(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-17
(45)【発行日】2024-09-26
(54)【発明の名称】削ぎ切り装置、及び、ワークの削ぎ切り方法
(51)【国際特許分類】
A22C 21/00 20060101AFI20240918BHJP
A22C 17/00 20060101ALI20240918BHJP
B26D 1/147 20060101ALI20240918BHJP
B26D 7/06 20060101ALI20240918BHJP
【FI】
A22C21/00 Z
A22C17/00
B26D1/147
B26D7/06 D
(21)【出願番号】P 2023571120
(86)(22)【出願日】2023-05-10
(86)【国際出願番号】 JP2023017504
(87)【国際公開番号】W WO2023219092
(87)【国際公開日】2023-11-16
【審査請求日】2023-11-15
(31)【優先権主張番号】P 2022078121
(32)【優先日】2022-05-11
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000148357
【氏名又は名称】株式会社前川製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100165179
【氏名又は名称】田▲崎▼ 聡
(74)【代理人】
【識別番号】100175824
【氏名又は名称】小林 淳一
(74)【代理人】
【識別番号】100211122
【氏名又は名称】白石 卓也
(72)【発明者】
【氏名】児玉 龍二
(72)【発明者】
【氏名】碓氷 弘之
(72)【発明者】
【氏名】梅田 勢一郎
(72)【発明者】
【氏名】後藤 修
(72)【発明者】
【氏名】羽根 慎二
(72)【発明者】
【氏名】豊田 直紀
【審査官】西村 賢
(56)【参考文献】
【文献】特開平02-177849(JP,A)
【文献】特表2019-509743(JP,A)
【文献】米国特許第5277649(US,A)
【文献】国際公開第2009/139032(WO,A1)
【文献】特開2005-144598(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A22C 5/00-29/04
B26D 1/147
B26D 7/06
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
刃面に沿う方向に駆動する削ぎ切り刃を有するカッター装置と、
ワークを保持するワーク保持部と、
前記ワークの肉を削ぎ切りする削ぎ切り方向に前記ワーク保持部と前記カッター装置を相対移動させる相対移動装置と、
前記削ぎ切り方向に相対移動するワークに対し、前記削ぎ切り方向と交差する方向から前記カッター装置の前記削ぎ切り刃を近接離反させる削ぎ位置操作部と、を備え、
前記削ぎ切り刃の前記ワークに当接する位置には、当該削ぎ切り刃の駆動方向に沿って前記ワークを切る刃面部と、前記ワークの外面を押圧する押圧部が交互に配置されていることを特徴とする、
削ぎ切り装置。
【請求項2】
前記ワークは、骨部に肉部が付着した骨付き肉であり、
前記ワーク保持部は、前記骨付き肉の前記骨部を保持し、
前記カッター装置は、前記骨付き肉の前記肉部を前記骨部から削ぎ切りすることを特徴とする、
請求項1に記載の削ぎ切り装置。
【請求項3】
ワークに当接する位置に、前記ワークを切る刃面部と、前記ワークの外面を押圧する押圧部が駆動方向に沿って交互に配置された削ぎ切り刃を用い、
前記削ぎ切り刃を駆動しつつ、前記ワークと前記削ぎ切り刃を削ぎ切り方向に相対移動させ、
相対移動するワークに対し、前記削ぎ切り方向と交差する方向から前記削ぎ切り刃を変位させることを特徴とする、
ワークの削ぎ切り方法。
【請求項4】
前記ワークは、骨部に肉部が付着した骨付き肉であり、
前記骨部の長手方向に沿って相対移動する前記骨付き肉に対し、前記削ぎ切り方向と交差する方向の前記削ぎ切り刃の位置を前記骨部の外面形状に沿って変位させることを特徴とする、
請求項3に記載のワークの削ぎ切り方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、骨付き肉等のワークから肉部を剥離させる削ぎ切り装置、及び、ワークの削ぎ切り方法に関するものである。
本願は、2022年5月11日に出願された日本国特願2022-078121号に基づき優先権を主張し、その内容をここに援用する。
【背景技術】
【0002】
近年、食鳥腿肉等の骨付き肉の骨部から肉部を機械によって剥離させる肉部剥離装置(脱骨装置)が開発されている。
この種の肉部剥離装置は、骨付き肉の肉部の適所に切込み装置によって予め切込みを入れておき、骨部の端末部を保持したクランパを上昇させつつ、ミートセパレータによって肉部を骨部から剥離させる。ミートセパレータは、骨付き肉の骨部の外周面に当接するように、肉部の切込みに差し込まれる削ぎ落し爪を有する。肉部剥離装置は、ミートセパレータの削ぎ落し爪を骨付き肉の骨部の外周面に押し付けた状態で骨部を上昇させることにより、骨部から肉部を剥離させることができる。
【0003】
ところで、食鳥腿肉の場合、骨部の長手方向の途中に膝関節が存在し、肉部の一部がその膝関節に腱や筋膜によって強固に連結されている。このため、食鳥腿肉等を扱う肉部剥離装置では、肉部と骨部をつなぐ腱や筋膜を切断するためのカッター装置が備えられている(例えば、特許文献1参照)。
【0004】
特許文献1に記載の肉部剥離装置(脱骨装置)は、肉部を骨部から引き剥がすためのミートセパレータと、腱や筋膜を切断するためのカッター装置と、を備えている。カッター装置には、回転駆動される丸刃が用いられる。丸刃は、外周縁部の全域が一様な刃面となっている。
実際に骨付き肉から肉部を剥離させる場合には、骨付き肉の骨部の外周面にミートセパレータの削ぎ落し爪を当接させ、その状態で骨部を上昇させることにより、膝関節の腱や筋膜が露出する位置までミートセパレータによって肉部を剥離させる。次に、この状態においてカッター装置の丸刃を膝関節に近接させ、丸刃によって膝関節近くの腱や筋膜を切断する。この後に骨付き肉の骨部をさらに上昇させることにより、ミートセパレータによって残余の肉部を骨部から剥離させる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかし、上述のようにミートセパレータによって腱や筋膜を露出させた状態で、カッター装置の丸刃によって腱や筋膜を切断する場合、丸刃による切断位置を骨部の長手方向でミリ単位で正確に管理する必要がある。丸刃による切断位置が適切な位置から僅かにずれると、骨部に余分な肉部が残り、製品である肉部の歩留まりが低下する。また、丸刃による切断位置によっては、剥離した肉部側に孔開きが生じ、製品である肉部の品質低下を招くことがある。
【0007】
この対策として、長手方向に相対移動する骨部の外周面に、回転する丸刃を長手方向と直交する方向から軽く押し当て、腱や筋膜を含む骨部回りの肉部を連続して削ぎ切りすることを検討している。しかし、この場合、丸刃を連続的に回転させて肉部を削ぎ切りしようとすると、丸刃の刃先が骨付き肉の軟骨や硬骨に食い込み、円滑な肉部の削ぎ切りの続行が難しくなることがある。また、丸刃の刃先が骨付き肉の軟骨や硬骨に食い込むと、剥離した肉部に残骨が入り込んだり、丸刃の刃先にチッピングが生じ易くなる。
【0008】
本発明の態様は、ワークの芯部分への刃先の食い込みを抑制することができる削ぎ切り装置、及び、ワークの削ぎ切り方法を提供する。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明に係る削ぎ切り装置、及び、ワークの削ぎ切り方法は、以下の構成を採用した。
本発明に係る削ぎ切り装置は、刃面に沿う方向に駆動する削ぎ切り刃を有するカッター装置と、ワークを保持するワーク保持部と、前記ワークの肉を削ぎ切りする削ぎ切り方向に前記ワーク保持部と前記カッター装置を相対移動させる相対移動装置と、前記削ぎ切り方向に相対移動するワークに対し、前記削ぎ切り方向と交差する方向から前記カッター装置の前記削ぎ切り刃を近接離反させる削ぎ位置操作部と、を備え、前記削ぎ切り刃の前記ワークに当接する位置には、当該削ぎ切り刃の駆動方向に沿って前記ワークを切る刃面部と、前記ワークの外面を押圧する押圧部が交互に配置されていることを特徴とする。
【0010】
上記の構成において、ワークの肉部を削ぎ切りする場合には、ワークをワーク保持部に保持させ、ワーク保持部とカッター装置を相対移動装置によって削ぎ切り方向に相対移動させる。この状態でカッター装置の削ぎ切り刃を刃面に沿う方向に駆動させ、削ぎ位置操作部によってカッター装置の削ぎ切り刃をワークの削ぎ切り部位に近接させる。これにより、削ぎ切り刃がワークの芯部分に押し付けられ、ワークの削ぎ切り方向の相対移動に伴ってワークの肉部が削ぎ切り刃によって削ぎ切りされる。このとき、刃面に沿う方向に駆動される削ぎ切り刃は、ワークを切る刃面部と、ワークの外面を押圧する押圧部が交互にワークに臨むことになる。これにより、一部の刃面部の刃先がワークに食い込もうとすると、その直後に隣接する押圧部がワークを押圧してその食い込みが解除され、結果としてワークの芯部分への刃先の食い込みが抑制される。
【0011】
前記ワークは、骨部に肉部が付着した骨付き肉であり、前記ワーク保持部は、前記骨付き肉の前記骨部を保持し、前記カッター装置は、前記骨付き肉の前記肉部を前記骨部から削ぎ切りするようにしても良い。
【0012】
この場合、複雑な骨部のつなぎ目があるうえ、骨部に軟骨と硬骨が複雑に入り組んで混在することから、従来困難と思われていた骨付き肉の骨部からの肉部の削ぎ切りを確実に実現することができる。
【0013】
本発明に係るワークの削ぎ切り方法は、ワークに当接する位置に、前記ワークを切る刃面部と、前記ワークの外面を押圧する押圧部が駆動方向に沿って交互に配置された削ぎ切り刃を用い、前記削ぎ切り刃を駆動しつつ、前記ワークと前記削ぎ切り刃を削ぎ切り方向に相対移動させ、相対移動するワークに対し、前記削ぎ切り方向と交差する方向から前記削ぎ切り刃を変位させることを特徴とする。
【0014】
この場合、ワークに当接する位置に刃面部と押圧部が交互に配置された削ぎ切り刃が駆動し、その状態で、相対移動するワークに対し、削ぎ切り刃が削ぎ切り方向と交差する方向から押し当てられる。この結果、ワークの肉部は、削ぎ切り刃の刃先の芯部分への食い込みを招くことなく、ワークの芯部分から容易に剥離される。
【0015】
前記ワークは、骨部に肉部が付着した骨付き肉であり、前記骨部の長手方向に沿って相対移動する前記骨付き肉に対し、前記削ぎ切り方向と交差する方向の前記削ぎ切り刃の位置を前記骨部の外面形状に沿って変位させるようにしても良い。
【発明の効果】
【0016】
本発明に係る削ぎ切り装置、及び、ワークの削ぎ切り方法は、ワークの削ぎ切り時に、削ぎ切り刃の刃面部と押圧部が交互にワークに臨むことになるため、ワークの芯部分への刃先の食い込みを抑制することができる。
したがって、本発明に係る削ぎ切り装置や削ぎ切り方法を採用した場合には、ワークが骨付き肉であるときに、肉部に対するスムーズな削ぎ切りによって製品である肉部の歩留まりの低下や、孔開き等の品質の低下を抑制できるうえ、刃先が骨部に食い込むことによる肉部への残骨の混入や、刃先のチッピングの発生を抑制することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
【
図1】
図1は、本発明の実施形態の削ぎ切り装置の正面図である。
【
図2】
図2は、本発明の実施形態の複数のカッター装置の上面図である。
【
図3】
図3は、本発明の実施形態の丸刃の上面図である。
【
図4】
図4は、本発明の実施形態の削ぎ切り装置の作動状態を示す正面図である。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下、本発明の実施形態を図面に基づいて説明する。なお、以下の実施形態に記載されている構成部品の材質や形状、相対的な配置等は、特に特定的な記載がない限り、本発明の範囲をそれのみに限定するものではない。
【0019】
図1は、本実施形態の削ぎ切り装置1の正面図である。
図2は、本発明の実施形態の複数のカッター装置12の上面図である。
図3は、本発明の実施形態の丸刃15の上面図である。
削ぎ切り装置1は、長手方向に延びる芯部の周囲に肉部(剥離対象部)が存在するワークから肉部を削ぎ切りによって剥離させるための装置である。一例を挙げれば、削ぎ切り装置1は、食鳥腿肉等の骨付き肉2(ワーク)の骨部bから肉部mを剥離させるのに用いられる。以下では、ワークの一例として、骨付き肉2である食鳥腿肉を例に挙げて説明する。食鳥腿肉(骨付き肉2)は、大腿骨b1と脛骨b2が膝関節b3によって連結され、脛骨b2の端部に足首b4が連結されている。
【0020】
図1に示す削ぎ切り装置1は、骨付き肉2を下向きにして足首b4(骨部b)を保持するクランパ10(ワーク保持部)と、クランパ10を昇降させる昇降装置11(相対移動装置)と、クランパ10の上昇動作との協働によって骨付き肉2の骨部bから肉部mを削ぎ切りによって剥離させる複数のカッター装置12と、上下方向(削ぎ切り方向)に相対移動する骨付き肉2に対し、水平方向(削ぎ切り方向と交差する方向)からカッター装置12を近接離反させる(カッター装置12の位置を変位させる)カッター移動装置(削ぎ位置操作部)100と、を備えている。本実施形態では、
図2に示すように、カッター装置12は、クランパ10に吊り下げられた骨付き肉2の骨部bの周囲を取り囲むように三つ配置されている。ただし、カッター装置12の設置数は三つに限定されるものではない。
なお、
図1に示す削ぎ切り装置1は、骨付き肉2の骨部bから肉部mを削ぎ切りによって剥離させる処理ステーションに設置されており、骨付き肉2は前処理を完了した状態で他の処理ステーションから搬送されてくる。前段の他の処理ステーションでは、例えば、脛骨b2の足首b4側端部の周域の肉部mに対する切込み入れ処理や、骨部bの長手方向に沿わせた肉部mの筋入れ処理等が行われる。各処理ステーションの間は、共通のクランパ10が骨付き肉2の足首b4を保持した状態で移動する。
【0021】
クランパ10は、骨付き肉2の足首b4の保持と、その解除を行える構造とされている。
昇降装置11は、骨付き肉2の骨部b(足首b4)を保持したクランパ10を所定速度で上昇させることにより、骨付き肉2の骨部bを、カッター装置12に対して上下方向に相対移動させる。本実施形態では、上下方向の位置を固定したカッター装置12に対し、昇降装置11が骨付き肉2の骨部bを上方に上昇させることにより、カッター装置12による肉部mの削ぎ切りが可能とされている。本実施形態では、昇降装置11が相対移動装置を構成している。
ただし、骨付き肉2の骨部bをクランパ10によって固定し、カッター装置12側を下方に移動させることも可能である。この場合、カッター装置12を下方に移動させる装置が相対移動装置を構成する。
【0022】
カッター装置12は、水平姿勢で回転する削ぎ切り用の丸刃15(削ぎ切り刃)と、丸刃15を回転させる駆動ユニット16と、を備えている。各カッター装置12の駆動ユニット16は、対応するカッター移動装置に保持されている。
【0023】
カッター移動装置は、例えば、駆動軸回りに水平方向に回動可能なアーム部の先端にカッター装置12(駆動ユニット16)が保持されている。カッター移動装置の各アーム部は、カッター装置12の丸刃15を骨付き肉2の骨部bから離間した初期位置から骨部bに近接する位置(以下、「近接位置」と称する。)まで水平に移動させる。また、カッター移動装置は、丸刃15が骨付き肉2の肉部mを切断した後には、カッター装置12の丸刃15を骨付き肉2の骨部bから離間した初期位置まで水平に移動させる。カッター移動装置は、カッター装置12の丸刃15を、アーム部を通して初期位置と近接位置の間で移動させるためのエアシリンダ等の図示しないアクチュエータを備えている。このアクチュエータと、アーム部のいずれか一方には、カッター装置12を骨付き肉2の骨部bの外周面方向に付勢するためのばね部材等の付勢手段が設けられている。
なお、三つのカッター装置12は、カッター移動装置によって近接位置まで移動したときには、各丸刃15が骨付き肉2の骨部bの周囲を等間隔で取り囲むようになる。
【0024】
図3に示す丸刃15は、中心部が駆動ユニット16の回転軸に連結される円板状の丸刃本体の外周部に、丸刃本体の回転中心oを中心とした円弧形状の複数の刃面(刃面部)17が離間して配置されている。また、丸刃本体の外周部のうちの隣接する各刃面17の間には、刃面17の形成されていない押圧部18が配置されている。刃面(刃面部)17は、丸刃本体の回転により骨付き肉2の肉部mを切断し、押圧部18は、丸刃本体の回転により骨付き肉2の肉部mや骨部bの外面を押圧する。
【0025】
各刃面17は、夫々の刃先の稜線が回転中心oを中心とした一定半径の円周上に並ぶように形成されている。また、各刃面17の刃先は、丸刃本体の径方向外側に向かって収斂し、丸刃本体を回転軸と直交する方向から見たときに、回転する刃先の稜線が一直線上に並ぶように形成されている。
本実施形態の場合、丸刃本体の外周部に配置される刃面17と押圧部18とは、回転中心oを中心に等角度となる領域に交互に形成されている。
【0026】
また、丸刃本体の外周部に形成される押圧部18は、その径方向外側の端部が、刃面17の刃先の稜線部(刃面の径方向外側の端部)よりも径方向内側に位置されている。具体的には、押圧部18の径方向外側の縁部は、隣接する刃面17の刃先の周方向の端部17eを結ぶ直線形状に形成されている。
【0027】
丸刃15は、駆動ユニット16の動力によって回転し、その状態で骨付き肉2の骨部bとその近傍の肉部mに丸刃本体の外周部が水平方向から押し付けられると、丸刃本体の外周部の刃面17と押圧部18とが骨付き肉2の骨部bの方向に交互に臨むことになる。このため、丸刃本体の回転時には、刃面17による肉部mの切断と、押圧部18による骨部bへの押し付け(刃面の食い込みの開放)が交互に行われる。
【0028】
図1は、カッター装置12の丸刃15によって骨付き肉2の脛骨b2の周囲の肉部mを削ぎ切りしている状態を示している。これに対し、
図4は、カッター装置12の丸刃15によって骨付き肉2の膝関節b3から大腿骨b1の一部にかけての肉部mを削ぎ切りしている状態を示している。
図4は、
図1と同様の削ぎ切り装置1の正面図である。
図4に示す状態では、クランパ10に保持された骨付き肉2がカッター装置12の丸刃15を通過する際に、膝関節b3回りの腱と筋膜が周囲の他の肉部mとともに丸刃15によって連続して削ぎ切りされる。
【0029】
つづいて、削ぎ切り装置1による骨付き肉2の削ぎ切り工程(削ぎ切り方法)の詳細について説明する。
クランパ10に保持されて下降位置にある骨付き肉2は、前段の他の処理ステーションにおいて、脛骨b2の足首b4側端部の周域の肉部mに対する切込み入れ処理と、骨部bの長手方向に沿わせた肉部mの筋入れ処理を終えている。
【0030】
この状態からクランパ10が昇降装置11によって上方に引き上げられ、骨付き肉2の脛骨b2の端部側の切込み部分がカッター装置12の設置高さに近づくと、カッター移動装置が作動して複数のカッター装置12の丸刃15が骨部bに近接する位置まで移動する。このとき、各カッター装置12の丸刃15は駆動ユニット16の駆動によって回転しており、丸刃本体の外周部は肉部mの切込み部分を通して骨部bの外周面に当接する。
【0031】
この状態からクランパ10を通した骨部bの上昇が続くと、丸刃15の回転によって骨部bの外周から肉部mが上部側から下方に向かって連続して削ぎ切りされるようになる。このとき、各カッター装置12は図示しない付勢手段によって骨部bの方向に弾性的に付勢されているため、各カッター装置12の丸刃15の外周部は骨部bの外面の形状変化に追従して骨部bとの当接を継続する(各カッター装置12の丸刃15の外周部の位置を、骨部bの外面の形状変化に追従して変位させる)。
【0032】
例えば、クランパ10を通した骨部bの上昇により、骨付き肉2の膝関節b3の近傍部が各カッター装置12の丸刃15まで移動すると、回転する丸刃15よって膝関節b3につながる腱や筋膜が他の肉部mとともに連続して削ぎ切りされる。膝関節b3は、外面形状が複雑に入り組んでいるうえに、軟骨と硬骨が混在している部位であるため、回転する丸刃15の刃面の刃先は膝関節b3の軟骨や硬骨に食い込み易くなる。しかし、丸刃15の丸刃本体の外周部には、円弧状の刃面17と、径方向の端部が刃面17よりも内側に位置される押圧部18が交互に配置されているため、軟骨や硬骨に対する刃面17の食い込みが押圧部18によって抑制される。
こうして、骨付き肉2の大腿骨b1の上端部分が各カッター装置12の丸刃15の高さ位置まで上昇すると、その時点で丸刃15による肉部mの削ぎ切りは終了する。
【0033】
以上のように、本実施形態の削ぎ切り装置1は、削ぎ切り用の丸刃15(削ぎ切り刃)の骨付き肉2に当接する外周部には、骨付き肉2の肉部mを切断する刃面(刃面部)17と、骨付き肉2の肉部mや骨部bの外面を押圧する押圧部18が交互に配置されている。このため、骨付き肉2の削ぎ切り時に、相対移動する骨付き肉2に対して回転する丸刃15が水平方向から押し付けられると、丸刃15の刃面17と押圧部18が交互に骨付き肉2に臨むことになる。このため、一部の刃面17の刃先が骨付き肉2の骨部bに食い込もうとすると、その直後に隣接する押圧部18が骨部bを押圧してその食い込みが解除され、結果として骨部bへの刃先の食い込みが抑制される。
したがって、本実施形態の削ぎ切り装置1を採用した場合には、肉部mに対するスムーズな削ぎ切りによって製品である肉部mの歩留まりの低下や、孔開き等の品質の低下を抑制できるうえ、刃先が骨部bに食い込むことによる肉部mへの残骨の混入や、刃先のチッピングの発生を抑制することができる。
【0034】
本実施形態の削ぎ切り装置1は、骨付き肉2の肉部mを削ぎ切りする削ぎ切り刃として、回転する丸刃15を採用している。しかし、削ぎ切り刃は、回転する丸刃15に限定されるものではなく、例えば、刃面の刃先が直線状に延び、往復動によって対象物を切断する直線刃であっても良い。この場合も、骨付き肉に当接する部分には、複数の刃面と押圧部が交互に配置される。押圧部は、隣接する刃面の刃先に対して僅かに窪む形状にすることが望ましく、隣接する刃面の刃先の端部から滑らかな円弧を描いて窪む形状であればさらに望ましい。
【0035】
ただし、本実施形態の削ぎ切り装置1では、削ぎ切り刃として回転する丸刃15を採用し、丸刃本体の外周部に刃面17と押圧部18が交互に配置されるとともに、押圧部18の径方向外側の端部が刃面17の刃先よりも径方向内側に位置されている。このため、上述のように円滑な削ぎ切りを行うことができるとともに、カッター装置12の切断部を小型化することができる。
したがって、本構成を採用した場合には、相対移動する骨付き肉2の周囲にカッター装置12を複数配置し、骨付き肉2の肉部mを効率良く、かつ確実に削ぎ切りすることができる。
【0036】
また、本実施形態では、丸刃15の押圧部18は、径方向外側の縁部が隣接する刃面17の刃先の周方向の端部17eを結ぶ直線形状に形成されている。このため、丸刃本体の外周上で刃面17と押圧部18の間に凹状の段差部ができない。したがって、本構成を採用した場合には、丸刃本体の回転時に、刃面の回転方向の始端部や終端部に骨部の硬い部分や尖った部分に接触しても、刃面にチッピングが生じにくくなる。
また、本構成の場合、刃面17と押圧部18の間に凹状の段差部ができないため、丸刃15による肉部mの削ぎ切り時に、刃面17の回転方向の始端部や終端部に剥離した肉部mの破片が引っ掛かりにくくなる。この結果、丸刃15に肉片が堆積することによって肉部mの削ぎ切りが阻害されることが無くなり、肉部mの剥離をスムーズに継続させることが可能になる。
【0037】
また、本実施形態の削ぎ切り装置1は、削ぎ位置操作部であるカッター移動装置100がカッター装置12の丸刃15を骨付き肉2の骨部bの方向に付勢するばね部材等の付勢手段を備えている。このため、骨付き肉2の削ぎ切り時に、丸刃15の外周部を適度な付勢力によって骨部bの外周面に弾性的に押し付け、丸刃15を骨部のbの外面形状に円滑に追従させることができる。
したがって、本実施形態の削ぎ切り装置1を採用した場合には、製品である剥離される肉部mの歩留まりをより高めることができる。
【0038】
本実施形態の丸刃15の用途は、骨付き肉2の削ぎ切りに限定されるものではなく、他の部分に比較して硬度の高い芯部分の周囲に、肉部(食肉に限らない)が存在するワークであれば、種々のワークの削ぎ切りに用いることができる。
しかし、本実施形態のように、丸刃15を骨付き肉2の肉部mの削ぎ切りに用いる場合には、膝関節b3等の複雑な骨部bのつなぎ目があり骨部bに軟骨と硬骨が複雑に入り組んで混在することから、従来困難と思われていた骨部bからの肉部mの削ぎ切りを確実に実現することができる。
【0039】
なお、本発明は上記の実施形態に限定されるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲で種々の設計変更が可能である。
例えば、上記の実施形態では、丸刃本体の押圧部18の径方向外側の縁部が、隣接する刃面17の刃先の周方向の端部17eを結ぶ直線形状に形成されているが、押圧部18の径方向外側の縁部の形状はこの形状に限定されない。押圧部18の径方向外側の縁部の形状は、少なくとも一部に曲線部等を含む非直線形状であっても良い。
ただし、押圧部18の径方向外側の縁部が非直線形状の場合、その形状は、隣接する刃面17の刃先の周方向の端部17eを結ぶ直線と、刃面17の刃先を通る仮想円の間の領域からはみ出さない形状であることが望ましい。この場合、刃面17の強度の維持や、肉片の挟み込みの防止の観点から特に有利となる。
【符号の説明】
【0040】
1…削ぎ切り装置、2…骨付き肉(ワーク)、10…クランパ(ワーク保持部)、11…昇降装置(相対移動装置)、12…カッター装置12、15…丸刃(削ぎ切り刃)、17…刃面、18…押圧部、100…カッター移動装置(削ぎ位置操作部)