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特許7556351表示媒体、真正性判定方法、及び表示媒体を含む物品
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】表示媒体、真正性判定方法、及び表示媒体を含む物品
(51)【国際特許分類】
   G02B 5/30 20060101AFI20240918BHJP
   B42D 25/364 20140101ALI20240918BHJP
【FI】
G02B5/30
B42D25/364
【請求項の数】 6
(21)【出願番号】P 2021527577
(86)(22)【出願日】2020-06-04
(86)【国際出願番号】 JP2020022170
(87)【国際公開番号】W WO2020261923
(87)【国際公開日】2020-12-30
【審査請求日】2023-04-05
(31)【優先権主張番号】P 2019119065
(32)【優先日】2019-06-26
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002147
【氏名又は名称】弁理士法人酒井国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤野 泰秀
【審査官】小西 隆
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2007/0053028(US,A1)
【文献】特開2004-338257(JP,A)
【文献】国際公開第2005/101069(WO,A1)
【文献】特開2009-166319(JP,A)
【文献】特開2017-185668(JP,A)
【文献】特開2000-255200(JP,A)
【文献】特開2010-196005(JP,A)
【文献】国際公開第2007/018258(WO,A1)
【文献】特開2008-197223(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B 5/30
G02B 5/32
G02B 5/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
第一の層と、第二の層と、第三の層とを含み、
前記第一の層の一部又は全部と、前記第二の層の一部又は全部と、前記第三の層の一部又は全部とは、この順で、厚み方向に重なり、
前記第一の層は、回転方向D1を有する円偏光を反射し且つ前記回転方向D1と逆方向である回転方向D2を有する円偏光を透過させる層であり、
前記第二の層は、位相差層であり、
前記第三の層は、回転方向が前記回転方向D1である円偏光を反射し且つ回転方向が前記回転方向D2である円偏光を透過させる層であり、
前記第一の層が、コレステリック規則性を有する層であり、前記第三の層が、コレステリック規則性を有する樹脂フレークを含む層であり、
前記第二の層は、
Re(560)が、300nm以上1250nm以下であり、
Re(400)/Re(560)が1.0以上であり、
Re(650)/Re(560)が1.000以下であり、
ここで、Re(400)は前記第二の層の波長400nmにおける面内方向のレターデーションReを表し、Re(560)は前記第二の層の波長560nmにおける面内方向のレターデーションReを表し、Re(650)は前記第二の層の波長650nmにおける面内方向のレターデーションReを表す、表示媒体。
【請求項2】
前記第一の層が、コレステリック液晶組成物の硬化膜である、請求項1に記載の表示媒体。
【請求項3】
前記第一の層は、非偏光についての反射率が、波長範囲420nm以上650nm以下において35%以上50%以下である、請求項1又は2に記載の表示媒体。
【請求項4】
前記第三の層に含まれる前記樹脂フレークは、非偏光についての反射率が、波長範囲420nm以上650nm以下において35%以上50%以下である、請求項1~3のいずれか1項に記載の表示媒体。
【請求項5】
請求項1~4のいずれか1項に記載の表示媒体が、半透明であることを確認する工程(1)、
前記表示媒体に、前記第三の層側から非偏光を照射して、前記表示媒体の反射光を前記第三の層側から観察し、前記第三の層による色情報C3を取得する工程(2)、
前記表示媒体に、前記第一の層側から非偏光を照射して、前記表示媒体の反射光を前記第一の層側から観察し、前記第一の層による色情報C1を取得する工程(3)、及び
前記色情報C3と前記色情報C1とを比較し、前記色情報C3と前記色情報C1とが同一ではないことを判定する工程(4)
を含む、真正性判定方法。
【請求項6】
請求項1~4のいずれか1項に記載の表示媒体を含む、物品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、表示媒体、真正性判定方法、及び表示媒体を含む物品に関する。
【背景技術】
【0002】
真正性を示すべき対象物に、容易に複製できない識別媒体を付することが一般的に行われている。そのような識別媒体として、高分子化合物であるコレステリック液晶化合物を用いた媒体が知られている(特許文献1)。
また、表と裏とで、視認される情報が異なる識別媒体も知られている(特許文献2~6)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】特許第3652476号公報
【文献】特開2017-185668号公報
【文献】特開2017-215580号公報
【文献】特許第5828182号公報
【文献】国際公開第2007/007784号(対応外国公報:米国特許出願公開第2008/0129036号明細書)
【文献】特開2007-216602号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
円偏光分離機能を有する材料は、右円偏光及び左円偏光のうちの一方の円偏光を透過させ、他方の円偏光の一部又は全部を反射する機能を持つ。このような材料を用いた表示媒体を、右円偏光板を通して観察した場合と、左円偏光板を通して観察した場合とでは、異なる像が現れる。よって、このような表示媒体を設けた物品の真正性の判定においては、右円偏光板及び左円偏光板という2枚の円偏光板を備えるビュワーを用いることが一般的である。
【0005】
通常、表示媒体を用いた真正性の判定は、上述のような2枚の円偏光板を備えるビュワーが必要であるため、コスト高であった。また、一般のユーザーはビュワーの入手が困難であるため、真正性を判定することは容易ではなく、正規品メーカー、一部の小売店、公共機関等が真正性を判定する場合が多かった。
【0006】
したがって、特別なビュワーを用いずとも真正性の判定が可能な表示媒体;表示媒体の真正性判定方法;及び表示媒体を含む物品が求められていた。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者は、前記課題を解決するべく、鋭意検討した。その結果、円偏光分離機能を有する所定の第一の層及び第三の層と、位相差層である第二の層とを含む表示媒体により、前記課題が解決できることを見出し、本発明を完成させた。
すなわち、本発明は、以下を提供する。
【0008】
[1] 第一の層と、第二の層と、第三の層とを含み、
前記第一の層の一部又は全部と、前記第二の層の一部又は全部と、前記第三の層の一部又は全部とは、この順で、厚み方向に重なり、
前記第一の層は、回転方向D1を有する円偏光を反射でき、前記回転方向D1と逆方向である回転方向D2を有する円偏光を透過させうる層であり、
前記第二の層は、位相差層であり、
前記第三の層は、回転方向が前記回転方向D1である円偏光を反射でき、回転方向が前記回転方向D2である円偏光を透過させうる層である、表示媒体。
[2] 前記第一の層が、コレステリック規則性を有する層であり、前記第三の層が、コレステリック規則性を有する樹脂フレークを含む層である、[1]に記載の表示媒体。
[3] 前記第一の層は、非偏光についての反射率が、波長範囲420nm以上650nm以下において35%以上50%以下である、[2]に記載の表示媒体。
[4] 前記第三の層に含まれる前記樹脂フレークは、非偏光についての反射率が、波長範囲420nm以上650nm以下において35%以上50%以下である、[2]又は[3]に記載の表示媒体。
[5] 前記第二の層の面内方向におけるレターデーションReが、40nm以上1600nm以下である、[1]~[4]のいずれか1項に記載の表示媒体。
[6] [1]~[5]のいずれか1項に記載の表示媒体が、半透明であることを確認する工程(1)、
前記表示媒体に、前記第三の層側から非偏光を照射して、前記表示媒体の反射光を前記第三の層側から観察し、前記第三の層による色情報C3を取得する工程(2)、
前記表示媒体に、前記第一の層側から非偏光を照射して、前記表示媒体の反射光を前記第一の層側から観察し、前記第一の層による色情報C1を取得する工程(3)、及び
前記色情報C3と前記色情報C1とを比較し、前記色情報C3と前記色情報C1とが同一ではないことを判定する工程(4)
を含む、真正性判定方法。
[7] [1]~[5]のいずれか1項に記載の表示媒体を含む、物品。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、特別なビュワーを用いずとも真正性の判定が可能な表示媒体;表示媒体の真正性判定方法;及び表示媒体を含む物品を提供できる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、本発明の一実施形態に係る表示媒体をその厚み方向から見た模式的な平面図である。
図2図2は、図1のX1-X1方向における断面を模式的に示す断面図である。
図3図3は、本発明の一実施形態に係る表示媒体を模式的に示す分解斜視図である。
図4図4は、第三の層側から非偏光を照射した場合の、表示媒体の反射光の状態を説明する、模式図である。
図5図5は、第一の層側から非偏光を照射した場合の、表示媒体の反射光の状態を説明する、模式図である。
図6図6は、コレステリック樹脂層の、波長400nm~780nmにおける反射率の測定結果を示すグラフである。
図7図7は、樹脂フレークを製造する装置を模式的に示す側面図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について実施形態及び例示物を示して詳細に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施形態及び例示物に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0012】
以下の説明において、層の面内方向のレターデーションReは、別に断らない限り、Re=(nx-ny)×dで表される値である。ここで、nxは、層の厚み方向に垂直な方向(面内方向)であって最大の屈折率を与える方向の屈折率を表す。nyは、層の前記面内方向であってnxの方向に直交する方向の屈折率を表す。nzは層の厚み方向の屈折率を表す。dは、層の厚みを表す。測定波長は、別に断らない限り、560nmである。
【0013】
以下の説明において、固有複屈折が正の材料とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに垂直な方向の屈折率よりも大きくなる材料を意味する。また、固有複屈折が負の材料とは、別に断らない限り、延伸方向の屈折率がそれに垂直な方向の屈折率よりも小さくなる材料を意味する。固有複屈折の値は誘電率分布から計算することができる。
【0014】
以下の説明において、「(メタ)アクリル」の文言は、「アクリル」、「メタクリル」及びこれらの組み合わせを包含する。
以下の説明において、「(チオ)エポキシ」の文言は、「エポキシ」、「チオエポキシ」及びこれらの組み合わせを包含する。
以下の説明において、「イソ(チオ)シアネート」の文言は、「イソシアネート」、「イソチオシアネート」及びこれらの組み合わせを包含する。
【0015】
以下の説明において、「散乱反射」とは、正反射の方向とは異なる方向への反射を意味する。
【0016】
以下の説明において、「可視光領域」とは、波長400nm以上780nm以下の波長範囲を示す。
【0017】
[1.表示媒体の概要]
本発明の一実施形態に係る表示媒体は、第一の層と、第二の層と、第三の層とを含む。
前記第一の層の一部又は全部と、前記第二の層の一部又は全部と、前記第三の層の一部又は全部とは、この順で、厚み方向に重なる。
前記第一の層は、回転方向D1を有する円偏光を反射でき、前記回転方向D1と逆方向である回転方向D2を有する円偏光を透過させうる層である。
前記第二の層は、位相差層である。
前記第三の層は、回転方向が前記回転方向D1である円偏光を反射でき、回転方向が前記回転方向D2である円偏光を透過させうる層である。
【0018】
本実施形態の表示媒体が、前記の構成を有することで、表示媒体に非偏光を照射して第一層の側及び第三の層側から反射光を観察すると、特別のビュワーを用いずとも、第一の層の側から観察される第一の層による色と第三の層から観察される第三の層による色とが、異なる。したがって、特別のビュワーを用いずとも、表示媒体の真正性が判定できる。
【0019】
[1.1.表示媒体の構成]
以下、本実施形態に係る表示媒体を、図を用いて詳細に説明する。
図1は、本発明の一実施形態に係る表示媒体をその厚み方向から見た模式的な平面図である。
図2は、図1のX1-X1方向における断面を模式的に示す断面図である。
図3は、本発明の一実施形態に係る表示媒体を模式的に示す分解斜視図である。
図1~3に示すように、表示媒体100は、第一の層10と、第二の層20と、第三の層30とを備える。図1及び図2に示すように、第一の層10と、第二の層20とは、表示媒体100の厚み方向(図1では、紙面に垂直な方向)から見て同一の形状及び大きさを有している。第二の層20は、第一の層10の面と接している。第三の層30は、第二の層20の一部分である領域A20上に、第二の層20の面と接するように配置されている。図2及び図3に示すように、第一の層10の一部分である領域A10と、第二の層の一部分である領域A20と、第三の層の全部である領域A30とは、領域A10-領域A20-領域A30の順で、厚み方向(図2では、紙面の上下方向)に重なっている。ここで、厚み方向に重なっているとは、領域A10~A30を厚み方向から見て、領域A10~A30が同じ平面的位置にあることを意味する。
本実施形態では、第一の層10と第二の層20とは、表示媒体100の厚み方向から見て同一の形状及び大きさを有しているが、第一の層と第二の層とは、異なる形状及び大きさを有していてもよい。
別の実施形態では、本発明の効果を著しく阻害しない限りにおいて、第一の層と第二の層との間、及び/又は第二の層と第三の層との間に、粘着層、光透過性の高い中間層などの任意の層を有していてもよい。任意の層は、好ましくは光透過性の高い層であり、より好ましくは全光線透過率が80%以上の層であり、更に好ましくは全光線透過率が85%以上の層であり、好ましくは面内方向におけるレターデーションReが小さい(例えば、0nm以上5nm以下)層である。かかる光透過性が高くレターデーションReの小さい層を構成する材料の具体例としては、硬質ポリ塩化ビニル、軟質ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、及びガラスが挙げられる。
また別の実施形態では、本発明の効果を著しく阻害しない限りにおいて、表示媒体は、第一外側層及び/又は第二外側層を更に含んでいてもよい。第一外側層及び第二外側層は、好ましくは光透過性の高い層であり、より好ましくは全光線透過率が80%以上の層であり、更に好ましくは全光線透過率が85%以上の層である。第一外側層及び第二外側層を構成する材料の具体例としては、硬質ポリ塩化ビニル、軟質ポリ塩化ビニル、アクリル樹脂、ガラス、ポリカーボネート(PC)、及びポリエチレンテレフタレート(PET)が挙げられ、表示媒体の用途、求められる質感、耐久性、機械的強度に応じて適宜選択しうる。第一外側層及び第二外側層は、それぞれ独立に、面内方向におけるレターデーションReが小さい層(例えば、0nm以上5nm以下)であってもよく、例えば、面内方向におけるレターデーションが5nm以上の層であってもよい。第一外側層及び第二外側層の、面内方向におけるレターデーションReは、600nm以下としうる。
第一外側層及び/又は第二外側層を更に含む表示媒体の層構成の例としては、下記が挙げられる。
・表示媒体は、第一外側層、第一の層、第二の層、第三の層、及び第二外側層がこの順で配置されている。
・表示媒体は、第一外側層、第一の層、第二の層、及び第三の層がこの順で配置されている。
・表示媒体は、第一の層、第二の層、第三の層、及び第二外側層がこの順で配置されている。
本実施形態では、第三の層30は、表示媒体100の厚み方向から見て矩形の形状を有しているが、別の実施形態では、第三の層30は、表示媒体100の厚み方向から見て、文字、数字、図形などのパターンを有していてもよい。
【0020】
[1.2.第一の層と第三の層]
第一の層及び第三の層は、回転方向D1を有する円偏光を反射でき、回転方向D1と逆方向である回転方向D2を有する円偏光を透過させうる層である。ここで、反射は、正反射であっても、散乱反射であってもよい。好ましくは、第三の層は、回転方向D1を有する円偏光を散乱反射しうる層である。第三の層を、回転方向D1を有する円偏光を散乱反射しうる層とする場合、第三の層の表面に凹凸を設けて、円偏光を散乱反射しうる層としてもよく、後述するように、第三の層を樹脂フレークを含む層とすることにより、円偏光を散乱反射する層としてもよい。
【0021】
円偏光の回転方向D1は、左であっても、右であってもよい。したがって、第一の層及び第三の層は共に、左円偏光を反射でき、右円偏光を透過させうる層であってもよく、右円偏光を反射でき、左円偏光を透過させうる層であってもよい。
第一の層及び第三の層は共に、照射された、回転方向D1を有する円偏光の全てを反射しうる層であってもよいし、回転方向D1を有する円偏光の一部を反射しうる層であってもよい。
また、第一の層及び第三の層は共に、照射された、回転方向D2を有する円偏光の全てを透過させうる層であってもよいし、回転方向D2を有する円偏光の一部を反射しうる層であってもよい。
第一の層と第三の層とは、同じ材料から形成されていてもよいし、互いに異なる材料から形成されていてもよい。
【0022】
第一の層として、コレステリック規則性を有する層(例えば、コレステリック規則性を有する、樹脂層)を用いうる。また、第三の層として、コレステリック規則性を有する樹脂フレークを含む層を用いうる。
【0023】
コレステリック規則性を有する樹脂層が有するコレステリック規則性とは、一平面上では分子軸が一定の方向に並んでいるが、それに重なる次の平面では分子軸の方向が少し角度をなしてずれ、さらに次の平面ではさらに角度がずれるというように、重なって配列している平面を順次透過して進むに従って当該平面中の分子軸の角度がずれて(ねじれて)いく構造である。即ち、層内の分子がコレステリック規則性を有する場合、分子は、樹脂層内において、多数の分子の層をなす態様で整列する。かかる多数の分子の層の中のある層Aにおいては、分子の軸がある一定の方向となるよう分子が整列し、それに隣接する層Bでは、層Aにおける方向と角度を成してずれた方向に分子が整列し、それにさらに隣接する層Cでは層Bにおける方向と角度を成してさらにずれた方向に分子が整列する。このように、多数の分子の層において、分子の軸の角度が連続的にずれて、分子がねじれる構造が形成される。このように分子軸の方向がねじれてゆく構造は光学的にカイラルな構造となる。
以下、コレステリック規則性を有する樹脂層をコレステリック樹脂層ともいう。
【0024】
コレステリック樹脂層は、通常、円偏光分離機能を有する。すなわち、コレステリック樹脂層は、右円偏光及び左円偏光のうちの一方の円偏光を透過させ、他方の円偏光の一部又は全部を反射する性質を有する。コレステリック樹脂層における反射は、円偏光を、そのキラリティを維持したまま反射する。
【0025】
円偏光分離機能を発揮する波長は、コレステリック樹脂層におけるらせん構造のピッチに依存する。らせん構造のピッチとは、らせん構造において分子軸の方向が平面を進むに従って少しずつ角度がずれていき、そして再びもとの分子軸方向に戻るまでの平面法線方向の距離である。このらせん構造のピッチの大きさを変えることによって、円偏光分離機能を発揮する波長を変えることができる。
【0026】
コレステリック樹脂層は、例えば、樹脂層形成用の適切な支持体上にコレステリック液晶組成物の膜を設け、前記コレステリック液晶組成物の膜を硬化して得ることができる。得られた層は、そのままコレステリック樹脂層として用いることができる。このコレステリック樹脂層は、右円偏光及び左円偏光の一方を反射しそれ以外の円偏光を透過させうる材料自体の膜からなる層となる。よって、コレステリック樹脂層自体を、第一の層として用いうる。
【0027】
コレステリック樹脂層を形成するためのコレステリック液晶組成物としては、例えば、液晶性化合物を含有し、支持体上に膜を形成した際にコレステリック液晶相を呈しうる組成物を用いることができる。ここで液晶性化合物としては、高分子化合物である液晶性化合物、及び重合性液晶性化合物を用いることができる。高い熱安定性を得る上では、重合性液晶性化合物を用いることが好ましい。かかる重合性液晶性化合物を、コレステリック規則性を呈した状態で重合させることにより、コレステリック液晶組成物の膜を硬化させ、コレステリック規則性を呈したまま硬化した非液晶性の樹脂層を得ることができる。
【0028】
コレステリック規則性を有する樹脂フレークは、樹脂からなる、コレステリック規則性を有する小片である。コレステリック規則性を有する小片は、右円偏光及び左円偏光の一方を反射し他方の円偏光を透過させうる。小片の集合体を含む層は、右円偏光及び左円偏光の一方を散乱反射し、他方の円偏光を透過させうる。
【0029】
コレステリック樹脂層は、破砕物とした場合においても、可視光領域の少なくとも一部において右円偏光及び左円偏光の一方を反射し他方の円偏光を透過させうるので、当該破砕物を、コレステリック規則性を有する樹脂フレークとして用いるのが好ましい。
コレステリック樹脂層を第一の層として用い、樹脂フレークを第三の層の材料として用いる場合、樹脂フレークは、第一の層としてのコレステリック樹脂層とは異なる樹脂層を破砕して得られる破砕物であってもよい。
しかし、材料を統一して製造コストを抑制する観点から、第三の層の材料である樹脂フレークは、第一の層として用いるコレステリック樹脂層と同一の層を破砕して得られる破砕物であることが好ましい。
【0030】
コレステリック規則性を有する樹脂のフレークは、コレステリック樹脂層から、例えば特許第6142714号公報に記載の剥離片の製造方法等により製造することができる。
【0031】
コレステリック規則性を有する樹脂のフレークとともに、偏光特性を有さない材料のフレークを用いうる。偏光特性を有さないフレークとしては、例えば、カーボンブラック、元素周期表の第4周期の3族~11族に属する金属の酸化物、窒化物、及び窒酸化物から選ばれる少なくとも1種以上のフレークが挙げられる。これらは、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0032】
第一の層が、コレステリック規則性を有する層である場合において、第一の層は、非偏光についての反射率が、波長範囲420nm以上650nm以下において35%以上50%以下であることが好ましい。
これにより、第一の層が、波長範囲420nm以上650nm以下という広い可視光領域において良好な偏光分離機能を有することができ、その結果、第一の層側から観察した場合の第三の層の色味をより鮮明にすることができる。
【0033】
また、第三の層が、コレステリック規則性を有する樹脂フレークを含む層である場合において、第三の層に含まれる樹脂フレークは、非偏光についての反射率が、波長範囲420nm以上650nm以下において35%以上50%以下であることが好ましい。これにより、樹脂フレークが光を効果的に散乱反射する。その結果、表示媒体を第一の層側から観察した場合に視認される光と第三の層側から観察した場合に視認される光との色の差をより容易に認識できる。
ここで、樹脂フレークの材料である、コレステリック樹脂層について反射率を測定し、その値を樹脂フレークの反射率の値としうる。
【0034】
波長領域420nm以上650nm以下における反射率が高い好適なコレステリック樹脂層としては、例えば、(i)らせん構造のピッチの大きさを段階的に変化させたコレステリック樹脂層、(ii)らせん構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂層、などが挙げられる。
【0035】
(i)らせん構造のピッチを段階的に変化させたコレステリック樹脂層は、らせん構造のピッチが異なる複数のコレステリック樹脂層を形成することによって得ることができる。具体例を挙げると、このようなコレステリック樹脂層は、予めらせん構造のピッチが異なる複数のコレステリック樹脂層を作製した後に、各層を粘着剤又は接着剤を介して固着することによって製造しうる。又は、あるコレステリック樹脂層を形成した上に、他のコレステリック樹脂層を順次形成していくことによって、製造しうる。
【0036】
(ii)らせん構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂層は、その製法によって特に制限されないが、このようなコレステリック樹脂層の製法の好ましい例としては、コレステリック樹脂層を形成するための重合性液晶性化合物を含有するコレステリック液晶組成物を、好ましくは配向膜等の他の層上に塗布して液晶組成物の層を得、次いで1回以上の、光照射及び/又は加温処理により、らせん構造のピッチを連続的に変化させた状態で当該層を硬化する方法が挙げられる。かかる操作は、コレステリック樹脂層の反射帯域を拡張する操作であるので、広帯域化処理と呼ばれる。広帯域化処理を行うことにより、例えば10μm以下という薄い厚みのコレステリック樹脂層であっても、広い反射帯域を実現できるので、好ましい。
このような広帯域化処理に供するコレステリック液晶組成物の好ましい態様としては、下記に詳述するコレステリック液晶組成物(X)を挙げることができる。
【0037】
らせん構造のピッチの大きさを連続的に変化させたコレステリック樹脂層は、一層のみを単独で用いてもよいし、複数層を重ねて用いてもよい。例えば、可視光領域のうちの一部の領域において円偏光分離機能を発揮するコレステリック樹脂層と、他の領域において円偏光分離機能を発揮するコレステリック樹脂層とを組み合わせ、可視光領域のうちの広い領域において円偏光分離機能を発揮する態様である、コレステリック樹脂層を用いてもよい。
【0038】
このように、コレステリック樹脂層は、一層のみからなる樹脂層でもよく、二層以上の層からなる樹脂層であってもよい。二層以上の層を備える場合、コレステリック樹脂層は、上記(i)のコレステリック樹脂層を2層以上備えていてもよく、上記(ii)のコレステリック樹脂層を2層以上備えていてもよく、これらの両方を組み合わせて2層以上備えていてもよい。コレステリック樹脂層を構成する層の数は、製造のし易さの観点から、1層~100層であることが好ましく、1層~20層であることがより好ましい。上に述べた広帯域化処理の結果、1層のみで高い反射率を有するコレステリック樹脂層を得た場合、当該層1層のみを用いるだけでも、好ましい態様の表示媒体を得ることができる。
【0039】
コレステリック液晶組成物(X)は、下記式(1)で表される、重合性非液晶性化合物、及び特定の、重合性液晶性化合物を含有する。また、式(1)で表される非液晶性化合物及び重合性液晶性化合物は、それぞれ、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
以下、これら各成分について順次説明する。
【0040】
1-A1-B-A2-R2 (1)
式(1)において、R1及びR2は、それぞれ独立して、炭素原子数1個~20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、炭素原子数1個~20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基、水素原子、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基からなる群より選択される基である。
【0041】
前記アルキル基及びアルキレンオキサイド基は、置換されていないか、若しくはハロゲン原子で1つ以上置換されていてもよい。さらに、前記ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基は、炭素原子数1~2個のアルキル基、及びアルキレンオキサイド基と結合していてもよい。
【0042】
1及びR2として好ましい例としては、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、アミノ基、及びシアノ基が挙げられる。
【0043】
また、R1及びR2の少なくとも一方は、反応性基であることが好ましい。R1及びR2の少なくとも一方として反応性基を有することにより、前記式(1)で表される重合性非液晶性化合物が硬化時にコレステリック樹脂層中に固定され、より強固な層を形成することができる。ここで反応性基とは、例えば、カルボキシル基、(メタ)アクリル基、エポキシ基、メルカプト基、イソシアネート基、及びアミノ基を挙げることができ、これらの基は任意の介在基を伴っていてもよい。
【0044】
式(1)において、A1及びA2はそれぞれ独立して1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキセン-1,4-ジイル基、4,4’-ビフェニレン基、4,4’-ビシクロヘキシレン基、及び2,6-ナフチレン基からなる群より選択される基を表す。前記1,4-フェニレン基、1,4-シクロヘキシレン基、シクロヘキセン-1,4-ジイル基、4,4’-ビフェニレン基、4,4’-ビシクロヘキシレン基、及び2,6-ナフチレン基は、置換されていないか、若しくはハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1個~10個のアルキル基、ハロゲン化アルキル基等の置換基で1つ以上置換されていてもよい。A1及びA2のそれぞれにおいて、2以上の置換基が存在する場合、それらは同一でも異なっていてもよい。
【0045】
1及びA2として特に好ましいものとしては、1,4-フェニレン基、4,4’-ビフェニレン基、及び2,6-ナフチレン基からなる群より選択される基が挙げられる。これらの芳香環骨格は脂環式骨格と比較して比較的剛直であり、重合性液晶性化合物のメソゲンとの親和性が高く、配向均一能がより高くなる。
【0046】
式(1)において、Bは、単結合、-O-、-S-、-S-S-、-CO-、-CS-、-OCO-、-CH2-、-OCH2-、-CH=N-N=CH-、-NHCO-、-OCOO-、-CH2COO-、及び-CH2OCO-からなる群より選択される。
Bとして特に好ましいものとしては、単結合、-OCO-及び-CH=N-N=CH-が挙げられる。
【0047】
式(1)の化合物は、キラリティを有することが好ましい。また、コレステリック液晶組成物(X)は、式(1)の化合物として、複数の光学異性体の混合物を含有することが好ましい。例えば、複数種類のエナンチオマー及び/又はジアステレオマーの混合物を含有してもよい。式(1)の化合物の少なくとも一種は、その融点が、50℃~150℃の範囲内であることが好ましい。
【0048】
式(1)の化合物は、Δnが高いことが好ましい。Δnが高い化合物を式(1)の化合物として用いることによって、コレステリック液晶組成物(X)としてのΔnを向上させることができ、円偏光を反射可能な波長範囲が広いコレステリック樹脂層を作製することができる。式(1)の化合物の少なくとも一種のΔnは、好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上である。Δnの上限値は、例えば0.50以下としうる。
【0049】
式(1)の化合物として特に好ましい具体例としては、例えば下記の化合物(A1)~(A10)が挙げられる:
【0050】
【化1】
【0051】
上記化合物(A3)において、「*」はキラル中心を表す。
【0052】
前記コレステリック液晶組成物(X)は、通常、1分子中に少なくとも2つ以上の反応性基を有する重合性液晶性化合物を含有する。
前記重合性液晶性化合物としては、式(2)で表される化合物を挙げることができる。
3-C3-D3-C5-M-C6-D4-C4-R4 (2)
【0053】
式(2)において、R3及びR4は、反応性基であり、それぞれ独立して、(メタ)アクリル基、(チオ)エポキシ基、オキセタン基、チエタニル基、アジリジニル基、ピロール基、ビニル基、アリル基、フマレート基、シンナモイル基、オキサゾリン基、メルカプト基、イソ(チオ)シアネート基、アミノ基、ヒドロキシル基、カルボキシル基、及びアルコキシシリル基からなる群より選択される基を表す。これらの反応性基を有することにより、コレステリック液晶組成物を硬化させた際に、実用に耐えうる膜強度を有した硬化物を得ることができる。
【0054】
式(2)において、D3及びD4は、単結合、炭素原子数1個~20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基、及び炭素原子数1~20個の直鎖状又は分岐鎖状のアルキレンオキサイド基からなる群より選択される基を表す。
【0055】
式(2)において、C3~C6は、単結合、-O-、-S-、-S-S-、-CO-、-CS-、-OCO-、-CH2-、-OCH2-、-CH=N-N=CH-、-NHCO-、-OCOO-、-CH2COO-、及び-CH2OCO-からなる群より選択される基を表す。
【0056】
式(2)において、Mは、メソゲン基を表す。具体的には、Mは、非置換又は置換基を有していてもよい、アゾメチン類、アゾキシ類、フェニル類、ビフェニル類、ターフェニル類、ナフタレン類、アントラセン類、安息香酸エステル類、シクロヘキサンカルボン酸フェニルエステル類、シアノフェニルシクロヘキサン類、シアノ置換フェニルピリミジン類、アルコキシ置換フェニルピリミジン類、フェニルジオキサン類、トラン類、アルケニルシクロヘキシルベンゾニトリル類の群から選択された2~4個の骨格を、-O-、-S-、-S-S-、-CO-、-CS-、-OCO-、-CH2-、-OCH2-、-CH=N-N=CH-、-NHCO-、-OCOO-、-CH2COO-、及び-CH2OCO-等の結合基によって結合された基を表す。
【0057】
前記メソゲン基Mが有しうる置換基としては、例えば、ハロゲン原子、置換基を有してもよい炭素数1~10のアルキル基、シアノ基、ニトロ基、-O-R5、-O-C(=O)-R5、-C(=O)-O-R5、-O-C(=O)-O-R5、-NR5-C(=O)-R5、-C(=O)-NR5、又は-O-C(=O)-NR5が挙げられる。ここで、R5及びRは、水素原子又は炭素数1~10のアルキル基を表す。R及びRがアルキル基である場合、当該アルキル基には、-O-、-S-、-O-C(=O)-、-C(=O)-O-、-O-C(=O)-O-、-NR6-C(=O)-、-C(=O)-NR6-、-NR6-、又は-C(=O)-が介在していてもよい(ただし、-O-及び-S-がそれぞれ2以上隣接して介在する場合を除く。)。ここで、R6は、水素原子又は炭素数1~6のアルキル基を表す。
【0058】
前記「置換基を有してもよい炭素数1~10個のアルキル基」における置換基としては、例えば、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、カルボキシル基、シアノ基、アミノ基、炭素原子数1~6個のアルコキシ基、炭素原子数2~8個のアルコキシアルコキシ基、炭素原子数3~15個のアルコキシアルコキシアルコキシ基、炭素原子数2~7個のアルコキシカルボニル基、炭素原子数2~7個のアルキルカルボニルオキシ基、炭素原子数2~7個のアルコキシカルボニルオキシ基等が挙げられる。
【0059】
また、重合性液晶性化合物は、非対称構造であることが好ましい。ここで非対称構造とは、式(2)において、メソゲン基Mを中心として、R3-C3-D3-C5-と-C6-D4-C4-R4が異なる構造のことをいう。重合性液晶性化合物として非対称構造のものを用いることにより、配向均一性をより高めることができる。
【0060】
重合性液晶性化合物のΔnは、好ましくは0.18以上、より好ましくは0.22以上である。Δn値が0.30以上の重合性液晶性化合物を用いると、紫外線吸収スペクトルの長波長側の吸収端が可視域に及ぶ場合がある。しかし、該スペクトルの吸収端が可視域に及ぶ重合性液晶性化合物も、当該スペクトルが所望する光学的性能に悪影響を及ぼさない限り、使用可能である。このような高いΔnを有する重合性液晶性化合物を用いることにより、高い光学的性能(例えば、円偏光の選択反射性能)を有するコレステリック樹脂層を得ることができる。Δnの上限値は、例えば0.50以下としうる。
【0061】
重合性液晶性化合物の好ましい具体例としては、以下の化合物(B1)~(B9)が挙げられる。ただし、重合性液晶性化合物は、下記の化合物に限定されるものではない。
【0062】
【化2】
【0063】
コレステリック液晶組成物(X)において、(式(1)の重合性非液晶性化合物の合計重量)/(重合性液晶性化合物の合計重量)の重量比は、好ましくは0.05以上、より好ましくは0.1以上、特に好ましくは0.15以上であり、好ましくは1以下、より好ましくは0.65以下、特に好ましくは0.45以下である。前記の重量比を前記範囲の下限値以上にすることにより、配向均一性を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、配向均一性を高くでき、液晶相の安定性を高くでき、さらには液晶組成物としてのΔnを高くして所望の光学的性能(例えば、円偏光を選択的に反射させる特性)を安定して得ることができる。ここで、合計重量とは、1種類を用いた場合にはその重量を示し、2種類以上を用いた場合には合計の重量を示す。
【0064】
コレステリック液晶組成物(X)においては、式(1)の化合物の分子量が600未満であることが好ましく、重合性液晶性化合物の分子量が600以上であることが好ましい。これにより、式(1)の化合物がそれよりも分子量の大きい重合性液晶性化合物の隙間に入り込むことができ、配向均一性を向上させることができる。
【0065】
コレステリック液晶組成物(X)等のコレステリック液晶組成物は、硬化後の膜強度向上及び耐久性向上のために、任意に架橋剤を含有しうる。架橋剤としては、コレステリック液晶組成物の膜の硬化時に同時に反応したり、硬化後に熱処理を行って反応を促進したり、又は湿気により自然に反応が進行して、コレステリック樹脂層の架橋密度を高めることができ、かつ配向均一性を悪化させないものを適宜選択し用いることができる。そのため、例えば、紫外線、熱、湿気等で硬化する任意の架橋剤を好適に使用できる。架橋剤としては、例えば、多官能アクリレート化合物;エポキシ化合物;イソシアネート化合物;ポリオキサゾリン化合物;アルコキシシラン化合物;が挙げられる。また、架橋剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、架橋剤の反応性に応じて公知の触媒を用いてもよい。触媒を用いることにより、コレステリック樹脂層の膜強度及び耐久性向上に加えて、生産性を向上させることができる。
【0066】
コレステリック液晶組成物は、任意に光開始剤を含有しうる。光開始剤としては、例えば、紫外線又は可視光線によってラジカル又は酸を発生させる公知の化合物が使用できる。光開始剤の具体例としては、ベンゾイン、ベンジルジメチルケタール、ベンゾフェノン、ビアセチル、アセトフェノン、ミヒラーケトン、ベンジル、ベンジルイソブチルエーテル、テトラメチルチウラムモノ(ジ)スルフィド、2,2-アゾビスイソブチロニトリル、2,2-アゾビス-2,4-ジメチルバレロニトリル、ベンゾイルパーオキサイド、ジ-tert-ブチルパーオキサイド、1-ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、2-ヒドロキシ-2-メチル-1-フェニル-プロパン-1-オン、1-(4-イソプロピルフェニル)-2-ヒドロキシ-2-メチルプロパン-1-オン、チオキサントン、2-クロロチオキサントン、2-メチルチオキサントン、2,4-ジエチルチオキサントン、メチルベンゾイルフォーメート、2,2-ジエトキシアセトフェノン、β-アイオノン、β-ブロモスチレン、ジアゾアミノベンゼン、α-アミルシンナミックアルデヒド、p-ジメチルアミノアセトフェノン、p-ジメチルアミノプロピオフェノン、2-クロロベンゾフェノン、p,p’-ジクロロベンゾフェノン、p,p’-ビスジエチルアミノベンゾフェノン、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンゾインn-プロピルエーテル、ベンゾインn-ブチルエーテル、ジフェニルスルフィド、ビス(2,6-メトキシベンゾイル)-2,4,4-トリメチル-ペンチルフォスフィンオキサイド、2,4,6-トリメチルベンゾイルジフェニル-フォスフィンオキサイド、ビス(2,4,6-トリメチルベンゾイル)-フェニルフォスフィンオキサイド、2-メチル-1[4-(メチルチオ)フェニル]-2-モルフォリノプロパン-1-オン、2-ベンジル-2-ジメチルアミノ-1-(4-モルフォリノフェニル)-ブタン-1-オン、アントラセンベンゾフェノン、α-クロロアントラキノン、ジフェニルジスルフィド、ヘキサクロルブタジエン、ペンタクロルブタジエン、オクタクロロブテン、1-クロルメチルナフタリン、1,2-オクタンジオン、1-[4-(フェニルチオ)フェニル-2-(o-ベンゾイルオキシム)]、1-[9-エチル-6-(2-メチルベンゾイル)-9H-カルバゾール-3-イル]エタノン1-(o-アセチルオキシム)などのカルバゾールオキシム化合物、(4-メチルフェニル)[4-(2-メチルプロピル)フェニル]ヨードニウムヘキサフルオロフォスフェート、3-メチル-2-ブチニルテトラメチレンスルホニウムヘキサフルオロアンチモネート、ジフェニル-(p-フェニルチオフェニル)スルホニウムヘキサフルオロアンチモネート等が挙げられる。また、これらは1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。さらに、必要に応じて公知の光増感剤又は重合促進剤としての三級アミン化合物を用いて、硬化性をコントロールしてもよい。
【0067】
光開始剤の量は、コレステリック液晶組成物中0.03重量%~7重量%であることが好ましい。光開始剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、重合度を高くできるので、コレステリック樹脂層の膜強度を高めることができる。また、上限値以下にすることにより、液晶材料の配向を良好にできるので、コレステリック液晶組成物の液晶相を安定にできる。
【0068】
コレステリック液晶組成物は、任意に界面活性剤を含有しうる。界面活性剤としては、例えば、配向を阻害しないものを適宜選択して使用しうる。このような界面活性剤としては、例えば、疎水基部分にシロキサン又はフッ化アルキル基を含有するノニオン系界面活性剤が好適に挙げられる。中でも、1分子中に2個以上の疎水基部分を持つオリゴマーが特に好適である。これらの界面活性剤の具体例としては、OMNOVA社のPolyFoxのPF-151N、PF-636、PF-6320、PF-656、PF-6520、PF-3320、PF-651、PF-652;ネオス社のフタージェントのFTX-209F、FTX-208G、FTX-204D;セイミケミカル社のサーフロンのKH-40;等を用いることができる。また、界面活性剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0069】
界面活性剤の量は、コレステリック液晶組成物を硬化して得られる硬化膜中の界面活性剤の量が0.05重量%~3重量%となるようにすることが好ましい。界面活性剤の量を前記範囲の下限値以上にすることにより、空気界面における配向規制力を高くできるので、配向欠陥を抑制できる。また、上限値以下にすることにより、過剰の界面活性剤が液晶分子間に入り込むことによる配向均一性の低下を抑制できる。
【0070】
コレステリック液晶組成物は、任意にカイラル剤を含有しうる。通常、コレステリック樹脂層のねじれ方向は、使用するカイラル剤の種類及び構造により適宜選択できる。ねじれを右方向とする場合には、右旋性を付与するカイラル剤を用い、ねじれ方向を左方向とする場合には、左旋性を付与するカイラル剤を用いることで、実現できる。カイラル剤の具体例としては、特開2005-289881号公報、特開2004-115414号公報、特開2003-66214号公報、特開2003-313187号公報、特開2003-342219号公報、特開2000-290315号公報、特開平6-072962号公報、米国特許第6468444号明細書、国際公開第98/00428号、特開2007-176870号公報、等に掲載されるものを適宜使用することができ、例えばBASF社パリオカラーのLC756として入手できる。また、カイラル剤は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。
【0071】
カイラル剤の量は、所望する光学的性能を低下させない範囲で任意に設定しうる。カイラル剤の具体的な量は、コレステリック液晶組成物中で、通常1重量%~60重量%である。
【0072】
コレステリック液晶組成物は、必要に応じてさらに他の任意成分を含有しうる。この任意成分としては、例えば、溶媒、ポットライフ向上のための重合禁止剤、耐久性向上のための酸化防止剤、紫外線吸収剤、光安定化剤等を挙げることができる。また、これらの任意成分は、1種類を単独で用いてもよく、2種類以上を任意の比率で組み合わせて用いてもよい。これらの任意成分の量は、所望する光学的性能を低下させない範囲で任意に設定しうる。
【0073】
コレステリック液晶組成物の製造方法は、特に限定されず、上記各成分を混合することにより製造することができる。
【0074】
コレステリック樹脂層は、例えば、透明樹脂等のフィルムからなる支持体の表面上に、必要に応じてコロナ放電処理及びラビング処理等の処理を施し、さらに必要に応じて配向膜を設け、さらにこの面上にコレステリック液晶組成物の膜を設け、さらに必要に応じて配向処理及び/又は硬化の処理を行うことにより、得ることができる。
【0075】
支持体上又は配向膜上へのコレステリック液晶組成物の塗布は、公知の方法、例えば押し出しコーティング法、ダイレクトグラビアコーティング法、リバースグラビアコーティング法、ダイコーティング法、バーコーティング法等により実施することができる。
【0076】
配向処理は、例えばコレステリック液晶組成物の膜を50℃~150℃で0.5分間~10分間加温することにより行うことができる。配向処理を施すことにより、膜中のコレステリック液晶組成物を良好に配向させることができる。
【0077】
硬化の処理は、1回以上の光照射と加温処理との組み合わせにより行うことができる。
加温条件は、例えば、好ましくは40℃以上、より好ましくは50℃以上、また、好ましくは200℃以下、より好ましくは140℃以下の温度において、好ましくは1秒以上、より好ましくは5秒以上、また、好ましくは3分以下、より好ましくは120秒以下の時間としうる。
また、光照射に用いる光とは、可視光のみならず紫外線及びその他の電磁波をも含む。光照射は、例えば、波長200nm~500nmの光を0.01秒~3分照射することにより行うことができる。
【0078】
ここで、0.01mJ/cm~50mJ/cm2の微弱な紫外線照射と加温とを複数回交互に繰り返すことにより、らせん構造のピッチの大きさを連続的に大きく変化させた、反射帯域の広い円偏光分離機能を得ることができる。さらに、上記の微弱な紫外線照射等による反射帯域の拡張を行った後に、50mJ/cm~10,000mJ/cm2といった比較的強い紫外線を照射し、液晶性化合物を完全に重合させることにより、コレステリック樹脂層を得ることができる。上記の反射帯域の拡張及び強い紫外線の照射は、空気下で行ってもよく、又はその工程の一部又は全部を、酸素濃度を制御した雰囲気(例えば、窒素雰囲気下)中で行ってもよい。
【0079】
配向膜等の他の層上へのコレステリック液晶組成物の塗布及び硬化の工程は、1回に限られず、塗布及び硬化を複数回繰り返して2層以上のコレステリック樹脂層を形成してもよい。ただし、コレステリック液晶組成物(X)等のコレステリック液晶組成物を用いることにより、1回のみのコレステリック液晶組成物の塗布及び硬化によっても、良好に配向したΔnが0.18以上の重合性液晶性化合物を含み、かつ5μm以上といった厚みのコレステリック樹脂層を容易に形成することができる。
【0080】
このようにして得られたコレステリック樹脂層は、支持体及び配向膜とともにそのまま第一の層として用いうる。また、必要に応じて支持体等を剥離しコレステリック樹脂層のみを転写して第一の層として用いうる。
【0081】
[1.3.第二の層]
第二の層は、位相差層である。位相差層は、層への入射光の偏光状態を変化させうる層である。位相差層は、一軸性であっても、二軸性であってもよい。位相差層の例としては、nx>ny≒nzの特性を有する、いわゆるポジティブAプレート;nz≒nx>nyの特性を有する、いわゆるネガティブAプレート;nz>nx≒nyの特性を有する、いわゆるポジティブCプレート;nx≒ny>nzの特性を有する、いわゆるネガティブCプレート;nz>nx>nyの特性を有する、いわゆるポジティブBプレート;nx>ny>nzの特性を有する、いわゆるネガティブBプレート;nx>nz>nyの特性を有する、いわゆるZプレート;が挙げられる。
中でも製造が容易であり、面内における位相差の発現が容易であることから、ポジティブAプレート、又はネガティブAプレートが好ましい。
【0082】
位相差層の例としては、熱可塑性樹脂より形成される樹脂フィルムに延伸処理を施した延伸フィルム、及び重合性液晶性化合物を含む液晶組成物を所定の方向に配向させた後、配向を保持させたまま硬化させて得られる液晶硬化フィルムが挙げられる。
【0083】
延伸フィルムの材料としては、固有複屈折が正の材料;固有複屈折が負の材料;及び、固有複屈折が正の材料と負の材料とを任意の割合で組み合わせた材料のいずれを用いてもよく、位相差層の所望の特性に応じて適宜材料を選択してよい。
【0084】
延伸フィルムを形成する材料の具体例としては、ポリエチレン樹脂、ポリプロピレン樹脂等のポリオレフィン樹脂;ノルボルネン系樹脂等の脂環式構造を含有する重合体を含む樹脂;ポリスチレン等のビニル芳香族化合物重合体樹脂;トリアセチルセルロース樹脂等のセルロース系樹脂;ポリイミド樹脂;ポリアミドイミド樹脂;ポリアミド樹脂;ポリエーテルイミド樹脂;ポリエーテルエーテルケトン樹脂;ポリエーテルケトン樹脂;ポリケトンサルファイド樹脂;ポリエーテルスルホン樹脂;ポリスルホン樹脂;ポリフェニレンサルファイド樹脂;ポリフェニレンオキサイド樹脂;ポリエチレンテレフタレート樹脂;ポリブチレンテレフタレート樹脂;ポリエチレンナフタレート樹脂;ポリアセタール樹脂;ポリカーボネート樹脂;ポリアリレート樹脂;(メタ)アクリル樹脂;ポリビニルアルコール樹脂;(メタ)アクリル酸エステル-ビニル芳香族化合物共重合体樹脂;イソブテン/N-メチルマレイミド共重合体樹脂;スチレン/アクリルニトリル共重合体樹脂;これらの樹脂の組み合わせ;などが挙げられる。
【0085】
延伸フィルムを形成する樹脂としては、脂環式構造を含有する重合体を含む樹脂が好ましい。以下、脂環式構造を含有する重合体を、適宜「脂環式構造含有重合体」ということがある。脂環式構造含有重合体は、繰り返し単位中に脂環式構造を含有する重合体である。脂環式構造含有重合体の例としては、環状オレフィンを単量体として用いた重合反応によって得られうる重合体;及びその水素化物が挙げられる。また、前記の脂環式構造含有重合体としては、主鎖中に脂環式構造を含有する重合体、及び、側鎖に脂環式構造を含有する重合体のいずれも用いることができる。中でも、脂環式構造含有重合体は、主鎖に脂環式構造を含有することが好ましい。脂環式構造としては、例えば、シクロアルカン構造、シクロアルケン構造等が挙げられるが、熱安定性等の観点からシクロアルカン構造が好ましい。
【0086】
脂環式構造含有重合体は、例えば、(1)ノルボルネン系重合体、(2)単環の環状オレフィン重合体、(3)環状共役ジエン重合体、(4)ビニル脂環式炭化水素重合体、(5)これらの水素化物が挙げられる。これらの中でも、透明性及び成形性の観点から、ノルボルネン系重合体及びその水素化物がより好ましい。
【0087】
ノルボルネン系重合体としては、例えば、ノルボルネン系モノマーの開環重合体、ノルボルネン系モノマーと開環共重合可能なその他のモノマーとの開環共重合体、及びそれらの水素化物;ノルボルネン系モノマーの付加重合体、ノルボルネン系モノマーと共重合可能なその他のモノマーとの付加共重合体などが挙げられる。これらの中でも、透明性の観点から、ノルボルネン系モノマーの開環重合体水素化物が特に好ましい。
【0088】
脂環式構造含有重合体を含む樹脂としては、様々な商品が市販されているので、それらのうち、所望の特性を有するものを適宜選択し、使用しうる。かかる市販品の例としては、商品名「ZEONOR」(日本ゼオン株式会社製)、「アートン」(JSR株式会社製)、「アペル」(三井化学株式会社製)、「TOPAS」(ポリプラスチックス社製)の製品群が挙げられる。
【0089】
これら樹脂を材料として、キャスト成形法、押出成形法、インフレーション成形法などの方法によって樹脂フィルムを得て、樹脂フィルムを延伸することにより、位相差層としての延伸フィルムを得られうる。
【0090】
第二の層は、面内方向におけるレターデーションReが、好ましくは40nm以上、より好ましくは300nm以上であり、好ましくは1600nm以下、より好ましくは1250nm以下である。
第二の層の面内方向におけるレターデーションReが、前記下限値以上であることにより、第二の層が、入射光に大きな位相差を与えて出射して、表示媒体を第一の層側から観察した場合に視認される光と第三の層側から観察した場合に視認される光との色の差をより大きくできる。
第二の層の面内方向におけるレターデーションReが、前記上限値以下であることにより、非偏光についての表示媒体の反射率を、可視光域において極大及び極小を多く持たない値としうる。反射スペクトルが、極大及び極小を多くもたない場合、肉眼視においてより正確に反射光の色が認識されうる。その結果、第一の層側から観察した場合に視認される光と第三の層側から観察した場合に視認される光との色の差を、肉眼視でより容易に識別できる。
【0091】
第二の層の波長400nm、560nm、及び650nmにおける、面内方向のレターデーションReを、それぞれRe(400)、Re(560)、及びRe(650)とする。
Re(400)/Re(560)の値は、好ましくは0.8以上、より好ましくは1.0以上であり、上限値は、例えば、1.3以下としうる。
Re(650)/Re(560)の値は、好ましくは1.1以下、より好ましくは1.000以下であり、下限値は、例えば、0.8以上としうる。
第二の層において、Re(400)/Re(560)の値及び/又はRe(650)/Re(560)の値が、前記範囲内に収まることで、第二の層が、異なる波長の光に、互いに大きく異なった位相差を与えることができる。その結果、表示媒体を第一の層側から観察した場合に視認される光と第三の層側から観察した場合に視認される光との色の差をより大きくできる。
【0092】
[1.4.表示媒体の作用]
次に、表示媒体の作用について以下説明する。
図4は、第三の層側から非偏光を照射した場合の、表示媒体の反射光の状態を説明する、模式図である。図5は、第一の層側から非偏光を照射した場合の、表示媒体の反射光の状態を説明する、模式図である。
図4に示すとおり、表示媒体100の第三の層30側から、非偏光A1を照射すると、第三の層30は、回転方向D1を有する円偏光A1Rを反射し、第三の層30の選択反射帯域に応じた色が視認される。第三の層30は、回転方向D2を有する円偏光B1を透過させ、円偏光B1は第二の層20及び第一の層10を経て、吸収層200で吸収される。
【0093】
図5に示すとおり、表示媒体100の第一の層10側から、非偏光A2を照射すると、第一の層10は、回転方向D2を有する円偏光A3Lを透過させる。
円偏光A3Lは、位相差層である第二の層20によって、位相差が与えられて偏光状態が変化する。その結果、第二の層20は、回転方向D1を有する円偏光と回転方向D2を有する円偏光とを含む、円偏光A4RLを透過させる。
第三の層30は、円偏光A4RLのうち、回転方向D1を有する円偏光A5Rを反射し、回転方向D2を有する円偏光B2を透過させる。円偏光B2は、吸収層200で吸収される。通常、円偏光A4RLにおいて、回転方向D1を有する円偏光と回転方向D2を有する円偏光との割合は、波長によって異なるため、円偏光A5Rの強度は、波長によって異なる。
円偏光A5Rは、第二の層20に入射し、位相差が与えられて偏光状態が変化する。その結果、第二の層20は、回転方向D1を有する円偏光と回転方向D2を有する円偏光とを含む、円偏光A6RLを透過させる。
第一の層10は、円偏光A6RLのうち、回転方向D2を有する円偏光A7Lを透過させる。通常、円偏光A6RLにおいて、回転方向D1を有する円偏光と回転方向D2を有する円偏光との割合は、波長によって異なるため、円偏光A7Lの強度は、波長によって異なる。したがって、円偏光A7Lの色は、第二の層20を透過していない円偏光A1Rとは異なる。
このように、表示媒体100の第三の層30側から、非偏光を照射したときの、表示媒体100の反射光A1Rの色は、表示媒体100の第一の層10側から、非偏光A2を照射したときの、表示媒体100の反射光A7Lの色と、異なる。
【0094】
第一の層10を、コレステリック規則性を有する層とし、第三の層30を、コレステリック規則性を有する樹脂フレークを含む層としたときは、表示媒体に更に以下の作用が加わる。
第三の層30側から、非偏光A1を照射したとき、第三の層30は、非偏光A1のうち、回転方向D1である円偏光を散乱反射し、第三の層30が反射する円偏光A1Rは、散乱光として視認される。第一の層10側から、非偏光A2を照射したとき、第一の層10が出射する円偏光A7Lは、散乱光として視認される。散乱光は、正反射光との区別が容易である。また、第三の層30が厚み方向において重なっていない、表示媒体100の領域からの反射光は、正反射光である。したがって、第三の層30の形状を、第三の層30側から非偏光を照射して観察した場合においても、第一の層10側から非偏光を照射して観察した場合においても、より容易に認識できる。
【0095】
[1.5.表示媒体の用途]
前記表示媒体が奏する作用により、表示媒体は、表示される色が、表裏で異なる。そのため、表示媒体は、真正性を識別するための識別媒体として機能し、表示媒体が真正であるか否かを、判別できる。表示媒体の真正性判定方法については、更に後述する。
また、表示媒体は、表裏で異なる色を表示できることを利用して、例えば、名刺などのカード、掲示用印刷物、装飾品などとして好適に用いられうる。
【0096】
[2.表示媒体の真正性判定方法]
前記表示媒体が奏する作用に基づき、前記表示媒体の真正性を下記の方法で判別できる。
本発明の一実施形態に係る、表示媒体の真正性判定方法は、
表示媒体が、半透明であることを確認する工程(1)、
前記表示媒体に、前記第三の層側から非偏光を照射して、前記表示媒体の反射光を前記第三の層側から観察し、前記第三の層による色情報C3を取得する工程(2)、
前記表示媒体に、前記第一の層側から非偏光を照射して、前記表示媒体の反射光を前記第一の層側から観察し、前記第一の層による色情報C1を取得する工程(3)、及び
前記色情報C3と前記色情報C1とを比較し、前記色情報C3と前記色情報C1とが同一ではないことを判定する工程(4)
を含む。
工程(1)は、工程(2)~(4)の前に行ってもよいし、後に行ってもよい。
工程(2)の後に工程(3)を行ってもよいし、工程(3)の後に工程(2)を行ってもよい。
工程(4)は、通常、工程(2)及び工程(3)の後に行われる。
【0097】
[2.1.工程(1)]
工程(1)では、表示媒体が半透明であることを確認する。ここで、半透明であるとは、表示媒体に非偏光を入射させた場合に、表示媒体が30%以上の透過率を有することをいう。表示媒体が半透明でない場合は、表示媒体が円偏光分離機能を有さない材料により製造された媒体であり、真正ではないと判定できる。
【0098】
[2.2.工程(2)]
工程(2)では、表示媒体に、第三の層側から非偏光を照射して、表示媒体の反射光を第三の層側から観察し、前記第三の層による色情報C3を取得する。色情報C3の例としては、明度、色相、及び彩度が挙げられる。色情報C3は、肉眼視により定性的に得てもよいし、測色計などにより定量的に得てもよい。
表示媒体の反射光のみを観察するために、通常、光の吸収率の高い物体上に、表示媒体を重ねて工程(2)を行う。光の吸収率の高い物体の例としては、黒色紙が挙げられる。
【0099】
[2.3.工程(3)]
工程(3)では、表示媒体に、第一の層側から非偏光を照射して、表示媒体の反射光を第一の層側から観察し、第一の層による色情報C1を取得する。色情報C1の例としては、色情報C3の例として挙げた例と同一の情報が挙げられる。色情報C3と同様に、色情報C1は、肉眼視により定性的に得てもよいし、測色計などにより定量的に得てもよい。
表示媒体の反射光のみを観察するために、通常、光の吸収率の高い物体上に、表示媒体を重ねて工程(3)を行う。
工程(3)において、第一の層による色情報C1とは、第一の層が、第二の層及び第三の層と厚み方向において重なった領域についての色情報を意味する。
【0100】
[2.4.工程(4)]
工程(4)では、色情報C3と色情報C1とを比較し、色情報C3と色情報C1とが同一ではないことを判定する。工程(1)において、表示媒体が半透明であることが確認され、かつ、工程(4)において、色情報C3と色情報C1とが同一ではないと判定された場合に、表示媒体は真正であると判定されうる。
【0101】
色情報C3及びC1は、例えば、色空間CIE 1976 Lにおけるa値及びb値としうる。その場合、色情報C3と色情報C1とが同一でないことの判定は、例えば、第一の層側から観察された色の座標(a ,b )と第三の層側から観察された色の座標(a ,b )との距離(差Δ(1-3))が、所定の値以上であるか否かを判定することにより行いうる。具体的には、差Δ(1-3)が、好ましくは20以上、より好ましくは40以上である場合に、色情報C3と色情報C1とが同一でないと判定しうる。
【0102】
特別のビュワーを必要とせずに表示媒体の真正性判定を行う観点から、判定は、肉眼視で得られた定性的な色情報C3と、肉眼視で得られた定性的な色情報C1とを比較して行うことが好ましい。
【0103】
[3.表示媒体を含む物品]
前記表示媒体は、対象に、例えば証明書、タグなどの任意の形態で添付されて、表示媒体を含む物品とされうる。表示媒体が添付される対象としては、真正を識別すべき対象が挙げられる。
【実施例
【0104】
以下、実施例を示して本発明について具体的に説明する。ただし、本発明は以下に示す実施例に限定されるものではなく、本発明の請求の範囲及びその均等の範囲を逸脱しない範囲において任意に変更して実施しうる。
【0105】
以下の説明において、量を表す「%」及び「部」は、別に断らない限り、重量基準である。また、以下に説明する操作は、別に断らない限り、常温及び常圧の条件において行った。
【0106】
(平均粒子径の測定)
樹脂フレークの平均粒子径を、下記の方法で測定した。
まず、目開きの異なるいくつかの篩を用いて、その目開きを有する篩を通過する樹脂フレークの割合を測定する。そして、目開きの大きさと、その目開きを有する篩を通過する樹脂フレークの割合とから、樹脂フレークの粒子径分布を積算重量百分率で表す。この粒子径分布において、その重量の積算値が50%の粒子径を、平均粒子径とした。
【0107】
(色度)
表示媒体としての識別媒体につき、第一の層側から観察された、第三の層と厚み方向に重なった第一の層の部分(すなわち、文字パターン「GENUINE」の部分)における反射光の色度と、第三の層側から観察された、第三の層(文字パターン「GENUINE」の部分)における反射光の色度との差Δ(1-3)を、下記の方法で算出した。
まず、分光光度計(日本分光社製「UV-VIS550」)により、波長400nm以上780nm以下の範囲において、第一の層の側から文字パターン「GENUINE」の部分における反射率1を測定し、第三の層の側から文字パターン「GENUINE」の部分における反射率3を測定した。
分光光度計に付属した色計算ソフトウェアにより、反射光の光源としてD65光源を設定して、反射率1又は反射率3に基づき、反射光の色空間CIE 1976 Lにおけるa値及びb値を算出した。
第一の層側から観察された反射率1に基づき、第三の層と厚み方向に重なった第一の層の部分(文字パターン「GENUINE」の部分)における反射光についてa値及びb値を算出し、得られたa値及びb値をそれぞれa 及びb とした。
同様に、第三の層側から観察された反射率3に基づき、第三の層(文字パターン「GENUINE」の部分)における反射光についてa値及びb値を算出し、得られたa値及びb値をそれぞれa 及びb とした。
得られたa 、b 、a 、及びb から、下記式に基づき差Δ(1-3)を求めた。
Δ(1-3)=√{(a -a +(b -b
【0108】
(層の厚み)
デジタルマイクロメータ(ミツトヨ社製)により測定した。
【0109】
(面内方向のレターデーションRe)
第二の層としての位相差層について、波長400nm、波長560nm、波長650nmにおける、面内方向のレターデーションReを、位相差計(AXOMETRICS社製「Axoscan」)で測定した。
測定された面内方向のレターデーションReから、Re(400)/Re(560)の値、及びRe(650)/Re(560)の値を算出した。
ここで、波長400nm、波長560nm、波長650nmにおける、面内方向のレターデーションReを、それぞれRe(400)、Re(560)、及びRe(650)とする。
【0110】
[製造例A1]コレステリック規則性を有する層の製造
(液晶組成物L1の調製)
下表に示す配合で各成分を混合し、光硬化性の液晶組成物L1を調製した。
【0111】
【表1】
【0112】
液晶組成物L1の調製に用いた成分は、下記のとおりである。
【0113】
光重合性液晶性化合物1は、下記式(B5)で表される構造を有する化合物である。
【化3】
【0114】
光重合性非液晶性化合物は、下記式(A10)で表される構造を有する化合物である。
【化4】
【0115】
カイラル剤として、BASF社製「LC756」を用いた。
光開始剤としては、チバ・ジャパン社製「イルガキュアOXE02」を用いた。
界面活性剤としては、ネオス社製「フタージェント209F」を用いた。
【0116】
(長尺の複層フィルムの製造)
基材フィルムとして、面内の屈折率が等方性で長尺のポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム(東洋紡社製「PETフィルムA4100」;厚み100μm)を用意した。この基材フィルムをフィルム搬送装置の繰り出し部に取り付け、当該基材フィルムを長尺方向に搬送しながら以下の操作を行った。まず、搬送方向と平行な長尺方向にラビング処理を施した。次に、ラビング処理を施した面に、用意した液晶組成物L1を、ダイコーターを使用して塗布した。これにより、基材フィルムの片面に、未硬化状態の液晶組成物の膜を形成した。
【0117】
次いで、未硬化状態の液晶組成物の膜に、120℃で4分間の加温による配向処理を行い、次いで窒素雰囲気下で800mJ/cmの紫外線を照射して、液晶組成物の膜を完全に硬化させた。これにより、長尺のPETフィルムの片面に、表2に示す厚みの、コレステリック規則性を有する層(コレステリック樹脂層)を備える複層フィルムを得た。
【0118】
カイラル剤を含む液晶組成物L1は、表2に示す条件下で、コレステリック規則性を保持したまま硬化して、コレステリック規則性を有する層が得られる。
【0119】
【表2】
【0120】
(コレステリック規則性を有する層の反射率の測定)
得られたコレステリック樹脂層を含む複層フィルムから、PETフィルムを剥離して、コレステリック樹脂層を単層のフィルムとして得た。得られたコレステリック樹脂層に、非偏光(波長400nm~780nm)を入射し、反射率を、紫外可視分光光度計(UV-Vis 550、日本分光社製)を用いて測定した。
図6は、コレステリック樹脂層の、波長400nm~780nmにおける反射率の測定結果を示すグラフである。図6に示すとおり、コレステリック樹脂層は、波長420nm以上650nm以下の範囲において、反射率が35%以上50%以下であることが分かる。
【0121】
[製造例B1]コレステリック規則性を有する樹脂フレークを含む塗料の製造
(樹脂フレークの製造)
製造例A1で得られた複層フィルムを用いて、コレステリック規則性を有する樹脂フレークを製造した。
樹脂フレークを製造する装置として、図7に示す装置を用いた。図7は、樹脂フレークを製造する装置を模式的に示す側面図である。
【0122】
図7に示したように、フィルム送出部420、剥離部430、及び、フィルム回収部440を備える製造装置400を用意した。剥離部430は、鋭角に設けられた角部分435を有するバー434、及び、角部分435の直ぐ下流に設けられた空気を噴射しうるノズル436を備えていた。この際、バー434の角部分435の角度は、複層フィルム410を角度θ(45°)で折り返せるように設定した。角部分はR=0.2mm~0.3mmの面取り構造となっている。
【0123】
フィルム送出部420に、バー434の角部分435において支持体であるPETフィルム412よりもコレステリック樹脂層411を外にして複層フィルム410を折り返せる向きで、複層フィルム410を取り付けた。そして、フィルム回収部440によって複層フィルム410に対して搬送方向に張力を与えた状態で、フィルム送出部420から複層フィルム410を送り出した。この際、複層フィルム410に与える張力の大きさは、80N/mに設定した。また、ノズル436からは空気を圧力0.5MPaで噴射させた。
【0124】
複層フィルム410は、バー434の角部分435において折り返され、多くの亀裂が形成された。その後、ノズル436から噴射された空気により亀裂の形成されたコレステリック樹脂層411が剥離し吹き飛ばされ、剥離片411Aが得られた。得られた剥離片411Aを回収器により回収した。
【0125】
回収したコレステリック樹脂層の剥離片を、石臼式粉砕機(ウエスト社製「ミクロ・パウダーMPW-G008」)を用いて粉砕して、樹脂フレークを得た。得られた樹脂フレークの平均粒子径は、50μmであった。
【0126】
樹脂フレークの、非偏光についての反射率は、樹脂フレークの原料であるコレステリック樹脂層について測定された反射率と同じ値とする。したがって、樹脂フレークの非偏光についての反射率は、図6に示すとおり、波長420nm以上650nm以下の範囲において、35%以上50%以下である。
【0127】
(塗料の製造)
得られた樹脂フレークを顔料として用いて、下記方法により塗料を製造した。
バインダー溶液としてのスクリーンインキ(十条ケミカル社製「No.2500メジウム」)100重量部と、そのスクリーンインキの専用希釈剤(テトロン標準溶剤)10重量部と、前記のフレーク15重量部と、を混合して、塗料1を製造した。
【0128】
[製造例B2]
下記事項を変更した以外は製造例B1の(塗料の製造)と同様にして、塗料2を製造した。
・樹脂フレークの代わりに金属アルミニウムのフレーク(セイコーアドバンス社製「シルバー顔料 606H」)を用いた。
【0129】
[製造例B3]
金属アルミニウムを含む顔料(セイコーアドバンス社製「ハーフミラーZ シルバーR1」)を、溶剤(セイコーアドバンス社製「T-477」)で希釈し、塗料3を製造した。塗料3から、全光線透過率が50%である半透明のアルミニウム層が得られるように、希釈倍率を適宜調整した。
【0130】
[製造例C1]位相差層の製造
シクロオレフィン樹脂(日本ゼオン社製「ZEONOR 1215」)のペレットを用意した。ペレットを、単軸押出機(OCS社製)に供給して押出成形して、厚み200μmの押出フィルムを得た。
【0131】
得られた押出フィルム(長さ150mm×幅50mm)を、恒温槽付き引張試験機(インストロン社製)を用いて長さ方向に延伸し、表3に示す面内方向のレターデーションReを有する位相差層1を得た。延伸温度は、125℃とし、引張試験機のチャック間距離は50mmとし、延伸速度は100mm/minとした。延伸倍率は、表3に示すとおりとした。
【0132】
[製造例C2~C22]
延伸倍率を表3に示すとおりに変更した以外は、製造例C1と同様にして、位相差層2~22を得た。
【0133】
位相差層1~22の延伸倍率、面内方向レターデーションRe、層厚み、及び複屈折Δn、Re(400)/Re(560)の値、Re(650)/Re(560)の値を表3に示す。
【0134】
【表3】
【0135】
[実施例1]
(1-1.複層体の製造)
製造例A1で得られた複層フィルムが備えるコレステリック樹脂層を、シート状の粘着剤を用いて位相差層1と貼り合せた。粘着剤として、日東電工社製「透明粘着テープ LUCIACS CS9621T」(厚み25μm、可視光透過率:90%以上、面内方向レターデーションRe:3nm以下)を使用した。次いで、位相差層と貼り合せた複層フィルムからPETフィルムを剥離して、(コレステリック樹脂層)/(粘着剤層)/(位相差層)の層構成を有する、複層体1を得た。
【0136】
(1-2.表示媒体としての識別媒体の製造)
得られた複層体1の、位相差層上に、塗料1を用いてスクリーン印刷を施した。スクリーン印刷版として、文字パターン「GENUINE」が印刷できる、1インチ当たり100メッシュの版を用いた。次いで、複層体1を40℃に設定されたホットプレート上に載せ、10分間加熱して塗料を乾燥させた。これにより、(コレステリック樹脂層)/(粘着剤層)/(位相差層)/(乾燥された塗料1の層)がこの順で厚み方向に重なった部分を含む、表示媒体としての識別媒体1を得た。本識別媒体では、「コレステリック樹脂層」が第一の層に該当し、「位相差層」が第二の層に該当し、「乾燥された塗料1の層」が第三の層に該当する。塗料1は、コレステリック樹脂層から製造された樹脂フレークを含む。樹脂フレークは、コレステリック樹脂層が反射しうる円偏光と同一の回転方向の円偏光を反射でき、コレステリック樹脂層が透過させうる円偏光と同一の回転方向の円偏光を透過させうる。したがって、乾燥された塗料1の層は、コレステリック樹脂層が反射しうる円偏光と同一の回転方向の円偏光を反射でき、コレステリック樹脂層が透過させうる円偏光と同一の回転方向の円偏光を透過させうる。
【0137】
[実施例2~22]
下記事項を変更した以外は、実施例1と同様にして表示媒体としての識別媒体2~22を得た。
・(1-1.複層体の製造)において、位相差層1の代わりに、製造例C2~C22で得られた位相差層2~22を用いて、複層体2~22を得た。
・(1-2.表示媒体としての識別媒体の製造)において、複層体1の代わりに複層体2~22を用いて、識別媒体2~22を得た。
識別媒体2~22は、それぞれ、(コレステリック樹脂層)/(粘着剤層)/(位相差層)/(乾燥された塗料1の層)がこの順で厚み方向に重なった部分を含む。識別媒体2~22では、「コレステリック樹脂層」が第一の層に該当し、「位相差層」が第二の層に該当し、「乾燥された塗料1の層」が第三の層に該当する。
【0138】
[比較例1~3]
下記事項を変更した以外は、実施例1と同様にして表示媒体としての識別媒体C1~C3を得た。
・(1-1.複層体の製造)において、位相差層1の代わりに、製造例C4、C13、又はC21で得られた位相差層4、13、又は21を用いて、複層体C1~C3を得た。
・(1-2.表示媒体としての識別媒体の製造)において、複層体1の代わりに複層体C1~C3を用い、塗料1の代わりに、製造例B2で製造した塗料2を用いて、識別媒体C1~C3を得た。
【0139】
識別媒体C1~C3は、それぞれ、(コレステリック樹脂層)/(粘着剤層)/(位相差層)/(乾燥された塗料2の層)がこの順で厚み方向に重なった部分を含む。
【0140】
[比較例4]
(C4-1.複層体の製造)
製造例C4で得られた位相差層4の一方の面に、塗料3を用いてスクリーン印刷を施した。スクリーン印刷版として、1インチ当たり100メッシュの版を用いた。次いで、位相差層4を40℃に設定されたホットプレート上に載せ、10分間加熱して塗料を乾燥させた。これにより、位相差層4の一方の面に、全光線透過率50%である半透明のアルミニウム層を形成して、(乾燥された塗料3の層(アルミニウム層))/(位相差層)の構成を有する複層体C4を得た。
【0141】
(C4-2.表示媒体としての識別媒体の製造)
複層体1の代わりに、複層体C4を用いた以外は、実施例1(1-2.表示媒体としての識別媒体の製造)と同様にして識別媒体C4を得た。識別媒体C4は、(アルミニウム層)/(位相差層)/(乾燥された塗料1の層)がこの順で厚み方向に重なった部分を含む。
【0142】
[比較例5、6]
下記事項を変更した以外は、比較例4と同様にして、表示媒体としての識別媒体C5及びC6を得た。
・(C4-1.複層体の製造)において、位相差層4の代わりに、位相差層13又は21を用いて複層体C5又はC6を得た。
・(C4-2.表示媒体としての識別媒体の製造)において、複層体C4の代わりに、複層体C5又はC6を用いて識別媒体C5又はC6を得た。
【0143】
[比較例7]
比較例4の(C4-1.複層体の製造)で得られた複層体C4の、位相差層上に、塗料2を用いてスクリーン印刷を施した。スクリーン印刷版として、文字パターン「GENUINE」が印刷できる、1インチ当たり100メッシュの版を用いた。次いで、複層体C4を40℃に設定されたホットプレート上に載せ、10分間加熱して塗料を乾燥させた。これにより、(アルミニウム層)/(位相差層)/(乾燥された塗料2の層)がこの順で厚み方向に重なった部分を含む、表示媒体としての識別媒体C7を得た。
【0144】
[比較例8、9]
下記事項を変更した以外は、比較例7と同様にして、表示媒体としての識別媒体C8及びC9を得た。
・複層体C4の代わりに、比較例5、6で得られた複層体C5又はC6を用いて識別媒体C8又はC9を得た。
【0145】
[参考例R1]
製造例A1で得られた複層フィルムから、PETフィルムを剥離して、コレステリック樹脂層を単層のフィルムとして得た。得られたコレステリック樹脂層の一方の面に、塗料1を用いてスクリーン印刷を施した。スクリーン印刷版として、文字パターン「GENUINE」が印刷できる、1インチ当たり100メッシュの版を用いた。次いで、コレステリック樹脂層を40℃に設定されたホットプレート上に載せ、10分間加熱して塗料を乾燥させた。これにより、(コレステリック樹脂層)/(乾燥された塗料1の層)がこの順で厚み方向に重なった部分を含む、表示媒体としての識別媒体R1を得た。
【0146】
実施例、比較例、及び参考例の層構成及び評価結果を、下表に示す。
下表において、略号は下記の意味を表す。
CLCシート:コレステリック樹脂層
CLCフレーク:コレステリック樹脂層から製造された樹脂フレークを含む、塗料1の層
Alフレーク:金属アルミニウムのフレークを含む、塗料2の層
Alシート:塗料3から形成された半透明のアルミニウム層
【0147】
【表4】
【0148】
【表5】
【0149】
以上の結果から、以下の事項が分かる。
実施例1~22に係る識別媒体(表示媒体)は、Δ(1-3)が、20以上であり、肉眼視により、第三の層側から観察された色度と第一の層側から観察された色度との差があると判定できる。したがって、実施例1~22に係る識別媒体(表示媒体)は、特別なビュワーを必要とせず、真正な媒体であると判定できる。
第三の層が、円偏光分離機能を有さない、金属アルミニウムのフレークを含む層である比較例1~3に係る識別媒体(表示媒体);第一の層が、円偏光分離機能を有さない、半透明のアルミニウム層である比較例4~6に係る識別媒体(表示媒体);第三の層及び第一の層の双方が、円偏光分離機能を有さない層である比較例7~9に係る識別媒体(表示媒体)は、実施例1~22に係る識別媒体(表示媒体)と比較して、顕著にΔ(1-3)の値が小さく、20未満であり、肉眼視により、第三の層側から観察された色度と第一の層側から観察された色度との差があるとは判定できない。したがって、比較例1~9に係る識別媒体(表示媒体)は、真正な媒体であるとは判定できない。
【符号の説明】
【0150】
10…第一の層
20…第二の層
30…第三の層
100…表示媒体(識別媒体)
400…製造装置
410…複層フィルム
411…コレステリック樹脂層
412…支持体(PETフィルム)
411A…剥離片
420…フィルム送出部
430…剥離部
434…バー
435…角部分
436…ノズル
440…フィルム回収部
A10…領域
A20…領域
A30…領域
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7