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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】3次元映像表示装置
(51)【国際特許分類】
   H04N 13/307 20180101AFI20240919BHJP
   H04N 13/349 20180101ALI20240919BHJP
   H04N 13/363 20180101ALI20240919BHJP
   H04N 13/398 20180101ALI20240919BHJP
   H04N 13/346 20180101ALI20240919BHJP
   H04N 13/341 20180101ALI20240919BHJP
   G03B 35/24 20210101ALI20240919BHJP
   G03B 35/26 20210101ALI20240919BHJP
   G02B 3/00 20060101ALI20240919BHJP
   G02B 30/10 20200101ALI20240919BHJP
   G09F 9/00 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
H04N13/307
H04N13/349
H04N13/363
H04N13/398
H04N13/346
H04N13/341
G03B35/24
G03B35/26
G02B3/00 A
G02B30/10
G09F9/00 313
【請求項の数】 8
(21)【出願番号】P 2020191456
(22)【出願日】2020-11-18
(65)【公開番号】P2022080408
(43)【公開日】2022-05-30
【審査請求日】2023-10-03
(73)【特許権者】
【識別番号】000004352
【氏名又は名称】日本放送協会
(74)【代理人】
【識別番号】110001807
【氏名又は名称】弁理士法人磯野国際特許商標事務所
(72)【発明者】
【氏名】渡邉 隼人
(72)【発明者】
【氏名】大村 拓也
(72)【発明者】
【氏名】岡市 直人
(72)【発明者】
【氏名】佐々木 久幸
(72)【発明者】
【氏名】河北 真宏
【審査官】塚本 丈二
(56)【参考文献】
【文献】特開2020-060711(JP,A)
【文献】特開2020-024345(JP,A)
【文献】特開2018-163282(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2011/0001804(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H04N 13/30-13/398
G03B 35/24
G03B 35/26
G02B 3/00
G02B 30/10
G09F 9/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
所定方向に配列された多視点映像表示装置の多視点映像を合成することで、前記多視点映像より表示サイズが大きい3次元映像を表示する3次元映像表示装置であって、
複数の前記多視点映像表示装置と、
前記多視点映像を構成する視点映像毎に配置され、前記視点映像の光を集光する結像レンズで構成された結像レンズアレイと、
前記結像レンズからの視点映像の光が等間隔で重なり合うように光路をシフトさせる光路シフト光学系と、
前記光路シフト光学系から投射された視点映像の光を拡散し、連続的な輝度分布を有する光線群を再生する表示スクリーンと、
を備えることを特徴とする3次元映像表示装置。
【請求項2】
前記光路シフト光学系は、前記多視点映像表示装置の中央側に位置する前記結像レンズからの出射光より、前記多視点映像表示装置の周辺側に位置する前記結像レンズからの出射光を大きくシフトさせることを特徴とする請求項1に記載の3次元映像表示装置。
【請求項3】
前記光路シフト光学系は、
前記結像レンズ毎に配置され、前記結像レンズからの視点映像の光を前記多視点映像表示装置の周辺方向にシフトさせる第1光路シフト素子と、
前記第1光路シフト素子毎に配置され、前記第1光路シフト素子からの視点映像の光を等間隔で重なり合うように前記表示スクリーンに投射する第2光路シフト素子と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の3次元映像表示装置。
【請求項4】
前記多視点映像表示装置の後段に配置され、前記多視点映像表示装置からの視点映像の光の偏光方向を時分割で切り替える偏光切替素子、をさらに備え、
前記光路シフト光学系は、
前記結像レンズ毎に配置され、前記結像レンズからの視点映像の光を前記多視点映像表示装置の周辺方向にシフトさせる第1光路シフト素子と、
前記第1光路シフト素子毎に配置され、前記第1光路シフト素子からの視点映像の光の偏光方向に応じて、当該光の投射位置を反対方向にシフトさせる偏光回折格子の対と、
前記第1光路シフト素子毎に配置され、前記偏光回折格子の対からの視点映像の光を等間隔で重なり合うように前記表示スクリーンに投射する第2光路シフト素子と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の3次元映像表示装置。
【請求項5】
前記多視点映像表示装置の後段に配置され、前記多視点映像表示装置からの視点映像の光の偏光方向を時分割で切り替える偏光切替素子、をさらに備え、
前記光路シフト光学系は、
前記結像レンズ毎に配置され、前記結像レンズからの視点映像の光を前記多視点映像表示装置の周辺方向にシフトさせる第1光路シフト素子と、
前記第1光路シフト素子毎に配置され、前記第1光路シフト素子からの視点映像の光の偏光方向に応じて、当該光の投射位置を反対方向にシフトさせる偏光回折格子と、
前記第1光路シフト素子毎に2つ配置され、前記偏光回折格子からの視点映像の光を等間隔で重なり合うように前記表示スクリーンに投射する第2光路シフト素子と、
を備えることを特徴とする請求項1又は請求項2に記載の3次元映像表示装置。
【請求項6】
前記偏光切替素子に前記視点映像の光の偏光方向を時分割で切り替えさせる偏光切替制御手段と、
前記偏光方向に応じた投影位置の多視点映像を前記多視点映像表示装置に同期して表示させる多視点映像切替手段と、
をさらに備えることを特徴とする請求項4又は請求項5に記載の3次元映像表示装置。
【請求項7】
前記結像レンズ及び第1光路シフト素子を偏心レンズとして一体化したことを特徴とする請求項3から請求項6の何れか一項に記載の3次元映像表示装置。
【請求項8】
前記結像レンズの焦点に配置されたコンデンサレンズ、をさらに備えることを特徴とする請求項1から請求項6の何れか一項に記載の3次元映像表示装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、多視点映像を合成し、表示サイズが大きい3次元映像を表示する3次元映像表示装置に関する。
【背景技術】
【0002】
従来、3Dメガネを用いた二眼方式を筆頭として、多種多様な3次元映像表示方式が知られている。この一つとして、複数表示の多視点映像を表示スクリーンに重畳投射することで、高密度な光線群を再生する3次元映像表示方式が提案されている(例えば、特許文献1)。
【0003】
特許文献1に記載の3次元映像表示方式では、特殊なメガネが不要で、水平・垂直に視差を有する自然な3次元映像を表示できる。この3次元映像表示方式では、所定の微小な拡散角を有する表示スクリーンに対して、多視点映像を水平方向及び垂直方向に均一の間隔で投射することにより、3次元映像を表示する。この3次元映像表示方式では、原理的に、複数台の表示デバイスをタイリングすることで多視点映像の投射位置を増やし、表示サイズを拡大できる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2020-60711号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
しかし、前記した3次元映像表示方式では、複数台の多視点映像表示装置をタイリング(配列)すると、表示画面の周辺に存在するベゼル(枠)の影響により、多視点映像の投射間隔が不均一になり、隣接する多視点映像同士に隙間が生じるという課題がある。
【0006】
そこで、本発明は、複数の多視点映像を隙間なく合成できる3次元映像表示装置を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0007】
前記課題を解決するため、本発明に係る3次元映像表示装置は、所定方向に配列された多視点映像表示装置の多視点映像を合成することで、多視点映像より表示サイズが大きい3次元映像を表示する3次元映像表示装置であって、複数の多視点映像表示装置と、多視点映像を構成する視点映像毎に配置され、視点映像の光を集光する結像レンズで構成された結像レンズアレイと、結像レンズからの視点映像の光が等間隔で重なり合うように光路をシフトさせる光路シフト光学系と、光路シフト光学系から投射された視点映像の光を拡散し、連続的な輝度分布を有する光線群を再生する表示スクリーンと、を備える構成とした。
【0008】
かかる構成によれば、3次元映像表示装置は、多視点映像表示装置にベゼルがある場合でも、表示スクリーンに視点映像の光を等間隔で重なり合うように投射するので、それぞれの多視点映像表示装置が表示する多視点映像を隙間なく合成できる。
【発明の効果】
【0009】
本発明によれば、複数の多視点映像を隙間なく合成できる3次元映像表示装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1】第1実施形態に係る3次元映像表示装置の概略構成図である。
図2】3次元映像の表示を説明する説明図であり、(a)は光路シフト光学系を備えない従来技術の場合であり、(b)は第1実施形態に係る3次元映像表示装置の場合である。
図3】第2実施形態に係る3次元映像表示装置の概略構成図である。
図4】第2実施形態において、(a)及び(b)は偏光回折格子による光路のシフトを説明する説明図である。
図5】第3実施形態に係る3次元映像表示装置の概略構成図である。
図6】第1変形例に係る3次元映像表示装置の概略構成図である。
図7】第1変形例において、シフト距離を説明する説明図である。
図8】第2変形例に係る3次元映像表示装置の概略構成図である。
【発明を実施するための形態】
【0011】
以下、本発明の各実施形態について図面を参照して説明する。但し、以下に説明する各実施形態は、本発明の技術思想を具体化するためのものであって、特定的な記載がない限り、本発明を以下のものに限定しない。また、同一の手段には同一の符号を付し、説明を省略する場合がある。
【0012】
(第1実施形態)
[3次元映像表示装置の構成]
図1を参照し、第1実施形態に係る3次元映像表示装置1の構成について説明する。
3次元映像表示装置1は、所定方向に配列された多視点映像表示装置2の多視点映像Vを合成することで、多視点映像Vより表示サイズが大きい3次元映像W(図2)を表示するものである。図1に示すように、3次元映像表示装置1は、複数の多視点映像表示装置2と、結像レンズアレイ3と、光路シフト光学系4と、表示スクリーン5とを備える。
なお、図1では、水平方向をX軸、垂直方向をY軸、奥行き方向をZ軸として図示した。
【0013】
本実施形態では、水平方向及び垂直方向にそれぞれ2台、合計4台の多視点映像表示装置2が二次元状に配列されていることとする。なお、全ての多視点映像表示装置2が同一構成である。
また、多視点映像Vは、水平方向及び垂直方向にそれぞれ4視点、合計16視点の視点映像vで構成されていることとする。
【0014】
多視点映像表示装置2は、多視点映像Vを表示する一般的な表示デバイスである。また、多視点映像表示装置2は、多視点映像Vの表示面20と、表示面20の周囲に形成されたベゼル21とを備える。例えば、多視点映像表示装置2として、OLED(Organic Light Emitting Diode)ディスプレイ、液晶ディスプレイなどの直視型表示デバイス、又は、プロジェクタなどの投射型表示デバイスを使用できる。
【0015】
図1に示すように、多視点映像表示装置2は、水平方向及び垂直方向に視点映像vが2次元アレイ状に配列された多視点映像Vを、後記する結像レンズアレイ3に平行光線として出射する。なお、図1では、視点映像vを破線で図示すると共に、視点映像vからの光線も破線で図示した。
【0016】
多視点映像表示装置2が透過型液晶ディスプレイの場合、バックライトを平行光線とすることで、多視点映像Vを平行光線として出射できる。
また、多視点映像表示装置2がプロジェクタの場合、プロジェクタの後段にコリメーターレンズ(不図示)を備えることで、多視点映像Vを平行光線として出射できる。
また、多視点映像表示装置2は、発散光を出射する光源の場合、多視点映像Vが集光する結像レンズ30の焦点fにアパーチャ(不図示)を備えればよい。これにより、多視点映像表示装置2は、平行光線以外の不要光を遮断することで、多視点映像Vを平行光線として出射しているのと等価な状態にできる。
【0017】
結像レンズアレイ3は、多視点映像Vを構成する視点映像v毎に配置され、視点映像vの光を集光する結像レンズ30で構成されたものである。例えば、結像レンズ30としては、凸レンズを使用できる。本実施形態では、結像レンズアレイ3は、多視点映像表示装置2毎に、水平方向及び垂直方向にそれぞれ4個、合計16個の結像レンズ30が二次元状に配列されている。つまり、結像レンズアレイ3は、全体で64個の結像レンズ30で構成されている。
【0018】
ここで、結像レンズ30は、多視点映像表示装置2が出射した多視点映像Vを構成する視点映像vを、光路シフト光学系4に出射する。すると、結像レンズ30に入射した各視点映像vは、結像レンズ30の焦点fに集光し、光路シフト光学系4を介して、表示スクリーン5に投射される。
【0019】
光路シフト光学系4は、結像レンズ30からの視点映像vの光が等間隔で重なり合うように光路をシフトさせるものである。図1に示すように、光路シフト光学系4は、第1光路シフト素子40と、第2光路シフト素子41とを備える。例えば、第1光路シフト素子40及び第2光路シフト素子41として、プリズムや回折光学素子を使用できる。
【0020】
第1光路シフト素子40は、結像レンズ30毎に配置され、結像レンズ30からの視点映像vの光を多視点映像表示装置2の周辺方向にシフトさせるものである。本実施形態では、第1光路シフト素子40は、中心が結像レンズ30の光軸と一致するようにX-Y平面上に配置されている。また、第1光路シフト素子40は、多視点映像Vの光線を包含する大きさ、すなわち、結像レンズ30のレンズサイズ以下の大きさとする。
【0021】
第2光路シフト素子41は、第1光路シフト素子40毎に配置され、第1光路シフト素子40からの視点映像vの光を等間隔で重なり合うように表示スクリーン5に投射するものである。ここで、第2光路シフト素子41は、隣接する視点映像vの光線に重複しないように配置されている。具体的には、第2光路シフト素子41は、第1光路シフト素子40と平行になるようにX-Y平面上、かつ、Z軸方向で結像レンズ30から焦点fの2倍までの位置に配置されている。
【0022】
表示スクリーン5は、光路シフト光学系4から投射された視点映像v光を拡散し、連続的な輝度分布を有する光線群を再生するものである。本実施形態では、表示スクリーン5は、離散的な角度で入射する多視点映像Vの光線群を僅かに広げるように再生する。表示スクリーン5の拡散角は、多視点映像Vの投射角度間隔(表示スクリーン5上のある一点と各多視点映像Vの集光位置とを結んだ線分の角度間隔)と同一にする。例えば、表示スクリーン5は、微小な拡散角を有する拡散スクリーンである。
【0023】
<3次元映像表示装置の原理>
図1及び図2を参照し、3次元映像表示装置1の原理について説明する。
ここで、水平方向及び垂直方向に2台の多視点映像表示装置2をタイリングした場合を考える。この場合、多視点映像表示装置2にベゼル21が存在するので、隣接する多視点映像表示装置2が表示する多視点映像V同士に隙間が生じる。光路シフト光学系4を備えない場合、図2(a)に示すように、視点映像vの投射間隔が不均一になり、3次元映像Wの表示領域に隙間が生じてしまう。つまり、隣接する多視点映像Vの間では、各視点映像vの中心位置cが不均一になり、ハッチングで図示した隙間が3次元映像Wに生じてしまう。
【0024】
そこで、3次元映像表示装置1は、多視点映像Vの投射間隔が均一となるように、光路シフト光学系4により多視点映像Vの光路をシフトする。図2(b)に示すように、隣接する多視点映像Vの間でも各視点映像vの中心位置cが均一になるので、3次元映像Wに隙間が生じることがない。このように、3次元映像表示装置1では、多視点映像Vの隙間を除去して隙間なく合成し、表示サイズを拡大した3次元映像Wを表示できる。図2(b)の例では、3次元映像表示装置1は、1台の多視点映像表示装置2を使用した場合と比べて、3次元映像Wの表示サイズを4倍に拡大できる。
【0025】
以下、光路シフト光学系4による光路のシフトを説明する。図1に示すように、3次元映像表示装置1は、同一の多視点映像表示装置2に対して、4つの結像レンズ30~30を備える。ここで、垂直方向に配置された多視点映像表示装置2の表示面20に対して、周辺側に結像レンズ30,30が位置し、中央側に結像レンズ30,30が位置する。この場合、光路シフト光学系4は、第1光路シフト素子40において、中央側の結像レンズ30,30からの出射光より、周辺側の結像レンズ30,30からの出射光を大きくシフトさせる。つまり、光路シフト光学系4では、第1光路シフト素子40において、結像レンズ30の位置が多視点映像表示装置2の中央から離れる程、光路をシフトさせる距離(シフト距離)が長くなる。
【0026】
また、光路シフト光学系4は、第1光路シフト素子40において、各多視点映像表示装置2の周辺方向、つまり、中央側から周辺側に向けて視点映像vの出射光をシフトさせる。図1に示すように、光路シフト光学系4は、第1光路シフト素子40において、4つの結像レンズ30~30のうち、上側2つの結像レンズ30,30からの出射光を上向きにシフトさせる。また、光路シフト光学系4は、第1光路シフト素子40において、4つの結像レンズ30~30のうち、下側2つの結像レンズ30,30からの出射光を下向きにシフトさせる。
なお、図1では、垂直方向に光がシフトするように図示したが、水平方向にもシフトさせることは言うまでもない。
【0027】
ここで、第1光路シフト素子40及び第2光路シフト素子41が回折光学素子の場合を考える。この場合、回折格子の溝のピッチや2枚の回折光学素子間の距離を調整することで、シフト距離を調整できる。このシフト距離sは、以下の式(1)で表される。
【0028】
【数1】
【0029】
但し、Lは回折光学素子間の距離、θは回折角度、λは第1光路シフト素子40に入射した光の波長、pは回折格子の溝のピッチである。つまり、回折光学素子間の距離Lは、第1光路シフト素子40と第2光路シフト素子41との距離になる。また、第1光路シフト素子40及び第2光路シフト素子41の回折角度及び溝のピッチが同一であることとする。
【0030】
前記した式(1)より、シフト距離sを短くする場合、回折格子の溝のピッチpを大きくするか、又は、回折光学素子間の距離Lを短くすればよい。一方、シフト距離sを長くする場合、回折格子の溝のピッチを小さくするか、又は、回折光学素子間の距離Lを長くすればよい。
【0031】
なお、回折光学素子では、波長により回折角度θが異なるため、色収差が生じることがある。この色収差を抑制するには、RGBの波長毎に溝のピッチが異なるように作用する波長選択性を有する回折光学素子を使用すればよい。
【0032】
[作用・効果]
以上のように、3次元映像表示装置1は、多視点映像表示装置2にベゼル21が存在する場合でも、表示スクリーン5に視点映像vの光を等間隔で重なり合うように投射するので、それぞれの多視点映像表示装置2が表示する多視点映像Vを隙間なく合成し、3次元映像Wの表示サイズを拡大できる。
【0033】
(第2実施形態)
図3及び図4を参照し、第2実施形態に係る3次元映像表示装置1Bの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する。
3次元映像表示装置1Bは、時分割表示技術を適用し、光線の高密度化を図ったものである。図3に示すように、3次元映像表示装置1Bは、複数の多視点映像表示装置2Bと、結像レンズアレイ3と、光路シフト光学系4Bと、表示スクリーン5と、偏光切替素子6と、同期制御装置7とを備える。
【0034】
以下、偏光切替素子6及び光路シフト光学系4Bを説明した後、多視点映像表示装置2B及び同期制御装置7を説明する。なお、結像レンズアレイ3及び表示スクリーン5は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。また、図3では、図面を見やすくするため、一部符号の図示を省略した。
【0035】
偏光切替素子6は、多視点映像表示装置2Bの後段に配置され、多視点映像表示装置2Bからの視点映像vの光の偏光方向を時分割で切り替えるものである。つまり、偏光切替素子6は、後記する偏光切替制御手段70からの同期信号に従って、偏光回折格子42に出射する光の偏光方向を交互に切り替える。本実施形態では、切り替える偏光方向を水平偏光及び垂直偏光としたが、左円偏光及び右円偏光としてもよい。なお、図3では、偏光方向の一方を実線で図示し、偏光方向の他方を破線で図示した。
【0036】
光路シフト光学系4Bは、第1実施形態と同様、結像レンズ30からの視点映像vの光が等間隔で重なり合うように光路をシフトさせるものである。このとき、光路シフト光学系4Bは、視点映像vの光の偏光方向に応じて、異なる投射位置に光路をシフトさせる。図3に示すように、光路シフト光学系4Bは、第1光路シフト素子40と、第2光路シフト素子41と、偏光回折格子の対43とを備える。なお、第1光路シフト素子40及び第2光路シフト素子41は、第1実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0037】
偏光回折格子の対43は、第1光路シフト素子40毎に配置され、第1光路シフト素子40からの視点映像vの光の偏光方向に応じて、その光の投射位置を反対方向にシフトさせるものである。図3に示すように、偏光回折格子の対43は、第1光路シフト素子40及び第2光路シフト素子41の間に挿入されている。
【0038】
また、偏光回折格子の対43は、互にペアとなる偏光回折格子42(42,42)で構成されている。例えば、偏光回折格子42は、第1光路シフト素子40と同一のサイズであり、第1光路シフト素子40の隣に位置する。また、偏光回折格子42は、第2光路シフト素子41と同一のサイズであり、第2光路シフト素子41の隣に位置する。例えば、偏光回折格子42としては、特開2006-106726号公報、特開2008-233539号公報、又は、特開2016-136165号公報に記載されたものを使用できる。
【0039】
ここで、偏光回折格子42は、入射する光線の偏光方向に応じて、その光線を異なる方向に±1次光として回折させる光学素子である。例えば、偏光回折格子42が、その溝を一方向のみに切り、光線の位相を180度ずらす場合を考える。図4に示すように、2枚の偏光回折格子42,42を離間させることで、入射する光線の偏光状態に応じて、光線を反対方向にシフトできる。
【0040】
図4(a)の例では、偏光回折格子42は、入射した水平偏光を垂直偏光に変換し、上向きに出射する。そして、偏光回折格子42は、偏光回折格子42からの垂直偏光を水平偏光に再び変換し、シフト距離sだけ上側にシフトさせる。図4(b)の例では、偏光回折格子42は、入射した垂直偏光を水平偏光に変換し、下向きに出射する。そして、偏光回折格子42は、偏光回折格子42からの水平偏光を垂直偏光に再び変換し、シフト距離sだけ下側にシフトさせる。
なお、本実施形態では、光を垂直方向で上下にシフトさせているが、光を水平方向や斜め方向で左右にシフトさせてもよい。
【0041】
以上を踏まえ、偏光回折格子42では、±1次光の多視点映像Vを時分割表示したとき、投射間隔が均一になればよい。具体的には、偏光回折格子42による光路のシフト距離sが、時分割表示を行わない3次元映像表示装置1(図1)での投射間隔の1/4になればよい。なお、シフト距離sは、第1実施形態と同様、回折格子の溝のピッチと二枚の偏光回折素子間の距離により調整できるので、これ以上の説明を省略する。
【0042】
図3に戻り、3次元映像表示装置1Bの説明を続ける。
多視点映像表示装置2Bは、それぞれの投射位置に対応した多視点映像Vを同期表示するものである。本実施形態では、多視点映像表示装置2Bは、後記する多視点映像切替手段71からの同期信号に従って、投射位置毎に多視点映像Vを時分割で表示する。具体的には、多視点映像表示装置2Bは、図3の実線及び破線に対応する多視点映像Vを時分割で表示する。なお、多視点映像表示装置2Bの構成自体は、第1実施形態と同様のため、これ以上の説明を省略する。
【0043】
同期制御装置7は、多視点映像表示装置2B及び偏光切替素子6の同期制御を行うものである。つまり、同期制御装置7は、多視点映像表示装置2Bによる多視点映像Vの表示タイミングと、偏光切替素子6による偏光方向の切替タイミングとを同期させる。本実施形態では、同期制御装置7は、視聴者Aがフリッカーを知覚しない時間(例えば、1/120秒)で切り替えを行う。図3に示すように、同期制御装置7は、偏光切替制御手段70と、多視点映像切替手段71とを備える。
【0044】
偏光切替制御手段70は、偏光切替素子6に視点映像vの光の偏光方向を時分割で切り替えさせるものである。具体的には、偏光切替制御手段70は、多視点映像切替手段71と同期するように、偏光方向の切替タイミングを示す同期信号を偏光切替素子6に出力する。
【0045】
多視点映像切替手段71は、偏光方向に応じた投影位置の多視点映像Vを多視点映像表示装置2Bに同期して表示させるものである。具体的には、多視点映像切替手段71は、多視点映像Vの表示タイミングを示す同期信号を多視点映像表示装置2Bに出力する。
【0046】
[作用・効果]
以上のように、3次元映像表示装置1Bは、第1実施形態と同様、隙間なく多視点映像Vを合成し、3次元映像Wの表示サイズを拡大することができる。
さらに、3次元映像表示装置1Bは、時分割表示により、多視点映像Vの投射密度を2倍に向上させて、奥行き再現範囲などの表示特性が向上した3次元映像Wを表示できる。
【0047】
(第3実施形態)
図5を参照し、第3実施形態に係る3次元映像表示装置1Cの構成について、第2実施形態と異なる点を説明する。
3次元映像表示装置1Cは、図3の偏光回折格子42を除去し、第2光路シフト素子41Cの数を垂直方向で2倍にしたものである。図5に示すように、3次元映像表示装置1Cは、複数の多視点映像表示装置2Bと、結像レンズアレイ3と、光路シフト光学系4Cと、表示スクリーン5と、偏光切替素子6と、同期制御装置7とを備える。なお、光路シフト光学系4C以外の各手段は、第2実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0048】
光路シフト光学系4Cは、第2実施形態と同様、視点映像vの光の偏光方向に応じて、異なる投射位置に光路をシフトさせるものである。図5に示すように、光路シフト光学系4Cは、第1光路シフト素子40と、第2光路シフト素子41Cと、偏光回折格子42とを備える。なお、第2光路シフト素子41C以外の各手段は、第2実施形態と同様のため、説明を省略する。
【0049】
第2光路シフト素子41Cは、第1光路シフト素子40毎に2つ配置され、偏光回折格子42からの視点映像の光を等間隔で重なり合うように表示スクリーン5に投射するものである。例えば、第2光路シフト素子41Cは、図3の第2光路シフト素子41と比べて、幅が同一であり、高さが半分である。ここで、光路シフト光学系4Cは、同一の第1光路シフト素子40に対して、2つの第2光路シフト素子41C,41Cが垂直方向に並んでいる。図5に示すように、2つの第2光路シフト素子41C,41Cのうち、上側の第2光路シフト素子41Cが偏光方向の一方(実線で図示)を投射し、下側の第2光路シフト素子41Cが偏光方向の他方(破線で図示)を投射する。
【0050】
以上のように、3次元映像表示装置1Cは、第2実施形態と同様、多視点映像Vを隙間なく合成し、3次元映像Wの表示サイズを拡大することができる。
さらに、3次元映像表示装置1Cは、第2光路シフト素子41Cの密度を2倍に増やしたことにより、後段の偏光回折格子42図3)を備える必要がなく、光の利用効率を向上させるとともに、簡易な構成を実現できる。
【0051】
以上、本発明の各実施形態を詳述してきたが、本発明は前記した各実施形態に限られるものではなく、本発明の要旨を逸脱しない範囲の設計変更等も含まれる。
【0052】
(第1変形例)
図6及び図7を参照し、第1変形例に係る3次元映像表示装置1Dの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する。
図6に示すように、3次元映像表示装置1Dは、図1の結像レンズ30及び第1光路シフト素子40を偏心レンズ8として一体化したものである。つまり、偏心レンズ8は、結像レンズ30と第1光路シフト素子40との機能を有している。
【0053】
ここで、3次元映像表示装置1Dは、同一の多視点映像表示装置2に対して、4つの偏心レンズ8~8を備える。垂直方向に配置された多視点映像表示装置2の表示面20に対して、周辺側に偏心レンズ8,8が位置し、中央側に偏心レンズ8,8が位置する。この場合、3次元映像表示装置1Dは、中央側に偏心レンズ8,8からの出射光より、周辺側の偏心レンズ8,8からの出射光を大きくシフトさせる。つまり、3次元映像表示装置1Dでは、偏心レンズ8の位置が多視点映像表示装置2の中央から離れる程、シフト距離sが長くなる。
【0054】
偏心レンズ8によるシフト距離sは、以下の式(2)で表される。但し、Lは偏心レンズ8と第2光路シフト素子41との距離である。また、図7に示すように、θは視点映像vの光の偏向角度、dは偏心レンズ8の偏心距離、fは偏心レンズ8の焦点距離である。また、αは偏心レンズ8の光軸、βは視点映像vの光の中心位置である。
【0055】
【数2】
【0056】
このように、3次元映像表示装置1Dは、結像レンズ30及び第1光路シフト素子40を一体化し、簡易な構成を実現できる。
【0057】
(第2変形例)
図8を参照し、第2変形例に係る3次元映像表示装置1Eの構成について、第1実施形態と異なる点を説明する。
図8に示すように、3次元映像表示装置1Eは、結像レンズ30の焦点fに配置されたコンデンサレンズ9をさらに備えるものである。また、3次元映像表示装置1Eでは、コンデンサレンズ9の焦点fに表示スクリーン5が配置されている。
【0058】
この構成によれば、3次元映像表示装置1Eは、コンデンサレンズ9により、全ての多視点映像Vを表示スクリーン5の同一領域に異なる角度で重なるように投射する。その結果、3次元映像表示装置1Eでは、複数台の多視点映像表示装置2をタイリングしたとき、3次元映像Wの視域角を拡大できる。
【0059】
(その他変形例)
前記した各実施形態では、水平方向及び垂直方向にそれぞれ2台の多視点映像表示装置をタイリングすることとして説明したが、多視点映像表示装置の台数を3台以上に増やしてもよい。
また、各多視点映像が4つの視点映像で構成されることとして説明したが、視点数は任意である。
【符号の説明】
【0060】
1,1B~1E 3次元映像表示装置
2,2B 多視点映像表示装置
3 結像レンズアレイ
4,4B,4C 光路シフト光学系
5 表示スクリーン
6 偏光切替素子
7 同期制御装置
8,8~8 偏心レンズ
9 コンデンサレンズ
20 表示面
21 ベゼル
30,30~30 結像レンズ
40 第1光路シフト素子
41,41C,41C,41C 第2光路シフト素子
42,42,42 偏光回折格子
43 偏光回折格子の対
70 偏光切替制御手段
71 多視点映像切替手段
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8