IP Force 特許公報掲載プロジェクト 2022.1.31 β版

知財求人 - 知財ポータルサイト「IP Force」

▶ ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピアの特許一覧

特許7558063引抜成形方法にインライン化した繊維サイジング処理の同時最適化
<>
< >
(19)【発行国】日本国特許庁(JP)
(12)【公報種別】特許公報(B2)
(11)【特許番号】
(24)【登録日】2024-09-19
(45)【発行日】2024-09-30
(54)【発明の名称】引抜成形方法にインライン化した繊維サイジング処理の同時最適化
(51)【国際特許分類】
   C08J 5/06 20060101AFI20240920BHJP
   B29C 70/16 20060101ALI20240920BHJP
   B29C 70/52 20060101ALI20240920BHJP
   D06M 15/61 20060101ALI20240920BHJP
   D06M 15/568 20060101ALI20240920BHJP
   B29K 105/08 20060101ALN20240920BHJP
   B29K 75/00 20060101ALN20240920BHJP
【FI】
C08J5/06 CFF
B29C70/16
B29C70/52
D06M15/61
D06M15/568
B29K105:08
B29K75:00
【請求項の数】 24
(21)【出願番号】P 2020542094
(86)(22)【出願日】2019-01-29
(65)【公表番号】
(43)【公表日】2021-05-13
(86)【国際出願番号】 EP2019052051
(87)【国際公開番号】W WO2019149672
(87)【国際公開日】2019-08-08
【審査請求日】2022-01-25
(31)【優先権主張番号】62/625,441
(32)【優先日】2018-02-02
(33)【優先権主張国・地域又は機関】US
(31)【優先権主張番号】18168143.8
(32)【優先日】2018-04-19
(33)【優先権主張国・地域又は機関】EP
【前置審査】
(73)【特許権者】
【識別番号】508020155
【氏名又は名称】ビーエーエスエフ ソシエタス・ヨーロピア
【氏名又は名称原語表記】BASF SE
【住所又は居所原語表記】Carl-Bosch-Strasse 38, 67056 Ludwigshafen am Rhein, Germany
(74)【代理人】
【識別番号】100114890
【弁理士】
【氏名又は名称】アインゼル・フェリックス=ラインハルト
(74)【代理人】
【識別番号】100098501
【弁理士】
【氏名又は名称】森田 拓
(74)【代理人】
【識別番号】100116403
【弁理士】
【氏名又は名称】前川 純一
(74)【代理人】
【識別番号】100134315
【弁理士】
【氏名又は名称】永島 秀郎
(74)【代理人】
【識別番号】100162880
【弁理士】
【氏名又は名称】上島 類
(72)【発明者】
【氏名】シャコール,エリアス ルーダ
(72)【発明者】
【氏名】アシャーフ,サイード
(72)【発明者】
【氏名】リオン,マシュー ゲラード
(72)【発明者】
【氏名】ボースト,ジョセフ ピー
(72)【発明者】
【氏名】リオンズ,ロバート
【審査官】武貞 亜弓
(56)【参考文献】
【文献】特表2005-526193(JP,A)
【文献】特表2006-523269(JP,A)
【文献】特表2002-530445(JP,A)
【文献】米国特許出願公開第2004/0106726(US,A1)
(58)【調査した分野】(Int.Cl.,DB名)
B29B 11/16;15/08-15/14
C08J 5/04- 5/10;5/24
D06M 13/00-15/715
B29C 70/00-70/88
C08G 18/00-18/87
(57)【特許請求の範囲】
【請求項1】
強化熱硬化性ポリウレタン複合体を製造するための引抜成形方法であって、下記の工程:
a)複数の強化繊維を、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した重量平均分子量が≧800g/molから≦900,000g/molの範囲にあるポリエチレンイミン(ただし、部分的にアミド化されたポリアルキレンイミンを除く)であるサイジング剤を含有するサイジング組成物と接触させて、複数のサイジング処理強化繊維を得る工程と、
b)工程a)で得られた、複数のサイジング処理強化繊維に、(i)少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネート及び(ii)少なくとも1種のポリオールを含有する前駆体混合物を被覆して、複数の被覆されたサイジング処理強化繊維を得る工程と、
c)工程b)で得られた、複数の被覆されたサイジング処理強化繊維を、少なくとも一つのダイ及び少なくとも一つの加熱ゾーンに通過させて、強化熱硬化性ポリウレタン複合体を得る工程
を含むことを特徴とする引抜成形方法。
【請求項2】
前記複数の強化繊維が、ガラス繊維、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、天然繊維、ポリエステル繊維、ポリアラミド繊維、玄武岩繊維、及びナイロン繊維からなる群から選択される、請求項1に記載の引抜成形方法。
【請求項3】
前記サイジング組成物が、さらに、界面活性剤、溶媒、フィルム形成剤、潤滑剤、及び湿潤剤を含有する、請求項1に記載の引抜成形方法。
【請求項4】
工程a)、b)及びc)を中断することなく連続的に実施する、請求項1に記載の引抜成形方法。
【請求項5】
前記サイジング組成物が、≧1質量%から≦99質量%の少なくとも1種のサイジング剤及び≧0.1質量%から≦5質量%の少なくとも1種の界面活性剤を含有する、請求項1~4のいずれか一項に記載の引抜成形方法。
【請求項6】
前記少なくとも1種の界面活性剤が、エチレンオキシドとプロピレンオキシドに基づくブロックコポリマー、ステアリン酸エタノールアミド、ポリエチレングリコールエステル、エトキシル化ひまし油エステル、脂肪族モノアミン、芳香族ジアミン、アミンエトキシレート及びカチオン性脂肪アミドからなる群から選択される、請求項5に記載の引抜成形方法。
【請求項7】
前記エチレンオキシドとプロピレンオキシドに基づくブロックコポリマーが、エチレンジアミンポリオキシエチレンーポリオキシプロピレンブロックコポリマー及びエトキシル化アルコールからなる群から選択される、請求項6に記載の引抜成形方法。
【請求項8】
前記複数の強化繊維を、複数のサイジング処理強化繊維の総質量に基づいて≧0.01質量%から≦50質量%のサイジング組成物と接触させる、請求項1に記載の引抜成形方法。
【請求項9】
さらに、工程a)で得た複数のサイジング処理強化繊維を、≧35℃から≦200℃の範囲の温度で加熱することにより、該複数のサイジング処理強化繊維を乾燥させる工程を含む、請求項1に記載の引抜成形方法。
【請求項10】
前記前駆体混合物が、さらに、(iii)少なくとも1種の触媒、及び(iv)少なくとも1種の添加剤を含有する、請求項1に記載の引抜成形方法。
【請求項11】
前記熱硬化性ポリウレタン複合体が、少なくとも1種のポリオールと少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネートとの反応生成物である、請求項1に記載の引抜成形方法。
【請求項12】
前記少なくとも1種のポリオールが、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールからなる群から選択される、請求項1に記載の引抜成形方法。
【請求項13】
前記ポリエーテルポリオールが≧2から≦4の範囲の官能価を有する、請求項12に記載の引抜成形方法。
【請求項14】
前記ポリエーテルポリオールが≧30mgKOH/gから≦900mgKOH/gの範囲のヒドロキシル価を有する、請求項12に記載の引抜成形方法。
【請求項15】
前記ポリエーテルポリオールが、官能価が2でヒドロキシル価が≧30mgKOH/gから≦100mgKOH/gの範囲の第一ポリエーテルポリオールと官能価が3でヒドロキシル価が≧200mgKOH/gから≦450mgKOH/gの範囲の第二ポリエーテルポリオールとの混合物である、請求項12に記載の引抜成形方法。
【請求項16】
前記ポリエステルポリオールが≧2から≦4の範囲の官能価を有する、請求項12に記載の引抜成形方法。
【請求項17】
前記ポリエステルポリオールが≧30mgKOH/gから≦2000mgKOH/gの範囲のヒドロキシル価を有する、請求項12に記載の引抜成形方法。
【請求項18】
前記前駆体混合物が、前駆体混合物の総質量に基づいて、
(a)≧37質量%から≦60質量%の少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネート (b)≧10質量%から≦30質量%の少なくとも1種のポリオール、
(c)≧0.1質量%から≦1質量%の少なくとも1種の触媒、
(d)≧1質量%から≦9質量%の少なくとも1種の添加剤
を含有する、請求項10に記載の引抜成形方法。
【請求項19】
前記少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネート成分が、エチレンジイソシアネート、1,4-テトラメチレンジイソシアネート、1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート、1,12-ドデカンジイソシアネート、シクロブタン-1,3-ジイソシアネート、シクロヘキサン-1,3-及び1,4-ジイソシアネート、1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチル-シクロヘキサン、2,4-及び2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート、1,3-及び1,4-フェニレンジイソシアネート、2,4-及び2,6-トルエンジイソシアネート、ジフェニルメタン-2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート、ナフチレン-1,5-ジイソシアネート、トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート、ポリフェニル-ポリメチレン-ポリイソシアネート、ノルボルナンジイソシアネート、m-及びp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート、過塩素化アリールポリイソシアネート、カルボジイミド変性ポリイソシアネート、ウレタン変性ポリイソシアネート、アロファネート変性ポリイソシアネート、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート、尿素変性ポリイソシアネート、ビウレット含有ポリイソシアネート及びイソシアネート末端プレポリマーからなる群から選択される、請求項1に記載の引抜成形方法。
【請求項20】
前記少なくとも1種の添加剤が、内部離型剤、難燃剤、煙抑制剤、充填剤、染料、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、水捕捉剤、消泡剤及び紫外線安定剤からなる群から選択される、請求項10に記載の引抜成形方法。
【請求項21】
前記少なくとも1種の触媒が、有機カルボン酸の第一スズ塩、カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、ネオデカン酸フェニル水銀、ビスマスカルボキシレート、及び第三級アミンからなる群から選択される、請求項10に記載の引抜成形方法。
【請求項22】
工程b)で、前記サイジング処理強化繊維を前駆体混合物と複数のサイジング処理強化繊維の表面で反応させる、請求項1に記載の引抜成形方法。
【請求項23】
前記少なくとも一つの加熱ゾーンが加熱ゾーン(Z1)、(Z2)及び(Z3)を含む、請求項1に記載の引抜成形方法。
【請求項24】
前記加熱ゾーン(Z1)が≧135℃から≦180℃の範囲の温度を有し、前記加熱ゾーン(Z2)が≧150℃から≦180℃の範囲の温度を有し、前記加熱ゾーン(Z3)が≧180℃から≦210℃の範囲の温度を有する、請求項23に記載の引抜成形方法。
【発明の詳細な説明】
【技術分野】
【0001】
本主題は、強化熱硬化性ポリウレタン複合体(コンポジット)を製造する引抜成形方法に関する。本主題は、特に、引抜成形方法にインライン化した繊維サイジング処理を同時に最適化する引抜成形方法に関する。
【背景技術】
【0002】
近年、複合構造体を形成するための引抜成形法の使用が、かかる構造体を継続的に製造することができることから、ますますその普及が進んでいる。また、強化複合体は、自動車部品、船体、及び釣り竿などの用途で人気が高まっている。強化高分子複合体は、高分子マトリックス材料、強化材料、又は他の所望の構成成分から種々の方法で形成される。一般に、樹脂を繊維、粒子、及びその他の固体と組み合わせて強化複合体を製造する。引抜成形プロセスを含む、繊維強化複合体の製造方法がよく知られている。従来、このような方法に用いる繊維は繊維製造業者のもとでサイジング処理が施されていて、特定用途での化学的性質が制約を受けている。そこで、繊維の表面処理を効果的に改変修正するため、繊維を複合材料の最終特性により適合させる方法で当該繊維についてサイジング処理のし直し(リサイジング)が行われている。このような場合、リサイジング処理した繊維は、複合体製造プロセス用の新しく、しかも特別な原料フィードストックとして取り扱われることとなり、新しい部品番号のように管理し保管する必要がある。そうすると、リサイジング処理を施した繊維の在庫管理及び部品管理に高いコストが掛かることになる。
【0003】
当該技術水準によれば、繊維強化複合体を製造するための引抜成形法が知られており、例えば、以下の参考文献に記載されている。
【0004】
米国特許第9,574,056 B2には、サイジング組成物を複数の繊維に塗布してサイジング処理した繊維を作製することにより繊維強化熱可塑性ポリウレタン複合体を製造する方法であって、そのサイジング組成物が熱可塑性ポリウレタン複合体用の少なくとも1種の硬化剤を含む方法が記載されている。この方法では、サイジング用の硬化剤としてプレポリマー及び樹脂が用いられている。
【0005】
米国特許第5,294,461号には、ミキサーでポリマー前駆体を組み合わせ、得られた混合物を含浸チャンバーに連続的に導入し、続いて重合が起こるダイに通して所望の複合物を形成する工程を含む、繊維強化ポリマー複合体を調製する引抜成形プロセスが記載されている。
【0006】
米国出願公開2011/0045275 A1には、重合化合物及び開始剤化合物を含むサイジング組成物で繊維を処理し、その後、処理した繊維を予備重合組成物に導入することにより繊維強化複合品を製造する方法が記載されている。
【0007】
しかし、これらすべての方法では、複合材料に必要な最終特性を満たすために、繊維に対して再度サイジング処理が別途行われている。さらに、従来技術の複合材料中で繊維とマトリックスとが相互作用を行うと、その相互作用を制御するか又は最適化する機会がほとんどないか又は全くない状態で、ある機械的特性が界面によって直接影響を受けることを示している。さらに、これらの方法の欠点は、繊維を別途再度サイジング処理することで、これらの繊維の化学上その適用性が制限され、在庫管理と保守管理を行うために高い資本コストが発生することである。さらに、このような場合は、一般に、大きなクリールが必要であり、表面処理が異なる源(ソース)繊維は特定の物理的な場所に配置する必要があるが、こうすることは、作業員によるミスを誘発する潜在的原因となり、また、最終的な強化ポリウレタン複合体の性能にも大きな影響を与える可能性がある。さらに、保管中又はクリールに取り付けている間にも発生する可能性のある、湿気、ほこり、又は他の異物などの原因により繊維が汚染する可能性がある。したがって、繊維にサイジング処理を施すための最適化方法を備えた、強化熱硬化性ポリウレタン複合体を製造するための、改良された引抜成形方法が必要となる。
【先行技術文献】
【特許文献】
【0008】
【文献】米国特許第9,574,056 B2
【文献】米国特許第5,294,461号
【文献】米国出願公開2011/0045275 A1
【発明の概要】
【発明が解決しようとする課題】
【0009】
概要
本主題の目的は、強化熱硬化性ポリウレタン複合体を製造する、改善された引抜成形方法、及び、その引抜成形方法に沿った連続的繊維サイジング処理の同時最適化を提供することである。
【0010】
本主題の別の目的は、複合体製造方法、特に引抜成形方法と同時に体系的に結合することができるリサイジング処理を施す中間方法を提供することである。
【0011】
本主題の更なる目的は、例えば、エネルギー吸収が改善されていること、たわみ性が大きいこと、又は高強度であることなどの、特定用途に固有の特性を調整するパラメータ、例えば、サイジング処理を施した繊維の充填濃度、リサイジング剤の装填濃度、乾燥温度を最適化するための引抜成形方法を提供することである。
【0012】
本主題の更なる目的は、繊維の表面特性を改変することを目的とする1種又は複数種のリサイジング剤又はサイジング剤を導入することにより、高パーセンテージのサイジング処理のための改善された引抜成形方法を提供することである。本主題に係るサイジング剤は、引抜成形方法との適合性が高く、繊維とマトリックスとの間の界面及び相容性の向上を促進する。
【課題を解決するための手段】
【0013】
したがって、本主題の第1の態様では、強化熱硬化性ポリウレタン複合体を製造する引抜成形方法は、以下の工程:
a)複数の強化繊維を、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した重量平均分子量が≧800g/molから≦1,000,000g/molの範囲にある少なくとも1種のポリイミンから選択される少なくとも1種のサイジング剤を含有するサイジング組成物と接触させて、複数のサイジング処理強化繊維を得る工程と、
b)工程a)で得られた、複数のサイジング処理強化繊維に、(i)少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネート及び(ii)少なくとも1種のポリオールを含有する前駆体混合物を被覆して、複数の被覆されたサイジング処理強化繊維を得る工程と、
c)工程b)で得られた、複数の被覆されたサイジング処理強化繊維を、少なくとも一つのダイ及び少なくとも一つの加熱ゾーンに通過させて、強化熱硬化性ポリウレタン複合体を得る工程
を含む。
【0014】
本主題の一実施形態では、複数の強化繊維は、ガラス繊維、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、天然繊維、ポリエステル繊維、ポリアラミド繊維、玄武岩(バサルト)繊維、及びナイロン繊維からなる群から選択される。
【0015】
本主題の別の実施形態では、サイジング組成物は、さらに、界面活性剤、溶媒、フィルム形成剤、潤滑剤、及び湿潤剤を含有する。
【0016】
本主題のさらに別の実施形態では、a)複数の強化繊維を、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した重量平均分子量が≧800g/molから≦1,000,000g/molの範囲にある少なくとも1種のポリイミンから選択される少なくとも1種のサイジング剤を含有するサイジング組成物と接触させて、複数のサイジング処理強化繊維を得る工程と、b)工程a)で得られた、複数のサイジング処理強化繊維に、(i)少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネート及び(ii)少なくとも1種のポリオールを含有する前駆体混合物を被覆して、複数の被覆されたサイジング処理強化繊維を得る工程と、c)工程b)で得られた、複数の被覆されたサイジング処理強化繊維を、少なくとも一つのダイ及び少なくとも一つの加熱ゾーンに通過させて、強化熱硬化性ポリウレタン複合体を得る工程とは、中断することなく連続的に行われる。
【0017】
本主題の別の実施形態では、サイジング組成物は、≧1質量%から≦99質量%の少なくとも1種のサイジング剤及び≧0.1質量%から≦5質量%の少なくとも1種の界面活性剤を含有する。
【0018】
本主題の更なる実施形態では、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した重量平均分子量が≧800g/molから≦1,000,000g/molの範囲にあるポリイミンはポリアルキレンイミンである。
【0019】
本主題の別の実施形態では、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した重量平均分子量が≧800g/molから≦1,000,000g/molの範囲にあるポリアルキレンイミンは、ポリエチレンイミン及び変性ポリエチレンイミンからなる群から選択される。
【0020】
本主題の更なる実施形態では、少なくとも1種の界面活性剤は、エチレンオキシドとプロピレンオキシドに基づくブロックコポリマー、ステアリン酸エタノールアミド、ポリエチレングリコールエステル、エトキシル化ひまし油エステル、脂肪族モノアミン、芳香族ジアミン、アミンエトキシレート及びカチオン性脂肪アミドからなる群から選択される。
【0021】
本主題のさらに別の実施形態では、エチレンオキシドとプロピレンオキシドに基づくブロックコポリマーは、エチレンジアミンポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー及びエトキシル化アルコールからなる群から選択される。
【0022】
本主題の別の実施形態では、複数の強化繊維を、複数のサイジング処理強化繊維の総質量に基づいて≧0.01質量%から≦50質量%のサイジング組成物と接触させる。
【0023】
本主題の更なる実施形態では、引抜成形方法は、さらに、工程a)で得た複数のサイジング処理強化繊維を、≧35℃から≦200℃の範囲の温度で加熱することにより、該複数のサイジング処理強化繊維を乾燥させる工程を備える。
【0024】
本主題の別の実施形態では、前駆体混合物は、さらに、(iii)少なくとも1種の触媒、及び(iv)少なくとも1種の添加剤を含有する。
【0025】
本主題の別の実施形態では、前駆体混合物は、さらに、(iii)少なくとも1種の触媒、及び(iv)少なくとも1種の添加剤、及び(v)少なくとも1種の鎖延長剤を含有する。
【0026】
本主題のさらに別の実施形態では、熱硬化性ポリウレタン複合体は、少なくとも1種のポリオールと少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネートとの反応生成物である。
【0027】
本主題の好適な実施形態では、少なくとも1種のポリオールは、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールからなる群から選択される。
【0028】
本主題の別の実施形態では、ポリエーテルポリオールは≧2から≦4の範囲の官能価を有する。
【0029】
本主題の更なる実施形態では、ポリエーテルポリオールは≧30mgKOH/gから≦900mgKOH/gの範囲のヒドロキシル価を有する。
【0030】
本主題のさらに別の実施形態では、ポリエーテルポリオールは、官能価が2でヒドロキシル価が≧30mgKOH/gから≦100mgKOH/gの範囲の第一ポリエーテルポリオールと官能価が3でヒドロキシル価が≧200mgKOH/gから≦450mgKOH/gの範囲の第二ポリエーテルポリオールとの混合物である。
【0031】
本主題の別の実施形態では、ポリエステルポリオールは≧2から≦4の範囲の官能価を有する。
【0032】
本主題の更なる実施形態では、ポリエステルポリオールは≧30mgKOH/gから≦2000mgKOH/gの範囲のヒドロキシル価を有する。
【0033】
本主題のさらに別の実施形態では、前駆体混合物は、前駆体混合物の総質量に基づいて、
(i)≧37質量%から≦60質量%の、少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネート、
(ii)≧10質量%から≦30質量%の、少なくとも1種のポリオール、x′
(iii)≧0.1質量%から≦1質量%の、少なくとも1種の触媒、
(iv)(iv)≧1質量%から≦9質量%の、少なくとも1種の添加剤
を含有する。
【0034】
本主題の別の実施形態では、少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネート成分は、芳香族ジイソシアネート、カルボジイミド変性芳香族ジイソシアネート、カルボジイミド変性ポリイソシアネート、ウレタン変性ポリイソシアネート、イソシアヌレート変性ポリイソシアネート、尿素変性ポリイソシアネート、ビウレット含有ポリイソシアネート、及びイソシアネート末端プレポリマーからなる群から選択される。
【0035】
本主題のさらに別の実施形態では、少なくとも1種の添加剤は、内部離型剤、難燃剤、煙抑制剤、充填剤、染料、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、水捕捉剤、消泡剤及び紫外線(UV)安定剤からなる群から選択される。
【0036】
本主題の更なる実施形態では、少なくとも1種の触媒は、有機カルボン酸の第一スズ塩、カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、ネオデカン酸フェニル水銀、ビスマスカルボキシレート、及び第三級アミンからなる群から選択される。
【0037】
本主題の別の実施形態では、引抜成形方法に用いるサイジング処理強化繊維はプレーン(平面plane)強化繊維と組み合わせて被覆するものである。
【0038】
本主題のさらに別の実施形態では、サイジング処理強化繊維は、プレーン強化繊維(平面強化繊維と、≧35から≦80の質量比で組み合わせて使用する。

【0039】
本主題の更なる実施形態では、少なくとも1種のサイジング剤は、複数のサイジング処理強化繊維の表面で前駆体混合物と反応させる。
【0040】
本主題の別の実施形態では、引抜成形方法において複数の被覆されたサイジング処理強化繊維を通過させる少なくとも一つの加熱ゾーンは、加熱ゾーン(Z1)、(Z2)及び(Z3)を備える。
【0041】
本主題の好適な実施形態では、加熱ゾーン(Z1)は≧135℃から≦180℃の範囲の温度を有し、加熱ゾーン(Z2)は≧150℃から≦180℃の範囲の温度を有し、加熱ゾーン(Z3)は≧180℃から≦210℃の範囲の温度を有する。
【0042】
本主題の引抜成形方法の利点は、強化熱硬化性ポリウレタン複合体の製造中に、繊維のリサイジング処理を連続的に行うことを可能にすることである。本主題の特定のサイジング剤は、強化熱硬化性ポリウレタン複合体の特性を改善する意図に適合した方法で強化繊維及びマトリックスと相互作用するように開発されている。したがって、本主題の引抜成形方法は、この方法を使用して製造した強化熱硬化性ポリウレタン複合体の機械的特性を改善するという追加の利点を実現する。一般に、本主題に係る方法によって製造される強化熱硬化性ポリウレタン複合体は、特に限定されるものではない。本主題の他の目的、利点及び用途は、以下の詳細な説明及び添付の特許請求の範囲から当業者に明らかとなる。
【発明を実施するための形態】
【0043】
詳細な説明
以下の詳細な説明は、本質的に単なる例示であり、本主題又は本主題の用途及び使用を限定することを意図するものではない。さらに、前述の技術分野、背景、概要、又は以下の詳細な説明で提示した理論に拘束されることを意図するものでもない。
【0044】
本主題は、強化熱硬化性ポリウレタン複合体を製造するための引抜成形方法に関する。一般に、引抜成形プロセスは、一定の断面を持つ繊維強化異形材を作るのに使用することができる。引抜プラントは、通常、含浸装置、加熱ダイ、及びプロセスの連続性を担う取出しシステムで構成される。繊維の含浸は、オープンバス又は注入用密閉ボックスで行う。ここで、強化材料、例えば繊維が樹脂で濡らされる。次に、複合材が加熱されたダイ内で成形され硬化される。取出しシステムでは、完成した異形材をダイから引き抜き、最終的に所望の長さに切断する。
【0045】
強化熱硬化性ポリウレタン複合体を製造するための本主題による引抜成形方法(P)は、下記の工程と、必要に応じて、以下に説明する追加の工程とを含む。
【0046】
引抜成形方法(P)は、サイジングチャンバーを通して複数の連続強化繊維のロービング又はトウを連続的に引っ張る工程を含む。複数の強化繊維は、高割合のサイジング処理を達成するために、サイジングの前に高張力引抜き器具を通して広げる。複数の連続強化繊維の引張速度は≧0.3m/分から≦3m/分の範囲である。
【0047】
本主題の実施形態では、引抜成形方法(P)は、複数の強化繊維を、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した重量平均分子量が≧800g/molから≦1,000,000g/molの範囲にある少なくとも1種のポリイミンから選択される少なくとも1種のサイジング剤を含有するサイジング組成物と接触させて、複数のサイジング処理強化繊維を得る工程を含む。複数の強化繊維はポリイミンで被覆され、含浸チャンバーに送られる。中間工程段階で強化繊維に塗布するポリイミンにより、その繊維が最終的な複合材料の最終特性により適したものとなるように、その表面処理が効果的に改変される。ポリイミンは、すべての繊維に適用することも、また、複合材料の特定の部分に配置する目的の繊維にのみ適用することもできる。中間工程段階は、インライン式の工程(in-line step)として導入することができる。つまり、複合体製造の引抜成形方法で中断することなく連続的に実施することができる。本主題について本明細書で使用する「インライン」という用語は、複合体製造引抜成形方法において中断することなく連続的に繊維のサイジング処理を行うことを意味する。
【0048】
得られた複数のサイジング処理した強化繊維を、(i)少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネート及び(ii)少なくとも1種のポリオールを含む前駆体混合物と接触させて、含浸チャンバー内で複数の被覆したサイジング処理強化繊維を得る。複数のサイジング処理した強化繊維は、複数のサイジング処理した強化繊維の表面で前駆体混合物と反応させる。前駆体混合物による繊維の完全な濡れが含浸チャンバーで生ずる。前駆体混合物中のジイソシアネート又はポリイソシアネート及びポリオールは重合してポリウレタンになる。加えたポリイミンはマトリックスの一部となり、強化繊維の表面に配置する。強化繊維の表面に存在するポリイミンは、二つの方法でバリアとして機能する。一つの方法としては、ポリイミンはポリウレタンと反応して強化繊維のその外層で重合反応を停止させることができる。別の方法では、ポリイミンはポリウレタンに干渉することでバリアとして機能し、両立可能な繊維のサイジング処理に対応する。
【0049】
サイジング処理された強化繊維は、乾燥チャンバーを通過し、≧35℃から≦200℃の範囲の温度で加熱されて、乾燥したサイジング処理強化繊維が得られる。乾燥したサイジング処理強化繊維及び前駆体混合物は、その後、含浸チャンバーを通過し、そこでサイジング処理強化繊維は前駆体混合物で被覆される。含浸チャンバーの条件としては、実質的に重合が起こらないようなものである。
【0050】
複数の強化繊維としては、直径が≧5.0ミクロンから≦30.0ミクロンであり、個々の長さが≧5.0mmから≦50.0mmの断片に切断することができる繊維から選択する。複数の強化繊維としては、≧10.0ミクロンから≦20.0ミクロンの直径及び≧20mmから≦35mmの長さを有することが好ましい。
【0051】
複数の強化繊維は、複数のサイジング処理した強化繊維の総質量に基づいて≧0.01質量%から≦50質量%のサイジング組成物と接触させる。サイジング組成物は、少なくとも1種のポリイミンから選択される少なくとも1種のサイジング剤を含有する。ポリイミンは、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した重量平均分子量が≧800g/molから≦1,000,000g/molの範囲にあるものからなる群から選択する。なお、ポリイミンは、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した重量平均分子量が≧800から≦900,000g/molの範囲にあるものからなる群から選択することが好ましい。また、ポリイミンは、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した重量平均分子量が≧800g/molから≦750,000g/molの範囲にあるものからなる群から選択することがより好ましい。最も好ましいのは、ポリイミンとして、ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定した重量平均分子量が≧800g/molから≦250,000g/molの範囲にあるものからなる群から選択することである。ポリイミンとしてはポリアルキレンイミンであることが好ましい。
【0052】
ポリイミン、特にポリアルキレンイミンは、直鎖状又は分枝状であってもよい。ポリアルキレンイミンは、好ましくは、直鎖又は分岐ポリ(C2~C4-アルキレンイミン)、より好ましくは、直鎖又は分岐ポリプロピレンイミン、直鎖又は分岐ポリ(エチレンイミン-コ-プロピレンイミン)又は直鎖又は分岐ポリエチレンイミン、又はそれらの混合物である。さらにより好ましくは、ポリアルキレンイミンは、直鎖又は分岐ポリエチレンイミンである。
【0053】
サイジング組成物は、適切な従来の方法によって複数の強化繊維と接触させることができる。例えば、サイジング組成物は、ベルトアプリケータを含む種々の静的又は動的塗布器、スプレー手段、ディッピング手段又は他の適切な手段を用いて、複数の強化繊維と接触させることができる。複数の繊維にサイジング処理をした後、その繊維を巻いてロービングパッケージとし、乾燥させることができるし、又は細断してチョップド繊維ストランドを形成することもできる。
【0054】
ポリアルキレンイミンとしては、ポリエチレンイミン及び変性ポリエチレンイミンからなる群から選択する。変性ポリエチレンイミンは、カルボキシアルコキシル化、アルコキシル化、アミド化により、又はポリマー主鎖で修飾することにより、疎水性、親水性、両親媒性、又は両性にしたものである。
【0055】
サイジング組成物は、後続の処理工程、例えば、繊維及びストランドを成形パッケージ上に巻き付けるとき、サイジングした繊維を乾燥させて水及び/又は他の溶媒を除去するとき、又は繊維表面上の膜形成成分を溶解するとき、1つのパッケージからボビンに撚るとき、通常は布地の経糸として使用されるヤーンを非常に大きなパッケージに配置する下巻き(beaming)を行うとき、湿った状態又は乾いた状態で細断するとき、ストランドをより大きな束又は集まりにロービングするとき、巻き出しするとき、及びその他の下流プロセス工程のときように、繊維が接触点を通過する各工程で、繊維に対する保護をもたらすものである。さらに、サイジング組成物は、繊維強化プラスチックの製造の際に、高分子マトリックスを強化する繊維上に配置するとき二重の役割を果たすことができる。このような用途では、サイジング組成物は繊維とマトリックスポリマーとの間に保護並びに相容性及び/又は化学結合をもたらすことができる。従来のサイジング組成物は、典型的には、1種又は複数種のフィルム形成用ポリマー又は樹脂成分と、液体媒体に溶解又は分散した1種又は複数種の潤滑剤を含有する。サイジング組成物のフィルム形成成分は、繊維を埋め込むためのマトリックス樹脂(複数の樹脂を含む)と適合するように選択するのが望ましい。
【0056】
複数の強化繊維は、ガラス繊維、セラミック繊維、金属繊維、カーボンナノチューブ、炭素繊維、ポリエステル繊維、天然繊維、アラミド繊維、ポリエステル繊維、ポリアラミド繊維、ナイロン繊維、玄武岩繊維、ホウ素繊維、炭化ケイ素繊維、アスベスト繊維、ウィスカ、硬質粒子、金属繊維、又はそれらの任意の組み合わせからなる群から選択する。複数の強化繊維は、ガラス繊維、セラミック繊維、金属繊維、炭素繊維、天然繊維、ポリエステル繊維、ポリアラミド繊維、玄武岩繊維及びナイロン繊維からなる群から選択することが好ましい。複数の強化繊維は、ガラス繊維及び炭素繊維からなる群から選択することがより好ましい。繊維としては、繊維マット、連続繊維、引抜成形棒など、あらゆる形態の繊維から選択できる。繊維は、単軸及び/又は多軸の、織り及び/又は不織の、連続及び/又はチョップドストランドマット又はそれらの組合せとして配置することができる。マットには、織り方が異なる複数の区域があってもよく、また、織り区域と不織区域との組合せがあってもよい。さらに、マットは、繊維が組み込まれた領域を有することができ、これにより、例えば、複合体の予め選択した部分(複数の部分を含む)の、ウエットアウト及びサイジング剤浸透をより一層良好なものとすることができる。
【0057】
前駆体混合物は、(i)少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネート及び(ii)少なくとも1種のポリオールを含有する。前駆体混合物は、(iii)少なくとも1種の触媒、及び(iv)少なくとも1種の添加剤をさらに含有する。熱硬化性ポリウレタン複合体は、少なくとも1種のポリオールと少なくとも1種のジ-イソシアネート又はポリイソシアネートとの反応生成物である。一実施形態では、熱硬化性ポリウレタン複合体は、ポリイソシアネート成分とイソシアネート反応性成分のみの反応生成物である。ポリイソシアネート成分及びイソシアネート反応性成分は、必要に応じて、いずれかの添加剤と予備混合することができる。
【0058】
ジ-又はポリイソシアネート成分に関して、適切なジ-及びポリイソシアネートは当業者に知られており、未変性イソシアネート、変性ポリイソシアネート、及びイソシアネートプレポリマーが含まれる。そのような有機ポリイソシアネートには、例えばJustus Liebigs Annalen der Chemie、562、75~136頁に、W.Siefkenにより記載されている種類の脂肪族、脂環式、芳香脂肪族、芳香族、及び複素環式ポリイソシアネートが含まれる。
【0059】
かかるイソシアネートの具体例には、式Q(NCO)nで表されるものが含まれる。この式中、nは2~5、好ましくは2~3の数であり、Qは2~18個、好ましくは6~10個の炭素原子を含有する脂肪族炭化水素基;4~15個、好ましくは5~10個の炭素原子を含有する脂環式炭化水素基;8~15個、好ましくは8~13個の炭素原子を含有する芳香脂肪族炭化水素基;又は6~15個、好ましくは6~13個の炭素原子を含有する芳香族炭化水素基である。
【0060】
適切なジイソシアネート及びポリイソシアネートの具体例として、エチレンジイソシアネート;1,4-テトラメチレンジイソシアネート;1,6-ヘキサメチレンジイソシアネート;1,12-ドデカンジイソシアネート;シクロブタン-1,3-ジイソシアネート;シクロヘキサン-1,3-及び1,4-ジイソシアネート、並びにこれらの異性体の混合物;1-イソシアナト-3,3,5-トリメチル-5-イソシアナトメチルシクロヘキサン(イソホロンジイソシアネート;例えばドイツ公告公報1,202,785及び米国特許第3,401,190号);2,4-及び2,6-ヘキサヒドロトルエンジイソシアネート及びこれらの異性体の混合物;ジシクロヘキシルメタン-4,4’-ジイソシアネート(水素化MDI、又はHMDI);1,3-及び1,4-フェニレンジイソシアネート;2,4-及び2,6-トルエンジイソシアネート及びこれらの異性体の混合物(TDI);ジフェニルメタン-2,4’-及び/又は4,4’-ジイソシアネート(MDI);ナフチレン-1,5-ジイソシアネート;トリフェニルメタン-4,4’,4’’-トリイソシアネート;アニリンをホルムアルデヒドと縮合させ、続いてホスゲン化を行うことにより得られるタイプのポリフェニル-ポリメチレン-ポリイソシアネート(粗製MDI)(例えば、GB878,430及びGB848,671に記載されている);米国特許第3,492,330号に記載されているようなノルボルナンジイソシアネート;米国特許第3,454,606号に記載されているタイプのm-及びp-イソシアナトフェニルスルホニルイソシアネート;例えば米国特許第3,227,138号に記載されているタイプの過塩素化アリールポリイソシアネート;米国特許第3,152,162号に記載されているタイプのカルボジイミド基を含有する変性ポリイソシアネート;例えば米国特許第3,394,164号及び3,644,457号に記載されているタイプのウレタン基を含有する変性ポリイソシアネート;例えば、GB994,890、BE761,616、及びNL7,102,524に記載されているタイプのアロファネート基を含有する変性ポリイソシアネート;例えば米国特許第3,002,973号、ドイツ特許第1,022,789号、1,222,067号及び1,027,394号、及びドイツ公開公報1,919,034及び2,004,048に記載されているタイプのイソシアヌレート基を含有する変性ポリイソシアネート;ドイツ特許第1,230,778号に記載されているタイプの尿素基を含有する変性ポリイソシアネート;例えば、ドイツ特許第1,101,394号、米国特許第3,124,605号及び3,201,372号、及びGB889,050に記載されているタイプのビウレット基を含むポリイソシアネー;例えば米国特許第3,654,106号に記載されているタイプのテロマー化反応により得られるポリイソシアネート;例えば、GB965,474及びGB1,072,956、米国特許第3,567,763号、及びドイツ特許第1,231,688号に記載されているタイプのエステル基を含有するポリイソシアネート;ドイツ特許第1,072,385号に記載されている、上記のイソシアネートとアセタールとの反応生成物;及び米国特許第3,455,883号に記載されているタイプの高分子脂肪酸基を含有するポリイソシアネートが挙げられる。また、商業的規模のイソシアネート製造で蓄積するイソシアネート含有蒸留残留物を、場合により上記の1種以上のポリイソシアネート中の溶液で使用することも可能である。さらに、当業者には、上記のポリイソシアネートの混合物を使用することも可能であることが分かる。
【0061】
イソシアネート末端プレポリマーも本発明で使用することができる。プレポリマーは、過剰な有機ポリイソシアネート又はその混合物を、「Journal of the American Chemical Society」、49、3181(1927)におけるKohlerの解説による、既知のツェレビチノフ(Zerewitinoff)テストで測定される少量の活性水素含有化合物と反応させることで調製することができる。これらの化合物及びその調製方法は、当業者によく知られている。特定の活性水素化合物の使用が重要なのではなく、かかる化合物はいずれも、本発明の実施に使用することができる。
【0062】
ジ-又はポリイソシアネート成分は、好ましくは、≧1.8から≦4.0、より好ましくは≧2.0から≦3.0、最も好ましくは≧2.3から≦2.9の数平均イソシアネート(NCO)官能価を有する有機ポリイソシアネートを含む。ポリイソシアネート組成物のNCO官能価は、明記した数値を含む、これらの数値の任意の組合せの間の範囲の量であることができる。ポリイソシアネート成分は、好ましくは、≧5質量%から≦50質量、より好ましくは≧8質量%から≦40質量%、最も好ましくは≧9質量%から≦35質量%の範囲の遊離イソシアネート基含有量(NCO含有量)を有する。ポリイソシアネート組成物のNCO含有量は、明記した数値を含めて、これらの数値の任意の組合せの間の範囲の量であることもできる。
【0063】
ポリオールは、ポリエーテルポリオール及びポリエステルポリオールからなる群から選択される。ポリエーテルポリオールは、官能価が2でヒドロキシル価が≧30mgKOH/gから≦100mgの第一ポリエーテルポリオールと、官能価が3でヒドロキシル価が≧200mgKOH/gから≦450mgKOH/gの範囲の第二ポリエーテルポリオールとの混合物である。ポリエーテルポリオールは、≧2から≦4の範囲の官能価を有し、≧30mgKOH/gから≦900mgKOH/gの範囲のヒドロキシル価を有することが好ましい。また、ポリエステルポリオールは、≧2から≦4の範囲の官能価を有し、≧30mgKOH/gから≦2000mgKOH/gの範囲のヒドロキシル価を有することが好ましい。
【0064】
本主題によれば、前駆体混合物は少なくとも1種の鎖延長剤を含む。鎖延長剤は、ゲル浸透クロマトグラフィーによって決定した分子量が≧60g/molから≦200g/molの範囲にあるポリオールから選択する。架橋剤の例としては、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4-ブタンジオール、1,3-ブタンジオール、トリプロピレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、又はそれらの混合物などの単純なグリコール及びトリオールがある。
【0065】
イソシアネート反応性成分は、1種以上の複金属シアン化物(「DMC」)触媒ポリオールからなる群から選択する。DMC-触媒ポリオールを製造するのに適した化合物は、活性水素原子を有する化合物である。好適な化合物には、18~2,000ダルトン、より好ましくは32~2,000ダルトンの数平均分子量を有し、かつ、1~8個のヒドロキシル基を有する化合物が含まれる。いずれの単官能性又は多官能性活性水素化合物も、イソシアネート反応性成分に含めるためにオキシアルキル化してもよい。適切な単官能性開始剤には、メタノール、エタノール、プロパノール、ブタノール、ペンタノール、フェノール、C6~C36分岐又は直鎖アルコール、並びにポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール、及びポリオキシアルキレングリコールコポリマーの単官能性エーテルが含まれるが、これらに限定されない。多官能性開始剤には、水、エチレングリコール、プロピレングリコール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、トリプロピレングリコール、プロパンジオール、グリセリン、トリメチロールプロパン、ブタンジオール異性体、ペンタエリスリトール、ポリプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリブチレングリコール、及びポリオキシアルキレングリコールコポリマーが含まれるが、これらに限定されない。イソシアネート反応性成分に含まれるDMC-触媒ポリオールの製造に有用なアルキレンオキシドには、エチレンオキシド、プロピレンオキシド、1,2-及び2,3-ブチレンオキシド、イソブチレンオキシド、エピクロロヒドリン、シクロヘキセンオキシド、スチレンオキシド、及び、C5~C30α-アルキレンオキシドなどの高級アルキレンオキシドが含まれるが、これらに限定されない。
【0066】
触媒としては、有機カルボン酸の第一スズ塩、カルボン酸のジアルキルスズ(IV)塩、ネオデカン酸フェニル水銀、カルボン酸ビスマス、第三級アミン、第三級アミン酸塩、有機金属塩、共有結合した有機金属化合物、及びこれらの組合せからなる群から選択する。好適な第三級アミン触媒には、トリエチレンジアミン、N,N-ジメチルシクロヘキシルアミン、ビス-(ジメチルアミノ)-ジエチルエーテル、N-エチルモルホリン、N,N,N’,N’,N’’-ペンタメチルジエチレントリアミン、N,N-ジメチルアミノプロピルアミン、N-ベンジルジメチルアミン、及び、N,N-ジメチルアミノプロピルアミンとステアリン酸、オレイン酸、ヒドロキシステアリン酸及びジヒドロキシルステアリン酸とのアミドのような、カルボン酸の脂肪族第三級アミン含有アミドが含まれる。適切な第三級アミン酸塩触媒には、ギ酸、酢酸、2-エチルヘキサン酸、オレイン酸、又はオリゴマー化オレイン酸を、トリエチレンジアミン、トリエタノールアミン、トリイソプロパノールアミン、N-メチルジエタノールアミン、N,N-ジメチルエタノールアミン、これらアミンの混合物などの三級アミンで少なくとも部分的に中和することによって調製されるものが含まれる。触媒としての使用に好適な有機金属塩には、カリウム2-エチルヘキサノエート(カリウム「オクトエート」)、オレイン酸カリウム、酢酸カリウム、水酸化カリウム、ビスマスオクトエート、ネオデカン酸亜鉛、ジブチルスズジラウレート、ジブチルスズジアセテート、及びジブチルスズジオレート、及び他の有機スズカルボキシレート触媒が含まれる。
【0067】
本主題の触媒は、カルボン酸亜鉛、ステアリン酸亜鉛及びネオデカン酸亜鉛などの他の金属ベースの触媒、並びにカルボン酸ビスマスから選択される。本主題での使用に適した他の触媒には、N,N-ジメチルプロパンジミン(propanedimine)と脂肪カルボン酸とのアミド化(amidization)反応から誘導されるアミドアミン化合物が含まれる。
【0068】
添加剤は、繊維充填剤、内部離型剤、難燃剤、煙抑制剤、染料、顔料、帯電防止剤、酸化防止剤、紫外線(UV)安定剤、水捕捉剤、消泡剤、少量の粘度低下不活性希釈剤、これらの組合せ、及び当該技術分野の他の既知の添加剤からなる群から選択する。充填剤としては、炭酸カルシウム、硫酸バリウム、粘土、アルミニウム三水和物、酸化アンチモン、ミルドグラスファイバー、ウォラストナイト、タルク、マイカ、フレークガラス、シリカ、二酸化チタン、モレキュラーシーブ、微粉化ポリエチレン、モレキュラーシーブなどの水分捕捉剤;ポリジメチルシロキサンなどの消泡剤;及びそれらの組合せからなる群から選択する。粘土や微細シリカなどの微粒子充填剤がチキソトロープ添加剤としてよく使用できる。このような粒子状充填剤は、樹脂使用量を減らすための増量剤としても機能することがある。また、難燃剤は、時により引抜成形複合体に用いる添加剤として望まれる場合がある。好適な難燃剤タイプの具体例には、リン酸トリアリール;リン酸トリアルキル、特にハロゲン元素を持つもの;メラミン(充填剤として);メラミン樹脂(少量の);ハロゲン化パラフィン及びそれらの組合せが含まれるが、これに限定されない。
【0069】
添加剤は、それ自体多官能性イソシアネート反応性物質ではなく、イソシアネート反応性成分と混合した場合でも後者とは別の実体となる。同様に、任意的な添加剤又はその一部分をポリイソシアネート成分と予備混合する場合、前者は、それら自体が多官能性イソシアネート種である場合を除いて、ポリイソシアネート成分とは別個の実体となる。
【0070】
少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネート及び少なくとも1種のポリオールを含有する前駆体混合物の化学量論は、多くの場合、当技術分野ではイソシアネート指数として知られる量で表す。このような混合活性化前駆体混合物の当該指数は、単純に、存在する反応性イソシアネート(-NCO)基の総数の、イソシアネート反応性基(プロセスで採用する条件下でイソシアネートと反応できる基、例えばヒドロキシル基など)の総数に対する比である。多くの場合、この数量は100倍され、パーセントで表される。本発明での使用に適した前駆体混合物中の好適なイソシアネート指数値は70~150%の範囲である。また、この指数値のより好適な範囲は90~125%である。
【0071】
本発明との関連では、少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネートと少なくとも1種のポリオールとは、特に10~70℃の温度で均一に混和性であることが好ましい。均一混和性は、成分を完全に混合した後に相分離が全く見られないことによって決まる。前駆体混合物が均一であることにより、含浸中の繊維被覆コーティングの均一性が向上し、処理速度も向上する。
【0072】
本発明のさらに好適な実施形態によれば、前駆体混合物は、少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネート及び少なくとも1種のポリオールを30秒間混合した後、25℃で700mPas以下の粘度、特に600mPas以下の粘度を有する。
【0073】
サイジング組成物は、1種又は複数の界面活性剤、溶媒、フィルム形成剤、潤滑剤及び湿潤剤をさらに含有する。サイジング組成物は、さらに、活性固形物質を強化繊維上に溶解又は分散させるための水を含む。その水は、繊維上に所望の固形分を達成するのに適した粘度まで水性サイジング組成物を希釈するのに十分な量を加えることができる。サイジング組成物は、必要に応じて、レオロジー調整剤、充填剤、合体剤、帯電防止剤、染料、油、熱安定剤、消泡剤、酸化防止剤、殺生物剤及びpH調整剤をさらに含有する。
【0074】
サイジング組成物は、≧1質量%から≦99質量%の少なくとも1種のサイジング剤、及び≧0.1質量%から≦5質量%の少なくとも1種の界面活性剤を含有する。界面活性剤としては、エチレンオキシドとプロピレンオキシドに基づくブロックコポリマー、ステアリン酸エタノールアミド、ポリエチレングリコールエステル、エトキシル化ひまし油エステル、脂肪族モノアミン、芳香族ジアミン、アミンエトキシレート及びカチオン性脂肪アミドからなる群から選択される。エチレンオキシドとプロピレンオキシドに基づくブロックコポリマーとしては、エチレンジアミンポリオキシエチレン-ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、エトキシル化アルコールからなる群から選択される。
【0075】
フィルム形成剤は、強化繊維間の接着を改善し、ストランドの集結性を改善する。フィルム形成剤は、ポリマー結合剤として機能し、さらには強化繊維を保護し、加工性を向上させる。フィルム形成剤としては、水性媒体に分散又は溶解することができ、かつ、サイジング組成物が乾燥したときに、合体してフィルムを形成する適切なポリマーであってもよい。フィルム形成剤は、ポリビニルアミン、ポリビニルアミンコポリマー、ポリアミド、ポリアクリルアミド、ポリアクリルアミドコポリマー及びそれらの組合せからなる群から選択される。
【0076】
潤滑剤は、繊維の強度を最大化するために不可欠な繊維表面を、繊維同士の擦れ摩擦による擦り傷や処理装置設備から保護する。潤滑剤としては、例えば、ラウリン酸デシル、パルミチン酸イソプロピル、ステアリン酸イソプロピルなどのアルコキシル化脂肪酸エステル、ポリエチレングリコールラウレート又はステアレートなどのアルコキシル化脂肪アルコール、脂肪アミン塩及びそれらの混合物からなる群から選択される。
【0077】
本主題の一実施形態では、サイジング組成物と接触させた複数の強化繊維にはサイジング処理が施され得る。また、別の実施形態では、サイジング組成物と接触させた複数の強化繊維がアンサイジングされる(unsized)ことがある。
【0078】
本主題の引抜成形方法(P)によって製造された引抜成形複合体の強化繊維の質量百分率は、かなり変動することが可能であり、複合材料が意図する最終用途に依存する。強化材の装填量は、最終複合体の、30質量%から95質量%、好ましくは40質量%から90質量%、より好ましくは、最終複合体の質量に基づいて、60質量%から90質量%、最も好ましくは70質量%から90質量%とすることができる。繊維強化材は、明示した数値を含めて、これらの数値の任意の組み合わせの間の範囲の量で引抜成形複合体中に存在することができる。
【0079】
引抜成形方法のサイジング処理強化繊維は、平面(plane)強化繊維と組み合わせて被覆することができる。サイジング処理強化繊維は平面強化繊維と≧35から≦80の質量比で組み合わせて使用することが好ましい。
【0080】
当業者には承知されるように、繊維強化複合体を用いたポリウレタン系の引抜成形は、少なくとも1種のジイソシアネート又はポリイソシアネート及び少なくとも1種のポリオールを混合/計量機に供給し、所望の比率で混合装置、好ましくは静的ミキサーに送達して前駆体混合物を生成することによって実施する。前駆体混合物は、注入ダイに供給され、そこで、注入ダイに同時に引き込まれる繊維を含浸するために用いられる。得られた未硬化の、複数の被覆されたサイジング処理強化繊維は、注入ダイに直接取り付けたゾーン分け加熱ダイを通して引っ張られる。このゾーン分け加熱ダイは、サイジング処理強化繊維が所望の形状に成形され硬化される所望の断面を備えている。
【0081】
得られた複数の被覆されたサイジング処理強化繊維を少なくとも一つのダイ及び少なくとも一つの加熱ゾーンに通過させ、強化熱硬化性ポリウレタン複合体を得る。本主題による引抜成形方法(P)の各工程は、中断されることなく連続的に実施される。
【0082】
引抜成形方法(P)の加熱ゾーンは、加熱ゾーン(Z1)、(Z2)及び(Z3)を備えている。加熱ゾーン(Z1)の温度は≧135℃から≦180℃の範囲であり、加熱ゾーン(Z2)の温度は≧150℃から≦180℃の範囲で、加熱ゾーン(Z3)の温度は≧180℃から≦210℃の範囲である。
【0083】
強化熱硬化性ポリウレタン複合体は加熱ゾーンから引き抜く。この強化複合体をさらに断片に切断して強化複合プリプレグを形成し、射出成形又は押出に使用する。
【0084】
引抜成形装置は、好ましくは、少なくとも一つの含浸用ダイ及び少なくとも一つの硬化用ダイを有する。含浸用ダイでは重合が行われないため、硬化用ダイは必然的に含浸用ダイよりも高い温度で動作する。引抜成形装置は、任意選択で、複数の硬化用ダイすなわちゾーンを含むことができる。別個の各硬化用ゾーンは、必要に応じて、異なる温度に設定することができるが、硬化用ダイの全てのゾーンの温度は含浸用ダイよりも高くする。好ましいのは、ただ一つの含浸用ダイを存在させることであり、含浸用ダイは最初の硬化用ダイ(又はゾーン)の直前に配置するのが好ましい。含浸用ダイは、非混和性ポリウレタン組成物で少なくとも部分的に含浸された強化繊維が最初の硬化用ダイに入る前に、非混和性ポリウレタン組成物中のポリイソシアネート成分とポリイソシアネート反応性成分との間に実質的に反応を生じさせない温度に設定する。
【0085】
本主題の好適な一実施形態によれば、前駆体混合物は、前駆体混合物の総質量に基づいて、
a)≧37質量%から≦60質量%の、少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネート、
b)≧10質量%から≦30質量%の、少なくとも1種のポリオール、
c)≧0.1質量%から≦2.0質量%の、少なくとも1種の触媒、及び
d)≧1質量%から≦9質量%の、少なくとも1種の添加剤
を含有する。
【0086】
本主題の別の好適な実施形態によれば、前駆体混合物は、前駆体混合物の総質量に基づいて、
a)≧40質量%から≦60質量%の、少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネート、
b)≧10質量%から≦30質量%の、少なくとも1種のポリオール、
c)≧0.1質量%から≦1.0質量%の、少なくとも1種の触媒、及び
d)≧1質量%から≦9質量%の、少なくとも1種の添加剤
を含有する。
【0087】
本主題の別の好適な実施形態によれば、前駆体混合物は、前駆体混合物の総質量に基づいて、
e)≧40質量%から≦60質量%の、少なくとも1種のジ-又はポリイソシアネート、
f)≧10質量%から≦30質量%の、少なくとも1種のポリオール、
g)≧0.1質量%から≦1.0質量%の、少なくとも1種の触媒、及び
h)≧1質量%から≦9質量%の、少なくとも1種の添加剤
を含有する。
【0088】
本主題で使用する「ストランド」という用語は、多数のフィラメントを一緒にブッシングの下に集めた結果生じるベースストランドを意味し、製品はこれらのストランドに、及びロービングの形態のこれらのストランドの集合体に由来する。ロービングは、直接ロービング又はマルチエンドロービングのいずれかである。直接ロービングは、フィラメントを直接、ブッシングの真下に集め、回転するサポートに巻き付けることで得られる。マルチエンドロービングは2段階プロセスで得られる。すなわち、最初に、フィラメントを集めて幾つかの束に分け、それらを円筒形のパッケージに包み、次いで、これらのパッケージを一緒に組み合わせることでロービングが得られる。
【0089】
本主題の強化繊維は、熱硬化性ポリウレタン複合体の強化材として使用する。本主題の引抜成形方法(P)によれば、サイジング組成物中のポリイミンは化学的に反応性であり、繊維の表面でのポリウレタン形成を妨害し、それにより引抜成形品の物理的特性を変化させる。したがって、本主題の引抜成形方法(P)に従って製造した強化熱硬化性ポリウレタン複合体は、耐衝撃性、寸法安定性が改善し、強度、剛性、降伏応力、破壊応力、曲げ強さ時歪みなどの機械的特性が向上する。
【0090】
本主題に係る引抜成形方法(P)は、以下の利点を有する。
【0091】
i.この方法により、複合体の機械的性能を制御することができる。例えば、結合強度を強化又は低減し、より大きい伸びを付与し、又はより脆性な材料にすることができる。
【0092】
ii.この方法により、リサイジング処理した繊維ファイバーに関する、コストの掛かる在庫管理及び部品番号管理が不要になる。
【0093】
iii.この方法により、作業員のミスを誘発する潜在的な原因となる、また、最終的な複合体の性能に大きな影響を与える可能性がある、表面処理の異なる源(ソース)繊維を特定の物理的な場所に配置する必要性が取り除かれる。
【0094】
iv.この方法は、保管中又はクリールに取り付けている間にも発生する可能性のある湿度、ほこり、その他の異物などの原因による汚染の可能性を低減する。
【0095】
v.この方法により、エネルギー吸収を改善し、大きなたわみ性、又はより高い強度応力を持つ必要があるような、機械的特性の向上に重点を置いた数々の新規用途が創造される。これにより、製造業者は、局部的に処理した繊維を加えることにより、新しい引抜成形異形材の設計が可能となる。
【0096】
さらに詳述せずとも、前述の説明を使用することにより、当業者が本主題を最大限に利用し、本主題の本質的な特徴を容易に確認し、本主題の趣旨及び範囲から逸脱することなく、本主題の様々な変更と修正、及び様々な使用法と条件への適合を行うことができると考える。したがって、前述の実施形態は、単なる例示であり、いかなる方法であれ本開示の残余権を限定するものではないと解釈されるべきであり、本主題の範囲内に含まれる様々な修正及び同等の構成を保護することを意図している。
【実施例
【0097】
特許請求の範囲に現在記載の発明について、下記の実施例により詳細に説明する。より具体的には、以下に明記する試験方法は、本出願の一般的な開示の一部であり、特定の実施例に限定されない。
【0098】
強化複合体の製造と物性評価
プラーク試験とフィールド試験の2つのシリーズの実験を実施した。プラーク試験の結果は、フィールド試験のスクリーニング手段として使用した。このプラーク試験では、12x12インチのガラス繊維マットをカットし、ポリビニルピロリドン(Sokalan K30、BASF)とポリエチレンイミン(Lupasol PN40、BASF)を含有する1質量%溶液で処理した。サイジング剤のポリビニルピロリドンの重量平均分子量は45,000g/molであり、ポリエチレンイミンの重量平均分子量は800g/molから2,000,000g/molの範囲にある(ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定)。処理を施したガラス繊維マットをオーブンで(50℃)一晩、乾燥させ、次いでプラーク装置に運んだ。ポリウレタン配合物を乾燥後のマットに加え、次に加熱し、加圧した。形成したプラークについて試験を行い、表1に示すような引張りピーク及び伸び、及び灰分の測定を実施した。
【0099】
使用したポリウレタン配合物は、2成分系(イソシアネートと樹脂)である。イソシアネート側は、カルボジイミド変性MDI(ジフェニルメタンジイソシアネートの4,4’-及び2,4’-異性体)からなる。カルボジイミド変性イソシアネートは、室温で、安定で透明な液体である。MDIの一部を反応させて、遊離NCO量が29.2%から29.5%のカルボジイミド変性イソシアネートを得た。カルボジイミド変性により、残りの二官能性MDI内に3-官能性ウレトンイミン種が形成した。また、樹脂側は、ポリエーテルポリオールと複数の添加剤からなる。使用したポリエーテルポリオールは、ヒドロキシル基数が50~400の範囲の二官能性と三官能性のものであった。また、使用したポリエーテルポリオールは、500g/molから2500g/molの範囲の重量平均分子量を有する(ゲル浸透クロマトグラフィーに従って決定)。ポリオールは、0.05%未満の含水量、及び10ppm以下の範囲のナトリウム及びカリウム含有量を有する。樹脂側をイソシアネート側と異なる比率で混合して、望ましい硬度の、硬化した部品と製品とを得ることができる。
【0100】
フィールド試験としては、サイジング剤としてポリエチレンエミン(Lupasol(登録商標))を使用して実施した。この材料商品を溶液としてから、引抜成形ラインの注入ボックスより前の場所で被覆した。水性溶液に浸した後、その繊維を加熱対流で乾燥させた。次に、試料を通常どおり引抜成形した。これらのフィールド試験供試体についての結果を表1に示す。
【0101】
【表1】
【0102】
試験方法
ポリマー分子量測定
ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)によってポリマー分子量を決定するため、ポリマー試料の完全に溶解した分子を多孔性カラム固定相で分画した。テトラヒドロフラン(THF)を溶離剤溶媒として使用した。ポリマー試料の分子量分布、数平均分子量Mnと質量平均分子量Mw、及び多分散性Mw/Mnについて、クロマトグラフィーソフトウェアを使用して計算した。このソフトウェアは、Polymer Standards Serviceから入手できる、さまざまな分子量の一連の非分岐ポリスチレン標準物を含むEasyValid検証キットで作成された検量線を利用している。
【0103】
引張強さの測定
引張強さは、標準試験方法ASTM3039に従って測定した。
【0104】
曲げ強さの測定
非強化プラスチック及び強化プラスチックの曲げ特性については、標準試験方法ASTM D790に従って測定した。