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特許7556239コンピュータプログラム、不良要因分析方法及び不良要因分析装置
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】コンピュータプログラム、不良要因分析方法及び不良要因分析装置
(51)【国際特許分類】
   G05B 19/418 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
G05B19/418 Z
【請求項の数】 5
(21)【出願番号】P 2020149327
(22)【出願日】2020-09-04
(65)【公開番号】P2022043848
(43)【公開日】2022-03-16
【審査請求日】2023-07-11
(73)【特許権者】
【識別番号】000005083
【氏名又は名称】株式会社プロテリアル
(74)【代理人】
【識別番号】100114557
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 英仁
(74)【代理人】
【識別番号】100078868
【弁理士】
【氏名又は名称】河野 登夫
(72)【発明者】
【氏名】八木 崇志
(72)【発明者】
【氏名】斎藤 匡浩
(72)【発明者】
【氏名】小野 眞
【審査官】黒石 孝志
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-057290(JP,A)
【文献】特開2018-163622(JP,A)
【文献】特開2019-74969(JP,A)
【文献】特開2020-123274(JP,A)
【文献】国際公開第2020/194827(WO,A1)
【文献】特開2017-81071(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G05B 19/418
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
製造設備を用いた製品の製造に係る複数の製造条件データ又は該製造設備の動作を監視して得られる複数の監視データのうち少なくとも一方を取得するステップと、
前記複数の製造条件データ又は監視データが入力された場合、前記製造設備にて製造される製品の品質不良を示す品質データを出力するように学習された学習モデルに、取得した前記複数の製造条件データ又は監視データを入力することによって、製造される製品の品質不良又は製品若しくは前記製造設備の異常を予測するステップと、
前記学習モデルから出力される前記品質データに対する、前記複数の製造条件データ又は監視データそれぞれの寄与度を、XAIとしての前記学習モデルを用いて算出するステップと
前記品質不良の品質データに対する前記複数の製造条件データ又は監視データそれぞれの前記寄与度の経時変化を示すグラフデータを作成するステップと
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
【請求項2】
前記寄与度はSHAP値である
請求項1に記載のコンピュータプログラム。
【請求項3】
算出された前記寄与度に基づいて、前記製造設備の動作を制御するための情報を算出す
る処理を前記コンピュータに実行させる
請求項1又は請求項2に記載のコンピュータプログラム。
【請求項4】
製造設備を用いた製品の製造に係る複数の製造条件データ又は該製造設備の動作を監視して得られる複数の監視データを取得するステップと、
前記複数の製造条件データ又は監視データが入力された場合、前記製造設備にて製造される製品の品質不良を示す品質データを出力するように学習された学習モデルに、取得した前記複数の製造条件データ又は監視データを入力することによって、製造される製品の品質不良又は製品若しくは前記製造設備の異常を予測するステップと、
前記学習モデルから出力される前記品質データに対する、前記複数の製造条件データ又は監視データそれぞれの寄与度を、XAIとしての前記学習モデルを用いて算出するステップと
前記品質不良の品質データに対する前記複数の製造条件データ又は監視データそれぞれの前記寄与度の経時変化を示すのグラフデータを作成するステップと
を備える不良要因分析方法。
【請求項5】
製造設備を用いた製品の製造に係る複数の製造条件データ又は該製造設備の動作を監視して得られる複数の監視データを取得する取得部と、
前記複数の製造条件データ又は監視データが入力された場合、前記製造設備にて製造される製品の品質不良を示す品質データを出力するように学習された学習モデルと、
前記学習モデルに、取得した前記複数の製造条件データ又は監視データを入力することによって、製造される製品の品質不良又は製品若しくは前記製造設備の異常を予測する演算部と
を備え、
更に、前記演算部は、
前記学習モデルから出力される前記品質データに対する、前記複数の製造条件データ又は監視データそれぞれの寄与度を、XAIとしての前記学習モデルを用いて算出し、
前記品質不良の品質データに対する前記複数の製造条件データ又は監視データそれぞれの前記寄与度の経時変化を示すグラフデータを作成する
不良要因分析装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、コンピュータプログラム、不良要因分析方法及び不良要因分析装置に関する。
【背景技術】
【0002】
各種製品の製造工程において、製品を高品質及び高効率に生産するためには、不良の発生要因を速やかに特定し、製造工程を正常な状態に復帰させることが重要である。
【0003】
不良の発生要因を特定するために、製造現場では大量の製造データに基づく統計的な分析手法が広く用いられている。例えば、1か月間の製造データを解析して、その平均的な品質変動要因を抽出することが行われている。
【0004】
統計的な分析技術に関して、特許文献1には、一定期間に製造される相当数の製品について、目的変数である製品単位毎の評価量を収集し、収集された評価量に対して、相加平均又は重回帰分析を用いて、説明変数である各部品ロットの寄与度を算出することにより不良の発生要因を抽出する品質管理方法が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2015-45942号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、特許文献1に開示された品質管理方法においては、製品の評価量を収集する期間を短くした場合、評価量のデータが不足し、不良の要因を特定することができない。つまり、製造データから不良の発生要因を速やかに特定することができないという問題がある。
【0007】
本発明の目的は、製品の製造に係る製造条件データ又は製造設備の動作を監視して得られる監視データを取得し、機械学習した学習モデルを利用して、任意期間において製品の品質変動要因を定量的かつ迅速に抽出することが可能なコンピュータプログラム、不良要因分析方法及び不良要因分析装置を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本態様に係るコンピュータプログラムは、製造設備を用いた製品の製造に係る複数の製造条件データ又は該製造設備の動作を監視して得られる複数の監視データのうち少なくとも一方を取得するステップと、前記複数の製造条件データ又は監視データが入力された場合、前記製造設備にて製造される製品の品質不良を示す品質データ又は製品若しくは前記製造設備の異常の有無を示す異常スコアデータを出力するように学習された学習モデルに、取得した前記複数の製造条件データ又は監視データを入力することによって、製造される製品の品質不良又は製品若しくは前記製造設備の異常を予測するステップと、前記学習モデルから出力される前記品質データ又は前記異常スコアデータに対する、前記複数の製造条件データ又は監視データそれぞれの寄与度を、前記学習モデルを用いて算出するステップとをコンピュータに実行させる。
【0009】
本態様に係る不良要因分析方法は、製造設備を用いた製品の製造に係る複数の製造条件データ又は該製造設備の動作を監視して得られる複数の監視データを取得するステップと、前記複数の製造条件データ又は監視データが入力された場合、前記製造設備にて製造される製品の品質不良を示す品質データ又は製品若しくは前記製造設備の異常の有無を示す異常スコアデータを出力するように学習された学習モデルに、取得した前記複数の製造条件データ又は監視データを入力することによって、製造される製品の品質不良又は製品若しくは前記製造設備の異常を予測するステップと、前記学習モデルから出力される前記品質データ又は前記異常スコアデータに対する、前記複数の製造条件データ又は監視データそれぞれの寄与度を、前記学習モデルを用いて算出するステップとを備える。
【0010】
本態様に係る不良要因分析装置は、製造設備を用いた製品の製造に係る複数の製造条件データ又は該製造設備の動作を監視して得られる複数の監視データを取得する取得部と、前記複数の製造条件データ又は監視データが入力された場合、前記製造設備にて製造される製品の品質不良を示す品質データ又は製品若しくは前記製造設備の異常の有無を示す異常スコアデータを出力するように学習された学習モデルと、前記学習モデルに、取得した前記複数の製造条件データ又は監視データを入力することによって、製造される製品の品質不良又は製品若しくは前記製造設備の異常を予測する演算部とを備え、更に、前記演算部は、前記学習モデルから出力される前記品質データ又は前記異常スコアデータに対する、前記複数の製造条件データ又は監視データそれぞれの寄与度を、前記学習モデルを用いて算出する。
【発明の効果】
【0011】
上記によれば、製品の製造に係る製造条件データ又は製造設備の動作を監視して得られる監視データを取得し、機械学習した学習モデルを利用して、任意期間において製品の品質変動要因を定量的かつ迅速に抽出することができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
図1】実施形態1に係る不良要因分析システムの構成例を示す説明図である。
図2】実施形態1に係る品質予測モデルを示す概念図である。
図3】実施形態1に係る品質予測モデルの生成処理手順を示すフローチャートである。
図4】実施形態1に係る不良要因分析装置の処理手順を示すフローチャートである。
図5】寄与度を示す概念図である。
図6】実施形態1に係る要因分析処理の手順を示すフローチャートである。
図7】要因分析画面の一例を示す模式図である。
図8】不良発生状況棒グラフの一例を示す模式図である。
図9】要因分析チャートの一例を示す模式図である。
図10】寄与度チャートの一例を示す模式図である。
図11】変形例に係る要因分析画面の一例を示す模式図である。
図12】実施形態2に係る不良要因分析システムの構成例を示す説明図である。
図13】実施形態2に係る異常検知モデルを示す概念図である。
図14】実施形態2に係る異常検知モデルの生成処理手順を示すフローチャートである。
図15】実施形態2に係る不良要因分析装置の処理手順を示すフローチャートである。
図16】実施形態2に係る要因分析処理の手順を示すフローチャートである。
図17】異常スコアチャートの一例を示す模式図である。
図18】要因抽出結果棒グラフの一例を示す模式図である。
図19】主要因の実測データチャートの一例を示す模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0013】
本開示の実施形態に係るコンピュータプログラム、不良要因分析方法及び不良要因分析装置を、以下に図面を参照しつつ説明する。なお、本開示はこれらの例示に限定されるものではなく、特許請求の範囲によって示され、特許請求の範囲と均等の意味及び範囲内でのすべての変更が含まれることが意図される。また、以下に記載する実施形態の少なくとも一部を任意に組み合わせてもよい。
【0014】
図1は、実施形態1に係る不良要因分析システムの構成例を示す説明図である。不良要因分析システムは、本実施形態1に係る不良要因分析装置1と、製造設備4とを含む。
【0015】
製造設備4は、磁石製品等の製品Pを製造する装置である。製造設備4には、製品Pの製造に係る複数の製造条件データが設定される。また、製造設備4には、当該製造設備4の動作を監視する監視装置41が設けられている。製造設備4は、複数の製造条件データと、製造設備4の動作を監視して得られる複数の監視データとを不良要因分析装置1へ出力する。製造設備4は、常時、リアルタイムで製造条件データ及び監視データを不良要因分析装置1へ出力するように構成するとよい。
【0016】
不良要因分析装置1は、製造設備4から出力された複数の製造条件データ及び監視データを取得し、後述の品質予測モデル2を利用して製品Pの品質不良の要因を分析する装置である。
【0017】
不良要因分析装置1は、パーソナルコンピュータ又はサーバ装置等のコンピュータである。不良要因分析装置1は、演算部11と、メモリ12と、記憶部13と、操作部14と、表示部15と、取得部16とを備える。なお、不良要因分析装置1は、複数のコンピュータを含んで構成されるマルチコンピュータであってよい。また。サーバクライアントシステムや、クラウドサーバ、ソフトウェアによって仮想的に構築された仮想マシンであってもよい。以下の説明では、不良要因分析装置1が1台のコンピュータであるものとして説明する。
【0018】
演算部11は、例えばCPU(Central Processing Unit)、MPU(Micro-Processing Unit)、GPU(Graphics Processing Unit)、GPGPU(General-purpose computing on graphics processing units)、TPU(Tensor Processing Unit)等の演算処理装置である。なお、演算部11は、量子コンピュータを用いて構成してもよい。演算部11は、記憶部13に記憶されたコンピュータプログラム131を読み出して実行することにより、製品Pの品質を予測し、不良要因を分析する等、本実施形態1に係る不良要因分析方法を実施する。
【0019】
メモリ12は、例えばDRAM(Dynamic RAM)、SRAM(Static RAM)等の揮発性メモリであり、演算部11の演算処理を実行する際に記憶部13から読み出されたコンピュータプログラム131、又は演算部11の演算処理によって生ずる各種データを一時記憶する。
【0020】
記憶部13は、例えば、ハードディスク、EEPROM(Electrically Erasable Programmable ROM)、フラッシュメモリ等の記憶装置である。記憶部13は、演算部11が実行する各種のプログラム、及び、演算部11の処理に必要な各種のデータを記憶する。本実施形態1において記憶部13は、演算部11が実行するコンピュータプログラム131と、製品Pの品質を予測すると共に品質不良の要因を分析するための品質予測モデル2とを記憶する。また、記憶部13は、品質予測モデル2を生成するためのデータセットを記憶するデータベース3として機能する。
【0021】
コンピュータプログラム131は、例えば記録媒体10にコンピュータ読み取り可能に記録されている。記憶部13は、図示しない読出装置によって記録媒体10から読み出されたコンピュータプログラム131を記憶する。記録媒体10はフラッシュメモリ等の半導体メモリ、光ディスク、磁気ディスク、磁気光ディスク等である。また、コンピュータプログラム131は、不良要因分析装置1の製造段階において記憶部13が記憶する態様でもよい。更に、通信網に接続されている図示しない外部サーバから本実施形態1に係るコンピュータプログラム131をダウンロードし、記憶部13に記憶させる態様であってもよい。
【0022】
操作部14は、ユーザからの操作を受け付ける入力装置である。入力装置は、例えばキーボード又はポインティングデバイスである。
【0023】
表示部15は、不良要因の分析結果を出力する出力装置である。出力装置は、例えば液晶ディスプレイ又はELディスプレイである。
【0024】
取得部16は、製造設備4から出力される製造条件データ及び監視データを取得するインタフェースである。
【0025】
図2は、実施形態1に係る品質予測モデル2を示す概念図である。品質予測モデル2は、複数の製造条件データ及び監視データが入力された場合、製造設備4にて製造される製品Pの品質不良を示す品質データを出力するように学習された学習モデル、例えばランダムフォレスト回帰モデルを備える。本実施形態1に係る品質予測モデル2は、複数のランダムフォレスト回帰モデルを備え、各ランダムフォレスト回帰モデルは、異なる種類の品質不良を示す品質データをそれぞれ出力するように構成されている。
【0026】
製造条件データ及び監視データは、例えばガス流量、空気流量、ガス圧力、炉内温度、排ガス流量、ガス温度、酸素濃度等の製品Pの原料工程に係るデータ、スラリー粒度、成分比、収縮比等の原料検査に係るデータ、スラリー濃度、スラリー注入圧、スラリー逆流圧、着磁電流、脱磁電流、成形圧、浮動圧、充填深さ等の成形工程に係るデータ、炉内温度等の焼結工程に係るデータ、冷却水流量、冷却水温度、砥石モータ電流、砥石回転速度等の加工工程に係るデータである。
以下、品質予測モデル2に入力される製造条件データ及び監視データが示す数量を適宜、特徴量と呼ぶ。
【0027】
品質データは、例えば、製品Pの特性を示すデータである。より具体的には、品質データは、不良率、亀裂率、加工不良率、欠け率、黒皮率、漏れ率、ピンホール率の外観検査結果を示すデータ、品質不良に係る磁束密度、保磁力等の磁気特性を示すデータ、寸法検査によって得られる製品Pの任意箇所の寸法等を示すデータである。
以下、これらの品質不良等を示す値を品質予測値と呼ぶ。複数の品質データは、それぞれ製品Pの異なる品質予測値を含む。
【0028】
演算部11は、このように構成された品質予測モデル2から出力される複数の品質データに基づいて、製造設備4にて製造される製品Pの品質不良を予測することができる。また、後述するように、演算部11は、品質予測モデル2を用いて、品質不良の品質予測値に対する製造条件データ及び監視データの寄与度を算出することができる。
ここで、寄与度とは、複数の製造条件データ及び監視データの各々が、品質不良の品質予測値に与える影響の程度を数値で表現したものである。
【0029】
なお、ランダムフォレスト回帰モデルは、品質予測モデル2の一例であり、CNN(Convolution Neural Network)、RNN(Recurrent Neural Network)、LSTM(Long short-term memory)等のニューラルネットワークモデル、SVM(Support Vector Machine)、ベイジアンネットワーク、又は、回帰木等の構成の学習モデルを用いて、品質予測モデル2を構成してもよい。また、品質予測モデル2は、複数の機械学習モデルを組み合わせて構成してもよいし、一つの機械学習モデルで構成してもよい。
【0030】
図3は、実施形態1に係る品質予測モデル2の生成処理手順を示すフローチャートである。ここでは、不良要因分析装置1が品質予測モデル2を生成する例を説明する。まず、不良要因検出装置は、製造設備4を用いた製品Pの製造に用いられ又は検出された製造条件データ及び監視データと、実際に製造された製品Pの品質不良を示す品質データとを収集し、収集したデータをデータベース3に記憶する(ステップS111)。次いで、演算部11は、製造条件データ及び監視データに対して教師データとして品質データを付与したデータセットを作成し、データベース3に記憶する(ステップS112)。
【0031】
次いで、演算部11は、ステップS112で作成したデータセットを用いて品質予測モデル2を生成する(ステップS113)。具体的には、演算部11は、データセットの製造条件データ及び監視データが学習前モデルに入力された場合に、当該学習前モデルから出力される値と、教師データである品質データの品質予測値とが同一とが近づくように、学習前モデルを構成する各種係数を最適化する。
【0032】
そして、演算部11は、ステップS113の処理で学習された品質予測モデル2に、品質データに対する製造条件データ及び監視データの寄与度を演算するためのSHAP演算機能を適用し(ステップS114)、処理を終える。
【0033】
以上の処理により品質予測モデル2を生成することができる。なお、上記の例では、不良要因分析装置1が品質予測モデル2を生成する例を説明したが、他のコンピュータで品質予測モデル2を生成し、生成された品質予測モデル2を規定する各種パラメータを不良要因分析装置1の記憶部13に記憶させるようにしてもよい。
【0034】
図4は、実施形態1に係る不良要因分析装置1の処理手順を示すフローチャートである。演算部11は、製造設備4から出力される製造条件データ及び監視データを取得部16にて取得する(ステップS131)。演算部11は、取得部16にて取得した製造条件データ及び監視データを品質予測モデル2に入力し、品質予測モデル2に基づく演算処理を実行することによって、製品Pの品質予測値を演算する(ステップS132)。
【0035】
次いで、演算部11は、品質予測モデル2を用いて、品質予測値に対する各製造条件データ及び監視データの寄与度を算出する(ステップS133)。寄与度は、例えば品質予測モデル2を用いて算出することができるSHAP値である。SHAP値は、複数の製造条件データ及び監視データを品質予測モデル2に入力して算出される品質予測値と、当該複数の製造条件データ及び監視データのうち一の製造条件データ又は監視データが無かった場合、又はゼロとして品質予測モデル2に入力して算出される品質予測値との差分に相当する値である。より具体的には、SHAP値は下記式で表される。
【数1】
【0036】
なお、演算部11は、例えば、ロット又は個体番号毎に品質予測値と、その品質予測値に対するSHAP値を算出することも可能である。言い換えると、演算部11は、任意の期間毎に品質予測値と、その品質予測値に対するSHAP値を算出可能である。
【0037】
なお、SHAP値はXAI(Explainable AI)において算出される数値の一例であり、LIME(Local Interpretable Model-agnostic Explainations)などのXAIを用いて寄与度を算出してもよい。
【0038】
図5は、寄与度を示す概念図である。横軸は品質予測値を示す。φ0は平均品質予測値を示し、φ1~φ3は3つの特徴量の品質予測値に対するSHAP値を示している。φ1及びφ2は正の値、φ3は負の値である。品質予測値は、平均品質予測値に全SHAP値を加算した値であり、下記式(2)で表される。
品質予測値f(χ)=φ0+φ1+φ2+φ3…(2)
【0039】
図6は、実施形態1に係る要因分析処理の手順を示すフローチャート、図7は、要因分析画面5の一例を示す模式図である。要因分析処理装置の演算部11は、以下に説明する要因分析処理を実行することにより、品質予測値に対する製造条件データ及び監視データそれぞれの寄与度に基づいて、品質データが示す品質不良の要因を分析するための要因分析データを作成する。要因分析データは、例えば図7に示すような要因分析画面5を表示部15に表示するためのデータであり、演算部11は、要因分析データに基づいて、要因分析画面5を表示部15に表示する。
【0040】
要因分析画面5は、不良要因の分析及び分析結果の表示を行う期間の設定内容を示す分析期間表示部51(図7左上)と、不良発生状況棒グラフ表示部52(図8参照)と、要因分析チャート表示部53(図9参照)と、寄与度表示部54(図10参照)とを含む。各部の表示内容の詳細は後述する。
なお、図7図10では、任意期間における不良要因を日単位で分析及び表示する例を説明するが、分析単位及び分析範囲は特に限定されるものでは無く、製品Pの固体識別番号単位、つまり個々の製品P単位で不良要因を分析及び表示するように構成してもよい。
【0041】
まず演算部11は、分析期間表示部51を表示し、操作部14を介して、不良要因の分析期間の設定を受け付ける(ステップS151)。
【0042】
分析期間表示部51は、図7に示すように、タイムラインバー51aと、スライダ51b、始期表示部51c、終期表示部51dとを含む。タイムラインバー51aは、不良要因の分析が可能な期間を示している。スライダ51bは、タイムラインバー51aに沿って移動し、不要要因の分析期間を設定するための操作アイコンである。なお、演算部11は、分析期間表示部51を初期表示する際、標準値として、例えば現在を起点に1か月、2か月等の所定分析期間を初期設定すればよい。ユーザは、表示されたスライダ51bをタイムラインバー51aに沿って左右へ移動させることによって、不良要因の分析期間を入力することができる。始期表示部51cには、一方のスライダ51bによって設定された上記分析期間の始期が表示される。終期表示部51dには、他方のスライダ51bによって設定された上記分析期間の終期が表示される。
また、分析期間表示部51は、上記分析期間の始期及び終期をカレンダから入力するためのカレンダアイコン51e、51fを含む。ユーザによってカレンダアイコン51e、51fが操作せれた場合、演算部11は、カレンダを表示し、上記分析期間の始期又は終期を受け付ける。
以上の通り、ユーザは、スライダ51b又はカレンダを用いて、不良要因の分析を行う分析期間を設定することができる。
【0043】
次いで、演算部11は、複数の品質予測値の総和及び各品質予測値の経時変化を示すグラフデータを示す不良発生状況棒グラフを作成し(ステップS152)、作成した不良発生状況棒グラフを表示部15に表示する(ステップS153)。
【0044】
図8は、不良発生状況棒グラフの一例を示す模式図である。不良発生状況棒グラフの横軸は時間を示し、縦軸は不良発生状況を示している。不良発生状況は各日付の製造条件データ及び監視データを品質予測モデル2に入力することによって演算される、複数種類の品質不良それぞれの品質予測値を示している。図8に示す例では、1月29日~2月4日、7日にわたる不良発生状況が棒グラフで表示されている。各日の棒グラフは、複数種類の品質不良の品質予測値と共に、品質予測値の総和を積み上げ棒グラフによって表示している。図8に示す例では、4種類の品質不良として、「品質不良A」、「品質不良B」、「品質不良C」及び「品質不良D」の品質予測値が積み上げ棒グラフで表示されている。
【0045】
演算部11は、不良発生状況棒グラフに表示された複数の品質のうち、分析対象とする品質不良の選択を受け付ける(ステップS154)。ユーザは、不良発生状況棒グラフに示される各品質不良のバー部分を選択操作することができる。例えば、ユーザは、品質不良のバー部分をクリックすることによって、特定の品質不良を選択することができる。演算部11は、操作部14を介して、ユーザによる品質不良の選択を受け付ける。
【0046】
そして演算部11は、選択された分析対象の品質予測値に対する各特徴量それぞれの寄与度の経時変化を示す要因分析チャートを作成し(ステップS155)、作成した要因分析チャートを表示部15に表示する(ステップS156)。
【0047】
図9は、要因分析チャートの一例を示す模式図である。要因分析チャートの横軸は時間を示し、縦軸は品質不良の品質予測値に対する各特徴量それぞれの寄与度を示している。各日の棒グラフは、品質不良の品質予測値に対する複数の特徴量の寄与度と共に、寄与度の総和を積み上げ棒グラフで表示している。図9に示す例では、4つの特徴量、「特徴量a」、「特徴量b」、「特徴量c」、「特徴量d」に係る寄与度が積み上げ棒グラフで表示されている。
【0048】
演算部11は、要因分析チャートに表示された複数の寄与度のうち、分析対象とする一の特徴量の選択を受け付ける(ステップS157)。そして、演算部11は、選択された特徴量と、品質予測値に対する当該特徴量の寄与度の経時変化を示す寄与度チャートを作成し(ステップS158)、作成した寄与度チャートを表示部15に表示する(ステップS159)。
【0049】
図10は、寄与度チャートの一例を示す模式図である。寄与度チャートの横軸は時間を示し、縦軸はステップS157で受け付けた特徴量と、当該特徴量の品質不良への寄与度とを示している。特徴量は折れ線グラフで表示され、寄与度は棒グラフで表示されている。
【0050】
次いで、演算部11は要因分析を終了するか否かを判定する(ステップS160)。ユーザは操作部14を操作することによって、要因分析処理の終了操作を行うことができる。演算部11は、操作部14を解して終了操作を受け付けた場合、要因分析を終了すると判定する。分析を終了しないと判定した場合(ステップS160:NO)、演算部11は処理をステップS151へ戻す。分析処理を終了すると判定した場合(ステップS160:YES)、演算部11は、本実施形態1に係る要因分析処理を終了する。
【0051】
以上の処理により、不良要因分析装置1は品質不良の要因を分析するための要因分析画面5を表示部15に表示することができる。ユーザは要因分析画面5に含まれる不良発生状況棒グラフ、要因分析チャート及び寄与度チャートの内容を確認することによって、製品Pの品質不良の要因、つまり品質予測値に対する特徴量(製造条件データ及び監視データ)の寄与度を特定することができる。ユーザは、品質不良への寄与度が大きい製造条件データ及び監視データが適正値になるように修正することによって、製造設備4を正常な状態に修正及び復帰させることができる。
【0052】
本実施形態1に係る不良要因分析装置1によれば、製品Pの製造に係る製造条件データ又は製造設備4の動作を監視して得られる監視データを取得し、機械学習した品質予測モデル2を利用し、任意期間において製品Pの品質変動要因を定量的かつ迅速に抽出することができる。
【0053】
具体的には、不良要因分析装置1は、品質不良の要因を分析するための要因分析データを演算し、要因分析画面5を表示することができる。
【0054】
また、不良要因分析装置1は、不良発生状況棒グラフを表示部15に表示することができる。ユーザは、不良発生状況棒グラフを参照することによって、製品Pに生じ得る複数の品質不良それぞれの品質予測値を日単位で確認することができる。
【0055】
不良要因分析装置1は、要因分析チャートを表示部15に表示することができる。ユーザは、要因分析チャートを参照することにより、選択した品質不良に対する複数の製造条件データ及び監視データの寄与度を日単位で確認することができる。
【0056】
不良要因分析装置1は、寄与度チャートを表示部15に表示することができる。ユーザは、寄与度チャートを参照することにより、選択した特徴量及び当該特徴量の品質不良に対する寄与度の経時変化を確認することができる。
【0057】
(変形例)
図11は、変形例に係る要因分析画面5の一例を示す模式図である。変形例1に係る要因分析画面5は、実施形態1と同様の分析期間表示部51及び不良発生状況棒グラフ表示部52と、品質不良の品質予測値グラフ(図11A)と、寄与度チャート(図11B)とを含む。
【0058】
図11Aは、品質予測値グラフの一例を示す模式図である。品質予測値グラフの横軸は時間を示し、縦軸は一の品質不良の品質予測値を示している。
【0059】
図11B上図は、要因分析チャートの一例を示す模式図である。要因分析チャートの横軸は時間を示し、品質不良の品質予測値に対する各特徴量の寄与度を示している。要因分析チャートの詳細は実施形態1に係る要因分析チャートと同様である。
【0060】
図11B下図は、複数の特徴量の寄与度を成分とするベクトルをクラスタリングすることによって得られるマップの一例を示す模式図である。不良要因分析装置1は、所定期間、例えば設定された分析期間にわたって得られるベクトルをクラスタリングする。当該ベクトルは、1日単位、ロット単位、又は製品単位で算出された品質予測値に対する複数の特徴量の寄与度を成分とするベクトルである。
図11Bに示す例では日単位で算出されたベクトルのクラスタリング処理により、25日~28日の品質不良が第1のクラスにクラスタリングされ、1日から3日の品質不良が第2のクラスにクラスタリングされている。
クラスタリングにより、ユーザは、直近の変動傾向を分析することが可能となり、直近の変動傾向を分析することによって、要因抽出精度、ユーザの確信度が向上する。例えば、ユーザは、同一クラスに属する品質不良は同様の品質不良要因を有し、同様の対応により品質不良を解消することができることを認識することができる。具体的には、第1のクラスに属する品質不良は、砥石電流を改善することによって品質が改善される品質不良であり、第2のクラスは炉内温度を改善することによって品質が改善される品質不良である。
【0061】
不良要因分析装置1は、必ずしも各クラスに属する品質不良の要因及び改善方法を提示する必要はなく、クラスタリング結果を表示するのみで足りる。ユーザは、通常、品質不良のおおよその要因及び改善方法を認識しているため、図11Bに示すような要因分析チャートと、クラスタリング結果を参照することによって、各日の品質不良の要因と品質の改善方法を理解することができる。
【0062】
もちろん、不良要因分析装置1は、各クラスに属する不良の要因及び改善方法を示す情報を記憶するように構成してもよい。不良要因分析装置1の演算部11は、複数の特徴量の寄与度に基づくクラスタリング処理によって、当該寄与度を有する品質不良が属するクラスを特定し、当該クラスに対応付けられた品質不良の主要因及び改善方法を表示すればよい。
また、不良要因分析装置1は、各クラスに属する不良の要因、製造設備4の動作を改善させるための補正情報、つまり製造条件を補正するための補正情報を記憶部13に記憶するように構成してもよい。当該補正情報は、寄与度に基づいて、製造設備の4動作を制御するための情報の一例である。不良要因分析装置1は、クラスタリング結果を用いることにより、製造設備4の動作をフィードバック制御又はフィードフォワード制御することができる。例えば、不良要因分析装置1の演算部11は、複数の特徴量の寄与度に基づくクラスタリング処理によって、当該寄与度を有する品質不良が属するクラスを特定し、当該クラスに対応付けられた補正情報を記憶部13から読み出し、読み出された補正情報を製造設備4へ出力する。製造設備4は、不良要因分析装置1から出力された補正情報に基づいて、製造条件を補正する。
より具体的には、記憶部13は、成形工程における亀裂率や欠け率のクラスと、浮動圧の補正情報とを対応付けて記憶している。演算部11は、クラスタリング結果に基づいて、成形工程における品質不良が属するクラスが亀裂率や欠け率のクラスであると判定した場合、浮動圧を補正するための補正情報を製造設備4へ出力する。製造設備4は、成形工程において、浮動圧を変更、つまり浮動圧を正常範囲内に戻すことによって、亀裂率や欠け率を改善させることができる。
また、記憶部13は、焼結工程における亀裂率や欠け率のクラスと、炉内温度の補正情報とを対応付けて記憶している。演算部11は、クラスタリング結果に基づいて、焼結工程における品質不良が属するクラスが亀裂率や欠け率のクラスであると判定した場合、炉内温度を補正するための補正情報を製造設備4へ出力する。製造設備4は、焼結工程において、炉内温度を変更、つまり炉内温度を正常範囲内に戻すことによって、亀裂率や欠け率を改善させることができる。これは、膨張率が設計基準に戻るためである。
更に、また、記憶部13は、加工工程における亀裂率や欠け率のクラスと、砥石モータ電流を低下させる補正情報、即ち砥石交換の指示情報とを対応付けて記憶している。
演算部11は、クラスタリング結果に基づいて、加工工程における品質不良が属するクラスが亀裂率や欠け率のクラスであると判定した場合、砥石交換の指示情報を出力する。砥石交換により、亀裂率や欠け率を改善させることができる。
【0063】
変形例に係る不良要因分析装置1によれば、製品Pの品質変動要因を特定し、品質不良の傾向をクラスタリング分析によって表示することができる。
【0064】
(実施形態2)
実施形態2に係る不良要因分析装置201は、教師なし学習により生成した異常検知モデル202を用いて、製品異常の要因を分析する点が実施形態1と異なる。その他の構成は実施形態1に係る不良要因分析装置1と同様であるため、同様の箇所には同じ符号を付し、詳細な説明を省略する。
【0065】
図12は、実施形態2に係る不良要因分析システムの構成例を示す説明図である。不良要因分析システムは、本実施形態2に係る不良要因分析装置201と、製造設備4とを含む。不良要因分析装置201は、製造設備4から出力された複数の製造条件データ及び監視データを取得し、後述の異常検知モデル202を利用して製品Pの品質不良の要因を分析する装置である。
【0066】
不良要因分析装置201は、パーソナルコンピュータ又はサーバ装置等のコンピュータである。不良要因分析装置201は、実施形態1と同様、演算部11と、メモリ12と、記憶部13と、操作部14と、表示部15と、取得部16とを備える。
【0067】
演算部11は、記憶部13に記憶されたコンピュータプログラム231を読み出して実行することにより、製品P又は製造設備4の異常を検知し、不良要因を分析する等、本実施形態2に係る不良要因分析方法を実施する。本実施形態2において記憶部13は、演算部11が実行するコンピュータプログラム231と、製品P又は製造設備4の異常の有無を判定すると共に品質不良の要因を分析するための異常検知モデル202とを記憶する。
【0068】
図13は、実施形態2に係る異常検知モデル202を示す概念図である。異常検知モデル202は、複数の製造条件データ及び監視データが入力された場合、製造設備4にて製造された製品P又は製造設備4の異常の有無を示す異常スコアデータを出力するように学習された学習モデル、例えばOne-Classサポートベクタマシンである。演算部11は、異常検知モデル202から出力される異常スコアデータに基づいて、製造設備4にて製造される製品P又は製造設備4の異常の有無を判定することができる。また、後述するように、演算部11は、異常検知モデル202を用いて、製品P又は製造設備4の異常スコアに対する製造条件データ及び監視データの寄与度を算出することができる。
【0069】
図14は、実施形態2に係る異常検知モデル202の生成処理手順を示すフローチャートである。ここでは、不良要因分析装置201が異常検知モデル202を生成する例を説明する。まず、不良要因検出装置は、正常な製品Pが製造されている状態において、製造設備4を用いた製品Pの製造に用いられ又は検出された製造条件データ及び監視データを収集し、収集したデータをデータベース3に記憶する(ステップS211)。
【0070】
次いで、演算部11は、ステップS211で収集されたデータセットを用いて異常検知モデル202を生成する(ステップS212)。具体的には、演算部11は、データセットの製造条件データ及び監視データが学習前モデルに入力された場合に、製品P又は製造設備4が正常であることを示す所定の異常スコアが出力されるように、学習前モデルを構成する各種係数を最適化する。所定の異常スコアは、例えば原点(ゼロ点)又は原点から離れた負のスコア値である。このように学習して得た異常検知モデル202に、製品Pの品質に異常を来す可能性がある製造条件データ及び監視データが入力された場合、上記所定の異常スコアと異なる値の異常スコア、例えば正のスコア値が出力されるようになる。なお、負の異常スコアが製品P又は製造設備4の異常クラス、正の異常スコアが製品P又は正常設備4の正常クラスになるように構成してもよい。異常スコアの値が意味するクラスは、ユーザ又は設計の便宜を考慮し、適宜変換して出力すればよい。
【0071】
そして、演算部11は、ステップS212の処理で学習された異常検知モデル202に、異常スコアデータに対する製造条件データ及び監視データの寄与度を演算するためのSHAP演算機能を適用し(ステップS213)、処理を終える。
【0072】
以上の処理により異常検知モデル202を生成することができる。なお、上記の例では、不良要因分析装置201が異常検知モデル202を生成する例を説明したが、他のコンピュータで異常検知モデル202を生成し、生成された異常検知モデル202を規定する各種パラメータを不良要因分析装置201の記憶部13に記憶させるようにしてもよい。
【0073】
図15は、実施形態2に係る不良要因分析装置201の処理手順を示すフローチャートである。演算部11は、製造設備4から出力される製造条件データ及び監視データを取得部16にて取得する(ステップS231)。演算部11は、取得部16にて出力した製造条件データ及び監視データを異常検知モデル202に入力し、異常検知モデル202に基づく演算処理を実行することによって、製品P又は製造設備4の異常スコアを演算する(ステップS232)。
【0074】
次いで、演算部11は、異常検知モデル202を用いて、異常スコアに対する各製造条件データ及び監視データの寄与度を算出する(ステップS233)。寄与度は、例えば異常検知モデル202を用いて算出することができるSHAP値である
【0075】
なお、SHAP値はXAI(Explainable AI)において算出される数値の一例であり、LIME(Local Interpretable Model-agnostic Explainations)などのXAIを用いて寄与度を算出してもよい。
【0076】
図16は、実施形態2に係る要因分析処理の手順を示すフローチャートである。要因分析処理装置の演算部11は、以下に説明する要因分析処理を実行することにより、製造条件データ又は監視データの寄与度に基づいて、製品異常の要因を分析するための要因分析データを作成する。
【0077】
演算部11は、異常検知モデル202から出力される異常スコアデータに基づいて、異常スコアチャートを作成する(ステップS151)。
【0078】
図17は、異常スコアチャートの一例を示す模式図である。横軸は時間、縦軸は異常スコアを示している。図17中、ゼロ未満の異常スコアは、製品P又は製造設備4が正常であることを示し、ゼロ以上の異常スコアは、製品P又は製造設備4が異常であることを示している。
【0079】
次いで、演算部11は、算出されたゼロ以上の異常スコアに対する各特徴量の寄与度に基づいて、要因抽出結果棒グラフを作成する(ステップS152)。
【0080】
図18は、要因抽出結果棒グラフの一例を示す模式図である。横軸は、複数の特徴量を示し、縦軸は各特徴量の異常スコアに対する寄与度の大きさを示している。図18に示す例では、「特徴量a」~「特徴量i」それぞれの異常スコアに対する寄与度が算出され、棒グラフとして表示されている。
【0081】
次いで、演算部11は、複数の特徴量のうち、異常スコアに対する寄与度が最も大きい主要因を特定する(ステップS153)。そして、演算部11は、特定された主要因である特徴量の実測データチャートを作成する(ステップS154)。
【0082】
図19は、主要因の実測データチャートの一例を示す模式図である。横軸は時間、縦軸は、ステップS154で特定された主要因である特徴量の実測値を示している。
【0083】
次いで、演算部11は、作成された異常スコアチャートと、要因抽出結果棒グラフと、主要因の実測データチャートとを表示部15に表示し(ステップS155)、処理を終える。
【0084】
実施形態2によれば、教師無し学習により異常検知モデル202を作成し、製品Pに異常が生ずる可能性があるとき、異常の要因を示す要因抽出結果棒グラフを表示することができる。ユーザは、要因抽出結果棒グラフを確認することによって、製品P又は製造設備4の異常の要因、品質不良への寄与度が大きい特徴量を特定することができる。
本開示の課題を解決するための手段を付記する。
(付記1)
製造設備を用いた製品の製造に係る複数の製造条件データ又は該製造設備の動作を監視して得られる複数の監視データのうち少なくとも一方を取得するステップと、
前記複数の製造条件データ又は監視データが入力された場合、前記製造設備にて製造される製品の品質不良を示す品質データ又は製品若しくは前記製造設備の異常の有無を示す異常sスコアデータを出力するように学習された学習モデルに、取得した前記複数の製造条件データ又は監視データを入力することによって、製造される製品の品質不良又は製品若しくは前記製造設備の異常を予測するステップと、
前記学習モデルから出力される前記品質データ又は前記異常スコアデータに対する、前記複数の製造条件データ又は監視データそれぞれの寄与度を、前記学習モデルを用いて算出するステップと
をコンピュータに実行させるためのコンピュータプログラム。
(付記2)
算出された前記品質データ又は前記異常スコアデータに対する前記複数の製造条件データ又は監視データそれぞれの寄与度に基づいて、前記品質データが示す品質不良の要因又は前記異常スコアデータが示す製品若しくは前記製造設備の異常の要因を分析するための要因分析データを作成するステップを前記コンピュータに実行させるための付記1に記載のコンピュータプログラム。
(付記3)
前記要因分析データは、
前記品質データに対する前記複数の製造条件データ又は監視データそれぞれの寄与度の経時変化を示すグラフデータを含む
付記2に記載のコンピュータプログラム。
(付記4)
一の前記製造条件データ又は監視データを選択するステップを備え、
前記要因分析データは、
選択された前記一の製造条件データ又は監視データの経時変化と、前記品質データに対する前記一の製造条件データ又は監視データの寄与度の経時変化とを示すグラフデータを含む
付記2又は付記3に記載のコンピュータプログラム。
(付記5)
前記学習モデルは、
異なる複数種類の品質不良をそれぞれ示す複数の前記品質データを出力するように構成してあり、
一の前記品質不良を選択するステップを備え、
前記グラフデータは、
選択された前記一の品質不良の品質データに対する前記複数の製造条件データ又は監視データそれぞれの寄与度を示す
付記3又は付記4に記載のコンピュータプログラム。
(付記6)
前記学習モデルは、
異なる複数種類の品質不良をそれぞれ示す複数の前記品質データを出力するように構成してあり、
前記要因分析データは、
前記複数の品質データの総和及び該複数の品質データの経時変化を示すグラフデータを含む
付記2から付記4のいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
(付記7)
前記要因分析データは、
前記異常スコアデータの経時変化と、製品又は前記製造設備の異常を示す前記異常スコアデータに対する前記複数の製造条件データ又は監視データそれぞれの寄与度とを示すグラフデータを含む
付記2から付記6のいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
(付記8)
前記寄与度はSHAP値である
付記1から付記7のいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
(付記9)
算出された前記寄与度に基づいて、前記製造設備の動作を制御するための情報を算出する処理を前記コンピュータに実行させる
付記1から付記8のいずれか1つに記載のコンピュータプログラム。
(付記10)
製造設備を用いた製品の製造に係る複数の製造条件データ又は該製造設備の動作を監視して得られる複数の監視データを取得するステップと、
前記複数の製造条件データ又は監視データが入力された場合、前記製造設備にて製造される製品の品質不良を示す品質データ又は製品若しくは前記製造設備の異常の有無を示す異常スコアデータを出力するように学習された学習モデルに、取得した前記複数の製造条件データ又は監視データを入力することによって、製造される製品の品質不良又は製品若しくは前記製造設備の異常を予測するステップと、
前記学習モデルから出力される前記品質データ又は前記異常スコアデータに対する、前記複数の製造条件データ又は監視データそれぞれの寄与度を、前記学習モデルを用いて算出するステップと
を備える不良要因分析方法。
(付記11)
前記寄与度に基づいて、前記品質データが示す品質不良の要因又は前記異常スコアデータが示す製品若しくは前記製造設備の異常の要因を分析するための要因分析データを作成するステップを備える付記10に記載の不良要因分析方法。
(付記12)
製造設備を用いた製品の製造に係る複数の製造条件データ又は該製造設備の動作を監視して得られる複数の監視データを取得する取得部と、
前記複数の製造条件データ又は監視データが入力された場合、前記製造設備にて製造される製品の品質不良を示す品質データ又は製品若しくは前記製造設備の異常の有無を示す異常スコアデータを出力するように学習された学習モデルと、
前記学習モデルに、取得した前記複数の製造条件データ又は監視データを入力することによって、製造される製品の品質不良又は製品若しくは前記製造設備の異常を予測する演算部と
を備え、
更に、前記演算部は、
前記学習モデルから出力される前記品質データ又は前記異常スコアデータに対する、前記複数の製造条件データ又は監視データそれぞれの寄与度を、前記学習モデルを用いて算出する不良要因分析装置。
(付記13)
前記演算部は、
算出した前記寄与度に基づいて、前記品質データが示す品質不良の要因又は前記異常スコアデータが示す製品若しくは前記製造設備の異常の要因を分析する
付記12に記載の不良要因分析装置。
【符号の説明】
【0085】
1,201 不良要因分析装置
2 品質予測モデル
3 データベース
4 製造設備
5 要因分析画面
10 記録媒体
11 演算部
12 メモリ
13 記憶部
14 操作部
15 表示部
16 取得部
41 監視装置
51 分析期間表示部
52 不良発生状況棒グラフ表示部
53 要因分析チャート表示部
54 寄与度表示部
131,231 コンピュータプログラム
202 異常検知モデル
P 製品
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19