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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】Tie2活性化剤及び飲食品
(51)【国際特許分類】
   A61K 31/122 20060101AFI20240920BHJP
   A61P 9/14 20060101ALI20240920BHJP
   A61P 43/00 20060101ALI20240920BHJP
   A23L 2/52 20060101ALI20240920BHJP
   A23L 33/10 20160101ALI20240920BHJP
【FI】
A61K31/122
A61P9/14
A61P43/00 111
A23L2/00 F
A23L2/52
A23L33/10
【請求項の数】 2
(21)【出願番号】P 2020140181
(22)【出願日】2020-08-21
(65)【公開番号】P2022035687
(43)【公開日】2022-03-04
【審査請求日】2023-07-06
(73)【特許権者】
【識別番号】591082421
【氏名又は名称】丸善製薬株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】100107766
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠重
(74)【代理人】
【識別番号】100070150
【弁理士】
【氏名又は名称】伊東 忠彦
(74)【代理人】
【識別番号】100107515
【弁理士】
【氏名又は名称】廣田 浩一
(74)【代理人】
【識別番号】100107733
【弁理士】
【氏名又は名称】流 良広
(74)【代理人】
【識別番号】100115347
【弁理士】
【氏名又は名称】松田 奈緒子
(72)【発明者】
【氏名】大戸 信明
(72)【発明者】
【氏名】南田 美佳
【審査官】春日 淳一
(56)【参考文献】
【文献】国際公開第2006/106986(WO,A1)
【文献】特開2012-246244(JP,A)
【文献】特開2006-008712(JP,A)
【文献】特開2013-241356(JP,A)
【文献】特開2009-263358(JP,A)
【文献】Acta Physiologica,2013年,Vol.207,p.405-415
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
A61K,A61P
CAplus/REGISTRY/MEDLINE/EMBASE/BIOSIS(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
アスタキサンチンを含有するTie2活性化剤であって、
前記アスタキサンチンが、3,3’-ジヒドロキシ-β,β-カロテン-4,4’-ジオンであり、
Tie2の活性化が、Tie2をリン酸化し、リン酸化Tie2に変換することであることを特徴とするTie2活性化剤。
【請求項2】
Tie2の活性化のために用いられる飲食品であって、
請求項1に記載のTie2活性化剤を含有し、
Tie2の活性化が、Tie2をリン酸化し、リン酸化Tie2に変換することであることを特徴とする飲食品。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、Tie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤、並びに飲食品に関する。
【背景技術】
【0002】
血管は、血管内皮細胞と血管壁細胞(血管平滑筋細胞やペリサイト)とが、細胞外マトリックスを介して間接的に、又は直接的に接着する構造を有しており、酸素及び栄養素を生体組織に供給し、生体組織から老廃物を消去する機能を有している。
【0003】
一般に、血管の形成は、新たに血管が形成される血管発生(Vasculogenesis)と、形成された既存の血管が伸長し、分岐することにより、新たな血管のネットワークが形成される血管新生(Angiogenesis)との2段階に分けられる。前者は、血管内皮増殖因子(Vascular endothelial growth factor:VEGF)が作用し、脈管形成とよばれる血管の初期発生からその後の血管新生に至るまで非常に広い範囲の血管形成に関与するものである。後者は、アンジオポエチン(Angiopoietin:Ang)が作用し、血管内皮細胞と血管壁細胞との接着の制御、血管の構造的安定化に関与するものである。
【0004】
血管は通常の酸素状況においては、血管内皮細胞とその周囲を裏打ちする血管壁細胞とが強固に接着しており、血管構造が安定に保たれているが、組織で低酸素が生じると血管壁細胞が血管内皮細胞から脱離し、無秩序な血管が増生することがある。このような現象(血管新生)は、腫瘍、慢性関節リウマチ、糖尿病網膜症、高脂血症、高血圧などの血管病変を主体とした疾患において、しばしば観察されている。
【0005】
血管新生は、血管内皮細胞に発現する受容体型チロシンキナーゼであるTie2(Tyrosine kinase with Ig and EGF homology domain2)を活性化させることにより、抑制されることが知られている(例えば、特許文献1参照)。また、血管狭小化又は血管拡大化の抑制が原因となって生じる虚血性疾患においては、Tie2の活性化により、血管腔が拡大化されることが報告されている(例えば、非特許文献1参照)。また、Tie2の活性化により、血管内皮細胞の細胞死を抑制することも報告されている(例えば、非特許文献2参照)。
【0006】
このようにTie2の活性化により、血管新生が抑制されることが知られているだけでなく、血管を成熟化及び安定化させることも知られている。
例えば、血管再生医療においては、Tie2の活性化により、血管における血管内皮細胞と血管壁細胞との接着を誘導して、血管を成熟化させることが知られている。また、例えば、種々の細胞内外の血管構造を破綻させる環境因子に対しては、Tie2の活性化により、血管の不安定化を抑制し、血管を安定化させることが知られている。なお、本発明における前記血管の安定化には、例えば、腫瘍や糖尿病性網膜症などで観察される血管壁細胞が血管内皮細胞に接着しないことによる無秩序な血管が増生するような疾患において知られている、Tie2の活性化によって血管壁細胞を内皮細胞に接着させ、血管を正常化させることも含まれる。
【0007】
上記したようなTie2の活性化により血管新生を抑制する天然由来の物質としては、桂皮の抽出物(例えば、特許文献1参照)などが知られている。また、血管新生を抑制する物質としては、スラミン(ポリスルホン化ナフチルウレア化合物)(例えば、特許文献2参照)などが知られている。
【0008】
しかしながら、より優れたTie2活性化作用、血管の成熟化作用、又は血管の安定化作用を有する安全性の高い新たな素材に対する要望は依然として強く、その速やかな開発が強く求められているのが現状である。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0009】
【文献】特開2009-263358号公報
【文献】特表平9-503488号公報
【非特許文献】
【0010】
【文献】Thurston G. et al.,Science.,1999 Dec 24;286(5449):2511-4.
【文献】Cho C.H.et al.,Proc.Natl.Acad.Sci.USA,2004 Apr 13;101(15):5553-8.
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0011】
本発明は、前記従来における諸問題を解決し、以下の目的を達成することを課題とする。即ち、本発明は、優れたTie2活性化作用を有し、安全性の高いTie2活性化剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた血管の成熟化作用を有し、安全性の高い血管の成熟化剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れた血管の安定化作用を有し、安全性の高い血管の安定化剤を提供することを目的とする。
また、本発明は、優れたTie2活性化作用、血管の成熟化作用、及び血管の安定化作用の少なくともいずれかを有し、安全性の高い飲食品を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0012】
前記課題を解決するために本発明者が鋭意検討を重ねた結果、アスタキサンチンが、優れたTie2活性化作用、血管の成熟化作用、及び血管の安定化作用の少なくともいずれかを有することを知見し、本発明を完成したものである。
【0013】
本発明は、本発明者らの前記知見に基づくものであり、前記課題を解決するための手段としては、以下の通りである。即ち、
<1> アスタキサンチンを含有することを特徴とするTie2活性化剤である。
<2> アスタキサンチンを含有することを特徴とする血管の成熟化剤である。
<3> アスタキサンチンを含有することを特徴とする血管の安定化剤である。
<4> Tie2の活性化、血管の成熟化、及び血管の安定化の少なくともいずれかのために用いられる飲食品であって、
前記<1>に記載のTie2活性化剤、前記<2>に記載の血管の成熟化剤、及び前記<3>に記載の血管の安定化剤の少なくともいずれかを含有することを特徴とする飲食品である。
【発明の効果】
【0014】
本発明のTie2活性化剤によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れたTie2活性化作用を有し、安全性の高いTie2活性化剤を提供することができる。
本発明の血管の成熟化剤によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた血管の成熟化作用を有し、安全性の高い血管の成熟化剤を提供することができる。
本発明の血管の安定化剤によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れた血管の安定化作用を有し、安全性の高い血管の安定化剤を提供することができる。
本発明の飲食品によると、従来における前記諸問題を解決し、前記目的を達成することができ、優れたTie2活性化作用、血管の成熟化作用、及び血管の安定化作用の少なくともいずれかを有し、安全性の高い飲食品を提供することができる。
【発明を実施するための形態】
【0015】
(Tie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤)
本発明のTie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤は、アスタキサンチンを少なくとも含有し、更に必要に応じてその他の成分を含有する。
【0016】
前記Tie2活性化剤は、Tie2をリン酸化することで、その活性体(リン酸化Tie2)に変換するTie2活性化作用を有する。前記Tie2が活性化されると、細胞内チロシンキナーゼドメインの自己リン酸化を惹起し、血管内皮細胞と血管壁細胞との接着が誘導される。血管狭小化あるいは血管拡大化の抑制が原因となって生じる虚血性疾患においては、Tie2の活性化により、血管腔が拡大化される。また、Tie2の活性化により、血管内皮細胞の細胞死が抑制される。
【0017】
前記血管の成熟化剤は、血管内皮細胞と血管壁細胞との接着を誘導して、血管内環境因子(細胞及び液性因子)が容易には血管外に漏出しないような血管内皮細胞間の接着斑を形成する成熟化作用を有する。また、血管再生医療においては、Tie2の活性化により、血管における血管内皮細胞と血管壁細胞との接着を誘導して、血管を成熟化させることが可能である。
【0018】
前記血管の安定化剤は、既存の血管に対する障害、血管内皮細胞同士の解離、及び血管内皮細胞と血管壁細胞の解離を抑制する作用、及び血管内皮細胞の細胞死を抑制する安定化作用を有する。また、種々の細胞内外の血管構造を破綻させる環境因子に対しては、Tie2の活性化により、血管の不安定化を抑制し、血管を安定化させることが可能である。
また、前記血管の安定化剤が奏する作用には、血管内皮細胞同士の接着を高め、血管壁細胞の血管内皮細胞への裏打ちを促進することにより、血管透過性の破綻した血管や血管の無秩序な増生を招くような異常な血管を、正常な状態にする正常化作用も含まれる。また、腫瘍や糖尿病性網膜症などで観察される血管壁細胞が血管内皮細胞に接着しないことによる無秩序な血管が増生するような疾患においては、Tie2の活性化により、血管壁細胞を内皮細胞に接着させ、血管を正常化させることが可能である。
【0019】
前記アスタキサンチンが、Tie2活性化作用、血管の成熟化作用、及び血管の安定化作用の少なくともいずれかの優れた作用を有し、Tie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤として有用であることは、従来は全く知られておらず、本発明者らによる新たな知見である。
【0020】
<アスタキサンチン>
前記アスタキサンチンとしては、特に制限はなく、公知のアスタキサンチンを適宜選択することができ、魚類、甲殻類、植物類、藻類及びバクテリアや菌類のいずれかのものから抽出、精製された天然由来のものであってもよいし、合成により製造したものであってもよい。
【0021】
狭義でのアスタキサンチンは、476nm(エタノール)、468nm(ヘキサン)に吸収極大を持つ赤色の色素であり、その化学構造は3,3’-dihydroxy-β,β-carotene-4,4’-dione(C4052、分子量596.82)である。
アスタキサンチンは、分子の両端に存在する環構造の3(3’)-位の水酸基の立体配置により、3S,3S’-体、3S,3R’-体(meso-体)、3R,3R’-体の3種の異性体が存在する。さらに分子中央の共役二重結合のcis-、trans-の異性体も存在する。本発明においてはいずれのものであっても用いることができる。
【0022】
前記3,3’-位の水酸基は脂肪酸とエステルを形成することができる。オキアミから得られるアスタキサンチンは、脂肪酸が2個結合したジエステル体、H. pluvialisから得られるアスタキサンチンは3S,3S’-体で、脂肪酸が1個結合したモノエステル体が多く含まれている。Phaffia Rhodozymaより得られるアスタキサンチンは3R,3R’-体であり、通常天然に見出される3S,3S’-体と反対の構造を持っている。
【0023】
本発明においては、特に断らない限り、前記アスタキサンチンはアスタキサンチン及びアスタキサンチンエステル等の誘導体を含む。さらに、前記誘導体には、上記の天然由来アスタキサンチンエステル以外にも、適宜合成したアスタキサンチンの塩、酸化体、還元体、幾何異性体、光学異性体、配糖体、エステル体などが挙げられ、これらを含めて「アスタキサンチン」と称し、いずれのものも使用することができる。
【0024】
前記アスタキサンチンとしては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、オキアミ、サケ、マス、福寿草、赤色酵母、ヘマトコッカス藻等の天然物から抽出したものや合成品を用いることができる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
【0025】
前記天然物からアスタキサンチンを得る際に用いる抽出溶媒は、水系溶媒であってもよいし、有機溶媒であってもよい。
前記有機溶媒としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、メタノール、エタノール、イソプロパノール、アセトン、1,3-ブチレングリコール、エチレングリコール、プロピレングリコール、グリセリン、酢酸エチル、エーテル、ヘキサンなどが挙げられる。また、超臨界状態の二酸化炭素などを用いることもできる。これらの溶媒は、1種単独で用いてもよいし、2種類以上を併用してもよい。
【0026】
前記アスタキサンチンの合成品を製造する方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0027】
本発明のTie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤における前記アスタキサンチンの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記Tie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤は、前記アスタキサンチンのみからなるものであってもよい。
【0028】
<その他の成分>
前記その他の成分としては、本発明の効果を損なわない限り、特に制限はなく、前記Tie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤の利用形態に応じて適宜選択することができる。例えば、賦形剤、防湿剤、防腐剤、強化剤、増粘剤、乳化剤、酸化防止剤、甘味料、酸味料、調味料、着色料、香料、美白剤、保湿剤、油性成分、紫外線吸収剤、界面活性剤、増粘剤、アルコール類、粉末成分、色剤、水性成分、水、皮膚栄養剤などが挙げられる。これらは、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
本発明のTie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤における前記その他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0029】
<用途>
本発明のTie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤の用途としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。例えば、前記Tie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤は、消化管で消化されるようなものではないことが確認されているので、Tie2の活性化、血管の成熟化、及び血管の安定化の少なくともいずれかのために用いられるための飲食品として好適に用いることができ、その配合量、用法、及び剤型としては、その使用目的に応じて適宜選択することができる。
前記飲食品における前記Tie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤の少なくともいずれかの配合量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができるが、前記アスタキサンチンの量に換算した場合、0.0001質量%~20質量%が好ましく、0.0001質量%~10質量%がより好ましい。
【0030】
前記用法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、経口、非経口、外用などの投与形態が挙げられる。
【0031】
前記剤型としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、錠剤、粉剤、カプセル剤、顆粒剤、エキス剤、シロップ剤等の経口投与剤;注射剤、点滴剤、坐剤等の非経口投与剤;化粧水、乳液、クリーム、軟膏、美容液、ローション、パック、ゼリー、リップクリーム、口紅、ファンデーション、入浴剤、石鹸、ボディーソープ、アストリンゼント、ヘアトニック、ヘアローション、ヘアクリーム、ヘアリキッド、ポマード、シャンプー、リンス、コンディショナー等の外用剤などが挙げられる。
前記各剤型のTie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤の製造方法としては、特に制限はなく、公知の方法を適宜選択することができる。
【0032】
前記Tie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤の使用量、使用期間等の使用方法としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0033】
また、前記Tie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤は、Tie2活性化作用、血管の成熟化作用、又は血管の安定化作用の作用機構に関する研究のための試薬としても用いることもできる。
【0034】
(飲食品)
前記飲食品は、Tie2の活性化、血管の成熟化、及び血管の安定化の少なくともいずれかのために用いられる飲食品であって、本発明のTie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤の少なくともいずれかを含有し、必要に応じて更にその他の成分を含有する。
【0035】
本発明の飲食品における前記Tie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤の少なくともいずれかの含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。前記飲食品は、前記Tie2活性化剤、血管の成熟化剤、及び血管の安定化剤の少なくともいずれかのみからなるものであってもよい。
【0036】
本発明の飲食品におけるその他の成分としては、特に制限はなく、飲食品に用いられる成分を適宜選択することができる。前記その他の成分は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。
前記飲食品におけるその他の成分の含有量としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
【0037】
前記飲食品としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えば、茶飲料、清涼飲料、炭酸飲料、栄養飲料、果実飲料、乳酸飲料等の飲料;アイスクリーム、アイスシャーベット、かき氷等の冷菓;そば、うどん、はるさめ、ぎょうざの皮、しゅうまいの皮、中華麺、即席麺等の麺類;飴、キャンディー、ガム、チョコレート、錠菓、スナック菓子、ビスケット、ゼリー、ジャム、クリーム、焼き菓子、パン等の菓子類;カニ、サケ、アサリ、マグロ、イワシ、エビ、カツオ、サバ、クジラ、カキ、サンマ、イカ、アカガイ、ホタテ、アワビ、ウニ、イクラ、トコブシ等の水産物;かまぼこ、ハム、ソーセージ等の水産・畜産加工食品;加工乳、発酵乳等の乳製品;サラダ油、てんぷら油、マーガリン、マヨネーズ、ショートニング、ホイップクリーム、ドレッシング等の油脂及び油脂加工食品;ソース、たれ等の調味料;カレー、シチュー、親子丼、お粥、雑炊、中華丼、かつ丼、天丼、うな丼、ハヤシライス、おでん、マーボドーフ、牛丼、ミートソース、玉子スープ、オムライス、餃子、シューマイ、ハンバーグ、ミートボール等のレトルトパウチ食品サラダ、漬物等の惣菜;種々の形態の健康・美容・栄養補助食品;錠剤、顆粒剤、カプセル剤、ドリンク剤、トローチ等の医薬品、医薬部外品などが挙げられる。なお、前記飲食品は上記例示に限定されるものではない。
【0038】
前記飲食品の用途としては、Tie2の活性化、血管の成熟化、及び血管の安定化の少なくともいずれかのために用いられる限り、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができる。
本発明の飲食品は、日常的に摂取することが可能であり、有効成分であるアスタキサンチンの働きによって、Tie2の活性化作用、血管の成熟化作用、及び血管の安定化作用の少なくともいずれかの作用をはじめとする様々な生理活性作用を極めて効果的に発揮させることができる。
【0039】
本発明のTie2活性化剤、血管の成熟化剤、血管の安定化剤、及び飲食品は、ヒトに対して好適に適用されるものであるが、それぞれの作用効果が奏される限り、ヒト以外の動物(例えば、マウス、ラット、ハムスター、イヌ、ネコ、ウシ、ブタ、サルなど)に対して適用することもできる。
【実施例
【0040】
以下、本発明の試験例、配合例を説明するが、本発明は、これらの試験例、配合例に何ら限定されるものではない。
【0041】
(試験例1:Tie2活性化作用試験-1)
被験試料として、アスタキサンチン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用い、下記の試験方法により、アスタキサンチンのTie2活性化作用を試験した。
【0042】
コンフルエントまで培養した正常ヒト臍帯静脈内皮細胞(Human umbilical vein endothelial cells:HUVEC)を、96ウェルプレートへ2.0×10細胞/0.1mL/ウェルとなるように播種し、低血清血管内皮細胞増殖用培地(倉敷紡績株式会社製、Humedia-EG2)を用いて一晩培養した。培養後、細胞刺激(被験試料添加)の3時間前に、上記培地を0.1mLの血管内皮細胞基礎培地(倉敷紡績株式会社製、Humedia-EB2)に置換し、再度培養を行った。その後、前記ウェル内に、前記Humedia-EB2で終濃度の2倍に調製した被験試料溶液を0.1mL添加して10分間のインキュベーションを行った。インキュベーション後、イムノアッセイキット(R&D Systems社製、Human Phospho-Tie2(Y992)Immunoassay)を用いてプロトコールに従い、細胞内のリン酸化型Tie2量及び総Tie2量を測定し、総Tie2に対するリン酸化型Tie2の比率を計算した。
また、陰性コントロールとしてジメチルスルホキシド(DMSO)を用い、同様に総Tie2に対するリン酸化型Tie2の比率を計算した。
そして、下記数式1に従いTie2活性化率を計算し、リン酸化作用を評価した。結果を表1に示す。
<数式1>
Tie2活性化率(%)=[{(A)/(B)}/{(C)/(D)}]×100
上記数式1中、A~Dは下記を表す。
A : 被験試料添加時のリン酸化型Tie2の測定値
B : 被験試料添加時の総Tie2の測定値
C : 陰性コントロールでのリン酸化型Tie2の測定値
D : 陰性コントロールでの総Tie2の測定値
【0043】
【表1】
【0044】
(試験例2:Tie2活性化作用試験-2)
被験試料として、アスタキサンチン(富士フイルム和光純薬株式会社製)を用い、下記のBa/F3-human Tie2を用いたTie2活性化作用試験(ウエスタンブロッティング法)を行い、アスタキサンチンのTie2活性化作用を試験した。
【0045】
マウスpro-B細胞(Ba/F3)にhuman Tie2(Ba/F3-human Tie2)を強制発現させた細胞を評価に用いた。
前記細胞を、10cmシャーレに播種し、10%FBS及び100pg/mLマウスIL-3含有RPMI-1640(Sigma-Aldrich社製)培地を用いて3日間培養した。培養後、細胞刺激(被験試料添加)の3時間前に、上記培地を10mLのFBS及びIL-3を含まないRPMI-1640培地に置換し、再度培養を行った。その後、FBS及びIL-3を含まないRPMI-1640培地を用いて細胞を4×10細胞/mLに調製し、マイクロチューブに0.5mLずつ分注した。前記マイクロチューブ内に、前記FBS及びIL-3を含まないRPMI-1640培地で終濃度の2倍に調製した被験試料溶液を0.5mL添加して15分間のインキュベーションを行った。インキュベーション後に細胞をPBSで洗浄した後、PhosphoSafeTM Extraction Reagent(Novagen社製)にて細胞抽出液を回収した。
回収した細胞抽出液を7.5% SDSゲルにて電気泳動し、PVDF膜に転写した。ブロッキング後、抗リン酸化Tie2抗体(R&D Systems社製)、抗Tie2抗体(Santa Cruz Biotechnology社製)、及びHRP標識2次抗体(Jackson ImmunoResearch社製)を用いてウエスタンブロッティングを行った。
また、陰性コントロールとしてジメチルスルホキシド(DMSO)を用い、同様に評価を行った。
バンドの検出及び解析は、画像撮影装置ChemiDoc XRS Plus及びImage Lab Software version 2.0(Bio-Rad Laboratories社製)にて行い、下記数式2に従いTie2活性化率を計算し、Tie2活性化作用を評価した。結果を表2に示す。
<数式2>
Tie2活性化率(%)=[{(E)/(F)}]/{(G)/(H)}]×100
上記数式2中、E~Hは下記を表す。
E : 被験試料添加時のリン酸化型Tie2のバンド強度
F : 被験試料添加時の総Tie2のバンド強度
G : 陰性コントロールでのリン酸化型Tie2のバンド強度
H : 陰性コントロールでの総Tie2のバンド強度
【0046】
【表2】
【0047】
試験例1及び試験例2の結果から、アスタキサンチンが、Tie2のリン酸化、即ち、Tie2の活性化作用を有することが認められた。そのため、アスタキサンチンによりTie2がリン酸化して活性化され、血管の成熟化及び血管の安定化がもたらされることが示唆された。
【0048】
(配合例1)
下記組成の錠剤を常法により製造した。
・ アスタキサンチン ・・・ 5.0mg
・ ドロマイト ・・・ 83.4mg
(カルシウム20%、マグネシウム10%含有)
・ カゼインホスホペプチド ・・・ 16.7mg
・ ビタミンC ・・・ 33.4mg
・ マルチトール ・・・ 136.8mg
・ コラーゲン ・・・ 12.7mg
・ ショ糖脂肪酸エステル ・・・ 12.0mg