(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】液体調味料
(51)【国際特許分類】
A23L 23/00 20160101AFI20240918BHJP
A23L 27/60 20160101ALI20240918BHJP
A23L 27/00 20160101ALI20240918BHJP
【FI】
A23L23/00
A23L27/60 Z
A23L27/00 D
(21)【出願番号】P 2020185044
(22)【出願日】2020-11-05
【審査請求日】2022-08-10
(31)【優先権主張番号】P 2019201094
(32)【優先日】2019-11-05
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】000004477
【氏名又は名称】キッコーマン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100128381
【氏名又は名称】清水 義憲
(74)【代理人】
【識別番号】100176773
【氏名又は名称】坂西 俊明
(74)【代理人】
【識別番号】100135242
【氏名又は名称】江守 英太
(74)【代理人】
【識別番号】100223424
【氏名又は名称】和田 雄二
(74)【代理人】
【識別番号】100215957
【氏名又は名称】田村 明照
(72)【発明者】
【氏名】▲柳▼原 希枝子
(72)【発明者】
【氏名】藤枝 聖史
【審査官】村松 宏紀
(56)【参考文献】
【文献】特開2017-123817(JP,A)
【文献】特開2000-116353(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A23L
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
粒状野菜果実及び
液体調味料部の原料としてトマトを含有する
濃厚ソースであって、該
濃厚ソース中における該粒状野菜果実の粒径が0.3~10mmであり、該
濃厚ソース中における該粒状野菜果実の含有量が該
濃厚ソースの総量を基準として5~80質量%であり、該
濃厚ソースの20℃におけるB型粘度が
2.0Pa・s以上である、
濃厚ソース
(但し、スティック裁断野菜用ソースを除く。)。
【請求項2】
20℃におけるB型粘度が15Pa・s以下である、請求項1に記載の
濃厚ソース。
【請求項3】
20℃におけるボストウィック粘度が16cm以下である、請求項1又は2に記載の
濃厚ソース。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、液体調味料に関する。
【背景技術】
【0002】
具材感や食感の良さを引き出すため、乾燥野菜等の具材を含む液体調味料が提案されている(例えば、特許文献1)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本発明の目的は、ソースにも使用することのできる、野菜等の具材を含む新規な液体調味料を提供することにある。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本発明は、粒状野菜果実を含有する液体調味料であって、該液体調味料中における該粒状野菜果実の粒径が0.3~10mmであり、該液体調味料中における該粒状野菜果実の含有量が該液体調味料の総量を基準として5~80質量%であり、該液体調味料の20℃におけるB型粘度が1.7Pa・s以上である、液体調味料を提供する。本発明の液体調味料は、見た目の具材感及び食感が良好で、液体調味料としての流動性があり、かつ食品に載せても垂れにくい。
【0006】
液体調味料の20℃におけるB型粘度は、15Pa・s以下であることが好ましい。これにより、液体調味料としての一定の流動性がよりあるものとすることができる。
【0007】
液体調味料の20℃におけるボストウィック粘度は、16cm以下であることが好ましい。これにより、食品に載せてもより垂れにくい液体調味料とすることができる。
【発明の効果】
【0008】
本発明によれば、ソースにも使用することのできる、野菜等の具材を含む新規な液体調味料を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0009】
【
図1】実施例において、市販の濃厚ソース3種(A~C)並びに液体調味料D及びE(各5g)をとんかつに載せた状態を撮影した写真である。
【発明を実施するための形態】
【0010】
以下、本発明を実施するための形態について詳細に説明する。ただし、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0011】
本明細書における「粒状野菜果実」とは、野菜又は果実をカット、細断等することで粒状に整形した野菜又は果実を意味する。粒状野菜果実として使用する野菜としては、例えば、タマネギ、ニンニク、ダイコン、ニンジン、長ネギ、キャベツ、ショウガ、セロリ等が挙げられ、粒状野菜果実として使用する果実としては、例えば、リンゴ、プルーン、デーツ、オレンジ、レモン、パインアップル等が挙げられる。これらの中でも、食感がより良好で、より垂れにくい液体調味料とする観点から、タマネギ、ニンニク、ニンジン、レモンが好ましく、タマネギ、ニンニクがより好ましい。粒状野菜果実は一種のみを使用してもよく、二種以上を組み合わせて使用してもよい。
【0012】
粒状野菜果実としては、生の粒状野菜果実を用いることもでき、乾燥粒状野菜果実を用いることもできる。食感をより良好なものとする観点からは、乾燥粒状野菜果実を用いることが好ましい。
【0013】
本実施形態に係る液体調味料中における粒状野菜果実の粒径は、0.3~10mmであれば特に制限されないが、見た目の具材感及び食感がより良好で、より垂れにくい液体調味料とする観点から、例えば、0.5~6mmであることが好ましく、1~5mmであることがより好ましく、1~3mmであることが更に好ましく、1~2mmであることが特に好ましい。ここで、液体調味料中における粒状野菜果実の粒径は、メッシュを用いて測定することができる。ここで、「液体調味料中における粒状野菜果実の粒径」とは、液体調味料中において粒状野菜果実が水分等を含むことにより膨潤した状態での粒状野菜果実の粒径を意味する。
【0014】
本実施形態に係る液体調味料中における粒状野菜果実の含有量は、液体調味料の総量を基準として5~80質量%であれば特に制限されないが、より流動性がある液体調味料とする観点、より食感に優れる液体調味料とする観点から、例えば、10~70質量%であることが好ましく、20~60質量%であることがより好ましい。ここで、液体調味料中における粒状野菜果実の含有量は、メッシュを用いて分離した粒状野菜果実の質量を測定して求めることができる。ここで、「液体調味料中における粒状野菜果実の含有量」とは、液体調味料中において粒状野菜果実が水分等を含むことにより膨潤した状態での粒状野菜果実の含有量を意味する。なお、本実施形態に係る液体調味料は、粒状の加工でんぷんであって、粘度付与機能がほとんどなく、具材感が付与できるものを含んでいてもよい。そのような粒状の加工でんぷんの例として、イングレディオン社の「TEXTAID A」を挙げることができる。本実施形態に係る液体調味料が粒状の加工でんぷんを含む場合、「液体調味料中における粒状野菜果実の含有量」には、当該粒状の加工でんぷんの含有量を含むものとする。
【0015】
本実施形態に係る液体調味料の20℃におけるB型粘度は、1.7Pa・s以上であれば特に制限されないが、より垂れにくい液体調味料とする観点から、2.0Pa・s以上であることが好ましく、3.0Pa・s以上であることがより好ましく、4.0Pa・s以上であることが更に好ましい。また、本実施形態に係る液体調味料の20℃におけるB型粘度は、より流動性がある液体調味料とする観点、より使いやすい液体調味料とする観点から、15Pa・s以下であることが好ましく、10Pa・s以下であることがより好ましい。液体調味料のB型粘度は、例えば、B型粘度計(東機産業社製、VISCOMETER TV-10)を用い、回転数12rpm、ローターNo.3又は4を用いて測定することができる。なお、B型粘度の測定はローターの回転開始後約50秒後に測定し、B型粘度が10Pa・s未満の液体調味料はローター3で、B型粘度が10Pa・s以上の液体調味料はローター4を用いて測定すると、安定した測定値を得るうえで好ましい。液体調味料の20℃におけるB型粘度は、例えば、液体調味料における粒状野菜果実、増粘剤、水等の含有量を適宜調節することで調整することができる。
【0016】
本実施形態に係る液体調味料の20℃におけるボストウィック粘度は、より垂れにくい液体調味料とする観点から、16cm以下であることが好ましく、11cm以下であることがより好ましい。液体調味料のボストウィック粘度は、例えば、ボストウィック粘度計(型番:CSC24925-000、シーエスシー・サイエンティフィック社製)を用いて測定することができる。液体調味料の20℃におけるボストウィック粘度は、例えば、液体調味料における粒状野菜果実、増粘剤、水等の含有量を適宜調節することで調整することができる。
【0017】
液体調味料のBrixは、例えば、糖度計(アタゴ社製、RX-5000α)を用いて測定することができる。
【0018】
本実施形態に係る液体調味料は、20℃におけるB型粘度が1.7Pa・s以上であることから、例えば、ソース、たれ、ケチャップ、ドレッシング等であることが好ましい。これらの中でも、濃厚ソースであることが好ましい。なお、本明細書において「濃厚ソース」とは、ウスターソース類品質表示基準(平成23年9月30日消費者庁告示第10号)第2条において定義される「濃厚ソース」と同義である。
【0019】
本実施形態に係る液体調味料は、任意の食品に用いることができる。また、本実施形態に係る液体調味料は、焼き物、炒め物等の調理に用いることもできる。
【0020】
本実施形態に係る液体調味料は、例えば、液体調味料中における粒径が0.3~10mmとなるように野菜又は果実をカット、細断等により粒状に整形した粒状野菜果実(具材部)を調製し、これを液体調味料の総量を基準として5~80質量%となるように液体調味料部に添加し、混合分散することで製造することができる。
【実施例】
【0021】
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
【0022】
〔実施例1:液体調味料の調製と評価(1)〕
表1に示す配合の液体調味料部及び具材部を混合分散し、80℃に加熱し容器に充填して、試験例1~7の液体調味料(ソース)を調製した。なお、表1中の数値の単位はすべてkg(キログラム)である。
また、得られた各液体調味料の20℃における粘度及びBrixについて測定した。粘度は、B型粘度計(東機産業社製、VISCOMETER TV-10)を用い、回転数12rpm、ローターNo.3又は4を用いて測定した。Brixは、糖度計(アタゴ社製、RX-5000α)を用いて測定した。結果を表2及び3に示す。
【0023】
【0024】
【0025】
【0026】
乾燥粒状野菜の粒径が1~2mmである試験例3の調味料は、見た目の具材感及び食感ともに良好で、平皿上で大きく広がらなかった。これに対し、乾燥粒状野菜の粒径が0.2mm以下である試験例1の調味料は、試験例3の調味料と比較して見た目の具材感及び食感ともに不良であり、かつ平皿上で大きく広がった。
【0027】
乾燥粒状野菜の配合量が2%である試験例5及び乾燥粒状野菜の配合量が4%である試験例6の調味料は、乾燥粒状野菜の配合量が6%である試験例3の調味料と比較して、見た目の具材感及び食感ともにやや不良であった。一方、乾燥粒状野菜の配合量が12%である試験例7の調味料は味噌状で、試験例3の調味料と比較しても、見た目の具材感及び食感ともに不良であった。
【0028】
〔実施例2:液体調味料の調製と評価(2)〕
表4に示す配合の液体調味料部及び具材部を混合分散し、80℃に加熱し容器に充填して、液体調味料D及びE(ソース)を調製した。なお、表4中の数値の単位はすべてkg(キログラム)である。
市販の濃厚ソース3種(A~C)並びに上記調製した液体調味料D及びEの20℃における粘度について、実施例1に記載の方法と同様の方法で測定した。また、濃厚ソースA~C並びに液体調味料D及びEについて、ボストウィック粘度を測定した。ボストウィック粘度の測定方法は、以下のように行った。まず、ボストウィック粘度計を水準器を用いて水平に置いた。そして、品温20℃に保持して、試料をチャンバーに満たした後、レバーを押して仕切り板をはね上げ、30秒間後に流れ広がる試料の最先の距離をmm単位まで測定した。結果を表5に示す。
【0029】
【0030】
【0031】
(垂れにくさの評価)
市販の濃厚ソース3種(A~C)、液体調味料D及びE(各5g)をそれぞれとんかつに載せたときの状態を目視で観察した。とんかつに載せたときの状態を撮影した写真を
図1に示す。
濃厚ソースA~Cでは、ソースがとんかつの上で大きく広がり、とんかつ上からの垂れが確認された。これに対し、液体調味料D及びEでは、濃厚ソースA~Cと比較してとんかつ上で広がった面積が小さく、とんかつ上からの垂れも確認されなかった。
【0032】
〔実施例3:液体調味料の調製と評価(3)〕
表6及び7に示す配合の液体調味料部及び具材部を混合分散し、80℃に加熱し容器に充填して、サンプル番号1~20の液体調味料(ソース)を調製した。なお、表6及び7中の数値の単位はすべてkg(キログラム)である。
また、得られた各液体調味料の20℃におけるB型粘度、ボストウィック粘度、Brix、液体調味料中の具材の含有量及び液体調味料中の具材の粒径(平均フェレー粒子径)について測定した。B型粘度は及びBrixは、実施例1と同様の方法で測定した。ボストウィック粘度は、実施例2と同様の方法で測定した。液体調味料中の具材の含有量及び具材の粒径は、以下の方法で測定した。結果を表6及び7に示す。
(具材の含有量)
各サンプルを50g量りとり、100メッシュの網に載せて具材を水洗し、網を傾けて2分間静置した。ゴムベラを用いて具材を集め、100メッシュの網に載せて具材を水洗し、網を傾けて1分間静置した後、具材の質量を測定した。なお、上記測定において液体調味料部に含まれるトマトペースト及び香辛料も具材とともに測定されることから、各サンプルについて、具材部を含有しない液体調味料部のみのサンプルを調製し、上記と同様の方法でトマトペースト及び香辛料の質量を測定し、当該測定値を差し引いて、具材の含有量を算出した。
(具材の粒径)
各サンプルを3~10g量りとり、100メッシュの網に載せて具材を水洗し、網を傾けて2分間静置し、ゴムベラを用いて具材を集めた。集めた具材から50個の具材をランダムに採取し、画像解析式粒度分布測定ソフトウェア(装置名:Mac-View、株式会社マウンテック製)を用い、デジタル画像におけるフェレー径を測定した。当該測定したフェレー径の平均値を具材の粒径とした。
【0033】
【0034】
【0035】
(流動性の評価)
サンプル番号2、6、9、14及び15の液体調味料について、流動性を評価した。具体的には、訓練を受けたパネル3名がそれぞれ、スパチュラを使って液体調味料を傾けたり、液体調味料を容器に入れてその状態を観察したうえで、下記の基準で〇又は×によって判定し、3名全員が〇と判定したものをA、3名全員が×と判定したものをC、3名の間で判定が分かれたものをBと評価した。B型粘度と合わせて結果を表8に示す。
〇:固形感はなく、液体調味料が液体としてスムーズに流れる。
×:やや固形感があるか、一部塊になる。
【0036】
【0037】
20℃におけるB型粘度が15Pa・s以下のサンプルは流動性があり、10Pa・s以下のサンプルはより流動性があることが確認された。
【0038】
(垂れにくさの評価)
サンプル番号2、5、9、16、19及び20の液体調味料について、垂れにくさを評価した。具体的には、訓練を受けたパネル3名がそれぞれ、約15gの液体調味料を皿に垂らし、液の広がりを観察して、下記の基準で〇または×によって判定し、3名全員が〇と判定したものをA、3名全員が×と判定したものをC、3名の間で判定が分かれたものをBと評価した。ボストウィック粘度と合わせて結果を表9に示す。
〇:市販の濃厚ソース(キッコーマン社製「デリシャスソースとんかつ」)と比べて、垂れにくい。
×:市販の濃厚ソースと比べて、同等又はそれ以下である。
【0039】
【0040】
20℃におけるボストウィック粘度が16cm以下のサンプルは垂れにくく、11cm以下のサンプルはより垂れにくいことが確認された。
【0041】
(見た目の具材感及び食感の評価)
サンプル番号1~4、6~8、10~13、15、17、18及び20の液体調味料について、見た目の具材感及び食感を評価した。具体的には、具材感がなく見た目が悪い、もしくは食べたときの食感が悪いサンプル(例えば、具材にソースが入っているような、バランスが悪いサンプル)を1点、見た目の具材感や食感が好ましく、バランスのよいサンプル4を4点と定義し、見た目の具材感及び食感の観点で両者の中間に位置するサンプルについては、どちらかといえば1点のサンプルに近いものを2点、どちらかといえば4点のサンプルに近いものを3点としてそれぞれ定義し、訓練を受けた3名のパネルがそれぞれ評価した。最終的な評価は3名の評価を集計し、平均点数が4点のサンプルを◎、3以上4未満のサンプルを〇、2以上3未満のサンプルを△、2未満のサンプルを×とした。結果を表10に示す。
【0042】
【0043】
液体調味料中の具材の粒径が5mmを超えるサンプル11は他のサンプルと比較して見た目の具材感及び食感にやや劣る結果となった。また、液体調味料中の具材の含有量が60%を超えるサンプル2や6は半固形状の味噌のような物性となり、液体調味料中の具材の含有量60%以下であるサンプル4と比較して流動性や見た目の具材感及び食感にやや劣る結果となった。