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特許7556976差圧式流量計、排ガス分析装置、流量測定方法、排ガス分析方法、及び、差圧式流量計用のプログラム
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  • 特許-差圧式流量計、排ガス分析装置、流量測定方法、排ガス分析方法、及び、差圧式流量計用のプログラム 図1
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】差圧式流量計、排ガス分析装置、流量測定方法、排ガス分析方法、及び、差圧式流量計用のプログラム
(51)【国際特許分類】
   G01F 1/46 20060101AFI20240918BHJP
【FI】
G01F1/46
【請求項の数】 12
(21)【出願番号】P 2022557324
(86)(22)【出願日】2021-09-24
(86)【国際出願番号】 JP2021034977
(87)【国際公開番号】W WO2022080113
(87)【国際公開日】2022-04-21
【審査請求日】2023-12-25
(31)【優先権主張番号】P 2020172738
(32)【優先日】2020-10-13
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(74)【代理人】
【識別番号】100218187
【弁理士】
【氏名又は名称】前田 治子
(74)【代理人】
【識別番号】100227673
【弁理士】
【氏名又は名称】福田 光起
(72)【発明者】
【氏名】永岡 真
【審査官】大森 努
(56)【参考文献】
【文献】特開平07-043183(JP,A)
【文献】特開平06-018541(JP,A)
【文献】米国特許第05736650(US,A)
【文献】特開2014-020808(JP,A)
【文献】特表2011-515689(JP,A)
【文献】登録実用新案第3164632(JP,U)
【文献】特開平10-090026(JP,A)
【文献】特開昭59-148821(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2010/0191481(US,A1)
【文献】米国特許出願公開第2019/0310122(US,A1)
【文献】特表2014-507007(JP,A)
【文献】特開2001-241980(JP,A)
【文献】特開2018-096737(JP,A)
【文献】特開平01-101972(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01F 1/00,1/34-1/50,1/72
G01F 15/00-15/18
G01P 5/14-5/175
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定の基準位置から上流側及び下流側に対称である対称流路部を流れる流体の差圧を検出し、その差圧から前記流体の流量を算出する差圧式流量計であって、
前記対称流路部における第1の差圧を検出する第1の差圧検出部と、
前記対称流路部における第2の差圧を検出する第2の差圧検出部と、
前記第1の差圧及び前記第2の差圧から所定の演算式を用いて流量を算出する流量算出部とを備え、
前記所定の演算式は、前記第1の差圧から流量を求めるものであって前記流量の時間変化項を含む第1演算式と、前記第2の差圧から流量を求めるものであって前記流量の時間変化項を含む第2演算式とを用いて、共通項である前記流量の時間変化項を消去したものである、差圧式流量計。
【請求項2】
前記対称流路部に連通して前記流体の圧力を受けるとともに上流側から順に配列された第1~第3の導圧管を有し、
前記第1の差圧検出部が接続される前記第1~第3の導圧管の組み合わせと、前記第2の差圧検出部が接続される前記第1~第3の導圧管の組み合わせとが互いに異なる、請求項1に記載の差圧式流量計。
【請求項3】
前記第1の導圧管と前記第2の導圧管との距離と、前記第2の導圧管と前記第3の導圧管との距離が同一である、請求項2に記載の差圧式流量計。
【請求項4】
前記第1の導圧管は、前記対称流路部において上流側を向いて開口しており、
前記第3の導圧管は、前記対称流路部において下流側を向いて開口しており、
前記第2の導圧管は、前記対称流路部を形成する管壁に開口している、請求項2又は3に記載の差圧式流量計。
【請求項5】
前記第1演算式は、以下の式(1)であり、前記第2演算式は、以下の式(2)である、請求項1乃至4の何れか一項に記載の差圧式流量計。
【数1】
この式(1)において、Cは、第1の差圧を計測する導圧管の距離とその部分の流路形状変化に関係する係数であり、ρは、流体の密度であり、ΔPは、第1の差圧であり、Kは、第1の差圧を検出する流路部分における差圧と流量の関係から求まる係数である。
【数2】
この式(2)において、Cは、第2の差圧を計測する導圧管の距離とその部分の流路形状変化に関係する係数であり、ρは、流体の密度であり、ΔPは、第2の差圧であり、Kは、第2の差圧を検出する流路部分における差圧と流量の関係から求まる係数である。
【請求項6】
前記流量算出部は、以下の式(3)を用いて、前記第1の差圧及び前記第2の差圧から流量を算出する、請求項5に記載の差圧式流量計。
【数3】
この式(3)において、αはC/Cである。
【請求項7】
排気管の開口部に取り付けられて、当該排気管から出る排ガスが流れる流路を形成する取付配管を備え、
前記取付配管に前記第1の差圧検出部及び前記第2の差圧検出部が設けられている、請求項1乃至6の何れか一項に記載の差圧式流量計。
【請求項8】
請求項7に記載の差圧式流量計と、
前記排ガスに含まれる所定成分の濃度を測定する排ガス分析計とを備え、
前記取付配管には、前記排ガスをサンプリングして前記排ガス分析計に導く排ガスサンプリング部が設けられている、排ガス分析装置。
【請求項9】
車両搭載型のものである請求項8記載の排ガス分析装置。
【請求項10】
所定の基準位置から上流側及び下流側に対称である対称流路部を流れる流体の差圧を検出し、その差圧から前記流体の流量を算出する流量測定方法であって、
前記対称流路部における第1の差圧を検出し、
前記対称流路部における第2の差圧を検出し、
前記第1の差圧及び前記第2の差圧から所定の演算式を用いて流量を算出するものであり、
前記所定の演算式として、前記第1の差圧から流量を求めるものであって前記流量の時間変化項を含む第1演算式と、前記第2の差圧から流量を求めるものであって前記流量の時間変化項を含む第2演算式とを用いて、共通項である前記流量の時間変化項を消去したものを用いる、流量測定方法。
【請求項11】
請求項1乃至7の何れか一項に記載の差圧式流量計により排ガスの流量を測定する排ガス分析方法。
【請求項12】
所定の基準位置から上流側及び下流側に対称である対称流路部を流れる流体の第1の差圧を検出する第1の差圧検出部、及び、前記対称流路部を流れる流体の第2の差圧を検出する第2の差圧検出部を備え、それら差圧から前記流体の流量を算出する差圧式流量計に用いられるプログラムであって、
前記第1の差圧及び前記第2の差圧から所定の演算式を用いて流量を算出する流量算出部としての機能をコンピュータに備えさせるものであり、
前記所定の演算式は、前記第1の差圧から流量を求めるものであって前記流量の時間変化項を含む第1演算式と、前記第2の差圧から流量を求めるものであって前記流量の時間変化項を含む第2演算式とを用いて、共通項である前記流量の時間変化項を消去したものである、プログラム。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、差圧式流量計、排ガス分析装置、流量測定方法、排ガス分析方法、及び、差圧式流量計用のプログラムに関するものである。
【背景技術】
【0002】
従来、例えば車両の路上走行試験では、車両に各種の排ガス分析計を搭載し、テールパイプから排出される排ガスをサンプリングして当該排ガスに含まれる各成分を分析している。また、テールパイプには、排ガスの流量を測定するための例えばピトー管式流量計などの差圧式流量計が設置され、当該流量計により得られた排ガス流量と、前記排ガス分析計により得られた各成分の濃度とから、各成分の排出質量を算出している。
【0003】
ところで、例えばピトー管式流量計などの差圧式流量計は、定常流を仮定した差圧に基づく関係式を用いて流量を算出するものであるところ、車両からの排ガスは脈動を伴う非定常流であり、排ガス流量を精度良く測定することが難しい。また、脈動を伴う非定常流を低減すべくバッファタンクを設ける構成も考えられるが、装置が大型化してしまう。さらに、脈動条件が既知であれば、排ガス流量を補正することも考えられるがこれも現実的ではない。
【0004】
ここで、特許文献1に示すように、流れの非定常性を考慮して、管内の流れを分流路に分流し、それぞれの分流路内の流れの加速度が互いに等しくなる点で、分流路間の静圧差を検出し、この静圧差から流量を測定する流量計が考えられている。
【0005】
しかしながら、特許文献1の流量計では、流量が分流路の面積比で分配されるとしているが、実際には、面積比の要件を満たしても、分流路の入口部や出口部及び流量形状によって各分流路の圧力損失が異なると、必ずしも面積比では分配されない。そうすると、脈動などを伴う非定常流の流量を高精度に測定することができない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特開平7-43183号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
そこで、本発明は上記の問題点を解決すべくなされたものであり、脈動などを伴う非定常流の流量を高精度に測定することをその主たる課題とするものである。
【課題を解決するための手段】
【0008】
すなわち、本発明に係る差圧式流量計は、所定の基準位置から上流側及び下流側に対称である対称流路部を流れる流体の差圧を検出し、その差圧から前記流体の流量を算出する差圧式流量計であって、前記対称流路部における第1の差圧を検出する第1の差圧検出部と、前記対称流路部における第2の差圧を検出する第2の差圧検出部と、前記第1の差圧及び前記第2の差圧から所定の演算式を用いて流量を算出する流量算出部とを備え、前記所定の演算式は、前記第1の差圧から流量を求めるものであって前記流量の時間変化項を含む第1演算式と、前記第2の差圧から流量を求めるものであって前記流量の時間変化項を含む第2演算式とを用いて、共通項である前記流量の時間変化項を消去したものであることを特徴とする。
【0009】
この差圧式流量計であれば、流路における第1の差圧及び第2の差圧を検出し、第1の差圧から流量を求めるものであって流量の時間変化項を含む第1演算式と、第2の差圧から流量を求めるものであって流量の時間変化項を含む第2演算式とを用いて共通項である前記流量の時間変化項を消去した演算式により流量を算出しているので、脈動などを伴う非定常流の流量を高精度に測定することができる。また、対称流路部における第1の差圧及び第2の差圧を検出して流量を求めているので、流体が逆方向に流れる場合(流体が逆流する場合)の流量を高精度に求めることができる。
【0010】
第1の差圧検出部及び第2の差圧検出部に接続される導圧管の本数を少なくしつつ、第1の差圧及び第2の差圧を検出するためには、前記対称流路部に連通して前記流体の圧力を受けるとともに上流側から順に配列された第1~第3の導圧管を有し、前記第1の差圧検出部が接続される前記第1~第3の導圧管の組み合わせと、前記第2の差圧検出部が接続される前記第1~第3の導圧管の組み合わせとが互いに異なることが望ましい。
【0011】
第1~第3の導圧管の配置に対称性を持たせることにより、流路において流体が順方向に流れる場合と逆方向に流れる場合との両方において同じ測定精度で流量を測定できるようにするためには、前記第1の導圧管と前記第2の導圧管との距離と、前記第2の導圧管と前記第3の導圧管との距離が同一であることが望ましい。
【0012】
前記第1の導圧管は、前記対称流路部において上流側を向いて開口しており、前記第3の導圧管は、前記対称流路部において下流側を向いて開口しており、前記第2の導圧管は、前記対称流路部を形成する管壁に開口していることが望ましい。
この構成であれば、流路において流体が順方向に流れる場合には、第1の導圧管が流体の全圧を受けることになり、第2の導圧管及び第3の導圧管が流体の静圧を受けることになる。また、流路に流体が逆方向にながれる場合には、第3の導圧管が流体の全圧を受けることになり、第1の導圧管及び第2の導圧管が流体の静圧を受けることになる。これにより、ピトー管式流量計において、脈動及び逆流などを伴う非定常流の流量を高精度に測定することができる。
【0013】
上述した第1演算式及び第2演算式の具体例としては、前記第1演算式は、以下の式(1)であり、前記第2演算式は、以下の式(2)である。
【0014】
この式(1)において、Cは、第1の差圧を計測する導圧管の距離とその部分の流路形状変化に関係する係数であり、ρは、流体の密度であり、ΔPは、第1の差圧であり、Kは、第1の差圧を検出する流路部分における差圧と流量の関係から求まる係数である。
【0015】
この式(2)において、Cは、第2の差圧を計測する導圧管の距離とその部分の流路形状変化に関係する係数であり、ρは、流体の密度であり、ΔPは、第2の差圧であり、Kは、第2の差圧を検出する流路部分における差圧と流量の関係から求まる係数である。
【0016】
上記の第1演算式及び第2演算式を用いて時間変化項を消去した演算式は、以下の式(3)であり、前記流量算出部は、以下の式(3)を用いて、前記第1の差圧及び前記第2の差圧から流量を算出することが考えられる。
【0017】
この式(3)において、αはC/Cである。
【0018】
また、本発明に係る流量算出方法は、所定の基準位置から上流側及び下流側に対称である対称流路部を流れる流体の差圧を検出し、その差圧から前記流体の流量を算出する流量算出方法であって、前記対称流路部における第1の差圧を検出し、前記対称流路部における第2の差圧を検出し、前記第1の差圧及び前記第2の差圧から所定の演算式を用いて流量を算出するものであり、前記所定の演算式として、前記第1の差圧から流量を求めるものであって前記流量の時間変化項を含む第1演算式と、前記第2の差圧から流量を求めるものであって前記流量の時間変化項を含む第2演算式とを用いて、共通項である前記流量の時間変化項を消去したものを用いることを特徴とする。
【0019】
さらに、本発明に係る差圧式流量計を用いて排ガスの流量を測定する排ガス分析方法も本発明の一態様である。
【0020】
その上、本発明に係る差圧式流量計に用いられるプログラムは、所定の基準位置から上流側及び下流側に対称である対称流路部を流れる流体の第1の差圧を検出する第1の差圧検出部、及び、前記対称流路部を流れる流体の第2の差圧を検出する第2の差圧検出部を備え、それら差圧から前記流体の流量を算出する差圧式流量計に用いられるプログラムであって、前記第1の差圧及び前記第2の差圧から所定の演算式を用いて流量を算出する流量算出部としての機能をコンピュータに備えさせるものであり、前記所定の演算式は、前記第1の差圧から流量を求めるものであって前記流量の時間変化項を含む第1演算式と、前記第2の差圧から流量を求めるものであって前記流量の時間変化項を含む第2演算式とを用いて、共通項である前記流量の時間変化項を消去したものであることを特徴とする。
【発明の効果】
【0021】
以上に述べた本発明によれば、脈動などの非定常流を伴う流体の流れを高精度に測定することができる。
【図面の簡単な説明】
【0022】
図1】本実施形態に係る排ガス分析装置の構成を示す模式図である。
図2】同実施形態のテールパイプアタッチメント部分を主として示す拡大断面図である。
図3】従来の差圧式流量計と本実施形態の差圧式流量計との流量誤差を示す実験結果である。
【符号の説明】
【0023】
100・・・排ガス分析装置
2 ・・・差圧式流量計
3 ・・・ガス分析計
21 ・・・取付配管
22 ・・・第1の差圧検出部
23 ・・・第2の差圧検出部
R ・・・流路
R1 ・・・対称流路部
24 ・・・流量算出部
25 ・・・第1の導圧管
26 ・・・第2の導圧管
27 ・・・第3の導圧管
7 ・・・排ガスサンプリング部
【発明を実施するための形態】
【0024】
以下に、本発明に係る差圧式流量計を用いた排ガス分析装置の一実施形態について、図面を参照して説明する。
【0025】
<1.装置構成>
本実施形態の排ガス分析装置100は、例えば車両Vに搭載されて、当該車両Vが路上を走行する際に車両の内燃機関Eから排出される排ガスを路上走行中にリアルタイムに分析する車両搭載型のものである。この排ガス分析装置100は、採取した排ガスを希釈せずに、そのまま濃度測定する直接サンプリング方式のものである。なお、シャシダイナモ上で模擬走行される車両の内燃機関から排出される排ガスを模擬走行中にリアルタイムに分析するものであっても良い。
【0026】
具体的にこの排ガス分析装置100は、図1に示すように、内燃機関Eに接続された排気管EHの開口部EH1に取り付けられて、当該排気管EHから排出される排ガスの流量を測定する差圧式流量計2と、排気管EHから排出される排ガスに含まれる測定対象成分の濃度を測定するためのガス分析計3とを備えている。
【0027】
差圧式流量計2は、流路を流れる排ガスの差圧を検出し、その差圧から排ガスの流量を算出するものであって、排気管EHの開口部EH1に外付けされる取付配管21と、当該取付配管21を流れる排ガスの差圧を検出するための第1の差圧検出部22及び第2の差圧検出部23とを備えている。なお、差圧式流量計2の詳細は後述する。
【0028】
ガス分析計3は、排ガスに含まれる測定対象成分(例えばCO、CO、NO、THC等)の濃度を連続測定するものである。なお、ガス分析計3は、CO、COの濃度を測定するものの場合には、非分散型赤外吸収法(NDIR法)を用いたNDIR検出器を用いることができ、NOの濃度を測定するものの場合には、化学発光分析法(CLD)を用いたCLD検出器を用いることができ、THCの濃度を測定するものの場合には、水素炎イオン化分析法(FID)を用いたFID検出器を用いることができる。ガス分析計3は、これらの何れかの検出器を有するものであっても良いし、上記のうち複数種の検出器を有するものであっても良い。その他、ガス分析計3は、測定対象成分に応じて種々の分析法を用いた検出器とすることができる。
【0029】
そして、このガス分析計3には、サンプリングした排ガスを導入するための導入配管6が接続されている。導入配管6の一端部はガス分析計3に接続されており、導入配管6の他端部には、排ガスをサンプリングする排ガスサンプリング部7が設けられている。排ガスサンプリング部7は、上述した差圧式流量計の取付配管21に設けられている。この排ガスサンプリング部7は、取付配管21を流れる排ガスの一部を採取するサンプリング管により構成されている。なお、排ガスサンプリング部7は、取付配管21において、第1、第2の差圧検出部22、23よりも下流側に設けられており、第1、第2の差圧検出部22、23の差圧検出に圧力変動などの影響を与えないようにしている。
【0030】
このガス分析計3により得られた各成分の濃度信号は、上位の演算装置8に送られて、差圧式流量計2の流量算出部24から出力される流量信号とともに、各成分の排出質量の演算に用いられる。
【0031】
<2.差圧式流量計の詳細構成>
差圧式流量計2は、上述した通り、流路を流れる排ガスの差圧を検出し、その差圧から排ガスの流量を算出するものであって、図1及び図2に示すように、排気管EHの開口部EH1に外付けされる取付配管21と、当該取付配管21を流れる排ガスの差圧を検出するための第1の差圧検出部22及び第2の差圧検出部23とを備えている。
【0032】
取付配管21は、排気管EHの開口部EH1の外側周面を覆うように取り付けられる直管形状をなすものである。本実施形態では、断面円形状をなす円管である。そして、取付配管21の一端開口部が排気管EHの開口部EH1に装着されるとともに、他端開口部は開放されており、当該他端開口部から排ガスが外部に排出される。
【0033】
第1の差圧検出部22は、取付配管21における流路Rの排ガスの全圧と静圧との差圧である第1の差圧ΔPを検出するものである。また、第2の差圧検出部23は、取付配管21における流路Rの排ガスの全圧と静圧との差圧である第2の差圧ΔPを検出するものである。また、第1の差圧検出部22により検出される第1の差圧ΔPと、第2の差圧検出部23により検出される第2の差圧ΔPとは、取付配管21の流路における互いに異なる位置間の差圧である。
【0034】
ここで、取付配管21の流路Rは、所定の基準位置から上流側及び下流側に対称である対称流路部R1を有している。本実施形態では、取付配管21が直管形状をなすことから、基準位置は取付配管21の軸方向中央位置となり、取付配管21の流路R全体が対称流路部R1を構成する。つまり、第1の差圧検出部22及び第2の差圧検出部23は、対称流路部R1における互いに異なる位置間の差圧を検出することになる。
【0035】
そして、第1の差圧検出部22及び第2の差圧検出部23は、図2に示すように、対称流路部R1に設けられた第1~第3の導圧管25~27に接続されることにより、対称流路部R1における第1の差圧ΔP及び第2の差圧ΔPを検出する。
【0036】
具体的に第1~第3の導圧管25~27は、対称流路部R1に連通して流体の圧力を受けるとともに上流側からこの順に配列されている。本実施形態では、第1の導圧管25は、取付配管21の流路R(対称流路部R1)において上流側(一端開口部側)を向いて開口している。これにより、第1の導圧管25は、排ガスが順方向に流れる場合には、排ガスの全圧を検出するものとなり、排ガスが逆方向に流れる場合には、排ガスの静圧を検出するものとなる。また、第2の導圧管26は、対称流路部R1を形成する管壁(取付配管21の管壁)に流路内側(取付配管21の中心軸側)を向いて開口している。これにより、第2の導圧管26は、排ガスの流れる方向(順方向及び逆方向)に関わらず、排ガスの静圧を検出するものとなる。さらに、第3の導圧管27は、取付配管21の流路R(対称流路部R1)において下流側(他端開口部側)を向いて開口している。これにより、第3の導圧管27は、排ガスが順方向に流れる場合には、排ガスの静圧を検出するものとなり、排ガスが逆方向に流れる場合には、排ガスの全圧を検出するものとなる。
【0037】
そして、第1の導圧管25と第2の導圧管26との距離L1と、第2の導圧管26と第3の導圧管27との距離L2が同一となるように配列されている。ここで、各導圧管25~27の間の距離は、各導圧管25~27の圧力計測用の開口の間の距離である。第1~第3の導圧管25~27の周方向の位置関係は直線上でなくても良く、周方向において互いに異なる位置であっても良い。
【0038】
また、これら第1~第3の導圧管25~27を用いて互いに異なる位置間の差圧を検出するために、第1の差圧検出部22が接続される第1~第3の導圧管25~27の組み合わせと、第2の差圧検出部23が接続される第1~第3の導圧管25~27の組み合わせとが互いに異なるように構成されている。本実施形態では、第1の差圧検出部22は、第1の導圧管25及び第3の導圧管27に接続されており、第2の差圧検出部23は、第1の導圧管25及び第2の導圧管26に接続されている。
【0039】
そして、差圧式流量計2の流量算出部24は、第1の差圧検出部22により得られた第1の差圧ΔP及び第2の差圧検出部23により得られた第2の差圧ΔPから、所定の演算式を用いて排ガスの体積流量Qを算出する。
【0040】
ここで、所定の演算式は、第1の差圧ΔPから流量を求めるものであって体積流量Qの時間変化項dQ/dtを含む第1演算式と、第2の差圧ΔPから体積流量Qを求めるものであって体積流量Qの時間変化項dQ/dtを含む第2演算式とを用いて、共通項である体積流量Qの時間変化項dQ/dtを消去したものである。
【0041】
第1演算式は、以下の式(1)により示されるものである。
【0042】
この式(1)において、Cは、第1の差圧ΔPを検出する流路部分の流路断面積の変化を示す係数であり、ρは、流体の密度であり、Kは、第1の差圧ΔPを検出する流路部分における差圧と流量との関係から求まる損失係数(例えば、流体中のせん断、乱流エネルギー散逸などに起因する損失の係数)である。なお、前記損失係数は、定常流実験の結果に基づいて設定される。
【0043】
第2演算式は、以下の式(2)により示されるものである。
【0044】
この式(2)において、Cは、第2の差圧ΔPを検出する流路部分の流路断面積の変化を示す係数であり、ρは、流体の密度であり、Kは、第2の差圧ΔPを検出する流路部分における定常流実験などにより、差圧と流量との関係から実験的に求まる損失係数(例えば、流体中のせん断、乱流エネルギー散逸などに起因する損失の係数)である。なお、前記損失係数は、定常流実験の結果に基づいて設定される。
【0045】
具体的に流量算出部24は、上記の式(1)及び式(2)から時間変化項dQ/dtを消去した所定の演算式である以下の式(3)を用いて、第1の差圧ΔP及び第2の差圧ΔPから体積流量Qを算出する。
【0046】
この式(3)において、αはC/Cである。
【0047】
次に、従来の差圧式流量計と本実施形態の差圧式流量計との流量誤差の実験結果を図3に示す。なお、従来の差圧式流量計の流量算出方法は上述している。
【0048】
この実験においては、流路を構成する配管の管径を、φ28mm(A)、φ56mm(B)の2つを用意し、φ28mm(A)においては、流れるガスの振動周期を0.15s(1)又は0.06s(2)とし、φ56mm(B)においては、流れるガスの振動周期を0.15s(1)とした。なお、振動周期0.15sは、単気筒エンジンの回転数900rpmに相当し、振動周期0.06sは、単気筒エンジンの回転数2000rpmに相当する。
【0049】
図3から明らかなように、本実施形態の差圧式流量計の平均誤差は、従来の差圧式流量計の平均誤差よりも小さくなっていることが分かる。
【0050】
<3.従来の差圧式流量計>
なお、上述した従来の差圧式流量計は、1つの差圧検出部により得られた差圧ΔPと、排ガス温度Texh(t)[K]と、排ガス圧力Pexh(t)[kPa]とから、以下の式により、基準とする状態における排ガスの体積流量Qexh(t)[m/min]を算出するものである。
【0051】
ここで、k:比例係数
:標準圧力(101.3[kPa])
:標準温度(293.15[K])
ρexh:標準状態における排ガス密度[g/m
【0052】
<4.本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の排ガス分析装置100によれば、流路Rにおける第1の差圧ΔP及び第2の差圧ΔPを検出し、第1の差圧ΔPから体積流量Qを求めるものであって体積流量Qの時間変化項dQ/dtを含む第1演算式と、第2の差圧ΔPから体積流量Qを求めるものであって体積流量Qの時間変化項dQ/dtを含む第2演算式とを用いて共通項である体積流量Qの時間変化項dQ/dtを消去した演算式により体積流量Qを算出しているので、脈動などを伴う非定常流の流量Qを高精度に測定することができる。
【0053】
また、第1の差圧検出部22及び第2の差圧検出部23は、対称流路部R1における互いに異なる位置の差圧を検出するので、流路Rにおいて流体が逆方向に流れる場合(流体が逆流する場合)の体積流量Qを高精度に求めることができる。
【0054】
さらに、第1の導圧管25と第2の導圧管26との距離L1と、第2の導圧管26と第3の導圧管27との距離L2を同一として、第1~第3の導圧管25~27の配置に対称性を持たせているので、流路Rにおいて流体が順方向に流れる場合と逆方向に流れる場合との両方において同じ測定精度で流量を測定することができる。
【0055】
第1の導圧管25は対称流路部R1において上流側を向いて開口しており、第3の導圧管27は対称流路部R1において下流側を向いて開口しており、第2の導圧管26は対称流路部R1を形成する管壁に開口しているので、流路Rにおいて流体が順方向に流れる場合には、第1の導圧管25が流体の全圧を受けることになり、第2の導圧管26及び第3の導圧管27が流体の静圧を受けることになる。また、流路に流体が逆方向にながれる場合には、第3の導圧管27が流体の全圧を受けることになり、第1の導圧管25及び第2の導圧管26が流体の静圧を受けることになる。これにより、ピトー管式流量計において、脈動及び逆流などを伴う非定常流の体積流量Qを高精度に測定することができる。
【0056】
<5.その他の実施形態>
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0057】
例えば、各差圧検出部22、23が接続される第1~第3の導圧管25~27の組み合わせは、前記実施形態に限られず、その他の組み合わせであってもよい。
【0058】
また、導圧管は3つに限られず、第1の差圧検出部22に専用の2つの導圧管を設け、第2の差圧検出部23に専用の2つの導圧管を設けてもよい。
【0059】
さらに、前記実施形態では、取付配管の流路全体が対称流路部を構成していたが、取付配管の流路の一部が対称流路部を構成するものであってもよい。
【0060】
加えて、第1の導圧管25と第2の導圧管26との距離L1と、第2の導圧管26と第3の導圧管27との距離L2が同一でなく、第1~第3の導圧管25~27を非対称に配置しても良い。この場合、各導圧管25~27の配置の自由度を増すことができる。例えば、上述した式(3)におけるΔP1-ΔP2/αの値がゼロ又は限りなく小さくなる条件において、それぞれの導体管25~27の配置を再検討することで測定精度を向上させることが可能になる。
【0061】
その上、前記実施形態では、2つの差圧検出部22、23を有する構成について説明したが、3つ以上の差圧検出部を有するものであっても良い。
【0062】
前記実施形態では、第1の導圧管25及び第3の導圧管27を互いに独立して配置しているが、1つの導圧管の内部に第1の導圧管25の機能を果たす導圧流路と、第3の導体管27の機能を果たす導圧流路とを形成してもよい。この構成であれば、取付配管21の流路内の構成を簡単にすることができる。
【0063】
その上、前記実施形態では、差圧式流量計を排ガス分析装置に適用した場合を説明したが、その他の分析装置に適用しても良いし、差圧式流量計単体で使用するものであっても良い。
【0064】
その他、本発明の趣旨に反しない限りにおいて様々な実施形態の変形や組み合わせを行っても構わない。
【産業上の利用可能性】
【0065】
本発明によれば、脈動などの非定常流を伴う流体の流れを高精度に測定することができる。

図1
図2
図3