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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】気泡塔反応器
(51)【国際特許分類】
   B01J 19/24 20060101AFI20240918BHJP
   C07C 11/02 20060101ALI20240918BHJP
   C07C 2/08 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
B01J19/24 A
C07C11/02
C07C2/08
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2023500418
(86)(22)【出願日】2022-06-17
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2024-01-23
(86)【国際出願番号】 KR2022008606
(87)【国際公開番号】W WO2023106524
(87)【国際公開日】2023-06-15
【審査請求日】2023-01-05
(31)【優先権主張番号】10-2021-0177022
(32)【優先日】2021-12-10
(33)【優先権主張国・地域又は機関】KR
(73)【特許権者】
【識別番号】500239823
【氏名又は名称】エルジー・ケム・リミテッド
(74)【代理人】
【識別番号】100110364
【弁理士】
【氏名又は名称】実広 信哉
(74)【代理人】
【識別番号】100122161
【弁理士】
【氏名又は名称】渡部 崇
(72)【発明者】
【氏名】ムン・スブ・ファン
(72)【発明者】
【氏名】ホン・ミン・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・ソク・イ
(72)【発明者】
【氏名】ジョン・フン・ソン
(72)【発明者】
【氏名】キョン・ソグ・ユク
【審査官】河野 隆一朗
(56)【参考文献】
【文献】特開平09-276689(JP,A)
【文献】特開2002-363204(JP,A)
【文献】特表2009-520094(JP,A)
【文献】特開2015-189740(JP,A)
【文献】特開2013-199614(JP,A)
【文献】欧州特許出願公開第03909939(EP,A1)
【文献】米国特許出願公開第2010/0216896(US,A1)
【文献】米国特許第05883292(US,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B01J 19/00 - 19/32
B01J 8/00 - 8/46
C07B 31/00 - 61/00
C07B 63/00 - 63/04
C07C 1/00 - 409/44
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
液相の反応媒体内で気相反応物の反応が行われる反応領域と、
前記反応領域の上部に備えられ、前記反応領域から上昇する第1排出物ストリームが導入される第1分離区域(disengaging section)と、
前記第1分離区域の上部に備えられる凝縮領域(condensation zone)とを含み、
前記凝縮領域の直径は、前記第1分離区域の直径より小さく、
前記凝縮領域は、第1および第2凝縮領域を含み、前記第1凝縮領域と第2凝縮領域との間に第2分離区域が備えられる、気泡塔反応器。
【請求項2】
前記凝縮領域の直径は、前記第1分離区域の直径の35%~70%である、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【請求項3】
前記凝縮領域は、冷却コイルを含み、前記冷却コイルに冷媒が供給される、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【請求項4】
前記第1および第2凝縮領域の直径は、前記第2分離区域の直径の35%~70%である、請求項1から3のいずれか一項に記載の気泡塔反応器。
【請求項5】
前記第1凝縮領域と第2凝縮領域は、それぞれ冷却コイルを含み、
前記第2凝縮領域に形成された冷却コイルの入口に供給され出口から排出される冷媒は、前記第1凝縮領域に形成された冷却コイルの入口に供給され出口から排出される、請求項1から3のいずれか一項に記載の気泡塔反応器。
【請求項6】
前記第2凝縮領域に形成された冷却コイルの入口に供給される冷媒の温度は-10℃~-5℃であり、
前記第1凝縮領域に形成された冷却コイルの入口に供給される冷媒の温度は-5℃~0℃である、請求項に記載の気泡塔反応器。
【請求項7】
前記第2凝縮領域の高さは、前記第1凝縮領域の高さの0.5倍~1倍である、請求項1から3のいずれか一項に記載の気泡塔反応器。
【請求項8】
前記第1および第2凝縮領域の高さの和は、前記第2分離区域の高さの1倍~2倍である、請求項1から3のいずれか一項に記載の気泡塔反応器。
【請求項9】
前記気相反応物は、エチレン単量体を含む、請求項1に記載の気泡塔反応器。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本出願は、2021年12月10日付けの韓国特許出願第10-2021-0177022号に基づく優先権の利益を主張し、当該韓国特許出願の文献に開示されている全ての内容は、本明細書の一部として組み込まれる。
【0002】
本発明は、気泡塔反応器に関し、より詳細には、オリゴマーの製造時に、反応器の内部で固体および液体が飛沫同伴される量を減少させて全工程の安定化を向上させるためのオリゴマー製造装置に関する。
【背景技術】
【0003】
アルファオレフィン(alpha-olefin)は、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに使用される重要な物質として商業的に広く使用され、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時に、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く使用されている。
【0004】
前記アルファオレフィンは、代表的に、エチレンのオリゴマー化反応により製造されている。前記エチレンのオリゴマー化反応が行われる反応器の形態として、気相のエチレンを反応物として使用して触媒を含む液相の反応媒体を含む反応領域との接触により、エチレンのオリゴマー化反応(三量体化反応または四量体化反応)を行う気泡塔反応器(bubble column reactor)が使用されている。
【0005】
気泡塔反応器の場合、反応領域で液体の反応媒体とともに反応物である気体が互いに混在して2相として存在し、触媒反応の結果として、少量の高分子が副生成物として生成され、これは、液体の反応媒体の中で浮遊する。ここで、多量の気相反応物が反応領域内に多量の気泡状で導入される速度によって固体である前記高分子と液体である反応媒体の飛沫同伴(entrainment)が必ず発生する。
【0006】
このような飛沫同伴によって、副生成物である高分子が反応器の内壁だけでなく、凝縮器、配管、バルブなどの後段工程装置に蓄積され、ファウリング(fouling)が発生する問題がある。このように、前記反応器の後段工程装置にファウリングが発生する場合、装置の能力低下および機械的な損傷を引き起こし、最悪の場合、全工程の運転を中断(shut down)しなければならないため、運転時間の減少による生産量の減少だけでなく、洗浄過程でかかる費用が増加する問題がある。
【0007】
したがって、前記のような問題を解決するためには、気泡塔反応器の内部での高分子が含まれた固体および液体が飛沫同伴される量を減少させるための研究が必要な状況である。
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明が解決しようとする課題は、上記発明の背景技術で言及した問題を解決するために、反応器内の目的とする生成物以外の高分子物質を含む副生成物が飛沫同伴されることを防止して全工程の安定化を向上させるための気泡塔反応器を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
上記の課題を解決するための本発明の一実施形態によると、本発明は、液相の反応媒体内で気相反応物の反応が行われる反応領域と、前記反応領域の上部に備えられ、前記反応領域から上昇する第1排出物ストリームが導入される第1分離区域(disengaging section)と、前記第1分離区域の上部に備えられる凝縮領域(condensation zone)とを含み、前記凝縮領域の直径は、前記第1分離区域の直径より小さい気泡塔反応器を提供する。
【発明の効果】
【0010】
本発明の気泡塔反応器によると、気泡塔反応器の反応領域の上部に凝縮領域が備えられることで、従来、気泡塔反応器の外部に別の凝縮器を備える場合に比べて、飛沫同伴による凝縮器自体に対するファウリング現象を防止することができる。
【0011】
一方、気泡塔反応器の反応領域の上部に備えられる凝縮領域の直径を分離区域の直径より小さく形成して、凝縮領域に導入される気相のストリームと前記凝縮領域内に備えられた冷却コイルとの接触面積を極大化し、凝縮効率を改善することができる。これにより、前記気相ストリーム内の溶媒および高分子を効果的に凝縮させて反応領域に還流させることができる。
【0012】
さらに、凝縮領域の直径を分離区域の直径より小さく形成することで、凝縮領域を通過した気相ストリームに対する分離区域内での流れの変化を誘導し、前記分離区域内の気相ストリームの分布を均一にすることができ、これにより、分離区域内の沈降効果を改善することができる。
【0013】
これにより、固体および液体などの非蒸気が飛沫同伴される量を減少させて全工程の安定化を向上させることができ、究極的には、反応器の後段工程装置にファウリングが発生することを防止して、反応器の運転停止周期を効果的に伸ばすことができ、後段工程装置のファウリングによる効率低下を防止して、エネルギー費用を低減することができる。
【図面の簡単な説明】
【0014】
図1】本発明の一実施形態による気泡塔反応器およびこれに関連する工程フローチャートである。
図2】従来の気泡塔反応器を示した概略図である。
図3】従来の気泡塔反応器を示した概略図である。
【発明を実施するための形態】
【0015】
本発明の説明および特許請求の範囲にて使用されている用語や単語は、通常的または辞書的な意味に限定して解釈してはならず、発明者らは、自分の発明を最善の方法で説明するために用語の概念を適宜定義することができるという原則に則って、本発明の技術的思想に合致する意味と概念に解釈すべきである。
【0016】
本発明において、用語「ストリーム(stream)」は、工程内の流体(fluid)の流れを意味し得、また、移動ライン(配管)内で流れる流体自体を意味し得る。具体的には、前記「ストリーム」は、各装置を連結する配管内で流れる流体自体および流体の流れを同時に意味し得る。また、前記流体は、気体(gas)、液体(liquid)および固体(solid)のいずれか一つ以上が含まれたものを意味し得る。
【0017】
本発明において「#」が正の整数である「C#」という用語は、#個の炭素原子を有するすべての炭化水素を示すものである。したがって、「C10」という用語は、10個の炭素原子を有する炭化水素化合物を示すものである。また、「C#+」という用語は、#個以上の炭素原子を有するすべての炭化水素分子を示すものである。したがって、「C10+」という用語は、10個以上の炭素原子を有する炭化水素の混合物を示すものである。
【0018】
以下、本発明に関する理解を容易にするために、下記図1を参照して、本発明をより詳細に説明する。
【0019】
本発明の一実施形態による気泡塔反応器100は、液相の反応媒体内で気相反応物の反応が行われる反応領域300と、前記反応領域300の上部に備えられ、前記反応領域から上昇する第1排出物ストリームが導入される第1分離区域DS1と、前記第1分離区域の上部に備えられる凝縮領域CZ1、CZ2とを含み、前記凝縮領域CZ1、CZ2の直径は、前記第1分離区域DS1の直径より小さいことができる。
【0020】
本発明の一実施形態によると、前記気泡塔反応器100は、触媒および溶媒(solvent)の液相の反応媒体内で単量体(monomer)を含む気相反応物をオリゴマー化反応させてオリゴマー生成物(product)を製造するためのものであることができる。
【0021】
より具体的には、前記気泡塔反応器100は、反応領域300を含み、前記反応領域300の一側面に連結される1以上の反応媒体供給ライン310を介して、反応媒体が反応領域300に供給されることができる。ここで、前記反応媒体は、触媒、助触媒、および溶媒を含むことができる。前記触媒、助触媒、および溶媒は、それぞれ別の反応媒体供給ライン310を介して供給されることができ、2以上の反応媒体の成分が混合された状態で、反応媒体供給ライン310を介して反応領域300に供給されることもできる。
【0022】
本発明の一実施形態によると、前記単量体は、エチレン単量体を含むことができる。具体的な例として、前記エチレン単量体を含む気相反応物は、後述する気泡塔反応器100のダウンチャンバ200内に供給されて、オリゴマー化反応を経て目的とするアルファオレフィン生成物を製造することができる。
【0023】
前記溶媒は、n-ペンタン、n-ヘキサン、n-ヘプタン、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、オクタン、シクロオクタン、デカン、ドデカン、ベンゼン、キシレン、1,3,5-トリメチルベンゼン、トルエン、エチルベンゼン、クロロベンゼン、ジクロロベンゼンおよび卜リクロロベンゼンからなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0024】
前記触媒は、遷移金属供給源を含むことができる。前記遷移金属供給源は、例えば、クロム(III)アセチルアセトネート、クロム(III)クロライドテトラヒドロフラン、クロム(III)2-エチルヘキサノエート、クロム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、クロム(III)ベンゾイルアセトネート、クロム(III)ヘキサフルオロ-2,4-ペンタンジオネート、クロム(III)アセテートヒドロキシド、クロム(III)アセテート、クロム(III)ブチレート、クロム(III)ペンタノエート、クロム(III)ラウレートおよびクロム(III)ステアレートからなる群から選択される1種以上を含む化合物であることができる。
【0025】
前記助触媒は、例えば、トリメチルアルミニウム(trimethyl aluminium)、トリエチルアルミニウム(triethyl aluminium)、トリイソプロピルアルミニウム(triisopropyl aluminium)、トリイソブチルアルミニウム(triisobutyl aluminum)、エチルアルミニウムセスキクロライド(ethylaluminum sesquichloride)、ジエチルアルミニウムクロライド(diethylaluminum chloride)、エチルアルミニウムジクロライド(ethyl aluminium dichloride)、メチルアルミノキサン(methylaluminoxane)、修飾メチルアルミノキサン(modified methylaluminoxane)およびボレート(Borate)からなる群から選択される1種以上を含むことができる。
【0026】
一方、前記気泡塔反応器100内の反応領域300で触媒、助触媒、および溶媒を含む液体状態の反応媒体内で単量体とのオリゴマー化反応が行われることができる。このように、単量体のオリゴマー化反応が行われる反応媒体からなる領域を反応領域300と定義し得る。前記オリゴマー化反応は、単量体が小重合される反応を意味し得る。重合される単量体の個数に応じて、三量化(trimerization)、四量化(tetramerization)と称し、これをまとめて多量化(multimerization)とする。
【0027】
前記アルファオレフィンは、共単量体、洗浄剤、潤滑剤、可塑剤などに使用される重要な物質として商業的に広く使用され、特に、1-ヘキセンと1-オクテンは、直鎖状低密度ポリエチレン(LLDPE)の製造時に、ポリエチレンの密度を調節するための共単量体として多く使用されている。前記1-ヘキセンおよび1-オクテンなどのアルファオレフィンは、例えば、エチレンの三量体化反応または四量体化反応により製造することができる。
【0028】
前記気泡塔反応器100は、前記反応領域300に連結され、前記反応媒体供給ラインの他側に備えられた生成物排出ライン320を含むことができ、前記生成物排出ラインを介してオリゴマー化反応の生成物であるアルファオレフィンを含む生成物が排出されることができる。すなわち、前記生成物排出ストリーム320は、オリゴマー化反応により生成されたオリゴマー生成物および溶媒を含むことができ、前記オリゴマー生成物と溶媒は、さらなる分離装置により分離することができる。分離された溶媒は、オリゴマー製造工程内で再使用されることができる。また、前記単量体として、エチレン単量体を用いてオリゴマー化反応を行った場合を例に挙げると、オリゴマー生成物は、1-ヘキセンおよび1-オクテンを含むことができる。前記反応媒体の反応領域300への供給および生成物の反応領域300からの排出は、連続して行われることができる。
【0029】
一方、前記オリゴマー化反応のための単量体を含む気相反応物は、気相反応物供給配管210を介して気泡塔反応器100の下部に位置するダウンチャンバ200内に供給された後、分散板350を通過して液相の反応媒体が含まれた反応領域300に供給されることができる。
【0030】
すなわち、前記分散板350は、前記ダウンチャンバ200と前記反応領域300との間に備えられることができるが、前記分散板350の中心部および円周に沿って等間隔で形成されたホールを介して気相反応物、例えば、単量体がダウンチャンバ200から反応媒体が備えられた反応領域300に均一に分散され供給されることができる。
【0031】
前記分散板350を介して気相反応物が液相の反応媒体を含む反応領域300に流入されると同時に分散され、分散された気体の力によって渦流(turbulence)が発生し、液相の反応媒体と気相反応物の自然な混合が行われる。ここで、分散板350を介して反応領域300に流入される気相反応物の分散力は、前記液相の反応媒体から下方に作用する水頭圧に比べて大きく維持されることで、前記液相の反応媒体が前記反応領域300内に滞留することができる。
【0032】
一方、上述のように、前記気泡塔反応器100の反応領域300に供給された気相反応物は、溶媒および触媒が存在する液体状態の反応媒体内で触媒反応されることができ、具体的には、前記触媒反応は、オリゴマー化反応であることができる。この場合、反応領域300内の気相反応物と反応媒体が互いに混在して2相として存在する。一方、前記反応領域300内では、気相反応物の触媒反応の結果、少量の高分子が副生成物として生成されることができ、これは、液体の反応媒体の中で浮遊する。この際、多量の気相反応物が多量の気泡状で反応領域300内に導入される速度によって固体である前記高分子と液体である反応媒体の飛沫同伴(entrainment)が発生し得る。すなわち、未反応の気相反応物が反応領域300を経て上部に移動する際、未反応の気相反応物だけでなく、これとともに副生成物である高分子と溶媒がともに上部に移動する。この場合、飛沫同伴された高分子は、高分子の粘着性によって気泡塔反応器100の後段工程装置に沈積し、流体の流動性を阻害するファウリング現象を引き起こす。
【0033】
したがって、本発明の一実施形態による気泡塔反応器100は、反応領域300の上部に備えられる分離区域(disengaging section;DS)と凝縮領域(condensation zone;CZ)を備えることで、高分子を含む副生成物が飛沫同伴されることを防止して、後段工程装置にファウリングを防止し、全工程の安定化を向上させることができる。
【0034】
より具体的には、図1を参照すると、反応領域300での気相の第1排出物ストリームが第1分離区域DS1に導入されることができる。前記第1排出物ストリームは、未反応の気相反応物以外にも飛沫同伴される高分子および溶媒などの非蒸気を含むことができる。前記第1排出物ストリームは、第1分離区域DS1を通過することで、上向き移動速度が減少することができ、飛沫同伴された高分子および溶媒などの非蒸気の一部、特に、比重が相対的に重い固体物質である高分子非蒸気の一部が優先して反応領域300に沈降することができる。例えば、前記第1分離区域DS1によって第1排出物ストリームに含まれた気化した溶媒および非蒸気の10%程度が沈降することができる。
【0035】
次いで、前記第1分離区域DS1を通過した前記第1排出物ストリームは、凝縮領域(condensation zone;CZ)に導入されることができる。前記凝縮領域CZ1、CZ2は、冷却コイルを含み、前記冷却コイルに冷媒が供給されることができる。前記第1分離区域DS1を通過した前記第1排出物ストリームは、温度が低く形成された凝縮領域CZ1、CZ2を通過することで、気化した溶媒および飛沫同伴される高分子の多量が沈降することができる。特に、気化した溶媒の凝縮による液化が可能であり、液化した溶媒は、沈降して、反応領域内に還流されることができる。
【0036】
一方、従来、気泡塔反応器を示す図2を参照すると、気泡塔反応器は、内部にダウンチャンバ、反応領域、分離区域を順に備えているが、気泡塔反応器の内部に本発明のような凝縮領域を備えていない。すなわち、気泡塔反応器の上部に排出される未反応蒸気を外部の熱交換器を介して凝縮させ、次に、溶媒などの凝縮した成分と未反応の気体反応物を分離装置、例えば、フラッシュドラムを介して気液分離が行われた。この場合、気泡塔反応器の上部に飛沫同伴される高分子成分がそのまま排出され、このような高分子成分は、熱交換器、フラッシュドラム、およびこれらを連結する配管に沈積し、ファウリング現象が頻繁に発生する恐れがある。
【0037】
すなわち、本発明の一実施形態によると、気泡塔反応器100の内部に凝縮領域CZ1、CZ2が備えられることで、気泡塔反応器の外部に別の凝縮器を備える場合と比較して、別の配管などの設備がなくても迅速な混合気体の凝縮および沈降効果を得ることができる。さらに、飛沫同伴される高分子による気泡塔反応器と外部の凝縮器との間の配管でのファウリング問題または凝縮器自体内でのファウリング問題を根本的に解決することができる。
【0038】
本発明の一実施形態によると、前記凝縮領域CZ1、CZ2は、第1凝縮領域CZ1および第2凝縮領域CZ2を含み、前記第1凝縮領域CZ1と第2凝縮領域CZ2との間に第2分離区域DS2が備えられることができる。すなわち、前記気泡塔反応器100は、反応領域300の上部に、第1分離区域DS1、第1凝縮領域CZ1、第2分離区域DS2、および第2凝縮領域CZ2を順に備えることができる。
【0039】
具体的には、前記第1分離区域DS1を通過した前記第1排出物ストリームは、第1凝縮領域CZ1を通過して第2分離区域DS2に導入され、第2分離区域DS2の上部に排出されるストリームは、第2排出物ストリームとして第2凝縮領域CZ2を通過することができる。この過程で、反応領域300で上昇する第1排出物ストリーム内の気化した溶媒および飛沫同伴される高分子がほぼ除去され、未反応の単量体成分を含む気相排出物ストリーム550が気泡塔反応器100の上部に排出されることができる。
【0040】
一方、本発明の一実施形態によると、前記気泡塔反応器100は、横断面が円形である円筒状であることができ、前記反応領域300、前記凝縮領域CZ1、CZ2、および前記分離区域DS1、DS2の横断面も円形であることができる。前記第1および第2凝縮領域CZ1、CZ2の直径は互いに同一であり、前記第1および第2分離区域DS1、DS2の直径は互いに同一であることができ、前記第1および第2凝縮領域CZ1、CZ2の直径は、前記第1および第2分離区域DS1、DS2の直径より小さいことができる。ここで、前記第1および第2凝縮領域CZ1、CZ2の直径は、具体的には、前記第1および第2凝縮領域CZ1、CZ2の横断面の直径を意味し、前記第1および第2分離区域DS1、DS2の直径は、具体的には、前記第1および第2分離区域DS1、DS2の横断面の直径を意味する。
【0041】
すなわち、凝縮領域CZ1、CZ2での気化した溶媒および飛沫同伴された非蒸気の凝縮は、凝縮領域CZ1、CZ2の内部の低い温度によって行われるが、凝縮領域CZ1、CZ2の直径が過剰に大きい場合には、凝縮領域CZ1、CZ2の内部の温度が均一でないことがあり、この場合、冷却コイル周辺では凝縮が行われるが、冷却コイルと離れた地点では、相対的に凝縮があまり行われず、非接触面積(dead zone)が増加し得る。したがって、前記凝縮領域CZ1、CZ2の直径を前記第1および第2分離区域DS1、DS2の直径より小さくすることで、例えば、巻き取られた冷却コイルの中空部分のような混合気体と冷却コイルの非接触面積を減少させて、凝縮領域内の凝縮効率および沈降効率を向上させることができる。
【0042】
このために、前記凝縮領域の直径は、前記分離区域の直径の35%~70%であることができ、具体的には、前記第1および第2凝縮領域CZ1、CZ2の直径は、前記第1および第2分離区域DS1、DS2の直径の35%~70%であることができる。前記第1および第2凝縮領域CZ1、CZ2の直径と前記第1および第2分離区域DS1、DS2の直径の割合が35%以上である場合に、前記第1および第2凝縮領域CZ1、CZ2を通過して上昇する気体の流れがスムーズに行われることができ、前記直径の割合が70%以下である場合に、冷却コイルと混合気体との非接触面積を減少させて、凝縮領域内の均一な温度分布を図ることができる。
【0043】
前記第1分離区域DS1を通過した前記第1排出物ストリームは、第1凝縮領域CZ1を通過する過程で、第1排出物ストリーム内の気化した溶媒および飛沫同伴される高分子の凝縮および沈降が行われる。特に、気化した溶媒の凝縮による液化が可能であり、液化した溶媒は沈降し、反応領域内に還流されることができる。この過程で、例えば、前記第1凝縮領域CZ1を通過することで、第1排出物ストリームに含まれた気化した溶媒および非蒸気の40%程度が沈降し得る。
【0044】
一方、本発明の一実施形態によると、前記第1凝縮領域CZ1と第2凝縮領域CZ2との間に前記第1凝縮領域CZ1および第2凝縮領域CZ2より直径が大きい第2分離区域DS2が備えられることができる。すなわち、前記第1凝縮領域CZ1を通過した第1排出物ストリームは、第2分離区域DS2に導入されるが、第2分離区域DS2の相対的に大きな直径によって、導入される気体の流れに渦流が発生し、流速および進路が変化する。これにより、第2分離区域DS2内で混合気体の均一な混合が行われることができ、これによる混合気体の沈降効率が改善することができる。なお、気体の流れが第2凝縮領域CZ2に導入される前に、前記第2分離区域DS2でもう一度均一に混合される点で、第2凝縮領域CZ2での凝縮効率の改善を図ることができる。例えば、前記気体の流れが前記第2分離区域DS2を通過することで、第1排出物ストリームに含まれた気化した溶媒および非蒸気の10%程度がさらに沈降することができる。
【0045】
さらに、前記第2分離区域DS2の上部から未反応単量体および混合気体を一部含む気体の流れが前記第2排出物ストリームとして排出され、第2凝縮領域CZ2に導入されることができる。前記第2凝縮領域CZ2で前記第2排出物ストリーム内の気化した溶媒および高分子のような非蒸気がもう一度凝縮および沈降することができ、前記第2凝縮領域CZ2の上部には、未反応単量体、例えば、気相のエチレンを含む気相排出物ストリーム550が気泡塔反応器100の上部に排出されることができる。前記第1排出物ストリームに含まれた気化した溶媒および非蒸気の40%程度がさらに沈降することができる。
【0046】
本発明の一実施形態によると、前記凝縮領域CZ1、CZ2は、冷却コイルを含み、前記冷却コイルに冷媒が供給されることができる。具体的には、前記冷却コイルは、内部で冷媒が流れることができる配管形態であり、前記凝縮領域CZ1、CZ2の上部から下部まで巻き取られた状態に備えられ、前記凝縮領域CZ1、CZ2の上部に備えられた冷却コイルの入口510、530に冷媒が導入され、前記凝縮領域CZ1、CZ2の下部に備えられた冷却コイルの出口520、540から冷媒が排出されることができる。
【0047】
具体的には、前記凝縮領域CZ1、CZ2が第1凝縮領域CZ1および第2凝縮領域CZ2を含む場合、第2凝縮領域CZ2の上部に備えられた冷却コイルの入口510に冷媒が導入されて、前記第2凝縮領域CZ2の下部に備えられた冷却コイルの出口520から冷媒が排出されることができる。ここで、第2凝縮領域CZ2に形成された冷却コイルの入口に供給される冷媒の温度は、-10℃~-5℃の範囲であることができ、第2凝縮領域CZ2に形成された冷却コイルの出口から排出される冷媒の温度は、-5℃~0℃の範囲であることができる。
【0048】
第2凝縮領域CZ2の冷媒の温度は、前記気泡塔反応器100から排出される気相排出物ストリーム550の温度を熱力学的関係によって所望の水準に制御することができる点で意味がある。
【0049】
同様に、第1凝縮領域CZ1の上部に備えられた冷却コイルの入口530に冷媒が導入されて、前記第2凝縮領域CZ2の下部に備えられた冷却コイルの出口540から冷媒が排出されることができる。第1凝縮領域CZ1に形成された冷却コイルの入口に供給される冷媒の温度は、-5℃~-0℃の範囲であることができ、第1凝縮領域CZ1に形成された冷却コイルの出口から排出される冷媒の温度は、0℃~5℃の範囲であることができる。
【0050】
前記凝縮領域CZ1、CZ2が第1凝縮領域CZ1および第2凝縮領域CZ2を含む場合、それぞれの凝縮領域CZ1、CZ2に必要な冷媒を別に各凝縮領域CZ1、CZ2の入口に供給することもできるが、前記第2凝縮領域CZ2に形成された冷却コイルの入口510に供給されて出口520から排出される冷媒を気泡塔反応器100の外部の冷媒循環配管を用いて排出させた後、これを前記第1凝縮領域に形成された冷却コイルの入口530に再供給して第1凝縮領域CZ1の冷却に使用した後、第1凝縮領域CZ1の冷却コイルの出口540から排出させることができる。この場合、第1および第2凝縮領域CZ1、CZ2の冷却コイルおよび気泡塔反応器100の外部に位置する冷媒循環配管を一つの配管として設置することができ、それにより、流量の制御のための流量計、コントロールバルブなどを簡略化することができ、設置費用および維持費用の面で有利である。
【0051】
一方、本発明の一実施形態によると、前記第2凝縮領域CZ2の高さは、第1凝縮領域CZ1の高さの0.5倍~1倍に形成されることができる。上述のように、第2凝縮領域CZ2の冷却コイルに供給される冷媒の温度は、第1凝縮領域CZ1に供給される冷媒の温度より低く、したがって第2凝縮領域CZ2の内部の温度は、第1凝縮領域CZ1の温度より低い。したがって、単位体積当たり非蒸気の除去および凝縮効率の面で、第2凝縮領域CZ2の高さを第1凝縮領域CZ1の高さより小さくしても必要な凝縮効率を達成することができ、これにより、気泡塔反応器100の全体的な高さを減少させる効果がある。
【0052】
本発明の一実施形態によると、前記第1および第2凝縮領域CZ1、CZ2の高さの和は、前記第2分離区域DS2の高さの1倍~2倍であることができる。すなわち、第2分離区域DS2の高さを渦流発生による気体の均一な混合を図ることができるほどに設定することで、全体的な気泡塔反応器100の高さを低減することができる。
【0053】
以上、本発明による気泡塔反応器について記載および図面に図示しているが、前記の記載および図面の図示は、本発明を理解するための核心的な構成のみを記載および図示したものであって、前記記載および図面に図示した工程および装置以外に、別に記載および図示していない工程および装置は、本発明による気泡塔反応器を実施するために適切に応用され用いられることができる。
図1
図2
図3