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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】元素分析装置及び元素分析方法
(51)【国際特許分類】
   G01N 33/2025 20190101AFI20240919BHJP
   G01N 31/12 20060101ALI20240919BHJP
【FI】
G01N33/2025
G01N31/12 B
【請求項の数】 7
(21)【出願番号】P 2021067347
(22)【出願日】2021-04-12
(65)【公開番号】P2022162469
(43)【公開日】2022-10-24
【審査請求日】2023-12-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000155023
【氏名又は名称】株式会社堀場製作所
(74)【代理人】
【識別番号】100121441
【弁理士】
【氏名又は名称】西村 竜平
(74)【代理人】
【識別番号】100154704
【弁理士】
【氏名又は名称】齊藤 真大
(74)【代理人】
【識別番号】100129702
【弁理士】
【氏名又は名称】上村 喜永
(74)【代理人】
【識別番号】100206151
【弁理士】
【氏名又は名称】中村 惇志
(72)【発明者】
【氏名】池上 晃平
【審査官】大瀧 真理
(56)【参考文献】
【文献】特開2010-008245(JP,A)
【文献】特開平06-264980(JP,A)
【文献】特開2015-009779(JP,A)
【文献】特開2012-053037(JP,A)
【文献】特開昭58-011853(JP,A)
【文献】特開2014-214757(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G01N 33/2025
G01N 31/12
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試料を加熱して発生させたガスを分析し、当該試料中の元素を分析する元素分析装置であって、
前記試料を加熱する加熱炉と、
前記加熱炉に試料を導入するための導入口と、
前記導入口を開閉するための蓋部材と、
前記蓋部材のシール面を前記導入口に対して押し当てる方向に駆動させるエアシリンダと、
前記エアシリンダ内の圧力を陽圧と陰圧とで切り替える圧力切替機構とを備え、
前記エアシリンダ内の圧力が陽圧時に前記シール面が前記導入口に押圧され、前記エアシリンダ内の圧力が陰圧時に前記シール面が前記導入口から離間するように構成された元素分析装置。
【請求項2】
前記圧力切替機構が、
圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給源と、
陰圧を生じさせる陰圧発生機構と、
前記エアシリンダのポートが前記圧縮ガス供給源に接続され前記エアシリンダ内が陽圧となる第1接続状態と、前記エアシリンダのポートが前記陰圧発生機構に接続され前記エアシリンダ内が陰圧となる第2接続状態とを切り替える接続切替機構とを備える請求項1に記載の元素分析装置。
【請求項3】
前記陰圧発生機構が、その吸引口が前記エアシリンダのポートに連通するように構成されたエジェクタである請求項2に記載の元素分析装置。
【請求項4】
前記接続切替機構が、
前記第1接続状態において、前記圧縮ガス供給源から供給される前記圧縮ガスを前記エアシリンダのポートに導き、
前記第2接続状態において、前記圧縮ガス供給源から供給される前記圧縮ガスを前記エジェクタの供給ポートに導くように構成された請求項3に記載の元素分析装置。
【請求項5】
前記蓋部材が、前記シール面に平行な方向に沿って、前記導入口を開放して前記試料が導入可能な導入位置までスライド移動できるように構成された請求項1~のいずれか一項に記載の元素分析装置。
【請求項6】
試料を加熱して発生させたガスを分析し、当該試料中の元素を分析する元素分析装置であって、
前記試料を加熱する加熱炉と、
前記加熱炉に試料を導入するための導入口と、
前記導入口を開閉するための蓋部材と、
前記蓋部材のシール面を前記導入口に対して押し当てる方向に駆動させるエアシリンダと、
前記エアシリンダ内の圧力を陽圧と陰圧とで切り替える圧力切替機構とを備え、
前記圧力切替機構が、
圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給源と、
陰圧を生じさせる陰圧発生機構と、
前記エアシリンダのポートが前記圧縮ガス供給源に接続され前記エアシリンダ内が陽圧となる第1接続状態と、前記エアシリンダのポートが前記陰圧発生機構に接続され前記エアシリンダ内が陰圧となる第2接続状態とを切り替える接続切替機構とを備え、
前記陰圧発生機構が、その吸引口が前記エアシリンダのポートに連通するように構成されたエジェクタである元素分析装置。
【請求項7】
試料を加熱して発生させたガスを分析して当該試料中の元素を分析するものであり、前記試料を加熱する加熱炉と、前記加熱炉に試料を導入するための導入口と、前記導入口を開閉するための蓋部材と、前記蓋部材のシール面を前記導入口に対して押し当てる方向に駆動させるエアシリンダとを備え、前記エアシリンダ内の圧力が陽圧時に前記シール面が前記導入口に押圧され、前記エアシリンダ内の圧力が陰圧時に前記シール面が前記導入口から離間するように構成された元素分析装置を用いた分析方法であって、
前記エアシリンダ内の圧力を陽圧と陰圧とで切り替えることにより前記導入口を開閉させることを特徴とする元素分析方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば鉄鋼材料等の測定試料に含まれる水素等を分析する元素分析装置に関し、特に、るつぼ等の試料容器へ試料を導入する導入口部分の開閉機構に関するものである。また当該元素分析装置を用いた元素分析方法に関するものである。
【背景技術】
【0002】
この種の試料分析装置において、例えば特許文献1に示すように、上部電極及び下部電極に狭持されたるつぼに測定試料を収容して、電圧を印加することにより、るつぼ内の測定試料を加熱して、それによって生じたガスを分析して前記測定試料の元素を分析する元素分析装置がある。この元素分析装置は、るつぼへ試料を導入した後、生じたガスを外部に漏らさないように、導入口を蓋部材で閉塞し、るつぼ及び導入通路内を密閉状態として試料を加熱する。
【0003】
従来、導入口を開閉する蓋部材の開閉機構としてはスライド式のものが知られている。この方式では、蓋部材を導入口に対して水平にスライド移動させて導入口を閉塞し、この状態で、エアシリンダ等のアクチュエータを用いて、蓋部材のシール面に設けたOリング等のシール部材をつぶすように蓋部材を導入口に押し当てることにより導入口を密閉している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開2010-008245号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
従来の蓋部材の開閉機構としては、例えば特許文献1に示すように、蓋部材の左右の両端部に複動式のエアシリンダを接続し、このエアシリンダを駆動させて蓋部材を昇降させることで、導入口を開閉するものが知られている。しかしながらこの開閉機構では、左右2つの複動式のシリンダの同期がとれず、片側が浮き上がってしまうことで密閉性が低下する恐れがある。
【0006】
従来、このような問題を避けるように、開閉機構として単動式の1つのエアシリンダを導入口の直上に設け、この1つのエアシリンダを駆動させることで導入口に蓋部材を押し当てて密閉させることがある。しかしながらこの場合、蓋部材を導入口に押し当てて密閉すると、蓋部材が導入口側に飛び出したままの状態となってしまい、その後蓋部材をスライド移動させて導入口を大気開放する際に、シール部材が擦れて動作が悪くなるという問題がある。またシール部材が短期間で消耗してしまうという問題もある。このような問題は直上に設けたエアシリンダを複動式にすることで解消できるが、この場合、エアシリンダにガスを供給するガスポートを複数設ける必要があり、流路が複雑になるとともに装置が大型化してしまうという問題がある。
【0007】
本発明は上記課題に鑑みてなされたものであり、導入口に押し当てて密閉させた蓋部材を、簡単な構成で離間させることができる元素分析装置を提供することを主たる課題とするものである。
【0008】
すなわち本発明に係る元素分析装置は、試料を加熱して発生させたガスを分析し、当該試料中の元素を分析するものであって、前記試料を加熱する加熱炉と、前記加熱炉に試料を導入する導入口と、前記導入口を開閉するための蓋部材と、前記蓋部材のシール面を前記導入口に対して押し当てる方向に駆動させるエアシリンダと、前記エアシリンダ内の圧力を陽圧と陰圧とで切り替える圧力切替機構とを備えることを特徴とする。
【0009】
このようなものであれば、エアシリンダに複数のガスポートを設けることなく、単一のガスポートを通じて圧力切替機構によりエアシリンダ内の圧力を陽圧と陰圧とで切り替えることで、導入口に対してシール面を押し当てて密閉し、また逆に導入口からシール面を離間させて開放させることができるので、導入口に押し当てて密閉させた蓋部材を簡単な構成で離間させることができる。
【0010】
前記圧力切替機構の具体的な構成として、圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給源と、陰圧を生じさせる陰圧発生機構と、前記エアシリンダのポートが前記圧縮ガス供給源に接続され前記エアシリンダ内が陽圧となる第1状態と、前記エアシリンダのポートが前記陰圧発生機構に接続され前記エアシリンダ内が陰圧となる第2状態とを切り替える接続切替機構とを備えるものが挙げられる。
【0011】
前記陰圧発生機構の具体的構成として、その吸引口が前記エアシリンダのポートに連通するように構成されたエジェクタが挙げられる。
このようにすれば、真空ポンプ等のポンプを用いて陰圧を発生させる場合に比べて、構成を簡素にし、より一層の小型化が図れる。
【0012】
前記接続切替機構の具体的構成として、前記第1状態において、前記圧縮ガス供給源から供給される前記圧縮ガスを前記エアシリンダのポートに導き、前記第2状態において、前記圧縮ガス供給源から供給される前記圧縮ガスを前記エジェクタの供給ポートに導くように構成されたものが挙げられる。
このようなものであれば、圧縮ガス供給源からのガスの供給先を切り替えるだけで、エアシリンダ内の圧力を陽圧と陰圧とで切り替えられるので、より一層構成を簡素にできる。
【0013】
前記エアシリンダ内の圧力が陽圧時に前記シール面が前記導入口に押圧され、前記エアシリンダ内の圧力が陰圧時に前記シール面が前記導入口から離間するように構成されることが好ましい。
【0014】
本発明の効果をより顕著に奏する態様として、前記蓋部材が、前記シール面に平行な方向に沿って、前記導入口を開放して前記試料が導入可能な導入位置までスライド移動できるように構成されているものが好ましい。
このようなものであれば、エアシリンダ内の圧力を陰圧にしてシール面と導入口とを離間させることで、シール面やシール面に取り付けられたOリング等のシール部材を擦ることなく、蓋部材を導入位置までスライド移動させることができる。これにより、簡単な構成により、シール面やシール部材の損傷を防止できる。
【0015】
また本発明の元素分析方法は、試料を加熱して発生させたガスを分析して当該試料中の元素を分析するものであり、前記試料を加熱する加熱炉と、前記加熱炉に試料を導入するための導入口と、前記導入口を開閉するための蓋部材と、前記蓋部材のシール面を前記導入口に対して押し当てる方向に駆動させるエアシリンダとを備える元素分析装置を用いた分析方法であって、前記エアシリンダ内の圧力を陽圧と陰圧とで切り替えることにより前記導入口を開閉させることを特徴とする。
このような元素分析方法であれば、前記した本発明の分析装置と同様の作用効果を奏することができる。
【発明の効果】
【0016】
このように構成した本発明によれば、導入口に押し当てて密閉させた蓋部材を、簡単な構成で離間させることができる元素分析装置を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0017】
図1】本発明の一実施形態における元素分析装置の構成を示す斜視参考図。
図2】同実施形態の元素分析装置の構成を模式的に示す断面図。
図3図2にけるA部及びB部の拡大図。
図4】同実施形態の元素分析装置の圧力切替機構の構成を模式的に示す図。
図5】同実施形態の元素分析装置の圧力切替機構の、(a)陽圧発生時、(b)陰圧発生時の構成を模式的に示す図。
図6】同実施形態の元素分析装置の試料導入部の動作を説明する図。
図7】同実施形態の元素分析装置の試料導入部の動作を説明する図。
図8】同実施形態の元素分析装置の試料導入部の動作を説明する図。
図9】同実施形態の元素分析装置の試料導入部の動作を説明する図。
図10】同実施形態の元素分析装置の試料導入部の動作を説明する図。
図11】同実施形態の元素分析装置の試料導入部の動作を説明する図。
【発明を実施するための形態】
【0018】
以下に、本発明の一実施形態に係る元素分析装置100について図面を参照して説明する。
【0019】
本実施形態に係る元素分析装置100は、金属中に含まれる元素を分析する金属中元素分析装置100である。具体的にこの元素分析装置100は、金属等の測定試料及び/又はフラックス(以下、特に区別しないときは「試料」という。)を収容する黒鉛るつぼZを上部電極2と下部電極3とで狭持して、上部電極2の上側に設けられた試料導入部4から前記るつぼZに試料Oを導入し、電圧を印加する(るつぼに通電する)ことにより、るつぼZ内の試料Oを加熱して、その時に発生する分析用ガスを図示しない分析部に送って分析し、測定試料Oに含まれる元素を分析するものである。なお、本実施形態の加熱炉は、上部電極2と下部電極3とを含む加熱機構により構成されるものであり、所謂インパルス炉(加熱炉)である。
【0020】
本実施形態の分析部としては、例えば一酸化炭素(CO)を測定する非分散赤外線検出器等の酸素成分検出部と、例えば窒素(N)を測定する熱伝導度検出器等の窒素成分検出部とが考えられる。その他、水素成分分析部や硫黄成分検出部などでも良い。
【0021】
上部電極2は、図1図3に示すように、試料導入部4の下部に固定され、その下側に開口したるつぼ収容空間S1を有している。その空間S1の上面には、るつぼZの上端面と接触して電圧を印加するための電極面21が形成されている。また、るつぼ収容空間の内周面は、測定時に下部電極3がシール部材(Oリング)を介して気密に嵌合される。また、上部電極2の側壁(下部電極3が嵌合される部分より上)には、分析用ガスを図示しない分析部に導くための導入管11が接続されるガス取り出し孔11aが設けられている。上部電極2の内部には、冷却水を流通させるための流通路S2が形成されている。図2中、2Aは、流通路S2内に冷却水を導入するための冷却水導入口であり、2Bは流通路S2から外部に冷却水を導出するための冷却水導出口である。なお、電極面21には、保護のためタングステンからなる環状板が固定されている。この環状板には、内側周面から外側周面に向かって径方向に延びる凹溝が、円周方向に複数設けられており、これにより上部電極2及び下部電極3でるつぼZを狭持しても、るつぼ内部の空間とるつぼ収容空間S1、さらには、るつぼZ内部の空間と導入管11とが繋がり、分析用ガスを導入管11に導くことができる。
【0022】
また、下部電極3は、図2に示すように、電極面31上に黒鉛るつぼZが載置され、昇降機構12により上部電極2に対して昇降移動するものである。また、下部電極3の内部には、冷却水を流通させる流通路S3が形成されている。図1中、3Aは、流通路S3内に冷却水を導入するための冷却水導入口であり、3Bは、流通路S3から外部に冷却水を導出するための冷却水導出口である。なお、電極面31上には、保護のためタングステンからなる円板が固定されている。
【0023】
試料導入部4は、上部電極2及び下部電極3により狭持されたるつぼZに試料Oを導入(投下)するものである。その構成は、特に図2及び図3に示すように、るつぼZに試料Oを導く導入通路411が設けられたブロック体41と、ブロック体41の上面にシール部材を介して載せられ、導入通路411に連通する導入口5が設けられたシールプレート42と、導入口5を開閉する蓋部材43と、蓋部材43を閉塞位置Pと中間位置Qとの間で昇降移動させる昇降駆動部44と、蓋部材43を中間位置Qと導入位置Rとの間で水平移動させる水平駆動部45とを具備する。
【0024】
ここでまず、前記各位置について詳述しておく。閉塞位置Pとは、蓋部材43のシール面43sがOリング6を押圧変形させて導入口5を密閉する位置のことであり、中間位置Qとは、蓋部材43のシール面43sが閉塞位置Pから鉛直上方に数ミリ離間し、Oリング6とそのOリング6と対向する部材(本実施形態ではシールプレート42)とが非接触である位置のことである。また、導入位置Rとは、中間位置Qから水平方向に離間し、導入口5に試料Oを導入するための位置のことである。
【0025】
以下、ブロック体41、シールプレート42、蓋部材43、昇降駆動部44及び水平駆動部45について説明する。
【0026】
ブロック体41は、基台101に立設された一対のベース部材102に固定されており(図1参照)、図2に示すように、前記した導入通路411が上下方向に沿って貫通するように設けられている。この導入通路411は、その上端開口がシールプレート42に形成された試料通過孔に連通し、その下端開口が上部電極2に形成された試料通過孔に連通している。
【0027】
またブロック体41は、上面に開口するように形成されたホッパ部材収容空間S4を有している。このホッパ部材収容空間S4には、後述する試料保持機構46のホッパ部材461とその駆動軸とが収容される。前記した導入通路411は、ホッパ部材収容空間S4の一部の領域に設定されている。
【0028】
シールプレート42は板状を成すものであり、ブロック体41に形成された空間S4を覆うように、シール部材を介してその上面に設けられている。シールプレート42には、その板厚方向に貫通するように試料通過孔が形成されている。この試料通過孔は、その上端開口が導入口5となり、その下端開口がブロック体41に形成された導入通路411に連通している。
【0029】
蓋部材43は、シールプレート42の上部に設けられ、導入口5を開閉するものであり、矩形形状をなす。蓋部材43の下面(シールプレート42との対向面)には、閉塞位置Pにおいて導入口5を閉塞するシール面43sが形成されている。このシール面43sには、閉塞位置Pにおいて、シールプレート42の上面との間に介在して導入口5を密閉するシール部材であるOリング6が設けられている。このOリング6は、図2及び図3に示すように、蓋部材43が閉塞位置Pにある状態において、導入口5の周囲を囲むように、導入口5に対応して設けられている。
【0030】
さらに蓋部材43には、導入口5の開口形状と略同一形状をなす試料投入口43oが設けられている。この試料投入口43oはOリング6の外部に設けられており、蓋部材43が導入位置Rにある状態おいて、平面視において導入口5と重なり合って合致し、連通するように設けられている。
【0031】
具体的にこの蓋部材43は、シール面43sが下面に形成されている密閉部材431と、密閉部材431を保持する蓋部材本体432とを備えている。図2及び図3に示すように、蓋部材本体432の下面には凹部432rが形成されており、当該凹部432rに密閉部材431がはめ込まれている。凹部432rに密閉部材431がはめ込まれている状態で、密閉部材431の上面と凹部432rの天面(密閉部材431の上面と対向する面)との間には空間43aが形成されており、密閉部材431は凹部432r内で上下方向に昇降できるように構成されている。なお、密閉部材431の側面とこれを取り囲む凹部432rの側面との間にはシール部材が設けられており、空間43aを密閉するようにしている。また、前記した試料投入口43oは蓋部材本体432に設けられている。
【0032】
そして蓋部材43は、後述する昇降駆動部44及び水平駆動部45により、中間位置Qを経由して、閉塞位置Pと導入位置Rとの間を鉛直移動又は水平移動して導入口5を開閉する。
【0033】
昇降駆動部44は、蓋部材43(より具体的には密閉部材431)を閉塞位置Pと中間位置Qとの間を鉛直移動させるものである。具体的にこの昇降駆動部44は、鉛直方向に沿って密閉部材431を押し引きできるようにしたエアシリンダ441と、エアシリンダ441内の圧力を陽圧と陰圧とで切り替える圧力切替機構442とを備えている。
【0034】
具体的にこのエアシリンダ441は、蓋部材本体432に形成した凹部432rの側壁と、密閉部材431の上面とにより構成されている。図2及び図3に示すように、蓋部材本体432の外面には、当該空間43aに連通するガスポートPgが設けられており、当該ガスポートPgを通じて空間43a内の圧力を陽圧(大気圧超)と陰圧(大気圧未満)とで切り替えることにより、密閉部材431を鉛直方向に移動させることができる。
【0035】
圧力切替機構442は、陽圧の圧縮ガスを供給する圧縮ガス供給源442aと、陰圧を生じさせる陰圧発生機構442bと、ガスポートPgの接続先を圧縮ガス供給源442aと陰圧発生機構442bとで切り替える接続切替機構442cとを備えている。
【0036】
具体的にこの陰圧発生機構442bは、ガス供給口PE1と、ガス排気口PE2と、ガス吸込口PE3とを備えるエジェクタである。このエジェクタ442bは、ガス供給口PE1から供給されたガスを、ボディ内に設けられたノズル(図示しない)で高速噴射した後、ディフューザを介して減速してガス排気口PE2から排気するように構成されている。エジェクタ442bのボディ内には低圧空間が形成され、ガス吸込口PE3から周囲の気体が吸い込まれるようになっている。
【0037】
接続切替機構442cは、図4に示すように、複数のシリンダポートP、Pと供給ポートPとを備える電磁弁である。具体的にこの接続切替機構442cは、2つの電磁弁(第1電磁弁V、第2電磁弁V)と1つのスプール弁Vとから構成されている5ポート電磁弁である。接続切替機構442cには、ガスが供給される供給ポートPと、2つのシリンダポート(第1シリンダポートP、第2シリンダポートP)と、各シリンダポートP、Pに対応する2つの排気ポート(第1排気ポートPR1、第2排気ポートPR2)とが設けられている。なお、接続切替機構442cを構成する各電磁弁V、V、Vは制御機器(図示しない)により制御される。
【0038】
本実施形態の元素分析装置100では、供給ポートPがガス圧縮機構に接続され、第1シリンダポートPがエアシリンダ441のガスポートPgに接続され、第2シリンダポートPがエジェクタ442bを介して第1排気ポートPR1に接続されている。より具体的には、第2シリンダポートPが、エジェクタ442bのガス供給口PE1に接続され、当該エジェクタ442bのガス吸込口PE3が第1排気ポートPR1に接続されている。
【0039】
図5に示すように、接続切替機構442cの第1電磁弁VをONにすると、供給ポートPと第1シリンダポートPが接続される。これにより圧縮ガス供給源442aとエアシリンダ441のガスポートPgとが接続され、圧縮ガスがエアシリンダ441に供給され、エアシリンダ441内の圧力が陽圧になる。
【0040】
一方で、接続切替機構442cの第2電磁弁VをONにすると、供給ポートPと第2シリンダポートPが接続される。これにより供給ポートPから供給された圧縮ガスが、第2シリンダポートPを介してエジェクタ442bに供給され、エジェクタ442bのガス吸込口PE3と第1排気ポートPR1との間が陰圧になる。そして第1シリンダポートPを介してエアシリンダ441内の空気が吸い込まれ、エアシリンダ441内の圧力が陰圧になる。
【0041】
水平駆動部45は、蓋部材43を中間位置Qと導入位置Rとの間を水平移動させるものである。具体的にこの水平駆動部45は、蓋部材43に着脱可能に接続される駆動軸452を有するエアシリンダ451を備える。駆動軸452は、水平方向に沿って進退移動するように設けられており、先端部が蓋部材本体432に接続されている。また、エアシリンダ451は、圧縮空気源(図示しない)から電磁弁を介して供給される空気により動作する。なお、電磁弁は、制御機器により制御される。
【0042】
試料導入部4はまた、導入口5から導入された試料Oを導入通路411上で一時的に保持する試料保持機構46を備えている。具体的にこの試料保持機構46は、導入通路411を開閉するホッパ部材461と、ホッパ部材461を保持位置Sと退避位置Tとの間で移動させるホッパ駆動部462とを備える。ここで保持位置Sとは、ホッパ部材461が導入通路411を閉塞することにより試料Oを落下させないように保持する位置である。退避位置Tとは、ホッパ部材461が導入通路411上から退避していることにより試料Oを下に落下させる位置である。
【0043】
図2に示すように、ホッパ部材461は、その全体がホッパ部材収容空間S4内に収容されている。ホッパ部材461は、保持位置Sにおいて、上方から落下してきた試料Oを受け止めるための試料保持面を備えている。この試料保持面は水平方向に対して傾斜するように形成されおり、導入通路411の側面との間にサンプルを挟んで保持するようになっている。
【0044】
ホッパ駆動部462は、ホッパ部材461を保持位置Sと退避位置Tとの間を水平移動させるものであり、ホッパ部材461に接続されるホッパ駆動軸462aを有するエアシリンダ462bを備える。ブロック体41の側壁には、その壁厚方向に貫通するように挿通孔47が形成されており、ホッパ駆動軸462aは、当該挿通孔47に挿通され水平方向に沿って進退移動するように設けられている。このホッパ駆動軸462aは、ホッパ部材収容空間S4内にある先端部がホッパ部材461に接続され、ホッパ部材収容空間S4外にある基端部がエアシリンダ462bに接続されている。また、エアシリンダ462bは、圧縮空気源(図示しない)から電磁弁を介して供給される空気により動作する。なお、電磁弁は、制御機器により制御される。
【0045】
また挿通孔47の内側面とホッパ駆動軸462aの外側面との間はOリング等のシール部材463により封止されている。本実施形態の試料導入部4では、挿通孔47の内側面におけるシール部材463よりも内部側(ホッパ駆動軸462aに沿った先端側)に、加熱炉内にキャリアガス(ここでは不活性ガス)を供給するためのキャリアガス供給口48が形成されている。このような位置に設けたキャリアガス供給口48からキャリアガスを供給することにより、挿通孔47内においてキャリアガスがエアカーテンのように機能し、ホッパ駆動軸462aを移動させた際にシール部材463をすり抜けて外気が混入することを防止できる。
【0046】
次に、このような構成における試料導入部4の動作について図6図11を参照して説明する。
【0047】
まず、蓋部材43が導入位置Rにあり、ホッパ部材461が保持位置Rにある状態(図6)で、ユーザにより試料投入口43oから試料Oが投入される。試料Oは導入通路411内でホッパ部材461により保持される。
【0048】
次に、制御機器により水平駆動部45を作用させ、駆動軸452を水平移動させる。これにより、蓋部材43が中間位置Qまで水平移動する(図7)。そして、制御機器により昇降駆動部44を作用させ、エアシリンダ441内に圧縮ガスを供給して陽圧にすることで、蓋部材43を閉塞位置Pに移動させる。具体的には、5ポート電磁弁442cの供給ポートPに圧縮ガスを供給するとともに、第1電磁弁VをONにし、エアシリンダ441のガスポートPgに圧縮ガスを供給する。これにより密閉部材431が鉛直方向の下向きに移動し、そのシール面43sがOリング6を介して導入口5に押し当てられ、導入口5が密閉される(図8)。
【0049】
次に、制御機器によりホッパ駆動部462を作用させ、ホッパ駆動軸462aを水平移動させる。これにより、ホッパ部材461が退避位置Tまで水平移動する(図9)。これにより、試料OがるつぼZ内に導入される。そして、キャリアガス供給口48からキャリアガスを供給するとともに試料Oを加熱し、測定を開始する。なお測定中は、エアシリンダ441に圧縮ガスを供給して陽圧の状態を保持する。
【0050】
測定が終了すると、制御機器により昇降駆動部44を作用させ、エアシリンダ441内からガスを吸引して陰圧にすることで、蓋部材43を中間位置Qに移動させる。具体的には、5ポート電磁弁442cの第2電磁弁VをONにし、エジェクタ442bのガス供給口PE1に圧縮ガスを供給し、エジェクタ442bのガス吸気口とエアシリンダ441のガスポートPgとを接続してガスを吸引する。これにより密閉部材431が鉛直方向の上向きに移動し、そのシール面43sとOリング6とが、シールプレート42の上面から離間し、導入口5が開放される(図10)。最後に、制御機器により水平駆動部45を作用させ、駆動軸452を水平移動させる。これにより、蓋部材43が導入位置Rまで水平移動し、試料投入口43oから新たな試料Oを導入できる状態となる(図11)。
【0051】
<本実施形態の効果>
このように構成した本実施形態の元素分析装置100によれば、エアシリンダ441に複数のガスポートPgを設けることなく、単一のガスポートPgを通じて圧力切替機構442によりエアシリンダ441内の圧力を陽圧と陰圧とで切り替えることで、導入口5に対してシール面43sを押し当てて密閉し、また逆に導入口5からシール面43sを離間させて開放させることができるので、導入口5に押し当てて密閉させた蓋部材43を簡単な構成で離間させることができる。
【0052】
また、導入口5を密閉した後開放する際に、エアシリンダ441内の圧力を陰圧にしてシール面43sと導入口5とを離間させることで、シール面43sやシール面43sに取り付けられたOリング6等のシール部材を擦ることなく、蓋部材43を中間位置Qから導入位置Rまでスライド移動させることができる。これにより、簡単な構成により、シール面43sやOリング6の損傷を防止できる。
【0053】
なお、本発明は前記実施形態に限られるものではない。
【0054】
例えば、前記実施形態のシール部材は、蓋部材43に設けられていたが、ブロック体41に設けられていてもよいし、ブロック体41と蓋部材43との両部材に設けられていても良い。
【0055】
また、昇降駆動部44又は水平駆動部45を作動させる際には、ユーザがその度に制御機器を操作して作動するようにしても良いし、ユーザが制御機器を一度操作するだけで、蓋部材43が閉塞位置にある状態から導入位置へ移動して、ユーザが試料Oを導入した後に再び閉塞位置へ移動するように、昇降駆動部44及び水平駆動部45を自動的に作動するものであっても良い。
【0056】
また、前記実施形態では蓋部材43とブロック部材との間にはシールプレート42が介在していたがこれに限らない。他の実施形態では、蓋部材43とブロック部材との間にシールプレート42が設けられてなくてもよい。この場合、導入口5がブロック体41に設けられていてもよい。
【0057】
また前記実施形態の元素分析装置100は、加熱炉としてインパクト炉を用い、インパクト炉内にキャリアガスとして不活性ガスを供給し、黒鉛るつぼを加熱して分析用ガスを生じさせるものであったが、これに限らない。他の実施形態の元素分析装置100は、加熱炉として高周波誘導加熱炉を用いたものであってもよい。この場合、加熱炉内に試料を収容したセラミック製の容器を投入し、支燃ガスして酸素を供給して、試料を燃焼させて分析用ガスを生じさせるものであってもよい。
【0058】
また前記した元素分析装置100では、試料投入口43oが上向きに開口し、エアシリンダ441は、蓋部材43のシール面43sを上下方向に昇降させて試料投入口43oを開閉させるように構成されていたが、これに限らない。他の実施形態の元素分析装置100は、試料投入口43oが横向きに開口し、エアシリンダ441は、蓋部材43のシール面43sを水平方向に沿ってスライド移動させて試料投入口43oを開閉するように構成されていてもよい。
【0059】
その他、本発明は前記実施形態に限られず、その趣旨を逸脱しない範囲で種々の変形が可能であるのは言うまでもない。
【符号の説明】
【0060】
100・・・元素分析装置
43 ・・・蓋部材
43s・・・シール面
441・・・エアシリンダ
442・・・圧力切替機構
5 ・・・導入口
6 ・・・Oリング
O ・・・試料
Z ・・・るつぼ
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7
図8
図9
図10
図11