(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】レジスト下層膜形成組成物及びそれを用いたレジストパターンの形成方法
(51)【国際特許分類】
G03F 7/11 20060101AFI20240918BHJP
G03F 7/20 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
G03F7/11 503
G03F7/20 521
G03F7/20 501
(21)【出願番号】P 2023067837
(22)【出願日】2023-04-18
(62)【分割の表示】P 2020550450の分割
【原出願日】2019-10-01
【審査請求日】2023-04-18
(31)【優先権主張番号】P 2018190024
(32)【優先日】2018-10-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000003986
【氏名又は名称】日産化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001508
【氏名又は名称】弁理士法人 津国
(72)【発明者】
【氏名】清水 祥
(72)【発明者】
【氏名】水落 龍太
(72)【発明者】
【氏名】若山 浩之
(72)【発明者】
【氏名】染谷 安信
【審査官】川口 真隆
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/019961(WO,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G03F 7/11
G03F 7/20
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(3)で表される構造単位を有し、下記式(2)で表される構造をポリマー鎖の末端に有するポリマー
、架橋酸触媒及び有機溶媒を含む、レジスト下層膜形成組成物。
【化1】
(上記式(2)中、Xは2価の有機基であり、Aは炭素原子数6乃至40のアリール基であり、R
2及びR
3は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよい炭素原子数1乃至10のアルキル基又は置換されてもよい炭素原子数6乃至40のアリール基であり、n3は1乃至12の整数である。)
【化2】
(式(3)中、A
1
、A
2
、A
3
、A
4
、A
5
及びA
6
は水素原子を表し、Y
1
は式(6):
【化3】
(式(6)中、R
6
は炭素原子数3乃至6のアルケニル基を表す)を表し、Qは式(9):
【化4】
(式(9)中、Y
2
は式(4):
【化5】
(式(4)中、R
4
及びR
5
はそれぞれ独立に、水素原子、メチル基、又はエチル基を表す)を表す。))
【請求項2】
前記式(2)中、Xはエステル結合又はエーテル結合である、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項3】
前記式(2)中、Aはベンゼン、ナフタレン又はアントラセンから誘導される基である、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項4】
前記式(2)中、R
2及びR
3が水素原子である、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項5】
前記式(2)中、n3が1乃至6の整数である、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項6】
前記式(3)で表される構造単位を有するポリマーが、式(10)で表される化合物と式(11)で表される化合物とをコモノマーとするポリマーである、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【化5】
(式(10)及び(11)中、A
1
、A
2
、A
3
、A
4
、A
5
、A
6
、Y
1
及びQは、請求項1で定義されたと同じ意味を表す)
【請求項7】
前記式(3)で表される構造単位を有するポリマーが、式(12)で表される化合物と式(13)で表される化合物とをコモノマーとするポリマーである、請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【化6】
(式中、A
1
、A
2
、A
3
、A
4
、A
5
、A
6
、Y
1
及びQは、請求項1で定義されたと同じ意味を表す)
【請求項8】
架橋剤をさらに含む請求項1に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【請求項9】
請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物であることを特徴とするレジスト下層膜。
【請求項10】
半導体基板上に、請求項1乃至請求項8のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布しベークしてレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジストを塗布しベークしてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記レジストで被覆された半導体基板を露光する工程、露光後の前記レジスト膜を現像し、パターニングする工程を含む、パターニングされた基板の製造方法。
【請求項11】
半導体基板上に、請求項1乃至請求項8の何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなるレジスト下層膜を形成する工程と、
前記レジスト下層膜の上にレジスト膜を形成する工程と、
レジスト膜に対する光又は電子線の照射とその後の現像によりレジストパターンを形成する工程と、
形成された前記レジストパターンを介して前記レジスト下層膜をエッチングすることによりパターン化されたレジスト下層膜を形成する工程と、
パターン化された前記レジスト下層膜により半導体基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、半導体素子製造時のリソグラフィー工程において、レジストパターン形成時のLWR(Line Width Roughness(ライン・ウィドス・ラフネス)、レジストパターン線幅の揺らぎ)の悪化の抑制及びレジスト感度の向上を目的としたリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物、及び該レジスト下層膜形成組成物を用いるレジストパターン形成方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来から半導体装置の製造において、レジスト組成物を用いたリソグラフィーによる微細加工が行われている。前記微細加工は、シリコンウェハー等の半導体基板上にフォトレジスト組成物の薄膜を形成し、その上にデバイスのパターンが描かれたマスクパターンを介して紫外線などの活性光線を照射し、現像し、得られたフォトレジストパターンを保護膜として基板をエッチング処理することにより、基板表面に、前記パターンに対応する微細凹凸を形成する加工法である。近年、半導体デバイスの高集積度化が進み、使用される活性光線も、従来使用されていたi線(波長365nm)、KrFエキシマレーザー(波長248nm)、ArFエキシマレーザー(波長193nm)に加え、最先端の微細加工にはEUV光(波長13.5nm)の実用化が検討されている。これに伴い、活性光線の半導体基板からの乱反射、定在波の影響が大きな問題となっている。そこでこの問題を解決すべく、レジストと半導体基板の間に反射防止膜(Bottom Anti-Reflective Coating:BARC)を設ける方法が広く検討されている。当該反射防止膜はレジスト下層膜とも称される。かかる反射防止膜としては、その使用の容易さなどから、吸光部位を有するポリマー等からなる有機反射防止膜について数多くの検討が行われている。
特許文献1には、縮合系ポリマーを有する半導体用反射防止膜が開示されている。特許文献2には、置換されていてもよいアリールエステル基を末端に有するポリマーを含むリソグラフィー用レジスト下層膜が開示されている。特許文献3には末端にスルホニル基が導入されたポリマーを含むレジスト下層膜形成組成物が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【文献】国際公開第2005/098542号
【文献】国際公開第2015/046149号
【文献】国際公開第2015/163195号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
レジスト下層膜に要求される特性としては、例えば、上層に形成されるレジスト膜とのインターミキシングが起こらないこと(レジスト溶剤に不溶であること)、レジスト膜に比べてドライエッチング速度が速いことが挙げられる。
EUV露光を伴うリソグラフィーの場合、形成されるレジストパターンの線幅は32nm以下となり、EUV露光用のレジスト下層膜は、従来よりも膜厚を薄く形成して用いられる。このような薄膜を形成する際、基板表面、使用するポリマーなどの影響により、ピンホール、凝集などが発生しやすく、欠陥のない均一な膜を形成することが困難であった。
一方、レジストパターン形成の際、現像工程において、レジスト膜を溶解し得る溶剤、通常は有機溶剤を用いて前記レジスト膜の未露光部を除去し、当該レジスト膜の露光部をレジストパターンとして残す方法が採用されることがある。このようなネガ現像プロセスにおいては、レジストパターンの密着性の改善が大きな課題となっている。
また、レジストパターン形成時のLWR(Line Width Roughness、ライン・ウィドス・ラフネス、線幅の揺らぎ(ラフネス))の悪化を抑制し、良好な矩形形状を有するレジストパターンを形成すること、及びレジスト感度の向上が求められている。
本発明は、上記課題を解決した、所望のレジストパターンを形成できるレジスト下層膜を形成するための組成物、及び該レジスト下層膜形成組成物を用いるレジストパターン形成方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は以下を包含する。
[1]
下記式(1)又は(2)で表される構造を、ポリマー鎖の末端に有するポリマー及び有機溶媒を含む、レジスト下層膜形成組成物。
【化1】
(上記式(1)及び式(2)中、Xは2価の有機基であり、Aは炭素原子数6乃至40のアリール基であり、R
1はハロゲン原子、炭素原子数1乃至10のアルキル基又は炭素原子数1乃至10のアルコキシ基であり、R
2及びR
3は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよい炭素原子数1乃至10のアルキル基又は置換されてもよい炭素原子数6乃至40のアリール基であり、n1及びn3は各々独立に1乃至12の整数であり、n2は0乃至11の整数である。)
[2]
前記式(1)及び式(2)中、Xはエステル結合又はエーテル結合である、[1]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[3]
前記式(1)及び式(2)中、Aはフェニル基、ナフチル基又はアントラセニル基である、[1]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[4]
前記式(2)中、R
2及びR
3が水素原子である、[1]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[5]
前記式(1)中、n2が0である、[1]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【0006】
[6]
前記ポリマーが、下記式(3)で表される構造単位を有する、[1]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【化2】
(式(3)中、A
1、A
2、A
3、A
4、A
5及びA
6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Y
1は式(4)、式(5)、式(6)または式(7):
【化3】
((式(4)~(7)中、R
4及びR
5はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のアルケニル基、ベンジル基またはフェニル基を表し、そして、前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよく、また、R
4とR
5は互いに結合して炭素原子数3乃至6の環を形成していてもよく、R
6は炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のアルケニル基、ベンジル基またはフェニル基を表し、そして、前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい)を表し、Qは式(8)または式(9):
【化4】
(式(8)及び(9)中、Q
1は炭素原子数1乃至10のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、またはアントリレン基を表し、そして、前記フェニレン基、ナフチレン基、及びアントリレン基は、それぞれ、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよく、n4及びn5はそれぞれ独立に0又は1の整数を表し、Y
2は式(4)、式(5)又は式(7)を表す)を表す。)
【0007】
[7]
前記式(3)で表される構造単位を有するポリマーが、式(10)で表される化合物と式(11)で表される化合物との反応で得られるポリマーである、[6]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【化5】
(式(10)及び(11)中、A
1、A
2、A
3、A
4、A
5、A
6、Y
1及びQは、[6]で定義されたと同じ意味を表す)
【0008】
[8]
前記式(3)で表される構造単位を有するポリマーが、式(12)で表される化合物と式(13)で表される化合物との反応で得られるポリマーである、[6]に記載のレジスト下層膜形成組成物。
【化6】
(式中、A
1、A
2、A
3、A
4、A
5、A
6、Y
1及びQは、[6]で定義されたと同じ意味を表す)
【0009】
[9]
架橋酸触媒をさらに含む[1]乃至[8]のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[10]
架橋剤をさらに含む[1]乃至[9]のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物。
[11]
[1]乃至[10]のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなる塗布膜の焼成物であることを特徴とするレジスト下層膜。
[12]
半導体基板上に、[1]乃至[10]のいずれか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物を塗布しベークしてレジスト下層膜を形成する工程、前記レジスト下層膜上にレジストを塗布しベークしてレジスト膜を形成する工程、前記レジスト下層膜と前記レジストで被覆された半導体基板を露光する工程、露光後の前記レジスト膜を現像し、パターニングする工程を含む、パターニングされた基板の製造方法。
[13]
半導体基板上に、[1]乃至[10]の何れか1項に記載のレジスト下層膜形成組成物からなるレジスト下層膜を形成する工程と、
前記レジスト下層膜の上にレジスト膜を形成する工程と、
レジスト膜に対する光又は電子線の照射とその後の現像によりレジストパターンを形成する工程と、
形成された前記レジストパターンを介して前記レジスト下層膜をエッチングすることによりパターン化されたレジスト下層膜を形成する工程と、
パターン化された前記レジスト下層膜により半導体基板を加工する工程と、
を含むことを特徴とする、半導体装置の製造方法。
【発明の効果】
【0010】
本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、当該レジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーの末端が、前記式(1)もしくは(2)で表される構造でキャッピングされていることを特徴とするものであり、斯かるポリマー及び有機溶媒、好ましくはさらに架橋剤及び/又は架橋反応を促進させる化合物を含有する組成物である。本願のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物は、このような構成としたことにより、レジストパターン形成時のLWR悪化の抑制及び感度の向上を達成することができる。
【発明を実施するための形態】
【0011】
<レジスト下層膜形成組成物>
本願のレジスト下層膜形成組成物は、下記式(1)又は(2)で表される構造を、ポリマー鎖の末端に有するポリマー及び有機溶媒を含む。
【化7】
(上記式(1)及び式(2)中、Xは2価の有機基であり、Aは炭素原子数6乃至40のアリール基であり、R
1はハロゲン原子、炭素原子数1乃至40のアルキル基又は炭素原子数1乃至40のアルコキシ基であり、R
2及びR
3は各々独立に水素原子、ハロゲン原子、置換されてもよい炭素原子数1乃至10のアルキル基、置換されてもよい炭素原子数6乃至40のアリール基であり、n1及びn3は各々独立に1乃至12の整数であり、n2は0乃至11の整数である。)
【0012】
上記Xの具体例としては、エステル結合、エーテル結合、アミド結合、ウレタン結合又はウレア結合であり、これらの中でもエステル結合又はエーテル結合が好ましい。
上記Aの具体例としては、ベンゼン、ナフタレン、アントラセン、フェナントレン又はピレンから誘導される基であり、これらの中でもベンゼン、ナフタレン、又はアントラセンから誘導される基が好ましい。
上記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子及びヨウ素原子が挙げられる。
上記炭素原子数1乃至10アルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基又はペンチル基であり、これらの中でもメチル基が好ましい。
上記炭素原子数1乃至10アルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキソキシ基又はペントキシ基であり、これらの中でもメトキシ基が好ましい。
上記置換されてもよいとは、上記炭素原子数1乃至10のアルキル基の一部又は全部の水素原子が、例えば、フルオロ基又はヒドロキシ基で置換されていてもよいことを言う。
上記炭素原子数1乃至10のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基又はペンチル基が挙げられるが、好ましくはメチル基である。
上記炭素原子数6乃至40のアリール基の具体例としては、ベンジル基、ナフチル基、アントラセニル基、フェナントレニル基又はピレニル基が挙げられるが、これらの中でもフェニル基が好ましい。
n1及びn3は各々独立に1乃至12の整数であるが、1乃至6の整数が好ましい。
n2は0乃至11の整数であるが、0乃至2の整数が好ましい。
前記式(2)中、R2及びR3が水素原子であることが好ましい。
前記式(1)中、n2が0であることが好ましい。
【0013】
上記式(1)で示される部分構造を有する化合物は、例えば下記式(1-1)で表される。
【化8】
(上記式(1-1)中、Xは2価の有機基であり、Aは炭素原子数6乃至40のアリール基であり、R
1はハロゲン原子、炭素原子数1乃至40のアルキル基又は炭素原子数1乃至40のアルコキシ基であり、n1は1乃至12の整数であり、n2は0乃至11の整数である。)
【0014】
上記式(1-1)中、本発明にて、各々好ましいX、A、R1、n1及びn2は上記のとおりである。
上記式(1-1)で表される化合物の具体例を例示すると、以下のとおりである。
下記の化合物を、ポリマーの末端と自体公知の方法で反応させて、本願のレジスト下層膜形成組成物が含有するポリマーが製造できる。
【0015】
【0016】
【0017】
【0018】
【0019】
【0020】
【0021】
上記式(2)で示される部分構造を有する化合物は、例えば下記式(2-1)で表される。
【化15】
(上記式(2-1)中、Xは2価の有機基であり、Aは炭素原子数6乃至40のアリール基であり、R
2及びR
3は各々独立に水素原子、置換されてもよい炭素原子数1乃至10のアルキル基、置換されてもよい炭素原子数6乃至40のアリール基又はハロゲン原子であり、n3は1乃至12の整数である。)
【0022】
上記式(2-1)中、本発明にて、各々好ましいX、A、R2、R3及びn3は上記のとおりである。
上記式(2-1)で表される化合物の具体例を例示すると、以下のとおりである。
下記の化合物を、ポリマー末端と自体公知の方法で反応させて、本願のレジスト下層膜形成組成物が含有するポリマーが製造できる。
【0023】
【0024】
前記ポリマーは、レジスト下層膜形成組成物に使用される自体公知のポリマーであれば特に限定されない。具体的にはオレフィンが反応したビニル重合ポリマー、ポリアミド、ポリエステル、ポリカーボネート、ポリウレタンが挙げられるが、下記式(3)で表される構造単位を有することが好ましい。
【化17】
(式(3)中、A
1、A
2、A
3、A
4、A
5及びA
6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Y
1は式(4)、式(5)、式(6)または式(7):
【0025】
【化18】
((式(4)~(7)中、R
4及びR
5はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のアルケニル基、ベンジル基またはフェニル基を表し、そして、前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよく、また、R
4とR
5は互いに結合して炭素原子数3乃至6の環を形成していてもよく、R
6は炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のアルケニル基、ベンジル基またはフェニル基を表し、そして、前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい)を表し、Qは式(8)または式(9):
【0026】
【化19】
(式(8)及び(9)中、Q
1は炭素原子数1乃至10のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、またはアントリレン基を表し、そして、前記フェニレン基、ナフチレン基、及びアントリレン基は、それぞれ、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよく、n4及びn5はそれぞれ独立に0または1の数を表し、Y
2は式(4)、式(5)または式(7)を表す)を表す)
【0027】
上記炭素原子数1乃至6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ペンチル基であり、好ましくはメチル基である。
上記炭素原子数3乃至6のアルケニル基の具体例としては、プロピレン、イソブチレン、アミレンから誘導される基であり、好ましくはプロペニル基である。
上記炭素原子数1乃至6のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキソキシ基又はペントキシ基であり、好ましくはメトキシ基である。
上記炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基の具体例としては、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィドから誘導される基であり、好ましくはジエチルジスルフィドから誘導される基である。
上記炭素原子数3乃至6の環の具体例としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロヘキサン環又はチオフェン環である。
上記炭素原子数1乃至10のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、ペンチレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基であり、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基である。
【0028】
前記ポリマーは、再公表2005/098542に記載のポリマー末端に、特定構造の化合物を反応させて使用してもよい。
本願のレジスト下層膜形成組成物が含むポリマーは、式(10)で表される化合物と、式(11)で表される化合物との反応で得られるコポリマーの末端に、特定構造の化合物を反応させて得られる。
本願のレジスト下層膜形成組成物が含むポリマーは、下記式(10)で表される化合物、下記式(11)で表される化合物、並びに上記式(1-1)若しくは式(2-1)で表される化合物を含む、化合物の混合物の反応生成物であってもよい。
【0029】
【化20】
(式(10)中、A
1、A
2、A
3、A
4、A
5及びA
6は、それぞれ独立に、水素原子、メチル基またはエチル基を表し、Y
1は式(4)、式(5)、式(6)または式(7):
【0030】
【化21】
((式(4)~(7)中、R
4及びR
5はそれぞれ独立に、水素原子、炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のアルケニル基、ベンジル基またはフェニル基を表し、そして、前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよく、また、R
4とR
5は互いに結合して炭素原子数3乃至6の環を形成していてもよく、R
6は炭素原子数1乃至6のアルキル基、炭素原子数3乃至6のアルケニル基、ベンジル基またはフェニル基を表し、そして、前記フェニル基は、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよい)を表し、Qは式(8)または式(9):
【0031】
【化22】
(式(8)及び(9)中、Q
1は炭素原子数1乃至10のアルキレン基、フェニレン基、ナフチレン基、またはアントリレン基を表し、そして、前記フェニレン基、ナフチレン基、及びアントリレン基は、それぞれ、炭素原子数1乃至6のアルキル基、ハロゲン原子、炭素原子数1乃至6のアルコキシ基、ニトロ基、シアノ基、水酸基、及び炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基からなる群から選ばれる少なくとも一つの基で置換されていてもよく、n4及びn5はそれぞれ独立に0または1の数を表し、Y
2は式(4)、式(5)または式(7)を表す)を表す)。
【0032】
上記炭素原子数1乃至6のアルキル基の具体例としては、メチル基、エチル基、プロピル基、ブチル基、ヘキシル基、ペンチル基であり、好ましくはメチル基である。
上記炭素原子数3乃至6のアルケニル基の具体例としては、プロピレン、イソブチレン、アミレンから誘導される基であり、好ましくはプロペニル基である。
上記炭素原子数1乃至6のアルコキシ基の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、ブトキシ基、ヘキソキシ基又はペントキシ基であり、好ましくはメトキシ基である。
上記炭素原子数1乃至6のアルキルチオ基の具体例としては、ジメチルスルフィド、ジエチルスルフィド、ジメチルジスルフィド、ジエチルジスルフィドから誘導される基であり、好ましくはジエチルジスルフィドから誘導される基である。
上記炭素原子数3乃至6の環の具体例としては、シクロプロパン環、シクロブタン環、シクロヘキサン環又はチオフェン環である。
上記炭素原子数1乃至10のアルキレン基の具体例としては、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、ブチレン基、ヘキシレン基、ペンチレン基、ヘプチレン基、オクチレン基、ノニレン基、デシレン基であり、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基又はブチレン基である。
【0033】
本願のレジスト下層膜形成組成物が含むポリマーは、式(12)で表される化合物と、式(13)で表される化合物との反応で得られるコポリマーの末端に、特定構造の化合物を反応させて得られる。
本願のレジスト下層膜形成組成物が含むポリマーは、式(12)で表される化合物、式(13)で表される化合物、及び上記式(1-1)又は式(2-1)で表される化合物を含む、化合物の混合物の反応で得られるポリマーであってもよい。
【0034】
【化23】
(式中、A
1、A
2、A
3、A
4、A
5、A
6、Y
1及びQは、上記で定義されたと同じ意味を表す)
【0035】
本発明のレジスト下層膜形成組成物の固形分に占めるポリマーの割合としては、50質量%以上であり、好ましくは60質量%以上であり、例えば50~100質量%であり、または60~99質量%であり、または70~95質量%である。そして、本発明のレジスト下層膜形成組成物における固形分の割合は、各成分が溶剤に均一に溶解している限りは特に限定はないが、例えば0.5~50質量%であり、または、1~30質量%であり、または3~20質量%である。ここで固形分とは、レジスト下層膜形成組成物の全成分から溶剤成分を除いたものである。
【0036】
本発明のレジスト下層膜形成組成物に含まれるポリマーの分子量としては、重量平均分子量として、例えば、1000~200000であり、または1200~100000であり、または1500~30000であり、または2000~20000、または2000~4000である。
重量平均分子量は、例えば実施例に記載のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)測定法により求めることができる。
【0037】
<ポリマーの製造方法>
重合方法の一例として、本願のレジスト下層膜形成組成物が含むポリマーは、下記式(10)で表される化合物、下記式(11)で表される化合物、並びに上記式(1-1)若しくは式(2-1)で表される化合物を含む、化合物の混合物に、重合触媒を加えて加熱重合を行い合成することができる。重合方法の一例として、本願のレジスト下層膜形成組成物が含むポリマーは、式(12)で表される化合物、式(13)で表される化合物、及び上記式(1-1)又は式(2-1)で表される化合物を含む、化合物の混合物に、重合触媒を加えて加熱重合を行い合成することができる。ここで使用する有機溶媒は、後述する本発明のリソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物に含まれる有機溶媒として好ましい例示の中より適宜選択できる。当該重合触媒として、例えば、ベンジルトリエチルアンモニウムクロリド、エチルトリフェニルホスホニウムブロミドを挙げることができ、例えば50℃乃至160℃、好ましくは70℃乃至130℃に加熱して重合できる。反応時間としては例えば1時間乃至100時間、好ましくは2時間乃至48時間である。
【0038】
<有機溶媒>
本願のレジスト下層膜が含む有機溶媒の具体例としては、エチレングリコールモノメチルエーテル、エチレングリコールモノエチルエーテル、メチルセロソルブアセテート、エチルセロソルブアセテート、ジエチレングリコールモノメチルエーテル、ジエチレングリコールモノエチルエーテル、プロピレングリコール、プロピレングリコールモノメチルエーテル、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールプロピルエーテルアセテート、トルエン、キシレン、メチルエチルケトン、シクロペンタノン、シクロヘキサノン、2-ヒドロキシプロピオン酸エチル、2-ヒドロキシ-2-メチルプロピオン酸エチル、エトキシ酢酸エチル、ヒドロキシ酢酸エチル、2-ヒドロキシ-3-メチルブタン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸メチル、3-メトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸エチル、3-エトキシプロピオン酸メチル、ピルビン酸メチル、ピルビン酸エチル、酢酸エチル、酢酸ブチル、乳酸エチル、及び乳酸ブチル等であり、最も好ましくはプロピレングリコールモノメチルエーテル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテートの混合溶媒である。
【0039】
<架橋酸触媒>
本願のレジスト下層膜形成組成物は、さらに架橋酸触媒を含んでいてもよい。架橋酸触媒とは、熱酸発生剤であり、具体例としてはp-トルエンスルホン酸、トリフルオロメタンスルホン酸、ピリジニウム-p-トルエンスルホナート、サリチル酸、カンファースルホン酸、5-スルホサリチル酸、4-クロロベンゼンスルホン酸、4-ヒドロキシベンゼンスルホン酸、ベンゼンジスルホン酸、1-ナフタレンスルホン酸、p-フェノールスルホン酸ピリジニウム塩、クエン酸、安息香酸、ヒドロキシ安息香酸等のスルホン酸化合物及びカルボン酸化合物が挙げられる。
【0040】
本願のレジスト下層膜形成組成物は、架橋剤を含んでいてもよい。架橋剤とは、少なくとも二つの架橋形成置換基(例えば、メチロール基、メトキシメチル基、ブトキシメチル基)を有する含窒素化合物であり、具体例としてはヘキサメトキシメチルメラミン、テトラメトキシメチルベンゾグアナミン、1,3,4,6-テトラキス(メトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ブトキシメチル)グリコールウリル、1,3,4,6-テトラキス(ヒドロキシメチル)グリコールウリル、1,3-ビス(ヒドロキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(ブトキシメチル)尿素、1,1,3,3-テトラキス(メトキシメチル)尿素が挙げられる。
【0041】
<レジスト下層膜>
本発明に係るレジスト下層膜は、上述したレジスト下層膜形成組成物を半導体基板上に塗布し、焼成することにより製造することができる。
本発明のレジスト下層膜形成組成物が塗布される半導体基板としては、例えば、シリコンウエハ、ゲルマニウムウエハ、及びヒ化ガリウム、リン化インジウム、窒化ガリウム、窒化インジウム、窒化アルミニウム等の化合物半導体ウエハが挙げられる。
表面に無機膜が形成された半導体基板を用いる場合、当該無機膜は、例えば、ALD(原子層堆積)法、CVD(化学気相堆積)法、反応性スパッタ法、イオンプレーティング法、真空蒸着法、スピンコーティング法(スピンオングラス:SOG)により形成される。前記無機膜として、例えば、ポリシリコン膜、酸化ケイ素膜、窒化珪素膜、BPSG(Boro-Phospho Silicate Glass)膜、窒化チタン膜、窒化酸化チタン膜、タングステン膜、窒化ガリウム膜、及びヒ化ガリウム膜が挙げられる。
このような半導体基板上に、スピナー、コーター等の適当な塗布方法により本発明のレジスト下層膜形成組成物を塗布する。その後、ホットプレート等の加熱手段を用いてベークすることによりレジスト下層膜を形成する。ベーク条件としては、ベーク温度100℃~400℃、ベーク時間0.3分~60分間の中から適宜、選択される。好ましくは、ベーク温度120℃~350℃、ベーク時間0.5分~30分間、より好ましくは、ベーク温度150℃~300℃、ベーク時間0.8分~10分間である。
形成されるレジスト下層膜の膜厚としては、例えば0.001μm(1nm)~10μm、好ましくは0.002μm(2nm)~1μm、より好ましくは0.005μm(5nm)~0.5μm(500nm)である。ベーク時の温度が、上記範囲より低い場合には架橋が不十分となることがある。一方、ベーク時の温度が上記範囲より高い場合は、レジスト下層膜が熱によって分解してしまうことがある。
【0042】
<パターニングされた基板の製造方法、半導体装置の製造方法>
パターニングされた基板の製造方法は以下の工程を経る。通常、レジスト下層膜の上にフォトレジスト層を形成して製造される。レジスト下層膜の上に自体公知の方法で塗布、焼成して形成されるフォトレジストとしては露光に使用される光に感光するものであれば特に限定はない。ネガ型フォトレジスト及びポジ型フォトレジストのいずれも使用できる。ノボラック樹脂と1,2-ナフトキノンジアジドスルホン酸エステルとからなるポジ型フォトレジスト、酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物とアルカリ可溶性バインダーと光酸発生剤とからなる化学増幅型フォトレジスト、及び酸により分解してアルカリ溶解速度を上昇させる基を有するバインダーと酸により分解してフォトレジストのアルカリ溶解速度を上昇させる低分子化合物と光酸発生剤からなる化学増幅型フォトレジスト、メタル元素を含有するレジストなどがある。例えば、JSR(株)製商品名V146G、シプレー社製商品名APEX-E、住友化学(株)製商品名PAR710、及び信越化学工業(株)製商品名AR2772、SEPR430等が挙げられる。また、例えば、Proc.SPIE,Vol.3999,330-334(2000)、Proc.SPIE,Vol.3999,357-364(2000)、やProc.SPIE,Vol.3999,365-374(2000)に記載されているような、含フッ素原子ポリマー系フォトレジストを挙げることができる。
露光は、所定のパターンを形成するためのマスク(レチクル)を通して行われ、例えば、i線、KrFエキシマレーザー、ArFエキシマレーザー、EUV(極端紫外線)またはEB(電子線)が使用される。現像にはアルカリ現像液が用いられ、現像温度5℃~50℃、現像時間10秒~300秒から適宜選択される。アルカリ現像液としては、例えば、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリウム、ケイ酸ナトリウム、メタケイ酸ナトリウム、アンモニア水等の無機アルカリ類、エチルアミン、n-プロピルアミン等の第一アミン類、ジエチルアミン、ジーn-ブチルアミン等の第二アミン類、トリエチルアミン、メチルジエチルアミン等の第三アミン類、ジメチルエタノールアミン、トリエタノールアミン等のアルコールアミン類、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、コリン等の第4級アンモニウム塩、ピロール、ピペリジン等の環状アミン類、等のアルカリ類の水溶液を使用することができる。さらに、上記アルカリ類の水溶液にイソプロピルアルコール等のアルコール類、ノニオン系等の界面活性剤を適当量添加して使用することもできる。これらの中で好ましい現像液は第四級アンモニウム塩、さらに好ましくはテトラメチルアンモニウムヒドロキシド及びコリンである。さらに、これらの現像液に界面活性剤などを加えることもできる。アルカリ現像液に代えて、酢酸ブチル等の有機溶媒で現像を行い、フォトレジストのアルカリ溶解速度が向上していない部分を現像する方法を用いることもできる。上記工程を経て、上記レジストがパターニングされた基板が製造できる。
次いで、形成したレジストパターンをマスクとして、前記レジスト下層膜をドライエッチングする。その際、用いた半導体基板の表面に前記無機膜が形成されている場合、その無機膜の表面を露出させ、用いた半導体基板の表面に前記無機膜が形成されていない場合、その半導体基板の表面を露出させる。その後基板を自体公知の方法(ドライエッチング法等)により基板を加工する工程を経て、半導体装置が製造できる。
【実施例】
【0043】
以下、本発明について合成例及び実施例を挙げて詳述するが、本発明は下記記載に何ら限定されるものではない。
【0044】
本明細書の下記合成例1乃至合成例7に示す重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、本明細書ではGPCと略称する。)による測定結果である。測定には東ソー(株)製GPC装置を用い、測定条件は下記のとおりである。また、本明細書の下記合成例に示す分散度は、測定された重量平均分子量、及び数平均分子量から算出される。
GPCカラム:Shodex〔登録商標〕・Asahipak〔登録商標〕(昭和電工(株))
カラム温度:40℃
溶媒:テトラヒドロフラン(THF)
流量:0.6ml/分
標準試料:ポリスチレン(東ソー(株)製)
ディテクター:RIディテクター(東ソー(株)製、RI-8020)
【0045】
<合成例1>
ジグリシジルジメチルヒダントイン(四国化成(株)製)7.50g、モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)4.61g、3-ヒドロキシ安息香酸(東京化成工業(株)製)1.34g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(ACROSS社製)0.60gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル62.30gに加え溶解させた。反応容器を窒素置換後、135℃で4時間反応させ、ポリマー溶液を得た。当該ポリマー溶液は、室温に冷却しても白濁等を生じることはなく、プロピレングリコールモノメチルエーテルに対する溶解性は良好である。GPC分析を行ったところ、得られた溶液中のポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量2591、分散度は1.41であった。本合成例で得られたポリマーは、下記式(1a)及び式(2a)で表される構造単位を有すると共に、下記式(4a)で表される構造を末端に有する。
【化24】
【0046】
<合成例2>
ジグリシジルジメチルヒダントイン(四国化成(株)製)7.50g、モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)4.61g、3,4-ジヒドロキシ安息香酸(東京化成工業(株)製)1.48g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(ACROSS社製)0.60gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル63.01gに加え溶解させた。反応容器を窒素置換後、135℃で4時間反応させ、ポリマー溶液を得た。当該ポリマー溶液は、室温に冷却しても白濁等を生じることはなく、プロピレングリコールモノメチルエーテルに対する溶解性は良好である。GPC分析を行ったところ、得られた溶液中のポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量2950、分散度は1.46であった。本合成例で得られたポリマーは、下記式(1a)及び式(2a)で表される構造単位を有すると共に、下記式(3a)で表される構造を末端に有する。
【化25】
【0047】
<合成例3>
ジグリシジルジメチルヒダントイン(四国化成(株)製)5.40g、モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)3.32g、1-Hydroxy-2-naphthoic Acid(東京化成工業(株)製)1.30g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(ACROSS社製)0.43gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル46.74gに加え溶解させた。反応容器を窒素置換後、135℃で4時間反応させ、ポリマー溶液を得た。当該ポリマー溶液は、室温に冷却しても白濁等を生じることはなく、プロピレングリコールモノメチルエーテルに対する溶解性は良好である。GPC分析を行ったところ、得られた溶液中のポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量2386、分散度は2.21であった。本合成例で得られたポリマーは、下記式(1a)及び式(2a)で表される構造単位を有すると共に、下記式(5a)で表される構造を末端に有する。
【化26】
【0048】
<合成例4>
ジグリシジルジメチルヒダントイン(四国化成(株)製)9.00g、モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)5.53g、ガリック酸(東京化成工業(株)製)1.96g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(ACROSS社製)0.71gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル47.99gに加え溶解させた。反応容器を窒素置換後、135℃で4時間反応させ、ポリマー溶液を得た。当該ポリマー溶液は、室温に冷却しても白濁等を生じることはなく、プロピレングリコールモノメチルエーテルに対する溶解性は良好である。GPC分析を行ったところ、得られた溶液中のポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量3402、分散度は2.23であった。本合成例で得られたポリマーは、下記式(1a)及び式(2a)で表される構造単位を有すると共に、下記式(6a)で表される構造を末端に有する。
【化27】
【0049】
<合成例5>
ジグリシジルジメチルヒダントイン(四国化成(株)製)9.00g、モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)5.53g、ピペロニルアルコール(東京化成工業(株)製)1.91g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(ACROSS社製)0.71gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル47.80gに加え溶解させた。反応容器を窒素置換後、135℃で4時間反応させ、ポリマー溶液を得た。当該ポリマー溶液は、室温に冷却しても白濁等を生じることはなく、プロピレングリコールモノメチルエーテルに対する溶解性は良好である。GPC分析を行ったところ、得られた溶液中のポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量3186、分散度は2.57であった。本合成例で得られたポリマーは、下記式(1a)及び式(2a)で表される構造単位を有すると共に、下記式(7a)で表される構造を末端に有する。
【化28】
【0050】
<比較合成例1>
ジグリシジルジメチルヒダントイン(四国化成(株)製)9.00g、モノアリルジグリシジルイソシアヌル酸(四国化成工業(株)製)5.53g、4-(Methylsulfonyl)benzoic Acid(東京化成工業(株)製)1.91g及びエチルトリフェニルホスホニウムブロミド(ACROSS社製)0.71gを、プロピレングリコールモノメチルエーテル47.80gに加え溶解させた。反応容器を窒素置換後、135℃で4時間反応させ、ポリマー溶液を得た。当該ポリマー溶液は、室温に冷却しても白濁等を生じることはなく、プロピレングリコールモノメチルエーテルに対する溶解性は良好である。GPC分析を行ったところ、得られた溶液中のポリマーは標準ポリスチレン換算にて重量平均分子量2600、分散度は2.13であった。本合成例で得られたポリマーは、下記式(1a)及び式(2a)で表される構造単位を有すると共に、下記式(8a)で表される構造を末端に有する。
【化29】
【0051】
<実施例1>
上記合成例1で得られた、ポリマー0.031gを含むポリマー溶液0.21gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.0077gとp-フェノールスルホン酸ピリジニウム塩(東京化成工業(株)製)0.0012gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル47.81g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.00gを加え溶解させた。その後孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物とした。
【0052】
<実施例2>
上記合成例2で得られた、ポリマー0.031gを含むポリマー溶液0.21gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製、商品名:POWDERLINK〔登録商標〕1174)0.0077gとp-フェノールスルホン酸ピリジニウム塩(東京化成工業(株)製)0.0012gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル47.81g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.00gを加え溶解させた。その後孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物とした。
【0053】
<実施例3>
上記合成例3で得られた、ポリマー0.031gを含むポリマー溶液0.21gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.0077gとp-フェノールスルホン酸ピリジニウム塩(東京化成工業(株)製)0.0012gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル47.81g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.00gを加え溶解させた。その後孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物とした。
【0054】
<実施例4>
上記合成例4で得られた、ポリマー0.031gを含むポリマー溶液0.21gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.0077gとp-フェノールスルホン酸ピリジニウム塩(東京化成工業(株)製)0.0012gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル47.81g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.00gを加え溶解させた。その後孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物とした。
【0055】
<実施例5>
上記合成例5で得られた、ポリマー0.031gを含むポリマー溶液0.21gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.0077gとp-フェノールスルホン酸ピリジニウム塩(東京化成工業(株)製)0.0012gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル47.81g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.00gを加え溶解させた。その後孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物とした。
【0056】
<比較例1>
上記比較合成例1で得られた、ポリマー0.031gを含むポリマー溶液0.21gに、テトラメトキシメチルグリコールウリル(日本サイテックインダストリーズ(株)製)0.0077gとp-フェノールスルホン酸ピリジニウム塩(東京化成工業(株)製)0.0012gを混合し、プロピレングリコールモノメチルエーテル47.81g及びプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート2.00gを加え溶解させた。その後孔径0.05μmのポリエチレン製ミクロフィルターを用いてろ過して、リソグラフィー用レジスト下層膜形成組成物とした。
【0057】
〔フォトレジスト溶剤への溶出試験〕
実施例1乃至実施例5、及び比較例1のレジスト下層膜形成組成物を、それぞれ、スピナーにより、半導体基板であるシリコンウェハー上に塗布した。そのシリコンウェハーをホットプレート上に配置し、215℃で1分間ベークし、レジスト下層膜(膜厚5nm)を形成した。これらのレジスト下層膜をフォトレジストに使用する溶剤である乳酸エチル及びプロピレングリコールモノメチルエーテルに浸漬し、それらの溶剤に不溶であることを確認した。
【0058】
〔KrF露光によるレジストパターンの形成〕
DUV-30J(日産化学(株)製反射防止膜)を反射防止膜としてスピナーを用いてシリコンウェハー上に塗布した。そのシリコンウェハーを、ホットプレート上で205℃で60秒間ベークし、膜厚18nmの膜を得た。その膜上に実施例1乃至実施例5及び比較例1のレジスト下層膜形成組成物を、スピナーを用いてシリコンウェハー上にそれぞれ塗布した。そのシリコンウェハーを、ホットプレート上で215℃で60秒間ベークし、膜厚5nmのレジスト下層膜を得た。そのレジスト下層膜上に、KrFエキシマレーザー用ポジ型レジスト溶液をスピンコートし、110℃で60秒間加熱し、KrFレジスト膜を形成した。そのレジスト膜に対し、KrFエキシマレーザー用露光装置((株)ニコン製、NSR S205C)を用い、所定の条件で露光した。露光後、110℃で60秒間ベーク(PEB)を行い、クーリングプレート上で室温まで冷却し、酢酸ブチルで現像した後、酢酸ブチルでリンス処理をし、170nmライン/340nmピッチのレジストパターンを形成した。レジストパターンの測長には走査型電子顕微鏡((株)日立ハイテクノロジーズ製、CG4100)を用いた。上記レジストパターンの形成において、170nmライン/340nmピッチ(ラインアンドスペース(L/S=1/1)を形成した露光量を最適露光量とした。評価は、170nmのラインアンドスペース(L/S)の形成可否、形成されたラインパターン上面からの観察による当該ラインパターンのライン幅のラフネス(LWR)の大小、及びレジストパターンの倒壊が認められない最小の線幅である最小倒壊前寸法により行った。表1に評価の結果を示す。ラインアンドスペースが形成された場合を「良好」とした。また、LWRについて、形成されたラインパターンの線幅のバラツキの大きさをnmで示した。LWRは小さい値ほど好ましいことから実施例1乃至実施例5は比較例1と比べて、良好なLWRを示した。
【0059】
【0060】
〔EUV露光試験〕
シリコンウェハー上に、本発明の実施例1、実施例2及び比較例1のレジスト下層膜形成組成物をスピンコートし、215℃で1分間加熱することにより、レジスト下層膜を形成した。そのレジスト下層膜上に、EUV用レジスト溶液をスピンコートし加熱を行い、EUV露光装置(ASML社製、NXE3300B)を用い、NA=0.33 Dipoleの条件で露光した。露光後、PEB(露光後加熱)を行い、クーリングプレート上で室温まで冷却し、現像及びリンス処理を行い、シリコンウェハー上にレジストパターンを形成した。評価は、16nmのラインアンドスペース(L/S)の形成可否を示す。また16nmライン/32nmピッチ(ラインアンドスペース(L/S=1/1)を形成した露光量を最適露光量とし、その時の露光量(EOP)を示す。実施例1及び2は比較例1と比較して感度の向上が見られた。
【0061】
【産業上の利用可能性】
【0062】
本発明に係るレジスト下層膜形成組成物は、所望のレジストパターンを形成できるレジスト下層膜を形成するための組成物、及び該レジスト下層膜形成組成物を用いるレジストパターン形成方法を提供することができる。