(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】偏光フィルムの製造方法
(51)【国際特許分類】
G02B 5/30 20060101AFI20240920BHJP
【FI】
G02B5/30
(21)【出願番号】P 2020097408
(22)【出願日】2020-06-04
【審査請求日】2022-11-24
【審判番号】
【審判請求日】2023-09-20
【早期審査対象出願】
(73)【特許権者】
【識別番号】000002093
【氏名又は名称】住友化学株式会社
(74)【代理人】
【識別番号】110001195
【氏名又は名称】弁理士法人深見特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】松久 英樹
(72)【発明者】
【氏名】白川 慶一
(72)【発明者】
【氏名】北河 佑介
【合議体】
【審判長】神谷 健一
【審判官】清水 康司
【審判官】関根 洋之
(56)【参考文献】
【文献】特開2013-140345(JP,A)
【文献】特開2021-9203(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
G02B5/30
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを作製する偏光フィルムの製造方法であって、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、処理液を有する処理浴に浸漬させることにより、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに前記処理液で被覆された第1面を形成する被覆面形成工程と、
前記第1面における前記処理液の量を調整する調整工程と、
前記調整工程後に、前記処理液で被覆された前記第1面の面積比率が100%である前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対し、前記処理液をニップロールによって除去する工程と、をこの順に有し、
前記調整工程は、
前記第1面に前記処理液を補充することにより被覆された状態を維持する工程であり、
前記調整工程の開始時点において、前記第1面は前記処理液で被覆された状態が維持されており、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムが前記ニップロールに到達した時点における前記処理液で被覆された前記第1面の面積比率は、100%である、偏光フィルムの製造方法。
【請求項2】
前記調整工程は、前記被覆面形成工程の終了後3.1秒以内に開始される、請求項1に記載の偏光フィルムの製造方法。
【請求項3】
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、少なくとも前記被覆面形成工程の開始から前記調整工程の終了まで連続的に搬送される、
請求項1または請求項2に記載の偏光フィルムの製造方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを作製する偏光フィルムの製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
従来から、一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素のような二色性色素を吸着配向させた偏光フィルムが公知である。たとえば特開2001-141926号公報(特許文献1)は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを二色性色素で染色する染色処理、架橋剤で処理する架橋処理及びフィルム乾燥処理を順次施すとともに、製造工程の間にポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して延伸処理を施すことによって偏光フィルムを製造することを開示している。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0003】
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0004】
偏光フィルムは、工業的には長尺のポリビニルアルコール系樹脂フィルムを、偏光フィルムの製造装置が有するフィルムの搬送経路に沿って連続的に搬送させながら、該搬送経路上にある上述の染色処理及び架橋処理などを行う各槽に順次浸漬させる製造方法が適用されることによって生産される。本発明者らは、上記方法に従って高透過率となる偏光フィルムを製造した場合、製造後の外観検査において偏光フィルムに斑点欠陥が散見されることを知見した。この斑点欠陥は、色相ムラとして視認されるため、上記斑点欠陥を形成させない技術の開発が求められる。
【0005】
上記実情に鑑み、本発明は、偏光フィルムに斑点欠陥が形成されることを抑制した偏光フィルムの製造方法を提供することを目的とする。
【課題を解決するための手段】
【0006】
本発明は、以下に示す偏光フィルムの製造方法を提供する。
〔1〕 ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを作製する偏光フィルムの製造方法であって、
前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに処理液を付着させることにより、前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに前記処理液で被覆された第1面を形成する被覆面形成工程と、
前記第1面における前記処理液の量を調整する調整工程と、をこの順に有し、
前記調整工程は、
前記第1面に前記処理液を補充することにより被覆された状態を維持する工程、あるいは前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから前記処理液を除去することにより前記処理液の液滴を実質的に有さない状態に前記第1面を調整する工程のいずれかである、偏光フィルムの製造方法。
〔2〕 前記調整工程は、前記被覆面形成工程の終了後3.1秒以内に開始される、〔1〕に記載の偏光フィルムの製造方法。
〔3〕 前記調整工程の開始時点において、前記第1面は前記処理液で被覆された状態が維持されている、〔1〕または〔2〕に記載の偏光フィルムの製造方法。
〔4〕 前記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、少なくとも前記被覆面形成工程の開始から前記調整工程の終了まで連続的に搬送される、〔1〕から〔3〕のいずれか1項に記載の偏光フィルムの製造方法。
【発明の効果】
【0007】
本発明によれば、偏光フィルムに斑点欠陥が形成されることを抑制した偏光フィルムの製造方法を提供することができる。
【図面の簡単な説明】
【0008】
【
図1】本実施形態に係る製造方法に用いる偏光フィルム製造装置の一例を模式的に示す断面図である。
【発明を実施するための形態】
【0009】
以下、図面を参照して、本発明の一態様に係る偏光フィルムの製造方法(以下、「本実施形態に係る製造方法」ともいう)について説明する。ただし本発明は、この一態様に限定されるものではない。
【0010】
[偏光フィルムの製造方法]
本実施形態に係る製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを作製する偏光フィルムの製造方法である。具体的には、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに処理液を付着させることにより、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに上記処理液で被覆された第1面を形成する被覆面形成工程と、上記第1面における上記処理液の量を調整する調整工程と、をこの順に有する。特に上記調整工程は、上記第1面に前記処理液を補充することにより被覆された状態を維持する工程、あるいは上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから前記処理液を除去することにより上記処理液の液滴を実質的に有さない状態に上記第1面を調整する工程のいずれかである。このような特徴によって本実施形態に係る製造方法は、偏光フィルムに斑点欠陥が形成されることを抑制することができる。
【0011】
偏光フィルムに斑点欠陥が形成される要因については詳細には明らかではないが、本発明者らは、次の要因であると推測している。すなわち従来の偏光フィルムの製造方法においては、染色工程をはじめとする各処理工程で処理液をポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、単に「フィルム」ともいう)に付着させることによって上記フィルムに処理液で被覆された被覆面を形成している。このとき、上記フィルムにおいて処理液がはじき始めることによって上記被覆面の一部が欠損すると、上記フィルムに濡れた部分と乾いた部分とが形成され、これが処理液の乾きムラとなる場合があった。この処理液の乾きムラが、製造後の偏光フィルムにおいて斑点欠陥として現れると推測された。
【0012】
本発明者らは、上述のように推測される要因に基づき、次のような解決手段に到達し、本発明を完成させた。すなわち処理工程においてポリビニルアルコール系樹脂フィルムに処理液で被覆された被覆面を形成した後、上記被覆面の一部が欠損することによって上記フィルムに濡れた部分と乾いた箇所とが形成される迄に、上記フィルムに処理液を補充すること、あるいは上記フィルムから処理液を十分に除液することのいずれかによって、上記フィルムに処理液の乾きムラを形成させないことを想到した。本明細書において、上記フィルムが処理液で“被覆された状態”とは、上記フィルムの少なくとも一方の面が全体的に処理液により覆われた状態を意味し、「全体的に処理液により覆われた状態」とは、上記処理液で覆われた箇所が、一定の領域におけるフィルム面の約90%以上の面積を占めることを意味する。ここで「一定の領域」とは、処理浴の何れか(即ち、後述する膨潤浴、染色用、架橋浴、補色浴、洗浄浴の何れか)から取り出された箇所から処理液を補充又は除去する箇所に至るまでの領域を意味する。さらに上記被覆面の一部が「欠損」するとは、上記被覆面に所定の大きさの隙間が形成されることにより、上記処理液で“被覆された状態”が解かれることを意味する。以下、本実施形態に係る製造方法について具体的に説明する。
【0013】
〔ポリビニルアルコール系樹脂フィルム〕
偏光フィルムは、例えば一軸延伸されたポリビニルアルコール系樹脂フィルムに二色性色素(ヨウ素、二色性染料等)を吸着配向させることにより得ることができる。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、ポリビニルアルコール系樹脂からなるフィルムを意味し、例えばケン化したポリ酢酸ビニル系樹脂などが例示される。ポリ酢酸ビニル系樹脂としては、酢酸ビニルの単独重合体であるポリ酢酸ビニルのほか、酢酸ビニルとこれに共重合可能な他の単量体との共重合体(例えば、エチレン-酢酸ビニル共重合体)などが挙げられる。共重合可能な他の単量体としては、例えば、不飽和カルボン酸類、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸類などが挙げられる。ポリビニルアルコール系樹脂の重合度は、通常約1000~10000程度、好ましくは約1500~5000程度である。ケン化度は、通常85モル%以上、好ましくは90モル%以上、より好ましくは99~100モル%である。これらのポリビニルアルコール系樹脂は変性されていてもよく、例えばアルデヒド類で変性されたポリビニルホルマール、ポリビニルアセタール、ポリビニルブチラールなどを使用することができる。
【0014】
本実施形態に係る製造方法において開始材料となるポリビニルアルコール系樹脂フィルムとしては、厚みが80μm以下、好ましくは60μm以下、より好ましくは45μm以下、さらに好ましくは30μm以下の未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルム(原反フィルム)を用いることができる。これにより市場要求が益々高まっている薄膜の偏光フィルムを得ることができる。原反フィルムの幅は特に制限されず、例えば400mm以上8000mm以下であり、好ましくは2000mm以上5500mm以下である。未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの厚みは、10μm以上であってもよいし、20μm以上であってもよい。原反フィルムは、例えば長尺の未延伸ポリビニルアルコール系樹脂フィルムのロール(原反ロール)として用意される。なお、未延伸のポリビニルアルコール系樹脂フィルム(原反フィルム)は通常、ロール状フィルムとして供給される。
【0015】
上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、これを支持する基材フィルムに積層されていてもよい。すなわちポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、基材フィルムとその上に積層されるポリビニルアルコール系樹脂フィルムとの積層フィルムとして準備されてもよい。この場合、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、例えば、基材フィルムの少なくとも一方の面にポリビニルアルコール系樹脂を含有する塗工液を塗工した後、これを乾燥させることによって製造することができる。
【0016】
基材フィルムとしては、例えば、熱可塑性樹脂からなるフィルムを用いることができる。具体例としては、透光性を有する熱可塑性樹脂、好ましくは光学的に透明な熱可塑性樹脂で構成されるフィルムであって、例えば、鎖状ポリオレフィン系樹脂(ポリプロピレン系樹脂等)、環状ポリオレフィン系樹脂(ノルボルネン系樹脂等)のようなポリオレフィン系樹脂;トリアセチルセルロース、ジアセチルセルロースのようなセルロース系樹脂;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂;ポリカーボネート系樹脂;メタクリル酸メチル系樹脂のような(メタ)アクリル系樹脂;ポリスチレン系樹脂;ポリ塩化ビニル系樹脂;アクリロニトリル・ブタジエン・スチレン系樹脂;アクリロニトリル・スチレン系樹脂;ポリ酢酸ビニル系樹脂;ポリ塩化ビニリデン系樹脂;ポリアミド系樹脂;ポリアセタール系樹脂;変性ポリフェニレンエーテル系樹脂;ポリスルホン系樹脂;ポリエーテルスルホン系樹脂;ポリアリレート系樹脂;ポリアミドイミド系樹脂;ポリイミド系樹脂等であることができる。
【0017】
〔処理工程〕
本実施形態に係る製造方法は、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを作製する偏光フィルムの製造方法である。以下、本明細書においてポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを作製するまでの一連の製造工程を「処理工程」の用語を用いて説明する。すなわち本実施形態に係る製造方法は、1または複数の処理工程を行うことにより、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから偏光フィルムを作製することができる。上記1または複数の処理工程としては、例えば上述したポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して膨潤、染色、架橋、補色および洗浄などの各種の処理を行う膨潤工程、染色工程、架橋工程(ホウ酸工程)、補色工程および洗浄工程などを挙げることができる。
【0018】
具体的には、膨潤工程は、上記原反フィルムに膨潤液を接触させて膨潤処理を行う工程である。染色工程は、膨潤処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、「膨潤フィルム」ともいう)に染色液を接触させて染色処理を行う工程である。架橋工程(ホウ酸工程)は、染色処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、「染色フィルム」ともいう)に架橋液を接触させて架橋処理を行う工程である。補色工程は、架橋処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、「架橋フィルム」ともいう)に補色液を接触させて色調整処理を行う工程である。さらに洗浄工程は、色調整処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルム(以下、「色補正フィルム」ともいう)に対し、洗浄液を付着させることにより上記架橋工程、補色工程等において付着した余剰のホウ酸、ヨウ素等の薬剤を除去する洗浄処理を行う工程である。上記1または複数の処理工程は、本発明の効果を奏する限り、上述した工程に限定されず、その他の工程を含むことができる。上記1または複数の処理工程は、上述した工程およびその他の工程を適宜組み合わせることもできる。
【0019】
上記処理工程は、上述した膨潤工程などの各工程のいずれかの前またはいずれかの工程中に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸する操作を含むことが好ましい。例えば未延伸の原反フィルムを空気あるいは不活性ガス中で一軸延伸(乾式延伸)した後、膨潤工程、染色工程、架橋工程、補色工程および洗浄工程をこの順に行うことを例示することができる。また未延伸の原反フィルムを用いて膨潤工程、染色工程、架橋工程、補色工程および洗浄工程をこの順に行い、上記架橋工程の前またはその工程中に湿式にてポリビニルアルコール系樹脂フィルムを一軸延伸することを例示することもできる。
【0020】
以下、
図1を参照しながら、本実施形態に係る製造方法を例示することにより具体的に説明する。
図1は、本実施形態に係る製造方法に用いる偏光フィルム製造装置の一例を模式的に示す断面図である。
【0021】
図1に示される偏光フィルム製造装置は、ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反(未延伸)フィルム10を、原反ロール11より連続的に巻出しながらフィルム搬送経路に沿って搬送し、フィルム搬送経路上に設けられた膨潤浴(膨潤槽内に収容された膨潤液)13、染色浴(染色槽内に収容された染色液)14、架橋浴(架橋槽内に収容された架橋液)15、補色浴(補色槽内に収容された補色液)16、および洗浄浴(洗浄槽内に収容された洗浄液)17を順次通過させることにより、膨潤工程、染色工程、架橋工程、補色工程および洗浄工程をこの順に行うことができる。さらに、上記処理浴を順次通過させた原反(未延伸)フィルム10に対し、最後に乾燥炉21を通過させることにより、偏光フィルム23を得るように構成されている。次いで偏光フィルム製造装置は、偏光フィルム23を、例えば、そのまま次の偏光板作製工程(偏光フィルム23の片面又は両面に保護フィルムを貼合する工程)に搬送することができる。
図1における矢印は、フィルムの搬送方向を示している。なお洗浄浴17の構成については後述する。
【0022】
図1の説明において、「処理槽」は、膨潤槽、染色槽、架橋槽、補色槽および洗浄槽を含む総称であり、「処理液」は、膨潤液、染色液、架橋液、補色液および洗浄液を含む総称であり、「処理浴」は、膨潤浴、染色浴、架橋浴、補色浴および洗浄浴を含む総称である。膨潤浴、染色浴、架橋浴、補色浴および洗浄浴は、それぞれ上記偏光フィルム製造装置における膨潤部、染色部、架橋部、補色部および洗浄部を構成する。
【0023】
偏光フィルム製造装置のフィルム搬送経路は、上記処理浴の他、ガイドロール30~32,34~36,38~40,42~46ならびにニップロール50~52,53a,53b,54~55を適宜の位置に配置することによって構成されている。ガイドロール30~32,34~36,38~40,42~46は、搬送されるフィルムを支持し、かつフィルム搬送方向を変更することができる。ニップロール50~52,53a,53b,54~55は、上記フィルム搬送経路に沿って搬送されるフィルムを押圧および挟持し、回転による駆動力をフィルムに与えることができ、かつフィルム搬送方向を変更することができる。ガイドロールおよびニップロールは、各処理浴の前後および処理浴中に配置することができ、これにより処理浴へのフィルムの導入、浸漬および処理浴からの引き出しを行うことができる。例えば、各処理浴中に1以上のガイドロールを設け、これらのガイドロールに沿ってフィルムを搬送することにより、各処理浴にフィルムを浸漬することができる。
【0024】
偏光フィルム製造装置は、各処理浴の前後にニップロール50~52,53a,53b,54が配置されている。これにより、いずれか1以上の処理浴中で、その前後に配置されるニップロール間に周速差をつけて縦一軸延伸を行うロール間延伸を実施することが可能である。以下、各工程について説明する。
【0025】
<膨潤工程>
膨潤工程は、原反フィルム10表面の異物除去、原反フィルム10中の可塑剤除去、易染色性の付与、原反フィルム10の可塑化等の目的で行われる。処理条件は、上記目的が達成でき、かつ原反フィルム10の極端な溶解および失透等の不具合を生じない範囲で決定される。
【0026】
上記膨潤工程では、原反フィルム10を原反ロール11より連続的に巻出しながら、フィルム搬送経路に沿って搬送し、原反フィルム10を膨潤浴13に所定時間浸漬し、次いで膨潤フィルムとして引き出すことによって膨潤処理を行うことができる。膨潤浴に用いる膨潤液としては、純水のほか、ホウ酸(特開平10-153709号公報)、塩化物(特開平06-281816号公報)、無機酸、無機塩、水溶性有機溶媒、アルコール類等を約0.01~10質量%の範囲で添加した水溶液を使用することが可能である。
【0027】
膨潤浴13の温度は、例えば10~70℃程度、好ましくは15~50℃程度、より好ましくは15~35℃程度である。原反フィルム10の浸漬時間は、好ましくは10~600秒程度、より好ましくは15~300秒程度である。
【0028】
上記膨潤処理では、原反フィルム10が幅方向に膨潤するために、膨潤フィルムにシワが入る問題が生じやすい。このシワを取りつつ膨潤フィルムを搬送するための1つの手段として、拡幅機能を有する公知のロールや公知の拡幅装置を用いたりすることができる。シワの発生を抑制するためのもう1つの手段は延伸処理を施すことである。例えば、ニップロール50とニップロール51との周速差を利用して膨潤浴13中で一軸延伸処理を施すことができる。
【0029】
上記膨潤処理では、フィルムの搬送方向にもフィルムが膨潤拡大するので、原反フィルムに積極的な延伸を行わない場合、搬送方向のフィルムのたるみを無くすため、例えば膨潤浴13の前後に配置するニップロール50,51の速度をコントロールする手段等を講ずることが好ましい。また、膨潤浴13中のフィルム搬送を安定化させる目的で、膨潤浴13中での水流をシャワーで制御したり、EPC装置(Edge Position Control装置:フィルムの端部を検出し、フィルムの蛇行を防止する装置)等を併用したりすることも有用である。
【0030】
図1に示される例において、膨潤浴13から引き出された膨潤フィルムは、ガイドロール32、ニップロール51を順に通過して染色浴14へ導入される。
【0031】
<染色工程>
染色工程は、膨潤処理後のポリビニルアルコール系樹脂フィルムにヨウ素等の二色性色素を吸着させ、これを配向させる等の目的で行われる。処理条件は、上記目的が達成でき、かつフィルムの極端な溶解および失透等の不具合が生じない範囲で決定される。染色工程は、膨潤処理後の膨潤フィルムをニップロール51、ガイドロール34~35およびニップロール52によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送し、染色浴14に所定時間浸漬し、次いで染色フィルムとして引き出すことによって染色処理を行うことができる。二色性色素の染色性を高めるために、染色工程に供される膨潤フィルムは、少なくともある程度の一軸延伸処理を施したフィルムであることが好ましく、染色処理前の一軸延伸処理の代わりに、あるいは染色処理前の一軸延伸処理に加えて、染色処理時に一軸延伸処理を行うことが好ましい。
【0032】
二色性色素としてヨウ素を用いることが好ましく、染色浴14に用いる染色液としては、例えば、濃度が質量比でヨウ素/ヨウ化カリウム/水=約0.003~1/約0.1~20/100である水溶液を用いることができる。ヨウ化カリウムに代えて、ヨウ化亜鉛等の他のヨウ化物を用いてもよく、ヨウ化カリウムと他のヨウ化物とを併用してもよい。また、ヨウ化物以外の化合物、例えば、ホウ酸、塩化亜鉛、塩化コバルト等を共存させてもよい。ホウ酸を添加する場合、二色性色素を含む点で後述する架橋液と区別される。本明細書において水溶液が水100質量部に対し、二色性色素を約0.003質量部以上含む場合、上記水溶液を染色液とみなすことができる。膨潤フィルムを浸漬するときの染色浴14の温度は、通常10~45℃程度、好ましくは10~40℃であり、より好ましくは20~35℃であり、膨潤フィルムの浸漬時間は、通常20~600秒程度、好ましくは30~300秒である。
【0033】
上述のように染色工程では、染色浴14で膨潤フィルムの一軸延伸を行うことができる。膨潤フィルムの一軸延伸は、染色浴14の前後に配置したニップロール51とニップロール52との間で周速差をつけることにより行うことができる。
【0034】
上記染色処理においても、上記膨潤処理と同様にシワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送するため、上述したガイドロール34,35,36に拡幅機能を有する公知のロールを用いたり、公知の拡幅装置を備えさせたりすることができる。シワの発生を抑制するためのもう1つの手段は、膨潤処理と同様、延伸処理を施すことである。
【0035】
図1に示される例において、染色浴14から引き出された染色フィルムは、ガイドロール36、ニップロール52を順に通過して架橋浴15へ導入される。
【0036】
<架橋工程>
架橋工程は、上記染色フィルムに対し、耐水性を付与する目的で行われる。上記架橋工程は、1回または複数回行ってもよい。架橋工程は、ニップロール52,ガイドロール38~40およびニップロール53aによって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送されてきた染色フィルムを、架橋浴15に所定時間浸漬し、次いで架橋フィルムとして引き出すことによって架橋処理を行うことができる。
【0037】
架橋液としては、架橋剤を溶媒に溶解させた溶液を使用することができる。架橋剤としては、例えばホウ酸、ホウ砂等のホウ素化合物、グリオキザール、グルタルアルデヒドなどが挙げられる。これらは一種類を単独で使用してもよいし、二種類以上を併用してもよい。溶媒としては、例えば水が使用できるが、さらに、水と相溶性のある有機溶媒を含んでもよい。架橋液における架橋剤の濃度は、これに限定されるものではないが、0.1~15質量%の範囲にあることが好ましく、1~12質量%であることがより好ましい。
【0038】
架橋処理においては、必要に応じ、ホウ酸に代えて他の架橋剤を用いてもよく、ホウ酸と他の架橋剤とを併用してもよい。染色フィルムを浸漬するときの架橋浴の温度は、通常20~85℃程度、好ましくは30~70℃であり、染色フィルムの浸漬時間は、通常10~600秒程度、好ましくは20~300秒である。また、膨潤処理前に予め延伸したポリビニルアルコール系樹脂フィルムに対して染色処理および架橋処理をこの順に施す場合、架橋浴の温度は、通常50℃以上であり、好ましくは50~85℃である。
【0039】
架橋処理は、1回または複数回行ってもよい。この場合、使用する架橋浴の組成および温度は、上記の範囲内であれば同じであってもよく、異なっていてもよい。また、各ニップロールの周速差を利用して架橋浴中で一軸延伸処理を施すこともできる。
【0040】
架橋処理においても、膨潤処理と同様にシワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送するために、ガイドロール38,39,40に拡幅機能を有する公知のロールを用いたり、公知の拡幅装置を備えさせたりすることができる。シワの発生を抑制するためのもう1つの手段は、膨潤処理と同様、延伸処理を施すことである。
【0041】
図1に示される例において、架橋浴15から引き出された架橋フィルムは、ガイドロール40、ニップロール53aを順に通過して補色浴16へ導入される。
【0042】
<補色工程>
補色工程は、上記架橋フィルムに対し、色相調整する目的で行われる。上記補色工程は、ニップロール53a,ガイドロール42~44およびニップロール53bによって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送されてきた架橋フィルムを、補色浴16に所定時間浸漬し、次いで色補正フィルムとして引き出すことによって補色処理を行うことができる。架橋フィルムを浸漬するときの補色浴の温度は、通常20~65℃程度であり、架橋フィルムの浸漬時間は、通常1~300秒程度、好ましくは2~100秒である。
【0043】
補色浴16の前後に配置した各ニップロール53a、53bの周速差を利用して補色浴16中で一軸延伸処理を施すこともできる。
図1に示される例において、補色浴16から引き出された色補正フィルムは、フィルム搬送経路に沿って次に説明する洗浄工程において使用される洗浄浴17へ導入される。
【0044】
<延伸工程>
ここで上述のようにポリビニルアルコール系樹脂フィルムは、一連の処理工程の間(すなわち、1または複数の処理工程のうちいずれかの工程の前後および/またはいずれか1以上の処理工程中)に、湿式または乾式にて一軸延伸処理されることが好ましい。一軸延伸処理の具体的方法は、例えば、フィルム搬送経路を構成する2つのニップロール(例えば、処理浴の前後に配置される2つのニップロール)間に周速差をつけて縦一軸延伸を行うロール間延伸、特許第2731813号公報に記載されるような熱ロール延伸、テンター延伸等であることができ、好ましくはロール間延伸である。一軸延伸工程は、開始材料であるポリビニルアルコール系樹脂フィルムの原反フィルムから偏光フィルムを得るまでの間に複数回にわたって実施することができる。延伸処理は、フィルムのシワの発生を抑制することに対しても有効である。
【0045】
上記原反フィルムを基準とした偏光フィルムの最終的な累積延伸倍率は通常、3.5~7倍程度であり、好ましくは4~6.5倍である。延伸工程はいずれの処理工程で行ってもよく、2以上の処理工程で延伸処理を行う場合においても、延伸処理はいずれの処理工程で行ってもよい。
【0046】
<洗浄工程>
本実施形態に係る製造方法において、洗浄工程は、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに処理液を付着させることにより、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに上記処理液で被覆された第1面を形成する被覆面形成工程と、上記第1面における上記処理液の量を調整する調整工程と、をこの順に有することができる。特に上記調整工程は、上記第1面に上記処理液を補充することにより被覆された状態を維持する工程、あるいは上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから上記処理液を除去することにより上記処理液の液滴を実質的に有さない状態に上記第1面を調整する工程のいずれかであることができる。
【0047】
洗浄工程は、上記架橋工程、補色工程等において上記フィルムに付着した余剰のホウ酸、ヨウ素等の薬剤を除去することを目的とする。例えば
図1に示される偏光フィルム製造装置が有する洗浄浴17においては、上述した補色工程後の色補正フィルムを、洗浄浴17内に設けられたガイドロール45,46(以下、それぞれ「第1ガイドロール45」、「第2ガイドロール46」ともいう)および洗浄浴17の前後に配置される2つのニップロール53b,54(以下、それぞれ「第1ニップロール53b」、「第2ニップロール54」ともいう)によって構築されたフィルム搬送経路に沿って搬送しつつ、洗浄処理することができる。第1ニップロール53bおよび第2ニップロール54は、それぞれ水切りロールとして作用することにより、上記色補正フィルムに付着した余剰のホウ酸、ヨウ素等の薬剤を洗浄し、除去することができる。また洗浄浴17は、後述するように上記フィルムの第1面における処理液の量を調整する調整手段Aを備えることにより、偏光フィルムに斑点欠陥が形成されることを抑制することができる。
【0048】
ここで
図1に示す洗浄浴17に構築されたフィルム搬送経路は、第2ガイドロール46を経た上記フィルムが洗浄浴17から鉛直方向上向きに引き出される態様を有する。しかしながら上記フィルム搬送経路は、上記の態様に限定されず、第2ガイドロール46を経た上記フィルムが洗浄浴17から斜め上方向に引き出される態様を有することもできる。さらに、第2ガイドロール46を経て洗浄浴17から引き出された上記フィルムは、その両面に処理液(洗浄液)が付着していてもよく、いずれか一方の面のみに処理液(洗浄液)が付着していてもよい。本明細書において、上記フィルムの両面が処理液(洗浄液)で被覆されている場合、その両面が「第1面」に相当し、上記フィルムの一方の面が処理液(洗浄液)で被覆されている場合、その一方の面が「第1面」に相当するものとする。
【0049】
上記洗浄工程においても膨潤工程などと同様に、シワを除きつつポリビニルアルコール系樹脂フィルムを搬送する目的で、ガイドロール45,46に拡幅機能を有する公知のロールを用いたり、公知の拡幅装置を備えさせたりすることができる。また洗浄工程においてシワの発生を抑制するために延伸処理を施してもよい。
【0050】
洗浄工程に用いられる洗浄液としては、水、およびこの種のポリビニルアルコール系樹脂フィルムの洗浄に用いられる従来公知の洗浄液をいずれも用いることができる。洗浄工程に用いられる洗浄液の温度範囲も従来と同じ温度範囲(たとえば2~60℃)とすることができる。なお洗浄工程が完了した後に上記フィルムから洗浄液を除去する場合、その洗浄液除去手段としては、例えばニップロール54があり、当該ニップロール以外にも上記フィルムにエアーを吹き付けて除液を行う手段、上記フィルムに接触して除液を行うスクレイパー、吸引ロール、水切りロール等を用いることができる。
【0051】
洗浄工程の一態様としては、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに処理液(以下、洗浄工程の説明において「洗浄液」ともいう)を付着させることにより、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに上記洗浄液で被覆された第1面を形成する被覆面形成工程と、上記第1面における上記洗浄液の量を調整する調整工程と、をこの順に有する。上記調整工程は、上記第1面に上記洗浄液を補充することにより被覆された状態を維持する工程であることができる(以下、「第1態様の洗浄工程」ともいう)。さらに洗浄工程の他の態様としては、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに洗浄液を付着させることにより、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに上記洗浄液で被覆された第1面を形成する被覆面形成工程と、上記第1面における上記洗浄液の量を調整する調整工程と、をこの順に有する。上記調整工程は、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから上記洗浄液を除去することにより上記洗浄液の液滴を実質的に有さない状態に上記第1面を調整する工程であることができる(以下、「第2態様の洗浄工程」ともいう)。
【0052】
ここで本実施形態に係る製造方法において、洗浄工程は、本発明の効果が得られる限り、以下に例示する方法(第1態様の洗浄工程および第2態様の洗浄工程)に限定されず、特許請求の範囲と均等の意味において、ならびにその範囲内ですべての変更を行うことができる。さらに本実施形態に係る製造方法において、上記第1態様の洗浄工程および第2態様の洗浄工程が有する被覆面形成工程および調整工程は、洗浄工程に適用されることに限定されず、上述した膨潤工程、染色工程、架橋工程および補色工程などに適用されることができる。これらの場合、膨潤液、染色液、架橋液および補色液による各種の処理液の乾きムラを抑制することができるので、斑点欠陥が形成されることを抑制することができ、もって色相ムラによる視認不良が無い偏光フィルムを提供することが可能となる。
【0053】
被覆面形成工程および調整工程を、上述した膨潤工程、染色工程、架橋工程および補色工程に適用する場合、後述する洗浄工程の洗浄浴に備わる各構成を、各処理に対応する膨潤浴、染色浴、架橋浴または補色浴に備わる各構成と置換し、かつ洗浄液を各処理に対応する膨潤液、染色液、架橋液または補色液と置換した上で各処理を行えばよい。
【0054】
本実施形態に係る製造方法において、複数の処理工程を含む場合、洗浄工程の開始前に、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに前処理液を接触させて前処理する工程(以下、「前処理工程」ともいう)と、上記前処理工程で上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに付着した上記前処理液を除液する工程(以下、「前処理液除去工程」ともいう)とをさらに含むことができる。本明細書において「前処理工程」とは、洗浄工程を開始する前の上記膨潤工程、上記染色工程、上記架橋工程および上記補色工程のいずれかを意味する場合がある。さらに「前処理液除去工程」とは、ニップロール、スクレイパーまたはエアーを吹き付けて除液を行う手段、吸引ロール、水切りロール等により上述した膨潤液、染色液、架橋液および補色液のいずれかを除液する工程を意味する場合がある。「前処理液除去工程」は、たとえば
図1に示される偏光フィルム製造装置においてニップロール51,52,53a,53bを用いることによって膨潤液、染色液、架橋液および補色液のいずれかを除液する各工程を意味することができる。以下、本実施形態に係る製造方法における第1態様の洗浄工程および第2態様の洗浄工程について具体的に説明する。
【0055】
(第1態様の洗浄工程)
第1態様の洗浄工程は、上述のように上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに洗浄液を付着させることにより、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに上記洗浄液で被覆された第1面を形成する被覆面形成工程と、上記第1面における上記洗浄液の量を調整する調整工程と、をこの順に有する。特に、上記調整工程は、上記第1面に上記洗浄液を補充することにより被覆された状態を維持する工程である。第1態様の洗浄工程において洗浄浴17は、上述した第1ガイドロール45、第2ガイドロール46、第1ニップロール53bおよび第2ニップロール54によって構築されたフィルム搬送経路に沿って上記フィルムを搬送しつつ、洗浄処理を行うことができる。さらに洗浄浴17は、上記フィルムの第1面における洗浄液の量を調整する調整手段Aとして、洗浄液を放出するシャワー(不図示)を備えることができる。該シャワーは、上記第1面に洗浄液を付着させることが可能な位置であれば、任意の位置に設けることができ、あるいはロール上に存在するポリビニルアルコール系樹脂フィルムへ洗浄液を付着させることができる位置に設置することができる。ロール上に存在するポリビニルアルコール系樹脂フィルムへ洗浄液を付着させる場合、上記シャワーは、上記ロールと接続させてもよい。なお上記シャワーより放出される洗浄液の流量は、上記フィルムのサイズに合わせて適宜調整することができる。
【0056】
〈被覆面形成工程〉
被覆面形成工程は、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに洗浄液を付着させることにより、上記フィルムに上記洗浄液で被覆された第1面を形成する工程である。被覆面形成工程は、具体的には、まず補色浴16から引き出されたフィルム(色補正フィルム)が、フィルム搬送経路に沿って第1ニップロール53bの位置まで搬送される。この第1ニップロール53bの位置において上記フィルムは、第1ニップロール53bが作用することにより補色液が除去された上で、洗浄浴17内へ導入される。このとき上記フィルムは、上記補色液からなる液滴が実質的に存在しないため、補色液で濡れた部分および乾いた部分が生じることがない。次いで上記フィルムは、上記フィルム搬送経路に沿って第1ガイドロール45および第2ガイドロール46を経ることにより洗浄浴17内の洗浄液に浸漬され、または洗浄浴17内の洗浄液が付着した後、洗浄浴17から引き出される。これにより、洗浄液で被覆された第1面を上記フィルムに形成することができる。
【0057】
〈調整工程〉
調整工程として、上記第1面に洗浄液を補充する工程が挙げられる。調整工程は、具体的には、洗浄浴17から引き出された上記フィルムを搬送し、シャワーを用いて洗浄液を上記第1面に向けて放出することにより、上記第1面に洗浄液を補充することができる。すなわち調整工程は、上記シャワーにより、上記第1面が洗浄液で被覆された状態が維持される工程であることが好ましい。
【0058】
ここで第1態様の洗浄工程は、上記ガイドロール上で上記フィルムの第1面へ向けて洗浄液を放出することにより、上記第1面に洗浄液を補充することもできる。
【0059】
第1態様の洗浄工程において、上記調整工程は、上記被覆面形成工程の終了後3.1秒以内に開始されることが好ましい。具体的には、上記調整工程を、上記被覆面形成工程の終了後3.1秒以内に開始することが好ましく、上記被覆面形成工程の終了後2.5秒以内に開始することがより好ましく、上記被覆面形成工程の終了後2.1秒以内に開始することがさらに好ましい。
【0060】
このような調整工程により、上記フィルムに洗浄液で被覆された第1面を形成した後において、上記洗浄液がはじき始めることによって濡れた部分と乾いた箇所とが形成される迄に、上記第1面に洗浄液を補充することができる。もって上記フィルムに乾きムラが形成されないようにすることができる。すなわち上記調整工程の開始時点において、上記第1面は洗浄液で被覆された状態が維持されていることが好ましい。本明細書において第1面の被覆された状態が「維持されている」とは、上記フィルムの第1面において上記洗浄液で覆われた箇所が、該第1面の全面積の約90%以上であることを意味する。
【0061】
上記調整工程を経た上記フィルムは、上記フィルム搬送経路に沿って第2ニップロール54へ向けて鉛直方向上向きに搬送される。このとき上記フィルムは、シャワー(不図示)から第2ニップロール54へ向けて洗浄液が放出されている場合、第2ニップロール54を介して流れ落ちる洗浄液に晒されることによって、引き続き第1面が洗浄液で被覆される。これにより上記フィルムは、乾きムラが形成されないようにすることができる。
【0062】
最後に上記フィルムは、上記フィルム搬送経路に沿って第2ニップロール54の位置に到達した後、第2ニップロール54が作用することにより洗浄液が除去される。これによりフィルムは、洗浄液からなる液滴が実質的に存在しなくなるため、洗浄液で濡れた部分と乾いた部分とが生じることがなく、もって乾きムラが形成されることがない。以上から本実施形態に係る製造方法は、偏光フィルムに斑点欠陥が形成されることを抑制することができる。
【0063】
(第2態様の洗浄工程)
第2態様の洗浄工程は、上述のように上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに洗浄液を付着させることにより、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムに上記洗浄液で被覆された第1面を形成する被覆面形成工程と、上記第1面における上記洗浄液の量を調整する調整工程と、をこの順に有する。特に、上記調整工程は、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから上記洗浄液を除去することにより上記洗浄液の液滴を実質的に有さない状態に上記第1面を調整する工程である。第2態様の洗浄工程は、第1態様の洗浄工程と同様に、洗浄浴17の上述した第1ガイドロール45、第2ガイドロール46、第1ニップロール53bおよび第2ニップロール54によって構築されたフィルム搬送経路に沿って上記フィルムを搬送しつつ、洗浄処理を行うことができる。一方、第2態様の洗浄工程において洗浄浴17は、第1態様の洗浄工程とは異なり、上記フィルムの第1面における洗浄液の量を調整する調整手段Aとして、搬送中の上記フィルムから洗浄液を除液する除液手段(不図示)を備える。以下、第2態様の洗浄工程に関し、第1態様の洗浄工程と重複する構成(ニップロール、ガイドロールなど)についてはその説明を繰り返さない。
【0064】
〈被覆面形成工程〉
第2態様の洗浄工程における被覆面形成工程は、第1態様の洗浄工程における被覆面形成工程と同じとすることができる。これにより上記フィルムに洗浄液で被覆された第1面を形成することができる。
【0065】
〈調整工程〉
調整工程として、上記ポリビニルアルコール系樹脂フィルムから上記洗浄液を除去することにより上記洗浄液の液滴を実質的に有さない状態に上記第1面を調整する工程が挙げられる。ここで「洗浄液の液滴」とは、上記洗浄液がはじき始めることによって形成される液滴を意味し、上記液滴が形成されることによって濡れた部分と乾いた箇所とが形成されることとなる。調整工程は、具体的には、ます洗浄浴17から引き出された上記フィルムを上記の除液手段の位置まで搬送する。除液手段としては、上記フィルムから洗浄液を除去することが可能な従来公知の手段をいずれも用いることができ、たとえば水切りロール、吸引ロール、エアーを吹き付けて除液を行う手段、上記フィルムに接触して除液を行うスクレイパー等を例示することができる。上記除液手段の位置において、上述した除液手段が作用することにより、上記洗浄液の液滴を実質的に有さないように、上記フィルムから上記洗浄液を除去することができる。
【0066】
ここで第2態様の洗浄工程においても、上記調整工程は、上記被覆面形成工程の終了後3.1秒以内に開始されることが好ましい。具体的には、上記調整工程を、上記被覆面形成工程の終了後3.1秒以内に開始することが好ましく、上記被覆面形成工程の終了後2.5秒以内に開始することがより好ましく、上記被覆面形成工程の終了後2.1秒以内に開始することがさらに好ましい。
【0067】
このような調整工程により、上記フィルムに洗浄液で被覆された第1面を形成した後において、上記洗浄液で被覆された状態が維持されている内に、洗浄液の液滴を実質的に有さない状態に上記第1面を調整することができる。もって上記フィルムに乾きムラが形成されないようにすることができる。本明細書において、洗浄液の液滴を「実質的に有さない状態」とは、除液手段によって上記フィルムから洗浄液が除去されることにより、上記フィルムが乾きムラが形成されない程度に“乾いた状態”となることを意味する。
【0068】
その後、上記調整工程を経た上記フィルムは、上記フィルム搬送経路に沿って第2ニップロール54へ向けて鉛直方向上向きに搬送された後、第2ニップロール54によって洗浄液がさらに除去される。もって本実施形態に係る製造方法は、偏光フィルムに斑点欠陥が形成されることを抑制することができる。
【0069】
以上のように、第1態様の洗浄工程および第2態様の洗浄工程においては、洗浄液で被覆された第1面を上記フィルムに形成した後、上記フィルムに濡れた部分と乾いた箇所とが生じる迄に、上記第1面に洗浄液を補充すること、または上記フィルムから洗浄液を十分に除液することのいずれかにより、上記フィルムに洗浄液の乾きムラを形成させないようにすることができる。これにより偏光フィルムに斑点欠陥が形成されることを抑制することができる。なお上述した洗浄工程は、高透過率の偏光フィルムに分類されるフィルムを製造する洗浄工程として適用することができるのみならず、様々な透過率を有する偏光フィルムの洗浄工程としても適用することができる。
【0070】
ここで本実施形態に係る製造方法では、被覆面形成工程を、上述した第1態様の洗浄工程および第2態様の洗浄工程のようにフィルムを洗浄浴内の洗浄液に浸漬し、または洗浄浴内の洗浄液を付着させて行うことに代えて、上記第1面を上記洗浄液で表面が濡れた接触体の上記表面に接触させる工程であることができる。該接触体としては、ガイドロール等が挙げられる。具体的には、ガイドロールの表面を洗浄液で濡れた状態に維持し、該ガイドロールの表面に上記フィルムが接触することによって、洗浄液で被覆された第1面を上記フィルムに形成することができる。
【0071】
本実施形態に係る製造方法では、被覆面形成工程をポリビニルアルコール系樹脂フィルムに向けて洗浄液を放出するシャワーにより行うこともできる。この場合も、調整工程については第1態様の洗浄工程および第2態様の洗浄工程で説明した調整工程をいずれも適用することができる。
【0072】
さらに本実施形態に係る製造方法において上記調整工程は、上述の被覆面形成工程を経たフィルムを、特定の時間内(例えば、約3秒以内)に第2ニップロール54に搬送し、第2ニップロール54で洗浄液を除去することにより実施することもできる。
【0073】
<その他の工程:たとえば乾燥工程>
本実施形態に係る製造方法は、上述した各処理工程以外の工程を含むことができる。その他の工程としてたとえば、乾燥工程を挙げることができる。乾燥工程は、洗浄工程の後、ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾燥させる処理を行う工程である。上記乾燥工程における乾燥方法については特に制限されないが、例えば
図1に示す乾燥炉21を用いて熱風乾燥することができる。この場合において乾燥温度は、例えば30~100℃程度であり、乾燥時間は、例えば30~600秒程度である。ポリビニルアルコール系樹脂フィルムを乾燥させる処理は、遠赤外線ヒーターを用いて行うこともできる。以上のようにして偏光フィルムを作製することができる。偏光フィルムの厚みは、例えば約5~50μm程度である。
【0074】
<斑点欠陥の評価方法>
本実施形態に係る製造方法により得られる偏光フィルムに関し、斑点欠陥が形成されることが抑制されたか否かについては、クロス透過試験(所謂クロスニコル試験)を適用した次の方法により評価することができる。まず上述した製造方法により偏光フィルムを得る。上記偏光フィルムから10枚の150mm×200mmサイズの切片を切り出すことにより、10枚の斑点欠陥検査用サンプルを得る。次に、上記斑点欠陥検査用サンプルに対してクロスニコル試験を行うための重合わせ用偏光フィルム(視感度補正単体透過率Ty:43%、視感度補正偏光度Py:99.99%)を準備する。次に、上記斑点欠陥検査用サンプルと重合わせ用偏光フィルムとをクロスニコル状態で重合わせ、これをバックライトで照らすことによって目視観察を行う。次に、目視により確認された上記サンプル上の斑点欠陥の箇所を市販の油性ペンを用いてマーキングする。最後に、上記サンプルにおいて上述したマーキングの箇所の面積を求めることにより、上記サンプルに占める斑点欠陥の面積比率(%)を算出する。この場合において、上記10枚の斑点欠陥検査用サンプルにおいて上記斑点欠陥の面積比率が平均10%以下である場合、偏光フィルムの表面に斑点が形成されることが抑制されたと評価することができる。上記面積比率は、平均7%以下であることが好ましい。
【0075】
<偏光フィルム>
本実施形態に係る製造方法により、表面に赤斑点が形成されることが抑制された偏光フィルムを得ることができる。上記偏光フィルムの視感度補正単体透過率Tyは、視感度補正偏光度Pyとのバランスを考慮し、43~50%であることが好ましく、43~49%であることがより好ましく、44~48%であることがさらに好ましい。視感度補正偏光度Pyは、幅方向のいずれの位置においても、90.0%以上であることが好ましく、98.0%以上であることがより好ましい。
【0076】
視感度補正単体透過率(Ty)、および視感度補正偏光度(Py)は、次の測定方法により求めることができる。まず上記偏光フィルムに対し、積分球付き分光光度計〔日本分光(株)製の「V7100」〕を用いて波長380~780nmの範囲におけるMD透過率とTD透過率を測定し、下記式:
単体透過率(%)=(MD+TD)/2
偏光度(%)={(MD-TD)/(MD+TD)}×100
に基づいて各波長における単体透過率及び偏光度を算出する。
【0077】
ここで「MD透過率」とは、グラントムソンプリズムから出る偏光の向きと偏光フィルム試料の透過軸とを平行にしたときの透過率をいい、上記式において「MD」として表わされる。また、「TD透過率」とは、グラントムソンプリズムから出る偏光の向きと偏光フィルム試料の透過軸とを直交にしたときの透過率をいい、上記式において「TD」として表わされる。次に、上記単体透過率及び偏光度について、JIS Z 8701:1999「色の表示方法-XYZ表色系及びX10Y10Z10表色系」の2度視野(C光源)に基づいて視感度補正を行うことにより、視感度補正単体透過率(Ty)、および視感度補正偏光度(Py)を求めることができる。
【0078】
上記偏光フィルムの幅は、例えば、50mm以上5000mm以下であり、好ましくは500mm以上4000mm以下である。上記偏光フィルムは、巻取ロールに順次巻き取ってロール状としてもよいし、巻き取ることなくそのまま偏光板を作製する工程(偏光フィルムの片面または両面に保護フィルム等を積層する工程)に供することもできる。
【0079】
<偏光板>
偏光板は、以上のようにして作製された偏光フィルムの少なくとも片面に、接着剤を介して保護フィルムを貼合することにより得ることができる。保護フィルムとしては、例えば、トリアセチルセルロースおよびジアセチルセルロースのようなアセチルセルロース系樹脂からなるフィルム;ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレートおよびポリブチレンテレフタレートのようなポリエステル系樹脂からなるフィルム;ポリカーボネート系樹脂フィルム、シクロオレフィン系樹脂フィルム;アクリル系樹脂フィルム;ポリプロピレン系樹脂の鎖状オレフィン系樹脂からなるフィルムが挙げられる。
【0080】
偏光フィルムと保護フィルムとの接着性を向上させるために、偏光フィルムおよび/または保護フィルムの貼合面に、コロナ処理、火炎処理、プラズマ処理、紫外線照射、プライマー塗布処理、ケン化処理などの表面処理を施してもよい。偏光フィルムと保護フィルムとの貼合に用いる接着剤としては、紫外線硬化性接着剤のような活性エネルギー線硬化性接着剤、ポリビニルアルコール系樹脂の水溶液、またはこれに架橋剤が配合された水溶液、ウレタン系エマルジョン接着剤のような水系接着剤等を挙げることができる。
【実施例】
【0081】
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の例示によって限定されるものではない。以下の実施例では、染色浴の薬液濃度を調整することにより、視感度補正単体透過率Tyが45±0.5%となる偏光フィルムの試料を製造した。
【0082】
〔実施例1〕
<試料1>
(偏光フィルムの製造)
図1に示す偏光フィルム製造装置を用いて、以下の手順で偏光フィルムを作製した。まず厚さ75μm、幅3000mmのポリビニルアルコールフィルム(クラレビニロンVF-PS#7500、重合度2400、ケン化度99.9モル%以上)を、純水にフィルムが弛まないように緊張状態を保ったまま浸漬し、フィルムを十分に膨潤させた(膨潤工程)。次に、ヨウ素とヨウ化カリウムを含む水溶液に浸漬して染色しつつ、一軸延伸を行った(染色工程)。
【0083】
染色後のフィルムに対しヨウ化カリウム、ホウ酸および水を含むホウ酸水溶液に浸漬することにより架橋処理し、さらに一軸延伸を行った(架橋工程)。その後、上記ホウ酸水溶液に浸漬した(補色工程)。
【0084】
補色工程を経たフィルムに対し、次の手順で洗浄工程を行った。洗浄工程では、まず第1ニップロール53bにより、上記フィルムの表面から上記ホウ酸水溶液を除去した。次いで上記フィルムをフィルム搬送経路に沿って洗浄浴17中の洗浄液を上記フィルムの片面に付着させることにより、上記片面に上記洗浄液で被覆された第1面を形成した(被覆面形成工程)。
【0085】
次に、洗浄浴17から引き出した上記フィルムに対し、
図1のAの位置に設けたシャワーを用いて、上記洗浄液を第1面の全面へ向けて放出した(調整工程)。これにより上記第1面に洗浄液を補充した。なお、洗浄浴17から引き出したフィルムは、上記洗浄液のシャワーを浴びるまで、第1面が上記洗浄液で被覆された状態を維持していた。
【0086】
ここで試料1に対しては、調整工程を被覆面形成工程の終了後1.5秒で開始するようにした。その後、第2ニップロール54により上記フィルムから洗浄液を除去した。
【0087】
最後に、乾燥工程において上記フィルムを70℃で3分間乾燥することにより試料1の偏光フィルムを製造した。
【0088】
<試料2>
(偏光フィルムの製造)
調整工程を被覆面形成工程の終了後から2.1秒で開始するようにしたこと以外、試料1と同じ方法とすることにより試料2の偏光フィルムを製造した。
【0089】
<試料3>
(偏光フィルムの製造)
調整工程を被覆面形成工程の終了後から2.5秒で開始するようにしたこと以外、試料1と同じ方法とすることにより試料3の偏光フィルムを製造した。
【0090】
<試料4>
(偏光フィルムの製造)
調整工程を被覆面形成工程の終了後から3.1秒で開始するようにしたこと以外、試料1と同じ方法とすることにより試料4の偏光フィルムを製造した。
【0091】
<試料5>
(偏光フィルムの製造)
被覆面形成工程の終了後から
図1の第2ニップロール54により洗浄液を除去するまでの間(4.1秒間)に調整工程を行わなかったこと以外、試料1と同じ方法により試料5の偏光フィルムを製造した。試料5の偏光フィルムにおいては、
図1の第2ニップロール54により洗浄液を除去する時点で、上記洗浄液で被覆された状態が液滴に変化した箇所がフィルム上に複数存在していた。
【0092】
〔評価〕
<斑点欠陥の形成抑制評価>
上述した試料1~試料5の偏光フィルムに対し、上述の方法により偏光フィルムに斑点欠陥が形成されることが抑制されたか否かについて評価した。結果を表1に示す。
【0093】
ここで表1に示す符号(AA、A、BおよびC)は、次のような評価結果であったことを表す。
AA:斑点欠陥がまったく確認されなかった(斑点欠陥の面積比率は0%)。
A:斑点欠陥が若干観察されたが、その形成が十分に抑制されていた(斑点欠陥の面積比率は0%超過7%以下)。
B:斑点欠陥が観察されたが、その形成が抑制されているといえ、視認性の影響は許容範囲内であると推定された(斑点欠陥の面積比率は7%超過10%以下)。
C:斑点欠陥が観察され、その形成が抑制されているといえなかった(斑点欠陥の面積比率は10%超過)。
【0094】
<調整工程の開始時点における洗浄液で被覆された面積の比率測定>
調整工程の開始時点における上記フィルムの第1面を撮影することにより画像を得、当該画像において上記第1面の洗浄液で被覆された面積の比率(%)を求めた。結果を表1に示す。上記の画像は、CANON IXY650(製品名、株式会社キャノン株式会社製)を用いて、上記フィルムの全幅が映るように上記フィルムから1m程度離れた位置より撮影することにより得た。上記の画像においては、フィルム幅×搬送長さ50cm分の領域を撮影したフィルムを等倍で解析することにより被覆率を求めた。なお試料5の偏光フィルムについては、調整工程を行わなかったことから、第2ニップロール54の位置において、フィルムを撮影することにより画像を得、当該画像における上記第1面の洗浄液で被覆された面積の比率(%)を求めた。
【0095】
試料1~試料4の偏光フィルムが実施例であり、試料5の偏光フィルムが比較例である。
【0096】
【0097】
表1によれば、本発明に従って被覆面形成工程および調整工程をこの順に含むことにより製造された偏光フィルム(試料1~試料4)は、斑点欠陥の形成が抑制された。したがって本実施形態に係る製造方法により、斑点欠陥の形成を抑制した偏光フィルムが得られることが理解される。このような偏光フィルムが適用された偏光板は、液晶表示装置をはじめとする各種表示装置に有効となる。
【符号の説明】
【0098】
10 ポリビニルアルコール系樹脂からなる原反フィルム、11 原反ロール、13 膨潤浴、14 染色浴、15 架橋浴、16 補色浴、17 洗浄浴、21 乾燥炉、23 偏光フィルム、30~32,34~36,38~40,42~46 ガイドロール、50~52,53a,53b,54~55 ニップロール、A 調整手段。