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特許7556482ポリカーボネートジオール組成物、ポリカーボネートジオール組成物の製造方法、及びポリウレタン
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B1)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】ポリカーボネートジオール組成物、ポリカーボネートジオール組成物の製造方法、及びポリウレタン
(51)【国際特許分類】
   C08G 64/02 20060101AFI20240918BHJP
   C08G 18/44 20060101ALI20240918BHJP
   C08G 64/20 20060101ALI20240918BHJP
   C08K 5/07 20060101ALI20240918BHJP
   C08L 69/00 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
C08G64/02 ZAB
C08G18/44
C08G64/20
C08K5/07
C08L69/00
【請求項の数】 23
(21)【出願番号】P 2023579611
(86)(22)【出願日】2023-12-22
(86)【国際出願番号】 JP2023046172
【審査請求日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2023016724
(32)【優先日】2023-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023016725
(32)【優先日】2023-02-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023136447
(32)【優先日】2023-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(31)【優先権主張番号】P 2023136448
(32)【優先日】2023-08-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000006035
【氏名又は名称】三菱ケミカル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002000
【氏名又は名称】弁理士法人栄光事務所
(74)【代理人】
【識別番号】100144967
【弁理士】
【氏名又は名称】重野 隆之
(72)【発明者】
【氏名】若林 一樹
(72)【発明者】
【氏名】鮎田 光弘
(72)【発明者】
【氏名】小津間 大介
(72)【発明者】
【氏名】内田 脩麻
(72)【発明者】
【氏名】山中 貴之
【審査官】佐藤 のぞみ
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2015/199070(WO,A1)
【文献】特開2014-062202(JP,A)
【文献】特開2001-049164(JP,A)
【文献】特開平2-289616(JP,A)
【文献】特開平5-051428(JP,A)
【文献】特開2012-072350(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08G 64/00-42
C08G 18/00-87
C08K 5/07
C08L 69/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記一般式(1)で表される化合物(1)に由来する構造単位(1)を含むポリカーボネートジオールと炭素数3以上8以下のアルデヒドを含有するポリカーボネートジオール組成物。
HO-(CH-OH (1)
(上記一般式(1)中、nは、3~6の整数である。)
【請求項2】
前記アルデヒドが、炭素数2以上7以下の脂肪族炭化水素基を有するアルデヒドである、請求項1に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【請求項3】
前記アルデヒドが、6-ヒドロキシヘキサナール及びアジポアルデヒドから選ばれる少なくとも1種である、請求項2に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【請求項4】
前記化合物(1)が、下記一般式(1-1)で表される化合物(1-1)を含む、請求項1に記載のポリカーボネートジオール組成物。
HO-(CH-OH (1-1)
【請求項5】
前記ポリカーボネートジオール組成物が、該組成物の総質量に対して、前記アルデヒドを440質量ppm以下含有する、請求項1に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【請求項6】
前記ポリカーボネートジオール組成物が、該組成物の総質量に対して、前記アルデヒドを1質量ppm以上含有する、請求項1に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【請求項7】
前記ポリカーボネートジオールのホルミル末端基の含有割合が、該ポリカーボネートジオールの総末端基100モル%に対して、0.01モル%以上である、請求項1に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【請求項8】
前記ポリカーボネートジオールの数平均分子量(Mn)が250以上5000以下である、請求項1に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【請求項9】
前記ポリカーボネートジオールが、さらに、下記一般式(2)で表される化合物(2)に由来する構造単位(2)、及び、構造の一部に下記一般式(3)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(3)に由来する構造単位(3)から選ばれる少なくとも1種を含む、請求項1に記載のポリカーボネートジオール組成物。
HO-R-OH (2)
(上記一般式(2)中、Rは、置換基を有してもよい、炭素数3~20の二価のアルキレン基を示す。ただし、上記一般式(2)で表される化合物(2)は、前記一般式(1)で表される化合物(1)を含まない。)
-(CH-O)- (3)
(但し、上記一般式(3)で表される部位が-CH-O-Hの一部である場合を除く。)
【請求項10】
前記化合物(1)が、バイオ原料由来の化合物を含む、請求項1に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【請求項11】
前記化合物(1)が、バイオ原料由来の化合物単独物、或いは、バイオ原料由来の化合物及び化石燃料由来の化合物を含む混合物である、請求項10に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【請求項12】
前記バイオ原料由来の化合物が、非可食性バイオマス及び/又は非化石燃料に由来する化合物である、請求項10に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【請求項13】
下記一般式(1)で表される化合物(1)と炭素数3以上8以下のアルデヒドを含有するジヒドロキシ化合物組成物と、カーボネート化合物とを触媒存在下、エステル交換反応により重縮合させて、ポリカーボネートジオールを含有するポリカーボネートジオール組成物を得る、ポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
HO-(CH-OH (1)
(上記一般式(1)中、nは、3~6の整数である。)
【請求項14】
前記アルデヒドが、炭素数2以上7以下の脂肪族炭化水素基を有する、請求項13に記載のポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
【請求項15】
前記アルデヒドが、6-ヒドロキシヘキサナール及びアジポアルデヒドから選ばれる少なくとも1種である、請求項14に記載のポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
【請求項16】
前記化合物(1)が、下記一般式(1-1)で表される化合物(1-1)を含む、請求項13に記載のポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
HO-(CH-OH (1-1)
【請求項17】
前記ポリカーボネートジオール組成物が、該組成物の総質量に対して、アルデヒドを440質量ppm以下含有する、請求項13に記載のポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
【請求項18】
前記ジヒドロキシ化合物組成物が、該組成物の総質量に対して、前記アルデヒドを1質量ppm以上含有する、請求項13に記載のポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
【請求項19】
前記ジヒドロキシ化合物組成物が、該組成物の総質量に対して、アルデヒドを900質量ppm以下含有する、請求項13に記載のポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
【請求項20】
前記ポリカーボネートジオールの数平均分子量(Mn)が250以上5000以下である、請求項13に記載のポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
【請求項21】
前記ジヒドロキシ化合物組成物が、さらに下記一般式(2)で表される化合物(2)、及び、構造の一部に下記一般式(3)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(3)の少なくとも一種を含む、請求項13に記載のポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
HO-R-OH (2)
(上記一般式(2)中、Rは、置換基を有してもよい、炭素数3~20の二価のアルキレン基を示す。ただし、上記一般式(2)で表される化合物(2)は、前記一般式(1)で表される化合物(1)を含まない。)
-(CH-O)- (3)
(但し、上記一般式(3)で表される部位が-CH-O-Hの一部である場合を除く。)
【請求項22】
請求項1~12のいずれか1項に記載のポリカーボネートジオール組成物を用いて得られるポリウレタン。
【請求項23】
活性エネルギー線硬化性重合体組成物、人工皮革、合成皮革、塗料、コーティング剤、弾性繊維、粘着剤、及び接着剤からなる群より選ばれるいずれかに用いられる、請求項22に記載のポリウレタン。

【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリカーボネートジオール組成物、及びポリカーボネートジオール組成物の製造方法に関する。
さらに、本発明は、前記ポリカーボネートジオール組成物を用いて得られるポリウレタンに関する。
【背景技術】
【0002】
工業規模で生産されているポリウレタンとして、ソフトセグメント部の原料にポリカーボネートジオールを用いた、ポリカーボネートタイプのポリウレタンが提案されている(非特許文献1)。
ポリカーボネートタイプのポリウレタンは、耐熱性及び耐加水分解性において最良な耐久グレードとされており、耐久性フィルムや自動車用人工皮革、(水系)塗料、接着剤として広く利用されている。
【0003】
ポリカーボネートタイプのポリウレタンの原料として、現在広く市販されているポリカーボネートジオールでは、主に1,6-ヘキサンジオールが原料のジヒドロキシ化合物として用いられている。
さらに、ポリウレタンの柔軟性や結晶性、強度などを向上するため、1,6-ヘキサンジオール等の炭素数3~6の直鎖脂肪族系ジオール同士、またはこれらの直鎖脂肪族系ジオールと他のジヒドロキシ化合物を組み合わせて用いた脂肪族ポリカーボネートジオールがポリウレタンの原料として提案されている。
【0004】
例えば、特許文献1には、ポリカーボネートジオールの原料のジヒドロキシ化合物として、1,6-ヘキサンジオールと1,5-ペンタンジオールとを組み合わせることで、得られるポリウレタンの柔軟性や弾性回復性を向上する技術が開示されている。
【0005】
特許文献2には、ポリカーボネートジオールの原料のジヒドロキシ化合物として、1,6-ヘキサンジオールと1,4-ブタンジオールとを組み合わせることで、得られるポリウレタンの耐油性、耐熱性、耐寒性を向上する技術が開示されている。
【0006】
特許文献3には、ポリカーボネートジオールの原料のジヒドロキシ化合物として、1,6-ヘキサンジオールとイソソルバイドとを組み合わせることで、得られるポリウレタンの強度や硬度を向上する技術が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開平2-289616号公報
【文献】特開平5-51428号公報
【文献】特開2012-072350号公報
【非特許文献】
【0008】
【文献】"ポリウレタンの基礎と応用"96頁~106頁 松永勝治 監修、(株)シーエムシー出版、2006年11月発行
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
しかしながら、1,6-ヘキサンジオール等の炭素数3~6の直鎖脂肪族系ジオールに含まれるアルデヒドが、該直鎖脂肪族系ジオールを用いて得られたポリカーボネートジオールを原料とするポリウレタンの機械的特性と耐薬品性等の物性や、前記機械的強度のバラツキに影響を及ぼすことについて、特許文献1~3は何ら言及していない。
そのため、従来、1,6-ヘキサンジオール等の炭素数3~6の直鎖脂肪族系ジオールを用いて得られたポリカーボネートジオールを原料として、ポリウレタンを工業的に製造並びに使用するにあたってのコストや品質において、十分に満足し得る結果は得られていなかった。
【0010】
本発明は、1,6-ヘキサンジオール等の炭素数3~6の直鎖脂肪族系ジオールを原料にして得られたポリカーボネートジオールを含むポリカーボネートジオール組成物であって、該ポリカーボネートジオール組成物を用いて得られたポリウレタンの機械的特性と耐薬品性に優れ、前記機械的特性のバラツキが抑制されたポリカーボネートジオール組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0011】
本発明者らは、ポリカーボネートジオール組成物に特定のアルデヒドを含有させることで、上記課題を解決できることを見出し、本発明に至った。
【0012】
本発明はこのような知見に基づいて達成されたものであり、以下を要旨とする。
【0013】
[1] 下記一般式(1)で表される化合物(1)に由来する構造単位(1)を含むポリカーボネートジオールと炭素数3以上8以下のアルデヒドを含有するポリカーボネートジオール組成物。
HO-(CH-OH (1)
(上記一般式(1)中、nは、3~6の整数である。)
【0014】
[2] 前記アルデヒドが、炭素数2以上7以下の脂肪族炭化水素基を有するアルデヒドである、[1]に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【0015】
[3] 前記アルデヒドが、6-ヒドロキシヘキサナール及びアジポアルデヒドから選ばれる少なくとも1種である、[2]に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【0016】
[4] 前記化合物(1)が、下記一般式(1-1)で表される化合物(1-1)を含む、[1]~[3]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物。
HO-(CH-OH (1-1)
【0017】
[5] 前記ポリカーボネートジオール組成物が、該組成物の総質量に対して、前記アルデヒドを440質量ppm以下含有する、[1]~[4]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物。
【0018】
[6] 前記ポリカーボネートジオール組成物が、該組成物の総質量に対して、前記アルデヒドを1質量ppm以上含有する、[1]~[5]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物。
【0019】
[7] 前記ポリカーボネートジオールのホルミル末端基の含有割合が、該ポリカーボネートジオールの総末端基100モル%に対して、0.01モル%以上である、[1]~[6]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物。
【0020】
[8] 前記ポリカーボネートジオールの数平均分子量(Mn)が250以上5000以下である、[1]~[7]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物。
【0021】
[9] 前記ポリカーボネートジオールが、さらに、下記一般式(2)で表される化合物(2)に由来する構造単位(2)、及び、構造の一部に下記一般式(3)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(3)に由来する構造単位(3)から選ばれる少なくとも1種を含む、[1]~[8]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物。
HO-R-OH (2)
(上記一般式(2)中、Rは、置換基を有してもよい、炭素数3~20の二価のアルキレン基を示す。ただし、上記一般式(2)で表される化合物(2)は、前記一般式(1)で表される化合物(1)を含まない。)
-(CH-O)- (3)
(但し、上記一般式(3)で表される部位が-CH-O-Hの一部である場合を除く。)
【0022】
[10] 前記化合物(1)が、バイオ原料由来の化合物を含む、[1]~[9]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物。
【0023】
[11] 前記化合物(1)が、バイオ原料由来の化合物単独物、或いは、バイオ原料由来の化合物及び化石燃料由来の化合物を含む混合物である、[10]に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【0024】
[12] 前記バイオ原料由来の化合物が、非可食性バイオマス及び/又は非化石燃料に由来する化合物である、[10]又は[11]に記載のポリカーボネートジオール組成物。
【0025】
[13] 下記一般式(1)で表される化合物(1)と炭素数3以上8以下のアルデヒドを含有するジヒドロキシ化合物組成物と、カーボネート化合物とを触媒存在下、エステル交換反応により重縮合させて、ポリカーボネートジオールを含有するポリカーボネートジオール組成物を得る、ポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
HO-(CH-OH (1)
(上記一般式(1)中、nは、3~6の整数である。)
【0026】
[14] 前記アルデヒドが、炭素数2以上7以下の脂肪族炭化水素基を有する、[13]に記載のポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
【0027】
[15] 前記アルデヒドが、6-ヒドロキシヘキサナール及びアジポアルデヒドから選ばれる少なくとも1種である、[14]に記載のポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
【0028】
[16] 前記化合物(1)が、下記一般式(1-1)で表される化合物(1-1)を含む、[13]~[15]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
HO-(CH-OH (1-1)
【0029】
[17] 前記ポリカーボネートジオール組成物が、該組成物の総質量に対して、アルデヒドを440質量ppm以下含有する、[13]~[16]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
【0030】
[18] 前記ジヒドロキシ化合物組成物が、該組成物の総質量に対して、前記アルデヒドを1質量ppm以上含有する、[13]~[17]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
【0031】
[19] 前記ジヒドロキシ化合物組成物が、該組成物の総質量に対して、アルデヒドを900質量ppm以下含有する、[13]~[18]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
【0032】
[20] 前記ポリカーボネートジオールの数平均分子量(Mn)が250以上5000以下である、[13]~[19]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
【0033】
[21] 前記ジヒドロキシ化合物組成物が、さらに下記一般式(2)で表される化合物(2)、及び、構造の一部に下記一般式(3)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(3)の少なくとも一種を含む、[13]~[20]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物の製造方法。
HO-R-OH (2)
(上記一般式(2)中、Rは、置換基を有してもよい、炭素数3~20の二価のアルキレン基を示す。ただし、上記一般式(2)で表される化合物(2)は、前記一般式(1)で表される化合物(1)を含まない。)
-(CH-O)- (3)
(但し、上記一般式(3)で表される部位が-CH-O-Hの一部である場合を除く。)
【0034】
[22] [1]~[12]のいずれかに記載のポリカーボネートジオール組成物を用いて得られるポリウレタン。
【0035】
[23] 活性エネルギー線硬化性重合体組成物、人工皮革、合成皮革、塗料、コーティング剤、弾性繊維、粘着剤、及び接着剤からなる群より選ばれるいずれかに用いられる、[22]に記載のポリウレタン。
【発明の効果】
【0036】
本発明によれば、得られたポリウレタンの機械的特性と耐薬品性に優れるとともに、前記機械的特性のバラツキが抑制された高品質のポリウレタンを安定に製造することが可能なポリカーボネートジオール組成物が提供される。
【発明を実施するための形態】
【0037】
以下、本発明の形態について詳細に説明する。本発明は以下の実施の形態に限定されるものではなく、その要旨の範囲内で種々変形して実施することができる。
【0038】
本明細書において、「構造単位」とは、ポリカーボネートジオールの製造に用いる原料化合物が重合することにより形成された、前記原料化合物に由来する単位である。「構造単位」は、得られた重合体において任意の連結基に挟まれた部分構造を示す。構造単位には重合体の末端部分で一方が連結基であり、もう一方が重合反応性基である部分構造も含む。構造単位は、重合反応によって直接形成された単位であってもよく、得られた重合体を処理することによって前記単位の一部が別の構造に変換されたものであってもよい。
本明細書において、「繰り返し単位」とは、「構造単位」と同義である。
【0039】
本明細書において、「~」を用いて表される数値範囲は、特に断りのない限り、「~」の前後に記載された数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。例えば、「A~B」は、A以上B以下であることを意味する。
【0040】
本明細書において、「A又はBを含む」とは、特に断りのない限り、「Aを含む」、「Bを含む」及び「A及びBを含む」ことを意味する。
【0041】
本明細書において、「質量%」は全体量100質量%中に含まれる所定の成分の含有割合を示す。
本明細書において“質量%”と“重量%”、“質量ppm”と“重量ppm”、及び“質量部”と“重量部”とは、それぞれ同義である。
本明細書において、単に“ppm”と記載した場合は、“重量ppm”のことを示す。
【0042】
本明細書において、「得られたポリウレタン」とは、本発明のポリカーボネートジオール組成物を用いて製造したポリウレタンのことをいう。
【0043】
[ポリカーボネートジオール組成物]
本発明のポリカーボネートジオール組成物は、下記一般式(1)で表される化合物(1)に由来する構造単位(1)を含むポリカーボネートジオール(以下、「本発明のポリカーボネートジオール」と称す場合がある。)と、炭素数3以上8以下のアルデヒドを含有するポリカーボネートジオール組成物である。
HO-(CH-OH (1)
(上記一般式(1)中、nは、3~6の整数である。)
【0044】
以下において、本発明に係る「炭素数3以上8以下のアルデヒド」を「アルデヒド(A)」と称す場合がある。
【0045】
本発明のポリカーボネートジオール組成物は、アルデヒド(A)を含むことにより、得られたポリウレタンの機械的強度と耐薬品性が優れたものとなり、且つ、前記機械的強度のバラツキが抑制された高品質のポリウレタンを安定に製造することが可能となる。
【0046】
前記アルデヒド(A)の詳細については、後述する。
【0047】
本発明のポリカーボネートジオール組成物は、前記ポリカーボネートジオールが前記構造単位(1)を含むことにより、得られたポリウレタンの機械的特性、耐薬品性、柔軟性、及び低温特性等を良好にできる。
【0048】
前記化合物(1)の詳細については、後述する。
【0049】
<アルデヒド(A)>
本発明におけるアルデヒド(A)は、炭素数3以上8以下のアルデヒドであれば、特に限定されるものではなく、公知のアルデヒド化合物や、前記化合物(1)のヒドロキシ基をアルデヒド基に置き換えたアルデヒド化合物を採用することができる。
【0050】
本発明におけるアルデヒド(A)の炭素数は、好ましくは炭素数3以上6以下であり、より好ましくは炭素数4以上6以下であり、さらに好ましくは炭素数6である。
【0051】
本発明におけるアルデヒド(A)は、得られたポリウレタンの機械的強度と耐薬品性及び機械的強度のバラツキ抑制の観点から、炭素数2以上7以下の脂肪族炭化水素基を有するアルデヒドを用いることができる。前記脂肪族炭化水素基としてより具体的には、炭素数2以上7以下、且つ、分岐構造を有してもよい、直鎖状構造又は環状構造を有する脂肪族炭化水素基を挙げることができる。
【0052】
アルデヒド基はヒドロキシ基と反応してアセタール基に変化する場合がある。よって、本発明におけるアルデヒド(A)とは、前記アルデヒド化合物のアルデヒド基をアセタール基に置き換えたアセタール化合物(以下、「アセタール(A)」と称す場合がある。)も含む。即ち、本発明におけるアルデヒド(A)の含有量は、アルデヒド化合物とそのアセタール変性物であるアセタール(A)との合計の含有量を意味する。
【0053】
前記アセタール(A)としては、例えば、前記アルデヒド(A)のアルデヒド基がヒドロキシ基と反応してアセタール基に変化したアセタール化合物(a);前記アルデヒド(A)のアルデヒド基1個に対して、モノヒドロキシ化合物が2分子反応したアセタール化合物(b);前記アルデヒド(A)のアルデヒド基1個に対して、ジヒドロキシ化合物が1分子反応したアセタール化合物(c);前記アルデヒド(A)のアルデヒド基1個に対して、モノヒドロキシ化合物が1分子反応したヘミアセタール化合物(d);が挙げられる。
前記アセタール(A)はこれらの1種であってもよく、2種以上であってもよい。
【0054】
さらに、本発明におけるアルデヒド(A)は、本発明のポリカーボネートジオール組成物中で遊離しているアルデヒド(A)と、該ポリカーボネートジオール組成物中のポリカーボネートジオールに結合又は会合若しくはポリカーボネートジオールの構造の一部に含まれているアルデヒド(A)の両方を含むものとする。
【0055】
上記の「ポリカーボネートジオールに結合又は会合若しくはポリカーボネートジオールの構造の一部に含まれているアルデヒド(A)」の形態は、特に限定されるものではなく、例えば、前記アルデヒド(A)に含まれるヒドロキシ基やアミノ基が反応し、前記ポリカーボネートジオール中で、カーボネート結合やウレタン結合を形成している形態が挙げられる。
【0056】
前記アルデヒド(A)は、前記化合物(1)の前駆体である炭素数3~6のカルボン酸又は該カルボン酸のエステル誘導体を水素化反応させ前記化合物(1)を製造する際の、該水素化反応工程において副生する。
【0057】
前記「化合物(1)の前駆体」の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、前記一般式(1)で表される化合物(1)において、以下のようなものが挙げられる。
n=3の場合は、マロン酸又はマロン酸エステル;
n=4の場合は、コハク酸又はコハク酸エステル;
n=5の場合は、グルタル酸又はグルタル酸エステル;
n=6(後述の化合物(1-1))の場合は、アジピン酸又はアジピン酸エステル;
【0058】
前記化合物(1)の製造段階において、副生物であるアルデヒド(A)を多くする方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
・水素化反応で使用する触媒量を少なくする。
・水素化反応の滞留時間を短くする。
・水素化反応の水素圧力を過小にする。
逆に、前記化合物(1)の製造段階において、副生物であるアルデヒド(A)を低減する方法としては、例えば、以下のような方法が挙げられる。
・水素化反応で使用する触媒量を多くする。
・水素化反応の滞留時間を長くする。
・水素化反応の水素圧力を過大にする。
【0059】
アセタール(A)の水素化は、アルデヒド(A)とは異なる水素化触媒に依存する。このため、アルデヒド(A)を含む化合物(1)の水素化は、通常の水素化触媒を使用して行われるが、この水素化触媒ではアセタール(A)が水素化されにくく、これにより前記化合物(1)中にアセタール(A)が残存することがある。
さらに、前記化合物(1)の製造においては、通常、水素化反応工程の後に、蒸留により前記化合物(1)を精製するが、水素化反応工程にて副生したアセタール(A)が蒸留工程においてアルデヒド(A)に分解して、精製した前記化合物(1)中にアルデヒド(A)が混入する場合がある。また、アルデヒド(A)がヒドロキシ基と反応して生成したアセタール(A)が、精製後の前記化合物(1)中に混入することがある。
【0060】
一般に、ジヒドロキシ化合物の製造工程で副生する不純物の沸点が、前記ジヒドロキシ化合物の沸点と有意に異なる場合、この不純物は、蒸留精製により比較的容易に分離除去される。しかし、本発明においては、アルデヒド(A)及びアセタール(A)は、前記化合物(1)と沸点が近いため、前記化合物(1)から分離除去することが難しく、蒸留精製後の前記化合物(1)中に、アルデヒド(A)やアセタール(A)が残存することがある。
【0061】
本発明におけるアルデヒド(A)の種類は、特に限定されるものではなく、例えば、分子内に1以上、好ましくは分子内に6以下の、アルデヒド基を有する、炭素数4以上6以下の化合物が挙げられる。具体的には、前記一般式(1)で表される化合物(1)において、以下のようなものが挙げられる。
n=3の場合は、3-ヒドロキシプロパナール等のモノアルデヒド化合物、マロンジアルデヒドのようなジアルデヒド化合物;
n=4の場合は、4-ヒドロキシブタナール等のモノアルデヒド化合物、スクシンアルデヒドのようなジアルデヒド化合物;
n=5の場合は、5-ヒドロキシペンタナール等のモノアルデヒド化合物、グルタルアルデヒドのようなジアルデヒド化合物;
n=6(後述の化合物(1-1))の場合は、6-ヒドロキシヘキサナール等のモノアルデヒド化合物、アジポアルデヒドのようなジアルデヒド化合物;
【0062】
前記アルデヒド(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
アルデヒド(A)としては、これらの中でも、6-ヒドロキシヘキサナール及びアジポアルデヒドから選ばれる少なくとも1種が好ましい。
【0063】
<アルデヒド(A)の含有割合>
本発明のポリカーボネートジオール組成物中の前記アルデヒド(A)の含有割合は、該組成物中の前記アルデヒド(A)の含有割合のことをいう。
前記ポリカーボネートジオール組成物が前記アセタール(A)を含有する場合は、本発明のポリカーボネートジオール組成物中の前記アルデヒド(A)の含有割合は、該組成物中の前記アルデヒド(A)及び前記アセタール(A)の合計の含有割合のことをいう。
【0064】
前記ポリカーボネートジオール組成物中のアルデヒド(A)の含有割合の下限は、特に限定されるものではなく、得られたポリウレタンの機械的特性と耐薬品性に優れ、且つ、前記機械的特性のばらつきが抑制されること、さらに、前記アルデヒド(A)を低減するための経済性の観点から、該組成物の総質量に対して、1質量ppm以上が好ましく、5質量ppm以上がより好ましく、15質量ppm以上がさらに好ましく、50質量ppm以上が特に好ましい。
一方、前記アルデヒド(A)の含有割合の上限は、特に限定されるものではなく、得られたポリウレタンの機械的特性と耐薬品性を良好に維持する観点から、該組成物の総質量に対して、440質量ppm以下が好ましい。
アルデヒド(A)の含有割合が多すぎると、ポリカーボネートジオール組成物を用いてポリウレタンを製造する際の製造条件によっては、アルデヒド(A)が、ポリカーボネートジオールの水酸基末端と反応したり、或いは、ポリウレタンの原料として用いられるイソシアネート化合物と反応することにより、ポリウレタン重合中にポリウレタン中に架橋構造が形成され、ゲル化現象が起きることに起因して、重合安定性が損なわれる。また、ポリカーボネートジオール組成物が黄変して、色調が損なわれる。前記アルデヒド(A)の含有割合の上限は、400質量ppm以下がより好ましく、350質量ppm以下がさらに好ましく、300質量ppm以下が特に好ましい。
【0065】
上記の上限下限は、任意に組み合わせることができる。例えば、本発明のポリカーボネートジオール組成物に含有される、前記アルデヒド(A)の含有割合は、該組成物の総質量に対して、1質量ppm以上440質量ppm以下が好ましく、5質量ppm以上400質量ppm以下がより好ましく、15質量ppm以上350質量ppm以下がさらに好ましく、50質量ppm以上300質量ppm以下が特に好ましい。
【0066】
本発明のポリカーボネートジオール組成物において、ポリカーボネートジオール中の前記アルデヒド(A)の含有割合を、上述した数値範囲内に制御する具体的な方法は、特に限定されるものではなく、この分野の当業者であれば、後述する本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法や、後述する具体的な製造条件を、周知技術に基づいて、適宜最適化することにより制御できる。
【0067】
<ポリカーボネートジオールのホルミル末端基>
本発明のポリカーボネートジオール組成物は、ポリカーボネートジオール中にホルミル末端基(=ホルミルオキシ基(-OCHO))を含むことができる。
【0068】
前記化合物(1)又はジヒドロキシ化合物組成物が前記アルデヒド(A)を含有する場合、該化合物(1)又は該ジヒドロキシ化合物組成物を用いて製造されたポリカーボネートジオール組成物は、該組成物の製造方法により、ポリカーボネートジオールの構造中にホルミル末端基が形成されることがある。
【0069】
本発明のポリカーボネートジオール組成物は、ポリカーボネートジオール中にアルデヒド(A)を含む場合、得られるポリウレタンの機械的特性のばらつきが抑制され、機械的特性と耐薬品性が良好であり、両者のバランスに優れている。この理由は定かではないものの、以下のように推察される。
【0070】
本発明者らの検討によれば、ホルミル末端基を有するポリカーボネートジオールを含むポリカーボネートジオール組成物を用いてポリウレタンを重合する場合、前記アルデヒド(A)は、ポリカーボネートジオールまたは鎖延長剤と縮合反応してアセタールを生成することで、ポリウレタン構造中に分岐構造を形成する。そして、このポリウレタン構造中に分岐構造が存在することにより、ポリウレタン又はポリウレタンを含有する組成物の粘度が向上することが判明した。その結果、ポリウレタン組成の均一性を攪拌操作により効率的に向上させることが可能となること、また、前記粘度が適度に向上することで、ポリウレタン又はポリウレタンを含有する組成物の塗工安定性や成形安定性が向上して、得られたフィルム状物や繊維状物、その他成形体の寸法安定性が向上する。これらのことから、得られるポリウレタン製品において機械的特性のばらつきが抑制されると推察される。
【0071】
また、本発明者らの検討によれば、ホルミル末端基を有するポリカーボネートジオールを含むポリカーボネートジオール組成物を用いてポリウレタンを重合する場合、前記アルデヒド(A)の一部が、上述したようにポリウレタン構造中に分岐構造を形成することにより、得られるポリウレタンの分子量分布が広くなり、ポリウレタンの高分子量成分および架橋成分が増加することが判明した。その結果、得られるポリウレタンの破断強度や破断伸度、耐薬品性が向上すると推察される。
【0072】
<ポリカーボネートジオールのホルミル末端基の含有割合>
本発明のポリカーボネートジオール組成物において、上述したポリカーボネートジオールのホルミル末端基の含有割合は、該ポリカーボネートジオールの総末端基100モル%に対する、ホルミル末端基の含有割合のことをいう。
【0073】
前記ポリカーボネートジオールのホルミル末端基の含有割合の下限は、特に限定されるものではなく、得られたポリウレタンの機械的特性と耐薬品性に優れ、且つ、前記機械的特性のばらつきが抑制される観点から、該組成物の総末端基100モル%に対して、0.01モル%以上が好ましく、0.02モル%以上がより好ましく、0.03モル%以上がさらに好ましく、0.05モル%以上が特に好ましい。一方、前記ホルミル末端基の含有割合の上限は、特に限定されるものではなく、得られたポリウレタンの機械的特性と耐薬品性を良好に維持され、さらにポリカーボネートジオールの黄変が抑制され色調が良好となる観点から、該組成物の総末端基100モル%に対して0.38モル%以下が好ましく、0.35モル%下がより好ましく、0.30モル%以下がさらに好ましく、0.25モル%以下が特に好ましい。
【0074】
上記の上限下限は、任意に組み合わせることができる。例えば、本発明のポリカーボネートジオール組成物に含有される、前記ホルミル末端基の含有割合は、該組成物の総末端基100モル%に対して、0.01モル%以上0.38モル%以下が好ましく、0.02モル%以上0.35モル%以下がより好ましく、0.03モル%以上0.30モル%以下がさらに好ましく、0.05モル%以上0.25モル%以下が特に好ましい。
【0075】
本発明のポリカーボネートジオール組成物において、ポリカーボネートジオール中のホルミル末端基の含有割合を、上述した数値範囲内に制御する具体的な方法は、特に限定されるものではなく、この分野の当業者であれば、後述する本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法の製造条件を、周知技術に基づいて、適宜最適化することにより制御できる。
【0076】
ポリカーボネートジオールのホルミル末端基の含有割合の具体的な測定方法は、実施例の説明において詳細に説明する。
【0077】
<ポリカーボネートジオール>
本発明におけるポリカーボネートジオールは、本発明のポリカーボネートジオール組成物を構成する成分であり、下記一般式(1)で表される化合物(1)に由来する構造単位(1)を含むポリカーボネートジオールである。
HO-(CH-OH (1)
(上記一般式(1)中、nは、3~6の整数である。)
【0078】
前記化合物(1)の詳細については、後述する。
【0079】
本発明のポリカーボネートジオール組成物中における、前記ポリカーボネートジオールの含有割合の下限は、特に限定されるものではなく、ポリカーボネートタイプのポリウレタンの特徴である、耐熱性及び耐加水分解性を損なわない観点から、該組成物の総質量100%に対して、90質量%以上が好ましく、95質量%以上がより好ましく、98質量%以上がさらに好ましく、99質量%以上が特に好ましい。一方、前記ポリカーボネートジオールの含有割合の上限は、特に限定されるものではなく、前記ポリカーボネートジオールと前記アルデヒド(A)との合計量とし、該組成物の総質量を100%として、100質量%であってもよい。
【0080】
本発明におけるポリカーボネートジオールは、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で後述する化合物(2)に由来する構造単位(2)、及び、後述するジヒドロキシ化合物(3)に由来する構造単位(3)の少なくとも1種を含むことができる。
【0081】
(ポリカーボネートジオールの分子量)
本発明におけるポリカーボネートジオールの数平均分子量(Mn)の下限は、特に限定さるものではなく、得られたポリウレタンの機械的特性が良好となる観点から、250以上が好ましく、300以上がより好ましく、400以上がさらに好ましい。一方、前記数平均分子量(Mn)の上限は、特に限定されるものではなく、本発明のポリカーボネートジオール組成物の粘度を適度に抑え、ハンドリング性を良好に維持する観点や、得られたポリウレタンの耐薬品性を良好に維持する観点から、5000以下が好ましく、4000以下がより好ましく、3000以下がさらに好ましい。
【0082】
上記の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。例えば、本発明におけるポリカーボネートジオールの数平均分子量(Mn)は、250以上5000以下が好ましく、300以上4000以下がより好ましく、400以上3000以下がさらに好ましい。
【0083】
前記数平均分子量(Mn)は、水酸基価から算出される分子量であり、その測定条件は後述の実施例に記載のとおりである。
【0084】
(化合物(1))
本発明における化合物(1)は、下記一般式(1)で表される化合物であり、本発明におけるポリカーボネートジオールを構成する原料である。
本発明のポリカーボネートジオール組成物は、下記一般式(1)で表される化合物(1)に由来する構造単位(1)を含むポリカーボネートジオールを含有する。
HO-(CH-OH (1)
(上記一般式(1)中、nは、3~6の整数である。)
【0085】
上記一般式(1)中、nは、3~6の整数であれば、特に限定されるものではないが、化合物(1)の取り扱い性や入手の容易さの観点から、nが4~6の整数、さらには、nが6である化合物を用いることができる。
【0086】
本発明のポリカーボネートジオール組成物において、前記化合物(1)としては、特に限定されるものではなく、ポリカーボネートジオールの原料に用いられる公知のジヒドロキシ化合物を適宜選択して用いることができる。
具体的には、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオールが挙げられる。
【0087】
前記化合物(1)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0088】
中でも、前記化合物(1)としては、下記一般式(1-1)で表される化合物(1-1)、即ち1,6-ヘキサンジオールを用いることができる。
HO-(CH-OH (1-1)
【0089】
従って、前記ポリカーボネートジオールにおいて、前記構造単位(1)は、前記一般式(1-1)で表される化合物(1-1)に由来する構造単位を含むことができる。
【0090】
このような場合、前記構造単位(1)中に含まれる、前記化合物(1-1)に由来する構造単位の含有割合は、特に限定されるものではなく、ポリカーボネートジオールのハンドリング性や、得られたポリウレタンの柔軟性や低温特性が良好となる観点から、該構造単位(1)の総質量100%に対して、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましい。この含有割合は、90質量%以上とすることもできる。一方、前記構造単位(1)中の前記化合物(1-1)に由来する構造単位の含有割合の上限は、特に限定されるものではなく、該構造単位(1)の総質量100%に対して、100質量%であってもよいし、或いは又、99質量%以下とすることもできる。
【0091】
本発明におけるポリカーボネートジオールは、前記化合物(1)に由来する構造単位(1)を含むことにより、得られたポリウレタンの機械的特性と耐薬品性が良好となる。
【0092】
前記構造単位(1)は、例えば、下記一般式(1’)で表される構造単位が挙げられる。
【0093】
【化1】
【0094】
(上記一般式(1’)中、nは、3~6の整数である。)
【0095】
前記構造単位(1)は、得られたポリウレタンの機械的特性と耐薬品性がより良好となる観点から、下記一般式(1-1)で表される化合物(1-1)に由来する構造単位(1-1)、即ち1,6-ヘキサンジオールに由来する構造単位(1-1)を含むことができる。
HO-(CH-OH (1-1)
【0096】
前記式構造単位(1-1)は、例えば、下記式(1-1’)で表される構造単位が挙げられる。
【0097】
【化2】
【0098】
本発明におけるポリカーボネートジオール中の前記構造単位(1)の含有割合の下限は、特に限定されるものではなく、得られたポリウレタンの機械的特性と耐薬品性が良好となる観点から、該ポリカーボネートジオールの総質量100%に対して、40質量%以上が好ましく、60質量%以上がより好ましく、75質量%以上がさらに好ましく、80質量%以上が特に好ましい。一方、前記構造単位(1)の含有割合の上限は、特に限定されるものではなく、100質量%であってもよいし、100質量%未満であってもよい。或いは又、得られたポリウレタンの耐薬品性を良好に維持する観点から、該組成物の総質量100%に対して、98質量%以下がより好ましく、95質量%以下がさらに好ましく、90質量%以下が特に好ましい。
【0099】
上記の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。例えば、本発明におけるポリカーボネートジオール中の前記構造単位(1)の含有割合の含有割合は、該ポリカーボネートジオールの総質量100%に対して、40質量%以上100質量%以下が好ましく、60質量%以上98質量%以下がより好ましく、75質量%以上95質量%以下がさらに好ましく、80質量%以上90質量%以下が特に好ましい。
【0100】
本発明のポリカーボネートジオールは、前記化合物(1)として、化石燃料由来の化合物(1)の単独物を用いることができる。
或いは又、本発明のポリカーボネートジオールは、前記化合物(1)として、バイオ原料由来の化合物(1)を含む化合物(1)、具体的にはバイオ原料由来の化合物(1)の単独物、或いはバイオ原料由来の化合物(1)及び化石燃料由来の化合物(1)を含む混合物を用いることにより、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を図ることができる。
バイオ原料由来の化合物(1)とは、非可食性バイオマス及び/又は非化石燃料に由来する化合物(1)である。
【0101】
本発明において、非可食性バイオマスとは、非可食性の草や樹木を原料とした資源のことをいう。具体的には、針葉樹や広葉樹などの木質系バイオマスから得られるセルロース、ヘミセルロース、リグニン等や、トウモロコシやサトウキビの茎、ダイズやナタネなどの草本系バイオマスから得られるバイオエタノールやバイオディーゼル、植物由来の廃油等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0102】
本発明において、非化石燃料とは、例えば、水素、又は、化石燃料や非可食性バイオマスに由来しない動植物由来の有機物のことをいう。具体的には、薪、炭、乾燥した家畜糞等から得られる、メタン、糖エタノール等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0103】
本発明において、化石燃料由来の化合物(1)とは、石油由来の化合物(1)、石炭由来の化合物(1)、天然ガス由来の化合物(1)から選ばれる少なくとも1種のことをいう。
【0104】
上述したバイオ原料由来の化合物(1)には、その由来により、前述した前記アルデヒド(A)が含まれることがある。このため、該化合物(1)中の前記アルデヒド(A)の含有割合を制御してポリカーボネートジオール組成物を製造したり、該化合物(1)を用いて製造されたポリカーボネートジオール組成物中のアルデヒド(A)の含有割合を制御することにより、上述した本発明の効果を得ることができる。
【0105】
例えば、本発明におけるポリカーボネートジオールは、前記化合物(1-1)として、化石燃料由来の1,6-ヘキサンジオールの単独物を用いることができる。
或いは又、本発明におけるポリカーボネートジオールは、前記化合物(1-1)として、バイオ原料由来の1,6-ヘキサンジオールを含む1,6-ヘキサンジオール、具体的にはバイオ原料由来の1,6-ヘキサンジオールの単独物、或いはバイオ原料由来の1,6-ヘキサンジオール及び化石燃料由来の1,6-ヘキサンジオールを含む混合物を用いることにより、持続可能な開発目標(SDGs)の達成を図ることができる。
バイオ原料由来の1,6-ヘキサンジオールとは、非可食性バイオマス及び/又は非化石燃料に由来する1,6-ヘキサンジオールである。
【0106】
本発明において、化石燃料由来の1,6-ヘキサンジオールとは、石油由来の1,6-ヘキサンジオール、石炭由来の1,6-ヘキサンジオール、天然ガス由来の1,6-ヘキサンジオールから選ばれる少なくとも1種のことをいう。
【0107】
上述したバイオ原料由来の1,6-ヘキサンジオールには、その由来により、前述した前記アルデヒド(A)が含まれることがある。このため、該1,6-ヘキサンジオール中の前記アルデヒド(A)の含有割合を制御してポリカーボネートジオール組成物を製造したり、該1,6-ヘキサンジオールを用いて製造されたポリカーボネートジオール組成物中のアルデヒド(A)の含有割合を制御することにより、上述した本発明の効果を得ることができる。
【0108】
(化合物(2))
本発明における化合物(2)は、下記一般式(2)で表される化合物であり、本発明におけるポリカーボネートジオールを構成する原料として用いることができる。
即ち、本発明のポリカーボネートジオール組成物において、前記ポリカーボネートジオールは、下記一般式(2)で表される化合物(2)に由来する構造単位(2)を含有することができる。
HO-R-OH (2)
(上記一般式(2)中、Rは、置換基を有してもよい、炭素数3~20の二価のアルキレン基を示す。ただし、上記一般式(2)で表される化合物(2)は、前記一般式(1)で表される化合物(1)を含まない。)
【0109】
前記式(2)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数3~20の二価のアルキレン基を示す。
【0110】
また、前記式(2)で表される化合物に由来する構造単位(2)は、例えば、下記式(2’)で表される。
【0111】
【化3】
【0112】
前記式(2)中、Rは1種類であっても複数種であってもよい。前記式(2)中、Rは置換若しくは無置換の炭素数3~20の二価のアルキレン基である。柔軟性、低温特性、耐薬品性、耐熱性それぞれが良好となることから、Rのアルキレン基を構成する主鎖の炭素原子は2級、3級もしくは4級の炭素原子であることが好ましく、2級炭素原子であることがより好ましい。
【0113】
本発明のポリカーボネートジオール組成物において、前記化合物(2)のような、分子構造内に芳香環構造を有しない脂肪族ジヒドロキシ化合物を用いることで、ポリカーボネートジオールのハンドリング性や、得られたポリウレタンの柔軟性や耐薬品性を優れたものにできる。
【0114】
本発明におけるポリカーボネートジオール中の前記構造単位(2)の含有割合の下限は、特に限定されるものではなく、ポリカーボネートジオールのハンドリング性や、得られたポリウレタンの柔軟性や耐薬品性が良好となる観点から、該ポリカーボネートジオールの総質量100%に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。一方、前記構造単位(2)の含有割合の上限は、特に限定されるものではなく、ポリカーボネートジオールのハンドリング性や、得られたポリウレタンの柔軟性や低温特性を良好に維持する観点から、該ポリカーボネートジオールの総質量100%に対して、95質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0115】
上記の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。例えば、本発明におけるポリカーボネートジオール中の前記構造単位(2)の含有割合は、該ポリカーボネートジオールの総質量100%に対して、5質量%以上95質量%以下が好ましく、10質量%以上75質量%以下がより好ましく、25質量%以上50質量%以下がさらに好ましい。
【0116】
本発明のポリカーボネートジオール組成物において、前記化合物(2)は、特に限定されるものではなく、例えば、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、2-メチル-1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、1,12-ドデカンジオール、1,13-トリデカンジオール、1,14-テトラデカンジオール、1,16-ヘキサデカンジオール、1,18-オクタデカンジオール、1,12-オクタデカンジオール、1,20-エイコサンジオール等が挙げられる。中でも、得られたポリウレタンの柔軟性、低温特性、耐薬品性のバランスが優れることより、2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール、1,3-ブタンジオール、2-メチル-1,4-ブタンジオール、1,10-デカンジオールが好ましく、1,10-デカンジオールがより好ましい。
【0117】
これらの化合物(2)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0118】
(ジヒドロキシ化合物(3))
本発明におけるジヒドロキシ化合物(3)は、構造の一部に下記一般式(3)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物であり、本発明におけるポリカーボネートジオールを構成する原料として用いることができる。
即ち、本発明のポリカーボネートジオール組成物において、前記ポリカーボネートジオールは、構造の一部に下記一般式(3)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(3)に由来する構造単位(3)を含有することができる。
-(CH-O)- (3)
(但し、上記一般式(3)で表される部位が-CH-O-Hの一部である場合を除く。)
【0119】
本発明のポリカーボネートジオール組成物において、前記ジヒドロキシ化合物(3)のような、構造の一部に構造単位(3)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物を用いることで、ポリカーボネートジオールのハンドリング性や、得られたポリウレタンの柔軟性や低温特性を優れたものにできる。
【0120】
本発明におけるポリカーボネートジオール中の前記構造単位(3)の含有割合の下限は、特に限定されるものではなく、ポリカーボネートジオールのハンドリング性や、得られたポリウレタンの柔軟性や低温特性が良好となる観点から、該ポリカーボネートジオールの総質量100%に対して、5質量%以上が好ましく、10質量%以上がより好ましく、25質量%以上がさらに好ましい。一方、前記構造単位(3)の含有割合の上限は、特に限定されるものではなく、ポリカーボネートジオールのハンドリング性や、得られたポリウレタンの耐熱性や強度を良好に維持する観点から、該組成物の総質量100%に対して、95質量%以下が好ましく、75質量%以下がより好ましく、50質量%以下がさらに好ましい。
【0121】
上記の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。例えば、本発明におけるポリカーボネートジオール中の前記構造単位(3)の含有割合の含有割合は、該ポリカーボネートジオールの総質量100%に対して、5質量%以上95質量%以下が好ましく、10質量%以上75質量%以下がより好ましく、25質量%以上50質量%以下がさらに好ましい。
【0122】
本発明のポリカーボネートジオール組成物において、前記ジヒドロキシ化合物(3)は、特に限定されるものではなく、例えば、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、テトラエチレングリコール、ポリエチレングリコールなどのオキシアルキレングリコール類;9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)フェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソプロピルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-イソブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-シクロヘキシルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-フェニルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3,5-ジメチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(2-ヒドロキシエトキシ)-3-tert-ブチル-6-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-(3-ヒドロキシ-2,2-ジメチルプロポキシ)フェニル)フルオレン等、側鎖に芳香族基を有し、主鎖に芳香族基に結合したエーテル基を有する化合物;下記一般式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコール;下記一般式(5)で表されるスピログリコール等の環状エーテル構造を有する化合物が挙げられる。
【0123】
これらのジヒドロキシ化合物(3)は1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0124】
【化4】
【0125】
【化5】
【0126】
これらのジヒドロキシ化合物(3)のうち、芳香環構造を有しないジヒドロキシ化合物は、得られたポリウレタンの耐光性の観点から好ましい。
【0127】
上記一般式(4)で表されるジヒドロキシ化合物に代表される無水糖アルコールとして、具体的には、立体異性体の関係にある、イソソルバイド、イソマンニド、イソイデットから選ばれる少なくとも1種が挙げられる。
これらは1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
中でも、植物由来の資源として豊富に存在し、容易に入手可能な種々のデンプンから製造されるソルビトールを脱水縮合して得られるイソソルバイドが、入手及び製造のし易さ、耐光性、光学特性、成形性、耐熱性、持続可能な開発目標(SDGs)の達成の観点から最も好ましい。
【0128】
[ポリカーボネートジオールの製造方法]
本発明のポリカーボネートジオールを製造する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、Schnell著、ポリマー・レビューズ第9巻、p9~20(1994年)や国際公開第2015/199070号などに記載される公知のポリカーボネートジオールの製造方法を用いることができる。
【0129】
本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法の具体的な一実施形態として、後述する化合物(1)と後述する炭素数3以上8以下のアルデヒド(A)を含有するジヒドロキシ化合物組成物と、後述するカーボネート化合物とを、後述する触媒の存在下、エステル交換反応により重縮合させて、ポリカーボネートジオールを含有するポリカーボネートジオール組成物を得る方法が挙げられる。
【0130】
<ジヒドロキシ化合物組成物>
前記ジヒドロキシ化合物組成物としては、後述する化合物(1)とアルデヒド(A)を含有する組成物が挙げられる。
【0131】
(化合物(1))
本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法における前記化合物(1)は、下記一般式(1)で表される化合物であり、本発明のポリカーボネートジオール組成物の説明で挙げた化合物(1)と同じ化合物を用いることができる。
HO-(CH-OH (1)
(上記一般式(1)中、nは、3~6の整数である。)
【0132】
以下、本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法における前記化合物(1)と本発明のポリカーボネートジオール組成物における化合物(1)と同義として扱うことができる。
【0133】
前記化合物(1)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0134】
本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法において、前記化合物(1)は、必要に応じて、下記一般式(1-1)で表される化合物(1-1)を含むことができる。
HO-(CH-OH (1-1)
【0135】
このような場合、前記化合物(1)中の化合物(1-1)の含有割合は、特に限定されるものではなく、ポリカーボネートジオールのハンドリング性や、得られたポリウレタンの柔軟性や低温特性が良好となる観点から、該化合物(1)の総質量100%に対して、10質量%以上が好ましく、30質量%以上がより好ましく、50質量%以上がさらに好ましく、70質量%以上が特に好ましい。この含有割合は、90質量%以上とすることもできる。一方、前記化合物(1)中の化合物(1-1)の含有割合の上限は、特に限定されるものではなく、該化合物(1)の総質量100%に対して、100質量%であってもよいし、或いは又、99質量%以下とすることもできる。
【0136】
(アルデヒド(A))
本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法において、前記アルデヒド(A)は、本発明のポリカーボネートジオール組成物の説明で挙げたアルデヒド(A)と同義として扱うことができる。
【0137】
前記アルデヒド(A)は、1種単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0138】
本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法におけるアルデヒド(A)は、得られたポリウレタンの機械的強度と耐薬品性及び前記機械的強度のバラツキ抑制の観点から、炭素数2以上7以下の脂肪族炭化水素基を有するアルデヒドを用いることができる。前記脂肪族炭化水素基としてより具体的には、炭素数2以上7以下、且つ、分岐構造を有してもよい、直鎖状構造又は環状構造を有する脂肪族炭化水素基を挙げることができる。
【0139】
本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法における前記の炭素数2以上7以下の脂肪族炭化水素基を有するアルデヒドは、本発明のポリカーボネートジオール組成物の説明で挙げた炭素数2以上7以下の脂肪族炭化水素基を有するアルデヒドと同義として扱うことができる。
【0140】
発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法における前記アルデヒド(A)として、具体的には、6-ヒドロキシヘキサナール及びアジポアルデヒドから選ばれる少なくとも1種を挙げることができる。
【0141】
本発明のポリカーボネートジオールの製造方法において、前記ジヒドロキシ化合物組成物中のアルデヒド(A)の含有割合の上限は、特に限定されるものではなく、得られたポリウレタンの機械的特性と耐薬品性を良好に維持する観点や、さらに得られたポリカーボネートジオール組成物の黄変を抑制して色調を良好に維持でき、且つ、ポリウレタン重合時の重合安定性が良好となる観点から、該ジヒドロキシ化合物組成物の総質量に対して、900質量ppm以下が好ましい。アルデヒド(A)の含有割合が多いほど、製造されたポリカーボネートジオール組成物を用いてポリウレタンを製造する際の製造条件によっては、アルデヒド(A)が、ポリカーボネートジオールの水酸基末端と反応したり、或いは、ポリウレタンの原料として用いられるイソシアネート化合物と反応することにより、ポリウレタン重合中にポリウレタン中に架橋構造が形成され、ゲル化現象が起きることに起因して、重合安定性が損なわれる。前記アルデヒド(A)の含有割合の上限は、700質量ppm以下がより好ましく、500質量ppm以下がさらに好ましく、400質量ppm以下が特に好ましく、300質量ppm以下がとりわけ好ましい。
一方、前記アルデヒド(A)の含有割合の下限は、特に限定されるものではなく、得られるポリウレタンの機械的特性と耐薬品性に優れ、且つ、前記機械的特性のばらつきが抑制されること、さらに、前記アルデヒド(A)を低減するための経済性の観点から、通常は該ジヒドロキシ化合物組成物の総質量に対して、1質量ppm以上が好ましく、5質量ppm以上がより好ましく、10質量ppm以上がさらに好ましく、50質量ppm以上が特に好ましく、100質量ppm以上がとりわけ好ましい。
【0142】
上記の上限下限は、任意に組み合わせることができる。例えば、本発明のポリカーボネートジオールの製造方法において、前記ジヒドロキシ化合物組成物に含有される、アルデヒド(A)の含有割合は、特に限定されるものではなく、該ジヒドロキシ化合物組成物の総質量に対して、1質量ppm以上900質量ppm以下が好ましく、5質量ppm以上700質量ppm以下がより好ましく、10質量ppm以上500質量ppm以下がさらに好ましく、50質量ppm以上400質量ppm以下が特に好ましく、100質量ppm以上300質量ppm以下がとりわけ好ましい。
【0143】
前記ジヒドロキシ化合物組成物中の前記アルデヒド(A)の含有割合を制御する方法は、特に限定されるものではない。例えば、カルボン酸やカルボン酸エステルの水素化反応により前記化合物(1)を得る際に、水素化反応工程におけるカルボン酸やカルボン酸エステルの転化率を調整することでアルデヒド(A)の含有割合を制御できる。
【0144】
例えば、前記ジヒドロキシ化合物組成物の製造段階においてアルデヒド(A)の含有割合を低減する方法として、前記転化率を高くするほど、得られたジヒドロキシ化合物組成物において、前記アルデヒド(A)の含有割合は低減する。
一方、前記ジヒドロキシ化合物組成物の製造段階においてアルデヒド(A)の含有割合を増加する方法として、前記ジヒドロキシ化合物組成物中のアルデヒド(A)の含有割合は酸化によって増加するため、例えば前記ジヒドロキシ化合物組成物を酸素存在下の原料槽等で加熱すれば、前記アルデヒド(A)の含有割合を所望の値まで増加できる。
【0145】
前記ジヒドロキシ化合物組成物の製造段階においてアルデヒド(A)の含有割合を低減するには、ジヒドロキシ化合物の原料であるカルボン酸やカルボン酸エステルの水素化反応に使用する触媒量を多くしたり、滞留時間を長くしたり、水素圧力を過大にしたりする等の方法を用いることができるが、製造段階における負荷が大きく容易ではない。
また、アセタール(A)は、アルデヒド(A)とは異なる水素化触媒能が必要となるため、アルデヒド(A)の水素化触媒では水素化反応しにくく前記化合物(1)中にアセタール(A)が残存する。
【0146】
さらに、水素化反応工程の後に、蒸留により前記化合物(1)を蒸留精製することができるが、その際に、蒸留段階においても水素化反応工程にて副生したアセタール(A)がアルデヒド(A)に分解して、精製した前記化合物(1)中に混入することがある。またアルデヒド(A)がヒドロキシ基と反応してアセタールが生成し、前記化合物(1)中に混入することがある。
【0147】
一般に、炭素数が少ないジヒドロキシ化合物組成物中におけるアルデヒド(A)は、蒸留精製により比較的容易に分離できるが、前記化合物(1)とアルデヒド(A)の沸点が近く、またアセタール(A)として分離することが難しい場合、アルデヒド(A)やアセタール(A)として前記化合物(1)中に残りやすい。
【0148】
さらに、本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法において、得られたポリカーボネートジオール組成物中のアルデヒド(A)の含有割合の上限は、特に限定されるものではないが、本発明のポリカーボネートジオール組成物について述べた理由と同じ理由により、該組成物の総質量に対して、440質量ppm以下であることが好ましく、350質量ppm以下がより好ましく、300質量ppm以下がさらに好ましい。一方、前記アルデヒド(A)の含有割合の下限は、特に限定されるものではないが、本発明のポリカーボネートジオール組成物について述べた理由と同じ理由により、該組成物の総質量に対して、通常1質量ppm以上であり、5質量ppm以上が好ましく、15質量ppm以上がより好ましく、50質量ppm以上がさらに好ましい。
【0149】
上記の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。例えば、本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法において、得られたポリカーボネートジオール組成物中に含有される、アルデヒド(A)の含有割合は、該組成物の総質量に対して、好ましくは1質量ppm以上440質量ppm以下であり、5質量ppm以上400質量ppm以下がより好ましく、15質量ppm以上350質量ppm以下がさらに好ましく、50質量ppm以上300質量ppm以下が特に好ましい。
【0150】
(ポリカーボネートジオールの分子量)
本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法において、得られたポリカーボネートジオールの数平均分子量(Mn)は、本発明のポリカーボネートジオール組成物について述べた理由と同じ理由により、250以上5000以下が好ましく、300以上4000以下がより好ましく、400以上3000以下がさらに好ましい。
【0151】
(化合物(2)及びジヒドロキシ化合物(3))
本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法において、前記ジヒドロキシ化合物組成物は、さらに下記一般式(2)で表される化合物(2)、及び、構造の一部に下記一般式(3)で表される部位を有するジヒドロキシ化合物(3)の少なくとも一種を含むことが、本発明のポリカーボネートジオール組成物について述べた理由と同じ理由により、好ましい。
HO-R-OH (2)
(上記一般式(2)中、Rは、置換基を有してもよい、炭素数3~20の二価のアルキレン基を示す。ただし、上記一般式(2)で表される化合物(2)は、前記一般式(1)で表される化合物(1)を含まない。)
-(CH-O)- (3)
(但し、上記一般式(3)で表される部位が-CH-O-Hの一部である場合を除く。)
【0152】
本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法における化合物(2)及びジヒドロキシ化合物(3)としては、それぞれ、本発明のポリカーボネートジオール組成物の説明で挙げた化合物(2)及びジヒドロキシ化合物(3)と同じ化合物を用いることができる。以下、本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法における化合物(2)及びジヒドロキシ化合物(3)と本発明のポリカーボネートジオール組成物における化合物(2)及び前記ジヒドロキシ化合物(3)を同義として扱うことができる。
【0153】
本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法において、得られたポリカーボネートジオール中の前記構造単位(2)及び前記構造単位(3)の含有割合の下限及び上限は、それぞれ、本発明のポリカーボネートジオールにおける、構造単位(2)及び構造単位(3)の含有割合の下限及び上限と同じである。
【0154】
本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法において、前記ジヒドロキシ化合物(3)は、本発明のポリカーボネートジオール組成物について述べた理由と同じ理由により、イソソルバイド、イソマンニド及びイソイジドから選ばれる少なくとも一種であることが好ましい。
【0155】
<カーボネート化合物>
本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法に使用可能なカーボネート化合物(「炭酸ジエステル」と称する場合がある)は、本発明の効果を損なわない限り、特に限定されないが、ジアルキルカーボネート、ジアリールカーボネート、又はアルキレンカーボネート等のポリカーボネートジオールの合成に用いられる公知のカーボネート化合物が挙げられる。これらのカーボネート化合物は、ポリカーボネートジオールの使途や製造条件等に応じて、当業者が適宜選択することができる。例えば、前記ジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物の反応性の観点から、カーボネート化合物としてはジアリールカーボネートが好ましい。経済性の観点から、カーボネート化合物としてはジアルキルカーボネート又はアルキレンカーボネートが好ましい。
【0156】
カーボネート化合物の具体例としては、ジメチルカーボネート、ジエチルカーボネート、ジブチルカーボネート、ジフェニルカーボネート、エチレンカーボネート等が挙げられる。
【0157】
カーボネート化合物の使用量は、特に限定されないが、例えば、国際公開第2015/199070号に記載された条件を、当業者が公知技術に従って適宜最適化して用いることができる。
【0158】
<触媒>
本発明のポリカーボネートジオール組成物の製造方法において、ジヒドロキシ化合物組成物とカーボネート化合物とエステル交換反応により重縮合させて、ポリカーボネートジオールを含有するポリカーボネートジオール組成物を得る際に、エステル交換反応を促進するための触媒として、ポリカーボネートジオールの合成に用いられる公知のエステル交換触媒(以下、「触媒」と称する場合がある。)を用いることができる。
【0159】
その場合、得られたポリカーボネートジオール中に、過度に多くの触媒が残存すると、該ポリカーボネートジオールを用いてポリウレタンを製造する際に反応を阻害したり、反応を過度に促進したりする場合がある。
前記触媒の種類や、ポリカーボネートジオール中に残存する触媒量は、特に限定されるものではなく、例えば、国際公開第2015/199070号に記載された条件を、当業者が公知技術に従って適宜最適化して用いることができる。
【0160】
<触媒失活剤>
前述の如く、重合反応の際に触媒を用いた場合、通常得られたポリカーボネートジオールには触媒が残存し、残存する触媒により、ポリカーボネートジオールを加熱した際に分子量上昇や組成変化等が起こったり、ポリウレタン化反応の制御が出来なくなったりする場合がある。この残存する触媒の影響を抑制するために、必要に応じて、使用されたエステル交換触媒とほぼ当モルの例えばリン系化合物等の触媒失活剤を添加し、エステル交換触媒を不活性化することができる。さらには添加後、加熱処理等により、エステル交換触媒を効率的に不活性化することができる。
【0161】
前記触媒失活剤の種類や使用量、加熱処理の条件は、特に限定されるものではなく、例えば、国際公開第2015/199070号に記載された条件を、当業者が公知技術に従って適宜最適化して用いることができる。
【0162】
[ポリウレタン]
本発明のポリウレタンは、本発明のポリカーボネートジオール組成物を用いて製造されたポリウレタンである。
【0163】
本発明のポリウレタンを製造する方法は、特に限定されるものではなく、例えば、国際公開第2015/016261号や国際公開第2018/088575号等に記載された、公知のポリウレタンの反応条件を、当業者が公知技術に従って適宜最適化して用いることができる。
【0164】
例えば、本発明のポリカーボネートジオール組成物を、必要に応じて用いられる本発明のポリカーボネートジオール以外のポリオール、及び後述するポリイソシアネート、さらに必要に応じて用いられる後述する鎖延長剤を、常温から200℃の範囲で反応させることにより、本発明のポリウレタンを製造することができる。
【0165】
鎖延長剤を用いる場合、鎖延長剤は、反応の最初から加えておいてもよいし、反応の途中から加えてもよい。例えば、本発明のポリカーボネートジオール組成物と過剰のポリイソシアネートとをまず反応させて末端にイソシアネート基を有するプレポリマーを製造し、さらに鎖延長剤を添加して前記プレポリマーと反応させ、ポリマーの重合度を上げることにより、本発明のポリウレタンを製造することができる。
【0166】
<ポリイソシアネート>
本発明のポリウレタンの製造に使用されるポリイソシアネートとしては、ポリウレタンの製造に用いられる、公知のポリイソシアネートを使用できる。
【0167】
前記ポリイソシアネートは、特に限定されるものではなく、例えば、国際公開第2015/016261号や国際公開第2018/088575号に記載された、脂肪族、脂環族又は芳香族の各種ポリイソシアネート化合物が挙げられる。
【0168】
具体的には、テトラメチレンジイソシアネート、ペンタメチレンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、2,2,4-トリメチルヘキサメチレンジイソシアネート等の公知の脂肪族ジイソシアネート;1,4-シクロヘキサンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及び1,3-ビス(イソシアネートメチル)シクロヘキサン等の公知の脂環族ジイソシアネート;キシリレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジイソシアネート、m-フェニレンジイソシアネート、p-フェニレンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、4,4’-ジフェニルジメチルメタンジイソシアネート等どの公知の芳香族ジイソシアネート等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0169】
これらの中でも、得られるポリウレタンの物性のバランスが好ましい点、工業的に安価に多量に入手が可能な点で、4,4’-ジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、4,4’-ジシクロヘキシルメタンジイソシアネート及びイソホロンジイソシアネートが好ましい。
【0170】
<鎖延長剤>
本発明のポリウレタンの製造に使用される鎖延長剤としては、ポリウレタンの製造に用いられる公知の鎖延長剤を使用できる。
【0171】
前記鎖延長剤は、特に限定されるものではなく、例えば、国際公開第2015/016261号や国際公開第2018/088575号に記載された、低分子ポリオール、アミン類、水等が挙げられる。
【0172】
具体的には、エチレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,12-ドデカンジオール等の直鎖ジオール類;2-メチル-1,3-プロパンジオール、2,2-ジメチル-1,3-プロパンジオール等の分岐鎖を有するジオール類;ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のエーテル基を有するジオール類;1,4-シクロヘキサンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジヒドロキシエチルシクロヘキサン等の脂環構造を有するジオール類、キシリレングリコール、1,4-ジヒドロキシエチルベンゼン、4,4’-メチレンビス(ヒドロキシエチルベンゼン)等の芳香族基を有するジオール類;グリセリン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトール等のポリオール類;N-メチルエタノールアミン、N-エチルエタノールアミン等のヒドロキシアミン類;エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、ヘキサメチレンジアミン、トリエチレンテトラミン、ジエチレントリアミン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン、2-ヒドロキシエチルプロピレンジアミン、4,4’-ジフェニルメタンジアミン、キシリレンジアミン、ジフェニルジアミン、ヒドラジン、ピペラジン等のポリアミン類;及び水等を挙げることができる。これらの鎖延長剤は単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0173】
これらの中でも、得られるポリウレタンの物性のバランスが好ましい点、工業的に安価に多量に入手が可能な点で、エチレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,4-シクロヘキサンジメタノール、1,4-ジヒドロキシエチルシクロヘキサン、エチレンジアミン、1,3-ジアミノプロパン、イソホロンジアミン、4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタンが好ましい。
【0174】
<鎖停止剤>
本発明のポリウレタンを製造する際には、ポリウレタンの分子量を制御する目的で、必要に応じて、ポリウレタンの製造に用いられる公知の鎖停止剤を使用できる。
【0175】
前記鎖停止剤は、特に限定されるものではなく、例えば、国際公開第2015/016261号や国際公開第2018/088575号に記載された、1個の活性水素基を有する化合物が挙げられる。
【0176】
具体的には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ヘキサノール等の一価アルコールや、ジエチルアミン、ジブチルアミン、ジ-n-プロピルアミン、n-ブチルアミン、モノエタノールアミン、ジエタノールアミン等の二級アミン等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0177】
<触媒>
本発明のポリウレタンを製造する際には、ポリウレタンの製造に用いられる公知の触媒を使用できる。
【0178】
前記触媒は、特に限定されるものではなく、例えば、国際公開第2015/016261号や国際公開第2018/088575号に記載された、三級アミンや錫、チタンなどの有機金属塩等に代表される公知の重合触媒を用いることができる。
【0179】
<溶媒>
本発明のポリウレタンを製造する際には、必要に応じて、溶媒を用いてもよい。
【0180】
前記溶媒は、特に限定されるものではなく、例えば、国際公開第2015/016261号や国際公開第2018/088575号に記載された、溶媒が挙げられる。
【0181】
具体的には、ジメチルホルムアミド、ジエチルホルムアミド、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、テトラヒドロフラン、メチルイソブチルケトン、ジオキサン、シクロヘキサノン、ベンゼン、トルエン、エチルセルソルブ等が挙げられる。これらは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
【0182】
<使用量・使用方法>
本発明のポリウレタンの製造方法において、前記ポリイソシアネートや前記鎖延長剤、前記鎖停止剤、前記触媒、及び前記溶媒の使用量や使用方法等は、特に限定されるものではなく、国際公開第2015/016261号や国際公開第2018/088575号に記載された条件を、当業者が公知技術に従って適宜最適化して用いることができる。
【0183】
<ポリウレタンの重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)>
本発明のポリウレタンの重量平均分子量(Mw)の下限は、特に限定されるものではなく、得られたポリウレタンの機械的特性と耐薬品性が良好となる観点から、5万以上が好ましく、10万以上がより好ましく、15万以上がさらに好ましい。一方、前記重量平均分子量(Mw)の上限は、特に限定されるものではなく、得られたポリウレタンの耐薬品性を良好に維持する観点から、50万以下が好ましく、30万以下がより好ましく、20万以下がさらに好ましい。
【0184】
上記の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。例えば、本発明のポリウレタンの重量平均分子量(Mw)は、5万以上50万以下が好ましく、10万以上30万以下がより好ましく、15万以上20万以下がさらに好ましい。
【0185】
本発明のポリウレタンの分子量分布(Mw/Mn)の下限は、特に限定されるものではなく、得られたポリウレタンの機械的特性と耐薬品性が良好となる観点から、1.50以上が好ましく、2.00以上がより好ましく、2.50以上がさらに好ましい。一方、前記分子量分布(Mw/Mn)の上限は、特に限定されるものではなく、得られたポリウレタンの機械的特性と耐薬品性を良好に維持する観点から、4.00以下が好ましく、3.00以下がより好ましく、2.90以下がさらに好ましい。
【0186】
上記の上限と下限は、任意に組み合わせることができる。例えば、本発明のポリウレタンの分子量分布(Mw/Mn)は、1.50以上4.00以下が好ましく、2.00以上3.00以下がより好ましく、2.50以上2.90以下がさらに好ましい。
【0187】
前記重量平均分子量(Mw)及び分子量分布(Mw/Mn)は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC測定)を用いて測定され、その測定条件は後述の実施例に記載のとおりである。
【0188】
<ポリウレタンの用途>
本発明のポリウレタンは、機械的特性と耐薬品性に優れ、良好な耐熱性、耐候性を有することから、フォーム、エラストマー、弾性繊維、水系ポリウレタン塗料等の塗料、繊維、粘着剤、接着剤、床材、シーラント、医療用材料、人工皮革、合成皮革、コーティング剤、活性エネルギー線硬化性重合体組成物等に広く用いることができる。
【0189】
特に、活性エネルギー線硬化性重合体組成物、人工皮革、合成皮革、水系ポリウレタン塗料等の塗料、コーティング剤、弾性繊維、粘着剤、接着剤等の用途に、本発明のポリウレタンを用いると、耐薬品性、柔軟性、耐熱性、耐候性の良好なバランスを有するため、人の皮膚に触れたり、コスメティック用薬剤や消毒用のアルコールが使われたりする部分において耐久性が高く、また柔軟性も十分で、かつ物理的な衝撃等にも強いという良好な特性を付与することができる。本発明のポリウレタンはまた、耐熱性が必要とされる自動車用途や、耐候性が必要とされる屋外用途に好適に使用できる。
【0190】
[作用効果]
本発明のポリカーボネートジオール組成物は、アルデヒド(A)を含むため、得られるポリウレタンの機械的特性のばらつきが抑制される。この理由は定かではないものの、以下のように推察される。
【0191】
本発明者らの検討によれば、アルデヒド(A)を含有するポリカーボネートジオール組成物を用いてポリウレタンを重合する場合、前記アルデヒド(A)は、ポリカーボネートジオールまたは鎖延長剤と縮合反応してアセタールを生成することで、ポリウレタン構造中に分岐構造を形成する。そして、このポリウレタン構造中に分岐構造が存在することにより、ポリウレタン又はポリウレタンを含有する組成物の粘度が向上することが判明した。その結果、ポリウレタン組成の均一性を攪拌操作により効率的に向上させることが可能となること、また、前記粘度が適度に向上することで、ポリウレタン又はポリウレタンを含有する組成物の塗工安定性や成形安定性が向上して、得られたフィルム状物や繊維状物、その他成形体の寸法安定性が向上する。これらのことから、得られるポリウレタン製品において機械的特性のばらつきが抑制されると推察される。
【0192】
さらに、本発明のポリカーボネートジオール組成物は、アルデヒド(A)を含むため、得られるポリウレタンの機械的特性と耐薬品性が良好であり、両者のバランスに優れている。この理由は定かではないものの、以下のように推察される。
【0193】
本発明者らの検討によれば、アルデヒド(A)を含有するポリカーボネートジオール組成物を用いてポリウレタンを重合する場合、前記アルデヒド(A)の一部が、上述したようにポリウレタン構造中に分岐構造を形成することにより、得られるポリウレタンの分子量分布が広くなり、ポリウレタンの高分子量成分および架橋成分が増加することが判明した。その結果、得られるポリウレタンの破断強度や破断伸度、耐薬品性が向上すると推察される。
【0194】
ポリカーボネートジオール組成物や得られたポリウレタンに良好な色調が要求される場合、本発明のポリカーボネートジオール組成物においては、アルデヒド(A)の含有割合を所定値以下、具体的には440質量ppm以下とすることで、ポリカーボネートジオール組成物の黄変を抑制して色調を良好に維持できる。その結果、得られたポリウレタンの色調を良好にできる。この理由は定かではないものの、以下のように推察される。
【0195】
本発明者らの検討によれば、ポリカーボネートジオール組成物の原料であるジヒドロキシ化合物組成物にアルデヒド(A)が含まれることがある。このようなアルデヒド(A)は、前記ジヒドロキシ化合物の酸化やアセタール化合物の脱アルコールにより生成したり、前記ジヒドロキシ化合物を合成する際の副生物として生成する。
そして、ジヒドロキシ化合物とカーボネート化合物とを触媒存在下でエステル交換反応により重縮合する際に、前記アルデヒド(A)がラジカルを発生し、ジヒドロキシ化合物又はポリカーボネートジオール構造中にアルデヒド基、カルボン酸、二重結合などが生成して共役構造が形成される。このことから、ポリカーボネートジオール組成物が黄変し色調が低下すると推察される。或いは又、ポリカーボネートジオール組成物にアルデヒド(A)が含まれる場合、該組成物が長期間貯蔵されたときに、前記アルデヒド(A)は混入する酸素などの要因でラジカルを発生させ、ジヒドロキシ化合物組成物又はポリカーボネートジオール構造中にアルデヒド基、カルボン酸、二重結合などが生成して共役構造を形成される。このことからも、ポリカーボネートジオール組成物が黄変し色調が低下すると推察される。
【実施例
【0196】
以下、実施例及び比較例を挙げて本発明をさらに具体的に説明する。本発明は、その要旨を超えない限り、これらの実施例に限定されるものではない。
【0197】
[評価方法]
以下において、各物性値の評価方法は下記の通りである。
【0198】
<ジヒドロキシ化合物組成物中のアルデヒド(A)の含有割合>
実施例及び比較例で使用した、化合物(1)として1,6-ヘキサンジオールをジヒドロキシ化合物として含む、ジヒドロキシ化合物組成物中のアルデヒド(A)の含有割合を、以下の手順に従って測定した。
本評価において「アルデヒド(A)」は、6-ヒドロキシヘキサナールのことをいい、「アルデヒド(A)の含有割合」の定義は、前述のアルデヒド(A)の説明に記載したとおりである。
本評価において「1,6-ヘキサンジオール中のアルデヒド(A)」とは、主成分としての1,6-ヘキサンジオールと微量成分としてのアルデヒド(A)を含む1,6-ヘキサンジオール組成物中のアルデヒド(A)を意味する。「主成分として含む」とは、前記組成物の総質量100質量%に対して、該成分を95.0質量%以上の含有割で含むことをいう。
【0199】
1,6-ヘキサンジオールを、CDClに溶解し、核磁気共鳴スペクトル測定装置(400MHz、日本電子株式会社製、機種名:ECZ-400)を用いて、測定温度30℃、積算回数32回の条件で、H-NMR測定を行った。
得られたH-NMR測定結果から、δ9.80~9.75ppmに存在するアルデヒド(A)(6-ヒドロキシヘキサナール)中のアルデヒド基のHプロトンのピークの積分値aと、δ3.69~3.50ppmに存在する1,6-ヘキサンジオール中のαメチレン基の4Hプロトンのピークの積分値b、及び、下記式を用いて、ジヒドロキシ化合物組成物の総質量100%に対する、ジヒドロキシ化合物組成物中のアルデヒド(A)の含有割合(単位:質量%)を算出した。
【0200】
【数1】
【0201】
上記式において、「M(アルデヒド(A))」はアルデヒド(A)(6-ヒドロキシヘキサナール)の分子量(=116)を表し、「M(16HD)」は1,6-ヘキサンジオールの分子量(=118)を表す。
【0202】
また、実施例で使用した、1,6-ヘキサンジオール並びに1,4-ブタンジオール又はイソソルバイドをジヒドロキシ化合物として含む、ジヒドロキシ化合物組成物中のアルデヒド(A)の含有割合についても同様に、H-NMR測定結果から、アルデヒド(A)(6-ヒドロキシヘキサナール)中のアルデヒド基のプロトンのピークの積分値、各ジヒドロキシ化合物中のαメチレン基のプロトンのピークの積分値、各ジヒドロキシ化合物の分子量、及び、上記式に準じた式を用いて、ジヒドロキシ化合物組成物の総質量100%に対する、ジヒドロキシ化合物組成物中のアルデヒド(A)の含有割合(単位:質量%)を算出した。その際に、「M(14BG)」を1,4-ブタンジオールの分子量(=90)、「M(ISB)」をイソソルバイドの分子量(=146)として用いた。
【0203】
<ポリカーボネートジオール組成物のアルデヒド(A)の含有割合>
実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール組成物中のアルデヒド(A)の含有割合を、以下の手順に従って測定した。
本評価において「アルデヒド(A)」及び「アルデヒド(A)の含有割合」の定義は、前述のアルデヒド(A)の説明に記載したとおりである。
【0204】
ポリカーボネートジオール組成物を、CDClに溶解し、核磁気共鳴スペクトル測定装置(400MHz、日本電子株式会社製、機種名:ECZ-400)を用いて、測定温度30℃、積算回数64回の条件で、H-NMR測定を行った。得られたH-NMR測定結果から、下記のシグナル位置に観察された3つのピークを同定し、それぞれのピークの積分値A~Cを取得した。
δ9.80~9.75ppmに存在するアルデヒド(A)中のアルデヒド基の1Hプロトンの積分値=A
δ3.69~3.50ppmに存在するポリカーボネートジオール中の水酸基末端隣のメチレン基の2Hプロトンピークの積分値=B
δ1.49~1.30ppmに存在するポリカーボネートジオール中の1,6-ヘキサンジオールに由来する構造のγメチレン基の4Hプロトンピークの積分値=C
【0205】
また、アルデヒド(A)に由来するポリカーボネートジオール末端の構造単位に由来するピークの積分値を「ALD」とした。
同様に、1,6-ヘキサンジオール(以下、「16HD」と略する。)に由来するポリカーボネートジオール末端の構造単位に由来するピークの積分値を「16HD」とした。
またポリカーボネートジオール末端以外のポリカーボネートジオール中の16HD由来の構造単位に由来するピークの積分値を「16HD」とした。
アルデヒド(A)由来の構造単位、DPC由来の構造単位、及び16HD由来の構造単位のプロトン数に基づいて、下記式を用いて、上述した各構造単位に由来するピークの積分値を算出した。
ALD=A
16HD=B÷2
16HD=(C-16HD×4)÷4
【0206】
次いで、下記式を用いて、ポリカーボネートジオールの数平均分子量M(PCD)を算出した。
【0207】
【数2】
【0208】
前記式において、M(16HD)はポリカーボネートジオール末端以外のポリカーボネートジオール中の16HD由来の構造単位の分子量(=116)、M(カルボニル基)はカルボニル基の分子量(=28)のことをいう。
【0209】
次いで、前記値と下記式を用いて、ポリカーボネートジオール(PCD)組成物の総質量100%に対する、アルデヒド(A)の含有割合(単位:質量%)を算出した。
【0210】
【数3】
【0211】
上記式において、「M(アルデヒド(A))」はアルデヒド(A)(6-ヒドロキシヘキサナール)の分子量(=116)を表す。
【0212】
また、実施例で使用した、1,6-ヘキサンジオール並びに1,4-ブタンジオール又はイソソルバイドをジヒドロキシ化合物として含む、ポリカーボネートジオール組成物中のアルデヒド(A)の含有割合についても同様に、H-NMR測定結果から、ポリカーボネートジオール末端の構造単位に由来するピークの積分値、ポリカーボネートジオール末端以外のポリカーボネートジオール中の構造単位に由来するピークの積分値、ポリカーボネートジオールの数平均分子量M(PCD)及び、上記式に準じた式を用いて、ポリカーボネートジオール(PCD)組成物の総質量100%に対する、ポリカーボネートジオール組成物中のアルデヒド(A)の含有割合(単位:質量%)を算出した。
【0213】
<ポリカーボネートジオールのホルミル末端基の含有割合>
実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール組成物中のポリカーボネートジオールについて、ホルミル末端基の含有割合を、以下の手順に従って測定した。
【0214】
ポリカーボネートジオール組成物を、後述の薄膜蒸留にて未反応物を除去した。得られた反応物をCDClに溶解して、核磁気共鳴スペクトル測定装置(400MHz、日本電子株式会社製、機種名:ECZ-400)を用いて、測定温度30℃、積算回数128回の条件で、H-NMR測定を行った。
得られたH-NMR測定結果から、下記のシグナル位置に観察された2つのピークを同定し、それぞれのピークの積分値A及びBを取得し、下記式を用いて、ポリカーボネートジオールの総末端基100モル%に対する、ホルミル末端基の含有割合(単位:モル%)を算出した。
δ9.80~9.75ppmに存在するアルデヒド(A)中のアルデヒド基の1Hプロトンの積分値=A
δ3.69~3.50ppmに存在するポリカーボネートジオール中の水酸基末端隣のメチレン基の2Hプロトンピークの積分値=B
【0215】
【数4】
【0216】
<ポリカーボネートジオール組成物の色調>
実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール組成物の色調の指標として、JIS K0071-1(1998)に準拠して、ポリカーボネートジオール組成物の試料を、比色管に入れた標準液と比較して、APHA値を測定した。試薬は色度標準液1000度(1mgPt/mL)(キシダ化学株式会社製)を使用した。
【0217】
<ポリカーボネートジオールの水酸基価から求めた数平均分子量(Mn)>
実施例及び比較例で得られたポリカーボネートジオール組成物の水酸基価(単位:mgKOH/g)を、JIS K1557-1に準拠して、アセチル化試薬を用いた方法にて測定した。次いで、得られた水酸基価から、下記式を用いて、ポリカーボネートポリオールの数平均分子量(Mn)を算出した。
数平均分子量(Mn)=(KOHの分子量)×2000/水酸基価
【0218】
<ポリウレタンの質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)>
実施例及び比較例で得られたポリウレタンについて、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC測定)を用いて、以下の手順で質量平均分子量(Mw)及び数平均分子量(Mn)を求めた。
【0219】
ポリウレタン試料を、ポリウレタン濃度が0.07質量%になるようにジメチルアセトアミド(無水臭化リチウムを0.3質量%含有)に溶解し、これをGPC測定用試料とした。GPC装置(東ソー社製、機種名:HLC-8420、カラム:東ソー社製TSKgel SuperAWM-H×2本)を用いて、試料注入量約40μL、カラム温度40℃、測定溶媒(移動相)としてジメチルアセトアミド(無水臭化リチウムを0.3質量%含有)、流量0.6mL/minの測定条件でGPC測定を行った。
ポリウレタンの分子量は、市販の単分散ポリスチレン溶液を標準試料として用いて、標準ポリスチレン換算での数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、及び分子量分布(Mw/Mn)を測定した。
【0220】
<ポリウレタンの溶液粘度>
実施例及び比較例で得られたポリウレタン溶液の粘度を、40℃にて、E型粘度計(装置名:TV-100EH、コーン:3°×R14、東機産業社製)を用いて測定した。
【0221】
<ポリウレタンの機械的特性>
ポリウレタンの機械的特性の指標として、下記の方法を用いてポリウレタンの引張試験を行い、各種機械的特性を評価した。
【0222】
実施例及び比較例で得られたポリウレタンの溶液を、クリアランスが500μmのアプリケーターを用いて、厚さ0.1mmのフッ素樹脂シート(商品名:フッ素テープ「ニトフロン900」、日東電工株式会社製)上に塗布し、温度80℃で1時間、続いて100℃で0.5時間、さらに100℃の真空状態で1.0時間乾燥して溶剤(DMF)を乾燥除去させた後、さらに23℃、55%RHの恒温恒湿下で12時間以上静置して、フッ素樹脂シートの表面にポリウレタン層が形成された積層フィルムを得た。乾燥後のポリウレタン層の厚みは100μmであった。
得られた積層フィルムからポリウレタン層を剥離した後、短冊状のポリウレタンフィルム(長さ150mm、幅10mm、厚さ100μm)を切り出し、これを引張試験用の試料片とした。
【0223】
(引張試験)
上記の引張試験用試料片について、JIS K6301(2010)に準じ、卓上形精密万能試験機(株式会社島津製作所製、製品名:オートグラフAGS-X)を用いて、チャック間距離50mm、引張速度500mm/分にて、温度23℃(相対湿度60%)の条件下で引張試験を実施した。引張試験用試料片4点を用いて測定を行い、100%モジュラス及び300%モジュラス、並びに、試験片が破断した時点の応力(破断強度)及び伸度(破断伸度)の平均値及び標準偏差を測定した。
100%モジュラス及び300%モジュラス、破断強度及び破断伸度の変動係数の算出には下記式を使用した。
変動係数(%)=(標準偏差/平均値)×100
【0224】
<ポリウレタンの耐薬品性>
ポリウレタンの耐薬品性の指標として、下記の方法を用いて、ポリウレタンを試験溶液に浸漬したときの質量変化率を測定した。
【0225】
実施例及び比較例で得られたポリウレタンの溶液を、クリアランスが500μmのアプリケーターを用いて、厚さ0.1mmのフッ素樹脂シート(商品名:フッ素テープ「ニトフロン900」、日東電工株式会社製)上に塗布し、温度80℃で1時間、続いて100℃で0.5時間、さらに100℃の真空状態で1.0時間乾燥して溶剤(DMF)を乾燥除去することにより、フッ素樹脂シートの表面にポリウレタン層が形成された積層フィルムを得た。乾燥後のポリウレタン層の厚みは100μmであった。
得られた積層フィルムからポリウレタン層を剥離した後、正方形状のポリウレタンフィルム(縦3cm、横3cm、厚さ100μm)を切り出し、これを耐薬品性試験用の試料片とした。
【0226】
(耐エタノール性試験)
精密天秤を用いて上記の耐薬品性試験用試験片の重量を測定した後、試験溶媒としてエタノール50mLを入れた内径10cmφのガラス製シャーレに投入して約23℃の室温にて1時間浸漬した。試験後、試験片を取り出して表裏を紙製ワイパーで軽く拭いた後、精密天秤で質量測定を行い、試験前後の試験片の質量変化から質量変化率(増加率)を算出した。質量変化率が0%に近いほうが、耐エタノール性が良好であることを示す。
【0227】
[使用原料]
実施例及び比較例で使用した原料の略号は以下の通りである。
16HD:1,6-ヘキサンジオール(BASF株式会社製)
14BG:1,4-ブタンジオール(三菱ケミカル株式会社製)
ISB:イソソルバイド(ロケット株式会社製)
DPC:ジフェニルカーボネート(三菱ケミカル株式会社製)
Mg触媒:酢酸マグネシウム四水和物(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)
MDI:ジフェニルメタンジイソシアネート(東京化成工業株式会社製)
U-830:ジオクチル錫モノデカネート(商品名:ネオスタンU-830、日東化成株式会社製)
DMF:N,N-ジメチルホルムアミド脱水品(富士フィルム和光純薬工業株式会社製)
【0228】
[ポリカーボネートジオール組成物の製造と評価]
<比較例I-1>
撹拌機、留出液トラップ、及び圧力調整装置を備えた5Lガラス製セパラブルフラスコに、構造単位(1)の原料として16HD(化合物(1))、カーボネート化合物としてDPC、エステル交換反応触媒としてMg触媒水溶液(濃度:8.4g/L-酢酸マグネシウム四水和物)を、表1の配合量のとおりに投入し、フラスコ内を窒素雰囲気に置換した後、フラスコ内の内容物を攪拌しながら、該内容物の温度が160℃となるまで加熱昇温して、内容物を加熱溶解した。この時のフラスコ内の圧力は101kPaであった。その後、フラスコ内の圧力を101kPaから24kPaまで2分間かけて徐々に減圧した後、生成したフェノールを反応系外へ除去しながら、90分間反応させた。次いで、フラスコ内の圧力を9.3kPaまで90分間かけて徐々に減圧した後、さらに0.7kPaまで30分間かけて徐々に減圧し、反応を続けた後、該内容物の温度を170℃となるまで昇温して、フェノール及び未反応のジヒドロキシ化合物を反応系外へ除去しながら、さらに120分反応させた後、該内容物の温度を室温まで放冷して、660gのポリカーボネートジオール含有組成物を得た。
得られたポリカーボネートジオール組成物を「PCD1」とした。
このPCD1について、前述の評価を行い、評価結果を表1に示した。
【0229】
<実施例I-1>
比較例I-1において、16HDの一部36gを空気でバブリングさせながら130℃にて3時間加熱し、前記16HDの一部を酸化して6-ヒドロキシヘキサナールに転化したものを含む16HDを、構造単位(1)の原料として用いた以外は、比較例I-1と同様の条件で反応を行なった。
得られたポリカーボネートジオール組成物を「PCD2」とした。
このPCD2について、前述の評価を行い、評価結果を表1に示した。
【0230】
<実施例I-2>
比較例I-1において、16HDの一部99gを空気でバブリングさせながら130℃にて3時間加熱し、前記16HDの一部を酸化して6-ヒドロキシヘキサナールに転化したものを含む16HDを、構造単位(1)の原料として用いた以外は、比較例I-1と同様の条件で反応を行なった。
得られたポリカーボネートジオール組成物を「PCD3」とした。
このPCD3について、前述の評価を行い、評価結果を表1に示した。
【0231】
<実施例I-3>
比較例I-1において、16HDの一部313gを空気でバブリングさせながら130℃にて3時間加熱し、前記16HDの一部を酸化して6-ヒドロキシヘキサナールに転化したものを含む16HDを構造単位(1)の原料として用いた以外は、比較例I-1と同様の条件で反応を行なった。
得られたポリカーボネートジオール組成物を「PCD4」とした。
このPCD4について、前述の評価を行い、評価結果を表1に示した。
【0232】
<実施例I-4>
比較例I-1において、構造単位(1)の原料として、16HDを空気でバブリングさせながら130℃にて3時間加熱し、前記16HDの一部を酸化して6-ヒドロキシヘキサナールに転化したものを含む16HDと14BGを表1に示す配合量で用い、DPCとMg触媒水溶液を表1の配合量のとおりに投入した以外は、比較例I-1と同様の条件で反応を行なった。
得られた共重合ポリカーボネートジオール組成物を「PCD5」とした。
このPCD5について、前述の評価を行い、評価結果を表1に示した。
【0233】
<実施例I-5>
比較例I-1において、構造単位(1)の原料として、16HDを空気でバブリングさせながら130℃にて3時間加熱し、前記16HDの一部を酸化して6-ヒドロキシヘキサナールに転化したものを含む16HDと、構造単位(3)の原料としてISBを表1に示す配合量で用い、DPCとMg触媒水溶液を表1の配合量のとおりに投入した以外は、比較例I-1と同様の条件で反応を行なった。
得られた共重合ポリカーボネートジオール組成物を「PCD6」とした。
このPCD6について、前述の評価を行い、評価結果を表1に示した。
【0234】
実施例I-1~5及び比較例I-1では、空気でバブリングする16HDの量を変えることで、ポリカーボネートジオールの製造に用いる原料16HDに含まれる、6-ヒドロキシヘキサナール(アルデヒド(A))の含有割合を変更している。
なお、実施例I-1~5において、得られたPCD2~6中に含まれるアルデヒド(A)としては、遊離した6-ヒドロキシヘキサナール又はポリカーボネートジオールに結合した6-ヒドロキシヘキサナールが挙げられる。また、比較例I-1においては、得られたPCD1中にアルデヒド(A)に相当する化合物は検出されなかった。
【0235】
以下の表1には、後掲の実施例II-1~3及び比較例II-1のポリウレタン重合安定性とポリウレタン溶液の粘度の評価結果も併記した。
【0236】
【表1】
【0237】
[ポリウレタンの製造と評価]
<ポリカーボネートジオール組成物の精製>
比較例I-1及び実施例I-1~3で得られたポリカーボネートジオール組成物(PCD1~PCD4)に含まれるフェノールを除去するため、まず前記ポリカーボネートジオール含有組成物660gに対し、0.85質量%リン酸水溶液0.89gを加えて酢酸マグネシウムを失活させた。そして、20g/分の流量で薄膜蒸留装置に送液し、薄膜蒸留(温度:180~190℃、圧力:40~67Pa)を行った。薄膜蒸留装置としては、直径50mm、高さ200mm、面積0.0314mの内部コンデンサー、ジャケット付きの柴田科学株式会社製、分子蒸留装置MS-300特型を使用した。
以下、薄膜蒸留後のPCD1~PCD4をそれぞれPCD1A、PCD2A、PCD3A、PCD4Aと称す。薄膜蒸留により得られたPCD1A~PCD4A中のアルデヒド(A)とホルミル末端基の含有割合を表2に示す。
【0238】
PCD2~PCD4の薄膜蒸留後に得られたPCD2A~PCD4A中に含まれるアルデヒド(A)としては、遊離した6-ヒドロキシヘキサナール又はポリカーボネートジオールに結合した6-ヒドロキシヘキサナールが挙げられる。PCD1の薄膜蒸留後に得られたPCD1A中にアルデヒド(A)に相当する化合物は検出されなかった。
【0239】
<比較例II-1>
熱電対と冷却管を設置したセパラブルフラスコに、あらかじめ80℃に加温したPCD1Aを69.8g、鎖延長剤として14BGを6.30g、触媒としてU-830を0.02g、反応溶媒としてDMFを239g入れ、55℃に設定したオイルバスに漬け、攪拌速度60rpmで均一になるまで攪拌混合した。
フラスコの反応溶液の水分量を測定し、水分で消費されるMDIの量を計算した。またサンプリングして抜き出した量も記録し、各原料の仕込み量を補正した。
前記反応溶液に、イソシアネート化合物として、NCO/OHモル比=0.900相当(水分補正込み)のMDIを、漏斗を用いて固体の状態で添加し、攪拌速度60rpmで均一になるまで攪拌混合した。
本明細書において、前記「NCO/OHモル比」とは、MDI添加時のポリカーボネートジオール及び14BGの物質量総量(モル数)から含有水分物質量総量(モル数)を減じた値に対する、MDIの物質量総量(モル数)の割合(モル比)のことをいう。
MDI添加直後から反応溶液温度の+10~15℃の上昇を伴う発熱ピークが確認され、該発熱ピークが収まってから5分後にオイルバスの温度を70℃に設定し、昇温した。
【0240】
MDIを添加してから1時間後に反応溶液中のポリウレタンの分子量を測定し、目標の分子量(Mw=170000~180000の範囲)に到達しているか確認した。目標に到達していない場合は、NCO/OHモル比=0.005~0.015相当のMDIを追添加し、さらに30分間以上反応させてから、反応溶液中のポリウレタンの分子量を測定した。目標のMwに到達するまでMDIの追添加と分子量測定を繰り返した。最終的に合計NCO/OHモル比=0.990にて、Mw=170032のポリウレタンを含むポリウレタン溶液を得た。
【0241】
ポリウレタン重合時の重合安定性と、ポリウレタン溶液の評価結果を表2に示す。
【0242】
<実施例II-1~3>
比較例II-1において、PCD1Aの代わりに、PCD2A、PCD3A又はPCD4Aを用いて、且つ、各原料の仕込み量をそれぞれ表2の記載の仕込み量に変更した以外は、比較例II-1と同様の条件と方法でポリウレタンの重合を行ない、ポリウレタン溶液を得た。
【0243】
ポリウレタン重合時の重合安定性と、ポリウレタン溶液の評価結果を表2に示す。
【0244】
【表2】
【0245】
実施例II-1~II-3では、ポリウレタンの機械的強度の変動係数が低く、ポリウレタンの品質が均一であり、また、破断強度と破断伸度及び耐薬品性が良好であった。特に、実施例II-1及びII-2で得られたポリウレタンは、実施例II-3及び比較例II-1で得られたポリウレタンと比較すると、機械的特性及び耐薬品性がより良好であり両者のバランスに優れていた。
一方、比較例II-1では、ポリカーボネートジオール組成物がアルデヒド(A)を含まないため、ポリウレタンの機械的強度の変動係数が高く、ポリウレタンの品質が不均一であり、また、破断強度が不十分であった。
【0246】
本発明を特定の態様を用いて詳細に説明したが、発明の効果が奏される範囲内で様々な変更が可能であることは当業者に明らかである。
本出願は、2023年2月7日付で出願された日本特許出願2023-016724及び日本特許出願2023-016725と、2023年8月24日付で出願された日本特許出願2023-136447及び日本特許出願2023-136448に基づいており、その全体が引用により援用される。

【要約】
下記一般式(1)で表される化合物(1)に由来する構造単位(1)を含むポリカーボネートジオールと炭素数3以上8以下のアルデヒドを含有するポリカーボネートジオール組成物。下記一般式(1)で表される化合物(1)と炭素数3以上8以下のアルデヒドを含有するジヒドロキシ化合物組成物と、カーボネート化合物とを触媒存在下、エステル交換反応により重縮合させて、ポリカーボネートジオールを含有するポリカーボネートジオール組成物を得る、ポリカーボネートジオール組成物の製造方法。このポリカーボネートジオール組成物を用いて得られるポリウレタン。
HO-(CH-OH (1)
(上記一般式(1)中、nは、3~6の整数である。)