(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】基板処理方法、及び基板処理装置
(51)【国際特許分類】
H01L 21/027 20060101AFI20240918BHJP
H01L 21/3065 20060101ALI20240918BHJP
G03F 7/20 20060101ALN20240918BHJP
【FI】
H01L21/30 570
H01L21/302 105A
G03F7/20 521
(21)【出願番号】P 2022543897
(86)(22)【出願日】2021-08-10
(86)【国際出願番号】 JP2021029557
(87)【国際公開番号】W WO2022039071
(87)【国際公開日】2022-02-24
【審査請求日】2023-02-13
(31)【優先権主張番号】P 2020139405
(32)【優先日】2020-08-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100212026
【氏名又は名称】中村 真生
(72)【発明者】
【氏名】只友 浩貴
(72)【発明者】
【氏名】村松 誠
(72)【発明者】
【氏名】上田 健一
(72)【発明者】
【氏名】ダウエンドルファー アルノ アライン ジャン
(72)【発明者】
【氏名】鬼塚 智也
(72)【発明者】
【氏名】吉田 圭佑
【審査官】今井 彰
(56)【参考文献】
【文献】米国特許出願公開第2011/0205505(US,A1)
【文献】国際公開第2020/105505(WO,A1)
【文献】特開2015-149384(JP,A)
【文献】特開2016-110089(JP,A)
【文献】特開2013-016699(JP,A)
【文献】特開2015-037128(JP,A)
【文献】国際公開第2019/060184(WO,A2)
【文献】特開2011-124313(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/027、21/30
G03F 7/26-7/42
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
金属を含有す
るレジストの凹凸パターンが表面に形成されている基板の
前記凹凸パターンの凹部内の液体を、固体状態の補強材に置き換えることと、
前記補強材を固体状態に維持しつつ、前記補強材に含まれる分子間の結合数を減少させる低分子化処理を前記基板に対して施すことと、
前記低分子化処理を施すことの後に、固体状態に維持された前記補強材を含む前記基板を除去部まで搬送することと、
前記除去部まで前記基板を搬送した後に、前記除去部により前記低分子化処理が施された前記補強材を昇華させて除去することと、を含
み、
前記低分子化処理は、前記補強材に含まれる分子間の結合数を減少させると共に前記凹凸パターンの凸部の表面を含む領域のエッチング耐性を向上させるように、前記凹凸パターン及び前記補強材に対して熱エネルギー及びエネルギー線の少なくとも一方を付与することを含む、基板処理方法。
【請求項2】
前記低分子化処理は、前記低分子化処理での熱エネルギー及びエネルギー線の少なくとも一方の付与により、前記凹凸パターンの脱水縮合反応が起こることを含む、請求項1記載の基板処理方法。
【請求項3】
前記低分子化処理を施す際には、前記凹凸パターンよりも前記補強材が昇華しやすいレベルまで、前記補強材に含まれる分子間の結合数を減少させる、請求項1
又は2記載の基板処理方法。
【請求項4】
前記補強材を昇華させて除去することは、前記基板を減圧された空間に置くことによって前記補強材を昇華させることを含む、請求項
1~3のいずれか一項記載の基板処理方法。
【請求項5】
前記補強材を昇華させて除去することは、前記補強材に対してプラズマを用いたエッチング処理を施すことを含む、請求項
1~4のいずれか一項記載の基板処理方法。
【請求項6】
前記補強材に置き換えることは、
前記基板の表面に処理液を供給することで、前記凹部内の液体を当該処理液に置き換えることと、
前記処理液を乾燥させて前記凹部内に前記補強材を形成することとを含む、請求項1~5のいずれか一項記載の基板処理方法。
【請求項7】
前記凹凸パターンは、複数の前記凹部を含み、
前記基板の表面に前記処理液を供給することは、複数の前記凹部内それぞれに液体が残っている状態で、前記基板の表面に対する前記処理液の供給を開始することを含む、請求項6記載の基板処理方法。
【請求項8】
前記補強材は、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコール、紫外線硬化樹脂、及びポリメタクリル酸メチルのうちの少なくとも一つを含有するポリマーを含む、請求項1~
7のいずれか一項記載の基板処理方法。
【請求項9】
金属を含有す
るレジストの凹凸パターンが
基板の表面に形成され
るように、前記基板の表面上のレジスト膜に対して現像液を供給する液供給部と、
前記凹凸パターンの凹部内の液体を、固体状態の補強材に置き換える置換処理部と、
前記補強材を固体状態に維持しつつ、前記補強材に含まれる分子間の結合数を減少させる低分子化処理を前記基板に対して施す低分子化処理部と、
前記低分子化処理部による前記低分子化処理が実行された後に、前記低分子化処理が施された前記補強材を昇華させて除去する除去部と、を備え
、
前記置換処理部は、
前記基板の表面に処理液を供給することで、前記凹部内の液体を当該処理液に置き換えることと、
前記処理液を乾燥させて前記凹部内に前記補強材を形成することと、を実行し、
前記低分子化処理部は、前記低分子化処理において、前記補強材に含まれる分子間の結合数を減少させると共に前記凹凸パターンの凸部の表面を含む領域のエッチング耐性を向上させるように、前記凹凸パターン及び前記補強材に対して熱エネルギー及びエネルギー線の少なくとも一方を付与する、基板処理装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板処理方法、及び基板処理装置に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1には、表面に凹凸パターンが形成された基板上の液体を除去して基板を乾燥させる基板乾燥方法(基板処理方法)が開示されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、凹凸パターンのパターン倒れの抑制に有効な基板処理方法及び基板処理装置を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
本開示の一側面に係る基板処理方法は、表面に凹凸パターンが形成されている基板の凹部内の液体を、固体状態の補強材に置き換えることと、補強材を固体状態に維持しつつ、補強材に含まれる分子間の結合数を減少させる低分子化処理を基板に対して施すことと、を含む。
【発明の効果】
【0006】
本開示によれば、凹凸パターンのパターン倒れの抑制に有効な基板処理方法及び基板処理装置が提供される。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、基板処理システムの概略構成を例示する模式図である。
【
図2】
図2は、塗布現像装置の内部構成を例示する模式図である。
【
図3】
図3は、現像ユニットの構成を例示する模式図である。
【
図4】
図4は、照射ユニットの構成を例示する模式図である。
【
図5】
図5は、プラズマ処理装置の構成を例示する模式図である。
【
図6】
図6は、制御装置の機能構成を例示するブロック図である。
【
図7】
図7は、制御装置のハードウェア構成を例示するブロック図である。
【
図8】
図8は、現像処理手順の一例を示すフローチャートである。
【
図9】
図9(a)~
図9(d)は、現像処理手順の一例における凹部内の様子を説明するための模式図である。
【
図10】
図10は、補強材に含まれるポリマーの化学式の一例を示す図である。
【
図11】
図11(a)は、露光処理の一例における露光の様子を説明するための模式図である。
図11(b)は、変形例に係る現像処理手順の一例を説明するための模式図である。
【
図12】
図12(a)及び
図12(b)は、現像処理手順の一例を説明するための模式図である。
【
図13】
図13は、現像処理手順の一例を説明するための模式図である。
【
図14】
図14は、変形例に係る現像処理手順の別の例を説明するための模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下、種々の例示的実施形態について説明する。説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一の符号を付し、重複する説明を省略する。
【0009】
[基板処理システム]
まず、
図1及び
図2を参照して基板処理システム1(基板処理装置)の概略構成を説明する。基板処理システム1は、基板に対し、感光性被膜の形成、当該感光性被膜の露光、及び当該感光性被膜の現像を施すシステムである。処理対象の基板は、例えば半導体のウェハWである。感光性被膜は、例えばレジスト膜である。基板処理システム1は、塗布・現像装置2と、露光装置3と、プラズマ処理装置10と、制御装置100とを備える。露光装置3は、ウェハW(基板)上に形成されたレジスト膜(感光性被膜)を露光する装置である。具体的には、露光装置3は、液浸露光等の方法によりレジスト膜の露光対象部分に露光用のエネルギー線を照射する。塗布・現像装置2は、露光装置3による露光処理の前に、ウェハW(基板)の表面にレジスト(薬液)を塗布してレジスト膜を形成する処理を行う。また、塗布・現像装置2は、露光処理後にレジスト膜の現像処理を行う。プラズマ処理装置10は、レジスト膜の現像処理後に、ウェハWの表面Wa(
図3参照)にプラズマを用いたエッチング処理を施す。例えば、プラズマ処理装置10は、レジスト膜の現像処理が行われることで形成されたレジストパターンをマスクとして、ウェハWのエッチング処理を行う。
【0010】
(塗布・現像装置)
図1及び
図2に示されるように、塗布・現像装置2(基板処理装置)は、キャリアブロック4と、処理ブロック5と、インタフェースブロック6とを備える。
【0011】
キャリアブロック4は、塗布・現像装置2内へのウェハWの導入及び塗布・現像装置2内からのウェハWの導出を行う。例えばキャリアブロック4は、ウェハW用の複数のキャリアCを支持可能であり、受け渡しアームを含む搬送装置A1を内蔵している。キャリアCは、例えば円形の複数枚のウェハWを収容する。搬送装置A1は、キャリアCからウェハWを取り出して処理ブロック5に渡し、処理ブロック5からウェハWを受け取ってキャリアC内に戻す。処理ブロック5は、複数の処理モジュール11,12,13,14を有する。
【0012】
処理モジュール11は、塗布ユニットU1と、熱処理ユニットU2と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール11は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりウェハWの表面上に下層膜を形成する。塗布ユニットU1は、下層膜形成用の処理液をウェハW上に塗布する。熱処理ユニットU2は、下層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0013】
処理モジュール12は、塗布ユニットU1と、熱処理ユニットU2と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール12は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2により下層膜上にレジスト膜を形成する。塗布ユニットU1は、レジスト膜形成用の処理液として、レジストを下層膜の上に塗布する。熱処理ユニットU2は、レジスト膜の形成に伴う各種熱処理を行う。これにより、ウェハWの表面にレジスト膜が形成される。
【0014】
処理モジュール13は、塗布ユニットU1と、熱処理ユニットU2と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール13は、塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2によりレジスト膜上に上層膜を形成する。塗布ユニットU1は、上層膜形成用の処理液をレジスト膜の上に塗布する。熱処理ユニットU2は、上層膜の形成に伴う各種熱処理を行う。
【0015】
処理モジュール14は、現像ユニットU3と、熱処理ユニットU4と、照射ユニットU5と、これらのユニットにウェハWを搬送する搬送装置A3とを内蔵している。処理モジュール14は、現像ユニットU3、熱処理ユニットU4、及び照射ユニットU5により、露光後のレジスト膜の現像処理を含む一連の処理を行う。現像ユニットU3は、露光済みのウェハWの表面上に現像液を塗布する(供給する)ことによって、レジスト膜を部分的に除去する(現像処理を行う)。換言すると、現像ユニットU3は、ウェハWの表面に凹凸パターンであるレジストパターンを形成する。現像ユニットU3は、現像液を洗い流すためにウェハWの表面にリンス液を供給する。また、現像ユニットU3は、レジストパターンの凹部内のリンス液を処理液に置き換えた後に、当該凹部内に補強材を形成する(
図9(b)参照)。熱処理ユニットU4は、現像処理に伴う各種熱処理を行う。現像処理に伴う熱処理の具体例としては、現像処理前の加熱処理(PEB:Post Exposure Bake)、現像処理後の加熱処理(PB:Post Bake)等が挙げられる。照射ユニットU5は、ウェハWの表面にエネルギー線を照射する機能を有しており、リンス液を除去するための処理の一部を行う。
【0016】
処理ブロック5内におけるキャリアブロック4側には棚ユニットU10が設けられている。棚ユニットU10は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。棚ユニットU10の近傍には昇降アームを含む搬送装置A7が設けられている。搬送装置A7は、棚ユニットU10のセル同士の間でウェハWを昇降させる。
【0017】
処理ブロック5内におけるインタフェースブロック6側には棚ユニットU11が設けられている。棚ユニットU11は、上下方向に並ぶ複数のセルに区画されている。
【0018】
インタフェースブロック6は、露光装置3との間でウェハWの受け渡しを行う。例えばインタフェースブロック6は、受け渡しアームを含む搬送装置A8を内蔵しており、露光装置3に接続される。搬送装置A8は、棚ユニットU11に配置されたウェハWを露光装置3に渡す。搬送装置A8は、露光装置3からウェハWを受け取って棚ユニットU11に戻す。
【0019】
(現像ユニット)
続いて、
図3を参照して、現像ユニットU3の一例について説明する。
図3に示されるように、現像ユニットU3は、回転保持部20と、液供給部30a,30b,30c(3つの液供給部)とを備える。
【0020】
回転保持部20は、回転駆動部21と、シャフト22と、保持部23とを有する。回転駆動部21は、制御装置100からの動作信号に基づいて動作し、シャフト22を回転させる。回転駆動部21は、例えば電動モータ等の動力源を内蔵している。保持部23は、シャフト22の先端部に設けられている。保持部23上にはウェハWが配置される。保持部23は、例えば吸着等によりウェハWを略水平に保持する。この場合、回転保持部20は、ウェハWの姿勢が略水平の状態で、ウェハWの表面Waに対して垂直な中心軸(回転軸)周りでウェハWを回転させる。
図3の例では、回転保持部20は、上方から見て反時計回りにウェハWを所定の回転数で回転させる。
【0021】
液供給部30aは、ウェハWの表面Waに現像液L1を供給する。現像液L1は、レジスト膜Rに現像処理を施してレジストパターンを形成するための薬液である。例えば、レジスト膜Rに現像液L1が供給されることで、レジスト膜Rのうちの露光用のエネルギー線が照射した部分(露光処理において露光された領域)が反応して当該部分が除去される。つまり、ネガ型のレジストパターン(レジスト材料)が用いられてもよい。露光された領域を除去する現像液L1として、例えば有機溶剤が挙げられる。なお、レジスト膜Rに現像液L1が供給されることで、レジスト膜Rのうちの露光用のエネルギー線が照射していない部分(露光処理において露光されていない領域)が反応して当該部分が除去されてもよい。つまり、ポジ型のレジストパターン(レジスト材料)が用いられてもよい。露光されていない領域を除去する現像液L1として、例えばアルカリ溶液が挙げられる。
【0022】
液供給部30bは、ウェハWの表面Wa(レジストパターンが形成されたレジスト膜R)にリンス液L2を供給する。リンス液L2は、現像液L1を洗い流すことが可能な薬液(液体)であればよい。例えばリンス液L2は、水(純水)であってもよい。液供給部30a及び液供給部30bは、レジスト膜Rの現像処理を行う現像処理部を構成する。
【0023】
液供給部30c(置換処理部)は、ウェハWの表面Waに処理液L3を供給する。処理液L3は、レジストパターンの凹部内に補強材を形成するための薬液である。処理液L3は、液体状態でウェハWに供給することができ、所定の処理(例えばウェハWの回転)により乾燥して固化する薬液であってもよい。例えば処理液L3は、ポリマーを溶媒に溶かした薬液であってもよい。ポリマーは、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコール、紫外線硬化樹脂(UV硬化樹脂)、及びポリメタクリル酸メチル(polymethylmethacrylate:PMMA)のうちの少なくとも1つを含有していてもよい。ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、又はポリビニルアルコールが用いられる場合、溶媒として水が用いられてもよい。ポリメタクリル酸メチルが用いられる場合、溶媒としてアセトン、イソプロピルアルコール(IPA)、メチルアルコール、エチルアルコール、キシレン、酢酸、メチルイソブチルケトン (methyl isobutyl ketone:MIBK)、メ
チルイソブチルカルビノール(methyl isobutyl carbinol:MIBC)、酢酸ブチル、又はプロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート(Propylene glycol methyl ether acetate:PGMEA)が用いられてもよい。
【0024】
液供給部30a,30b,30cそれぞれは、液源31と、バルブ33と、ノズル34と、配管35とを備える。液供給部30a,30b,30cの液源31は、バルブ33及び配管35を介してノズル34に薬液をそれぞれ供給する。液供給部30a,30b,30cのノズル34は、吐出口がウェハWの表面Waに向くようにウェハWの上方にそれぞれ配置されている。ノズル34は、ウェハWの表面Waに向けて液源31から供給される薬液を吐出する。配管35は、液源31とノズル34との間を接続している。バルブ33は、配管35内の流路を開状態と閉状態とに切り替える。なお、現像ユニットU3は、ノズル34を水平方向に往復移動させる駆動機構(不図示)を備えていてもよい。
【0025】
詳細構成の図は省略しているが、熱処理ユニットU4は、ウェハWに対する熱処理が可能な構成を有している。例えば、熱処理ユニットU4は、熱処理を行う処理空間を形成する開閉可能なチャンバーと、チャンバー内に収容され、ウェハWを支持しつつ加熱する熱板とを備える。上記チャンバーは、制御装置100の指示に応じて開閉する。上記熱板は、例えばヒータを内蔵しており、制御装置100によって熱板の温度が制御される。
【0026】
(照射ユニット)
続いて、
図4を参照して、照射ユニットU5の一例について説明する。
図4に示されるように、照射ユニットU5は照射部42(低分子化処理部)を備える。
【0027】
照射部42は、ウェハWの表面Wa(補強材)にエネルギー線を照射する。エネルギー線としては、例えば電子線等の粒子線、又は電磁波が用いられてもよい。照射部42は、その照射によって補強材に含有している分子間の結合数を減少させることが可能であれば、どのようなエネルギー線を照射してもよい。例えば、照射部42は、補強材に含まれるポリマーの重合度を減少させることが可能なエネルギー線を照射してもよい。エネルギー線の具体例としては、波長が100nm~400nmである紫外線が挙げられる。エネルギー線の波長は、170nm~180nmであってもよい。なお、エネルギー線の波長は上記の値に限定されるものではなく、例えば補強材の種別等に応じて使用するエネルギー線の波長が選択されてもよい。
【0028】
照射ユニットU5は、水平に支持したウェハWの表面Waに対して、照射部42により上方から紫外線を出射する。例えば、照射部42は、紫外線を出射する光源を有している。光源の具体例としては、波長172nmの紫外線を出射するフッ化クリプトンエキシマ光源、波長193nmの紫外線を出射するフッ化アルゴンエキシマ光源、及び波長222nmの紫外線を出射するクリプトンクロライドエキシマ光源等が挙げられる。照射部42は、光源から出射されたエネルギー線をウェハWに向けて下方に出射するように構成されている。
【0029】
(プラズマ処理装置)
続いて、
図5を参照して、プラズマ処理装置10の一例について説明する。プラズマ処理装置10は、レジストパターンをマスクとしてウェハWに対してプラズマ処理を施す。換言すると、プラズマ処理装置10は、プラズマを用いたエッチング処理をウェハWに対して施すことで、ウェハWの一部をエッチングする。また、プラズマ処理装置10は、レジストパターンの凹部に形成された補強材に対してプラズマを用いたエッチング処理を施してもよい。なお、本明細書における「プラズマ処理を施す」又は「プラズマを用いたエッチング処理を施す」とは、プラズマ状態となったガスに、少なくともウェハWの表面Waを所定時間さらすことをいう。
【0030】
プラズマ処理装置10は、搬送機構19を介して塗布・現像装置2に接続されている(
図2参照)。搬送機構19は、塗布・現像装置2とプラズマ処理装置10との間でウェハWを搬送する。プラズマ処理装置10は、例えば平行平板型の装置である。
図5に示されるように、プラズマ処理装置10は、処理部60と、電源部80と、排気部90とを備える。処理部60は、処理容器68と、静電チャック61と、サセプタ63と、支持台64と、上部電極73とを備える。
【0031】
処理容器68は、導電性を有しており、略円筒状に形成されている。処理容器68には、接地線69が電気的に接続されており、処理容器68は接地されている。静電チャック61及びサセプタ63は、処理容器68内に設けられ、処理対象のウェハWを支持する。静電チャック61は、略円板状の部材であり、例えば一対のセラミックの間に静電チャック用の電極を挟みこんで形成されている。サセプタ63は、下部電極として機能し、静電チャック61の下面に設けられている。サセプタ63は、例えばアルミニウム等の金属により略円板状に形成されている。処理容器68の底部には支持台64が設けられ、サセプタ63は、この支持台64の上面に支持されている。静電チャック61の内部には電極(図示せず)が設けられており、当該電極に直流電圧を印加することにより生じる静電気力でウェハWが静電チャック61に吸着保持される。支持台64の内部には、冷媒が流れる冷媒流路(図示せず)が設けられており、冷媒の温度を制御することにより、静電チャック61によって保持されているウェハWの温度が制御される。
【0032】
電源部80は、高周波電源81,83と、整合器82,84とを備える。サセプタ63には、プラズマを生成するための高周波電源81が、整合器82を介して電気的に接続されている。高周波電源81は、例えば27MHz~100MHzの周波数の高周波電力を出力するように構成されている。また、高周波電源81の内部インピーダンスと負荷インピーダンスは、整合器82によりマッチングされる。
【0033】
ウェハWにバイアスを印加することでウェハWにイオンを引き込むために、サセプタ63には、高周波電源83が整合器84を介して電気的に接続されている。高周波電源83は、例えば400kHz~13.56MHzの周波数の高周波電力を出力するように構成されている。整合器84は、整合器82と同様に、高周波電源83の内部インピーダンスと負荷インピーダンスをマッチングさせるものである。高周波電源81,83、及び整合器82,84の動作は、制御装置100により制御される。
【0034】
処理容器68の上部には、上部電極73が配置されている。上部電極73は、サセプタ63と対向するように設けられている。上部電極73は、処理容器68の上部に支持されており、処理容器68を介して接地されている。上部電極73内部の中央部には、略円板状に形成されたガス拡散室76が形成されている。上部電極73の下部には、処理容器68の内部に処理ガスを供給する複数のガス吐出孔77が、上部電極73の下部を貫通するように形成されている。
【0035】
ガス拡散室76には、ガス供給管78が接続されている。ガス供給管78には、
図5に示すようにガス供給源79が接続されており、ガス供給源79は、ガス供給管78を介してガス拡散室76に処理ガスを供給する。ガス拡散室76に供給された処理ガスは、ガス吐出孔77を通じて処理容器68内に導入される。ガス供給源79から供給される処理ガスは、不活性ガスを含んでいてもよい。不活性ガスとして、希ガス(例えばアルゴンガス)又は窒素ガスが用いられてもよい。
【0036】
処理容器68の下方には、排気部90が配置されている。排気部90は、排気口91と、排気室92と、排気管93と、排気装置94とを備える。処理容器68の底面には排気口91が設けられている。排気口91の下方には、排気室92が形成されており、当該排気室92には排気管93を介して排気装置94が接続されている。排気装置94(例えば排気ポンプ)を駆動することにより、排気口91を介して処理容器68内を排気し、処理容器68内を所定の真空度まで減圧することができる。
【0037】
(制御装置)
続いて、制御装置100の具体的な構成を例示する。制御装置100は、基板処理システム1を部分的又は全体的に制御する。制御装置100は、表面Waに凹凸パターンが形成されているウェハWの凹部202内の液体を、固体状態の補強材220aに置き換えることと、補強材220aを固体状態に維持しつつ、補強材220aに含まれる分子間の結合数を減少させる低分子化処理をウェハWに対して施すこととを実行するように構成されている。なお、本明細書における「固体状態」とは、処理液L3等の薬液に含まれる溶媒が揮発した後に薬液内の主成分が流動しなくなる程度に固化した状態をいう。
【0038】
図6に示されるように、制御装置100は、機能上の構成(以下、「機能モジュール」という。)として、熱処理制御部101と、現像制御部102と、低分子化制御部103と、エッチング制御部104とを備える。熱処理制御部101は、熱処理ユニットU4を制御する。現像制御部102は、現像ユニットU3内の液供給部30a,30b,30cそれぞれのバルブ33及び回転駆動部21を制御する。低分子化制御部103は、照射ユニットU5内の照射部42を制御する。エッチング制御部104は、プラズマ処理装置10内の排気装置94及び高周波電源81,83を制御する。熱処理制御部101、現像制御部102、低分子化制御部103、及びエッチング制御部104が実行する処理は、制御装置100が実行する処理に相当する。各機能モジュールが実行する処理内容の詳細については後述する。
【0039】
制御装置100は、一つ又は複数の制御用コンピュータにより構成される。例えば制御装置100は、
図7に示される回路120を有する。回路120は、一つ又は複数のプロセッサ121と、メモリ122と、ストレージ123と、入出力ポート124とを有する。ストレージ123は、例えばハードディスク等、コンピュータによって読み取り可能な記憶媒体を有する。記憶媒体は、後述の基板処理手順を制御装置100に実行させるためのプログラムを記憶している。記憶媒体は、不揮発性の半導体メモリ、磁気ディスク及び光ディスク等の取り出し可能な媒体であってもよい。メモリ122は、ストレージ123の記憶媒体からロードしたプログラム及びプロセッサ121による演算結果を一時的に記憶する。プロセッサ121は、メモリ122と協働して上記プログラムを実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。入出力ポート124は、プロセッサ121からの指令に従って、制御対象の部材との間で電気信号の入出力を行う。
【0040】
制御装置100が複数の制御用コンピュータで構成される場合、熱処理制御部101、現像制御部102、低分子化制御部103、及びエッチング制御部104がそれぞれ、個別の制御用コンピュータによって実現されていてもよい。あるいは、これらの各機能モジュールがそれぞれ、2つ以上の制御用コンピュータの組み合わせによって実現されていてもよい。これらの場合、複数の制御用コンピュータは、互いに通信可能に接続された状態で、後述する基板処理手順を連携して実行してもよい。なお、制御装置100のハードウェア構成は、必ずしもプログラムにより各機能モジュールを構成するものに限られない。例えば制御装置100の各機能モジュールは、専用の論理回路又はこれを集積したASIC(Application Specific Integrated Circuit)により構成されていてもよい。
【0041】
[基板処理手順]
続いて、基板処理方法の一例として、基板処理システム1において実行される基板処理手順を説明する。制御装置100は、例えば以下の手順で塗布・現像処理を含む基板処理を実行するように基板処理システム1を制御する。まず制御装置100は、キャリアC内のウェハWを棚ユニットU10に搬送するように搬送装置A1を制御し、このウェハWを処理モジュール11用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0042】
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール11内の塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このウェハWの表面Wa上に下層膜を形成するように塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、下層膜が形成されたウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このウェハWを処理モジュール12用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0043】
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール12内の塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2に搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このウェハWの下層膜上にレジスト膜Rを形成するように塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、ウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このウェハWを処理モジュール13用のセルに配置するように搬送装置A7を制御する。
【0044】
次に制御装置100は、棚ユニットU10のウェハWを処理モジュール13内の各ユニットに搬送するように搬送装置A3を制御する。また、制御装置100は、このウェハWのレジスト膜R上に上層膜を形成するように塗布ユニットU1及び熱処理ユニットU2を制御する。その後制御装置100は、ウェハWを棚ユニットU11に搬送するように搬送装置A3を制御する。
【0045】
次に制御装置100は、棚ユニットU11に収容されたウェハWを露光装置3に送り出すように搬送装置A8を制御する。そして、露光装置3において、ウェハWに形成されたレジスト膜Rに露光処理が施される。その後制御装置100は、露光処理が施されたウェハWを露光装置3から受け入れて、当該ウェハWを棚ユニットU11における処理モジュール14用のセルに配置するように搬送装置A8を制御する。
【0046】
次に制御装置100は、棚ユニットU11のウェハWを処理モジュール14の熱処理ユニットU4に搬送するように搬送装置A3を制御する。そして、制御装置100は、現像処理に伴う熱処理、及び現像処理を含む一連の処理手順(以下、「現像処理手順」という。)を実行するように制御を行う。この現像処理手順の詳細は後述する。現像処理手順が実行されることで、ウェハWの表面Waにレジストパターンが形成される。その後、制御装置100は、レジストパターンをマスクとしてウェハWに対してプラズマを用いたエッチング処理を施すようにプラズマ処理装置10を制御する。以上で塗布・現像処理を含む基板処理が完了する。
【0047】
(現像処理手順)
続いて、
図8~
図10を参照して、現像処理手順の一例について説明する。
図8は、現像処理手順の一例を示すフローチャートである。まず、制御装置100は、ステップS01を実行する。ステップS01では、熱処理制御部101が、露光処理が施されたウェハWに、所定の温度にて所定時間の熱処理を施すように熱処理ユニットU4を制御する。そして、制御装置100は、現像前の熱処理が施されたウェハWを現像ユニットU3に搬送するように搬送装置A3を制御する。
【0048】
次に、制御装置100は、ステップS02を実行する。ステップS02では、現像制御部102が、ウェハWの表面Waに形成されているレジスト膜Rに現像液L1を供給するように現像ユニットU3を制御する。例えば、現像制御部102は、所定回転数にてウェハWが回転するように回転駆動部21を制御しつつ、液供給部30aのバルブ33を開状態とすることでノズル34から現像液L1を吐出させる。これにより、レジスト膜Rの現像処理が行われ、複数の凸部201と複数の凹部202とを有するレジストパターン200がウェハWの表面Waに形成される(
図9(a)参照)。なお、レジスト膜Rのうちの除去されなかった部分(例えば露光処理時に感光されなかった部分)が凸部201となり、レジスト膜Rのうちの除去された部分(互いに隣り合う凸部201同士の間の空間)が凹部202となる。
【0049】
次に、制御装置100は、ステップS03を実行する。ステップS03では、現像制御部102が、ウェハWの表面Waにリンス液L2を供給するように現像ユニットU3を制御する。例えば、現像制御部102は、所定回転数にてウェハWが回転するように回転駆動部21を制御しつつ、液供給部30bのバルブ33を開状態とすることでノズル34からリンス液L2を吐出させる。
図9(a)に示されるように、現像制御部102は、吐出されたリンス液L2の一部(リンス液210)がウェハWの表面Wa上に残る程度にウェハWの回転を回転駆動部21に継続させるか、ウェハWの回転を停止させる。この際、
図9(a)の例のように、各凹部202内がリンス液210で全て満たされていてもよい。つまり、リンス液210の高さ(リンス液210の上面と表面Waとの間の最短距離)が、凸部201の高さ以上であってもよい。なお、リンス液210の高さは
図9(a)の例に限定されるものではなく、凹部202内の少なくとも一部がリンス液210で満たされていればよい。
【0050】
次に、制御装置100は、ステップS04を実行する。ステップS04では、現像制御部102が、表面Wa上にリンス液210が残るウェハWに処理液L3を供給するように現像ユニットU3を制御する。具体的には、現像制御部102は、複数の凹部202内それぞれにリンス液210が残っている状態(例えば略全ての凹部202内にリンス液210が残っている状態)で、ウェハWの表面Waに対する処理液L3の供給を現像ユニットU3に開始させる。例えば、現像制御部102は、所定回転数にてウェハWが回転するように回転駆動部21を制御しつつ、液供給部30cのバルブ33を開状態とすることでノズル34からの処理液L3の吐出を現像ユニットU3に開始させる。その後、現像制御部102は、ウェハWの回転、及びウェハWの表面Waに対する処理液L3の供給を所定時間だけ現像ユニットU3に継続させる。これにより、表面Wa上のリンス液210がウェハW外に押し出され、リンス液210が処理液L3に置き換えられる。例えば置換後には、凹部202内が液体(処理液L3の一部)で全て満たされていてもよい。なお、凹部202内の少なくとも一部が処理液L3で満たされていればよい。
【0051】
次に、制御装置100は、ステップS05を実行する。ステップS05では、現像制御部102が、凹部202内を埋めている処理液L3を乾燥させるように現像ユニットU3を制御する。例えば、現像制御部102は、液体状態である処理液L3が固体状態となるまで、回転駆動部21を制御してウェハWを回転させる。これにより、
図9(b)に示されるように、凹部202内に固体状態の補強材220aが形成される。例えば処理液L3がポリマーを含んでいる場合、ウェハWを回転乾燥させることで、処理液L3に含まれる溶媒が揮発し、溶媒中に分散していた多数のポリマーが絡み合う。これにより、凹部202内に固体状態の補強材220aが形成される。以上のように、現像ユニットU3の液供給部30cと回転保持部20とは置換処理部を構成する。
【0052】
ステップS04,S05が実行されることで、凹部202内のリンス液210が、固体状態である補強材220aに置き換えられる。この際、
図9(b)の例のように、凹部202内のほぼ全ての空間を埋めるように、凹部202内に補強材220aが形成されてもよい。一例として、補強材220aの高さが凸部201の高さに略等しくなる程度に、凹部202内に補強材220aが形成されてもよい。なお、補強材220aの高さは
図9(b)の例に限定されるものではなく、凹部202内の少なくとも一部が補強材220aで満たされていればよい。また、補強材220aは、凸部201の高さ(凹部202の深さ)を超える高さで形成されていてもよい。ステップS05の実行後、制御装置100は、凹部202内に補強材220aが形成されているウェハWを、照射ユニットU5に搬送するように搬送装置A3を制御する。
【0053】
次に、制御装置100は、ステップS06を実行する。ステップS06では、低分子化制御部103が、補強材220aにエネルギー線を照射するように照射ユニットU5を制御する。例えば、低分子化制御部103は、ウェハWの表面Wa全体にエネルギー線を照射するように照射部42を制御する。エネルギー線の種類は、処理液L3の種類(補強材220aに含まれるポリマーの種類)によって定められてもよい。補強材220aにエネルギー線が照射されることにより、補強材220aが固体状態に維持されたまま(補強材220aが液体状態となることなく)、補強材220aに含まれる分子間の結合数が減少する。例えば補強材220aがポリマーを含む場合、ポリマーの重合度が減少する。一例としては、補強材220aに含まれる各ポリマーが、当該ポリマーの重合度(例えば、数千~数万)よりも少ない重合度(例えば数十~数百)を有する複数のポリマーに分解されてもよい。なお、補強材220aに含まれる各ポリマーが、構成単位が1個である複数のモノマー、構成単位が2個である複数のダイマー、又は構成単位が3個である複数のトリマーに分解されてもよい。
【0054】
このように、低分子化制御部103は、補強材220aにエネルギー線を照射させることで、補強材220aを固体状態に維持しつつ、補強材220aに含まれる分子間の結合数(例えばポリマーの重合度)を減少させる低分子化処理をウェハWに施す。これにより、
図9(c)に示されるように、低分子化処理が施された補強材220a(以下、「補強材220b」という。)が凹部202に形成される。低分子化制御部103は、低分子化処理を施す際には、レジストパターン200(凸部201)よりも補強材220bが昇華しやすいレベル(昇華しやすくなるレベル)まで、補強材220aに含まれる分子間の結合数を減少させてもよい。
【0055】
ここで、本明細書における「昇華」とは、補強材220bが固体状態から液体状態を経ずに気体状態に遷移することをいう。この「昇華」には、固体状態から気体状態への状態変化(固相から気相への変化)に加え、補強材220bが化学変化を伴って固体状態から気体状態に遷移することも含む。例えば、化学変化を伴って固体状態から気体状態に遷移することには、補強材220bに対してプラズマを用いたエッチング処理を施すことで、補強材220bがエッチングされることを含む。ここでの「昇華しやすさ」は、補強材220bを昇華させるための環境下における昇華しやすさ(例えば単位時間あたりの昇華する量)を意味する。例えば、レジストパターン200よりも補強材220bが昇華しやすい状態とは、補強材220bをエッチングするためのプラズマ処理の条件下において、レジストパターン200に比べて、補強材220bがよりエッチングされる状態である。
【0056】
図10には、ポリメタクリル酸メチルを含有するポリマーが処理液L3に含まれる場合のポリマー内の結合数(重合度)の変化の様子が例示されている。補強材220aに含まれる各ポリマーの重合度が「L+M+N+・・・」(L,M,Nは正の整数)で示されている。照射ユニットU5において補強材220aにエネルギー線が照射することで、モノマー間を結合する主鎖である「C-CH2」結合のいくつかが切れる。この結果、補強材220bでは、モノマーの構成単位が「L」である化合物(例えば重合度が「L」であるポリマー)、モノマーの構成単位が「M」である化合物、及びモノマーの構成単位が「N」である化合物等が形成される。例えば、エネルギー線の照射により重合度が減少した複数のポリマーが形成される場合、重合度が減少することで、物質が安定した状態から、より昇華されやすい性質へと変化する。
【0057】
ステップS06の実行後、制御装置100は、補強材220bが形成されたウェハWを熱処理ユニットU4に搬送するように搬送装置A3を制御する。そして、制御装置100は、ステップS07を実行する。ステップS07では、熱処理制御部101が、現像液L1の供給による現像処理が施されたウェハWに、所定の温度にて所定時間の熱処理を施すように熱処理ユニットU4を制御する。そして、制御装置100は、現像後の熱処理が施されたウェハWを棚ユニットU10に戻すように搬送装置A3を制御し、このウェハWをキャリアC内に戻すように搬送装置A7及び搬送装置A1を制御する。その後、制御装置100は、キャリアC内のウェハWをプラズマ処理装置10に搬送するように搬送機構19を制御する。
【0058】
次に、制御装置100は、ステップS08を実行する。ステップS08では、エッチング制御部104が、補強材220bにプラズマを用いたエッチング処理を施すようにプラズマ処理装置10を制御する。ステップS08では、まず、レジストパターン200が形成されている表面Waが上方を向くように、プラズマ処理装置10の静電チャック61にウェハWが載置される。そして、エッチング制御部104は、ガス供給源79から処理容器68内にプラズマ生成用の処理ガスが供給されるように、プラズマ処理装置10を制御する。処理ガスは、例えば処理液L3に含まれるポリマーの種類に応じて定められてもよい。その後、エッチング制御部104は、高周波電源81と高周波電源83とにより、下部電極であるサセプタ63に高周波電力が連続的に印加されるように、電源部80を制御する。これにより、上部電極73と静電チャック61との間において、高周波電界が形成される。
【0059】
高周波電界が形成されることで、処理容器68内に処理ガスのプラズマが発生し、当該プラズマにより補強材220bに対してエッチング処理が施される。この際、補強材220aに対して低分子化処理が施されて補強材220bが形成されているので、レジストパターン200よりも補強材220bが昇華しやすい状態となっている。このため、レジストパターン200(凸部201)はエッチングされずに、補強材220bがエッチングされる。これにより、
図9(d)に示されるように、凹部202内の補強材220bが昇華して除去される。このように、プラズマ処理装置10は、低分子化処理が施された補強材(補強材220b)を昇華させて除去する除去部を構成する。以上により、一連の現像処理手順が終了する。
【0060】
ステップS04~ステップS08の処理を行うことで、ウェハWの表面Wa上からリンス液210が除去される。この現像処理手順では、ウェハWの表面Wa上に吐出されたリンス液210が補強材220a(補強材220b)に一度置き換えられ、補強材220bがエッチングにより除去される(昇華する)ことで、ウェハWの表面Wa上からリンス液210が除去される。凹部202内の状態を見ると、液体(リンス液210)が入った状態から固体(補強材220a,220b)が入った状態に遷移した後に、固体が入った状態から気体(大気等)が入った状態に遷移している。
【0061】
[実施形態の効果]
以上説明した本実施形態に係る基板処理方法は、表面Waに凹凸パターンが形成されているウェハWの凹部202内の液体を、固体状態の補強材220aに置き換えることと、補強材220aを固体状態に維持しつつ、補強材220aに含まれる分子間の結合数を減少させる低分子化処理をウェハWに対して施すことと、を含む。
【0062】
基板処理システム1は、表面Waに凹凸パターンが形成されているウェハWの凹部202内の液体を、固体状態の補強材220aに置き換える置換処理部と、補強材220aを固体状態に維持しつつ、補強材220aに含まれる分子間の結合数を減少させる低分子化処理をウェハWに対して施す低分子化処理部と、を備える。
【0063】
この基板処理方法及び基板処理システム1では、凹凸パターンの凹部202内の液体が固体状態の補強材220aに置き換えられ、その補強材220aに低分化処理が施される。補強材220aを低分子化することで、凹凸パターンを残したまま、補強材220a(補強材220b)を除去することができ得るウェハWが形成される。補強材220bを除去することで凹部202内から物質が除去されるので、リンス液210等の液体が凹部202から除去される。
【0064】
リンス液210等の液体を凹部内から除去(乾燥)する際に、ウェハWを所定の回転数で回転させて遠心力によって液体を振り切って除去することが行われている。この場合、凹部202内は、液体(リンス液)が入った状態から気体(大気)が入った状態へと遷移する。この遷移する過程において、複数の凹部202のうちの一部の凹部に液体が残ることで表面張力によりパターン(凸部201)が倒れてしまうおそれがある。本実施形態の基板処理方法及び基板処理システム1では、液体が入った状態から気体が入った状態への遷移が凹部202内で行われないので、凹凸パターンの一部の凹部に液体が残ることに起因するパターン倒れが発生し難い。すなわち、この基板処理方法及び基板処理システム1は、パターン倒れの抑制に有効である。
【0065】
以上の実施形態では、低分子化処理を施す際には、凹凸パターンよりも補強材220bが昇華しやすいレベルまで、補強材220aに含まれる分子間の結合数を減少させている。この場合、凹凸パターンを残したまま、補強材220bをより確実に除去し得るウェハWが形成される。
【0066】
以上の実施形態に係る基板処理方法は、低分子化処理が施された補強材(補強材220b)を昇華させて除去することを更に含む。補強材220bは、低分子化処理が施されているので、凹凸パターンよりも昇華されやすい。このため、凹凸パターンを残して、補強材220bを昇華させて除去することができる。この方法では、凹部202内の液体を除去する(乾燥させる)際に、凹部202内の物質が液体、固体、及び気体とこの順に遷移するので、凹部202内に液体が入った状態から気体が入った状態に遷移することに起因するパターン倒れを抑制することが可能となる。
【0067】
以上の実施形態では、補強材220bを昇華させて除去することは、補強材220bに対してプラズマを用いたエッチング処理を施すことを含む。この場合、補強材220bは低分子化処理が施されているので、凹凸パターンを残したまま、プラズマを用いたエッチング処理により固体状態の補強材220bを昇華させることができる。補強材220bに対するプラズマを用いたエッチング処理は、プラズマ処理装置10によって行われる。このため、レジストパターン200をマスクとしたウェハWに対するエッチング処理だけでなく、補強材220bに対するエッチング処理にもプラズマ処理装置10を活用できるので、基板処理システム1の構成の簡素化が図られる。
【0068】
以上の実施形態では、補強材220aに置き換えることは、ウェハWの表面Waに処理液L3を供給することで、凹部202内の液体を当該処理液L3に置き換えることと、処理液L3を乾燥させて凹部202内に補強材220aを形成することとを含む。この場合、凹部202内の状態を液体が入った状態から固体が入った状態に遷移させることが容易である。
【0069】
以上の実施形態では、凹凸パターンは、複数の凹部202を含む。ウェハWの表面Waに処理液L3を供給することは、複数の凹部202内それぞれに液体が残っている状態で、ウェハWの表面Waに対する処理液L3の供給を開始することを含む。この場合、複数の凹部202の一部に液体が残る可能性が低減され、凹部202内の液体(例えば、リンス液210)から処理液L3への置き換えに起因したパターン倒れが抑制される。
【0070】
以上の実施形態では、補強材220a(処理液L3)は、ポリアクリル酸メチル、ポリメタクリル酸、ポリビニルアルコール、紫外線硬化樹脂、及びポリメタクリル酸メチルのうちの少なくとも一つを含有するポリマーを含む。この場合、補強材220bに含まれるポリマーの重合度が、補強材220aに含まれるポリマーの重合度よりも減少する。重合度が減少することで物質は反応しやすい状態となるので、凹凸パターンが反応しない条件にて、補強材220aを反応(昇華)させて除去することが可能となる。
【0071】
重合度が小さく反応しやすいポリマーを含む処理液を供給することも考えられるが、このような処理液は不安定な状態であり、供給前及び供給後を含めて当該処理液の取扱いが困難である。上記実施形態では、重合度が大きいポリマー(例えば重合度が数千~数万)から重合度が小さいポリマー(例えば重合度が数十から数百)に分解することで、供給時の処理液の取扱いが容易となる。また、処理液を乾燥させる際に、重合度が大きいポリマー同士が絡まって固体状態の補強材220aが形成されるので、凹部202内の物質を液体から固体に遷移させることが容易である。なお、処理液に含有される物質の種類によっては、凸部201の表面に薄膜が形成され、レジストパターン200の粗さを低減できる可能性もある。
【0072】
以上、一実施形態について説明したが、本開示は必ずしも上述した実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で様々な変更が可能である。
【0073】
(変形例1)
低分子化処理において、エネルギー線に加えて熱エネルギーがウェハWに付与されてもよい。制御装置100は、ステップS06の処理において、エネルギー線の照射に加えて、補強材220aに熱エネルギーを与えることで、補強材220aに低分子化処理を施してもよい。例えば、低分子化制御部103は、照射ユニットU5において、ウェハWを後述の熱板43上に載置させて当該ウェハWを加熱することによって、補強材220aに熱エネルギーを与えてもよい。この場合、照射ユニットU5は加熱部41(低分子化処理部)を更に備えていてもよい(
図4参照)。
【0074】
加熱部41は、レジストパターン200の凹部202内に形成された補強材220aを加熱する。補強材220aの加熱に伴って、レジストパターン200(凸部201)も加熱される。例えば加熱部41は、熱板43と、昇降機構44とを有する。熱板43は水平に配置されたウェハWを支持し、そのウェハWを加熱するための板状の加熱要素である。例えば熱板43は、熱源として複数のヒータを内蔵している。ヒータの具体例としては、電熱線式のヒータ等が挙げられる。
【0075】
昇降機構44は、熱板43の上においてウェハWを昇降させる。例えば昇降機構44は、複数(例えば3本)の昇降ピン45と昇降駆動部46とを有する。複数の昇降ピン45は、熱板43を貫通するように上方に突出している。昇降駆動部46は複数の昇降ピン45を昇降させ、その先端部を熱板43の上部に出没させる。これにより、熱板43上においてウェハWを昇降させることが可能となっている。
【0076】
低分子化制御部103は、昇降駆動部46により昇降ピン45を下降させた状態で、熱板43によりウェハWを加熱するように加熱部41を制御してもよい。また、低分子化制御部103は、昇降駆動部46を駆動することでウェハWを上昇させた状態(照射部42に近づけた状態)で、表面Waへエネルギー線を照射するように照射部42を制御してもよい。なお、加熱部41及び照射部42は、必ずしも一つのユニットとして構成されていなくてよく、互いに独立したユニットとして構成されていてもよい。
【0077】
(変形例2)
低分子化処理において、エネルギー線に代えて、熱エネルギーがウェハWに付与されてもよい。制御装置100(低分子化制御部103)は、ウェハWに対してエネルギー線の照射に代えて、熱エネルギーの付与を行うことで、補強材220aに対して低分子化処理を施してもよい。この場合、照射ユニットU5において照射部42が省略されてもよい。あるいは、制御装置100は、上記の照射ユニットU5に代えて熱処理ユニットU4において補強材220aに熱エネルギーを与えることで、低分子化処理を行ってもよい。なお、制御装置100は、現像後の熱処理と低分子化処理とを並行して行うように熱処理ユニットU4を制御してもよい。
【0078】
ポリメタクリル酸メチルを含有するポリマーを含む補強材220aに熱エネルギーが付与されると、エネルギー線を照射した場合と同様に、「C-CH2」結合の一部が切れることで、分子間の結合数が減少する(
図10参照)。このように、熱エネルギーの付与により分子間の結合数が減少した複数の化合物が形成されることで、物質が安定した状態から、より昇華されやすい性質へと変化する。
【0079】
以上の変形例1、変形例2、及び上記実施形態では、凹凸パターンは、露光処理が行われたレジスト膜Rに現像処理が施されることで形成されたレジストパターン200である。低分子化処理は、レジストパターン200及び補強材220aに対して熱エネルギー及びエネルギー線の少なくとも一方を付与することを含む。この場合、現像を行うための現像液L1をリンス液L2で洗い流す際に、当該リンス液L2の除去に起因したパターン倒れが抑制される。
【0080】
(変形例3)
補強材を昇華させるために、プラズマを用いたエッチング処理に代えて又は加えて、減圧された空間にウェハWが置かれてもよい。制御装置100は、ステップS08の処理において、プラズマを用いたエッチング処理に代えて、補強材220bが形成されているウェハWをプラズマ処理装置10の処理容器68内に置くことによって、当該補強材220bを昇華(蒸発)させてもよい。つまり、制御装置100は、ウェハWを減圧された空間に置くことによって補強材220bを昇華させる処理を行ってもよい。あるいは、制御装置100は、プラズマ処理装置10の減圧された空間(処理容器68内)にウェハWを置くことで補強材220bの一部を昇華させることに加えて、プラズマを用いたエッチング処理により、補強材220bの残りの部分を昇華させてもよい。これらの場合であっても、レジストパターン200をマスクとしたウェハWのエッチング処理だけでなく、補強材220bに対するエッチング処理にもプラズマ処理装置10を活用できるので、基板処理システム1の構成の簡素化が図られる。
【0081】
基板処理システム1は、プラズマ処理装置10に代えて、減圧された空間(実質的に真空状態である空間)を形成することが可能な減圧ユニット(除去部)を備えていてもよく、当該減圧ユニットにて補強材220bの除去が行われてもよい。当該減圧ユニットが、塗布・現像装置2内に設けられてもよい。この場合、塗布・現像装置2において上述の現像処理手順が全て行われてもよい。減圧空間にて補強材220bを昇華させる場合、制御装置100は、低分子化処理後にウェハWを減圧空間に置いた際に、レジストパターン200に比べて補強材220bがより昇華する状態となるように、ステップS06の低分子化処理において分子間の結合数(例えばポリマー重合度)を減少させてもよい。
【0082】
変形例3に係る基板処理方法では、補強材220bを昇華させて除去することは、ウェハWを減圧された空間に置くことによって補強材220bを昇華させることを含む。補強材220bは低分子化処理が施されているので、ウェハWを減圧された空間に置くことで、凹凸パターンを残したまま、固体状態の補強材220bを液体状態を介さずに蒸発させることができる。
【0083】
(変形例4)
低分子化処理でのエネルギー線の照射又は加熱に応じて架橋を促進する架橋剤を含むレジスト膜Rが用いられてもよい。この場合、ステップS06において、ウェハWの表面Wa全面にエネルギー線が照射すると、又はウェハW全体が加熱されると、補強材220aに低分子化処理が施されると共に、レジスト膜Rから形成される凸部201内において架橋反応が促進され、当該凸部201が硬化する。
【0084】
この変形例4に係る基板処理方法では、レジストパターン200は、低分子化処理での熱エネルギー及びエネルギー線の少なくとも一方の付与に応じて架橋を促進する架橋剤を含む。この場合、低分子化処理を施すためのエネルギー線又は熱エネルギーの付与に伴って凸部201が硬化する。このため、補強材220bとレジストパターン200との間の選択比(コントラスト比)が上がり、レジストパターン200を残しつつ、凹部202内の補強材220bを除去することが容易である。また、低分子化処理のためのエネルギーの付与を凸部201の硬化にも有効利用できる。
【0085】
(変形例5)
ネガ型のレジストパターンが用いられる場合に、補強材内の分子間の結合数の減少に加えて、レジストパターンのエッチング耐性の向上も目的として低分子化処理が行われてもよい。この「エッチング耐性」とは、レジストパターン200(凸部201)の摩耗のし難さ及び浸食のし難さを示す。低分子化処理においてエッチング耐性が向上することで、その低分子化処理が実行されない場合に比べて、低分子化処理後のエッチング処理において、凸部201の摩耗及び浸食の進行が抑制される(例えば、エッチングされる量が減少する)。低分子化処理後の上記エッチング処理の一例としては、補強材を昇華させるためのエッチング処理、及びレジストパターン200をマスクとしたウェハWのエッチング処理等が挙げられる。また、現像処理時において有機溶剤である現像液がレジストパターン200の表層部分に侵入し軟化している場合にも、低分子化処理で付与されるエネルギーによってその表層で軟化した部分が硬化することも考えられる。
【0086】
以下では、
図11(a)~
図13を参照して、変形例5に係る基板処理手順の一例を詳細に説明する。変形例5に係る基板処理手順においても、制御装置100は、上述した現像処理手順(
図8参照)を含む基板処理と同様の処理を実行するように塗布・現像装置2を制御する。
【0087】
図11(a)には、露光処理の様子が示されている。この露光処理では、露光用の光源221から、ウェハWの表面Wa上に形成されたレジスト膜Rへのエネルギー線の照射(露光)が行われる。露光処理において、光源221とウェハWとの間には、エネルギー線の照射を遮るためのマスク222が配置される。マスク222には、レジスト膜Rのうちの除去する予定の部分に対応した開口222aが設けられる。この場合、レジスト膜Rのうちの開口222aの直下の領域Ra(表面Waに直交する方向から表面Waを見た際に開口222aと重なる領域)にエネルギー線が照射される。また、光の拡散性又はマスク222の寸法誤差等に起因して、領域Raの周辺の領域Rbにおいても僅かな量のエネルギー線が照射される。この場合、領域Rbには、現像処理において当該領域が除去されない程度の量のエネルギー線が照射される。
【0088】
露光処理が行われた後に、制御装置100は、上述のステップS02と同様に、露光処理が施されたレジスト膜Rに対して現像液L1を供給するように現像ユニットU3を制御する。レジスト膜Rに現像液L1が供給されることで、露光処理において露光用のエネルギー線が照射された領域Ra(十分に露光された領域)が除去される。これにより、上述の現像処理手順と同様に、複数の凸部201Aと複数の凹部202Aとを有するレジストパターン200Aが表面Waに形成される。露光用のエネルギー線が照射されているが、その照射量が十分ではない領域Rbは、現像液L1によって除去されずに残り、凸部201Aの表面(表面を含む部分)を形成する。例えば、
図11(b)に示されるように、領域Rbは、凸部201Aにおいて、側面と当該側面に接続される上面の一部とを形成する。
【0089】
レジストパターン200Aが形成された後に、制御装置100は、上述のステップS03,S04と同様に、ウェハWの表面Waに対するリンス液L2の供給と処理液L3の供給とを順に実行する。
図12(a)に示されるように、リンス液L2の供給により、凹部202A内の現像液L1がリンス液L2に置き換えられた際に、表面Wa上のリンス液L2の高さが、凸部201Aの高さ以上であってもよい。つまり、リンス液L2の上面と表面Waとの間の距離が、凸部201Aの上面とウェハWとの間の距離以上であってもよい。また、処理液L3の供給により、凹部202A内のリンス液L2が処理液L3に置き換えられ、且つ処理液L3が固体状態となる前において、表面Wa上の処理液L3の高さが、凸部201Aの高さ以上であってもよい。リンス液L2又は処理液L3の高さが、凸部201Aの高さ以上とされることで、ウェハWの表面Wa全体において各凹部202Aの全ての空間に液体が満たされている状態となる。そのため、隣り合う凹部202A間における液体の充填量のばらつき(表面張力の差)に起因したパターン倒れを抑制することができる。
【0090】
凹部202A内が処理液L3に置き換えられた後に、制御装置100は、ステップS05と同様に、凹部202A内に補強材220aを形成するように現像ユニットU3を制御する。この際、凹部202A内に形成される補強材220aの高さが、凸部201Aよりも高くてもよい。補強材220aの上面の高さ位置(補強材220aの形成前における処理液L3の上面の高さ位置)は、次の処理で照射されるエネルギー線が、凸部201Aに到達可能な程度に設定されていてもよい。
【0091】
凹部202A内に補強材220aが形成された後に、制御装置100は、ステップS06と同様に、レジストパターン200(凸部201A)及び補強材220aに対してエネルギー線が付与されるように照射ユニットU5を制御してもよい。このエネルギー線の付与により、補強材220aに含まれる分子間の結合数を減少させると共に、レジストパターン200A(凸部201A)の表面を含む領域Rbのエッチング耐性を向上させてもよい。
【0092】
図12(b)に示される照射部42は、凸部201Aの領域Rb及び補強材220aの両方にエネルギー線が照射可能となるように構成されている。照射部42から照射されるエネルギー線の種類は、補強材220aに含まれる分子間の結合数を減らすこと、及び、領域Rbのエッチング耐性を向上させることが可能となるように予め設定されている。例えば、レジスト膜R(凸部201A)内において、露光用のエネルギー線の照射による化学反応とは異なる化学反応が起こるように、照射部42から照射されるエネルギー線の種類が設定される。補強材220aへのエネルギー線の付与により、低分子化処理が施された補強材(補強材220b)が形成され、領域Rbへのエネルギー線の付与により、領域Rbのエッチング耐性が向上する。
図12(b)に示される照射部42は、光源から照射されるエネルギー線が、凸部201Aの側面(領域Rbのうちの側面を構成する部分)の下部にも到達するように、表面Waに直交する方向に対して傾いた方向にもエネルギー線を照射してもよい。
【0093】
なお、制御装置100は、エネルギー線の照射に代えて又は加えて、凹部202A内に形成された補強材220a及びレジストパターン200A(凸部201A)に熱エネルギーを付与するように照射ユニットU5等を制御してもよい。この熱エネルギーの付与により、補強材220a内の分子間の結合数が減少すると共に、領域Rbのエッチング耐性が向上してもよい。
【0094】
凹部202A内に補強材220bが形成された後に、制御装置100は、ステップS08と同様に、補強材220bを除去するようにプラズマ処理装置10等を制御する。これにより、
図13に示されるように、凹部202A内から液体及び固体が除去された状態のレジストパターン200Aが表面Wa上に形成される。領域Rbのエッチング耐性は向上しているので、このステップS08の処理、又は現像処理手順後において行われるウェハWのエッチング処理において、領域Rbの摩耗及び浸食の進行が抑制される。
【0095】
以上の変形例5に係る基板処理方法では、現像処理は、レジスト膜Rのうちの露光処理において露光された領域Raを除去することでレジストパターン200Aを形成することを含む。この基板処理方法は、低分子化処理において、補強材220aに含まれる分子間の結合数を減少させると共にレジストパターン200Aの表面を含む領域Rbのエッチング耐性を向上させる。エッチング処理において、凸部のうちの露光用のエネルギー線が僅かに照射された部分が摩耗又は浸食してしまい、レジストパターンを用いたエッチングの精度が低下するおそれがある。これに対して、上記方法では、領域Rbのエッチング耐性が向上しているので、凸部201Aの僅かに露光された部分に起因したエッチングの精度の低下を防ぐことができる。
【0096】
(変形例6)
エネルギー線又は熱エネルギーの付与により脱水縮合反応が起こる材料を含むレジストパターンが用いられてもよい。この脱水縮合反応が起こる材料を含むレジストパターン(以下、「レジストパターン200B」という。)は、エッチング耐性を向上させるために金属を含有していてもよい。レジストパターン200Bは、当該パターンを形成するための現像処理の結果が、ウェハWの周囲の温度に比べて水分に影響を受けやすい性質を有していてもよい。レジストパターン200Bは、変形例5に係るレジストパターン200Aと同様に、ネガ型であってもよい。
【0097】
図14には、複数の凸部201Bと複数の凹部202Bとを含むレジストパターン200Bが形成され、その後に凹部202Bに補強材220aが形成された状態の表面Waの様子が示されている。凹部202B内に形成された補強材220aの高さは、凸部201Bの高さと同程度であってもよく、凸部201Bの上面が露出していてもよい。制御装置100は、レジストパターン200B(凸部201B)及び補強材220aに対してエネルギー線が照射されるように、照射部42を含む照射ユニットU5を制御してもよい。凸部201Bの上面が露出していることで、凸部201Bへのエネルギー線の照射が容易となる。
【0098】
なお、制御装置100は、エネルギー線に代えて又は加えて、レジストパターン200B(凸部201B)及び補強材220aに対して熱エネルギーを付与するように照射ユニットU5等を制御してもよい。レジストパターン200B(凸部201B)にエネルギー線又は熱エネルギーが付与されることで、レジストパターン200B(凸部201B)内において脱水縮合による架橋が促進され、その結果凸部201Bが硬化する。
【0099】
以上の変形例6に係る基板処理方法では、レジストパターン200Bは、低分子化処理において熱エネルギー及びエネルギー線の少なくとも一方が付与されることで、脱水縮合による架橋が促進される材料を含む。この場合、低分子化処理を施すためのエネルギー線又は熱エネルギーの付与に伴って凸部201Bが硬化する。このため、補強材220bとレジストパターン200Bとの間の選択比(コントラスト比)が上がり、レジストパターン200Bを残しつつ、凹部202B内の補強材220bを除去することが容易である。また、低分子化処理のためのエネルギーの付与を凸部201Bの硬化にも有効利用できる。
【0100】
(その他の変形例)
現像ユニットU3は、凹部202内のリンス液を固体状態の補強材に置き換える際に、凹部202内のリンス液を乾燥させることなく(凹部202内を空にすることなく)、リンス液を補強材に置き換えればよい。例えば、現像ユニットU3は、ポリマーを含む粉末状の物質を表面Wa上のリンス液に供給し、固形物を沈殿させた後にリンス液を除去してもよい。あるいは、現像ユニットU3は、ポリマーを含む粉末状の物質を表面Wa上のリンス液に溶かして、当該物質が溶けているリンス液を乾燥させることで、リンス液を固化させてもよい。
【0101】
凹部202内に形成される補強材220a,220bの高さは、レジストパターン200(凸部201)と同程度であってもよく、凸部201よりも低くてもよい。補強材220a,220bの高さは、凸部201よりも高くてもよい。この場合、凹部202内に位置する補強材220a(補強材220b)同士は、凸部201よりも上方で膜状の補強材により互いに接続されていてもよい。補強材220a,220bが凹部202内の少なくとも一部を埋めていればよい。
【0102】
基板処理システム1は、凹部202内の液体を固体状態の補強材に置き換える置換処理部、補強材に低分子化処理を施す低分子化処理部、及びこれらを制御可能な制御装置を備えていればどのようなものであってもよい。基板処理システム1において、プラズマ処理装置10は、塗布・現像装置2内に設けられていてもよい。
【0103】
処理対象の基板は半導体ウェハに限られず、例えばガラス基板、マスク基板、FPD(Flat Panel Display)などであってもよい。
【符号の説明】
【0104】
1…基板処理システム、2…塗布・現像装置、U3…現像ユニット、U5…照射ユニット、10…プラズマ処理装置、200,200A,200B…レジストパターン、201,201A,201B…凸部、202,202A,202B…凹部、220a,220b…補強材、W…ウェハ、Wa…表面。