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特許7556230基板処理方法、基板処理装置及び基板処理システム
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】基板処理方法、基板処理装置及び基板処理システム
(51)【国際特許分類】
   G03F 7/40 20060101AFI20240918BHJP
   H01L 21/677 20060101ALI20240918BHJP
   G03F 7/20 20060101ALI20240918BHJP
   H01L 21/027 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
G03F7/40
H01L21/68 A
G03F7/20 521
H01L21/30 570
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020135982
(22)【出願日】2020-08-11
(65)【公開番号】P2022032331
(43)【公開日】2022-02-25
【審査請求日】2023-05-10
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002756
【氏名又は名称】弁理士法人弥生特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】鬼海 貴也
(72)【発明者】
【氏名】井手 裕幸
【審査官】塚田 剛士
(56)【参考文献】
【文献】特開2005-197349(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/40
H01L 21/677
G03F 7/20
H01L 21/027
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含有するレジストパターンが表面に形成された基板を格納する処理容器内の雰囲気を低酸素雰囲気とした状態で、当該レジストパターンに真空紫外光を照射する工程を備え、
前記金属を含有するレジストパターンに用いられるレジストは、当該金属を当該レジストの構成成分として含み、前記真空紫外光の照射前の前記レジストに含まれる前記金属にはリガンド及び水酸基が結合したものが含まれる基板処理方法。
【請求項2】
前記真空紫外光を照射する工程は、前記結合を切断して前記金属の酸化物を生成させる工程であり、
前記金属の酸化物は、酸素を介して前記金属が互いに結合した化合物である請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記金属の酸化物を生成させるために、前記真空紫外光が照射された基板を加熱する工程を備え、前記金属の酸化物は、酸素を介して前記金属が互いに結合した化合物である請求項1または2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記真空紫外光は、波長が160nm未満の光を含む請求項1ないし3のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記真空紫外光は、波長が120nm以上、且つ160nm未満の光を含む請求項4記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記低酸素雰囲気は、前記処理容器内が排気されることにより形成される真空雰囲気か、あるいは窒素ガス以外の不活性ガス雰囲気である請求項1ないし5のいずれか一つに記載の基板処理方法。
【請求項7】
請求項1ないし6のいずれか一つに記載の基板処理方法を実施する基板処理装置において、
処理容器と、
前記処理容器内に設けられ、前記金属を含有するレジストパターンが表面に形成された基板を載置するステージと、
前記処理容器内に低酸素雰囲気を形成する低酸素雰囲気形成機構と、
前記レジストパターンに真空紫外光を照射する光照射部と、
を備え基板処理装置。
【請求項8】
請求項1ないし6のいずれか一つに記載の基板処理方法を実施する基板処理システムにおいて、
基板を格納する搬送容器が載置される搬送容器用のステージと、
請求項記載の基板処理装置と、
酸素を介して前記金属が互いに結合した化合物である前記金属の酸化物を生成させるために、前記基板処理装置で処理された基板を加熱する加熱モジュールと、
前記搬送容器と前記基板処理装置と前記加熱モジュールとの間で前記基板を搬送する搬送機構と、
を備える基板処理システム。
【請求項9】
前記基板に金属を含有するレジスト膜を形成するレジスト膜形成モジュールと、
露光機で露光済みの前記レジスト膜を現像して前記レジストパターンを形成する現像モジュールと、を備え、
前記搬送機構は、前記搬送容器、前記レジスト膜形成モジュール、前記露光機、前記基板処理装置及び前記加熱モジュールの間で前記基板を搬送する請求項記載の基板処理システム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、基板処理装置及び基板処理システムに関する。
【背景技術】
【0002】
半導体デバイスの製造工程において、基板である半導体ウエハ(以下、ウエハと記載する)に対して、フォトリソグラフィによってレジストパターンが形成される。特許文献1には、そのレジストパターンに対して重水素ランプから真空紫外光を照射することにより、パターンの表面荒れを緩和することについて示されている。
【0003】
また、特許文献2では、金属含有レジストによって構成されたレジストパターンが形成されたウエハに対して酸素雰囲気下にて、ピーク波長が172nmであるUV光を照射することが記載されている。この処理によって、レジストの架橋がなされると共に、パターンによって形成される凹部の底部に残存するメタル成分と当該底部をなす下層膜との結合が切られ、その後、ウエハの加熱により当該メタル成分が昇華されることが示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】WO2019/131144
【文献】WO2019/082851
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
本開示は、基板の表面に形成された金属を含有するレジストパターンについて、エッチング耐性を高くすると共に、表面の荒れを低減させることができる技術を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本開示の基板処理装置は、金属を含有するレジストパターンが表面に形成された基板を格納する処理容器内の雰囲気を低酸素雰囲気とした状態で、当該レジストパターンに真空紫外光を照射する工程を備え、
前記金属を含有するレジストパターンに用いられるレジストは、当該金属を当該レジストの構成成分として含み、前記真空紫外光の照射前の前記レジストに含まれる前記金属にはリガンド及び水酸基が結合したものが含まれる。
【発明の効果】
【0007】
本開示によれば、基板の表面に形成された金属を含有するレジストパターンについて、エッチング耐性を高くすると共に、表面の荒れを低減させることができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
図1】本開示の一実施形態である基板処理システムの平面図である。
図2】前記基板処理システムに設けられる光照射モジュールの縦断側面図である。
図3】前記光照射モジュールによる反応を示す模式図である。
図4】他の実施形態に係る基板処理システムの平面図である。
図5】前記基板処理システムの側面図である。
図6】評価試験で取得されたウエハの縦断側面を示す模式図である。
図7A】評価試験で取得されたウエハの縦断側面を示す模式図である。
図7B】評価試験で取得されたウエハの縦断側面を示す模式図である。
図7C】評価試験で取得されたウエハの縦断側面を示す模式図である。
図7D】評価試験で取得されたウエハの縦断側面を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
本開示の基板処理装置の一実施形態である光照射モジュール3を含む、基板処理システム1の平面図を図1に示している。この基板処理システム1は、金属含有レジストであるレジストパターンが表面に形成されたウエハWに対して、真空紫外光(Vacuum Ultra Violet Light:VUV光)の照射処理と加熱処理とを行う。それらの処理を行うことで、当該レジストパターンについて、エッチング耐性を高めると共にラフネス(表面の荒れ)を低減させる。なお、上記の金属含有レジストは金属をレジストの構成成分として含むものであり、不純物としてのみ含むレジストを意味するものではない。このレジストの構成成分である金属としては、例えばスズである。
【0010】
基板処理システム1は大気雰囲気下に設けられており、キャリアブロックD1と処理ブロックD2とにより構成されている。なお以下、大気圧と記載した場合には特に記載無い限り、当該基板処理システムが設けられる環境の大気圧を意味する。キャリアブロックD1と処理ブロックD2とは左右に並び、互いに接続されている。上記したレジストパターンを備えるウエハWは、基板の搬送容器であるキャリアCに格納された状態で、キャリアブロックD1に搬送される。キャリアブロックD1は搬送容器用(キャリアC用)のステージ11を備えている。また、キャリアブロックD1には、ブロックの側壁に形成された開閉部12と、当該開閉部12を介してステージ11に載置されたキャリアCに対してウエハWの搬送を行う搬送アーム13と、が設けられている。
【0011】
処理ブロックD2は、左右方向に伸びるウエハWの搬送路21と、当該搬送路21に設けられる搬送アーム22とを備えており、搬送アーム22及び上記の搬送アーム13は、キャリアCと処理ブロックD2に設けられる各処理モジュールとの間でウエハWを搬送する搬送機構である。そして、搬送路21の前方側、後方側の各々に処理モジュールが複数、左右方向に並べられて設けられている。例えば前方側の各処理モジュールは光照射モジュール3、後方側の各処理モジュールは加熱モジュール23である。また、搬送路21のキャリアブロックD1寄りの位置には、ウエハWが仮置きされる受け渡しモジュールTRSが設けられており、当該受け渡しモジュールTRSを介してキャリアブロックD1と処理ブロックD2との間でウエハWが受け渡される。
【0012】
以下、各処理モジュールの構成について説明する。図2に光照射モジュール3の側面図を示している。光照射モジュール3は、その内部が真空雰囲気とされる処理容器31を備えている。処理容器31は搬送路21に面して開口するウエハWの搬送口を備えており、ウエハWの搬入出を行う場合を除いてゲートバルブ32によって閉鎖される。処理容器31内にはウエハWを載置するステージ33が設けられている。ステージ33は図示しない昇降ピンを備えており、搬送アーム22との間でウエハWを受け渡せるように構成されている。
【0013】
処理容器31の上部には筐体34が設けられている。筐体34内にはステージ33に載置されたウエハWに対して上記したVUV光、即ち波長が10~200nmである光を照射する光照射部35が複数設けられており、ウエハWの表面全体に光(図中に鎖線で表示)が供給される。後の評価試験で詳細に説明するが、光照射部35によってウエハWに照射されるVUV光としては波長160nm未満の光が含まれることが好ましく、より具体的には例えば波長120nm以上の光が含まれることが好ましい。
【0014】
従って、例えばこの120nm~160nm未満の範囲においてピーク波長を有する光を照射する光源を、光照射部35として好ましく用いることができる。具体例を挙げると、重水素ランプについてはピーク波長が150nm台となるように構成することができるので、光照射部35として好ましく用いることができる。その他に、ピーク波長が126nmであるAr(アルゴン)エキシマランプ、ピーク波長が146nmであるKr(クリプトン)エキシマランプを光照射部35として好ましく用いることができる。
【0015】
以上に述べたように、光照射モジュール3ではウエハWに対して比較的短い波長における相対エネルギーが高いスペクトルを有する光を照射するように構成される。この理由について、レジスト中で起こる反応の模式図である図3を参照して説明する。上記したようにウエハWの表面には金属含有レジスト膜であるレジストパターンが形成されているが、このレジスト膜の材料となるレジストは元々、図3中左側に示すようにリガンド(図中にLとして表示)及び水酸基が各々結合した金属(図中にMとして表示)を含んでいる。そして、レジストパターンが形成されるまでの露光及びPEB(Post Exposure Bake)によって、金属MとリガンドLとの結合の切断(即ち、リガンドLの脱離)、それに続く金属Mと上記の水酸基を構成する酸素原子との結合(金属Mの再結合)及び水酸基同士の脱水縮合が起きる。そのような一連の反応が進行することで、図3中右側に示すように各金属Mは酸化物としてレジストパターン中に存在することになる。酸化物となった金属Mは、酸素原子を介することで互いに結合した状態となるため、酸化物となる前よりも強固な化合物としてレジストパターン中に存在する。
【0016】
従ってレジストパターンにおいて上記の酸化物化されていない金属Mが多く含まれる場合にはパターンの硬度が低いことになり、その場合、レジストパターンを用いてレジスト膜の下側に形成されている下層膜をドライエッチングする際に、当該レジストパターンについては十分なエッチング耐性が得られない。つまり、レジストパターンも大きくエッチングされてしまい、エッチング中にレジストパターンの線幅であるCD(Critical Dimension)が小さくなる、いわゆるパターン細りが発生してしまう。
【0017】
また、レジストパターンの表面における酸化物化されていない金属Mは、酸素を介した他の金属Mとの結合がなされていないことから、パターンの形成後に当該表面から脱離しやすい。つまり酸化物化されていない金属Mが多いと、レジストパターンの表面の荒れが大きくなる。これらのレジストパターンについての細り及び表面の荒れは、ドライエッチングによって上記の下層膜に形成されるパターンの形状に影響するため、当該下層膜のパターンについて、所望の形状にすることができなくなってしまうおそれが有る。
【0018】
そのような不具合を防ぐために、光照射モジュール3にてウエハWに上記した光を照射し、金属Mの酸化物化を促進する。詳しく述べると、波長が小さい光成分は高いエネルギーを有するので、その高いエネルギーを受けたレジストパターンにおいては、リガンドLが結合したままの状態の金属Mと、当該リガンドLとの結合が切断される。さらに、そのように高いエネルギーを受けていることで、結合が切断された金属Mは水酸基の酸素原子と再結合すると共に上記の脱水縮合が起こる。つまり、光照射によって図3に示した金属Mが酸化物となる反応が促進される。それにより、レジストパターンの硬度が高くなり、上記したパターン細り及び表面の荒れを低減させる。
【0019】
ところで背景技術の項目で述べたように特許文献1においては、重水素ランプからレジストパターンにVUV光を含む光が照射される。そのように重水素ランプから光を照射するのは、重水素ランプのスペクトルの波長域が比較的広く、レジストパターンで様々な反応を起こして流動性を高くすることで、パターンの表面の荒れの改善効果を得るためであるとされている。しかし特許文献1ではレジストパターンが金属含有レジストにより構成されることについては記載されておらず、従って波長が比較的小さい光を用いることによって図3で述べた金属含有レジストの反応を促進させるということには着眼されていない。
【0020】
即ち、図3で述べた反応機序に着目して、金属含有レジストにおけるパターンのエッチング耐性を向上させると共に表面荒れを低減させる本技術は、特許文献1とは異なる技術である。また、特許文献2では上記したようにウエハWの周囲を酸素雰囲気としてVUV光を含む光をレジストパターンに照射するが、VUV光は酸素に吸収される。従って特許文献2で開示されている技術は、VUV光により図3で述べた反応を進行させるものではなく、本技術とは異なる。
【0021】
光照射モジュール3の構成の説明に戻る。光照射モジュール3の処理容器31には、排気管41の上流端が開口している。排気管41の下流側は排気機構42に接続されており、当該排気機構42は、処理容器31内の排気量を調整可能な真空ポンプにより構成されている。上記したように光照射モジュール3ではVUV光を照射してレジストパターンを処理するため、排気機構42によってVUV光を吸収する大気成分(窒素及び酸素)を処理容器31内から排気して除去し、処理容器31内に低酸素雰囲気として真空雰囲気が形成されるようにしている。
【0022】
また処理容器31には、ガス供給管43の下流端が開口している。ガス供給管43の上流側は分岐して、N(窒素)ガスの供給源44、Ar(アルゴン)ガスの供給源45に各々接続されている。Arガスは、上記した排気機構42による排気時に処理容器31内に供給され、大気を処理容器31内からパージすることによって、より確実に除去する役割を果たす。Nガスはゲートバルブ32を開放する直前に処理容器31内に供給されることで、真空雰囲気形成後の処理容器31内を大気圧と同等の圧力に復帰させ、当該ゲートバルブ32の開放を可能にする役割を有する。排気機構42及びArガス供給源45は、低酸素雰囲気形成機構を構成する。
【0023】
図1に戻って、加熱モジュール23について説明する。この加熱モジュール23には、光照射モジュール3で処理済みのウエハWが搬送される。図3で説明したように金属Mの酸化物の生成には、金属MからリガンドLが脱離した後の水酸基同士の脱水縮合が寄与する。この加熱モジュール23における加熱処理で当該脱水縮合を起こし、金属Mの酸化物の生成を促進させる。
【0024】
加熱モジュール23は、ウエハWが各々載置される熱板24と、冷却板25と、を備える。冷却板25は、搬送路21寄りの位置(モジュールの手前側)と、モジュール奥側の熱板24の上方位置との間を移動自在であり、モジュールの手前側において搬送アーム22の昇降動作により、当該冷却板25に対してウエハWが受け渡される。熱板24はヒーター及びウエハWを支持する昇降ピンを備えており、載置されたウエハWを所望の温度に加熱すると共に、モジュールの奥側に移動した冷却板25との間でウエハWの受け渡しを行えるように構成されている。上記の脱水縮合を起こすために、熱板24は例えば170℃~200℃とされる。冷却板25は冷媒の流路を備えており、熱板24により加熱されたウエハWは、搬送アーム22に受け渡されるまでに冷却板25に載置されて冷却される。
【0025】
続いて、図1に示す制御部10について説明する。この制御部10はコンピュータであり、コンパクトディスク、ハードディスク、メモリーカード及びDVDなどの記憶媒体に格納されたプログラムがインストールされる。インストールされたプログラムにより、基板処理システム1の各部に制御信号が出力されるように、プログラムには命令(各ステップ)が組み込まれている。そして、この制御信号によって、各搬送アームによるウエハWの搬送、各処理モジュールによるウエハWの処理が行われる。
【0026】
続いて、基板処理システム1におけるウエハWの搬送経路及び処理について説明する。ウエハWはキャリアC→搬送アーム13→受け渡しモジュールTRS→搬送アーム22の順で搬送される。そして当該ウエハWは、Nガスが供給されることによって大気圧と同等の圧力とされた光照射モジュール3の処理容器31内に搬送され、ステージ33に載置される。そのようにウエハWを格納した処理容器31内が排気されると共に、当該処理容器31内にArガスが例えば10L/分~30L/分で供給される。そして処理容器31内が例えば8000Pa~12000Paの真空雰囲気となると、光照射部35からウエハWにVUV光が照射され、図3で述べたように金属Mの酸化物の生成が促進される。
【0027】
その後、VUV光の照射及び処理容器31内の排気が停止し、Arガスに代わってNガスが処理容器31内に供給されて処理容器31内が大気圧と同等の圧力となる。然る後、ウエハWは搬送アーム22によって光照射モジュール3から搬出され、加熱モジュール23の冷却板25を介して熱板24に搬送され、例えば60秒間、ウエハWが熱板24に載置され、既述した温度で加熱される。その後ウエハWは昇降ピンの上昇により熱板24から離され、然る後、冷却板25を介して搬送アーム22に受け渡され、受け渡しモジュールTRS→搬送アーム13の順で搬送されて、キャリアCに戻される。ウエハWが戻されたキャリアCはエッチング装置に搬送され、当該ウエハWにエッチングガスが供給されて、レジストパターンをマスクとして下層膜がエッチングされる。
【0028】
上記したように光照射モジュール3は、上記したようにVUV光を、金属含有レジストからなるレジストパターンが表面に形成されたウエハWに照射することで金属Mの酸化物化を促進することで、レジストパターンのエッチング耐性を高めると共に表面の荒れを低減させる。従って、下層膜に形成されるパターンの形状を所望の形状にすることができる。そして基板処理システム1については、VUV光の照射後に加熱モジュール23にてウエハWが加熱される。その加熱によってより確実に金属Mの酸化物化がなされるので、上記のエッチング耐性についてより高くすることができると共に、上記の表面の荒れについてより低減される。
【0029】
ところで、基板処理システムとしてはレジスト膜の形成及び現像によるレジストパターンの形成についても行われるように構成されていてもよい。図4図5は、そのレジストパターンの形成及び上記した下層膜の形成を行うことができる基板処理システム5を示しており、以下、基板処理システム1に対する差異点を中心に説明する。基板処理システム5は、キャリアブロックD1、処理ブロックD5、インターフェイスブロックD3が左右方向にこの順に接続されて構成されている。インターフェイスブロックD3には例えばEUV(Extreme ultraviolet:極端紫外線)によって、パターンに沿ってウエハWを露光する露光機D4が接続されている。
【0030】
処理ブロックD5について述べると、階層E1~E6が積層された構成とされている。搬送路21のキャリアブロックD1寄りの位置に階層E1~E6に跨がるタワーT1が設けられ、タワーT1は多段に積層された受け渡しモジュールTRSを含む。また、搬送アーム50が設けられ、タワーT1の受け渡しモジュールTRS間でウエハWを搬送する。
【0031】
階層E5、E6の各々は、基板処理システム1における処理ブロックD2と概ね同様に構成され、搬送アーム22を備えている。ただし、光照射モジュール3及び加熱モジュール23が共に搬送路21の後方側に設けられており、搬送路21の前方側にはウエハWの表面に現像液を供給して現像を行う現像モジュール51が、搬送路21に沿って複数設けられている。また多数設けられる加熱モジュール23のうちのいくつかは、PEBを行うための加熱モジュールとされる。
【0032】
階層E3、E4は、光照射モジュール3、加熱モジュール23が設けられないこと、及び現像モジュール51の代わりにウエハWの表面に薬液として金属含有レジストを供給してレジスト膜を形成するレジスト膜形成モジュールが設けられることを除き、階層E5、E6と同様の構成である。階層E1、E2は、レジスト膜形成モジュールの代わりに、各々薬液を供給することでSOC膜と呼ばれる炭素を主成分とする膜を形成する第1の成膜モジュール、SiARCと呼ばれるシリコンを含んだ反射防止膜を形成する第2の成膜モジュールを備える。そのような違いを除き、階層E1、E2は階層E3、E4と同様に構成されている。上記の反射防止膜は、レジスト膜をマスクとしてエッチングされる下層膜である。なお、階層E1~E4に設けられる加熱モジュール23は、各薬液の構成成分であり膜に残留している溶剤を除去するために用いられる。
【0033】
インターフェイスブロックD3は、複数のモジュールが互いに積層されて構成されるタワーT2、T3、T4を備えている。タワーT2~T4に含まれるモジュールの詳細の説明は省略するが、タワーT2のモジュールとしては多段に積層された受け渡しモジュールTRSが含まれる。図中の符号61、62、63はタワーT2、T3間、タワーT3、T4間、タワーT2と露光機D4間で、ウエハWを夫々受け渡す搬送アームである。搬送アーム13、22、50、61~63は、キャリアCと処理ブロックD2に設けられる各処理モジュールと、露光機D4とのの間でウエハWを搬送する搬送機構である。
【0034】
基板処理システム5においてウエハWは、キャリアCから搬送アーム22を介してタワーT1に搬送された後、搬送アーム50を介して階層E1またはE2に搬入される。そして当該ウエハWは搬送アーム22により、第1の成膜モジュール→加熱モジュール23→第2の成膜モジュール→加熱モジュール23の順で搬送されて、SOC膜、下層膜であるSiARC膜が、順に形成される。その後、ウエハWは、搬送アーム50によりタワーT1のTRS間を搬送されて、階層E3またはE4に搬入され、搬送アーム22によりレジスト膜形成モジュール→加熱モジュール23→タワーT2の順で搬送され、レジスト膜が形成される。然る後、ウエハWは、搬送アーム61~63によりタワーT2~T4間を受け渡されて、露光機D4に搬送されて露光される。
【0035】
露光済みのウエハWは、搬送アーム61~63によりタワーT2~T4間を受け渡されて、階層E5またはE6に搬入され、搬送アーム22により加熱モジュール23→現像モジュール51→光照射モジュール3→加熱モジュール23の順で搬送される。それにより、PEB、現像処理によるレジストパターンの形成、レジストパターンへのVUV光照射、VUV光照射後の加熱が順に行われる。その後、ウエハWは、タワーT1、搬送アーム50、13を介してキャリアCに戻される。
【0036】
なお、VUV光照射後の加熱処理としては、VUV光の照射によって金属MからリガンドLが脱離した状態のレジストパターンに行うことができればよいため、例えば光照射モジュール3のステージ33にヒーターを設けてVUV光の照射中に加熱を行ってもよい。つまり、VUV光を照射するタイミングと加熱を行うタイミングとが互いに重なっていてもよい。また、VUV光の照射と、VUV光照射後の加熱処理とは別個の基板処理システムで行われてもよい。つまり基板処理システム1の光照射モジュール3でVUV光を照射した後、キャリアCにウエハWを格納し、キャリアCを別の基板処理システムに搬送して、当該基板処理システムに含まれる加熱モジュール23にて処理を行ってもよい。即ち、VUV光照射後の加熱処理としては下層膜のドライエッチングを開始するまでに行えばよく、例えば下層膜のドライエッチングを行うモジュールに組み込まれたヒーターを用いて、エッチング前にウエハWを加熱することで行ってもよい。
【0037】
また、光照射モジュール3ではVUV光がウエハWに到達して、既述した反応を進行させるために処理容器31内に低酸素雰囲気として既述した圧力範囲の真空雰囲気が形成されるようにしているが、この低酸素雰囲気としては真空雰囲気であることに限られない。例えば処理容器31内をArガスやHe(ヘリウム)ガスなどのNガス以外の不活性ガス雰囲気として処理を行うことができ、その場合、処理容器31内に真空を形成しなくてもよく、大気圧と同等の圧力でウエハWを処理するようにしてもよい。また、既述した例では処理容器31内を排気して真空雰囲気を形成する際に、より確実に大気が除去されるようにArガスの供給を行っているが、このようなガス供給を行わなくてもよい。
【0038】
基板としてはウエハWに限られず、例えばフラットパネルディスプレイ製造用のガラス基板などであってもよい。なお、今回開示された実施形態は、全ての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。上記の実施形態は、添付の特許請求の範囲及びその趣旨を逸脱することなく、様々な形態で省略、置換、変更されてもよい。
【0039】
〔評価試験〕
続いて、本技術に関連して行われた評価試験について説明する。
・評価試験1
評価試験1として、シリコンであるウエハWに、SOC膜、SiARCである反射防止膜、金属含有レジストからなるレジスト膜を順に形成し、当該レジスト膜を露光、現像してレジストパターンを形成した。そしてこのウエハWを平面視縦横に分割して多数のチップとした。そのうちの複数のチップの表面に対して、光照射モジュール3と概ね同様の構成の試験装置を用いて光照射を行った。光照射部35としては波長が120nm~400nmの光を放射可能な重水素ランプを用いたが、処理毎に当該光照射部35を構成する窓部の材料を変更した。ウエハWに向かう光のうち、窓部の材料によっては一部の波長の光が遮蔽される。つまり、チップによっては上記した範囲の波長のうち、一部の範囲の波長の光のみが照射されるようにした。
【0040】
上記の窓部の材料としてはMgF(フッ化マグネシウム)、合成石英ガラスまたはホウケイ酸ガラスである。MgFの窓部を用いた場合は波長120nm~400nmの光が、合成石英ガラスの窓部を用いた場合は波長160nm~400nmの光が、ホウケイ酸ガラスの窓部を用いた場合は波長270nm~400nmの光が、夫々チップに照射される。MgFの窓部、合成石英ガラスの窓部、ホウケイ酸ガラスの窓部を夫々用いて光照射されたサンプル(以下、MgFサンプル、合成石英サンプル、ホウケイ酸サンプルと記載する)について、SEM(走査型電子顕微鏡)により縦断面の画像を取得した。また、そのような光照射を行わなかったチップ(以下、比較用サンプルとする)についても、SEMにより縦断面の画像を取得した。そして、取得した各画像について比較した。
【0041】
さらに比較用サンプル、MgFサンプル、合成石英サンプル、ホウケイ酸サンプルの各々について、水溶液であるTMAH(水酸化テトラメチルアンモニウム)に60秒間浸漬することでレジストパターンのウエットエッチングを行った。そして、そのようにウエットエッチングを行った各サンプルについて10秒間洗浄処理を行い、SEMにより縦断面の画像を取得して互いに比較した。
【0042】
エッチング前の各サンプルの画像を比較した結果、レジストパターン71の形状について大きな差違は確認されなかった。より具体的に述べると、各サンプルのレジストパターン71の高さは略同じであると共に、概ね矩形状であった。このエッチング前の各サンプルの画像の中から代表して、比較用サンプルの画像から得られた模式図を図6に示している。図中、レジストパターンを71、反射防止膜(SiARC膜)を72、SOC膜を73として夫々示している。
【0043】
エッチング及び洗浄後における各サンプルの画像を比較した結果、レジストパターン71の形状について、比較的大きな差が見られた。その洗浄後における各サンプルの画像から得られた模式図を図7A図7Dに示しており、図7A図7B図7C図7Dが夫々、比較用サンプル、MgFサンプル、合成石英サンプル、ホウケイ酸サンプルを表している。なお、各レジストパターン71の高さの違いを示すために図7A図7Dでは、図6に示したエッチング前の比較用サンプルにおけるレジストパターン71の底の高さ、上端面の高さに夫々点線、一点鎖線を引いて表示している。
【0044】
ホウケイ酸サンプルのレジストパターン71については、表層がエッチングされることで、矩形性が崩れると共に高さが低下していた。合成石英サンプルのレジストパターン71についても表層がエッチングされており、矩形性は比較的高いが、高さの低下及びCDの低下が見られた。また、比較用サンプルのレジストパターン71についても表層がエッチングされており、高さの低下及びCDの低下が見られた。MgFサンプルのレジストパターン71については、他の各サンプルよりもエッチングが抑制されており、エッチング前と略同様の形状であった。
【0045】
各サンプルのレジストパターン71においてエッチングされた部分は、図3で説明した金属Mの酸化物化が不十分となっていると考えられる。上記のように波長120nm~400nmの光が照射されたMgFサンプルは金属Mの酸化物化が十分になされているが、波長160nm~400nmの光が照射された合成石英サンプル、波長270nm~400nmの光が照射されたホウケイ酸サンプルは、この酸化の進行度が小さい。これは、160nm~400nmの波長の光については金属MとリガンドLとの結合を切断可能であったとしても、金属Mを酸素と再結合させるにはエネルギーが十分では無かったことによると考えられる。そして、この評価試験1からは金属Mの酸化を進行させるためには120nm~160nm未満の波長の光の寄与が大きく、当該範囲の波長の光をウエハWに照射することが好ましいことが確認された。
【0046】
・評価試験2
評価試験2として複数のウエハWに夫々、評価試験1と同様の各膜を形成し、レジスト膜に露光、現像を行うことでレジストパターン71を形成した。レジストパターン71を形成した複数枚のウエハWについて互いに異なる処理条件で、重水素ランプにより波長120nm~400nmの光照射を行った。詳しく述べると、光照射時において処理容器31内に供給するArガスの流量と処理容器31内の圧力との組み合わせを、ウエハW毎に変更して処理を行った。
【0047】
そして、光照射を行ったウエハW、光照射を行わなかったウエハWの各レジストパターン71について撮像し、CDと、パターンの溝幅の凹凸の指標であるLWR(Line Width Roughness)と、を測定した。その後、各ウエハWにエッチングガスを供給し、レジストパターン71をマスクとして反射防止膜72をエッチングすることでパターンを形成した。この反射防止膜72のパターンについて撮像し、CDとLWRとを測定した。以降は、現像後、エッチング前に取得したレジストパターン71のCD、LWRを総称してADI(After Development Inspection)、エッチング後に取得した反射防止膜72のCD、LWRを総称してAEI(After Etching Inspection)として記載する。さらに、これらのADI、AEIについてCDの差(ΔCD=ADIのCD-AEIのCD)を算出した。
【0048】
上記した光照射時のArガスの流量と処理容器31内の圧力との組み合わせは5通りであり、この5通りの処理条件による上記のADI、AEI、ΔCDの取得を評価試験2-1~2-5とする。具体的に処理条件を述べると、評価試験2-1はArガスの流量を20L/分、処理容器31内の圧力を10000Pa、評価試験2-2はArガスの流量を15L/分、処理容器31内の圧力を10000Pa、評価試験2-3はArガスの流量を30L/分、処理容器31内の圧力を10000Paとした。そして、評価試験2-4はArガスの流量を20L/分、処理容器31内の圧力を8000Pa、評価試験2-5はArガスの流量を20L/分、処理容器31内の圧力が12000Paとした。なお、ウエハWへの光照射については、50mJ/cmとなるように行った。また、光照射を行わないウエハWに対するADI、AEI、ΔCDの取得を比較試験2とする。
【0049】
下記の表1は、評価試験2-1~2-5及び比較試験2の結果をまとめたものであり、表中の各数値の単位はnmである。この表1に示されるように、評価試験2-1~2-5のAEIは比較試験2のAEIよりも大きく、また評価試験2-1~2-5のΔCDは、比較試験2のΔCDよりも小さい。従って比較試験2に比べると、評価試験2-1~2-5ではエッチング中におけるレジストパターンのパターン細り(CDの減少)が抑制され、それにより比較試験2に比べて反射防止膜72のCDを大きくすることができることが示された。上記の評価試験1の結果と、この評価試験2の結果とから、120nm~160nm未満のVUV光を照射することで、レジストパターンのエッチング耐性を高くすることができることが分かる。
【表1】
【0050】
・評価試験3
評価試験2と同様に複数のウエハWに各々レジストパターン71を形成した後、ウエハW毎に異なる処理を行った後にウエハWの上面を撮像し、ADIを測定した。評価試験3-1として、加熱モジュール23による加熱を行った後にADIを測定した。従って、この評価試験3-1では実施形態で述べた処理と異なり、VUV光の照射を行っていない。評価試験3-2として、波長120nm~400nmの光を照射した後にADIを測定した。評価試験3-3として、波長120nm~400nmの光の照射後、加熱モジュール23による加熱を行った後にADIを測定した。また、比較試験3として、レジストパターン71の形成後、光照射及び加熱処理を行っていないウエハWについてADIを測定した。評価試験3-2、3-3において、ウエハWへの光照射は50mJ/cmで行った。また、評価試験3-1、3-3において、ウエハWは160℃に加熱された熱板に60秒間載置することで行った。評価試験3-3においてウエハWのへの光照射の終了後、熱板に載置されるまでの時間は3分とした。
【0051】
下記の表2は、評価試験3-1~3-3及び比較試験3の結果をまとめたものであり、表中の各数値の単位はnmである。表2に示すように評価試験3-1~3-3のCDは、比較試験3のCDよりも大きく、評価試験3-1~評価試験3-3のうち、評価試験3-3のCDが最も大きく、次いで評価試験3-2のCDが大きい。レジストパターン71の表層からの酸化物化されていない金属Mの脱離が、評価試験3-3、3-2、3-1の順に少ないため、CDについてこのような結果となったと考えられる。
【0052】
また、LWRが小さいほどパターンの表面の荒れが小さいが、表2に示すように当該LWRについては、評価試験3-3、3-2は比較試験3に比べて小さく、評価試験3-3のLWRが最も小さかった。上記の評価試験1の結果とこの評価試験3の結果とから、120nm~160nm未満のVUV光を照射することでレジストパターン71の硬度が高くなると共に表面の荒れが抑制される。そして、さらに当該VUV光の照射後の加熱処理を行うことによって、よりパターンの硬度を高くし、表面の荒れを低減させることができることが分かる。
【表2】
【符号の説明】
【0053】
W ウエハ
31 処理容器
71 レジストパターン
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7A
図7B
図7C
図7D