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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】開環共重合体
(51)【国際特許分類】
   C08G 61/08 20060101AFI20240918BHJP
   C08L 65/00 20060101ALI20240918BHJP
   C08L 21/00 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C08G61/08
C08L65/00
C08L21/00
【請求項の数】 13
(21)【出願番号】P 2021565618
(86)(22)【出願日】2020-12-16
(86)【国際出願番号】 JP2020046943
(87)【国際公開番号】W WO2021125222
(87)【国際公開日】2021-06-24
【審査請求日】2023-10-03
(31)【優先権主張番号】P 2019227339
(32)【優先日】2019-12-17
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 拓郎
【審査官】小森 勇
(56)【参考文献】
【文献】特開2019-081840(JP,A)
【文献】国際公開第2018/079602(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/133028(WO,A1)
【文献】特開2011-126966(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 61/00-61/12
C08L 65/00-65/04
C08L 7/00-21/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(I)で表されるノルボルネン化合物由来の構造単位、単環の環状オレフィン由来の構造単位、および分岐構造単位を含む開環共重合体であって、
前記開環共重合体中の全繰り返し構造単位中における、前記分岐構造単位の含有割合が、0.005~0.08モル%である開環共重合体。
【化12】
(上記一般式(I)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20の鎖状飽和炭化水素基、または、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基を示し、mは0または1である。)
【請求項2】
前記開環共重合体中の全繰り返し構造単位中における、前記ノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合が、5モル%以上である請求項1に記載の開環共重合体。
【請求項3】
前記一般式(I)において、mが0である請求項1または2に記載の開環共重合体。
【請求項4】
前記一般式(I)において、R~Rが、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3のアルキル基である請求項1~3のいずれかに記載の開環共重合体。
【請求項5】
前記単環の環状オレフィンが、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、およびシクロオクテンからなる群より選択される少なくとも1種である請求項1~4のいずれかに記載の開環共重合体。
【請求項6】
前記分岐構造単位が、下記式(II)~式(V)のいずれかで表される分岐構造単位である請求項1~5のいずれかに記載の開環共重合体。
【化13】
(上記式(II)中、水素原子は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。)
【化14】
(上記式(III)中、水素原子は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。)
【化15】
(上記式(IV)中、水素原子は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。)
【化16】
(上記式(V)中、水素原子は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。)
【請求項7】
重量平均分子量が、150,000以上400,000以下である請求項1~6のいずれかに記載の開環共重合体。
【請求項8】
請求項1~7のいずれかに記載の開環共重合体を含むゴム組成物。
【請求項9】
架橋剤をさらに含有する請求項8に記載のゴム組成物。
【請求項10】
請求項9に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項11】
請求項8に記載のゴム組成物または請求項10に記載のゴム架橋物を成形してなる成形体。
【請求項12】
下記一般式(I)で表されるノルボルネン化合物と、単環の環状オレフィンと、分岐構造を形成可能な単量体と、を含む単量体混合物を開環メタセシス重合する開環共重合体の製造方法であって、
前記分岐構造を形成可能な単量体が、二重結合を1つ有する環構造を少なくとも2つ有する多環状ジオレフィン化合物、二重結合を1つ有する環構造と、ビニル基とを有する環状オレフィン化合物、および、ビニル基を3つ以上有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種である開環共重合体の製造方法。
【化17】
(上記一般式(I)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20の鎖状飽和炭化水素基、または、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基を示し、mは0または1である。)
【請求項13】
前記単量体混合物中における、分岐構造を形成可能な単量体の含有割合が、0.01~0.045モル%である請求項12に記載の開環共重合体の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、開環共重合体に関し、より詳しくは、ホットフロー性(クラムの互着のし難さ)に優れ、かつ、耐摩耗性に優れたゴム架橋物を与えることのできる開環共重合体および該開環共重合体の製造方法に関する。また、本発明は、このような開環共重合体を用いて得られるゴム組成物、該ゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物、および該ゴム組成物またはゴム架橋物を用いて得られる成形体にも関する。
【背景技術】
【0002】
一般に、シクロペンテンおよびノルボルネン化合物は、WClやMoClなどの周期表第6族遷移金属化合物と、トリイソブチルアルミニウム、ジエチルアルミニウムクロリド、テトラブチルスズなどの有機金属活性化剤とからなる、いわゆるチーグラー・ナッタ触媒の存在下で、メタセシス開環重合することで、不飽和の直鎖状の開環重合体を与えることが知られている。
【0003】
たとえば、特許文献1では、シクロペンテンおよびノルボルネン化合物からなる開環共重合体であって、共重合体中の全繰返し構造単位に対して、シクロペンテン由来の構造単位が40~90重量%であり、ノルボルネン化合物由来の構造単位が10~60重量%であり、かつ、重量平均分子量(Mw)が200,000~1,000,000である開環共重合体が開示されている。この特許文献1の技術によれば、シクロペンテンに、ノルボルネン化合物を開環共重合することにより、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性および低発熱性の向上を可能としている。
【0004】
また、たとえば、特許文献2では、メタセシス重合触媒下でシクロペンテンを開環重合するシクロペンテン開環重合体の製造方法であって、前記シクロペンテンに対して、0.001~1モル%の、ビニル基を有する環状オレフィンおよび/またはビニル基を3個以上有する化合物を、前記シクロペンテンと反応させることを特徴とするシクロペンテン開環重合体の製造方法が開示されている。この特許文献2の技術によれば、シクロペンテン開環共重合体が、分岐構造を有することにより、得られるシクロペンテン開環重合体のホットフロー性に優れたシクロペンテン開環共重合体を容易に製造することを可能としている。
【0005】
しかしながら、これらの特許文献1および特許文献2では、得られるゴム架橋物の耐摩耗性について、検討されていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】国際公開第2014/133028号
【文献】特開2011-126966号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、ホットフロー性(クラムの互着のし難さ)に優れ、かつ、耐摩耗性に優れたゴム架橋物を与えることができる開環共重合体および該開環共重合体の製造方法、ならびに、このような開環共重合体を用いて得られるゴム組成物、該ゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物、および該ゴム組成物またはゴム架橋物を用いて得られる成形体を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、特定の構造を有するノルボルネン化合物由来の構造単位、特定の単環の環状オレフィン由来の構造単位、および所定の割合の分岐構造単位を含む開環共重合体によれば、ホットフロー性に優れ、これにより、クラムの互着の発生を有効に防止することができ、しかも、耐摩耗性に優れたゴム架橋物を与えることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0009】
すなわち、本発明によれば、下記一般式(I)で表されるノルボルネン化合物由来の構造単位、単環の環状オレフィン由来の構造単位、および分岐構造単位を含む開環共重合体であって、前記開環共重合体中の全繰り返し構造単位中における、前記分岐構造単位の含有割合が、0.005~0.08モル%である開環共重合体が提供される。
【化1】
(上記一般式(I)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20の鎖状飽和炭化水素基、または、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基を示し、mは0または1である。)
【0010】
本発明の開環共重合体において、全繰り返し構造単位中における、前記ノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合が、5モル%以上であることが好ましい。
本発明の開環共重合体における前記一般式(I)において、mが0であることが好ましい。
本発明の開環共重合体における前記一般式(I)において、R~Rが、それぞれ独立して、水素原子または炭素数1~3のアルキル基であることが好ましい。
本発明の開環共重合体において、前記単環の環状オレフィンが、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテン、およびシクロオクテンからなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
本発明の開環共重合体において、前記分岐構造単位が、下記式(II)~式(V)のいずれかで表される分岐構造単位であることが好ましい。
【化2】
(上記式(II)中、水素原子は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。)
【化3】
(上記式(III)中、水素原子は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。)
【化4】
(上記式(IV)中、水素原子は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。)
【化5】
(上記式(V)中、水素原子は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。)
本発明の開環共重合体において、重量平均分子量が、150,000以上400,000以下であることが好ましい。
【0011】
また、本発明によれば、上記開環共重合体を含むゴム組成物が提供される。
本発明のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有することが好ましい。
【0012】
また、本発明によれば、上記ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物が提供される。
【0013】
また、本発明によれば、上記ゴム組成物または上記ゴム架橋物を成形してなる成形体が提供される。
【0014】
また、本発明によれば、下記一般式(I)で表されるノルボルネン化合物と、単環の環状オレフィンと、分岐構造を形成可能な単量体と、を含む単量体混合物を開環メタセシス重合する開環共重合体の製造方法であって、前記分岐構造を形成可能な単量体が、二重結合を1つ有する環構造を少なくとも2つ有する多環状ジオレフィン化合物、二重結合を1つ有する環構造と、ビニル基とを有する環状オレフィン化合物、および、ビニル基を3つ以上有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種である開環共重合体の製造方法が提供される。
【化6】
(上記一般式(I)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20の鎖状飽和炭化水素基、または、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基を示し、mは0または1である。)
【0015】
本発明の開環共重合体の製造方法において、前記単量体混合物中における分岐構造を形成可能な単量体の含有割合が、前記単量体混合物の全量に対して、0.01~0.045モル%であることが好ましい。
【発明の効果】
【0016】
本発明によれば、ホットフロー性に優れ、これにより、クラムの互着を有効に防止することができ、しかも、耐摩耗性に優れたゴム架橋物を与えることができる開環共重合体および該開環共重合体の製造方法、ならびに、このような開環共重合体を用いて得られるゴム組成物、該ゴム組成物を用いて得られるゴム架橋物、および該ゴム組成物またはゴム架橋物を用いて得られる成形体を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0017】
<開環共重合体>
本発明の開環共重合体は、下記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物由来の構造単位、単環の環状オレフィン由来の構造単位、および分岐構造単位を含む開環共重合体であって、前記開環共重合体中の全繰り返し構造単位中における、前記分岐構造単位の含有割合が、0.005~0.08モル%であるものである。
【化7】
(上記一般式(1)中、R~Rは、それぞれ独立して、水素原子、炭素数1~20の鎖状飽和炭化水素基、または、ハロゲン原子、ケイ素原子、酸素原子もしくは窒素原子を含む置換基を示し、mは0または1である。)
【0018】
本発明におけるノルボルネン化合物由来の構造単位を形成するための、上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物の具体例としては、たとえば、以下の化合物が挙げられる。
【0019】
2-ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、5-エチル-2-ノルボルネン、5-ブチル-2-ノルボルネン、5-ヘキシル-2-ノルボルネン、5-デシル-2-ノルボルネンなどの無置換または鎖状飽和炭化水素置換基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0020】
5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、5-ノルボルネン-2-カルボン酸エチル、2-メチル-5-ノルボルネン-2-カルボン酸メチル、2-メチル-5-ノルボルネン-2-カルボン酸エチルなどのアルコキシカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0021】
5-ノルボルネン-2-カルボン酸、5-ノルボルネン-2,3-ジカルボン酸などのヒドロキシカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0022】
5-ヒドロキシ-2-ノルボルネン、5-ヒドロキシメチル-2-ノルボルネン、5,6-ジ(ヒドロキシメチル)-2-ノルボルネン、5,5-ジ(ヒドロキシメチル)-2-ノルボルネン、5-(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)-2-ノルボルネン、および5-メチル-5-(2-ヒドロキシエトキシカルボニル)-2-ノルボルネンなどのヒドロキシル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0023】
5-ノルボルネン-2-カルバルデヒドなどのヒドロカルボニル基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0024】
3-メトキシカルボニル-5-ノルボルネン-2-カルボン酸などのアルコキシカルボニル基とヒドロキシカルボニル基とを有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0025】
酢酸5-ノルボルネン-2-イル、および酢酸2-メチル-5-ノルボルネン-2-イルなどのカルボニルオキシ基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0026】
5-ノルボルネン-2-カルボニトリル、および5-ノルボルネン-2-カルボキサミドなどの窒素原子を含む官能基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0027】
5-クロロ-2-ノルボルネンなどのハロゲン原子を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0028】
5-トリメトキシシリル-2-ノルボルネン、5-トリエトキシシリル-2-ノルボルネンなどのケイ素原子を含む官能基を有するビシクロ[2.2.1]ヘプト-2-エン類;
【0029】
上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組合せて用いてもよい。上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物としては、上記一般式(1)において、mが0である一般式で表されるものが好ましい。また、上記一般式(1)において、R~Rは、オレフィン性炭素-炭素二重結合を有さず、また、お互いに結合して、環を形成しない基であることが好ましく、同一であっても異なっていてもよい。R~Rとしては、水素原子または炭素数1~3のアルキル基がより好ましい。上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物としては、2-ノルボルネン、5-メチル-2-ノルボルネン、および5-エチル-2-ノルボルネンがより好ましく、本発明の効果がより得られやすいという観点より、2-ノルボルネンがさらに好ましい。
【0030】
本発明の開環共重合体中における、全繰り返し構造単位に対する、ノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは5~95モル%であり、より好ましくは10~90モル%であり、さらに好ましくは15~85モル%であり、より好ましくは20~80モル%、特に好ましくは20~50モル%である。ノルボルネン化合物由来の構造単位の含有割合を上記範囲とすることにより、ゴム架橋物とした際の耐摩耗性をより向上させることができる。
【0031】
本発明における単環の環状オレフィン由来の構造単位を形成するための、単環の環状オレフィンとしては、炭素-炭素不飽和結合を有する置換基を有さず、かつ、環状構造を1つのみ有するオレフィンであれば特に限定されないが、たとえば、シクロプロペン、シクロブテン、シクロペンテン、メチルシクロペンテン、シクロヘキセン、メチルシクロヘキセン、シクロヘプテン、シクロオクテンなどの環状モノオレフィン;シクロヘキサジエン、メチルシクロヘキサジエン、シクロオクタジエン、メチルシクロオクタジエンなどの環状ジオレフィン;などを挙げることができる。
【0032】
単環の環状オレフィンは、1種類を単独で使用しても2種類以上を組合せて用いてもよい。単環の環状オレフィンとしては、シクロペンテン、シクロヘキセン、シクロヘプテンおよびシクロオクテンが好ましく、本発明の効果がより得られやすいという観点より、シクロペンテンおよびシクロオクテンがより好ましく、シクロペンテンが特に好ましい。
【0033】
本発明の開環共重合体中における、全繰り返し構造単位に対する、単環の環状オレフィン由来の構造単位の含有割合は、特に限定されないが、好ましくは4.92~94.995モル%であり、より好ましくは9.925~89.99モル%であり、さらに好ましくは14.93~84.98モル%であり、特に好ましくは19.935~79.97モル%である。単環の環状オレフィン由来の構造単位の含有割合を上記範囲とすることにより、ゴム架橋物とした際の耐摩耗性をより向上させることができる。
【0034】
本発明における分岐構造単位を形成するための、分岐構造を形成可能な単量体としては、二重結合を1つ有する環構造を少なくとも2つ有する多環状ジオレフィン化合物、二重結合を1つ有する環構造と、ビニル基とを有する環状オレフィン化合物、および、ビニル基を3つ以上有する化合物からなる群より選択される少なくとも1種であることが好ましい。
【0035】
分岐構造単位として、二重結合を1つ有する環構造を少なくとも2つ有する多環状ジオレフィン化合物(以下、適宜、「多環状ジオレフィン化合物」とする。)に由来の構造単位を導入することで、重合体鎖中に、このような構造単位を起点とした4分岐構造を導入することができる。また、分岐構造単位として、二重結合を1つ有する環構造と、ビニル基とを有する環状オレフィン化合物(以下、適宜、「ビニル基含有環状オレフィン化合物」とする。)に由来の構造単位を導入することで、重合体鎖中に、このような構造単位を起点とした3分岐構造を導入することができる。また、分岐構造単位として、ビニル基を3個以上有する化合物に由来の構造単位を導入することで、重合体鎖中に、このような構造単位を起点とした3分岐以上の分岐構造を導入することができる。
【0036】
多環状ジオレフィン化合物に由来の構造単位を形成するための多環状ジオレフィン化合物としては、特に限定されないが、下記一般式(2)で表される化合物や、下記式(3)~(6)で表される化合物が挙げられる。
【化8】
上記一般式(2)中、R、Rは、炭素数1~6のアルキレン基であり、nは0~2の整数であり、上記一般式(2)中、水素原子は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。また、上記一般式(2)で表される化合物は、ノルボルネン化合物や単環の環状オレフィンと開環共重合した際に、上記一般式(2a)で表される分岐構造単位を与えることとなるものであり、上記一般式(2a)中、R、R、nは上記一般式(2)と同じであり、上記一般式(2a)中、水素原子は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。
【化9】
上記式(3)~(6)中、水素原子は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。また、上記式(3)~(6)で表される化合物は、ノルボルネン化合物や単環の環状オレフィンと開環共重合した際に、それぞれ、上記式(3a)~(6a)で表される分岐構造単位を与えることとなるものであり、上記式(3a)~(6a)中、水素原子は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。
【0037】
また、上記一般式(2)で表される化合物の具体例としては、たとえば、下記式(7)~(10)で表される化合物が挙げられる。
【化10】
上記式(7)~(10)中、水素原子は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。また、上記式(7)~(10)で表される化合物は、ノルボルネン化合物や単環の環状オレフィンと開環共重合した際に、それぞれ、上記式(7a)~(10a)で表される分岐構造単位を与えることとなるものであり、上記式(7a)~(10a)中、水素原子は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。
【0038】
上記した各化合物の中でも、分岐構造をより適切に形成できるという点より、上記式(4)、上記式(7)または上記式(8)で表される化合物を用いることが好ましい。すなわち、本発明の開環共重合体としては、分岐構造単位として、上記式(4a)、上記式(7a)または上記式(8a)で表される分岐構造単位を有するものであることが好ましい。
【0039】
また、ビニル基含有環状オレフィン化合物に由来の構造単位を形成するためのビニル基含有環状オレフィン化合物としては、特に限定されないが、4-ビニルシクロペンテン、5-ビニルシクロオクテンなどのビニル基を有するモノ環状オレフィン;5-ビニル-2-ノルボルネン、5-プロペニル-2-ノルボルネン、5-スチリル-2-ノルボルネンなどのビニル基を有するノルボルネン類;などが挙げられる。なお、これらの化合物は、水素原子が炭素数1~6のアルキル基で置換されたものであってもよい。これらの中でも、分岐構造をより適切に形成できるという点より、下記式(11)で表される5-ビニル-2-ノルボルネン(水素原子が炭素数1~6のアルキル基で置換されたものも含む)が好適である。
【化11】
上記式(11)中、水素原子は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。また、上記式(11)で表される化合物は、ノルボルネン化合物や単環の環状オレフィンと開環共重合した際に、上記式(11a)で表される分岐構造単位を与えることとなるものであり、上記式(11a)中、水素原子は炭素数1~6のアルキル基で置換されていてもよい。
【0040】
また、3個以上のビニル基を有する化合物に由来の構造単位を形成するための3個以上のビニル基を有する化合物としては、1,2,4-トリビニルシクロヘキサン、1,3,5-トリビニルシクロヘキサンなどのビニル基を3個有する化合物、ジビニルベンゼンオリゴマー、1,2-ポリブタジエンオリゴマーなどの4個以上のビニル基を有する化合物などが挙げられる。
【0041】
本発明の開環共重合体中における、分岐構造単位の含有割合は、全繰返し単位に対して、0.005モル%以上、好ましくは0.01モル%以上、より好ましくは0.02モル%以上、さらに好ましくは0.03モル%以上、よりさらに好ましくは0.034モル%以上であり、また、その上限は、0.08モル%以下、好ましくは0.075モル%以下、より好ましくは0.07モル%以下、さらに好ましくは0.065モル%以下である。分岐構造単位の含有割合が高すぎると、得られる開環共重合体が顕著にゲル化してしまい、各種配合剤を配合し、ゴム組成物とすることが困難となる。また、分岐構造単位の含有割合が低すぎると、得られる開環共重合体は、ゴム架橋物とした際に耐摩耗性に劣るものとなる。
【0042】
また、本発明の開環共重合体は、上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物、単環の環状オレフィン、および分岐構造を形成可能な単量体に加えて、これらと共重合可能な他の単量体を共重合したものであってもよい。このような他の単量体としては、芳香環を有する多環のシクロオレフィンなどが例示される。芳香環を有する多環のシクロオレフィンとしては、フェニルシクロオクテン、5-フェニル-1,5-シクロオクタジエン、フェニルシクロペンテンなどが挙げられる。本発明の開環共重合体中における、全繰り返し構造単位に対する、他の単量体由来の構造単位の含有割合は、好ましくは10モル%以下であり、より好ましくは5モル%以下であり、本発明においては、他の単量体由来の構造単位が実質的に含まれていないものであることが特に好ましい。
【0043】
本発明の開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)の値として、好ましくは100,000~1,000,000であり、より好ましくは120,000~800,000であり、さらに好ましくは120,000~600,000、特に好ましくは150,000~400,000である。本発明の開環共重合体がこのような分子量を有することにより、ゴム架橋物の耐摩耗性をより優れたものとすることができる。また、本発明の開環共重合体のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される、ポリスチレン換算の、重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)は、特に限定されないが、好ましくは1.0~5.0、より好ましくは1.5~3.0である。
【0044】
また、本発明の開環共重合体は、重合体鎖末端に変性基を有するものであってもよい。このような末端変性基を有することで、シリカに対する親和性をより高めることができる可能性があり、これにより、シリカを配合した際における、ゴム組成物中のシリカの分散性を高めることができる場合があり、結果として、ゴム架橋物とした場合における耐摩耗性をより高めることができる場合がある。重合体鎖末端に導入する変性基としては、特に限定されないが、周期表第15族の原子、周期表第16族の原子、およびケイ素原子からなる群から選ばれる原子を含有する変性基であることが好ましい。
【0045】
末端変性基を形成するための変性基としては、シリカに対する親和性を高めることができ、これにより、ゴム架橋物とした場合における、耐摩耗性をより良好なものとすることができるという観点より、窒素原子、酸素原子、リン原子、イオウ原子、およびケイ素原子からなる群から選ばれる原子を含有する変性基がより好ましく、これらのなかでも、窒素原子、酸素原子、およびケイ素原子からなる群から選ばれる原子を含有する変性基がさらに好ましい。
【0046】
窒素原子を含有する変性基としては、アミノ基、ピリジル基、イミノ基、アミド基、ニトロ基、ウレタン結合基、またはこれらの基のいずれかを含む炭化水素基が例示される。酸素原子を含有する変性基としては、水酸基、カルボン酸基、エーテル基、エステル基、カルボニル基、アルデヒド基、エポキシ基、またはこれらの基のいずれかを含む炭化水素基が例示される。ケイ素原子を含有する変性基としては、アルキルシリル基、オキシシリル基、またはこれらの基のいずれかを含む炭化水素基が例示される。リン原子を含有する変性基としては、リン酸基、ホスフィノ基、またはこれらの基のいずれかを含む炭化水素基が例示される。イオウ原子を含有する変性基としては、スルホニル基、チオール基、チオエーテル基、またはこれらの基のいずれかを含む炭化水素基が例示される。また、変性基としては、上記した基を複数含有する変性基であってもよい。これらのなかでも、ゴム架橋物とした場合における、耐摩耗性をより向上させることができるという観点から特に好適な変性基の具体例としては、アミノ基、ピリジル基、イミノ基、アミド基、水酸基、カルボン酸基、アルデヒド基、エポキシ基、オキシシリル基、またはこれらの基のいずれかを含む炭化水素基が挙げられ、シリカに対する親和性の観点より、オキシシリル基が特に好ましい。なお、オキシシリル基とは、ケイ素-酸素結合を有する基をいう。
【0047】
オキシシリル基の具体例としては、アルコキシシリル基、アリーロキシシリル基、アシロキシ基、アルキルシロキシシリル基、またはアリールシロキシシリル基などが挙げられる。また、アルコキシシリル基またはアリーロキシシリル基、アシロキシ基を加水分解してなるヒドロキシシリル基を挙げることができる。これらのなかでも、シリカに対する親和性の観点より、アルコキシシリル基が好ましい。
【0048】
アルコキシシリル基は、1つ以上のアルコキシ基がケイ素原子と結合してなる基であり、その具体例としては、トリメトキシシリル基、(ジメトキシ)(メチル)シリル基、(メトキシ)(ジメチル)シリル基、(メトキシ)(ジクロロ)シリル基、トリエトキシシリル基、(ジエトキシ)(メチル)シリル基、(エトキシ)(ジメチル)シリル基、(ジメトキシ)(エトキシ)シリル基、(メトキシ)(ジエトキシ)シリル基、トリプロポキシシリル基などが挙げられる。
【0049】
アリーロキシシリル基は、1つ以上のアリーロキシ基がケイ素原子と結合してなる基であり、その具体例としては、トリフェノキシシリル基、(ジフェノキシ)(メチル)シリル基、(フェノキシ)(ジメチル)シリル基、(ジフェノキシ)(エトキシ)シリル基、(フェノキシ)(ジエトキシ)シリル基などが挙げられる。なお、これらのうち、(ジフェノキシ)(エトキシ)シリル基、(フェノキシ)(ジエトキシ)シリル基は、アリーロキシ基に加え、アルコキシ基をも有するため、アルコキシシリル基にも分類されることとなる。
【0050】
アシロキシシリル基は、1つ以上のアシロキシ基がケイ素原子と結合してなる基であり、その具体例としては、トリアシロキシシリル基、(ジアシロキシ)(メチル)シリル基、(アシロキシ)(ジメチル)シリル基などが挙げられる。
【0051】
アルキルシロキシシリル基は、1つ以上のアルキルシロキシ基がケイ素原子と結合してなる基であり、その具体例としては、トリス(トリメチルシロキシ)シリル基、トリメチルシロキシ(ジメチル)シリル基、トリエチルシロキシ(ジエチル)シリル基、トリス(ジメチルシロキシ)シリル基などが挙げられる。
【0052】
アリールシロキシシリル基は、1つ以上のアリールシロキシ基がケイ素原子と結合してなる基であり、その具体例としては、トリス(トリフェニルシロキシ)シリル基、トリフェニルシロキシ(ジメチル)シリル基、トリス(ジフェニルシロキシ)シリル基などが挙げられる。
【0053】
ヒドロキシシリル基は、1つ以上のヒドロキシ基がケイ素原子と結合してなる基であり、具体例としては、トリヒドロキシシリル基、(ジヒドロキシ)(メチル)シリル基、(ヒドロキシ)(ジメチル)シリル基、(ジヒドロキシ)(エトキシ)シリル基、(ヒドロキシ)(ジエトキシ)シリル基などが挙げられる。なお、これらのうち、(ジヒドロキシ)(エトキシ)シリル基、(ヒドロキシ)(ジエトキシ)シリル基は、ヒドロキシ基に加え、アルコキシ基をも有するため、アルコキシシリル基にも分類されることとなる。
【0054】
本発明の開環共重合体の重合体鎖末端における、変性基の導入割合は、特に限定されないが、変性基が導入された開環共重合体鎖末端数/開環共重合体鎖末端全数の百分率の値として、10%以上であることが好ましく、より好ましくは20%以上、さらに好ましくは30%以上、特に好ましくは40%以上である。末端変性基の導入割合が高いほど、シリカに対する親和性を高めることができ、これにより、ゴム架橋物とした場合における、耐摩耗性をより良好なものとすることができるため、好ましい。なお、重合体鎖末端への変性基の導入割合を測定する方法としては、特に限定されないが、末端変性基として、オキシシリル基を導入する場合を例示すると、H-NMRスペクトル測定により求められるオキシシリル基に対応するピーク面積比と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィから求められる数平均分子量とから求めることができる。
【0055】
本発明の開環共重合体のムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、好ましくは20~150、より好ましくは22~120、さらに好ましくは25~90である。ムーニー粘度を上記範囲とすることにより、常温および高温での混練を容易なものとすることができ、これにより加工性をより良好なものとすることができる。
【0056】
<開環共重合体の製造方法>
本発明の開環共重合体を製造する方法は特に限定されないが、たとえば、上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物と、単環の環状オレフィンと、分岐構造を形成可能な単量体とを、開環重合触媒の存在下で共重合させる方法が挙げられ、なかでも、上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物と、単環の環状オレフィンと、分岐構造を形成可能な単量体とを、開環メタセシス重合させる方法が好ましい。
【0057】
重合に用いる、上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物、単環の環状オレフィン、および分岐構造を形成可能な単量体を含む単量体混合物中における各単量体の使用量は、上述した含有割合に応じた量とすればよいが、得られる開環共重合体のゲル化をより効果的に抑制するという観点から、単量体混合物中における、分岐構造を形成可能な単量体の含有割合は、0.01~0.045モル%であることが好ましい。
【0058】
開環重合触媒としては、上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物と、単環の環状オレフィンと、分岐構造を形成可能な単量体とを、開環共重合できるものであればよく、なかでも、ルテニウムカルベン錯体が好ましい。
【0059】
ルテニウムカルベン錯体の具体例としては、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリフェニルホスフィン)-3,3-ジフェニルプロペニリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)t-ブチルビニリデンルテニウムジクロリド、ジクロロ-(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム、ビス(1,3-ジイソプロピルイミダゾリン-2-イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(1,3-ジシクロヘキシルイミダゾリン-2-イリデン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチルイミダゾリン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)ベンジリデンルテニウムジクロリド、ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリド、(1,3-ジメシチルイミダゾリジン-2-イリデン)(トリシクロヘキシルホスフィン)エトキシメチリデンルテニウムジクロリドが挙げられる。開環重合触媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0060】
開環重合触媒の使用量は、(開環重合触媒:共重合に用いる単量体)のモル比で、通常1:500~1:2,000,000、好ましくは1:700~1:1,500,000、より好ましくは1:1,000~1:1,000,000の範囲である。
【0061】
重合反応は、無溶媒中で行ってもよく、溶液中で行ってもよい。溶液中で共重合する場合、用いられる溶媒は重合反応において不活性であり、共重合に用いる上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物や単環の環状オレフィン、重合触媒などを溶解させ得る溶媒であれば特に限定されないが、炭化水素系溶媒またはハロゲン系溶媒を用いることが好ましい。炭化水素系溶媒としては、たとえば、ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼンなどの芳香族炭化水素;ヘキサン、n-ヘプタン、n-オクタンなどの脂肪族炭化水素;シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロヘキサンなどの脂環族炭化水素;などを挙げることができる。また、ハロゲン系溶媒としては、たとえば、ジクロロメタン、クロロホルムなどのハロアルカン;クロロベンゼン、ジクロロベンゼンなどの芳香族ハロゲン;などを挙げることができる。これらの溶媒は、一種を単独で用いてもよいし、2種類以上混合して用いてもよい。
【0062】
上記一般式(1)で表されるノルボルネン化合物と、単環の環状オレフィンと、分岐構造を形成可能な単量体とを開環共重合させる際には、必要に応じて、得られる開環共重合体の分子量を調整するために、分子量調整剤として、オレフィン化合物またはジオレフィン化合物を重合反応系に添加してもよい。
【0063】
オレフィン化合物としては、エチレン性不飽和結合を有する有機化合物であれば特に限定されないが、たとえば、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-オクテンなどのα-オレフィン類;スチレン、ビニルトルエンなどのスチレン類;アリルクロライドなどのハロゲン含有ビニル化合物;エチルビニルエーテル、i-ブチルビニルエーテルなどのビニルエーテル類;アリルトリメトキシシラン、アリルトリエトキシシラン、アリルトリクロロシラン、スチリルトリメトキシシランなどのケイ素含有ビニル化合物;2-ブテン、3-ヘキセンなどの二置換オレフィン;などが挙げられる。
【0064】
ジオレフィン化合物としては、1,4-ペンタジエン、1,4-ヘキサジエン、1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、2-メチル-1,4-ペンタジエン、2,5-ジメチル-1,5-ヘキサジエンなどの非共役ジオレフィンが挙げられる。
【0065】
分子量調整剤としてのオレフィン化合物およびジオレフィン化合物の使用量は、製造する開環共重合体の分子量に応じて適宜選択すればよいが、共重合に用いる単量体に対して、モル比で、通常1/100~1/100,000、好ましくは1/200~1/50,000、より好ましくは1/500~1/10,000の範囲である。
【0066】
また、本発明の開環共重合体を、重合体鎖末端に、変性基を有するものとする場合には、分子量調整剤として、上述したオレフィン化合物やジオレフィン化合物に代えて、変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物を用いることが好ましい。このような変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物を用いることで、共重合により得られる開環共重合体の重合体鎖末端に、変性基を好適に導入することができる。
【0067】
変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物としては、変性基を有し、かつ、メタセシス反応性を有するオレフィン性炭素-炭素二重結合を1つ有する化合物であればよく、特に限定されない。たとえば、開環共重合体の重合体鎖末端にオキシシリル基を導入することを望む場合には、オキシシリル基含有オレフィン性不飽和炭化水素を重合反応系に存在させればよい。
【0068】
このようなオキシシリル基含有オレフィン性不飽和炭化水素の例としては、開環共重合体の重合体鎖の一方の末端(片末端)のみに変性基を導入するものとして、ビニル(トリメトキシ)シラン、ビニル(トリエトキシ)シラン、アリル(トリメトキシ)シラン、アリル(メトキシ)(ジメチル)シラン、アリル(トリエトキシ)シラン、アリル(エトキシ)(ジメチル)シラン、スチリル(トリメトキシ)シラン、スチリル(トリエトキシ)シラン、スチリルエチル(トリエトキシ)シラン、アリル(トリエトキシシリルメチル)エーテル、アリル(トリエトキシシリルメチル)(エチル)アミンなどのアルコキシシラン化合物;ビニル(トリフェノキシ)シラン、アリル(トリフェノキシ)シラン、アリル(フェノキシ)(ジメチル)シランなどのアリーロキシシラン化合物;ビニル(トリアセトキシ)シラン、アリル(トリアセトキシ)シラン、アリル(ジアセトキシ)メチルシラン、アリル(アセトキシ)(ジメチル)シランなどのアシロキシシラン化合物;アリルトリス(トリメチルシロキシ)シランなどのアルキルシロキシシラン化合物;アリルトリス(トリフェニルシロキシ)シランなどのアリールシロキシシラン化合物;1-アリルヘプタメチルトリシロキサン、1-アリルノナメチルテトラシロキサン、1-アリルノナメチルシクロペンタシロキサン、1-アリルウンデカメチルシクロヘキサシロキサンなどのポリシロキサン化合物;などが挙げられる。
【0069】
また、開環共重合体の重合体鎖の両方の末端(両末端)に変性基を導入するものとして、ビス(トリメトキシシリル)エチレン、ビス(トリエトキシシリル)エチレン、2-ブテン-1,4-ジ(トリメトキシシラン)、2-ブテン-1,4-ジ(トリエトキシシラン)、1,4-ジ(トリメトキシシリルメトキシ)-2-ブテンなどのアルコキシシラン化合物;2-ブテン-1,4-ジ(トリフェノキシシラン)などのアリーロキシシラン化合物;2-ブテン-1,4-ジ(トリアセトキシシラン)などのアシロキシシラン化合物;2-ブテン-1,4-ジ[トリス(トリメチルシロキシ)シラン]などのアルキルシロキシシラン化合物;2-ブテン-1,4-ジ[トリス(トリフェニルシロキシ)シラン]などのアリールシロキシシラン化合物;2-ブテン-1,4-ジ(ヘプタメチルトリシロキサン)、2-ブテン-1,4-ジ(ウンデカメチルシクロヘキサシロキサン)などのポリシロキサン化合物;などが挙げられる。
【0070】
オキシシリル基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物などの変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物は、開環共重合体の重合体鎖末端への変性基の導入作用に加えて、分子量調整剤としても作用するため、変性基含有オレフィン性不飽和炭化水素化合物の使用量は、製造する開環共重合体の分子量に応じて適宜選択すればよいが、共重合に用いる単量体に対して、モル比で、通常1/100~1/100,000、好ましくは1/200~1/50,000、より好ましくは1/500~1/10,000の範囲である。
【0071】
重合反応温度は、特に限定されないが、好ましくは-100℃以上であり、より好ましくは-50℃以上、さらに好ましくは0℃以上、特に好ましくは15℃以上である。また、重合反応温度の上限は特に限定されないが、好ましくは120℃未満であり、より好ましくは100℃未満、さらに好ましくは90℃未満、特に好ましくは80℃未満である。重合反応時間も、特に限定されないが、好ましくは1分間~72時間、より好ましくは10分間~20時間である。
【0072】
重合反応により得られる開環共重合体には、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤を添加してもよい。老化防止剤の添加量は、その種類などに応じて適宜決定すればよい。さらに、所望により、伸展油を配合してもよい。重合溶液として開環共重合体を得た場合において、重合溶液から開環共重合体を回収するためには、公知の回収方法を採用すればよく、たとえば、スチームストリッピングなどで溶媒を分離した後、固体をろ別し、さらにそれを乾燥して固形状の開環共重合体を取得する方法などが採用できる。
【0073】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物には、上述した本発明の開環共重合体に、常法に従って、架橋剤、架橋促進剤、架橋活性化剤、シリカ以外の充填剤、老化防止剤、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
【0074】
架橋剤としては、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、不溶性硫黄、高分散性硫黄などの硫黄;一塩化硫黄、二塩化硫黄などのハロゲン化硫黄;ジクミルパーオキシド、ジターシャリブチルパーオキシドなどの有機過酸化物;p-キノンジオキシム、p,p’-ジベンゾイルキノンジオキシムなどのキノンジオキシム;トリエチレンテトラミン、ヘキサメチレンジアミンカルバメート、4,4’-メチレンビス-o-クロロアニリンなどの有機多価アミン化合物;メチロール基をもったアルキルフェノール樹脂;などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく、粉末硫黄がより好ましい。これらの架橋剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部、より好ましくは0.5~5重量部である。
【0075】
架橋促進剤としては、たとえば、N-シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-t-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N-オキシエチレン-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド、N,N’-ジイソプロピル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミドなどのスルフェンアミド系架橋促進剤;1,3-ジフェニルグアニジン、1,3-ジオルトトリルグアニジン、1-オルトトリルビグアニジンなどのグアニジン系架橋促進剤;ジエチルチオウレアなどのチオウレア系架橋促進剤;2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアジルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾール亜鉛塩などのチアゾール系架橋促進剤;テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィドなどのチウラム系架橋促進剤;ジメチルジチオカルバミン酸ナトリウム、ジエチルジチオカルバミン酸亜鉛などのジチオカルバミン酸系架橋促進剤;イソプロピルキサントゲン酸ナトリウム、イソプロピルキサントゲン酸亜鉛、ブチルキサントゲン酸亜鉛などのキサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。なかでも、グアニジン系架橋促進剤および/またはチアゾール系架橋促進剤を含むものが好ましく、グアニジン系架橋促進剤およびチアゾール系架橋促進剤を含むものが特に好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部、より好ましくは0.5~5重量部である。
【0076】
架橋活性化剤としては、たとえば、ステアリン酸などの高級脂肪酸や酸化亜鉛などを用いることができる。架橋活性化剤の配合量は適宜選択されるが、高級脂肪酸の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05~15重量部、より好ましくは0.5~5重量部であり、酸化亜鉛の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05~10重量部、より好ましくは0.5~3重量部である。
【0077】
プロセス油としては、鉱物油や合成油を用いてよい。鉱物油は、アロマオイル、ナフテンオイル、パラフィンオイルなどが通常用いられる。その他の配合剤としては、ジエチレングリコール、ポリエチレングリコール、シリコーンオイルなどの活性剤;カーボンブラック、炭酸カルシウム、タルク、クレーなどのシリカ以外の充填剤;石油樹脂、クマロン樹脂などの粘着付与剤;ワックスなどが挙げられる。
【0078】
本発明のゴム組成物は、シリカを含有することもできる。シリカとしては、特に限定されないが、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン-シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのなかでも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。これらは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0079】
シリカとしては、窒素吸着比表面積が、50~300m/gであるものが好ましく、80~220m/gであるものがより好ましく、100~170m/gであるものが特に好ましい。比表面積がこの範囲であると、開環共重合体とシリカとの親和性が特に良好となる。また、シリカのpHは、7未満であることが好ましく、より好ましくは5~6.9である。なお、窒素吸着比表面積は、ASTMD3037-81に準拠して、BET法にて測定することができる。
【0080】
本発明のゴム組成物中における、シリカの配合量は、ゴム組成物中の上述した本発明の開環共重合体を含むゴム成分100重量部に対して、好ましくは1~150重量部、より好ましくは10~120重量部、さらに好ましくは15~100重量部、特に好ましくは20~80重量部である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物の耐摩耗性をより適切に高めることができる。
【0081】
本発明のゴム組成物には、開環共重合体とシリカとの親和性をより向上させる目的で、シランカップリング剤をさらに配合することが好ましい。シランカップリング剤としては、たとえば、ビニルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィドなどや、特開平6-248116号公報に記載されているγ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどのテトラスルフィド類を挙げることができる。なかでも、テトラスルフィド類が好ましい。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1~30重量部、より好ましくは1~15重量部である。
【0082】
また、本発明のゴム組成物は、ゴム成分として、上述した本発明の開環共重合体以外のゴムを含んでいてもよい。本発明の開環共重合体以外のゴムとしては、たとえば、天然ゴム(NR)、ポリイソプレンゴム(IR)、乳化重合SBR(スチレン-ブタジエン共重合ゴム)、溶液重合ランダムSBR(結合スチレン5~50重量%、ブタジエン部分の1,2-結合含有量10~80%)、高トランスSBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70~95%)、低シスBR(ポリブタジエンゴム)、高シスBR、高トランスBR(ブタジエン部のトランス結合含有量70~95%)、スチレン-イソプレン共重合ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合ゴム、乳化重合スチレン-アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、高ビニルSBR-低ビニルSBRブロック共重合ゴム、ポリイソプレン-SBRブロック共重合ゴム、ポリスチレン-ポリブタジエン-ポリスチレンブロック共重合体、アクリルゴム、エピクロロヒドリンゴム、フッ素ゴム、シリコンゴム、エチレン-プロピレンゴム、ウレタンゴムなどが挙げられる。なかでも、NR、BR、IR、SBRが好ましく用いられる。これらのゴムは、それぞれ単独で、または2種以上を組み合わせて使用することができる。
【0083】
本発明のゴム組成物中の開環共重合体の含有割合は、ゴム成分の全量に対して、5重量%以上とすることが好ましく、10重量%以上とすることがより好ましく、20重量%以上とすることが特に好ましい。この割合が低すぎると、耐摩耗性の向上効果が得られなくなるおそれがある。
【0084】
本発明のゴム組成物は、常法に従って各成分を混練することにより得ることができる。たとえば、架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤と開環共重合体などのゴム成分とを混練後、その混練物に架橋剤と架橋促進剤とを混合してゴム組成物を得ることができる。架橋剤および架橋促進剤を除く配合剤と開環共重合体などのゴム成分との混練温度は、好ましくは80~200℃、より好ましくは120~180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒間~30分間である。架橋剤と架橋促進剤との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却後に行われる。
【0085】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10~200℃、好ましくは25~120℃である。架橋温度は、通常、100~200℃、好ましくは130~190℃であり、架橋時間は、通常、1分~24時間、好ましくは2分~12時間、特に好ましくは3分~6時間である。
【0086】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0087】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0088】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、耐摩耗性に優れるものである。そして、本発明のゴム架橋物からなる本発明の成形体は、このような特性を活かし、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。また、本発明のゴム架橋物からなる成形体は、オールシーズンタイヤ、高性能タイヤ、およびスタッドレスタイヤなどの各種タイヤにおいて、トレッド、カーカス、サイドウォール、およびビード部などのタイヤ各部位に好適に用いることができる。
【実施例
【0089】
本発明を、さらに詳細な実施例に基づき以下説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下における「部」は、特に断りのない限り重量基準である。本実施例および比較例において行った試験方法は以下のとおりである。
〔開環共重合体の重量平均分子量〕
開環共重合体の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により、ポリスチレン換算の分子量に基づくチャートを得て、そのチャートに基づいて求めた。なお、ゲルパーミエーションクロマトグラフィの具体的な測定条件は、以下の通りである。
測定器:HLC-8320 EcoSCE(東ソー社製)
カラム:GMH-HR-H(東ソー社製)2本を直列に連結した。
検出器:示差屈折計RI-8020(東ソー社製)
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
【0090】
〔開環共重合体中の、2-ノルボルネン由来構造単位および5-ビニル-2-ノルボルネン由来構造単位の割合〕
H-NMRスペクトル測定により、開環共重合体中の単量体構造組成比を測定することにより求めた。
【0091】
〔クラム互着率〕
熱水を入れたミキサー中に試料となる開環共重合体を投入した。そして、試料となる開環共重合体を、ミキサーで細かく裁断することで、クラム状にした。次に、撹拌機を備えた容器に、得られたクラム状の開環共重合体と水とを投入し、60℃で4時間、40rpmの回転速度で攪拌した。次に、20mmの目開きの金網を用いてクラム状の開環共重合体をふるいにかけ、下記式により、クラム互着率を求めた。クラム互着率の値が低いほど、開環共重合体をクラム状としたときの互着の発生が少なく、ホットフロー性に優れる。
クラム互着率(%)=(金網上に残ったクラム状の開環共重合体の重量(g))/(クラム状の開環共重合体の全重量(g))×100
【0092】
〔耐摩耗性〕
ゴム組成物を160℃、20分間プレス架橋することで、試験片を作製した。得られた試験片について、DIN摩耗試験機(上島製作所社製)を使用し、JIS K6264に準拠し、荷重10Nで23℃にて耐摩耗性を測定した。測定結果は比較例1を100とした指数で示し、数値が大きいほど耐摩耗性が良好であることを示す。
【0093】
《実施例1》
窒素雰囲気下、攪拌機を備えたガラス反応容器に、シクロヘキサン500g、単環の環状オレフィンとしてシクロペンテン1.49mol、ノルボルネン化合物として2-ノルボルネン0.600mol、1-ヘキセン1.25mmol、および分岐構造単位を形成可能な単量体として5-ビニル-2-ノルボルネン0.428mmolを加えた。なお、単量体混合物中における、5-ビニル-2-ノルボルネンの含有割合は、0.020モル%であった。次に、トルエン5mLに溶解したジクロロ-(3-フェニル-1H-インデン-1-イリデン)ビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ルテニウム(II)0.0209mmolを加え、室温で2時間重合反応を行った。重合反応後、過剰のビニルエチルエーテルを加えることにより重合を停止した。
【0094】
重合反応により得られた重合溶液を2,6-ジ-t-ブチル-p-クレゾール(BHT)を含む大過剰のメタノールに注ぎ、沈殿した重合体を回収し、メタノールで洗浄した後、50℃で24時間、真空乾燥して、開環共重合体(1)を得た。この開環共重合体(1)について、上記方法に従い、重量平均分子量(Mw)、2-ノルボルネン由来の構造単位の割合、5-ビニル-2-ノルボルネン由来の構造単位の割合、クラム互着率を求めた。表1にその結果を示す。なお、得られた開環共重合体(1)は、テトラヒドロフランに溶解させても、不溶分(ゲル)が発生しないものであった。また、後述の実施例2~6、比較例1,2,4について得られた開環共重合体についても、実施例1で得られた開環共重合体(1)と同様に、テトラヒドロフランに溶解させても、ゲルが発生しないものであった。
【0095】
上記にて得られた開環共重合体(1)50部と天然ゴム50部とを容積250mlのバンバリーミキサーで素練りした。開環重合体(1)と天然ゴムとを素練りしたものに、シリカ(商品名「Zeosil 1165MP」、ローディア社製、窒素吸着比表面積(BET法):163m/g)60部、プロセスオイル(商品名「アロマックス T-DAE」、JX日鉱日石エネルギー社製)10部、およびシランカップリング剤(ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、商品名「Si69」、デグッサ社製)4.8部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練した。その混練物に、酸化亜鉛(亜鉛華1号)3.0部、ステアリン酸(商品名「SA-300」、ADEKA社製)1.0部、および老化防止剤(N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン、商品名「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製)2.0部を添加し、2.5分間混練して、バンバリーミキサーからゴム組成物を排出させた。混練終了時のゴム組成物の温度は150℃であった。このゴム組成物を、室温まで冷却した後、再度バンバリーミキサー中で、3分間混練した後、バンバリーミキサーからゴム組成物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られたゴム組成物と、硫黄1.1部、架橋促進剤:ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーDM」)1.4部、および架橋促進剤:1,3-ジ-o-トリルグアニジン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーDT」)1.4部を混練した後、シート状のゴム組成物を得た。そして、得られたゴム組成物について、上記方法に従い、耐摩耗性を評価した。表1にその結果を示す。
【0096】
《実施例2》
1-ヘキセンの使用量を、1.25mmolから1.99mmolに変更した以外は、実施例1と同様に操作して、開環共重合体(2)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0097】
また、上記で得られた開環共重合体(2)を使用した以外は、実施例1と同様に操作して、ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0098】
《実施例3》
5-ビニル-2-ノルボルネンの使用量を、0.428mmolから0.266mmolに変更した以外は、実施例1と同様に操作して、開環共重合体(3)を得た。なお、単量体混合物中における、5-ビニル-2-ノルボルネンの含有割合は、0.013モル%であった。そして、得られた開環共重合体(3)について、実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0099】
また、上記で得られた開環共重合体(3)を使用した以外は、実施例1と同様に操作して、ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0100】
《実施例4》
5-ビニル-2-ノルボルネンの使用量を、0.428mmolから0.759mmolに変更した以外は、実施例1と同様に操作して、開環共重合体(4)を得た。なお、単量体混合物中における、5-ビニル-2-ノルボルネンの含有割合は、0.036モル%であった。そして、得られた開環共重合体(4)について、実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0101】
また、上記で得られた開環共重合体(4)を使用した以外は、実施例1と同様に操作して、ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0102】
《実施例5》
シクロペンテンの使用量を2.54molに、2-ノルボルネンの使用量を0.271molに、1-ヘキセンの使用量を1.69mmolにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様に操作して、開環共重合体(5)を得た。なお、単量体混合物中における、5-ビニル-2-ノルボルネンの含有割合は、0.015モル%であった。そして、得られた開環共重合体(5)について、実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0103】
また、上記で得られた開環共重合体(5)を使用した以外は、実施例1と同様に操作して、ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0104】
《実施例6》
シクロペンテンの使用量を0.92molに、2-ノルボルネンの使用量を0.775molに、1-ヘキセンの使用量を1.02mmolにそれぞれ変更した以外は、実施例1と同様に操作して、開環共重合体(6)を得た。なお、単量体混合物中における、5-ビニル-2-ノルボルネンの含有割合は、0.025モル%であった。そして、得られた開環共重合体(6)について、実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0105】
また、上記で得られた開環共重合体(6)を使用した以外は、実施例1と同様に操作して、ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0106】
《比較例1》
5-ビニル-2-ノルボルネンを使用しなかった以外は、実施例1と同様に操作して、開環共重合体(7)を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0107】
また、上記で得られた開環共重合体(7)を使用した以外は、実施例1と同様に操作して、ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0108】
《比較例2》
シクロペンテンの使用量を1.30molに、2-ノルボルネンの使用量を0.659molに、1-ヘキセンの使用量を1.17mmolにそれぞれ変更した以外は、比較例1と同様に操作して、開環共重合体(8)を得た。そして、得られた開環共重合体(8)について、実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0109】
また、上記で得られた開環共重合体(8)を使用した以外は、実施例1と同様に操作して、ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0110】
《比較例3》
5-ビニル-2-ノルボルネンの使用量を、0.428mmolから1.042mmolに変更した以外は、実施例1と同様に操作して、開環共重合体(9)を得た。なお、単量体混合物中における、5-ビニル-2-ノルボルネンの含有割合は、0.050モル%であった。そして、得られた開環共重合体(9)について、実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0111】
なお、得られた開環共重合体(9)をテトラヒドロフランに溶解させたところ、不溶分(ゲル分)が観察された。ゲル状となった開環共重合体(9)は、細かく裁断できないため、クラム状とすることができず、また、他の成分と均一に混合することもできないため、ゴム組成物を形成することもできなかった。そのため、開環共重合体(9)においては、クラム互着率およびゴム架橋物とした際の耐摩耗性について測定することができなかった。
【0112】
《比較例4》
シクロペンテンの使用量を3.41molに、1-ヘキセンの使用量を2.05mmolに、5-ビニル-2-ノルボルネンの使用量を0.693mmolにそれぞれ変更し、2-ノルボルネンを使用しなかった以外は、実施例1と同様に操作して、開環共重合体(10)を得た。なお、単量体混合物中における、5-ビニル-2-ノルボルネンの含有割合は、0.020モル%であった。そして、得られた開環共重合体(10)について、実施例1と同様にして、評価を行った。結果を表1に示す。
【0113】
また、上記で得られた開環共重合体(10)を使用した以外は、実施例1と同様に操作して、ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
【0114】
【表1】
【0115】
表1に示す結果より、上記一般式(I)で表されるノルボルネン化合物由来の構造単位、単環の環状オレフィン由来の構造単位、および分岐構造単位を含み、開環共重合体中の全繰り返し構造単位中における、分岐構造単位の含有割合が、0.005~0.08モル%である開環共重合体は、クラム状としたときの互着の発生を防止することができ、ホットフロー性に優れるものであり、かつ、耐摩耗性に優れたゴム架橋物を与えるものであった(実施例1~6)。
一方、分岐構造単位を含まない開環共重合体は、クラム状としたときに互着が発生し、ホットフロー性に劣るものであり、また、これを用いて得られたゴム架橋物は、耐摩耗性に劣るものであった(比較例1,2)。
また、開環共重合体中の全繰返し構造単位に対する、分岐構造単位の含有割合が0.08モル%超である開環共重合体は、重合溶液中に不溶分(ゲル分)として得られるものであるため、そもそも他の成分と均一に混合してゴム組成物とすることができなかった(比較例3)。
さらに、上記一般式(I)で表されるノルボルネン化合物由来の構造単位を含まない開環共重合体を用いて得られたゴム架橋物は、耐摩耗性に劣るものであった(比較例4)。