(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】糖吸収促進用組成物
(51)【国際特許分類】
A61K 35/744 20150101AFI20240919BHJP
A61K 35/74 20150101ALI20240919BHJP
A61P 3/08 20060101ALI20240919BHJP
A23L 33/135 20160101ALI20240919BHJP
A23K 10/16 20160101ALI20240919BHJP
【FI】
A61K35/744
A61K35/74 A
A61P3/08
A23L33/135
A23K10/16 ZNA
(21)【出願番号】P 2022208706
(22)【出願日】2022-12-26
(62)【分割の表示】P 2019027010の分割
【原出願日】2019-02-19
【審査請求日】2023-01-04
(73)【特許権者】
【識別番号】711002926
【氏名又は名称】雪印メグミルク株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110000774
【氏名又は名称】弁理士法人 もえぎ特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】宮崎 忠昭
(72)【発明者】
【氏名】河野 通生
(72)【発明者】
【氏名】三好 雅也
【審査官】伊藤 基章
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-529622(JP,A)
【文献】特開2016-073314(JP,A)
【文献】特開2016-005452(JP,A)
【文献】特開2018-201487(JP,A)
【文献】System.Appl.Microbiol.,6,183-195(1985)
【文献】BARRENETXE, J. et al.,FASEB J,2006年,Vol. 20, No. 5,p. A1018
【文献】XU, S. et al.,J Appl Microbiol,2015年,Vol. 119,pp. 225-235
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K 35/00
A23L 33/00
A23K 10/00
JSTPlus/JMEDPlus/JST7580(JDreamIII)
CAplus/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ラクトコッカス(Lactococcus)属に属する菌(ただし、EGF産生遺伝子導入組換え乳酸菌を除く)の菌体を有効成分とする腸管における糖吸収促進用組成物
であって、ラクトコッカス(Lactococcus)属に属する菌が、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)及びラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラクティス( Lactococcus lactis subsp.lactis)から選択されるひとつ以上であることを特徴とする前記組成物。
【請求項2】
ラクトコッカス(Lactococcus)属に属する菌が、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリス(Lactococcus lactis subsp.cremoris)JCM 16167及びラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラクティス(Lactococcus lactis subsp.lactis)JCM5805から選択されるひとつ以上であることを特徴とする請求項
1に記載の腸管における糖吸収促進用組成物。
【請求項3】
請求項1
又は請求項2に記載の糖吸収促進用組成物を含む、糖吸収促進用飼料組成物、糖吸収促進用医薬組成物、又は糖吸収促進用食品組成物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、乳酸菌および/またはビフィズス菌の菌体を有効成分とする腸管における糖
吸収促進組成物に関する。
【背景技術】
【0002】
糖質は消化吸収されて血中を巡り、全身の組織のエネルギー源となる。特に脳において
は、血液中のグルコースが主なエネルギー源となるため、極端な糖質不足は、めまいやふ
らつき、集中力の欠如につながり、重篤な場合には意識障害を引き起こすこともある。
【0003】
血中の糖質不足は、例えば極端なダイエットや摂食障害等によって、糖質摂取量が恒常
的に不足している場合、あるいは空腹時の運動等によって糖質消費過多になった場合に起
こりうる。また、糖尿病患者が使用するインスリン製剤や経口血糖低下薬の副作用として
も報告されている。
【0004】
腸管における糖の吸収不良もまた、糖質不足の原因となりうる。腸管での糖の取り込み
は、主に腸上皮細胞に発現する単糖トランスポーターを介して行われる。小腸には、ナト
リウム依存性の一方向性輸送体であるSGLT1と、促進性の双方向輸送体であるGLU
T2およびGLUT5の3つの単糖トランスポーターが発現しており、腸管管腔側から体
内への糖の取り込みに寄与している。これらの単糖トランスポーターの発現が阻害される
と腸管からの糖の取り込みが抑制される。例えばトマト種子由来サポニンであるトマトシ
ドAは、腸上皮細胞のSGLT1の発現を抑制することで糖の取り込みを抑制することが
報告されている(特許文献1)。また、リンゴや玉ねぎに含まれるケルセチン、セロリや
パセリに含まれるアピゲニンは、いずれもGLUT2とGLUT5の遺伝子発現を著しく
低下させる作用を持ち、糖の取り込みを抑制することが報告されている(非特許文献1)
。
【0005】
腸管における糖の取り込みを促進することは、糖質不足を改善するための手段の一つで
あると考えられる。しかしながら、糖の取り込み抑制効果を示す食品や医薬組成物が数多
く報告されている一方、糖の取り込みを促進する食品や医薬組成物はほとんど報告されて
いない。
【0006】
ところで、乳酸菌およびビフィズス菌は、古来より発酵食品の製造に使用される細菌で
あるが、近年の研究で様々な健康機能の増進に寄与することが明らかとなりつつある。乳
酸菌培養物は、糖の吸収にも影響することが示唆されている。特許文献2では、乳酸菌を
含む様々な微生物を用いて作る発酵乳ケフィアの抽出物(分子量1000以下)が、筋管
細胞への糖の取り込み促進に寄与することが示されている。しかしながら、乳酸菌やビフ
ィズス菌の菌体そのものが腸管での糖の取り込み促進に関与するか否かは、いずれの文献
にも開示も示唆もされていない。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0007】
【文献】特開2017-192312号
【文献】特許3813808号
【非特許文献】
【0008】
【文献】Journal of Functional Foods(2017)、36、429-439
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
本発明は、新規な腸管における糖吸収促進用組成物を提供することを課題とする。
【課題を解決するための手段】
【0010】
本発明は、以下の新たな糖吸収促進用組成物を提供するものである。
<1>ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lacto
coccus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属またはビフィドバ
クテリウム(Bifidobacterium)属に属する菌の菌体を有効成分とする腸
管における糖吸収促進用組成物。
<2>Lactobacillus属、Lactococcus属、Leuconost
oc属またはBifidobacterium属に属する菌が、ラクトバチルス アシド
フィルス(Lactobacillus acidophilus)、ラクトバチルス
アミロボラス(Lactobacillus amylovorus)、ラクトバチルス
デルブルッキー サブスピーシーズ ブルガリクス (Lactobacillus
delbrueckii subsp. bulgaricus)、ラクトバチルス デ
ルブルッキー サブスピーシーズ ラクティス (Lactobacillus del
brueckii subsp. lactis)、ラクトバチルス ヘルベティカス(
Lactobacillus helveticus)、ラクトバチルス ジョンソニー
(Lactobacillus johnsonii)、ラクトバチルス パラカゼイ
サブスピーシーズ パラカゼイ(Lactobacillus paracasei s
ubsp. paracasei)、ラクトバチルス プランタラム(Lactobac
illus plantarum)、ラクトバチルス ロイテリ(Lactobacil
lus reuteri)、ラクトバチルス ラムノーサス(Lactobacillu
s rhamnosus)、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ クレモリ
ス(Lactococcus lactis subsp. cremoris)、ラク
トコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラクティス(Lactococcus l
actis subsp. lactis)、リューコノストック メセンテロイデス
サブスピーシーズ メセンテロイデス(Leuconostoc mesenteroi
des subsp. mesenteroides)、リューコノストック シュード
メセンテロイデス(Leuconostoc pseudomesenteroides
)、ビフィドバクテリウム ロンガム(Bifidobacterium longum
)、ビフィドバクテリウム アドレセンティス(Bifidobacterium ad
olescentis)、ビフィドバクテリウム ビフィダム(Bifidobacte
rium bifidum)、ビフィドバクテリウム ブレーベ(Bifidobact
erium breve)、ビフィドバクテリウム カテニュラタム(Bifidoba
cterium catenulatum)、ビフィドバクテリウム シュードカテニュ
ラタム(Bifidobacterium pseudocatenulatum)、ビ
フィドバクテリウム シュードロンガム(Bifidobacterium pseud
olongum)から選択されるひとつ以上であることを特徴とする<1>に記載の腸管
における糖吸収促進用組成物。
<3>Lactobacillus属、Lactococcus属、Leuconost
oc属またはBifidobacterium属に属する菌が、Lactobacill
us acidophilus JCM1132、Lactobacillus amy
lovorus JCM1126、Lactobacillus delbruecki
i subsp. bulgaricus JCM1002、Lactobacillu
s delbrueckii subsp. lactis JCM1012、Lact
obacillus helveticus JCM1120、Lactobacill
us johnsonii JCM2012、Lactobacillus parac
asei subsp. paracasei JCM8130、Lactobacil
lus plantarum JCM1149、Lactobacillus reut
eri JCM1112、Lactobacillus rhamnosus JCM1
136、Lactococcus lactis subsp. cremoris J
CM16167、Lactococcus lactis subsp. lactis
JCM5805、Leuconostoc mesenteroides subsp
. mesenteroides JCM6124、Leuconostoc pseu
domesenteroides JCM9696、Bifidobacterium
longum JCM1217、Bifidobacterium adolescen
tis JCM1275、Bifidobacterium bifidum JCM1
255、Bifidobacterium breve JCM1192、Bifido
bacterium catenulatum JCM1194、Bifidobact
erium pseudocatenulatum JCM1200、Bifidoba
cterium pseudolongum JCM1205から選択されるひとつ以上
であることを特徴とする<2>に記載の腸管における糖吸収促進用組成物。
<4> <1>~<3>のいずれか一つに記載の糖吸収促進用組成物を含む、糖吸収促進
用飼料組成物、糖吸収促進用医薬組成物、又は糖吸収促進用食品組成物。
【発明の効果】
【0011】
本発明によれば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス
(Lactococcus)属およびリューコノストック(Leuconostoc)属
に属する乳酸菌およびビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属
するビフィズス菌の菌体を有効成分とする腸管における糖吸収促進用組成物を提供するこ
とができる。
【図面の簡単な説明】
【0012】
【
図1】腸管上皮様に培養したヒト結腸癌由来細胞株Caco-2に、様々な乳酸菌またはビフィズス菌加熱死菌体を添加して、24時間培養後に各種グルコーストランスポーター(SGLT1、GLUT2、GLUT5)の遺伝子発現量を比較したグラフである。
【発明を実施するための形態】
【0013】
(乳酸菌およびビフィズス菌)
本発明の乳酸菌およびビフィズス菌は、ラクトバチルス(Lactobacillus
)属、ラクトコッカス(Lactococcus)属およびリューコノストック(Leu
conostoc)属に分類される乳酸菌およびビフィドバクテリウム(Bifidob
acterium)属に分類されるビフィズス菌であればどのようなものでも用いること
ができる。
具体的には、ラクトバチルス アシドフィルス(Lactobacillus aci
dophilus)、ラクトバチルス アミロボラス(Lactobacillus a
mylovorus)、ラクトバチルス デルブルッキー サブスピーシーズ ブルガリ
クス (Lactobacillus delbrueckii subsp. bul
garicus)、ラクトバチルス デルブルッキー サブスピーシーズ ラクティス
(Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis
)、ラクトバチルス ヘルベティカス(Lactobacillus helvetic
us)、ラクトバチルス ジョンソニー(Lactobacillus johnson
ii)、ラクトバチルス パラカゼイ サブスピーシーズ パラカゼイ(Lactoba
cillus paracasei subsp. paracasei)、ラクトバチ
ルス プランタラム(Lactobacillus plantarum)、ラクトバチ
ルス ロイテリ(Lactobacillus reuteri)、ラクトバチルス ラ
ムノーサス(Lactobacillus rhamnosus)、ラクトコッカス ラ
クティス サブスピーシーズ クレモリス(Lactococcus lactis s
ubsp. cremoris)、ラクトコッカス ラクティス サブスピーシーズ ラ
クティス(Lactococcus lactis subsp. lactis)、リ
ューコノストック メセンテロイデス サブスピーシーズ メセンテロイデス(Leuc
onostoc mesenteroides subsp. mesenteroid
es)、リューコノストック シュードメセンテロイデス(Leuconostoc p
seudomesenteroides)、ビフィドバクテリウム ロンガム(Bifi
dobacterium longum)、ビフィドバクテリウム アドレセンティス(
Bifidobacterium adolescentis)、ビフィドバクテリウム
ビフィダム(Bifidobacterium bifidum)、ビフィドバクテリ
ウム ブレーベ(Bifidobacterium breve)、ビフィドバクテリウ
ム カテニュラタム(Bifidobacterium catenulatum)、ビ
フィドバクテリウム シュードカテニュラタム(Bifidobacterium ps
eudocatenulatum)、ビフィドバクテリウム シュードロンガム(Bif
idobacterium pseudolongum)等を例示できるが、これらに限
定されるものではない。
【0014】
本発明の乳酸菌は、Lactobacillus acidophilus JCM1
132、Lactobacillus amylovorus JCM1126、Lac
tobacillus delbrueckii subsp. bulgaricus
JCM1002、Lactobacillus delbrueckii subsp
. lactis JCM1012、Lactobacillus helveticu
s JCM1120、Lactobacillus johnsonii JCM201
2、Lactobacillus paracasei subsp. paracas
ei JCM8130、Lactobacillus plantarum JCM11
49、Lactobacillus reuteri JCM1112、Lactoba
cillus rhamnosus JCM1136、Lactococcus lac
tis subsp. cremoris JCM16167、Lactococcus
lactis subsp. lactis JCM5805、Leuconosto
c mesenteroides subsp. mesenteroides JCM
6124、Leuconostoc pseudomesenteroides JCM
9696、Bifidobacterium longum JCM1217、Bifi
dobacterium adolescentis JCM1275、Bifidob
acterium bifidum JCM1255、Bifidobacterium
breve JCM1192、Bifidobacterium catenulat
um JCM1194、Bifidobacterium pseudocatenul
atum JCM1200、Bifidobacterium pseudolongu
m JCM1205であることが好ましい。
上記の菌株は、理化学研究所 バイオリソースセンター(日本、茨城県、つくば市)等
から入手することができる。
【0015】
(乳酸菌およびビフィズス菌の調製)
乳酸菌およびビフィズス菌は、各菌の培養の常法に従って培養し、所望の量を調製すれ
ばよい。調製の一例を以下に示す。ラクトバチルス属に属する乳酸菌はMRS培地(Di
fco)を用いて、ラクトコッカス属に属する乳酸菌はM17培地(Difco)を用い
て、リューコノストック属に属する乳酸菌およびビフィドバクテリウム属に属するビフィ
ズス菌は、1%グルコース含有GAMブイヨン(日水)を用いてそれぞれ培養し、得られ
た培養物を遠心分離により集菌することにより菌体を得る。得られた菌体をそのまま用い
てもよいし、濃縮、乾燥、凍結乾燥処理に供した菌体を用いることもできる。菌体は加熱
乾燥などにより死菌体にしたものを用いることもできる。
【0016】
(利用方法)
上記したとおり、本発明の組成物は濃縮、乾燥、凍結乾燥処理に供した菌体、加熱乾燥
などにより得られる死菌体も有効成分とすることができることから、製剤、飲食品、飼料
の原料として広く用いることができる。製剤、飲食品、又は飼料を培地として菌体を培養
して、当該培地をそのまま製剤、飲食品、又は飼料として用いてもよく、または、他の培
地で培養した菌体を製剤、飲食品、又は飼料に添加してもよい。
【0017】
本発明の組成物の投与対象は特に限定されず、ヒトに対して投与することができるが、
投与対象はヒト以外の動物(例えば、イヌ、ネコ、ウマ又はウサギ等)であることもでき
る。投与対象がヒトである場合は、20歳未満の未成年、成人、又は65歳以上の高齢者
などに投与することができる。
本発明の組成物の摂取量は、投与対象者の症状、年齢などを考慮してそれぞれ個別に決
定されるが、通常成人の場合、一日あたり1-5000mg程度摂取すればよい。
【0018】
(糖吸収促進能の評価方法)
実施例に記載の方法で評価が可能である。
【0019】
以下、本発明の実施例をもとにさらに詳細に説明するが、本発明は係る実施例に限定し
て解釈されるものではない。
【実施例】
【0020】
(実施例品1)乳酸菌およびビフィズス菌加熱死菌体
下記(1)の各供試菌を、ラクトバチルス属はMRS培地(Difco)、ラクトコッ
カス属はM17培地(Difco)、リューコノストック属およびビフィドバクテリウム
属は1%グルコース含有GAMブイヨン(日水)にそれぞれ植菌し、37℃にて16時間
静置培養を行った。培養物を、生理食塩水にて2回、滅菌水にて1回洗浄し、洗浄菌体を
得た。この洗浄菌体を凍結乾燥処理して菌体粉末を得た。菌体粉末を10mg/mlにな
るように滅菌PBS(-)で希釈し、80℃にて30分間加熱して加熱死菌体を得た。加
熱死菌体は100μg/mlとなるように10%FBS(Gibco)、1×Non-e
ssential Amino Acids(Gibco)、1%ペニシリン-ストレプ
トマイシン(Sigma)を含むDMEM(Sigma)で希釈した。
【0021】
(1)供試菌
ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス(Lactoco
ccus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属、ビフィドバクテリウ
ム(Bifidobacterium)属の下記21株を供試菌とした。
Lactobacillus acidophilus JCM1132、Lacto
bacillus amylovorus JCM1126、Lactobacillu
s delbrueckii subsp. bulgaricus JCM1002、
Lactobacillus delbrueckii subsp. lactis
JCM1012、Lactobacillus helveticus JCM1120
、Lactobacillus johnsonii JCM2012、Lactoba
cillus paracasei subsp. paracasei JCM813
0、Lactobacillus plantarum JCM1149、Lactob
acillus reuteri JCM1112、Lactobacillus rh
amnosus JCM1136、Lactococcus lactis subsp
. cremoris JCM16167、Lactococcus lactis s
ubsp. lactis JCM5805、Leuconostoc mesente
roides subsp. mesenteroides JCM6124、Leuc
onostoc pseudomesenteroides JCM9696、Bifi
dobacterium longum JCM1217、Bifidobacteri
um adolescentis JCM1275、Bifidobacterium
bifidum JCM1255、Bifidobacterium breve JC
M1192、Bifidobacterium catenulatum JCM119
4、Bifidobacterium pseudocatenulatum JCM1
200、Bifidobacterium pseudolongum JCM1205
上記の菌株は、理化学研究所 バイオリソースセンター(日本、茨城県、つくば市)等
から入手することができる。
【0022】
[試験例1]乳酸菌およびビフィズス菌によるグルコーストランスポーター発現促進効果
に関する試験
実施例品1を以下の試験に供した。
Cell matrix type I-C(新田ゼラチン)でコラーゲンコートした
24 well plate(BD)に、ヒト結腸癌由来細胞株Caco-2を5×10
4 cells/wellで播種し、10%FBS(Gibco)、1×Non-ess
ential Amino Acids(Gibco)、1%ペニシリン-ストレプトマイ
シン(Sigma)を含むDMEM(Sigma)で培養した。2-3日ごとに培地交換
しながら24日間培養し、腸上皮様に分化させた。24日後、細胞をPBSで1回洗浄し
、試験群には各種菌体を100μg/mlで懸濁した培地を、コントロール群には菌体を
含まない培地を添加して、24時間培養した。24時間後、細胞を冷PBS(-)で1回
洗浄し、洗浄した細胞に、TRIzol Reagent(Invitrogen)30
0μlを入れ、細胞をピペッティングにより溶解した。細胞溶解液を1.5mlチューブ
に回収し、5分以上室温でインキュベートした後、RNA抽出操作実施まで-80℃で保
存した。
【0023】
-80℃で保管しておいた細胞溶解液を室温に戻し、60μl(5分の1量)のクロロ
ホルムを添加した。手で力強く振って撹拌した後、室温で3分間静置した。12,000
×g、4℃で15分間遠心し、上層(水層)を別のチューブに移した。水層と等量のイソ
プロプロパノールを添加してピペッティングにより混合し、室温で10分間静置した。2
0,000×g、4℃で10分間遠心し、ペレットを残して上清を除去した。300μl
の75%エタノールを添加し、転倒混和によってペレットを洗い、20,000×g、4
℃で5分間遠心した。ペレットを残して上清を完全に除去し、30分間風乾した。30μ
lのNuclease-Free Waterでペレットを懸濁し、55℃で10分間イ
ンキュベートしてRNAを溶解した。溶解したRNA溶液を氷冷し、BioSpec-n
ano(島津製作所)により核酸濃度を測定した。
【0024】
RNAからのcDNA合成は、ReverTraAce(Toyobo)のプロトコー
ルをスケールダウンしたものに従って実施した。逆転写に供する総RNA量は250ng
/μlとした。合成したcDNAは、定量PCR(qPCR)に供するまで-20℃で保
存した。
【0025】
qPCR反応試薬は、KAPA SYBR FAST Master Mix(2×)
Universal(Kapa Biosystems)を用いた。qPCR装置はSt
epOnePlus(Applied Biosystems)を使用した。qPCR反
応は、KAPA SYBR FAST Master Mix(2×)Universa
lの「ABI社製装置用プロトコール(Fastプログラム)」をスケールダウンしたも
のに従って実施した。テンプレートには20倍希釈したcDNAを1μl/well用い
た。qPCRプログラムは、StepOnePlusシステムのFastプログラムを一
部改変して使用した(反応液量:20μl/well→5μl/well、Denatu
re Stepの反応時間:3秒→5秒、Annealing Stepの反応温度:す
べて60℃)。
【0026】
SGLT1、GLUT2およびGLUT5遺伝子の相対発現量は、ΔΔCT法にて算出
した。各遺伝子の相対発現量は、ハウスキーピング遺伝子であるGAPDHの相対発現量
にて補正した。試験に使用したプライマーの塩基配列は以下に示す。
【0027】
(試験結果)
腸上皮様に分化させたCaco-2細胞に、乳酸菌またはビフィズス菌21菌種のいず
れかを添加して24時間培養した時の、グルコーストランスポーターの遺伝子発現量を図
1に示した。SGLT1およびGLUT5については、すべての供試菌株が遺伝子発現を
増加させた(Control群と比較して、SGLT1は約1.5-2.5倍、GLUT
5は約1.2-2.7倍)。また、GLUT2についても、ラクトバチルス アミロボラ
ス、ラクトバチルス パラカゼイ サブスピーシーズ パラカゼイ、ラクトバチルス ロ
イテリ、ラクトバチルス ラムノーサスの4菌種は遺伝子発現にほとんど影響を与えなか
ったが、それ以外の17菌種は遺伝子発現を増加させた(Control群と比較して約
1.2-2.3倍)。したがって、乳酸菌およびビフィズス菌の菌体は、菌種によらず、
単糖トランスポーターの遺伝子発現を増加させ、腸管における糖の取り込みを増加させる
ことが示唆された。
【産業上の利用可能性】
【0028】
本発明によれば、ラクトバチルス(Lactobacillus)属、ラクトコッカス
(Lactococcus)属、リューコノストック(Leuconostoc)属また
はビフィドバクテリウム(Bifidobacterium)属に属する菌の菌体を有効
成分とする腸管における糖吸収促進用組成物を提供することができる。
【配列表】