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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】共役ジエン系ゴムの製造方法
(51)【国際特許分類】
   C08G 81/02 20060101AFI20240919BHJP
   B60C 1/00 20060101ALI20240919BHJP
   C08F 8/42 20060101ALI20240919BHJP
   C08K 3/36 20060101ALI20240919BHJP
   C08L 15/00 20060101ALI20240919BHJP
   C08G 77/442 20060101ALN20240919BHJP
【FI】
C08G81/02
B60C1/00 A
C08F8/42
C08K3/36
C08L15/00
C08G77/442
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2018551614
(86)(22)【出願日】2017-11-13
(86)【国際出願番号】 JP2017040757
(87)【国際公開番号】W WO2018092716
(87)【国際公開日】2018-05-24
【審査請求日】2020-10-23
【審判番号】
【審判請求日】2022-07-05
(31)【優先権主張番号】P 2016223566
(32)【優先日】2016-11-16
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000229117
【氏名又は名称】日本ゼオン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000486
【氏名又は名称】弁理士法人とこしえ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】櫻井 拓郎
【合議体】
【審判長】▲吉▼澤 英一
【審判官】岡谷 祐哉
【審判官】近野 光知
(56)【参考文献】
【文献】中国特許出願公開第103848940(CN,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08C19/00-19/44
C08F2/00-299/08
C08G77/00-77/62
C08G81/00-81/02
C08K3/00-13/08
C08L1/00-101/16
B60C1/00
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を含む単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る第1工程と、
前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを、前記第1工程で使用した重合開始剤1モルに対して、前記ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数換算で1モル以上の割合にて添加して反応させる第2工程と、
前記第2工程で得られるポリオルガノシロキサンを反応させた共役ジエン系重合体鎖に、下記一般式(2)で表される化合物を反応させる第3工程とを備える共役ジエン系ゴムの製造方法。
【化10】
(一般式(1)中、R~Rは、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。XおよびXは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、炭素数1~5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であり、複数あるXは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは3~200の整数、nは0~200の整数、kは0~200の整数であり、m+n+kは3以上である。)
【化11】
(一般式(2)中、Rは、ヒドロカルビル基であり、Aは、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とポリオルガノシロキサンとの反応により生成した反応残基と反応しうる基であり、Aは、活性水素原子を有する1級アミノ基を含有する基であり、pは0~2の整数、qは1~3の整数、rは1~3の整数、p+q+r=4である。)
【請求項2】
前記一般式(2)のAが、-OR10(R10は水素原子またはヒドロカルビル基)で表される基である請求項1に記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項3】
前記重合開始剤として有機アルカリ金属アミド化合物を用いる請求項1または2に記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項4】
前記有機アルカリ金属アミド化合物が、下記一般式(3)で表される化合物である請求項に記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【化12】
(一般式(3)中、Mはアルカリ金属原子を表し、R11、R12は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基の保護基、または加水分解して水酸基を生じうる基を表し、R11およびR12は互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成してもよく、該環構造を形成する場合には、これらが結合する窒素原子に加えて、これらが結合する窒素原子以外のヘテロ原子とともに環構造を形成していてもよい。)
【請求項5】
前記第1工程が、
不活性溶媒中で、イソプレン、または、イソプレンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体を、重合開始剤により重合し、イソプレン単量体単位80~100重量%、および芳香族ビニル単量体単位0~20重量%を含む活性末端を有する重合体ブロック(A)を形成させる工程と、
前記活性末端を有する重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエン、または1,3-ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体と、を混合して重合反応を継続させ、1,3-ブタジエン単量体単位50~100重量%および芳香族ビニル単量体単位0~50重量%を含む活性末端を有する重合体ブロック(B)を、重合体ブロック(A)と一続きにして形成させることにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程とを備える請求項1~4のいずれかに記載の共役ジエン系ゴムの製造方法。
【請求項6】
請求項1~5のいずれかに記載の製造方法により得られる共役ジエン系ゴム。
【請求項7】
請求項6に記載の共役ジエン系ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、シリカ10~200重量部を含有してなるゴム組成物。
【請求項8】
架橋剤をさらに含有する請求項7に記載のゴム組成物。
【請求項9】
請求項8に記載のゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物。
【請求項10】
請求項9に記載のゴム架橋物を含んでなるタイヤ。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、共役ジエン系ゴムの製造方法に関し、より詳しくは、ホットフロー性(凝固クラムの互着のし難さ)に優れ、かつ、低発熱性およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を与えることのできる共役ジエン系ゴムを製造するための方法に関する。また、本発明は、この製造方法により得られる共役ジエン系ゴム、該共役ジエン系ゴムを含有するゴム組成物およびそのゴム架橋物にも関する。
【背景技術】
【0002】
近年、自動車用のタイヤには、環境問題および資源問題から低燃費性が強く求められる一方で、安全性の面から優れたウエットグリップ性が求められている。充填剤としてシリカを配合したゴム組成物の架橋物は、カーボンブラックを配合したゴム組成物の架橋物に比べて、低発熱性に優れるため、タイヤを構成した場合の転がり抵抗が小さくなる。そのため、シリカを配合したゴム組成物の架橋物を用いてタイヤを構成することにより、低燃費性に優れたタイヤを得ることができる。
【0003】
しかし、従来のゴムにシリカを配合しても、ゴムとシリカとの親和性が不十分であるため、これらは分離しやすく、そのため、このことに起因して、架橋前のゴム組成物の加工性が悪く、また、これを架橋して得られるゴム架橋物の低発熱性が不十分となる。
【0004】
そこで、ゴムとシリカとの親和性を改良すべく、例えば、特許文献1や特許文献2などに開示されるような種々のシランカップリング剤を、ゴム組成物に添加することが提案されている。しかし、シランカップリング剤を扱うには高度な加工技術が必要であり、また、シランカップリング剤が高価なことから配合量が多くなると、タイヤの製造コストが高くなるという問題がある。
【0005】
このような問題を解決するために、たとえば、特許文献3などに開示されるように、溶液重合法によりゴム重合体を得る際に、重合体鎖の活性末端に変性剤を反応させることにより、ゴム自体にシリカとの親和性を持たせる技術が検討されている。たとえば、特許文献3では、ゴム重合体の活性末端に、環構造中に少なくとも3つのシロキサンユニットを含む環状化合物からなる変性剤を反応させ、次いで、得られた反応物に、アミノ窒素原子に活性水素原子が結合しているアミンを反応させることで、アミンで官能化されたゴム重合体を得る技術が開示されている。
【0006】
この特許文献3の技術によれば、ゴムとシリカとの親和性が多少改善し、これにより、得られるゴム架橋物の低発熱性およびウエットグリップ性が一定程度向上するものの、近年の自動車用のタイヤへの低燃費性およびウエットグリップ性への要求の高まりから、さらなる低発熱性およびウエットグリップ性の向上が望まれている。また、この特許文献1の技術により得られるゴム重合体は、ホットフロー性が十分でなく、そのため、その製造時において、スチームストリッピングなどにより、重合体溶液からゴム重合体を回収する際に、ゴム重合体の凝固クラムが互着してしまい、これにより肥大化し、凝固槽の壁面や攪拌翼に付着したり、凝固クラム移送配管に詰まりが発生したり、凝固時の操業が不安定になるという問題もあった。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2011-46640号公報
【文献】特開2012-17291号公報
【文献】特表2008-518086号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0008】
本発明は、このような実状に鑑みてなされたものであり、ホットフロー性(凝固クラムの互着のし難さ)に優れ、かつ、低発熱性およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を与えることができる、共役ジエン系ゴムを製造するための方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0009】
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究した結果、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、変性剤として、特定のポリオルガノシロキサンを特定量反応させ、次いで、ポリオルガノシロキサンを反応させた共役ジエン系重合体鎖に、変性剤として、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とポリオルガノシロキサンとの反応により生成した反応残基と反応しうる基と、窒素原子を含有する基とを有する化合物を反応させることにより得られる共役ジエン系ゴムによれば、ホットフロー性に優れ、これにより、凝固クラムの互着の発生を有効に防止することができ、しかも、低発熱性およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を与えることができることを見出し、本発明を完成させるに至った。
【0010】
すなわち、本発明によれば、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を含む単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る第1工程と、前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを、前記第1工程で使用した重合開始剤1モルに対して、前記ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数換算で1モル以上の割合にて添加して反応させる第2工程と、前記第2工程で得られるポリオルガノシロキサンを反応させた共役ジエン系重合体鎖に、下記一般式(2)で表される化合物を反応させる第3工程とを備える共役ジエン系ゴムの製造方法が提供される。
【化1】
(一般式(1)中、R~Rは、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。XおよびXは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、炭素数1~5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であり、複数あるXは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは3~200の整数、nは0~200の整数、kは0~200の整数であり、m+n+kは3以上である。)
【化2】
(一般式(2)中、Rは、ヒドロカルビル基であり、Aは、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とポリオルガノシロキサンとの反応により生成した反応残基と反応しうる基であり、Aは、窒素原子を含有する基であり、pは0~2の整数、qは1~3の整数、rは1~3の整数、p+q+r=4である。)
【0011】
本発明の製造方法において、前記一般式(2)のAが、-OR10(R10は水素原子またはヒドロカルビル基)で表される基であることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記一般式(2)のAが、活性水素原子を有する1級アミノ基および/または活性水素原子を有する2級アミノ基を含有する基であることが好ましい。
本発明の製造方法において、前記重合開始剤として有機アルカリ金属アミド化合物を用いることが好ましく、前記有機アルカリ金属アミド化合物が、下記一般式(3)で表される化合物であることがより好ましい。
【化3】
(一般式(3)中、Mはアルカリ金属原子を表し、R11、R12は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基の保護基、または加水分解して水酸基を生じうる基を表し、R11およびR12は互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成してもよく、該環構造を形成する場合には、これらが結合する窒素原子に加えて、これらが結合する窒素原子以外のヘテロ原子とともに環構造を形成していてもよい。)
【0012】
本発明の製造方法において、前記第1工程が、不活性溶媒中で、イソプレン、または、イソプレンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体を、重合開始剤により重合し、イソプレン単量体単位80~100重量%、および芳香族ビニル単量体単位0~20重量%を含む活性末端を有する重合体ブロック(A)を形成させる工程と、前記活性末端を有する重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエン、または1,3-ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体と、を混合して重合反応を継続させ、1,3-ブタジエン単量体単位50~100重量%および芳香族ビニル単量体単位0~50重量%を含む活性末端を有する重合体ブロック(B)を、重合体ブロック(A)と一続きにして形成させることにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程とを備えることが好ましい。
【0013】
また、本発明によれば、上記の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムが提供される。
さらに、本発明によれば、上記共役ジエン系ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、シリカ10~200重量部を含有してなるゴム組成物が提供される。
本発明のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有してなるものであることが好ましい。
【0014】
また、本発明によれば、上記ゴム組成物を架橋してなるゴム架橋物、および該ゴム架橋物を含んでなるタイヤが提供される。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、ホットフロー性に優れ、これにより、凝固クラムの互着を有効に防止することができ、しかも、低発熱性およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を与えることができる共役ジエン系ゴム、該共役ジエン系ゴムを含有するゴム組成物、該ゴム組成物を架橋してなり、低発熱性、およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物、および該ゴム架橋物を含んでなるタイヤを提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0016】
<共役ジエン系ゴムの製造方法>
本発明の共役ジエン系ゴムの製造方法は、
不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を含む単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る第1工程と、
前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、後述する一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを、前記第1工程で使用した重合開始剤1モルに対して、前記ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数換算で1モル以上添加して反応させる第2工程と、
前記第2工程で得られるポリオルガノシロキサンを反応させた共役ジエン系重合体鎖に、後述する一般式(2)で表される化合物を反応させる第3工程とを備える。
【0017】
<第1工程>
本発明の製造方法の第1工程は、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、共役ジエン化合物を含む単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程である。
【0018】
本発明の製造方法の第1工程において、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得るために、単量体として用いる共役ジエン化合物としては、特に限定されないが、1,3-ブタジエン、イソプレン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-フェニル-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、2-メチル-1,3-ペンタジエン、1,3-ヘキサジエン、4,5-ジエチル-1,3-オクタジエン、3-ブチル-1,3-オクタジエンなどを挙げることができる。これらのなかでも、1,3-ブタジエンおよびイソプレンが好ましい。これらの共役ジエン化合物は、1種類を単独で使用しても2種類以上を組合せて用いてもよい。
【0019】
また、本発明の製造方法の第1工程において、重合に用いる単量体として、共役ジエン化合物とともに芳香族ビニル化合物を用いてもよい。単量体として用いる芳香族ビニル化合物としては、スチレン、メチルスチレン、エチルスチレン、t-ブチルスチレン、α-メチルスチレン、α-メチル-p-メチルスチレン、クロルスチレン、ブロモスチレン、メトキシスチレン、ジメチルアミノメチルスチレン、ジメチルアミノエチルスチレン、ジエチルアミノメチルスチレン、ジエチルアミノエチルスチレン、シアノエチルスチレン、ビニルナフタレンなどが挙げられる。これらのなかでも、スチレンが好ましい。本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖は、共役ジエン単量体単位50~100重量%を含むものが好ましく、52~95重量%を含むものがより好ましく、また、芳香族ビニル単量体単位0~50重量%を含むものが好ましく、5~48重量%を含むものがより好ましい。
【0020】
さらに、本発明の製造方法の第1工程においては、共役ジエン化合物とともに、芳香族ビニル化合物以外の、共役ジエン化合物と共重合可能な化合物を用いてもよい。このような共役ジエン化合物と共重合可能な化合物としては、エチレン、プロピレン、1-ブテンなどの鎖状オレフィン化合物;シクロペンテン、2-ノルボルネンなどの環状オレフィン化合物;1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5-エチリデン-2-ノルボルネンなどの非共役ジエン化合物;(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸ブチルなどの(メタ)アクリル酸エステル;(メタ)アクリロニトリル、(メタ)アクリルアミドなどのその他の(メタ)アクリル酸誘導体;などが挙げられる。これらの共役ジエン化合物と共重合可能な化合物は、本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖中に、単量体単位として、10重量%以下とするのが好ましく、5重量%以下とするのがより好ましい。
【0021】
重合に用いる不活性溶媒としては、溶液重合において通常使用されるものであり、重合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。不活性溶媒の具体例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタンなどの鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサンなどの脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレンなどの芳香族炭化水素;などが挙げられる。これらの不活性溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。不活性溶媒の使用量は、特に限定されないが、単量体濃度が、たとえば1~50重量%となる量であり、好ましくは10~40重量%となる量である。
【0022】
重合に用いる重合開始剤としては、共役ジエン化合物を含む単量体を重合させて、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を与えることができるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、およびランタン系列金属化合物などを主触媒とする重合開始剤を挙げることができる。有機アルカリ金属化合物としては、たとえば、n-ブチルリチウム、sec-ブチルリチウム、t-ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4-ジリチオブタン、1,4-ジリチオ-2-エチルシクロヘキサン、1,3,5-トリリチオベンゼン、1,3,5-トリス(リチオメチル)ベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物;などが挙げられる。また、有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、ジ-n-ブチルマグネシウム、ジ-n-ヘキシルマグネシウム、ジエトキシカルシウム、ジステアリン酸カルシウム、ジ-t-ブトキシストロンチウム、ジエトキシバリウム、ジイソプロポキシバリウム、ジエチルメルカプトバリウム、ジ-t-ブトキシバリウム、ジフェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ジステアリン酸バリウム、ジケチルバリウムなどが挙げられる。ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤としては、たとえば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウムなどのランタン系列金属と、カルボン酸、およびリン含有有機酸などとからなるランタン系列金属の塩を主触媒とし、これと、アルキルアルミニウム化合物、有機アルミニウムハイドライド化合物、有機アルミニウムハライド化合物などの助触媒とからなる重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤の中でも、有機モノリチウム化合物、および有機多価リチウム化合物が好ましく用いられ、有機モノリチウム化合物がより好ましく用いられ、n-ブチルリチウムが特に好ましく用いられる。
なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ピペリジン、ヘキサメチレンイミン、およびヘプタメチレンイミンなどの2級アミン化合物と反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。有機アルカリ金属アミド化合物を重合開始剤として用いることにより、得られるゴム架橋物を、より低発熱性およびウエットグリップ性に優れたものとすることができる。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0023】
有機アルカリ金属アミド化合物としては、たとえば、有機アルカリ金属化合物に、2級アミン化合物を反応させたものなどが挙げられ、なかでも、本発明の製造方法においては、下記一般式(3)で表される化合物を好適に用いることができる。
【化4】
【0024】
一般式(3)中、Mはアルカリ金属原子を表し、R11、R12は、それぞれ独立して、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基の保護基、または加水分解して水酸基を生じうる基を表し、R11およびR12は互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成してもよく、該環構造を形成する場合には、これらが結合する窒素原子に加えて、これらが結合する窒素原子以外のヘテロ原子とともに環構造を形成していてもよい。
【0025】
アルキル基としては、特に限定されないが、炭素数1~20のアルキル基が好ましく、炭素数1~10のアルキル基がより好ましい。このようなアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、イソブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、n-デシル基などが挙げられる。
【0026】
シクロアルキル基としては、特に限定されないが、炭素数3~20のシクロアルキル基が好ましく、炭素数3~12のシクロアルキル基がより好ましい。このようなシクロアルキル基としては、たとえば、シクロプロピル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、シクロドデシル基などが挙げられる。
【0027】
アリール基としては、特に限定されないが、炭素数6~12のアリール基が好ましく、炭素数6~10のアリール基がより好ましい。このようなアリール基としては、たとえば、フェニル基、1-ナフチル基、2-ナフチル基などが挙げられる。
【0028】
アラルキル基としては、特に限定されないが、炭素数7~13のアラルキル基が好ましく、炭素数7~9のアラルキル基がより好ましい。このようなアラルキル基としては、たとえば、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
【0029】
アミノ基の保護基としては、特に限定されず、アミノ基の保護基として作用する基であればよいが、たとえば、アルキルシリル基などが挙げられる。このようなアルキルシリル基としては、たとえば、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、トリフェニルシリル基、メチルジフェニルシリル基、エチルメチルフェニルシリル基、tert-ブチルジメチルシリル基などが挙げられる。
なお、R11、および/またはR12がアミノ基の保護基である場合には、アミノ基の保護基が外れることにより、得られる共役ジエン系ゴムを形成する重合体鎖の一方の末端において、後述する一般式(5)におけるR13、および/またはR14が水素原子である構造を導入することができる。
【0030】
加水分解して水酸基を生じうる基としては、特に限定されず、たとえば、酸などの存在下で加水分解することで、水酸基を生成する基であればよいが、たとえば、アルコキシアルキル基、エポキシ基を含有する基などが挙げられる。
アルコキシアルキル基としては、メトキシメチル基、エトキシメチル基、エトキシエチル基、プロポキシメチル基、ブトキシメチル基、ブトキシエチル基、プロポキシエチル基などが挙げられる。
また、エポキシ基を含有する基としては、たとえば下記一般式(4)で表される基などが挙げられる。
-Z-Z-E (4)
一般式(4)中、Zは炭素数1~10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、Zはメチレン基、硫黄原子または酸素原子であり、Eはグリシジル基である。
【0031】
また、R11およびR12は互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成していてもよく、この場合における、R11およびR12と、これと結合する窒素原子とで形成される構造の具体例としては、アゼチジン環(R11およびR12が、プロピレン基)、ピロリジン環(R11およびR12が、ブチレン基)、ピペリジン環(R11およびR12が、ペンチレン基)、ヘキサメチレンイミン環(R11およびR12が、ヘキシレン基)などが挙げられる。
11およびR12が互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成する場合、環構造は、4~8員環構造であることが好ましい。
【0032】
また、一般式(3)中、Mはアルカリ金属原子であり、このようなアルカリ金属原子としては、リチウム原子、ナトリウム原子、カリウム原子などが挙げられるが、これらの中でも、重合活性の観点より、リチウム原子が好ましい。
【0033】
本発明の製造方法の第1工程において、重合開始剤として、一般式(3)で表される化合物を用いた場合、有機アルカリ金属アミド化合物を形成するアミン構造が、重合体鎖の重合開始末端に結合した状態で残存することとなる。そのため、重合開始剤として、一般式(3)で表される化合物を用いると、得られる共役ジエン系ゴムを形成する重合体鎖の一方の末端に、下記一般式(5)で表される構造が導入される。
【化5】
【0034】
一般式(5)中、R13、R14は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基の保護基、または加水分解して水酸基を生じうる基を表し、R13およびR14は互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成してもよく、該環構造を形成する場合には、これらが結合する窒素原子に加えて、これらが結合する窒素原子以外のヘテロ原子とともに環構造を形成していてもよい。
【0035】
13、R14となりうるアルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アミノ基の保護基、または加水分解して水酸基を生じうる基としては、一般式(3)におけるR11、R12と同じものを挙げることができ、また、R13およびR14は互いに結合して、これらが結合する窒素原子とともに環構造を形成する場合にも、一般式(3)におけるR11、R12と同じものとすることができる。
なお、R13、R14となりうる水素原子は、アミノ基の保護基が外れることにより、導入される。
【0036】
本発明の製造方法において、重合開始剤として、有機アルカリ金属アミド化合物を用いた場合、得られる共役ジエン系ゴムを、一方の末端にアミン構造を有し、かつ、他方の末端に変性剤に由来する特定の構造を有するものとすることができる。その結果、このようなアミン構造の効果により、得られる共役ジエン系ゴムを用いたゴム架橋物は、より低発熱性およびウエットグリップ性に優れたものとなる。
【0037】
重合開始剤としての有機アルカリ金属アミド化合物を重合系に添加する方法としては、特に限定されず、予め、有機アルカリ金属化合物に、2級アミン化合物を反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物を得て、これを共役ジエン化合物を含む単量体と混合して、重合反応を進行させる方法を採用することができる。あるいは、有機アルカリ金属化合物と、2級アミン化合物とを別々に重合系に添加し、これらを共役ジエン化合物を含む単量体と混合することで、重合系において、有機アルカリ金属アミド化合物を生成させることで、重合反応を進行させる方法を採用してもよい。反応温度等の反応条件は、特に限定されるものではなく、たとえば、目的とする重合反応条件に従えばよい。
【0038】
2級アミン化合物の使用量は、目的とする重合開始剤の添加量に応じて決定すればよいが、有機アルカリ金属化合物1ミリモル当り、通常0.01~1.5ミリモル、好ましくは0.1~1.2ミリモル、より好ましくは0.5~1.0ミリモルの範囲である。
【0039】
重合開始剤の使用量は、目的とする共役ジエン系重合体鎖の分子量に応じて決定すればよいが、単量体1000g当り、通常1~50ミリモル、好ましくは1.5~20ミリモル、より好ましくは2~15ミリモルの範囲である。
【0040】
重合温度は、通常-80~+150℃、好ましくは0~100℃、より好ましくは30~90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などのいずれの様式をも採用できるが、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させる場合は、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との結合のランダム性を制御しやすい点で、回分式が好ましい。
【0041】
また、共役ジエン化合物を含む単量体を重合するにあたり、得られる共役ジエン系重合体鎖における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、不活性有機溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、たとえば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、2,2-ジ(テトラヒドロフリル)プロパンなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらのなかでも、エーテル化合物、および第三級アミンが好ましく、第三級アミンがより好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。これらの極性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.001~100モル、より好ましくは0.01~10モルである。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
【0042】
本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量は、好ましくは1~90重量%、より好ましくは3~80重量%、特に好ましくは5~70重量%である。共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物を低発熱性により優れたものとすることができる。
【0043】
本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)は、特に限定されないが、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値として、100,000~1,000,000が好ましく、150,000~700,000がより好ましく、150,000~500,000が特に好ましい。活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物を、ウエットグリップ性と低発熱性とのバランスが良好なものとすることができる。
【0044】
また、本発明の製造方法の第1工程で得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布も、特に限定されないが、好ましくは1.0~3.0であり、より好ましくは1.0~2.5である。活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の分子量分布(Mw/Mn)が上記範囲内にあると、共役ジエン系ゴムの製造が容易となる。
【0045】
また、本発明の製造方法においては、得られるゴム架橋物を、より低発熱性に優れたものとするためには、第1工程を、次のような工程とすることが好ましい。
すなわち、不活性溶媒中で、イソプレン、またはイソプレンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体を、重合開始剤により重合し、イソプレン単量体単位80~100重量%、および芳香族ビニル単量体単位0~20重量%を含む活性末端を有する重合体ブロック(A)を形成させる工程と、
前記活性末端を有する重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエン、または1,3-ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体と、を混合して重合反応を継続させ、1,3-ブタジエン単量体単位50~100重量%および芳香族ビニル単量体単位0~50重量%を含む活性末端を有する重合体ブロック(B)を、重合体ブロック(A)と一続きにして形成させることにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程と、を備えるものとすることが好ましい。
【0046】
このような工程を採用することにより、第1工程により得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を、イソプレン単量体単位80~100重量%、および芳香族ビニル単量体単位0~20重量%を含む重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエン単量体単位50~100重量%および芳香族ビニル単量体単位0~50重量%を含む重合体ブロック(B)とが一続きにして形成されたものを含むものとすることができる。
以下、このような態様について説明する。
【0047】
[重合体ブロック(A)]
本発明の一態様に係る共役ジエン系重合体鎖中の重合体ブロック(A)は、重合体ブロック(A)中、イソプレン単量体単位80~100重量%および芳香族ビニル単量体単位0~20重量%を含むものであればよいが、イソプレン単量体単位85~95重量%および芳香族ビニル単量体単位5~15重量%を含むものであることが好ましく、イソプレン単量体単位89~95重量%および芳香族ビニル単量体単位5~11重量%を含むものであることがより好ましい。イソプレン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との含有割合が上記範囲内にあると、共役ジエン系ゴムにシリカを配合した場合に、共役ジエン系ゴムとシリカとの親和性が良好となり、これを用いて得られるゴム架橋物の低発熱性をより向上させることができる。
【0048】
重合体ブロック(A)に含まれる芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル化合物としては、上述した芳香族ビニル化合物と同じものを用いることができ、これらの中でもスチレンが好ましい。なお、これらの芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
【0049】
重合体ブロック(A)は、イソプレン単量体単位のみ、またはイソプレン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位からなるものであることが好ましいが、所望により、イソプレン単量体単位、またはイソプレン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位に加えて、その他の単量体単位を含んでいてもよい。その他の単量体単位を構成するために用いられるその他の化合物としては、1,3-ブタジエン、2,3-ジメチル-1,3-ブタジエン、2-クロロ-1,3-ブタジエン、1,3-ペンタジエン、および1,3-ヘキサジエンなどのイソプレン以外の共役ジエン化合物;アクリロニトリル、およびメタクリロニトリルなどのα,β-不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、および無水マレイン酸などの不飽和力ルボン酸または酸無水物;メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、およびアクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸エステル;1,5-ヘキサジエン、1,6-ヘプタジエン、1,7-オクタジエン、ジシクロペンタジエン、および5-エチリデン-2-ノルボルネンなどの非共役ジエン;などが挙げられる。これらの中でも、1,3-ブタジエンが好ましい。これらのその他の単量体は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。重合体ブロック(A)中における、その他の単量体単位の含有割合は、20重量%以下であることが好ましく、10重量%以下であることがより好ましく、6重量%以下であることがさらに好ましい。
【0050】
本発明において、共役ジエン系重合体鎖中の重合体ブロック(A)は、不活性溶媒中、イソプレン、または、イソプレンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体を、重合開始剤により重合することにより形成される。形成された重合体ブロック(A)は、活性末端を有するものとなる。
【0051】
重合体ブロック(A)を形成するために、イソプレン、または、イソプレンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体の重合に用いられる不活性溶媒としては、上述した不活性溶媒と同じものを用いることができる。不活性溶媒の使用量は、単量体濃度が、好ましくは1~80重量%となる量であり、より好ましくは10~50重量%となる量である。
【0052】
重合体ブロック(A)を形成するために用いられる重合開始剤としては、イソプレン、または、イソプレンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体を重合させて、活性末端を有する重合体鎖を与えることができるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、上述した重合開始剤と同じものを用いることができる。
【0053】
重合開始剤の使用量は、目的とする分子量に応じて決定すればよいが、イソプレン、または、イソプレンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体100g当り、好ましくは4~250ミリモル、より好ましくは6~200ミリモル、特に好ましくは10~70ミリモルの範囲である。
【0054】
イソプレン、または、イソプレンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体を重合する際における重合温度は、好ましくは-80~+150℃、より好ましくは0~100℃、さらに好ましくは20~90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式など、いずれの様式をも採用できる。また、結合様式としては、たとえば、ブロック状、テーパー状、およびランダム状などの種々の結合様式とすることができる。
【0055】
また、本発明の一態様に係る製造方法においては、重合体ブロック(A)におけるイソプレン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、重合に際し、不活性溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、上述した極性化合物と同じものを用いることができる。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1モルに対して、0.01~30モルが好ましく、0.05~10モルがより好ましい。極性化合物の使用量が上記範囲内にあると、イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、しかも、重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。また、上記範囲内で極性化合物の使用量を増加させることで、イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量を増加させることができる。
【0056】
重合体ブロック(A)におけるイソプレン単量体単位中のビニル結合含有量は、5~90重量%が好ましく、5~80重量%がより好ましい。イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性をより向上させることができる。なお、本明細書中において、イソプレン単量体単位中のビニル結合含有量とは、イソプレン単量体単位中の、1,2-構造を有するイソプレン単量体単位および3,4-構造を有するイソプレン単量体単位の合計量の割合を指すものとする。
【0057】
重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによって測定されるポリスチレン換算の値として、500~15,000であることが好ましく、1,000~12,000であることがより好ましく、1,500~10,000であることが特に好ましい。重合体ブロック(A)の重量平均分子量が上記範囲内にあると、得られるゴム架橋物の低発熱性をより向上させることができる。
【0058】
また、重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、1.0~1.5であることが好ましく、1.0~1.3であることがより好ましい。重合体ブロック(A)の分子量分布の値(Mw/Mn)が上記範囲内にあると、共役ジエン系ゴムの製造がより容易となる。
【0059】
[重合体ブロック(B)]
本発明の一態様に係る共役ジエン系重合体鎖中の重合体ブロック(B)は、重合体ブロック(B)中、1,3-ブタジエン単量体単位50~100重量%および芳香族ビニル単量体単位0~50重量%を含むものであればよいが、1,3-ブタジエン単量体単位52~95重量%および芳香族ビニル単量体単位5~48重量%を含むものであることが好ましい。1,3-ブタジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との含有割合が上記範囲内にあると、共役ジエン系ゴムの製造がより容易となる。
【0060】
重合体ブロック(B)に含まれる芳香族ビニル単量体単位を構成するために用いられる芳香族ビニル化合物としては、上述した芳香族ビニル化合物と同じものを用いることができ、これらの中でも、スチレンが好ましい。
【0061】
重合体ブロック(B)は、1,3-ブタジエン単量体単位のみ、または1,3-ブタジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位からなるものであることが好ましいが、本発明における本質的な特性を損なわない範囲において、所望により、1,3-ブタジエン単量体単位、または1,3-ブタジエン単量体単位および芳香族ビニル単量体単位に加えて、その他の単量体単位を含んでいてもよい。その他の単量体単位を構成するために用いられるその他の単量体としては、上述した重合体ブロック(A)において例示された化合物(ただし、1,3-ブタジエンを除く)と同じものを用いることができる。また、重合体ブロック(B)においては、その他の単量体としてイソプレンを用いることもできる。重合体ブロック(B)中における、その他の単量体単位の含有割合は、50重量%以下であることが好ましく、40重量%以下であることがより好ましく、35重量%以下であることがさらに好ましい。
【0062】
本発明の一態様において、共役ジエン系重合体鎖中の重合体ブロック(B)は、上述した活性末端を有する重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエン、または1,3-ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体と、を混合して重合反応を継続させることにより、重合体ブロック(A)と一続きに形成される。形成された重合体ブロック(B)は、活性末端を有するものとなる。一方、重合体ブロック(A)からは、活性末端が消失する。
【0063】
重合体ブロック(B)を形成するために、重合体ブロック(A)と、1,3-ブタジエン、または1,3-ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体との重合に用いられる不活性溶媒としては、特に限定されず、上述した不活性溶媒と同じものを用いることができる。
【0064】
重合体ブロック(B)を形成する際における、活性末端を有する重合体ブロック(A)の使用量は、目的とする分子量に応じて決定すればよいが、1,3-ブタジエン、または1,3-ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体100g当り、好ましくは0.1~5ミリモル、より好ましくは0.15~2ミリモル、さらに好ましくは0.2~1.5ミリモルの範囲である。
【0065】
重合体ブロック(A)と1,3-ブタジエン、または1,3-ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体との混合方法は、特に限定されず、1,3-ブタジエン、または1,3-ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体の溶液中に活性末端を有する重合体ブロック(A)を加えてもよいし、活性末端を有する重合体ブロック(A)の溶液中に1,3-ブタジエン、または1,3-ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体を加えてもよい。重合の制御の観点より、1,3-ブタジエン、または1,3-ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体の溶液中に活性末端を有する重合体ブロック(A)を加える方法が好ましい。
【0066】
1,3-ブタジエン、または1,3-ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物を含む単量体を重合する際における重合温度は、好ましくは-80~+150℃、より好ましくは0~100℃、さらに好ましくは20~90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式など、いずれの様式をも採用できる。重合体ブロック(B)を共重合体鎖とする場合には、結合のランダム性を制御しやすい点で、回分式が好ましい。
【0067】
重合体ブロック(B)を共重合体鎖とする場合の各単量体の結合様式は、たとえば、ブロック状、テーパー状、およびランダム状などの種々の結合様式とすることができる。これらの中でも、ランダム状が好ましい。ランダム状にすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性をより向上させることができる。なお、1,3-ブタジエンおよび芳香族ビニル化合物の結合様式をランダム状にする場合、重合系内において、1,3-ブタジエンと芳香族ビニル化合物との合計量に対する芳香族ビニル化合物の比率が高くなりすぎないように、1,3-ブタジエンまたは1,3-ブタジエンと芳香族ビニル化合物とを、連続的または断続的に重合系内に供給して重合することが好ましい。
【0068】
また、本発明の一態様においては、重合体ブロック(B)における1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、重合体ブロック(A)におけるイソプレン単量体単位中のビニル結合含有量の調節時と同様に、重合に際し、不活性溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。ただし、重合体ブロック(A)の調製時に、不活性溶媒に、重合体ブロック(B)における1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するのに十分な量の極性化合物を添加している場合は、新たに極性化合物を添加しなくてもよい。ビニル結合含有量を調節するために用いられる極性化合物としては、上述した極性化合物と同じものを用いることができる。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、初めの重合反応(1つ目の重合体ブロック(A)を形成するための重合反応)に使用した重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.01~100モル、より好ましくは0.1~30mo1の範囲で調節すればよい。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ、重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
【0069】
重合体ブロック(B)における1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量は、好ましくは1~90重量%、より好ましくは3~80重量%、特に好ましくは5~70重量%である。重合体ブロック(B)における1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物を低発熱性により優れたものとすることができる。
【0070】
このようにして、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)を有する、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得ることができる。本発明の一態様においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖は、生産性の観点より、重合体ブロック(A)-重合体ブロック(B)で構成され、かつ、重合体ブロック(B)の末端が活性末端であることが好ましいが、重合体ブロック(A)を複数有するものであってもよいし、その他の重合体ブロックを有するものであってもよい。たとえば、重合体ブロック(A)-重合体ブロック(B)-重合体ブロック(A)などの、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖が挙げられる。この場合には、重合体ブロック(B)に続いて形成された重合体ブロック(A)の末端に、活性末端が形成されることとなる。共役ジエン系重合体鎖の活性末端側に重合体ブロック(A)を形成させる場合、イソプレンの使用量は、初めの重合反応(1つ目の重合体ブロック(A)を形成するための重合反応)に使用した重合開始剤1モルに対して、10~100モルであることが好ましく、15~70モルであることがより好ましく、20~35モルであることが特に好ましい。
【0071】
本発明の一態様において得られる、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との重量比(重合体ブロック(A)、重合体ブロック(B)が複数存在する場合は、それぞれの合計重量を基準とした重量比)は、(重合体ブロック(A)の重量)/(重合体ブロック(B)の重量)で、0.001~0.1であることが好ましく、0.003~0.07であることがより好ましく、0.005~0.05であることが特に好ましい。重合体ブロック(A)と重合体ブロック(B)との重量比を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物を、ウエットグリップ性と低発熱性とのバランスが良好なものとすることができる。
【0072】
重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)を有する、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における、イソプレン単量体単位および1,3-ブタジエン単量体単位の合計単量体単位と、芳香族ビニル単量体単位との含有割合は、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖中、イソプレン単量体単位および1,3-ブタジエン単量体単位の合計単量体単位50~100重量%、および芳香族ビニル単量体単位0~50重量%であることが好ましく、イソプレン単量体単位および1,3-ブタジエン単量体単位の合計単量体単位52~95重量%、および芳香族ビニル単量体単位5~48重量%であることがより好ましい。また、重合体ブロック(A)および重合体ブロック(B)を有する、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における、イソプレン単量体単位中および1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量は、上述した重合体ブロック(B)における1,3-ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量と同じ範囲にあることが好ましい。
【0073】
<第2工程>
本発明の製造方法の第2工程は、第1工程にて得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを、第1工程で使用した重合開始剤1モルに対して、ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数換算で1モル以上の割合にて添加して反応させる工程である。
【化6】
一般式(1)中、R~Rは、炭素数1~6のアルキル基、または炭素数6~12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。XおよびXは、炭素数1~6のアルキル基、炭素数6~12のアリール基、炭素数1~5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、炭素数1~5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であり、複数あるXは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。Xは、2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、Xが複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは3~200の整数、nは0~200の整数、kは0~200の整数であり、m+n+kは3以上である。
【0074】
一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、一般式(1)中のR~R、XおよびXを構成し得る炭素数1~6のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基およびシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、たとえば、フェニル基およびメチルフェニル基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メチル基およびエチル基が好ましい。
【0075】
また、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、XおよびXを構成し得る炭素数1~5のアルコキシ基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基およびブトキシ基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メトキシ基およびエトキシ基が好ましい。
【0076】
さらに、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、XおよびXを構成し得るエポキシ基を含有する炭素数4~12の基としては、たとえば、下記一般式(6)で表される基が挙げられる。
-Z-Z-E (6)
一般式(6)中、Zは、炭素数1~10のアルキレン基、またはアルキルアリーレン基であり、Zはメチレン基、硫黄原子、または酸素原子であり、Eはエポキシ基を有する炭素数2~10の炭化水素基である。
【0077】
一般式(6)で表される基としては、Zが酸素原子であるものが好ましく、Zが酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものがより好ましく、Zが炭素数1~3のアルキレン基であり、Zが酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものが特に好ましい。
【0078】
また、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、XおよびXとしては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基、または、炭素数1~6のアルキル基が好ましい。また、Xとしては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4~12の基が好ましい。さらに、XおよびXが炭素数1~6のアルキル基であり、Xがエポキシ基を含有する炭素数4~12の基であることがより好ましい。
【0079】
また、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X、すなわち2~20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基としては、下記一般式(7)で表される基が好ましい。
【化7】
一般式(7)中、tは2~20の整数であり、Xは炭素数2~10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R15は水素原子またはメチル基であり、Xは炭素数1~10のアルコキシ基またはアリールオキシ基である。これらの中でも、tが2~8の整数であり、Xが炭素数3のアルキレン基であり、R15が水素原子であり、かつ、Xがメトキシ基であるものが好ましい。
【0080】
一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、mは3~200の整数、好ましくは20~150の整数、より好ましくは30~120の整数である。mが3以上であると、得られる共役ジエン系ゴムのカップリング率が高くなり、その結果、ホットフロー性に優れる。また、mが200以下であると、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン自体の製造がより容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いもより容易となる。
【0081】
また、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、nは0~200の整数、好ましくは0~150の整数、より好ましくは0~120の整数である。kは0~200の整数、好ましくは0~150の整数、より好ましくは0~130の整数である。m、nおよびkの合計数は3以上であり、3~400であることが好ましく、20~300であることがより好ましく、30~250であることが特に好ましい。m、nおよびkの合計数が3以上であると、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンと活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖との反応が進行し易く、さらに、m、nおよびkの合計数が400以下であると、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン自体の製造が容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いも容易となる。
【0082】
本発明の製造方法の第2工程における、ポリオルガノシロキサンの使用量は、上述した第1工程において重合に使用した重合開始剤1モルに対して、ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数に換算して、1モル以上であり、好ましくは1~2.5モルであり、より好ましくは1.1~2モルである。
【0083】
ポリオルガノシロキサンの使用量を、重合開始剤1モルに対して、シロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数換算で1モル以上とすることにより、第1工程により得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端のうち、実質的に全ての活性末端を、ポリオルガノシロキサンと反応させることができるため、好ましい。すなわち、第1工程により得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の、活性末端としてのアルキル金属基、すなわち、-R(Rは、重合体鎖末端を形成する炭化水素基、Mは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、または、ランタン系列金属原子)で表される基が実質的に残存しないような状態とすることができる。
【0084】
そして、これにより、後述する第3工程において、一般式(2)で表される化合物を反応させた際に、一般式(2)で表される化合物が、第1工程により得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端と直接反応してしまうことを実質的に抑制することができる。その結果、一般式(2)で表される化合物を、共役ジエン系重合体鎖と、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンとが反応することにより生じた反応残基に対して、適切に反応させることができる。そして、これにより、共役ジエン系重合体鎖に、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンに由来する構造を介した、一般式(2)で表される化合物による変性構造を適切に導入することができ、このような変性構造を導入することによる効果、すなわち、優れたホットフロー性(凝固クラムの互着のし難さ)、低発熱性およびウエットグリップ性を実現できるものである。
【0085】
ポリオルガノシロキサンと活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とを反応させる方法は、特に限定されないが、これらを、それぞれが溶解可能な溶媒中で、混合する方法などが挙げられる。この際に用いる溶媒としては、上述した第1工程において用いる不活性溶媒として例示したものなどを用いることができる。また、この際においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得るための重合に用いた重合溶液に、ポリオルガノシロキサンを添加する方法が簡便であり好ましい。また、この際においては、ポリオルガノシロキサンは、不活性溶媒に溶解して重合系内に添加することが好ましく、その溶液濃度は、1~50重量%の範囲とすることが好ましい。反応温度は、特に限定されないが、通常0~120℃であり、反応時間も特に限定されないが、通常1分~1時間である。
【0086】
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、ポリオルガノシロキサンを添加する時期は特に限定されないが、重合反応が完結しておらず、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が単量体をも含有している状態、より具体的には、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が、100ppm以上、より好ましくは300~50,000ppmの単量体を含有している状態で、この溶液にポリオルガノシロキサンを添加することが望ましい。ポリオルガノシロキサンの添加をこのように行なうことにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と重合系中に含まれる不純物などとの副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。
【0087】
本発明の製造方法の第2工程においては、上述した第1工程にて得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、変性剤としてのポリオルガノシロキサンを反応させるものであるが、共役ジエン系重合体鎖の活性末端は、シロキサン構造中のケイ素原子と反応することとなる。あるいは、共役ジエン系重合体鎖の活性末端のうち一部は、ポリオルガノシロキサンの側鎖のアルコキシ基またはエポキシ基(一般式(1)中、必須として含まれるXを形成するアルコキシ基またはエポキシ基等)と反応することとなる。そして、本発明の製造方法の第2工程によれば、このような反応により、共役ジエン系重合体鎖に、シロキサンによる変性構造を導入するものである。
【0088】
具体的には、共役ジエン系重合体鎖の活性末端が、シロキサン構造中のケイ素原子と反応することで、共役ジエン系重合体鎖は、シロキサン構造中のケイ素原子と共役ジエン系重合体鎖の活性末端との間に新たな結合を形成し、共役ジエン系重合体鎖の末端に、シロキサンによる変性構造が導入されるとともに、シロキサン構造中の酸素原子と、共役ジエン系重合体鎖の活性末端を形成していた金属原子との間で、これらの反応残基として、-O(Mは、アルカリ金属原子、アルカリ土類金属原子、または、ランタン系列金属原子)で表される基が形成されると考えられる。
【0089】
あるいは、共役ジエン系重合体鎖の活性末端が、ポリオルガノシロキサンの側鎖のエポキシ基と反応することで、エポキシ基が開環し、エポキシ基が開環した部分の炭素原子と共役ジエン系重合体鎖の活性末端との間に新たな結合を形成し、共役ジエン系重合体鎖の末端に、シロキサン構造が導入されるとともに、エポキシ基中の酸素原子と、共役ジエン系重合体鎖の活性末端を形成していた金属原子との間で、これらの反応残基として、-Oで表される基が形成されると考えられる。または、共役ジエン系重合体鎖の活性末端が、ポリオルガノシロキサンの側鎖のアルコキシ基と反応することで、アルコキシ基が脱離し、共役ジエン系重合体鎖は、シロキサン構造中のケイ素原子と共役ジエン系重合体鎖の活性末端との間に新たな結合を形成し、共役ジエン系重合体鎖の末端に、シロキサン構造が導入される。
【0090】
特に、本発明の製造方法の第2工程においては、ポリオルガノシロキサンの使用量を、重合開始剤1モルに対して、シロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数換算で1モル以上とするものであるため、第1工程により得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖のうち、ほぼ全ての共役ジエン系重合体鎖に、シロキサンによる変性構造が導入することができる。そのため、第1工程により得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端としてのアルキル金属基、すなわち、-Rのうち、ほぼ全てを残存しないような状態とすることができ、これに代えて、反応残基としての-Oで表される基が形成されることとなる。ただし、本発明においては、ごく少量(たとえば、5重量%以下)であれば、シロキサンによる変性がされていない未変性の活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含むものであってもよく(すなわち、ごく少量であれば、第1工程により得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端としてのアルキル金属基、すなわち、-Rが残存したものが含まれていてもよく)、このような場合を排除するものではない。
【0091】
なお、本発明の製造方法の第2工程において、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを反応させる前の状態のときに、本発明の効果を阻害しない範囲で、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端の一部を、従来から通常使用されているカップリング剤や変性剤などを重合系内に添加して、カップリングや変性を行ってもよい。
【0092】
<第3工程>
本発明の製造方法の第3工程は、第2工程で得られるポリオルガノシロキサンを反応させた共役ジエン系重合体鎖に、下記一般式(2)で表される化合物を反応させる工程である。
【化8】
一般式(2)中、Rは、ヒドロカルビル基であり、Aは、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とポリオルガノシロキサンとの反応により生成した反応残基と反応しうる基であり、Aは、窒素原子を含有する基であり、pは0~2の整数、qは1~3の整数、rは1~3の整数、p+q+r=4である。
【0093】
本発明によれば、上述の第2工程において、第1工程により得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端としてのアルキル金属基、すなわち、-Rのうち、ほぼ全てを残存しないような状態とし、これに代えて、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンとの反応による、反応残基としての-Oで表される基を有するものとしているため、本発明の第3工程によれば、一般式(2)で表される化合物は、このような反応残基としての-Oで表される基(-Oで表される基が加水分解され、水酸基に変換されたものを含む)と適切に反応させることができるものである。
【0094】
すなわち、本発明によれば、一般式(2)で表される化合物が、-Rで表される基と反応してしまうことにより、共役ジエン系重合体鎖に、直接、一般式(2)で表される化合物による変性構造が導入されてしまうことを適切に抑制することができ、これにより、共役ジエン系重合体鎖に、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンに由来する構造を介した、一般式(2)で表される化合物による変性構造を、適切に導入することができるものである。そして、その結果として、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムを、ホットフロー性(凝固クラムの互着のし難さ)に優れ、かつ、低発熱性およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を与えることのできるものとすることができるものである。
【0095】
ただし、本発明の製造方法の第3工程において用いる、ポリオルガノシロキサンを反応させた共役ジエン系重合体鎖としては、上述した第2工程を経たものであればよく、シロキサンによる変性構造が導入された共役ジエン系重合体鎖に加えて、ごく少量(たとえば、5重量%以下)であれば、シロキサン変性構造が導入されていない未変性の活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖が残存したものであってもよく(すなわち、ごく少量であれば、第1工程により得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端としてのアルキル金属基、すなわち、-Rが残存したものが含まれていてもよく)、さらには、シロキサンによる変性構造が導入された結果形成された、反応残基としての-Oの一部が加水分解され、水酸基に変換されたものを含むものであってもよい。
【0096】
一般式(2)で表される化合物において、一般式(2)中のRは、ヒドロカルビル基であり、たとえば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられるが、炭素数1~6のアルキル基であることが好ましい。炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、これらのなかでも、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0097】
一般式(2)で表される化合物において、一般式(2)中のAは、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とポリオルガノシロキサンとの反応により生成した反応残基(典型的には、-Oで表される基)と反応しうる基であり、-OR10(R10は水素原子またはヒドロカルビル基)で表される基であることが好ましい。R10を構成し得るヒドロカルビル基としては、たとえば、アルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アリール基、アラルキル基などが挙げられるが、上記反応残基との反応性の観点より、炭素数1~6のアルキル基であることが好ましい。炭素数1~6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基などが挙げられ、これらのなかでも、メチル基、エチル基がより好ましい。
【0098】
一般式(2)で表される化合物において、一般式(2)中のAは、窒素原子を含有する基であり、窒素原子を含有する基であれば特に限定されないが、窒素原子を有する有機基であることが好ましく、たとえば、3-アミノプロピル基、4-アミノブチル基、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル基、2-ジメチルアミノエチル基、3-ジメチルアミノプロピル基、3-ジエチルアミノプロピル基、3-ジプロピルアミノプロピル基、3-ジブチルアミノプロピル基、3-フェニルメチルアミノプロピル基、3-(4-メチルピペラジニル)プロピル基、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル基、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピル基、N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基などが挙げられる。これらの中でも、得られるゴム架橋物の低発熱性およびウエットグリップ性をより向上させることができるという点より、3-アミノプロピル基、4-アミノブチル基、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル基などの、活性水素原子を有する1級アミノ基および/または活性水素原子を有する2級アミノ基を含有する基であることが好ましい。なお、「活性水素原子」とは、炭素原子以外の原子に結合した水素原子をいい、ポリメチレン鎖の炭素-水素結合よりも結合エネルギーが低いことが好ましい。
【0099】
一般式(2)で表される化合物において、pは0~2の整数、qは1~3の整数、rは1~3の整数、p+q+r=4である。活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖とポリオルガノシロキサンとの反応により生成した反応残基との反応性の観点より、好ましくは、pは0~1の整数、qは2~3の整数であり、rは1~2の整数であり、より好ましくは、p=0、q=3、r=1である。なお、pが2である場合において、一般式(2)で表される化合物1分子中に2個含まれるRで表される基は、同一のものであってもよいし、互いに異なるものであってもよい。同様に、qが2または3である場合において、一般式(2)で表される化合物1分子中に複数含まれるAで表される基は、同一のものであってもよいし、互いに異なるものであってもよく、rが2または3である場合において、一般式(2)で表される化合物1分子中に複数含まれるAで表される基は、同一のものであってもよいし、互いに異なるものであってもよい。
【0100】
一般式(2)で表される化合物の具体例としては、特に限定されないが、たとえば、一般式(2)中のAが、活性水素原子を有する1級アミノ基および/または活性水素原子を有する2級アミノ基を含有する基である化合物として、3-アミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-アミノプロピルジメチルエトキシシラン、3-アミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-アミノプロピルトリエトキシシランなどのAとして、3-アミノプロピル基を有する化合物;4-アミノブチルジメチルメトキシシラン、4-アミノブチルメチルジメトキシシラン、4-アミノブチルトリメトキシシラン、4-アミノブチルジメチルエトキシシラン、4-アミノブチルメチルジエトキシシラン、4-アミノブチルトリエトキシシランなどのAとして、4-アミノブチル基を有する化合物;3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメチルメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルジメチルエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリエトキシシランなどのAとして、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピル基を有する化合物;などが挙げられる。
【0101】
また、一般式(2)中のAが、活性水素原子を有する1級アミノ基および/または活性水素原子を有する2級アミノ基を含有する基以外の基である化合物として、3-ジメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ジメチルアミノプロピルジメチルエトキシシランなどのAとして、3-ジメチルアミノプロピル基を有する化合物;3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ジエチルアミノプロピルジメチルエトキシシランなどのAとして、3-ジエチルアミノプロピル基を有する化合物;3-ジプロピルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジプロピルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジプロピルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-ジプロピルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジプロピルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ジプロピルアミノプロピルジメチルエトキシシランなどのAとして、3-ジプロピルアミノプロピル基を有する化合物;3-ジブチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-ジブチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-ジブチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-ジブチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-ジブチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-ジブチルアミノプロピルジメチルエトキシシランなどのAとして、3-ジブチルアミノプロピル基を有する化合物;3-フェニルメチルアミノプロピルトリメトキシシラン、3-フェニルメチルアミノプロピルメチルジメトキシシラン、3-フェニルメチルアミノプロピルジメチルメトキシシラン、3-フェニルメチルアミノプロピルトリエトキシシラン、3-フェニルメチルアミノプロピルメチルジエトキシシラン、3-フェニルメチルアミノプロピルジメチルエトキシシランなどのAとして、3-フェニルメチルアミノプロピル基を有する化合物;3-(4-メチルピペラジニル)プロピルトリメトキシシラン、3-(4-メチルピペラジニル)プロピルメチルジメトキシシラン、3-(4-メチルピペラジニル)プロピルジメチルメトキシシラン、3-(4-メチルピペラジニル)プロピルトリエトキシシラン、3-(4-メチルピペラジニル)プロピルメチルジエトキシシラン、3-(4-メチルピペラジニル)プロピルジメチルエトキシシランなどのAとして、3-(4-メチルピペラジニル)プロピル基を有する化合物;
【0102】
N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのAとして、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピル基を有する化合物;N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N-ビス(トリメチルシリル)アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのAとして、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピル基を有する化合物;N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジメトキシシラン、N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピルメチルジエトキシシランなどのAとして、N,N’,N’-トリス(トリメチルシリル)-N-(2-アミノエチル)-3-アミノプロピル基を有する化合物;などが挙げられる。
【0103】
一般式(2)で表される化合物の使用量は、特に限定されないが、第1工程で使用した重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.1~5モルであり、より好ましくは0.2~2モル、さらに好ましくは0.4~1.5モルである。一般式(2)で表される化合物の使用量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物を、低発熱性とウエットグリップ性により優れたものとすることができる。
【0104】
共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、一般式(2)で表される化合物を添加する時期は、上述した第2工程において一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを添加した後であれば、特に限定されない。たとえば、上述した第2工程と同様に、重合反応が完結しておらず、共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が単量体をも含有している状態、より具体的には、共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が、100ppm以上、より好ましくは300~50,000ppmの単量体を含有している状態で、この溶液に一般式(2)で表される化合物を添加することができる。一般式(2)で表される化合物の添加をこのように行なうことにより、共役ジエン系重合体鎖と重合系中に含まれる不純物などとの副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。あるいは、共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、一般式(2)で表される化合物を添加する前、あるいは添加した後に、この溶液に、水やメタノールなどのアルコールを添加することで、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンとの反応により形成された、反応残基としての-Oで表される基を加水分解し、水酸基に変換した状態にて、変性反応を行ってもよい。一般式(2)で表される化合物を共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に添加する際、一般式(2)で表される化合物は不活性溶媒に溶解してから添加してもよいし、不活性溶媒に溶解せずに直接添加してもよい。反応温度、反応時間は、第1工程と同様である。
【0105】
そして、一般式(2)で表される化合物を反応させた後、必要に応じて、公知の重合停止剤などを添加して、反応系を失活させた後、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤、クラム化剤、およびスケール防止剤などを反応溶液に添加し、その後、直接乾燥またはスチームストリッピングなどにより反応溶液から重合溶媒を分離して、共役ジエン系ゴムを回収する。なお、反応溶液から重合溶媒を分離する前に、重合溶液に伸展油を混合し、共役ジエン系ゴムを油展ゴムとして回収してもよい。
【0106】
共役ジエン系ゴムを油展ゴムとして回収する場合に用いる伸展油としては、たとえば、パラフィン系、芳香族系およびナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、ならびに脂肪酸などが挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、共役ジエン系ゴム100重量部に対して、好ましくは5~100重量部、より好ましくは10~60重量部、さらに好ましくは20~50重量部である。
【0107】
このようにして本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムは、上述した第2工程において、変性剤としての、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンを、第1工程で使用した重合開始剤1モルに対して、ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数換算で1モル以上の割合にて添加して反応を行い、次いで、上述した第3工程において、変性剤として、一般式(2)で表される化合物を用いて反応を行うことにより、得られるものである。そのため、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムは、重合体鎖末端に、シロキサンによる変性構造および一般式(2)で表される化合物による変性構造が導入されたものを含むものであるが、このようなもの以外にも、重合体鎖末端に、シロキサンによる変性構造のみが導入されたものを含むものであってもよい。さらには、本発明の効果を阻害しない範囲で、たとえば、重合体鎖末端に、一般式(2)で表される化合物による変性構造のみが導入されたものや、いずれの変性構造も導入されていないものなどを含有するものであってもよい。特に、本発明においては、本発明の効果、すなわち、優れたホットフロー性、低発熱性およびウエットグリップ性を適切に実現するという観点より、重合体鎖末端に、シロキサンによる変性構造および一般式(2)で表される化合物による変性構造が導入されたものの割合が、10重量%以上であるものが好ましく、20重量%以上であるものがより好ましい。なお、上限は、特に限定されない。
【0108】
また、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムのカップリング率は、特に限定されないが、好ましくは10重量%以上、より好ましくは20重量%以上、特に好ましくは40重量%以上であり、また、好ましくは80重量%以下、より好ましくは75重量%以下、特に好ましくは70重量%以下である。カップリング率が上記範囲であると、得られる共役ジエン系ゴムは、ホットフロー性により優れる。なお、カップリング率は、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンおよび一般式(2)で表される化合物、ならびに、必要に応じて用いられるカップリング剤やその他の変性剤と反応させる前の活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖のピークトップ分子量の1.8倍以上の分子量を有する重合体分子の、最終的に得られた共役ジエン系ゴムの全量に対する重量分率であり、このときの分子量の測定は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィによりポリスチレン換算分子量として求めるものとする。
【0109】
また、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値で、好ましくは100,000~3,000,000、より好ましくは150,000~2,000,000、特に好ましくは200,000~1,500,000である。共役ジエン系ゴムの重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、共役ジエン系ゴムへのシリカの配合が容易となり、ゴム組成物の加工性をより高めることができ、さらには、得られるゴム架橋物の低発熱性およびウエットグリップ性をより高めることができる。
【0110】
本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、1.1~3.0であることが好ましく、1.2~2.5であることがより好ましく、1.2~2.2であることが特に好ましい。共役ジエン系ゴムの分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性およびウエットグリップ性をより向上させることができる。
【0111】
また、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、好ましくは20~100、より好ましくは30~90、特に好ましくは35~80である。なお、共役ジエン系ゴムを油展ゴムとする場合は、その油展ゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることが好ましい。
【0112】
このようにして本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムは、充填剤および架橋剤などの配合剤を添加した上で、種々の用途に好適に用いることができる。特に、充填剤としてシリカを配合した場合に、低発熱性、およびウエットグリップ性に優れたゴム架橋物を与えることができるゴム組成物を与える。
【0113】
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、シリカ10~200重量部を含有してなる組成物である。
【0114】
本発明で用いるシリカとしては、たとえば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン-シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。用いるシリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037-81に準じBET法で測定される)は、好ましくは50~300m/g、より好ましくは80~220m/g、特に好ましくは100~170m/gである。また、シリカのpHは、pH5~10であることが好ましい。
【0115】
本発明のゴム組成物におけるシリカの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、10~200重量部であり、好ましくは30~150重量部、より好ましくは50~100重量部である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、ゴム組成物の加工性が優れたものとなり、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性および低発熱性をより向上させることができる。
【0116】
本発明のゴム組成物には、低発熱性をより向上させるという観点より、さらにシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリエトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、N-(β-アミノエチル)-γ-アミノプロピルトリメトキシシラン、3-オクタノイルチオ-1-プロピル-トリエトキシシラン、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、γ-トリメトキシシリルプロピルジメチルチオカルバミルテトラスルフィド、およびγ-トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィドなどを挙げることができる。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1~30重量部、より好ましくは1~15重量部である。
【0117】
また、本発明のゴム組成物には、さらに、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、およびグラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらのなかでも、ファーネスブラックが好ましい。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、通常、120重量部以下である。
【0118】
なお、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムを含むゴム成分に、シリカを添加する方法としては特に限定されず、固形のゴム成分に対して添加して混練する方法(乾式混練法)や共役ジエン系ゴムを含む溶液に対して添加して凝固・乾燥させる方法(湿式混練法)などを適用することができる。
【0119】
また、本発明のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有していることが好ましい。架橋剤としては、例えば、硫黄、ハロゲン化硫黄、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部、より好ましくは0.5~5重量部、特に好ましくは1~4重量部である。
【0120】
さらに、本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、充填剤(上記シリカおよびカーボンブラックを除く)、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、粘着付与剤、相溶化剤などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
【0121】
架橋剤として、硫黄または含硫黄化合物を用いる場合には、架橋促進剤および架橋活性化剤を併用することが好ましい。架橋促進剤としては、例えば、スルフェンアミド系架橋促進剤;グアニジン系架橋促進剤;チオウレア系架橋促進剤;チアゾール系架橋促進剤;チウラム系架橋促進剤;ジチオカルバミン酸系架橋促進剤;キサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1~15重量部、より好ましくは0.5~5重量部、特に好ましくは1~4重量部である。
【0122】
架橋活性化剤としては、例えば、ステアリン酸などの高級脂肪酸;酸化亜鉛;などを挙げることができる。これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋活性化剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05~20重量部、特に好ましくは0.5~15重量部である。
【0123】
また、本発明のゴム組成物には、上述した本発明の製造方法によって得られる共役ジエン系ゴム以外のその他のゴムを配合してもよい。その他のゴムとしては、例えば、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン-ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン-ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(高シス-BR、低シスBRであってもよい。また、1,2-ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい)、スチレン-イソプレン共重合ゴム、ブタジエン-イソプレン共重合ゴム、スチレン-イソプレン-ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル-スチレン-ブタジエン共重合ゴムなどのうち、上述した本発明の製造方法によって得られる共役ジエン系ゴム以外のものをいう。これらのなかでも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、溶液重合スチレン-ブタジエン共重合ゴムが好ましい。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
【0124】
本発明のゴム組成物において、本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物中のゴム成分の10~100重量%を占めることが好ましく、50~100重量%を占めることが特に好ましい。このような割合で、本発明の共役ジエン系ゴムをゴム成分中に含めることにより、低発熱性とウエットグリップ性とが向上されたゴム架橋物を得ることができる。
【0125】
本発明のゴム組成物を得るためには、常法に従って各成分を混練すればよく、たとえば、架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を除く成分と共役ジエン系ゴムとを混練後、その混練物に架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を混合して目的の組成物を得ることができる。熱に不安定な成分を除く成分と共役ジエン系ゴムとの混練温度は、好ましくは80~200℃、より好ましくは120~180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒~30分である。また、その混練物と熱に不安定な成分との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却した後に行われる。
【0126】
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10~200℃、好ましくは25~120℃である。架橋温度は、通常、100~200℃、好ましくは130~190℃であり、架橋時間は、通常、1分~24時間、好ましくは2分~12時間、特に好ましくは3分~6時間である。
【0127】
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
【0128】
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
【0129】
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の製造方法により得られる共役ジエン系ゴムを用いて得られるものであるため、低発熱性およびウエットグリップ性に優れるものである。そして、本発明のゴム架橋物は、このような特性を活かし、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。特に、本発明のゴム架橋物は、オールシーズンタイヤ、高性能タイヤ、およびスタッドレスタイヤなどの各種タイヤにおいて、トレッド、カーカス、サイドウォール、およびビード部などのタイヤ各部位に好適に用いることができ、特に低発熱性に優れるので、低燃費タイヤのトレッド用として、特に好適に用いることができる。
【実施例
【0130】
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
【0131】
〔重量平均分子量、分子量分布、カップリング率〕
重量平均分子量(Mw)、分子量分布(Mw/Mn)、およびカップリング率は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によりポリスチレン換算の分子量に基づくチャートを得て、得られたチャートに基づいて求めた。ゲルパーミエーションクロマトグラフィの具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
測定器:高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、商品名「HLC-8220」)
カラム:東ソー社製ポリスチレン系カラム、商品名「GMH-HR-H」を二本直列に連結した。
検出器:示差屈折計
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
なお、カップリング率については、上記の条件のゲルパーミエーションクロマトグラフィにより得られた溶出曲線において、全溶出面積に対する、分子量の最も小さいピークが示すピークトップ分子量の1.8倍以上のピークトップ分子量を有するピーク部分の面積比を、共役ジエン系重合体鎖のカップリング率の値とした。
【0132】
〔芳香族ビニル単量体単位含有量、ビニル結合含有量〕
芳香族ビニル単量体単位含有量、およびビニル結合含有量は、H-NMRにより測定した。
【0133】
〔ホットフロー性(凝固クラムの互着性)〕
ホットフロー性については、共役ジエン系ゴムのベール約7gに対し、ラバープロセスアナライザRPA-2000(アルファテクノロジーズ社製)を用い、動的歪み10%、0.1Hzの条件で108℃におけるせん断弾性率G’を測定することにより評価した。実施例1~8および比較例1~7のせん断弾性率G’の値については、比較例3の測定値を100とする指数で示した。実施例9および比較例8のせん断弾性率G’の値については、比較例8の測定値を100とする指数で示した。実施例10および比較例9のせん断弾性率G’の値については、比較例9の測定値を100とする指数で示した。実施例11および比較例10のせん断弾性率G’の値については、比較例10の測定値を100とする指数で示した。この指数が大きいほど、凝固クラムが互着しにくく、凝固時の操業性が安定することを意味する。
【0134】
〔ゴム架橋物の低発熱性〕
ゴム架橋物の低発熱性については、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片を、レオメトリックス社製ARESを用い、動的歪み2.5%、10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定することにより評価した。実施例1~8および比較例1~7のtanδの値については、比較例3の測定値を100とする指数で示した。実施例9および比較例8のtanδの値については、比較例8の測定値を100とする指数で示した。実施例10および比較例9のtanδの値については、比較例9の測定値を100とする指数で示した。実施例11および比較例10のtanδの値については、比較例10の測定値を100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、低発熱性に優れる。
【0135】
〔ゴム架橋物のウエットグリップ性〕
ゴム架橋物のウエットグリップ性については、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片を、レオメトリックス社製ARESを用い、動的歪み0.5%、10Hzの条件で0℃におけるtanδの値を測定することにより評価した。実施例1~8および比較例1~7のtanδの値については、比較例3の測定値を100とする指数で示した。実施例9および比較例8のtanδの値については、比較例8の測定値を100とする指数で示した。実施例10および比較例9のtanδの値については、比較例9の測定値を100とする指数で示した。実施例11および比較例10のtanδの値については、比較例10の測定値を100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、ウエットグリップ性に優れる。
【0136】
〔実施例1〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン800g、テトラメチルエチレンジアミン1.42mmol、1,3-ブタジエン87.6g、およびスチレン32.4gを仕込んだ後、n-ブチルリチウム0.79mmolを加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、下記式(8)で表されるポリオルガノシロキサンを、40重量%濃度のキシレン溶液の状態にて、0.31g(ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数に換算して、使用したn-ブチルリチウムの1.3倍モルに相当する量)添加し、30分間反応させた。次いで、3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.79mmol(使用したn-ブチルリチウムの1.0倍モルに相当する量)を添加し、10分間撹拌させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例1の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は482,000、カップリング率は57.9%、スチレン単量体単位含有量は27.3重量%、ビニル結合含有量は60.0重量%であった。また、得られた実施例1の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表1に示す。
【化9】
【0137】
〔実施例2〕
上記式(8)で表されるポリオルガノシロキサンの添加量を0.26g(ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数に換算して、使用したn-ブチルリチウムの1.1倍モルに相当する量)に変更したこと以外は、実施例1と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例2の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は469,000、カップリング率は55.0%、スチレン単量体単位含有量は27.2重量%、ビニル結合含有量は59.3重量%であった。また、得られた実施例2の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0138】
〔実施例3〕
3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.79mmolに代えて、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン0.79mmol(使用したn-ブチルリチウムの1.0倍モルに相当する量)を用いたこと以外は、実施例2と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例3の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は467,000、カップリング率は54.4%、スチレン単量体単位含有量は26.9重量%、ビニル結合含有量は58.5重量%であった。また、得られた実施例3の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0139】
〔実施例4〕
窒素置換された100mlアンプル瓶に、シクロヘキサン50.0g、およびテトラメチルエチレンジアミン0.66mmolを添加し、さらに、n-ブチルリチウム6.6mmolを添加した。次いで、イソプレン11.61g、およびスチレン0.87gをゆっくりと添加し、50℃のアンプル瓶内で120分間反応させることにより、活性末端を有する重合体ブロック(A)を得た。この重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)は3,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.10、スチレン単量体単位含有量は7.0重量%、イソプレン単量体単位含有量は93.0重量%、ビニル結合含有量は7.7重量%であった。
【0140】
次に、攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン4000g、テトラメチルエチレンジアミン11.1mmol、1,3-ブタジエン393.0g、およびスチレン207.0gを仕込んだ後、上記にて得られた活性末端を有する重合体ブロック(A)を全量加え、40℃で重合を開始した。重合を開始してから10分間経過後、1,3-ブタジエン337.0g、およびスチレン63.0gを40分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は60℃であった。連続添加終了後、さらに20分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、上記式(8)で表されるポリオルガノシロキサンを、40重量%濃度のキシレン溶液の状態にて、2.13g(ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数に換算して、使用したn-ブチルリチウムの1.1倍モルに相当する量)添加し、30分間反応させた。次いで、3-アミノプロピルトリメトキシシラン6.6mmol(使用したn-ブチルリチウムの1.0倍モルに相当する量)を添加し、10分間撹拌させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例4の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は494,000、カップリング率は60.8%、スチレン単量体単位含有量は26.5重量%、ビニル結合含有量は59.0重量%であった。また、得られた実施例4の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0141】
〔実施例5〕
3-アミノプロピルトリメトキシシラン6.6mmolに代えて、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン6.6mmol(使用したn-ブチルリチウムの1.0倍モルに相当する量)を用いたこと以外は、実施例4と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例5の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は488,000、カップリング率は60.2%、スチレン単量体単位含有量は26.6重量%、ビニル結合含有量は60.4重量%であった。また、得られた実施例5の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0142】
〔実施例6〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン800g、テトラメチルエチレンジアミン1.42mmol、ジ-N-ヘキシルアミン0.71mmol、1,3-ブタジエン87.6g、およびスチレン32.4gを仕込んだ後、n-ブチルリチウム0.79mmolを加え、60℃で重合を開始した。60分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、上記式(8)で表されるポリオルガノシロキサンを、40重量%濃度のキシレン溶液の状態にて、0.26g(ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数に換算して、使用したn-ブチルリチウムの1.1倍モルに相当する量)添加し、30分間反応させた。次いで、3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.79mmol(使用したn-ブチルリチウム(ジ-N-ヘキシルアミノリチウム)の1.0倍モルに相当する量)を添加し、10分間撹拌させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(チバスペシャリティーケミカルズ社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例6の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は484,000、カップリング率は58.8%、スチレン単量体単位含有量は27.1重量%、ビニル結合含有量は59.1重量%であった。また、得られた実施例6の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0143】
〔実施例7〕
3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.79mmolに代えて、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン0.79mmol(使用したn-ブチルリチウムの1.0倍モルに相当する量)を用いたこと以外は、実施例2と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例7の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は464,000、カップリング率は53.8%、スチレン単量体単位含有量は27.0重量%、ビニル結合含有量は59.5重量%であった。また、得られた実施例7の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0144】
〔実施例8〕
3-アミノプロピルトリメトキシシラン0.79mmolに代えて、3-ジエチルアミノプロピルトリメトキシシラン0.79mmol(使用したn-ブチルリチウムの1.0倍モルに相当する量)を用いたこと以外は、実施例2と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例8の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は465,000、カップリング率は54.0%、スチレン単量体単位含有量は27.5重量%、ビニル結合含有量は59.8重量%であった。また、得られた実施例8の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0145】
〔比較例1〕
上記式(8)で表されるポリオルガノシロキサンの添加量を0.16g(ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数に換算して、使用したn-ブチルリチウムの0.7倍モルに相当する量)に変更したこと以外は、実施例1と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例1の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は383,000、カップリング率は34.4%、スチレン単量体単位含有量は26.6重量%、ビニル結合含有量は58.5重量%であった。また、得られた比較例1の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0146】
〔比較例2〕
上記式(8)で表されるポリオルガノシロキサンの添加量を0.09g(ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数に換算して、使用したn-ブチルリチウムの0.4倍モルに相当する量)に変更したこと以外は、実施例1と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例2の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は286,000、カップリング率は11.4%、スチレン単量体単位含有量は26.9重量%、ビニル結合含有量は57.2重量%であった。また、得られた比較例2の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0147】
〔比較例3〕
3-アミノプロピルトリメトキシシランを添加しなかった以外は、実施例2と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例3の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は460,000、カップリング率は52.5%、スチレン単量体単位含有量は27.6重量%、ビニル結合含有量は58.8重量%であった。また、得られた比較例3の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0148】
〔比較例4〕
上記式(8)で表されるポリオルガノシロキサンに代えて、ヘキサメチルシクロトリシロキサン0.87mmol(使用したn-ブチルリチウムの1.1倍モルに相当する量)を使用した以外は、実施例2と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例4の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は323,000、カップリング率は20.5%、スチレン単量体単位含有量は27.0重量%、ビニル結合含有量は59.8重量%であった。また、得られた比較例4の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0149】
〔比較例5〕
3-アミノプロピルトリメトキシシランを添加しなかったこと以外は、比較例4と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例5の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は265,000、カップリング率は8.4%、スチレン単量体単位含有量は27.3重量%、ビニル結合含有量は58.7重量%であった。また、得られた比較例5の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0150】
〔比較例6〕
上記式(8)で表されるポリオルガノシロキサンに代えて、N,N-ビス(トリエチルシリル)アミノプロピルトリメトキシシラン0.87mmol(使用したn-ブチルリチウムの1.1倍モルに相当する量)を使用した以外は、実施例2と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例6の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は383,000、カップリング率は36.5%、スチレン単量体単位含有量は26.7重量%、ビニル結合含有量は58.0重量%であった。また、得られた比較例6の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0151】
〔比較例7〕
3-アミノプロピルトリメトキシシランを添加しなかった以外は、比較例6と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例7の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は377,000、カップリング率は34.5%、スチレン単量体単位含有量は27.5重量%、ビニル結合含有量は60.3重量%であった。また、得られた比較例7の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表1に示す。
【0152】
〔ゴム組成物およびゴム架橋物の製造と評価〕
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、実施例1の共役ジエン系ゴム100部を30秒素練りし、次いでシリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1115MP」)50部、プロセスオイル(JX日鉱日石エネルギー社製、商品名「アロマックス T-DAE」)20部、およびシランカップリング剤:ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(デグッサ社製、商品名「Si69」)6.0部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil1115MP」)25部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部および老化防止剤:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(大内新興社製、商品名「ノクラック6C」)2部を添加し、さらに2.5分間混練し、ミキサーから混練物を排出させた。混練終了時の混練物の温度は150℃であった。混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として2分間混練した後、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物に、硫黄1.4部、架橋促進剤:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーNS-P」、大内新興化学工業社製)1.2部、および1,3-ジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)1.2部の混合物を加えてこれらを混練した後、シート状のゴム組成物を取り出した。このゴム組成物を、160℃で20分間プレス架橋して、ゴム架橋物の試験片を作製し、この試験片について、ウエットグリップ性および低発熱性の評価を行なった。
また、実施例2~8、比較例1~7の共役ジエン系ゴムについても、それぞれ、同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物の試験片を作製し、これらの試験片について、上記方法にしたがって、低発熱性およびウエットグリップ性の評価を行なった。結果を表1に示す。
【0153】
【表1】
表1中、各成分の添加量は、重合開始剤の添加量を1モル部とした場合における量にて示した。
【0154】
表1から判るように、本発明の共役ジエン系ゴムの製造方法によって得られる、共役ジエン系ゴム(実施例1~8)は、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンによる変性を行う一方で、一般式(2)で表される化合物による、さらなる変性を行っていない共役ジエン系ゴム(比較例3)と比較して、ホットフロー性(凝固クラムの互着のし難さ)に優れ、しかも、得られるゴム架橋物は、ウエットグリップ性および低発熱性に優れるものであった。特に、第2段目の変性剤として、活性水素原子を有する1級アミノ基および/または活性水素原子を有する2級アミノ基を含有する変性剤を用いた場合に、その効果は顕著であった。
一方、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンの使用量を1モル未満とした共役ジエン系ゴムは、いずれも、ホットフロー性(凝固クラムの互着のし難さ)に劣り、また、得られるゴム架橋物は、いずれも、ウエットグリップ性および低発熱性に劣るものであった(比較例1,2)。
また、一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン以外の変性剤を使用した共役ジエン系ゴムは、いずれも、ホットフロー性(凝固クラムの互着のし難さ)に劣るものであった(比較例4~7)。
【0155】
〔実施例9〕
窒素置換された800mlアンプル瓶に、シクロヘキサン70.0g、およびテトラメチルエチレンジアミン0.77mmolを添加し、さらに、n-ブチルリチウム7.69mmol(n-ブチルリチウム1モルに対する、極性化合物としてのテトラメチルエチレンジアミンの量が0.10モルとなる量)を添加した。次いで、イソプレン27.9g、およびスチレン2.1gをゆっくりと添加し、温度50℃としたアンプル瓶内で120分間反応させることにより、活性末端を有する重合体ブロック(A)を得た。この重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)は6,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.10、スチレン単量体単位含有量は7.0重量%、イソプレン単量体単位含有量は93.0重量%、およびビニル結合含有量は7.7重量%であった。
【0156】
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン4000g、テトラメチルエチレンジアミン2.69mmol、1,3-ブタジエン474g、およびスチレン126gを仕込んだ後、上記にて得られた活性末端を有する重合体ブロック(A)を全量加え、50℃で重合を開始した(使用したn-ブチルリチウム1モルに対する、反応系中に存在する極性化合物としてのテトラメチルエチレンジアミンの量は0.45モル)。重合を開始してから10分経過後、1,3-ブタジエン376g、およびスチレン24gを60分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は75℃であった。連続添加終了後、さらに10分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、上記式(8)で表されるポリオルガノシロキサンを、40重量%濃度のキシレン溶液の状態にて、2.44g(ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数に換算して、使用したn-ブチルリチウムの1.1倍モルに相当する量)添加し、30分間反応させた。次いで、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン7.69mmol(使用したn-ブチルリチウムの1.0倍モルに相当する量)を添加し、10分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(BASF社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例9の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は460,000、カップリング率は58.0%、スチレン単量体単位含有量は15.0重量%、ビニル結合含有量は30.5重量%であった。また、得られた実施例9の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0157】
〔比較例8〕
3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン7.69mmolを添加しなかったこと以外は、実施例9と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例8の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は450,000、カップリング率は56.8%、スチレン単量体単位含有量は15.0重量%、ビニル結合含有量は30.0重量%であった。また、得られた比較例8の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表2に示す。
【0158】
〔ゴム組成物およびゴム架橋物の製造と評価〕
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、実施例9で得られた共役ジエン系ゴム70部とブタジエンゴム(日本ゼオン社製、商品名「Nipol BR1220」)30部とを30秒素練りし、次いでシリカ(エボニック社製、商品名「Ultrasil 7000GR」)66.7部、プロセスオイル(JX日鉱日石エネルギー社製、商品名「アロマックス T-DAE」)11.3部、およびシランカップリング剤:ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(エボニック社製、商品名「Si69」)7.2部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(エボニック社製、商品名「Ultrasil 7000GR」)23.3部、カーボンブラック(東海カーボン社製、商品名「シースト 7HM」)10部、プロセスオイル(JX日鉱日石エネルギー社製、商品名「アロマックス T-DAE」)10部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部および老化防止剤:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」)2部を添加し、更に2.5分間混練し、ミキサーから混練物を排出させた。混練終了時の混練物の温度は150℃であった。混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として2分間混練した後、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物に、硫黄1.7部、架橋促進剤:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーNS-P」)1.8部、および架橋促進剤:1,3-ジフェニルグアニジン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーD」)1.7部の混合物を加えてこれらを混練した後、シート状のゴム組成物を取り出した。このゴム組成物を、160℃で20分間プレス架橋して、ゴム架橋物の試験片を作製し、この試験片について、低発熱性およびウエットグリップ性の評価を行なった。結果を表2に示す。
また、比較例8の共役ジエン系ゴムについても、同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物の試験片を作製し、これらの試験片について、上記方法にしたがって、低発熱性およびウエットグリップ性の評価を行なった。結果を表2に示す。
【0159】
【表2】
表2中、各成分の添加量は、重合開始剤の添加量を1モル部とした場合における量にて示した。
【0160】
〔実施例10〕
窒素置換された800mlアンプル瓶に、シクロヘキサン74.3g、およびテトラメチルエチレンジアミン0.48mmolを添加し、さらに、n-ブチルリチウム4.76mmol(n-ブチルリチウム1モルに対する、極性化合物としてのテトラメチルエチレンジアミンの量が0.10モルとなる量)を添加した。次いで、イソプレン17.3g、およびスチレン1.3gをゆっくりと添加し、50℃のアンプル瓶内で120分反応させることにより、活性末端を有する重合体ブロック(A)を得た。この重合体ブロック(A)の重量平均分子量(Mw)は6,500、分子量分布(Mw/Mn)は1.12、スチレン単量体単位含有量は7.0%、イソプレン単量体単位含有量は93.0重量%、およびビニル結合含有量は7.5重量%であった。
【0161】
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン4000g、テトラメチルエチレンジアミン3.57mmol、1,3-ブタジエン252g、およびスチレン348gを仕込んだ後、上記にて得られた活性末端を有する重合体ブロック(A)を全量加え、50℃で重合を開始した(使用したn-ブチルリチウム1モルに対する、反応系中に存在する極性化合物としてのテトラメチルエチレンジアミンの量は0.85モル)。重合を開始してから15分経過後、1,3-ブタジエン338g、およびスチレン62gを60分間かけて連続的に添加した。重合反応中の最高温度は70℃であった。連続添加終了後、さらに15分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、上記式(8)で表されるポリオルガノシロキサンを、40重量%濃度のキシレン溶液の状態にて、1.51g(ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数に換算して、使用したn-ブチルリチウムの1.1倍モルに相当する量)添加し、30分間反応させた。次いで、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン4.76mmol(使用したn-ブチルリチウムの1.0倍モルに相当する量)を添加し、10分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(BASF社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例10の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は570,000、カップリング率は45.0%、スチレン単量体単位含有量は41.1重量%、ビニル結合含有量は33.5重量%であった。また、得られた実施例10の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表3に示す。
【0162】
〔比較例9〕
3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン4.76mmolを添加しなかったこと以外は、実施例10と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例9の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は552,000、カップリング率は43.0%、スチレン単量体単位含有量は41.0重量%、ビニル結合含有量は33.0重量%であった。また、得られた比較例9の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表3に示す。
【0163】
〔ゴム組成物およびゴム架橋物の製造と評価〕
容量250mlのブラベンダータイプミキサー中で、実施例10で得られた共役ジエン系ゴム70部とブタジエンゴム(日本ゼオン社製、商品名「Nipol BR1220」)30部とを30秒素練りし、次いでシリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil 1165MP」)50.0部、プロセスオイル(JX日鉱日石エネルギー社製、商品名「アロマックス T-DAE」)27.5部、およびシランカップリング剤:ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(エボニック社製、商品名「Si69」)6.0部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil 1165MP」)25.0部、酸化亜鉛3部、ステアリン酸2部および老化防止剤:N-フェニル-N’-(1,3-ジメチルブチル)-p-フェニレンジアミン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」)2部を添加し、更に2.5分間混練し、ミキサーから混練物を排出させた。混練終了時の混練物の温度は150℃であった。混練物を、室温まで冷却した後、再度ブラベンダータイプミキサー中で、110℃を開始温度として2分間混練した後、ミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られた混練物に、硫黄1.5部、架橋促進剤:N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーNS-P」)1.8部、および架橋促進剤:1,3-ジフェニルグアニジン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーD」)1.5部の混合物を加えてこれらを混練した後、シート状のゴム組成物を取り出した。このゴム組成物を、160℃で20分間プレス架橋して、ゴム架橋物の試験片を作製し、この試験片について、ウエットグリップ性および低発熱性の評価を行なった。結果を表3に示す。
また、比較例9の共役ジエン系ゴムについても、同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物の試験片を作製し、これらの試験片について、上記方法にしたがって、低発熱性およびウエットグリップ性の評価を行なった。結果を表3に示す。
【0164】
【表3】
表3中、各成分の添加量は、重合開始剤の添加量を1モル部とした場合における量にて示した。
【0165】
〔実施例11〕
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン800g、1,3-ブタジエン120gを仕込んだ後、n-ブチルリチウム1.00mmolを加え、80℃で重合を開始した。90分間重合反応を継続し、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、上記式(8)で表されるポリオルガノシロキサンを、40重量%濃度のキシレン溶液の状態にて、0.32g(ポリオルガノシロキサン中のシロキサン構造(-Si-O-)の繰り返し単位数に換算して、使用したn-ブチルリチウムの1.1倍モルに相当する量)添加し、30分間反応させた。次いで、3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン1.00mmol(使用したn-ブチルリチウムの1.0倍モルに相当する量)を添加し、10分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn-ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、共役ジエン系ゴムを含有する溶液を得た。この溶液に、老化防止剤として、イルガノックス1520L(BASF社製)を、共役ジエン系ゴム100部に対して0.15部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた実施例11の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は485,000、カップリング率は55.5%、ビニル結合含有量は9.8重量%であった。また、得られた実施例11の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表4に示す。
【0166】
〔比較例10〕
3-(2-アミノエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン1.00mmolを添加しなかったこと以外は、実施例11と同様に操作して、固形状の共役ジエン系ゴムを得た。得られた比較例10の共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は460,000、カップリング率は54.0%、ビニル結合含有量は9.1重量%であった。また、得られた比較例10の共役ジエン系ゴムについて、上記方法に従って、ホットフロー性の測定を行った。結果を表4に示す。
【0167】
〔ゴム組成物およびゴム架橋物の製造と評価〕
容積250mlのバンバリーミキサー中で、実施例11の共役ジエン系ゴム70部、および天然ゴム30部を30秒間素練りし、次いでシリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil 1115MP」)30部、シランカップリング剤:ビス(3-(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド(エボニック社製、商品名「Si69」)2.4部を添加して、80℃を開始温度として1.5分間混練後、シリカ(ローディア社製、商品名「Zeosil 1115MP」)10部、カーボンブラック(東海カーボン社製、商品名「シーストSO」)10部、プロセスオイル(JX日鉱日石エネルギー社製、商品名「アロマックス T-DAE」)5部、酸化亜鉛2部、ステアリン酸2部、老化防止剤(大内新興化学工業社製、商品名「ノクラック6C」)2部、およびパラフィンワックス1部を添加し、2.5分混練して、バンバリーミキサーからゴム混練物を排出させた。混練終了時のゴム混練物の温度は150℃であった。ゴム混練物を、室温まで冷却した後、再度バンバリーミキサー中で、3分間混練した後、バンバリーミキサーからゴム混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールで、得られたゴム混練物に、硫黄1.5、および架橋促進剤[N-tert-ブチル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーNS-P」)0.9部と、1,3-ジフェニルグアニジン(大内新興化学工業社製、商品名「ノクセラーD」)0.4部との混合物]1.3部を混練した後、シート状のゴム組成物を取り出した。このゴム組成物を、150℃で20分間プレス架橋して、ゴム架橋物の試験片を作製し、この試験片について、上記方法にしたがって、低発熱性およびウエットグリップ性の評価を行なった。
また、比較例10の共役ジエン系ゴムについても、同様にして、ゴム組成物およびゴム架橋物の試験片を作製し、これらの試験片について、上記方法にしたがって、低発熱性およびウエットグリップ性の評価を行なった。結果を表4に示す。
【0168】
【表4】
表4中、各成分の添加量は、重合開始剤の添加量を1モル部とした場合における量にて示した。
【0169】
表2~4から判るように、本発明の共役ジエン系ゴムの製造方法によって得られる、共役ジエン系ゴム(実施例9~11)は、その他のゴムを配合した場合であっても、ホットフロー性(凝固クラムの互着のし難さ)に優れ、しかも、得られるゴム架橋物は、ウエットグリップ性および低発熱性に優れるものであった。