(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】光導波路素子、光導波路デバイス、および光送信装置
(51)【国際特許分類】
G02F 1/01 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G02F1/01 C
(21)【出願番号】P 2020183025
(22)【出願日】2020-10-30
【審査請求日】2023-09-21
(73)【特許権者】
【識別番号】000183266
【氏名又は名称】住友大阪セメント株式会社
(73)【特許権者】
【識別番号】301022471
【氏名又は名称】国立研究開発法人情報通信研究機構
(74)【代理人】
【識別番号】110001081
【氏名又は名称】弁理士法人クシブチ国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】高野 真悟
(72)【発明者】
【氏名】片岡 優
(72)【発明者】
【氏名】及川 哲
(72)【発明者】
【氏名】市川 潤一郎
(72)【発明者】
【氏名】山口 祐也
(72)【発明者】
【氏名】菅野 敦史
(72)【発明者】
【氏名】山本 直克
(72)【発明者】
【氏名】川西 哲也
【審査官】野口 晃一
(56)【参考文献】
【文献】特開2008-058436(JP,A)
【文献】特開2020-134876(JP,A)
【文献】特開平05-232417(JP,A)
【文献】特開平04-243217(JP,A)
【文献】特開2017-111338(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2014/0112611(US,A1)
【文献】特開2008-102451(JP,A)
【文献】特開2012-078376(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2008/0089633(US,A1)
【文献】特開昭61-252527(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02F 1/00-1/125
1/21-7/00
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
基板と、
前記基板内又は前記基板上に配された光導波路と、
光導波路に沿って設けられた、前記光導波路に作用して当該光導波路を伝搬する光波に位相変化を発生させる電極と、
を備え、
前記電極は、進行波型電極であり、
前記光導波路は、前記電極により前記光波が制御される作用部において、光の伝搬方向が反転する第1の折返し部を有し、
前記作用部は、前記電極を伝搬する電気信号の進行波の伝搬方向に沿って下流側の端部から所定距離の範囲である第1の作用部分
と、前記伝搬方向に沿って上流側の前記電気信号の入力端から所定距離の範囲である第2の作用部分
とを含み、
前記基板は、前記第1の作用部分及び前記第2の作用部分が形成された部分の分極方向が同じであって、
前記第1の作用部分及び前記第2の作用部分は、
それぞれ、前記第1の折返し部を挟んで前記電気信号の進行波の伝搬方向に沿って下流側及び上流側に配されて、それぞれに生ずる前記位相変化が互いに対し符号が逆となるように構成され、且つ、
前記第1の作用部分において前記光導波路に作用する部分の長さは、前記第2の作用部分において前記光導波路に作用する部分の長さより短い、
光導波路素子。
【請求項2】
前記電極は、前記第1の作用部分における電気信号の電圧減衰係数が、前記第2の作用部分における電圧減衰係数と異なるよう構成されている、
請求項
1に記載の光導波路素子。
【請求項3】
前記光導波路は、対を為す2つの並行導波路を含むマッハツェンダ型光導波路であり、
前記作用部は、前記対を為す2つの並行導波路で構成される、
請求項1
または2に記載の光導波路素子。
【請求項4】
前記第2の作用部分は、
光の伝搬方向が反転する第2の折返し部を有し、
前記第2の折返し部において前記対を為す並行導波路が互いに交差している、
請求項
1ないし3のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項5】
前記対を為す並行導波路は、前記第1の折返し部においては互いに交差していない、
請求項4に記載の光導波路素子。
【請求項6】
前記第2の作用部分は、
前記第2の折返し部を挟んで前記電気信号の進行波の伝搬方向に沿って下流側と上流側とに生ずるそれぞれの前記位相変化が、互いに同符号となるように構成される、
請求項4または5に記載の光導波路素子。
【請求項7】
前記基板は、強誘電体、半導体、または、高分子材料で構成され、
前記光導波路は、前記基板の一部として構成されるか、または前記基板上に配された高分子材料により構成され、
前記電極は、前記光導波路に光変調動作を行わせる、
請求項1ないし
6のいずれか一項に記載の光導波路素子。
【請求項8】
請求項1ないし
7のいずれか一項に記載の光導波路素子と、
前記光導波路素子を収容する筐体と、
を有する光導波路デバイス。
【請求項9】
請求項
8に記載の光導波路デバイスと、
当該光導波路デバイスに変調動作を行わせるための電気信号を出力する電子回路と、
を備える光送信装置。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、例えば光変調素子などの、光導波路を用いた機能素子である光導波路素子、そのような光導波路素子を用いた光導波路デバイスおよび光送信装置に関する。
【背景技術】
【0002】
高速/大容量光ファイバ通信システムにおいては、導波路型の光変調器を組み込んだ光送信装置が多く用いられている。中でも、電気光学効果を有するニオブ酸リチウム(LiNbO3)(以下、LNともいう)結晶を基板に用いた光変調素子は、インジウムリン(InP)、シリコン(Si)、あるいはガリウム砒素(GaAs)などの半導体系材料を用いた光変調素子に比べて、光の損失が少なく且つ広帯域な光変調特性を実現し得ることから、高速/大容量光ファイバ通信システムに広く用いられている。
【0003】
光ファイバ通信システムにおける変調方式は、近年の伝送容量の増大化の流れを受け、QPSK(Quadrature Phase Shift Keying)やDP-QPSK(Dual Polarization - Quadrature Phase Shift Keying)等、多値変調や、多値変調に偏波多重を取り入れた伝送フォーマットが主流となっている。
【0004】
一方、近年のインターネットサービスの普及加速は、通信トラフィックのより一層の増大を招き、光変調素子の更なる小型化、広帯域化、省電力化の検討が今も進められている。
【0005】
広帯域の観点では、現在広く使われている長距離光ファイバ通信用の光変調器では、光導波路内を伝搬する光波を制御する制御電極として、光導波路に沿って設けられた進行波型電極が用いられている。進行波型電極は、分布定数線路を構成するように配された複数の導体パターンで構成され、電気信号(変調信号)が入力される一方の端部に対向する他の端部が所定のインピーダンスで終端されている。これにより、進行波型電極では、電気信号が進行波となって一方向に伝搬し、当該進行波が光導波路内に電界を生じさせることで、当該光導波路内を伝搬する光波が制御される。
【0006】
このような進行波型電極は、集中定数型(パッド型)電極と比較して、インダクタンスおよびキャパシタンスから計算される時定数による高周波特性の制限を無視できるという優位性がある。
【0007】
その一方で、進行波型電極では、当該進行波型電極を構成する導体パターン内を電気信号が伝搬するときに、当該電気信号に無視し得ない伝搬損失が生じ得る。また、この伝搬損失は、周波数依存性を持つため、上記進行波となって伝搬する信号電圧のうち光導波路内を伝搬する光波の制御に寄与する実効的な電圧は、上記電気信号の周波数に依存して変化する。一般的には、伝搬損失は、電気信号の周波数が高いほど増大するため、光変調素子としての特性は、高周波になるほど駆動電圧が増大し、したがって、高周波になるほど応答感度は小さくなって、動作周波数帯域が制限される。
【0008】
基板上に形成された光導波路で構成される光変調素子の周波数応答特性を平坦化する技術として、従来、制御電極により光導波路内の光波が制御される作用部の一部に、基板の分極方向を調整して成る平坦化手段を設けることが知られている(特許文献1参照)。この光変調素子では、上記のように平坦化手段の分極方向を調整することにより、制御電極が作用部に発生させる誘導位相量を平坦化手段において減少させることで、周波数応答特性が平坦化される。
【0009】
上記従来の光変調素子は、単純な構成により周波数応答特性が平坦化されるため、製造の容易性やコストの面で有利となり得る。例えば、分極方向の調整は、高電界を発生する2枚の平行平板電極の間に上記基板の作用部を挿入することで容易に行い得る。
【0010】
しかしながら、上記従来技術では、目的とする分極の方向によっては上記高電界に対して基板を大きく傾ける必要が生じる。例えば、ニオブ酸リチウム(LN)結晶で構成されるXカット基板の場合、平坦化手段における分極調整の方向は、基板面に平行な方向に近くなり得る。この場合、上記平行平板電極の間に傾けた基板を挿入できる十分なスペースを確保すべく、上記平行平板電極の互いの離間距離を当該基板の平面サイズに応じて広げる必要が生ずる。
【0011】
その結果、平行平板電極には、より大きな電圧を印加することが必要となり、製造装置が大型化して製造コストの面で不利となる場合があり得る。したがって、上記従来技術では、所望のコストで実現し得る分極方向に制限が生ずることとなり、平坦化手段の設計に制約が生ずることとなり得る。すなわち、上記従来技術は、平坦化手段の設計自由度の観点で改善の余地がある。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0012】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0013】
上記背景より、基板に形成される光導波路を用いた光導波路素子において、様々な結晶方位を持つ基板においても容易かつ低コストで周波数特性を改善することのできる技術の実現が求められている。
【課題を解決するための手段】
【0014】
本発明の一の態様は、基板と、前記基板内又は前記基板上に配された光導波路と、光導波路に沿って設けられた、前記光導波路に作用して当該光導波路を伝搬する光波に位相変化を発生させる電極と、を備え、前記電極は、進行波型電極であり、前記光導波路は、前記電極により前記光波が制御される作用部において、光の伝搬方向が反転する第1の折返し部を有し、前記作用部は、前記電極を伝搬する電気信号の進行波の伝搬方向に沿って下流側の端部から所定距離の範囲である第1の作用部分と、前記伝搬方向に沿って上流側の前記電気信号の入力端から所定距離の範囲である第2の作用部分とを含み、前記基板は、前記第1の作用部分及び前記第2の作用部分が形成された部分の分極方向が同じであって、前記第1の作用部分及び前記第2の作用部分は、それぞれ、前記第1の折返し部を挟んで前記電気信号の進行波の伝搬方向に沿って下流側及び上流側に配されて、それぞれに生ずる前記位相変化が互いに対し符号が逆となるように構成され、且つ、前記第1の作用部分において前記光導波路に作用する部分の長さは、前記第2の作用部分において前記光導波路に作用する部分の長さより短い、光導波路素子である。
本発明の他の態様によると、前記電極は、前記第1の作用部分における電気信号の電圧減衰係数が、前記第2の作用部分における電圧減衰係数と異なるよう構成されている。
本発明の他の態様によると、前記光導波路は、対を為す2つの並行導波路を含むマッハツェンダ型光導波路であり、前記作用部は、前記対を為す2つの並行導波路で構成される。
本発明の他の態様によると、前記第2の作用部分は、光の伝搬方向が反転する第2の折返し部を有し、前記第2の折返し部において前記対を為す並行導波路が互いに交差している。
本発明の他の態様によると、前記対を為す並行導波路は、前記第1の折返し部においては互いに交差していない。
本発明の他の態様によると、前記第2の作用部分は、前記第2の折返し部を挟んで前記電気信号の進行波の伝搬方向に沿って下流側と上流側とに生ずるそれぞれの前記位相変化が、互いに同符号となるように構成される。
本発明の他の態様によると、前記基板は、強誘電体、半導体、または、高分子材料で構成され、前記光導波路は、前記基板の一部として構成されるか、または前記基板上に配された高分子材料により構成され、前記電極は、前記光導波路に光変調動作を行わせる。
本発明の他の態様は、上記いずれかの光導波路素子と、前記光導波路素子を収容する筐体と、を有する光導波路デバイスである。
本発明の更に他の態様は、前記光導波路デバイスと、当該光導波路デバイスに変調動作を行わせるための電気信号を出力する電子回路と、を備える光送信装置である。
【発明の効果】
【0015】
本発明によれば、基板に形成される光導波路を用いた光導波路素子において、様々な結晶方位を持つ基板においても、容易かつ低コストで周波数特性を改善することができる。
【図面の簡単な説明】
【0016】
【
図1】本発明の第1の実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図3】
図1に示す光変調素子の動作を説明するための図である。
【
図4】
図1に示す光変調素子における、
図2に示す従来の光変調素子に対する改善効果について説明するための説明図である。
【
図5】
図1に示す光変調素子における周波数応答についての、
図2に示す従来の光変調素子に対する改善効果について説明するための説明図である。
【
図6】第1の実施形態の第1の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図7】
図6に示す光変調素子における周波数応答の改善効果を示す図である。
【
図8】第1の実施形態の第2の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図9】
図8に示す光変調素子における周波数応答の改善効果を示す図である。
【
図10】第1の実施形態の第3の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図11】
図6に示す光変調素子における周波数応答の改善効果を示す第1の図である。
【
図12】
図6に示す光変調素子における周波数応答の改善効果を示す第2の図である。
【
図13】
図6に示す光変調素子における周波数応答の改善効果を示す第3の図である。
【
図14】本発明の第2の実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図15】本発明の第3の実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図16】
図15に示す光変調素子のXVI-XVI断面矢視図である。
【
図17】
図15に示す光変調素子のXVII-XVII断面矢視図である。
【
図18】第3の実施形態の変形例に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図19】
図18に示す光変調素子のXIX-XIX断面矢視図である。
【
図20】
図18に示す光変調素子のXX-XX断面矢視図である。
【
図21】本発明の第4の実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図22】
図21に示す光変調素子のXXII-XXII断面矢視図である。
【
図23】
図21に示す光変調素子のXXIII-XXIII断面矢視図である。
【
図24】本発明の第5の実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図25】
図24に示す光変調素子のXXV-XXV断面矢視図である。
【
図26】
図24に示す光変調素子のXXVI-XXVI断面矢視図である。
【
図27】本発明の第6の実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図28】
図27に示す光変調素子のXXVIII-XXVIII断面矢視図である。
【
図29】
図27に示す光変調素子のXXIX-XXIX断面矢視図である。
【
図30】本発明の第7の実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図31】
図30に示す光変調素子のXXXI-XXXI断面矢視図である。
【
図32】
図30に示す光変調素子のXXXII-XXXII断面矢視図である。
【
図33】本発明の第8の実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図34】本発明の第9の実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図35】本発明の第10の実施形態に係る光変調素子の構成を示す図である。
【
図36】
図35に示す光変調素子のXXXVI-XXXVI断面矢視図である。
【
図37】本発明の第11の実施形態に係る光変調デバイスの構成を示す図である。
【
図38】本発明の第12の実施形態に係る光送信装置の構成を示す図である。
【発明を実施するための形態】
【0017】
以下、本発明の実施形態について、図面を参照して説明する。
[第1実施形態]
まず、本発明の第1の実施形態について説明する。
図1は、本発明の第1の実施形態に係る光導波路素子の構成を示す図である。本実施形態では、光導波路素子は、例えばマッハツェンダ型光導波路を用いて光変調を行う光変調素子100である。
【0018】
光変調素子100は、基板102に形成された光導波路104と、当該光導波路104を伝搬する光波を制御する制御電極106と、を備える。基板102は、電気光学効果を有する基板である。例えば、基板102は、LNで構成されたXカット基板であり、図示上方向にZ軸、図示右方向にY軸が向いているものとする。
【0019】
光導波路104は、例えば、マッハツェンダ型光導波路であり、一対をなす2つの並行導波路104a、104bを有する。制御電極106は、電気信号(以下、変調信号ともいう)が進行波となって一方向に伝搬する進行波型電極である。
【0020】
制御電極106は、2つの並行導波路104a、104bの長さ方向(延在方向)に沿って設けられており、並行導波路104a、104bに電界を作用させて、これらの並行導波路104a、104bを伝搬する光波に位相変化を発生させる。これにより、例えば、基板102の図示左側の、図示下側の光導波路104の端部から入射した入力光(図示右向きの白抜き矢印)が変調されて、図示上側の光導波路104の端部から変調された変調光が出射される(図示左向きの白抜き矢印)。
【0021】
具体的には、制御電極106は、中心電極106aとグランド電極106b、106cとにより構成され、中心電極106aの一端は変調信号を生成する信号源110に接続され、他端は所定のインピーダンスを有する終端器112により終端されている。また、中心電極106aは、基板102の面内において並行導波路104a、104bに挟まれる位置に、当該並行導波路104a、104bに沿って配されている。これにより、中心電極106aは、並行導波路104a、104bをそれぞれ挟んで対向するグランド電極106bおよび106cと共に、それぞれ並行導波路104aおよび104bに電界を印加する。これにより、並行導波路104a、104bには、互いに逆方向の電界が印加され、並行導波路104a、104bのそれぞれを伝搬する光波には、互いに逆符号の位相変化が発生する。
【0022】
ここで、制御電極106が並行導波路104a、104bの光波を制御する部分、すなわち並行導波路104a、104bの光波に位相変化を与える部分は、作用部108(中心電極106a中に示す図示破線矢印で示す範囲の部分)を構成する。作用部108は、制御電極106を伝搬する進行波の伝搬方向に沿って下流側の端部108eから所定距離の範囲である第1作用部分108c(図示一点鎖線矢印の範囲)と、上記伝搬方向に沿って上流側の上記電気信号の入力端108dから所定距離の範囲である第2作用部分108a(図示一点鎖線矢印の範囲)と、を有する。ここで、所定距離の範囲とは、中心電極106aとグランド電極106b、106cとの間に直流電圧を印加した場合に、並行導波路104a及び104bのそれぞれにおいて、発生する光の位相変化の符号が同じである範囲をいう。
【0023】
そして、特に、制御電極106および光導波路104は、作用部108の第1作用部分108cにおいて並行導波路104a、104bのそれぞれの光波に発生する上記位相変化が、第2作用部分108aにおいて並行導波路104a、104bのそれぞれに発生する上記位相変化に対し符号が逆となるよう構成されている。
【0024】
また、第1作用部分108cおよび第2作用部分108aの、作用部108の延在方向に沿って測った長さは、第1作用部分108cの方が第2作用部分108aより短い。すなわち、制御電極106は、第1作用部分108cにおいて並行導波路104a、104bに作用する部分の長さが、第2作用部分108aにおいて並行導波路104a、104bに作用する部分の長さより短い。
【0025】
また、本実施形態では、作用部108は、光の伝搬方向が反転する第1の折返し部である折返し部108b(図示一点鎖線矢印の範囲)を含む。
【0026】
具体的には、作用部108の第2作用部分108aは、入力端108dから並行導波路104a、104bの光波の伝搬方向に沿って+Y方向に延在する直線部分として構成されている。また、折返し部108bを挟んで第2作用部分108aと接続する第1作用部分108cは、並行導波路104a、104bの光波の伝搬方向に沿って-Y方向に延在して端部108eで終わる直線部分として構成される。
【0027】
これにより、作用部108においては、第1作用部分108cにおける位相変化が第2作用部分108aにおける位相変化に対し符号が逆となる。
【0028】
例えば、作用部108を構成する一方の並行導波路104aに着目すると、中心電極106aからグランド電極106bに向かう電界は、第2作用部分108aにおいては+Z方向であり、第1作用部分108cにおいて-Z方向となる。その結果、並行導波路104aにおいては、第1作用部分108cにおける位相変化が第2作用部分108aにおける位相変化に対し符号が逆となる。同様に、他方の並行導波路104bに着目すると、中心電極106aからグランド電極106cに向かう電界は、第2作用部分108aにおいては-Z方向であり、第1作用部分108cにおいて+Z方向となる。その結果、並行導波路104bにおいては、第1作用部分108cにおける位相変化が第2作用部分108aにおける位相変化に対し符号が逆となる。
【0029】
なお、
図1に示す制御電極106の構成は、作用部108の構成を模式的に簡略化して説明するためのものであり、実際には、例えば中心電極106aの信号源110側の部分および終端器112側の部分を含む全体が、グランド電極106b、106cと共に、所定のインピーダンスを有するコプレーナ伝送線路として形成されてもよい(以下の実施形態および変形例においても同様である)。
【0030】
次に、光変調素子100の作用について説明する。まず、後の比較のため、直線状の(折返しのない)並行導波路を有する従来の一般的なマッハツェンダ型光導波路を用いた光変調素子の作用について説明する。
図2は、そのような従来の光変調素子200の構成の一例を示す図である。光変調素子200は、例えばXカットのLNで構成される基板202上に形成された光導波路204と、制御電極206と、を有する。光導波路204は、Y軸方向に延在する2つの直線状の並行導波路204a、204bを備えるマッハツェンダ型光導波路である。制御電極206は、並行導波路204a、204bに沿って設けられた中心電極206aとグランド電極206b、206cとを有する。
【0031】
中心電極206aは、並行導波路204a、204bに沿って、これらの並行導波路の間に設けられている。また、グランド電極206b、206cは、それぞれ、並行導波路204a、204bを挟んで中心電極206aと対向する位置に配されている。制御電極206は進行波型電極であり、中心電極206aの一端は変調信号を生成する信号源210に接続され、他端は所定のインピーダンスを有する終端器212により終端されている。並行導波路204a、204bのうち制御電極206により光波が制御される部分は、長さLの作用部208(図示破線矢印で示される範囲)を構成している。ここで、作用部208のうち、制御電極206を伝搬する進行波の伝搬方向に沿って上流の端部を入力端208a、下流側の端部を端部208bという。
【0032】
上記の構成において、作用部208の長さ方向の全体において並行導波路204aと204bとの間に発生する誘導位相差量φ
1は、次式に示すように、作用部208の延在方向に延びる軸s(図示上部)に沿って微小区間dsに発生する位相差量を積分することにより求められる。
【数1】
ここに、
【数2】
である。
【0033】
上式において、V0は、作用部208の入力端208aにおける電気信号の電圧振幅、αは、制御電極206における電気信号の電圧減衰係数(単位長さ当たりの減衰比率)、Δφは、並行導波路204a、204b間に発生する単位電圧および単位長さ当たりの誘導位相差量である。また、Aは、制御電極206における入力端208aに対する端部208bでの電圧減衰割合(入力端208aに入力される信号電圧に対する端部208bから出力される信号電圧の比)を示している。
【0034】
図3は、光変調素子100の作用を説明するための説明図である。
図3には、
図1に示す光変調素子100を構成する作用部108の、当該作用部108に沿って測った長さが示されている。
【0035】
なお、以下において光導波路、制御電極、作用部について「長さ」とは、それぞれ当該光導波路、制御電極、作用部に沿って測った長さをいうものとする。また、「誘導位相差」とは、制御電極により2つの並行導波路間に発生する位相差をいい、並行導波路に発生する位相変化とは、制御電極によりそれぞれの並行導波路において発生する光位相の変化をいう。すなわち、制御電極によりそれぞれの並行導波路において発生する位相変化の結果として、2つの並行導波路間に誘導位相差が発生する。
【0036】
図3に示すように、作用部108は、第1作用部分108cが長さL、第2作用部分108aが長さ2Lで構成されているものとする。第1作用部分108cは第2作用部分108aに対して位相変化の符号が逆となるので、制御電極106の損失が無視できる直流動作においては、第2作用部分108aの図示右半分の長さLの領域で発生する誘導位相差は、第1作用部分108cにおいて発生する誘導位相差により相殺される。このため、上記直流動作においては、光変調素子100は、
図2に示す光変調素子200と等価である。
【0037】
しかしながら、高周波電気信号に対しては、制御電極106は伝搬損失を持つことから、第1作用部分108cにおける誘導位相量は、第2作用部分108aの図示右側の長さLの部分における誘導位相量を完全には相殺しない。このため、
図3に示す光変調素子100は、
図2に示す光変調素子200とは異なる周波数特性を示すこととなる。
【0038】
図3において、制御電極106が制御電極206と同様に電圧減衰係数αを持つものとすると、並行導波路104a、104bの間に発生する誘導位相差φ
2は、次式で与えられる。
【数3】
【0039】
式(3)の一行目の式のうち、第1項の積分は、作用部108の第2作用部分108aの延在方向に延びる軸s1(図示下部に示す軸)に沿った積分、第2項の積分は、作用部108の第1作用部分108cの延在方向に延びる軸s2(図示上部に示す軸)に沿った積分を示している。なお、作用部108における折返し部108bは、並行導波路104a、104bのそれぞれにおいて位相変化の符号が逆となる部分であり、第2作用部分108a及び第1作用部分108cに比べて位相差の発生量が小さいため、式(3)においては、折返し部108bで発生する誘導位相量を無視している。
【0040】
ここで、
図2の光変調素子200に対する
図3の光変調素子100における誘導位相差の発生量の違いを定量的に把握するため、式(3)のφ
2と式(1)のφ
1との比φ
2/φ
1をとると、次式となる。
【数4】
【0041】
図4は、式(4)におけるφ
2/φ
1とAとの関係を表した図である。
図4において、横軸はA、縦軸はφ
2/φ
1であり、ライン400は式(4)で表されるφ
2/φ
1を示している。図示のとおり、A=0.5においてφ
2/φ
1は最大値1.25となる。すなわち、
図3に示す光変調素子100は、制御電極106の電圧減衰係数αがA=0.5を満たす周波数における誘導位相差量(すなわち、当該周波数における応答)が、
図2の光変調素子200に対し1.25倍改善される。
【0042】
ここで、Aは、制御電極106、206の長さLあたりの電圧減衰割合であり、A=0.5は、Sパラメータ表記の伝達関数ではS21成分が-6dB(=20log(0.5))である状態に相当する。また、φ2/φ1=1.25は、周波数応答として2dB(=20log(1.25))の改善に相当する。
【0043】
図5は、
図3に示す光変調素子100における、周波数応答のシミュレーション結果である。横軸は、制御電極106に入力する電気信号の周波数である。また、縦軸は、いわゆるEOE応答、すなわち、制御電極106に印加する電気信号の電力に対する、光導波路104から出力される変調光の電力の比である。なお、
図5に示すEOE応答は、周波数0Hz、すなわち直流信号におけるEOE応答の値により規格化されている。また、
図5の計算においては、制御電極106の電圧減衰係数αを次式で近似した。ここで、α
0は定数、fは周波数である。
【数5】
【0044】
図5のライン500およびライン502は、それぞれ、
図3に示す光変調素子100の応答特性および
図2に示す光変調素子200の応答特性である。
図5の例では、
図2に示す従来構成の光変調素子200においてEOE応答の3dB帯域を与える周波数f
1において、
図3に示す光変調素子100のA値が0.5となるように、式(5)のα
0が調整されるものとした。このようなα
0の値の調整は、例えば、制御電極106の中心電極106aの断面積を調整すること等により行うものとすることができる。
【0045】
図5に示すように、
図3に示す光変調素子100では、上記周波数f
1においてEOE応答が2dB改善される結果、光変調素子100のEOE応答の3dB帯域(すなわち動作周波数帯域)を与える周波数f
2は、従来の光変調素子200のf
1に対し約3倍改善される。
図5に示すように、
図3に示す光変調素子100では、直流以外の領域においてEOE応答が改善される。特に周波数f1前後から広帯域までの幅広い領域において、概ね2dB改善していることが分かる。結果、光変調素子100のEOE応答の3dB帯域は、従来の光変調素子200における5dB帯域相当に広帯域化される。
【0046】
なお、
図2に示す従来の光変調素子200の構成と
図3に示す光変調素子100の構成とを比較すると、光変調素子100の作用部108は、第1作用部分108cが追加されると共に、第1作用部分108cと同じ長さだけ第2作用部分108aの長さが延長されている。そして、上述した周波数応答の改善効果は、第2作用部分108aの上記延長した部分と第1作用部分108cとにより与えられている。言い換えれば、第1作用部分108cの長さは第2作用部分108aの長さより短いことが必要であり、したがって、制御電極106は、第1作用部分108cにおける長さが第2作用部分108aにおける長さより短いことが必要である。
【0047】
上記の構成を有する光変調素子100では、制御電極106および並行導波路104a、104bは、作用部108の第1作用部分108cにおいて並行導波路104a、104bに発生する光の位相変化が、第2作用部分108aにおいて並行導波路104a、104bに発生する光の位相変化に対し符号が逆となるよう構成される。したがって、光変調素子100では、第2作用部分108aにおいて並行導波路104a、104b間に発生する誘導位相差量は、第1作用部分108cにおいて発生する誘導位相差により減少する。そして、光変調素子100では、第2作用部分108aにおける誘導位相差量のうち第1作用部分108cにより相殺される誘導位相差が周波数特性を持つ結果、作用部108の全体により実現される動作周波数帯域が拡大される。
【0048】
上記の周波数帯域の改善効果は、作用部108を構成する制御電極106および並行導波路104a、104bの配置によって達成されるものであり、従来の光変調素子のように基板の分極方向を調整する必要はない。したがって、光変調素子100では、様々な結晶方位を持つ基板においても容易かつ低コストで周波数特性を改善することができる。
【0049】
また、光変調素子100では、基板102の面内において第1作用部分108cを第2作用部分108aに対して180度折り返すことにより、第1作用部分108cにおける位相変化が第2作用部分108aにおける位相変化に対し符号が逆となるよう構成される。これにより、光変調素子100では、簡易な構成により、動作周波数帯域を拡大することができる。
【0050】
なお、
図3に示す光変調素子100では、作用部108を構成する第1作用部分108cの長さと第2作用部分108aの長さとの比が1:2であるものとしたが、本発明に係る光導波路素子の構成は、これには限られない。以下、光変調素子100の変形例について説明する。
【0051】
<第1変形例>
まず、本発明の第1の実施形態に係る光変調素子100の第1の変形例について説明する。本変形例に係る光導波路素子は、第1の実施形態に係る光変調素子100と同様の構成を有するが、作用部を構成する第1作用部分の長さと第2作用部分の長さの比が1:2ではなく、r:(1+r)となっている。ここに、rは、任意の実数である。
【0052】
図6は、第1の変形例に係る光変調素子100-1の構成を示す図である。
図6において、
図1及び
図3に示す光変調素子100と同じ構成要素については、
図1及び
図3に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図1及び
図3についての説明を援用するものとする。
【0053】
光変調素子100-1は、光変調素子100と同様の構成を有するが、制御電極106に代えて制御電極106-1を有する点が異なる。制御電極106-1は、制御電極106と同様の構成を有するが、中心電極106aおよびグランド電極106b、106cを有する制御電極106に代えて、中心電極106-1aおよびグランド電極106-1b、106-1cを有する。
【0054】
中心電極106-1aおよびグランド電極106-1b、106-1cは、中心電極106aおよびグランド電極106b、106cと同様の構成を有するが、並行導波路104a、104bに沿って延在する長さが、中心電極106-1aおよびグランド電極106-1b、106-1cと異なっている。
【0055】
これにより、制御電極106-1が並行導波路104a、104bの光波を制御する部分である作用部108-1は、
図1に示す光変調素子100の作用部108とは異なり、第1作用部分108-1cの長さがrL、第2作用部分108-1aの長さがL+rLとなるように構成されている。すなわち、第1作用部分108-1cと第2作用部分108-1aの長さの比はr:(r+1)である。
【0056】
ここで、第1作用部分108-1cおよび第2作用部分108-1aは、
図1に示す作用部108の第1作用部分108cおよび第2作用部分108aと同様に、それぞれ、制御電極106-1を伝搬する進行波の伝搬方向に沿って下流側の端部である端部108-1eから所定距離の範囲(図示一点鎖線矢印の範囲)、および上記伝搬方向に沿って上流側の上記電気信号の入力端108-1dから所定距離の範囲(図示一点鎖線矢印の範囲)である。また、作用部108-1は、作用部108の折返し部108bと同様の折返し部108-1bを有する。ここで、所定距離の範囲とは、中心電極106-1aとグランド電極106-1b、106-1cとの間に直流電圧を印加した場合に、並行導波路104a及び104bのそれぞれにおいて、発生する光の位相変化の符号が同じである範囲をいう。
【0057】
図6において、並行導波路104a、104bの間に発生する誘導位相差φ
2-1は、次式で与えられる。
【数6】
【0058】
図7は、
図6に示す光変調素子100-1における、周波数応答のシミュレーション結果である。
図5と同様に、横軸は、制御電極106に入力する電気信号の周波数、縦軸は、EOE応答である。また、
図7においても、
図5と同様に、αは式(5)に従うものとし、
図2に示す従来構成の光変調素子200の3dB帯域を与える周波数f
1において、
図6に示す光変調素子100-1のA値(すなわち、第2作用部分108-1aの入力端108-1dから長さLの範囲における電圧減衰割合)が0.5となるように、式(5)のα
0が調整されるものとした。
【0059】
図7に示すライン700、702、704、706、708は、それぞれ、r=2、1.5、1.2、1.0、0.8であるときのEOE応答を示している。ここで、r=1のEOE応答を示すライン706は、第1作用部分108-1cと第2作用部分108-1aの長さの比が1:2、すなわち、
図3に示す光変調素子100と同構成の場合のEOE応答であり、
図5に示すライン500に対応する。また、
図7に示すライン502は、
図5のライン502と同じであり、
図2に示す従来の光変調素子200のEOE応答を示している。
【0060】
図7より、rの値の増加に伴って、EOE応答には、低周波側においてより大きなピーキングを生じることがわかる。すなわち、設計時においてrの値を適宜選択することにより、ピーキングの大きさを制御して動作周波数帯域を拡大することができる。
【0061】
<第2変形例>
次に、本発明の第1実施形態に係る光導波路素子の第2の変形例について説明する。本変形例に係る光導波路素子は、第1の実施形態に係る光変調素子100と同様の構成を有するが、作用部を構成する制御電極の電圧減衰係数αが、作用部全体において一定ではなく、第1作用部分と第2作用部分とで異なっている。
【0062】
図8は、第2の変形例に係る光変調素子100-2の構成を示す図である。
図8において、
図1及び
図3に示す光変調素子100と同じ構成要素については、
図1及び
図3に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図1及び
図3についての説明を援用する。
【0063】
光変調素子100-2は、光変調素子100と同様の構成を有するが、制御電極106に代えて制御電極106-2を有する。そして、光変調素子100-2は、制御電極106と並行導波路104a、104bとにより構成される作用部108に代えて、制御電極106-2と並行導波路104a、104bとにより構成される作用部108-2を備える。作用部108-2は、作用部108と同様の構成を有するが、第2作用部分108a、折返し部108b、及び第1作用部分108cに代えて、第2作用部分108-2a、折返し部108-2b、及び第1作用部分108-2cを備える。
【0064】
第2作用部分108-2aおよび第1作用部分108-2cは、第2作用部分108aおよび第1作用部分108cと同様の構成を有するが、第2作用部分108-2aおよび第1作用部分108-2cにおける制御電極106-2の電圧減衰係数αが、互いに異なっている。すなわち、制御電極106-2は、制御電極106と同様の構成を有するが、中心電極106aに代えて中心電極106-2aを備え、第2作用部分108-2aに対応する部分の電圧減衰係数α1が第1作用部分108-2cに対応する部分の電圧減衰係数α2と異なるように構成されている。
【0065】
このような構成は、例えば、制御電極106-2を構成する中心電極106-2aの断面積を、第2作用部分108-2aに対応する部分と第1作用部分108-2cに対応する部分とで異なるものとすること等により実現され得る。ここで、作用部108-2の端部のうち、制御電極106-2を伝搬する進行波の伝搬方向に沿って上流の端部を入力端108-2dといい、下流の端部を端部108-2eというものとする。
【0066】
図8において、並行導波路104a、104bの間に発生する誘導位相差φ
2-2は、次式で与えられる。
【数7】
ここに、
【数8】
である。
【0067】
図9は、
図8に示す光変調素子100-2における、周波数応答のシミュレーション結果である。
図5と同様に、横軸は、制御電極106-2に入力する電気信号の周波数、縦軸は、EOE応答である。また、
図9においても、
図5と同様に、α
1およびα
2は、それぞれ電気信号の周波数の平方根に比例するものとした。したがって、mは、周波数依存性を持たないパラメータとして与えられ得る。
【0068】
また、α1は、
図1、
図3、
図6におけるαに等しく、式(5)に従うものとし、
図2に示す従来構成の光変調素子200の3dB帯域を与える周波数f
1において、
図8に示す光変調素子100-2のA値(すなわち、第2作用部分108-2aの入力端108-2dから長さLの範囲における電圧減衰割合)が0.5となるように、式(5)のα
0が調整されるものとした。
【0069】
図9に示すライン900、902、904、906、908は、それぞれ、m=2.5、2.0、1.5、1.0、0.5であるときのEOE応答を示している。ここで、m=1のEOE応答を示すライン906は、第1作用部分108-2cにおける電圧減衰係数α2が第2作用部分108-2aにおける電圧減衰係数α1(=α)に等しい場合、すなわち
図3に示す光変調素子100と同構成の場合のEOE応答であり、
図5に示すライン500に対応する。
【0070】
図9より、mの値の増加に伴って、EOE応答には、低周波側においてより大きなピーキングを生じることがわかる。すなわち、設計時においてmの値を適宜選択することにより、ピーキングの大きさを制御して動作周波数帯域を拡大することができる。
【0071】
<第3変形例>
次に、本発明の第1実施形態に係る光導波路素子の第3の変形例について説明する。本変形例に係る光導波路素子は、
図8に示す光変調素子100-2と同様の構成を有するが、さらに、作用部の第1作用部分と第2作用部分とで、中心導体とグランド導体との間隔(ギャップ)が異なると共に、第1作用部分の長さと第2作用部分の長さとの比が1:2ではなく、1:nとなっている。ここに、nは、任意の実数である。
【0072】
図10は、第3の変形例に係る光変調素子100-3の構成を示す図である。
図10において、
図8に示す光変調素子100-2と同じ構成要素については、
図8に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図8についての説明を援用する。
【0073】
光変調素子100-3は、
図8に示す光変調素子100-2と同様の構成を有するが、制御電極106-2を含む作用部108-2に代えて、制御電極106-3を含む作用部108-3を備える。
【0074】
制御電極106-3は、制御電極106-2が備える中心電極106-2aおよびグランド電極106b、106cと同様の中心電極106-3aおよびグランド電極106-3b、106-3cを備える。
【0075】
また、作用部108-3は、作用部108-2が備える第2作用部分108-2a、折返し部108-2b、第1作用部分108-2cと同様の構成を有する第2作用部分108-3a、折返し部108-3b、第1作用部分108-3cを備える。
【0076】
ただし、第2作用部分108-3aにおける制御電極106-3の中心電極106-3aとグランド電極106-3b及び106-3cとの間のギャップ(間隔)g1と、第1作用部分108-3cにおける中心電極106-3aとグランド電極106-3b及び106-3cとの間のギャップg2とが、互いに異なる値となっている。
【0077】
また、第2作用部分108-3aの長さが2Lであるのに対し、第1作用部分108-3cの長さはL/nとなっている。ここに、nは任意の実数である。なお、
図8に示す光変調素子100-2と同様に、第2作用部分108-3aにおける制御電極106-3の電圧減衰係数はα1、第1作用部分108-3cにおける制御電極106-3の電圧減衰係数はα2であるものとする。このような電圧減衰係数の調整は、例えば、中心電極106-3aの厚さを調整すること等により行うものとすすることができる。
【0078】
なお、作用部108-3の端部のうち、制御電極106-3を伝搬する進行波の伝搬方向に沿って上流の端部を入力端108-3dといい、下流の端部を端部108-3eというものとする。
【0079】
図10において、並行導波路104a、104bの間に発生する誘導位相差φ
2-3は、次式で与えられる。
【数9】
ここに、
【数10】
である。
【0080】
図11、
図12、
図13は、
図10に示す光変調素子100-2における周波数応答のシミュレーション結果であり、それぞれ、g=n=1、2、および4としたときの周波数応答を示している。
図5と同様に、
図11、
図12、
図13における横軸は、制御電極106-3に入力する電気信号の周波数、縦軸は、EOE応答である。また、
図11、
図12、
図13においても、
図5と同様に、α
1およびα
2は、それぞれ電気信号の周波数の平方根に比例するものとした。したがって、mは、周波数依存性を持たないパラメータである。
【0081】
また、α1は、
図1、
図3、
図6におけるαに等しく、式(5)に従うものとし、
図2に示す従来構成の光変調素子200の3dB帯域を与える周波数f
1において、
図10に示す光変調素子100-3のA値(すなわち、第2作用部分108-3aの入力端108-3dから長さLの範囲における電圧減衰割合)が0.5となるように、式(5)のα
0が調整されるものとした。
【0082】
図11に示すライン1100、1102、1104、1106、1108は、それぞれ、g=n=1の場合の、m=2.5、2.0、1.5、1.0、0.5であるときのEOE応答を示している。
図11は、g=n=1の場合のEOE応答、すなわち、
図10に示す光変調素子100-3が
図8に示す光変調素子100-2と同じ構成となる場合のEOE応答であるので、ライン1100、1102、1104、1106、1108は、
図9に示すライン900、902、904、906、908と同じである。ここで、
図11においてm=1のEOE応答を示すライン1106は、
図5に示すライン500に対応する。
【0083】
図12、
図13は、それぞれ、g=n=2およびg=n=4であるときのEOE応答を示している。具体的には、
図12に示すライン1200、1202、1204、1206、1208は、それぞれ、g=n=2の場合の、m=2.5、2.0、1.5、1.0、0.5であるときのEOE応答を示している。
図13に示すライン1300、1302、1304、1306、1308は、それぞれ、g=n=4の場合の、m=2.5、2.0、1.5、1.0、0.5であるときのEOE応答を示している。
【0084】
図11、
図12、
図13の比較から明らかなように、g=nの関係を保ってg(又はn)の値を大きな値に設定するほど、周波数応答の、m値に対する依存度は少なくなる。すなわち、m値の揺らぎに対して周波数応答は安定化される。
【0085】
[第2実施形態]
次に、本発明の第2の実施形態について説明する。本実施形態に係る光変調素子は、
図1に示す第1の実施形態に係る光変調素子100と同様の構成を有するが、作用部の第2作用部分が折返し部を有する点が異なる。
【0086】
図14は、本発明の第2の実施形態に係る光変調素子1400の構成を示す図である。光変調素子1400は、基板1402に形成された光導波路1404と、当該光導波路1404を伝搬する光波を制御する制御電極1406と、を備える。基板1402は、
図1に示す光変調素子100の基板102と同様に、例えば、LNで構成されたXカット基板であり、図示上方向にZ軸、図示右方向にY軸が向いている。
【0087】
光導波路1404は、
図1に示す光変調素子100の光導波路104と同様に、例えばマッハツェンダ型光導波路であり、一対をなす2つの並行導波路1404a、1404bを有する。制御電極1406は、電気信号(以下、変調信号ともいう)が進行波となって一方向に伝搬する進行波型電極である。
【0088】
制御電極1406は、2つの並行導波路1404a、1404bの延在方向に沿って設けられており、並行導波路1404a、1404bに電界を作用させて、これらの並行導波路1404a、1404bを伝搬する光波に位相変化を発生させる。これにより、例えば、光導波路1404の、基板1402の図示右下の端部から入射した入力光が変調されて、図示左上側の端部から変調された変調光が出射される。
【0089】
制御電極1406は、中心電極1406aとグランド電極1406b、1406cとにより構成され、中心電極1406aの一端は変調信号を生成する信号源1410に接続され、他端は所定のインピーダンスを有する終端器1412により終端される。また、中心電極1406aは、基板102の面内において並行導波路1404a、1404bに挟まれる位置に、当該並行導波路1404a、1404bに沿って配されている。これにより、中心電極1406aは、並行導波路1404a、1404bをそれぞれ挟んで対向するグランド電極1406bおよび1406cと共に、それぞれ並行導波路1404aおよび1404bに電界を印加する。これにより、並行導波路1404a、1404bには、互いに逆方向の電界が印加され、並行導波路1404a、1404bのそれぞれを伝搬する光波には、互いに逆方向の位相変化が発生する。
【0090】
ここで、制御電極1406が並行導波路1404a、1404bの光波を制御する部分、すなわち並行導波路1404a、1404bの光波に位相変化を与える部分は、作用部1408(中心電極1406a中に示す図示破線矢印で示す範囲の部分)を構成する。作用部1408は、制御電極1406を伝搬する進行波の伝搬方向に沿って下流側の端部である端部1408eから所定距離の範囲である第1作用部分1408c(図示一点鎖線矢印の範囲)と、上記伝搬方向に沿って上流側の上記電気信号の入力端1408dから所定距離の範囲である第2作用部分1408a(図示一点鎖線矢印の範囲)と、を有する。ここで、所定距離の範囲とは、中心電極1406aとグランド電極1406b及び1406cとの間に直流電圧を印加した場合に、並行導波路1404a及び1404bのそれぞれにおいて、発生する光の位相変化の符号が同じである範囲をいう。
【0091】
また、作用部1408は、
図1及び
図3に示す光変調素子100の作用部108と同様に、光の伝搬方向が反転する第1の折返し部である折返し部1408b(図示一点鎖線矢印の範囲)を含む。これにより、制御電極1406および光導波路1404は、作用部1408の第1作用部分1408cにおいて並行導波路1404a、1404bの光波に発生する位相変化が、第2作用部分1408aに発生する位相変化に対し符号が逆となるよう構成されている。
【0092】
そして、特に、光変調素子1400では、作用部1408の第2作用部分1408aは、光の伝搬方向が反転する第2の折返し部である折返し部1408f(図示一点鎖線矢印の範囲)を含む。そして、折返し部1408fにおいて、対をなす並行導波路1404a、1404bが交差している。これにより、第2作用部分1408aでは、折返し部1408fの前後において並行導波路1404a、1404bの光波に発生する位相変化の符号は逆とはならず、制御電極1406により並行導波路1404a、1404bにおいてそれぞれ一定の方向の位相変化が誘導される。
【0093】
したがって、光変調素子1400においても、光変調素子100と同様に、作用部1408の第2作用部分1408aにおいては並行導波路1404a、1404bに一定方向の位相変化が発生し、第1作用部分1408cにおいてはこれらの位相変化に対し符号が逆となる位相変化が並行導波路1404a、1404bに生ずることとなる。
【0094】
上記の構成を有する光変調素子1400は、光変調素子100と同様に、作用部1408の第1作用部分1408cにおいて並行導波路1404a、1404bの光波に発生する上記位相変化が、第2作用部分1408aに発生する上記位相変化に対し符号が逆となるよう構成されているので、光変調素子100と同様の原理により、
図2に示す従来の光変調素子200の構成に比べて、動作周波数帯域が拡大される。
【0095】
また、光変調素子1400では、作用部1408の第2作用部分1408aが折返し部1408fを含むように構成されるので、第1の実施形態に係る光変調素子100(
図1)に比べて、図示左右方向のサイズを低減することができる。
【0096】
[第3実施形態]
次に、本発明の第3の実施形態について説明する。本実施形態に係る光変調素子は、
図1に示す第1の実施形態に係る光変調素子100とは異なり、作用部が折返し部を含まず、直線的に延在するよう構成されている。そして、上記作用部の途中で対をなす2つの並行導波路が交差することにより、当該交差した箇所を挟んで、当該2つの並行導波路のそれぞれに発生する位相変化が符号が逆となるよう構成されている。
【0097】
図15は、本発明の第3の実施形態に係る光変調素子2400の構成を示す図である。光変調素子2400は、基板2402に形成された光導波路2404と、当該光導波路2404を伝搬する光波を制御する制御電極2406と、を備える。基板2402は、
図1に示す光変調素子100の基板102と同様に、例えば、LNで構成されたXカット基板であり、図示上方向にZ軸、図示右方向にY軸が向いている。
【0098】
光導波路2404は、
図1に示す光変調素子100の光導波路104と同様に、例えばマッハツェンダ型光導波路であり、一対をなす2つの並行導波路2404a、2404bを有する。並行導波路2404a、2404bは、並行導波路104a、104bとは異なり、折返し部を有さず、Y軸方向に直線的に延在する。
【0099】
制御電極2406は、中心電極2406a-1、2406a-2と、グランド電極2406b、2406c、2406dとにより構成されている。グランド電極2406b、2406c、及び2406dは、中心電極2406a-1、2406a-2から所定の一定距離を隔てて形成されている。これにより、中心電極2406a-1は、グランド電極2406bおよび2406cと共に分布定数線路を構成し、中心電極2406a-2は、グランド電極2406cおよび2406dと共に分布定数線路を構成している。
【0100】
中心電極2406a-1の一端は変調信号を生成する信号源2410aに接続され、他端は所定のインピーダンスを有する終端器2412aにより終端される。また、中心電極2406a-2の一端は変調信号を生成する信号源2410bに接続され、他端は所定のインピーダンスを有する終端器2412bにより終端される。これにより、制御電極2406は、中心電極2406a-1、2406a-2のそれぞれにおいて電気信号(以下、変調信号ともいう)が進行波となって一方向に伝搬する進行波型電極を構成する。ここで、信号源2410aと2410bとは、同一の変調信号を出力するが、信号源2410bが出力する変調信号の信号電圧は、信号源2410aが出力する変調信号の信号電圧+Vsに対し曲線が反転した-Vsとなっている。
【0101】
中心電極2406a-1、2406a-2は、2つの並行導波路2404a、2404bの延在方向に沿って設けられており、それぞれ並行導波路2404aおよび2404bに電界を作用させて、これらの並行導波路2404a、2404bを伝搬する光波に位相変化を発生させる。これにより、例えば、光導波路2404の、基板2402の図示左の端部から入射した入力光が変調されて、図示右側の端部から変調された変調光が出射される。
【0102】
ここで、制御電極2406が並行導波路2404a、2404bの光波を制御する部分、すなわち並行導波路2404a、2404bの光波に位相変化を与える部分は、作用部2408(中心電極2406a中に示す図示破線矢印で示す範囲の部分)を構成する。作用部2408は、制御電極2406を伝搬する進行波の伝搬方向に沿って下流側の端部である端部2408eから所定距離の範囲である第1作用部分2408c(図示一点鎖線矢印の範囲)と、上記伝搬方向に沿って上流側の上記電気信号の入力端2408dから所定距離の範囲である第2作用部分2408a(図示一点鎖線矢印の範囲)と、を有する。ここで、所定距離の範囲とは、中心電極2406a-1及び2406a-2とグランド電極2406b、2406c、及び2406dとの間に直流電圧を印加した場合に、並行導波路2404a及び2404bのそれぞれにおいて、発生する光の位相変化の符号が同じである範囲をいう。
【0103】
また、作用部2408は、第2作用部分2408aと第1作用部分2408cとの間に、並行導波路2404aと2404bとが互いに交差する交差部2408bを有する。これにより、光変調素子2400は、第1作用部分2408cにおいて制御電極2406により並行導波路2404a、2404bに発生する位相変化が、第2作用部分2408aにおける位相変化に対して符号が逆となるように構成されている。
【0104】
図16は、
図15における光変調素子2400のXVI-XVI断面矢視図、すなわち、第2作用部分2408aにおける光変調素子2400の断面図である。また、
図17は、
図15における光変調素子2400のXVII-XVII断面矢視図、すなわち、第1作用部分2408cにおける光変調素子2400の断面図である。
【0105】
図16に示すように、第2作用部分2408aにおいては、基板2402のうち中心電極2406a-1とグランド電極2406cとの間の部分、および中心電極2406a-2とグランド電極2406dとの間の部分に、それぞれ並行導波路2404aおよび2404bが形成されている。これに対し、第1作用部分2408cにおいては、これとは逆に、
図17に示す如く基板2402のうち中心電極2406a-1とグランド電極2406cとの間の部分、および中心電極2406a-2とグランド電極2406dとの間の部分に、それぞれ並行導波路2404bおよび2404aが形成されている。
【0106】
これにより、例えば並行導波路2404aは、第2作用部分2408aにおいては
図16に示すように信号電圧+Vsの変調信号を伝搬する中心電極2406a-1により図示右方、すなわち-Z方向へ向かう電界(図示一点鎖線矢印)が印加される一方、第1作用部分2408cにおいては、
図17に示すように信号電圧-Vsの変調信号を伝搬する中心電極2406a-2により図示左方、すなわち+Z方向へ向かう電界が印加される。これにより、並行導波路2404aにおいては、第1作用部分2408cに生じる位相変化が第2作用部分2408aに生じる位相変化に対して符号が逆となる。
【0107】
同様に、並行導波路2404bは、第2作用部分2408aにおいては、信号電圧-Vsの変調信号を伝搬する中心電極2406a-2により、図示左方すなわち+Z方向へ向かう電界が印加される一方(
図16)、第1作用部分2408cにおいては、信号電圧+Vsの変調信号を伝搬する中心電極2406a-1により、図示右方すなわち-Z方向へ向かう電界が印加される(
図17)。これにより、並行導波路2404bにおいては、第1作用部分2408cに生じる位相変化が第2作用部分2408aに生じる位相変化に対して符号が逆となる。
【0108】
上記の構成有する光変調素子2400は、光変調素子100と同様に、作用部2408の第1作用部分2408cにおいて並行導波路2404a、2404bの光波に発生する位相変化が、第2作用部分2408aに発生する位相変化に対し符号が逆となるよう構成されているので、光変調素子100と同様の原理により、
図2に示す従来の光変調素子200の構成に比べて、動作周波数帯域が拡大される。
【0109】
また、光変調素子2400では、作用部2408を構成する制御電極2406および並行導波路2404a、2404bが直線的に延在するように形成されるので、制御電極2406を伝搬する電気信号および並行導波路2404a、2404bを伝搬する光波には曲げ損失が発生せず、上記電気信号及び光波における損失の少ない効率的な光変調動作を実現し得る。
【0110】
なお、
図15の構成においては、制御電極2406は2つの中心電極2406a-1及び2406a-2を有し、それぞれ+Vsおよび-Vsの信号電圧が印加されるものとしたが、制御電極の構成はこれには限られない。制御電極は、例えば、
図1に示す制御電極106と同様に、一つの中心電極を備えて構成されるものとすることができる。
【0111】
図18に示す光変調素子2400-1は、
図15に示す第3実施形態に係る光変調素子2400の変形例であり、一つの中心電極2506aと二つのグランド電極2506b、2506cとで構成される制御電極2506を備えている。
図18において、
図15に示す光変調素子2400と同じ構成要素については、
図15に示す符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図15についての説明を援用するものとする。
【0112】
図19は、
図18における光変調素子2400-1のXIX-XIX断面矢視図、すなわち、第2作用部分2408aにおける光変調素子2400-1の断面図である。また、
図20は、
図18における光変調素子2400-1のXX-XX断面矢視図、すなわち、第1作用部分2408cにおける光変調素子2400の断面図である。
【0113】
光変調素子2400-1では、光変調素子2400と同様に、並行導波路2404aと2404bとが互いに交差する交差部2408bを有するので、第1作用部分2408cにおいて制御電極2506により並行導波路2404a、2404bに発生する位相変化が、第2作用部分2408aにおける位相変化に対して符号が逆となる。
【0114】
具体的には、並行導波路2404aは、
図19に示す第2作用部分2408aにおいては、中心電極2506aとグランド電極2506bとの間にあって図示左方、すなわち+Z方向へ向かう電界(図示一点鎖線矢印)が印加される一方、
図20に示す第1作用部分2408cにおいては、中心電極2506aとグランド電極2506cとの間にあって図示右方、すなわち-Z方向へ向かう電界が印加される。
【0115】
また、一方、並行導波路2404bは、並行導波路2404aとは逆に、
図19に示す第2作用部分2408aにおいては、図示右方(-Z方向)へ向かう電界が印加される一方、
図20に示す第1作用部分2408cにおいては、図示左方(+Z方向)へ向かう電界が印加される。
【0116】
その結果、光変調素子2400-1では、光変調素子2400と同様に、光変調素子100と同様の原理により、
図2に示す従来の光変調素子200の構成に比べて、動作周波数帯域が拡大される。
【0117】
[第4実施形態]
次に、本発明の第4の実施形態について説明する。本実施形態に係る光変調素子は、
図18に示す第3の実施形態に係る光変調素子2400と同様に、作用部を構成する2つの並行導波路が折返し部を含まず直線的に延在するよう構成され、2つの中心電極と3つのグランド電極で構成される制御電極も、当該作用部において直線状に形成されている。ただし、本実施形態に係る光変調素子では、第3の実施形態に係る光変調素子2400とは異なり、上記2つの並行導波路は、互いに交差する部分を含むことなく、それぞれが、制御電極からの印加電界が互いに逆方向となる2つの部分を含んで構成されている。
【0118】
図21は、本発明の第4の実施形態に係る光変調素子2600の構成を示す図である。光変調素子2600は、基板2602に形成された光導波路2604と、当該光導波路2604を伝搬する光波を制御する制御電極2606と、を備える。基板2602は、
図1に示す光変調素子100の基板102と同様に、例えば、LNで構成されたXカット基板であり、図示上方向にZ軸、図示右方向にY軸が向いている。
【0119】
光導波路2604は、
図1に示す光変調素子100の光導波路104と同様に、例えばマッハツェンダ型光導波路であり、一対をなす2つの並行導波路2604a、2604bを有する。ただし、並行導波路2604a、2604bは、並行導波路104a、104bとは異なり、交差部を有さない。
【0120】
制御電極2606は、2つの中心電極2606a-1、2606a-2と、3つのグランド電極2606b、2606c、2606dとにより構成されている。グランド電極2606b、2606c、及び2606dは、中心電極2606a-1、2606a-2から所定の一定距離を隔てて形成されている。これにより、中心電極2606a-1は、グランド電極2606bおよび2606cと共に分布定数線路を構成し、中心電極2606a-2は、グランド電極2606cおよび2606dと共に分布定数線路を構成している。
【0121】
中心電極2606a-1の一端は変調信号を生成する信号源2610aに接続され、他端は所定のインピーダンスを有する終端器2612aにより終端される。また、中心電極2606a-2の一端は変調信号を生成する信号源2610bに接続され、他端は所定のインピーダンスを有する終端器2612bにより終端される。これにより、制御電極2606は、中心電極2606a-1、2606a-2のそれぞれにおいて電気信号(以下、変調信号ともいう)が進行波となって一方向に伝搬する進行波型電極を構成する。ここで、信号源2610aと2610bとは、同一の変調信号を出力するが、信号源2610bが出力する変調信号の信号電圧は、信号源2610aが出力する変調信号の信号電圧+Vsに対し曲線が反転した-Vsとなっている。
【0122】
中心電極2606a-1、2606a-2は、2つの並行導波路2604a、2604bの延在方向に沿って直線状に設けられており、それぞれ並行導波路2604aおよび2604bに電界を作用させて、これらの並行導波路2604a、2604bを伝搬する光波に位相変化を発生させる。これにより、例えば、光導波路2604の、基板2602の図示左の端部から入射した入力光が変調されて、図示右側の端部から変調された変調光が出射される。
【0123】
ここで、制御電極2606が並行導波路2604a、2604bの光波を制御する部分、すなわち並行導波路2604a、2604bの光波に位相変化を与える部分は、作用部2608(中心電極2606a中に示す図示破線矢印で示す範囲の部分)を構成する。作用部2608は、制御電極2606を伝搬する進行波の伝搬方向に沿って下流側の端部である端部2608eから所定距離の範囲である第1作用部分2608c(図示一点鎖線矢印の範囲)と、上記伝搬方向に沿って上流側の上記電気信号の入力端2608dから所定距離の範囲である第2作用部分2608a(図示一点鎖線矢印の範囲)と、を有する。ここで、所定距離の範囲とは、中心電極2606a-1及び2606a-2とグランド電極2606b、2606c、及び2606dとの間に直流電圧を印加した場合に、並行導波路2604a及び2604bのそれぞれにおいて、発生する光の位相変化の符号が同じである範囲をいう。
【0124】
本実施形態では、2つの並行導波路2604aと2604bとは、互いに交差する部分を含むことなく、それぞれが、制御電極2606からの印加電界が互いに逆方向となる基板2602上の2つの位置にそれぞれ形成された2つの部分を含んで構成されている。
【0125】
具体的には、並行導波路2604aは、信号電圧+Vsが印加される中心電極2606a-1に沿って形成され、第2作用部分2608aと第1作用部分2608cとの間において光伝搬方向を変化させて中心電極2606a-1と交差する部分を有する。これにより、並行導波路2604aは、第2作用部分2608aにおいて中心電極2606a-1とグランド電極2606cとの間に形成されて図示下方(-Z方向)に電界が印加される部分と、第1作用部分2608cにおいて中心電極2606a-1とグランド電極2606bとの間に形成されて図示上方(+Z方向)に電界が印加される部分と、で構成される。
【0126】
また、並行導波路2604bは、信号電圧-Vsが印加される中心電極2606a-2に沿って形成され、第2作用部分2608aと第1作用部分2608cとの間において光伝搬方向を変化させて中心電極2606a-2と交差する部分を有する。これにより、並行導波路2604bは、第2作用部分2608aにおいて中心電極2606a-2とグランド電極2606dとの間に形成されて図示上方(+Z方向)に電界が印加される部分と、第1作用部分2608cにおいて中心電極2606a-2とグランド電極2606cとの間に形成されて図示下方(-Z方向)に電界が印加される部分と、で構成される。
【0127】
上記の構成により、光変調素子2600は、第1作用部分2608cにおいて制御電極2606により並行導波路2604a、2604bに発生する位相変化が、第2作用部分2608aにおける位相変化に対して符号が逆となるように構成されている。
【0128】
図22は、
図21における光変調素子2600のXXII-XXII断面矢視図、すなわち、第2作用部分2608aにおける光変調素子2600の断面図である。また、
図23は、
図21における光変調素子2600のXXIII-XXIII断面矢視図、すなわち、第1作用部分2608cにおける光変調素子2600の断面図である。
【0129】
並行導波路2604aは、第2作用部分2608aにおいては、
図22に示すように中心電極2606a-1とグランド電極2606cとの間の部分にあって図示右方(-Z方向)に電界が印加され、第1作用部分2608cにおいては、
図23に示すように中心電極2606a-1とグランド電極2606bとの間の部分にあって図示左方(+Z方向)に電界が印加される。これにより、並行導波路2604aにおいては、第1作用部分2608cに生じる位相変化が第2作用部分2608aに生じる位相変化に対して符号が逆となる。
【0130】
一方、並行導波路2604bは、これとは逆に、第2作用部分2608aにおいては、
図22に示すように中心電極2606a-2とグランド電極2606dとの間の部分にあって図示左方(+Z方向)に電界が印加され、第1作用部分2608cにおいては、
図23に示すように中心電極2606a-2とグランド電極2606cとの間の部分にあって図示右方(-Z方向)に電界が印加される。これにより、並行導波路2604bにおいても、第1作用部分2608cに生じる位相変化が第2作用部分2608aに生じる位相変化に対して符号が逆となる。
【0131】
上記の構成有する光変調素子2600は、光変調素子100と同様に、作用部2608の第1作用部分2608cにおいて並行導波路2604a、2604bの光波に発生する位相変化が、第2作用部分2608aに発生する位相変化に対し符号が逆となるよう構成されているので、光変調素子100と同様の原理により、
図2に示す従来の光変調素子200の構成に比べて、動作周波数帯域が拡大される。
【0132】
また、光変調素子2600では、第3の実施形態に係る光変調素子2400と同様に、作用部2608を構成する制御電極2606および並行導波路2604a、2604bが直線的に延在するように形成されるので、制御電極2606を伝搬する電気信号および並行導波路2604a、2604bを伝搬する光波には曲げ損失が発生せず、上記電気信号及び光波における損失の少ない効率的な光変調動作を実現し得る。さらに、光変調素子では、並行導波路2604aと2604bとが互いに交差する部分を含まず互いの伝搬光が干渉し合うことがないので、変調光の消光比を高く維持してより良好な光変調動作を実現し得る。
【0133】
[第5実施形態]
次に、本発明の第5の実施形態について説明する。本実施形態に係る光変調素子は、
図21に示す第4の実施形態に係る光変調素子2600と同様に、作用部を構成する2つの並行導波路が交差部を含まず直線状に延在するよう構成され、2つの中心電極と3つのグランド電極で構成される制御電極も、当該作用部において直線的に形成されている。
【0134】
ただし、本実施形態に係る光変調素子では、第4の実施形態に係る光変調素子2600とは異なり、2つの並行導波路は光伝搬方向を変化させる部分を含まず、上記制御電極の2つの中心電極が、それぞれ、第2作用部分と第1作用部分との間において電気信号伝搬方向を変化させて、それぞれ一方の並行導波路と交差するように形成されている。これにより、本実施形態に係る光変調素子では、第4の実施形態に係る光変調素子2600と同様に、2つの並行導波路は、それぞれ、制御電極からの印加電界が互いに逆方向となる2つの部分を含んで構成される。
【0135】
図24は、本発明の第5の実施形態に係る光変調素子2700の構成を示す図である。光変調素子2700は、基板2702に形成された光導波路2704と、当該光導波路2704を伝搬する光波を制御する制御電極2706と、を備える。基板2702は、
図1に示す光変調素子100の基板102と同様に、例えば、LNで構成されたXカット基板であり、図示上方向にZ軸、図示右方向にY軸が向いている。
【0136】
光導波路2704は、
図1に示す光変調素子100の光導波路104と同様に、例えばマッハツェンダ型光導波路であり、一対をなす2つの並行導波路2704a、2704bを有する。並行導波路2704a、2704bは、並行導波路104a、104bとは異なり、交差部を有さない。
【0137】
制御電極2706は、2つの中心電極2706a-1、2706a-2と、3つのグランド電極2706b、2706c、2706dとにより構成されている。グランド電極2706b、2706c、及び2706dは、中心電極2706a-1、2706a-2から所定の一定距離を隔てて形成されている。これにより、中心電極2706a-1は、グランド電極2706bおよび2706cと共に分布定数線路を構成し、中心電極2706a-2は、グランド電極2706cおよび2706dと共に分布定数線路を構成している。
【0138】
中心電極2706a-1の一端は変調信号を生成する信号源2710aに接続され、他端は所定のインピーダンスを有する終端器2712aにより終端される。また、中心電極2706a-2の一端は変調信号を生成する信号源2710bに接続され、他端は所定のインピーダンスを有する終端器2712bにより終端される。これにより、制御電極2706は、中心電極2706a-1、2706a-2のそれぞれにおいて電気信号(以下、変調信号ともいう)が進行波となって一方向に伝搬する進行波型電極を構成する。ここで、信号源2710aと2710bとは、同一の変調信号を出力するが、信号源2710bが出力する変調信号の信号電圧は、信号源2710aが出力する変調信号の信号電圧+Vsに対し曲線が反転した-Vsとなっている。
【0139】
中心電極2706a-1、2706a-2は、2つの並行導波路2704a、2704bの延在方向に沿って直線的に設けられており、それぞれ並行導波路2704aおよび2704bに電界を作用させて、これらの並行導波路2704a、2704bを伝搬する光波に位相変化を発生させる。これにより、例えば、光導波路2704の、基板2702の図示左の端部から入射した入力光が変調されて、図示右側の端部から変調された変調光が出射される。
【0140】
ここで、制御電極2706が並行導波路2704a、2704bの光波を制御する部分、すなわち並行導波路2704a、2704bの光波に位相変化を与える部分は、作用部2708(中心電極2706a中に示す図示破線矢印で示す範囲の部分)を構成する。作用部2708は、制御電極2706を伝搬する進行波の伝搬方向に沿って下流側の端部である端部2708eから所定距離の範囲である第1作用部分2708c(図示一点鎖線矢印の範囲)と、上記伝搬方向に沿って上流側の上記電気信号の入力端2708dから所定距離の範囲である第2作用部分2708a(図示一点鎖線矢印の範囲)と、を有する。ここで、所定距離の範囲とは、中心電極2706a-1及び2706a-2とグランド電極2706b、2706c、及び2706dとの間に直流電圧を印加した場合に、並行導波路2704a及び2704bのそれぞれにおいて、発生する光の位相変化の符号が同じである範囲をいう。
【0141】
本実施形態では、第4の実施形態に係る光変調素子2600とは異なり、2つの並行導波路2704a、2704bは光伝搬方向を変化させる部分を含まず、制御電極2706の2つの中心電極2706a-1および2706a-2が、それぞれ、第2作用部分2708aと第1作用部分2708cとの間において電気信号伝搬方向を変化させて、それぞれ一方の並行導波路2704a及び2704bと交差するように形成されている。これにより、本実施形態に係る光変調素子2700では、第4の実施形態に係る光変調素子2600と同様に、2つの並行導波路2704a、2704bは、それぞれ、制御電極2706からの印加電界が互いに逆方向となる2つの部分を含んで構成される。
【0142】
具体的には、信号電圧+Vsが印加される中心電極2706a-1は、並行導波路2704aに沿って形成されている。そして、中心電極2706a-1は、第2作用部分2708aと第1作用部分2708cとの間の遷移部2708bにおいて電気信号の伝搬方向を変化させて並行導波路2704aと交差するように形成されている。これにより、並行導波路2704aは、第2作用部分2708aにおいては中心電極2706a-1とグランド電極2706bとの間にあって
図24の図示上方(+Z方向)に電界が印加され、第1作用部分2708cにおいては中心電極2706a-1とグランド電極2706cとの間にあって図示下方(-Z方向)に電界が印加されることとなる。
【0143】
一方、信号電圧-Vsが印加される中心電極2706a-2は、並行導波路2704bに沿って形成され、遷移部2708bにおいて電気信号の伝搬方向を変化させて並行導波路2704bと交差するように形成されている。これにより、並行導波路2704bは、第2作用部分2708aにおいては中心電極2706a-2とグランド電極2706cとの間にあって図示下方(-Z方向)に電界が印加され、第1作用部分2708cにおいては中心電極2706a-2とグランド電極2706dとの間にあって図示上方(+Z方向)に電界が印加されることとなる。
【0144】
その結果、光変調素子2700は、第1作用部分2708cにおいて制御電極2706により並行導波路2704a、2704bに発生する位相変化が、第2作用部分2708aにおける位相変化に対して符号が逆となるように構成される。
【0145】
図25は、
図24における光変調素子2700のXXV-XXV断面矢視図、すなわち、第2作用部分2708aにおける光変調素子2700の断面図である。また、
図26は、
図24における光変調素子2700のXXVI-XXVI断面矢視図、すなわち、第1作用部分2708cにおける光変調素子2700の断面図である。
【0146】
並行導波路2704aは、第2作用部分2708aにおいては、
図25に示すように中心電極2706a-1とグランド電極2706bとの間にあって図示左方(+Z方向)に電界が印加され、第1作用部分2708cにおいては、
図26に示すように中心電極2706a-1とグランド電極2706cとの間の部分にあって図示右方(-Z方向)に電界が印加される。これにより、並行導波路2704aにおいては、第1作用部分2708cに生じる位相変化が第2作用部分2708aに生じる位相変化に対して符号が逆となる。
【0147】
一方、並行導波路2704bは、これとは逆に、第2作用部分2708aにおいては、
図25に示すように中心電極2706a-2とグランド電極2706cとの間の部分にあって図示右方(-Z方向)に電界が印加され、第1作用部分2708cにおいては、
図26に示すように中心電極2706a-2とグランド電極2706dとの間にあって図示左方(+Z方向)に電界が印加される。これにより、並行導波路2704bにおいては、第1作用部分2708cに生じる位相変化が第2作用部分2708aに生じる位相変化に対して符号が逆となる。
【0148】
上記の構成有する光変調素子2700は、光変調素子100と同様に、作用部2708の第1作用部分2708cにおいて並行導波路2704a、2704bの光波に発生する位相変化が、第2作用部分2708aに発生する位相変化に対し符号が逆となるよう構成されているので、光変調素子100と同様の原理により、
図2に示す従来の光変調素子200の構成に比べて、動作周波数帯域が拡大される。
【0149】
また、光変調素子2700では、第4の実施形態に係る光変調素子2400と同様に、並行導波路2704aと2704bとが互いに交差する部分を含まず互いの伝搬光が干渉し合うことがないので、変調光の消光比を高く維持してより良好な光変調動作を実現し得る。
【0150】
[第6実施形態]
次に、本発明の第6の実施形態について説明する。本実施形態に係る光変調素子は、作用部を構成する2つの並行導波路が折返し部を含まず直線状に延在するよう構成されている。また、上記2つの並行導波路は、それぞれ、分極方向が互いに逆方向である基板上の2つの部分をそれぞれ通過するように形成された2つの部分を含んで構成されている。
【0151】
図27は、本発明の第6の実施形態に係る光変調素子2800の構成を示す図であり、
図28は、
図27における光変調素子2800のXXVIII-XXVIII断面矢視図、すなわち、第2作用部分2808aにおける光変調素子2800の断面図である。また、
図29は、
図27における光変調素子2800のXXIX-XXIX断面矢視図、すなわち、第1作用部分2808cにおける光変調素子2800の断面図である。
【0152】
光変調素子2800は、基板2802に形成された光導波路2804と、当該光導波路2804を伝搬する光波を制御する制御電極2806と、を備える。基板2802は、
図1に示す光変調素子100の基板102と同様に、例えば、LNで構成されたXカット基板であり、
図27における図示上方向にZ軸、図示右方向にY軸が向いている。
【0153】
また、基板2802は、その厚さが10μm以下(例えば1μm)に加工された薄板基板であり、光導波路2804は、基板2802の平面上に延在する凸部により構成される凸状光導波路、例えばリブ型光導波路またはリッジ型光導波路である。
【0154】
光導波路2804は、
図1に示す光変調素子100の光導波路104と同様に、例えばマッハツェンダ型光導波路であり、一対をなす2つの並行導波路2804a、2804bを有する。並行導波路2804a、2804bは、直線状に形成されており、交差部および折り返し部を有さない。
【0155】
制御電極2806は、中心電極2806aと、2つのグランド電極2806b、2806cとにより構成されている。グランド電極2806b、2806cは、中心電極2806aから所定の一定距離を隔てて形成されている。これにより、中心電極2806aは、グランド電極2806bおよび2806cと共に分布定数線路を構成している。
【0156】
中心電極2806aの一端は変調信号Vsを生成する信号源2810に接続され、他端は所定のインピーダンスを有する終端器2812により終端されている。これにより、制御電極2806は、電気信号(以下、変調信号ともいう)が進行波となって一方向に伝搬する進行波型電極を構成する。
【0157】
中心電極2806aは、2つの並行導波路2804a、2804bの延在方向に沿って直線状に設けられており、それぞれ並行導波路2804aおよび2804bに電界を作用させて、これらの並行導波路2804a、2804bを伝搬する光波に位相変化を発生させる。これにより、例えば、光導波路2804の、基板2802の図示左の端部から入射した入力光が変調されて、図示右側の端部から変調された変調光が出射される。
【0158】
ここで、制御電極2806が並行導波路2804a、2804bの光波を制御する部分、すなわち並行導波路2804a、2804bの光波に位相変化を与える部分は、作用部2808(中心電極2806a中に示す図示破線矢印で示す範囲の部分)を構成する。作用部2808は、制御電極2806を伝搬する進行波の伝搬方向に沿って下流側の端部である端部2808eから所定距離の範囲である第1作用部分2808c(図示一点鎖線矢印の範囲)と、上記伝搬方向に沿って上流側の上記電気信号の入力端2808dから所定距離の範囲である第2作用部分2808a(図示一点鎖線矢印の範囲)と、を有する。ここで、所定距離の範囲とは、中心電極2806a-1及び2806a-2とグランド電極2806b、2806c、及び2806dとの間に直流電圧を印加した場合に、並行導波路2804a及び2804bのそれぞれにおいて、発生する光の位相変化の符号が同じである範囲をいう。
【0159】
本実施形態では、並行導波路2804aは、作用部2808の全範囲において、中心電極2806aとグランド電極2806bとの間にあって図示上方向の電界が印加される。また、並行導波路2804bは、作用部2808の全範囲において、中心電極2806aとグランド電極2806cとの間にあって図示下方向の電界が印加される。
【0160】
ただし、本実施形態では、2つの並行導波路2804aと2804bとは、それぞれ、基板2802のうち分極方向が互いに逆方向である2つの部分を通過するように形成された2つの部分を含んで構成されている。
【0161】
具体的には、基板2802には、第1作用部分2808cの範囲内に、当該基板の他の部分に対して分極方向(Z軸方向)が反転した2つの分極反転部2820aおよび2820b(
図27及び
図29において図示2つの点線で囲まれた影付き部分)が形成されている。すなわち、基板2802のうち分極反転部2820a、2820b以外の部分は、
図27の上部に示すように、分極方向である+Z方向が図示上方向であるのに対し、分極反転部2820a、2820bの範囲内では、分極方向(+Z方向)が図示下方向を向いている。
【0162】
なお、
図29において分極反転部2820aおよび2820bの部分に示した太線矢印は、分極反転部2820aおよび2820bにおける基板2802の分極方向を示し、分極反転部2820aおよび2820b以外の部分に示した太線矢印は、分極反転部2820aおよび2820b以外の基板2802の部分における分極方向を示している。
【0163】
上記構成により、並行導波路2804aは、第2作用部分2808aの範囲では、中心電極2806aからグランド電極2806bに向かって図示上方に向かう印加電界が+Z方向の電界となり、分極反転部2820aのある第1作用部分2808cの範囲では、図示上方に向かう上記印加電界が-Z方向の電界となる。このため、並行導波路2804aにおいては、制御電極2806により第1作用部分2808cに生じる屈折率変化は第2作用部分2808aに生じる屈折率変化に対して符号が逆となる。その結果、並行導波路2804aにおいては、第1作用部分2808cに生じる位相変化が第2作用部分2808aに生じる位相変化に対して符号が逆となる。
【0164】
一方、並行導波路2804bは、第2作用部分2808aの範囲では、中心電極2806aからグランド電極2806cに向かって図示下方に向かう印加電界が-Z方向の電界となり、分極反転部2820bのある第1作用部分2808cの範囲では、図示下方に向かう印加電界が+Z方向の電界となる。このため、並行導波路2804bにおいても、制御電極2806により第1作用部分2808cに生じる屈折率変化は第2作用部分2808aに生じる屈折率変化に対して符号が逆となる。その結果、並行導波路2804bにおいても、第1作用部分2808cに生じる位相変化が第2作用部分2808aに生じる位相変化に対して符号が逆となる。
【0165】
したがって、光変調素子2800においても、光変調素子100と同様に、作用部2808の第1作用部分2808cにおいて並行導波路2804a、2804bの光波に発生する位相変化は、第2作用部分2808aにおいて発生する位相変化に対し符号が逆となり、光変調素子100と同様の原理により、
図2に示す従来の光変調素子200の構成に比べて、動作周波数帯域が拡大される。
【0166】
特に、光変調素子2800は、基板2802が10μm以下の薄板で構成されるため、基板2802上に形成された電極への電圧印加により生成される電界は、基板2802内に集中しやすい。このため、光変調素子2800では、例えば制御電極2806の形成前に基板2802上に仮電極の対を形成して当該仮電極に高電圧を印加することで、分極反転部2820a、2820bを比較的容易に形成することができる。このような仮電極の対は、例えば、基板2802上において、分極反転部2820aおよび2820bを形成すべき部分をそれぞれ挟む位置に設けられ得る。この場合において、制御電極2806は、例えば、基板2802上の仮電極をエッチング除去した後、所望の位置に形成され得る。
【0167】
[第7実施形態]
次に、本発明の第7の実施形態について説明する。本実施形態に係る光変調素子は、
図1に示す第1の実施形態に係る光変調素子100とは異なり、作用部が折返し部を含まず、直線的に延在するよう構成されている。そして、上記作用部の途中で対をなす2つの並行導波路が交差することにより、当該交差した箇所を挟んで、当該2つの並行導波路のそれぞれに発生する位相変化が符号が逆となるよう構成されている。
【0168】
図30は、本発明の第7の実施形態に係る光変調素子1500の構成を示す図である。光変調素子1500は、基板1502に形成された光導波路1504と、当該光導波路1504を伝搬する光波を制御する制御電極1506と、を備える。基板1502は、電気光学効果を有する基板である。例えば、基板1502は、
図1に示す光変調素子100の基板102と同様のLN基板であるが、基板102とは結晶軸方向の異なるZカット基板であって、図示下方向にX軸、図示右方向にY軸が向いている。
【0169】
光導波路1504は、
図1に示す光変調素子100の光導波路104と同様に、例えばマッハツェンダ型光導波路であり、一対をなす2つの並行導波路1504a、1504bを有する。並行導波路1504a、1504bは、並行導波路104a、104bとは異なり、折返し部を有さず、Y軸方向に直線的に延在する。
【0170】
制御電極1506は、中心電極1506a-1、1506a-2と、グランド電極1506b、1506c、1506dとにより構成されている。グランド電極1506b、1506c、及び1506dは、中心電極1506a-1、1506a-2から所定の一定距離を隔てて形成されている。これにより、中心電極1506a-1は、グランド電極1506bおよび1506cと共に分布定数線路を構成し、中心電極1506a-2は、グランド電極1506cおよび1506dと共に分布定数線路を構成している。
【0171】
中心電極1506a-1の一端は変調信号を生成する信号源1510aに接続され、他端は所定のインピーダンスを有する終端器1512aにより終端される。また、中心電極1506a-2の一端は変調信号を生成する信号源1510bに接続され、他端は所定のインピーダンスを有する終端器1512bにより終端される。これにより、制御電極1506は、中心電極1506a-1、1506a-2のそれぞれにおいて電気信号(以下、変調信号ともいう)が進行波となって一方向に伝搬する進行波型電極を構成する。ここで、信号源1510aと1510bとは、同一の変調信号を出力するが、信号源1510bが出力する変調信号の信号電圧は、信号源1510aが出力する変調信号の信号電圧+Vsに対し曲線が反転した-Vsとなっている。
【0172】
中心電極1506a-1、1506a-2は、2つの並行導波路1504a、1504bの延在方向に沿って設けられており、並行導波路1504a、1504bに電界を作用させて、これらの並行導波路1504a、1504bを伝搬する光波に位相変化を発生させる。これにより、例えば、光導波路1504の、基板1502の図示左の端部から入射した入力光が変調されて、図示右側の端部から変調された変調光が出射される。
【0173】
ここで、制御電極1506が並行導波路1504a、1504bの光波を制御する部分、すなわち並行導波路1504a、1504bの光波に位相変化を与える部分は、作用部1508(中心電極1506a中に示す図示破線矢印で示す範囲の部分)を構成する。作用部1508は、制御電極1506を伝搬する進行波の伝搬方向に沿って下流側の端部である端部1508eから所定距離の範囲である第1作用部分1508c(図示一点鎖線矢印の範囲)と、上記伝搬方向に沿って上流側の上記電気信号の入力端1508dから所定距離の範囲である第2作用部分1508a(図示一点鎖線矢印の範囲)と、を有する。ここで、所定距離の範囲とは、中心電極1506a-1及び1506a-2とグランド電極1506b、1506c、及び1506dとの間に直流電圧を印加した場合に、並行導波路1504a及び1504bのそれぞれにおいて、発生する光の位相変化の符号が同じである範囲をいう。
【0174】
また、作用部1508は、第2作用部分1508aと第1作用部分1508cとの間に、並行導波路1504aと1504bとが互いに交差する交差部1508bを有する。これにより、光変調素子1500は、第1作用部分1508cにおいて制御電極1506により並行導波路1504a、1504bに発生する位相変化が、第2作用部分1508aにおける位相変化に対して符号が逆となるように構成されている。
【0175】
図31は、
図30における光変調素子1500のXXXI-XXXI断面矢視図、すなわち、第2作用部分1508aにおける光変調素子1500の断面図である。また、
図32は、
図30における光変調素子1500のXXXII-XXXII断面矢視図、すなわち、第1作用部分1508cにおける光変調素子1500の断面図である。
【0176】
図31に示すように、第2作用部分1508aにおいては、中心電極1506a-1および1506a-2の下部には、それぞれ、並行導波路1504aおよび1540bが形成されている。これに対し、第1作用部分1508cにおいては、
図32に示すように、中心電極1506a-1および1506a-2の下部には、それぞれ、並行導波路1504bおよび1540aが形成されている。
【0177】
これにより、例えば並行導波路1504aは、
図31に示すように第2作用部分1508aにおいては、信号電圧+Vsの変調信号を伝搬する中心電極1506a-1により図示下方、すなわち-Z方向へ向かう電界(図示一点鎖線矢印)が印加される一方、
図32に示すように第1作用部分1508cにおいては、信号電圧-Vsの変調信号を伝搬する中心電極1506a-2により図示上方、すなわち+Z方向へ向かう電界が印加される。これにより、並行導波路1504aにおいては、第1作用部分1508cに生じる位相変化が第2作用部分1508aに生じる位相変化に対して符号が逆となる。
【0178】
同様に、並行導波路1504bは、第2作用部分1508aにおいては、信号電圧-Vsの変調信号を伝搬する中心電極1506a-2により、図示上方すなわち+Z方向へ向かう電界が印加される一方(
図31)、第1作用部分1508cにおいては、信号電圧+Vsの変調信号を伝搬する中心電極1506a-1により、図示下方すなわち-Z方向へ向かう電界が印加される。これにより、並行導波路1504bにおいては、第1作用部分1508cに生じる位相変化が第2作用部分1508aに生じる位相変化に対して符号が逆となる。ここで、1506cのグランド電極がない場合においても、中心電極1506a-1と中心電極1506a-2に入力する信号電圧を+Vs、-Vsと極性を反転させる差動動作することで同様の効果が得られる。以下、Zカット基板を用いる際には同様に対応することが出来る。
【0179】
上記の構成有する光変調素子1500は、光変調素子100と同様に、作用部1508の第1作用部分1508cにおいて並行導波路1504a、1504bの光波に発生する位相変化が、第2作用部分1508aに発生する位相変化に対し符号が逆となるよう構成されているので、光変調素子100と同様の原理により、
図2に示す従来の光変調素子200の構成に比べて、動作周波数帯域が拡大される。
【0180】
また、光変調素子1500では、作用部1508を構成する制御電極1506および並行導波路1504a、1504bが直線的に延在するように形成されるので、制御電極1506を伝搬する電気信号および並行導波路1504a、1504bを伝搬する光波には曲げ損失が発生せず、上記電気信号及び光波における損失の少ない効率的な光変調動作を実現し得る。
【0181】
[第8実施形態]
次に、本発明の第8の実施形態について説明する。本実施形態に係る光変調素子は、
図30に示す第11の実施形態に係る光変調素子1500と同様の構成を有するが、基板1502の面内における並行導波路のルートが異なる。
【0182】
図33は、本発明の第8の実施形態に係る光変調素子1800の構成を示す図である。
図33において、
図30に示す構成要素と同じ構成要素については、
図30における符号と同じ符号を用いて示すものとし、上述した
図30についての説明を援用する。
【0183】
光変調素子1800は、
図30に示す光変調素子1500と同様の構成を有するが、光導波路1504に代えて光導波路1804を有する点が異なる。光導波路1804は、光導波路1504と同様の構成を有するが、並行導波路1504a、1504bに代えて並行導波路1804a、1804bを有する点が異なる。
【0184】
制御電極1506が並行導波路1804a、1804bの光波を制御する部分、すなわち並行導波路1804a、1804bの光波に位相変化を与える部分は、作用部1808(グランド電極1506c中に示す図示破線矢印で示す範囲の部分)を構成する。作用部1808は、制御電極1506を伝搬する進行波の伝搬方向に沿って下流側の端部である端部1808eから所定距離の範囲である第1作用部分1808c(図示一点鎖線矢印の範囲)と、上記伝搬方向に沿って上流側の上記電気信号の入力端1808dから所定距離の範囲である第2作用部分1808a(図示一点鎖線矢印の範囲)と、を有する。ここで、所定距離の範囲とは、中心電極1506a-1及び1506a-2とグランド電極1506b、1506c、及び1506dとの間に直流電圧を印加した場合に、並行導波路1804a及び1804bのそれぞれにおいて、発生する光の位相変化の符号が同じである範囲をいう。
【0185】
作用部1808は、
図30に示す光変調素子1500の作用部1508と同様の構成を有するが、第2作用部分1808aと第1作用部分1808cとの間に、並行導波路1804aと1804bとが互いに交差する交差部を有さない。すなわち、並行導波路1804a、1804bは、並行導波路1504a、1504bと同様の構成を有するが、互いに交差する部分を有さず、基板1502の面内におけるルートが異なる。
【0186】
具体的には、並行導波路1804a、1804bは、第2作用部分1808aにおいては、
図30に示す光変調素子1500と同様に中心電極1506a-1、1506a-2の下部に形成されている。ただし、並行導波路1804aおよび1804bは、第1作用部分1808cの部分において、それぞれ、中心電極1506a-1に隣接するグランド電極1506bの下部および中心電極1506a-2に隣接する1506dの下部を通るように形成されている。
【0187】
これにより、光変調素子1800では、第1作用部分1808cにおいて並行導波路1804aおよび1804bに発生する位相変化が、第2作用部分1808aにおいて発生する位相変化に対して符号が逆となるよう構成されている。
【0188】
上記の構成有する光変調素子1800は、作用部1808の第1作用部分1808cにおいて発生する位相変化が、第2作用部分1808aに発生する位相変化に対し符号が逆となるよう構成されているので、光変調素子100と同様の原理により、
図2に示す従来の光変調素子200の構成に比べて、動作周波数帯域が拡大される。
【0189】
また、光変調素子1800では、並行導波路1804a、1804bが互いに交差する部分を有さないので、光変調素子100、1500に比べて更に光損失の少ない光変調動作を実現し得る。
【0190】
[第9実施形態]
次に、本発明の第9の実施形態について説明する。本実施形態に係る光変調素子は、
図30に示す第11の実施形態に係る光変調素子1500と同様の構成を有するが、2本の並行導波路は交差部を有さず直線状に延在し、かつ、基板面内における制御電極の形状が異なる。
【0191】
図34は、本発明の第9の実施形態に係る光変調素子1900の構成を示す図である。
図34のうち、
図30に示す構成要素と同じ構成要素については、
図30と同じ符号を用いるものとし、上述した
図30についての説明を援用するものとする。
【0192】
図34に示す光変調素子1900は、
図30に示す光変調素子1500と同様の構成を有するが、光導波路1504および制御電極1506に代えて、光導波路1904および制御電極1906を有する点が異なる。光導波路1904は、光導波路1504と同様の構成を有するが、交差部を有する並行導波路1504a、1504bに代えて、交差部を有さずそれぞれ直線状に延在する並行導波路1904a、1904bを有する。
【0193】
制御電極1906は、制御電極1506と同様の構成を有するが、基板1502の面内における中心電極1906a-1、1906a-1、およびグランド電極1906b、1906c、1906dのパターン形状が、制御電極1506の中心電極1506a-1、1506a-1、およびグランド電極1506b、1506c、1506dと異なっている。
【0194】
ここで、制御電極1906が並行導波路1904a、1904bの光波を制御する部分、すなわち並行導波路1904a、1904bの光波に位相変化を与える部分は、作用部1908(中心電極1906a中に示す図示破線矢印で示す範囲の部分)を構成する。作用部1908は、制御電極1906を伝搬する進行波の伝搬方向に沿って下流側の端部である端部1908eから所定距離の範囲である第1作用部分1908c(図示一点鎖線矢印の範囲)と、上記伝搬方向に沿って上流側の上記電気信号の入力端1908dから所定距離の範囲である第2作用部分1908a(図示一点鎖線矢印の範囲)と、を有する。ここで、所定距離の範囲とは、中心電極1906a-1及び1906a-2とグランド電極1906b、1906c、及び1906dとの間に直流電圧を印加した場合に、並行導波路1904a及び1904bのそれぞれにおいて、発生する光の位相変化の符号が同じである範囲をいう。
【0195】
中心電極1906a-1、1906a-2は、第2作用部分1908aにおいては、
図30、
図31に示す光変調素子1500と同様に、並行導波路1904a,1904bの上部に形成されている。ただし、特に本実施形態では、第1作用部分1908cにおいては、グランド電極1906cの幅が図示上下方向に広がることにより、並行導波路1904a、1904bの上部にグランド電極1906cが形成されている。
【0196】
これにより、光変調素子1900では、第1作用部分1908cにおいて制御電極1906により並行導波路1904a、1904bに発生する位相変化が、第2作用部分1908aにおける位相変化に対して符号が逆となるように構成されている。
【0197】
上記の構成有する光変調素子1500は、光変調素子100と同様に、作用部1508の第1作用部分1508cにおいて並行導波路1504a、1504bの光波に発生する位相変化が、第2作用部分1508aに発生する位相変化に対し符号が逆となる構成されているので、光変調素子100と同様の原理により、
図2に示す従来の光変調素子200の構成に比べて、動作周波数帯域が拡大される。
【0198】
また、光変調素子1500では、作用部1508を構成する制御電極1506および並行導波路1504a、1504bが直線上に形成されるので、並行導波路1904a、1904bを伝搬する光波には曲げ損失が発生しない。このため、光変調素子1500、1800よりも更に光損失の少ない光変調動作を実現し得る。
【0199】
[第10実施形態]
次に、本発明の第10の実施形態について説明する。本実施形態に係る光変調素子2000は、上述した光変調素子100等とは異なり、光導波路および制御電極が、半導体基板に形成されている。
【0200】
図35は、本実施形態に係る光変調素子2000の構成を示す平面図、
図36は、
図35に示す光変調素子2000のXXXVI-XXXVI断面矢視図である。
【0201】
光変調素子2000は、基板2002に形成された光導波路2004と、当該光導波路2004を伝搬する光波を制御する制御電極2006と、を備える。光導波路2004は、例えばマッハツェンダ型光導波路であり、一対をなす2つの並行導波路2004a、2004bを有する。
【0202】
基板2002は、電気光学効果を有する基板であり、例えば、InP、GaAs、Si等の半導体で構成される。具体的には、
図36に示すように、基板2002上には、n層2120、i層2124が形成されており、i層2124は、トレンチ2126により図示左右に分断されている。また、左右に分断された2つのi層2124のそれぞれの上部には、p型チャネル2128a、2128bが形成されている。これにより、いわゆるp-i-n構造の中間層として構成される図示左右の2つのi層2124に、それぞれ並行導波路2004aおよび2004bが形成される。n層2120、i層2124、およびp型チャネル2128a、2128bは、基板2002上に設けられたクラッド部2130に埋め込まれるように形成されている。このクラッド部2130は、並行導波路2004aおよび2004bが形成されるi層2124よりも屈折率の低い材料、例えばBCB(ベンゾシクロブテン)等で構成される。
【0203】
なお、並行導波路2004aおよび2004bを構成する半導体接合構造は、上記のp-i-n構造には限られず、n-p-i-n構造、n-i-p-n構造、またはp-n-i-n構造としてもよい。
【0204】
制御電極2006は、それぞれ並行導波路2004aおよび2004bに沿って形成された2つの導体パターンである第1電極2006aと第2電極2006bを備える。第1電極2006aと第2電極2006bとは、分布定数線路を構成し、信号源2010が接続される図示左端に対向する図示右端が、所定のインピーダンスを有する終端器2012により終端されている。これにより、信号源2010から入力された電気信号(変調信号)は、第1電極2006a上および第2電極2006b上を、進行波となって伝搬して、それぞれ並行導波路2004aおよび2004bを伝搬する光波に位相変化を生成する。
【0205】
これにより、例えば、光導波路2004の図示左端から入力された入力光が変調されて、変調された出力光(変調光)が、図示右端から出力される。
【0206】
第1電極2006aは、並行導波路2004aに沿って図示左右に延在する帯状の第1主導体部2006a-1(図示一点鎖線の矩形で囲んだ部分)と、第1主導体部2006a-1から並行導波路2004aに向かって図示下方へ延在するT字状の複数の第1突出導体部2006a-2を備える。同様に、第2電極2006bは、並行導波路2004bに沿って図示左右に延在する帯状の第2主導体部2006b-1(図示一点鎖線の矩形で囲んだ部分)と、第2主導体部2006b-1から並行導波路2004bに向かって図示下方へ延在するT字状の複数の第2突出導体部2006b-2を備える。
【0207】
ここで、
図35には、図を簡単化して理解を容易にするため、第1主導体部2006a-1及び第2主導体部2006b-1からそれぞれ延在する一つの突出導体部にのみ符号を付しているが、第1主導体部2006a-1から同様のT字形状で突出している部分のすべてが第1突出導体部2006a-2であり、第2主導体部2006b-1から同様のT字形状で突出している部分のすべてが第2突出導体部2006b-2であるものと理解されたい。
【0208】
制御電極2006は、上記構成により、第1主導体部2006a-1と第2主導体部2006b-1とが電気信号を進行波として伝搬させる。そして、第1主導体部2006a-1と第2主導体部2006b-1の各部における電位を、それぞれ、複数の第1突出導体部2006a-2および第2突出導体部2006b-2により、並行導波路2004aおよび2004bの各部に印加して、並行導波路2004aおよび2004bを伝搬する光波に位相変化を発生させる。なお、このような制御電極の構成は、例えば、特開2006-65085に記載されている。
【0209】
ここで、制御電極2006が並行導波路2004a、2004bの光波を制御する部分、すなわち並行導波路2004a、2004bの光波に位相変化を与える部分は、作用部2008(
図35において並行導波路2004a、2004bの間に示す、図示破線矢印が示す範囲の部分)を構成する。作用部2008は、制御電極2006を伝搬する進行波の伝搬方向に沿って下流側の端部である端部2008eから所定距離の範囲である第1作用部分2008c(第2主導体部2006b-1上に示した図示一点鎖線矢印の範囲)と、上記伝搬方向に沿って上流側の、上記電気信号の入力端2008dから所定距離の範囲である第2作用部分2008a(図示一点鎖線矢印の範囲)と、を有する。ここで、所定距離の範囲とは、第1電極2006aと第2電極2006bとの間に直流電圧を印加した場合に、並行導波路2004a及び2004bのそれぞれにおいて、発生する光の位相変化の符号が同じである範囲をいう。
【0210】
そして、特に、本実施形態では、第2作用部分2008aと第1作用部分2008cとの間に、並行導波路2004aと2004bとが互いに交差する交差部2008bを有する。これにより、制御電極2006および光導波路2004は、作用部2008の第1作用部分2008cにおいて並行導波路2004a、2004bの光波に発生する位相変化が、第2作用部分2008aに発生する位相変化に対し符号が逆となるよう構成されている。
【0211】
また、第1作用部分2008cおよび第2作用部分2008aの、作用部2008の延在方向に沿って測った長さは、第1作用部分2008cの方が第2作用部分2008aより短い。すなわち、制御電極2006は、第1作用部分2008cにおいて並行導波路2004a、2004bに作用する部分の長さが、第2作用部分2008aにおいて並行導波路2004a、2004bに作用する部分の長さより短い。
【0212】
上記の構成を有する光変調素子2000は、
図1に示す光変調素子100と同様に、制御電極2006および並行導波路2004a、2004bが、作用部2008において第1作用部分2008cに発生する位相変化が第2作用部分2008aに発生する位相変化に対し符号が逆となるように構成される。このため、光変調素子2000では、光変調素子100と同様に、制御電極2006が有する導体損失等に起因して、第2作用部分2008aに発生する位相変化量のうち第1作用部分2008cにより相殺される位相変化量が周波数特性を持つこととなり、その結果、作用部2008の全体により実現される動作周波数帯域が拡大される。
【0213】
[第11実施形態]
次に、本発明の第11の実施形態について説明する。本実施形態は、上述した光変調素子100等のいずれかの光導波路素子を用いて構成される光導波路デバイスである。
図37は、本実施形態に係る光導波路デバイスである光変調デバイス2200の構成を示す図である。
【0214】
光変調デバイス2200は、光変調素子2202と、光変調素子2202を収容する筐体2204と、光変調素子2202への入力光を筐体2204内に導入する入力光ファイバ2206と、光変調素子2202から出力される出力光を筐体2204外へ導く出力光ファイバ2208と、を有する。
【0215】
ここで、光変調素子2202は、上述した光変調素子100、100-1、100-2、100-3、1400、1500、1800、1900、および2000(以下、光変調素子100等ともいう)のいずれかであるものとすることができる。
【0216】
筐体2204には、光変調素子2202に設けられた、進行波型電極である制御電極(不図示)に印加する電気信号を入力するためのコネクタ2210が設けられている。コネクタ2210から入力された電気信号は、中継基板2212を介してワイヤボンディングなど(不図示)により制御電極の一端に入力され、当該制御電極の他端には、所定のインピーダンスを有する終端器2214がワイヤボンディングなど(不図示)により接続されている。
【0217】
上記の構成を有する光変調デバイス2200は、上述した光変調素子100等により、従来に比べて広帯域な変調動作を実現し得る。
【0218】
[第12実施形態]
次に、本発明の第12の実施形態について説明する。本実施形態は、上述した光変調素子100等のいずれかを用いた第11実施形態に係る光変調デバイス2200を用いて構成される、光送信装置である。
【0219】
図38は、本実施形態に係る光送信装置2300の構成を示す図である。この光送信装置2300は、光変調デバイス2200と、光変調デバイス2200に光を入射する光源2302と、変調信号生成部2304と、変調データ生成部2306と、を有する。
【0220】
光源2302は、例えば半導体レーザである。変調データ生成部2306は、外部から与えられる送信データを受信して、当該送信データを送信するための変調データ(例えば、送信データを所定のデータフォーマットに変換又は加工したデータ)を生成し、当該生成した変調データを変調信号生成部2304へ出力する。
【0221】
変調信号生成部2304は、光変調デバイス2200に変調動作を行わせるための電気信号を出力する電子回路(ドライブ回路)であり、変調データ生成部2306が出力した変調データに基づき、光変調デバイス2200に当該変調データに従った光変調動作を行わせるための電気信号である変調信号を生成して、光変調デバイス2200に入力する。ここで、変調信号生成部2304は、光導波路デバイスに変調動作を行わせるための電気信号を出力する電子回路に相当する。
【0222】
上記の構成を有する光送信装置2300は、上述した光変調素子100等により従来に比べて広帯域な変調動作を実現する光変調デバイス2200を備えるので、より大きな伝送容量を低コストで実現することができる。
【0223】
なお、本発明は上記実施形態およびその変形例の構成に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能である。
【0224】
例えば、各実施形態に係る光変調素子の構成を示した
図1、3、6、8、10、14、15、18、21、24、27、30、33、34、35では、それぞれ対応する制御電極106等は、並行導波路に沿った部分のみが、中心電極とグランド電極とで構成される分布定数線路(例えばコプレーナ伝送線路(GSG、GSSG、GSGSGなどの構成)、マイクロストリップライン伝送線路等))を形成されるものとして描かれているが、制御電極106等の構成は、これには限られない。制御電極106等は、従来技術に従い、基板102等の基板面上に形成された中心電極の全体にわたって、グランド電極と共に分布定数線路を形成しているものとすることができる。
【0225】
また、上述した各実施形態では、光導波路素子の一例としてマッハツェンダ型光導波路を用いた光変調素子100等を示したが、本発明に係る光導波路素子は、光変調素子には限られない。光導波路素子は、光導波路内を伝搬する光波に進行波型電極により位相変化を生成させて動作する任意の機能を有する素子であるものとすることができる。そのような光導波路素子は、光スイッチ素子、偏波回転素子、等々であるものとすることができる。
【0226】
また、上述した実施形態において、光導波路104、1404、1504、1804、1904、2004は、それぞれ、基板102、1402、1502、2002への金属拡散または不純物拡散により形成されるものとすることができる。ただし、これら基板における光導波路の形成方法は、金属拡散または不純物拡散には限られない。例えば、これらの光導波路は、基板の表面に形成された凸部により構成されるリブ型導波路またはリッジ型導波路であってもよい。
【0227】
また、上述した実施形態では、光導波路素子を構成する基板として、LN基板(例えば、基板102)、又はInP、GaAs、若しくはSi等の半導体基板(基板2002)を用いるものとしたが、基板の素材は、これらには限られない。本発明に係る光導波路素子を構成する基板は、電気光学効果を有する限り、強誘電体、半導体、または高分子材料など、任意の材料で構成されるものとすることができる。そのような基板は、例えば、ポッケルス効果を有する結晶として、LiNbO3(LN)、Mg添加LiNbO3(Mg:LN)、Er添加LiNbO3(Er:LN)、LiTaO3(LT)、Mg添加LiTaO3(Mg:LT)、Er添加LiTaO3(Er:LT)、KTiOPO4(KTP)、KH2PO4(KDP)、NH4H2PO4(ADP)、BaTiO3(BTまたはBTO)、(Pb,La)(Zr,Ti)O3(PLZT)等の無機結晶、または分極分子を含有する高分子等有機材料を用いることができる。
【0228】
また、基板には、キャリアプラズマ効果を有する材料として、Si、SiGe等を用いることができ、量子閉じ込めシュタルク効果を有する材料としてInGaAsP/InPやInAlGaAs /InGaAs等を含む材料を用いることもできる。なお、基板は、上記効果を有することが可能であれば、列挙した材料に限定されることはなく、構成元素の一部または全部を周期表で示される同族の元素に置き換えたものやIV族の元素をIII-V族の元素で置き換えしたもの、微量の添加物として他元素をドープしたものでもよい。
【0229】
さらに、上述した実施形態では、光導波路104、1404、1504、1804、1904、2004は、それぞれ、基板102、1402、1502、2002の内部に、それら基板の一部として形成されるものとしたが、これらの光導波路は、基板内にその基板の一部として構成されるものには限られない。例えば、これらの光導波路は、電気光学効果を有さない基板の面上に設けられた、電気光学効果を有する高分子材料で構成されていてもよい。そのような光導波路で構成される光変調素子は、いわゆるシリコン-オーガニック・ハイブリッド光変調器(Silicon-Organic Hybrid Modulator)であり得る(例えば、Stefan Wolf et.al.,“DAC-Less Amplifier-Less Generation and Transmission of QAM Signals Using Sub-Volt Silicon-Organic Hybrid Modulators”JOURNAL OF LIGHTWAVE TECHNOLOGY, VOL. 33, NO. 7, APRIL 1, 2015、特開2016-71214号公報を参照)。
【0230】
また、上述した実施形態では、光変調素子100の変形例として、作用部の第1作用部分の長さ、第1作用部分と第2作用部分とにおける制御電極の電圧減衰係数の比m、あるいは第1作用部分と第2作用部分とにおける制御電極と並行導波路とのギャップの比gが変更されるものとしたが、当該第1作用部分の長さ、電圧減衰係数の比m、あるいはギャップの比gは、光変調素子1400、1500、1800、1900、2000においても同様に変更して、周波数応答におけるピーキングを調整するものとすることができる。
【0231】
また、上述した実施形態及び変形例に係る光変調素子100等における特徴構成は、互いに転用することが可能である。例えば、半導体である基板2002で構成される光変調素子2000におけるT字状突起を有する制御電極2006の構成は、LNである基板102や1502で構成される光変調素子100や1500にも適用することができる。
【0232】
以上、説明したように、光導波路素子である例えば光変調素子100は、電気光学効果を有するLN基板である基板102と、基板102に設けられた例えばマッハツェンダ型光導波路である光導波路104と、を備える。光導波路104は、基板102の内部に配されていてもよいし、基板102の基板面の上に配されていてもよい。また、基板102は、光導波路104を構成する並行導波路104a、104bに沿って設けられた、これら並行導波路に作用して当該並行導波路を伝搬する光波に位相変化を発生させる電極である制御電極106と、を備える。ここで、制御電極106は、電気信号が進行波となって一方向に伝搬する進行波型電極である。そして、制御電極106および並行導波路104a、104bは、制御電極106により上記光波が制御される作用部108において、上記進行波の伝搬方向に沿って下流側の端部108eから所定距離の範囲である第1作用部分108cに発生する上記位相変化が、上記伝搬方向に沿って上流側の上記電気信号の入力端108dから所定距離の範囲である第2作用部分108aに発生する上記位相変化に対し符号が逆となるよう構成されている。
【0233】
この構成によれば、基板に形成される光導波路を用いた光導波路素子において、様々な結晶方位を持つ基板においても容易かつ低コストで周波数特性を改善することができる。
【0234】
また、制御電極106は、第1作用部分108cにおいて並行導波路104a、104bに作用する部分の長さが、第2作用部分108aにおいて並行導波路104a、104bに作用する部分の長さより短い。この構成によれば、変調動作を確保しつつ、動作周波数帯域を拡大することができる。
【0235】
また、例えば第1作用部分108cは、第2作用部分108aに対して、それぞれ、並行導波路104a、104bに加わる電界が反転するよう構成される。すなわち、例えば光変調素子100では、基板102等の分極方向を変更することなく、並行導波路104a、104bに印加される電界が反転するように、制御電極106、1506および光導波路104、1504を構成することで、動作周波数帯域を容易に拡大することができる。
【0236】
また、上述した光変調素子100-2では、制御電極106-2は、第1作用部分108-2cにおける電気信号の電圧減衰係数α2が、第2作用部分108-2aにおける電圧減衰係数α1と異なるよう構成されている。この構成によれば、α1とα2の比を調整することにより、周波数応答特性におけるピーキングの強度を調整することができる。
【0237】
また、例えば光変調素子100の光導波路104は、対を為す2つの並行導波路104a、104bを含むマッハツェンダ型光導波路であり、作用部108は、対を為す2つの並行導波路104a、104bで構成される。この構成によれば、マッハツェンダ型光導波路により構成される光導波路素子、例えば光変調素子の動作周波数帯域を、基板の結晶方位によらず容易且つ低コストに改善することができる。
【0238】
また、作用部108は、光の伝搬方向が反転する第1の折返し部である折返し部108bを有し、第1作用部分108cは、当該折返し部108bと上記端部108eとの間の領域として構成される。この構成によれば、制御電極106と並行導波路104a、104bとで構成される作用部108の、基板102の面内における延在方向を、折返し部108bにより折り返すことで、基板102の面方向に沿って制御電極106から並行導波路104a、104bに印加される電界の方向を、容易に反転させることができる。
【0239】
また、上述した光変調素子1400では、作用部1408の第2作用部分1408aは、光の伝搬方向が反転する第2の折返し部である折返し部1408fを有し、当該折返し部1408fにおいて並行導波路1404a、1404bが互いに交差している。この構成によれば、第2作用部分1408aを折り返す場合でも、第2作用部分1408aにおいて並行導波路1404a、1404bに印加される電界の方向、したがって、並行導波路1404a、1404bに発生する位相変化を、その符号が逆とならないように容易に維持することができる。このため、光変調素子100と同様の原理で動作周波数帯域を拡大しつつ、第2作用部分1408aを折り返して光変調素子1400の長さ方向のサイズを低減することができる。
【0240】
また、光変調素子1500、2000では、それぞれ、対を為す並行導波路1504a、1504b及び2004a、2004bは、互いに交差する交差部を有する。そして、第1作用部分1508c、2008cは、それぞれ、上記交差部と、端部1508e、2008eと、の間の領域として構成される。この構成によれば、制御電極1506、2006を単純な直線状に形成することができるので、制御電極1506、2006における電気信号の放射損失等を低減しつつ、動作周波数帯域を拡大して、効率的な広帯域変調動作を実現することができる。
【0241】
また、例えば光変調素子1800では、制御電極1806は、中心電極1506a-1、1506a-2と、所定の距離を隔ててこれら中心電極に沿って形成されたグランド電極1506b、1506c、1506dと、で構成される。そして、対を為す並行導波路1804a、1804bで構成される作用部1808は、第2作用部分1808aを構成する並行導波路1804a、1804bの上部に中心電極1506a-1、1506a-2が形成され、第1作用部分1808cを構成する並行導波路1804a、1804bの上部にグランド電極1506b、1506dがそれぞれ形成されている。この構成によれば、例えばZカットのLN基板である基板1502を用いた場合において、並行導波路1804a、1804bに対し基板1502の厚さ方向に印加する電界を、第2作用部分1808aと第1作用部分1808cとにおいて容易に反転させて、並行導波路1804a、1804bに発生する位相変化が、第2作用部分1808aと第1作用部分1808cとの間において逆となるようにすることができる。
【0242】
また、例えば光変調素子100の基板102は、ニオブ酸リチウム(LN)結晶で構成され、制御電極106は、光導波路104に光変調動作を行わせる。この構成によれば、LN結晶を用いた基板により構成される光変調素子において、当該基板の結晶方位による制約を受けることなく、周波数特性を容易かつ低コストに改善することができる。
【0243】
また、基板102は、強誘電体、半導体、または、高分子材料で構成されていてもよく、光導波路104は、基板102の一部として構成されるか、または基板102の面上に配された高分子材料により構成されていてもよい。そして、制御電極106が、光導波路104に光変調動作を行わせる。この構成によれば、様々な素材により光変調素子100を構成することができる。
【0244】
また、光導波路デバイスである光変調デバイス2200は、光導波路素子である光変調素子100等のいずれかと、当該光変調素子を収容する筐体と、を有する。この構成によれば、様々な結晶方位を持つ基板においても容易かつ低コストで周波数特性を改善することのできる光導波路素子を用いて、従来に比べて広帯域な変調動作を実現し得る光導波路デバイスを安価に実現することができる。
【0245】
また、光送信装置2300は、光導波路デバイスである光変調デバイス2200を備える。この構成によれば、より多くの伝送容量を持った光送信装置を、低コストで実現することができる。
【符号の説明】
【0246】
100、100-1、100-2、100-3、200、1400、1500、1800、1900、2000、2202、2400、2400-1、2600、2700、2800…光変調素子、102、1402、1502、2002、2402、2602、2702、2802…基板、104、1404、1504、1804、1904、2004、2404、2604、2704、2804…光導波路、104a、104b、1404a、1404b、1504a、1504b、1804a、1804b、1904a、1904b、2004a、2004b、2404a、2404b、2604a、2604b、2704a、2704b、2804a、2804b…並行導波路、106、106-1、106-2、106-3、1406、1506、1906、2006、2406、2506、2606、2706、2806…制御電極、106a、106-1a、106-2a、106-3a、1406a、1506a-1、1506a-2、1906a-1、1906a-2、2406a-1、2406a-2、2506a、2606a-1、2606a-2、2706a-1、2706a-2、2806a…中心電極、106b、106c、106-1b、106-1c、106-3b、106-3c、1406b、1406c、1506b、1506c、1506d、1906b、1906c、1906d、2406b、2406c、2406d、2506b、2506c、2606b、2606c、2606d、2706b、2706c、2706d、2806b、2806c…グランド電極、108、108-1、108-2、108-3、1408、1508、1808、1908、2008、2408、2608、2708、2808…作用部、108a、108-1a、108-2a、108-3a、1408a、1508a、1808a、1908a、2008a、2408a、2608a、2708a、2808a…第2作用部分、108b、108-1b、108-2b、108-3b、1408b、1408f…折返し部、108c、108-1c、108-2c、108-3c、1408c、1508c、1808c、1908c、2008c、2408c、2608c、2708c、2808c…第1作用部分、108d、108-1d、108-2d、108-3d、1408d、1508d、1808d、1908d、2008d、2408d、2608d、2708d、2808d…入力端、108e、108-1e、108-2e、108-3e、1408e、1508e、1808e、1908e、2008e、2408e、2608e、2708e、2808e…端部、110、210、1410、1510a、1510b、2010、2410a、2410b、2610a、2610b、2710a、2710b、2810…信号源、112、212、1412、1512a、1512b、2012、2214、2412a、2412b、2612a、2612b、2712a、2712b、2812…終端器、1508b、2008b…交差部、2006a…第1電極、2006b…第2電極、2006a-1…第1主導体部、2006a-2…第1突出導体部、2006b-1…第2主導体部、2006b-2…第2突出導体部、2120…n層、2124…i層、2126…トレンチ、2128a、2128b…p型チャネル、2130…クラッド部、2200…光変調デバイス、2204…筐体、2206…入力光ファイバ、2208…出力光ファイバ、2210…コネクタ、2212…中継基板、2300…光送信装置、2302…光源、2304…変調信号生成部、2306…変調データ生成部、2408b…交差部、2708b…遷移部、2820a、2820b…分極反転部。