(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】重合体、組成物及び重合体の製造方法
(51)【国際特許分類】
C08F 216/36 20060101AFI20240920BHJP
C08F 220/10 20060101ALI20240920BHJP
G03F 7/039 20060101ALI20240920BHJP
【FI】
C08F216/36
C08F220/10
G03F7/039 501
(21)【出願番号】P 2020158262
(22)【出願日】2020-09-23
【審査請求日】2023-09-04
(31)【優先権主張番号】P 2019173567
(32)【優先日】2019-09-24
(33)【優先権主張国・地域又は機関】JP
(73)【特許権者】
【識別番号】000000387
【氏名又は名称】株式会社ADEKA
(74)【代理人】
【識別番号】110002170
【氏名又は名称】弁理士法人翔和国際特許事務所
(72)【発明者】
【氏名】後藤 雅治
(72)【発明者】
【氏名】久保田 裕介
(72)【発明者】
【氏名】宮内 佑輔
(72)【発明者】
【氏名】川原 友泰
(72)【発明者】
【氏名】佐藤 陽輝
(72)【発明者】
【氏名】山▲崎▼ 龍之介
【審査官】佐藤 貴浩
(56)【参考文献】
【文献】特開昭49-039687(JP,A)
【文献】特開昭57-182734(JP,A)
【文献】特開平01-282546(JP,A)
【文献】特開2000-191999(JP,A)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
C08F 6/00 -246/00
G03F 7/039
CAplus/REGISTRY(STN)
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
下記式(I)で表される繰り返し単位と、下記式(II)で表される繰り返し単位とを同一分子内に有する重合体。
【化1】
(式中、R
1は、炭素原子数1~
5の
アルキル基を表し、
R
2は、炭素原子数1~5のアルキル基を表す。
重合体中に複数の式(I)で表される繰り返し単位が存在するとき、複数存在するR
1及びR
2は、それぞれ独立に、同一である場合も異なる場合もある。)
【化2】
(式中、R
11は、炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-で置換された基を表す。
重合体中に複数の式(II)で表される繰り返し単位が存在するとき、複数存在するR
11は、それぞれ独立に、同一である場合も異なる場合もある。)
【請求項2】
上記式(I)のR
2がメチル基である請求項
1に記載の重合体。
【請求項3】
上記式(II)のR
11が炭素原子数1~5のアルキル基である請求項1
又は2に記載の重合体。
【請求項4】
上記式(II)のR
11が炭素原子数1~5のアルコキシ基である請求項1
又は2に記載の重合体。
【請求項5】
上記式(I)で表される繰り返し単位と上記式(II)で表される繰り返し単位の総和に対する式(II)で表される繰り返し単位の比率が1~30mol%である請求項1~
4のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項6】
重量平均分子量が50,000~300,000である請求項1~
5のいずれか一項に記載の重合体。
【請求項7】
請求項1~
6のいずれか一項に記載の重合体を含有する組成物。
【請求項8】
下記式(Ia)で表される単量体、下記式(IIa)で表される単量体及び熱ラジカル重合開始剤を混合し、加熱する工程を有する重合体の製造方法。
【化3】
(式中、R
1は、炭素原子数1~
5の
アルキル基を表し、R
2は、炭素原子数1~5のアルキル基を表す。)
【化4】
(式中、R
11は、炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-で置換された基を表す。)
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本発明は重合体、それを含有する組成物並びに該重合体の製造方法に関する。
【背景技術】
【0002】
特定の波長の光に対して分解性を示す繰り返し単位を有する重合体及びそれを含有する組成物は、光易解体性接着剤や、微細なパターンを形成できるパターン形成剤及び保存安定性に優れる光潜在性触媒などとして用いられている。
【0003】
光分解性樹脂の一種として、ポリ(2-メチル-1-ブテン-3-オン)等の、主鎖に直接結合したカルボニル基及び短鎖アルキル基を有する重合体が知られている(特許文献1~4)。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0004】
【文献】特開昭54-65480号公報
【文献】特開昭54-125024号公報
【文献】特開昭57-179851号公報
【文献】特開2015-87612号公報
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0005】
ポリ(2-メチル-1-ブテン-3-オン)等の主鎖に直接結合したカルボニル基及び短鎖アルキル基を有する重合体は、安定性が高く、比較的入手容易であるものの、紫外線照射に対する感度が低い場合がある。
特許文献1及び2では、ポリ(2-メチル-1-ブテン-3-オン)にベンゾフェノン化合物や安息香酸類等の添加剤を配合することで感度を向上させることを提案しているが、紫外線照射時の増感作用が十分といいがたい問題があった。
【0006】
本発明が解決しようとする課題は、上記の問題を解決できる重合体を提供することである。
【課題を解決するための手段】
【0007】
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討を行い、特定の繰り返し単位の組み合わせを有する特定の重合体が、紫外線に対する感度を良好に向上させることができることを見出した。
【0008】
本発明は上記の知見から見出されたものであり、下記[1]~[9]を提供する。
【0009】
[1] 下記式(I)で表される繰り返し単位と、下記式(II)で表される繰り返し単位とを同一分子内に有する重合体。
【化1】
(式中、R
1は、炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-で置換された基を表し、
R
2は、炭素原子数1~5のアルキル基を表す。
重合体中に複数の式(I)で表される繰り返し単位が存在するとき、複数存在するR
1及びR
2は、それぞれ独立に、同一である場合も異なる場合もある。)
【化2】
(式中、R
11は、炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-で置換された基を表す。
重合体中に複数の式(II)で表される繰り返し単位が存在するとき、複数存在するR
11は、それぞれ独立に、同一である場合も異なる場合もある。)
【0010】
[2] [1]に記載の重合体は、上記式(I)のR1が炭素原子数1~5のアルキル基であることが、原料の入手容易性や光分解性に優れることから好ましい。
【0011】
[3] [1]又は[2]に記載の重合体は、上記式(I)のR2がメチル基であることが、光分解性に優れることから好ましい。
【0012】
[4] [1]~[3]のいずれかに記載の重合体は、上記式(II)のR11が炭素原子数1~5のアルキル基であることが、光分解性に優れることから好ましい。
【0013】
[5] [1]~[3]のいずれかに記載の重合体は、上記式(II)のR11が炭素原子数1~5のアルコキシ基であることも、光分解性に優れることから好ましい。
【0014】
[6] [1]~[5]のいずれかに記載の重合体は、上記式(I)で表される繰り返し単位と上記式(II)で表される繰り返し単位の総和に対して式(II)で表される繰り返し単位の比率が1mol%以上30mol%以下であることが、光分解性と製造安定性の両立の点で優れることから好ましい。
【0015】
[7] [1]~[6]のいずれかに記載の重合体は、重量平均分子量が50,000~300,000であることが、光分解による溶媒溶解性、融点、膜の強度等の物性の変化が大きいため好ましい。
【0016】
[8] [1]~[7]のいずれかに記載の重合体を含有する組成物。
【0017】
[9] 下記式(Ia)で表される単量体、下記式(IIa)で表される単量体及び熱ラジカル重合開始剤を混合し、加熱する工程を有する重合体の製造方法。
【化3】
(式中、R
1は、炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-で置換された基を表し、
R
2は、炭素原子数1~5のアルキル基を表す。)
【化4】
(式中、R
11は、炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-で置換された基を表す。)
【発明の効果】
【0018】
本発明の重合体は、紫外線を照射することで感度よく分解する重合体であり、パターン形成剤、光易解体性接着剤及び光潜在性触媒などの用途に有望な組成物を形成できる。
また本発明の重合体の製造方法は、本発明の重合体を安定的に製造できる。
【発明を実施するための形態】
【0019】
以下、本発明について、その好ましい実施形態について詳細に説明する。
【0020】
<重合体>
本発明の重合体は、下記式(I)で表される繰り返し単位と、下記式(II)で表される繰り返し単位とを同一分子内に有する。本発明の重合体は式(II)で表される繰り返し単位を有することにより、式(I)で表される繰り返し単位の単独重合体に比べて、紫外線を照射することによる光分解性の感度が向上する。また式(II)で表される繰り返し単位の単独重合体はゲル化しやすく固体として単離しがたく取り扱いにくい場合がある。これに対し、本発明の重合体は、式(II)で表される繰り返し単位を式(I)で表される繰り返し単位と組み合わせることで固体として安定的に存在し得るものである。
【0021】
【化5】
(式中、R
1は、炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-で置換された基を表し、
R
2は、炭素原子数1~5のアルキル基を表す。)
【0022】
【化6】
(式中、R
11は、炭素原子数1~20の炭化水素基又は炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-で置換された基を表す。)
【0023】
R1及びR11で表される炭素原子数1~20の炭化水素基としては、炭素原子数1~20の直鎖又は分岐鎖の鎖状アルキル基、炭素原子数2~20のアルケニル基、炭素原子数3~20のシクロアルキル基、炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基等の脂肪族炭化水素基のほか、炭素原子数6~20のアリール基、炭素原子数7~20のアリールアルキル基等の芳香族炭化水素基が挙げられる。感度を良好としやすい点や重合体の原料を入手容易とする点から、R1及びR11で表される炭素原子数1~20の炭化水素基としては、炭素原子数1~10の直鎖又は分岐鎖の鎖状アルキル基、炭素原子数2~10のアルケニル基、炭素原子数3~10のシクロアルキル基、炭素原子数4~10のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数6~10のアリール基、炭素原子数7~10のアリールアルキル基が好ましい。
【0024】
上記炭素原子数1~20の直鎖又は分岐鎖の鎖状アルキル基としては、例えば、メチル、エチル、プロピル、イソプロピル、ブチル、イソブチル、s-ブチル、t-ブチル、アミル、イソアミル、t-アミル、ヘキシル、ヘプチル、オクチル、イソオクチル、2-エチルヘキシル、t-オクチル、ノニル、イソノニル、デシル、イソデシル、ウンデシル、ドデシル、テトラデシル、ヘキサデシル、オクタデシル及びイコシル等が挙げられる。
【0025】
上記炭素原子数2~20のアルケニル基としては、例えば、ビニル、2-プロペニル、3-ブテニル、2-ブテニル、4-ペンテニル、3-ペンテニル、2-ヘキセニル、3-ヘキセニル、5-ヘキセニル、2-ヘプテニル、3-ヘプテニル、4-ヘプテニル、3-オクテニル、3-ノネニル、4-デセニル、3-ウンデセニル、4-ドデセニル、3-シクロヘキセニル、2,5-シクロヘキサジエニル-1-メチル、及び4,8,12-テトラデカトリエニルアリル等が挙げられる。
【0026】
上記炭素原子数3~20のシクロアルキル基とは、3~20の炭素原子を有する、飽和単環式又は飽和多環式アルキル基を意味する。例えば、シクロプロピル、シクロブチル、シクロペンチル、シクロヘキシル、シクロヘプチル、シクロオクチル、シクロノニル、シクロデシル、アダマンチル、デカハイドロナフチル、オクタヒドロペンタレン、ビシクロ[1.1.1]ペンタニル及びテトラデカヒドロアントラセニル等が挙げられる。
【0027】
上記炭素原子数4~20のシクロアルキルアルキル基とは、アルキル基の水素原子が、シクロアルキル基で置換された4~20の炭素原子を有する基を意味する。例えば、シクロプロピルメチル、シクロブチルメチル、シクロペンチルメチル、シクロヘキシルメチル、シクロヘプチルメチル、シクロオクチルメチル、シクロノニルメチル、シクロデシルメチル、2-シクロブチルエチル、2-シクロペンチルエチル、2-シクロヘキシルエチル、2-シクロヘプチルエチル、2-シクロオクチルエチル、2-シクロノニルエチル、2-シクロデシルエチル、3-シクロブチルプロピル、3-シクロペンチルプロピル、3-シクロヘキシルプロピル、3-シクロヘプチルプロピル、3-シクロオクチルプロピル、3-シクロノニルプロピル、3-シクロデシルプロピル、4-シクロブチルブチル、4-シクロペンチルブチル、4-シクロヘキシルブチル、4-シクロヘプチルブチル、4-シクロオクチルブチル、4-シクロノニルブチル、4-シクロデシルブチル、3-3-アダマンチルプロピル及びデカハイドロナフチルプロピル等が挙げられる。
【0028】
上記炭素原子数6~20のアリール基としては、例えば、フェニル、トリル、キシリル、エチルフェニル、ナフチル、アンスリル、フェナントレニル等や、上記アルキル基、上記アルケニル基やカルボキシル基、ハロゲン原子等で1つ以上置換されたフェニル、ビフェニリル、ナフチル、アンスリル等、例えば、4-クロロフェニル、4-カルボキシルフェニル、4-ビニルフェニル、4-メチルフェニル、2,4,6-トリメチルフェニル等が挙げられる。
【0029】
上記炭素原子数7~20のアリールアルキル基とは、アルキル基の水素原子が、アリール基で置換された7~20の炭素原子を有する基を意味する。例えば、ベンジル、α-メチルベンジル、α、α-ジメチルベンジル、フェニルエチル及びナフチルプロピル等が挙げられる。
【0030】
R1及びR11で表される炭素原子数1~20の炭化水素基中のメチレン基の1又は2以上が、-O-で置換された基としては、上記で挙げた各炭化水素基のうち、炭素原子数2以上の基、具体的には炭素原子数2~20の直鎖又は分岐鎖の鎖状アルキル基、炭素原子数3~20のアルケニル基、炭素原子数4~20のシクロアルキル基、炭素原子数5~20のシクロアルキルアルキル基、炭素原子数7~20のアリール基、炭素原子数8~20のアリールアルキル基におけるメチレン基の1つ又は2つ以上が、-O-で置換された基が挙げられる。
【0031】
例えば、炭化水素基の結合箇所側末端のメチレン基が-O-で置換された基としては、炭素原子数1~19の直鎖又は分岐鎖の鎖状アルコキシ基、炭素原子数2~19のアルケニルオキシ基、炭素原子数3~19のシクロアルコキシ基、炭素原子数4~19のシクロアルキルアルキルオキシ基、炭素原子数6~19のアリールオキシ基、炭素原子数7~19のアリールアルキルオキシ基が挙げられる。
【0032】
R2で表される炭素原子数1~5のアルキル基としては、上記R1等で表される直鎖又は分岐鎖の鎖状アルキル基、シクロアルキル基又はシクロアルキルアルキル基として上記で例示したものの中の、炭素原子数1~5のものが挙げられる。
【0033】
R1、R2及びR11で表される基中の水素原子の1つ又は2つ以上は、ハロゲン原子、ニトロ基、シアノ基、水酸基、アミノ基、カルボキシル基、メタアクリロイル基、アクリロイル基、エポキシ基、ビニル基、メルカプト基、イソシアネート基又はカルボキシル基で置換される場合がある。ハロゲン原子としては、フッ素原子、臭素原子、塩素原子、ヨウ素原子が挙げられる。アミノ基は、第一級アミノ基、第二級アミノ基及び第三級アミノ基のいずれでもよい。本明細書において、所定の炭素原子数の基の水素原子が炭素原子を含む置換基により置換される場合、当該置換基の炭素原子も含めて所定の炭素原子数の規定を満たすものとする。
【0034】
重合体において、式(I)で表される繰り返し単位及び式(II)で表される繰り返し単位は、それぞれランダムであってもブロックであってもよい。
【0035】
式(I)で表される繰り返し単位を与える単量体は上記式(Ia)で表されるものであり、その具体例としては、イソプロペニルケトン系単量体やメタクリル酸エステル系単量体が挙げられる。イソプロペニルケトン系単量体としては例えばメチルイソプロペニルケトン、エチルイソプロペニルケトン、フェニルイソプロピニルケトン、イソプロペニルt-ブチルケトンが挙げられる。メタクリル酸エステル系単量体としては例えば、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、(n-又はi-)プロピルメタクリレート、(n-、i-、sec-又はt-)ブチルメタクリレート、アミルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレート、ドデシルメタクリレート、クロロエチルメタクリレート、2-ヒドロキシエチルメタクリレート、2-ヒドロキシプロピルメタクリレート、2-ヒドロキシペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、アリルメタクリレート、トリメチロールプロパンモノメタクリレート、ペンタエリスリトールモノメタクリレート、ベンジルメタクリレート、メトキシベンジルメタクリレート、クロロベンジルメタクリレート、ヒドロキシベンジルメタクリレート、ヒドロキシフェネチルメタクリレート、ジヒドロキシフェネチルメタクリレート、フェニルメタクリレート、ヒドロキシフェニルメタクリレート、クロロフェニルメタクリレート等が挙げられる。
【0036】
式(II)で表される繰り返し単位を与える単量体としては上記式(IIa)で表されるものであり、例えばビニルケトン系単量体、アクリル酸エステル系単量体が挙げられる。ビニルケトン系単量体としては例えば、メチルビニルケトン、フェニルビニルケトンが挙げられる。アクリル酸エステル系単量体としては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、(n-又はi-)プロピルアクリレート、(n-、i-、sec-又はt-)ブチルアクリレート、アミルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、ドデシルアクリレート、クロロエチルアクリレート、2-ヒドロキシエチルアクリレート、2-ヒドロキシプロピルアクリレート、2-ヒドロキシペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、アリルアクリレート、トリメチロールプロパンモノアクリレート、ペンタエリスリトールモノアクリレート、ベンジルアクリレート、メトキシベンジルアクリレート、クロロベンジルアクリレート、ヒドロキシベンジルアクリレート、ジヒドロキシフェネチルアクリレート、フェニルアクリレート、ヒドロキシフェニルアクリレート、クロロフェニルアクリレート等が挙げられる。
【0037】
重合体中に複数の式(I)で表される繰り返し単位が存在するとき、複数存在するR1及びR2は、それぞれ独立に、同一である場合も異なる場合もある。重合体中に複数の式(II)で表される繰り返し単位が存在するとき、複数存在するR11は、それぞれ独立に、同一である場合も異なる場合もある。
【0038】
式(I)のR1としては、重合体の光分解性を良好なものとしやすい点から、炭素原子数1~8であることが好ましく、式(I)のR1としては炭素原子数1~8の炭化水素基又は炭素原子数1~8の又は炭化水素オキシ基が挙げられる。重合体の光分解性が得やすい点及び原料の入手容易性の点から式(I)のR1としては、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数1~8のアルコキシ基、炭素原子数6~8のアリール基、炭素原子数6~8のアリールオキシ基、炭素原子数7~8のアリールアルキル基、又は炭素原子数7~8のアリールアラルキルオキシ基が好ましく、炭素原子数1~8のアルキル基、炭素原子数6~8のアリール基又は炭素原子数7~8のアリールアルキル基がより好ましく、炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数6~8のアリール基が更に好ましい。
とりわけ重合体の光分解性が良好となる構成としては、炭素原子数1~5のアルキル基が特に好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基が更に一層好ましく、メチル基又はエチル基がとりわけ好ましく、メチル基が最も好ましい。重合体の光分解性の点から、式(I)のR1で表されるアルキル基は、鎖状アルキル基が好ましい。
【0039】
式(I)におけるR2は重合体の光分解性の点から、鎖状アルキル基であることが好ましく、炭素原子数1~3の鎖状アルキル基であることがより好ましく、エチル基又はメチル基であることが更に一層好ましく、特にメチル基であることが好ましい。
【0040】
式(II)のR11としては、重合体の光分解性を良好なものとする点から、芳香族基を有しない炭化水素基である脂肪族炭化水素基又は該脂肪族炭化水素基のメチレン基が-O-で置換された基であることが好ましく、光分解性が良好であることに加えて耐薬品性に優れる点から、脂肪族炭化水素基であることがより好ましく、とりわけアルキル基であることが好ましい。また式(II)のR11としては、重合体の光分解性を良好なものとする点や原料の入手容易性の点から、炭素原子数1~8であることが好ましく、炭素原子数1~5であることが更に好ましい。重合体の光分解性を更に良好なものとする点から式(II)のR11としては、炭素原子数1~8のアルキル基又は炭素原子数1~8のアルコキシ基を用いることが好適であり、アルキル基である場合、炭素原子数1~5のアルキル基が更に好ましく、炭素原子数1~3のアルキル基が更に一層好ましく、エチル基又はメチル基であることが最も好ましい。重合体の光分解性の点から、式(II)のR11で表されるアルキル基は、鎖状アルキル基が好ましい。
【0041】
式(II)のR11がアルコキシ基である場合、光分解性に優れる点から、炭素原子数1~3のアルコキシ基が好ましく、エトキシ基又はメトキシ基であることが特に好ましく、メトキシ基であることが最も好ましい。重合体の光分解性の点から、式(II)のR11で表されるアルコキシ基は鎖状アルコキシ基が好ましい。
【0042】
本発明の重合体において、式(I)で表される繰り返し単位が1種類であり、複数存在するR1及びR2がそれぞれ独立に同一である重合体は、その製造時に分子量やポリマー成分比が制御しやすく、重合体の光分解性が制御しやすいことから好ましい。
【0043】
本発明の重合体において、式(II)で表される繰り返し単位が1種類であり、複数存在するR11が同一である重合体は、その製造時に分子量やポリマー成分比が制御しやすく、製造したポリマーの光分解性が制御しやすいことから好ましい。
【0044】
本発明の重合体は、上記式(I)で表される繰り返し単位と上記式(II)で表される繰り返し単位の総和に対して式(II)で表される繰り返し単位の比率が1mol%以上であることが、光分解性を効果的に向上できるため好ましく、3mol%以上であることが更に一層好ましく、5mol%以上であることが特に好ましい。また、本発明の重合体は、上記式(I)で表される繰り返し単位と上記式(II)で表される繰り返し単位の総和に対して30mol%以下であることが製造安定性を有する点で好ましく、式(II)で表される繰り返し単位の比率が20mol%以下であることが重合体の製造安定性に優れることから好ましく、15mol%以下であることがより好ましく、12mol%以下であることが更に一層好ましい。上記の式(II)で表される繰り返し単位の比率は、後述する実施例に記載の方法にて測定することができる。
【0045】
本発明の重合体は、光分解性を高める点から、上記式(I)で表される繰り返し単位と上記式(II)で表される繰り返し単位の総和は、重合体を構成する全ての繰り返し単位の合計に対する割合が、70mol%以上であることが好ましく、80mol%以上であることがより好ましく、90mol%以上であることが更に好ましく、95mol%以上であることが特に好ましく、100mol%であることが最も好ましい。ここで一つの繰り返し単位とは一つのエチレン性不飽和結合に由来するものを指し、構成単位と呼ばれることもある。上記した、式(I)で表される繰り返し単位と上記式(II)で表される繰り返し単位の総和の重合体を構成する全ての繰り返し単位の合計に対する割合は、重合体に含まれる各繰り返し単位に由来する13C-NMRの積分比から求めることができる。
【0046】
本発明の重合体は、その重量平均分子量が50,000~300,000であると、光分解前後で溶媒溶解性、融点、力学的強度などの性状が大きく変化することから好ましく、この点から特に、70,000~250,000であることがより好ましく、100,000~200,000であることが特に好ましい。
【0047】
本発明の重合体は、その多分散度[重量平均分子量(Mw)/数平均分子量(Mn)]が1~2.5であることが、光分解性をコントロールしやすいので好ましく、特に1~2.0が好ましい。
【0048】
重合体の数平均分子量及び重量平均分子量は、ゲル・パーミエーション・クロマトグラフィー(GPC)により、標準ポリスチレン換算値として求めることができる。
上記数平均分子量Mn及び重量平均分子量Mwは、例えば、日本分光(株)製のGPC(LC-2000plusシリーズ)を用い、溶出溶剤をテトラヒドロフランとし、校正曲線用ポリスチレンスタンダードをMw1110000、707000、397000、189000、98900、37200、13700、9490、5430、3120、1010、589(東ソー(株)社製 TSKgel標準ポリスチレン)とし、測定カラムをKF-804、KF-803、KF-802(有機溶媒系GPC用カラム、標準分析用、Shodex社)として測定して得ることができる。
また、測定温度は40℃とすることができ、流速は1.0mL/分とすることができる。
【0049】
以下表1~表5に本発明の重合体の具体例を挙げるが、本発明がこれらに限定されるものでないことはいうまでもない。以下の表1~表5中、Meはメチル、Etはエチル、Prはプロピル、Buはブチル、Bnはベンジル、Phはフェニル、Npはナフチル、Cyはシクロヘキシルであり、それらの基の前に「O」が記載されている場合、基の結合側末端に酸素原子が結合していることを示す。また表1~表5のモル比(モル%)は、重合体中の全繰り返し単位の合計100モル%に対する割合を示す。
【0050】
【0051】
【0052】
【0053】
【0054】
【0055】
【0056】
本発明の重合体は、光分解性に優れることから光分解性樹脂として有用である。光分解性樹脂とは、可視光線、紫外線、X線、電子線、高周波のような活性エネルギー線により、容易に分解する重合体を意味する。保存安定性が悪いことから可視光線のみで分解する重合体は好ましくなく、取り扱いの容易さから紫外線で分解する光分解性樹脂が好ましい。
【0057】
光分解性樹脂を紫外線によって分解する場合、好ましい照射量は0.1~100J/cm2であり、更に好ましくは0.5~10J/cm2である。上記の照射量において分解する光分解性樹脂は、保存安定性と光分解性のバランスがよく幅広い用途で使用できる。
【0058】
本発明の重合体は紫外線により効率よく光分解可能なものである。光分解を生じさせるのに好適な光の波長としては500nm以下が挙げられ、光分解が効率よく進む点から、200nm以上400nm以下が更に一層好適である。
本発明の重合体を光分解させる場合の光源としては、例えば、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプ、低圧水銀ランプ、水銀蒸気アーク灯、キセノンアーク灯、カーボンアーク灯、発光ダイオード、メタルハライドランプ、無電極ランプ(例えばヘレウス社製フュージョンHバルブ、Vバルブなど)が挙げられ、分解効率や光源の入手容易性等の点から、超高圧水銀ランプ、高圧水銀ランプ、中圧水銀ランプが好ましい。本発明は、後述する実施例に示すように、高圧水銀ランプ等の一般的な紫外線の光源であっても、優れた分解感度の向上効果が得られるものである。
【0059】
<重合体の好適な製造方法>
本発明の重合体は、上記式(Ia)で表される単量体、上記式(IIa)で表される単量体及び熱ラジカル重合開始剤を混合し、加熱する工程を有する製造方法により、好適に製造することができる。式(Ia)及び式(IIa)で表される単量体の具体例は上述した通りである。また、全単量体における、式(Ia)で表される単量体及び式(IIa)で表される単量体の好ましい合計量の比率は、上述した、全繰り返し単位中における、式(I)で表される繰り返し単位と上記式(II)で表される繰り返し単位の総和の好ましい割合と同様であり、70mol%以上が好ましく、80mol%以上がより好ましく、90mol%以上が更に一層好ましく、100mol%が最も好ましい。ここでいう単量体とは、一のエチレン性不飽和結合を有する単量体を指す。また、式(Ia)で表される単量体及び式(IIa)で表される単量体の総量に対する式(IIa)で表される単量体の好ましい量は、前述した式(I)で表される繰り返し単位と上記式(II)で表される繰り返し単位の総和に対する式(II)で表される繰り返し単位の好ましい比率と同様であるが、重合体の製造容易性と光分解性のバランスの点から1mol%以上55mol%以下が好ましく挙げられ、3mol%以上30mol%以下がより好ましく、5mol%以上15mol%以下が更に一層好ましい。
【0060】
本発明の重合体の製造方法では熱重合開始剤を用いることで、光分解を受けずに効率よく所望の分子量の重合体を得ることができるほか、開始剤量、反応温度を制御することで分子量の制御が容易であるという利点がある。熱重合開始剤としては、メチルエチルケトンパーオキサイド、シクロヘキサノンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド類;アセチルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;過酸化水素、tert-ブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド類;ジ-tert-ブチルパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド類;ジブチルパーオキシシクロヘキサン等のパーオキシケタール類、パーオキシネオデカン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシピバリン酸-tert-ブチルエステル、パーオキシ-2-エチルシクロヘキサン酸-tert-アミルエステル等のアルキルパーエステル類;過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニウム等の過硫酸塩類;並びに、アゾビスイソブチロニトリル、及び2,2′-ジ(2-ヒドロキシエチル)アゾビスイソブチロニトリル等のアゾ系化合物が挙げられる。
【0061】
首尾よく重合体を得る点から、熱重合開始剤の使用量としては、エチレン性不飽和結合を有する全単量体100質量部に対して10.0質量部以下であることが好ましく、0.1質量部以上3.0質量部以下であることがより好ましい。
【0062】
反応温度は熱重合開始剤の分解温度以上であれば特に限定はないが、40℃以上80℃以下、特に50℃以上70℃以下とすることが分子量制御の点で好ましい。上記の反応後、必要に応じて精製工程を経て目的とする重合体が得られる。精製には公知の手段を採用できる。
【0063】
<組成物>
本発明の重合体は単独で利用できるが、組成物としても利用可能である。本発明の組成物は、本発明の重合体を含有すればよく、特に制限されないが、組成物中に含まれる重量平均分子量が1,000以上の成分100質量部中に本発明の重合体を50質量部以上含有する組成物は分解性に優れることから好ましい。また、本発明の組成物のうち溶媒を除く全成分100質量部中、本発明の重合体は、例えば20質量部以上であることが好ましく、30質量部以上であることがより好ましく、35質量部以上であることが更に一層好ましい。
【0064】
また、本発明の組成物には、必要に応じて、重合性化合物、重合開始剤、着色剤、無機化合物、潜在性添加剤、有機重合体、連鎖移動剤、増感剤、界面活性剤、シランカップリング剤、メラミン化合物、熱重合抑制剤;可塑剤;接着促進剤;充填剤;消泡剤;レベリング剤;表面調整剤;酸化防止剤;紫外線吸収剤;分散助剤;凝集防止剤;触媒;効果促進剤;架橋剤;増粘剤等の慣用の添加物を加えることができる。
【0065】
<本発明の組成物の用途>
本発明の組成物の用途は、光易解体性接着剤、パターン形成剤、光潜在性触媒、記録媒体、液晶表示装置、配線基板、インク組成物、防塵膜など多岐にわたるが、本発明の組成物の用途としては、光易解体性接着剤、パターン形成剤、光潜在性触媒が特に好ましい。
【0066】
上記光易解体性接着剤とは、本発明の重合体を含有する接着剤であればよく特に限定されない。光易解体性接着剤を用いることで、一度接着させた2種の部材の光易解体性接着剤層に特定の活性エネルギー線を照射することにより、接着剤が分解することで2種の部材を分離できる。操作が容易なことから、紫外線によって分解する光易解体性接着剤が好ましい。また、光を透過することから2種の部材のうち1つ以上が、透明な用途が特に好ましい。
光易解体性接着剤には、本発明の組成物と同様の添加物を適時加えることができる。
【0067】
上記パターン形成剤は、本発明の重合体を含有するパターン形成剤であればよい。上記パターン形成剤は、フォトリソ性を有するものであり、具体的には、マスクを介して光照射した後、現像液を用いて現像することにより、パターンを再現よく形成できる。本発明のパターン形成剤を用いることで、従来の酸発生剤を使用する手法に比べ、酸又は酸発生剤がパターン部に残存しないというメリットがある。操作が容易なことから、紫外線によって分解するパターン形成剤が好ましい。パターン形成剤には、本発明の組成物と同様の添加物を適時加えることができる。
【0068】
上記光潜在性触媒とは、特定の活性エネルギー線を照射することにより、活性種を提供できる触媒である。上記光潜在性触媒は、活性種を本発明の重合体又は本発明の組成物で包括しており、特定の活性エネルギー線を照射することにより、本発明の重合体が分解し、内包されていた活性種が系内に溶出することで、重合反応などを起こすことができる。従来の光重合開始剤などと比較して、より活性の高い活性種を内包させることができることから、光分解性樹脂が分解後に瞬時に重合する性能を有しながら、保存時は安定性に優れた組成物を形成できるというメリットがある。
【0069】
光潜在性触媒に使用する光分解性樹脂の好ましい重量平均分子量は、上述した本発明の重合体の好ましい重量平均分子量と同様である。
【0070】
光分解性触媒の製造方法としては、特に限定されないが、光分解性樹脂と活性種を混練する方法や、活性種を光分解性樹脂でコーティングしたカプセルを形成する方法などが挙げられる。
【0071】
本発明における光分解性樹脂の分解方法について説明する。本発明の重合体又は本発明の組成物に対して活性エネルギー線を照射することによって分解することができる。活性エネルギー線を照射する工程において、本発明の重合体又は本発明の組成物に対して直接照射しても、基材などの透明材料を介して照射しても構わない。活性エネルギー線としては、取り扱いの容易さから紫外線が好ましい。
【実施例】
【0072】
以下に本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に何らの制限を受けるものではない。
【0073】
<実施例1:重合体No.1の製造>
2-メチル-1-ブテン-3-オン(以下、「モノマーA」とも記載する。)1mol、1-ペンテン-3-オン(以下、「モノマーB」とも記載する。)をモノマーAに対して1.00mol%、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をモノマーA及びモノマーBの合計量100質量部に対して0.50質量部加え、60℃で24時間加温することで重合を行った。反応後の溶液はモノマーA及びモノマーBの総質量に対して10倍の質量のメタノールを加えることでポリマー成分を析出させ、ろ過によって重合体No.1を得た。
【0074】
<実施例2~4、比較例1:重合体No.2~No.4、比較No.1の製造>
添加するモノマーBの仕込み量を下記表6に示す量に変更した以外は、重合体No.1の製造方法と同様手順で重合体No.2~No.4、比較No.1を得た。
【0075】
実施例1~4、比較例1で得られた重合体No.1~No.4、比較No.1について下記の方法によって式(II)で表される繰り返し単位比率、重量平均分子量及び分子量分布を算出した。結果を表6に示す。
【0076】
<重合体の繰り返し単位比率の算出方法>
13C-NMR:サンプル250mgをはかりとり、TMS1.0質量%入りCDCl3を0.75ml用いて溶解し、測定試料とし、測定結果から重合体の繰り返し単位比率を算出した。
モノマーに起因するピークの比率を計算し、重合体の式(II)で表される繰り返し単位比率を下記式によって算出し、得られた比率を、モル比に換算した。結果を下記表6に示す。
(式(II)で表される繰り返し単位比率)=
(式(II)で表される繰り返し単位由来の13C-NMRの積分比)/
{(式(I)で表される繰り返し単位由来の13C-NMRの積分比)+(式(II)で表される繰り返し単位由来の13C-NMRの積分比)}×100
【0077】
<分子量の測定方法>
上記重量平均分子量及び分子量分布は、上述した方法にて測定した。
【0078】
【0079】
(実施例1~4並びに比較例1の評価)
実施例1~4並びに比較例1で得られた重合体No.1~重合体No.4、比較No.1について、下記の方法によって感度を評価した。結果を表8に示す。
<感度の測定方法>
ガラス板上に2mLのポリマー溶液(10質量%、塩化メチレン溶液)を滴下し、スピンコーター(1,000rpm、30秒)で塗布した。塗布したレジストを120℃のホットプレート上で焼成し、感度測定用サンプルとした。感度測定用サンプルは、所定のフォトマスクを用いて高圧水銀ランプで6~14J/cm2の光を露光した。次いで、イソプロピルアルコールで30秒間現像することで露光部分を除去した。顕微鏡を用いて除去部分の線幅を計測し、フォトマスクの線幅と一致した露光量を感度とした。
【0080】
(比較例2-7及びその評価)
本比較例は、特許文献1又は2に記載されている添加剤を用いた例である。重合体比較No.1の10質量%塩化メチレン溶液に、下記表7の化合物を、重合体比較No.1の質量に対して5質量%となる量で添加、混合したものを、上記<感度の測定方法>のポリマー溶液として用いて上記の<感度の測定方法>の評価に供した。結果を下記表8に合わせて示す。
【0081】
【0082】
【0083】
表8の比較例1と、各実施例との比較により、本発明の重合体は、式(II)で表される繰り返し単位を式(I)で表される繰り返し単位と組み合わせることにより、光分解の感度が効果的に向上することが分かる。これに対し、比較例1と比較例2~7の比較から、式(I)で表される繰り返し単位の単独重合体に対し特許文献1及び2に示す添加剤を添加しても、感度の向上効果は十分ではないことが分かる。
【0084】
<実施例5>
モノマーA1mol、アクリル酸メチル(モノマーC)をモノマーAに対して1.00mol%、重合開始剤としてアゾビスイソブチロニトリル(AIBN)をモノマーA及びモノマーCの合計量100質量部に対して0.25質量部加え、50℃で24時間加温することで重合を行った。反応後の溶液はモノマーA及びモノマーCの総質量に対して10倍のメタノールを加えることでポリマー成分を析出させ、ろ過によって重合体No.5を得た。
【0085】
<実施例6>
添加するモノマーCの仕込み量を下記表9に示す量に変更した以外は、重合体No.5の製造方法と同様の手順で重合体No.6を得た。
【0086】
<比較例8>
モノマーCをメタクリル酸メチル(モノマーD)に変更した以外は、重合体No.5の製造法と同様の手順で重合体比較No.2を得た。
【0087】
実施例5及び6並びに比較例8で得られた重合体について実施例1と同様にして一般式(II)で表される繰り返し単位の比率、分子量、分子量分布及び感度を測定した。結果を下表に示す。
【0088】