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特許7556891高エネルギー低線量プラズマを用いた窒化ケイ素ベースの誘電体膜の後処理の方法
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】高エネルギー低線量プラズマを用いた窒化ケイ素ベースの誘電体膜の後処理の方法
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/318 20060101AFI20240918BHJP
   H01L 21/324 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
H01L21/318 Z
H01L21/324 P
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2021572329
(86)(22)【出願日】2020-06-03
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2022-08-03
(86)【国際出願番号】 US2020035970
(87)【国際公開番号】W WO2020247531
(87)【国際公開日】2020-12-10
【審査請求日】2023-06-01
(31)【優先権主張番号】62/858,158
(32)【優先日】2019-06-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】390040660
【氏名又は名称】アプライド マテリアルズ インコーポレイテッド
【氏名又は名称原語表記】APPLIED MATERIALS,INCORPORATED
【住所又は居所原語表記】3050 Bowers Avenue Santa Clara CA 95054 U.S.A.
(74)【代理人】
【識別番号】110002077
【氏名又は名称】園田・小林弁理士法人
(72)【発明者】
【氏名】スン, ヨン
(72)【発明者】
【氏名】リー, チュン チャン
(72)【発明者】
【氏名】ジャ, プラケト プラカシュ
(72)【発明者】
【氏名】リャン, チンメイ
(72)【発明者】
【氏名】オジャ, シュチ スニル
【審査官】鈴木 智之
(56)【参考文献】
【文献】特開2016-066794(JP,A)
【文献】特開2012-084707(JP,A)
【文献】特表2016-523442(JP,A)
【文献】特表2005-524983(JP,A)
【文献】特表2006-505928(JP,A)
【文献】特表2010-512646(JP,A)
【文献】特表2014-522104(JP,A)
【文献】特表2016-511551(JP,A)
【文献】特開2007-251172(JP,A)
【文献】特開2019-121657(JP,A)
【文献】特開2008-010877(JP,A)
【文献】特開2010-232240(JP,A)
【文献】特開2005-203800(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/318
H01L 21/324
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の表面上に形成された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を後処理する方法であって:
その上に形成された前記窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を有する前記基板を処理チャンバ内に配置することと;
前記窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を前記処理チャンバ内のヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマに曝すことと、を含み、
前記ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマ中のヘリウムイオンのエネルギーは1eVと3.01eVとの間であり、
前記ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマ中の前記ヘリウムイオンのフラックス密度は、5×1015イオン/cm・秒と1.37×1016イオン/cm・秒との間である、方法。
【請求項2】
前記窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜がSi-H結合を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
前記窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜がN-H結合を含む、請求項1に記載の方法。
【請求項4】
前記基板が、前記窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を前記ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマに曝している間、100℃と400℃との間の温度にある、請求項1に記載の方法。
【請求項5】
前記基板が、前記窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を前記ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマに曝している間、mTorrと300mTorrとの間の圧力にある、請求項1に記載の方法。
【請求項6】
前記基板が、金属、半導体、及びプラスチックからなる群から選択される材料で作られている、請求項1に記載の方法。
【請求項7】
基板の表面上に形成されたケイ素ベース膜を後処理する方法であって:
その上に形成された前記ケイ素ベース膜を有する前記基板を処理チャンバ内に配置することと;
前記ケイ素ベース膜を前記処理チャンバ内でヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマに曝すこととを含み、
前記ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマ中のヘリウムイオンのエネルギーは1eVと3.01eVとの間であり、
前記ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマ中の前記ヘリウムイオンのフラックス密度は、5×1015イオン/cm・秒と1.37×1016イオン/cm・秒との間である、方法。
【請求項8】
前記ケイ素ベース膜が窒化ケイ素(SiN)を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項9】
前記ケイ素ベース膜がS-H結合を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項10】
前記ケイ素ベース膜がN-H結合を含む、請求項7に記載の方法。
【請求項11】
前記基板が、前記ケイ素ベース膜を前記ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマに曝している間、100℃と400℃と間の温度にある、請求項7に記載の方法。
【請求項12】
前記基板が、前記ケイ素ベース膜を前記ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマに曝している間、mTorrと300mTorrとの間の圧力にある、請求項7に記載の方法。
【請求項13】
前記基板が、金属、半導体、及びプラスチックからなる群から選択される材料で作られている、請求項に記載の方法。
【請求項14】
基板の表面上に窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を形成及び後処理する方法であって:
第1のチャンバの処理領域に配置された前記基板上に、ケイ素及び窒素を含む誘電体前駆体を供給することと;
前記第1のチャンバの前記処理領域にラジカルフラックスを提供することと;
供給された前記誘電体前駆体を、第2のチャンバ内でヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマに曝すこととを含み、
前記ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマ中のヘリウムイオンのエネルギーは1eVと3.01eVとの間であり、
前記ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマ中のヘリウムイオンのフラックス密度は、5×1015イオン/cm・秒と1.37×1016イオン/cm・秒との間である、方法。
【請求項15】
前記基板が、前記窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を前記ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマに曝している間、100℃と400℃との間の温度にある、請求項14に記載の方法。
【請求項16】
前記基板が、前記窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を前記ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマに曝している間、mTorrと300mTorrとの間の圧力にある、請求項14に記載の方法。
【請求項17】
前記基板が、金属、半導体、及びプラスチックからなる群から選択される材料で作られている、請求項14に記載の方法。
【請求項18】
前記誘電体前駆体が、ケイ素、窒素、水素、及び塩素を含む有機ケイ素化合物である、請求項14に記載の方法。
【請求項19】
前記誘電体前駆体が、ケイ素、窒素、水素、及び酸素を含む有機ケイ素化合物である、請求項14に記載の方法。
【請求項20】
前記ラジカルフラックスが、酸素(O)、オゾン(O)、水(HO)、アンモニア(NH)、ヒドラジン(N)、二酸化窒素(NO)、及び窒素(Nらなる群から選択されるラジカルガスを含む、請求項14に記載の方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
背景
分野
本開示の実施形態は、概して、流動性ギャップ充填膜及びその製造プロセス、より具体的には、高エネルギー低線量プラズマによる流動性膜の後処理に関する。
【背景技術】
【0002】
関連技術の説明
シャロートレンチアイソレーション(STI)、金属間誘電体(IMD)層、層間誘電体(ILD)層、プレメタル誘電体(PMD)層、パッシベーション層、フィン電界効果トランジスタ(FinFETなどを含む、小型化された半導体デバイスの製造は、ナノスケールのゲート構造をパターン化するための高度なリソグラフィの課題に直面している。窒化ケイ素は、このような構造で使用される主要な誘電体材料の1つである。液相にケイ素と窒素を含む誘電体前駆体が基板上のギャップとトレンチに供給され(流動性フィルムと呼ばれる)、次に、通常は蒸気アニーリング、紫外線(UV)照射、ホットプレス、及び高温での焼結によって、固相で窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜に硬化される、ギャップとトレンチのボイドフリー充填は、流動性化学気相堆積(CVD)によって実行される。しかしながら、このような凝固プロセスは、高アスペクト比のフィーチャ内の特定の深さに制限されるため、フィーチャは窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜で完全に満たされていない。いくつかの場合において、流動性膜は、凝固深度を高めるために、高エネルギーイオンを含む標準的な高密度プラズマ(HDP)で処理される。しかしながら、そのようなHDP処理は窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜に浸透せず、凝固深さを高アスペクト比の特徴の深さまで増加させないことが知られている。したがって、酸化ケイ素に対する高アスペクト比の特徴(窒化ケイ素を部分的に含む)内の材料の湿式エッチング選択性は、酸化ケイ素に対する窒化ケイ素のそれよりも低い。
【0003】
したがって、高アスペクト比のギャップとトレンチを埋め、酸化ケイ素と比較して改善されたウェットエッチング速度(WERR、<2:1)などの改善された機械的特性を有する流動性フィルムを形成するために、新しい凝固プロセスが必要である。
【発明の開示】
【0004】
概要
ここに記載の実施形態は、一般に、基板の表面上に形成された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を後処理する方法であって、窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜が形成された基板を処理チャンバ内に配置することと、窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を処理チャンバ内のヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマに曝すこととを含む方法に関する。ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマ中のヘリウムイオンのエネルギーは1eVと3.01eVとの間であり、ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマ中のヘリウムイオンのフラックス密度は、5×1015イオン/cm・秒と1.37×1016イオン/cm・秒の間である。
【0005】
本開示の実施形態は、基板の表面上に窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を形成及び後処理する方法であって、第1のチャンの処理領域に配置された基板上に、ケイ素及び窒素を含む誘電体前駆体を送達することと、第1のチャンバの処理領域にラジカルフラックスを提供し、送達された誘電体前駆体を第2のチャンバ内のヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマに曝すこととを含む方法をさらに提供することができる。ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマ中のヘリウムイオンのエネルギーは1eVと3.01eVとの間であり、ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマ中のヘリウムイオンのフラックス密度は、5×1015イオン/cm・秒と1.37×1016イオン/cm・秒の間である。
【0006】
図面の簡単な説明
本開示の上記の特徴を詳細に理解できるように、上記で簡単に要約された本開示のより具体的な説明は、実施形態を参照することによって得ることができ、そのいくつかは添付の図面に示されている。しかしながら、添付の図面は、本開示の典型的な実施形態のみを示しており、したがって、その範囲を限定すると見なされるべきではないことに留意されたい。
【図面の簡単な説明】
【0007】
図1】一実施形態による流動性フィルムを形成する方法を示すフローチャートである。
図2】一実施形態によるクラスタツールの概略図である。
図3A】一実施形態による堆積チャンバの概略図である。
図3B】一実施形態によるシャワーヘッドの概略底面図である。
図4】一実施形態によるプラズマチャンバの概略図である。
図5A】一実施形態による、ヘリウム含有プラズマの発光分光法(OES)強度を示す。
図5B】一実施形態による、ヘリウム含有プラズマの発光分光法(OES)強度を示す。
図6】一実施形態による窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜のエッチング量を示している。
【0008】
明確にするために、該当する場合、図間で共通の同一の要素を示すために同一の参照番号が使用されている。さらに、一実施形態の要素は、ここに記載の他の実施形態での利用に有利に適合させることができる。
【発明を実施するための形態】
【0009】
詳細な説明
ここに記載の実施形態は、例えば、流動性化学気相堆積(CVD)によって、基板上に堆積された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を後処理する方法を提供する。窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜には、ケイ素-窒素(Si-N-Si)結合が含まれている。基板上に堆積された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜には、堆積したケイ素窒素(Si-N)ベースの誘電体膜の表面近くに限定されたSi-Hの架橋の結果として、大量のケイ素-水素(Si-H)及び窒素-水素(N-H)結合が含まれている可能性があり、ギャップとトレンチの不十分な充填を引き起こす。ここに記載の方法は、堆積された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜をヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマに曝すことによって、基板の表面に堆積された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を後処理することを含む。ここに記載の方法を使用して、窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜のSi-H及びN-H結合を低減又は除去して、窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を大きな厚さに緻密化することができる。
【0010】
ここに記載の実施形態はまた、高アスペクト比(AR)及び小さな寸法(例えば、AR 8)を有するギャップ及びトレンチを充填するために流動性CVDによって窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を形成する方法を提供する。いくつかの実施形態では、流動性CVDによって形成された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜は継ぎ目がなく、液相のケイ素及び窒素誘電体前駆体及びラジカル形態の共反応物(反応ガス)、例えば、酸素(O)又はアンモニア(NH)を使用して、高いARギャップ及びトレンチを埋めることができる。
【0011】
図1は、一実施形態による、基板の表面上に窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を形成するために使用される方法100を示すフローチャートである。
【0012】
ブロック102において、基板は、堆積チャンバ内に配置される。基板は、例えば、アルミニウム又はステンレス鋼などの金属基板、ケイ素などの半導体基板シリコン・オン・インシュレーター(SOI)、又はガリウムヒ素、ガラス基板、又はプラスチック基板であり得る。半導体基板は、集積回路の形成における製造/製造の任意の段階でパターン化された基板であり得る。パターン化された基板は、誘電体材料で満たされるギャップ、トレンチ、孔、ビアなどを含み得る。
【0013】
ブロック104では、液相中の1つ又は複数の誘電体前駆体及びアルゴン(Ar)又はヘリウム(He)などのキャリアガスを、デュアルチャネルシャワーヘッド(DCSH)などのガス供給装置を介して堆積チャンバに流入させて、DSCHのチャネル当たり約250sccmと約5000sccmとの間の流量で、堆積チャンバ内に配置された基板の表面上に誘電体前駆体を供給する。基板の表面は、約40℃と約150℃との間の低温、例えば、約80℃に保持することができる。堆積チャンバの圧力は、約0.5Torrと約3.0Torrとの間に維持することができる。
【0014】
いくつかの実施形態では、誘電体前駆体は、シリコン、窒素、水素、及びシリルアミンとその誘導体などの塩素が含む有機ケイ素化合物、ケイ素、窒素、水素、酸素、又はそれらの組み合わせを含む有機ケイ素化合物である。
【0015】
ブロック106において、プラズマは、堆積チャンバの外側の遠隔プラズマ源(RPS)で生成され、キャリアガス(例えば、Ar、He)と共に堆積チャンバの基板処理領域に流入させることができる。プラズマは、分子状酸素(O)、オゾン(O)、分子状水素(H)、窒素-水素化合物(NH、Nなど)、窒素-酸素化合物(NO、NO、NOなど)、水素-酸素化合物(例えば、HO、H)、窒素-水素-酸素化合物(例えば、NHOH)、炭素-酸素化合物(例えば、CO、CO)、又はそれらの組み合わせを含む処理前駆体ガスの解離によって生成することができる。プラズマでは、O、H、及び/又はNを含むラジカルが活性化され得る、例えば、O、H、N、NH 、N 、NH 、NH、Nなど。
【0016】
いくつかの実施形態では、RPSで活性化されたラジカルは、約1sccmと約1,000sccmとの間の流量で堆積チャンバ(「ラジカルフラックス」と呼ばれる)に流入させる。
【0017】
ブロック108において、基板処理領域内の1つ又は複数のラジカル(反応性ガスとも呼ばれる)は、送達された誘電体前駆体と反応して、窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を形成する。形成されたケイ素窒素(Si-N)ベースの誘電体膜の組成は、ラジカルフラックス中の反応性ガスの組成を変えることによって調整することができる。SiON、SiCON、及びSiN膜などの窒素含有膜を形成するために、反応性ガスは、例えば、アンモニア(NH)、水素(H)、ヒドラジン(N)、二酸化窒素(NO)、又は窒素(N)であり得る。基板処理領域の反応性ガスが、供給された誘電体前駆体と反応するとSi-H及びN-H結合(弱い結合)は部分的に切断され、Si-N、Si-NH、及び/又はSi-NH結合(強い結合)に置き換えられて、窒化ケイ素(SiN)誘電体膜を形成する。
【0018】
ブロック110では、形成された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜が、軽イオン(すなわち、周期表において原子番号が小さいイオン化種)、例えば、プラズマチャンバ内のヘリウム(He)、水素(H)、アルゴン(Ar)、又は窒素(N)などを含有する高エネルギー低用量プラズマに曝して、形成された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を硬化させる。プラズマチャンバは、誘導コイルを介してイオンフラックスの密度(イオン線量とも呼ばれる)を制御するRF電源とイオンエネルギーを制御するRF電源の2つの電源に結合されている。
【0019】
軽イオン含有高エネルギー低線量プラズマに曝されると、形成された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜にSi-H結合とN-H結合を有する化合物がさらに架橋する。すなわち、形成された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜の隣接する化合物のSi-H及びN-H結合が光イオン含有プラズマと反応すると、隣接する化合物が、Si-H結合を除去し、Si-N、Si-NH、及び/又はSi-NH結合を形成することによって架橋し、そしてそれにより窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜の対応する部分が固化する。
【0020】
理論に拘束されることを意図するものではないが、プラズマで活性化されたイオンのラジカルが窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜内のSi-H結合に物理的に衝突し、それにより、Si-H結合が切断され、Si-N、Si-NH、及び/又はSi-NH結合が形成される。光イオンは、形成された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を実質的に損傷することなく、形成された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を通って選択された深さまで移動する。軽イオンのラジカルによるこの処理により、形成された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を損傷することなく、0nm~4.2nmの深さまで均一な窒化プロセス(例えば、Si-N、Si-NH、及び/又はSi-NH結合の形成)を実行できるが、例えば、熱アニーリング又はUV照射による硬化は、必然的に、窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜の露出表面の近くでの硬化に限定される。
【0021】
典型的には、制限することを意図するものではないが、誘電体前駆体(ブロック110)の硬化は、誘電体前駆体の供給及び反応性ガス(ブロック104~108)との反応が行われる堆積チャンバとは異なるチャンバ(プラズマチャンバ)で行われる。一般に、一連の操作(例えば、ブロック104~108)は、全体的に厚いフィルムを形成するために、複数のサイクルにわたって繰り返され得る。
【0022】
堆積システムの実施形態は、集積回路チップを製造するためのより大きな製造システムに組み込まれ得る。図2は、一実施形態による、処理チャンバ1008a~fを含む1つのそのようなクラスタツール1001を示している。図2では、一対のフロントオープニングユニファイドポッド(FOUP)1002は、ロボットアーム1004によって収容され、低圧保持領域1006に配置される基板(例えば、直径300mmのウエハ)を供給する。第2のロボットアーム1010を使用して、低圧保持領域1006と処理チャンバ1008a~fとの間で基板を輸送することができる。
【0023】
図3Aは、一実施形態による、チャンバ本体302及びリッドアセンブリ304を有する処理チャンバ300の概略図である。リッドアセンブリ304は、一般に、遠隔プラズマ源(RPS)306、リッド308、及びデュアルチャネルシャワーヘッド(DCSH)310を含む。RPS306は、処理前駆体ガス源312から提供される処理前駆体ガスを処理することができる。次に、RPS306で形成されたプラズマは、リッド308に結合されたガス入口アセンブリ314及びバッフル316を通って、チャンバプラズマ領域318に供給され得る。キャリアガス(例えば、Ar、He)は、チャンバプラズマ領域318に供給され得る。リッド(すなわち、導電性上部)308及びデュアルチャネルシャワーヘッド(DCSH)310は、間に絶縁リング310を備えて配置され、これにより、AC電位を、DCSH310に対してリッド308に印加することが可能になる。
【0024】
DCSH310は、チャンバプラズマ領域318と基板処理領域324との間に配置され、チャンバプラズマ領域318内に存在するプラズマで活性化されたラジカルが、複数の貫通孔326を通過して基板処理領域324に入るのを可能にする。ラジカルの流れ(ラジカルフラックス)は、図3Aの実線の矢印「A」によって示されている。基板328は、基板処理領域324内に配置された基板支持体330上に配置されている。DCSH310はまた、前駆体源334から提供される誘電体前駆体で満たすことができる1つ又は複数の中空容積332を有する。誘電体前駆体は、1つ又は複数の中空容積332から小孔336を通って基板処理領域324に入り、チャンバプラズマ領域318をバイパスする。誘電体前駆体の流れは、図3Aの点線の矢印によって示されている。排気リング338は、排気ポンプ340を使用することによって、基板処理領域324を均一に排気するために使用される。DCSH310は、貫通孔326の最小直径の長さよりも厚くてもよい。貫通孔326の最小直径の長さは、部分的にDCSH310を通る貫通孔326のより大きな直径部分を形成することによって制限され得、チャンバプラズマ領域318から基板処理領域324へのラジカルフラックスの流れを維持する。いくつかの実施形態では、貫通孔326の最小直径の長さは、貫通孔326の最小直径と同じ桁以下であり得る。
【0025】
いくつかの実施形態では、図2の一対の処理チャンバ(例えば、1008c~d)(ツインチャンバと呼ばれる)を使用して、基板上に誘電体前駆体を堆積することができる。各処理チャンバ(例えば、1008c~d)は、図3Aに示される処理チャンバ300の断面構造を有することができる。上記のDCSHのチャネルあたりの流量は、対応するDCSH310を介した各チャンバ(例えば、1008c~d)への流量に対応する。
【0026】
図3Bは、一実施形態によるDCSH310の概略底面図である。DCSH310は、貫通孔326を介して、チャンバプラズマ領域318内に存在するラジカルフラックス及びキャリアガスを供給することができる。
【0027】
いくつかの実施形態では、貫通孔326の数は、約60と約2,000との間であり得る。貫通孔326は、丸い形状又は様々な形状を有し得る。いくつかの実施形態では、貫通孔326の最小直径は、約0.5mmと約20mmとの間、又は約1mmと約6mmとの間であり得る。貫通孔326の断面形状は、円錐形、円筒形、又は2つの形状の組み合わせにすることができる。いくつかの実施形態では、いくつかの小孔336を使用して、誘電体前駆体を基板処理領域324に導入することができ、約100と約5,000との間、又は約500と約2,000との間であり得る。小孔336の直径は、約0.1mmと約2mmとの間であり得る。
【0028】
図4は、一実施形態による、チャンバ本体402及びリッドアセンブリ404を有するプラズマチャンバ400の概略図である。リッドアセンブリ404は、ガス供給アセンブリ406及びリッド408を含む。リッド408は、1つ又は複数の処理前駆体ガスの入口を可能にするための開口部410を有する。ガス供給アセンブリ406は、開口部410を通してリッド408上に配置される。ガス供給アセンブリ406は、ガス入口414を介してガス源412に接続されて、1つ又は複数の処理前駆体ガスを基板処理領域424に供給することができる。基板428は、基板処理領域424内に配置され、バイアス電源(図示せず)に結合された基板支持体430上に配置される。1つ又は複数の処理前駆体ガスは、排気リング438及び排気ポンプ440を使用することによって、基板処理領域424を出ることができる。
【0029】
リッドアセンブリ404において、内側コイル442、中間コイル444、及び外側コイル446は、リッド408の上に配置される。内側コイル442及び外側コイル446は、整合回路450を介してRF電源448に結合されている。RF電源448から外部コイル446に印加される電力は、蓋408を介して誘導結合され、基板処理領域424内のガス源412から提供される処理前駆体ガスからプラズマを生成する。RF電源448は、異なる周波数で電流を供給して、プラズマ中のプラズマ密度(すなわち、1cc当たりのイオンの数)、したがってイオンフラックスの密度(イオン/cm・秒)を制御することができる。バイアス電源は、基板428とプラズマとの間の電圧を制御し、したがって、イオンのエネルギー及び方向性を制御する。したがって、イオン流束とイオンエネルギーの両方を独立して制御することができる。
【0030】
したがって、イオン流束とイオンエネルギーの両方を独立して制御することができる。ヒータアセンブリ452は、部材454、456をクランプすることによってリッド408に固定され得る。
【0031】
基板の表面は、約100℃と約400℃との間の温度に保つことができる。プラズマチャンバの圧力は、約5mTorrと約500mTorrとの間に維持され得る。
【0032】
以下では、堆積された膜を処理するために使用されるプロセスパラメータの実験的測定が、ここに記載される本開示の実施形態の態様を説明するための例として提供される。これらの例は、本開示の範囲を限定することを意図するものではない。
【0033】
実験測定では、上記の方法100に従って形成された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜を、ヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマに、15と150mTとの間の圧力下で約2分と約3.5分との間の時間曝した。バイアス電源によって基板サポート内に配置された電極に印加される電力(バイアス電力と呼ばれる)は、100Wと700Wとの間で変化させ、印加されたバイアス電力により基板の表面に衝撃を与えるために使用されるヘリウムイオン(すなわち、プラズマで生成されるイオン)のエネルギーを変化させた。この例ではICPプラズマ源であるRF電源に適用される電力は、プラズマで生成されるヘリウムイオンの密度を変化させるために0kWと2.7kwとの間で変化させた(つまり、より低い電力はより低いフラックス密度に対応する。)。形成された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜は、ヘリウムイオンによって衝撃を受け、サイクル当たり2.6Åと4.2Åとの間の深さ及び3nmと4.2nmとの間の全体の深さまで高密度化(すなわち、窒化)された。ここに記載の1つ又は複数の実施形態で使用することができるいくつかのプロセスパラメータの要約を以下に要約する。
【0034】
図5Aは、(i)2.7kWのRF電源(RFソース電力と呼ばれる)の電力で波長200~900nmの間で測定されたヘリウム含有プラズマの発光分光法(OES)強度を示す(ライン591を参照)及び(ii)700W(行592を参照)。図5Aの主要な輝線は、準安定ヘリウム(He)原子(例えば、388.8nm、402.6nm、447.1nm、501.5nm、587.5nm、667.8nm、706.5nm、及び728.1nm)を示している。さらに、窒素に関連して検出された反応種は、300と400nmとの間の発光スペクトル波長を有する励起窒素分子である。700WのRFソース電力の場合(ライン591を参照)の準安定ヘリウム(He)原子に対応するOES強度は、2.7kWのRFソース電力の場合(ライン592を参照)の約10~1,000倍小さい。したがって、ヘリウムイオン含有プラズマのプラズマ密度は、700WのRFソース電力の場合の10~1,000倍小さい。
【0035】
図5Bは、100Wと500Wとの間などの様々なバイアス電力、及び150mTorrの圧力でのヘリウム含有プラズマのOES強度を示している。RFソース電力は0Wに保たれ、したがって、ヘリウム含有プラズマは、基板支持体電極に印加されたバイアスの印加によって生成された。図5Bから分かるように、図5Aの主要な輝線に対応するOES強度は、印加されたバイアス電力、したがってヘリウムイオンのエネルギーと共に直線的に増加する。したがって、この例では、高エネルギーの低線量プラズマに、低RF源電力(例えば、700W)及び高バイアス電力(例えば、100~500W)が提供された。
【0036】
ヘリウムイオンのプラズマ密度及びエネルギーを上記のように制御することができるヘリウム含有プラズマを使用して、窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜などの形成された堆積層を高密度化することができる。プラズマ密度が低く、高エネルギーのヘリウムイオンを含むヘリウム含有プラズマは、より高いプラズマ密度プロセスで作成された膜表面への過度の衝撃、及び従来のプラズマプロセスで通常使用されるより高い原子量のガスの使用により、膜に重大な損傷を与えることなく、基板表面に衝撃を与え、窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜内に深く浸透することができる。低プラズマ密度を有し、高エネルギーヘリウムイオンを含むヘリウム含有プラズマは、形成された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜において、全体的な損傷が少ない厚さの高密度化をもたらす。例えば、高アスペクト比の特徴内に堆積されたケイ素及び窒化物含有流動性膜は、そのような高エネルギー低線量ヘリウム含有プラズマで処理して、流動性膜を高密度化し、形成された流動性フィルム層に重大な損傷を与えることなく、高アスペクト比の特徴内で深さが増すまで緻密化された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体フィルムを形成することができる。
【0037】
図6は、1%HFを脱イオン水で5分間希釈することによって調製された希薄HF(DHF)溶液を使用して除去された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜の量を示している。窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜は、上記の方法100に従って形成され、その後、2.7kW(高線量)及び700W(低線量)のRFソース電力で、300W(低エネルギー)及び700W(高エネルギー)のバイアス電力で、150mTorrと300mTorrとの間の圧力でヘリウム含有プラズマに曝された。図6に見られるように、プラズマ中のヘリウムイオンのより低い線量(すなわち、より低いRFソース電力で)及びより高いエネルギー(すなわち、より高いバイアス電力で)は、窒化ケイ素ベースの誘電体膜のエッチング量を増加させ、形成された窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜は、より深い深さまで窒化物(緻密化)部分を有し、エッチング速度は12.5Å/分に改善されたことを示している。より低い圧力はまた、プラズマ中のヘリウムイオンのより高いエネルギーにつながり、したがって、エッチング速度が改善された。
【0038】
上記のように、窒化ケイ素(SiN)ベースの流動性膜をヘリウム含有高エネルギー低線量プラズマで後処理すると、流動性膜に損傷を与えることなく、窒化深さを増し、湿式エッチング速度(WERR)を向上させることができる。上記の特定の例示的な実施形態は、本開示による高エネルギー低線量プラズマによって後処理することができる窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜のいくつかの可能な例にすぎず、窒化ケイ素(SiN)ベースの誘電体膜の可能な構成、仕様、堆積方法などを制限されないことに留意されたい。例えば、軽イオン含有高エネルギー低線量プラズマによる後処理は、ドープ又は非ドープのSiCOH、SiCON、SiO、及びSiN膜に適用できる。
【0039】
上記は特定の実施形態に向けられているが、他のさらなる実施形態は、その基本的な範囲から逸脱することなく考案することができ、その範囲は、以下の特許請求の範囲によって決定される。
図1
図2
図3A
図3B
図4
図5A
図5B
図6