(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】基板洗浄装置、基板洗浄方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体
(51)【国際特許分類】
H01L 21/304 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
H01L21/304 643Z
H01L21/304 643A
(21)【出願番号】P 2020171353
(22)【出願日】2020-10-09
【審査請求日】2023-07-14
(73)【特許権者】
【識別番号】000219967
【氏名又は名称】東京エレクトロン株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100088155
【氏名又は名称】長谷川 芳樹
(74)【代理人】
【識別番号】100113435
【氏名又は名称】黒木 義樹
(74)【代理人】
【識別番号】100122507
【氏名又は名称】柏岡 潤二
(74)【代理人】
【識別番号】100171099
【氏名又は名称】松尾 茂樹
(74)【代理人】
【識別番号】100153969
【氏名又は名称】松澤 寿昭
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 優樹
(72)【発明者】
【氏名】伊藤 規宏
【審査官】堀江 義隆
(56)【参考文献】
【文献】特開2018-147979(JP,A)
【文献】再公表特許第2008/013118(JP,A1)
【文献】特開2002-143749(JP,A)
【文献】特開2017-022317(JP,A)
【文献】特開2015-050213(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0110861(US,A1)
【文献】特開平09-232276(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/304
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板の裏面と当接して前記基板を支持するように構成された支持部と、
前記支持部に支持される基板の周囲を取り囲むように配置された環状部材であって、前記環状部材の径方向において水平に対して傾斜している傾斜面を含む環状部材と、
前記支持部及び前記環状部材を回転させるように構成された回転部と、
前記支持部に支持される基板の裏面に向けて洗浄液を供給するように構成された第1の供給部と、
前記傾斜面に向けて洗浄液を供給するように構成された第2の供給部とを備え
、
前記傾斜面は、径方向内方に向かうにつれて下方へと傾斜しており、
前記第2の供給部は、前記傾斜面の上方に配置されたノズルを含む、基板洗浄装置。
【請求項2】
前記第2の供給部は、前記環状部材の径方向において移動可能に構成されたノズルを含む、請求項
1に記載の装置。
【請求項3】
前記洗浄液は、洗浄用薬液又はリンス液である、請求項1
又は2に記載の装置。
【請求項4】
前記基板を支持しながら、先端が前記支持部よりも上方に位置する上昇位置と、先端が前記支持部よりも下方に位置する降下位置との間で昇降可能に構成された昇降部と、
制御部とをさらに備え、
前記制御部は、
前記支持部に支持されている前記基板の裏面に向けて洗浄液を供給するように前記第1の供給部を制御する第1の処理と、
前記第1の処理の後に、前記基板を支持する前記昇降部が前記上昇位置に位置するように前記昇降部を制御する第2の処理と、
前記第2の処理の後に、前記傾斜面に向けて洗浄液を供給するように前記第2の供給部を制御する第3の処理とを実行する、請求項1~
3のいずれか一項に記載の装置。
【請求項5】
基板の裏面と当接して前記基板を支持するように構成された支持部と、
前記支持部に支持される基板の周囲を取り囲むように配置された環状部材であって、前記環状部材の径方向において水平に対して傾斜している傾斜面を含む環状部材と、
前記支持部及び前記環状部材を回転させるように構成された回転部と、
前記支持部に支持される基板の裏面に向けて洗浄液を供給するように構成された第1の供給部と、
前記傾斜面に向けて洗浄液を供給するように構成された第2の供給部と、
前記基板を支持しながら、先端が前記支持部よりも上方に位置する上昇位置と、先端が前記支持部よりも下方に位置する降下位置との間で昇降可能に構成された昇降部と、
制御部とを備え、
前記制御部は、
前記支持部に支持されている前記基板の裏面に向けて洗浄液を供給するように前記第1の供給部を制御する第1の処理と、
前記第1の処理の後に、前記基板を支持する前記昇降部が前記上昇位置に位置するように前記昇降部を制御する第2の処理と、
前記第2の処理の後に、前記傾斜面に向けて洗浄液を供給するように前記第2の供給部を制御する第3の処理とを実行する、基板洗浄装置。
【請求項6】
前記制御部は、
前記第3の処理の後に、前記基板を所定角度回転させるように前記昇降部を制御する第4の処理と、
前記第4の処理の後に、前記昇降部を前記降下位置まで降下させて前記基板が前記支持部に支持されるように前記昇降部を制御する第5の処理と、
前記第5の処理の後に、前記基板の裏面に向けて洗浄液を供給するように前記第1の供給部を制御する第6の処理とをさらに実行する、請求項
4又は5に記載の装置。
【請求項7】
前記第3の処理は、前記傾斜面に供給される洗浄液が主に前記環状部材の径方向内側に向けて流れる第1の処理条件と、前記傾斜面に供給される洗浄液が主に前記環状部材の径方向外側に向けて流れる第2の処理条件とで、前記第2の供給部を制御することを含む、請求項
4~6のいずれか一項に記載の装置。
【請求項8】
前記第3の処理は、前記第1の処理条件で前記第2の供給部を制御した後に、前記第2の処理条件で前記第2の供給部を制御することを含む、請求項7に記載の装置。
【請求項9】
前記第3の処理は、前記傾斜面に向けて洗浄用薬液を供給した後に前記傾斜面に向けてリンス液を供給するように、前記第2の供給部を制御することを含む、請求項
4~8のいずれか一項に記載の装置。
【請求項10】
基板の裏面と当接することにより前記基板を支持する支持部と、前記基板の周囲を取り囲むように配置された環状部材とが回転している状態で、前記環状部材の傾斜面に洗浄液を供給することを含み、
前記傾斜面は、
前記環状部材の径方向において水平に対して傾斜して
おり、
径方向内方に向かうにつれて下方へと傾斜しており、
前記傾斜面に洗浄液を供給することは、前記傾斜面に対して上方から洗浄液を供給することを含む、基板洗浄方法。
【請求項11】
前記傾斜面に洗浄液を供給することは、洗浄液を供給するノズルを前記環状部材の径方向において移動させながら、前記傾斜面に洗浄液を供給することを含む、請求項
10に記載の方法。
【請求項12】
前記洗浄液は、洗浄用薬液又はリンス液である、請求項10
又は11に記載の方法。
【請求項13】
前記支持部及び前記環状部材が回転している状態で、前記支持部に支持されている前記基板の裏面に向けて洗浄液を供給する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記基板を前記支持部よりも上方に上昇させる第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記傾斜面に洗浄液を供給する第3の工程とを含む、請求項10~
12のいずれか一項に記載の方法。
【請求項14】
基板の裏面と当接することにより前記基板を支持する支持部と、前記基板の周囲を取り囲むように配置された環状部材とが回転している状態で、前記環状部材の傾斜面に洗浄液を供給することを含み、
前記支持部及び前記環状部材が回転している状態で、前記支持部に支持されている前記基板の裏面に向けて洗浄液を供給する第1の工程と、
前記第1の工程の後に、前記基板を前記支持部よりも上方に上昇させる第2の工程と、
前記第2の工程の後に、前記傾斜面に洗浄液を供給する第3の工程とを含み、
前記傾斜面は、前記環状部材の径方向において水平に対して傾斜している、基板洗浄方法。
【請求項15】
前記第3の工程の後に、前記基板を所定角度回転させる第4の工程と、
前記第4の工程の後に、前記基板を降下させて前記支持部に支持させる第5の工程と、
前記第5の工程の後に、前記基板の裏面に向けて洗浄液を供給する第6の工程とをさらに含む、請求項
13又は14に記載の方法。
【請求項16】
前記第3の工程は、前記傾斜面に供給される洗浄液が主に前記環状部材の径方向内側に向けて流れる第1の処理条件と、前記傾斜面に供給される洗浄液が主に前記環状部材の径方向外側に向けて流れる第2の処理条件とで、前記傾斜面に洗浄液を供給することを含む、請求項
13~14のいずれか一項に記載の方法。
【請求項17】
前記第3の工程は、前記第1の処理条件で前記傾斜面に洗浄液を供給した後に、前記第2の処理条件で前記傾斜面に洗浄液を供給することを含む、請求項16に記載の方法。
【請求項18】
前記第3の工程は、前記傾斜面に向けて洗浄用薬液を供給した後に前記傾斜面に向けてリンス液を供給することを含む、請求項
13~17のいずれか一項に記載の方法。
【請求項19】
請求項10~18のいずれか一項に記載の方法を基板洗浄装置に実行させるためのプログラムを記録した、コンピュータ読み取り可能な記録媒体。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本開示は、基板洗浄装置、基板洗浄方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体に関する。
【背景技術】
【0002】
特許文献1は、基板の裏面を洗浄液(例えば、薬液、リンス液など)で洗浄するように構成された液処理装置を開示している。当該液処理装置は、基板を支持する支持部と、支持部に支持された基板を回転させる回転部と、支持部に支持された基板の裏面に洗浄液を供給する供給部と、支持部に支持される基板の周囲を取り囲むように配置されたカップとを備える。回転注の基板の裏面に対して供給部から洗浄液が供給されると、洗浄液は、遠心力によって基板の裏面の中心部から周縁部に向かって流れる。これにより、基板の裏面が洗浄される。基板から振り切られた洗浄液は、カップに向けて飛散し、カップにて集液された後、液処理装置の外部に排出される。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
本開示は、基板を支持する支持部及びその周辺部材に付着する異物(例えば、パーティクル、薬液残渣など)を簡易且つ効率的に除去することが可能な基板洗浄装置、基板洗浄方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体を説明する。
【課題を解決するための手段】
【0005】
基板洗浄装置の一例は、基板の裏面と当接して基板を支持するように構成された支持部と、支持部に支持される基板の周囲を取り囲むように配置された環状部材であって、環状部材の径方向において水平に対して傾斜している傾斜面を含む環状部材と、支持部及び環状部材を回転させるように構成された回転部と、支持部に支持される基板の裏面に向けて洗浄液を供給するように構成された第1の供給部と、傾斜面に向けて洗浄液を供給するように構成された第2の供給部とを備える。
【発明の効果】
【0006】
本開示に係る基板洗浄装置、基板洗浄方法及びコンピュータ読み取り可能な記録媒体によれば、基板を支持する支持部及びその周辺部材に付着する異物を簡易且つ効率的に除去することが可能となる。
【図面の簡単な説明】
【0007】
【
図1】
図1は、基板洗浄装置の一例を示す概略断面図である。
【
図2】
図2は、
図1の環状部材の近傍を部分的に示す概略断面図である。
【
図3】
図3は、基板洗浄装置の主要部の一例を示すブロック図である。
【
図4】
図4は、コントローラのハードウェア構成の一例を示す概略図である。
【
図5】
図5は、基板の洗浄処理の一例を説明するための図である。
【
図9】
図9は、基板の洗浄処理の一例を説明するためのフローチャートである。
【
図10】
図10は、基板洗浄装置の他の例を部分的に示す概略断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0008】
以下の説明において、同一要素又は同一機能を有する要素には同一符号を用いることとし、重複する説明は省略する。
【0009】
[基板洗浄装置の構成]
まず、
図1~
図4を参照して、基板洗浄装置1の一例の構成について説明する。基板洗浄装置1は、基板Wの裏面Waを洗浄液で洗浄するように構成されている。基板Wは、例えば、半導体基板(シリコンウエハ)であってもよい。基板Wの直径は、例えば200mm~450mm程度であってもよい。基板Wは、円板状を呈してもよいし、多角形など円形以外の板状を呈していてもよい。基板Wは、一部が切り欠かれた切欠部を有していてもよい。切欠部は、例えば、ノッチ(U字形、V字形等の溝)であってもよいし、直線状に延びる直線部(いわゆる、オリエンテーション・フラット)であってもよい。
【0010】
基板洗浄装置1は、
図1に示されるように、筐体10と、回転部20(支持部)と、昇降部30と、カバー部40と、供給部50(第1の供給部)と、供給部60(第2の供給部)と、コントローラCtr(制御部)とを含む。筐体10は、主として、回転部20、昇降部30及びカバー部40を内部に収容している。筐体10の側壁11には、搬入出口12が形成されている。基板Wは、図示しない搬送機構(例えばロボットアームなど)により、搬入出口12を通じて、筐体10の内部に搬入され、また、筐体10から外部に搬出される。
【0011】
回転部20は、回転軸21と、駆動機構22と、支持プレート23と、複数の支持ピン24(支持部)と、環状部材25とを含む。回転軸21は、鉛直方向に沿って延びる中空の管状部材である。回転軸21は、中心軸Ax周りにおいて回転可能となるように、筐体10の底壁13に対して取り付けられている。
【0012】
駆動機構22は、回転軸21に接続されている。駆動機構22は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、回転軸21を回転させるように構成されている。駆動機構22は、例えば電動モータ等の動力源であってもよい。
【0013】
支持プレート23は、例えば円環状を呈する平板であり、水平に沿って延びている。すなわち、支持プレート23の中央部には、貫通孔が形成されている。支持プレート23の内周部は、回転軸21の先端部に接続されている。そのため、支持プレート23は、回転軸21の中心軸Ax周りに、回転軸21の回転に伴って回転するように構成されている。
【0014】
複数の支持ピン24は、支持プレート23の上面から上方に向けて突出するように支持プレート23に設けられている。複数の支持ピン24は、これらの先端と基板Wの裏面Waとが当接することで、基板Wを略水平に支持するように構成されている。複数の支持ピン24は、例えば、円柱形状を呈していてもよいし、錐台状を呈していてもよい。複数の支持ピン24は、支持プレート23の外周部の近傍において、上方から見て全体として円形状をなすように略等間隔に配置されていてもよい。例えば、複数の支持ピン24が12個の場合、複数の支持ピン24は、略30°間隔で配置されていてもよい。
【0015】
環状部材25は、円環状を呈しており、支持プレート23の外周部を取り囲むように配置されている。環状部材は、複数の接続部材26によって、支持プレート23の外周部に接続されている。そのため、環状部材25は、回転軸21の中心軸Ax周りに、回転軸21の回転に伴って回転するように構成されている。
【0016】
環状部材25は、
図1及び
図2に示されるように、上壁部25aと、側壁部25bとを含んでいてもよい。上壁部25aは、例えば円環状を呈する板状体であり、水平に沿って延びている。上壁部25aの内周縁は、複数の支持ピン24に支持された状態の基板Wの端面と対向してもよい。すなわち、上壁部25aは、複数の支持ピン24に支持された状態の基板Wを取り囲むように配置されていてもよい。
【0017】
上壁部25aの内周部の上面は、水平に対して傾斜した傾斜面S1を含んでいてもよい。上壁部25aの内周部の上面の全体が傾斜面S1であってもよいし、上壁部25aの内周部の上面の一部が傾斜面S1であってもよい。傾斜面S1は、径方向内方に向かうにつれて下方へと傾斜している。
【0018】
上壁部25aの内周部の下面は、水平に対して傾斜した傾斜面S2を含んでいてもよい。上壁部25aの内周部の下面の全体が傾斜面S2であってもよいし、上壁部25aの内周部の下面の一部が傾斜面S2であってもよい。傾斜面S2は、径方向内方に向かうにつれて上方へと傾斜している。
【0019】
上壁部25aの内周部は、傾斜面S1,S2の存在により、径方向内方に向かうにつれて窄まる先細り形状とされていてもよい。傾斜面S1,S2はそれぞれ、平坦面であってもよいし、非平坦面(例えば、湾曲面)であってもよい。洗浄液の流動性を高める目的で、傾斜面S1,S2を含む環状部材25の表面が、例えば、ディンプル加工及び/又はエンボス加工により多数の凹凸を含んでいてもよいし、径方向に沿って延びる溝又は突条を含んでいてもよい。あるいは、洗浄液の流動性を高める目的で、傾斜面S1,S2を含む環状部材25の表面に対して、表面処理が施されていてもよいし、被膜が形成されていてもよい。
【0020】
側壁部25bは、例えば、円筒状を呈していてもよい。側壁部25bの上端部は、上壁部25aの外周部と一体的に接続されていてもよい。側壁部25bは、下方に向かうにつれて窄まる先細り形状とされていてもよい。
【0021】
昇降部30は、
図1に示されるように、軸部材31と、駆動機構32と、複数の支持ピン33とを含む。軸部材31は、鉛直方向に沿って延びる中空の管状部材である。軸部材31は、中心軸Ax周りにおいて回転可能であると共に、上下方向に昇降可能に構成されている。軸部材31は、回転軸21の内部に挿通されている。
【0022】
駆動機構32は、軸部材31に接続されている。駆動機構32は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、軸部材31を昇降させるように構成されている。駆動機構32が軸部材31を昇降させることにより、軸部材31は、複数の支持ピン33が複数の支持ピン24よりも上方に位置する上昇位置(
図1参照)と、複数の支持ピン33が複数の支持ピン24よりも下方に位置する降下位置(後述の
図7参照)との間で上下動してもよい。駆動機構22は、例えばリニアアクチュエータ等の動力源であってもよい。
【0023】
複数の支持ピン33は、軸部材31の上端から上方に向けて突出するように軸部材31に設けられている。複数の支持ピン33は、これらの先端と基板Wの裏面Waとが当接することで、基板Wを支持するように構成されている。複数の支持ピン33は、例えば、円柱形状を呈していてもよいし、錐台状を呈していてもよい。複数の支持ピン33は、上方から見て全体として円形状をなすように略等間隔に配置されていてもよい。
【0024】
カバー部40は、円環状を呈しており、環状部材25及び支持プレート23の外周部を取り囲むように設けられている。カバー部40は、基板Wに供給された洗浄液であって、基板Wから振り切られた洗浄液を受け止める集液容器として機能する。
【0025】
カバー部40は、
図1及び
図2に示されるように、上壁部41と、側壁部42と、底壁部43とを含んでいてもよい。上壁部41は、例えば円環状を呈する板状体であり、水平に沿って延びている。上壁部41は、上方から見たときに、傾斜面S1と少なくとも部分的に重なり合っているが、複数の支持ピン24に支持された状態の基板Wとは重なり合わない。上壁部41のうち傾斜面S1と重なり合う部分には、貫通孔H1(ノズル)が設けられている。すなわち、貫通孔H1は、傾斜面S1の上方に位置しており、貫通孔H1の下端部は、傾斜面S1に向けて開口している。
【0026】
側壁部42は、例えば、円筒状を呈していてもよい。側壁部42の上端部は、上壁部41の外周部と一体的に接続されていてもよい。側壁部42の下端部は、底壁部43の外周部と一体的に接続されていてもよい。底壁部43は、径方向内方に向かうにつれて上方へと傾斜していてもよい。底壁部43の底部には、貫通孔H2が設けられている。貫通孔H2は、カバー部40において捕集された洗浄液を基板洗浄装置1の外部に排出するための排液流路として機能する。
【0027】
供給部50は、
図1に示されるように、軸部材31の内部を通じて洗浄液L1,L2を基板Wの裏面Waに供給するように構成されている。すなわち、軸部材31は、洗浄液L1,L2を基板Wの裏面Waに供給するためのノズルとして機能する。供給部50は、液源51A,51Bと、ポンプ52A,52Bと、バルブ53A,53Bと、配管54A,54Bとを含む。
【0028】
液源51Aは、洗浄液L1の供給源として機能する。洗浄液L1は、例えば、基板Wの裏面Waに付着したSiNなどの不要な膜を除去するための洗浄用薬液(例えば、希フッ酸(SC1))であってもよい。ポンプ52Aは、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、液源51Aから洗浄液L1を吸引し、バルブ53A及び配管54Aを介して洗浄液L1を軸部材31に送り出すように構成されている。バルブ53Aは、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、バルブ53Aの前後において配管54Aを開放及び閉塞させるように構成されている。配管54Aは、上流側から順に、液源51A、ポンプ52A及びバルブ53Aを接続している。
【0029】
液源51Bは、洗浄液L2の供給源として機能する。洗浄液L2は、例えば、異物(例えば、パーティクル、薬液残渣など)を洗い流すためのリンス液(例えば、純水(DIW))であってもよい。ポンプ52Bは、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、液源51Bから洗浄液L2を吸引し、バルブ53B及び配管54A,54Bを介して洗浄液L2を軸部材31に送り出すように構成されている。バルブ53Bは、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、バルブ53Bの前後において配管54Bを開放及び閉塞させるように構成されている。配管54Bは、上流側から順に、液源51B、ポンプ52B及びバルブ53Bを接続している。配管54Bの下流端は、バルブ53Aと軸部材31との間において配管54Aと接続されている。
【0030】
供給部60は、貫通孔H1の内部を通じて洗浄液L1,L2を傾斜面S1に供給するように構成されている。すなわち、貫通孔H1は、洗浄液L1,L2を傾斜面S1に供給するためのノズルとして機能する。供給部60は、液源61A,61Bと、ポンプ62A,62Bと、バルブ63A,63Bと、配管64A,64Bとを含む。
【0031】
液源61Aは、洗浄液L1の供給源として機能する。ポンプ62Aは、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、液源61Aから洗浄液L1を吸引し、バルブ63A及び配管64Aを介して洗浄液L1を貫通孔H1に送り出すように構成されている。バルブ63Aは、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、バルブ63Aの前後において配管64Aを開放及び閉塞させるように構成されている。配管64Aは、上流側から順に、液源61A、ポンプ62A及びバルブ63Aを接続している。
【0032】
液源61Bは、洗浄液L2の供給源として機能する。ポンプ62Bは、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、液源61Bから洗浄液L2を吸引し、バルブ63B及び配管64A,64Bを介して洗浄液L2を貫通孔H1に送り出すように構成されている。バルブ63Bは、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、バルブ63Bの前後において配管64Bを開放及び閉塞させるように構成されている。配管64Bは、上流側から順に、液源61B、ポンプ62B及びバルブ63Bを接続している。配管64Bの下流端は、バルブ63Aと貫通孔H1との間において配管64Aと接続されている。
【0033】
コントローラCtrは、
図3に示されるように、機能モジュールとして、読取部M1と、記憶部M2と、処理部M3と、指示部M4とを有する。これらの機能モジュールは、コントローラCtrの機能を便宜上複数のモジュールに区切ったものに過ぎず、コントローラCtrを構成するハードウェアがこのようなモジュールに分かれていることを必ずしも意味するものではない。各機能モジュールは、プログラムの実行により実現されるものに限られず、専用の電気回路(例えば論理回路)、又は、これを集積した集積回路(ASIC:Application Specific Integrated Circuit)により実現されるものであってもよい。
【0034】
読取部M1は、コンピュータ読み取り可能な記録媒体RMからプログラムを読み取るように構成されている。記録媒体RMは、基板洗浄装置1の各部を動作させるためのプログラムを記録している。記録媒体RMとしては、例えば、半導体メモリ、光記録ディスク、磁気記録ディスク、光磁気記録ディスクであってもよい。
【0035】
記憶部M2は、種々のデータを記憶するように構成されている。記憶部M2は、例えば、読取部M1において記録媒体RMから読み出したプログラム、外部入力装置(図示せず)を介してオペレータから入力された設定データなどを記憶してもよい。
【0036】
処理部M3は、各種データを処理するように構成されている。処理部M3は、例えば、記憶部M2に記憶されている各種データに基づいて、基板洗浄装置1の各部(例えば、駆動機構22,32、ポンプ52,62A,62B及びバルブ53,63A,63B等)を動作させるための動作信号を生成するように構成されていてもよい。
【0037】
指示部M4は、処理部M3において生成された動作信号を基板洗浄装置1の各部に送信するように構成されている。
【0038】
指示部M4は、支持ピン24に支持されている基板Wの裏面Waに向けて軸部材31から洗浄液L1,L2を供給するように供給部50を制御する第1の処理を実行してもよい。指示部M4は、第1の処理の後に、支持ピン33によって基板Wを支持しながら上昇位置まで軸部材31が上昇するように駆動機構32を制御する第2の処理を実行してもよい。指示部M4は、第2の処理の後に、傾斜面S1に向けて貫通孔H1から洗浄液L1,L2を供給するように供給部60を制御する第3の処理を実行してもよい。
【0039】
指示部M4は、第3の処理において、異なる処理条件(例えば、第1の処理条件及び第2の処理条件)で供給部60を制御してもよい。この場合、指示部M4は、第3の処理において、第1の処理条件で供給部60を制御した後に、第2の処理条件で供給部60を制御してもよい。指示部M4は、第3の処理において、傾斜面S1に向けて洗浄液L1を供給した後に、傾斜面S1に向けて洗浄液L2を供給するように、供給部60を制御してもよい。
【0040】
第1の処理条件は、傾斜面S1に供給される洗浄液L1,L2が主に環状部材25の径方向内側に向けて流れるような処理条件であってもよい。第1の処理条件は、例えば、貫通孔H1からの洗浄液L1,L2の供給流量が相対的に小さいこと(例えば、100ml/min~200ml/min程度)や、回転軸21を介した支持プレート23及び環状部材25の回転数が相対的に小さいこと(例えば、10rpm~100rpm程度)を含んでいてもよい。
【0041】
第2の処理条件は、傾斜面S1に供給される洗浄液L1,L2が主に環状部材25の径方向外側に向けて流れるような処理条件であってもよい。第2の処理条件は、例えば、貫通孔H1からの洗浄液L1,L2の供給流量が相対的に大きいこと(例えば、200ml/min~500ml/min程度)や、回転軸21を介した支持プレート23及び環状部材25の回転数が相対的に大きいこと(例えば、100rpm~300rpm程度)を含んでいてもよい。
【0042】
指示部M4は、第3の処理の後に、支持ピン33によって支持されている基板Wを所定角度回転させるように駆動機構32を制御する第4の処理を実行してもよい。指示部M4は、第4の処理の後に、軸部材31を降下位置まで降下させて基板Wを支持ピン24に支持させるように駆動機構32を制御する第5の処理を実行してもよい。指示部M4は、第5の処理の後に、支持ピン24に支持されている基板Wの裏面Waに向けて軸部材31から洗浄液L1,L2を供給するように供給部50を制御する第6の処理を実行してもよい。
【0043】
コントローラCtrのハードウェアは、例えば一つ又は複数の制御用のコンピュータにより構成されていてもよい。コントローラCtrは、ハードウェア上の構成として、例えば
図4に示される回路Ctr1を含んでいてもよい。回路Ctr1は、電気回路要素(circuitry)で構成されていてもよい。回路Ctr1は、例えば、プロセッサCtr2と、メモリCtr3(記憶部)と、ストレージCtr4(記憶部)と、ドライバCtr5と、入出力ポートCtr6とを含んでいてもよい。プロセッサCtr2は、メモリCtr3及びストレージCtr4の少なくとも一方と協働してプログラムを実行し、入出力ポートCtr6を介した信号の入出力を実行することで、上述した各機能モジュールを構成する。メモリCtr3及びストレージCtr4は、記憶部M2として機能する。ドライバCtr5は、基板洗浄装置1の各部をそれぞれ駆動する回路である。入出力ポートCtr6は、ドライバCtr5と基板洗浄装置1の各部(例えば、駆動機構22,32、ポンプ52,62A,62B及びバルブ53,63A,63B等)との間で、信号の入出力を行う。
【0044】
基板洗浄装置1は、一つのコントローラCtrを備えていてもよいし、複数のコントローラCtrで構成されるコントローラ群(制御部)を備えていてもよい。後者の場合、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコントローラCtrによって実現されていてもよいし、2個以上のコントローラCtrの組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCtrが複数のコンピュータ(回路Ctr1)で構成されている場合には、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのコンピュータ(回路Ctr1)によって実現されていてもよいし、2つ以上のコンピュータ(回路Ctr1)の組み合わせによって実現されていてもよい。コントローラCtrは、複数のプロセッサCtr2を含んでいてもよい。この場合、上記の機能モジュールがそれぞれ、一つのプロセッサCtr2によって実現されていてもよいし、2つ以上のプロセッサCtr2の組み合わせによって実現されていてもよい。
【0045】
[洗浄処理]
続いて、
図5~
図9を参照して、基板洗浄装置1における洗浄処理について説明する。
【0046】
まず、図示しない搬送機構により、基板Wを筐体10内に搬入する(
図9のステップS10参照)。このとき、コントローラCtrは、駆動機構32を制御して、軸部材31を上昇位置に位置させておく。搬入出口12を通じて筐体10内に搬入された基板Wは、搬送機構から支持ピン33に受け渡される。これにより、裏面Waが支持ピン33と当接するように、基板Wが支持ピン33上(昇降部30)に載置される。
【0047】
次に、コントローラCtrは、駆動機構32を制御して、軸部材31を降下位置まで降下させる。軸部材31が降下する過程で、基板Wが、支持ピン33から支持ピン24に受け渡される。これにより、裏面Waが支持ピン24と当接するように、基板Wが支持ピン24上(回転部20)に載置される(
図9のステップS11参照)。
【0048】
次に、コントローラCtrは、駆動機構22を制御して、所定の回転数で回転軸21を回転させる(
図5及び
図9のステップS12参照)。このとき、回転軸21を介して支持プレート23及び環状部材25が回転すると共に、支持ピン24に載置されている基板Wも回転する。
【0049】
次に、コントローラCtrは、供給部50を制御して、回転中の基板Wの裏面Waに向けて軸部材31を通じて洗浄液L1,L2を供給させる(
図5、
図6及び
図9のステップS13参照)。これにより、
図6に例示されるように、洗浄液L1,L2は、遠心力によって基板Wの外周縁に向けて裏面Waに沿って流れた後、基板Wの外周縁から外方に振り切られる。その結果、裏面Waの全体が洗浄液L1,L2によって洗浄される。基板Wから振り切られた洗浄液L1,L2は、環状部材25と支持プレート23の外周部との間、及び、環状部材25とカバー部40との間を流れ、カバー部40において捕集された後、貫通孔H2を通じて基板洗浄装置1の外部に排出される。コントローラCtrは、所定時間の経過後に供給部50を制御して、洗浄液L1,L2の供給を停止させる。
【0050】
ステップS13では、コントローラCtrは、回転中の基板Wの裏面Waに向けて洗浄液L1を供給した後に、回転中の基板Wの裏面Waに向けて洗浄液L2を供給するように、供給部50を制御してもよい。ステップS13では、回転中の基板Wの裏面Waに向けて洗浄液L1を供給するが、洗浄液L2を供給しなくてもよい。
【0051】
次に、コントローラCtrは、駆動機構22を制御して、回転軸21の回転を停止させる(
図9のステップS14参照)。このとき、図示しない位置センサ(例えばエンコーダ)等を用いて、回転軸21の中心軸Ax周りにおける回転位置が所定の原点位置(例えば、回転軸21の回転角が0°となる位置)となるように、回転軸21を停止させてもよい。
【0052】
なお、洗浄液L1,L2の裏面Waへの供給が停止されてから、回転軸21の回転が停止されるまでの間に、基板Wが回転することにより、裏面Waに付着した洗浄液L1,L2がある程度乾燥する。しかしながら、完全には乾燥しないので、
図8に例示されるように、裏面Waのうち支持ピン24と当接していた部分、支持ピン24の先端部分、環状部材25の表面、カバー部40の内面などに洗浄液L1,L2が残留することがある。
【0053】
次に、コントローラCtrは、駆動機構32を制御して、軸部材31を上昇位置まで上昇させる。軸部材31が上昇する過程で、基板Wが、支持ピン24から支持ピン33に受け渡されつつ、基板Wも上昇する(
図7及び
図9のステップS15参照)。これにより、裏面Waが支持ピン33と当接するように、基板Wが支持ピン33上に載置される。
【0054】
次に、コントローラCtrは、駆動機構22を制御して、所定の回転数で回転軸21を回転させる(
図7及び
図9のステップS16参照)。このとき、回転軸21を介して支持プレート23及び環状部材25が回転する。
【0055】
次に、コントローラCtrは、供給部60を制御して、回転中の環状部材25の傾斜面S1に向けて貫通孔H1を通じて洗浄液L1,L2を供給させる(
図8及び
図9のステップS17参照)。コントローラCtrは、異なる処理条件で供給部60を制御してもよい。この場合、コントローラCtrは、第1の処理条件で傾斜面S1に向けて貫通孔H1から洗浄液L1,L2を供給させるように供給部60を制御した後に、第2の処理条件で傾斜面S1に向けて貫通孔H1から洗浄液L1,L2を供給させるように供給部60を制御してもよい。
【0056】
第1の処理条件のもとで、傾斜面S1に向けて貫通孔H1から洗浄液L1,L2が供給された場合には、洗浄液L1,L2は、重力の作用により、傾斜面S1に沿って下方に流れる(
図8の矢印Ar1参照)。その結果、傾斜面S1から流下した洗浄液L1,L2は、支持ピン24に供給され、支持ピン24の先端部に残留している残留液を洗い流す。
【0057】
一方、第2の処理条件のもとで、傾斜面S1に向けて貫通孔H1から洗浄液L1,L2が供給された場合には、洗浄液L1,L2は、遠心力の作用により、傾斜面S1に沿って上方に流れる(
図8の矢印Ar2参照)。その結果、傾斜面S1を登坂した洗浄液L1,L2は、環状部材25の表面及びカバー部40の内面に供給され、これらに残留している残留液を洗い流す。コントローラCtrは、所定時間の経過後に供給部60を制御して、洗浄液L1,L2の供給を停止させる。
【0058】
ステップS17では、コントローラCtrは、回転中の環状部材25の傾斜面S1に向けて洗浄液L1を供給した後に、回転中の環状部材25の傾斜面S1に向けて洗浄液L2を供給するように、供給部60を制御してもよい。コントローラCtrは、回転中の環状部材25の傾斜面S1に向けて洗浄液L1を供給する際に、異なる処理条件で(例えば、第1の処理条件の後に第2の処理条件で)供給部60を制御してもよい。コントローラCtrは、回転中の環状部材25の傾斜面S1に向けて洗浄液L2を供給する際に、異なる処理条件で(例えば、第1の処理条件の後に第2の処理条件で)供給部60を制御してもよい。ステップS17では、回転中の環状部材25の傾斜面S1に向けて洗浄液L2供給するが、洗浄液L1を供給しなくてもよい。
【0059】
次に、コントローラCtrは、駆動機構22を制御して、回転軸21の回転を停止させる(
図9のステップS18参照)。このとき、図示しない位置センサ(例えばエンコーダ)等を用いて、回転軸21の中心軸Ax周りにおける回転位置が所定の原点位置(例えば、回転軸21の回転角が0°となる位置)となるように、回転軸21を停止させてもよい。
【0060】
次に、コントローラCtrは、駆動機構22を制御して、回転軸21を所定のずれ角δだけ回転させる(
図9のステップS19参照)。12個の支持ピン24が略30°間隔で支持プレート23に配置されている場合、ずれ角δは、例えば、略15°であってもよい。
【0061】
次に、コントローラCtrは、駆動機構32を制御して、軸部材31を降下位置まで降下させる。軸部材31が降下する過程で、基板Wが、支持ピン33から支持ピン24に受け渡される。これにより、裏面Waが支持ピン24と当接するように、基板Wが支持ピン24上(回転部20)に載置される(
図9のステップS20参照)。
【0062】
ところで、ステップS13では、基板Wが回転部20に対して原点位置に位置していたが(ステップS14参照)、ステップS19における回転軸21の回転により、ステップS20では、基板Wが回転部20に対してずれ角δだけずれて位置している。そのため、ステップS20では、支持ピン24は、裏面WaのうちステップS13とは異なる領域と接触する。そのため、
図8に例示されるような残留液が裏面Waに存在していたとしても、ステップS17において清浄化された支持ピン24が当該残留液に接触することが避けられる。
【0063】
次に、コントローラCtrは、駆動機構22を制御して、所定の回転数で回転軸21を回転させる(
図9のステップS21参照)。次に、コントローラCtrは、供給部50を制御して、回転中の基板Wの裏面Waに向けて軸部材31を通じて洗浄液L1,L2を供給させる(
図9のステップS22参照)。次に、コントローラCtrは、駆動機構22を制御して、回転軸21の回転を停止させる(
図9のステップS23参照)。これらのステップS21~S23の処理は、ステップS12~S14の処理と同様である。
【0064】
次に、コントローラCtrは、駆動機構32を制御して、軸部材31を上昇位置まで上昇させる。軸部材31が上昇する過程で、基板Wが、支持ピン24から支持ピン33に受け渡されつつ、基板Wも上昇する。その後、図示しない搬送機構が基板Wを支持ピン33から受け取り、基板Wを筐体10から搬出する(
図9のステップS24参照)。以上により、基板Wの裏面Wa、支持ピン24、環状部材25、カバー部40等の洗浄処理が完了する。
【0065】
[作用]
以上の例によれば、傾斜面S1に供給される洗浄液L1,L2は、例えば重力、遠心力等の作用により、環状部材25の径方向内方又は径方向外方に向けて傾斜面S1を流動する。そのため、支持ピン24に洗浄液L1,L2を供給する機構と、支持ピン24の周辺部材(環状部材25、カバー部40等)に洗浄液L1,L2を供給する機構とをそれぞれ別々に設置することなく、環状部材25の径方向内方に位置する支持ピン24又は環状部材25の径方向外方に位置する周辺部材に洗浄液L1,L2が供給される。したがって、傾斜面S1に洗浄液L1,L2を供給するというシンプルな手法により、支持ピン24及びその周辺部材に付着する異物を簡易且つ効率的に洗浄液L1,L2で除去することが可能となる。
【0066】
以上の例によれば、傾斜面S1は、径方向内方に向かうにつれて下方へと傾斜しており、傾斜面S1の上方に貫通孔H1が配置されている。そのため、傾斜面S1に供給される洗浄液L1,L2は、重力の作用により、環状部材25の径方向内方に向けて流動しやすくなる。そのため、支持ピン24をより効果的に洗浄することが可能となる。
【0067】
以上の例によれば、軸部材31が上昇位置に位置するとき、すなわち、基板Wが支持ピン24よりも上方に位置するときに、傾斜面S1に洗浄液L1,L2が供給される。そのため、供給部50から裏面Waに供給された洗浄液L1,L2が支持ピン24に残留したとしても、供給部60から供給される洗浄液L1,L2によって当該残留液が洗い流される。したがって、支持ピン24をより効果的に洗浄することが可能となる。また、次に基板Wが支持ピン24に支持される際に、裏面Waへの当該残留液の転写を抑制することが可能となる。
【0068】
以上の例によれば、ステップS19における回転軸21の回転により、ステップS20では、基板Wが回転部20に対してずれ角δだけずれて位置する。そのため、
図8に例示されるような残留液が裏面Waに存在していても、供給部50から裏面Waに供給される2回目の洗浄液L1,L2によって当該残留液が洗い流される。したがって、裏面Waをより効果的に洗浄することが可能となる。
【0069】
以上の例によれば、ステップS17において、コントローラCtrは、異なる処理条件で供給部60を制御しうる。この場合、この場合、処理条件の変化に伴い、洗浄液L1,L2が支持ピン24又はその周辺部材に供給される。そのため、処理条件に応じて、支持ピン24とその周辺部材とのどちらを重点的に洗浄するのかをコントロールすることが可能となる。
【0070】
以上の例によれば、ステップS17において、コントローラCtrは、第1の処理条件で供給部60を制御した後に、第2の処理条件で供給部60を制御しうる。この場合、支持ピン24に洗浄液L1,L2が供給された後に、支持ピン24の周辺部材に洗浄液L1,L2が供給される。そのため、第1の処理条件で供給部60を制御する際に、支持ピン24から洗浄液L1,L2が周囲に飛散したとしても、その後に第2の処理条件で供給部60を制御することで、飛散した洗浄液L1,L2が洗い流される。したがって、周辺部材をより効果的に洗浄することが可能となる。
【0071】
以上の例によれば、ステップS17において、コントローラCtrは、回転中の環状部材25の傾斜面S1に向けて洗浄液L1を供給した後に、回転中の環状部材25の傾斜面S1に向けて洗浄液L2を供給するように、供給部60を制御しうる。この場合、支持ピン24及びその周辺部材が洗浄用薬液によってより強力に洗浄された後、当該洗浄用薬液がリンス液によって洗い流される。そのため、支持ピン24及びその周辺部材に付着する異物をより効果的に除去することが可能となると共に、洗浄後における支持ピン24及びその周辺部材の清浄度を高めることが可能となる。
【0072】
[変形例]
本明細書における開示はすべての点で例示であって制限的なものではないと考えられるべきである。特許請求の範囲及びその要旨を逸脱しない範囲において、以上の例に対して種々の省略、置換、変更などが行われてもよい。
【0073】
(1)基板洗浄装置1は、カバー部40に設けられた貫通孔H1に代えて、
図10に例示されるように、駆動機構66によって移動可能に構成されたノズル65を備えていてもよい。例えば、ノズル65は、配管64Aの下流端と接続されていてもよい。駆動機構66は、ノズル65に接続されていてもよい。駆動機構66は、コントローラCtrからの動作信号に基づいて動作し、ノズル65を環状部材25の径方向に移動させるように構成されていてもよい。駆動機構66は、例えば電動モータ等の動力源であってもよい。
【0074】
この場合、この場合、ノズル65の移動に伴い、傾斜面S1に対する洗浄液L1,L2の着液位置が変化する。そのため、着液位置の変化に伴い、洗浄液L1,L2が環状部材25の径方向内方に向けて流動しやすくなるのか、洗浄液L1,L2が環状部材25の径方向外方に向けて流動しやすくなるのかという流動性の傾向も変化する。したがって、支持ピン24とその周辺部材とのどちらを重点的に洗浄するのかをコントロールすることが可能となる。
【0075】
(2)ステップS14における回転軸21の原点位置での停止と、ステップS19における回転軸21のずれ角δの回転とが実行されなくてもよい。
【0076】
(3)支持ピン24は、環状部材25の傾斜面S1の内側に位置していれば、支持プレート23に設けられていなくてもよい。例えば、支持ピン24は、環状部材25の内周縁に設けられていてもよい。
【0077】
(4)ステップS24において基板Wが上昇された後に、次の基板Wが筐体10内に搬入された支持ピン24に載置されるまでの間に、コントローラCtrが供給部60を制御して傾斜面S1に洗浄液L1,L2を供給してもよい。換言すれば、支持ピン24に基板Wが載置されていない状態で、支持ピン24及びその周辺部材の洗浄が行われてもよい。
【0078】
[他の例]
例1.基板洗浄装置の一例は、基板の裏面と当接して基板を支持するように構成された支持部と、支持部に支持される基板の周囲を取り囲むように配置された環状部材であって、環状部材の径方向において水平に対して傾斜している傾斜面を含む環状部材と、支持部及び環状部材を回転させるように構成された回転部と、支持部に支持される基板の裏面に向けて洗浄液を供給するように構成された第1の供給部と、傾斜面に向けて洗浄液を供給するように構成された第2の供給部とを備える。この場合、傾斜面に供給される洗浄液は、例えば重力、遠心力等の作用により、環状部材の径方向内方又は径方向外方に向けて傾斜面を流動する。そのため、支持部に洗浄液を供給する機構と、支持部の周辺部材に洗浄液を供給する機構とをそれぞれ別々に設置することなく、環状部材の径方向内方に位置する支持部又は環状部材の径方向外方に位置する周辺部材に洗浄液が供給される。したがって、傾斜面に洗浄液を供給するというシンプルな手法により、支持部及びその周辺部材に付着する異物を簡易且つ効率的に洗浄液で除去することが可能となる。
【0079】
例2.例1の装置において、傾斜面は、径方向内方に向かうにつれて下方へと傾斜しており、第2の供給部は、傾斜面の上方に配置されたノズルを含んでいてもよい。この場合、傾斜面に供給される洗浄液は、重力の作用により、環状部材の径方向内方に向けて流動しやすくなる。そのため、支持部をより効果的に洗浄することが可能となる。
【0080】
例3.例1又は例2の装置において、第2の供給部は、環状部材の径方向において移動可能に構成されたノズルを含んでいてもよい。この場合、ノズルの移動に伴い、傾斜面に対する洗浄液の着液位置が変化する。そのため、着液位置の変化に伴い、洗浄液が環状部材の径方向内方に向けて流動しやすくなるのか、洗浄液が環状部材の径方向外方に向けて流動しやすくなるのかという流動性の傾向も変化する。したがって、支持部とその周辺部材とのどちらを重点的に洗浄するのかをコントロールすることが可能となる。
【0081】
例4.例1~例3のいずれかの装置において、洗浄液は、洗浄用薬液又はリンス液であってもよい。
【0082】
例5.例1~例4のいずれかの装置は、基板を支持しながら、先端が支持部よりも上方に位置する上昇位置と、先端が支持部よりも下方に位置する降下位置との間で昇降可能に構成された昇降部と、制御部とをさらに備えていてもよい。制御部は、支持部に支持されている基板の裏面に向けて洗浄液を供給するように第1の供給部を制御する第1の処理と、第1の処理の後に、基板を支持する昇降部が上昇位置に位置するように昇降部を制御する第2の処理と、第2の処理の後に、傾斜面に向けて洗浄液を供給するように第2の供給部を制御する第3の処理とを実行してもよい。この場合、第1の供給部から基板の裏面に供給された洗浄液が支持部に残留したとしても、第2の供給部から供給される洗浄液によって残留液が洗い流される。そのため、支持部をより効果的に洗浄することが可能となる。また、次に基板が支持部に支持される際に、基板の裏面への当該残留液の転写を抑制することが可能となる。
【0083】
例6.例5の装置において、制御部は、第3の処理の後に、基板を所定角度回転させるように昇降部を制御する第4の処理と、第4の処理の後に、昇降部を降下位置まで降下させて基板が支持部に支持されるように昇降部を制御する第5の処理と、第5の処理の後に、基板の裏面に向けて洗浄液を供給するように第1の供給部を制御する第6の処理とをさらに実行してもよい。この場合、第4の処理から第6の処理にかけて、基板が所定角度回転された後に再び基板が支持部に支持され、第1の供給部から基板の裏面に2回目の洗浄液が供給される。そのため、第1の供給部から基板の裏面に供給された1回目の洗浄液が、基板の裏面のうち支持部と接触した領域に残留したとしても、基板の裏面の残留液が2回目の洗浄液によって洗い流される。そのため、基板の裏面をより効果的に洗浄することが可能となる。
【0084】
例7.例5又は例6の装置において、第3の処理は、傾斜面に供給される洗浄液が主に環状部材の径方向内側に向けて流れる第1の処理条件と、傾斜面に供給される洗浄液が主に環状部材の径方向外側に向けて流れる第2の処理条件とで、第2の供給部を制御することを含んでいてもよい。この場合、処理条件の変化に伴い、洗浄液が支持部又はその周辺部材に供給される。そのため、処理条件に応じて、支持部とその周辺部材とのどちらを重点的に洗浄するのかをコントロールすることが可能となる。
【0085】
例8.例7の装置において、第3の処理は、第1の処理条件で第2の供給部を制御した後に、第2の処理条件で第2の供給部を制御することを含んでいてもよい。ところで、支持部は、基板を支持するために環状部材の内側に位置しているので、支持部に洗浄液が供給されると、遠心力等により、洗浄液が周囲に飛散することがある。しかしながら、例8の場合、支持部に洗浄液が供給された後に、周辺部材に洗浄液が供給される。そのため、支持部から洗浄液が飛散したとしても、その後に周辺部材が洗浄されるので、飛散した洗浄液が洗い流される。したがって、周辺部材をより効果的に洗浄することが可能となる。
【0086】
例9.例5~例8のいずれかの装置において、第3の処理は、傾斜面に向けて洗浄用薬液を供給した後に傾斜面に向けてリンス液を供給するように、第2の供給部を制御することを含んでいてもよい。この場合、支持部及びその周辺部材が洗浄用薬液によってより強力に洗浄された後、当該洗浄用薬液がリンス液によって洗い流される。そのため、支持部及びその周辺部材に付着する異物をより効果的に除去することが可能となると共に、洗浄後における支持部及びその周辺部材の清浄度を高めることが可能となる。
【0087】
例10.基板洗浄方法の一例は、基板の裏面と当接することにより基板を支持する支持部と、基板の周囲を取り囲むように配置された環状部材とが回転している状態で、環状部材の傾斜面に洗浄液を供給することを含み、傾斜面は、環状部材の径方向において水平に対して傾斜している。この場合、例1の装置と同様の作用効果が得られる。
【0088】
例11.例10の方法において、傾斜面は、径方向内方に向かうにつれて下方へと傾斜しており、傾斜面に洗浄液を供給することは、傾斜面に対して上方から洗浄液を供給することを含んでいてもよい。この場合、例2の装置と同様の作用効果が得られる。
【0089】
例12.例10又は例11の方法において、傾斜面に洗浄液を供給することは、洗浄液を供給するノズルを環状部材の径方向において移動させながら、傾斜面に洗浄液を供給することを含んでいてもよい。この場合、例3の装置と同様の作用効果が得られる。
【0090】
例13.例10~例12のいずれかの方法において、洗浄液は、洗浄用薬液又はリンス液であってもよい。
【0091】
例14.例10~例13のいずれかの方法は、支持部及び環状部材が回転している状態で、支持部に支持されている基板の裏面に向けて洗浄液を供給する第1の工程と、第1の工程の後に、基板を支持部よりも上方に上昇させる第2の工程と、第2の工程の後に、傾斜面に洗浄液を供給する第3の工程とを含んでいてもよい。この場合、例5の装置と同様の作用効果が得られる。
【0092】
例15.例14の方法は、第3の工程の後に、基板を所定角度回転させる第4の工程と、第4の工程の後に、基板を降下させて支持部に支持させる第5の工程と、第5の工程の後に、基板の裏面に向けて洗浄液を供給する第6の工程とをさらに含んでいてもよい。この場合、例6の装置と同様の作用効果が得られる。
【0093】
例16.例14又は例15の方法において、第3の工程は、傾斜面に供給される洗浄液が主に環状部材の径方向内側に向けて流れる第1の処理条件と、傾斜面に供給される洗浄液が主に環状部材の径方向外側に向けて流れる第2の処理条件とで、傾斜面に洗浄液を供給することを含んでいてもよい。この場合、例7の装置と同様の作用効果が得られる。
【0094】
例17.例16の方法において、第3の工程は、第1の処理条件で傾斜面に洗浄液を供給した後に、第2の処理条件で傾斜面に洗浄液を供給することを含んでいてもよい。この場合、例8の装置と同様の作用効果が得られる。
【0095】
例18.例14~例17のいずれかの方法において、第3の工程は、傾斜面に向けて洗浄用薬液を供給した後に傾斜面に向けてリンス液を供給することを含んでいてもよい。。この場合、例9の装置と同様の作用効果が得られる。
【0096】
例19.コンピュータ読み取り可能な記録媒体の一例は、例10~例18のいずれかの方法を基板洗浄装置に実行させるためのプログラムを記録していてもよい。この場合、例1の装置と同様の作用効果が得られる。本明細書において、コンピュータ読み取り可能な記録媒体は、一時的でない有形の媒体(non-transitory computer recording medium)(例えば、各種の主記憶装置又は補助記憶装置)又は伝播信号(transitory computer recording medium)(例えば、ネットワークを介して提供可能なデータ信号)を含んでいてもよい。
【符号の説明】
【0097】
1…基板洗浄装置、20…回転部、21…回転軸、24…支持ピン(支持部)、25…環状部材、30…昇降部、40…カバー部、50…供給部(第1の供給部)、60…供給部(第2の供給部)、65…ノズル、Ax…中心軸、Ctr…コントローラ(制御部)、H1…貫通孔(ノズル)、RM…記録媒体、S1,S2…傾斜面、W…基板、Wa…裏面。