであって、極性基を有する樹脂の成形性を改善し異物のコンタミネーションを防止することで連続的に成形加工を行うことを可能とし、かつ、該樹脂の透明性を損なうことなく母材となる樹脂と相溶化する樹脂改質剤を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、鋭意検討した結果、特定の構造を有するエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物が、前記課題を解決できることを見出し、本発明を完成するに至った。
【0008】
すなわち本発明は、エチレン含量が75モル%以上95モル%以下、酢酸ビニル含量が5モル%以上25モル%以下であるエチレン・酢酸ビニル共重合体をケン化して得られるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物であって、酢酸ビニル成分のケン化度が20%以上であり、JIS K6924-1(190℃、2160g荷重の条件下)に基づき測定したメルトマスフローレイトが10g/10分以上であるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物を含有する樹脂改質剤である。
また、本発明の別の態様として、前記樹脂改質剤と、極性基を有する樹脂の組成物を挙げることができる。
【0009】
以下に本発明について詳細に説明する。
【0010】
本発明で用いるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物は、エチレン含量が75モル%以上95モル%以下、酢酸ビニル含量が5モル%以上25モル%以下であるエチレンと酢酸ビニルとの共重合体をケン化したものである。酢酸ビニル含量が25モル%以下であることにより配合対象となる樹脂が成形機内に滞留しにくくなる。酢酸ビニル含量が5モル%以上であることにより、母材となる樹脂との屈折率差が小さくなり、該樹脂の透明性が損なわれない。
エチレン・酢酸ビニル共重合体の製造方法としては、高圧法ラジカル重合、溶液重合や乳化重合等の公知の製造方法が挙げられ、このような樹脂は市販品の中から便宜選択することができ、エチレン・酢酸ビニル共重合体として、東ソー株式会社からウルトラセンの商品名で、ランクセス株式会社からレバプレン、レバメルトの商品名で各々市販されている。
【0011】
本発明のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物は、前記エチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル成分が加水分解処理されたものであり、JIS K7192(1999年)に準拠して算出された酢酸ビニル成分のケン化度が20重量%以上である。これにより、母材となる樹脂との屈折率差が小さくなり、該樹脂の透明性が損なわれない。
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物のケン化度は、好ましくは30重量%以上100重量%以下、さらに好ましくは61重量%以上100重量%以下である。
エチレン・酢酸ビニル共重合体の加水分解方法は、エチレン・酢酸ビニル共重合体のペレットをアルカリ中で直接加水分解処理する方法を例示することができる。また、市販品の中から便宜選択することができ、東ソー株式会社からメルセンHの商品名で各々市販されている。
【0012】
本発明に用いるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物は、JIS K6924-1(190℃、2160g荷重の条件下)に基づき測定したメルトマスフローレイトが10g/10分以上である。メルトマスフローレイトは、好ましくは40g/10分以上である。これにより、樹脂が成形機内で滞留することをより抑制することができる。
【0013】
本発明においてエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物は1種単独又は2種以上を組み合わせた組成物のいずれでもよい。
2種以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物の組成物を用いる場合、エチレン含量が75モル%以上90モル%以下、酢酸ビニル含有量10モル%以上25モル%以下であるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物と、エチレン含量が90モル%を超え95モル%以下、酢酸ビニル含量が5モル%以上10モル%未満であるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物の2種類を少なくとも組み合わせることで、樹脂の滞留抑制効果がより高くなるため好ましい。
2種以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物の組成物を用いる場合、2種以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体をあらかじめ混合し、得られた混合物に加水分解処理を行いケン化物を得る方法、2種以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物を混合して用いる方法のいずれ方法で組成物を得てもよい。
【0014】
2種以上のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物の組成物を用いる場合、各成分の分散性をさらに高めるために、該組成物に架橋剤を添加して架橋変性させてもよい。架橋剤としては、各成分を架橋できるものあればよく、反応性などを考慮して有機過酸化物を使用することが好ましい。
架橋変性方法としては、架橋剤の添加が一般的であり、エチレン・酢酸ビニル共重合体の架橋物を加水分解処理する方法、或いはエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物を架橋する方法が選択される。
架橋剤の有機過酸化物としては、例えば、ジクミルペルオキシド、ジt-ブチルペルオキシド、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1、1ージ(tーブチルペルオキシ)シクロヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(t-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(t-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、1,3-ジ-(t-ブチルペルオキシ)-ジイソプロピルベンゼン、n-ブチル-4,4-ビス(t-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、t-ブチルペルオキシベンゾエート、t-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、t-ブチルクミルペルオキシドなどが挙げることができる。これらは単独で或いは2種類以上を混合して使用することができる。
なかでも、2,5-ジメチル-2,5-ジ(t-ブチルペルオキシ)ヘキサン、1、1ージ(tーブチルペルオキシ)シクロヘキサンが反応性の観点から好ましく用いられる。また、前記架橋剤と共に、必要に応じて、トリアリルイソシアヌレート、ジビニルベンゼンなどの架橋助剤を用いてもよい。
【0015】
また本発明におけるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物に、必要に応じて酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤、シリコンオイル、紫外線吸収剤、難燃剤、離型剤、発泡剤、香料などの一般的に使用される添加剤を1種または2種以上を含有していてもよい。
【0016】
本発明におけるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物は、母材となる樹脂に配合することで樹脂の成形性を高め、金属への溶着を防止することができる。そのため、樹脂の改質剤として好適に使用することができる。
本発明におけるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物は、ペレットやパウダーなどの任意の形態にしておいて、樹脂改質剤として使用することができる。
さらに本発明の樹脂改質剤は、熱可塑性を有するので、通常の成形加工装置を用いて成形加工することができる。
【0017】
本発明の改質剤は、極性基を有する樹脂、特に透明性を有する樹脂に添加し、該樹脂が成形機内で滞留することを抑制する。添加対象の樹脂としては、ポリビニルアルコール、エチレン含量が75モル%未満のエチレン・ビニルアルコール共重合体(EVOH)、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネートなどの分子中に多くの極性基を含む樹脂を例示することができる。
【0018】
本発明の改質剤の添加量は、透明性の樹脂100重量部に対し0.1重量部以上10重量部以下添加することが好ましく、さらに好ましくは0.5重量部以上6重量部以下、より好ましくは0.5重量部以上3重量部以下である
【0019】
EVOHとしては、エチレン単位とビニルアルコール単位とからなる共重合体であり、本願の改質剤であるエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物と区別されるため、そのエチレン含量は75モル%未満である。EVOHにおけるエチレン含量は、60モル%以下、さらには20モル%以上50モル%以下を例示できる。通常EVOHというと、エチレン含量がこの範囲のものを指す。
本発明において使用されるEVOHとしては、例えば、成形用途で使用されるような公知のものを挙げることができる。EVOHの製造方法としては、特に限定されるものではなく、例えば、公知の方法に従って、エチレンとビニルエステル共重合体を製造し、次いで、これをケン化することによってEVOHを製造することができる。ただし、EVOHのエチレン単位の含有量は、気体、有機液体等に対する遮断性の高さと成形加工性の良好さの点から、55モル%以下が好ましく、10モル%以上55モル%以下であることがさらに好ましい。このような樹脂は、市販品の中から便宜選択することができ、例えば(株)クラレからエバールの商品名で、日本合成化学工業(株)からソアノールの商品名で各々市販されている。
【0020】
本発明の改質剤を配合する、極性基を有する樹脂として例えば、ポリビニルアルコール、ナイロン-6やナイロン-6,6、メタキシレンアジパミドのようなポリアミド、ポリエチレンテレフタレートやポリブチレンテレフタレート、ポリ乳酸、ポリブチレンサクシネートなどのポリエステル、ポリカーボネートなどが分子中に多くの極性基を含む樹脂として例示される。
【0021】
本発明のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物と極性基を有する樹脂の混練方法は、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物と極性基を有する樹脂のドライブレンド物を、押出機のホッパーに投入する方法などが例示できる。またエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物及び樹脂の少なくともいずれかをサイドフィーダー等から添加してもよい。
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物と樹脂のドライブレンドには、ヘンシェルミキサー、Vブレンダー、リボンブレンダー、タンブラーなどを使用してもよく、そのような設備がない場合はエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物を個別にフィードしてもよい。
【0022】
また、エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物と樹脂以外に、必要に応じて酸化防止剤、滑剤、中和剤、ブロッキング防止剤、界面活性剤、スリップ剤等、通常ポリエチレンやポリプロピレン等のポリオレフィンに使用される添加剤を添加することもできる。
【0023】
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物と樹脂との組成物の成形法としては射出成形法、圧縮成形法、押出成形法など任意の成形法を選択できる。このうち押出成形法としてはT-ダイ法、中空成形法、パイプ押出法、異型ダイ押出法、インフレーション法などが挙げられる。成形物の形状は任意であり、ペレットはもとよりフィルム、シート、テープ、ボトル、パイプ、フィラメント、異型断面押出物などのみならず、他の樹脂との積層体にも適用できる。
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物と極性基を有する樹脂との組成物は、前記成形方法により成形されることで、成形体として使用することができ、例えばフィルム形状を例示することができる。
【0024】
前記フィルムは、ガスバリア性を有する。そのため、該フィルムを少なくとも1層備える積層体として好適に使用することができる。
【0025】
本発明の改質剤は、分子中に極性基を含む樹脂に対して成形助剤として適用可能であり、少量添加で該樹脂の長期滞留を抑制でき、樹脂本来の性能を損なわないことから、多岐に渡る用途に利用することができる。
【発明の効果】
【0026】
本発明の樹脂改質剤は、押出機の金属内壁への樹脂の付着を抑制し、フィッシュアイやゲル状物質などの異物の低減をできる。
【実施例】
【0027】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
【0028】
[酢ビ含量およびケン化度]
実施例で用いたエチレン・酢酸ビニル共重合体又はエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物を用いてJIS K7192(1999年)に準拠して酢酸ビニル含量を測定し、下記計算式に従いケン化度(重量%)を求めた。
ケン化度(重量%)=100×{(加水分解前のエチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸
ビニル含量(重量%))-(加水分解後のエチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル
含量(重量%))}/(加水分解前のエチレン・酢酸ビニル共重合体の酢酸ビニル含量
(重量%))
[メルトマスフローレート]
実施例で用いたエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物のメルトマスフローレイト(以下「MFR」という)は、メルトインデクサー(宝工業製)を用いてJIS K6924-1(190℃、2160g荷重の条件下)に基づき測定した。
【0029】
[退色時間の評価]
実施例で得られたドライブレンド物に対して、下記(1)記載の条件で作製した青色顔料マスターバッチを2重量部添加したブレンド物を、押出機のホッパーに投入し、下記(2)の条件で30分間押出を行った。30分後、青色顔料マスターバッチを含まない実施例に記載のドライブレンド物に切り替え、さらに30分間押出し、経時の色の変化(退色時間)を観察した。押出物の色が青色から無色又は白色に切り替わった時間が5分以内に完了した場合は「〇」、5~10分以内に完了した場合は「△」、10分を超える場合は「×」とした。
(1)エチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製、商品名 C109B、エチレン含量 35モル%,MFR 8.5g/10分)100重量部に対して、大日精化工業(株)製のフタロシアニンブルー0.5重量部添加したドライブレンド物を200℃で溶融混練したものを青色含量マスターバッチとした。
(2)押出機として、東洋精機(株)製一軸押出機D2025N(ノンベント、内径20mm)を用いた。設定温度はC1/C2/C3/Dを=180/200/230/230℃、スクリュ回転数は30rpmとした。
【0030】
[ヘーズ]
実施例で得られたドライブレンド物をインターナルミキサー(東洋精機製、商品名ラボブラストミルR-100)にて樹脂温度200℃、ローラー回転数60rpm、混練時間3分の条件にて溶融混練を行った。
得られた混練物を、プレス成型機(神藤金属工業所製 AWFA-50型)を用いて、加熱温度200℃(一次加圧×3分、二次加圧×3分)、冷却温度25℃(4分)の条件にてプレス成型し、得られた厚み0.1mmのプレスシートをヘーズメーター(日本電色工業製、NDH7000型)でヘーズ測定した。同じ試料について5カ所を選択し、評価し、その平均値をヘーズ値とした。ヘーズが50%以下の場合は透明性が良好であるため「〇」、ヘーズが51~70%の場合は「△」、ヘーズが71%を超える場合は透明性に劣るため「×」とした。
【0031】
実施例1
極性基を有する樹脂として、エチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製、商品名 F171B、エチレン含量 32モル%、MFR 1.7g/10min) 100重量部に対して、エチレン含量 89モル%、酢酸ビニル含量 11モル%、酢酸ビニル成分のケン化度 80重量%、MFR 220g/10minのエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(東ソー(株)製、商品名メルセンH H6822X)を5重量部添加し、室温で混合してドライブレンド物を得た。前述の手法に従い、得られたドライブレンド物を加工し、滞留時間の評価及びヘーズを評価した。結果を表1に示す。
【0032】
実施例2
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物の配合量を1重量部とした以外は実施例1と同様の方法でドライブレンド物を得た。評価結果を表1に示す。
【0033】
実施例3
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物の配合量を0.5重量部とした以外は実施例1と同様の方法でドライブレンド物を得た。評価結果を表1に示す。
【0034】
実施例4
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物の配合量を0.25重量部とした以外は実施例1と同様の方法でドライブレンド物を得た。評価結果を表1に示す。
【0035】
実施例5
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物として、エチレン含量 81モル%、酢酸ビニル含量 19モル%、酢酸ビニル成分のケン化度 90重量%、MFR 40g/10minのエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(東ソー(株)製、商品名メルセンH H6960)を用い、その配合量を5重量部とした以外は実施例1と同様の方法でドライブレンド物を得た。評価結果を表1に示す。
【0036】
実施例6
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物として、エチレン含量 89モル%、酢酸ビニル含量 11モル%、酢酸ビニル成分のケン化度 40重量%、MFR 16g/10minのエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(東ソー(株)製、商品名メルセンH H6410M)を用い、その配合量を5重量部とした以外は実施例1と同様の方法でドライブレンド物を得た。評価結果を表1に示す。
【0037】
【0038】
実施例7
極性基を有する樹脂として、エチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製、商品名F171B、エチレン含量 32モル%、MFR 1.7g/10min) 100重量部に対して、
エチレン含量 81モル%、酢酸ビニル含量 19モル%、酢酸ビニル成分のケン化度 90重量%、MFR 40g/10minのエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物 A(東ソー(株)製、商品名メルセンH H6960)を2.5重量部、
エチレン含量 93モル%、酢酸ビニル含量 7モル%、MFR 180g/10minのエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン680)の50重量%ケン化物 Bを2.5部、
配合した以外は実施例1と同様の方法でドライブレンド物を得た。評価結果を表2に示す。
ただし、ウルトラセン680のケン化は次の方法で行った。苛性ソーダ濃度4重量%のメタノール溶液中にウルトラセン680を加え、温度60℃、窒素雰囲気下で8時間攪拌しケン化反応を行った(固液比2.5)。固液分離後、塩酸濃度1重量%のメタノール溶液を加え、温度45度でケン化反応物の中和反応を行った。最後に、中和反応物の水洗及び乾燥を行い、目的のエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物を得た。
【0039】
【0040】
比較例1
極性基を有する樹脂として、エチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製、商品名 F171B、エチレン含量 32モル%、MFR 1.7g/10min) 100重量部に対して、エチレン含量 89モル%、酢酸ビニル含量 11モル%、MFR 150g/10minのエチレン・酢酸ビニル共重合体(東ソー(株)製、商品名ウルトラセン720)を5重量部配合した以外は実施例1と同様の方法でドライブレンド物を得た。評価結果を表3に示す。
【0041】
比較例2
極性基を有する樹脂として、エチレン・ビニルアルコール共重合体((株)クラレ製、商品名 F171B、エチレン含量 32モル%、MFR 1.7g/10min) 100重量部に対して、エチレン含量 89モル%、酢酸ビニル含量 11モル%、酢酸ビニル成分のケン化度 100重量%、MFR 5.5g/10minのエチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物(東ソー(株)製、商品名メルセンH H6051K)を5重量部配合した以外は実施例1と同様の方法でドライブレンド物を得た。評価結果を表3に示す。退色に時間がかかり、樹脂が成形機内に滞留していることがわかる。
【0042】
比較例3
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物に代えて、エチレン含量 100モル%、酢酸ビニル含量 0モル%、MFR 23g/10minの高圧法低密度ポリエチレン(東ソー(株)製、商品名ペトロセン208)を用い、その配合量を5部とした以外は実施例1と同様の方法でドライブレンド物を得た。評価結果を表3に示す。ヘーズが高く透明性が損なわれていることがわかる。
【0043】
比較例4
エチレン・酢酸ビニル共重合体ケン化物を添加せず、EVOHのみを用いた以外は実施例1と同様の方法で評価を行った。結果を表3に示す。退色に時間時間がかかり、樹脂が成形機内に滞留していることがわかる。
が遅かった。
【0044】