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特許7557268室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及び物品、並びに自動車ヘッドライト用シーリング材
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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及び物品、並びに自動車ヘッドライト用シーリング材
(51)【国際特許分類】
   C08L 83/06 20060101AFI20240919BHJP
   C08K 3/013 20180101ALI20240919BHJP
   C08K 5/541 20060101ALI20240919BHJP
   C08K 5/544 20060101ALI20240919BHJP
   C09D 7/61 20180101ALI20240919BHJP
   C09D 7/63 20180101ALI20240919BHJP
   C09D 183/06 20060101ALI20240919BHJP
   C09J 11/04 20060101ALI20240919BHJP
   C09J 11/06 20060101ALI20240919BHJP
   C09J 183/06 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
C08L83/06
C08K3/013
C08K5/541
C08K5/544
C09D7/61
C09D7/63
C09D183/06
C09J11/04
C09J11/06
C09J183/06
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2019546622
(86)(22)【出願日】2018-09-21
(86)【国際出願番号】 JP2018034971
(87)【国際公開番号】W WO2019069706
(87)【国際公開日】2019-04-11
【審査請求日】2020-03-16
【審判番号】
【審判請求日】2022-09-26
(31)【優先権主張番号】P 2017196019
(32)【優先日】2017-10-06
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000002060
【氏名又は名称】信越化学工業株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002240
【氏名又は名称】弁理士法人英明国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】藤原 晃嗣
(72)【発明者】
【氏名】坂本 隆文
【合議体】
【審判長】細井 龍史
【審判官】小出 直也
【審判官】松本 直子
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2016/146648(WO,A1)
【文献】特開2017-88689(JP,A)
【文献】特開2013-241533(JP,A)
【文献】特開2001-114896(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08L83, C08K, C09D183, C09J183, C09K3/10, C08J3
CA,REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法であって、下記(A)~(E)成分において、
(A)下記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサン :100質量部、
【化1】
(式中、R1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、mは10以上の整数である。)
(B)下記一般式(2)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物 :0.1~30質量部、
【化2】
(式中、R2、R3はそれぞれ炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは3又は4である。)
(C)(B)成分以外の、下記一般式(3)及び(4)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン並びにそれらの部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種であるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物 :0.1~10質量部、
【化3】
(式中、R4はアルキレン基と芳香環を含む炭素数7~10の2価炭化水素基であり、R5は炭素数1~10の2価炭化水素基であり、R6、R7は炭素数1~10の非置換1価炭化水素基である。bは2又は3である。但し、1級及び2級アミンの少なくとも一方はR4中の芳香環に直結していない。)
Y=N-Z-SiR3 (4
式中、Yが下記式(17)
【化4】
(式中、R 8 、R 9 、R 10 、R 11 はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基又はアリール基を示し、波線部は窒素原子との結合部位である。)
で示されるものであり、Zはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~10の非置換又は置換の2価炭化水素基である。Rは炭素数1~6の加水分解性基及び炭素数1~6の1価炭化水素基から選ばれる1種又は2種以上の1価の基であり、ケイ素原子に結合する3個のRのうち、少なくとも2個は加水分解性基である。)
(D)無機充填剤 :1~800質量部、
(E)硬化触媒 :0.001~20質量部、
(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む混合物を予備混合・反応して(A)成分と(B)成分との反応生成物を含む反応混合物を調製した後、該反応混合物と(D)成分及び(E)成分を均一に混合する工程を含むことを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。
【請求項2】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む混合物を予備混合・反応する条件が、0~60℃の温度範囲で、かつ10~120分の混合時間である請求項1に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。
【請求項3】
室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の23℃におけるタックフリータイムが10分未満であることを特徴とする請求項1又は2に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。
【請求項4】
(A’)分子鎖両末端が、-O-CH(CH3)-C(=O)O-R3(R3は、炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)で示される加水分解性基を2個又は3個有する加水分解性シリル基でそれぞれ封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン :100質量部、
(B)下記一般式(2)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物 :0.1~30質量部、
【化6】
(式中、R2、R3はそれぞれ炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは3又は4である。)
(C)(B)成分以外の、下記一般式(3)及び(4)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン並びにそれらの部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種であるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物 :0.1~10質量部、
【化7】
(式中、R4はアルキレン基と芳香環を含む炭素数7~10の2価炭化水素基であり、R5は炭素数1~10の2価炭化水素基であり、R6、R7は炭素数1~10の非置換1価炭化水素基である。bは2又は3である。但し、1級及び2級アミンの少なくとも一方はR4中の芳香環に直結していない。)
Y=N-Z-SiR3 (4
式中、Yが下記式(17)
【化10】
(式中、R 8 、R 9 、R 10 、R 11 はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基又はアリール基を示し、波線部は窒素原子との結合部位である。)
で示されるものであり、Zはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~10の非置換又は置換の2価炭化水素基である。Rは炭素数1~6の加水分解性基及び炭素数1~6の1価炭化水素基から選ばれる1種又は2種以上の1価の基であり、ケイ素原子に結合する3個のRのうち、少なくとも2個は加水分解性基である。)
(D)無機充填剤 :1~800質量部、
(E)硬化触媒 :0.001~20質量部
を含有してなる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【請求項5】
(A’)成分が、下記一般式(1’)で示される直鎖状ジオルガノポリシロキサンである請求項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【化8】
(式中、R1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R2、R3はそれぞれ炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、mは10以上の整数であり、a’は2又は3である。)
【請求項6】
上記(A’)、(B)及び(C)成分は、(A)下記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサン、上記(B)成分及び上記(C)成分の反応混合物からなるものである請求項又はに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【化9】
(式中、R1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、mは10以上の整数である。)
【請求項7】
請求項のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物で接着又はコーティングされた物品。
【請求項8】
車載ヘッドライトである請求項に記載の物品。
【請求項9】
防曇材を塗布した車載ヘッドライトである請求項に記載の物品。
【請求項10】
請求項のいずれか1項に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物からなる自動車ヘッドライト用シーリング材。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、分子鎖両末端にシラノール基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンを主剤(ベースポリマー)の出発原料として、接着性等に優れる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を製造する方法、及び乳酸エステルを脱離可能な加水分解性基含有シリル基で分子鎖両末端がそれぞれ封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサンを主剤(ベースポリマー)として含有する、硬化性及び接着性等に優れる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物、並びに該組成物の硬化物で接着又はコーティングされた物品等に関する。特に車載ヘッドライト用シーリング材に好適な物品の接着又はコーティングに適用できる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物及びその製造方法等に関する。
【背景技術】
【0002】
湿気により架橋する室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物は、その取り扱いが容易な上、耐候性や電気特性に優れているため、建材用のシーリング材、電気電子分野での接着剤など様々な分野で使用されている。これらのRTVシリコーンゴム組成物は、末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンを主剤(ベースポリマー)として設計される場合が多い。
【0003】
室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物の縮合硬化タイプとしては、一般的に、脱アルコール型、脱オキシム型、脱酢酸型等が知られており、各種用途で使用されている。例えば、脱アルコール型では、電気電子用の部品固定接着剤やコーティング材、自動車用接着剤等で幅広く使用されている。脱オキシム型や脱酢酸型は硬化性が比較的早いため、主に建材用シーリング材での使用例が多いが、硬化時に副生するガスが有毒あるいは刺激臭を有しているため、安全上の問題を孕んでいる。また脱オキシム型や脱酢酸型は、被着体に対する腐食性も懸念されるため、使用時には注意が必要である。
【0004】
さて、近年の自動車産業の進歩は甚だしく、環境負荷への影響からハイブリッド自動車や燃料電池自動車、電気自動車が主流になりつつある。シリコーンゴムはその耐熱性、耐候性、加工性等が非常に優れているため、エンジン回りのガスケット材やECU周辺の放熱材、シール材、あるいはインバーター内の昇圧回路などのポッティング材など、あらゆる箇所で使用されている。耐候性の利点を活かし、室温硬化性シリコーンゴム組成物は、ヘッドライト用のシール材としても好適であると考えられるが、防曇材が塗布されている仕様では副生するアウトガスにより防曇材が腐食される現象が確認されている。縮合反応により副生するアウトガス(アルコール、オキシム、酢酸)はいずれも沸点が低いため、防曇材と反応して変質し、防曇性が低下すると考えられている。そのため、ヘッドライト用シール材にはポリウレタン系などのホットメルト材料が使用されている。しかし、ポリウレタン系はシリコーンゴムと比べると圧倒的に耐熱性が低く、またホットメルト材料であるため、設備上非常に負担がかかっているのが現状である。
【0005】
従って、より簡便に使用でき(作業性が良好)、かつ硬化性、接着性を有するヘッドライト用シール材が要求されている。最近新しい硬化技術として、縮合反応により脱乳酸エステルタイプの室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物が開示された(特許文献1:特許第5399392号公報)。本特許では、分子鎖両末端がシラノール基であるポリジメチルシロキサンとエチルラクタートシランからなる室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物が、従来の脱オキシムタイプ等と比較して人体健康面、環境面において優位であることが示されている。また従来の硬化タイプと比較して臭気が弱く不快でないため、作業環境性も良好と記載されている。しかしながら、該特許では、シーラントへの応用として構成されており、硬化速度が非常に遅い(硬化時間が非常に長い)室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物となっている。硬化速度が遅いと硬化完了までの待機時間が長くなり、シーラント以外の用途には適応が難しく、改良の余地があると考えられる。このように接着性や作業性に関する記載は一切ない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0006】
【文献】特許第5399392号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0007】
本発明は、上記事情に鑑みなされたもので、従来の脱乳酸エステルタイプの室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物では達成できなかった、硬化性、接着性、作業性等の全ての特性に優れる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を製造する方法、及び該特性を有する自動車ヘッドライト用シーリング材として好適な脱乳酸エステルタイプの室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物、並びに該組成物の硬化物で接着又はコーティングした物、自動車ヘッドライト用シーリング材などを提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0008】
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意検討を行った結果、分子鎖両末端にシラノール基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンと、乳酸エステルを脱離可能な加水分解性基を有する加水分解性シラン及び/又はその部分加水分解縮合物と、アミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物を事前に予備混合・反応して予め主剤(ベースポリマー)の分子鎖両末端のシラノール基を特定の加水分解性シリル基で封鎖する工程を経ることによって、従来の脱乳酸エステルタイプの室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物では達成できなかった、硬化性、接着性、作業性等の全ての特性に優れる脱乳酸エステルタイプの室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を製造することが可能であることを見出し、かつ、該特性を有する脱乳酸エステルタイプの室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が自動車ヘッドライト用シーリング材として好適な材料となり得ることを見出し、本発明をなすに至った。
【0009】
従って、本発明は、下記の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法、該室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物、及び該組成物の硬化物で接着又はコーティングされた物品等を提供するものである。
[1]
室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法であって、下記(A)~(E)成分において、
(A)下記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサン :100質量部、
【化1】
(式中、R1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、mは10以上の整数である。)
(B)下記一般式(2)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物 :0.1~30質量部、
【化2】
(式中、R2、R3はそれぞれ炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは3又は4である。)
(C)(B)成分以外の、下記一般式(3)及び(4)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン並びにそれらの部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種であるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物 :0.1~10質量部、
【化3】
(式中、R4はアルキレン基と芳香環を含む炭素数7~10の2価炭化水素基であり、R5は炭素数1~10の2価炭化水素基であり、R6、R7は炭素数1~10の非置換1価炭化水素基である。bは2又は3である。但し、1級及び2級アミンの少なくとも一方はR4中の芳香環に直結していない。)
Y=N-Z-SiR3 (4
式中、Yが下記式(17)
【化4】
(式中、R 8 、R 9 、R 10 、R 11 はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基又はアリール基を示し、波線部は窒素原子との結合部位である。)
で示されるものであり、Zはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~10の非置換又は置換の2価炭化水素基である。Rは炭素数1~6の加水分解性基及び炭素数1~6の1価炭化水素基から選ばれる1種又は2種以上の1価の基であり、ケイ素原子に結合する3個のRのうち、少なくとも2個は加水分解性基である。)
(D)無機充填剤 :1~800質量部、
(E)硬化触媒 :0.001~20質量部、
(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む混合物を予備混合・反応して(A)成分と(B)成分との反応生成物を含む反応混合物を調製した後、該反応混合物と(D)成分及び(E)成分を均一に混合する工程を含むことを特徴とする室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。

(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む混合物を予備混合・反応する条件が、0~60℃の温度範囲で、かつ10~120分の混合時間である[1]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。

室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の23℃におけるタックフリータイムが10分未満であることを特徴とする[1]又は2]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法。

(A’)分子鎖両末端が、-O-CH(CH3)-C(=O)O-R3(R3は、炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)で示される加水分解性基を2個又は3個有する加水分解性シリル基でそれぞれ封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン :100質量部、
(B)下記一般式(2)で示される加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物 :0.1~30質量部、
【化6】
(式中、R2、R3はそれぞれ炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、aは3又は4である。)
(C)(B)成分以外の、下記一般式(3)及び(4)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン並びにそれらの部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種であるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物 :0.1~10質量部、
【化25】
(式中、R4はアルキレン基と芳香環を含む炭素数7~10の2価炭化水素基であり、R5は炭素数1~10の2価炭化水素基であり、R6、R7は炭素数1~10の非置換1価炭化水素基である。bは2又は3である。但し、1級及び2級アミンの少なくとも一方はR4中の芳香環に直結していない。)
Y=N-Z-SiR3 (4
式中、Yが下記式(17)
【化28】
(式中、R 8 、R 9 、R 10 、R 11 はそれぞれ独立に、水素原子、炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基又はアリール基を示し、波線部は窒素原子との結合部位である。)
で示されるものであり、Zはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~10の非置換又は置換の2価炭化水素基である。Rは炭素数1~6の加水分解性基及び炭素数1~6の1価炭化水素基から選ばれる1種又は2種以上の1価の基であり、ケイ素原子に結合する3個のRのうち、少なくとも2個は加水分解性基である。)
(D)無機充填剤 :1~800質量部、
(E)硬化触媒 :0.001~20質量部
を含有してなる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。

(A’)成分が、下記一般式(1’)で示される直鎖状ジオルガノポリシロキサンである[]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【化26】
(式中、R1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、R2、R3はそれぞれ炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、mは10以上の整数であり、a’は2又は3である。)

上記(A’)、(B)及び(C)成分は、(A)下記一般式(1)で示されるオルガノポリシロキサン、上記(B)成分及び上記(C)成分の反応混合物からなるものである[]又は[]に記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物。
【化27】
(式中、R1は独立に炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、mは10以上の整数である。)

]~[]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化物で接着又はコーティングされた物品。

車載ヘッドライトである[]に記載の物品。

防曇材を塗布した車載ヘッドライトである[]に記載の物品。
10
]~[]のいずれかに記載の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物からなる自動車ヘッドライト用シーリング材。
【発明の効果】
【0010】
本発明によれば、分子鎖両末端にシラノール基を有する直鎖状ジオルガノポリシロキサンを主剤(ベースポリマー)の出発原料とし、乳酸エステルを脱離可能な加水分解性基を有する加水分解性シランを架橋剤とし、更に、アミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物を併用することで、予め主剤(ベースポリマー)の分子鎖両末端のシラノール基を特定の加水分解性シリル基で封鎖することによって、従来の脱乳酸エステルタイプの室温硬化性(RTV)シリコーンゴム組成物では達成できなかった、硬化性、接着性、作業性等の全ての特性に優れる脱乳酸エステルタイプの室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物を製造することができ、該組成物は自動車ヘッドライト用シーリング材として好適な材料となり得る。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明について詳しく説明する。
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法は、後述する(A)~(E)成分において、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む混合物を予備混合・反応して(A)成分と(B)成分との反応生成物(即ち、(A’)成分)を含む反応混合物(即ち、(A’)成分、(B)成分及び(C)成分の混合物)を調製した後、該反応混合物と、(D)成分及び(E)成分を均一に混合するものである。
【0012】
[(A)成分]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法において、主剤(ベースポリマー)の出発原料として用いられる(A)成分は、下記一般式(1)で示される分子鎖両末端がケイ素原子に結合した水酸基(シラノール基)で封鎖された直鎖状のジオルガノポリシロキサンである。
【化7】
【0013】
上記式(1)中、R1は独立に炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等の環状アルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基;及びこれらの基の水素原子が部分的にハロゲン原子で置換された基、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基などである。これらの中では、特にメチル基、フェニル基、3,3,3-トリフルオロプロピル基等が好ましい。R1は同一の基であっても異種の基であってもよい。
【0014】
また、mは10以上(通常、10~5,000)、好ましくは50~3,000、より好ましくは100~2,000程度の整数であり、また該ジオルガノポリシロキサンの25℃における粘度が25~100,000mPa・sの範囲、好ましくは500~80,000mPa・sの範囲となる整数であることが好ましい。
【0015】
なお、本発明において、ジオルガノシロキサン単位の繰り返し数を示すm値(重合度)又は分子量は、通常、トルエン等を展開溶媒としてゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度(又は数平均分子量)等として求めることができる(以下、同じ)。また、粘度は、回転粘度計(例えば、BL型、BH型、BS型、コーンプレート型、レオメータ等)によって測定することができる(以下、同じ)。
【0016】
[(B)成分]
(B)成分は、下記一般式(2)で示される、一分子中に-O-CH(CH3)-C(=O)O-R3(R3は炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基)で示される乳酸エステルを脱離可能な加水分解性基を3個又は4個有する加水分解性オルガノシラン化合物及び/又はその部分加水分解縮合物である。
【化8】
【0017】
上記式(2)中、R2、R3はそれぞれ炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基などのアルキル基;シクロヘキシル基などの環状アルキル基;ビニル基、アリル基などのアルケニル基;フェニル基、トリル基などのアリール基;及びこれらの基の水素原子が部分的にハロゲン原子で置換された基、例えば3,3,3-トリフルオロプロピル基等である。これらの中では、メチル基、エチル基、ビニル基が好ましい。R2、R3は同一であっても異なっていてもよい。aは3又は4であり、特には3が好ましい。また、式(2)のメチル基が結合しているメチン炭素は不斉中心となり得るが、(R)体、(S)体、ラセミ体いずれであっても構わない。
【0018】
(B)成分の具体例としては、メチルトリス(エチルラクタート)シラン、ビニルトリス(エチルラクタート)シラン、エチルトリス(エチルラクタート)シラン、n-プロピルトリス(エチルラクタート)シラン、n-ブチルトリス(エチルラクタート)シラン、メチルトリス(メチルラクタート)シラン、ビニルトリス(メチルラクタート)シラン、エチルトリス(メチルラクタート)シラン、n-プロピルトリス(メチルラクタート)シラン、n-ブチルトリス(メチルラクタート)シラン、メチルトリス(n-プロピルラクタート)シラン、ビニルトリス(n-プロピルラクタート)シラン、エチルトリス(n-プロピルラクタート)シラン、n-プロピルトリス(n-プロピルラクタート)シラン、n-ブチルトリス(n-プロピルラクタート)シラン等の化合物並びにこれらのシランの部分加水分解縮合物が挙げられる。
なお、本発明において、部分加水分解縮合物とは、原料の加水分解性オルガノシラン化合物を部分的に加水分解縮合して生成する、分子中に残存加水分解性基を少なくとも2個、好ましくは3個以上有するオルガノシロキサンオリゴマーを意味する(以下、同じ)。
【0019】
これらの中では、メチルトリス(エチルラクタート)シラン、ビニルトリス(エチルラクタート)シラン、メチルトリス(メチルラクタート)シラン、ビニルトリス(メチルラクタート)シランが好ましく、メチルトリス(エチルラクタート)シラン、ビニルトリス(エチルラクタート)シランが特に好ましい。
(B)成分は1種単独でも2種以上を併用してもよい。
【0020】
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法において、(B)成分は、その一部が、後述する(C)成分を末端封鎖の触媒として、前記した(A)成分中の分子鎖両末端のシラノール基とそれぞれ縮合反応して、該末端シラノール基を、-O-CH(CH3)-CH(=O)O-R3(R3は炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基)で示される乳酸エステルを脱離可能な加水分解性基を2個又は3個有する加水分解性シリル基、より具体的には、-Si(R23-a’(O-CH(CH3)-C(=O)O-R3a’で示される加水分解性シリル基(R2、R3は炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基、a’は2又は3である。)で封鎖して、(A’)成分、特には下記一般式(1’)
【化9】
(式中、R1、R2、R3、m、a’は上記と同じである。)
で示される直鎖状ジオルガノポリシロキサンに変性するための成分であり、(B)成分の残余の成分は、本発明の製造方法により得られる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物において、そのまま架橋剤(硬化剤)として作用するものである。
【0021】
通常、(B)成分の5~40モル%、好ましくは10~30モル%、より好ましくは15~25モル%程度が、原料の(A)成分中の分子鎖両末端のシラノール基をそれぞれ封鎖して末端加水分解性シリル基で封鎖して(A’)成分に変性するのに消費されるものであり、残余の60~95モル%、好ましくは70~90モル%、より好ましくは75~85モル%程度が組成物中の架橋剤(硬化剤)として作用するものである。
【0022】
(B)成分の配合量は、(A)~(C)成分の予備混合・反応によって生成する(A)成分と(B)成分との反応生成物(即ち、(A’)成分)を含む反応混合物を調製する前の段階において、(A)成分100質量部に対して0.1~30質量部、好ましくは0.5~20質量部、特に好ましくは1~15質量部の範囲で使用される。0.1質量部未満では、(A)成分の末端封鎖率が悪く、目的とするゴム弾性を有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が得難い。また30質量部を超えると、得られる硬化物は機械特性が低下し易く、室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の硬化速度も遅くなるなどの欠点がある。
また、上記した(A)成分と(B)成分との反応生成物(即ち、(A’)成分)を含む反応混合物を調製した後の段階における本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物中における(B)成分の配合量は、(A’)成分100質量部に対して0.1~30質量部、好ましくは0.1~28質量部、より好ましくは0.5~18質量部、特に好ましくは1~14質量部程度の範囲で使用される。
【0023】
[(C)成分]
(C)成分のアミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物は、(A)成分の末端にシラノール基を有するオルガノポリシロキサンの末端封鎖触媒、並びに、接着付与剤として重要な効果を発揮する化合物であり、分子中に-O-CH(CH3)-C(=O)O-R3(R3は、炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基である。)で示される乳酸エステルを脱離可能な加水分解性基を含有しないものである点において、上記(B)成分とは本質的に相違するものであって、好ましくは下記一般式(3)、(4)及び(4’)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン並びにそれらの部分加水分解縮合物から選ばれる少なくとも1種である。
【化10】
(式中、R4はアルキレン基と芳香環を含む炭素数7~10の2価炭化水素基であり、R5は炭素数1~10の2価炭化水素基であり、R6、R7は炭素数1~10の非置換1価炭化水素基である。bは2又は3である。但し、1級及び2級アミンの少なくとも一方はR4中の芳香環に直結していない。)
Y=N-Z-SiR3 (4)
Y-NH-Z-SiR3 (4’)
(式中、Yはその構造中に窒素原子を2個以上含有する炭素数1~15の1価又は2価炭化水素基であり、Zはヘテロ原子を含んでもよい炭素数1~10の非置換又は置換の2価炭化水素基である。Rは炭素数1~6の加水分解性基及び炭素数1~6の1価炭化水素基から選ばれる1種又は2種以上の1価の基であり、ケイ素原子に結合する3個のRのうち、少なくとも2個は加水分解性基である。)
【0024】
まず、一般式(3)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物において、このアミノ基含有加水分解性オルガノシランは、1級と2級アミンの間に芳香環を含み、更に少なくとも一方が芳香環に直結していない構造をしており、詳しくは特開平5-105689号公報に記載されている。
【0025】
この場合、一般式(3)において、R4はアルキレン基と芳香環を含む炭素数7~10の2価炭化水素基であり、フェニレン基(-C64-)と、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基等の炭素数1~4のアルキレン基とが結合した基が好ましく、例えば下記式(5)~(13)で示されるものが挙げられる。
-CH2-C64- (5)
-CH2-C64-CH2- (6)
-CH2-C64-CH2-CH2- (7)
-CH2-C64-CH2-CH2-CH2- (8)
-CH2-CH2-C64- (9)
-CH2-CH2-C64-CH2- (10)
-CH2-CH2-C64-CH2-CH2- (11)
-CH2-CH2-CH2-C64- (12)
-CH2-CH2-CH2-C64-CH2- (13)
これらの中で、特に好ましくは(6)である。
【0026】
5は炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の2価炭化水素基であり、例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、2-メチルプロピレン基等のアルキレン基、フェニレン基等のアリーレン基、これらアルキレン基とアリーレン基とが結合した基などが挙げられるが、好ましくは炭素数1~4のアルキレン基である。
【0027】
また、R6、R7はそれぞれ独立に炭素数1~10、好ましくは炭素数1~6の非置換1価炭化水素基であり、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、イソブチル基、tert-ブチル基、ヘキシル基、2-エチルヘキシル基、オクチル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等の環状アルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基等が挙げられる。R6としては、メチル基、ビニル基、フェニル基が好ましく、より好ましくはメチル基であり、R7としては、炭素数1~4のアルキル基が好ましく、より好ましくはメチル基、エチル基である。
【0028】
一般式(3)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシランの具体例としては、下記一般式(14)、(15)で示されるもの等を挙げることができる。なお、Me、Etはそれぞれ、メチル基、エチル基を示す。
【化11】
【化12】
【0029】
次に、一般式(4)及び(4’)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物は、1分子中に窒素原子を3個以上、好ましくは3~6個、より好ましくは3~5個含み、末端封鎖触媒機能を発現する1価又は2価の塩基性部位(Y)を有するアミノ基含有加水分解性オルガノシラン及び/又はその部分加水分解縮合物である。
【0030】
この場合、一般式(4)又は一般式(4’)において、末端封鎖触媒機能を発現し得る、1価又は2価の塩基性部位Yは、その構造中に窒素原子を2個以上、好ましくは2~5個、より好ましくは2~4個含む炭素数1~15、好ましくは炭素数1~10の1価又は2価炭化水素基であり、塩基性部位Yのうち、1価の基としては、例えば、下記式(16)で示される1,5,7-トリアザビシクロ[4.4.0]デカ-5-エンの部分構造からなる基など、2価の基としては、例えば、下記式(17)で示されるN-置換又は非置換のグアニジル基等の強塩基性を示すものなどが挙げられる。なお、下記式において、波線部は、窒素原子との結合部位である。
【化13】
【化14】
【0031】
式(17)中のR8~R11はそれぞれ、水素原子又は炭素数1~10の直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキル基、アルケニル基、アリール基を示し、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロヘキシル基等の環状アルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基等のアリール基などが挙げられる。これらの中では、メチル基、エチル基、フェニル基が好ましく、特にメチル基が好ましい。また、R8~R11は同じものであっても、異なっていてもよい。
【0032】
また、上記式(4)又は(4’)において、Rは、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基等のアルコキシ基、ビニロキシ基、アリロキシ基、プロペノキシ基、イソプロペノキシ基等のアルケニルオキシ基、ジメチルケトオキシム基、ジエチルケトオキシム基、メチルエチルケトオキシム基等のケトオキシム基、アセトキシ基等のアシルオキシ基などの炭素数1~6、好ましくは炭素数1~4の加水分解性基(即ち、ケイ素原子に結合してSi-O-C結合を形成し得る基)、あるいは、メチル基、エチル基等のアルキル基、ビニル基等のアルケニル基、フェニル基等のアリール基などの炭素数1~6、好ましくは炭素数1~4の1価炭化水素基から選ばれる1種又は2種以上の1価の基であるが、ケイ素原子に結合する3個のRのうち、少なくとも2個、好ましくは3個のRは加水分解性基である。
【0033】
また、加水分解性シリル基(-SiR3)としては、例えば、トリメトキシシリル基、メチルジメトキシシリル基、ビニルジメトキシシリル基、フェニルジメトキシシリル基、トリエトキシシリル基等のアルコキシシリル基;トリイソプロペノキシシリル基、メチルジイソプロペノキシシリル基、エチルジイソプロペノキシシリル基、ビニルジイソプロペノキシシリル基、フェニルジイソプロペノキシシリル基等のイソプロペノキシシリル基;トリス(ジメチルケトオキシム)シリル基、トリス(ジエチルケトオキシム)シリル基、トリス(エチルメチルケトオキシム)シリル基等のケトオキシムシリル基などが挙げられる。
【0034】
上記式(4)又は(4’)において、Zは、酸素原子、窒素原子等のヘテロ原子を含んでもよい、炭素数1~10、特には炭素数1~6の、直鎖状、分岐状もしくは環状のアルキレン基、アルケニレン基、アリーレン基等又はこれらが組み合わされた基などの非置換又は置換の2価炭化水素基である。例えば、メチレン基、エチレン基、プロピレン基、テトラメチレン基、ヘキサメチレン基、オクタメチレン基、デカメチレン基、2-メチルプロピレン基等のアルキレン基;フェニレン基等のアリーレン基、これらアルキレン基とアリーレン基が結合した基、ケトン、エステル、アミド等が介在した上記アルキレン基などが挙げられるが、好ましくはメチレン基、エチレン基、プロピレン基、アミド結合を介したプロピレン基等であり、特に好ましくはプロピレン基である。
【0035】
一般式(4)又は一般式(4’)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシランの具体例としては、下記一般式(18)~(25)で示されるもの等を挙げることができる。なお、Me、Et、Phはそれぞれ、メチル基、エチル基、フェニル基を示す。
【化15】
【化16】
【化17】
【化18】
【化19】
【化20】
【化21】
【化22】
【0036】
これらの中では、式(18)、式(19)又は式(20)で示される、特には、式(20)で示される、N-メチル置換のグアニジル基含有トリメトキシシラン(例えば、γ-(N,N’-ジメチルグアニジル)プロピルトリメトキシシラン)等の、N-メチル置換グアニジル基含有トリアルコキシシランが好ましい。
【0037】
(C)成分の配合量は、(A)~(C)成分の予備混合・反応によって生成する(A)成分と(B)成分との反応生成物(即ち、(A’)成分)を含む反応混合物を調製する前の段階において、(A)成分100質量部に対して0.1~10質量部、好ましくは0.2~5質量部、より好ましくは0.5~3質量部である。配合量が少なすぎると、(A)成分の末端封鎖率が低下したり、得られる硬化物の接着性も低下する。多すぎると価格的に不利になったり、得られる組成物の保存安定性が低下したりする。
また、上記した(A)成分と(B)成分との反応生成物(即ち、(A’)成分)を含む反応混合物を調製した後の段階における本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物中における(C)成分の配合量は、(A’)成分100質量部に対して0.1~10質量部、好ましくは0.2~5質量部、より好ましくは0.5~3質量部程度の範囲で使用される。
【0038】
[(D)成分]
(D)成分の無機充填剤は、粉砕シリカ、煙霧質シリカ、湿式シリカ、結晶性シリカ、水酸化アルミニウム、アルミナ、ベーマイト、水酸化マグネシウム、酸化マグネシウム、水酸化カルシウム、炭酸カルシウム、炭酸亜鉛、塩基性炭酸亜鉛、酸化亜鉛、酸化チタン、カーボンブラック、ガラスビーズ、ガラスバルーン、樹脂ビーズ、樹脂バルーンなどが挙げられ、1種を単独で使用してもよく、また2種以上を組み合わせてもよい。これらの無機充填剤は、表面処理されていなくても、公知の処理剤で表面処理されていてもよい。公知の処理剤としては、例えば、特開2000-256558号公報記載の加水分解性基含有ポリシロキサンが好ましいが、これに限定されるものではない。
【0039】
(D)成分の配合量は、(A)~(C)成分の予備混合・反応によって生成する(A)成分と(B)成分との反応生成物(即ち、(A’)成分)を含む反応混合物を調製する前の段階において、(A)成分100質量部に対して1~800質量部、好ましくは2~600質量部、特に好ましくは5~500質量部である。1質量部未満では、得られる硬化物の機械的特性が乏しくなる。800質量部を超えると、ゴム弾性を有する室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物が得難い。
また、上記した(A)成分と(B)成分との反応生成物(即ち、(A’)成分)を含む反応混合物を調製した後の段階における本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物中における(D)成分の配合量は、(A’)成分100質量部に対して1~800質量部、好ましくは2~600質量部、より好ましくは5~500質量部程度の範囲で使用される。
【0040】
[(E)成分]
(E)成分の硬化触媒は、同一であっても異種のものであってもよく、また、1種を単独で使用しても2種以上の混合物として使用してもよい。錫、チタン、ジルコニウム、鉄、アンチモン、ビスマス、マンガン等の金属の有機カルボン酸塩、アルコキサイド;有機チタン酸エステル、有機チタンキレート化合物;(C)成分以外のアミン化合物及びその塩が例示され、より具体的には、ジブチル錫ジラウレート、ジブチル錫ジオクトエート、ジオクチル錫ジラウレート、ジブチル錫マレート、ジメチル錫ジネオデカノエート、ジブチル錫ジメトキサイド、ジオクチル錫ジネオデカノエート、スタナスオクトエート等の錫化合物;テトラブチルチタネート、ジイソプロポキシビス(アセチルアセトネート)チタン、ジイソプロポキシビス(エチルアセトアセテート)チタン等のチタン化合物、ジブチルアミン、ラウリルアミン、テトラメチルグアニジン等の(C)成分以外のアミン化合物及びその塩などが例示される。本発明組成物の速硬化性や深部硬化性などの硬化特性が優れることから、有機錫化合物を添加することが好ましく、中でも、ジアルキル錫ジアルコキサイド、ジアルキル錫ジカルボン酸塩であることが好ましい。
【0041】
(E)硬化触媒の添加量は、(A)~(C)成分の予備混合・反応によって生成する(A)成分と(B)成分との反応生成物(即ち、(A’)成分)を含む反応混合物を調製する前の段階において、(A)成分100質量部に対して、0.001~20質量部、好ましくは0.01~5質量部、特に好ましくは0.05~3質量部である。0.001質量部未満では、得られる組成物において十分な架橋性が得られない。20質量部を超えると、価格的に不利になり、得られる組成物の硬化速度が低下するなどの欠点がある。
また、上記した(A)成分と(B)成分との反応生成物(即ち、(A’)成分)を含む反応混合物を調製した後の段階における本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物中における(E)成分の配合量は、(A’)成分100質量部に対して0.001~20質量部、好ましくは0.01~5質量部、より好ましくは0.05~3質量部程度の範囲で使用される。
【0042】
[その他の成分]
本発明においては、前記の(A)~(E)成分に加えて、その他のシランカップリング剤を配合することができる。具体的には、ビニルトリス(β-メトキシエトキシ)シラン、γ-メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、β-(3,4-エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ-メルカプトプロピルトリメトキシシラン、γ-グリシドキシプロピルトリイソプロペノキシシラン、γ-グリシドキシプロピルメチルジイソプロペノキシシランなどが例示される。
このシランカップリング剤は、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む混合物を予備混合・反応して(A)成分と(B)成分との反応生成物を含む反応混合物を調製した後、該反応混合物と(D)成分及び(E)成分を均一に混合する工程において、(D)成分あるいは(E)成分と共に配合することが好ましい。
【0043】
その他のシランカップリング剤を配合する場合の配合量は、(A)~(C)成分の予備混合・反応によって生成する(A)成分と(B)成分との反応生成物(即ち、(A’)成分)を含む反応混合物を調製する前の段階において、(A)成分100質量部に対して好ましくは0.1~10質量部であり、より好ましくは0.2~5質量部である。
また、その他のシランカップリング剤を配合する場合、上記した(A)成分と(B)成分との反応生成物(即ち、(A’)成分)を含む反応混合物を調製した後の段階における本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物中におけるその他のシランカップリング剤の配合量は、(A’)成分100質量部に対して好ましくは0.1~10質量部、より好ましくは0.2~5質量部程度の範囲で使用される。
【0044】
また、本発明には、上記成分以外の添加剤を配合してもよい。
添加剤としては、公知の添加剤を本発明の目的を損なわない範囲で添加してもよい。例えば、ウェッターやチキソトロピー向上剤としてのポリエーテル、可塑剤としての非反応性ジメチルシリコーンオイル、イソパラフィン、架橋密度向上剤としてのトリメチルシロキシ単位〔(CH33SiO1/2単位〕とSiO2単位とからなる網状ポリシロキサン等が挙げられる。
【0045】
更に、必要に応じて、顔料、染料、蛍光増白剤等の着色剤、防かび剤、抗菌剤、ブリードオイルとしての非反応性フェニルシリコーンオイル、フルオロシリコーンオイル、シリコーンと非相溶の有機液体等の表面改質剤、トルエン、キシレン、溶剤揮発油、シクロヘキサン、メチルシクロヘキサン、低沸点イソパラフィン等の溶剤も添加してよい。
【0046】
[組成物の製造]
本発明の室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物の製造方法は、まず前記した(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む混合物を事前に予備混合・反応して、(A)成分と(B)成分との反応生成物(即ち、(A)成分中の分子鎖両末端のシラノール基が、-O-CH(CH3)-C(=O)O-R3(R3は炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基)で示される乳酸エステルを脱離可能な加水分解性基を2個又は3個有する加水分解性シリル基でそれぞれ封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサン、より具体的には、(A)成分中の分子鎖両末端のシラノール基が、-Si(R23-a’(O-CH(CH3)-C(=O)O-R3a’で示される加水分解性シリル基(R2、R3は、炭素数1~10の非置換又は置換の1価炭化水素基、a’は2又は3である。)でそれぞれ封鎖された直鎖状ジオルガノポリシロキサンである(A’)成分を含む反応混合物を調製した後、該反応混合物と(D)成分及び(E)成分を均一に混合することによって製造することができる。
【0047】
(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む混合物を予備混合・反応する条件としては、通常、0~60℃、好ましくは10~40℃の温度範囲で、10~120分、好ましくは20~90分の混合時間で、均一に混合することによって行うことができる。
【0048】
このような工程を経て製造された(A’)、(B)、(C)、(D)及び(E)成分を含有してなる室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、湿分を避けた雰囲気で保存することができ、これを室温(23℃±10℃)に放置することにより、空気中の水分存在下で通常5分~1週間で硬化する。
【0049】
上記で製造された室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物のJIS K 6249に準拠して測定した23℃におけるタックフリータイムは、10分未満であることが好ましく、2~9分であることが好ましい。なお、上記タックフリータイムとするには、(A)成分、(B)成分及び(C)成分を含む混合物を予備混合・反応して(A)成分と(B)成分との反応生成物を含む反応混合物を調製した後、該反応混合物と(D)成分及び(E)成分を均一に混合する製造方法とすることにより達成できる。
【0050】
上記で得られた脱乳酸エステルタイプの室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物は、硬化性、接着性、作業性等の全ての特性に優れることから、特に自動車ヘッドライト用シーリング材として好適に用いることができる。
【実施例
【0051】
以下、本発明を具体的に説明する実施例及び比較例を示すが、本発明は下記の実施例に制限されるものではない。
なお、下記例において、粘度は25℃における回転粘度計の測定値を示し、重合度はトルエンを展開溶媒としたGPC分析におけるポリスチレン換算の数平均重合度を示す。また、常温は23℃±10℃を意味する。Meはメチル基を示す。
【0052】
[実施例1]
分子鎖両末端がシラノール基であり、25℃における粘度が50,000mPa・s(重合度が約400)のポリジメチルシロキサン60質量部(2.0mmol)と、分子鎖両末端がトリメチルシリル基であり、25℃における粘度が100mPa・sのポリジメチルシロキサン25質量部と、メチルトリス(エチルラクタート)シラン6質量部(15.2mmol)と、ビニルトリス(エチルラクタート)シラン2質量部(4.9mmol)と、(A)成分の末端封鎖触媒として下記式(26)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン0.8質量部を常温・常圧下にて60分混合して、分子鎖両末端がメチルビス(エチルラクタート)シリル基とビニルビス(エチルラクタート)シリル基の混合物(モル比、約3:1)で封鎖されたポリジメチルシロキサンを含有する反応混合物を調製した。次いで、該反応混合物に、煙霧質シリカ8質量部を減圧下(-0.08MPa以下、以下同様。)にて40分混合した。減圧混合後、ジオクチル錫ジネオデカノエート0.1質量部を加え、減圧下15分混合して組成物1を得た。
【化23】
【0053】
[実施例2]
分子鎖両末端がシラノール基であり、25℃における粘度が50,000mPa・s(重合度が約400)のポリジメチルシロキサン60質量部(2.0mmol)と、分子鎖両末端がトリメチルシリル基であり、25℃における粘度が100mPa・sのポリジメチルシロキサン25質量部と、メチルトリス(エチルラクタート)シラン6質量部(15.2mmol)と、ビニルトリス(エチルラクタート)シラン2質量部(4.9mmol)と、(A)成分の末端封鎖触媒として上記式(26)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン0.8質量部を常温・常圧下にて60分混合して、分子鎖両末端がメチルビス(エチルラクタート)シリル基とビニルビス(エチルラクタート)シリル基の混合物(モル比、約3:1)で封鎖されたポリジメチルシロキサンを含有する反応混合物を調製した。次いで、該反応混合物に、煙霧質シリカ8質量部を減圧下にて40分混合した。減圧混合後、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.5質量部と、ジオクチル錫ジネオデカノエート0.1質量部を加え、減圧下15分混合して組成物2を得た。
【0054】
[実施例3]
分子鎖両末端がシラノール基であり、25℃における粘度が50,000mPa・s(重合度が約400)のポリジメチルシロキサン60質量部(2.0mmol)と、分子鎖両末端がトリメチルシリル基であり、25℃における粘度が100mPa・sのポリジメチルシロキサン25質量部と、ビニルトリス(エチルラクタート)シラン6.6質量部(16.3mmol)と、(A)成分の末端封鎖触媒として上記式(26)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン0.8質量部を常温・常圧下にて60分混合して、分子鎖両末端がビニルビス(エチルラクタート)シリル基で封鎖されたポリジメチルシロキサンを含有する反応混合物を調製した。次いで、該反応混合物に、煙霧質シリカ8質量部を減圧下にて40分混合した。減圧混合後、ジオクチル錫ジネオデカノエート0.1質量部を加え、減圧下15分混合して組成物3を得た。
【0055】
[実施例4]
分子鎖両末端がシラノール基であり、25℃における粘度が50,000mPa・s(重合度が約400)のポリジメチルシロキサン60質量部(2.0mmol)と、分子鎖両末端がトリメチルシリル基であり、25℃における粘度が100mPa・sのポリジメチルシロキサン25質量部と、メチルトリス(エチルラクタート)シラン6質量部(15.2mmol)と、ビニルトリス(エチルラクタート)シラン2質量部(4.9mmol)と、(A)成分の末端封鎖触媒として下記式(27)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン0.8質量部を常温・常圧下にて60分混合して、分子鎖両末端がメチルビス(エチルラクタート)シリル基とビニルビス(エチルラクタート)シリル基の混合物(モル比、約3:1)で封鎖されたポリジメチルシロキサンを含有する反応混合物を調製した。次いで、該反応混合物に、煙霧質シリカ8質量部を減圧下にて40分混合した。減圧混合後、ジオクチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、減圧下15分混合して組成物4を得た。
【化24】
【0056】
[実施例5]
分子鎖両末端がシラノール基であり、25℃における粘度が50,000mPa・s(重合度が約400)のポリジメチルシロキサン60質量部(2.0mmol)と、分子鎖両末端がトリメチルシリル基であり、25℃における粘度が100mPa・sのポリジメチルシロキサン25質量部と、メチルトリス(エチルラクタート)シラン6質量部(15.2mmol)と、ビニルトリス(エチルラクタート)シラン2質量部(4.9mmol)と、(A)成分の末端封鎖触媒として上記式(27)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン0.8質量部を常温・常圧下にて60分混合して、分子鎖両末端がメチルビス(エチルラクタート)シリル基とビニルビス(エチルラクタート)シリル基の混合物(モル比、約3:1)で封鎖されたポリジメチルシロキサンを含有する反応混合物を調製した。次いで、該反応混合物に、煙霧質シリカ8質量部を減圧下にて40分混合した。減圧混合後、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.5質量部と、ジオクチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、減圧下15分混合して組成物5を得た。
【0057】
[比較例1]
分子鎖両末端がシラノール基であり、25℃における粘度が50,000mPa・s(重合度が約400)のポリジメチルシロキサン60質量部(2.0mmol)と、分子鎖両末端がトリメチルシリル基であり、25℃における粘度が100mPa・sのポリジメチルシロキサン25質量部と、メチルトリス(エチルラクタート)シラン6質量部(15.2mmol)と、ビニルトリス(エチルラクタート)シラン2質量部(4.9mmol)を常温・常圧下にて60分混合した。次いで、煙霧質シリカ8質量部を減圧下にて40分混合した。減圧混合後、ジオクチル錫ジネオデカノエート0.1質量部を加え、減圧下15分混合して組成物6を得た。
【0058】
[比較例2]
分子鎖両末端がシラノール基であり、25℃における粘度が50,000mPa・s(重合度が約400)のポリジメチルシロキサン60質量部(2.0mmol)と、分子鎖両末端がトリメチルシリル基であり、25℃における粘度が100mPa・sのポリジメチルシロキサン25質量部と、ビニルトリス(エチルラクタート)シラン6.6質量部(16.3mmol)を常温・常圧下にて60分混合した。次いで、煙霧質シリカ8質量部を減圧下にて40分混合した。減圧混合後、ジオクチル錫ジネオデカノエート0.1質量部を加え、減圧下15分混合して組成物7を得た。
【0059】
[比較例3]
分子鎖両末端がシラノール基であり、25℃における粘度が50,000mPa・s(重合度が約400)のポリジメチルシロキサン60質量部(2.0mmol)と、分子鎖両末端がトリメチルシリル基であり、25℃における粘度が100mPa・sのポリジメチルシロキサン25質量部と、ビニルトリス(エチルラクタート)シラン6.6質量部(16.3mmol)と、ジオクチル錫ジラウレート0.1質量部を常温・常圧下にて60分混合した。次いで、煙霧質シリカ8質量部を減圧下にて40分混合した。減圧混合後、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.5質量部を加え、減圧下15分混合して組成物8を得た。
【0060】
[比較例4]
分子鎖両末端がシラノール基であり、25℃における粘度が50,000mPa・s(重合度が約400)のポリジメチルシロキサン60質量部(2.0mmol)と、分子鎖両末端がトリメチルシリル基であり、25℃における粘度が100mPa・sのポリジメチルシロキサン25質量部と、メチルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン4質量部(13.6mmol)と、ビニルトリス(メチルエチルケトオキシム)シラン1質量部(3.3mmol)と、上記式(26)で示されるアミノ基含有加水分解性オルガノシラン0.8質量部を常温・常圧下にて60分混合した。次いで、煙霧質シリカ8質量部を減圧下にて40分混合した。減圧混合後、γ-グリシドキシプロピルトリメトキシシラン0.5質量部と、ジオクチル錫ジラウレート0.1質量部を加え、減圧下15分混合して組成物9を得た。
【0061】
調製した組成物1~9を用いて、以下の特性を確認した。得られた結果を表1に示す。
【0062】
・タックフリータイム
JIS K 6249に準拠して測定した。
【0063】
・初期硬化性
調製した組成物1~9を、23℃/50%RH環境下にて厚さが3mmになるように7日放置して硬化させ、JIS K 6249に従い、硬さを測定した。
【0064】
・硬化速度
調製した組成物1~9をφ10mm、高さ13mmのガラスシャーレに入れ、23℃/50%RH環境下に1日放置した。1日後、表面から深部方向に硬化したゴムをくり抜いた後、硬化した厚み(mm)を測定した。
【0065】
・接着性
車載用ヘッドライトは主にポリカーボネート製である。被着体として幅25mm、長さ50mmのポリカーボネート(PC)及びアルミニウム(Al)を使用し、調製した組成物1~9を接着面積250mm2、接着厚さ2.0mmとなるように上記被着体で挟み込み、23℃/50%RH環境下に7日放置してせん断接着試験体を作製した。この試験体を用いてJIS K 6249に準拠して、せん断接着力(MPa)を測定し、凝集破壊率(CF:破断面の面積全体に対する凝集破壊した面積の比率(%))を確認した。
【0066】
・吐出性
調製した組成物1~9をポリエチレン製カートリッジに充填し、φ3mmのノズルから0.2MPaの圧力で吐出し、5秒間で吐出される組成物の質量を測定した。
【0067】
・防曇材に対する影響試験
車載用ヘッドライトは、曇り防止を目的として防曇材が塗布されている場合がある。
防曇材への影響を確認するため、密閉可能な150mlのガラス製容器に調製した組成物1~9を各々10g入れた。防曇材を塗布したポリカーボネートを、容器に入れた組成物1~9に接触しないように入れ、完全に密封した。70℃/3日間放置し、防曇材の変化及び防曇性について評価を行った。評価結果は以下の通り判定した。
防曇材の変化
○:防曇材が白濁、あるいは変質していない
×:防曇材が白濁、あるいは変質している
防曇性
○:防曇性を維持している
×:防曇性を維持しておらず、人の息等で防曇材が曇る
【0068】
【表1】
【0069】
上記実施例1~5の結果より、良好な硬化性、硬化速度、接着性を発現させるためには、(C)成分が必要であり、更に(B)成分を使用して組成物(組成物1~5)とすることで、車載用ヘッドライトに適応されている防曇材への影響が殆どないことが分かった。
比較例1~3の(C)成分を添加しなかった組成物6~8では、硬化性、接着性、吐出性が悪くなった。
なお、比較例4の(B)成分を配合しない、従来の脱オキシム型室温硬化性オルガノポリシロキサン組成物(組成物9)では、良好な硬化性等は得られるものの、防曇材が変質(白濁)したため、ヘッドライト用としては不適である。