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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-18
(45)【発行日】2024-09-27
(54)【発明の名称】試験サンプルの温度変調特性の測定
(51)【国際特許分類】
   H01L 21/66 20060101AFI20240919BHJP
【FI】
H01L21/66 B
【請求項の数】 20
(21)【出願番号】P 2022563978
(86)(22)【出願日】2021-04-22
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2023-05-31
(86)【国際出願番号】 US2021028509
(87)【国際公開番号】W WO2021216793
(87)【国際公開日】2021-10-28
【審査請求日】2024-03-01
(31)【優先権主張番号】20171264.3
(32)【優先日】2020-04-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】21165918.0
(32)【優先日】2021-03-30
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
(31)【優先権主張番号】17/235,902
(32)【優先日】2021-04-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】500049141
【氏名又は名称】ケーエルエー コーポレイション
(74)【代理人】
【識別番号】110001210
【氏名又は名称】弁理士法人YKI国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】ピーターセン ディルク ヨルト
(72)【発明者】
【氏名】ハンセン オレ
(72)【発明者】
【氏名】ヘンリクセン ヘンリク ハートマン
(72)【発明者】
【氏名】グラルニク ベニー
【審査官】安田 雅彦
(56)【参考文献】
【文献】特表2003-509695(JP,A)
【文献】特表2010-540890(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
H01L 21/66
G01R 31/26-31/3193
G01N 27/00-27/24
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
試験サンプルの温度変調に応じて特性を測定するための方法であって、
導電性材料または半導体材料から形成された前記試験サンプルを用意することと、
少なくとも2つの端子、および、前記端子と前記導電性材料または半導体材料との間の少なくとも2つの導電性相互接続部を用意することであって、前記2つの導電性相互接続部が、前記導電性材料または半導体材料の2つの位置に接触する、端子および導電性相互接続部を用意することと、
電流を発生させるための電源および電気回路を用意し、前記端子を使用して、前記電流を前記導電性材料または半導体材料に注入することと、
前記端子を使用して、前記導電性材料または半導体材料の一部にかかる電圧を測定することと、
前記測定された電圧の3次高調波周波数成分の値の関数として前記特性を決定することと、
前記試験サンプルを合格とするまたは不合格とするための閾値を定義することと、
を含む方法。
【請求項2】
請求項1に記載の方法であって、前記測定された電圧の関数として前記特性を決定することをさらに含む方法。
【請求項3】
請求項1に記載の方法であって、前記特性が、抵抗温度係数、熱伝導性、熱伝導率、電荷担体集中、電気的および熱的幾何形状、線のエッジ粗さ、側壁角度、室温/基準温度における抵抗、ペルチェ係数、ゼーベック係数、または導体の電気的断面である方法。
【請求項4】
試験サンプルをスクリーニングするための方法であって、
導電性材料または半導体材料から形成された前記試験サンプルを用意することと、
少なくとも2つの端子、および、前記端子と前記導電性材料または半導体材料との間の少なくとも2つの導電性相互接続部を用意することであって、前記2つの導電性相互接続部が、前記導電性材料または半導体材料の2つの位置に接触する、端子および導電性相互接続部を用意することと、
電流を発生させるための電源および電気回路を用意し、前記端子を使用して、前記電流を前記導電性材料または半導体材料に注入することと、
前記端子を使用して、前記導電性材料または半導体材料の一部にかかる電圧を測定することと、
前記測定された電圧の3次高調波周波数成分を決定することと、
前記試験サンプルを合格とするまたは不合格とするための閾値を、前記3次高調波周波数成分の関数として決定することと、
前記3次高調波周波数成分の大きさが前記閾値よりも小さいときに、前記試験サンプルを合格とすることと、
前記3次高調波周波数成分の前記大きさが前記閾値よりも大きいときに、前記試験サンプルを不合格とすることと
を含む方法。
【請求項5】
請求項4に記載の方法であって、サンプルのセットにおいて測定された電圧の3次高調波周波数成分のセットを提供することをさらに含む方法。
【請求項6】
請求項5に記載の方法であって、前記閾値が前記3次高調波周波数成分のセットの関数である方法。
【請求項7】
請求項5に記載の方法であって、前記閾値が、前記3次高調波周波数成分のセットのうちの最大の大きさを有する前記3次高調波周波数成分との差10%以下である方法。
【請求項8】
請求項4に記載の方法であって、基準温度における前記導電性材料または半導体材料の電気抵抗を、前記電流、前記測定された電圧、および前記測定された電圧の前記3次高調波周波数成分の値の関数として決定することをさらに含む方法。
【請求項9】
請求項4に記載の方法であって、前記電流が、領域または前記試験サンプルを、背景温度を超える温度まで加熱するための振幅を有する方法。
【請求項10】
請求項4に記載の方法であって、前記測定された電圧を、電気部品もしくは相互接続部の形状をスクリーニングするためまたは形状を決定するための基準値のセットと比較することをさらに含む方法。
【請求項11】
請求項10に記載の方法であって、前記基準値のセットが、加熱により生じる電圧の関数である、導電層もしくは導電線の形状に関連する座標または対を含む方法。
【請求項12】
請求項10に記載の方法であって、前記基準値のセットが、加熱により生じる3次高調波周波数における電圧の関数である、導電層もしくは導電線の形状に関連する座標または対を含む方法。
【請求項13】
請求項10に記載の方法であって、前記試験サンプルを合格とするまたは不合格とするために、前記基準値のセットにおいて目標基準値を定義することをさらに含む方法。
【請求項14】
請求項13に記載の方法であって、前記電圧と前記目標基準値との差が前記閾値よりも大きいときに、前記試験サンプルを不合格とすることをさらに含む方法。
【請求項15】
請求項13に記載の方法であって、前記電圧と前記目標基準値との差が前記閾値よりも小さいときに、前記試験サンプルを合格とすることをさらに含む方法。
【請求項16】
請求項10に記載の方法であって、前記測定された電圧を前記基準値のセットと比較することをさらに含む方法。
【請求項17】
抵抗温度係数を決定するための方法であって、
導電性材料または半導体材料から形成された試験サンプルを用意することと、
少なくとも4つの端子、および、前記端子と前記導電性材料または半導体材料との間の少なくとも4つの導電性相互接続部を用意することであって、前記4つの導電性相互接続部が、前記導電性材料または半導体材料の4つの位置に接触する、端子および導電性相互接続部を用意することと、
電流を発生させるための電源および電気回路を用意することと、
前記端子のセットのうちの2つの端子の第1の組合せを使用して、第1の電流を前記試験サンプルに注入することと、
前記端子のセットのうちの2つの端子の第2の組合せを使用して、第1の電圧を測定することと、
前記端子のセットのうちの2つの端子の第3の組合せを使用して、第2の電流を前記試験サンプルに注入することと、
前記端子のセットのうちの2つの端子の第4の組合せを使用して、第2の電圧を測定することと、
前記抵抗温度係数または前記抵抗温度係数に比例する値を、前記第1の電流、前記第2の電流、前記第1の電圧、および前記第2の電圧の関数として決定することであり、前記第1の電流、前記第2の電流、前記第1の電圧、および前記第2の電圧から、伝達抵抗Rとゼロ電流伝達抵抗R との比R/R の関数として決定すること
を含む方法。
【請求項18】
請求項17に記載の方法であって、前記第3の組合せが前記第2の組合せに等しく、前記第4の組合せが前記第1の組合せに等しい方法。
【請求項19】
請求項17に記載の方法であって、前記第1の組合せが前記第3の組合せとは異なる方法。
【請求項20】
請求項17に記載の方法であって、前記第2の組合せが前記第4の組合せとは異なる方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、いくつかの集積回路もしくはメモリセルを有するウエハ、または電気特性もしくは幾何学的特性を測定する必要がある電気部品を作製する際に使用する材料などの試験サンプル(試験中のデバイス)の電気特性の測定に関する。
【背景技術】
【0002】
本出願は、参照により開示が本明細書に組み込まれている、2020年4月24日に出願された欧州特許出願第20171264.3号および2021年3月30日に出願された欧州特許出願第21165918.0号の優先権を主張する。
【0003】
一般的に、マイクロ多端子プローブは、いくつかのカンチレバーを試験サンプルに着地させ、試験サンプルに電流を注入した後に、カンチレバーのうちの2つの間の電圧を測定することにより、試験サンプルに使用されている。
【0004】
このようにして、ウエハまたはウエハ上の回路の特定部分が所定のまたは所望の仕様に従っているかどうかを確認することができる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】特開2003-509695号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
しかしながら、電気回路部品はますます小型化されるにつれて、小さい試験電流であっても誤った試験値をもたらすことがある。すなわち、電流により試験サンプルが加熱されて、局所的な加熱のない室温で測定されるはずのものとは著しく異なる(一般的に、大きい)測定抵抗になることがある。
【0007】
このような熱的作用を使用して、抵抗温度係数などの温度依存性の特性を測定することもできる。このような作用を使用して、試験サンプルの幾何形状、または試験サンプルの構造的欠陥および/もしくは組成的欠陥の有無を判定することもできる。
【課題を解決するための手段】
【0008】
上記の目的および利点は、本発明の説明から明らかになる多くの他の目的および利点とともに、本発明の第1の態様に従い、以下によって得られる。
【0009】
試験サンプルの温度変調に応じて特性を測定するための方法は、導電層もしくは導電線もしくは磁気トンネル接合などの導電性材料または半導体材料から形成された前記試験サンプルを用意することと、4つの端子などの少なくとも2つの端子、および、前記2つもしくは4つの端子と前記導電性材料または半導体材料との間の少なくとも2つもしくは4つの導電性相互接続部を用意することであって、前記2つもしくは4つの導電性相互接続部が、前記導電性材料または半導体材料の2つもしくは4つの位置に接触する、端子および導電性相互接続部を用意することと、電流を発生させるための電源および電気回路を用意し、前記端子を用いて、前記電流を前記導電性材料または半導体材料に注入することと、前記端子を用いて、前記導電性材料または半導体材料の一部にかかる電圧を測定することと、前記測定された電圧の3次高調波周波数成分の値の関数として前記特性を決定することとを含む。
【0010】
特性は、前記測定された電圧の基本周波数成分の値などの、前記測定された電圧の関数として決定されてよい。
【0011】
本発明の第2の態様によれば、上記の目的および利点は以下によって得られる。
【0012】
抵抗温度係数を決定するための方法は、導電層もしくは導電線もしくは磁気トンネル接合などの導電性材料または半導体材料から形成された試験サンプルを用意することと、少なくとも4つの端子を含む端子のセット、および、前記端子と前記導電性材料または半導体材料との間の少なくとも4つの導電性相互接続部を用意することであって、前記4つの導電性相互接続部が、前記導電性材料または半導体材料の4つの位置に接触する、端子のセットおよび導電性相互接続部を用意することと、電流を発生させるための電源および電気回路を用意することと、前記端子のセットのうちの2つの端子の第1の組合せを用いて、第1の電流を前記試験サンプルに注入することと、前記端子のセットのうちの2つの端子の第2の組合せを用いて、第1の電圧を測定することと、前記端子のセットのうちの2つの端子の第3の組合せを用いて、第2の電流を前記試験サンプルに注入することと、前記端子のセットのうちの2つの端子の第4の組合せを用いて、第2の電圧を測定することと、抵抗温度係数または抵抗温度係数に比例する値を、前記第1の電流、前記第2の電流、前記第1の電圧、および前記第2の電圧の関数として決定することとを含む。
【0013】
セットは、別個の要素の集合体、すなわち、例えば4つの端子の集合体として理解される。
【0014】
本発明の第3の態様によれば、上記の目的および利点は以下によって得られる。
【0015】
試験サンプルの電気特性を決定するための方法は、導電層もしくは導電線もしくは磁気トンネル接合などの導電性材料または半導体材料から形成された前記試験サンプルを用意することと、4つの端子などの少なくとも2つの端子、および、前記2つの端子と前記導電性材料または半導体材料との間の少なくとも2つの導電性相互接続部を用意することであって、前記2つの導電性相互接続部が、前記導電性材料または半導体材料の2つの位置に接触する、端子および導電性相互接続部を用意することと、電流を発生させるための電源および電気回路を用意し、前記端子を用いて、前記電流を前記導電性材料または半導体材料に注入することと、前記端子を用いて、前記導電性材料または半導体材料の一部にかかる電圧を測定することと、基準温度における前記導電性材料または半導体材料の電気抵抗を、前記注入された電流、前記測定された電圧、および前記測定された電圧の3次高調波周波数成分の値の関数として決定することとを含む。
【0016】
温度変調に応じて特性を測定することは、試験サンプルを背景温度よりも高い温度まで加熱すること、および熱が試験サンプルにどのように影響するかを判定することを意味する。
【0017】
例えば、熱は、試験サンプルの線の物理的形状に応じて様々な速度で、線から離れて拡散することがある。このように、試験サンプルの形状を推測することもできる。このように、特性は温度関連特性とも言える。
【0018】
特性は、抵抗温度係数であっても、ペルチェ係数またはジュールトムソン係数などの熱電係数であってもよい。
【0019】
電流源は、測定に使用する電流を供給する電気回路である。電流源は、供給される電圧を電流に変換することができる電圧源として設けられてもよい。
【0020】
試験サンプルをスクリーニングすることは、測定を行うこと、および試験サンプルが製造仕様に適合するかどうかを判定することを意味する。このようなスクリーニングは、一般的に製造中に行われる。試験サンプルは、仕様に適合する場合、合格とされて、製造ラインにおいて続行することができる。試験サンプルは、仕様に適合しない場合、不合格と(廃棄)され得る。
【0021】
一例は、スクリーニングされる試験サンプルの一部の形状であり得る。形状が仕様に適合しない場合、試験サンプルの機能が損なわれることがあり、試験サンプルは不合格とされることがある。形状は、試験サンプルの電気部品または部品間の相互接続部などの試験サンプルの一部の断面であってよい。形状は、試験サンプルのどこかに存在するノッチまたは窪みであってもよい。形状は、線のエッジ粗さ、または表面粗さ、または他の構造的欠陥もしくは組成的不純物、または不均一な電気特性、または空隙/空洞、または粒界、または粒度分布などであってもよい。
【0022】
試験サンプルの形状を判定することは、試験サンプルの電気部品または部品間の相互接続部などの試験サンプルの一部の形状を判定することを指す。形状は、断面、長さ部分、ノッチなどの周期的形状構成の存在および数、形状構成の厚さなどであってよい。
【0023】
本開示の性質および目的をより十分に理解するために、添付図面と併せて以下の詳細な説明を参照する。
【図面の簡単な説明】
【0024】
図1A】4本のカンチレバーから構成されたマイクロ多端子プローブとともに、試験サンプルまたは試験中のデバイスの一部を示す図である。
図1B】同じマイクロ多端子プローブとともに、試験サンプルまたは試験中のデバイスの別の部分を示す図である。
図2A】3つの異なるフィンアスペクト比を有するフィン16の、3つの異なる外形を示す図である。
図2B】3つの異なるフィンアスペクト比を有するフィン16の、3つの異なる外形を示す図である。
図2C】3つの異なるフィンアスペクト比を有するフィン16の、3つの異なる外形を示す図である。
図2D】測定電圧をフィンアスペクト比に関連付けたグラフである。
図3A】電流を線に沿って流すときの、測定電圧に対する6つの異なる形状/幾何形状の作用を示す図である。
図3B】試験サンプルにおける異なる電気線の6つの例を示す図である。
図4A】実際のCuナノワイヤにおける図3のシミュレーションの実験的証明を示す図である。
図4B】300mmの製品ウエハにおけるナノワイヤアレイ(デバイス)の位置を示す図である。
図5】外挿ゼロ電流ナノワイヤ線路抵抗の例示的なウエハマップを示す図である。
図6】例示的なウエハマップを示す図である。
図7図5図6に示すノッチなしナノワイヤの抵抗温度係数(TCR)のウエハマップを示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0025】
特許請求される主題をある特定の実施形態に関して説明するが、本明細書に示される利益および特徴のすべてを提供するとは限らない実施形態を含む他の実施形態もまた、本開示の範囲内である。様々な構造的変更、論理的変更、プロセスステップの変更、および電子的変更を、本開示の範囲から逸脱することなく行うことができる。したがって、本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲を参照することによってのみ定義される。
【0026】
図1Aは、4本のカンチレバーから構成されたマイクロ多端子プローブとともに、試験サンプルまたは試験中のデバイスの一部を示す。
【0027】
試験サンプル10の一部は、基板12、好ましくはシリコン基板上のフィン電界効果トランジスタ(フィンFET)を示す。ソース端子とドレイン端子とがゲート14によって分離されている。
【0028】
図1AのフィンFETのフィンにおける測定は一例であり、測定は、試験サンプルの他の回路部分、例えば、磁気抵抗ランダムアクセスメモリ(MRAM)などのメモリセル、または別のタイプのトランジスタ、またはダイオード、またはバルク材料、または部品間の回路線で行われてもよい。
【0029】
図1Bは、同じマイクロ多端子プローブとともに、試験サンプルまたは試験中のデバイスの別の部分を示す。
【0030】
試験サンプルのこの部分は、フィンの代わりに3枚のナノシートがゲートによって分離されている、ゲートオールアラウンド電界効果トランジスタ(GAAFET)を示す。
【0031】
マイクロ多端子プローブ(詳細には、マイクロ4点プローブ(M4PP))20が試験サンプルに接触する様子が示され、4本のカンチレバーがサンプルの表面に接触して、サンプルの物理的特性を判定できるようになっている。
【0032】
マイクロ4点プローブは、プローブ本体22と、4本のカンチレバーとを含み、4本のカンチレバーは、プローブ本体から延びる第1のカンチレバー24i、第2のカンチレバー24k、第3のカンチレバー24j、および第4のカンチレバー24lを含む。
【0033】
各カンチレバーは、試験サンプルに接触するための電極を構成する。2つの隣接するカンチレバー間の距離(ピッチ)は、例えば約0.1μm、または1μm、または10μm、または100μmであってよい。
【0034】
各カンチレバーは、プローブ本体とは反対側に自由端を有する。各自由端は電極先端を構成する。
【0035】
4本のカンチレバーは、電流を注入するための第1の任意の対の電極i、j(例えば、それぞれ正電流端子用のiおよび負電流端子用のj)と、第2の任意の対の電極k、l(例えば、それぞれ正電位端子用のkおよび負電位端子用のl)と指定され、第2の任意の対の電極k、lは、その2つの電極先端間の電位差/電圧を測定するためのものである。
【0036】
共線4点プローブは、試験中の材料に接触する電極端子の位置が一方向のみに変化する4点プローブであり、例えば、x≠x≠x≠xであるが、y=y=y=yおよびz=z=z=zである。
【0037】
多端子プローブは、5本以上、例えば7本、11本、または12本などの4~20本のカンチレバーを有していてもよい。これらのカンチレバーは、任意の4点プローブを形成するようにサブサンプリングされてよい。例えば、7本のカンチレバーを有するプローブの場合、
【0038】
【数1】
の固有の4点サブプローブがある。サブプローブごとに、そのカンチレバーの各々を、端子iまたはjまたはkまたはlとして、相互に排他的にさらに割り当てることができる。任意の4点サブプローブにおいて、正確には4!=24のこのような固有の相互に排他的な端子割当て(構成)がある。所定のプローブによって行うことができる固有の4点抵抗測定の総数は、その固有の4点サブプローブの数と、サブプローブ当たりの固有の4点構成の数との積であり、例えば、7つの端子を有するプローブの場合、
【0039】
【数2】
である。
【0040】
試験サンプルの測定は、任意の数の端子と、これに対応して場合により任意の数の端子パッド、例えば、2つの端子検知のための2つのパッドまたは4つの端子検知のための4つのパッドまたはさらに多くのパッドを必要とし得る。
【0041】
端子から、線または相互接続部が、試験する試験サンプルの一部まで延びることができる。
【0042】
これは、試験する部分がプローブに対して小さすぎる場合に当てはまることがあり、すべての測定端子と試験する部分との直接の接触を防ぐ。これはまた、試験する部分が機能性酸化物の下に構造的に埋め込まれ、別の部分が測定する部分への接近を阻止する場合などにも当てはまる。
【0043】
このような場合、相互接続部は、プローブの例におけるカンチレバー/プローブ電極(または、プローブパッドからカンチレバー先端へ延びるプローブ上の線)に対応すると言える。
【0044】
図1Aで、4つの電極先端すべてがフィン16に接触して、フィンの物理的特性を判定できるようになっている様子が示される。この物理的特性は、例えば、抵抗、または(フィンに沿ったいずれかの断面における)幾何学的外形、または表面粗さおよび/または欠陥の密度、またはフィンが仕様に適合しているか否か、または抵抗温度係数に比例する値、またはゼーベック係数に比例する値、またはペルチェ係数に比例する値、または熱伝導率に比例する値、または抵抗温度係数に比例する値などであってよい。
【0045】
例えば、図1Aおよび図1Bに示す共線マイクロ4点プローブによって測定された2点抵抗Rijを、例えば、電極i、jの接触抵抗RC,iおよびRC,jに以下のように変換することができる。第1の電流注入電極と第2の電流注入電極(iおよびjのそれぞれ)との間の2点負荷抵抗Rijは、サンプルの直列(合成)抵抗Rsample、プラス電圧計をサンプルに接続するワイヤの各々のリード抵抗Rlead、プラス各電極とサンプルとの界面近くの接触抵抗Rに対応する。
【0046】
ij=Rsample+(Rlead,i+Rlead,j)+(RC,i+RC,j
【0047】
m個の電極を使用する任意の数nの2点抵抗測定の場合、上記の式を行列形式で解いて、仮にrank(M)≧m、すなわち、独立観測の数が未知数以上であるとして、
【0048】
=(MM)-1(Rload-Rsample-MRlead)により、各電極Rの接触抵抗を得ることができる。この後の式で、RloadおよびRsampleは、電極対i、j間の観測された負荷抵抗を含む列ベクトルn×1であり、対応するサンプル抵抗、それぞれRleadおよびRの推定値は、(設計からわかる)各電極のリード抵抗と求められる接触抵抗とをそれぞれ含む行ベクトル1×mである。疎行列Mはn×mであり、M(n,i)=M(n,j)=1、その他の要素はすべてゼロであることにより、測定構成ごとの通電電極を示す。
【0049】
空間的に均一な材料を考慮して、図1Aおよび図1Bに示すマイクロ4点プローブ、例えば共線4点プローブによって測定される伝達抵抗Rを、
【0050】
R=ρ/g
に従って、材料の空間的に均一な抵抗率ρに関連付けることができる。ここで、gは、電流の周波数f、調べた領域の幾何形状Ω、空間における4点カンチレバーの分布、外部磁場などに依存する「伝達関数」である。ゼロ外部磁場および低電流周波数(いわゆる準直流レジーム)で、いくつかの共通する領域の幾何形状における共線4点プローブの伝達関数gは、以下の通りである。1D電気領域に近い、長さL(L>>|x-x|)および断面積Aの細いワイヤの場合、gは、
【0051】
g=A/L (1D)
によって与えられる。
【0052】
2D電気領域に近い、厚さd(d>>|x-x|)の無限に薄いシートの場合、gは、
【0053】
【数3】
によって与えられる。
【0054】
3D電気領域に対応するバルク半空間の場合、gは、
【0055】
【数4】
によって与えられる。
【0056】
gの他の数式を、より詳細な領域の幾何形状、準直流レジーム外の周波数、無視できない磁場、非共線4点プローブ、有限の電気接触の大きさなどについて導くことができる。
【0057】
調べた領域Ωの抵抗率の空間的変化に対する(上記のような)伝達抵抗Rの感度
【0058】
【数5】
は、
【0059】
【数6】
と定義することができ、ここで、rは、1D領域のデカルト座標x、2D領域の(x,y)、および3D領域の(x,y,z)によって表される、空間における位置ベクトルであり、Jij(r)は、端子iおよびjにおける電流注入によるrの電流密度、Jkl(r)は、端子kおよびlにおける電流注入によるrの電流密度、(・)はドットベクトル積、dΩは、調べた領域の長さまたは面積または体積の無限小単位である。
【0060】
【数7】
は、空間重み関数(単位[m-n])であり、ここでnは領域の次元である。
【0061】
細いワイヤ(1D電気領域)内の抵抗率の局所的変化に対する伝達抵抗の感度は1であることがわかる。
【0062】
【数8】
【0063】
厚さdの無限に薄いシート(2D電気領域)の場合、感度は、
【0064】
【数9】
となる。
【0065】
バルク半空間(3D電気領域)の場合、感度は、
【0066】
【数10】
【0067】
となる。
【0068】
【数11】
の他の数式を、より詳細な領域の幾何形状、準直流レジーム外の周波数、無視できない磁場、非共線4点プローブ、有限の電気接触の大きさなどについて導くことができる。
【0069】
調べた材料の空間的に不均一な抵抗率ρを考慮して、マイクロ4点プローブによって測定された伝達抵抗Rは、
【0070】
【数12】
によって与えられ、これは、空間的に均一なρ(r)=ρの場合、前の関係R=ρ/gまで低下するが、抵抗率が空間的に可変である状況まで処理を延ばす。上記の式では、伝達抵抗は空間積分であり、各局所的な抵抗率ρ(r)が、プローブの感度
【0071】
【数13】
によって、各特定の位置における抵抗率の変化に対してさらに重み付けされる。
【0072】
抵抗率は温度に依存するため、材料が温度勾配を受けると抵抗率の空間的変化が生じる。抵抗率ρ、より一般には、抵抗Rの温度Tに対する依存性は、
【0073】
dR/R=dρ/ρ=αdT
によって表すことができ、ここで、αは抵抗温度係数(TCR)、dρ、dR、およびdTは、抵抗率、伝達抵抗、および温度のそれぞれの無限小の増加である。小さい温度変化ΔTの場合、一次線形近似は通常、
【0074】
ρ=ρ(1+αΔT)
で行われ、ここで、ρは、背景温度における抵抗率、すなわち、密閉室の「恒温槽」によって提供される熱以外の追加の熱が試験サンプルに加えられないときの抵抗率である。この室温または「背景温度」は基準温度とも呼ばれる。
【0075】
4点プローブの抵抗測定中、ジュール加熱により、調べた材料内で瞬間的な温度上昇ΔT(r)が生じる。オームの法則により、この有効温度上昇は、
【0076】
ΔT(r)=β(r)I
により表すことができ、ここで、Iは電流、β(r)は、特定の位置rにおける電気抵抗および特定の位置rから離れる熱拡散抵抗に比例する熱スケーリング関数である。長さLおよび断面積Aの細いワイヤの場合、ワイヤの下の半空間を占める熱伝導率κの絶縁基板と熱的に接触し、熱スケーリング関数βは、空間的に不変として、以下のように近似することができる。
【0077】
【数14】
【0078】
厚さdの無限に薄いシートの場合、薄いシートの下の半空間を占める熱伝導率κの絶縁基板により、熱スケーリング関数βは、以下のように近似することができる。
【0079】
【数15】
ここで、rは、サンプルとの通電電極の電気接触の大きさであり、x’およびy’は、以下による変換座標である。
【0080】
【数16】
【0081】
熱伝導率κの導電性バルク半空間の場合、熱スケーリング関数βは、以下のように近似することができる。
【0082】
【数17】
ここで、RC,iおよびRC,jは、第1の通電電極および第2の通電電極の先端近くにおける接触抵抗を指す。
【0083】
βの他の数式を、領域と基板の幾何形状とのより詳細な組合せについて導くことができる。
【0084】
提示された式
【0085】
【数18】
とΔT(r)=β(r)lとを組み合わせることにより、
【0086】
【数19】
が得られ、これをさらに以下のように再配置することができる。
【0087】
【数20】
ここで、Rは、I→0におけるゼロ電流伝達抵抗であり、Mは、サンプリング領域全体にわたって積分された、局所的な感度
【0088】
【数21】
と局所的な熱スケーリング関数β(r)との積である。Mを
【0089】
【数22】
とβ(r)との実際の推定値に基づいて計算できるとすると、電流Iの大きさは値の範囲にわたって変化し、比率R/Rは高い精度および正確さで実験的に測定され、調べた材料のTCRであるαについて上記の式を解くことができる。αは、以下で詳述するいくつかの実験経路によって決定することができる。
【0090】
ゼロ電流抵抗Rを有する材料を通って拡散する、振幅Iおよび角度周波数ωを有する交流電流の場合、測定電圧は、線形化した抵抗モデルによって、以下のようにモデル化することができる。
【0091】
V=Isin(ωt)・R[1+αΔT]
これを、ΔT=β[Isin(ωt)]の置換および三角関数の公式の使用により、以下のように展開することができる。
【0092】
【数23】
【0093】
基本周波数および3次高調波周波数における電圧振幅を、上記の式の対応する項を選択することによって数学的に分離することができ、ロックイン増幅器によって実験的に分離することができ、それにより、選択周波数の整数のサイクルにわたる二乗平均平方根値Vrmsを返す。上記の式の1ωおよび3ωの項を分離し、変数に対して整数のサイクルにわたる二乗平均平方根変換を行って、以下を得る。
【0094】
【数24】
【0095】
【数25】
ここで、下付き文字rmsは、二乗平均平方根変換された変数(例えば、
【0096】
【数26】
)を示す。V1ω,rmsおよびV3ω,rmsの共通項に着目し、最終的に以下を得る。
【0097】
【数27】
【0098】
したがって、基準温度における抵抗は、注入電流、基本周波数における電圧、および3次高調波周波数における電圧の3倍の関数である(すべての値はrms)。
【0099】
抵抗温度係数を決定するために、上記の関係を直接使用して、以下のように書いてもよい。
【0100】
【数28】
【0101】
置換を行うと、以下のようになる。
【0102】
【数29】
【0103】
抵抗温度係数αが、さらに原点と交わるy対xの線形勾配に対応することが容易にわかる。
【0104】
あるいは、差、すなわち、互いに減算する2組の測定値からαを得てもよい。2つの対称ピンの構成AおよびA’の場合、ゼロ加熱における1次高調波抵抗は等しい
【0105】
A,0=RA’,0
が、電流に伴う抵抗の増加は異なる。
【0106】
【数30】
【0107】
これら2つの構成の1次高調波抵抗を互いに減算すると、以下のようになる。
【0108】
【数31】
【0109】
(R-RA’)<<RA,0とすると、上記をy=(R-RA’)/Rおよびx=(M-MA’)/Iとして近似することができ、その線形勾配は、前述したようにαに対応するが、1次高調波抵抗のみに依存する。
【0110】
上記で例示したように、単一または複数の構成設定において、1次高調波抵抗および3次高調波抵抗の様々な組合せからαを取り出すことができ、データの内部整合性を交差確認すること、および起こり得る系統的誤差または二次作用を除去することが可能になる。
【0111】
図2A図Cは、3つの異なるフィンアスペクト比を有するフィン16の、3つの異なる外形を示す。図2Aは、上部よりも基部が広く、すなわちフィンアスペクト比が1よりも大きいフィンを示す。図2Bは、完全に鉛直な側壁を有し、すなわち上部の幅と基部の幅とが同じで、フィンアスペクト比が1であるフィンを示す。図2Cは、上部よりも基部が狭く、すなわちフィンアスペクト比が1よりも小さいフィンを示す。図2A図2Cの各々において、例えばフィンを横切る電流を加えることにより、フィンを背景温度よりも高い温度まで加熱することが示されている。
【0112】
試験サンプルの熱伝達は、フィン内の熱が試験サンプル内で空間的に分散することを意味する。熱がどのように分散し、温度勾配がどのように発生するかが、等温線によって分離された異なる濃淡で示されている(最も濃い塗りつぶし色は、電流が流れるフィンの最高温度を示し、最も薄い塗りつぶし色は、フィンから徐々に離れる最低温度を示す)。
【0113】
フィン内の熱流とフィンから離れて試験サンプルの残りの部分に入る熱流との両方が、フィンの形状および幾何形状に特に依存する。言い換えると、熱抵抗、または温度がフィンの内外でどのように発生するかは、フィンの形状および幾何形状に大きく依存する。フィンアスペクト比が1よりも大きい図2Aのフィンの場合、図2Bおよび図2Cにそれぞれ示すフィンの2つの他の形状と比べて、熱がフィンから遠く離れて放散されることがわかる。高温は、小さいアスペクト比を持つフィン、例えば図2Cに示すフィンにおいて最も局所化され、大きいアスペクト比を持つフィン、例えば図2Aに示すフィンにおいて最も局所化されない。
【0114】
基板12は図2A図2Cのすべてにおいて同じであり、フィン16の上部および電気絶縁酸化物17も、図2Dで模擬されるすべての点および図2A図2Cのすべてにおいて同じであると想定する。電流もすべての模擬フィンにわたって同一である。図2ではフィンのアスペクト比のみが変化し、結果として得られる測定電圧の高調波成分が、数値的に模擬されて取り出される。基板および/または酸化物を変化させると、熱伝達に影響し得る。例えば、より高い熱伝導率を有する基板は、他の材料特性および幾何形状がすべて変化しないままである場合、フィンからより多くの熱を奪う。
【0115】
温度に伴う抵抗の変化を使用して、フィンを特徴付けることができる。言い換えると、熱を伝えて再分散させるフィンの能力の変化(フィンの幾何形状および形状から生じる変化)を使用して、フィンのある幾何学的特性(例えば、そのアスペクト比)を直接定量化することができ、または、フィンがある必要とされる仕様(例えば、必要とされる閾値を超えるまたは下回るアスペクト比)に適合するか否かを間接的に推測することができる。
【0116】
試験サンプル(試験サンプルのそれぞれの特性)、例えば、図2のようなフィンアスペクト比について、目標値を定義することができる。閾値を、ある実験値もしくはその比率(例えば、電圧振幅)のセットとして、または所望の比率のパーセンテージとして、または所望の幾何学的特性のパーセンテージとして定義し、それを超えると試験サンプルが不合格とされるようにすることができる。それ以外の場合には、サンプルは合格とされる。例えば、閾値が20%で目標フィンアスペクト比が1である場合、測定されるフィンアスペクト比が0.8~1.2であれば試験サンプルは合格とされる。
【0117】
閾値は、測定される特性または目標値に依存してもよく、すなわち、仕様が大きい製造公差を有する場合、閾値は高くなり得、公差が小さい場合、閾値は低くなり得る。
【0118】
閾値は、測定の不確実性に依存してもよい。
【0119】
例えば、目標値がフィンアスペクト比1である場合、閾値を20%に定義することができるが、目標値がフィンアスペクト比1.2である場合、閾値を30%に定義することができる。
【0120】
2つの特性が互いに近い場合、例えば、所望のアスペクト比1を持つ試験サンプルと、所望のアスペクト比1.1を持つ試験サンプルとの場合、閾値は、2つの目標値の差よりも大きくならず、すなわち、例えば、10%以下の閾値であってもよい。
【0121】
任意の対の電極に電流を加えることによって、試験サンプルを加熱することができる。温度上昇は、電流振幅、または周波数、または両方に依存してもよい。一般的に、電流振幅は、温度上昇が測定可能であるように選択され、すなわち、温度上昇により、測定される電圧よりも電気ノイズ全般が大きくなるなど、電流が小さすぎてはいけない。
【0122】
当然、電流は、試験サンプルに有害または不可逆的な影響を与えるほど大きすぎてもいけない。
【0123】
その後、電流を加えた後の時点で電圧の測定を行うことができ、試験サンプルは、熱平衡、すなわち熱定常状態に達するための時間を有するようになっている。電流切換と電圧測定との間の時間遅延は、電流、試験材料の形状および寸法、ならびにその熱伝導率および/または抵抗率などの物理的特性に依存してもよい。
【0124】
測定は、加熱に使用する電流よりも小さい振幅を有する第1の対の電極に交流電流Isin(ωt)を加えること、および電流を第1の電極対に加えながら第2の電極対にかかる電圧を測定することによって行うことができる。
【0125】
抵抗率の温度依存性は、3次高調波周波数における振幅/値に依存する。したがって、3次高調波周波数の場合、測定電圧は比例関係V3ω~sin(3ωt)を有する。
【0126】
加熱量に比例する3次高調波における値は、測定電圧をフィルタリングすることにより、または周波数領域を考察することにより、すなわち、測定電圧を、まとまって観測信号になる基本的な周波数の連続体に分解することにより、見出すことができる。
【0127】
測定電圧を特定のサンプル特性に相関させるために、基準値のセットを決定することができ、すなわち、いくつかの対の電圧Vおよび特性P、すなわち(V,P)を含む基準セットを定義することができる。このような基準セットは、既知の材料に対して校正されて、観測電圧と対象サンプル特性との(実験的または理論的な)関数関係V=f(P)を確立し、その後、未知のサンプルに対して逆向きに使用されて、観測電圧P=f-1(V)からサンプル特性を得ることができる。Vを複数の周波数で記録することができるため、複合基準セット、例えば(V3ω/V1ω,P)の対、または多変量基準セット、例えば(V1ω,V3ω,P)の3重項などを、同様に、特定の対象サンプル特性の補間(ルックアップ)テーブルとして構成し使用することができることに留意されたい。
【0128】
例えば、顕微鏡を使用して光学的に決定された既知のフィンアスペクト比を持つフィンを有する試験サンプルのセットを想定する。(好ましくは各測定において同じ値の)電流が各既知のフィンに注入され、特定のフィンアスペクト比ごとに関連する電圧がわかるように、電圧を測定することができる。これが、図2Dの数値的模擬関係を実験的に決定することができる方法である。
【0129】
未知のアスペクト比を持つフィンを含む試験サンプルの場合、そのアスペクト比は、加えられた電流による測定電圧を基準値のセットと比較することによって決定されてよく、すなわち、測定電圧が、基準値のセット内の電圧(すなわち特に、電圧の1次高調波周波数および3次高調波周波数の振幅および位相)のうちの1つに相当するかどうかを判定する。相当する場合、未知のフィンが、基準測定値のフィンアスペクト比に相当するフィンアスペクト比を有すると推測することができる。
【0130】
図2Dは、測定電圧をフィンアスペクト比に関連付けたグラフを示す。
【0131】
電圧の指標がy軸に沿って示されている。詳細には、グラフは、基本周波数(ω),V1ωの振幅によって正規化/スケーリングされた3次高調波周波数(3ω),V3ωの振幅、すなわち、1次高調波電圧に対する3次高調波電圧の比率V3ω/V1ωを示す。
【0132】
プロットにおいて、x軸に沿って示されているフィンアスペクト比は電圧に伴って増加し、曲線上の最も左側の点のフィンアスペクト比1/5から曲線上の最も右側の点の値5まで進んでいる。
【0133】
図2Aのフィンは、「A」の隣の塗りつぶした四角で示されている。このフィンについて、1次高調波電圧に対する3次高調波電圧の比率0.061が測定されている。
【0134】
図2Bおよび図2Cのフィンも示されており、これらのフィンについて、1次高調波電圧に対する3次高調波電圧の測定された比率は、それぞれ約0.072および0.080である。
【0135】
図2Dは、基準値のセットを構成することができる。
【0136】
例えば、未知のフィンアスペクト比を持つフィンを有する試験サンプルは、1次高調波電圧に対する3次高調波電圧の比率0.07を有すると測定される。それにより、未知のフィンは約1のアスペクト比を有する可能性があると推測することができる。
【0137】
あるいは、試験サンプルが、20%の閾値/限界内でフィンアスペクト比1を持つフィンを有することが望ましい場合がある。0.075の電圧が測定される。しかしながら、これは、設定閾値/限界を超えるフィンアスペクト比2に対応する。したがって、試験サンプルは所望の仕様に適合しない。
【0138】
図3A図3Bは、熱電的に測定され得る試験サンプルの別の特性の例である。
【0139】
図3Bは、試験サンプルにおける異なる電気線の6つの例を示す。第1の線30は、その長さに沿って単一のノッチ32(窪み)を有し、すなわち、線はその中央に狭い通路を呈する。その隣の線は2つのノッチを有する。第3の線は4つのノッチを有する。第4の線、第5の線、および第6の線は、それぞれ8個、16個、および32個のノッチを有する。すべてのノッチは互いに等間隔に分散され、エッジ粗さの程度が変化する以外は同様の線を例示する。
【0140】
図3Aは、電流を線に沿って流すときの、測定電圧に対する6つの異なる形状/幾何形状の作用を示す。詳細には、図3Aにおいて、スケーリングされた3次高調波電圧がノッチの数に比例して上昇することがわかる。
【0141】
図2Dで測定電圧パラメータがフィンアスペクト比を示す(電流の流れに垂直な断面において)方法と同様に、図3Aの測定電圧パラメータは、線の形状についての基準値のセットを示す(この場合、モニタできる幾何学的特性は、電流の流れに沿っている)。
【0142】
基準値のセットは、既知の幾何形状を持つ線にかかる電圧を測定することによって、詳細には、対のプローブ電極間の電圧を、別の対のプローブ電極により線に沿って電流を加えながら測定し、電圧およびノッチの数/密度(V3ω/V1ω,P)の対を定義することによって決定されてよい。
【0143】
電圧高調波の比率およびノッチ密度の対を含む基準値のセットを使用して、導電線からなる試験サンプルがある仕様に適合するかどうかを判定し、または線に存在しそうなノッチの数を推測することができる。
【0144】
例えば、未知の試験サンプルについて、1次高調波電圧に対する3次高調波電圧の比率0.11が測定される。基準値のセットと比較すると、1次高調波電圧に対する3次高調波電圧の比率0.11は単一のノッチを有する線に対応することがわかる。
【0145】
同様に、試験サンプルが、例えば10%の公差/閾値内で16個のノッチを持つ線を有していなければならないという製造仕様があり得る。試験サンプルの測定中、観測電圧が0.129(電圧0.13を有する16個のサンプルによる基準の10%以内)である場合、このような特定の試験サンプルは合格とされると推測することができ、すなわち、試験サンプル上の測定された線が16個のノッチを有する可能性があると推測される。
【0146】
このようにして、例えば、新しい試験サンプルを試験可能にする前に何度も着地させなければならないか、または何度も電流注入を行う代わりに、4点プローブをサンプルに1度着地させ、1度の試験を行うだけで、熱電気特性を判定することができる。これにより、試験サンプルに対する測定/試験の影響を低減させ、より効率的になり、例えば、多数回の測定を行うことが可能になる。
【0147】
図4Aは、長さ9μm、断面約4000nmの実際のCuナノワイヤにおいて、ワイヤの長さに沿って等間隔のノッチの数が変化する、図3A図3Bのシミュレーションの実験的証明を示す図である。
【0148】
各ナノワイヤアレイは、7本の個々のナノワイヤを含み、単位長さ当たりのノッチ密度は、等比数列において0~26μm-1である。
【0149】
図4Aにおいて、13個のデバイス/試験サンプルからのデータが示され、互いに重ね合わされている。各デバイスのナノワイヤアレイは、9回測定されており、測定の不確実性は、図4Aにおけるシンボルサイズよりも小さい大部分の測定にある。
【0150】
全体としてV3ω/V1ωの比率は、図3A図3Bのシミュレーションによってまさに予想された通りに、ノッチ密度の関数として滑らかに単調に増加する。
【0151】
測定された13個のデバイスのうちの10個(デバイス23、26、41、44、60、65、82、86、101、104)において、測定されたV3ω/V1ωの比率は密に集まり(標準偏差<2%)、ノッチのないナノワイヤの場合の約0.0141±0.0002から、最も高密度にノッチが作製された(26μm-1)ナノワイヤの場合の0.0187±0.0004まで変化し、これは30%の相対信号変化を上回る。
【0152】
さらに、3つのデバイス(デバイス9、119、121)のV3ω/V1ωの比率は、データクラスタから著しく離れて位置し、同じ傾向を有するが異なる切片を有する(デバイス9、121)か、または大部分のデータと同じ傾向をたどるが1つの極端な外れ値を示す(デバイス119)。
【0153】
図4Bは、300mmの製品ウエハにおけるナノワイヤアレイ(デバイス)の位置を示す。
【0154】
図4Aの3つの外れ値は、ウエハの上縁(デバイス9)または下縁(デバイス119、121)に位置するデバイスに対応することが容易にわかる。
【0155】
光学マスクの位置決めおよび集束、化学蒸着の流動速度、レーザなどによる熱活性化のような重要な作製パラメータは、ウエハ全体にわたって変化することがあり、ウエハの周囲は、作製プロセスをウエハの中央と同じように維持することが特に困難な領域である。
【0156】
したがって、デバイス9、119、121においてウエハの周囲で変則的に測定されたV3ω/V1ωの比率は、ウエハのエッジの材料特性が許容範囲を越えることのインライン計量表示として機能することができ、そのようなデバイスはさらなる製造から廃棄される。
【0157】
あるいは、許容可能であれば、そのような周辺特性(例えばデバイス9、121)または外れ値(デバイス119)を持つデバイスは、機能が損なわれていないことを確かめるために、追加の注意および電気試験を必要とすることがある。
【0158】
13個の試験サンプルで測定されたデータは、13個の試験サンプルのうちの特定の試験サンプルが合格とされるか不合格とされるかを判定するためのデータセットとして使用することができる。
【0159】
したがって、所定のノッチ密度について、データセットは、13の3次高調波電圧またはそれから導き出された13の値から構成される。一般に、各3次高調波の値を、1次高調波の値で正規化することができ、または関数もしくは値に従って変換/スケーリングすることができる。例えば、データセットの各データ点は、図4Aに示す比率であってよい。
【0160】
図4Aにおいて、試験サンプル9、121は、試験サンプルの残りよりも高い3次高調波電圧を有し、サンプルの残りは、3次高調波値が「集まる」、すなわち互いに25%を越えて外れていないことがわかる。試験サンプル119は、外れ値または変則であるため、クラスタから除外されている。
【0161】
最高の3次高調波を有する「クラスタ」の試験サンプルは、試験サンプルを合格とするまたは不合格とするための閾値として設定されてよく、すなわち、閾値を超える3次高調波を有する試験サンプルは不合格とされ、閾値以下の場合には合格とされてよい。閾値は、図4Aに0.014~0.015の縞の水平線で示されている。
【0162】
あるいは、「クラスタ」の3次高調波の平均および標準偏差を使用して、試験サンプルが合格とされるか不合格とされるかを判定することができる。例えば、試験サンプルは、平均から1標準偏差を超える3次高調波を有する場合に不合格とされ、それ以外の場合に合格とされる。
【0163】
フィンおよび/または試験サンプルの他の部分から放散される熱を測定することにより、抵抗が増加する。
【0164】
したがって、室温で抵抗を測定すると、注入電流により、室温における実際の抵抗よりも抵抗値が大きくなり得る。
【0165】
したがって、測定電圧Vを加えられた電流Iで割ることによって得られる実験的な抵抗R=V/Iは、室温における理想的な抵抗Rからの大幅なオフセットを含み得る。
【0166】
加えられた電流による材料の局所的な加熱から生じるこのオフセットの大きさは、試験中の材料の電流振幅、周波数、および形状に依存する。
【0167】
前記オフセットは、例えば、3次高調波の振幅を測定された1次高調波電圧に加えること、すなわちR=(V1ω+3V3ω)/Iによって、または場合により3次高調波の振幅の他のスケーリングによって、低減させることができる。
【0168】
図5は、R=(V1ω+3V3ω)/I=R1ω+3R3ωの式を使用して、ノッチなしCuナノワイヤ(前述したように、長さ9μm、断面約4000nm)のサブセットについて得られた、外挿ゼロ電流ナノワイヤ線路抵抗の300mmのウエハマップを示す。
【0169】
測定は、1mA(13Hz)のrms交流電流で行われる。
【0170】
平均線路抵抗は307±34Ω(N=110のデバイス)である。
【0171】
線路抵抗は、ウエハ全体にわたって260~420Ωで滑らかに変化し、ウエハの中央および周囲にのみ変則的に高い抵抗を有する。
【0172】
図6は、R/R-1のウエハマップ、すなわち、標準の1次高調波抵抗測定値R=V1ω/Iに対して式R=R1ω+3R3ωによって導入される補正の相対的な大きさを示す。
【0173】
すべての補正の符号は負であり、その大きさは-4.68%~-3%で変化する。CuのバルクTCRが正であるとすると、すべての補正の負の符号は、予想値に完全に一致し、ジュール加熱は、測定中にナノワイヤの温度を上昇させて、すべての線路抵抗をより高い値にオフセットする。
【0174】
これらのデータは、3次高調波補正なしで行われた抵抗測定に、数パーセントまで大きくバイアスがかかることを示し、このことは、これらのデバイスの作製品質または適切な機能を評価するのに有害であり得る。
【0175】
図7は、図5図6に示す前述したノッチなしナノワイヤの抵抗温度係数(TCR)のウエハマップを示す。
【0176】
これは、R1ωおよびR3ωの同じ測定値に基づいているが、これらをRに線形的に組み合わせる代わりに、基板の熱伝導率および抵抗が想定され([0045]、l.3に詳述)、比率R3ω/R1ωが、対応する
【0177】
【数32】
の計算によりαに変換される。このような計算されたTCR値は、0.88~1.11‰/Kであり、平均1.04±0.04‰/Kである。
【0178】
これらの値は、バルクCuのTCR値よりも著しく低く、ナノワイヤのナノスケール寸法に完全に一致して、Mayades-Shatzkes理論により予測されるように担体拡散を抑制する。
【0179】
TCRウエハマップは、空間的に滑らかで、線路抵抗ウエハマップ(図5)に多少似ているが、N=110の値についてRおよびαのペアワイズ相関を行うと、ペアワイズ相関係数がかなり低く-0.37であることがわかり、これらの推定値は互いに独立していることが強く示される。
【0180】
本明細書に開示されたステップの一部またはすべては、コントローラによって実行することができる。コントローラは、マイクロ多端子プローブなどから測定値を受信することができる。コントローラは、一般的に、本明細書に記載された機能を実施するためのソフトウェアおよび/またはファームウェアにプログラムされたプログラム可能プロセッサを、システムの他の要素に接続するための適切なデジタルおよび/またはアナログインターフェースとともに備える。あるいはまたは加えて、コントローラは、コントローラの機能の少なくとも一部を実施する、ハードワイヤードおよび/またはプログラム可能ハードウェア論理回路を備える。実際には、コントローラは、図示し明細書に記載する信号を受信および出力するための適切なインターフェースを含む、複数の相互接続された制御ユニットを備えることができる。コントローラが本明細書に開示された様々な方法および機能を実施するためのプログラムコードまたは命令は、コントローラのメモリまたは他のメモリなどの可読記憶媒体に記憶されていてよい。
【0181】
本開示を1つ以上の特定の実施形態に関して説明したが、本開示の範囲から逸脱することなく、本開示の他の実施形態を作成できることを理解されたい。したがって、本開示は、添付の特許請求の範囲およびその順当な解釈によってのみ限定されるものと考えられる。
図1A
図1B
図2A
図2B
図2C
図2D
図3A
図3B
図4A
図4B
図5
図6
図7