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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】磁歪発電デバイス
(51)【国際特許分類】
   H02N 2/18 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
H02N2/18
【請求項の数】 9
(21)【出願番号】P 2020209394
(22)【出願日】2020-12-17
(65)【公開番号】P2021103940
(43)【公開日】2021-07-15
【審査請求日】2023-11-09
(31)【優先権主張番号】P 2019234437
(32)【優先日】2019-12-25
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000006644
【氏名又は名称】日鉄ケミカル&マテリアル株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110002952
【氏名又は名称】弁理士法人鷲田国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】坂本 広明
(72)【発明者】
【氏名】田邊 昌男
【審査官】服部 俊樹
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2013/186876(WO,A1)
【文献】国際公開第2014/168007(WO,A1)
【文献】特開2018-148791(JP,A)
【文献】特開2013-177664(JP,A)
【文献】特開2017-163119(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H02N 2/18
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
電磁鋼板で形成された磁歪部、および弾性材料で形成された応力制御部を有する発電用磁歪素子と、
前記発電用磁歪素子と連続したフレームと
を備える磁歪発電デバイスであって、
前記フレームの少なくとも一部が、前記磁歪部から延びた前記電磁鋼板と、前記応力制御部から延びた前記弾性材料とを含む積層体で構成されている、
磁歪発電デバイス。
【請求項2】
前記電磁鋼板が方向性電磁鋼板である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項3】
前記電磁鋼板が無方向性電磁鋼板である、請求項1に記載のデバイス。
【請求項4】
前記弾性材料が非磁性材料である、請求項1~3のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項5】
前記フレームの全体が、前記磁歪部から延びた前記電磁鋼板と一体構成である、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項6】
前記フレームの全体が、前記応力制御部から延びた前記弾性材料と一体構成である、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項7】
前記フレームの全体が、前記発電用磁歪素子と一体構成である、請求項1~4のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項8】
前記フレームが少なくとも1か所の曲部を有する形状であり、前記フレームおよび前記発電用磁歪素子において、前記電磁鋼板が前記デバイスの内側に位置し、前記弾性材料が前記デバイスの外側に位置する、請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【請求項9】
前記フレームが少なくとも1か所の曲部を有する形状であり、前記フレームおよび前記発電用磁歪素子において、前記弾性材料が前記デバイスの内側に位置し、前記電磁鋼板が前記デバイスの外側に位置する、請求項1~7のいずれか一項に記載のデバイス。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、磁歪発電デバイスに関する。
【背景技術】
【0002】
近年発展しているモノのインターネット(Internet of Things、以下「IoT」と略す)の利用においては、モノとインターネットとの接続のために、センサ、電源、および無線通信装置等が一体となった無線センサモジュールを使用する。このような無線センサモジュールの電源として、電池交換や充電作業等の人手による定期的なメンテナンスの必要なしに、設置場所の環境で発生しているエネルギーから電力を発生させることが可能な発電装置の開発が望まれている。
【0003】
このような発電装置の一例が、磁歪の逆効果である逆磁歪を使用した磁歪式振動発電装置である。逆磁歪とは、磁歪材料に振動などによって歪みが加えられたときに、磁歪材料の磁化が変化する現象である。磁歪式振動発電は、振動により磁歪材料に歪みを加えて、逆磁歪効果により発生する磁化の変化を、電磁誘導の法則により、磁歪素子の周囲に巻かれたコイルに起電力を発生させるものである。
【0004】
従来、磁歪材料の発電性能を高めるためには、その磁歪量を増加させる方法が試みられてきた。これは、磁歪量が大きいほど、磁歪材料に引っ張り歪みと圧縮歪みを交互に負荷した場合、逆磁歪を利用した磁束密度の変化(ΔB)が大きくなり、発電出力も大きくなるからである。このような観点から、磁歪量の大きな材料として、FeGa合金、FeCo合金、FeAl合金等が開発され、これらの磁歪材料を用いた発電デバイスも開発されている(特許文献1~6)。
【0005】
例えば、特許文献1に記載の発電デバイスにおいては、発電性能を向上させて品質のバラツキを低減するために、磁歪材料と軟磁性材料とを貼り合わせ、磁歪材料の磁化によって軟磁性材料の磁化を変化させる。こうすることで、磁歪材料の磁化の変化による電圧に加えて、軟磁性材料の磁化の変化による電圧も検出用コイルに誘起させる。使用する磁歪材料としては、FeCo、FeAl、Ni、NiFe、NiCo等が記載されており、軟磁性材料としては、Fe、FeNi、FeSi、電磁ステンレスが記載されている。
【0006】
特許文献2に記載の発電デバイスにおいては、起電力の向上、製造コストの低減、量産性の向上のために、磁歪材料と磁性材料とを合わせた平行梁構造を作製し、磁性材料をバイアス磁場によって磁気飽和させた状態で使用する構造を有するアクチュエータが開示されている。当該アクチュエータにおいては、バックヨークをコの字状とし、中立面を磁歪材料の外に設け、振動によるバイアス磁場の変化を磁歪材料の磁化の変化に重畳させて起電力を向上させる。磁歪材料としてFeGa、FeCo、FeAl、FeSiB、アモルファス材料等が記載されており、磁性材料としては、SPCC、炭素鋼(SS400、SC、SK、SK2)、フェライト系ステンレス鋼(SUS430)等が記載されている。
【0007】
特許文献3は、発電効率の向上、一様な応力負荷のために、磁歪材料と補強材としての非磁性材料とを貼り合わせ、磁歪材料と補強材の断面積比を補強材/磁歪材料>0.8になるように規定した発電素子が開示されている。磁歪材料としてはFeGa、FeCo、FeNi等が記載されており、補強材としてはフィラー含有樹脂、Al、Mg、Zn、Cu等が記載されている。
【0008】
特許文献4の発電デバイスにおいては、発電出力を向上させるために、コイルの巻数を多くすることのできる構造が採用されている。具体的には、磁歪板と非磁性構造体とを面接合した構造を作製し、磁歪板からコイルが巻かれたUの字状ヨークに磁界を還流させる。磁歪板としては、FeGaおよびFeCoが記載されており、非磁性構造体としてはステンレス(SUS304、等)が記載されている。
【0009】
特許文献5の発電デバイスにおいては、発電効率の向上および一様な応力負荷のために、磁歪材料と非磁性材料(補強材)とを貼り合わせた構造体を作製し、当該構造体を2本の平行梁として用いている。磁歪材料としては、FeGa、FeCo、FeCo系アモルファス、Fe系アモルファス、Ni系アモルファス、メタ磁性形状記憶合金、強磁性形状記憶合金等が記載されており、非磁性材料としては、酸化シリコン、アルミナ、ポリイミド、ポリカーボネード、繊維強化プラスチック、非磁性金属(Al、Cu)等が記載されている。
【0010】
特許文献6の発電デバイスにおいては、発電出力の向上のために、磁歪材料と磁性材料とを離した平行梁とした構造を使用する。当該構造によって、磁性材料を磁気飽和させない状態で使用し、磁歪材料の磁束の変化によって磁性材料の磁束を変化させ、磁歪材料による誘起電圧に、磁性材料による誘起電圧を足し合せた電圧を取り出せる設計としている。磁歪材料としては、FeGa、FeCo、FeNi、FeDyTeが記載されており、磁性材料としては、フェライト系ステンレス鋼、FeSi、NiFe、CoFe、SmCo、NdFeB、CoCr、CoPtが記載されている。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0011】
【文献】国際公開第2018/230154号
【文献】特開2018-148791号公報
【文献】国際公開第2014/021197号
【文献】国際公開第2013/038682号
【文献】国際公開第2013/186876号
【文献】特開2015-70741号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0012】
特許文献1~6の記載から明らかなように、磁歪発電素子および磁歪発電デバイスにおいては、種々の磁歪材料が他の材料と共に使用されている。磁歪材料としては、最も磁歪量の大きな材料として知られるFeGa合金が特許文献2~6に記載されているが、FeGa合金は単結晶引き上げ方法(CZ法)で製造されるため、非常に高価である。特許文献1~6に記載されているFeCo合金は圧延法で製造されるが、Coを含有しているため、やはり高価である。また、特許文献1および2に記載されているFeAl合金は、FeGa合金やFeCo合金と比べて安価ではあるものの、やはり高価である。さらに靭性が低く、通常の圧延法で板形状に製造することが容易ではないといった問題も有している。
【0013】
このような問題を鑑みて、上述したようなコストの高い磁歪材料を使用して磁歪発電デバイスを製造する際には、磁歪材料とそこに貼り合わせる相手材とで構成される発電用磁歪素子を製造し、当該発電用磁歪素子を、より低コストの材料で製造したフレーム等に固定した構造を採用している。このように発電用磁歪素子をフレームに固定した磁歪発電デバイスにおいては、発電用磁歪素子とフレームとの間で十分な接合強度を維持するのが難しく、耐久性が低下し得る。また、発電用磁歪素子とフレームとの接合部に磁気的なギャップが生じ得ることから、ギャップのサイズのバラツキによって磁気抵抗にバラツキが発生し、発電用磁歪素子に印加するバイアス磁場を一定に調整することも難しくなる。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明は、下記の磁歪発電デバイスである。
[1] 電磁鋼板で形成された磁歪部、および弾性材料で形成された応力制御部を有する発電用磁歪素子と、前記発電用磁歪素子と連続したフレームとを備える磁歪発電デバイスであって、前記フレームの少なくとも一部が、前記磁歪部から延びた前記電磁鋼板と、前記応力制御部から延びた前記弾性材料とを含む積層体で構成されている、磁歪発電デバイス。
[2] 前記電磁鋼板が方向性電磁鋼板である、[1]に記載のデバイス。
[3] 前記電磁鋼板が無方向性電磁鋼板である、[1]に記載のデバイス。
[4] 前記弾性材料が非磁性材料である、[1]~[3]のいずれかに記載のデバイス。
[5] 前記フレームの全体が、前記磁歪部から延びた前記電磁鋼板と一体構成である、[1]~[4]のいずれかに記載のデバイス。
[6] 前記フレームの全体が、前記応力制御部から延びた前記弾性材料と一体構成である、[1]~[4]のいずれかに記載のデバイス。
[7] 前記フレームの全体が、前記発電用磁歪素子と一体構成である、[1]~[4]のいずれかに記載のデバイス。
[8] 前記フレームが少なくとも1か所の曲部を有する形状であり、前記フレームおよび前記発電用磁歪素子において、前記電磁鋼板が前記デバイスの内側に位置し、前記弾性材料が前記デバイスの外側に位置する、[1]~[7]のいずれかに記載のデバイス。
[9] 前記フレームが少なくとも1か所の曲部を有する形状であり、前記フレームおよび前記発電用磁歪素子において、前記弾性材料が前記デバイスの内側に位置し、前記電磁鋼板が前記デバイスの外側に位置する、[1]~[7]のいずれかに記載のデバイス。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、電磁鋼板で形成された磁歪部および弾性材料で形成された応力制御部を有する磁歪素子と、前記磁歪素子と連続したフレームとを備える磁歪発電デバイスにおいて、フレームの少なくとも一部を、磁歪部から延びた電磁鋼板と、応力制御部から延びた弾性材料とを含む積層体で構成することによって、低コスト且つ耐久性に優れ、従来の磁歪発電デバイスと同等またはそれらを超える発電量を達成しうる、性能の安定な磁歪発電デバイスが提供される。
【図面の簡単な説明】
【0016】
図1】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示す模式図である。
図2】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示す別の模式図である。
図3】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。
図4】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。
図5】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。
図6】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。
図7】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。
図8】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。
図9】比較例の磁歪発電デバイスの構造を示す模式図である。
図10】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。
図11】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。
図12】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。
図13】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。
図14】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。
図15】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。
図16】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。
図17】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。
図18】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。
図19】本発明の磁歪発電デバイスの構造を示すさらに別の模式図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
上述したように、従来技術において発電用の磁歪材料として記載されているのは、主に、飽和磁歪が約200ppmレベルのFeGa合金、あるいは、飽和磁歪が80ppmレベルのFeCo合金やFeAl合金といった、飽和磁歪の大きな材料である。これは飽和磁歪が大きい程、磁歪材料に歪みを与えた場合に発生する磁気弾性エネルギーも大きく、このエネルギーを下げるために磁歪材料内の磁化の向きが変化し易くなるためである。そして、磁化の向きが変化し易い程、検出用コイルに誘起される電圧は大きくなる。言い換えれば、飽和磁歪が8ppmレベルの電磁鋼板(即ち、FeSi合金)を発電用磁歪材料として用いることは、従来想定されていなかった。
【0018】
このような状況において本発明者らは、発電用磁歪素子の磁歪部を電磁鋼板で形成し、そこに積層する応力制御部を弾性材料で形成し、さらに磁歪発電デバイスの磁歪素子と連続するフレームの少なくとも一部を、磁歪部から延びた電磁鋼板と、応力制御部から延びた弾性材料とを含む積層体で構成した。このような磁歪発電デバイスにおいては、発電用磁歪素子とフレームとの接合部が磁歪素子中もしくは磁歪素子の近傍に存在しないことから、発電のために磁歪素子に連続的な歪みが加えられた際に、接合部に応力集中が起こりにくく、デバイスの耐久性が向上した。さらに磁気回路を構成する部材内の連続性が高まるために磁気的なギャップの発生が低減されて、磁石によるバイアス磁場の調整が容易となり、電圧を安定させることができた。また、電磁鋼板は従来の磁歪材料であるFeGa合金、FeCo合金等よりも低コストであるため、従来の磁歪発電デバイスと同等またはそれらを超える発電量を達成しながらも、磁歪発電デバイスのコストを下げることが可能となり、本発明を完成するに至った。
【0019】
以下に、例示的な実施形態を挙げて本発明の説明を行うが、本発明は以下の実施形態に限定されるものではない。
【0020】
本発明は磁歪発電デバイスに関する。本発明の磁歪発電デバイスは、発電用磁歪素子と支持部とを備える磁歪発電デバイスである。
本発明において「発電用磁歪素子」(以下、しばしば、「磁歪素子」と略す場合もある)とは、電磁鋼板から形成される磁歪部と、弾性材料から形成される応力制御部とを含み、磁歪部の逆磁歪(即ち、磁歪部の形状変化(歪み)に伴う磁場の発生)に基づく発電が可能な素子を意味する。構造的には、磁歪部と応力制御部とを含む積層体の周りに検出用コイルの巻かれた、発電に寄与する領域である。実際の発電デバイスにおいては、コイルの巻かれた領域の外側の隣接部分も発電に寄与するが、本願明細書においては、コイルの巻かれる領域を磁歪発電素子と定義する。
【0021】
本発明の発電用磁歪素子における磁歪部は、電磁鋼板から形成される。本発明において「電磁鋼板」とは、鉄(Fe)にケイ素(Si)を添加して鉄の磁気特性を向上させた、「ケイ素鋼板」と呼ばれることもある機能材料である。本発明における電磁鋼板は、ケイ素の含有量が0.5%以上4%以下の電磁鋼板である。ケイ素の含有量が0.5%以上4%以下の電磁鋼板はケイ素添加による電気抵抗の増加によって、交流振動における磁区変化を妨げる渦電流の発生を抑制できるため、磁歪部に用いるのに適している。
【0022】
さらに電磁鋼板には、方向性電磁鋼板と無方向性電磁鋼板とがあり、本発明においては、方向性電磁鋼板と無方向性電磁鋼板のどちらも磁歪部に使用可能である。方向性電磁鋼板とは、鋼板の圧延方向に金属結晶の結晶方位を揃えたものである。具体的には、その圧延方向に<100>方向を揃え、圧延面を(110)方位とした{110}[100]GOSS集合組織を有する電磁鋼板である。一方、無方向性電磁鋼板とは、金属結晶の結晶方位が一定の方向に揃えられていない、比較的ランダムな結晶方位を有するものである。方向性電磁鋼板も、無方向性電磁鋼板も、飽和磁歪がFeGa合金やFeCo合金よりも低い材料であるが、従来の磁歪材料と同等またはそれらを超える発電が可能である。その理由は明確ではないが、次のように推定される。
【0023】
上述したように、方向性電磁鋼板は、その圧延方向に<100>方向を揃え、圧延面を(110)方位とした{110}[100]GOSS集合組織を有する。本発明者らは、方向性電磁鋼板の[100]方向にバイアス磁場を印加した状態で、圧縮歪みを負荷した場合、方向性電磁鋼板の磁束密度が大きく変化することを新たに見出した。これは、方向性電磁鋼板の[100]方向に所定の磁場を印加すると、[100]方向に平行な180°磁区と90°磁区との割合が、両者が上手く相互作用する割合となり、方向性電磁鋼板に歪みを負荷した際に、180°磁区から90°磁区への変換、あるいは、90°磁区から180°磁区への変換が生じやすくなるためと考えられる。具体的には、180°磁区の磁化の方向に平行(すなわち、[100]方向)に圧縮歪みを負荷すると、180°磁区が減少して90°磁区が増加し、[100]方向に引っ張り歪みを負荷すると、90°磁区が減少して180°磁区が増加する。また、180°磁区の磁化の方向に垂直(すなわち、[110]方向)に圧縮歪みを負荷すると、90°磁区が減少して180°磁区が増加し、[110]方向に引っ張り歪みを負荷すると180°磁区が減少して90°磁区が増加する。これらの磁区の変化によって、方向性電磁鋼板の磁化が変化し、磁歪素子の磁歪部として機能する。磁歪発電デバイスにおいては、上記磁化の変化によって、磁歪素子に巻かれた検出用コイルに電圧が誘起される。
【0024】
また、無方向性電磁鋼板には方向性電磁鋼板のような結晶配向は存在しないが、バイアス磁場を印加した状態で歪みを負荷した場合に磁束密度が大きく変化することを見出した。無方向性電磁鋼板では、結晶方位が比較的ランダムであるために、方向性電磁鋼板に比べて磁区が小さい。そのために、歪みを負荷した場合、多数ある磁区の中でより動きやすい磁区から動くことが可能になるため、磁歪素子の磁歪部として使用した際に、大きな磁束密度の変化が得られると考えられる。
【0025】
本発明においては、方向性電磁鋼板の方が無方向性電磁鋼板よりも大きな磁化の変化を誘起しやすいことから、方向性電磁鋼板の方が磁歪部として好ましい。
【0026】
方向性電磁鋼板の具体例としては、例えば、日本製鉄のオリエントコア、オリエントコアハイビー(例えば、27ZH100)、オリエントコアハイビー・レーザー、オリエントコアハイビー・パーマネント、等が挙げられる。
【0027】
無方向性電磁鋼板の具体例としては、例えば、日本製鉄のハイライトコア(例えば、35H210)、ホームコア、等が挙げられる。
【0028】
さらに発電用磁歪素子は、弾性材料から形成される応力制御部を有する。磁歪素子における「応力制御部」とは、磁歪素子に曲げ歪み、等を加えた際に磁歪部全体に対して圧縮、または、引っ張りのどちらか一方の応力負荷を達成するために、応力を制御するための部分である。応力制御部を形成する材料は、上記目的を達成し得る弾性材料である限り特に限定はなく、非磁性材料および磁性材料のいずれも使用可能である。
【0029】
応力制御部を形成する弾性材料を非磁性材料とすると、磁歪素子部(磁歪素子に相当する部分)の磁歪部のみに磁場が優先的に流れるため磁歪部のバイアス磁場の調整が容易であるため好ましい。さらに、磁歪部が方向性電磁鋼板で形成され、応力制御部が非磁性材料で形成された磁歪素子に曲げ歪みを負荷した場合に、他の組み合わせと比べてより大きな磁束密度の変化が生じることを、本発明者らは見出した。これは、弾性材料に磁性材料を用いた場合には弾性材料と電磁鋼板の間に磁気的相互作用が生じ、90°磁区と180°磁区の変換が妨げられる場合が生じるが、弾性材料が非磁性材料の場合には、このような磁気的相互作用が生じないために、電磁鋼板の90°磁区と180°磁区の変換が生じ易くなるからであると考えられる。
【0030】
応力制御部を形成する非磁性材料である弾性材料としては、繊維強化プラスチック(例:CFRP、GFRP)、オーステナイト系ステンレス鋼(例:SUS304、SUS316、など)、銅合金(例:黄銅、りん青銅)、アルミ合金(例:ジュラルミン)、チタン合金(例:Ti-6Al-4V)等が挙げられるが、これらに限定されるものではない。中でも、ヤング率が比較的高く、曲げ歪みを負荷した場合の中立面を磁歪部の外に位置させることが容易である点で、繊維強化プラスチック、オーステナイト系ステンレス鋼が好ましい。
【0031】
応力制御部を弾性材料である磁性材料で形成すると、コスト低減に効果がある。磁歪素子の磁歪部が方向性電磁鋼板または無方向性電磁鋼板であり、応力制御部を形成する弾性材料が磁性材料である鋼板の場合、バイアス磁場を印加したときに、磁歪部と応力制御部の両方にバイアス磁場が流れる。しかし、磁歪部を形成する方向性電磁鋼板または無方向性電磁鋼板はそもそも高透磁率材料であるため、磁歪部により多くのバイアス磁場が流れるため、発電に十分な磁区変化が生じると考えられる。しかし、応力制御部が非磁性材料の場合と比較すると、磁性材料で形成された応力制御部に流れる磁束分だけ磁歪部に印加される磁力が少なくなる。この磁力の減少を補うためには、磁歪発電デバイスの備える磁石の強度を高めれば良い。
【0032】
応力制御部を形成する、磁性材料である弾性材料としては、一般構造用圧延鋼材(例:SS400)、一般構造用炭素鋼(例:S45C)、高張力鋼(例:HT80)、フェライト系ステンレス鋼(例:SUS430)、マルテンサイト系ステンレス鋼(例:SUS410)が挙げられるが、これらに限定されるものではない。
【0033】
磁歪素子においては、応力制御部と磁歪部とは貼り合わされて、積層体を形成している。応力制御部と磁歪部とを貼り合わせる方法に特に限定はないが、通常、接着剤や接着シートを間に介した貼り合わせ、ろう材接合、液相拡散接合等が挙げられる。
【0034】
本発明の磁歪発電デバイスはさらに磁歪素子と連続したフレームを備える。本発明において磁歪発電デバイスの「フレーム」とは、磁歪素子、錘、磁石のそれぞれと接合されて、磁歪発電デバイスの本体を構成する部分である。さらに本発明においてフレームは、磁歪素子と連続しており、且つフレームの少なくとも一部が、磁歪素子の磁歪部から延びた電磁鋼板と、磁歪素子の応力制御部から延びた弾性材料とを含む積層体で構成されている。これは、少なくとも磁歪素子に隣接するフレームの部分(コイル近傍の、コイルの巻かれていない部分)が磁歪素子と一体構成であることを意味し、フレーム全体が磁歪素子と一体構成である必要はない。
【0035】
磁歪発電デバイスのフレームにおいて、磁歪素子の両端のそれぞれから(コイルからはみ出すように)、磁歪部から延びた電磁鋼板と、応力制御部から延びた弾性材料とを含む積層体で構成されている領域が存在する。この領域の長さは、コイルの長さに相当する長さの50%以上、好ましくは、コイルの長さに相当する長さ以上である。このような磁歪発電デバイスにおいては、発電用磁歪素子とフレームとの接合部が磁歪素子中もしくは磁歪素子の近傍に存在しないことから、発電のために磁歪素子に連続的な曲げ歪みが加えられた際に、接合部に応力集中が起こりにくく、デバイスの耐久性が向上する。また、磁歪素子から延びた電磁鋼板および弾性材料を含む積層体は、磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘の接合位置まで延びていることが、錘の振動によって生じる曲げ歪が効率的に磁歪素子部に伝達されるために好ましい。
【0036】
さらに磁歪部から延びた電磁鋼板と、応力制御部から延びた弾性材料とを含む積層体で構成されているフレームの部分は、フレーム全長の20%以上であることが好ましく、40%以上であることがより好ましい。フレーム全長の20%以上が上記積層体で構成されていることによって、電磁鋼板で形成された磁歪部と、弾性材料で形成された応力制御部との接着面を広げることが可能になる。その結果、磁気回路を構成する部材内の連続性が高まるために、磁気的なギャップの発生が低減されて、磁石によるバイアス磁場の調整が容易となり、電圧を安定させることができる。
【0037】
フレームの一部のみが、磁歪部から延びた電磁鋼板と応力制御部から延びた弾性材料とを含む積層体で構成されている場合には、フレームの残りの部分の材料に特に限定はなく、他の鋼板や弾性材料などを接合してフレームを完成させることができる。しかしながら、デバイスの耐久性や製造の容易性の観点から、フレーム全体が磁歪部から延びた電磁鋼板および/または応力制御部から延びた弾性材料と一体構成であることが好ましい。具体的には、磁歪部を形成する電磁鋼板が磁歪素子に相当する部分およびフレーム全体に存在し、フレームの一部と磁歪素子に相当する部分には応力制御部を形成する弾性材料が積層されている構造、または応力制御部を形成する弾性材料が磁歪素子に相当する部分およびフレーム全体に存在し、フレームの一部と磁歪素子に相当する部分には磁歪部を形成する電磁鋼板が積層されている構造が好ましい。磁歪素子を構成する電磁鋼板または弾性材料がフレーム全体に延びているこのような構造では、電磁鋼板と弾性材料とを含む積層体を作製することで磁歪素子とフレームの両方を製造することができる。よって、製造工程を簡素化することが可能となる。また、磁歪発電デバイスを震動源等に固定するための固定部にまで磁歪素子を構成する電磁鋼板および弾性材料の少なくとも一部が延びていることによって、震動源等からの振動を効率良く磁歪素子部に伝達することが可能となるため特に好ましい。
【0038】
また、フレーム全体が磁歪部から延びた電磁鋼板と、応力制御部から延びた弾性材料とを含む積層体で構成されていてもよい。このような構成においては、電磁鋼板と弾性材料とを含む積層体が、磁歪素子およびフレームの両方を連続的に形成しており、磁歪素子とフレームとの接合部が全く存在しないため、耐久性の観点から好ましい。さらに磁気回路を構成する部材内の連続性が高まるために、磁気的なギャップの発生が低減されて、磁石によるバイアス磁場の調整が容易となり、電圧をさらに安定させることができる。
【0039】
磁歪素子を含むフレームの寸法に特に限定はないが、一般的に磁歪素子を含むフレームの長さは30mm以上700mm以下、好ましくは60mm以上500mm以下、より好ましくは120mm以上300mm以下である。一般的なフレームの幅は、4mm以上70mm以下、好ましくは6mm以上50mm以下、より好ましくは8mm以上30mm以下である。フレームの寸法は、機器を動作させるために必要な電力の大きさに合わせて設計に反映させれば良い。
【0040】
フレームの形状にも特に限定はなく、板状や、コ字状、U字状、V字状といった少なくとも1か所の曲部を有する形状とすることも可能である。尚、本発明においては、靱性の高い電磁鋼板を磁歪部に用いることから、板状のみならず、曲部を有するU字状等のフレームを、磁歪部を形成する磁歪材料によって製造することが可能である。
【0041】
フレームが少なくとも1か所の曲部を有する形状(例えば、U字型)である場合、フレームおよび磁歪素子において、電磁鋼板がデバイスの内側に位置し、弾性材料がデバイスの外側に位置する構成でも、弾性材料がデバイスの内側に位置し、電磁鋼板がデバイスの外側に位置する構成でもよい。例えば、U字型のフレームにおいて、電磁鋼板がデバイスの内側に位置し、弾性材料がデバイスの外側に位置すると、磁石を電磁鋼板(即ち、磁歪材料)の上に直接配置することが可能となる。その結果、磁気的なギャップが低減し、バイアス磁場の調整が容易になる。
【0042】
また、U字型のように、少なくとも1か所の曲部を有する形状のフレームを備えるデバイスにおいては、錘が振動する際に、U字型の曲部に大きな応力が加わる場合があり、その部位では、U字型の局部の内側に位置する材料に圧縮応力が作用し、内側に位置する材料と外側に位置する材料とを剥がそうとする力が働く。電磁鋼板がデバイスの外側に位置し、弾性材料がデバイスの内側に位置する構成においては、比較的強靭な弾性材料を応力制御部に使用することが可能となるため、内側の応力制御部が圧縮応力を受け止めて、電磁鋼板との剥離を発生し難くすることができる。さらにこのような構成のデバイスにおいては、電磁鋼板に引っ張り歪が作用して磁歪の効果によって磁束密度が増大する場合、電磁鋼板が磁石に近づくことになり、結果として電磁鋼板の磁束密度が増大するように変化をする。磁歪による磁束密度の変化に加えて磁石の磁場による磁束密度変化が足し合わされるため、発電出力が増大する。
【0043】
本発明の磁歪発電デバイスにおける発電用磁歪素子の寸法は、大きければ大きいほど、発電デバイスにおいてコイルの巻き数を多くして、より大きな電圧を得ることができる。よって、磁歪素子の寸法(コイルを巻く領域の長さ)に特に限定はないが、通常、5mm以上150mm以下であり、好ましくは10mm以上100mm以下、より好ましくは20mm以上70mm以下である。
【0044】
磁歪素子の磁歪部およびフレームを形成する電磁鋼板の厚みに特に限定はないが、通常、0.2mm以上0.5mm以下である。磁歪部の厚みが0.2mm以上であれば、磁束の変化を大きくできるため、発生電圧も大きくできるため有利であり、0.5mm以下であれば、振動に適した剛性の設計が容易となるため有利である。電磁鋼板の厚みは、磁歪素子中の磁歪部と、フレームを構成する積層体中とで同じでも良いし、異なっていてもよい。
【0045】
磁歪素子の応力制御部およびフレームを形成する弾性材料の厚みに特に限定はないが、通常、0.1mm以上2.0mm以下であり、好ましくは0.2mm以上1.0mm以下、より好ましくは0.2mm以上0.5mm以下である。応力制御部の厚みが0.1mm以上であれば、磁歪部全体に対して圧縮、または、引っ張りのどちらか一方の応力負荷を達成する上で有利であり、2.0mm以下であれば、磁歪素子の振動を妨げることが抑制できる。弾性材料の厚みは、磁歪素子中の磁歪部と、フレームを構成する積層体中とで同じでも良いし、異なっていてもよい。
【0046】
上述した特定の磁歪発電素子および特定のフレームを有する限り、本発明の磁歪発電デバイスの他の構成に特に限定はなく、従来の磁歪発電デバイスと同様に構成することができる。具体的には、当該装置において、磁歪素子の周りにはコイルが装填されており、フレームと、フレームに取り付けられた錘と磁石とを含む。このような装置においては、磁石の磁力線は、磁歪素子を通過して、磁歪部に対してバイアス磁場を印加する。そして錘の振動によってフレームが振動し、磁歪素子に引張力および圧縮力を加える。このとき、磁歪部に対して曲げ歪を加える方向と、磁歪部に対してバイアス磁場を印可する方向とが平行関係にあり、逆磁歪効果によって磁歪素子の磁化を変化させ、コイルに誘導電流(または誘導電圧)を発生させることができる。
【0047】
磁歪部が方向性電磁鋼板から形成される場合には、方向性電磁鋼板の[100]方向にバイアス磁場が印加されるようにデバイスを構成することで、より大きな電圧が得られるため好ましい。
【0048】
磁歪発電デバイスにおける磁石のサイズや数に特に限定はなく、デバイスの構成に応じて選択することができる。バイアス磁場の発生には永久磁石を用いることが好ましい。これは永久磁石は小型化可能であり、バイアス磁場の制御が容易であるためである。また、永久磁石としては、より大きなバイアス磁場を発生させることができるという理由から、NdFeB磁石が好ましい。
【0049】
次に、図面に示した実施例のデバイスに参照しながら本発明の磁歪発電デバイスの基本的な構成について説明するが、本発明のデバイスはこれらに限定されるものではない。尚、図1~5、7および8は、曲部を有するフレームの内側に電磁鋼板が位置し、外側に弾性材料が位置するデバイスを示し、図10~19は、曲部を有するフレームの内側に弾性材料が位置し、外側に電磁鋼板が位置するデバイスである。
【0050】
図1は、U字型のフレーム全体が、磁歪素子と一体構成である磁歪発電デバイス100の模式図である。磁歪発電デバイス100においては、磁歪素子110は磁歪部111と応力制御部112とを有し、その周りに検出用コイル160が装填されている。このデバイスにおいては、フレーム130を構成する積層体120中の電磁鋼板121がデバイスの内側、弾性材料122が外側(磁歪素子110においては、磁歪部111が内側、応力制御部112が外側)に配置されている。また、電磁鋼板121および弾性材料122の厚みは、磁歪部111と応力制御部112とそれぞれ同じである。さらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘140およびバイアス磁場を印加するための磁石150を有し、固定部170で振動源の上に固定することができる。
【0051】
磁歪発電デバイスの固定は、接着剤やボルトを用いて行うことができる。ボルトで固定する場合は、例えば、磁石150の右側の領域にボルト用の穴を設けて、ボルトでデバイスを振動源の上に固定することもできる。(以下、他の構成のデバイスも同様である。)
【0052】
図2は、U字型のフレーム全体が、磁歪素子と一体構成である磁歪発電デバイス200の模式図である。磁歪発電デバイス200においては、磁歪素子210は磁歪部211と応力制御部212とを有し、その周りに検出用コイル260が装填されている。このデバイスにおいては、フレーム230を構成する積層体220中の電磁鋼板221がデバイスの内側、弾性材料222が外側(磁歪素子210においては、磁歪部211が内側、応力制御部212が外側)に配置されている。また、電磁鋼板221と磁歪部211との厚みは同じであるが、応力制御部212の厚みは積層体220中の弾性材料222の厚みよりも薄くして、磁歪素子の振動を容易にしている。デバイス200はさらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘240およびバイアス磁場を印加するための磁石250を有し、固定部270で振動源の上に固定することができる。
【0053】
図3は、U字型のフレーム全体が、応力制御部から延びた弾性材料と一体構成である磁歪発電デバイス300の模式図である。磁歪発電デバイス300においては、磁歪素子310は磁歪部311と応力制御部312とを有し、その周りに検出用コイル360が装填されている。このデバイスにおいては、フレーム330の全体が応力制御部312から延びた弾性材料322と一体構成であり、フレームの一部(約70%)が、電磁鋼板321および弾性材料322を含む積層体320で構成されている。積層体320で構成されている部分においては、電磁鋼板321がデバイスの内側、弾性材料322が外側(磁歪素子310においては、磁歪部311が内側、応力制御部312が外側)に配置されている。また、デバイス300はさらに磁歪部に歪みを与えるための錘340およびバイアス磁場を印加するための磁石350を有し、固定部370で振動源の上に固定することができる。
【0054】
図4は、U字型のフレーム全体が、応力制御部から延びた弾性材料と一体構成である磁歪発電デバイス400の模式図である。磁歪発電デバイス400においては、磁歪素子410は磁歪部411と応力制御部412とを有し、その周りに検出用コイル460が装填されている。フレーム430の全体が応力制御部412から延びた弾性材料422と一体構成であり、フレームの一部(約70%)が、電磁鋼板421および弾性材料422を含む積層体420で構成されている。積層体420で構成されている部分においては、電磁鋼板421がデバイスの内側、弾性材料422が外側(磁歪素子410においては、磁歪部411が内側、応力制御部412が外側)に配置されている。また、デバイス400はさらに磁歪部に歪みを与えるための錘440およびバイアス磁場を印加するための磁石450を有し、固定部470で振動源の上に固定することができる。このデバイスにおいては、応力制御部412を形成する弾性材料422は磁性材料であるため、磁歪部411の他に磁性材料である応力制御部にも磁場が流れるため、磁石450として大きな磁石を使用している。
【0055】
図5は、U字型のフレーム全体が、応力制御部から延びた弾性材料と一体構成である磁歪発電デバイス500の模式図である。磁歪発電デバイス500においては、磁歪素子510は磁歪部511と応力制御部512とを有し、その周りに検出用コイル560が装填されている。フレーム530の全体が応力制御部512から延びた弾性材料522と一体構成であり、フレームの一部(約50%)が、電磁鋼板521および弾性材料522を含む積層体520で構成されている。積層体520で構成されている部分においては、電磁鋼板521がデバイスの内側、弾性材料522が外側(磁歪素子510においては、磁歪部511が内側、応力制御部512が外側)に配置されている。また、デバイス500はさらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘540およびバイアス磁場を印加するための磁石550を有し、固定部570で振動源の上に固定することができる。このデバイスにおいては、積層体520で構成される領域が、図4の同様の領域よりも短く、磁石550として小さな磁石を2つ使用している。
【0056】
図6は、板状のフレーム全体が、磁歪素子と一体構成である磁歪発電デバイス600の模式図である。磁歪発電デバイス600においては、磁歪素子610は磁歪部611と応力制御部612とを有し、その周りに検出用コイル660が装填されている。このデバイスにおいては、フレーム630は、電磁鋼板621および弾性材料622を含む積層体620で構成されている。さらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘640およびバイアス磁場を印加するための磁石650を有し、固定部670で振動源に固定することができる。
【0057】
図7は、U字型のフレーム全体が、磁歪部から延びた電磁鋼板と一体構成である磁歪発電デバイス700の模式図である。磁歪発電デバイス700においては、磁歪素子710は磁歪部711と応力制御部712とを有し、その周りに検出用コイル760が装填されている。フレーム730の全体が磁歪部711から延びた電磁鋼板721と一体構成であり、フレームの一部(約27%)が、電磁鋼板721および弾性材料722を含む積層体720で構成されている。積層体720で構成されている部分においては、電磁鋼板721がデバイスの内側、弾性材料722が外側(磁歪素子710においては、磁歪部711が内側、応力制御部712が外側)に配置されている。また、デバイス700はさらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘740およびバイアス磁場を印加するための磁石750を有し、固定部770で振動源の上に固定することができる。このデバイスは、検出用コイル内の磁歪素子の振動を生じやすくするために、弾性材料722を短くし、U字部に支柱780を入れた構造である。
【0058】
図8は、U字型のフレーム全体が、磁歪部から延びた電磁鋼板と一体構成である磁歪発電デバイス800の模式図である。磁歪発電デバイス800においては、磁歪素子810は磁歪部811と応力制御部812とを有し、その周りに検出用コイル860が装填されている。フレーム830の全体が磁歪部811から延びた電磁鋼板821と一体構成であり、フレームの一部のみが、電磁鋼板821および弾性材料822を含む積層体820で構成されている。積層体820で構成されている部分においては、電磁鋼板821がデバイスの内側、弾性材料822が外側(磁歪素子810においては、磁歪部811が内側、応力制御部812が外側)に配置されている。また、デバイス800はさらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘840およびバイアス磁場を印加するための磁石850を有し、固定部870で振動源の上に固定することができる。このデバイスは、検出用コイル内の磁歪素子の振動を生じやすくするために、弾性材料822を短くし、U字部に支柱880を入れた構造であり、さらに磁石850として小さな磁石を2つ使用している。
【0059】
図10および図11は、それぞれ、U字型のフレーム全体が、磁歪素子と一体構成である磁歪発電デバイス1000および1100の模式図である。磁歪発電デバイス1000においては、磁歪素子1010は磁歪部1011と応力制御部1012とを有し、その周りに検出用コイル1060が装填されている。このデバイスにおいては、フレーム1030を構成する積層体1020の電磁鋼板1021が外側、弾性材料1022が内側(磁歪素子1010においては、磁歪部1011が外側、応力制御部1012が内側)に配置されている。デバイス1000はさらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘1040およびバイアス磁場を印加するための磁石1050を有し、固定部1070で振動源の上に固定することができる。
【0060】
磁歪発電デバイス1100は、支柱1180が設けられていること以外は、図10の磁歪発電デバイス1000と実質的に同じ構造である。具体的には、磁歪素子1110は磁歪部1111と応力制御部1112とを有し、その周りに検出用コイル1160が装填されている。このデバイスにおいては、フレーム1130を構成する積層体1120の電磁鋼板1121が外側、弾性材料1122が内側(磁歪素子1110においては、磁歪部1111が外側、応力制御部1112が内側)に配置されている。デバイス1100はさらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘1140およびバイアス磁場を印加するための磁石1150を有する。さらに、デバイスには、検出用コイル1160内の磁歪素子1110の振動を生じやすくするために、フレーム1130のU字部に支柱1180が設けられている。デバイスは、固定部1170で振動源の上に固定することができる。
【0061】
図12および図13は、それぞれ、1つのU字部と1つのL字部とを有する形状のフレーム全体が、磁歪素子と一体構成である磁歪発電デバイス1200および1300の模式図である。磁歪発電デバイス1200においては、磁歪素子1210は磁歪部1211と応力制御部1212とを有し、その周りに検出用コイル1260が装填されている。このデバイスにおいては、フレーム1230を構成する積層体1220の電磁鋼板1221が外側、弾性材料1222が内側(磁歪素子1210においては、磁歪部1211が外側、応力制御部1212が内側)に配置されている。デバイス1200はさらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘1240およびバイアス磁場を印加するための磁石1250を有し、磁石1250はL字形状に曲げた部分の先の先端部分の内側(弾性材料1222側)に固定されている。さらにデバイスは、固定部1270で振動源の上に固定することができる。
【0062】
磁歪発電デバイス1300は、支柱1380が設けられていること以外は、図12の磁歪発電デバイス1200と実質的に同じ構造である。具体的には、磁歪素子1310は磁歪部1311と応力制御部1312とを有し、その周りに検出用コイル1360が装填されている。このデバイスにおいては、フレーム1330を構成する積層体1320の電磁鋼板1321が外側、弾性材料1322が内側(磁歪素子1310においては、磁歪部1311が外側、応力制御部1312が内側)に配置されている。デバイス1300はさらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘1340およびバイアス磁場を印加するための磁石1350を有し、磁石1350はL字形状に曲げた部分の先の先端部分の内側(弾性材料1322側)に固定されている。さらにデバイスには、検出用コイル1360内の磁歪素子1310の振動を生じやすくするために、フレーム1330のU字部に支柱1380が設けられている。デバイスは、固定部1370で振動源の上に固定することができる。
【0063】
図14および図15は、それぞれ、1つのU字部と1つのL字部とを有する形状のフレームが、磁歪素子と一体構成であり、且つ磁石を固定する部分に弾性材料が存在しない磁歪発電デバイス1400および1500の模式図である。磁歪発電デバイス1400においては、磁歪素子1410は磁歪部1411と応力制御部1412とを有し、その周りに検出用コイル1460が装填されている。このデバイスにおいては、フレーム1430を構成する積層体1420の電磁鋼板1421が外側、弾性材料1422が内側(磁歪素子1410においては、磁歪部1411が外側、応力制御部1412が内側)に配置されている。デバイス1400はさらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘1440およびバイアス磁場を印加するための磁石1450を有し、磁石1450はL字形状に曲げた部分の先の先端部分の電磁鋼板1421の内側に固定されている。デバイス1400では、磁石と電磁鋼板との間に弾性材料が無く、磁気的なギャップの影響が小さくなるため、サイズの小さな磁石を使用することが可能となる。さらにデバイスは、固定部1470で振動源の上に固定することができる。
【0064】
磁歪発電デバイス1500は、支柱1580が設けられていること以外は、図14の磁歪発電デバイス1400と実質的に同じ構造である。具体的には、磁歪素子1510は磁歪部1511と応力制御部1512とを有し、その周りに検出用コイル1560が装填されている。このデバイスにおいては、フレーム1530を構成する積層体1520の電磁鋼板1521が外側、弾性材料1522が内側(磁歪素子1510においては、磁歪部1511が外側、応力制御部1512が内側)に配置されている。デバイス1500はさらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘1540およびバイアス磁場を印加するための磁石1550を有し、磁石1550はL字形状に曲げた部分の先の先端部分の電磁鋼板1521の内側に固定されている。デバイス1500では、磁石と電磁鋼板との間に弾性材料が無く、磁気的なギャップの影響が小さくなるため、サイズの小さな磁石を使用することが可能となる。さらにデバイスには、検出用コイル1560内の磁歪素子1510の振動を生じやすくするために、フレーム1530のU字部に支柱1580が設けられている。デバイスは、固定部1570で振動源の上に固定することができる。
【0065】
図16および図17は、それぞれ、1つのU字部と2つのL字部とを有する形状のフレーム全体が、磁歪素子と一体構成である磁歪発電デバイス1600および1700の模式図である。磁歪発電デバイス1600においては、磁歪素子1610は磁歪部1611と応力制御部1612とを有し、その周りに検出用コイル1660が装填されている。このデバイスにおいては、フレーム1630を構成する積層体1620の電磁鋼板1621が外側、弾性材料1622が内側(磁歪素子1610においては、磁歪部1611が外側、応力制御部1612が内側)に配置されている。デバイス1600はさらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘1640およびバイアス磁場を印加するための磁石1650を有し、磁石1650は、末端に近いL字形状の上側の弾性材料1622に固定されている。デバイス1600では、磁石1650と磁歪部1611とを近づけて、磁気的なギャップを狭くすることができるため、サイズの小さな磁石を使用することが可能となる。さらにデバイスは、固定部1670で振動源の上に固定することができる。
【0066】
磁歪発電デバイス1700は、支柱1780が設けられていること以外は、図16の磁歪発電デバイス1600と実質的に同じ構造である。具体的には、磁歪素子1710は磁歪部1711と応力制御部1712とを有し、その周りに検出用コイル1760が装填されている。このデバイスにおいては、フレーム1730を構成する積層体1720の電磁鋼板1721が外側、弾性材料1722が内側(磁歪素子1710においては、磁歪部1711が外側、応力制御部1712が内側)に配置されている。デバイス1700はさらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘1740およびバイアス磁場を印加するための磁石1750を有し、磁石1750は、末端に近いL字形状の上側の弾性材料1722に固定されている。デバイス1700では、磁石1750と磁歪部1711とを近づけて、磁気的なギャップを狭くすることができるため、サイズの小さな磁石を使用することが可能となる。さらにデバイスには、検出用コイル1760内の磁歪素子1710の振動を生じやすくするために、フレーム1730のU字部に支柱1780が設けられている。デバイスは、固定部1770で振動源の上に固定することができる。
【0067】
図18および図19は、それぞれ、1つのU字部と2つのL字部とを有する形状のフレームが、磁歪素子と一体構成であり、且つ磁石を固定する部分に弾性材料が存在しない磁歪発電デバイス1800および1900の模式図である。磁歪発電デバイス1800においては、磁歪素子1810は磁歪部1811と応力制御部1812とを有し、その周りに検出用コイル1860が装填されている。このデバイスにおいては、フレーム1830を構成する積層体1820の電磁鋼板1821が外側、弾性材料1822が内側(磁歪素子1810においては、磁歪部1811が外側、応力制御部1812が内側)に配置されている。デバイス1800はさらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘1840およびバイアス磁場を印加するための磁石1850を有し、磁石1850は、末端に近いL字形状の上側の電磁鋼板1821の上に固定されている。デバイス1800では、磁石1850と磁歪部1811との距離が近く、さらに磁石と電磁鋼板との間に弾性材料が無いことから、磁気的なギャップの影響がさらに小さくなるため、サイズのより小さな磁石を使用することが可能となる。さらにデバイスは、固定部1870で振動源の上に固定することができる。
【0068】
磁歪発電デバイス1900は、支柱1980が設けられていること以外は、図18の磁歪発電デバイス1800と実質的に同じ構造である。具体的には、磁歪素子1910は磁歪部1911と応力制御部1912とを有し、その周りに検出用コイル1960が装填されている。このデバイスにおいては、フレーム1930を構成する積層体1920の電磁鋼板1921が外側、弾性材料1922が内側(磁歪素子1910においては、磁歪部1911が外側、応力制御部1912が内側)に配置されている。デバイス1900はさらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘1940およびバイアス磁場を印加するための磁石1950を有し、磁石1950は、末端に近いL字形状の上側の電磁鋼板1921の上に固定されている。デバイス1900では、磁石1950と磁歪部1911との距離が近く、さらに磁石と電磁鋼板との間に弾性材料が無いことから、磁気的なギャップの影響がさらに小さくなるため、サイズのより小さな磁石を使用することが可能となる。さらにデバイスには、検出用コイル1960内の磁歪素子1910の振動を生じやすくするために、フレーム1930のU字部に支柱1980が設けられている。デバイスは、固定部1970で振動源の上に固定することができる。
【0069】
以下、実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
【実施例
【0070】
(評価方法)
実施例および比較例においては、作製した磁歪発電デバイスの検出用コイルに誘起される交流電圧をデジタルオシロスコープで取り込み、電圧を測定した。測定した電圧波形のピーク電圧によって、磁歪発電デバイスの性能を評価した。
【0071】
(実施例1)
実施例1において、方向性電磁鋼板及び無方向性電磁鋼板をそれぞれ電磁鋼板121(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるCFRPを弾性材料122として用いて、図1に示した構造を有する磁歪発電デバイス100を作製した。
【0072】
方向性電磁鋼板として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}[100]GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を[100]方向とし、長さ140mm、幅6mmにシャーリング切断した。それを図1に示したようなU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部170に相当する長さは約80mm、上側の検出用コイル160、錘140をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、方向性電磁鋼板をU字型に曲げた後、歪みを除去するために、800℃、2時間、真空中で焼鈍した。
【0073】
無方向性電磁鋼板として、日本製鉄(株)の無方向性電磁鋼板35H210、被膜付き、を使用した。厚みは0.35mmだった。無方向性電磁鋼板を長さ140mm、幅6mmにシャーリング切断した。それを図1に示したようにU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部120に相当する長さは約80mm、上側の検出用コイル160、錘140をつける部位の長さは約40mmである。
尚、無方向性電磁鋼板をU字型に曲げた後、歪を除去するために740℃、2時間、真空中で焼鈍した。
【0074】
弾性材料122としては、非磁性材料であるCFRP、厚み0.5mm、幅6mmを用いた。カーボン繊維の方向を長手方向として、U字型の電磁鋼板と一体化できるように長さを140mmよりも少し長めに切断し、熱プレスでU字形状に整えた。
【0075】
U字型に曲げた方向性または無方向性の電磁鋼板121と、U字型に曲げたCFRP(弾性材料122)とをエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて積層体120とし、磁歪素子110に相当する磁歪素子部とフレーム130全体(即ち、100%)との一体構成体を得た。得られた一体構成体の磁歪素子に対応する部位に5000ターンの検出用コイル160を装填してた。コイルの長さは15mmだった。次に、7gのタングステンの錘140を磁歪素子110のとなりに接着固定した。さらにU字形状の下側の固定部170の電磁鋼板121側にNdFeB磁石150を貼り付けて、フレーム130の全体が磁歪素子110と一体構成である磁歪発電デバイス100を得た。
【0076】
得られた磁歪発電デバイスのU字形状の下側の固定部170を接着剤で加振機の上に固定した。次に、バイアス磁場をNdFeB磁石150によって印加した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えてピーク電圧が最大になった時の磁石を使った。磁歪素子に印加される磁場の強さは、方向性電磁鋼板では約2800A/m(350e)、無方向性電磁鋼板では約3200A/m(400e)と推定した。加振機を0.5Gで加振させて、共振周波数におけるピーク電圧をオシロスコープで測定した。
【0077】
磁歪材料として方向性電磁鋼板を使用したデバイスの共振周波数は215Hz、無方向性電磁鋼板を使用したデバイスの共振周波数は227Hzであった。ピーク電圧は表1に示した。
【0078】
【表1】
【0079】
表1の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
【0080】
(実施例2)
実施例2において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板221(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるCFRPを弾性材料222として用いて、図2に示した構造を有する磁歪発電デバイス200を作製した。
【0081】
磁歪素子210に相当する磁歪素子部について、弾性材料であるCFRPの厚みを0.3mmと薄くし、磁歪素子部以外のCFRPの厚みを0.5mmとする以外は、実施例1と同様に磁歪発電デバイスを組み立て、フレーム230の全体(即ち、100%)が磁歪素子210と一体構成である磁歪発電デバイス200を得た。本デバイスにおいては、応力制御部212の厚みを薄くすることで、磁歪素子部の振動をより生じ易くした。
【0082】
実施例1と同様に磁歪発電デバイス200を評価したところ、共振周波数は155Hzであった。ピーク電圧は表2に示した。
【0083】
【表2】
【0084】
表2の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。また、実施例1と比べて応力制御部212の厚みを薄くした分、共振周波数は低下したが、磁歪素子部の振幅が大きくなって発生電圧のピーク値は向上した。
【0085】
(実施例3)
実施例3において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板321(磁歪材料)として用い、磁性材料であるSUS304を弾性材料322として用いて、図3に示した構造を有する磁歪発電デバイス300を作製した。
【0086】
電磁鋼板321として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}[100]GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を[100]方向とし、長さ100mm、幅6mmにシャーリング切断した。それを図3に示したようにU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部370に相当する長さは約40mm、上側の検出用コイル360、錘340をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、方向性電磁鋼板をU字型に曲げた後、歪を除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍した。
【0087】
弾性材料322として、非磁性材料であるSUS304、厚み0.5mm、幅6mmを用いた。U字型の電磁鋼板と一体化できるように長さを140mmよりも少し長めに切断し、U字形状に成型して形状を整えた。
尚、U字状に成型したSUS304を真空中で1050℃、1分間保持後をガス急冷よる溶体化処理を行って、切断歪による影響を取り除いた。
【0088】
U字型に曲げた方向性電磁鋼板321と、U字型に曲げたSUS304(弾性材料322)をエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて積層体320とし、フレームの一部(100mm/140mm=約71%)が上記積層体で構成され、磁歪素子310の応力制御部312から延びた弾性材料322とフレーム330の全体とが一体構成である、一体構成体を得た。得られた一体構成体を使用し、実施例1と同様に磁歪発電デバイス300を作製した。
【0089】
実施例1と同様に磁歪発電デバイス300を評価したところ、共振周波数は98Hzであった。ピーク電圧は表3に示した。
【0090】
【表3】
【0091】
表3の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した
【0092】
(実施例4)
実施例4において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板421(磁歪材料)として用い、磁性材料であるSS400を弾性材料422として用いて、図4に示した構造を有する磁歪発電デバイス400を作製した。
【0093】
電磁鋼板421としては、実施例3と同じ方向性電磁鋼板を使用し、U字形状に整えた。
【0094】
弾性材料422としては、磁性材料であるSS400、厚み0.5mm、幅6mmを用いた。U字型の電磁鋼板と一体化できるように長さを140mmよりも少し長めに切断し、U字形状に成型して形状を整えた。
尚、U字状に成型したSS400を真空中で800℃、30分保持後炉冷して、切断歪による影響を取り除いた。
【0095】
U字型に曲げた方向性電磁鋼板とU字型に曲げたSS400をエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて積層体420とし、フレームの一部(100mm/140mm=約71%)が上記積層体で構成され、磁歪素子410の応力制御部412から延びた弾性材料422とフレーム430の全体とが一体構成である、一体構成体を得た。得られた一体構成体を使用し、実施例1と同様に磁歪発電デバイス400を作製した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えてピーク電圧が最大になった時の磁石を使った。磁歪素子に印加される磁場の強さは約4000A/m(500e)と推定した。
【0096】
実施例1と同様に磁歪発電デバイス400を評価したところ、共振周波数は104Hzであった。ピーク電圧は表4に示した。
【0097】
【表4】
【0098】
表4の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。ただし、応力制御部412を形成する弾性材料が磁性材料(SS400)であるこのデバイスでは、バイアス磁場が応力制御部412にも流れる。そのため、実施例3よりも大きくて強い磁石を使用したが、応力制御部312を形成する弾性材料322が非磁性材料である実施例3と比べて、バイアス磁場の調整が容易ではなく、結果的に実施例3と比べてピーク電圧は若干低下した。
【0099】
(実施例5)
実施例5において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板521(磁歪材料)として用い、磁性材料であるSUS304を弾性材料522として用いて、図5に示した構造を有する磁歪発電デバイス500を作製した。
【0100】
電磁鋼板の長さを70mmにし、磁石を発電用磁歪素子510の両側に配置したこと以外は、実施例3と同様に磁歪発電デバイス500を作製した。作製したデバイスのフレームの一部(70mm/140mm=50%)が積層体で構成され、フレームの残りの部分は、磁歪素子510の応力制御部512から延びた弾性材料522と一体構成であった。尚、磁石を2つ使用し、磁歪素子内で磁場が打ち消し合わないように、二つの磁石の極性が反対となるように貼り付けた。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えてピーク電圧が最大になった時の磁石を使った。磁歪素子に印加される磁場の強さは約2800A/m(350e)と推定した。
【0101】
実施例1と同様に磁歪発電デバイス500を評価したところ、共振周波数は108Hzであった。ピーク電圧は表5に示した。
【0102】
【表5】
【0103】
表5の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
【0104】
(実施例6)
実施例1において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板621(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるCFRPを弾性材料622として用いて、図6に示した構造を有する磁歪発電デバイス600を作製した。
【0105】
実施例1と同じ方向性電磁鋼板およびCFRPをそれぞれ長さ80mmに切断し、U字型には曲げずに板状のまま、エポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて積層体620とし、磁歪素子610に相当する磁歪素子部とフレーム630の全体(即ち、100%)との一体構成体を得た。得られた一体構成体を使用し、実施例1と同様に磁歪発電デバイス600を作製した。
【0106】
実施例1と同様に磁歪発電デバイス600を評価したところ、共振周波数は248Hzであった。ピーク電圧は表6に示した。
【0107】
【表6】
【0108】
表6の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
【0109】
(実施例7)
実施例7において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板721(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるCFRPを弾性材料722として用いて、図7に示した構造を有する磁歪発電デバイス700を作製した。
【0110】
方向性電磁鋼板として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}[100]GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を[100]方向とし、長さ140mm、幅6mmにシャーリング切断した。それを図7に示したようなU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部770に相当する長さは約80mm、上側の検出用コイル760、錘740をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、方向性電磁鋼板をU字型に曲げた後、歪みを除去するために、800℃、2時間、真空中で焼鈍した。
【0111】
弾性材料722としては、非磁性材料であるCFRP、厚み0.3mm、幅6mmを用いた。カーボン繊維の方向を長手方向として、長さ40mmに切断した。
【0112】
図7に示すように、切断したCFRPをU字型に曲げた方向性電磁鋼板にエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り付けて積層体720とし、フレーム730の一部(40mm/140mm=約29%)が上記積層体で構成され、磁歪素子710の磁歪部711から延びた電磁鋼板とフレーム730の全体とが一体構成である、一体構成体を得た。さらにSUS304のブロックを支柱780として方向性電磁鋼板にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けた。得られた構造体を使用し、実施例1と同様に磁歪発電デバイス700を作製した。
【0113】
実施例1と同様に磁歪発電デバイス700を評価したところ、共振周波数は165Hzであった。ピーク電圧は表7に示した。
【0114】
【表7】
【0115】
表7の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。さらに振動が生じやすいため、類似した構成である実施例1のデバイスよりもピーク電圧が向上した。
【0116】
(実施例8)
磁石を2つの磁石850に変更する以外は実施例7と同様に、磁歪発電デバイス800を作製した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えてピーク電圧が最大になった時の磁石を使った。磁歪素子に印加される磁場の強さは約2800A/m(350e)と推定した。
【0117】
実施例1と同様に磁歪発電デバイス800を評価したところ、共振周波数は157Hzであった。ピーク電圧は表8に示した。
【0118】
【表8】
【0119】
表8の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
【0120】
(比較例1)
比較例1において、方向性電磁鋼板を磁歪部911として用い、磁性材料であるSS400を弾性材料922として用いて、図9に示した構造を有する磁歪発電デバイス900を作製した。
【0121】
方向性電磁鋼板として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}[100]GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板を長さ20mm、幅6mmにシャーリング切断し、さらに、歪を除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍して、磁歪部911とした。
【0122】
弾性材料922として、幅6mm、長さ140mmのSS400を用いた。厚みは、上記磁歪部911を貼り付ける部分(応力制御部912に相当する部分)を0.5mmとし、それ以外の部位を0.8mmとした。それを図9に示したようなU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部970に相当する長さは約80mm、上側の検出用コイル960、錘940をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、U字状に成型したSS400を真空中で800℃、30分保持後炉冷して、切断歪による影響を取り除いた。
【0123】
U字型に曲げた弾性材料の応力制御部912に相当する部分に、磁歪部911をエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて磁歪素子910に相当する部分を形成し、磁歪素子910の応力制御部912から延びた弾性材料922とフレーム930の全体とが一体構成である一体構成体を得た。この一体構成体においてフレームは、磁歪部から延びた電磁鋼板と応力制御部から延びた弾性材料とを含む積層体で構成された部分を有していない。得られた一体構成体を使用し、実施例1と同様に磁歪発電デバイス900を作製した。磁歪発電デバイス900は、さらに磁歪部に曲げ歪みを与えるための錘940およびバイアス磁場を印加するための磁石950を有し、固定部970で加振機の上に固定することができた。
【0124】
実施例1と同様に磁歪発電デバイス900を評価したところ、共振周波数は118Hzであった。ピーク電圧は表9に示した。
【0125】
【表9】
【0126】
表9の結果から明らかなように、比較例のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示したものの、バイアス磁場が弾性材料であるSS400にも流れた。また、フレームに磁歪部から延びた前記電磁鋼板と、応力制御部から延びた弾性材料とを含む積層体で構成された部分が存在しないため、磁歪部の両端を応力制御部に密着させることが容易ではなかった。そのため、磁気的なギャップが生じてしまい、磁石によるバイアス磁場の調整が容易ではなく、類似した構成である実施例4のデバイスよりもピーク電圧が低かった。
【0127】
(実施例10および比較例2)
実施例1~8および比較例1で作成したデバイスのそれぞれに対して、加振機を用いて連続的に振動を与えた。
【0128】
その結果、フレームの少なくとも一部が、磁歪部から延びた電磁鋼板と、応力制御部から延びた弾性材料とを含む積層体で構成されている実施例1~8のデバイスは、いずれも、24時間経過した後でも問題なく動作していた。一方、接合部が磁歪素子中に存在する比較例1デバイスは、振動開始から約3時間後には磁歪部と弾性材料の剥離が生じた。これは、振動によって連続的な歪が磁歪素子に加えられ、接合部に応力集中が起こり、剥離が生じたと考えられる。
【0129】
(実施例11)
実施例11において、方向性電磁鋼板または無方向性電磁鋼板を電磁鋼板1021(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるCFRPを弾性材料1022として用いて、図10に示した構造を有する磁歪発電デバイス1000を作製した。
【0130】
方向性電磁鋼板として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}[100]GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を[100]方向とし、長さ140mm、幅6mmにシャーリング切断した。それを図10に示したようにU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部1070に相当する長さは約80mm、上側の検出コイル1060、錘1040をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、方向性電磁鋼板をU字型に曲げた後、歪を除去するために、800℃、2時間、真空中で焼鈍した。
【0131】
無方向性電磁鋼板として、日本製鉄(株)の無方向性電磁鋼板35H210、被膜付き、を使用した。厚みは0.35mmである。無方向性電磁鋼板を長さ140mm、幅6mmにシャーリング切断した。それを図10に示したようにU字型に曲げて形状を整えた。下側の固定部1070に相当する長さは約80mm、上側の検出コイル1060、錘1040をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、無方向性電磁鋼板をU字型に曲げた後、歪を除去するために、740℃、2時間、真空中で焼鈍した。
【0132】
弾性材料1022としては、非磁性材料であるCFRP、厚み0.5mm、幅6mmを用いた。カーボン繊維の方向を長手方向として、U字型の電磁鋼板と一体化できるように長さを140mmよりも少し短めに切断し、熱プレスでU字形状に整えた。
【0133】
U字型に曲げた方向性または無方向性の電磁鋼板1021と、U字型に曲げたCFRP(弾性材料1022)とをエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて積層体1020とし、磁歪素子1010に相当する磁歪素子部とフレーム1030全体(即ち、100%)との一体構成体を得た。得られた一体構成体の磁歪素子に対応する部位に5000ターンの検出用コイル1060を装填した。コイルの長さは15mmだった。次に7gのタングステンの錘1040を磁歪素子1010のとなりに接着固定した。さらにU字形状の下側固定部1070の弾性材料1022側にNdFeB磁石1050を貼り付けて、フレーム1030の全体が磁歪素子1010と一体構成である磁歪発電デバイス1000を得た。
【0134】
得られた磁歪発電デバイスのU字形状の下側の固定部1070を接着剤で加振機の上に固定した。次に、バイアス磁場をNdFeB磁石1050によって印加した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えて電圧を測定し、比較的発生電圧が大きくなる磁石を用いた。磁歪素子に印加される磁場の強さは、方向性電磁鋼板では約2800A/m(350e)、無方向性電磁鋼板では3200A/m(400e)と推定した。加振機を0.5Gで加振させて共振周波数におけるピーク電圧をオシロスコープで測定した。
【0135】
磁歪材料として方向性電磁鋼板を使用したデバイスの共振周波数は226Hz、無方向性電磁鋼板を使用したデバイスの共振周波数は239Hzであった。ピーク電圧は表10に示した。
【0136】
【表10】
【0137】
表10の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
【0138】
(実施例12)
実施例12において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1121(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるCFRPを弾性材料1122として用い、SUS304のブロックを支柱1180として設けた、図11に示した構造を有する磁歪発電デバイス1100を作製した。
【0139】
図11のデバイスは、実施例11と実質的に同様に作製したが、但し、フレーム1130を形成した後に、SUS304のブロックを支柱1180として、弾性材料1122(CFRP)にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けた。
【0140】
実施例11と同様に磁歪発電デバイス1100を評価したところ、共振周波数は384Hzであった。ピーク電圧は表11に示した。
【0141】
【表11】
【0142】
表11の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。本実施例においては、SUS304のブロックを支柱としてCFRPにエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けたため、振動させる積層体の長さが短くなって、共振周波数を図10のデバイスの226Hzから384Hzに大きくすることができた。さらに共振周波数が大きくなって振幅が小さくなったため、発生電圧のピーク値は表10の方向性電磁鋼板の829mVに比べて746mVと小さくなったが、500mV以上の発電性能を示した。
【0143】
また、デバイス1100では、支柱の右側の積層体が振動するため、この支柱を貼り付ける位置によって振動させる積層体の長さの調整が可能であり、共振周波数を調整することも可能である。
【0144】
(実施例13)
実施例13において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1221(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるSUS304を弾性材料1222として用いて、図12に示した構造を有する磁歪発電デバイス1200を作製した。
【0145】
方向性電磁鋼板として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}[100]GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を[100]方向とし、長さ130mm、幅6mmにシャーリング切断した。それを図12に示したようにU字部とL部を有する型に曲げて形状を整えた。下側の固定部1270に相当する長さは約40mm、上側の検出コイル1260、錘1240をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、U字部とL部を有する形状に曲げた後、歪を除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍した。
【0146】
弾性材料1222としては、非磁性材料であるSUS304、厚み0.5mm、幅6mmを用いた。U字部とL部を有する電磁鋼板と一体化できるように長さを130mmよりも少し短めに切断し、U字部とL部を有する形状に成型して形状を整えた。
U字部とL部を有する形状に成型したSUS304を真空中で1050℃、1分間保持後、ガス急冷よる溶体化処理を行って、切断歪による影響を取り除いた。
【0147】
成形した方向性電磁鋼板とSUS304をエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて積層体1220とし、磁歪素子1210に相当する磁歪素子部とフレーム1230全体(即ち、100%)との一体構成体を得た。得られた一体構成体の磁歪素子に対応する部位に5000ターンの検出コイルを装填した。コイル長さは15mmだった。次に7gのタングステンの錘1240を磁歪素子1210のとなりに接着固定した。さらに得られた磁歪発電デバイスのL字形状に曲げた部分の先の先端部分の内側(弾性材料1222側)にNdFeB磁石1250を貼り付けて、フレーム1230全体が磁歪素子1210と一体構成である磁歪発電デバイス1200を得た。
【0148】
得られた磁歪発電デバイスのU字形状の下側の固定部1270を接着剤で加振機の上に固定した。次に、バイアス磁場をNdFeB磁石1250によって印加した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えて電圧を測定し、比較的発生電圧が大きくなる磁石を用いた。磁歪素子に印加される磁場の強さは、方向性電磁鋼板では約2800A/m(350e)と推定した。加振機を0.5Gで加振させて共振周波数におけるピーク電圧をオシロスコープで測定した。
【0149】
磁歪材料として方向性電磁鋼板を使用したデバイスの共振周波数は104Hzであった。ピーク電圧は表12に示した。
【0150】
【表12】
【0151】
表12の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
【0152】
(実施例14)
実施例14において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1321(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるSUS304を弾性材料1322として用い、SUS304のブロックを支柱1380として設けた、図13に示した構造を有する磁歪発電デバイス1300を作製した。
【0153】
図13のデバイスは、実施例13と実質的に同様に作製したが、但し、フレーム1330を形成した後に、SUS304のブロックを支柱1380として弾性材料1322(SUS304)にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けた。
【0154】
実施例13と同様に磁歪発電デバイス1300を評価したところ、共振周波数は177Hzであった。ピーク電圧は表13に示した。
【0155】
【表13】
【0156】
表13の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。本実施例においては、SUS304のブロックを支柱として弾性材料(SUS304)にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けたため、振動させる積層体の長さが短くなって、共振周波数を図12のデバイスの104Hzから177Hzに大きくすることができた。共振周波数が大きくなって振幅が小さくなったため、発生電圧のピーク値は表12の987mVに比べて886mVと小さくなったが、500mV以上の発電性能を示した。
【0157】
また、デバイス1300では、支柱の右側の積層体が振動するため、この支柱を貼り付ける位置によって振動させる積層体の長さの調整が可能であり、共振周波数を調整することも可能である。
【0158】
(実施例15)
実施例15において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1421(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるSUS304を弾性材料1422として用いて、図14に示した構造を有する磁歪発電デバイス1400を作製した。
【0159】
図14のデバイスは、実施例12と実質的に同様に作製したが、但し、フレーム1430を形成する際に、NdFeB磁石1450を設置する部位に弾性材料1422がない状態とするために、方向性電磁鋼板と張り合わせるSUS304の長さを短くした。さらにNdFeB磁石1450を方向性電磁鋼板1421に直接貼り付けた。
【0160】
得られた磁歪発電デバイスのU字形状の下側の固定部1470を接着剤で加振機の上に固定した。次に、バイアス磁場をNdFeB磁石1450によって印加した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えて電圧を測定し、比較的発生電圧が大きくなる磁石を用いた。磁歪素子に印加される磁場の強さは、方向性電磁鋼板では約2800A/m(350e)と推定した。加振機を0.5Gで加振させて共振周波数におけるピーク電圧をオシロスコープで測定した。
【0161】
磁歪材料として方向性電磁鋼板を使用したデバイスの共振周波数は101Hzであった。ピーク電圧は表14に示した。
【0162】
【表14】
【0163】
表14の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
【0164】
また、デバイス1400は、実施例13のデバイス1200に比べて、磁石と方向性電磁鋼板との間に弾性材料(非磁性材料であるSUS304)が無いため、磁気的なギャップの影響が小さくなる。そのため、デバイス1200で使用したNdFeB磁石に比べてサイズの小さな磁石を使用することができた。
【0165】
(実施例16)
実施例16において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1521(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるSUS304を弾性材料1522として用い、SUS304のブロックを支柱1580として設けた、図15に示した構造を有する磁歪発電デバイス1500を作製した。
【0166】
図15のデバイスは、実施例15と実質的に同様に作製したが、但し、フレーム1530を形成した後に、SUS304のブロックを支柱1580として弾性材料1522(SUS304)にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けた。
【0167】
実施例15と同様に磁歪発電デバイス1500を評価したところ、共振周波数は172Hzであった。ピーク電圧は表15に示した。
【0168】
【表15】
【0169】
表15の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。本実施例においては、SUS304のブロックを支柱として弾性材料(SUS304)にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けたため、振動させる積層体の長さが短くなって、共振周波数を図14のデバイス1400の101Hzから172Hzに大きくすることができた。共振周波数が大きくなって振幅が小さくなったため、発生電圧のピーク値は表14の989mVに比べて890mVと小さくなったが、500mV以上の発電性能を示した。
【0170】
また、デバイス1500では、支柱の右側の積層体が振動するため、この支柱を貼り付ける位置によって振動させる積層体の長さの調整が可能であり、共振周波数を調整することも可能である。
【0171】
(実施例17)
実施例17において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1621(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるSUS304を弾性材料1622として用いて、図16に示した構造を有する磁歪発電デバイス1600を作製した。
【0172】
方向性電磁鋼板として、日本製鉄(株)の方向性電磁鋼板27ZH100、被膜付き、を使用した。厚みは0.27mmであり、結晶方位は{110}[100]GOSS集合組織である。方向性電磁鋼板の長手方向を[100]方向としで、長さ110mm、幅6mmにシャーリング切断した。それを図16に示したようにU字部と二つのL部を有する型に曲げて形状を整えた。下側の固定部1670に相当する長さは約35mm、上側の検出コイル1660、錘1640をつける部位の長さは約40mmとした。
尚、U字部と二つのL部を有する形状に曲げた後、歪を除去するために800℃、2時間、真空中で焼鈍した。
【0173】
弾性材料1622としては、非磁性材料であるSUS304、厚み0.5mm、幅6mmを用いた。U字部と二つのL部を有する電磁鋼板と一体化できるように長さを110mmよりも少し短めに切断し、U字部と二つのL部を有する形状に成型して形状を整えた。
U字部と二つのL部を有する形状に成型したSUS304を真空中で1050℃、1分間保持後、ガス急冷よる溶体化処理を行って、切断歪による影響を取り除いた。
【0174】
成形した方向性電磁鋼板とSUS304をエポキシ系の接着剤を用いて室温で貼り合わせて積層体1620とし、磁歪素子1610に相当する磁歪素子部とフレーム1630全体(即ち、100%)との一体構成体を得た。得られた一体構成体の磁歪素子に対応する部位に5000ターンの検出コイルを装填した。コイル長さは15mmだった。次に7gのタングステンの錘1640を磁歪素子1610のとなりに接着固定した。さらに末端に近いL字形状の上側の弾性材料1622側にNdFeB磁石1650を貼り付けて、フレーム1630全体が磁歪素子1610と一体構成である磁歪発電デバイス1600を得た。
【0175】
得られた磁歪発電デバイスのU字形状の下側の固定部1670を接着剤で加振機の上に固定した。次に、バイアス磁場をNdFeB磁石1250によって印加した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えて電圧を測定し、比較的発生電圧が大きくなる磁石を用いた。磁歪素子に印加される磁場の強さは、方向性電磁鋼板では約2800A/m(350e)と推定した。加振機を0.5Gで加振させて共振周波数におけるピーク電圧をオシロスコープで測定した。
【0176】
磁歪材料として方向性電磁鋼板を使用したデバイスの共振周波数は105Hzあった。ピーク電圧は表16に示した。
【0177】
【表16】
【0178】
表16の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
また、デバイス1600は、実施例11のデバイス1000に比べて、磁石と磁歪素子部とを近づけることができるため、磁気的なギャップが狭くなり、デバイス1000で使用したNdFeB磁石に比べてサイズの小さな磁石を使用することができた。
【0179】
(実施例18)
実施例18において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1721(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるSUS304を弾性材料1722として用い、SUS304のブロックを支柱1780として設けた、図17に示した構造を有する磁歪発電デバイス1700を作製した。
【0180】
図17のデバイスは、実施例17と実質的に同様に作製したが、但し、フレーム1730を形成した後に、SUS304のブロックを支柱1780として、弾性材料1722(SUS304)にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けた。
【0181】
実施例17と同様に磁歪発電デバイス1700を評価したところ、共振周波数は173Hzであった。ピーク電圧は表17に示した。
【0182】
【表17】
【0183】
表17の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。本実施例においては、SUS304のブロックを支柱としてSUS304にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けたため、振動させる積層体の長さが短くなって、共振周波数を図16のデバイス1600の105Hzから173Hzに大きくすることができた。さらに共振周波数が大きくなって振幅が小さくなったため、発生電圧のピーク値は表16の985mVに比べて892mVと小さくなったが、500mV以上の発電性能を示した。
【0184】
(実施例19)
実施例19において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1821(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるSUS304を弾性材料1822として用いて、図18に示した構造を有する磁歪発電デバイス1800を作製した。
【0185】
図18のデバイスは、実施例16と実質的に同様に作製したが、但し、フレーム1830を形成する際に、NdFeB磁石1850を設置する部位に弾性材料1822がない状態とするために、方向性電磁鋼板と張り合わせるSUS304の長さを短くした。さらにNdFeB磁石1850を方向性電磁鋼板1821に直接貼り付けた。
【0186】
得られた磁歪発電デバイスのU字形状の下側の固定部1870を接着剤で加振機の上に固定した。次に、バイアス磁場をNdFeB磁石1850によって印加した。尚、磁石の強さ(大きさ)を変えて電圧を測定し、比較的発生電圧が大きくなる磁石を用いた。磁歪素子に印加される磁場の強さは、方向性電磁鋼板では約2800A/m(350e)と推定した。加振機を0.5Gで加振させて共振周波数におけるピーク電圧をオシロスコープで測定した。
【0187】
磁歪材料として方向性電磁鋼板を使用したデバイスの共振周波数は103Hzであった。ピーク電圧は表18に示した。
【0188】
【表18】
【0189】
表18の結果から明らかなように、本発明の磁歪素子を用いたデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。
【0190】
また、デバイス1800は、実施例17のデバイス1600に比べて、磁石と方向性電磁鋼板との間に弾性材料(非磁性材料であるSUS304)が無いため、磁気的なギャップの影響が小さくなる。そのため、デバイス1600で使用したNdFeB磁石に比べてサイズの小さな磁石を使用することができた。
【0191】
(実施例20)
実施例20において、方向性電磁鋼板を電磁鋼板1921(磁歪材料)として用い、非磁性材料であるSUS304を弾性材料1922として用い、SUS304のブロックを支柱1980として設けた、図19に示した構造を有する磁歪発電デバイス1900を作製した。
【0192】
図19のデバイスは、実施例19と実質的に同様に作製したが、但し、フレーム1930を形成した後に、SUS304のブロックを支柱1980として弾性材料1922(SUS304)にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けた。
【0193】
実施例19と同様に磁歪発電デバイス1900を評価したところ、共振周波数は169Hzであった。ピーク電圧は表19に示した。
【0194】
【表19】
【0195】
表19の結果から明らかなように、本発明のデバイスは、外部振動に対して、500mV以上の発電性能を示した。本実施例においては、SUS304のブロックを支柱としてSUS304にエポキシ系の接着剤を用いて貼り付けたため、振動させる積層体の長さが短くなって、共振周波数を図18のデバイス1800の103Hzから169Hzに大きくすることができた。共振周波数が大きくなって振幅が小さくなったため発生電圧のピーク値は表18の992mVに比べて897mVと小さくなったが500mV以上の発電性能を示した。
【0196】
(実施例21)
実施例11~実施例20で作製したデバイスのそれぞれに対して、加振機を用いて連続的に振動を与えた。
【0197】
その結果、フレームの少なくとも一部が、磁歪部から延びた電磁鋼板と、応力制御部から延びた弾性材料とを含む積層体で構成されている実施例11~20のデバイスは、いずれも、24時間経過した後でも問題なく動作していた。
【産業上の利用可能性】
【0198】
本発明によって、低コスト且つ耐久性に優れ、従来の磁歪発電デバイスと同等またはそれらを超える発電量を達成しうる、性能の安定な磁歪発電デバイスが提供される。本発明の発電用磁歪素子は、従来の磁歪素子よりも低コストでありながら、従来と同等またはそれらを超える発電量の達成を可能にすることから、IoT等における無線センサモジュールのみならず、様々な機器の電源として有用である。
【符号の説明】
【0199】
100、200、300、400、500、600、700、800、900、1000、1100、1200、1300、1400、1500、1600,1700、1800、1900 磁歪発電デバイス
110、210、310、410、510、610、710、810、910、1010、1110、1210、1310、1410、1510、1610、1710、1810、1910、 発電用磁歪素子
111、211、311、411、511、611、711、811、911、1011、1111、1211、1311、1411、1511、1611、1711、1811、1911 磁歪部(電磁鋼板)
112、212、312、412、512、612、712、812、912、1012、1112、1212、1312、1412、1512、1612、1712、1812、1912 応力制御部(弾性材料)
120、220、320、420、520、620、720、820、1020、1120、1220、1320、1420、1520、1620、1720、1820、1920 積層体
121、221、321、421、521、621、721、821、1021、1121、1221、1321、1421、1521、1621、1721、1821、1921 電磁鋼板
122、222、322、422、522、622、722、822、922、1022、1122、1222、1322、1422、1522、1622、1722、1822、1922 弾性材料
130、230、330、430、530、630、730、830、930、1030、1130、1230、1330、1430、1530、1630、1730、1830、1930 フレーム
140、240、340、440、550、640、740、840、940、1040、1140、1240、1340、1440、1540、1640、1740、1840、1940 錘
150、250、350、450、550、650、750、850、950、1050、1150、1250、1350、1450、1550、1650、1750、1850、1950
磁石
160、260、360、460、560、660、760、860、960、1060、1160、1260、1360、1460、1560、1660、1760、1860、1960検出用コイル
170、270、370、470、570、670、770、870、970、1070、1170、1270、1370、1470、1570、1670、1770、1870、1970 固定部
780、880、1180、1380、1580、1780、1980 支柱
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11
図12
図13
図14
図15
図16
図17
図18
図19