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(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】金属含有膜の生成方法
(51)【国際特許分類】
   C23C 16/20 20060101AFI20240920BHJP
   C23C 16/455 20060101ALI20240920BHJP
   C07F 5/06 20060101ALI20240920BHJP
   C07C 211/10 20060101ALI20240920BHJP
   C23C 16/32 20060101ALI20240920BHJP
   C23C 16/36 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C23C16/20
C23C16/455
C07F5/06 E CSP
C07C211/10
C23C16/32
C23C16/36
【請求項の数】 10
(21)【出願番号】P 2020554370
(86)(22)【出願日】2018-11-09
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-02-22
(86)【国際出願番号】 EP2018080738
(87)【国際公開番号】W WO2019120743
(87)【国際公開日】2019-06-27
【審査請求日】2021-11-04
(31)【優先権主張番号】62/763,125
(32)【優先日】2017-12-20
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】62/763,136
(32)【優先日】2018-03-07
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(73)【特許権者】
【識別番号】520222900
【氏名又は名称】ウェイン ステート ユニバーシティ
(74)【代理人】
【識別番号】100100354
【弁理士】
【氏名又は名称】江藤 聡明
(72)【発明者】
【氏名】マイア,ルーカス
(72)【発明者】
【氏名】シュヴァインフルト,ダフィト ドミニケ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァルトマン,ダニエル
(72)【発明者】
【氏名】ウィンター,チャールズ ハートガー
(72)【発明者】
【氏名】ブラケニー,カイル
(72)【発明者】
【氏名】クレンク,ジンヤ フェレナ
(72)【発明者】
【氏名】ヴァイグニー,ザビーネ
(72)【発明者】
【氏名】ウェーラトゥンガ シリッカトゥゲ,ニランカ
(72)【発明者】
【氏名】カルナラトネ,タリンドゥ マラワラ アラッチゲ ニマンタカ
【審査官】篠原 法子
(56)【参考文献】
【文献】米国特許第05880303(US,A)
【文献】特表2008-532932(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2013/0115383(US,A1)
【文献】中国特許出願公開第105907352(CN,A)
【文献】REGISTRY(STN)[online],2022年10月07日,1984年11月16日,CAS登録番号6680-61-1
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C23C 16/00-16/56
C07F 1/00- 5/06
C07C211/10
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
固体基板を、気体状態にある一般式(I)または(II):
【化1】
(式中、AはNR あり、ここでRは、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはシリル基であり、
Eは、NRであり、
nは、2または3であり、
R’は、水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはシリル基であり、
ここで、nが2である場合、前記R中の少なくとも1つのRは、1位に水素原子を保持しない)
の化合物と接触させることを含む、無機金属含有膜を製造する方法。
【請求項2】
Rが、メチル、エチル、tert-ブチル、トリメチルシリルであり、または2つのRが、一緒になって5員環を形成し、R’が、水素である、請求項1に記載の方法。
【請求項3】
金属含有化合物が、気体状態から前記固体基板上に堆積され、その後、それを、一般式(I)または(II)の化合物と接触させる、請求項1または2に記載の方法。
【請求項4】
前記金属含有化合物が、Ti、Ta、Mn、Mo、W、Al、Co、Ga、Ge、SbまたはTeを含有する、請求項3に記載の方法。
【請求項5】
前記金属含有化合物が、金属ハロゲン化物である、請求項3または4に記載の方法。
【請求項6】
一般式(I)または(II)の吸着された化合物が、分解される、請求項1または2に記載の方法。
【請求項7】
固体基板を一般式(I)または(II)の化合物と接触させることと、金属含有化合物を堆積させることまたは一般式(I)もしくは(II)の吸着された化合物を分解することとを含有する工順が、少なくとも2回実行される、請求項3から6のいずれか一項に記載の方法。
【請求項8】
前記一般式(I)の化合物が、600g/mol以下の分子量を有する、請求項1から7のいずれか一項に記載の方法。
【請求項9】
前記一般式(I)の化合物が、200℃の温度にて少なくとも1mbarの蒸気圧を有する、請求項1から8のいずれか一項に記載の方法。
【請求項10】
一般式(I)または(II):
【化2】
(式中、AはNR あり、ここでRは、メチル、エチル、tert-ブチルまたはトリメチルシリルであり、または2つのRが、一緒になって5員環を形成し、
Eは、NRであり、
nは、2であり、
R’は、水素であり、
ここで、前記NR中の少なくとも1つのRは、1位に水素原子を保持しない)
の化合物。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、無機金属含有膜を基板上に生成する方法の分野、詳細には原子層堆積方法の分野にある。
【背景技術】
【0002】
例えば半導体産業における、小型化の進行に伴い、基板上の、薄い無機膜への必要性が高まっており、その一方で、そのような膜の品質への要求はより厳しくなっている。薄い無機金属含有膜は、バリア層、導電性機能またはキャッピング層等の異なる目的に役立つ。無機金属含有膜のいくつかの生成方法が知られている。それらのうちの1つは、気体状態からの、基板上の膜形成化合物の堆積である。金属原子を適度な温度で気体状態へと持ち込むために、例えば金属を好適なリガンドと錯化させることによって揮発性前駆体を提供することが必要である。これらの前駆体は、蒸発にとって十分安定である必要があるが、他方、それらは堆積物の表面と反応するのに十分反応性である必要がある。
【0003】
金属膜が無機金属含有膜として所望される場合、堆積した金属錯体を還元剤に曝露することが通常必要である。典型的には、水素ガスが、堆積した金属錯体を金属膜に転換するために使用される。水素は、銅または銀のような比較的貴な金属では還元剤としてかなりよく働く一方で、チタンまたはアルミニウム等の、より陽電性の金属では、水素は満足のいく結果を生まない。
【0004】
米国特許第8927059号は、堆積している純粋金属膜、および水素化アルミニウム前駆体を使用したアルミニウム合金金属膜を開示している。しかしながら、これらの前駆体は、最適な結果を達成するには安定性が不十分なものであると判明している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0005】
【文献】米国特許第8927059号
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0006】
したがって、膜中に不純物が少ない無機金属含有膜を製造する方法を提供することが本発明の目的であった。該方法の材料は、取り扱いやすいものであるべきであり、具体的には、できるだけ少ない分解を伴ってそれらを蒸発させることが可能であるべきである。さらに、この方法の材料は、該方法の条件下、堆積表面にて分解すべきではないが、同時に、それは、表面反応に関与するのに十分な反応性を有するべきである。すべての反応副生成物は、膜汚染を回避するよう揮発性であるべきである。加えて、この方法の材料中の金属原子が揮発性であるか、または膜中に組み込まれるかのいずれかであるように、この方法を調整することが可能であるべきである。さらに、該方法は、それが陽電性金属膜を含む広範囲の異なる金属を生産すべく適用されうるように、多用途であるべきである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
これらの目的は、固体基板を、気体状態にある一般式(I)または(II):
【0008】
【化1】
(式中、Aは、NRまたはORであり、ここでRは、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはシリル基であり、
Eは、NRまたはOであり、
nは、1、2または3であり、
R’は、水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはシリル基であり、
ここで、nが2でありEがNRでありまたはAがORである場合、NRまたはOR中の少なくとも1つのRは、1位に水素原子を保持しない)
の化合物と接触させることを含む、無機金属含有膜を製造する方法によって達成された。
【0009】
本発明はさらに、一般式(I)または(II):
【化2】
(式中、AはNRまたはORであり、ここでRは、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはシリル基であり、
Eは、NRまたはOであり、
nは、0、1または2であり、mは、0、1または2であり、
R’は、水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはシリル基であり、
ここで、nが2でありEがNRでありまたはAがORである場合、NRまたはOR中の少なくとも1つのRは、1位に水素原子を保持しない)
の化合物に関する。
【図面の簡単な説明】
【0010】
図1図1は、化合物(Ie-1)、(Ie-5)および(III-1)の熱重量分析(TGA)を示す。
図2図2は、化合物(Ie-5)のX線結晶構造を示す。
図3図3左上は、化合物(Ie-1)の、パルス長に対する成長速度およびバルク抵抗率を明示する。図3右上は、TiClの、パルス長に対する成長速度および抵抗率を明示する。図3左下は、温度に対する成長速度および抵抗率を明示する。図3右下は、サイクル数に対する膜厚を明示する。
図4図4は、280℃(下)および400℃(上)で堆積させたTiC膜のGI-XRDパターンを示す。
図5図5は、250回のALDサイクル後のWClおよび化合物(Ie-1)から堆積させた膜についての、温度に対する成長速度および膜抵抗率を明示する。
図6図6は、AlClおよび化合物(Ie-1)の125回のALDサイクル後に120℃にてCu基板上に堆積させた42nmAl膜の断面SEM画像を示す。
図7図7は、1000回のALDサイクル後に120℃にて熱酸化物上に堆積させた(Si上100nm)400nm厚のAl膜のGI-XRDパターンを明示する。
【発明を実施するための形態】
【0011】
本発明の好ましい実施形態は、本明細書および特許請求の範囲において見出すことができる。異なる実施形態の組み合わせが、本発明の範囲内にある。
【0012】
本発明による方法は、無機金属含有膜を製造するのに好適である。本発明の関連における無機金属含有とは、少なくとも5質量%、好ましくは少なくとも10質量%、より好ましくは少なくとも20質量%、特定すると少なくとも30質量%の少なくとも1種の金属を含有する材料を指す。無機膜は、典型的には、窒化カーバイド相等の混合カーバイド相を含む、カーバイド相の形態にのみある炭素を含有する。無機膜中のカーバイド相の部分ではない炭素の炭素含有量は、好ましくは5質量%未満、より好ましくは1質量%未満、特定すると0.2質量%未満である。無機金属含有膜の好ましい例は、金属窒化物膜、金属カーバイド膜、金属炭窒化物膜、金属合金膜、金属間化合物膜、またはこれらの混合物を含有する膜である。
【0013】
本発明による方法によって製造される膜は、金属を含有する。膜が、1種の金属または1種を超える金属を含有することが可能である。金属には、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Ge、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Biが挙げられる。本発明による方法が金属に関して多用途であるので、金属は、Cuよりも陽電性、より好ましくはNiよりも陽電性であることができる。詳細には、金属含有化合物は、Ti、Ta、Mn、Mo、W、Al、Co、Ga、Ge、SbまたはTeを含有する。
【0014】
固体基板は、任意の固体材料であることができる。これらには、例えば金属、半金属、酸化物、窒化物およびポリマーが挙げられる。基板が、異なる材料の混合物であることもまた可能である。金属の例は、アルミニウム、鋼、亜鉛および銅である。半金属の例は、ケイ素、ゲルマニウムおよびガリウムヒ素である。酸化物の例は、二酸化ケイ素、二酸化チタンおよび二酸化亜鉛である。窒化物の例は、窒化ケイ素、窒化アルミニウム、窒化チタンおよび窒化ガリウムである。ポリマーの例は、ポリエチレンテレフタレート(PET)、ポリエチレンナフタレン-ジカルボン酸(PEN)およびポリアミドである。
【0015】
固体基板は、任意の形状を有することができる。これらには、シートプレート、膜、繊維、多様なサイズの粒子、および溝または他の凹みを伴う基板が挙げられる。固体基板は、任意のサイズのものであることができる。固体基板が粒子形状を有する場合、粒径は、100nm未満から数センチメートル、好ましくは1μm~1mmの範囲であることができる。粒子または繊維が、金属含有化合物がそれらの上に堆積している間に互いに固着することを回避するために、それらを動かし続けておくことが好ましい。これは、撹拌技術により、回転ドラム技術により、または流動床技術により、達成することができる。
【0016】
本発明によれば、固体基板を、気体相にある一般式(I)または(II)の化合物と接触させる。一般式(I)または(II)の化合物中のR’は、水素、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはシリル基であり、好ましくは水素である。R’は、互いに同一であっても異なっていてもよい。好ましくは、すべてのR’は水素である。
【0017】
アルキル基は、直鎖状または分枝状でありうる。直鎖状アルキル基の例は、メチル、エチル、n-プロピル、n-ブチル、n-ペンチル、n-ヘキシル、n-ヘプチル、n-オクチル、n-ノニル、n-デシルである。分枝状アルキル基の例は、イソプロピル、イソブチル、sec-ブチル、tert-ブチル、2-メチル-ペンチル、ネオ-ペンチル、2-エチル-ヘキシル、シクロプロピル、シクロヘキシル、インダニル、ノルボルニルである。好ましくは、アルキル基は、C~Cアルキル基、より好ましくはC~Cアルキル基、特定するとC~Cアルキル基、例えばメチル、エチル、イソプロピルまたはtert-ブチルである。
【0018】
アルケニル基は、少なくとも1つの炭素-炭素二重結合を含有する。二重結合は、R’が分子の残りに結合している炭素原子を含むことができ、または二重結合は、R’が分子の残りに結合している所からさらに離れて置かれうる。アルケニル基は、直鎖状または分枝状でありうる。二重結合が、R’が分子の残りに結合している炭素原子を含む直鎖状アルケニル基の例には、1-エテニル、1-プロペニル、1-n-ブテニル、1-n-ペンテニル、1-n-ヘキセニル、1-n-ヘプテニル、1-n-オクテニルが挙げられる。二重結合が、R’が分子の残りに結合している所からさらに離れて置かれている直鎖状アルケニル基の例には、1-n-プロペン-3-イル、2-ブテン-1-イル、1-ブテン-3-イル、1-ブテン-4-イル、1-ヘキサン-6-イルが挙げられる。二重結合が、R’が分子の残りに結合している炭素原子を含む分枝状アルケニル基の例には、1-プロペン-2-イル、1-n-ブテン-2-イル、2-ブテン-2-イル、シクロペンテン-1-イル、シクロヘキセン-1-イルが挙げられる。二重結合が、R’が分子の残りに結合している所からさらに離れて置かれている分枝状アルケニル基の例には、2-メチル-1-ブテン-4-イル、シクロペンテン-3-イル、シクロヘキセン-3-イルが挙げられる。1つを超える二重結合を有するアルケニル基の例には、1,3-ブタジエン-1-イル、1,3-ブタジエン-2-イル、シクロペンタジエン-5-イルが挙げられる。
【0019】
アリール基には、芳香族炭化水素、例えばフェニル、ナフタリル、アントラセニル、フェナントレニルの各基、および複素芳香族基、例えばピリル、フラニル、チエニル、ピリジニル、キノリル、ベンゾフリル、ベンゾチオフェニル、チエノチエニルが挙げられる。これらの基またはこれらの基の組み合わせのうちのいくつかがまた可能であり、ビフェニル、チエノフェニルまたはフラニルチエニル等である。アリール基は、例えば、フルオリド、クロリド、ブロミド、ヨードのようなハロゲンによって、シアニド、シアネート、チオシアネートのような疑ハロゲンによって、アルコールによって、アルキル鎖またはアルコキシ鎖によって、置換されうる。芳香族炭化水素が好ましく、フェニルがより好ましい。
【0020】
シリル基は、典型的に3つの置換基を有するケイ素原子である。好ましくは、シリル基は、式SiX(式中、Xは、互いに独立に、水素、アルキル基、アリール基またはシリル基である)を有する。3つすべてのXが同一であること、または2つのAが同一で残りのXが異なること、または3つすべてのXが互いに異なること、好ましくはすべてのXが同一であることが可能である。アルキル基およびアリール基は、上に説明したものである。シリル基の例には、SiH、メチルシリル、トリメチルシリル、トリエチルシリル、トリ-n-プロピルシリル、トリ-イソプロピルシリル、トリシクロヘキシルシリル、ジメチル-tert-ブチルシリル、ジメチルシクロヘキシルシリル、メチル-ジイソプロピルシリル、トリフェニルシリル、フェニルシリル、ジメチルフェニルシリル、ペンタメチルジシリルが挙げられる。
【0021】
一般式(I)または(II)の化合物中のAは、NRまたはORであり、すなわち2つの置換基Rを保持する窒素原子、または1つの置換基Rを保持する酸素原子である。Rは、アルキル基、アルケニル基、アリール基またはシリル基である。別段の記載が明白になされていない限り、上に説明したR’についてと同じ定義および好ましい実施形態が当てはまる。好ましくは、Rは、メチル、エチル、tert-ブチルまたはトリメチルシリルである。また好ましくは、AがNRである場合、2つのRは一緒になって、窒素原子を含む5員環を形成し、具体的には2つのRは、窒素原子を含む5員環中の-CH-CH-CH-CH-基である。
【0022】
一般式(I)または(II)の化合物中のEは、NRまたはOであり、すなわち1つの置換基Rを保持する窒素原子、または酸素原子である。E中のRの定義は、A中のRの定義と同じである。
【0023】
変数nは、0、1または2であることができ、変数mは、0、1または2であることができ、好ましくは、n+mは、1、2、3または4であり、より好ましくは、nは1または2でありmは1または2であり、さらにより好ましくは、nは1でありmは1であり、またはnは2でありmは2である。
【0024】
すべてのR’およびRが別個の置換基であることが可能である。代替的に、2つのR’もしくは2つのR、または1つのR’および1つのRが、一緒になって、環、好ましくは4~8員環、特定すると5員または6員環を形成することが可能である。
【0025】
nが1である場合、一般式(I)の化合物は、以下の一般式のうちの1つになる。
【0026】
【化3】
【0027】
一般式(Ia)~(Id)の化合物の、いくつかの好ましい例を以下に示す。
【0028】
【化4】
【0029】
nが2である場合、一般式(I)の化合物は、以下の一般式のうちの1つになる。
【0030】
【化5】
【0031】
一般式(Ie)~(Ih)の化合物の、いくつかの好ましい例を以下に示す。
【0032】
【化6】
【0033】
nが3である場合、一般式(I)の化合物は、以下の一般式のうちの1つになる。
【0034】
【化7】
【0035】
一般式(Ii)~(Im)の化合物の、いくつかの好ましい例を以下に示す。
【0036】
【化8】
【0037】
nが1である場合、一般式(II)の化合物は、以下の一般式のうちの1つになる。
【0038】
【化9】
【0039】
一般式(IIa)~(IIc)の化合物の、いくつかの好ましい例を以下に示す。
【0040】
【化10】
【0041】
nが2である場合、一般式(II)の化合物は、以下の一般式のうちの1つになる。
【0042】
【化11】
【0043】
一般式(IId)~(IIf)の化合物の、いくつかの好ましい例を以下に示す。
【0044】
【化12】
【0045】
nが3である場合、一般式(II)の化合物は、以下の一般式のうちの1つになる。
【0046】
【化13】
【0047】
一般式(IIg)~(IIi)の化合物の、いくつかの好ましい例を以下に示す。
【0048】
【化14】
【0049】
一般式(I)または(II)の化合物は、多くの場合、液体および固体相中で、時にはまた、少なくとも部分的に気体相中で、ダイマーを形成する。これらのダイマーは、本発明の範囲内にある。
【0050】
本発明によれば、nが2でありEがNRでありまたはAがORである場合、NRまたはOR中の少なくとも1つのRは、1位に水素原子を保持せず、好ましくはnとは独立しており、EがNRでありまたはAがORである場合、NRまたはOR中の少なくとも1つのRは、1位に水素原子を保持せず、より好ましくは、NRまたはOR中のすべてのRは、1位に水素原子を保持せず、すなわちRは、窒素原子または酸素原子に結合している原子に結合している水素原子を保持せず、そのため、これは、アルミニウム原子に関してβ位にある。例は、1位に2つのアルキル側基を保持するアルキル基、すなわち1,1-ジアルキルアルキル、例えばtert-ブチル、1,1-ジメチルプロピル;1位に2つのハロゲンを有するアルキル基、例えばトリフルオロメチル、トリクロロメチル、1,1-ジフルオロエチル;トリアルキルシリル基、例えばトリメチルシリル、トリエチルシリル、ジメチル-tert-ブチルシリル;アリール基、特定するとフェニルまたはアルキル置換フェニル、例えば2,6-ジイソプロピルフェニル、2,4,6-トリイソプロピルフェニルである。1位に水素原子を保持しないアルキル基が特に好ましい。
【0051】
一般式(I)または(II)の化合物は、好ましくは、1000g/mol以下、より好ましくは800g/mol以下、さらにより好ましくは600g/mol以下、特定すると500g/mol以下の分子量を有する。
【0052】
好ましくは、一般式(I)または(II)の化合物は、-80~125℃、好ましくは-60~80℃、さらにより好ましくは-40~50℃、特定すると-20~20℃の範囲の融点を有する。一般式(I)または(II)の化合物が溶融して透明な液体を付与し、それが分解温度まで変わらないままであると有利である。
【0053】
好ましくは、一般式(I)または(II)の化合物は、少なくとも80℃、より好ましくは少なくとも100℃、特定すると少なくとも120℃、例えば少なくとも150℃の分解温度を有する。多くの場合、分解温度は250℃以下である。一般式(I)または(II)の化合物は、高い蒸気圧を有する。好ましくは、蒸気圧は、200℃、より好ましくは150℃、特定すると120℃の温度にて、少なくとも1mbarである。通常、蒸気圧が1mbarである温度は、少なくとも50℃である。
【0054】
一般式(I)または(II)の化合物は、好ましくは液体炭化水素またはエーテル中で、有機リガンドを、AlH、LiAlHまたはAlH(N(CH)と反応させることによって合成することができる。炭化水素には、芳香族炭化水素、例えばトルエン、エチルベンゼン、キシレンおよびクメン、ならびに脂肪族炭化水素、例えばシクロヘキサン、ヘキサン、メチルシクロヘキサンおよびヘプタンが挙げられる。エーテルの例には、ジエチルエーテル、ジメチルエーテル、テトラヒドロフラン、ならびにモノ-、ジ-、トリ-およびテトラエチレングリコールジメチルエーテル、好ましくはジエチルエーテルが挙げられる。
【0055】
それらの合成を含むリガンドは、例えば式(Ib)の化合物については米国特許出願公開第2002/013487 A1号において;(IC)については、UnderhillらによりJournal of the American Chemical Society、第71巻(1949)、4014~4019頁において;(Id)については、HeatonらによりJournal of the Chemical Society,Dalton Transactions:Inorganic Chemistry(1972~1999)、1996、61~68頁において;(Ie)および(Ii)については、PoprらによりJournal of Organic Chemistry、第10巻(2014)、1390~1396頁において;(If)については、AfonsoらによるMolecules、第11巻(2006)、91~102頁において;(Ig)については、RosenauらによりSynthetic Communications、第32巻(2002)、457~466頁において;(Ih)については、SpasyukらによりOrganometallics、第31巻(2012)、5239~5242頁において;(Ii)については、WO2016/177655 A1において;(Ik)については、米国特許出願公開第2010/063294 A1号において;(Im)については、米国特許出願公開第2010/069681号において;(IIa)については、WO 2010/019844 A1において;(IIb)については、ChengらによるJournal of Chemical Research、1983、1101~1113頁において;(IId)については、CortesらによりJournal of Organic Chemistry、第48巻(1983)、2246~2254頁において;(IIe)については、RamらによりSynthetic Communications、第17巻(1987)、415~418頁において;(IIg)については、DaleらによりActa Chemica Scandinavica、第45巻(1991)、1064~1070頁において;(IIh)については、WO2006/051851 A1において;(IIi)については、CN105585445 Aにおいて開示されている。
【0056】
本発明による方法において使用される一般式(I)または(II)の化合物は、最良の結果を達成するために、高純度で使用される。高純度は、使用される物質が、少なくとも90質量%、好ましくは少なくとも95質量%、より好ましくは少なくとも98質量%、特定すると少なくとも99質量%の金属含有化合物または一般式(I)もしくは(II)の化合物を含有することを意味する。純度は、DIN 51721(Pruefung fester Brennstoffe-Bestimmung des Gehaltes an Kohlenstoff und Wasserstoff-Verfahren nach Radmacher-Hoverath、2001年8月)による元素分析によって決定することができる。
【0057】
一般式(I)または(II)の化合物を、気体状態から固体基板と接触させる。それは、例えばそれらを高温に加熱することによって気体状態へ持ち込むことができる。いずれの事例でも、一般式(I)または(II)の化合物の分解温度を下回る温度が選ばれなければならない。分解温度は、元の一般式(I)または(II)の化合物がその化学構造および組成を変更し始める温度である。好ましくは、加熱温度は、0℃~300℃、より好ましくは10℃~250℃、さらにより好ましくは20℃~200℃、特定すると30℃~150℃の範囲である。
【0058】
一般式(I)または(II)の化合物を気体状態に持ち込む別の方法は、直接液体注入(DLI)であり、これは、例えば米国特許出願公開第2009/0226612 A1号に記載されている。この方法では、一般式(I)または(II)の化合物は、典型的には、溶媒に溶解され、キャリアガスまたは真空において噴霧される。一般式(I)または(II)の化合物の蒸気圧および温度が十分高く、圧力が十分低い場合、一般式(I)または(II)の化合物は気体状態へと持ち込まれる。一般式(I)または(II)の化合物が、その溶媒中で十分な可溶性、例えば少なくとも1g/l、好ましくは少なくとも10g/l、より好ましくは少なくとも100g/lを示すのであれば、多様な溶媒を使用することができる。これらの溶媒の例は、配位溶媒、例えばテトラヒドロフラン、ジオキサン、ジエトキシエタン、ピリジン、または非配位溶媒、例えばヘキサン、ヘプタン、ベンゼン、トルエンもしくはキシレンである。溶媒混合物もまた好適である。
【0059】
別法では、一般式(I)または(II)の化合物は、直接液体蒸発(DLE)によって気体状態へと持ち込まれることができ、これは、例えばJ.Yangら(Journal of Materials Chemistry、2015)に記載されている。この方法では、一般式(I)または(II)の化合物は、溶媒、例えばテトラデカン等の炭化水素と混合され、該溶媒の沸点未満で加熱される。溶媒の蒸発によって、一般式(I)または(II)の化合物は気体状態へと持ち込まれる。この方法は、表面上に微粒子汚染物質が形成されないという利点を有する。
【0060】
一般式(I)または(II)の化合物を減圧下で気体状態へと持ち込むことが好ましい。このようにして、該方法は、通常、より低い加熱温度で実行されて、一般式(I)または(II)の化合物の分解を減少させることができる。加圧を用いて、気体状態にある一般式(I)または(II)の化合物を、固体基板に向けて押すこともまた可能である。多くの場合、不活性ガス、例えば窒素またはアルゴンが、この目的のためのキャリアガスとして使用される。好ましくは、圧力は、10bar~10-7mbar、より好ましくは1bar~10-3mbar、特定すると1bar~0.01mbar、例えば0.1mbarである。
【0061】
好ましくは、一般式(I)または(II)の化合物は、該方法において還元剤として働く。この事例では、金属含有化合物は、気体状態から固体基板上に堆積させ、その後、それを一般式(I)または(II)の化合物と接触させる。金属含有化合物は、通常、金属、金属窒化物、金属カーバイド、金属炭窒化物、金属合金、金属間化合物、またはこれらの混合物に還元される。本発明との関連における金属膜は、電導性の高い、通常少なくとも10S/m、好ましくは少なくとも10S/m、特定すると少なくとも10S/mの金属含有膜である。
【0062】
一般式(I)または(II)の化合物は、堆積した金属含有化合物を有する固体基板の表面と永久結合を形成する傾向が低い。結果として、金属含有膜は、一般式(I)または(II)の化合物の反応副生成物で汚染されることがほとんどない。好ましくは、金属含有膜は、和において、5質量%未満、より好ましくは1質量%未満、特定すると0.5質量%未満、例えば0.2質量%未満の窒素を含有する。
【0063】
金属含有化合物は、少なくとも1個の金属原子を含有する。金属には、Li、Be、Na、Mg、Al、K、Ca、Sc、Ti、V、Cr、Mn、Fe、Co、Ni、Cu、Zn、Ga、Rb、Sr、Y、Zr、Nb、Mo、Tc、Ru、Rh、Pd、Ag、Cd、In、Sn、Sb、Te、Cs、Ba、La、Ce、Pr、Nd、Pm、Sm、Eu、Gd、Tb、Dy、Ho、Er、Tm、Yb、Lu、Hf、Ta、W、Re、Os、Ir、Pt、Au、Hg、Tl、Pb、Biが挙げられる。本発明による方法が金属含有化合物に関して非常に多用途であるため、金属含有化合物は、Cuよりも陽電性である金属、より好ましくはNiよりも陽電性である金属を含有することができる。詳細には、金属含有化合物は、Ti、Ta、Mn、Mo、W、Al、Co、Ge、Ga、SbまたはTeを含有する。1種を超える金属含有化合物が、同時または連続的のいずれかで表面上に堆積されることが可能である。1種を超える金属含有化合物が固体基板上に堆積される場合、すべての金属含有化合物が同一の金属または異なる金属を含有すること、好ましくはそれらが異なる金属を含有することが可能である。
【0064】
気体状態へと持ち込まれうる任意の金属含有化合物が好適である。これらの化合物には、金属アルキル、例えばジメチル亜鉛、トリメチルアルミニウム;金属アルコキシレート、例えばテトラメトキシケイ素、テトラ-イソプロポキシジルコニウムまたはテトラ-イソプロポキシチタン;金属シクロペンタジエニル錯体、例えばペンタメチルシクロペンタジエニル-トリメトキシチタンまたはジ(エチルシクロペンタジエニル)マンガン;金属カルベン、例えばトリス(ネオペンチル)ネオペンチリデンタンタルまたはビスイミダゾリジニリデンルテニウムクロリド;金属ハロゲン化物、例えば三塩化アルミニウム、五塩化タンタル、四塩化チタン、五塩化モリブデンまたは六塩化タングステン;一酸化炭素錯体、例えばヘキサカルボニルクロムまたはテトラカルボニルニッケル;アミン誘導錯体、例えばビス(tert-ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミド)モリブデン、ビス(tert-ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミド)タングステンまたはテトラキス(ジメチルアミド)チタン;ジケトネート錯体、例えばトリス(アセチルアセトナト)アルミニウムまたはビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)マンガンが挙げられる。
【0065】
金属含有化合物のさらなる例は、アルミニウムトリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、トリイソブチルアルミニウム、トリメチルアルミニウム、トリス(ジメチルアミド)アルミニウム(III)、トリエチルガリウム、トリメチルガリウム、トリス(ジメチルアミド)ガリウム(III)、テトラキス(ジエチルアミド)チタン(IV)、テトラキス(ジメチルアミド)チタン(IV)、テトラキス(エチルメチルアミド)チタン(IV)、チタン(IV)ジイソプロポキシドビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、チタン(IV)イソプロポキシド、四塩化チタン、ビス(シクロペンタジエニル)バナジウム(II)、ビス(エチルシクロペンタジエニル)バナジウム(II)、バナジウム(V)オキシトリイソプロポキシド、ビス(シクロペンタジエニル)クロム(II)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)クロム(II)、クロム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、銅ビス(6,6,7,7,8,8,8-ヘプタフルオロル-2,2-ジメチル-3,5-オクタンジオネート)、銅ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)マンガン(II)、ブロモペンタカルボニルマンガン(I)、シクロペンタジエニルマンガン(I)トリカルボニル、エチルシクロペンタジエニルマンガン(I)トリカルボニル、マンガン(0)カルボニル、[1,1’-ビス(ジフェニルホスフィノ)フェロセン]テトラカルボニルモリブデン(0)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)鉄(II)、1,1’-ジエチルフェロセン、鉄(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、鉄(0)ペンタカルボニル、ビス(シクロペンタジエニル)コバルト(II)、ビス(エチルシクロペンタジエニル)コバルト(II)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)コバルト(II)、アリル(シクロペンタジエニル)ニッケル(II)、ビス(シクロペンタジエニル)ニッケル(II)、ビス(エチルシクロペンタジエニル)ニッケル(II)、ビス(トリフェニルホスフィン)ニッケル(II)ジクロリド、ニッケル(II)ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、トリス[N,N-ビス(トリメチルシリル)アミド]イットリウム、トリス(ブチルシクロペンタジエニル)イットリウム(III)、トリス(シクロペンタジエニル)イットリウム(III)、イットリウム(III)トリス(イソプロポキシド)、イットリウム(III)トリス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、ビス(シクロペンタジエニル)ニオブ(IV)ジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)ジヒドリド、ジメチルビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)ジルコニウム(IV)、テトラキス(ジエチルアミド)ジルコニウム(IV)、テトラキス(ジメチルアミド)ジルコニウム(IV)、テトラキス(エチルメチルアミド)ジルコニウム(IV)、ジルコニウム(IV)2-エチルヘキサノエート、ジルコニウムテトラキス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオネート)、ビス(tertブチルシクロペンタジエニル)ジメチルハフニウム(IV)、ビス(トリメチルシリル)アミドハフニウム(IV)クロリド、ジメチルビス(シクロペンタジエニル)ハフニウム(IV)、ハフニウム(IV)tert-ブトキシド、テトラキス(ジエチルアミド)ハフニウム(IV)、テトラキス(ジメチルアミド)ハフニウム(IV)、テトラキス(エチルメチルアミド)ハフニウム(IV)、ペンタキス(ジメチルアミノ)タンタル(V)、タンタル(V)エトキシド、トリス(ジエチルアミド)(tert-ブチルイミド)タンタル(V)、ビス(ブチルシクロペンタジエニル)タングステン(IV)ジヨージド、ビス(tert-ブチルイミノ)ビス(tertブチルアミノ)タングステン、ビス(tert-ブチルイミノ)ビス(ジメチルアミノ)タングステン(VI)、ビス(シクロペンタジエニル)タングステン(IV)ジクロリド、ビス(シクロペンタジエニル)タングステン(IV)ジヒドリド、ビス(イソプロピルシクロペンタジエニル)タングステン(IV)ジヒドリド、シクロペンタジエニルタングステン(II)トリカルボニルヒドリド、テトラカルボニル(1,5-シクロオクタジエン)タングステン(0)、およびトリアンミンタングステン(IV)トリカルボニル、タングステンヘキサカルボニル、ビス(ペンタフルオロフェニル)亜鉛、ビス(2,2,6,6-テトラメチル-3,5-ヘプタンジオナト)亜鉛(II)、ジエチル亜鉛、ジフェニル亜鉛、トリメチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)、トリエチル(メチルシクロペンタジエニル)白金(IV)、ビス(シクロペンタジエニル)マグネシウム(II)、ビス(ペンタメチルシクロペンタジエニル)マグネシウム、(3-アミノプロピル)トリエトキシシラン、N-sec-ブチル(トリメチルシリル)アミン、クロロペンタメチルジシラン、1,2-ジクロロテトラメチルジシラン、1,3-ジエチル-1,1,3,3-テトラメチルジシラザン、1,2-ジメチル-1,1,2,2-テトラフェニルジシラン、ドデカメチルシクロヘキサシラン、ヘキサメチルジシラン、ヘキサメチルジシラザン、メチルシラン、2,4,6,8,10-ペンタメチルシクロペンタシロキサン、ペンタメチルジシラン、四臭化ケイ素、四塩化ケイ素、テトラエチルシラン、2,4,6,8-テトラメチルシクロテトラシロキサン、1,1,2,2-テトラメチルジシラン、トリス(tert-ブトキシ)シラノール、トリス(tert-ペントキシ)シラノール、フッ化ゲルマニウム(IV)、ヘキサメチル二ゲルマニウム(IV)、ヘキサフェニル二ゲルマニウム(IV)、テトラメチルゲルマニウム、トリブチルゲルマニウムヒドリド、トリフェニルゲルマニウムヒドリド、ビス[ビス(トリメチルシリル)アミノ]スズ(II)、ジブチルジフェニルスズ、ヘキサフェニル二スズ(IV)、テトラアリルスズ、テトラキス(ジエチルアミド)スズ(IV)、テトラキス(ジメチルアミド)スズ(IV)、テトラメチルスズ、テトラビニルスズ、スズ(II)アセチルアセトネート、トリメチル(フェニルエチルニル)スズ、およびトリメチル(フェニル)スズ、トリ(エチルオキシ)アンチモン(III)、トリ(ブチルオキシ)アンチモン(III)、((CHN)SbGe(OC、テトラメチルゲルマニウム(IV)、テトラエチルゲルマニウム(IV)、テトラ-n-ブチルゲルマニウム(IV)である。
【0066】
金属ハロゲン化物が好ましく、金属塩化物がより好ましく、具体的にはTiCl、TaCl、MoCl、WCl、WCl、AlCl、GaCl、GeCl、TeClである。金属含有化合物の分子量が、最大で1000g/mol、より好ましくは最大で800g/mol、特定すると最大で600g/mol、例えば最大で500g/molであることが好ましい。
【0067】
該方法は、好ましくは、
(a)金属含有化合物を、気体状態から固体基板上に堆積させることと、
(b)堆積した金属含有化合物を有する固体基板を、一般式(I)または(II)の化合物と接触させることと
の工順を含む、原子層堆積(ALD)方法として実行される。好ましくは、(a)と(b)とを含む工順は、少なくとも2回、より好ましくは少なくとも5回、さらにより好ましくは少なくとも10回、特定すると少なくとも50回実行される。多くの場合、(a)と(b)とを含む工順は、1000回以下実行される。
【0068】
一般に、固体基板が、気体状態にある、金属含有化合物または一般式(I)もしくは(II)の化合物に曝露されるたびに、基板およびその周囲の器具を不活性ガスでパージすることが好ましい。不活性ガスの好ましい例は、窒素およびアルゴンである。パージは、1秒~1分、好ましくは5~30秒、より好ましくは10~25秒、特定すると15~20秒かかりうる。
【0069】
好ましくは、基板の温度は、金属含有化合物が気体状態へと持ち込まれる所、例えば20℃よりも、5℃~40℃高い。好ましくは、基板の温度は、室温~450℃、より好ましくは100~400℃、特定すると120~300℃、例えば150~220℃である。
【0070】
好ましくは、金属含有化合物を固体基板上に堆積させた後に、かつ堆積した金属含有化合物を有する固体基板を一般式(I)または(II)の化合物と接触させる前に、堆積した金属含有化合物を有する固体基板を、気体相中の酸と接触させる。理論に束縛されることはないが、金属含有化合物のリガンドのプロトン化が、その分解および還元を促進すると確信される。好適な酸には、塩酸およびカルボン酸、好ましくはカルボン酸、例えばギ酸、酢酸、プロピオン酸、ブチル酸またはトリフルオロ酢酸、特定するとギ酸が挙げられる。
【0071】
本発明の方法についての例は、
(i)金属前駆体蒸気を基板に供給して、コーティングされた基板を得ることと、
(ii)コーティングした基板を第1のキャリアガスでパージすることと、
(iii)水素化アルミニウム共反応物を、コーティングした基板へ供給することと、次いで
(iv)第2のキャリアガスでパージすることと
を含む、金属含有膜を基板上に堆積させる方法であり、
水酸化アルミニウム共反応物は、アルミニウムに結合した1~3個の水素原子を含む水酸化アルミニウムを含む金属錯体であり、及び
ここで、(i)~(iv)は、任意に、1回または複数回繰り返される。金属前駆体は、一般に、金属含有化合物である。水素化アルミニウム共反応物は、一般式(I)または(II)の化合物、好ましくは一般式(I)の化合物、より好ましくは一般式(Ia)の化合物、さらにより好ましくは一般式(Ia)(式中、R’は水素である)の化合物、特定すると一般式(Ia)(式中、R’は、水素であり、Rはメチルである)の化合物である。
【0072】
別法では、本発明による方法は、一般式(I)または(II)の化合物からのアルミニウムを堆積させるのに役立ちうる。この事例では、一般式(I)または(II)の化合物は、例えば固体基板の表面上にOH基等の反応性基が存在するために、または固体基板の温度が十分高いために、固体基板の表面に吸着する。好ましくは、一般式(I)または(II)の吸着された化合物は、分解される。
【0073】
分解は、多様な方法で果たすことができる。固体基板の温度は、分解温度を超えて上げることができる。この事例では、方法は、化学的蒸着(CVD)方法である。典型的には、固体基板は、300~1000℃の範囲内、好ましくは350~600℃の範囲内の温度に加熱される。
【0074】
さらに、堆積した一般式(I)または(II)の化合物を、プラズマ、例えば酸素プラズマ、水素プラズマ、アンモニアプラズマまたは窒素プラズマに;オキシダント、例えば酸素、酸素ラジカル、オゾン、亜酸化窒素(NO)、一酸化窒素(NO)、二酸化窒素(NO)または過酸化水素に;アンモニアまたはアンモニア誘導体、例えばtert-ブチルアミン、イソプロピルアミン、ジメチルアミン、メチルエチルアミンまたはジエチルアミンに;ヒドラジンまたはヒドラジン誘導体、例えばN,N-ジメチルヒドラジンに;溶媒、例えば水、アルカンまたはテトラクロロカーボンに;またはホウ素化合物、例えばボランに、曝露することが可能である。その選択は、所望の層の化学構造に依存する。酸化アルミニウムでは、オキシダント、プラズマまたは水、具体的には酸素、水、酸素プラズマまたはオゾンを使用することが好ましい。アルミニウムでは、窒化物、アンモニア、ヒドラジン、ヒドラジン誘導体、窒素プラズマまたはアンモニウムプラズマが好ましい。ホウ化アルミニウムでは、ホウ素化合物が好ましい。アルミニウムカーバイドでは、アルカンまたはテトラクロロカーボンが好ましい。窒化アルミニウムカーバイドでは、アルカン、テトラクロロカーボン、アンモニアおよび/またはヒドラジンを含む混合物が好ましい。
【0075】
該方法は、好ましくは、原子層堆積(ALD)方法として実行され、
(c)固体基板を、一般式(I)または(II)の化合物と接触させることと、
(d)吸着された一般式(I)または(II)の化合物を分解することと
の工順を含む。好ましくは、(c)と(d)とを含む工順は、少なくとも2回、より好ましくは少なくとも5回、さらにより好ましくは少なくとも10回、特定すると少なくとも50回実行される。多くの場合、(c)と(d)とを含む工順は、1000回以下実行される。
【0076】
この事例では、基板の温度は、好ましくは、金属含有化合物が気体状態へと持ち込まれる所、例えば20℃よりも、5℃~40℃高い。好ましくは、基板の温度は、室温~450℃、より好ましくは100~400℃、特定すると120~300℃、例えば150~220℃である。
【0077】
本発明による方法における基板の温度が金属含有化合物の分解温度を下回って保たれる場合、典型的には、単層が、固体基板上に堆積される。一旦、金属含有化合物の分子が固体基板上に堆積されると、その頂部上へのさらなる堆積は、通常、生じ難くなる。そのため、金属含有化合物の、固体基板上への堆積は、好ましくは、自己限定的な方法の工程を表す。自己限定的な堆積方法の工程の典型的な層厚は、0.01~1nm、好ましくは0.02~0.5nm、より好ましくは0.03~0.4nm、特定すると0.05~0.2nmである。層厚は、典型的には、PAS1022DE(Referenzverfahren zur Bestimmung von optischen und dielektrischen Materialeigenschaften sowie der Schichtdicke duenner Schichten mittels Ellipsometrie、2004年2月)に説明されている偏光解析によって測定することができる。
【0078】
基板の、一般式(I)もしくは(II)の化合物または金属含有化合物での曝露は、ミリ秒~数分、好ましくは0.1秒~1分、特定すると1~10秒かけることができる。一般式(I)もしくは(II)の化合物または金属含有化合物の分解温度を下回る温度にて、固体基板が、一般式(I)もしくは(II)の化合物または金属含有化合物に曝露されるのが長いほど、より規則的な、欠陥の少ない膜が形成される。
【0079】
本発明による方法の具体的な利点は、一般式(I)または(II)の化合物が非常に多用途であり、そのため方法のパラメータが広い範囲で多様でありうることである。したがって、本発明による方法には、CVD方法とALD方法との両方が挙げられる。
【0080】
本発明による方法は、無機金属含有膜を生じる。膜は、金属の唯一の単層であることができ、またはより厚く、例えば0.1nm~1μm、好ましくは0.5~50nmであることができる。膜は、穴のような欠陥を含有しうる。しかしながら、これらの欠陥が一般に構成するのは、膜によって被われる表面積の半分未満である。膜は、好ましくは、非常に均一な膜厚を有し、これは、基板上の異なる所での膜厚がほとんど異なることがなく、通常10%未満、好ましくは5%未満であることを意味する。さらに、膜は、好ましくは、基板の表面上の共形膜である。膜厚および均一性を決定する好適な方法は、SEM/TEMまたは偏光解析である。
【0081】
本発明による方法によって得られる膜は、電子素子において使用することができる。電子素子は、多様なサイズ、例えば1nm~100μm、例えば10nm、14nmまたは22nmの構造的特徴を有することができる。電子素子用の膜を形成する方法は、非常に微細な構造にとって特に良好に好適である。したがって、1μmを下回るサイズの電子素子が好ましい。電子素子の例は、電界効果トランジスタ(FET)、太陽電池、発光ダイオード、センサーまたはキャパシタである。発光ダイオードまたは光センサー等の光学装置では、本発明による方法によって得られる膜は、光を反射する層の屈折率を上げるのに役立つ。
【0082】
好ましい電子素子は、トランジスタである。好ましくは、膜は、トランジスタ中の化学的バリアメタルとして働く。化学的バリアメタルは、電気的接続を維持しつつ、隣接している層の拡散を減少させる材料である。
【0083】
別法では、本明細書で記載されている方法において、一般式(III)または(IV):
【化15】
の化合物を、一般式(I)または(II)の化合物の代わりに使用することができる。RおよびR’についての同じ定義および好ましい実施形態が、上で説明した方法の残りに当てはまる。
【0084】
一般式(III)の化合物の例は、以下である。
【0085】
【化16】
【実施例
【0086】
[実施例1a]
化合物(Ie-1)のリガンドの合成
【0087】
【化17】
【0088】
250mL丸底フラスコへ、2-クロロ-N,N-ジメチルエチルアミンヒドロクロリド(25.0g、0.175mol)、tert-ブチルアミン(115mL、1.1mol、6.3当量)、水(5mL)を装入し、加熱して、70℃にて18時間、穏やかに還流させた。周囲温度に冷却後、ヘキサンおよび水(各40mL)を添加し、分離漏斗へ移した。水性画分をヘキサンで洗浄し(3×20mL)、合わせたヘキサン画分をブラインで洗浄し、MgSOで脱水し、減圧下で蒸発させ、透明な無色の油を得た(10.898g、43%)。分析的に純粋な生成物をさらなる精製なしで常法により使用したが、それは、65℃、18Torrでの真空蒸留によって精製することができる。
H NMR(400MHz,C)δ=2.56(t,2H)、2.34(t,2H)、2.06(s,6H)、1.29(bs,1H)、1.06(s,9H)
13C NMR(100MHz,C)δ=60.52、50.00、45.74、40.53、29.61
【0089】
[実施例1b]
化合物(Ie-1)の合成
【0090】
【化18】
【0091】
250mL Schlenkフラスコへ、LiAlH(0.854g、22.5mmol)、ジエチルエーテル(70mL)を装入し、氷浴で0℃に冷却した。別個の100mL Schlenkフラスコへ、AlCl(1.000g、7.5mmol)およびジエチルエーテル(50mL)を装入した。AlCl溶液をLiAlH溶液中へカニューレ処理し、得られた濁った溶液を周囲温度で30分間撹拌した。混合物を-30℃に冷却し、1-tert-ブチルアミノ-2-ジメチルアミノエタン(3.934g、27.3mmol)のジエチルエーテル(25mL)中溶液を添加した。得られた混合物を周囲温度で4時間にわたり撹拌し、次いでセライトを通してろ過し、減圧下で蒸発させた。ジエチルエーテルの大半が蒸発したとき、フラスコを氷浴で冷却して、低融点生成物を固化させた(3.345g、71%)。
M.P.:31~32℃
H NMR(600MHz,C)δ=4.52(bs,2H)、2.73(t,2H)、2.15(t,2H)、1.83(s,6H)、1.35(s,9H)
13C NMR(150MHz,C)δ=61.62、51.25、44.83、41.73、30.52
IR(ATR)ν/cm-1=3001、2961、2895、2853、2812、1852、1782、1728、1485、1462、1429、1406、1383、1352、1342、1290、1238、1223、1205、1184、1157、1118、1101、1065、1057、1014、1003、947、916、895、800、775、679、619、596、580、546、511、465
21AINについての凝固点降下分子量の計算値172.25、実測値179.06、会合度=1.04
【0092】
[実施例2a]
化合物(Ie-5)のリガンドの合成
【0093】
【化19】
【0094】
250mL丸底フラスコへ、1-(2-クロロエチル)ピロリジンヒドロクロリド(24.85g、0.146mol)、tert-ブチルアミン(115mL、1.1mol、6.3当量)、水(5mL)を装入し、加熱して、70℃で18時間、穏やかに還流させた。周囲温度に冷却後、ヘキサンおよび水(各40mL)を添加し、分離漏斗へ移した。水性画分をヘキサンで洗浄し(3×20mL)、合わせたヘキサン画分をブラインで洗浄し、MgSOで脱水し、減圧下で蒸発させてわずかに赤色の油を得、それを100℃および18Torrでの真空蒸留によって精製した(14.466g、58.1%)。
H NMR(400MHz,C)δ=2.67-2.56(m,4H)、2.39(t,4H)、1.59(p,4H)、1.07(s,9H)
13C NMR(100MHz,C)δ=57.40、54.55、50.08、41.88、29.64、24.28
【0095】
[実施例2b]
化合物(Ie-5)の合成
【0096】
【化20】
【0097】
250mL Schlenkフラスコへ、LiAlH(0.925g、24.37mmol)、ジエチルエーテル(70mL)を装入し、氷浴で0℃に冷却した。別個の100mL Schlenkフラスコへ、AlCl(1.083g、8.12mmol)およびジエチルエーテル(50mL)を装入した。AlCl溶液をLiAlH溶液中へカニューレ処理し、得られた濁った溶液を周囲温度で30分間撹拌した。混合物を-30℃に冷却し、化合物(Ie-5)(5.531g、32.48mmol)のリガンドのジエチルエーテル(25mL)中溶液を添加した。得られた混合物を周囲温度で4時間にわたり撹拌し、次いでセライトを通してろ過し、減圧下で蒸発させた。ジエチルエーテルの大半が蒸発したとき、フラスコを氷浴で冷却して、低融点生成物を固化させた(3.600g、56%)。
M.P.:28~29℃
H NMR(600MHz,C)δ=4.47(bs,2H)、3.08(m,2H)、2.82(t,2H)、2.43(t,2H)、1.66(m,4H)、1.37(s,9H)、1.22(m,2H)
13C NMR(150MHz,C)δ=59.45、54.84、51.52、42.99、30.48、23.23
【0098】
[実施例3]
化合物(Ie-1)の塩素化類似体の合成
【0099】
【化21】
【0100】
100mL Schlenkフラスコへ、1-tert-ブチルアミノ-2-ジメチルアミノエタン(500mg、3.47mmol)、トルエン(25mL)を装入し、氷浴で0℃に冷却した。n-ブチルリチウム溶液(1.39mL、3.47mmol)を滴下添加し、混合物を氷浴で30分間撹拌させ、次いで氷浴を除去し、混合物を周囲温度に2時間かけて加温した。別個の100mL Schlenkフラスコへ、AlCl(463mg、3.47mmol)、トルエン(15mL)を装入し、氷浴で0℃に冷却した。次いで、リガンド溶液をAlCl溶液中へカニューレ処理し、得られた混合物を周囲温度へ3時間かけてゆっくりと加温し、その後、セライトを通してろ過し、減圧下で蒸発させて橙色の固体を得た。粗生成物を昇華させ(100℃、50mTorr)無色の結晶を得た(388mg、48%)。
M.P.:87~89℃
H NMR(400MHz,C)δ=2.49(t,2H)、1.97(t,2H)、1.76(s,6H)、1.27(s,9H)
13C NMR(100MHz,C)δ=60.20、50.74、44.92、39.71、30.41
【0101】
[実施例4]
化合物(III-1)の合成
【0102】
【化22】
【0103】
200mL Schlenkフラスコへ、AlCl(481mg、3.605mmol)およびジエチルエーテル(40mL)を装入し、氷浴で冷却した。100mL Schlenkフラスコへ、LiAlH(410mg、10.815mmol)およびジエチルエーテル(40mL)を装入し、得られたLiAlH溶液をAlCl溶液へカニューレにより移した。得られたAlH(14.421mmol、1.1当量)のジエチルエーテル溶液を周囲温度で30分間撹拌した。別個の100mL Schlenkフラスコへ、1,3-ジエチル-4,5-ジメチルイミダゾール-2-イリデン(1.996g、13.11mmol)およびジエチルエーテル(20mL)を装入した。次いで、この溶液を、氷浴で再冷却しておいたAlH溶液へ、カニューラにより移した。得られた混合物を周囲温度で18時間撹拌し、次いで混合物をセライトを通してろ過し、固体をジエチルエーテルで洗浄し(2×15mL)、合わせたジエチルエーテル画分を減圧下で蒸発させて白色の粉末を得た(1.960g、82%)。110℃、50mTorrでの昇華によって精製した。
M.P.:115~116℃
H NMR(600MHz,C)δ=3.82(q,4H)、1.26(s,6H)、1.01(t,6H)
13C NMR(150MHz,C)δ=124.97、42.40、16.61、7.99
IR(ATR)ν/cm-1=2967、2924、2872、2818、1767、1720、1639、1470、1447、1420、1396、1379、1356、1344、1315、1298、1242、1205、1159、1118、1094、970、903、822、741、696、586、523、498
【0104】
[実施例5]
TiClおよび化合物(Ie-1)からの炭窒化チタン膜成長
薄膜のALD成長を、ロードロック、およびキャリアガスとして超高純度N(<100ppt HO、O)を備えたPicosun R-75 ALD反応器中、化合物(Ie-1)およびSiO基板上(Si上100nm熱酸化物)のTiClを使用して評価した。前駆体および共反応蒸気を、不活性ガスバルビングを連続して用いて堆積チャンバ中にパルスし、パージ段階によって分離した。
【0105】
180℃を超える温度で堆積させると、明るい金色の膜が生成し、これは、導電性であり、空気中で安定であった。
【0106】
前駆体および共反応物パルス長の関数として成長速度を調べることによって、300℃での前駆体と共反応物との両方についての自己限定的な成長を明示した。図3の上の図は、成長速度が、TiClでは≧0.2秒のパルス長について、および化合物(Ie-1)では≧2.0秒のパルス長について、250回のALDサイクル後に1.7Å/サイクルで一定であったことを明示している。化合物(Ie-1)の自己限定的な挙動の観察は、予期しない、かつ驚くべきものであり、その理由は、300℃という膜成長温度は、その固体状態熱分解温度185℃をかなり超えているからである。共反応物分解温度を超えると、自己限定的な成長の喪失および成長速度の増加が通常観察される。この事例では、最大400℃であってさえ、前駆体または共反応物のいずれかの不在下で、膜成長を観察しなかった。
【0107】
0.2秒のTiClの飽和パルススキームを用いて、5秒の化合物(Ie-1)、10秒のNパージ、250回のサイクル後の成長率を、基板温度の関数として評価し、これは図3の左下の図で明示している。220℃から400℃の間で、成長速度は、1.6~2.0Å/サイクルで、基板温度からほとんど独立していた。膜抵抗率は、温度範囲280~400℃にわたって600μΩcmから650μΩcmの間であった。1.78Å/サイクルの線形回帰による成長速度で、75サイクルから375サイクルの間で、直線の膜成長を観察した(図6D)。-16.577のy切片は、安定状態成長前の、約9サイクルのわずかな核形成の遅れに達していることを示すことができた。
X線光電子分光法(XPS)を用いて膜組成を決定し、少量のO、ClおよびAlを伴う、Ti、CおよびNの存在が明らかになり、これは、下表2に明示している。
【0108】
【表1】
【0109】
図4で明示しているように、膜の構造は、280℃および400℃で堆積させた40~50nm膜の斜入射XRD(GI-XRD)分析によって、ナノ結晶TiN/TiCであることを見出した。TiN/TiCの111および200格子面に対応する低強度の反射を観察した。
【0110】
[実施例6]
WClおよび化合物(Ie-1)からのタングステンカーバイド膜成長
275~375℃の成長温度にて、成長速度が1.6~1.8Å/サイクルであり、抵抗率が850μΩcmから1350μΩcmの間である、WClおよび化合物(Ie-1)を堆積させた銀色-灰色膜を使用して、初期のALD膜成長を試験する(図5)。これらの結果は、TiClおよび化合物(Ie-1)を使用して得たものと類似している。エネルギー分散型X線分光(EDS)に基づく膜組成は、低含有量のClおよびAlを伴うWおよびCからなる。EDSにより、Nは検出しなかったが、その一方で、TiClおよび化合物(Ie-1)から堆積された膜については、明らかなNシグナルを観察した。そのため、これらの膜はおそらくはWCであり、WCではない。Tiに対するWの、より容易な還元に基づく、より低い温度にてW金属膜が形成されることが可能である。
【0111】
[実施例7]
AlClおよび化合物(Ie-1)からのアルミニウム金属膜成長
金属前駆体としてAlClを使用し、かつ還元剤として化合物(Ie-1)を伴い、Al金属膜を120℃で堆積させた。42nm膜をCu基板に堆積させた125回のサイクルについて、パルス工順は、2秒のAlClパルス、20秒のNパージ、5秒の化合物(Ie-1)パルス、10秒のNパージであった(図6)。シート抵抗率は1.56Ω/平方であり、これは計算したバルク抵抗率6.5μΩ・cmに相当し、バルクAl金属の抵抗率(2.74μΩ・cm)に近い。250回のサイクル後、CuおよびTiN基板上に堆積させた80nm厚の膜は、0.65Ω/平方のシート抵抗率、および5.0μΩ・cmのバルク抵抗率を有していた。
【0112】
そのように堆積させた膜は、GI-XRDによると結晶Al金属である。図7は、SiO(Si上100nm熱酸化物)基板上に堆積させた400nm厚のAl膜のGI-XRDパターンを示し、これは、典型的な、Al金属の111および200反射を伴う。
【0113】
[実施例8a]
化合物(Ii-3)のリガンドの合成
3-ジメチルアミノプロピルクロリドヒドロクロリド(10.046g、0.062mol)とtert-ブチルアミン(30mL、0.280mol)と水(5mL)との混合物を、100mL丸底フラスコ中、18時間還流させた。得られた溶液へ、ヘキサン(25mL)および水(20mL)を周囲温度にて添加した。フラスコの内容物を分離漏斗へ移した。水性画分をヘキサンで洗浄し(9×25mL)、合わせた有機画分を無水MgSOで脱水した。溶媒を減圧下で蒸発させて無色の油を得た(3.798g、収率39%)。
H NMR(400MHz,C)δ=1.03(s,9H)、1.56(五重線,2H)、2.11(s,6H)、2.26(t,2H)、2.55(t,2H)。
13C NMR(100MHz,C)δ=29.69、30.17、41.48、46.10、50.32、58.85。
【0114】
[実施例8b]
化合物(Ii-3)の合成
AlCl(0.800g、6mmol)のジエチルエーテル30mL中溶液を、LiAlH(0.719g、18mmol)のジエチルエーテル45mL中撹拌溶液中へ、氷浴中0℃にてカニューレ処理した。得られた濁った溶液を室温に加温し、40分間撹拌し、-30℃に再冷却した。次いで[3-(tert-ブチルアミノ)プロピル]ジメチルアミン(3.798g、24mmol)のジエチルエーテル45mL中溶液を滴下添加した。得られた混合物を周囲温度にて18時間撹拌し、次いで粗いガラスフリット上、セライトの2cmプラグを通してろ過した。ジエチルエーテルを、減圧下、ろ液から蒸発させて、白色の半固体を回収した。粗生成物を減圧下およそ60℃の蒸留によって精製し、無色の油を得た(1.301g、収率30%)。
H NMR(400MHz,C)δ=1.27(五重線,2H)、1.30(s,9H)、1.95(s,6H)、2.08(t,2H)、2.99(t,2H)。
13C NMR(100MHz,C)δ=28.79、31.77、45.73、45.82、53.01、62.02。IR:νAlH/cm-1 1801。
図1
図2
図3
図4
図5
図6
図7